まもなくFacebook(フェイスブック)は、クラウドゲームの世界に参入する、最新のハイテクの巨人になるだろう。彼らのアプローチは、Microsoft(マイクロソフト)やGoogle(グーグル)が構築したものとは異なるが、中心的な問題を抱えている。それはApple(アップル)への対応だ。
フェイスブックは、Stadia(スタディア)やxCloud(xクラウド)に対抗するようなコンソールゲームを開発してはいない、その代わりに彼らが集中するのはモバイルゲームだ。すでにローカルのデバイス実行できるモバイルゲームを、クラウドストリーム配信するのはなぜだろう?フェイスブックが目指しているのは、ユーザーがより迅速にゲーム参加できるようにすることで、ゲーム広告を見ていることと実際にそのゲームをプレイすることの間の垣根を下げることだ。ユーザーは何もダウンロードせずにそのままゲームの中に入ることができる、最終的にモバイルアプリストアからそのタイトルをダウンロードすれば、中断したところからゲームを再開することができる。
フェイスブックのサービスは、デスクトップ上のウェブとAndroid(アンドロイド)向けにローンチされiOSは除外される。フェイスブックが、アップルのApp Store利用規約に概説されていると説明するユーザビリティ制限がその理由だ。
新しいプラットフォームを使うと、ユーザーはフェイスブックの広告から、直接モバイルゲームをプレイを開始することができる。(画像クレジット:Facebook)
2020年のアップルは、Spotify(スポティファイ)、Tinder(ティンダー)、Fortnite(フォートナイト)などの主要アプリケーションの開発者たちから、 App Storeからダウンロードしたアプリの収益から徴収する手数料の多さで猛烈な攻撃を受けてきた。一方、クラウドゲームプラットフォームを構築することを目指す企業の苦悩はますます微妙なものとなり、これらのプラットフォームが、基本的にアップルデバイス上で動作することがどのように許されるのかにつながっている。
アップルは当初、かつてAppStoreでは禁止されてきたグーグルやマイクロソフトのクラウドゲームアプリへの道筋の提供に及び腰だった。iPhoneを提供するアップルは、最近これらのアプリケーションが存在できるようにポリシーを更新したが、プラットフォームメーカーたちが希望していたものよりも複雑な内容であり、メーカーのプラットフォーム上でゲームタイトルをクラウドストリーミングできるようにするためには、まずユーザーをApp Storeに送るよう強制した。
大規模なシングルプレイヤー型の大作ゲームをダウンロードしようとするユーザーにとって、そのような短い回り道は不便だが、長年フェイスブックのゲームエグゼクティブを務めるJason Rub(ジェイソン・ルービン)氏は、このアップルの契約条件は、何もダウンロードせずにモバイルゲームのプレイをすぐに始める手段を提供しようとしているフェイスブックのプラットフォーム構想に対しては、役に立たないという。
ルービン氏はTechCrunchに対して「消費者体験を悪化させるハードルの連続です」と語る。
アップルはTechCrunchに対して、アップルのガイドラインに従ってフェイスブックのゲーム活動の取り込みを行うために、フェイスブックとの連携を続けていると語った。各ゲームをApp Storeに提出して審査するか、Safari上でサービスを運営することで、プラットフォームはiOSを使うことができるという。
モバイルウェブ上に新しいプラットフォームを構築するという点では、ルービン氏は、現在禁じられているように、iOSアプリのユーザーをブラウザベースのエクスペリエンスに振り向けることができないならば、フェイスブックはその数十億人のユーザーを、主にブラウザからサービスにアクセスするように奨励することはしないという。Zoom(ズーム)会議中に、ルービン氏はこの機能がiOS上でどのように動作させることが可能かを示した、ユーザーがアプリ内の広告をタップすると、モバイル版Safari(サファリ)内でのゲームエクスペリエンスへとリダイレクトされるやり方だ。
「でも、現在はそれをタップしても、ウェブに行くことはできません。アップルは『いや、いや、いや、いや、いや、そんなことはできない』というのです」とルービン氏は語る。「アップルはそれを、自由でオープンなウェブだというかもしれませんが、実際にそのウェブ上で構築できるものは、彼らがコア機能に含めることに決めたものによって限られてしまうのです」。
フェイスブックのPlay副社長ジェイソン・ルービン氏(画像クレジット:Facebook)
ルービン氏はゲーム開発スタジオであるNaughty Dog(ノーティ・ドッグ)を1994年に共同創業したが、その会社は2001年にソニーに買収された。ルービン氏は、2014年に買収が発表されたOculus(オキュラス)に数カ月後に入社して以来、フェイスブックに在籍し続けている。以前ルービン氏は、バーチャルリアリティヘッドセットのゲームエコシステムの管理を担当していたが、2020年になって彼は、フェイスブックのPlay部門担当副社長として、コアなアプリケーションファミリ全体にわたる、同社のゲームの活動を担当することになった。
ゲーム開発者 / プラットフォームの小競り合いに精通したルービン氏は、フェイスブックがアップルに対して抱いている不満と、2020年の夏にアップルを訴えたEpic Games(エピック・ゲームス)からなどの苦情を、すばやく区別してみせた。
「私たちは、グーグル(Android)に対しては、30%を支払っているという事実はきちんとお伝えしておきたいと思います。アップルの問題は、お金に関するものではないのです」とルービン氏はTechCrunchに語る。「もちろん、グーグルが30%を徴収することは妥当かどうかを議論することはできますけどね。しかし、もしアップルが私たちがここで提供しているものを、消費者のみなさんが手に入れる機会を与えてくれるなら、私たちは今すぐアップルに喜んで30%を支払います」。
フェイスブックの経営陣はアップルの高い手数料収益に対して苦言を呈しており、直近ではApp Storeの課金モデルがパンデミックの中で小企業を苦しめていると批判していたが、フェイスブックもゲームに対して30%の手数料を徴収する。この騒動は結局(VERGE記事)、 中小企業がオンラインイベントを開催する際のチケット販売代金に対しては、2020年の年末までアップルが手数料徴収を行わないという発表につながった。
アップルが、主要ゲームプラットフォームが消費者に対して個別にゲームを提供するための道を歩むことに対して首を縦に振らないことは、消費者がこれらのクラウドプラットフォームへシフトすることによって、App Storeの収益の大きな部分が失われかねない事実を強調している。CNBCの推定によれば、アップルは2019年にApp Storeから約500億ドル(約5兆2000億円)の収益をあげている。そしてゲームは長い間、アップルにとって最も利益率の高い部門だった。
フェイスブックはこれを、ゲーマーのための主要なプラットフォームとの困難な戦いと捉えているが、弱者同士の戦いではない。フェイスブックは2019年に約700億ドル(約7兆3000億円)の広告収入を得た。彼らのモバイルゲームスタジオ向け製品の改善は、その数字を増すための意味あるステップとなるだろうし、アップルのApp Storeのルールを脅かすものになるかもしれない。
当分の間、フェイスブックは今回のローンチをかなり控えめに行っていく。ローンチ時に利用可能になる予定のタイトルは5〜10個しかない、とルービン氏は語る。フェイスブックは無料のこのサービスを今週、米国内のいくつかの州で展開する、対象になるのはカリフォルニア州、テキサス州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州、ニュージャージー州、コネチカット州、ロードアイランド州、デラウェア州、ペンシルバニア州、メリーランド州、ワシントンD.C.、バージニア州、ウェストバージニア州などだ。地理的にバラバラな展開が行われる理由は、クラウドゲームの技術的な限界によるものだ。利用しやすいエクスペリエンスを得るには、ユーザーはサービスが展開されるデータセンターの近くにいる必要があるのだ。今後数カ月で米国の他の地域への拡大を目指している、とフェイスブックはいう。
関連記事:
・アップルがApp Storeの規約を改訂、xCloudやStadiaなどのストリーミングゲームプラットフォームには依然厳しい
・Fortniteを削除されたEpic Gamesが反アップルキャンペーンを全力展開、提訴も準備
画像クレジット:Alexander Koerner/Getty Images / Getty Images
[原文へ]
(翻訳:sako)