悩みは直接経験者に聞く、美容整形の術後経過を写真とテキストで共有できる「トリビュー」

「美容整形は数万円からの投資と、ちょっとした勇気で人生を変えられるもの。でも顔に注射を打ったり、メスを入れたりすることを怖いと思う人は多い。周囲には相談しにくいし、SNSや掲示板ネットでの情報収集にも課題がある。それならば、経験者に話を聞ければいい」——トリビュー代表取締役の毛迪(もう でい)氏はこう語る。同社は10月15日に美容整形の術後経過の記録・投稿アプリ「トリビュー」(iOS/Android)を正式にローンチしたばかり。

トリビューは美容整形の実施前から、術後経過、完成までの写真や体験談を投稿できるアプリだ。ユーザーは手術単位で日記を作成し、施術の内容やクリニック、写真、体験談などを投稿できる。写真や体験談は施術から「○日目」というかたちで経過日数とともに投稿できる。他のユーザーは各投稿に対して「いいね」をしたり、コメントをつけたりできる。

9月からベータ版として一部のユーザーに限定してサービスをローンチ。すでに600枚以上の写真が投稿されている。仲間と繋がりたい投稿者、情報収集のニーズが強い閲覧者ともに、モチベーションが高いそうで、テスト時には(母数は少ないとは言え)、3分の1のユーザーがダイレクトメッセージを送って、投稿者に質問するなどしていたという。

サービスを提供する毛氏は、中国出身で5歳から日本で育った。新卒でリクルートに入社したが、父親、親戚に起業家の多い家庭で育ったため、もともと将来の起業を考えていたという。そこでスタートアップ投資や新規事業コンサルなどを手がけるアーキタイプに転職。約1年後に同社を退社して2017年7月にトリビューを設立した。9月にはアーキタイプのほか、エウレカ共同創業者の赤坂優氏、ペロリ創業者の中川綾太郎氏など9人の個人投資家から合計数千万円の資金を調達している。

トリビュー代表取締役の毛迪(もう でい)氏

実は毛氏自身、10代からレーザー照射や注射といったプチ整形を受けてきたのだという。もちろん施術の程度は人それぞれだが、冒頭で語られた美容整形の課題は毛氏自身が経験してきたものでもある。「病院の口コミや料金補償、(施術後の)腫れや痛みも調べたいとなると、経験者の発信する情報がメインになる」(毛氏)。ちなみにトリビューのメンバーは、フルタイムとパートタイムあわせて5人。エンジニア1人を除いて全員が女性で、美容整形経験者もいるという。

トリビューでは今後、エンジニアを中心に人材を強化。サービスの開発と同時にクリニックへの送客などでのマネタイズを進める。「美容整形は年間2500億円の市場。単価は25万円程度で、売上の30%が広告宣伝費として使われている」(毛氏)。なお中国ではすでにSoYoung Technology(Tencent Holdingsなどが出資)やBeijing Wanmei Creative Technology(Sequoia Capital China Advisorsなどが出資)などが先行して同種のサービスを展開している。

アプリ運営プラットフォーム「Yappli」運営のヤプリが6.7億円の調達、導入企業は220社に

ヤプリの経営陣。前列右が代表取締役の庵原保文氏

アプリ運営プラットフォーム「Yappli(ヤプリ)」を手がけるヤプリは10月16日、グロービス・キャピタル・パートナーズ(本ラウンドのリード)、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、YJキャピタル 、川田尚吾氏を引受先とした第三者割当増資(グロービス、YJキャピタル、川田氏は既存投資家)とみずほ銀行等からの融資を合わせ、総額約6億7000万円の資金調達を実施したと発表した。

同社はこれまでグロービス・キャピタル・パートナーズ、YJ キャピタル、Salesforce.com、川田氏らから資金を調達しており、累計調達総額は約10億3000万円となる。また、資金調達と合わせてCFO(最高財務責任者)に元マナボCFOの角田耕一氏が就任したことも発表している。

「この2年はとにかく伸びている。最初の3年はすごいプロダクトを作ったものの、セールスやマーケティングに課題があった。いいプロダクトがあったけど売れない状態からセールスのグロースハックに成功した」——ヤプリ代表取締役の庵原保文氏はそう語る。

同社は2013年に設立(当初の社名はファストメディア)。ブラウザ上でドラッグ&ドロップしてスマートフォンアプリを制作できるYappliを開発し、中小企業や個人までをターゲットに、安価に利用できるサービスとして展開。しかしサービスインから1年足らずでの売上が数十万円という状況だったため、方針を転換。大手企業をターゲットにすることで、半年後には単月黒字を達成するという結果を出した(当時の様子は前回の資金調達の記事に詳しい)。

現在、専任の開発チームを有しない一般企業など、220社がサービスを導入。サービス継続率は99%を誇る。Yappliで制作したアプリの累計ダウンロード数は1000万件を越えた。特に小売・アパレル領域での販促支援のためのアプリは好調で、中には売上の50%以上がアプリ経由になったというアパレルブランドもあるという。そのほかにも、ゴルフ場運営の太平洋クラブで予約数2倍、アウトドアブランド「THE NORTH FACE」では、来店クーポンの利用回数が2万回以上増加、同じくアパレルの「Right-on」では、ポイントカードのアプリ化により、会員数の伸び率50%アップといった結果が出ている。販促支援にとどまらず、採用サイトのアプリ化や自社製品カタログのアプリ化など、利用用途も広がっている。

「オウンドメディアよりエンゲージしたいといった理由もあり、一般企業でもアプリを利用したいというニーズは増えている。スタートアップであれば、アプリなんて当たり前になっているかも知れないが、今まで(一般企業は)そのテクノロジーにアクセスできなかった。マーケティングで言えばGPSを使って、プッシュをして、とメルマガをリプレイスするモノになってきた。iOS11でQRコードが標準で使えるようになったので、よりアプリへの登録も容易になった」(庵原氏)

同社は今回調達した資金を元に、人材を強化。Yappliの機能強化を進める。

「創業の時から、簡単に、ちゃんと動くアプリが作れる、というのが受けている。素晴らしい管理画面こそが競争優位性だ。実際、セットアップ以降は(エンジニアが不在な)企業のウェブ担当者やマーケティング担当者が運用できている。この2年はセールスとマーケティングに注力してきたので、次はプロダクト回帰。エンジニアも10人規模で拡大する」(庵原氏)

今後は「(Yappliで制作した)自社アプリのデータの資産化にも取り組んでいく」(庵原氏)という。自社アプリを利用するユーザーの端末IDをもとに、FacebookやSmartNewsといった外部サービスにおいてもレコメンデーションを行うなど、アプリ内にとどまらない販促施策のプラットフォームとして開発を進める予定だ。

離れた場所にある物件をVRで内見、ナーブが4.6億円調達

不動産の内見にVRを活用する「VR内見」などを展開するナーブは10月13日、ニッセイ・キャピタル三菱地所ギガプライスSpiral Ventures Japanから総額で4.6億円を調達したと発表した。

ナーブ自社開発のVRゴーグル「CREWL」

ナーブは不動産や旅行業界などに導入するVRシステムをパッケージとして提供するスタートアップだ。店舗に設置したVRゴーグルで物件の360度画像を見ることができるVR内見や、観光地の360度画像や動画をVR体験できる「VRトラベル」などを展開している。

VR内見を導入することで、店舗には専用ゴーグルの「CREWL」が設置される。このゴーグルは同社の自社開発製品で、VRゴーグルとして利用していないときには店頭デジタルサイネージとしても機能する。

物件チラシにプリントされたQRコードをCREWLで読み込み、ゴーグルを装着するとVR内見がはじまる。エンドユーザーは実際にその場にいるような感覚で、紹介された物件の内部を観察できる。

クルマで顧客を現地まで運ぶ通常の内見には時間がかかる。それが複数の物件となればなおさらだ。不動産会社がVR内見を導入することで、そういった時間を短縮して業務を効率化することができる。

しかし、ナーブ代表取締役の多田秀起氏は、不動産の内見をVRで行うというサービスの理解をユーザーから得るのにはとても苦労したと話す。

「昨年までは、VR内見というサービスへの理解がなかなか得られなかった。ただ、エンドユーザーの声を地道に汲みとってサービスの改善を続けた結果、今年5月頃から導入社数が急速に増え始めた」(多田氏)

成果が数字に現れ始めたのは5月に入ってからだが、多田氏は昨年末ごろから確実な手応えを感じていた。そこで、同社は2017年1月よりCREWLの量産開始に踏み切った。今回の資金調達でビジネス拡大のスピードをさらに加速させていく構えだ。

ビジネス展開のスピードにこだわる

VR内見の導入費用は月額1万8000円〜ということだが、これは僕が事前に想像してた価格よりもかなり低かった。これについて多田氏は、「事前のヒアリングでは5万円くらいまで払えるという声もあったが、5年後にデファクトスタンダードになる価格設定を作ろうと考えた。当初から低く設定することで、サービス普及のスピードを早めるのが狙いだ」と話す。

また、ナーブはVR内見に使用する360度画像を撮影せず、代わりに不動産会社が事前に撮影しておく必要がある。有料で撮影代行も行っているが、ほとんど利用されることはないという。それが導入への壁になりそうなものだが、これに関しても、ナーブはビジネス展開のスピードを優先させた形だ。

多田氏は、「当初はクライアントに360度画像を撮影してもらうことが壁になったのは間違いない。しかし、自社で撮影を行うと、その分人員を割かなければならず、おのずとビジネス展開のスピードも遅くなる。不動産会社の業務フローに撮影を落としこむ提案を続けていくことで理解を得るということを地道に続けた」と話す。

VR内見はこれまでに約500店舗へ導入済みで、多田氏がナーブにとって重要な指標だと話す「VR化した物件数」は数十万軒だという。同社はこれを2017年度中に100万軒まで伸ばしたい構えだ。

遠隔接客ブース「どこでもストア」

ナーブが展開するビジネスには、もう1つ面白いものがある。VRを利用した仮想店舗ブースの「どこでもストア」だ。これは、商業施設に設置されたブースに入ってVRゴーグルを装着することで、遠隔地にいるスタッフからの接客を受けることができるというもの。

どこでもストアを利用すれば、費用対効果の観点からリアル店舗を設置することが難しい地方にも進出することができる。1つのブースに複数の企業が参加できるため、企業にとっても顧客にとっても効率が良い。

今後、ナーブはイオン系の商業施設を中心に、年間25店舗のペースでどこでもストアの設置を進めていくという。

スタートアップ・ファンドのAtomic、1億ドル調達へ――ティール、アンドリーセンらが前回出資

サンフランシスコのスタートアップ・スタジオ、Atomicはまだそれほど広く知られたファンドではない。しかしピーター・ティールとマーク・アンドリーセンはこのブランドについてよく知っているはずだ。4年前にAtomicがスタートしたとき、このビリオネア両名とベンチャーキャピタルのFelicis Venturesを含む投資家から2000万ドルの資金を調達している。

SEC(証券取引委員会)に提出された書類によれば、Atomicは今回はその5倍、1億ドルの資金を集めようとしている。

今日(米国時間10/12)、われわれ同社にインタビューを申し込んだが断られた。しかし諸般の情勢からみてあらたなラウンドは近日中に完了すると思われる。

まずAtomicがどういう会社かという点だが、LinkedInのエントリーから判断すると社員は15人で、独自の視点から有望なスタートアップのアイディアとアイディアを企業として展開できる人材を選ぶ。それが成功すれば伝統的なベンチャーキャピタルの力を借りてさらに大型の投資を組織し、永続性ある企業に成長させる。

Atomicはサンフランシスコの風光明媚なプレシディオ地区でPayPalマフィアのドン、ピーター・ティールのFounder Fundのすぐ近所にオフィスを構えており、マーケティング支社がアリゾナ州フェニックスに、エンジニアリングのための小さなオフィスがカナダのトロント近郊のウォータールーにある。同社のポートフォリオには10社が属しており、サイトには6社がリストアップされている。Crunchbaseの情報によれば、そのうちの4社は大型の投資ラウンドを実施している。

Atomicの各社の資金調達状況はこうだ。Wi-Fiを利用して顧客データを所得するマーケティングのZenreachは総額8000万ドルをFounders Fund、Formation 8、その他の投資家から調達。コンシューマー向け写真保存、共有サービスのEverは先月 Icon VenturesがリードするシリーズBで1600万ドルを調達。これにはFelicis Ventures、Khosla Venturesも加わっている(これまでの資金調達総額は2900万ドル)。音声認識でセールスを行うTalkIQは同じく先月、Scale Venture PartnersがリードするシリーズAで1400万ドルを調達している。Atomic自身はポートフォリオ企業に対し20万ドルから200万ドルを出資している。

ポートフォリオ企業の社員はトータルで450人だ。 今年に入って、Atomicの共同ファウンダー、Jack AbrahamはForbesのインタビューに答えて、Atomicのスタートアップ投資は年間ベースのIRR〔内部収益率〕で65%だ(つまり投資によって取得されたAtomicの持ち分の価値がそれだけ上昇した)と述べている。

ポートフォリオ企業は上記のように最近さらに大型の資金調達を行っているので会社評価額もアップしているはず(ただし非公開企業の会社評価額はあくまで理論上のもので、企業買収、上場などのエグジットによって現金化されるまで投資家の真の利益は確定しない)。【略】

Atomicには現在4人のパートナーがいる。 Jack AbrahamはMilo.comのファウンダーで、同社をeBayに売却している。Andrew DudumはEverアプリの共同開発者で TokBoxのプロダクト責任者を務めたことがある。 Chester Ngはアプリ開発会社のSweetLabsの共同ファウンダーでTrinity Venturesに短期間、客員起業家として在籍した。Andrew Salamonはヘッジファンド、Bridgewater Associatesの元社員で、現在はAtomicのパートナーであると同時にRestedの共同ファウンダー、CEOでもある。同社は睡眠トラッキングのスタートアップで、Atomicのポートフォリオ企業の一つだ。RestedはCherubic
Venturesを含む投資家から総額で740万ドルを調達している。

写真:Atomic

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

睡眠解析ベンチャーのニューロスペースが約1億円を資金調達、吉野家とシフト勤務者の睡眠改善を実証実験

睡眠解析ベンチャーのニューロスペースは10月11日、ユーグレナSMBC日興リバネスキャピタルが運営するリアルテックファンドおよび個人投資家らを引受先とする、第三者割当増資による資金調達の実施を発表。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の平成29年度研究開発型ベンチャー支援事業への採択により交付された資金と合わせて、約1億円を調達したことを明らかにした。

ニューロスペースは2013年12月の創業。代表取締役社長の小林孝徳氏が、自身の睡眠障害の経験をきっかけに設立した。企業向けに睡眠改善プログラムを提供するほか、独自の睡眠計測デバイスと解析アルゴリズムに基づく共同研究開発なども行うベンチャーだ。

ニューロスペースでは、今回の資金調達と同時に、AIやIoT技術を活用した「睡眠解析プラットフォーム」ベータ版の提供も発表。調達資金により“スリープテック”事業を加速し、この睡眠解析プラットフォームの実用化に向けた開発を進める考えだ。また、このプラットフォームの実証実験に吉野家が参加することも決定している。

睡眠解析プラットフォームは、個人ごとの睡眠データを高精度で計測し、AIを使った独自の解析技術により個人別の解析結果、最適ソリューション、改善データを提供するための基盤となる。健康経営を推進する企業や睡眠ビジネス参入を検討する企業に開放し、API経由でデータやソリューションを自社サービスや製品に組み込むことが可能になるという。

プラットフォームの実証実験では、吉野家のシフト勤務者を対象に、睡眠計測デバイスと、計測データから睡眠改善策を提案するモバイルアプリが配布され、1カ月間の計測とレコメンデーションの実施、シフト調整などを通じて、検証が行われる。

作物のわずか30cm上空を自動飛行、農業ドローンのナイルワークスが8億円調達

ドローンを活用した農業ビジネスを展開するナイルワークスは10月10日、産業革新機構住友化学クミアイ化学工業住友商事全国農業協同組合連合会(JA全農)農林中央金庫を引受先とする第三者割当増資を実施したと発表した。調達金額は8億円だ。

2015年創業のナイルワークスは、「空からの精密農業」をビジョンに掲げる日本のドローン・スタートアップだ。農業用ドローン本体と、それを利用した生育診断クラウドサービスを稲作農家向けに提供している。

ナイルワークスはセンチメートル単位の精度でドローンを完全自動飛行させる技術をもつ。それにより、ドローンを作物から30cm離れた至近距離で飛行させて薬剤を散布したり、作物の生育状態を1株ごとに診断することも可能になるという。

ナイルワークスの農業用ドローンは、搭載したカメラの映像から田畑の形状を認識し、自動飛行によって薬剤を散布することができる。だから、ユーザーとなる農家に熟練のパイロットがいなくともドローンを農業に活かすことが可能だ。

大規模な農場では無人ヘリによって薬剤を散布するなどの取り組みもあるそうだが、それをドローンで行うことで、より小規模な農家でもシステマティックな農業を実践することが可能になる。

飛行1回あたりで散布できる薬剤の量は10リットルで、1ヘクタールまでの広さに対応できる。

ナイルワークスは、ドローン本体、タブレット端末、薬剤散布のスケジューリングなどを行える「農薬散布クラウドサービス」をセットとして年間100万円のレンタル料金で提供している。

同社は今回調達した資金を利用して、「自動化技術の安全性向上と生育診断技術の精緻化を進める」としている。

ドラッグアンドドロップで使えるコードベースのデザインツール「STUDIO」、シードラウンドで5000万円を資金調達

ウェブページやアプリのデザインについて、「イメージやアイデアはあるけれども、コーダーにうまく伝えられない」「PowerPointなどで何とかイメージを伝えようとするが、実現したいデザインとは全く違うものになってしまう」という悩みを持つ、ノンデザイナー、ノンコーダーの設計者は多いのではないだろうか。また、設計者やデザイナーが意図した動きとコーディングの実装が違っていて、思った通りに動かない、ということもよく聞く話だ。

STUDIO」は、デザインスキルやエンジニアスキルがない人のサービス開発を助ける、デザインツールだ。ブラウザ上のツールで、ドラッグ&ドロップで追加したい要素を移動させることで、リアルタイムでウェブやアプリのデザインが可能。実際のコードベースのレイアウトでデザインでき、レスポンシブデザインにも対応している。デザイン確認用のURLも発行され、実機での動きのチェックも簡単だ。

STUDIOは2017年1月に先行事前登録を開始し、ベータ版を4月に公開。8月には、世界中のプロダクトを紹介するサイト「Product Hunt」で「#1 Product of the Day」を獲得し、世界でも注目されている。現在のユーザー数は1万人を超え、海外ユーザー比率が60%を占めるという。

「アプリを作るには、デザイナーがイラストベースでデザインを作ってから、エンジニアがコードを書かないといけなかった。これでは二度手間。STUDIOは『コードを書かずに(デザインをするだけで)サービスを作る』という考えからスタートしている。デザインのツールではあるが、それは『グラフィック』という意味ではなくて『設計』という意味でのデザインのためのツールだ」——サービスを提供するSTUDIO代表取締役社長の石井穣氏、取締役の甲斐啓真氏はこのようにプロダクトの開発経緯を語る。

STUDIOは、2016年4月にUI/UXデザインの受託開発を行うオハコのグループ会社、オハコプロダクツとして設立され、独自プロダクトのSTUDIO開発を進めてきた。2017年9月には現在の経営陣を実施してオハコから全株式を取得。社名をSTUDIOに変更し、独立した。

そして10月4日、同社はシードラウンドで5000万円の資金調達を実施したことを発表。引受先は、D4V(Design for Ventures)大和企業投資、およびエンジェル投資家2人。D4Vは、グローバルで展開するデザインコンサルティングファームのIDEOとベンチャーキャピタルのGenuine Startupsによって、2016年10月に設立されたベンチャーキャピタルだ。

STUDIO社では今回の資金調達により、「STUDIOを世界でシェアを取れるツールにするべく開発体制を強化させていく」とコメント。STUDIOを「今後、コードを書かずにWebサービスやアプリを作成可能なツールに進化させていく」としている。外部サービスとのAPI連携を強化。アプリのパブリッシュ機能等を強化していく。

導入実績500社、MA“ベンダー”スタートアップのtoBeマーケティングが4億円調達で体制強化

マーケティングオートメーション(MA)ツールの導入支援を行うtoBeマーケティングは10月4日、複数のベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資により総額4億円を調達したことを明らかにした。今回のラウンドには既存投資家のDraper NexusとSalesforce Venturesに加え、新たに三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタルが参加している。

2015年6月設立のtoBeマーケティングは同年9月にDraper Nexusから3000万円2016年6月にDraper NexusとSalesforce Venturesから2億円を調達しており、今回がそれに続くラウンドとなる。

2年間で蓄積したメソッドやナレッジを仕組み化、顧客は500社を突破

toBeマーケティングでは創業時から一貫してSalesforceの提供するMAツール「Pardot」とCRMツール「Sales Cloud」「Service Cloud」を組み合わせた導入支援、活用コンサルティングを提供してきた。

資金調達をするデジタルマーケティング関連のスタートアップといえば、MAツールを含め自社でプロダクトを開発している企業が多い。その中でtoBeマーケティングのように既存のツールを顧客に供給する“ベンダー”の存在は少々異質だ。

とはいえ市場の成長と相まって2016年6月には170社ほどだった顧客は現在500社を突破した。毎月継続的に顧客数を積み上げていて、来年度の目標は1000社。その先にはエグジットを見据える。

toBeマーケティングの特徴はオリジナルの導入支援・活用サポートに加え、MAツールを補完する一連のサービス「MAPlus(マプラス)」を提供していることだ。

たとえばPardotのビジター情報のIPアドレスを解析することで、企業名を特定する「ABMサポート」はその1つ。従来は1人のウェブ閲覧者にすぎなかったユーザーを企業単位で可視化することができれば、その後のマーケティングやセールスのやり方は大きく変わってくる。

単なるベンダーではなく「このような機能があればよりMAツールが便利になる」という補完的な機能を自社で開発し提供していることが、toBeマーケティングの強みだ。

加えて代表取締役CEOの小池智和氏の話では、サービス開始から2年ほどが経過しメソッドやナレッジが蓄積され、効果的な体制を構築できてきたことも成長の要因だという。

たとえば以前は属人的だったMA導入時のサポートも、現在はポイントを150個ほど定義しそれに沿って画一的に行っている。導入後にやるべきことはトレーニングメニューとして仕組み化。MAツールを実際に運用する際には「伴走活用支援」として顧客ごとにメニューを作るが、それでもいくつかのパターンに類型化されるため、基本的にはカフェテリアのように用意されたものから選択する形式だ。

そこに動画コンテンツやオンラインセミナーを用意し疑問点を解決できる環境を用意しサポートしつつ、個別の対応が必要な場合は時間単位で金額を設定し応じる、といったようにこの2年間でシステマチックな体制を作り込んできた。

MAPlusと伴走活用支援を強化し、導入支援実績1000社を目指す

今回小池氏の話で興味深かったのが、ここ1年ほどで「顧客のフェーズが変わってきた」という話だ。

「Google アナリティクスやグループウェアと同じように、ウェブサイトを持っていて何かをやる企業はMAを検討するフェーズになってきている。以前は啓蒙活動に近かったが、最近ではMAの導入は決めたけどどれにしようか迷っているという顧客に提案する機会が多い。MAに対する予算が確保されているというメリットがある一方で、複数のツールと常に比較されるという難しさもでてきた」(小池氏)

実際toBeマーケティングが支援する企業は大手製造業メーカーや、地方の中小企業などバラエティに富んでいて、一見MAツールと距離がありそうなイメージの企業も多い。「MAの認識が変わりチャンスが広がってきている状況」だからこそ、さらなる成長を目指し資金調達を実施した。

toBeマーケティング代表取締役CEOの小池智和氏

今回調達した資金を元に、toBeマーケティングではMAPlusの開発と伴走活用支援の体制を強化する。MAPlusについては「メールが開封されなかった場合に資料を郵送する」などMAツール上でとれる選択肢を増やすとともに、現在提供している機能を改善し使い勝手の向上を計る。

伴走活用支援の体制については、特に企業のMA活用を支援するカスタマーサクセス人材の採用、育成が今後の成長に直結するため重点的に強化するという。

「最近よく言われるのが、MAはやりたいけど運用できる人がいないということ。MA専属の人材をつけるほどではないが、運用をサポートできる人が欲しい企業は多く(ここがどれだけ充実するかで)成果が変わる。MAツール自体は他社のものでいいが、それを保管するツールや支援体制を提供することでより多くの企業をサポートしていきたい」(小池氏)

植物EC「HitoHana」提供元が1億円を調達――飲食予約からピボット、フラワー業界の課題解決へ

植物ECサイト「HitoHana」を運営するBeer and Techは10月4日、グローバルブレインと既存株主のANRIを引受先とする第三者割当増資により総額1億円を調達したことを明らかにした。

今後同社では生産やデザイン、販売まで自ら手がけるD2C(Direct to Consumer)モデルを展開していくとともに、法人向けの卸売・委託直送サービス「HitoHana for Business」を本格化させていく。

Beer and Techは2014年にANRI、プライマルキャピタル、East Venturesから資金調達を実施。当時は「スマート予約」という飲食店予約サービスを展開していたが、2015年末に現在のHitoHanaへとピボット。今回が2回目の資金調達となる。

6000点の商品と泥臭いオペレーションを武器に成長

HitoHanaは2016年から開始した植物ECサイトだ。「個人の観賞用」領域に特化していて、現在は鉢物だけで約6000種類の商品を扱う。インテリア需要などが中心となるが、顧客の趣味趣向に合わせて豊富なバリエーションから商品を選べるのが特徴。Beer and Tech代表取締役の森田憲久氏の話では、すでに単月で黒字化を達成しているという。

「リアルな生花店やホームセンターでは店舗面積の関係で扱える商品数に限りがあり、商品数ではECに分がある。同業の通販サイトでは多いところでも品数は800点くらいだが、HitoHanaでは6000点をそろえることで細かいニーズにも応えられている」(森田氏)

この6000点というのは植物と鉢を組み合わせた総数だ(植物が6000種類あるわけではない)。他社は鉢物に加え、切花も扱っているため植物の品種自体は「おそらく他社の方が多い」(森田氏)という。

商品数の差は、サイズの違いや鉢との組み合わせなど細かいパターンの数から生まれているのだが、なぜこのような結果になっているのだろうか? この理由について森田氏に聞くと「動機の不在」「店舗をベースにしたEC」という2つが考えられるという。

まず動機の不在については、そこまで品数がいらないのではないかという考えが浸透しているそうだ。特に法人向けに胡蝶蘭など植物を販売する場合は、品数よりも値段や早さが要求されるため、品数を増やす必要性は少ない。

実はHitoHana自体も当初はラクスルをモデルに法人向けECからスタートしたものの、差別化の難しさもあり個人向けに変更したという経緯がある。また店舗ありきでECを始めた企業については在庫スペースの問題などから品数を増やしづらいが、HitoHanaの場合はスタートがECだったためこのような問題はなく、消費者のニーズに応えるべく商品数を増やし続けることができた。

このHitoHanaを裏で支えるのが、これまで時間をかけて作り上げてきたというオペレーション体制だ。2017年3月には自社のフルフィルメントセンターを埼玉に開設し、商品の撮影など細かい業務も含め一連の工程をこの場所で行っている。本社機能も同じ場所にあり、事業が拡大したため渋谷から埼玉にオフィスを移転したという珍しいスタートアップだ(ちなみに今後本社機能は都内へ移転を検討しているとのこと)。

埼玉にあるBeer and Techオフィス。写真右側が代表取締役の森田憲久氏。

蓄積データを活用したD2Cモデルの展開へ

一見シンプルな植物のECに見えるが実は裏の泥臭いオペレーションが大変で、この体制を構築してきたからこそ今後テクノロジーを活用した新たな展開ができるという。その1つが自社で商品の生産からデザイン、販売までを手がけるD2Cモデルだ。

「同じような商品でもデザインパターンが違うだけで売り上げが変わるなど、生の購買データが蓄積されてきた。このデータを分析し提携農家ともタッグを組みながら、顧客に支持される仕立てや品種を企画する。加えてまずは鉢からになるがプライベートブランドも立ち上げる。『どこの花屋から商品を買ってもあまり違いはない』という顧客の常識を変えていくチャレンジができれば」(森田氏)

直近では現在扱っていない切花部門を立ち上げ商品数を拡大する予定だが、そこからはデータを活用しながら新たな取り組みを行っていく。

またBeer and Techでは2017年1月から法人からのニーズを受け、卸売・委託直送サービスHitoHana for Businessも始めた。近年インテリアショップやリノベーション事業者などが植物を扱うようになっているが、専業ではない企業が在庫リスクを背負ったり、手厚いサポート体制を整えるのは難しい。

そこでHitohanaの持つ在庫や配送網を活用して、豊富な商品のタイムリーな納品や店頭での委託販売を実現。すでに複数の事業者から問い合わせがあり今後は大阪や名古屋、福岡など地方都市への展開も進めていくという。

飲食店予約サービス「スマート予約」は大きな注目を集めたが…

Beer and Techの創業は2014年の8月。当初は「スマート予約」という飲食店予約サービスを運営していた。スマート予約は日付や人数、利用目的などを入力すると10分以内に空席かつ人気のお店を3店舗紹介。利用者は好きなお店を選べば、運営側で予約してくれるというサービスだ。

便利さが受けて話題になり、VCから資金調達も行った。ところが実際にサービスを運用していくと、ユーザーは増えるもののリピートされないという課題に直面。そこで店舗を提案するのではなく、指名された店をダイレクトで予約できるシステムに方向転換したという。

外部に飲食店の空席データベースを解放したところ、googleの検索順位も上がり多くの人の目に触れるようになったが、今度は人気店を中心に混乱を招き飲食店からクレームが入る。

「送客自体はできていて営業もとれていたので、たとえばキュレーションメディアのような形でユーザーを集め店舗に送客するビジネスもできなくはなかった。ただそれは他の会社でもできることだし、別の形で社会に必要とされるビジネスをやりたいと思い2015年10月にクローズを決めた」(森田氏)

あらためてゼロから事業アイデアを練る中で行き着いたのは、森田氏にとって“なじみ”のある花卉業界だった。実は森田氏の実家は花の生産者。野菜や魚に比べても卸売市場を経由する割合が高く、顧客の声が作り手に届いていないという課題をテクノロジーで解決するべく、HitoHanaを立ち上げた。

「これまでの約1年は実際に花卉(かき)業界に入って学習してきたフェーズ。その中で現場のニーズにも気づき、HitoHanaやHitoHana for Businessをリリースしてきた。これからは学んできたことや蓄積してきたものとテクノロジーを掛け合わせて新しいモデルを作っていきたい」(森田氏)

その炎は「火事」か、「焚き火」か――SNS上の事故・災害情報をいち早く報道機関に提供するSpecteeが2.7億円調達

カメラを搭載したスマートフォンの世帯保有率が70%を超える今、報道機関ではない僕たち一般人が、事件、事故、災害の第一報を伝えることができる世の中になった。そんな中、報道機関もSNS上にアップされた画像や動画をニュース番組などに利用するケースが増えている。

そこで活躍するのが、Specteeが展開するSNS速報サービスの「Spectee(スペクティ)」だ。同社は9月25日、YJキャピタル共同通信イメージズみずほキャピタルアルコパートナーズクオラス、および元マイクロソフト社長の成毛眞氏などから総額2.7億円を調達したと発表した。

Specteeは、SNS上にアップロードされた事故や災害の画像、動画、テキストをAIが自動収集し、報道機関向けにいち早く配信するサービスだ。同社の画像解析技術は高く、画像に写る炎が「火事」なのか、それとも単なる「焚き火」なのかを見分けることもできる。周りにいる人々が炎からどれほど離れているか、そして、その人たちがどのような表情をしているのかなどを総合的に分析して判断するのだ。

同社は1つの事象ごとに複数の画像・動画をまとめ、それを報道機関向けに提供するダッシュボード上にリアルタイムでアップロードする。報道機関がそれをニュースにすると判断した場合、SNSユーザーに画像や動画の使用許諾を取るという流れだ。

Specteeはこれまでに、テレビ局と新聞社あわせて100社以上を顧客として獲得している。Spectee代表取締役の村上健治郎氏は、「独立系の地方テレビ局などをのぞけば、日本のテレビ局はほぼカバーできている」と語る。

画像解析の優位性

日本にはSpecteeと同様のサービスを提供する企業は他にもある。データセクションJX通信社などがその例だ。

それらの競合サービスとの違いについて、村上氏は「情報を提供するスピードは、正直どこも似たようなもの。しかし、Specteeの精度は他サービスよりも優れていると考える。他サービスはテキスト解析をベースにしたものが多いが、それでは事故や災害とは関係のない情報も流れてきてしまう」と話す。

それでは、ちょっと簡単な検証をしてみよう。Twitterの検索窓で「火事」と入力してみると以下のような結果になった。

検索結果のなかには本物の火事を映した画像もあるが、まったく関係のない画像も表示されていることが分かる。もちろん、他社サービスのテキスト解析が単なる文字検索と同等の精度だとは思わないけれど、テキスト解析では関係のない情報も流れてきてしまうという村上氏の主張には納得できる。

「たとえば、辛いラーメンを食べて『口のなかが火事』というようなツイートが表示される可能性もある。ユーザーが火事の現場を目撃して画像をツイートするとき、実際には『火事だ!』ではなく『やばい!』とだけコメントする人も多い」(村上氏)

品詞分解して見出しを自動生成

画像解析技術と並び、Specteeの肝となる技術がもう1つある。複数のテキストを品詞分解することでニュースの見出しを自動的に生成する技術だ。

Specteeのダッシュボードには、ユーザーがSNS上にアップロードした画像・動画に加えて、そのニュースを要約した“見出し”が表示される。複数のテキストを品詞分解し、その中から関連度の高い文字ピックアップして組み合わせることで、「北海道のコンビニで火事」などの見出しを自動的に付けているのだ。そして、Specteeはその見出しを音声で読み上げる機能も搭載している。

「ニュース記者もSpecteeのダッシュボードにずっと張り付いている訳にはいかない。音声で見出しを読み上げれば、記者は他の仕事をしながらでも情報をフォローできるので、この機能には定評がある。しかし、そもそも見出しを生成できなければ読み上げることもできない。だから、見出しを生成する技術はSpecteeにとってコア技術の1つでもあるのです」(村上氏)

チーム運営機能の追加と海外展開

今回の資金調達で2.7億円を手にしたSpecteeは、ダッシュボードへの機能追加と海外展開を目指す。

現在のダッシュボードは、SNS上の情報を収集して報道機関に配信するという機能のみが搭載されている。しかし、報道機関は1つのニュースに複数の担当者がつくことも多く、こなすべきタスクも多い。素材の使用許諾を取らなければならないし、取材もしなければならない。

そこで、Specteeはダッシュボート上の画像や動画にコメントを追加できる機能や、ステータスを管理(「使用許諾を取得中」など)する機能などを追加することで、チームでの運営がより簡単になる仕組みを取り入れる予定だ。

また、Specteeは海外展開にも意欲的だ。特定の業界だけをターゲットにする以上、限られたパイを取り尽くせばおのずと海外に出て行く必要がある。また、画像解析をベースとするSpecteeは、テキスト解析ベースのサービスと違って言語の壁がなく、海外展開もしやすい。

Specteeは海外展開の第1弾として、2017年6月にAP通信との業務提携を発表。これにより、SpecteeはAP通信が展開する映像配信サービス「AP Video Hub」を通じて、収集した映像を海外の報道機関に販売することが可能になった。

映像の販売は売り切り方式で、単価の相場は約300ドル。Specteeの取り分はその60%だという。AP Video Hubに日本企業が参加するのはこれが初めてのことだ。

2016年6〜8月における海外への動画販売数の割合

「昨年の終わりから今年はじめにかけて、海外の報道機関にダッシュボードを直接販売しようとしていた時期もあった。しかし、それには現地での営業やサポートに人員が必要で、今のSpecteeの体力では難しいことが分かった。それならば、当面は海外のプラットフォーマーに乗っかってしまうのが得策だと考えた」と村上氏は話す。

2014年2月に創業のSpecteeは、これまでにフジテレビなどから推定1億円前後の資金調達を実施している。

そうそう、同社は昨年のTechCrunch Tokyoで開催されたスタートアップバトルの参加企業でもある。もちろん今年のTechCrunch Tokyoでもスタートアップバトルを開催するので、創業3年未満のスタートアップ諸君はぜひ参加してもらいたい

Specteeのチームメンバー。前列左から2番目が代表取締役の村上健治郎氏。

福岡発AI・IoTスタートアップのスカイディスクが7.4億円を調達、提供分野の拡大と海外展開目指す

AIやIoT を活用したソリューションを提供するスカイディスクは10月3日、ニッセイ・キャピタル、 DG Daiwa Ventures、環境エネルギー投資、山口キャピタル、加賀電子、ドーガンベータ、アーキタイプベンチャーズを引受先とする第三者割当増資により、総額7.4億円を調達したことを明らかにした。

スカイディスクは2013年に福岡で設立。2016年の1月にニッセイ・キャピタル、アーキタイプベンチャーズ、ドーガンが運営するファンドから1億円を調達していて、今回はそれに続く資金調達となる。

センサデバイスからAI分析サービスまでワンストップで提供

スカイディスクの特徴はAI・IoTを現場で導入するのに必要な機能をワンストップで提供していることだ。

具体的にはデータを取得するための「センサデバイス」、そのデータをクラウドに届けるための「通信システム」、取得したデータを蓄積する「データ蓄積クラウド」、貯まったデータを分析するための「AI分析・学習モデル」といった技術やシステムを全て自社で保有。様々な業界の課題に合わせて、IoTとAIを活用したソリューションを提供している。

その1つが先日TechCrunchでも紹介した、スマホのマイク機能を使って取得した「音」により、設備機器の異常診断ができる「スマート聴診棒」だ。

従来は熟練の担当者が機器の発する音をたよりに行っていた異常診断業務。高度な技術や経験が必要になる属人的な業務であり、後世へノウハウを継承することも現場の課題となっていた。

そこでスカイディスクではIoTとAIを活用し、若手の担当者でも対応できる仕組みを構築。ある電力会社のニーズからできあがったシステムだったが、他社でも同様の課題を抱えていることを知り、正式なサービスとしてリリースした。

スマート聴診棒

設備保全分野に限らず、スカイディスクでは農家向けにハウスの気温や湿度などを自動測定できるシステムや、フィットネススタジオ向けに施設内の室温や酸素濃度を感知するシステムなども提供している。

プロダクトアウト型から、マーケットイン型の企業体へ変化

「(2016年1月に)出資を受けてからビジネスサイドのメンバーも増え、プロダクトアウト型の企業体からマーケットイン型へシフトしてきている。顧客のニーズや痛みをAIやIoTでいかに解決していくのか探るアプローチへ変わった結果、スマート聴診棒のようなサービスが生まれた」

そう話すのは、スカイディスク代表取締役CEOの橋本司氏。この1年半ほどで5名だった同社の社員は約25名までに増えた。事業が前進するきっかけになったのは、チーム編成が変わったことに加え顧客の変化もあったからだという。

「以前は『IoTって何?』という顧客が多かったが、今では『AIやIoTを活用してこのような課題を解決できないか?』という声が増えた。問い合わせもIoT推進部のような新設された部署だけでなく、実際に課題を抱えている事業部からいただくように変わってきている。現場の課題が明確なため取り組みやすく、仮に対応できない場合も断りやすい。状況判断のサイクルが早くなり、事業の成長に繋がっている」(橋本氏)

スカイディスク代表取締役CEOの橋本司氏

この1、2年ほどで「AIやIoTの活用に貪欲になった企業が増えてきている」(橋本氏)という実感があるからこそ、さらに多くの顧客に自社の技術を提供できるように資金調達へと踏み切った。今後スカイディスクではAIエンジニアやビジネス開発人員を増やした上で、「提供分野の拡大」と「海外展開」の2つに取り組む。

たとえば現在同社が注力している設備保全分野では、工場やビルの機械装置だけでなく、鉄道やトンネル、橋梁といったインフラにも拡大していきたい考えだ。扱うデータについてもスマート聴診棒のような「音」に加え、「振動・電流」から故障予兆が検知できるサービスを準備し顧客のニーズに応える。

また九州工業大学と介護領域でのIoT活用に関する共同研究をスタート。これまで着手できていなかった分野でもチャレンジを始めていく計画だ。

そしてAIやIoTを活用したサービスを提供できるのは、日本国内の企業だけではない。特に設備保全の問題などは世界でも共通する部分が多いという。橋本氏によると「主にアジア圏で実際に話が出てきている」そうだ。日本で作った事例の海外展開やその逆パターンなど、これから1、2年で国を超えた取り組みも行っていくという。

データでホテルの適正価格を自動算出、「MagicPrice」運営の空が8000万円調達

データ分析を駆使してホテルの適正価格を算出する「MagicPrice」を提供する空(そら)は、500 Startups Japan大和企業投資日本政策金融公庫、および複数のエンジェル投資家から総額8000万円を調達した。

2016年7月に行ったシードラウンドを合わせ、同社の累計調達金額は約1億円になるという。

空が提供するMagicPriceはホテル向けに提供するBtoBサービス。宿泊予約データを分析することで、ホテルなどの適切な料金設定を可能にするツールだ。

適正価格の予測にはまず、特定の月や曜日ごとの過去の傾向を分析し、その日の「ベース価格」を算出する。その後、近隣ホテルの料金設定や近所でイベントがあるかなどの外部要因によってベース価格を加減し、最終的に適正価格を割り出すという仕組みだ。

MagicPriceは、年に数回の季節要因だけでなく、その時々に確定している予約数の数など、需給要因による適正価格の変動も加味して、それをリアルタイムで反映するという。また、外部のホテル予約サイトの宿泊料金をMagicPriceが自動で適正価格に設定する機能も備えられている。

空代表取締役の松村大貴氏は、「たとえば、現在と1週間後の価格は予約状況などの要因によって適正価格がまったく異なることもある。MagicPriceはホテルの料金設定を継続的に改善するためのサービスだ」と語る。

インプットするデータは2種類。ホテル側のシステムから取り込むデータと、外部Webサイトからのデータだ。

2017年3月、空はホテル予約システム開発大手のダイナテックと事業提携を結び、同社の予約システムとMagicPriceを統合した。これにより、ホテルがダイナテック製のシステムを使っている場合は過去の宿泊予約データをMagicPriceに取り込むことが可能になった。

そのほかにも、MagicPriceは外部の旅行予約サイトから過去の宿泊価格データを取得している。

2016年7月にリリースしたMagicPriceの料金は月額3〜6万円(ホテルの規模により変動)。これまでに顧客として獲得したホテルの数は数十社だ。

「改善」と「効果測定」

2017年8月、空はMagicPriceに続き、第2弾目サービスとなる「ホテル番付」をリリースした。

ホテル番付は、MagicPriceと同じくホテル業界に向けたBtoBサービス。1万軒以上のホテル業績データをもとに、現在の料金設定が本当に業績向上に結びついているのかを把握するための効果測定ツールだ。

例えば、あるホテルが宿泊料金を見直した結果、前年同期比で売上があがったとしよう。でも、それが適切な料金設定によるものなのかは分からない。たまたまインバウンド旅行者が多かったのかもしれないし、近くでイベントがあったのかもしれない。料金設定が業績向上の要因になったかどうかは、近隣にある他のホテルと業績を比べて見なければ分からないのだ。

ユーザーがホテル番付を利用することで、自社の業績データと他社のデータを分析し、宿泊料金の見直しが業績向上にどれだけ寄与しているか調べることが可能だ。

でも、SORAは1万軒ものホテルの業績データをどうやって取得しているのだろう。松村氏によれば、ホテル番付はネット上に公開されている各ホテルの価格情報と客数情報からそれぞれの業績を推定しているのだそうだ。

上の画像にもあるように、SORAは各ホテルの毎日の販売価格と残り室数を記録し、前日との差から最低でも◯◯室、◯◯円分は販売されたことを計算する。そして、それらの数字を足し合わせて、各ホテルの売上や稼働率の指標を算出しているという。

「MagicPriceがホテルの料金設定を改善するためのサービスだとしたら、ホテル番付はその効果を測定するためのサービス。いわば、アドテク業界のGoogleAnalyticsのようなものです」(松村氏)

ホテル番付は無料のサービスで、リリースから約1ヶ月に約500軒以上のホテルが同サービスを利用しているという。

「適正価格の算出技術」を軸に、各業界へ

ホテル業界向けのサービスを複数展開しているSORAだが、彼らが目指しているのは「ホテルスタートアップ」ではないという。

その社名の通り、2015年創業のSORAはもともと、航空チケットの適正価格を算出するサービスを考案するスタートアップだった。しかし松村氏は、ほんの数社がシェアの大半を握る航空業界を、スタートアップであるSORAの営業体力で突破するのは困難だと判断。

創業時のヒアリングから、中小規模の事業者が数多く存在し、スタートアップでもサービスを浸透させられる可能性の高いホテル業界にまずはターゲットを決めたのだそうだ。

「私たちはテクノロジーで世界中の料金ミスマッチをなくしたいと思っています」と松村氏はいう。

「ビッグデータ分析が可能になっただけでなく、料金表は紙からオンラインに変わった。つまり、料金を自由に何度でも変更することが可能になった。これまで固定されていた価格がすべて、日々変動する適正価格に置き換わる時代が来ると確信している」(松村氏)

写真右から3番目が空代表取締役の松村大貴氏。

スマホ上の指の動きで性格診断―、HR TechのIGSがシリーズAで2.5億円を追加調達

あなたは外交的ですか? と聞かれてイエス・ノーと答える性格診断って意味が分からないよね。それが「コミュニケーション能力」を求める企業への就職活動の一環なら、答えはイエス以外にないし、実際就活生の8割は「外交的」と答えるそうだ。けれど、これをスマホでやると、一瞬の迷いとか指の軌跡からまた違った診断が可能なのだそうだ。

そんなテクノロジーを使ったスタートアップ企業のIGS(Instution for a Global Society)が今日、慶応イノベーション・イニシアティブ(KII)とみやこキャピタル(京大ファンドの認定運営事業者)からシリーズAラウンドとして合計2.5億円の資金調達を実施したことを発表した。これまでIGSは2016年9月に東京理科大インベストメント、東京大学エッジキャピタルから3.5億円を調達していて、累計6億円の資金調達額となる。IGSは2010年の創業で、元々は自己資本で教育コンサルをしていた。

IGSは主に2つの事業を展開している。

スマホによる診断では指の動きも見ているそう

1つは2016年にスタートした採用支援の「GROW」で、もう1つは2014年スタートのオンライン英語システム「e-Spire」。いずれも人工知能活用をうたう。

GROWは、周囲の人々に能力や適性を評価してもらう「コンピテンシー360度評価システム」や潜在性格診断をもとに、新卒採用スクリーニング、組織分析のサービスを提供。現在、大手企業を中心に50社以上の導入実績があるという。冒頭に書いたようにスマホ上で指の動きをみるのが特徴だ。

例えば「Big 5」と言われる心理学で良く用いられる性格診断テストでも、自分を偽れる。ただ、実際に回答しているときの身体反応をみると嫌悪感は隠せない。かすかに反応が遅れるとか、ちょっと左に動くとか、そうしたことが起こる。完全なポーカーフェイスというのは無理なのだそうだ。といっても嘘を見抜くのが目的というわけではない。内向的でも活躍できる職場・職種はあるわけで、そうしたマッチングをするのが目的だ。適合率をみて企業に推薦するといったサービスを開始しているという。ちなみに「気質」自体は生まれつきのものであっても、社会的コンピテンシーというのは本人の自覚や努力で獲得できる。これが「成長」だというのがIGSが考えるところだとか。

組織の360度評価では、各自個人で30個のパラメーターを確定する。このとき、GoogleのPageRankように評価者の実績も反映するなどして評価者の評価を補正するようなデータ分析をしているのがIGSの強みという。こうしたパラメーターを見た上で、たとえば「メンター・メンティー」の組み合わせとして「論理的思考の強い人は、メンターに論理的思考の強い人を組み合わせたほうが良い」などという人材最適配置ができるそうだ。

オンライン英語システムのe-Spireは、TOEFLの問題形式を意識した学習コンテンツと教員向けモニタリングツールを提供している。2017年6月からは人工知能による英語エッセイの児童採点機能を搭載していて、スーパーグローバルハイスクールや国際バカロレア認定校を中心に13校に導入されているそうだ。

完全オーダーメイドのファッションEC「LaFabric」が7.4億円調達

カスタムオーダーファッションレーベル「LaFabric」を展開するライフスタイルデザインは10月2日、グロービス・キャピタル・パートナーズニッセイ・キャピタルSpiral Ventures Japanを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は総額7.4億円だ。

これにより、グロービスの渡邉佑規氏とニッセイキャピタルの永井研行氏が社外取締役に、税理士法人市川会計の市川貴弘氏が監査役に就任する。

ライフスタイルデザインが展開するファッションレーベルのLaFabricでは、顧客の体のサイズを採寸し、そのサイズにピッタリの服をオーダーメードで製作する。

ライフスタイルデザインは都内を中心に5つのリアル店舗を構えており、そこで顧客の採寸を行う。一度測ったサイズはデータとして保存されるため、顧客は次回以降、自分にピッタリのサイズの服を簡単にオーダーすることができる。

ライフスタイルデザイン代表取締役の森雄一郎氏は、「リアル店舗は自社製品の体験スポットという位置づけだ。店舗に来る顧客はオンラインで服を買ったことがない人も多い。そこで、店舗に置いてあるタブレット端末で注文するという体験をしてもらい、ECに対する壁を取り除くという試みもしている」と話す。

オーダーメードということで値段が高いのではと思ったが、そうでもない。スーツは4〜7万円程度の価格帯で、シャツは1万円ほど。ある程度名の通ったブランドよりも低めの値段設定のように思う。

このような特徴から、LaFabricの顧客は平均して40日でリピート購買をしているのだとか。一番の売れ筋は、男性用のスーツとシャツだ(女性向けラインナップはまだない)。

自社製品を自社チャネルで提供するD2Cモデル

ライフスタイルデザインは、自社で企画した商品を自社のチャネルのみで販売するD2Cモデル(Direct to Consumer)を採用している。

そこで問われるのが商品の企画力だ。長年の歴史をもつ他のブランドにも負けない商品作りが必要となる。

その例として同社は、「水の都」とも呼ばれる岐阜県大垣市の伝統的な布地を使用した「THE ROOTSシリーズ」をはじめ、NASAが開発したマイクロカプセルを生地に練り込むことで体温を32度に自動で調節する「THE TECHシリーズ」などユニークな自社製品を開発している。

2015年3月に正式リリースしたLaFabricはこれまで順調に成長を重ね、売上は前年同期比で約550%の伸びを見せているという。

ライフスタイルデザインは今回調達した資金を利用して、幹部クラスの人材の採用、リアル店舗の拡大を行うという。また、これまでにも進めてきた提携工場とのシステム連携を加速させる。

「提携工場のなかには、注文を紙ベースで処理していることも多く、ヒューマンエラーも起きていた。工場とのシステム連携を進めることで、納品までの期間が数日短縮された例もある」(森氏)

ライフスタイルデザインは2012年の創業。同社はこれまでに、ニッセイ・キャピタルなどから4億円の資金調達を実施している。

クラウド監視カメラ「Safie」がオリックスなどから9.7億円を調達、画像解析プラットフォームを目指す

クラウド録画プラットフォーム「Safie(セーフィー)」を運営するセーフィーは9月28日、オリックス、関西電力、キヤノンマーケティングジャパン、NECキャピタルソリューション、ティーガイアを引受先とする第三者割当増資により、総額9.7億円の資金調達を実施したことを明らかにした。今回の調達とあわせて、セーフィーは各社と業務提携も結んでいる。

セーフィーはこれまでソニーネットワークコミュニケーションズから資金調達を行っており、累計の調達額は約13.5億円となる。

Safieの特徴はSafie対応カメラをインターネットにつなぐだけで、遠隔地にいてもスマホやPCからリアルタイムで現地の映像・音声を確認できることだ(録画映像も視聴可能)。従来の監視カメラの場合は専用の録画機器やソフトウェアなどが必要で、一式そろえるのに数十万円かかることも珍しくなかった。

一方Safieの場合はクラウド環境を活用していて、カメラ以外の専門機器は不要。システムの設定も業者に依頼するような複雑なものではない。そのため既存のサービスよりも安価に導入できるうえに、画角や画質も担保。セキュリティについても、オンラインバンキング同等のレベルになっているという。カメラ本体は1万9800円から、クラウド録画サービスは月額1200円から提供している(双方とも税別の料金)。

これまでサービス提供から約3年で、1万台以上のSafie対応カメラを出荷。ビジネスシーンでは小売店における防犯や建設現場のモニタリング、店舗の業務改善などに使われている。一般家庭でも自宅の防犯、高齢者の見守りなどを目的に導入されている。

今回の資本業務提携により、セーフィーは各社と連携して営業基盤の拡大をはかるとともに画像解析連携などの技術開発も促進していく。今後は街や地域、施設の防犯や安全管理だけでなく、ビジネスの効率化やマーケティング支援など利用できるシーンを拡大。監視するだけのカメラから、未来を可視化する画像解析プラットフォームを目指すという。

生産者と消費者を直接つなぐ「ポケットマルシェ」、メルカリなどから1.8億円調達

農家や漁師がスマホを通して生産物を消費者に直接販売できるアプリ「ポケットマルシェ」。同アプリを提供するポケットマルシェは9月29日、メルカリユーグレナPNB-INSPiRE Ethical Fund(以下、PIEF)を引受先とした第三者割当増資を実施した。調達金額は総額1億8000万円だ。

ポケットマルシェは、フリマアプリの「メルカリ」や「フリル」のような個人間で商品を売買できるC2Cサービスだ。しかし、それらとの大きな違いは、商品の出品者はすべて農家や漁師などの生産者であること。

アプリにはユーザーと生産者とがコミュニケーションを取りながら商品を購入できる機能も備わっており、生産者の顔を見ながら食品を購入することができる。

直接販売という手段をアプリで提供

ポケットマルシェは販売価格の15%を手数料として受け取り、消費者は別途送料を支払う。ポケットマルシェ取締役COOの本間勇輝氏は、「生産者がスーパーなどを通す場合、一般論として生産者が受け取るのは販売価格の30%と言われている」と話す。一方のポケットマルシェでは販売価格の85%が生産者の取り分になるので、生産者にとってメリットの大きいサービスだと言えるだろう。

生産者にとってのメリットはそれだけではない。通常の店頭販売とは違い、ポケットマルシェで商品に値付けをするのは、出品者である生産者自身だから、いわゆる「買い叩き」をされる心配もない。

また、スーパーなどは在庫が1キログラムにもならないような希少な生産物を流通に乗せることはあまりない。テレビの旅番組を観ているときに、地方の生産者が「これは珍しいから、東京では食べられないよ」と言っている場面を見たことはないだろうか? そんな希少な食べ物も、ポケットマルシェでは販売できることもメリットの1つだ。

2016年9月にリリースしたポケットマルシェ。現在は約330名の生産者がアプリを通して商品を販売している。商品を購入するユーザーの数は非公開だ。

「農林水産省が発表している統計を見ると、生産者全体は1年に10万人単位で減っている一方で、実は新規の就農者は増えていることが分かる。しかし、補助金を受け取ることができる5年を過ぎると、生計が立たず、その内の3割が辞めてしまう。そういった人たちに、選択肢の1つとして直接販売という手段を提供するのがポケットマルシェのミッションでもある」と本間氏は話す。

農林水産基本データ集より

メルカリとの資本業務提携

そんなポケットマルシェは今回、VCだけでなくフリマアプリを手がけるメルカリ、そしてミドリムシを活用した食品や健康食品を手がけるユーグレナから資金調達を実施している。

これらの事業会社との具体的な協働案については「これから」と本間氏は話すが、なかでもメルカリとの資本提携は注目すべきところだろう。メルカリはフリマアプリの「メルカリ」を軸に、本やCDに特化した「メルカリ カウル」、ブランド品に特化した「メルカリ メゾンズ」などをバーティカルに展開してきた。

そんなメルカリが「食」の分野にも進出する可能性は大いにあるし、“C2C”という共通点をもつメルカリとポケットマルシェの2社が共同で食分野の新アプリを提供するというのも、今後の展開としては十分に考えられるだろう。

福岡のヌーラボが1億円を調達しオランダに新拠点、コラボレーションツールの「Backlog」や「Cacoo」などクロスセルを狙う

Backlog」「Cacoo」「Typetalk」という3つのツールを通じて、チームのコラボレーションを支援するヌーラボ。同社は9月28日、East Venturesを引受先とする第三者割当増資により1億円を調達したことを明らかにした。

今回の資金調達により、オランダのアムステルダムに新たな拠点を開設。開発体制や海外でのマーケティングを強化していくことに加え、各プロダクトの機能改善やプロダクト間の連携を強めながら、さらなる成長を目指していく。

3つのサービスでチームのコラボレーションを促進

プロジェクト管理ツールBacklog

「チームのコラボレーションを促進する」という軸の下、現在ヌーラボでは3つのサービスを提供。中でもオンライン上でワイヤーフレームや組織図を手軽に作成できるCacooは現在280万人のユーザーを抱える。海外ユーザー比率は86.2%にのぼり、100ヵ国以上で使われている点が特徴だ。

リリースから10年以上が経過したプロジェクト管理ツールBacklog(2005年ベータ版リリース)は現在5万社、78万人が利用。有償版を利用する企業数は5000社を超え、同社の売り上げの8割以上を占める主力サービスとなっている。

2014年にリリースしたビジネスチャットツールTypetalkはCacooやBacklogに比べるとまだユーザー数は少ないが、「福岡市トライアル優良商品」に認定され福岡市役所にも導入されている。Slackやチャットワークを筆頭に競合するツールも多いが、単独での機能面やマーケティングの強化に加えて、他の2サービスとの連携を強めてシェア拡大を目指していく。

さらなる成長を目指して、投資家から初の資金調達

ヌーラボは2004年に代表取締役の橋本正徳氏ら3人が福岡で創業したスタートアップだ。現在も本社は福岡だが、東京と京都に加えニューヨークとシンガポールにも拠点を保有し、他地域で事業を展開。Cacooを筆頭に海外ユーザーも多く抱えている。

2013年に受託をやめ、それ以降は自社サービスに集中。2014年リリースのTypetalkだけでなく、長年提供してきたCacoo(2009年ベータ版リリース)やBacklogも継続的に成長している。ヌーラボの昨年度の売上高は約6億円。今季はさらに140%の成長を見込んでいるという。

2014年リリースのTypetalk

実際のところ「自己資金だけでやれないこともない」と橋本氏は話すが、今後成長スピードをさらに加速させるため、今回初めて外部の投資家から資金調達を実施。オランダ・アムステルダムに拠点を新設することも決めた。

「国内、海外のようなロケーションを特に意識はしていない。それよりも自分たちの提供するツールを使ってくれる可能性のある人たちがいるから、世界にもでていこうという考え方。これまでグローバルで展開してきて、特に先進国では物価の差もあって資本力がすごく必要だということを実感した。今まで以上に海外展開にも力を入れていくことを踏まえて、外部からの資金調達を決めた」(橋本氏)

ヌーラボに出資したEast Venturesは、日本国内だけでなくアジアを中心に海外スタートアップにも投資をしている。グローバル展開の実績があるスタートアップ、VCというのが双方にとって好印象で、今回の話が実現したそうだ。

プロダクト間の連携を強化し、クロスセルを本格化

調達した資金はマーケティング及び開発体制の強化に用いる。現時点でもヌーラボにおける外国人(第一言語が日本語ではない)比率は25%ほど。ただ「作るチームがグローバライズされていないと、グローバルなプロダクトは作れない」(橋本氏)という考えの下、今後はさらにこの比率を高めるべく地域に問わず採用をしていくつもりだという。

プロダクトについては個々で機能改善をしつつ、近年は相互連携の強化にも力を入れている。9月にはそれまで対応できていなかったBacklog側の準備が整い、全サービスの契約や支払い、ユーザー管理などを1つのヌーラボアカウントでできるようになった。

これを機にヌーラボでは今後クロスセルを本格化する。たとえば海外のCacooしか使っていないユーザーにBacklogやTypetalkも合わせて使ってもらうなど、ユーザー数の多いCacooを起点にBacklogなどの有料ユーザーを獲得していくのが狙いだ。

Cacooは今のところ無料ユーザーが多く、「有料で使ってもらえるユーザーをいかに増やせるか」が目下の課題だそう。海外ユーザーの方が有料課金のハードルが高いというから、Cacooで顧客との接点を増やしつつ、BacklogやTypetalkで課金してもらうということもありえそうだ。

280万人が使うCacoo

ちなみになぜ新拠点にアムステルダムを選んだのだろうか? 橋本氏によると「(スタートアップ文化が盛り上がってきているという)時代の流れ的にアムステルダムかベルリンかで悩んだが、福岡からのアクセスや英語の通じやすさなどを検討してアムステルダムに決めた」のだという。(橋本氏がテクノミュージック好きであることも、気持ちの面では多少影響しているそうだ)。

ヌーラボにとってはアジア展開におけるシンガポール拠点と同じような位置付けで、アムステルダムをハブとしてヨーロッパでも事業を拡げていく計画だ。

動きをトラッキングするハイテク衣服、東大発ベンチャーXenomaが2億円調達

スマートアパレル「e-skin」を展開する東大発ベンチャーのXenomaは9月27日、東京大学協創プラットフォーム開発Beyond Next Ventures国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)を引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は2億円だ。

以前にもTechCrunch Japanで紹介したe-skinは、通常の服のような着心地でありながらユーザーの動きをトラッキングできる“IoT衣服”だ。

e-skinに使用されているのは、Xenomaが開発した「布状電子回路基板Printed Circuit Fabric(PCF)」と呼ばれる変形・伸縮可能な電子回路基盤。高い引張耐久性を持つだけでなく、洗濯にも耐える。

「e-skin Shirt」という名のTシャツをはおり、胸の部分にコントローラーとなる「e-skin Hub」を取り付けて使用する。Shirtには14個の伸縮センサーが搭載されていて、Hubには加速度計、ジャイロセンサー、6軸のモーションセンサーが備わっている。Bluetooth経由でスマホやPCに接続して、データを取り込む仕組みだ。

e-skinの特徴は、屋外を移動しながらでもユーザーの動きをトラッキングできる点だ。その特徴を生かし、Xenomaは屋外で行なわれるスポーツのゴルフでスイングの正しさを計測する「Golf-Swing」を開発した。

「将来的には人の生体情報ビッグデータから予防医療や安心・安全な社会の実現に貢献することを目指す」(Xenomaプレスリリースより)

Xenomaは、東京大学の染谷研究室およびJST ERATO染谷生体調和プロジェクトからのスピンオフとして誕生したスタートアップ。設立は2015年11月だ。また、2017年9月にはクラウドファンディングプラットフォームのKickstarterでキャンペーンをローンチ。目標額である5万ドルを超える支援を獲得した。

同社はこれまでに、今回も出資に参加したBeyond Next Venturesをリード投資家とする調達ラウンドで1億8500万円を調達している(2016年4月)。

Xenomaはプレスリリースのなかで、今回調達した資金を利用して「プロトタイピングから量産までの一貫した開発力を生かし、様々なセンサーを搭載したカスタマイズe-skinの法人向け受託開発に対応するための体制を強化」するとしている。

個人向けへの提供は2019年をめどに開始する予定だという。

ゲイツ、ザック、ベゾスらがVillage Globalを支援――スタートアップ育成のシード・ファンドがスタート

Y Combinator出身のスタートアップ紹介サイト、Product Huntの社員1号、Erik Torenbergは有望なスタートアップを見つけて世界に紹介するだけでなく、自ら投資しようとしている。今日(米国時間9/26)、静かにスタートしたVillage Globalは、シード資金とプレ・シード資金を最初期段階のスタートアップに投資することを目的とするベンチャーファンドだ。

このファンドは起業家に資金を提供するだけでなく、起業家と世界的に有名なメンターとを結びつけようとしている。Facebookのマーク・ザッカーバーグ、Amazonのジェフ・ベゾス、LinkedInのリード・ホフマン、Googleのエリック・シュミット、Yahooのマリッサ・メイヤー、Microsoftのビル・ゲイツといったスーパースターがリミッテッド・パートナー(LP)として、またアドバイザーとしてVillage Globalに加わっている。

Village Globalのパッケージ、Erik Torenberg

SEC〔アメリカ証券取引委員会〕の規則によりベンチャーキャピタリストは資金調達中のファンドについて公に論ずることを禁じられているためTorenbergはわれわれの取材に答えることを控えた。Village Global自体はファンドの規模について明らかにしなかったものの、同社が規則に従って6月にSECへ提出した書類をTechCrunchが調べところによれば、調達目標とする金額は5000万ドルだ。ただし、資金調達が完了していないため、実際に集まった資金の総額はまだ分からない。

上に挙げた以外にも前ニューヨーク市長、マイク・ブルームバーグ、VMWareのファウンダー、ダイアン・グリーン、DisneyのCEO、ボブ・アイガーなど数多くの著名人がこのファンドに加わろうとしている。皆大富豪だから、目的は利益ではなさそうだ。Village Globalは事業を紹介するリリースで「こうしたイノベーターたちはスタートアップ・ゲームへの関心を失っていない。彼らは自らの企業運営の経験からさまざまな知恵を起業家に伝えたいと考えている。同時に次世代の起業家たちとの交流を通して新たな洞察を得ようとしている」と書いている。

実際、ここに名前を挙げたテクノロジー界の巨人たちがVillage Globalに信頼を置く理由は、TorenbergがProduct Huntを通じて「草の根」的に次世代の起業家を熟知しているからだろう。

ホフマンと共著でスタートアップの戦略の教科書、スタートアップ シリコンバレー流成功する自己実現の秘訣(日経BP)(The Startup of You)を書いた後、ホフマンの側近としてLinkedInに加わったベン・カスノーカがVillage Globalのチームに加わった。またパートナーには IACの事業開発担当幹部、500 StartupsのIR部門の責任者、Queensbridgeのパートナーを歴任したAdam Corey、Cheggの最高ビジネス責任者、Harvard Business Schoolの客員起業家、Anne Dwane、SuccessFactorsの前副社長でCanaanのパートナー、Ross Fubiniなどが含まれる。

最初期のスタートアップへの投資を目的とするため、Village Globalはさほど巨額の資金を集めたりAndreessen HorowitzやGV(以前のGoogle Ventures)のような大規模な組織なしに意味のある影響を与えることができる。人材獲得や組織のデザインの面でも負担が軽いはずだ。その代わり、Village Globalはテクノロジー界のスターをアドバイザーとして網羅しようとしている。 【略】

Village Globalでは一般のベンチャーキャピタルのように少数の中心的メンバーがすべての投資の決定を行うのではなく、幅広いスカウトのネットワークを通じて行おうとしている。この「スカウト・ネットワーク」のリーダーにはYouTubeのVRの責任者、Erin Teague、Quoraの副社長、Sarah Smith、Dropboxの社員1号、Aston Motes、Target、Hilton、 Verizon[TechCrunchの親会社]の取締役を務めるMel Healeyなどがいる。

Village Globalのビジネスモデルはスタートアップの起業は投資家にとって二極化―大成功を収めるかゼロになるかで、その中間が少ない―という現実を前提としている。Village Globalはスタートアップのスカウトに有利な条件を示しているが、これはいくつかの大成功ですべての投資の元を取ろうという戦略だろう。

上場や買収などにより現金化に成功し資産を築いたファウンダーなど富裕な個人が続々と初期段階のスタートアップへの投資に参入してくる現状なのでこの分野は今後激しい競争にさらされるはずだ。しかし幅広いネットワークとテクノロジー界のスターをメンターに擁することでVillage Globalから次のユニコーン〔企業価値10億ドル以上のスタートアップ〕が生まれるなら、健全なエコシステムを築くことができるだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

案件ごとに情報を集約し業務を効率化、ビジネスコラボレーションツールのOneteamが3.8億円を調達

ビジネス向けのコミュニケーションツール「Oneteam」を提供するOneteamは9月25日、大和企業投資、ニッセイ・キャピタル、FFGベンチャービジネスパートナーズ、いわぎん事業創造キャピタル、Fringe81を引受先とした総額3.8億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

なおFringe81とは業務提携も結んでおり、セールスやマーケティング面、および商品開発での協業に加えて同社が持つ事業展開ノウハウの提供も受けるという。また提携の一環としてFringe81取締役COOの松島稔氏がOneteamの社外取締役に就任する。

Oneteamはこれまで2015年5月にサイバーエージェント・ベンチャーズから約6000万円、2016年1月にニッセイ・キャピタルから2億円を調達。今回のラウンドで累計の調達額は約6.4億円となる。

有料ユーザー数はここ1年ほどで約10倍、大手企業にも導入

Oneteamは課題や目的、案件ごとに「トピック」を立て、情報共有や議論を行っていくことが特徴のコミュニケーションツールだ。

仕事で使うコミュニケーションツールといえば、SlackやChatWorkを思い浮かべる人も多いかもしれない。ただそれらのツールでは最初に「グループ」という概念があり、作成したグループ内で様々な案件のやりとりをしていく。一方Oneteamではまず案件ごとにトピックを作成。1つ1つのトピックごとに、関係者をアサインするという仕組みだ。

そのため1つのグループに様々な情報が入り混じること、情報が流れてしまい蓄積できないことを防げる。プロジェクトごとに議事録やレポート、提案資料などの情報を集約し「ストック」化できるとともに、チャットを通じて「フロー」情報をやりとりすることも可能。議事録や日報などまとまった情報が書き込みやすいように、テンプレート機能も備える。

「従来はメッセンジャーツールを使っていたが、ログが残らないことや複数の案件に関するやりとりが混在してしまうことを課題に感じ、Oneteamを導入する企業が多い。Excelやメールなど複数のツールに散らばっていた会議の情報をOneteamに集約することで、業務の生産性向上に活かしていただいている事例も増えてきた」(Oneteam取締役の山田正浩氏)

山田氏によると現在は「1つのプロジェクトに多くの人が関わる、広告やメディア業界・部署での利用が増えている」という。2016年6月にサービス有料化を始めた時から、有料ユーザー数は約10倍に拡大。パーソルキャリアのような大手企業から中小企業まで幅広く導入が進んでいて、その成長を加速するために今回資金調達を実施した。

Oneteamが目指しているのは単なる情報共有ツールではなく、チームメンバーが一緒に働くワークプレイス。「業務の生産性向上にしっかりとつながるサービスを作っていく」(山田氏)ことに向けて、今後は会社や部署をこえてコラボレーションできる機能やタスク管理機能やファイルの一覧表示機能などをリリースし、利便性の向上をはかる。