Q5Dは手作業で行われてきた電子機器製造工程の配線作業をロボットで自動化

Q5Dの提案はシンプルだ。「ロボットを使って電子機器用ワイヤーハーネスの製造工程を自動化する」こと。電子機器用ワイヤーハーネスの製造は、その全体的な複雑さゆえに、意外にもいまだに手作業で行われていることが多い。この工程は前世紀からあまり変わっていないと、同社は事あるごとに指摘する。これらを機械に任せることで、製造工程のスピードアップ(現在のような遅れの中では絶対的なプラス要因)、コスト削減、ヒューマンエラーの減少につながる。

英国ブリストルに本拠を置くこのスタートアップ企業は、Cella Energy(セラエネルギー)やCEL-UK(セルUK)に携わっていたSteve Bennington(スティーブ・ベニントン)氏とChris Elsworthy(クリス・エルスワーシー)氏が、2019年に設立した。現在はそれぞれCEOとCTOを務めている。実はこの会社は、Robox(ロボックス)ブランドを含む3Dプリンターを製造しているCEL-UKと、電子機器製造用の工作機械を製造しているM-Solv(Mソルブ)のジョイントベンチャーなのだ。

画像クレジット:Q5D

Q5Dは、ハードテックのベンチャープログラムであるHAXの卒業生であり、今回発表されたシードラウンドには、HAXを運営するSOSVも参加している。「製品の内部に配線を施すことは、製造工程の中で最も手作業が多く、うんざりする作業です。Q5Dのプロセスと製品は、先進的な製造業において自動化を完結するために必須のものです」と、HAXのパートナーであるDuncan Hunter(ダンカン・ハンター)氏は、今回の資金調達に関するリリースで述べている。

今回の270万ドル(約3億1000万円)の資金調達は、Chrysalix Venture Capital(クリサリックス・ベンチャー・キャピタル)が主導し、Rainbow Seed Fund(レインボー・シード・ファンド)も参加した。この資金は、同社の技術をさらに拡大するために使用される予定だ。現在はSafran(サフラン)やOxford Space Systems(オックスフォード・スペース・システムズ)など、主に航空宇宙分野の顧客に使用されているが、この技術は民生用電子機器や自動車、特に配線システムが内蔵された電子機器など、非常に幅広い分野で展開が可能であることを、同社は即座に強調する。

「今は大きな変化の時代です。交通機関の急速な電化や、洗濯機から携帯電話まであらゆる機器の高機能化により、配線はさらに複雑で手間のかかるものになっています」と、ベニントン氏はリリースの中で述べている。「この世界で過去80年間行われてきた配線のやり方は、変わらなければなりません」。

画像クレジット:Q5D

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中国のスマート製造業に注力するAInovationが香港でIPOを申請、李開復氏やソフトバンクも支援

中国では、人工知能に金銭を支払う顧客を見つけようとする情熱が続いている。中国のコンピュータビジョンと機械学習のスタートアップ企業で、Kai-Fu Lee(カイフ・リー、李開復)氏のSinovation Ventures(シノベーション・ベンチャーズ)とSoftBank(ソフトバンク)が出資するAInnovation(エーアイノベーション、創新奇智)は、中国の巨大な製造業を自動化しようとしている。設立からまだ4年しか経っていないこのスタートアップは、香港で株式公開の申請を行っており、その目論見書では、今後数年のうちに中国の産業お青写真で重要な位置を占めるスマートマニュファクチャリングの商業的実行可能性を垣間見ることができる。

2010年代、SenseTime(センスタイム)やMegvii(メグビー)などのコンピュータビジョン企業は、中国の公的なセキュリティのインフラに顔認証技術を提供することで、大成功を収めた。しかし、競争によって価格が下がり、監視技術をめぐる米国の制裁による圧力が強まるにつれ、中国の初期のAIスタートアップ企業は多角化を模索している。SenseTimeは教育分野に進出し、Sinovation Venturesの支援を受けるMegviiは無人倉庫保管ソリューションを事業に加えた。

関連記事:米小売大手が中国企業の防犯カメラを店舗から撤去、人権侵害を指摘される

AInnovationは、AIアプリケーションの分野では若い企業に入る。目論見書によると、IBM、SAP、Microsoft(マイクロソフト)での経験を持つCEOのXu Hui(シュー・フイ)氏が共同で設立したこのスタートアップは、2021年9月までの9カ月間に、収益の半分を製造業の顧客から得ているとのこと。同社のコンピュータビジョンモジュールとカスタマイズされたサービスは、溶融した鉄の輸送(写真)、自動車の生産ラインにおける異常の検出、半導体製造での欠陥発見などの場面で使用されている。

収益の3分の1は金融サービスによるもので、残りは小売業、通信業、その他の産業から得ている。

AInnovationのような企業は、研究室で機械学習モデルを実行する博士号取得者を雇うだけでは不十分だ。文字通り自ら身体を動かし、実際に顧客の工場を訪問して、鉄鋼メーカーや衣料品メーカーにとってどのような自動化が最も良い利益を生むのかを学ぶ必要がある。そこで同社は、主要なパートナーである大手製鉄グループのCISDIおよび国有建設会社のChina Railway No.4(中鉄四局集団有限公司)と、それぞれ2つの合弁会社を設立した。

AInnovationのコンピュータビジョン技術を用いてネジの欠陥を検出する(画像クレジット:AInnovation)

AInnovationはまだ、スマートシティの先行企業ほどの収益を上げていない。2020年の売上は4億6200万元(約83億2000万円)だったが、SenseTimeは同年に34億元(約612億円)を得た。しかし、AInnovationは急速に成長している。2021年9月までの9カ月間で、その収益は5億5300万元(約99億6000万円)に達し、2020年の合計額を上回った。

とはいえ、課題もある。1つは、同社がいくつかの重要な顧客に大きく依存していることだ。2019年と2020年に同社が5つの大口顧客から得た収益は、それぞれ約26%と31%を占めている。

中国の初期のAI参入企業が顔認識に集まったのには理由がある。そのほとんどがソフトウェア事業であるため、儲かるからだ。例えばSenseTimeの利益率は、2018年の約57%から2020年には70%以上に上昇した。

AInnovationも、かつてはソフトウェアファーストの企業だった。目論見書によると、同社の売上総利益率は、2018年には63%だったが、2019年には31%、2020年にはさらに29%まで急落している。これは、同社がソフトウェアの販売を中心としていたビジネスから、より多くのハードウェア部品を含む統合ソリューションに軸足を移したことが原因だ。ハードウェアは一般的に材料費がかさむ。また、収益性が低下したのは、顧客基盤を拡大するために「競争力のある価格で提供」したためだという。AIビジネスでは、データがその燃料となる。

どちらもまだ不採算事業である。AInnovationは、2019年に約1億6000万元(28億8000万円)、2020年に約1億4400万元(25億9000万円)の調整後純損失を計上している。これに対してSenseTimeは、同時期に10億元(約180億円)、8億7800万元(約158億円)の調整後純損失を計上している。

中国の製造業の各分野は、簡単に数十億規模の市場機会となる。問題は、AInnovationが持続的な成長と健全なビジネスモデルへの道を見つけることができるかどうかだ。

Bloomberg(ブルームバーグ)による事前の報道によると、AInnovationの株価は仮条件レンジ下限の1株あたり26.30香港ドル(約385円)で設定されているという。この価格であれば、同社は香港でのIPOによって約1億5100万ドル(約172億円)を調達することになる。

画像クレジット:AInnovation

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

クラウド録画のセーフィーと秘密計算・AI開発のEAGLYSが製造現場の生産ライン不具合検知に向けAI画像解析サービス開発

クラウド録画のセーフィーと秘密計算・AI開発のEAGLYSが製造現場の生産ライン不具合検知に向けAI画像解析サービスを共同開発

クラウド録画サービス「safie」を展開するセーフィーと秘密計算とAI開発でデータ利活用を推進するEAGLYS(イーグリス)は1月25日、製造現場の生産ラインの不具合検知のためのAI画像解析サービスの共同開発に着手したことを発表した。実証実験では24m先の異物を91%の精度で検知できた。

人材不足が深刻化する製造現場では、産業用ロボットやFA(ファクトリーオートメーション)の導入が叫ばれているが、工場設備のレイアウトなど空間的な事情からロボットの設置が難しい工場では、製造工程の異物や残留物の確認・判断は人手に頼らざるをえない状況が続いている。

そこで、セーフィーとEAGLYSは、撮影した映像データにAI解析を組み合わせることで、生産ラインの不具合や異物検知が行えるAI画像解析サービスの開発に着手した。このサービスを利用すれば、AI画像解析カメラで不具合や異物を容易に検知できるだけでなく、映像を通じた確認作業の記録や、遠隔からの管理・実行、振り返りにも活用できるという。

両社は、実際の製造工場で同サービスの実証実験を行ったところ、現状の生産設備や従業員の作業導線を変えることなく、目視では検知が困難な24m先のライン上の異物を91%の確率で検知できた。

本格実装に向けて、工程や製品に合わせた画角やAIアルゴリズムをチューニングすることで、さらに高い精度での検知が期待できるとのことだ。

ハードウェア開発をアジャイルの時代へと導くDuro

ソフトウェア開発者にとって、ハードウェア製品の開発プロセスは、1980年代のものとまったく同じであるように見えるかもしれない。最もハイテクなワークフローであっても、表計算ソフトなどのミスが起こりやすくコストのかかる手作業、混乱、そしてハードウェア開発現場のかび臭いハンダ付けされた床板から漂う生きる気力のなさがある。そんな中、Duroは400万ドル(約4億6100万円)の資金を調達し、アジャイル手法を導入して、手間がかかりすぎている世界に正気を取り戻そうとしている。

Duroの資金調達ラウンドは、B2B SaaSの投資機関であるBonfire Ventures(ボンファイア・ベンチャーズ)がリードし、ハードテクノロジーの投資機関Riot Ventures(ライオット・ベンチャーズ)が追加資金を提供した。今回の資金調達は、営業・マーケティングチームの拡大と、Duroの製品ライフサイクル管理(PLM)ソリューションのさらなる展開のために使用される。

DuroのCEOであるMichael Corr(マイケル・コー)はこのように説明する。「私は元エレクトリカルエンジニアです。20年間、IoT、ドローン、通信機器、ウェアラブル、クリーンテックなど、あらゆる製品を設計・製造してきました。私はCADファイル、部品表、サプライチェーンデータなどのハードウェア開発の最も基本的な要素の管理にどれだけの時間が費やされているかに不満を感じていました。PLM(製品ライフサイクル管理)と呼ばれる製品カテゴリーがありますが、これは、これらの情報を一元管理するための受け皿となるものです。リビジョン管理も含まれており、自社のチームで使用するだけでなく、製造委託先と共有することもできます。しかし、私が使ったどのツールも、実際に時間を節約したり、最終的に価値を提供してくれるものではありませんでした。すべての作業が手作業で、プロセス志向であるため、スプレッドシートを使ったほうが楽な場合が多かったのです。今でもこの方法が主流です。なぜなら既存のツールは非常に複雑でエラーが発生しやすく、実際には価値がないからです」。

このような現状に個人的に疑問を感じた共同創業者のマイケル・コーとKellan O’Connor(ケラン・オコナー)は、すべての製品データを一元化し、異なるチームやツールを接続する際の摩擦をなくすためのクラウドプラットフォーム「Duro」を開発した。目標は透明性であり、製品チーム、エンジニアチーム、サプライヤーや製造チームの誰もが、常に最も正確で最新のデータにアクセスできるようにすることだ。

コーはDuroが進出している市場の状況を説明した。「少し単純化していうと、ハードウェア業界は二極化の文化に支配されています。80年代、90年代に入社して現在のツールセットを確立した上の世代がいます。その一方でギャップがあり、若いエンジニアは、ウェブやモバイル、アプリの開発が流行っていたため、それらの学習に興味を持っていました。若いエンジニアが続けてハードウェア分野に参入することはなかったのです。しかし、今は彼らが戻ってきています。ハードウェアは魅力的な製品であることが証明されたのです。IoTが実現して、ハードウェアの開発コストが劇的に下がりました。現在、若い世代のエンジニアが続々と社会に出てきています。Duroが狙っているのは、彼らです。彼らはソフトウェア開発の文化に慣れていますし、使用するソフトウェアに対する基準も違います」。

言い換えれば、SaaS、GitHub、DevOpsのプロセスがソフトウェアの継続的な提供方法を完全に変えたのと同じような仕組みで、Duroはハードウェアに関わる人々をミレニアムの時代に招待しようとしている。

「GitHubは、それが可能であることを証明するすばらしい仕事をしてくれました。GitHubはクラウド上の単一のソースでソースコード管理を行い、それを中心にツールや人々、タスクといったエコシステムを構築することができるのです。そして、誰もがGitHubに注目しています。従来のハードウェア業界はこれとは異なっていました。電気工学、機械工学、調達、製造など、複数のチームがそれぞれの役割を担っていました。一元化するという概念がなかったため、全員がそれぞれのデータを持っているのです。例えば、全員が別々の部品表を持っていると、問題が発生します。すべてのコミュニケーションチャネルを管理し、全員が確実に最新のデータのコピーを持っているようにするための諸経費が必要になります」とコーは説明した。

ボンファイア・ベンチャーズのJim Andelman(ジム・アンデルマン)は「古い企業が支配する大きな市場に新鮮なソリューションを提供するDuroと提携できたことを非常にうれしく思っています。Duroのようなスタートアップ企業がまったく新しいユーザーにとっての参入障壁を下げることで、新たな市場の大部分を獲得することができます。Duroのプラットフォームに対する顧客の親和性は非常に高く、エンジニアリング志向の企業にとってPLMソリューションとして選ばれていることは明らかです」と述べている。

Duroは製品だけでなく、SaaSを参考にしたビジネスモデルの革新にも取り組んでいる。

「これまでのハードウェアのためのソフトウェア販売には、多くの摩擦がありました。ユーザーライセンスのビジネスモデルによる非常に高価なアプリケーションで、試用版が用意されていることはほとんどなく、使いたければお金を払って、手に入れたものをただ受け入れるしかありません。そこでDuroは、そこにもちょっとした工夫を凝らしています。Duroには3つのサブスクリプションパッケージを用意しています。スターターパッケージは、スプレッドシートを使わずに、適切に管理されたデータ、集中管理された環境を求めている企業向けです。Pro版は、他の製品で必要とされる複雑な構成や設定をすることなく、入手後すぐに使えます。Pro版は、最初の生産を行う段階で、サプライヤーとの間で適切なリビジョン管理を行いたいと考えているチーム向けに設計されています。大企業向けパッケージは、これらの下位2つの層を超えて成長したチームや、より確立していて既存のワークフローを持っているチームのためのより拡張的なパッケージです」とコーは説明する。

スターターパッケージは月額450ドル(約5万1000円)、年額5,400ドル(約62万円)。Proパッケージは、月額750ドル(約8万6000円)、年間約9,000ドル(約103万円)となっている。大企業向けパッケージは、顧客のニーズに応じた柔軟な価格設定となっている。Duroのチームは、ソフトウェアの構成に応じて、2万5,000ドル(約288万円)から10万ドル(約1153万円)の契約を結んでいると話した。

Riot Venturesの共同設立者であり、ゼネラルパートナーであるWill Coffield(ウィル・コフィールド)は「フルスタックビジネスへの投資を行ってきた経験から、データの継続性に関する問題は、ハードウェアの製造においても同じであり、業界に大きな影響を与えることがわかっています。ハードウェアの設計・開発を現代化するために、手動のプロセスを自動化し、チームと情報を結びつけて知的で効率的なコラボレーションを実現するDuroのアプローチは大変好ましいと思います」と述べている。

画像クレジット:Duro

原文へ

(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

三菱総研DCSと創業100年の鋳造メーカー中島合金、純銅鋳造製造工程における熟練技能者の暗黙知をAIに代替させる実証実験

三菱総研DCSと創業100年の鋳造メーカー中島合金、純銅鋳造製造工程における熟練技能者の暗黙知をAIに代替させる実証実験

三菱総研DCSは12月13日、純銅鋳物を得意とする鋳造メーカー中島合金とともに、純銅鋳造製造工程における、熟練者の暗黙知を学習させたAIの実業務への適用可否を検証する実証実験を開始すると発表した。

純銅鋳物はCAC100番台のJIS規格が定められており、品質を一定水準に揃える必要がある。一方、その製造工程には原材料の状態や環境条件など制御しきれない要素が存在しており、これら製造条件のばらつきが純銅鋳造の難しさの一因となっている。

中島合金は、製造工程の途中段階でばらつき具合を測定し、その値に応じて調整用添加剤を適切量投入することで製品の最終品質を均一化する熟練の技能を持つものの、同技能を若手が継承するには長い時間がかかるという課題があるという。

そこで、中島合金と三菱総研DCSがこの課題解決に着手したところ、AI技術を活用して「製造時のばらつき状態」と「添加剤の投入量」の関係を学習することで、熟練者の判断を再現できることが確認できたという。同実証実験では、このAIの判定精度向上に加えて、予測時間が実用に足るか、また製造の現場技術者が利用するシステムとして操作性に問題はないかなど、システム全体としての業務適用可否を検証する。

三菱総研DCSと創業100年の鋳造メーカー中島合金、純銅鋳造製造工程における熟練技能者の暗黙知をAIに代替させる実証実験

また三菱総研DCSは、「難しいAI操作を難しく感じさせない」を製品コンセプトに開発しているという。多くのデータ分析ソフトウェアが統計学や機械学習の深い知識を前提としており、製造の現場技術者が使うには操作の習得に時間がかかるなど導入のハードルが高いのが実情となっている。そこで、AIのオートチューニングアルゴリズムとUXデザインを駆使し、データサイエンスの知識がない現場技術者でも高いハードルを感じずに利用可能なデータ分析ツールとして開発しているそうだ。

期待される効果

  • 熟練技能継承の実現:若手へ継承させることが難しい「調整具合の判断」を熟練者の頭脳から抽出し、若手でも活用可能なノウハウ資産へと昇華させる
  • 熟練者活躍の場の拡大:熟練者が調整作業から解放されることで、別の製造作業の標準化などより難度の高い業務に集中することが可能になる
  • 製造業の事業継続への貢献:熟練者が持つ技能は、中小製造企業が他社との差別化を生む重要なノウハウであり、競争力の源泉となっている。このノウハウを絶やすことなく次世代に引き継いでいくことは、製造企業にとって事業継続性の観点からも重要な課題といえる

中島合金は、2020年に創業100年を迎えた鋳造メーカー。合金鋳物・アルミニウム合金鋳物に加え、鋳造に高度な技術が必要とされる純銅鋳物を得意としている。同社100年の技術・知見と、大学・研究所との連携による最善の提案を特徴とするという。

三菱総研DCSは、銀行・クレジットカードなど金融関連業務で豊富な実績を有するほか、千葉情報センターを核としたトータルITソリューションを展開。「すべての製造企業にデータ分析のチカラを!」をビジョンに掲げ、近年はAI、RPA、データ分析、ロボティクスなどの新技術も取り入れ、顧客の業務革新やデジタル化を支援している。

画像クレジット:Francisco Fernandes on Unsplash

元SpaceXエンジニアたちのFirst Resonanceは製造OSをハードウェアメーカーに提供

First Resonance(ファースト・レゾナンス)は、ハードウェア製造のためのソフトウェアを作っている企業だ。同社のIon(イオン)プラットフォームは、製造ライン、サプライチェーン、エンジニアリング、デザインなどを管理しなければならない人々に、オールインワンの選択手段を提供する。今回、新たに1400万ドル(約15億9000万円)の資金を調達したことで、同社はその営業力を拡大し、世界のハードウェアメーカーに全面攻勢を仕かけることを目指している。

First Resonanceは、元SpaceX(スペースX)のエンジニアたちによって設立された。彼らは、SpaceXで開発に携わったプロセスが、ドローンや玩具、そして……他のロケットを作っている人々の役に立つと感じたからだ。

2020年夏に我々が初めて取材したとき、同社はまだ始まったばかりだった。今では勢いのある会社となり、より多くの大規模な顧客をターゲットとしながら、その勢いを維持したいと考えている。

「2020年、First Resonanceは最初の顧客を獲得したばかりでした。その年は、メーカーやハードウェアを製造している人たちが、自宅で仕事をしている人たちと工場をつなぐ手段や、複数の種類の工場をつなぐ手段を必要としていた時期でした。ちょうど私たちがこの会社で作っている製品が、それにぴったりはまったのです」と、共同創業者兼CEOのKaran Talati(カラン・タラティ)氏は語る。

2020年末には15社の顧客を獲得し、現在はその2倍の顧客に利用されているIonプラットフォームは、本格的にハードウェアを製造している人々にとって、価値があることを示している。その顧客には、電動垂直離着陸機をてがけるJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)、自動操縦貨物飛行機運行を目指すReliable Robotics(リライアブル・ロボティクス)、小型静止通信衛星企業のAstranis(アストラニス)などがいる。

「このような洗練された製品の製造方法を管理するだけでなく、部分組み立ての複雑さやそれにともなう高度な複数段階におよぶBOM(部品構成表)を管理することの複雑さ。【略】Ionが行っているのは、これらの企業がその複雑さを定義し、理解して、設計や製造プロセスを迅速かつ反復的に調整できるような粒度で支援することです」と、タラティ氏は述べている。

画像クレジット:First Resonance

その鍵となるのが、部品やプロセスの自動化された強力なトラッキングだ。同社のチームは、かつてSpaceXでロケットの再利用可能性に取り組んでいた際に、これを得意とした。

「SpaceXが他の企業と比べて決定的に違う点は、所定のロケットにどのシリアルナンバー、どのロットナンバーが付いているかを徹底的に把握していることです。どの部品が特定の条件にあてはまるか、あるいはエラーが出る可能性が高いかということが、わかっているのです」と、タラティ氏は説明する。「これこそが、私たちの顧客が直面している課題なのです。自動車メーカーは、すべての車両をリコールする必要があるため、何十億ドル(数千億円)もの費用がかかります。しかし、Tesla(テスラ)は最近、わずか3000台のModel Y(モデルY)をリコールしました。それはテスラが、そのレベルの粒度を持っているからです」。

初期の顧客は、この機能が非常に価値のあるものであることを理解し、より多くの要望を寄せている。部品の購入から納品、取り付け、サービスまでをトラッキングすることで、テスラのようなコスト削減の機会が生まれるだけでなく、洞察を掘り出すことができるデータベースも構築できる。

企業はずっと以前からこのような管理を行ってきたが、一般的には、レガシーなものから最先端のものまで、互いに連携していない5〜6種類のシステムを使用している。例えば、デザイン作業はライブのARコラボレーションセッションで行われ、クラウドに保存されて、最新の生産性スイートを介して配信されるが、それが工場や部品のワークフローに行くと、90年代から進化しておらず、そこですべてが滞ってしまう。それは決して優れた仕組みとは言えず、新型コロナウイルスが流行した2020年と2021年のプレッシャーによって、限界を超えてしまった企業もあるだろう。

「一般的なトラッキングツール、電子メールのテンプレート、スプレッドシート、断絶されたプロセスなどで乱雑な状態です。このような長く使っていた古いシステムから離れ、デジタルトランスフォーメーションを検討している顧客がますます増えています」と、タラティ氏は語る。

共同設立者でCOOのNeal Sarraf(ニール・サラフ)氏(左)とCEOのKaran Talati(カラン・タラティ)氏(右)(画像クレジット:First Resonance)

自社で新しいスタックを構築できるような大規模で資金力のある企業でさえ、Ionを利用することを選択していると、タラティ氏はいう。これは、1年と数千万ドル(数十億円)をかけて独自のスタックを設計するのではなく、市場で通用するプロセスの追加を選択して成功した他の企業を見習うためだという。

今回の1400万ドルを調達したシリーズAラウンドは、Craft Ventures(クラフト・ベンチャーズ)が主導し、Blue Bear Capital(ブルー・ベア・キャピタル)、Fika Ventures(フィカ・ベンチャーズ)、Stage VP(ステージVP)、Wavemaker(ウェーブ・メーカー)が参加した。この資金は、会社の規模拡大と改善、特に「市場参入チーム」の強化に充てられる予定だ。しかし、その製品も進化している。開発チームは、変化があったときに数秒で実行可能な洞察が得られるようにするため、より多くのデータソースをインテリジェンスストリームに統合することに取り組んでいる。また、SDKを拡張して、より多くの工場やハードウェアの種類に対応することも視野に入れている。

「当社の顧客は、柔軟でデータ駆動型のアプローチを非常に重視しており、Ionはまさにその要求に適っているのです」と、タラティ氏は述べている。

画像クレジット:Teera Konakan / Getty Images

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

AIオンデマンド製造ロボットで設計反復の迅速化、Machina Labsが累計約18.6億円を調達し脱ステルス

77社130工場が利用する製造業専門の現場向け工程管理SaaS「ものレボ」を手がけるものレボが1.8億円調達

ロボットとAIを活用した製造プラットフォームを提供するMachina Labsは米国時間11月17日、1400万ドル(約16億円)のシリーズAを調達したと発表した。このラウンドは、Innovation Endeavorsがリードし、Congruent VenturesとEmbark Venturesが参加したもので、ロサンゼルスにある同社の累計資金調達額は1630万ドル(約18億6000万円)となった。

今回の資金調達により、同社は、NASAおよび米国空軍とのパイロット契約に続き、事実上ステルス状態を脱したことになる。ロボットプラットフォームの初期段階では、政府(特に国防総省)との契約が重要な役割を果たしてきたが、Machina Labsもその点では特別な存在ではない。

しかし、新たなラウンドで同社はさらなる成長を目指し、商業パートナーの受け入れを開始している。パンデミックの影響でグローバルサプライチェーンの多くがきしるように停止している中、米国内の製造業がさらに苦境に立たされていることを考えると、確かにタイミングは良いと言える。

画像クレジット:Machina Labs

Machinaの最初の取り組みは、シートメタル加工を中心としたもので、戦車の部品を設計したり、NASAの宇宙空間での製造の可能性を探ったりしているが、後者の部分は、明らかな理由からまだ先の話だ。現在、同社は地元ロサンゼルスの工場で、オンデマンドのMaaS(Manufacturing as a Service)を提供している。

共同設立者兼CEOのEdward Mehr(エドワード・メア)氏は声明の中で、次のように述べた。「この競争の激しい市場の変化のスピードに対応するためには、製造業を改革しなければなりません。当社のプラットフォームは、最新のロボット工学と人工知能(AI)を組み合わせたもので、優れたアイデアを持つ誰もが、迅速に、効率的に、低コストで部品を製造できるよう、ラピッドマニュファクチャリングへのアクセスを民主化します。このようなソフトウェアで定義されたロボット設備は未来の工場であり、その実現に向けて投資家のみなさまにご協力いただけることを大変うれしく思います」。

今回の新たな資金調達は、ロサンゼルスでの人員増強と、プラットフォームのさらなる研究開発に充てられる。

画像クレジット:Machina Labs

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

需要に対する工場の対応力向上のため金属加工の製造サプライチェーン見直すFractory

新型コロナウイルスのパンデミックで甚大な被害を受けた製造業界。しかし最近、その活気を取り戻す兆しがいくつか見えてきた。その1つは、変動する経済やウイルスの感染拡大など不安定な要素によって需要が上下するなか、需要に対する工場の対応力を高めるべく、新たに取り組みが進められている点だ。柔軟なカスタム製造で新たに頭角を現しつつあるスタートアップ企業のFractory(フラクトリー)は、2021年9月初旬、シリーズAで900万ドル(約9億8900万円)の資金調達をしたことを発表し、その傾向を改めて際立たせる結果となった。

この資金調達は、初期成長やポストプロダクション、ハイテクのスタートアップなどに注力する欧州の投資会社、OTB Ventures(OTBベンチャーズ)主導で進められた他、既存の投資会社であるTrind Ventures(トリンド・ベンチャーズ)Superhero Capital(スーパーヒーロー・キャピタル)United Angels VC(ユナイテッド・エンジェルズVC)Startup Wise Guys(スタートアップ・ワイズ・ガイズ)、そしてVerve Ventures(ヴェルヴェ・ベンチャーズ)もこの調達に参加した。

Fractoryはエストニアで設立され、現在は英国・マンチェスターを拠点とする会社だ。従来、国内の製造業向けの強力なハブとして存在し、顧客と緊密な協力体制を築いてきた。そのFractoryが、カスタムの金属加工品を必要とする顧客がより簡単にアップロードや発注ができるよう、そして工場側もそれらのリクエストに応じて新規の顧客や仕事を獲得できるように、プラットフォームを構築したのだ。

FractoryのシリーズAは、当社のテクノロジーを引き続き展開し、さらに多くのパートナーをエコシステムに取り込む目的で用いられる。

現在までに、Fractoryは2万4000人もの顧客を獲得し、何百もの製造業者や金属関連会社と連携してきた。合計すると、250万個以上もの金属部品の製造を支援してきたことになる。

ここで整理しておくと、Fractory自体は製造業者ではなく、同社にはそのプロセスに参入する計画もない。業種はエンタープライズ向けソフトウェアであり、製造(現在は金属加工)を担当できる会社向けにマーケットプレイスを提供し、金属加工品を必要とする会社とやり取りしている。インテリジェントなツールを活用して必要な加工品を特定し、該当の加工品を製造できる専門の製造業者にその潜在的な仕事を紹介するというわけだ。

Fractoryが解決しようとしている課題は、多くの業界のそれと同じである。さまざまな供給や需要が発生し、変動が多く、一般的に仕事の調達方法が非効率なケースだ。

Fractoryの創設者兼CEOのMartin Vares(マーティン・ヴァレス)氏は、筆者に対し、金属部品を必要とする企業は1つの工場を得意客にする傾向があるようだと話す。だが、これはつまり、その工場が仕事に対応できない場合は企業が自力で他の工場を探さないといけないということだ。時間がかかるうえ、費用も重なるプロセスとなる。

「製造業は非常に断片化した市場で、製品の製造方法も幅広くあるため、その2つの要素が複雑に絡まり合っているんです」ヴァレス氏は続ける。「昔は、何かをアウトソーシングするには何通ものメールを複数の工場に送る必要がありました。とはいえ、30社ものサプライヤーに個別に送ることは到底できません。そこで、ワンストップのショップを立ち上げたのです」。

一方で、工場はダウンタイムを最小化するため、仕事の工程を改善できないか常に模索している。工場としては、仕事がない時間帯に作業員を雇ったり、稼働していない機械のコストを払ったりする事態を避けたいのだ。

「アップタイムの平均キャパシティは50%ですね」とヴァレス氏は、Fractoryのプラットフォームにおける金属加工施設(さらには業界全般の施設)についてこのように述べている。「使用中の機械よりも、待機中の機械の方がずっと多いんです。そこで、余剰キャパシティの問題を何としても解決し、市場の機能性を高めて無駄を削減したいと考えています。工場の効率性を高めること、これが持続可能性にもつながるのです」。

Fractoryのアプローチは、顧客をプロセスに取り込むスタイルだ。現在、これらの顧客は一般的に建築業界をはじめ、造船、航空宇宙、自動車といった重機産業に多く存在し、これらの顧客に、必要な製品を規定したCADファイルをアップロードしてもらっている。これらのファイルは製造業者が集まるネットワークに送信され、そこで仕事の入札と引き受けが行われる。フリーランス向けマーケットプレイスの製造業版といったようなものだ。その後、これらの仕事のうちおよそ30%は完全に自動で進められ、残りの70%については、仕事の見積書や製造過程、配達などのアプローチに関してFractoryが関与する形で顧客にアドバイスを行っている。ヴァレス氏によると、今後はさらにテクノロジーを搭載し、自動化できる割合を増やしていくとのことだ。RPAへの投資を拡大するだけでなく、顧客の希望や最適な実行方法をより良く把握するためのコンピュータビジョンについても投資を拡大する。

現在、Fractoryのプラットフォームは、CNC加工などの仕事を含め、レーザー切断サービスや金属の曲げ加工のサービスについて発注の支援を行っている。次の目標は、産業向けの3D印刷に対応することだ。石細工やチップ製造など、他の素材についても検討を進める。

「製造業は、ある意味では最新化がいつまでたっても進まない業界ですが、それも驚くことではありません。設備が重く、コストも高いため「壊れるまで修理はするな(触らぬ神に祟りなし)」というモットーは通常この業界では通用しないからです。そのため、せめて従来からある設備をより効率的に運用しようと、よりインテリジェントなソフトウェアを構築している企業が、ある程度基盤を固めることができているのです。米国で生まれた大手企業のXometry(ゾメトリー)は、同じくカスタム部品を必要とする企業と製造業者の架け橋を築いた企業ですが、そのXometryは2021年初めに株式を公開し、今では時価総額が30億ドル(約3,292億円)以上にのぼっています。他にも、Hubs(ハブズ)(現在はProtolabsによって買収)やQimtek(キムテック)などが競合として存在します」。

Fractoryが売り込んでいるセールスポイントは、一般的に顧客の地域に根差した製造業者を重視することで、仕事における流通の側面を低減させ、炭素排出量を抑えられるよう取り組んでいる点だ。ただし、会社の成長に応じて当社がこのコミットメントに遵守しつづけるのかどうか、そうであればどのようにそれを実現するのかは今後に注目だ。

現在のところ、投資会社はFractoryのアプローチとその急速な成長を証拠に、これからも業界に影響を及ぼすだろうと見込んでいる。

「Fractoryは、他の製造環境では見られないエンタープライズ向けのソフトウェアプラットフォームを生み出しました。急速に顧客を獲得している事実から、Fractoryが製造サプライチェーンにもたらす価値は明らかに実証されています。これは、イノベーション対応できるエコシステムを自動化し、デジタル化するテクノロジーです」Marcin Hejka(マルチン・ヘイカ)氏は声明でこのように述べている。「私たちはすばらしい製品と才能あふれるソフトウェアエンジニアのみなさんに投資しました。彼らは、製品開発に全力を注ぎ、圧倒的なスピードで国際的に成長しつづけています」。

画像クレジット:Fractory

原文へ

(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

77社130工場が利用する製造業専門の現場向け工程管理SaaS「ものレボ」を手がけるものレボが1.8億円調達

77社130工場が利用する製造業専門の現場向け工程管理SaaS「ものレボ」を手がけるものレボが1.8億円調達

工場DXのための現場向け工程管理SaaS「ものレボ」を提供するものレボは10月5日、第三者割当増資による総額1億8000万円の資金調達を発表した。引受先はALL STAR SAAS FUND、京銀未来ファンドなど。

調達した資金は、製造業のサプライチェーンのデジタル化を推進すべく、ものレボの開発・販売、ものレボと連携する「サプライチェーンプラットフォーム」の事業化のための人材獲得にあてる。77社130工場が利用する製造業専門の現場向け工程管理SaaS「ものレボ」を手がけるものレボが1.8億円調達77社130工場が利用する製造業専門の現場向け工程管理SaaS「ものレボ」を手がけるものレボが1.8億円調達

サプライチェーンプラットフォームとは、ものレボを活用し製造現場のデジタル管理を実現できた顧客と、少量多品種・短納期の調達ニーズを持つ企業のマッチングを図る仕組み。

現在ものレボは、2019年1月より国内外の77社130工場(2021年8月31日時点)の製造現場において利用されているという。77社130工場が利用する製造業専門の現場向け工程管理SaaS「ものレボ」を手がけるものレボが1.8億円調達

多くの中小製造業は大手の系列からの下請けの仕事が多く、系列トップの業績に左右されやすく、安定した経営のための系列以外からも受注できるようにすることが課題となっている。同プラットフォームで受注することができれば、系列からの脱却、工場の稼働率アップと売上拡大が期待できるとしている。また発注側は、効率的に試作部品や治工具を調達することで事業のスピードが向上するという。77社130工場が利用する製造業専門の現場向け工程管理SaaS「ものレボ」を手がけるものレボが1.8億円調達

消費者やニーズの多様化により、従来の大量生産大量消費ではなく少量多品種・短納期の要求が高まってきており、同社はこの要求にいち早く応えるためサプライチェーンプラットフォームを形成し、様々なニーズに応える体制づくりをサポートする。

製造業の受発注プラットフォーム「CADDi」が80.3億円調達、2030年までに1兆円規模のグローバルプラットフォーム目指す

製造業の受発注プラットフォーム「CADDi」が80.3億円調達、2030年までに1兆円規模のグローバルプラットフォーム目指す

製造業の受発注プラットフォーム「CADDi」(キャディ)を手がけるキャディは8月24日、シリーズBラウンドにおいて、総額80億3000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、既存投資家のグロービス・キャピタル・パートナーズ、WiL、DCM Ventures、グローバル・ブレイン、また新規投資家の海外投資家DST Globalのパートナー陣、Arena Holdings、Minerva Growth Partners、Tybourne Capital Managementなど。今回の増資により、累計調達額は99.3億円となった。また、今回の調達に合わせて三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行から25億円の追加融資枠も確保した。2021年冬には、製造業系の企業を対象にしたエクステンションラウンドも予定しているという。

調達した資金は、グローバルも含めた人材採用やCADDiの開発、そして新規事業に投資する予定。これにより、受発注にとどまらず、設計から製造・物流・販売までのバリューチェーン全体のDXを加速し、製造業のデジタル化におけるデファクト・スタンダードを構築することで、2030年までに1兆円規模のグローバルプラットフォームになることを目指す。

CADDiは、「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに、多重下請けピラミッド構造から「強み」をベースにフラットにつながる構造へと変革する、製造業の受発注プラットフォーム。装置メーカーの利用企業は全国約1600社(2021年5月現在)、提携加工会社は600社以上。

産業機械装置メーカーやプラントメーカーを対象とし、板金・切削・製缶などの特注部品で構成される装置・プラント一式の一貫生産を担う。独自開発の原価計算アルゴリズムに則った自動見積もりシステムにより、品質・納期・価格が最も適合する加工会社の選定を可能とするという。従来2週間以上かかっていた相見積もりの負担や複数サプライヤーの管理工数を削減できるうえ、低価格かつ高品質な加工品の安定発注を行えるとしている。

製造現場にプログラムの知識不要で導入できる柔軟なRapid Roboticsのロボットシステム

Rapid Robotics(ラピッド・ロボティクス)が、シリーズAラウンドで1200万ドル(約13億2000万円)の資金を調達したと発表したのは、2021年4月のことだった。それから4カ月後、ベイエリアを拠点とするこのロボット製造企業は、Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)とTiger Global(タイガー・グローバル)が主導するシリーズBラウンドで、3670万ドル(約40億3000万円)の資金調達を実施した。このラウンドには、既存投資家のNEA、Greycroft(グレイクロフト)、Bee Partners(ビー・パートナーズ)、468 Capital(468キャピタル)も参加し、同社の資金調達総額は5420万ドル(約59億6000万円)に達した。

今回の資金調達により、同社の評価額は1億9250万ドルとなった。2020年にシード資金調達を行った会社としては驚異的な数字だ。今回のシリーズBラウンドは、Rapidにとって1年以内に3回目(!)の資金調達となるが、その背景には、無限に続くかのように思われる世界的なウイルスの大流行によって煽られた、ロボットや自動化に対する関心の高まりがあることは疑う余地がない。

関連記事:新しいコンセプトのロボティクスに挑むRapid Roboticsが13.2億円調達

企業が「ノンエッセンシャル(必須ではない)」な労働者の代わりになるものを探していることから、これらの技術への投資は加速する一方だ。新型コロナウイルス感染拡大期間中には、製造業のボトルネックもまた、柔軟でグローバルな生産体制の必要性を浮き彫りにした。

Rapidの価値提案は、プログラミングなどのロボット工学の知識がなくても、数時間で製造現場に導入できるRapid Machine Operator(RMO)ロボットだ。このシステムは、RaaS(Robotics as a Service「サービスとしてのロボット」)モデルとして提供されており、年間2万5000ドル(約275万円)で利用できる。このシステムには柔軟性があり、さまざまなタスクを割り当てることが可能であることも、専用のシステムを導入できない企業にとってはありがたい機能だ。

「半導体が不足しているという話はよく聞きますが、それは氷山の一角にすぎません。下請け製造業者の現場では、ガスケット、バイアル、ラベルなど、あらゆるものの製造が滞ってしまっているのです」と、RapidのJordan Kretchmer(ジョーダン・クレッチマー)CEOは、今回のニュースに関連したリリースで述べている。「U字型の黒いプラスチック部品1つが製造できなくなったために、自動車の生産ライン全体が停止してしまったケースを、私は見たことがあります」。

自動車業界はRapidが狙っている市場の1つだが、例えばベイエリアに拠点を置く健康関連企業のTruePill(トゥルーピル)という会社では、処方薬びんの充填とラベル貼りに同社のシステムを採用しているという。

関連記事
物流ロボットのサブスクを展開する「+A」がZOZO大型物流拠点に商品仕分けロボットシステム280台を提供
分身ロボット「OriHime」開発者が「テレワークで肉体労働」に挑戦したワケ
テスラはロボット「Tesla Bot」を開発中、2022年完成予定
あまり見ることがないBoston Dynamics人型ロボAtlasのずっこけNGシーン、失敗が成功を生む
画像クレジット:Rapid Robotics

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

製造業・建設業・設備管理業など現場特化SaaS「SynQ」を手がける福岡発のクアンドが1.2億円を調達

製造業・建設業・設備管理業など現場特化SaaS「SynQ」を手がける福岡発のクアンドが1.2億円を調達

製造業・建設業・設備管理業などにおいて、遠隔地にいる管理者と現場担当者をつなぐビデオ通話ツール「SynQ Remote」(シンクリモート)を提供するクアンド(QUANDO)は8月2日、第三者割当増資による総額1億2000万円の資金調達を発表した。引受先は、ALL STAR SAAS FUND、UB Ventures、ドーガン・ベータ、F Venturesおよび個人投資家。今回の資金調達が外部投資家からの初回エクイティファイナンスという。調達した資金は、採用活動およびSynQ Remoteの新規機能開発や販路拡大、「SynQ」シリーズにおける新プロダクトの開発にあてる予定。

2017年4月設立のクアンドは、「地域産業・レガシー産業のアップデート」をミッションに掲げ、現場向け情報共有プラットフォーム「SynQ」(シンク)を提供する福岡発スタートアップ。

これまで同社は、原子力発電所向けバルブ製造メーカーとクラウドメンテナンスシステムの共同開発や、鋼材機器メーカーと遠隔制御AIシステムの事業化など、レガシーな産業の現場のDXを手がけており、SynQはその経験を通して感じた「現場特有のコミュニケーションや情報共有の課題」に対するソリューションという。第1弾として、現場仕事に特化した遠隔支援ビデオ通話アプリ「SynQ Remote」をリリースしており、建設業・製造業・メンテナンス業・行政など累計67社・584アカウント(2021年7月31日時点)が利用しているそうだ。

SynQ Remoteは、ビデオ通話機能をはじめ、音声テキスト化機能も採用。現場仕事の多くは、騒音環境下にあることが多く、音声だけでの会話では現場側では「聞こえない」といった状況が発生しやすい。このため、テキストで相手に指示できるようにしているという。

また、現場で図面を見ながら会話できるようにする「画面共有」機能、対象物を指さしながらコミュニケーションをするような現場型のコミュニケーションを実現する「ポインター」機能、撮影した写真に直接・絵を書いて相手に指示を送れる手書きメモ機能を採用。遠方にいる人が任意のタイミングで写真を撮影できる「遠隔撮影」も搭載している。

遠隔にいるベテラン技術者が現場の新人作業者に指示している場面。ポインタ機能を使うことで口頭では伝わりづらい作業手順を遠隔から指導でき、限られたベテラン技術者の労働力をレバレッジ

遠隔にいるベテラン技術者が現場の新人作業者に指示している場面。ポインター機能を使うことで口頭では伝わりづらい作業手順を遠隔から指導でき、限られたベテラン技術者の労働力をレバレッジできるという

関連記事
「はやい、やすい、巧い」エッジAIのフツパーと高速なアノテーションを提供するFastLabelが協業し国内産業のAI化推進
建ロボテックが鉄筋結束作業を行う「全自動鉄筋結束トモロボ」を開発、年内量産開始を目指す
現場と社内をつなぐビジネスチャット「direct」など手がけるL is Bが12.3億円資金調達
デスクレスワーカー向け現場の改善提案クラウド「Cayzen」を手がけるエイトスが6000万円調達
電気設備工事での電力計確認を効率化、SPIDERPLUSときんでんがOCR連携機能実験
ノンデスクワーカーの現場から紙をなくす「カミナシ」が約11億円を調達
クラウド型建設プロジェクト管理サービスのANDPADがセコイア・チャイナなどから20億円調達
クラウド監視カメラ開発のセーフィーからLTE対応の最新ウェアラブルカメラが登場

カテゴリー:ネットサービス
タグ:建設 / 建築(用語)クアンド(企業)製造業(用語)デスクレスワーク(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

無重力状態が続く「地球外」工場実現を目指すVarda Space Industries

Varda Space Industries(バルダ・スペース・インダストリーズ)は、シリーズAで4200万ドル(約46億2000万円)を調達し、微小重力という地球の外でしか得られない重要な特性をモノづくりに導入する。

創業8カ月のこのスタートアップは、早ければ2023年に最初の製造施設を宇宙空間に建設する。無重力状態が続く環境下でのみ可能な高度な製品を製造し、地球に持ち帰ることを目指している。

今回のラウンドはKhosla VenturesとCaffeinated Capitalがリードし、既存の投資家からLux Capital、General Catalyst、Founders Fundが参加した。2020年12月に行われた900万ドル(約9億9000万円)のシードラウンドを含め、同社のこれまでの累計調達額は5000万ドル(約55億円)を超えた。

Vardaの構想は、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏のそれとは異なる。ベゾス氏は2021年7月初め、自ら宇宙に行った後「すべての重工業および地球を汚染する産業を地球の外へ移したい」と語った。Vardaの共同創業者である元SpaceXのWill Bruey(ウィル・ブリュイ)氏とFounders FundのプリンシパルであるDelian Asparouhov(デリアン・アスパロホフ)氏は、軌道上にセメントミキサーや製鉄所を置こうとは考えていない。むしろ、地上では不可能な製造プロセスを開拓し、バイオプリントした臓器、光ファイバーケーブル、医薬品など、地上とは根本的に異なる条件を必要とする製品を製造したいと考えている。

関連記事:Blue Origin初の有人飛行成功、ベゾス氏ら4人が宇宙を体験

未来の宇宙工場を建設

ブリュイ氏とアスパロホフ氏によると、微小重力環境下での製造の価値は、本質的には科学の前哨基地である、国際宇宙ステーションに見出すことができるという。ここ数十年、国際宇宙ステーションから、宇宙で新しい素材や製品が可能であることを示す研究が次々と発表されている。だがこれまでは、軌道上に行き、滞在し、帰還することにコストがかかりすぎ、研究成果の規模を大きくすることができなかった。

ブリュイ氏はTechCrunchの取材に対し「ある意味では、私たちの研究開発の多くはすでに公的機関で行われています。私たちは本質的に、すでに実証された研究を商業化する橋渡しの役割を担っているのです」と語った。

現在、同社は3つのモジュールからなる宇宙船を製造している。既製の衛星プラットフォーム、微小重力下での製造を行うセンタープラットフォーム、材料を地球に持ち帰るための再突入ビークルというモジュールだ。ブリュイ氏によると、最初の10回程度の打ち上げでは、Vardaが自ら製品を製造するという。また、長期的には、宇宙で製品と製造したいと考えている他の企業のための受託製造プラットフォームを目標としている。

アスパロホフ氏は、これをiPhoneとApp Storeに例える。「iPhoneは、App Storeと一緒に登場したわけではありません。Apple(アップル)はその価値を共有するために、最初に10~11個のアプリを開発しました。そこで私たちは、最初の数個のアプリを自分たちで開発し、私たちが市場に持ち込むこの商業的能力の価値を示そうと思いますが、やがてはアプリストアをリリースするようになるでしょう」。

Vardaの計画で重要なのは、製造のすべてを自動化することだ。(少なくとも現時点では)人間の関与をなくし、宇宙船の開発を人間が行うこと(およびそれにともなう有人宇宙船打上げの安全性に関する懸念)を回避し、間接費を大幅に削減することができる。

規制当局や国防総省を招いて行われた予備的なデザインレビューの様子(画像クレジット:Varda Space Industries)

「投資家やNASA、国防総省から私たちのアプローチが高く評価されているのは、これまで『宇宙における製造』を議論してきた他のすべての企業と比較して、私たちが最もゴールに近く現実的で、商業的にも実行可能なアプローチであるからだと思います」とアスパロホフ氏は語る。

さらに同氏は「宇宙における製造」の考え方として、Vardaが微小重力環境にモノを運ぶために必要な費用は単位質量あたり1ドル(約110円)であり、微小重力環境での製造で得られる価値も単位質量あたり1ドルである(約110円)と話す。収益性の鍵は、その2つの方程式の差を最大化する製品を見つけることだ。例えば、新規の医薬品は、無重力から得られるイノベーションの利益が高ければ高いほど、莫大な利益を得ることができる。

同社は2023年に「複数回のミッション」を想定しており、その後は四半期に1回、さらには1日に複数の再突入カプセルが製品とともに戻ってくると想像している、とブリュイ氏はいう。そのくらいの頻度で打ち上げと再突入が予定されたとしても、それを満たすほど宇宙で製造される新しい製品への需要の規模は潜在的に大きい、とVardaの共同創業者らは確信している。

宇宙旅行のような急成長産業に比べ、宇宙における製造は人類により多くの影響を与える可能性がある、とブリュイ氏は話す。

「人類が地球上で経験するさまざまなことに影響を与え、生活の質を大幅に向上させることができるでしょう」。

関連記事
再利用可能ロケット開発iRocketがわずか2年以内の商業化を目指しNASAと新たに提携
ヴァージン・ギャラクティックのマイク・モーゼス社長が語る、成長を続ける同社の次なる展開
ブルーオリジン初の有人宇宙飛行後、ベゾス氏とクルーが記者会見「より重大なミッションの練習」

カテゴリー:宇宙
タグ:Varda Space Industries資金調達工場製造業

画像クレジット:Varda Space Industries

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

「はやい、やすい、巧い」エッジAIのフツパーと高速なアノテーションを提供するFastLavelが協業し国内産業のAI化推進

「はやい、やすい、巧い」エッジAIのフツパーと高速なアノテーションを提供するFastLavelが協業し国内産業のAI化を推進

AI開発に欠かせないアノテーション作業の高速化を行うFastLabel(ファストラベル)は7月29日、中⼩企業向けエッジAIシステムを提供するフツパー(Hutzper)と7月より協業し、システム連携を開始すると発表した。高速アノテーションとエッジAI技術を組合せることで、目視検査業務の効率化を目指す。

FastLabelは、AIの機械学習に用いられる「教師データ」作成に必要なアノテーション(データに関連するメタデータを埋め込む作業)の高速化を行っている。AIの産業利用では、教師データの不足や品質の低さで十分な性能が発揮できず、「実用化のボトルネック」になっているという。「AI開発を10倍速くする」をミッションとするFastLabelは、教師データの作成、分析、管理を効率化し、精度を向上させるアノテーションプラットフォーム「FastLabel」を開発・提供している。

一方、フツパーは、「はやい、やすい、巧い、AIを」をミッションに、目視検査業務を効率化する画像認識エッジAI特化型SaaS「Hutzper Insight」(フツパー・インサイト)と、画像認識AIモデル開発「Hutzper Vision」(フツパー・ビジョン)を開発・提供している。どちらも2020年設立の新しい企業だが、大手から中小まで、国内の企業に貢献している。

この協業では、両社の技術を組み合わせて、データアノテーションをエッジAIの運用オペレーションに組み込み、継続的に教師データの蓄積が可能となる機械学習基盤MLOpsを構築する。MLOpsは、機械学習用のDevOpsといった意味合いで、「機械学習」(ML。Machine Learning)とソフトウェア分野における継続的な開発手法「DevOps」を組み合わせた造語。

具体的には、フツパーの技術で認識した画像データをFastLabel側に連携し、アノテーターによるアノテーション完了後のデータをリアルタイムでフツパー側に連携するというものだ。アノテーションの難易度やデータ量に応じて、内部で処理するか、外注するか、両方を組み合わせるかが選べるという。

フツパー代表取締役CEOの大西洋氏は、「FastLabelと連携することにより、弊社のはやい・やすい・巧いAIがさらに速くなりました」と話している。今後も、エッジとクラウド間での「AIモデルの最適運用」を追究していくとのこと。

またFastLabel代表取締役CEOの鈴木健史氏は、「両者の強みを活かして製造業へのAI導入をさらに加速させていきます」と述べている。

関連記事
ソニー「IMX500」採用、動線分析のリアルタイム処理も可能なエッジAIカメラ「S+ Camera Basic」高機能版登場
レクサス製造ラインの熟練工の技を人とAIが協働し伝承、TRIARTとトヨタが「不良予兆感知システム」の試行開始
ASTINAが化粧品のグラデーション生地などランダム模様の異物も検出可能な「OKIKAE for AI外観検査」を提供
既存防犯カメラで来店客の店内行動を解析可能なエッジAI端末を提供する「AWL」が20億円調達
パトスロゴスが画像10枚から30分でAIモデルを作成できるノーコードの外観検査ソフト「DEEPS」リリース
「目についたら異常」などあいまいな官能検査も対応、ロビットが工業製品向け汎用型AI外観検査ロボを提供開始
中⼩企業向け検品・検査⼯程用エッジAIをサブスクで提供するフツパーが約1億円を資金調達
自動目視検査など製造業にAI外観検査システムを提供するMENOUが8000万円を調達
中小企業へ「はやい・やすい・巧いAI」の提供目指すフツパーが数千万円調達

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:アノテーション(用語)エッジAI(用語)エッジコンピューティング(用語)MLOps(用語)機械学習 / ML(用語)製造業(用語)DevOps(用語)FastLabel(企業・サービス)フツパー(企業)日本(国・地域)

【コラム】深層強化学習は私たちが知る製造業を変革する

編集部注:Chris Nicholson(クリス・ニコルソン)氏は、深層強化学習を産業オペレーションとサプライチェーンに適用する企業であるPathmindの創業者兼CEO。

ーーー

通りを歩きながら、目に入るものすべての名前を大声で叫んでみたとしよう。「ごみ収集車!」「競輪選手!」「プラタナスの木!」  多くの人は、そんなあなたを特に賢いとは思わないだろう。一方で、例えば障害物コースを通るときに、一連の障害をうまく切り抜けて無傷で最後までたどり着く方法を示したなら、人々の評価は変わってくるはずだ。

ほとんどの機械学習アルゴリズムは、街中で名前を連呼するようなものである。人間が1秒たらずで行えるような知覚的な作業を実行する。しかし、もう1つのAIである「深層強化学習」は、戦略的なものだ。目標を達成するための一連のアクションを実行する方法を学習する。これはパワフルかつスマートな手法であり、多くの業界を変革しようとしている。

AIトランスフォーメーションの最前線にある2つの業界は、製造とサプライチェーンだ。物を作り、出荷する方法は、協働する機械群に大きく依存しており、その機械の効率性とレジリエンスは、経済と社会の基盤となっている。それがないと、生活や仕事に必要な基本的な物を手に入れることができなくなる。

CovariantOcado傘下のKindredBright Machinesなどのスタートアップは、機械学習と強化学習を用いて工場や倉庫での機械の制御方法を改変し、ロボットにさまざまな大きさや形の物体をビンの中から検出して拾わせるなど、極めて難易度の高い課題を解決している。これらの企業はまさに巨大な市場に挑んでおり、2020年には産業用制御および自動化市場は1520億ドル(約16兆7530億円)、物流自動化市場は500億ドル(約5兆5110億円)を超える価値を示した。

技術者としては、深層強化学習を機能させるには多くのことを行う必要がある。最初に考えるべきことは、どのようにして深層強化学習エージェントに、求めるスキルを実践させるかだ。これには、実際のデータを活用する方法と、シミュレーションを使用する方法の2つの手法のみ存在する。各アプローチにはそれぞれ独自の課題がある。データは収集して整理する必要があり、シミュレーションは構築して検証することが求められる。

いくつかの例を挙げて、これが何を意味するかを示そう。2016年、Google Xはロボットの「Arm Farm」を公開した。モノをつかむことを学び、他者にも同じことを教える、複数のロボットアームで満たされた空間である。これは、強化学習アルゴリズムが実際の環境で動きを練習し、動作の成功を測定するための初期の方法の1つだった。このフィードバックループは、目標指向アルゴリズムの学習に欠かせないものである。つまり、連続的な決定を行い、その決定が導く対象を把握することが必要だ。

多くの場合、強化学習アルゴリズムが学習できる物理環境を構築することは現実的ではない。複数の工場から数多くの小売店に商品を輸送する数千台のトラック群をルーティングするための、異なる戦略をテストすることを想定しよう。可能なすべての戦略をテストするには莫大な費用がかかるだけでなく、実行に失敗した場合、多くの顧客に不利益をもたらしかねない。

多くの大規模システムにとって、最適なアクションパスを見つける唯一の方法はシミュレーションを使用することである。その際、データ強化学習のニーズを生成するために、理解したい物理システムのデジタルモデルを作成する必要がある。これらのモデルは、デジタルツイン、シミュレーション、強化学習環境とも呼ばれるものだ。これらはすべて、製造とサプライチェーンの用途において、本質的に同じことを意味する。

物理システムを再作成するには、システムの動作を理解しているドメインエキスパートが必要である。このことは、単一のフルフィルメントセンターのような小規模システムでは困難な課題となり得る。というのも、システムを構築した人々が退職していたり、あるいは亡くなっている可能性があり、後継者はシステムの運用方法は習得しているものの、再構築は行っていないからだ。

多くのシミュレーションソフトウェアツールは、ドメインエキスパートによる物理システムのデジタルモデル作成を可能にする、ローコードのインターフェイスを提供する。ドメインの専門知識とソフトウェアエンジニアリングのスキルを同じ人物が兼ね備えることは難しいため、これは重要である。

なぜ1つのアルゴリズムにこれほどの労力がかかるのだろうか。つまるところ、深層強化学習は、他の機械学習や最適化ツールでは実現し得ない結果を一貫して生成するからである。DeepMindも当然ながら、囲碁の世界チャンピオンを倒すために深層強化学習を使用した。強化学習は、チェス、タンパク質フォールディング、Atariのゲームにおいて、画期的な成果を達成するために不可欠なアルゴリズムの一部となった。同様に、OpenAIは「Dota 2」で、最高水準の人間チームに勝利するための深層強化学習を訓練した。

Geoffrey Hinton(ジェフリー・ヒントン)氏がGoogleに、Yann LeCun(ヤン・ルカン)氏がFacebookに入社した後の2010年代半ばに、深層人工ニューラルネットワークがビジネス用途を開拓し始めたように、深層強化学習も業界に大きな影響を与えるようになるだろう。囲碁で見たのと同じように、ロボットの自動化とシステム制御の飛躍的な向上がもたらされ、我々の持っている中で最高の、しかも他と大きくかけ離れたものになることが大いに期待される。

その恩恵を受けて、製品の製造とサプライチェーンの運用における効率性とコスト削減が大幅に促進され、炭素排出量と労働災害の低減につながっていくだろう。明らかに物理的世界の難問や課題は、我々の周りに存在している。2020年だけでも、新型コロナウイルス(COVID-19)、ロックダウン、スエズ運河の崩壊、異常気象によって、社会は複数のサプライチェーンの混乱に見舞われた。

新型コロナに着目すると、ワクチンが開発され承認された後も、多くの国でその製造や迅速な供給が困難になっている。これらは、過去のデータでは対応できない製造やサプライチェーンの問題だ。何が起こるかを予測するシミュレーションと、危機が発生したときに最善の方法で対処するためのシミュレーションが必要だったと、Michael Lewis(マイケル・ルイス)氏は最近の著書「The Premonition」の中で指摘している。

まさにこのような、工場やサプライチェーンで発生する制約と新たな課題の組み合わせにこそ、強化学習とシミュレーションがより迅速な解決をもたらすのである。そして、我々は将来、その数々のブレイクスルーを目にすることになるだろう。

関連記事
宇宙船や先進的製造の未来をより良くより早く実現する工場を建設するHadrian
新しいコンセプトのロボティクスに挑むRapid Roboticsが13.2億円調達
製造業を立て直すために米国は中小企業技術革新研究プログラムを強化せよ

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:機械学習深層学習強化学習コラム製造業サプライチェーン

画像クレジット:rozdemir01 / Getty Images

原文へ

(文:Chris Nicholson、翻訳:Dragonfly)

宇宙船や先進的製造の未来をより良くより早く実現する工場を建設するHadrian

もし、新しいスタートアップHadrian(ヘイドリアン)の8人の仲間がこの道を突き進めば、次の10年で製造業界は一変する。

少なくともそれが、サンフランシスコに2020年に創設されたばかりのこのスタートアップの目標だ。彼らは、人工衛星、宇宙船、先進エネルギー技術を開発する企業が思い描く未来を、より良くより早く実現できる先進製造技術の新モデル構築を目指している。

「私たちの仕事は、世界で最も効率的な宇宙防衛産業のための工場を提供することだと考えています」とHadrianの創設者Chris Power(クリス・パワー)氏は話す。

パワー氏によれば、創設当初はロケットの部品を製造する工場を建設しようとしていたという。しかしその事業には、製品の製造に特注部品を必要とするすべての企業にも対応できる可能性が含まれていた。

「今がどれほど最悪で、20年後にはどうなるかをお話しましょう。現在、SpaceX(スペースエックス)もLockheed Martin(ロッキード・マーティン)も、宇宙防衛産業のあらゆる企業は部品と製造を全国の小さな工場に発注しています。それらはめちゃくちゃ高価で、信頼性が低く、顧客からは一切見えません」とパワー氏。「これが宇宙防衛関連の製造業者に、設計段階での大きな問題を引き起こしています。なぜなら、リードタイムが非常に長く、作り込みにかかる時間がさらに長いからです。ソフトウェアの関係上、製品の作り直しは20日に1度だけ可能だとしましょう。ロケット製造の場合、その作業工程表の60パーセントは待機時間です。そのため3カ月前に送られてきた部品のせいで、打ち上げやら何やらの工程が大幅に遅れます。つまり、マクドナルドの経営者が、ハンバーガーやポテトの納品業者からいつ商品が届くかを教えてもらえない状態と同じです」。

航空宇宙、防衛、先進的機械の企業に部品を納入する業者にとって戦略がどれほど重要であるかは、言葉では言い尽くせない。他ならぬ製造業の権威Elon Musk(イーロン・マスク)氏もこうツイートしていた。「工場が製品だ」と。米国を卓越した製造業の中心地として返り咲かせるためは、地政学的要素もまた言葉では言い尽くせないほど重要だと、Hadrianに投資しているLux Capital、Founders Fund、Construct Capitalは語っている。それが、この非常に若いアーリーステージの企業に950万ドル(約10億円)を投入した理由にもなっている。

「米国は90年代初頭に大きな戦略的過ちを犯しました。それが全国の製造業エコシステムを完全に荒廃させてしまったのです」とFounders Fundの会長Delian Asparouhov(デリアン・アスパロホフ)氏は話す。「この悲惨な状況から抜け出す唯一の方法は、航空宇宙産業と防衛産業のサプライチェーンへのもっとも基礎的なインプットを考え直し、金属部品をすばやく製造して、許容性を高めることです。今現在、米国でもっと革新的な企業であるSpaceXも、引退間近の機械工のネットワークに依存して宇宙品質の金属部品を作らせています。テック業界で、この問題を重視している者はいません」

Sam Korus「工場はクルマを作り、Teslaは工場を作る」
Elon Musk「工場が製品だ」

パワー氏は、前に務めていたブルーカラーの顧客に人材管理ソフトウェアを販売する会社Ento(エント)で、その問題を実感することになった。職人の高齢化の問題と、製造業者の独自の技術スタックのほぼあらゆる側面をアップグレードする必要性を感じたのは、そのときだった。「工業分野にテクノロジーを適切に導入する方法は、企業にソフトウェアを売ることではなく、ソフトウェアとともに工業という業種を一から作り直すことだと悟りました」。

当初、Hadrianは宇宙産業に全精力を傾けていた。そこでは特に部品製造の問題が深刻だったからだ。しかし、同社が構築を目指す製造能力は、高度な技術で部品を製造する産業全体に、広く関わるものでもあった。

「製造の需要は、SpaceXやBlue Origin(ブルー・オリジン)といった大手から、ロングテールのずっと末端のAnduril(アンデュリル)、Relativity(レラティビティー)、 Varda(バーダ)に至るまであります」と、Lux Capitalの共同創設者Josh Wolfe(ジョシュ・ウルフ)氏はいう。「そのほとんどが、家族経営の工場を利用しています。そしてそうした工場は、恐ろしいまでに非効率です。一貫性がなく、信頼性も低い。ソフトウェアによる自動化とハードウェアを用いることで、製造工程のあらゆる非効率なステップを排除できます。価値の創造は、無駄の削減だという考え方が私は好きです。見積もりから、予定組み、入札、計画、プログラミングに至る製造業の日常的な作業は、その1つ1つで数時間、数十時間、数日、数週間という時間がかかります。それを数分で済ませられるようになれば、悩みは解消です。Hadrianは、新しい、そして航空宇宙防衛産業に明確に特化した企業のための、最先端の選択肢となります」。

パワー氏は、まずは宇宙防衛産業全体の65パーセントをカバーする製造施設のネットワーク作りを思い描いている。ゆくゆくは95パーセントにまで拡大したい考えだ。すでに、最大手クラスのロケット打ち上げ企業や衛星製造企業数社から、数百単位の製造を持ちかけられているとパワー氏はいう。その一部の企業は、偶然にもConstruct、Lux、Founders Fundのポートフォリオに入っている。

これは、米国の製造業の雇用を浮揚させる新しい方法でもあると、パワー氏は考えている。「宇宙防衛産業の製造職の給与は、簡単にGoogleのソフトウェア技術者と同じぐらいの高給に引き上げることができます」と彼はいう。理想的には、20世紀の自動車産業が高待遇のユニオンジョブ(労働組合を通して与えられる仕事)をもたらしていたように、21世紀の製造職も高い給与が得られる道筋をつけたいとHadrianは願っている。

「まだ何もできていません。私たちの新しいテクノロジーと新しいシステムの訓練を受けた後に雇用されべき人たちが膨大に存在することに注目すれば、人材の問題や訓練の問題も、私たちの事業の成長の一部です」。

Axiomが計画している商用宇宙ステーションの想像図

カテゴリー:宇宙
タグ:Hadrian製造業工場

画像クレジット:NASA / Getty Images

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

新しいコンセプトのロボティクスに挑むRapid Roboticsが13.2億円調達

サンフランシスコのロボティクスのスタートアップであるRapid RoboticsはこのほどシリーズAラウンドで1200万ドル(約13億2000万円)の資金を調達したことを発表した。ロボティクスにおける同社の新しいコンセプトは2020年からTechCrunchでも報じてきたが、今回のラウンドはNEAがリードし、これまえの資金調達総額は1750万ドル(約19億2000万円)となった。2020年11月に発表されたシードラウンドは最近完了したばかりだ。Greycroft、Bee Partners、468 Capitalなどの既存投資家が今回のシリーズAにも参加している。

我々は繰り返し新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックがロボティクス分野に大きな影響を与えていることを指摘してきた。パンデミックにより「社会生活の維持に必須の要員」に認定されなかった多数の労働者の出社が不可能になったことで、さまざまな産業でオートメーションへの関心が強く掻き立てられたことは間違いない。製造業では多くの職がリモートワークに適さない。

Rapidによれば、そのテクノロジーは過去1年間に極めて広範囲な製造業で5000万点の部品生産を行ってきたという。トランプ大統領同様、バイデン大統領も製造業の雇用を米国に取り戻すための戦略を発表し始めている。どのような野心的な計画も結局の人間の職の創出とオートメーションの間で適切なバランスを取る必要があることは間違いない。

同社もロボットと人間のオペレーターの関係という長年の課題についてCEOのJordan Kretchmer(ジョーダン・クレッチマー)氏はプレスリリースに「簡単に要約すれば、この問題を解決しなければ米国の製造業はグローバル市場で競争力を持ち得ない」と書いている。

Rapidの最大の付加価値は「使いやすさ」だ。この会社はその社名のとおり、購入後だれでも即座に動かせるようなシステムを提供している。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Rapid Roboticsサンフランシスコ資金調達製造業

画像クレジット:Rapid Robotics

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:滑川海彦@Facebook

製造業を立て直すために米国は中小企業技術革新研究プログラムを強化せよ

本稿の著者Sean O’Sullivan(ショーン・オサリバン)氏はMapInfo(マップインフォ)の共同創設者であり、現在はHAX(ハックス)、IndeBio(インディーバイオ)、Chinaccelerator(チャイナクセラレーター)、 MOX(モックス)、dlab(ディーラボ)といったスタートアップ・アクセラレーターを運営するベンチャー投資企業SOSVの創設者にして業務執行ジェネラルパートナー。

ーーー

私はニューヨーク州北部の貧しい地域で育ったが、幸運なことにレンセラー工科大学に進むことができた。私は会社を立ち上げ、28歳のときに上場し、そこで得た富をスタートアップに投資してきた。

企業創設者が次々と成功する姿を見るのは爽快だったが、ニューヨーク州北部に帰り、ずっと閉鎖されたままの工場を見るにつけ、テクノロジー改革が決して届かない場所があることを思い知らされる。

そうした空虚な建物の背後にある数字を見ると、これ以上悲惨なものはないと感じる。2019年後半、新型コロナウイルスに襲われる以前、すでに米国の製造業はGDPの11%にまで落ち込んでいた。この72年間で最低の数値だ。私たちはその基盤のほとんどを低コストなライバルであった中国に譲ってしまったことで、2011年には中国は世界最大の製造王国となった。米国の繁栄の基盤として製造業を復活させるための時間は、もうあまり残されていない。そこで大きな役割を果たすのが、優秀でありながら、あまり注目されていない米連邦政府の取り組みだ。

私の会社SOSVでは、技術的に実現が難しいアイデアを持つ企業創設者を対象に、研究から製品化までサポートするプログラムを実施している。その多くの企業が、特に工業の自動化や脱炭素といった国家的な優先分野において、米国の未来を代表している。

こうしたスタートアップには、今すぐにでもベンチャー投資家から資金投入されるものと思われるだろうが、現実には、彼らに流れるベンチャー投資金はほんのわずかしかない。それは単に、SaaSや消費者向け分野に比べてリスクが大きいという理由からだ。

だからこそ、1982年、米国連邦議会はSmall Business Innovation Research(SBIR、中小企業技術革新研究)プログラムを設立した。その発起人であるRoland Tibbetts(ローランド・チベッツ)氏の言葉によれば「初期段階の優れた革新的アイデア、つまり有望でありながらベンチャー投資企業などの民間投資家にはリスクが高すぎるアイデアに資金を提供する」ことを主眼としている。

年間30億ドル(約3270億円)をわずかに超える契約や助成金が連邦政府機関によって分配された結果、SBIRは7万件の特許認定、ベンチャー投資企業による410億ドル(約4兆4600億円)の追加投資、700の企業の上場が達成された。

見事にデザインされたSBIRによって、何千というテクノロジー志向の起業家たちは、研究段階と製品化、新規市場とベンチャー投資の間に横たわる谷を渡ることができた。この先の10年間をかたちづくるためには、さらに才気溢れる科学者、技術者、起業家が何千人も必要となる。自宅のガレージで研究を開始することはできても、元手がなければ続かない。連邦議会は、現在SBIRに求められている極めて重要な3つの改良点を盛り込んだ「SBIR 2.0」の策定に今すぐ取りかかる必要がある。

第1に、SBIRが提供する資金を少なくとも10倍に増やして欲しい。300億ドル(約3兆2700億円)にしたところで、高々ワシントンの予算の丸め誤算の範囲内だ。例えば2020年の防衛予算は6930億ドル(約75兆4500億円)。また、2020年に1560億ドル(約17兆円)に到達した米国のベンチャー投資額のほんの数分の1に過ぎない。それでも、米国の産業を救うためには、間違いなく最も有効な対策だ。

第2に、SBIRの投資先を脱炭素や先進的製造技術などの決定的に重要な戦略的分野に集中することだ。脱炭素は、地球上の人類の未来を救うものだ。先進的製造技術は、ロボティクス、バッテリー技術、人工知能デバイス、積層造形といった重要分野の主導権を確立し、製造業投資における失われた世代を跳び越える力を与えてくれる。これ以上に注目すべき市場はあるだろうか?

そして最後に、審査と報酬のプロセスを高速化すること。良い例を1つ挙げるならば、米国空軍が2019年と2020年に実施した画期的な「ピッチデー」プログラムだ。わずか1分間で、最も優れたプレゼンを行った企業創設者(厳しい事前審査があるが)に助成金を贈るというものだ。物事がほぼ支障なく流れるこの才能の市場では、審査や資金の供給に時間をかけていては勝利は望めない。

バイデン政権が2021年2月末に発行した米国のサプライチェーンに関する大統領令から、ホワイトハウスがすでに精力的に政策づくりを行っていることが見てとれる。この政権の取り組みは、間違いなく数多くのアプローチにつながるはずだが、成功の鍵は、米国で使われずにいる大切な燃料、つまり創意工夫と国民の意欲に、絶え間なく焦点を当て続けることにある。

とにかく、この国の不景気にあえぐ地域を貧困から救い出すためには、当事者たちが起業家精神を持ち、自らの手で米国の製造業を再建できる手段を与えることだ。

【米TechCrunch注】TechCrunchの元CEOであるNed Desmond(ネッド・デスモンド)氏は、現在SOSVの上級業務執行ジェネラルパートナーを務めている。

カテゴリー:その他
タグ:コラム製造業アメリカ

画像クレジット:elenabs / Getty Images

原文へ

(文:Sean O’Sullivan、翻訳:金井哲夫)