ウェブやスポーツデータを解析するグラッドキューブが1.5億円を調達、NTTグループとの連携も

ウェブ解析ツールやスポーツデータ解析サービスを提供するグラッドキューブは2月20日、モバイル・インターネットキャピタル(MIC)およびNTTドコモ・ベンチャーズを引受先とした第三者割当増資を実施し、総額1.5億円を調達したことを明らかにした。

グラッドキューブは2007年の設立。創業当初からリスティング広告の運用など、インターネット広告代理業を営んできた。そのデジタルマーケティングの経験を生かして2015年、サイト解析ツール「SiTest」をリリースした。

SiTestはA/Bテストツールとして誕生し、企業のウェブ担当者の課題を受け、機能を増強してきた。従来、ヒートマップ解析やショッピングカート分析など、サイトを分析するためのツールは各種あったが、ツールごとに契約し、画面もバラバラだった。ウェブ担当者はそれぞれの操作をイチから覚えなければならない。また、Google Analyticsや各種ツールでバラバラに表示される結果をまとめて、レポートを作成する手間もかかる。ヒートマップなどの画像を整理してExcelやPowerPointファイルにまとめるだけでも、相当の時間がかかっていた。

SiTestでは、こうしたウェブの分析機能をオールインワンで提供。さらにAIを搭載することで、レポートを自動作成する機能も追加された。また、ヒートマップが自動的に、アドバイス付きでダウンロードできるスマートレポートも提供している。

グラッドキューブ代表取締役CEOの金島弘樹氏によれば、SiTestは現在、30万サイトで採用されている。アジアではトップクラスの導入数となっているそうだ。

こうして広告運用に加え、サイト解析やサイトの最適化サービスを提供していく中で、グラッドキューブではメディアの最適化についても相談を受けるようになった。広告価値やブランディングの向上につなげるため広告配置の改善を行い、月間100万PVだったサイトを1年で1億PVに上げた例もあるという。

金島氏はこのころ「広告運用だけではいずれ、機械学習に置き換えられてしまうだろう」と考えていた。そこで、これらメディアの最適化でつかんだ知見を基に、メディア分野への進出を図った。「テーマとしては美容健康か、スポーツを検討していた」(金島氏)とのことだが、選択したジャンルはスポーツだった。

金島氏がスポーツメディアへの進出を選んだ理由のひとつが、市場規模だ。「スポーツ関連市場はGDPの3%の需要を占めると言われている。2012年時点では、スタジアム・アリーナとスポーツ用品販売などで約5兆円規模だった。それがオリンピックイヤーから5年後の2025年には、IoT活用やスポーツツーリズムなどの周辺産業も含めると、15兆円規模になると期待されている」(金島氏)

また、米国ではスポーツに関するアプリの普及も進み、データ解析サービスやスポーツニュースなどのメディアの勢いも盛んだが、日本では5年ほど遅れて、ようやくデータ解析が使われるようになってきた段階で、まだ発展の余地が大きい。金島氏は、広告運用やサイト解析で得た情報を生かして、2016年9月、スポーツ解析メディアの「SPAIA(スパイア)」をローンチした。

さらに金島氏は、SPAIAについて「今後、スポーツツーリズム、アスリートのセカンドキャリア支援、マーケットプレイス、アカデミックスポーツ、スポーツゲームなどにも利用を広げ、スポーツ解析の分野でのプラットフォーマーを目指す」と話している。

「金銭以上の価値が調達で得られると考える」

金島氏は「実はSiTestをリリースした2015年ごろから、連携できるVCを探していた」と言う。「その際に、単に投資だけでなく、事業主体があるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)と連携したかった。これはグラッドキューブが提供する事業の価値を向上したかったから。これまでは折り合いが付くVCがなかなか見つからなかったが、今回はよい連携ができると期待している」(金島氏)

グラッドキューブは、広告運用事業を設立当初から続けていることは、先にも触れた。Google Premier Partner Awardsなどの各賞を受賞してきた実績も持っている。一方、今回の出資元であるNTTドコモ・ベンチャーズが属するNTTグループでも、解析システムやメディアの運用を行い、広告にも力を入れている。

金島氏は「今回の出資では、グラッドキューブの広告の質にも着目してもらっている。今後、広告、サイト解析、サイト最適化の部分でノウハウを共有していきたい。SiTestを活用し、媒体ごとに配信精度を高める仕掛けや、解析ツールの共同開発なども行っていければ」と話している。

広告解析の分野では「MICやNTTドコモ・ベンチャーズの既存投資先とのアライアンスも確度が高い、と評価されている」と金島氏は言う。

また、スポーツ解析メディアのSPAIAは、モバイルからの利用割合が85%を占め、さらに増加傾向にあるという。「スポーツメディアでは『DAZN(ダゾーン)』などもスマートデバイス対応が進んでいる。MICとの連携により、SPAIAもスマホシフトを狙っていく」(金島氏)

SPAIAについては「NTTドコモが提供するメディアとの間でも、データ解析と記事品質の向上の両事業でシナジーがある」と金島氏は考えている。「SPAIAのトラフィック、ユーザー数は伸びていて、手応えがある。広告掲載の依頼も増えて、影響力が出てきた。これはコンテンツの権利処理をきちんと行うなど、王道でメディア事業をやっていることへの評価と捉えている。今回の調達も踏まえて、次のステップへ行く時だ」(金島氏)

グラッドキューブでは、SPAIAでの記事配信体制の強化も検討しているようだ。「当初キュレーションでコンテンツを用意していた部分もあったが、現在は解析データなどを使って記事を制作し、独自配信する体制を整えつつある。例えば野球なら試合のリアルタイム速報で、AIを使って配球予想を出すコンテンツがあるが、その予測精度をより高める、といったこともやりたい。NTTドコモが運営するdメニューに記事を提供することや、独自配信も考えている」と金島氏は話している。「連携できること(の種類や内容)を考えると、金銭以上の価値が調達で得られると考えている」(金島氏)

写真中央:グラッドキューブ代表取締役 CEO 金島弘樹氏

ITで教育業界に“なめらかな”イノベーションを、デジタル問題集「ATLS」提供元が億単位の調達

中高生向けのタブレット端末用学習サービス「ATLS(アトラス)」を提供するforEst(フォレスト)は2月20日、グロービス・キャピタル・パートナーズらを引受先とした第三者割当増資による資金調達を実施したことを明らかにした。金額は非公開だが、関係者の話では億単位の調達だという。

同社では今回調達した資金をもとに開発人材の採用など組織体制を強化し、対応科目の拡張をはじめとしたプロダクトの改良を進める。合わせてこれまでは教育機関専売品として提供していたATLSの一般公開を、本日より開始した。

学習サポート機能を搭載した「おせっかいな」問題集

学校で使っているおなじみの問題集がデジタル化されることで、いくつかスマートな機能がついたもの。多少強引だが、ATLSを端的に説明するとそんなところだろうか。

同サービスには何冊もの教科書や問題集が登録されていて(現在は数学のみ対応)、Kindleのように必要なものを1冊ずつ購入する。並んでいるのは出版社が保有するコンテンツをデジタル化したもののみ。それによって一定の質が担保されているのが特徴だ。

これだけだと単なる電子書籍なのだけど、ATLSには紙の問題集にはない機能がいくつか搭載されている。これを読んでいる大人の方は、しばし中高生時代を振り返りながら読み進めていただくのがいいかもしれない。

まず過去に取り組んだ問題や学習量などのログを蓄積できる「学習履歴」機能だ。各問題集の閲覧ページにはストップウォッチが設定されていて、「いつ、どこで、どの問題を、どくくらいの時間かけて」取り組んでのか可視化できる。

その履歴を活用することで、過去に学習した問題を定期的にレコメンドする「復習支援」機能、間違えやすそうな問題をレコメンドする「挑戦問題」機能を実現。間違えっぱなしで放置しているような問題も抽出してくれる。苦手な単元や理解があいまいな分野は、ついつい後回しにしてしまいがち。そこをATLSが気を利かせて、つついてくれるというわけだ(ATLSのコンセプトは、おせっかいな問題集だ)。

また僕自身が学生時代を振り返ってみて1番便利だなと思ったのが、解いた問題に類似するものを“教材横断”で検索できる「類似問題検索機能」。別の問題集から似た問題を探してくるのは、以外と大変だったりする。シンプルな機能だけれど、デジタル化することによる大きなメリットだろう。

おなじみの教材、従来の学習法。ポイントはなじみやすさ

「ATLSではタブレットに表示された問題を見ながら、紙とペンを使って学習する。大切にしているのは完全に新しい概念を持ち込むのではなく、中高生にとってなじみのあるものを残すこと。これまで使用していたテキスト、紙とペンを使ったこれまで通りの学習方法に、ICTによる個々に合わせたサポート(アダプティブラーニング)を加えることで学習を効率化する」——forEst代表取締役CEOの後藤匠氏はATLSの思想についてそう話す。

教育業界の人たちも新しいテクノロジーに興味はあるだろうが、それまで上手くいっていたスタイルを大きく変えるのはリスクが大きい。実際「保守的な側面もある」(後藤氏)そうだ。だからこそ、実際に使ってもらうためには従来の仕組みになじむような設計が必要になる。後藤氏いわく「なめらかなイノベーション」が求められているという。

これはATLSを使って学習する生徒だけではなく、導入する学校の教師に対しても同様だ。

ATLSには教員の宿題管理事務を効率化する側面も持つ。管理ツールを介して、PCやスマホから宿題を配信。生徒はATLS上で問題を解き、その結果は自動で集計される。問題を解いたノートをカメラアプリで撮影してもらえば、個々の生徒がどのように問題を解いたのか、そのプロセスまでわかる。

教員の平均勤務時間の長さは日本の社会問題のひとつだ。ATLSでは従来から大きく手順を変えることなく、宿題用のプリントの印刷や回収、分析にかかる負担を削減する。生徒の傾向を分析することで、授業に反映することもできるだろう。

10ヶ月で50校以上へ導入が決定

学校向けにATLSを有償で販売し始めたのは2017年の4月から。トライアルも含めると、10ヶ月で50校以上に導入が決まっている。

「学校に営業に行った際や、実際に使ってみてもらった際も『これまでとあまり変わらないので、わかりやすい。使いやすい』という反応が多い」(後藤氏)

ビジネスモデルもシンプルで、問題集が購入された際のレベニューシェア(販売代金の一部がATLSの売り上げとなり、残りが出版社に支払われる)のみ。学校の導入費用は無料だ。後藤氏によると、まずはタブレット端末を使った学習に慣れてもらうために導入のハードルを下げることを最優先しているという。

forEstでは本日より新たな取り組みとしてATLSを一般公開し、導入校以外の生徒でもタブレットから教材を購入できる環境を整えた。今後も生徒向けのプレミアム機能など新たな展開はありえるかもしれないが、学校向けにがっつりビジネスをすることは今のところ考えていないそうだ。

一方でコンテンツを提供する側の出版社については、現在6社と提携。出版社にとってもATLSは新しいチャネルになりうるし、参考書内の問題に対するユーザーの取り組み動向などをレポートにすることで従来は把握できなかったデータも提供できる。

ただ以前は導入実績がないことがネックとなり出版社の開拓には苦戦したそう。前述のとおり現在ATLSで扱っている教科は数学のみで、物理と化学については準備が進んでいる段階。今後は英語など科目数の拡大や、対象となる年齢層の拡大(現在は一部の中高一貫校を除き、高校生向けの教材を扱う)を目指す方針のため、提携出版社数をどこまで増やせるかが鍵を握りそうだ。

「業界のICT化が進むとともに教材のデジタル化も求められてきたが、学習者が使いやすいものが整備されているとはいえないのが現状。質の高い教材を持つ出版社がデジタル市場に参入しやすいプラットフォームを作ることで、約1750億円の規模と言われる中高生向けの教育市場を変えていきたい」(後藤氏)

forEstの創業は2012年。当時東工大の大学院に通っていた後藤氏が学生ベンチャーとしてスタートしたのが始まりだ。後藤氏自身が大学で教育や雇用のシステムを変えることに強い関心を持ち、受験生時代に類似問題を探すのに苦労した経験もあったことから、アダプティブラーニング(個々の生徒に合わせた学習内容を提供する仕組み)の領域で起業したという。

forEstのメンバー。右から3人目が代表取締役CEOの後藤匠氏

ブロックチェーンとトークンエコノミーで“データ流通革命”を——「Datachain」が始動

これからの時代、ビジネスのカギを握るのは「データ」だ。そんなことを言うとTechCrunch Japanの読者からは「当たり前のことをいまさら言うな」と総ツッコミをくらうかもしれない。

ビッグデータという概念はもはや当たり前のように使われていて、「データは新しいオイル(石油)」と言われるほど重要視されている。最近でもヤフーが新体制の発表で「データの会社」になることを目指すと目標を掲げ、注目を集めたばかりだ。

とはいえ当然ながらデータの世界にも解決すべき課題もあるし、今後さらに進化できるポテンシャルもある。

この領域にブロックチェーンを活用したアプローチで変革を起こそうとしているのが、デジタルマーケティングやメディア開発に取り組むSpeeeの「Datachain」構想だ。

ブロックチェーン×DMPで、新たなデータ流通の仕組みを

DatachainはブロックチェーンとDMP(Data Management Platform)を組み合わせたプロダクトだ。ビジョンは「世界中のデータをブロックチェーンによって安全に共有できるようにする」こと。

詳しくは後述するが、「ブロックチェーン」と「トークンエコノミー」という切り口から従来のDMPの概念、データ共有・活用の方法をアップデートしようとしている。

「ブロックチェーン技術を活用することで、データの格差をなくし、世界をもっとフラットにしていきたい」――Speee創業者でDatachainの責任者を務める久田哲史氏は、同プロジェクトにかける思いをそのように話す。

「ビッグデータやAIが浸透してきている現在でさえ、実は本当に重要なデータは共有されずに死蔵されてしまっているのではと考えた。データの性質上、第三者には気軽に出せないデータはたくさんある。もしそれを安全に共有し解析することができれば、さまざまな産業が前に進むきっかけになるのではないか」(久田氏)

ここで「不動産×マーケティング」という領域におけるデータ活用の事例を考えてみたい。

今あるデータを見るだけでも「どの賃貸情報サイトでコンバージョンしたのか」は測定できるし、そのデータ自体は第三者にも共有することは可能だろう。だが「30歳の男性が六本木のワンルームの15万円のマンションを契約した」など、購買データや来店データ、会員情報といった「基幹データベース」に含まれる情報の中には、第三者に共有するのが難しいものもあった。

これはなにもマーケティングに限った話ではない。たとえば医療などの分野でも、複数の病院がデータを持ち寄り解析することができれば、研究のスピードが加速する可能性もある。

これらのデータを、ブロックチェーン技術をもとに安全に活用するというのがDatachainの構想だ。

「最初はマーケティング領域から入り、ブロックチェーンなら重要なデータがセキュアに共有できるという文化を作る。ゆくゆくは医療や行政など、実現のハードルは高いがインパクトも大きい分野にもチャレンジしていきたい」(久田氏)

データを安全に共有し、さまざまプレイヤーが活用できるようになれば一部のIT大手企業によるデータの独占・支配を緩和することにもつながる。実際GAFA、ないしビッグ4とよばれるGoogle、Apple、Facebook、Amazonに膨大なデータが集中しているのが現状。この「データ格差」をなくすのもDatachainの目的だ。

ブロックチェーンによる安全性と透明性の実現

上述したとおり、Datachainのコンセプトはブロックチェーン×DMPだ。DMPとは広告主やメディアからオーディエンスデータ(クリックや購入といったWeb上の行動ログなど)を収集・解析し、広告やマーケティングに活用できるようにするデータ管理プラットフォームのこと。

久田氏はDMPの4要件として「Data」「Science」「Security」「Cost」をあげている。つまりどれだけ広く深いデータを保有し、インテリジェントな解析がなされているか。そしてそのデータがいかに安全に、低コストで取引されているかが重要だという。

そしてこの4点をブロックチェーンとトークンエコノミーによって新しくする、というのがDatachainのキモだ。

まずブロックチェーンによって何が変わるのか。端的には「自社の機密データを第三者に閲覧されることなく、また意図しない形式・相手に利用されない状態で取引できるようになる」(久田氏)という。

第三者であるDMPの中央集権的サーバにデータをそのまま共有する形では、基幹データベースにあるような情報を渡すハードルが高い。そこでまず暗号化、匿名加工情報化によってプラットフォーマーが直接データの中身を読み取れない形式にする。

その上でデータを提供する「データプロバイダ」がノードとしてブロックチェーンに参加し、共有するデータの範囲や相手をスマートコントラクトによってコントロールする仕組みを構築。データの取引履歴も透明化し、データ提供者が正当な報酬を受け取れるようにする。

たとえばあるビール会社がデータプロバイダとして参加する場合、競合のビール会社には使われたくないデータがあるだろう。自分たちのデータが「誰に、どこまで」使われるかをコントロールでき、実際に使われた場合は履歴が残る。これがブロックチェーンを活用することによる価値だという。

またオンデマンドで理論的には無限の組み合わせの解析が可能。さまざまなアプリケーションとの連携も実現する。

価値あるデータをトークン化して取引するトークンエコノミー

Datachainにおいて、もうひとつ重要となる概念がトークンエコノミーだ。Datachain Tokenを発行しデータ取引の基軸通貨をつくることで「本当は価値があるのに、現在の法定通貨には反映されないものをトークン化し、貨幣や証券の特性をもたせることができる」(久田氏)という。

今のシステムでは、重要なアセットにもかかわらず財務諸表にはデータの価値が反映されない。久田氏いわく「金本位制、国家信用本位制ならぬデータ本位制」という考え方で、データのあり方を変えることを目指している。

昨年リリースされた「VALU」や「タイムバンク」は個人や個人の時間の価値を可視化し、取引できるようにしたことで話題を集めた。Datachainはこの対象が企業の保有する「データ」になったものだ。

DMPにトークンを用いることで具体的に何が変わるのか。ここでも「Cost Free」「ZERO Margin」「Fair Trade」「Token Policy」という4つのポイントがあるという。

法定通貨をなくすことによって「データでデータを買う仕組み」を作り、エントリーのハードルを下げる。そのうえで実際に活用しやすいようにデータ取引のマージンを一切とらない。取引履歴やフィードバックをもとに適正価格を導き出し、安定的なプラットフォームを実現するべくトークンの発行政策を行う。

興味深いのが取引のマージンを0にするということ。既存の枠組みで考えるとこれでは運営元が利益を出せない気もしてしまうが、トークンを介することで「通貨発行益」によりマネタイズできるようになる。Datachain Tokenをある程度保有しておけば、Datachainを利用したいユーザーが増えるほどトークンの価値があがり、その値上がり分が利益になるということだ。

利用者を増やすためには、前提としてデータの価値をきちんと評価できる仕組みが必要になる。この点については久田氏とともにDatachainプロジェクトを牽引するSpeee執行役員の木村淳氏の担当だ。

木村氏は2017年にKDDIグループの子会社となったMomentumでCTOを務めていた人物。同社はアドフラウド(不正広告)対策ソリューションを提供していたスタートアップということもあり、テクノロジーを活用した評価アルゴリズムの構築などは得意分野だということだ。

アプリケーションプラットフォームが世の中を変えてきた

「これまでもアプリケーションプラットフォームが世の中を変えてきた」と久田氏が話すように、蓄積されたデータを利用したDApp(分散型アプリケーション)開発が可能なプラットフォームとしての構想もある。

「優れたアイデアや技術があるのに十分なデータがなくて精度があがらず、プロダクトが使われないという事例は多い。保有するデータの格差によってデベロッパーの開発機会が失われる、という現実を変えていきたい」(久田氏)

Datachain Application Platformではデータを保有しないデベロッパーに対して、最初は無償でデータを提供。プロダクトが育った後に決済手数料からデータプロバイダにレベニューシェアしていくモデルを考えているという。こちらもまずは広告、CRM、MA、SFAといったマーケティング領域からはじめ、購買データを利用したクレジットスコアなどの金融分野へと広げていきたいという。

2018年中に実証実験を開始予定

Datachainの構想が実現すれば、データ流通の仕組みが一変しさまざまな化学反応が起こるかもしれない。ただ個人情報保護やデータ保護の問題など、懸念点もある。実際この原稿を書いている途中にも、EUでは個人データ保護を強化する目的で5月に新たな規制が施行されるという報道が話題になった。

この点について久田氏は「Datachainではデータを消して欲しいと思った時に消せるなど、透明性と主体性をしっかりと設計に組み込んでいる」と話す。リーガル、技術双方の側面から専門家のレビューを受けながら取り組んでいるそうだ。

またDatachainにはデジタルインテリジェンス代表取締役の横山隆治氏、エス・エム・エス創業者の諸藤周平氏、エウレカ創業者の赤坂優氏、元Googleの及川卓也氏がアドバイザーとして参加しているという。

今のところICOの予定はなく、「ブロックチェーン技術をデータ流通の分野で社会実装すること」を軸にする。仮想通貨交換業については登録申請の準備中だ。

2018年中を目処に、まずは実証実験という形で始める予定。プロジェクトの子会社も検討しているという。

「Speeeの母体とは少し離れて、スタートアップ的な文化でコミットしていく。『データがつながるを新しく』というミッション、『世界中のデータをブロックチェーンによって安全に共有できるようにする』というビジョンの実現に向けて、全力で取り組んでいきたい」(久田氏)

写真左からSpeee創業者でDatachainの責任者を務める久田哲史氏、同社代表取締役の大塚英樹氏、同社執行役員でDatachainの中心メンバーである木村淳氏

自宅の家電をスマート化する「Nature Remo」、開発元が1億円を調達、今後はエアコンの電力使用最適化も

家電をインターネットに接続することで“スマート化”できるIoTプロダクト「Nature Remo」。同製品の開発元であるNatureは2月19日、大和企業投資を引受先とする第三者割当増資により1億円を調達したことを明らかにした。

同社は代表取締役の塩出晴海氏がハーバード大学のMBA課程在籍中に立ち上げた、ハーバード大発ベンチャーだ。2016年5月にクラウドファンディングサイトKickstarterでNature Remoを発表。その後MakuakeやIndiegogoでもプロジェクトを開設し、総額2000万円以上を集めた。

2017年8月にも一度紹介したが、Nature Remoの特徴は普段使用している家電製品をスマートにできること。WiFiや赤外線の送受信機能に加えて、人感、温度、湿度、照度などのセンサーを備えている。

スマートフォンアプリとのペアリングおよびWiFi設定、リモコンの学習(Nature Remoに向けて赤外線リモコンを発信し、信号を認識させる)といった設定をすれば、アプリ経由でリモコンの操作が可能になる。帰宅前にアプリで室内の温度を確認してエアコンの電源を入れたり、出先で消し忘れたテレビを消すなんてことが可能。スマートフォンのGPSを使って、特定エリアに入る・出るタイミングで家電の電源を操作するといったこともできる。

また、強力なのが「IFTTT」を経由したスマートスピーカーとの連携だ。IFTTTはさまざまなウェブサービス同士を繋げることができるサービス。このIFTTTを利用することで、例えばスマートスピーカーの「Google Home」や「Amazon Echo」など(厳密にはこれらのスピーカーで利用できるAIアシスタント)を経由してNature Remoの機能を利用することができる。

設定には一手間かかるが、例えば「OK Google、暖房を付けて」とGoogle Homeに話しかければ、普通の家電(赤外線リモコンで操作するという意味で)だってスピーカーを通じて操作することが可能になる。2018年に入ってからAPIも公開。Nature Remoを使った様々なサービスの構築もできるようになった。

クラウドファンディングサイトだけでなく、2017年10月からは正式発売を開始。ただスマートスピーカーの日本上陸と重なったこともあり、塩出氏によると「直近まではバックオーダーがたまり、品薄状態になっていた」という。

現在はそれにあわせて家電量販店(ビックカメラ、コジマ)やAmazonでの販売も開始。今回調達した資金をもとに、開発・製造体制を強化し、プロダクトの改良を進める。

今後は「インターネットとセンサー技術を活用しエネルギーを自給自足できる未来をつくる」というビジョンのもと、まずはエアコンのIoT化により電力使用の最適化を目指す方針。昨年に続き関西電力とのバーチャルパワープラントの実証事業に参画し、電力関連事業でのアライアンスの実現に向けて取り組むという。

テレビ視聴率ならぬ「視聴質」を計測するTVISIONが1.5億円を融資により資金調達

インターネット広告の伸びに押され、最近伸び悩んでいるといわれるテレビ広告市場だが、それでも約2兆円を推移し続けている。ただ、その効果を測定する方法としてこれまで使われてきた「視聴率」には、課題もあるとの認識が広がってきた。これを踏まえて、ビデオリサーチがリアルタイムでの視聴に加え、タイムシフト視聴率の計測を2016年から始め(厳密には2012年から試験的に実施していたものを拡大)、また世帯ではなく個人視聴率へ発表する数値を切り替えるなどの動きも出ている。

そうした変化の中で、TVISION INSIGHTS(以下TVISION)は、テレビの視聴率ではなく「視聴質」を計測する企業として2015年3月に創業したスタートアップだ。TVISIONは2月19日、日本政策金融公庫、みずほ銀行、りそな銀行から、総額1.5億円の融資による資金調達を2017年末までに実施したことを明らかにした。

TVISIONが提供する視聴質データは、人体認識アルゴリズムを利用して、テレビに取り付けたセンサーから、視聴者の顔や人体のデータをリアルタイムでトラッキングし、テレビの「視聴態勢」を数値化して提供する、というもの。これまでのテレビのオン・オフに加えて、「テレビの前に誰がいるか(滞在度)」「テレビに誰の顔が向いているか(注視度)」を指標として出すことができる。

TVISIONは2018年2月現在、関東エリアの800世帯、地上波6局7チャンネルの全番組を毎秒レベルで計測(2018年2月現在)。またボストン・ニューヨークにも拠点を持ち、グローバルでの展開も行っている。

TVISION代表取締役の郡谷康士氏は「テレビ業界でも『このままではいけない』との認識から、変化の動きがあり、TVISIONのプロダクトに対してポテンシャルを評価してもらっている」と話す。「創業から3年で、国内のテレビ広告主トップ20社のうちの14社、広告代理店の大手3社と、テレビ局キー6局のうちの5局で採用され、市場でも評価されていると考える」(郡谷氏)

また海外での展開についても「兄弟会社を日米同時に立ち上げ、アメリカでもトップネットワークに採用され、社数は言えないが多くの顧客に利用していただいている。テレビ視聴の測定に関わる変化にうまくはまった形だ」と郡谷氏は述べている。

ただ、軸足は今のところ日本に置いていると郡谷氏は言う。その理由を「関東は都市圏として見れば世界最大級の1.2兆円のテレビ広告市場を持っている。これは英国1カ国分の6000億円よりも大きい。また米国は、全体では大きな市場を抱えるが、地域によるばらつきが大きい。より大きなデータで、早いPDCAを回していくことができる東京圏は、マザーマーケットと考える」と説明している。

今回の資金調達の目的について郡谷氏は「データサイエンティスト、アナリスト、開発エンジニアを中心に人員拡大を図りたい。また、顔認識や音声認識のシステムアップデートを現在も進めているが、次世代システムへのアップデートを完了し、実際のパネル世帯へのシステムと機材の適用を行っていく」と話している。

さらに郡谷氏は「メンバー増強により、より優れたプロダクトを提供し、データ分析の深掘りによる番組作りの最適化に寄り添っていきたい。業界でのプレゼンスをより大きくし、業界全体の最適化に役立てていきたい」と今後の展望について語った。

【2月19日 14:43 訂正】関東地方のテレビ広告市場規模の数値に誤りがあったため、訂正しました。

TVISION代表取締役の郡谷康士氏

“声のブログ”として注目集める「Voicy」が16人の投資家から2800万円を調達

僕の周りにいるのは、比較的新しいアプリやWebサービスを試すのが好きな人が多いからなのかもしれない。周囲でボイスメディア「Voicy(ボイシー)」を使い始めたという話を聞く機会が増えた。実は僕も1年ほど前から始めて、今では移動中を中心にほぼ毎日何かしらのコンテンツを聞いている。

最近はインフルエンサーや著名な起業家も配信を始めて、一気にユーザー層が広がっているように思えるVoicy。同サービスを提供するVoicyは2月19日、16人の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により、2800万円を調達したことを明らかにした。

今回同社に出資したのはヘイ代表取締役社長の佐藤裕介氏やDeNA共同創業者の川田尚吾氏のようにTechCrunchの記事でもたびたび個人投資家として登場するメンバーもいれば、ホリプロ代表取締役の堀 義貴氏のようにあまりスタートアップ界隈では名前を聞かないような起業家もいる。各投資家は事業メンターとしてVociyをサポートする予定だということだ。

なお同社は2017年3月にも12人の個人投資家から数千万円の資金を調達している(公開されている株主については末尾で別途紹介)。

「声と個性を楽しむこれからの放送局」というテーマで2016年の9月にリリースされたVoicy。当初は大手メディアや雑誌などから提供を受けた「活字」コンテンツを、音声に置き換えて届けるという色が強かったように思う。

ただ最近はこれまでになかった「声のブログ」として使われ始め、活字メディアをベースとはしない、自由な形式のコンテンツが増えてきた。配信者も多様化してきていて、ブロガーのはあちゅう氏やイケダハヤト氏、起業家の家入一真氏や佐藤裕介氏もチャンネルを開設する。

この点についてはVoicy代表取締役CEOの緒方憲太郎氏も「声のブログという世界観を年始に立ち上げて、家入さんやはあちゅうさんがはじめたところ『声で聞くとこんな感じなんだ!』と話題になった。発信者も思いを十分に届けることができるし、最後まで聞いてくれるリスナーはポジティブな人も多いので喜んでもらっている」と話す。

また今後スマートスピーカー市場が拡大を見込まれている点も同社にとっては追い風になるだろう。すでに「Google home」上ではニュースコンテンツの配信を開始。「Amazon Ehco」でもアルクの外国語教材の配信支援を行うほか、中京TVとの新しい音声体験の開発を進めているという。

Voicyでは今回調達した資金をもとに組織体制を強化し、「VoiceTechカンパニー」として成長する音声市場でさらなるサービス拡大を目指す。

なお、公開されているVoicyの株主陣は以下の通りだ。

  • 秋山勝氏(ベーシック代表取締役)
  • 伊藤将雄氏 (ユーザーローカル 代表取締役社長)
  • 川田尚吾氏 (DeNA 共同創業者)
  • 佐渡島庸平氏(コルク代表取締役社長)
  • 佐藤裕介氏(ヘイ代表取締役社長)
  • 島田亨氏 (USEN-NEXT HOLDINGS 取締役副社長COO)
  • 高梨巧氏 (favy 代表取締役社長)
  • 為末大氏 (侍 代表取締役)
  • 千葉功太郎氏(個人投資家)
  • 平澤創氏 (フェイス 代表取締役)
  • 堀義貴氏(ホリプロ 代表取締役)
  • 松本大氏(マネックスグループ 代表執行役CEO)
  • 山田尚貴氏 (エニドア 代表取締役)
  • 柳澤大輔氏 (カヤック 代表取締役CEO)

「とりあえずAIで何かやりたい」ではダメ――AIベンチャーと東大研究室が企業向けの支援事業

ここ1〜2年の間で「AI(人工知能)」という言葉はごく当たり前に使われるようになった。もちろん概念や技術自体は以前からあったものだけど、ほんの数年前まではTech界隈のメディアやSF映画などで目にする、”ちょっと未来感のある”専門用語的な存在だったように思う。

近年はビジネスにおける「AI活用の成功事例」が取り上げられることも増えたせいか、AIを取り入れたいという企業も多い。ただ実際のところ、多くの現場ではAIを導入するにあたってさまざまな課題に直面しているのが現実らしい。

そのような企業を支援するべく、AIスタートアップのストックマークが新たに始めるプロジェクトが「AI Alchemist」だ。

AI導入から自走にむけたトレーニングまでを6ヶ月で

AI Alchemistは企業がAIを導入するところから、開発したシステムの運用を担う担当者の育成までをトータルで支援するプログラムだ。「デザイン思考」→「プロトタイピング」→「マッチング」→「トレーニング」という4つのステップを設定し、約6ヶ月間に渡って企業に伴走する。

一緒にユーザーが求めているものを掘り起こし、AIの活用方法を試すプロトタイピングのフェーズでは東京大学の矢谷研究室と共同でサポート。システムに落とし込む際には最先端の技術を持つAIベンチャーも巻き込む。顧客が自走できるように、AIに精通した人材の育成までをカバーする。

もしかすると、ここまで読んで「いわゆるAI導入コンサルティングのことで、別に珍しくないのでは?」と思った人もいるかもしれない。正直僕も最初に概要を聞いた時、少しだけそう思った。ただ実際に話を聞いてみるといくつかユニークな点があるようだ。

AIスタートアップと東大研究室のコラボ

まずストックマーク自体がAIを活用した自社サービスを展開していること。同社の強みであるテキストマイニングの技術を用いたニュースサービス「StockMark」(個人向け)や「Anews」(エンタープライズ向け)は以前TechCrunch Japanでも紹介した。

同社にはAIが現在ほど脚光を浴びる前から、機械学習やビッグデータ解析の研究を進めてきたメンバーも多い。そもそも創業のベースとなっているのも、CTOの有馬幸介氏が東大の研究室で取り組んでいたテキストマイニング、ディープラーニングの研究だ。そこから各メンバーが大企業にてエンジニアやコンサルタントとして経験を積んだ上で、ストックマークを創業した。

「ビジネス経験と、大学での研究をベースとした最先端のAI技術の両方をもっているのは強み。自社サービスの開発・運営、クライアント企業のシステム開発を通じて培った(AIに関する)知見も提供できる」(ストックマーク代表取締役CEOの林達氏)

AI Alchemistの中心メンバーでチーフアルケミストの森住祐介氏は、前職の日本IBM時代に開発者向けサイト「developerWorks」の日本語版編集長を務めた人物。大企業やスタートアップとのつながりも深く、森住氏の持つ広いネットワークも同サービスの特徴だ。

また上述した通りプロトタイピングの段階では、東京大学の矢谷研究室もサポートに加わる。ストックマークの技術アドバイザーも務める矢谷浩司氏は、ヒューマン・コンピュータ・インタラクションとユビキタスコンピューティングの研究者で、いわゆるUI・UX領域の専門家だ。

Microsoft Research Asiaでの勤務経験もある矢谷氏の研究室と一緒になって、「AIをどのように使っていくのか」をデザインしていくという。

「とりあえずAIで何かやりたい」ではうまくいかないケースも

「Anewsなどエンタープライズ向けの事業を展開するうちに、AIの導入や活用で悩んでいる大企業が多いことに気づいた」——森住氏はAI Alchemistの構想が生まれた背景についてこう話す。

トップが「とりあえずAIで何かやりたい」と考えている企業は多いが、AIによって何が変わるのか、どのような価値が生まれるのかを深く理解しているケースは限られる。結果として実際に担当することになる現場のスタッフに、大きな負担がかかっているという。

「AIについて聞いたことはあるが『どう使っていいのかわからない』という声が多い。本気で取り組むのであれば、既存のビジネスの延長で考えてしまっては上手く進まないし、時には文化的なところから変えていかなければいけない場合もある。担当者1人では難しいので、経営陣や社内のキーマン、外部の企業を巻き込むところまでサポートしていくことが必要」(森住氏)

AIの導入コンサルティングをしている企業はすでにあるが、社内の担当者を育成するといった点まで含めてサポートしているところは多くない。森住氏は「(理論だけではうまくいかない部分も多く)AIの導入って思いの外めんどくさい、泥臭いもの」だという。

すでに商社系の大手企業とプロジェクトが動き出しているそうで、まずはニーズの多い大企業を中心にサービスを展開していく方針。いずれは中小企業にも広げていきたいという。

タニタ、PS4「とある魔術の電脳戦機(バーチャロン)」用ツインスティック開発でゲーム事業に参入

eng-logo-2015体組成計などを手がけるタニタが、ゲーム事業への参入を発表しました。第一弾として、PS4ソフト「とある魔術の電脳戦機(バーチャロン)」(SEGA)に対応するツインスティックを開発を目指すとしています。

谷田千里社長は「ゲームで楽しく遊ぶことは健康につながります」と参入の意義を説明。なお、公開された動画には、社長の背後に同作品のフィギュアも飾られています。

「とある魔術の電脳戦機(バーチャロン)」は、セガが2月15日に発売した対戦型3Dロボット・バトルアクションゲーム。バーチャロンシリーズ15年ぶりの新作で、電撃文庫の「とある魔術の禁書目録(インデックス)」とコラボし、同作品のキャラクターがロボットを操ります。

詳細については、公式Twitterで順次公開するとのこと。

Engadget 日本版からの転載。

すでに1000社以上が参入、インバウンド業界のカオスマップとレポートをナイトレイが公開

インバウンド対策支援サービス「inbound insight」を提供するナイトレイは2月16日、国内のインバウンド業界のトレンドに関するレポートと、インバウンドソリューション企業をまとめたカオスマップを公開した。 

同レポートによると観光庁の発表では2017年の訪日外国人数は2800万人を超え、消費額も4.4兆円にのぼる。これはどちらも過去最高の数値だ。

日本政府でも「世界が訪れたくなる日本」を実現するため、2016年に「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定。訪日外国人数の目標値を2020年に4000万人、2040年に6000万人と設定している。

平成30年度の観光庁の予算をみても、約300億円と前年比で15%増加。デジタルマーケティングやビッグデータを活用したプロモーション強化、WiFi環境整備や手ぶら観光実現など受入環境整備へ多くの予算を充てるほか、民泊の整備やコンテンツの掘り起こしなどに向けて予算を確保しているとされる。

このような背景もありインバウンドソリューションサービスを提供している企業は1000社を超え、同社の言葉を借りるとまさに「カオスな状態」だ。

もちろんすべてのサービスが上手くいっているということはないが、2015年に楽天に買収されたVoyagin、2016年にフジ・メディア・ホールディングス傘下に買収されたジャパンインフォなどエグジットの事例もでてきている。同様にMATCHAが星野リゾートとの資本業務提携を締結したように、提携や資金調達の案件も増えてきている(ナイトレイも2017年に複数のVCから1.3億円を調達している)。

なお本レポートの完全版はナイトレイのサイトからダウンロードできる。

AR砂遊びなどを楽しめる次世代テーマパーク運営のプレースホルダ、TBSらから6億円を調達

体験型のデジタルテーマパーク「リトルプラネット」を展開するプレースホルダは2月15日、TBS、インキュベイトファンド、みずほキャピタルを引受先とする第三者割当増資により、総額約6億円を調達したことを明らかにした。

リードインドベスターを務めたTBSは今回の出資によりプレースホルダ代表取締役の後藤貴史に次ぐ持分を保有し、プレースホルダは関連会社になるという。

リトルプラネットは「アソビがマナビに変わる」をテーマにした体験型のデジタルテーマパークだ。AR・VRやセンシング技術など最新のテクノロジーを取り入れて、子どもだけでなく大人でも楽しめる空間を提供している。

たとえば「SAND PARTY!」は砂場と映像を組み合わせた、“AR砂遊び”アトラクション。砂場の形状に応じて様々な演出が発生するほか、ARガジェットを使って宝箱を開けたり、見えない生き物を虫眼鏡でみるといった未来感のある体験を届ける。

ほかにも実際にはインクの出ないスプレーを使って壁やVR空間でラクガキができる「SPRAY PAINTING」や、リアル空間にデジタル積み木が融合するAR積み木「Little Builders」、ブロックを操作してキャラクターを目的地に導く過程でプログラミング脳を養える「WORD ADVENTURE」など、見ているだけでワクワクするアトラクションが並ぶ。

現在は東京都立川市にあるららぽーと立川立飛にて期間限定(2018年2月25日まで)でテーマパークを運営しているほか、7月20日からはハワイのワイキキ水族館でも展開する予定だ。

今後はパーク数の拡大のほか、TBSの持つエンターテインメントアセットを活用した新しいコンテンツ開発などにも取り組む方針。同社では「リトルプラネットを起点として、子どものやる気に火をつけ、創造力を駆使して新たな価値を作るきっかけを与えていけるエデュテインメント領域のリーディングカンパニーを目指します」としている。

なおプレースホルダは2016年9月の創業。代表取締役の後藤貴史氏はポケラボの創業者でもある、連続起業家だ。

ライブコマースはECの有力なチャネルとなるか、PinQulとTOKYO BASEがPB商品の共同販売へ

2017年は国内ライブコマースの“黎明期”と言える1年だった。多くのサービスが立ち上がり、「ライブコマース」という概念が一気に拡大。TechCrunch Japanでも11月に開催したTechCrunch Tokyo 2017でパネルディスカッションのテーマに取り上げ、関連するニュースも度々紹介してきた。

2018年は他の業界がそうであるように、各企業の優劣がはっきりしてくるのではないだろうか。昨年の秋には先駆者ともいえる「Live Shop!」運営のCandeeがプライベートブランドを始めるなど、新たな取り組みもみられた。存在感を増す事業者がでてくる一方で、撤退を決めるところもでてきそうだ。

PinQul(ピンクル)」を提供するFlattもこのライブコマース市場で事業を展開する1社。昨年10月にアプリをリリースし、11月からはプライベートブランド「P.Q. by PinQul」を始めた。

そんなFlattが次に取り組むのは、自社商品を販売したい事業者とタッグを組むことによるPinQulの本格的な拡大だ。

同社は2月16日、PinQulにてTOKYO BASEの新ブランド「SOCIAL WEAR」のライブ販売を実施することを明らかにした。ライブを行うのはInstagramのフォロワーが22万人を超える「にょみ。」さん。自身がプロデュースした洋服を2回の放送で販売する予定。1回目の配信は本日21時からだ。

Flattでは今後アパレル商材に限らず、自社商品を販売したい事業者や個人の募集を進めるという。

従来のメディアとは異なるライブコマースの可能性

今回ライブコマースに取り組むTOKYO BASEのSOCIAL WEARはかなりエッジの効いたブランドだ。

コンセプトは、日本生産がシュリンクしていく中「日本のファッション製造業を活性化させ、強い日本産業を取り戻す」こと。日本製にこだわり、生産は受注ベース。実店舗を持たずEコマースに特化したブランドで、60%の原価率を誇る。

これまではZOZOTOWNでのみ販売をしていたが、新たなチャネルとしてPinQulが候補にあがった。ライブコマースの特徴はテキストや画像に比べて、リッチでインタラクティブなコミュニケーションが可能になること。SOCIAL WEAR自体がユニークなストーリーを持つブランドということもあり、TOKYO BASEとしてもライブコマースとは相性がいいと踏んだようだ。

特に今回ライブ配信をするにょみ。さんが売るのは自らプロデュースした洋服。PinQulではすでに自身で手がけた商品を販売した配信者が複数人いて、約30分で1万1800円のセットアップが40着以上売れたという事例もある。FlattのCCOを務める豊田恵二郎氏も「語るべきストーリーがあるものほど向いている」と話す。

人とものを増やし、本格的に規模拡大を狙うフェーズへ

Flattではこれまで、ライブ配信を行うキー・オピニオン・リーダー(KOL)についても、扱う商品についてもかなり限定していた。

代表取締役CEOの井手康貴氏や豊田氏も以前から「実際に売れるか」を重視していると話していて、単にSNSのフォロワー数が多いだけの「インフルエンサー」ではなく、ファンからの信頼があり実際にものを売ることができるKOLを直接キャスティングしてきた。商品についても、あくまで「自分の気に入ったものを紹介してマネタイズできる仕組み」を目指して、むやみに広げることはなかった。

その考えを突き進めたひとつの結果が配信者によるプライベートブランドであり、実際にCVRも10%〜20%と「商品が売れる」仕組みができ始めているという。

その反面、今のやりかただけでは同社が目指す規模までは大きくならないという話もあった。そこで次なる一手として始めるのが、TOKYO BASEのように自社商品を販売したいと考える事業者との協業だ。

「これまでクオリティコントロールをものすごく大事にしてきて、実際CVR的にもいい数値がでている。今後もPBには力を入れていくが、それだけでは難しいのでB向け(事業者)にも拡大しないといけない。直近は配信者のハードルを下がるために裏側のシステムや体験の改善に全振りしてきて、ようやく拡大に向けた準備が整ってきた状況だ」(井手氏)

現時点でもすでに複数の企業からPinQulで商品を販売したいという問い合わせがきているそう。「ライフスタイル」などある程度の基準は設けつつも、アパレル業界以外の企業にもPinQulの提供を進める方針だ。共同でプライベートブランド商品を開発したり、熱量のある社員が販売をしたりといった可能性もあるという。同様にライブ配信者についても公募を開始し、放送数の拡大も目指す。

「今後企業がどのライブコマース(プラットフォーム)がいいかを比較するようになっていく。結局のところ『売れるかどうか』が見られているので、CVRを下げないという部分は徹底した上で規模を広げていきたい。特にファッション領域のKOLは自分たちがしっかりと巻き込み、ものについても『PinQulなら売れる』という状況を作っていきたい」(井手氏)

「あそびの発明」ニンテンドーラボ予約開始。自分で発明する Toy-Conガレージなど新情報公開

ニンテンドースイッチと段ボール工作を組み合わせた新しいトイ、Nintendo Labo (ニンテンドーラボ)の購入予約受付が始まりました。

任天堂直販のマイニンテンドーストアのほか、家電量販店やオンラインストア各社で第一弾製品「バラエティキット」「ロボットキット」、カスタマイズ用アクセサリの「デコルセット」を予約できます。発売は4月20日。

あわせて、これまで不明だった情報やスクリーンショットを含む新しい紹介映像も公開しています。

Gallery: Nintendo Labo (ニンテンドーラボ) 新映像 | 15 Photos

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任天堂が1月に発表した Nintendo Labo は、ニンテンドースイッチのアプリとダンボール工作キットを組み合わせた新発想のおもちゃ。

キャッチフレーズの『つくる、あそぶ、わかる』が示すように、段ボール工作とスイッチのゲーム、さらに動作原理の理解という、教育的な側面があるおもちゃです。

段ボールシートを画面の指示どおりに組み立てて、ニンテンドースイッチの着脱式コントローラ Joy-Con を装着することで、ピアノ・釣り竿・ハンドル・ドールハウスなどさまざまな形状の『Toy-Con』を「つくる」のが第一段階。

作ったトイコンで新しい操作のゲームを遊べることに加えて、Joy-Conの赤外線カメラやモーションセンサなど、段ボール工作とどう相互作用して動作しているのかを理解し、自分なりに変更を加え試行錯誤で遊び方を拡張する要素もあります。

さらに両キットに含まれる「 Toy-Conガレージ」モードでは、「何をすると」「どうなる」を組み合わせて、オリジナルな Toy-Con を作ることまで対応。

ボタンやセンサなどの入力と、振動や画面や音などの出力を対応させ、自作の工作と組み合わせることで、例ではコインの識別機やギター、動くおもちゃなどが作れることが示されています。

速報:『あそびの発明』Nintendo Labo発表。工作キットと任天堂スイッチを合体

価格は、釣り竿やピアノなど5種類+アルファのToy-Conが作れる『Nintendo Labo Toy-Con 01: Variety Kit(バラエティ キット)』が税込7538円、身につけて体の動きをロボットに反映する『Nintendo Labo Toy-Con 02: Robot Kit(ロボット キット)』が8618円。

「段ボールに8000円!」という反響もありましたが、それぞれダンボールキットとニンテンドースイッチ用のゲームカード(組み立て解説、各ゲームやアプリ)が同梱された価格です。

マイニンテンドーストアでは、通常版に加えて「ダンボールキット+ソフトのダウンロード番号」をセットにしたダウンロード版も同じ価格で販売します。

ニンテンドーラボはソフトだけあっても成立しないためか、本体のeショップでダウンロード版ソフトのみの販売はしないとのこと。

Engadget 日本版からの転載。

スタートゥデイが3つの新発表――おかませ定期便、ZOZO販売員、新たな採寸アイデアを3億円で買い取り

プライベートブランド「ZOZO」の販売開始、ZOZOSUITの配送、スタートトゥデイ研究所の発足——ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイが大きな発表をしたのはつい先日のこと。ただそこから1ヶ月も経たないうちに、また新たな構想が明らかになった。

スタートトゥデイは2月15日、3つの新たな発表を行った。1つ目がZOZOTOWNで「おまかせ定期便」を開始したこと、2つ目が在宅ワーク可能な「ZOZO販売員」の募集を開始したこと、そして3つ目がスタートゥデイ研究所にて、あるアイデアを3億円で買い取るということだ。

コーディネートした服の定期購入サービス

おまかせ定期便は本日から開始したZOZOTOWN内の新サービス。申し込み時に回答したアンケートをもとに、アパレル経験豊富なスタッフがスタイリングしたコーディネートを定期的に届けるというもの。合わせて注文履歴などを独自のアルゴリズムで解析することで、ユーザーに最適な服を届けることを目指す。ZOZOSUITで体型を計測していれば、そのデータも加味するという。

頻度は「1ヶ月ごと」「2ヶ月ごと」「3ヶ月ごと」の3つからから選べ、1度に送られる商品の数は5~10点。ユーザーはその中から気に入ったもののみを選んで購入できる。気に入らなかった商品は、無料で返品可能(商品到着から7日以内)。サービスの利用料金は購入した商品代金と200円の送料となる。

成果報酬もある在宅ワーク、ZOZO販売員

このおまかせ定期便にも関わるのが、こちらも本日から募集を開始したZOZO販売員だ。ZOZO販売員はおまかせ定期便のユーザーのために、50万点以上の商品からコーディネートを考える役割を担う。

管理画面から商品を選択し、着こなしのポイントなどをまとめたレターを作成する仕事で、自宅にいながら自分のペースで働くことが可能。コーディネートの作成につき600円が支給されるほか、売上に応じた成果報酬もあるという。

ZOZOSUIT超えの可能性を秘めたアイデアを3億円で買い取りへ

そして3つ目の発表は少し違ったテイストのものだが、もしかしたらTechCrunch Japanの読者にとってはもっとも興味深いものかもしれない。

個人や企業からファッションデータ・システム関連のアイデアや特許などを買い取り、実現・活用を目指す目的で発足したスタートトゥデイ研究所が、3億円であるアイデアを買い取ることを決定したという。

詳細は明らかになっていないが、発表によると「研究者3名からなる匿名のチームによる、採寸用ボディースーツ『ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)』よりも更に簡単に低コストで高精度な体型計測が可能となるアイデア」だということ。

本件はスタートトゥデイ研究所による買い取り案件の第1弾で、今後もアイデアや特許などの買い取りを検討していくとしている。

水産業者間の流通をスマホで変革、広島発ポータブルが1.2億円を調達

水産業者間のマーケットプレイス「UUUO(ウーオ)」を開発するポータブルは2月15日、インキュベイトファンド、IF Lifetime Ventures、広島ベンチャーキャピタル、とっとりキャピタルを引受先とする第三者割当増資による総額1.2億円円の資金調達を実施したことを明らかにした。

調達は2017年8月から2018年2月にかけて行っていて、シードラウンドおよびプレシリーズAラウンドにあたるものだという。またインキュベイトファンドの代表パートナーである村田祐介氏が同社の社外取締役に就任したことも明かしている。

ポータブルが開発するUUUOは「スマホでつながる水産市場 」をコンセプトとした、産地と中央市場の水産事業者をつなぐプラットフォームだ。

出品時に必要なのはスマートフォンやタブレットで写真を撮って特徴を入力することだけ。サイズや魚種などはタブで選択することがほとんどで、作業に大きな手間がかからないことが特徴だ。購入時も数量を入力し、購入ボタンを押すだけで完了する。

また今後は購入者側の事業者が魚種や価格、サイズや産地など欲しい水産物の条件をリクエストできるようになる機能も追加する予定だという。

ポータブルは広島発の水産系スタートップで、2016年7月の創業。創業者で代表取締役の板倉一智氏は、松葉がにの産地として有名な「網代港」がある鳥取県岩美町の出身。親族や知人には漁業従事者も多く、この業界になじみがあったという。地元漁船の減少やセリの衰退など水産業の現状を知り、水産市場流通の活性化を目指すためにUUUO(旧サービス名:Portable)を立ち上げた。

同社は2017年5月にKDDI ∞LABO Demo Day 地方選抜企業に選出。同年8月にはインキュベイトキャンプ10thにも採択されている。

今回調達した資金で開発・営業面の人材採用を強化するほか、鳥取市に自社出荷拠点となるUUUO Base(ウーオベース)の開設を進め、サービスの拡充を図る。

あえてデザインのカスタマイズ機能を省く――個人事業主向けWebサイト作成サービス「MOSH」が資金調達

個人事業主向けのWebページ作成サービス「MOSH」を提供するMOSHは2月15日、ジェネシア・ベンチャーズと実名型グルメサービスのRettyを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は2000万円だ。

MOSHのメンバー。写真左より2番目が、代表取締役の藪和弥氏

最近では、個人として活躍するヨガインストラクターや英会話講師などの人々がSNSで自分のビジネスをPRすることも多くなったように思う。でも、SNSにはサービスの予約機能などはないから、これだけでビジネスができる、というツールではない。

今回2000万円を調達したMOSHは、そういった個人事業主向けに、情報発信のツールとしても使えるだけでなく、予約機能なども備えたWebページの作成サービスを展開している。

MOSHで作成したWebページ例

本日より正式リリースとなるMOSHを使えば、必要事項などを記入していくだけで簡単にWebページを作成することが可能。利用は無料だ。

Webページ上には自身が提供するサービスのメニューや予約ページを加えることができるほか、サービスを利用するユーザーが評価したレビューも溜まっていく仕組みだ。Instagramの投稿を自動的にMOSHに反映させる機能もある。

MOSHで作るWebページのデザインはとてもシンプルだ。また、それは完全にモバイルからの閲覧に特化したデザインでもある。

でも、MOSHではそのシンプルなデザインに手を加えることは不可能だ。代表取締役の藪和弥氏に聞けば、デザインのカスタマイズ機能は「あえて省いた」という。

WordPressでブログを作ったことのあるTechCrunch Japan読者なら分っていただけると思うが、デザインのカスタマイズは楽しい反面、それが逆に面倒くささや煩雑さを生みかねない。僕も、本来ならばコンテンツを充実させるべきなのに、デザインのカスタマイズに何日もかけて満足しちゃった、なんてことは何度もあった。

一方でMOSHは、HTMLやCSSの知識がまったくなくても、スマホだけで簡単に始めることができるという手軽さを追求した。その結果、カスタマイズ機能はあえてつけないと決断したという。とても理にかなった選択だと個人的には思う。

MOSHは2017年10月に同サービスのベータ版をリリース。これまでに約100件のWebページが作成されている。MOSH代表取締役の籔和弥氏によれば、ベータ版のユーザーの約半数はヨガインストラクターなのだそうだ。「ヨガインストラクターは個人で活動する人も多く、サービスの単価も高い。だから、ベータ版ではそのヨガインストラクターに的を絞ってマーケティングをした」(藪氏)

今のところMOSHにはまだ決済機能が備わっていないが、同社はその機能を導入後、Webページ上での決済ごとに手数料を受け取りマネタイズしていく。

MOSHは2017年7月の創業。今回のラウンドが同社初の外部調達となる。代表取締役を務める藪氏は、今回のラウンドにも参加するRettyに所属していた人物。彼が入社したのはRettyの従業員がまだ7人ほどしかいなかった頃だというから、かなり初期の段階で加わったメンバーの1人だ。

藪氏は、大学時代にはブレイクダンスに没頭していて、1年生の時には全国大会で優勝をしたこともある。そういった経歴をもっていることもあり、彼の周りには今でもクリエイティブ系の知り合いが多いという。

ただ、彼らのようなクリエイティブ人材が、「すごく努力をしているにも関わらず、経済的には上手くいっていない」(藪氏)という状況に藪氏は歯がゆさを感じていてもいた。その課題をサービスの力で何とか解決したいという想いで立ち上げたのがMOSHだ。藪氏は、「将来的には個人のWebページ作成サービスだけでなく、個人が自分のスキルを売買できるマーケットプレイスも作って行きたい」と今後の目標について語った。

約100社のリファラル採用支援で培った知見を活用、リフカムがアナログなサポートを加えた新サービス

社員の人脈を良質な人材の採用に活用する、リファラル採用。特にアメリカでは積極的に取り入れられてきたと言われている手法だが、近年は日本でも少しずつ広がり始めている。

こ関連ツールもいくつかでてきていて、TechCrunch Japanでも何度か紹介したクラウドサービス「Refcome(リフカム)」もまさにそのひとつ。提供元のリフカムは2016年7月から同サービスを通じて、これまでに約100社のリファラル採用を支援してきた。

そのリフカムが2月15日より新たなサービスを始める。リファラル採用の制度設計から施策案の作成、運用代行までを一貫してサポートする「Referral Success Partner」だ。

リファラル採用は思っているより難しい

Referral Success Partnerをシンプルに表現すれば、「リファラル採用に関するアナログなコンサルティングサービス」となるだろうか。

これまでRefcome、Refcome Engage(2017年4月にリリースした社員のエンゲージメント測定ツール)とクラウド上で完結するサービスを提供してきたリフカム。同社がこのタイミングであえてアナログな事業を始めるのは、約1年半に渡ってこの領域に取り組む中で見えてきた気づきがあるという。

「『リファラル採用は思っているよりも難しく、一筋縄ではいかない』というのがこれまで事業をやってきて感じていること。リファラル採用の立ち上げにおいては、システムによって効率化するだけでなく、どのように社員を巻き込んでいくのか、どのような施策を実施していくのかといったアナログなサポートこそが成功に大きく関わることがわかってきた」(リフカム代表取締役の清水巧氏)

清水氏によると、プロダクトの観点ではリファラル採用は「エンゲージメント」「採用広報」「タレントプール」「リファラル」という4つの工程にわかれる。そして成果を出すためには最終工程のリファラルの部分だけでなく、すべての段階が上手く機能している必要があるという。

エンゲージメントについては以前紹介したとおり、リファラル採用に協力的な店舗の社員はエンゲージメントが高いという結果もでているそう。この工程については上述したRefcome Engageで見える化している。

一方でリファラル採用を加速させるストーリーの掘り起こしや社内外への発信(採用広報)、対象となる候補者のリスト作り(タレントプール)についてはこれまで十分に対応できていなかったという。

「(リソースの問題もあったが)もう少し早い段階から顧客の内部に入って密にサポートできていればと思う部分もある。これまでもリファラル採用やリフカムに興味をもってもらったものの、制度設計を自社でやるリソースやノウハウがないという理由で受注に繋がらなかったケースもあった」(清水氏)

100社のサポートを通じて培ったノウハウやデータをフル活用

今回スタートするReferral Success Partnerは、これまでリフカムが蓄積してきたデータやナレッジを活用して、リファラル採用の立ち上げから運用が自力で回るまでの3ヶ月をサポートするサービスだ。

清水氏の話では、これまでRefcomを通じてリファラル採用で成功した会社には共通点があり、いくつかのパターンに分類できるそう。専属スタッフが立ち上げの段階から顧客に伴走することで、「どのパターンにはまりそうか、どのような施策が最適か」を社内のキーマンを巻き込みながら一緒に考えていく。これがReferral Success Partnerの特徴だという。

長期的には採用広報やタレントプールの工程に関するサービスを独立で提供することも視野に入れている。直近ではRefcomのアプリ版もリリースする予定だ。

リフカムでは「蓄積したデータ、ノウハウの活用」「専属スタッフのサポート」「クラウドツールを活用した工数削減」という3つのアプローチで、企業のリファラル採用の活性化を目指す。

なおリフカムは2017年11月に伊藤忠テクノロジーベンチャーズやDraperNexusなど複数VCから約2億円を調達している。

文字を音声に変換する視覚障がい者向けスマートグラスの量産に向けたクラウドファンディングが開始

eng-logo-2015視界に入った文字を読み上げるスマートグラス「OTON GLASS」のクラウドファンディングが始まりました。

OTON GLASSは、文字認識・音声再生機能を備えたスマートグラス。内蔵カメラ、画像認識用クラウド、スピーカーからなり、OTON GLASSをかけた状態で読みたい文字の方を向いて、テンプル部分のボタンを押して使います。

内蔵カメラが撮影した写真をクラウドにアップロードし、クラウド上の画像認識エンジンが抽出した画面内の文字列を音声データに変換することで、スピーカーから音声が流れる仕組み。使用時にはネットワーク環境が必要です。

同等の機能はスマートフォンなどでも実現可能ですが、本機が眼鏡型であることのメリットは「読み上げる対象の方を向く」という自然な所作によって、「文字を読む」ことができる点。文字認識の際にスマートフォン内蔵カメラを用いると、アプリの立ち上げや撮影のための動作を必要とするため、煩雑かつ不自然な動きになってしまうほか、両手が塞がることから、最終的にスマートグラスという形に落ち着いたといいます。

現在、視覚障がい、読字障がい、低視力者などに向けて、一般販売の準備を進めているとのこと。製品自体は実用化一歩手前の段階であり、今回のプロジェクトでは、実際にOTON GLASSを必要とする人々に製品を届けるための活動資金を募っています。障がいを持つ人々にOTON GLASSを実際に使ってもらうことで有用性を立証し、福祉機器として低価格で普及させる第一歩とする見通し。

支援額としては5000~1000万円までを用意。20万円につき1人に届く計算です。バッカー(支援者)へのリターンは、最少額の5000円でサンクスメールとオリジナルステッカー、1万円からは活動報告の冊子、2万円からはコミュニティイベントへの招待、10万円からは当事者のOTON GLASS体験会見学への招待、40万円からは本機モックの進呈、1000万円で本機特別版ワーキングモデルの贈呈を行います。2019年2月頃より順次リターンの送付を行なう予定。

OTON GLASSは開発の過程で、視覚障がい者の支援施設や眼科医などと共同研究を行っており、一部施設で導入が始まっています。また今回のプロジェクトは、目標金額を達成しない場合でも集まった支援金を受け取れる「All-in方式」を採用しており、集まった金額分だけ確実に当事者の元へ製品を届けられる見込みです。

スマートグラスといえば、視界の情報を拡張するAR用途で使われるイメージですが、OTON GLASSは頭の動きに追従することで「視界上の文字情報」を「音声」に変換する福祉機器として開発されています。用途を「読字」に限定し、視覚の代わりに聴覚を用いることから、いわゆる人工視覚のように電極などを用いることなく、きわめて低い侵襲性で、当事者に対して一定の利便性をもたらすことが可能です。

Engadget 日本版からの転載。

たった10グラムで、その10倍分の野菜の栄養が摂れるパウダー「Nice n Easy」が法人向けプログラム

朝食からしっかりとした食事をとるべき、というのは分かっているけれど時間がない。結局、トースト1枚で済ませてしまう。そんな人にぴったりの商品を日本のスタートアップが提供している。

Techbookが提供する食品パウダー「NICE n EASY(ナイスンイージー)」は、野菜・果物・フルーツを粉にしたものを独自のレシピで配合したパウダー製品だ。水や牛乳などと混ぜて飲むことで、簡単に野菜などの栄養をとることができる。

現在販売されているレシピは2種類。トマトをベースに、ビーツ、人参、パオアブを加えた「Enji(エンジ)」と、ほうれん草、かぼちゃ、バナナを配合した「Moegi」だ。酸味が特徴のEnjiは水やスポーツドリンクなどと相性が良く、甘みのあるMoegiは豆乳やホットミルクと混ぜるとおいしく飲めるという。

Techbookはもともと、デジタルマーケティング分野を専門としていた企業。その同社がなぜ食品を作ることになったのだろうか。Nice n Easyのアイデアが生まれたきっかけについて、Techbook代表取締役の清水拓也氏はこう語る。「トーストやシリアルだけで済ませていた自分の朝食に課題を持っていた。母親からもらったミキサーでスムージーを作ってみたりもしたが、野菜を切ったりミキサーを洗ったりするのが面倒になり、長くは続かなかった」(清水氏)

Techbookは2017年末にクラウドファンディングサイトの「Makuake」で資金を募り、目標金額を集めることに成功した。2018年2月からは商品化も始めている。

Nice n Easyの最大の特徴は、その製造方法だという。Nice n Easyの食品パウダーはTechbookと提携する九州ベジパウダーが製造しており、その工程には「ターボドライシステム」と呼ばれる独自の技術が利用されている。これは、“加熱と粉砕”にかかる時間を通常の製粉技術よりも大幅に短縮した技術だ。これにより、野菜を乾燥させる過程で失われる栄養素を最小限に抑えることができる。そのため、10グラムのNice n Easyを食べるだけで、100グラム分の野菜の栄養素を摂ることが可能になった。

Nice n Easyは定期購入と通常購入の2種類の方法で購入することができる。より価格の安い定期購入では、30食分のパウダー入りのパックが9820円で販売されている。つまり、1食あたり327円ということになる。1本100円程度で野菜ジュースが売られていることを考えると少し高い気もするが、清水氏は「野菜ジュースのなかには甘くするために角砂糖3個分の糖分が入っている商品もある」と話す。だから野菜ジュースは飲みやすいということもあるのだけれど、それだと逆にお腹周りが心配になってしまう。

また、Nice n Easyを飲むことで、野菜をサラダにして食べるよりも効果的に栄養素を摂ることができるという。野菜は加熱することで初めて細胞膜が破壊され、中から栄養素がにじみ出てくる。だから、火を加えないサラダでは十分に野菜の栄養素を摂ることができない。一方で、Nice n Easyではパウダー化する段階で熱を加えているため、野菜に含まれた栄養素を効率的に摂ることが可能なのだという。

Nice n Easyを提供するTechbookは2月14日、企業のオフィスにNice n Easyを導入する法人向けプログラムを開始すると発表した。その導入第一号は中古住宅の流通プラットフォームなどを手がけるツクルバで、同社が運営するコワーキングスペース「co-ba shibuya」への導入が決まっている(清水氏はこのco-ba shibuyaでNice n Easyの企画・開発をしている)。

Techbookは本日より法人向けプログラムの事前登録を開始。オフィスシーンでのニーズや利用の様子を観測しながら、事前登録した法人に優先的にプランを案内していく方針だという。

Techbook代表取締役の清水拓也氏

即時買取アプリ「CASH」に査定後買取の新機能「あとでCASH」追加——より高額でアイテム現金化が可能に

即時買取アプリ「CASH」を運営するバンクは2月14日、アプリに新機能「あとでCASH」を追加し、サービスを開始した。

CASHは、ファッションアイテムやガジェットなどのブランド、カテゴリー、コンディションを選択して写真を撮るだけで査定が行われ、アイテムを発送する前に現金化できる買取アプリ。2017年6月のサービス開始以降、申し込み殺到による約2カ月のサービス停止や、2017年11月のDMM.comによる完全子会社化などで注目を集めた。

今回リリースされた機能、あとでCASHは、先にアイテムを発送し、到着後約1週間の審査期間がかかる代わりに、高額でアイテムの買い取りをしてもらえるというもの。これまで1度に最大2万円だった取引額の上限はなくなる。

バンクでは、当初はスマホなどのガジェットを対象に、あとでCASHのサービスを開始し、査定体制が整い次第、他のカテゴリーへも広く展開する、としている。

即時買取サービスでは、バンクの後を追う形でメルカリも「メルカリNOW」を2017年11月に投入した。また、スマホに限った話だが、ジラフが今年の1月にスマホ端末の即時買取サービス「スママDASH」をリリースしている(ちなみにバンクとメルカリは、いずれもジラフの株主である)。

今回のあとでCASHは、バンクが自ら作り出した「安くなっても構わないから早く現金化したい」というニーズに沿ったこれらの流れとは逆に、「時間が多少かかっても高く売りたい」ニーズに応えるサービスだ(ある意味「楽天買取」などが提供している、従来の「買取査定アプリ」としての機能がようやく付いた、とも言えるが)。バンクでは、より高額にアイテムを現金化できる機能のリリースで、メルカリと同様、双方のニーズに応えていきたい、としている。

人材紹介会社マッチングのgrooves、地銀系VCなどから1.8億円を資金調達——地方の人材不足解消を支援

有料職業紹介、つまり人材紹介を行う事業所は、日本全国で約2万カ所もある。実はそのうちの多くが、社員数名以下の中小零細規模だという。人材を探す側としては、優秀な人材を中途採用するなら、できるだけ多くの人材紹介会社と接点を持つ方が採用の成功確率は上がるが、小さな事業所1社1社と契約し、毎回募集内容を登録するのは手間がかかるため、大手エージェントに利用が流れがちだ。

groovesが運営する「Croud Agent(クラウドエージェント)」は、求人を1カ所に登録することでその手間を省きながら、複数の人材紹介会社が抱える人材とマッチングできるプラットフォームだ。

groovesは2月13日、いよぎんキャピタル、新潟ベンチャーキャピタル、北洋キャピタルが運営するファンドと、新生銀行を引受先として、総額1.8億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。groovesでは、2017年2月に実施した大分ベンチャーキャピタル、広島ベンチャーキャピタルからの資金調達を皮切りに、地方銀行系ベンチャーキャピタル(VC)も含む地域金融機関からの資金調達と提携を進めている。今回の調達により、地域金融機関(地銀系VC含む)からの出資・提携は11行・社、資金調達額は累計4.5億円となった。

groovesが「社会課題を解決する意味もある」として取り組むのは、地方の人材不足に対する支援だ。地域に根ざす金融機関は、金銭面で地域の中小企業を支えることはできるが、事業をスケールさせる人材を実際に集めることは難しい。そこでCrowd Agentを運営するgroovesが金融機関と連携することで、人材確保の面で企業の支援を行っていく考えだ。

こうした「金融機関×人材紹介」の動きを後押しする動きも背景にある。1月23日、金融庁が明らかにした「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の一部改正案では、銀行やその子会社などが、職業安定法に基づく許可を得た上で、人材紹介業務を行うことを認める内容となっている。

Crowd Agentは、人材紹介会社約500社に利用されており、そのメインは都市部のエージェントだ。しかし、都市部在住の地方出身者を紹介するケースでは、地域金融機関との連携で、実際にUターン・Iターン採用を果たした例も出ているという。groovesは「地域で、絶対数の少ない候補者の中から人材を探すのでは、思ったような人材の採用は難しい。その点でも、銀行だけではできないことをgroovesで支援していく」という。

groovesでは、地方企業が人材紹介会社を利用することの効果について「地方企業がウェブメディアに掲載されたとしても、都市部から転職しよう、とはなかなかならないもの。しかし人材紹介会社が、企業のメリットなどを細かくヒアリングして魅力を伝えることで、転職が起こりやすくなる」と説明する。「例えば、大分県に資本金1000万円未満のIoT関連スタートアップがある。普通に転職活動をしていたら、出身県だったとしても転職先候補には挙がりにくいし、気づかれない可能性がある。そうした企業でも、『大分ベンチャーキャピタルや行政からの支援も得て、IPOを目指しているんですよ』といった情報を人材紹介会社が説明することで、『それじゃあ、3年とか5年ほどそこで働いて、実績を上げてみるか』ということも起こりうる」(grooves担当者)

現在、Crowd Agentを使って求人を行う企業のうち、約25%が地方企業だそうだ。groovesは「人材紹介会社とのマッチングプラットフォームを、地方企業は高く評価してくれている」として、地域経済活性のための人材供給にさらに力を入れ、地域銀行との連携の拡大、47都道府県を網羅する全国の地域銀行との提携・開拓を目指す。