各国政府からTikTokへのユーザーデータ要求は今年上半期だけで500件

昨年後半にTikTokの親会社ByteDance(バイトダンス)は、各国政府からのユーザーデータ要求件数と、要求に応じた件数の詳細を公開する多数の米国テック企業の仲間入りを果たした。この動きは、TikTokの中国とのつながりについての懸念と、TikTokは繰り返し否定しているが、米国の国家安全にとって脅威になるという非難が渦巻く中、同社に対するかなり懐疑的な見方に対応するものだ。

米国7月9日に公開された同社2回目となる最新の透明性レポートの中で、TikTokは各国政府から今年上半期に緊急リクエストも含め計500件の法的な要求を受けたことを明らかにした。この数字は前年同期比67%増だ。

TikTokはまた、コンテンツ削除の要求を45カ国の政府から受けた。最も要求が多かったインドは、今月初めに安全保障上の懸念を理由に同国でTikTokを禁止した。

しかしこのレポートで目を引くのは、TikTokは利用できないものの親会社のByteDanceが本社を置いている中国についての記載がないことだ。これはそう珍しいことではない。Facebook(フェイスブック)、そしてTwitter(ツイッター)も中国では利用できず、両社とも中国政府から要求を受けたり、要求に応じたりしたことはない。その代わり、ByteDanceは中国本土のユーザー向けに別のビデオアプリDouyinを展開している。

TikTokの広報担当であるHilary McQuaide(ヒラリー・マクキード)氏は「当社は中国政府にユーザーデータを提供したことはなく、もし要求があっても提供はしない」とTechCrunchに語った。「中国政府からの要求でコンテンツを削除したりしないし、削除したこともない。要求されても削除しないだろう」とも述べた。

しかし米国テック業界における透明性確保の動きと一致した同社の取り組みは、議員を含め同社を批判する人々が長らく抱いている恐れを抑制することにはならなさそうだ。議員たちは昨年、米国当局に同社を調査するよう求めた。

TikTokは引き続き、同社が脅威ではなく米国に深く根差していると主張している。今週初め、同社は中国政府が新安全維持法を施行したことを受けて香港から撤退すると発表した。

画像クレジット: Lionel Bonaventure / AFP

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(翻訳:Mizoguchi

TikTokの未来を知る、TikTokが米国市場でも伸びている理由(その3)

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するポッドキャスト「Off Topic」がnoteに投稿した記事を、内容別に3つの記事に分割・転載したものだ。第1部第2部も併せてチェックしてほしい。

TikTokの次の動きは?

TikTokの未来を知るには、Douyinの機能を見るのが一番いい。クリエイター向けのアプリなので、TikTokは今後クリエイターのマネタイズに注力すると思われる。米国ではまだベータ版だが、今後リリースされる機能は動画内のEC機能。DouyinではAlibabaのTaobaoと連携して動画ショッピングが可能になっている。

米国ではFacebookがShopifyと最近Shopsをローンチ。ByteDanceはこれを見てもしかしたら米国ではローンチ日を早めるかもしれない。最近では寄付用のステッカーをリリースしたが、これで少しずつユーザーにアプリ内で決済することや、クリエイターに投げ銭する行為を慣れさせることを目指している。投げ銭はライブ配信でよく見かけるが、ByteDanceもTikTok内でライブ配信を始めている。

TikTokはインフルエンサーマーケティングの価値を理解しているので、去年あたりからCreator Marketplaceをリリース。

まだベータ版だが、今のところSquareなどが使って自社プロダクトをプロモーションしているらしい。今後はセルフサーブの広告管理ツールを出すらしい。これをリリースすると、ByteDanceは唯一の中国含め全世界の広告セルフサーブプラットフォームとなる。

今後はブランドやクリエイターにAIで作られたコンテンツやエフェクトのレコメンドをするかもしれない。もしくはARフィルターを第三者が開発できるようにオープン化する可能性もある。最終的にはクリエイター向けの動画、音楽、EC、ポッドキャスト、解析、フィンテックなど、クロスプロダクトツールが出来上がるかもしれない。

TikTokを活用した新プロダクトのローンチ

ByteDanceは間違いなくTikTokのユーザー、コンテンツ、そしてAIアルゴリズムを活用して新しいプロダクトをリリースする。彼らの採用スピードを見るとそれが明らかだ。

ユーザーと直接関係性を作り、そのネットワークを活用して新しいプロダクト、もしくはよりハイマージンなプロダクトを売り込む。これは特に新しい施策ではない。SNSですとFacebookがInstagramとFacebook Messengerで同じようなことをやっていた。過去記事でも話したが、ディスニーもDisney+の大赤字事業を活用してクルーズ船やディズニーランドへの年間パスを売り込もうとしているのと同じ。

TikTokはデータ収集ツールや広告のマネタイズプラットフォームだけではなく、トップオブファネル、いわゆるユーザーにリーチして他のプロダクトを売り込めるプラットフォームとしても認識しなければいけない。実際に中国ではTikTok内でByteDanceの新しいメッセージアプリのDuoshanをプッシュしてた。

これからTikTokが出しそうなプロダクトを以下まとめた。

ロングフォーム動画

2019年中旬ぐらいからDouyinは15分動画のアップロードを数名のクリエイターにテストし始めた。ByteDanceは過去にVineのクリエイターが後々YouTubeへ移行したことを知っているので、それを避けるためにロングフォーム動画も試しているはず。

ByteDanceはNetflixの類似プロダクトであるXigua Videoを中国で運用している。現在は5500万DAUで、1日の平均試聴時間は70分。

Netflixは一部データを活用してユーザーが何を見たいかを分析して映画やテレビ番組を制作しているため、TikTokも同じことをやり始めてもおかしくない。最近だとXigua自体がBBCやPBS、そして子供番組の出版社などからコンテンツを獲得し始めている。そして直近では元Disney+のトップであるKevin Mayer(ケヴィン・メイヤー)氏をTikTokの新しいCEOとして採用。メイヤー氏はDisney+を1年もたたずに5000万ユーザーまで伸ばし、過去だとMarvel、Lucasfilm、Pixar、21st Century Fox、Club Penguin、Maker Studiosなどの買収を担当した。ByteDanceがこの領域に入るのはほぼ間違いないはず。

映画や著名IPの獲得もそうだが、TikTokはもしかしたら次世代メディアやZ世代に流行っているBratやCrypt TVの買収に取り掛かるのが面白いかもしれない。そしてTikTok自体がインハウスのスタジオを作ってクリエイターと一緒に番組を作ることはやってもおかしくない。個人的にはこれはQuibiが本来やるべきことだと思っている。

音楽ストリーミング

実はByteDanceはインド、インドネシア、ブラジルで自社ストリーミングアプリのRessoを既にリリースしている。TikTokとSpotifyのUIを組み合わせたものとなる。こちらもTikTokと同様、コメント、制作、コンテンツ共有を強調していて、直接TikTokに投稿できるようにしている。そして歌詞を他社プラットフォームより強調しているのがポイント。TikTokはミーム・曲の文化をユーザーの頭の中に叩き込みたいので、音楽からミームを作るために歌詞からインスピレーションを与えるために歌詞を前に出している。

引用:Routenote

TikTokはさらにユーザーから好きな音楽のデータを取得できるし、さらにTikTokでよく聞く音楽をRessoに誘導させることもできる。今後は中国でも流行っているカラオケ・ライブ配信アプリなどもTikTok内に入れたりして、Spotify、Apple、WeSing、Kugouなどの競合と対抗する可能性もある。
今後TikTokが音楽のレーベル会社を作ってもおかしくない。

ゲーム

ByteDanceはゲーム市場に入り込むことについてはかなり発言している。ここ数年にかけて数社のベーム開発会社を買収していて、ByteDanceのゲーム部門は1000人以上の従業員がいる。中国の旧正月時期の人気ゲームの3つがByteDanceからのゲームだった。そして3月に日本でも「ヒーローズコンバット」をローンチして1週間ほどアプリストアで1位だった。

ユーザーをソーシャル領域で囲い込んでゲームを売り込む戦略はTencentと非常に似ている。ByteDanceとしてはToutiao上のユーザーの多くがゲームをプレーしているのが分かっている。中国で最もスマホゲームの広告費を使う会社トップ100のうち、63社は広告予算の半分以上はToutiao上で使っている。こうなるとByteDanceは将来アプリ内課金、アプリ内広告、そしてセルフサーブ広告ネットワークを全部自社で保有するかもしれない。

フィンテック

中国ではスーパーアプリが流行っている中、その中でもフィンテックが最もマネタイズできるポイントだと思っている。中国ではないが過去だとスーパーアプリを目指しているGrabのCFOもGrabのフィンテック事業は本業である配車サービスの20倍の市場だと発言している。ByteDanceも同じく、個人・法人ローン、保険、ウェルス・マネジメント商品を2,00万人のユーザーに提供している。今後も決済やスマホのウォレットを提供してもおかしくはない。


教育

この領域はByteDanceのかなり重要なプライオリティになっている。今年だけで教育関連で1万人採用すると発言している。実際に何をするかは噂にしか出てないが、学校用のハードウェア、AI家庭教師、家庭教師ポータル、そして有料授業などの話が出ている。過去には中国の学生と海外の英語を教える先生をマッチングするサービスのGogokidをリリースしているが、トラクションがあまり伸びてなかった。初期従業員で元ToutiaoトップのChen Lin(チェン・リン)氏は次の1億人DAUのプロダクトを探すことを命じられていて、それが教育かメッセージにあると言われている。

メッセージ

Tencentは競合プロダクトをWeChatや自社のAndroidアプリストアのYingYongBaoをブロックすることが有名。ByteDanceのSnapchat類似プロダクトのDuoshanも初月で500万ダウンロード達成したときにブロックされた。ByteDanceはDuoshan以外に今年新しくリリースしたFlipchatなどでメッセージ領域に入れるかを試している。

引用:Techcrunch

最近だと米国のTikTokではアプリ内で他のユーザーにメッセージするように勧められていて、Douyinでは知らない人と一緒にゲームをプレーする機能も作っているので、メッセージはかなり興味があるように見える。

ニュースフィード

ByteDanceはニュースフィード系のプロダクトをこれからも試してFacebookやTwitterにプレッシャーを与えにいくと思われる。Toutiaoもそうだが、それ以外にはTopBuzz、News Republic、インドネシアのBaBe、インドではHeloなど。さらにインドではDaily Huntに投資して、2016年にはRedditを買収しようとしていた。キャッシュもかなり持っているので、今後はMusical.lyと似た形で買収からのユーザー獲得戦略に入るかもしれない。

エンタープライズ/B2Bソフトウェア
2019年にByteDanceはSaaSプロダクトのFeishuをローンチした。Feishuチームは1700人いて、Slack、Microsoft Teams、Google Suiteの競合プロダクトである。メール、チャット、ビデオ会議、カレンダー、クラウドで資料のストレージなどの機能が含まれている。

ByteDanceはFeishuを最初は社内用に使っていた。ByteDanceは珍しく中国市場ではなく、米国、ヨーロッパ、日本を初期マーケットとして挙げている。プロダクトの優位性はユーザーが読みやすいように自動翻訳、他国との時差調整を簡単にできる仕組み、そして立替申請を簡単にできるようにしているとのこと。

その他
ByteDanceはインドと米国でデータセンターを2019年から運用始めている。これは自社プロダクトようかもしれないが、もしかしたらクラウドホスティングサービスのリリースを考えているかもしれない。クラウドサービスとSaaSソフトウェアだと完全Microsoftの領域に入ってくる。そしてさらにライブ配信、検索、EC、電子書籍なども考えられる。検索を作ればGoogleのように検索とYouTubeのループを作れる。さらに2019年には中国で安いAndroidスマホをリリースした。これは「ByteDance OS」を作ろうとしているかもしれない。過去にはFacebookなども試して失敗した。

結論

ByteDanceはGoogle、Facebook、Instagram、Snapなどの競合に最もなり得るサービスかもしれない。過去にはあり得なかった中国と米国・世界の市場を取りに行けて、デジタル広告でマネタイズできている。しかもいまだにTikTokからちゃんとマネタイズが出来ていないのに140億〜200億ドルの売上を保てている、非常にパワフルな会社である。

この会社を作り上げられたのは創業者が考えたソーシャルグラフが必要ない、SNS、コンテンツ・広告アルゴリズム、そしてTikTokにおいては画期的なUI。このループは今のところ、ほとんどの会社は止められなさそうだ。そして裏側ではどんどんプロフィールデータ、ソーシャルグラフ、興味グラフ、コンテンツグラフをデバイスIDごとにデータ収集している。このエンジン、グロースサイクルを聞くと恐怖感しか思い浮かばない。

もちろんTikTokの人気度が下がってダメになるかもしれない。ByteDanceのほかのプロダクトもまったく上手くいかないかもしれない。ただ、万が一TikTokがダメになっても、TikTokで育った世代が期待する編集方法、ストーリーの伝え方を見るべき。ジャンプ、ワイプ、音楽を利用したトランジションが今までの動画とは圧倒的に速い。間違いなくTikTokの影響で今の若手層のコンテンツ・エンタメに対しての価値観、期待値が変わった。この次世代ユーザーが次の消費者になると考えると、今のうちにTikTokに入り、何に引き寄せられているかを調べるべきであると思っている。いまだとTikTokは、Z世代のプラットフォームだけではなくミレニアル世代にも入っている。この層に何かしらのプロダクトやサービスを売り込みたい人にとって、TikTokを見なければいけないプラットフォームになっている。

引用記事
The Rise of TikTok and Understanding Its Parent Company, ByteDance(Turner Blog)
Old Town Road: The Best Entertainment Case Study of 2019(Medium)
Here Are The Songs That Went Totally Viral On TikTok In 2019(BuzzFeed News)
TikTok’s Underappreciated Wins (from a former Yik Yak employee(Zack Hargettブログ)
The 10 Ways TikTok Will Change Social Product Design(The Information)
TikTok Top 100: Celebrating the videos and creative community that made TikTok so lovable in 2019
(TikTok)
Songs Are Becoming Hits on TikTok Before They’re Even Released(Rolling Stone)
Why Fintech May Be the Future of Ridehailing for Grab, Uber(Fortune)
TikTok owner ByteDance scores video game hit in Japan, sharpening rivalry with Tencent(South China Morning Post)
ByteDance’s move into gaming is already paying off(Abacus)
四处挖人,字节跳动横扫教育圈(36Kr)
・Bytedance tiktok Douyin viamakershort video china regulation cyberspace administrationBytedance launches consumer lending app on Android(TechNode)
TikTok owner ByteDance scores video game hit in Japan, sharpening rivalry with Tencent(South China Morning Post)
TikTok Owner’s Plan: Be More Than Just TikTok(The Wall Street Journal)
Introducing TikTok Donation Stickers with British Red Cross and Help Musicians(TikTok)
China’s Bytedance is buying Musical.ly in a deal worth $800M-$1B(TechCrunch)
The popular Musical.ly app has been rebranded as TikTokThe Verge)
China’s $11 Billion News Aggregator Jinri Toutiao Is No Fake(Forbes)
Chamath Palihapitiya – how we put Facebook on the path to 1 billion users(YouTube)
Memers are Taking Over TikTok(The NewYork Times)
Inside the New York City Bodegas Going Viral on TikTok(The NewYork Times)
The Original Renegade(The NewYork Times)・The owner of TikTok is reportedly in talks with major record labels to launch a music streaming service(Business Insider)
TikTok’s Videos Are Goofy. Its Strategy to Dominate Social Media Is Serious(The Wall Street Journal)
TikTok Owner’s Value Exceeds $100 Billion in Private Markets(Bloomberg)
Musical.ly’s Alex Zhu on Igniting Viral Growth and Building a User Community | #ProductSF 2016(YouTube)

優れたUIとオンボーディングで成功、TikTokが米国市場でも伸びている理由(その2)

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するポッドキャスト「Off Topic」がnoteに投稿した記事を、内容別に3つの記事に分割・転載したものだ。第1部第3部も併せてチェックしてほしい。

スマホ版YouTubeであるTikTokの特徴的なUI

TikTokはいまだと誰でも聞いたことはあるアプリになった。2019年6月時点では15億人のMAU、その年の10月にはDAUで10億人を超えるとTikTok米国代表が話していた。ユーザーを考えたUI判断とかなりアグレッシブなグロース戦略でここまで来た。

動画ファーストなUIと簡単なオンボーディング
TikTokのUIで一番重要なのは最初の動画ファーストなインターフェース。アプリをロードした瞬間からプレーし始めてユーザーをアプリへ引き寄せるコンテンツを先出しすること。

まず象徴的なのはアカウントを作成する必要がないこと。新規ユーザーとして登録する際には、最初に何に興味があるかを指定するだけ(しかも選ばなくてもいい)。以下がその様子で、約10秒でオンボーディングが終わる。これは2014年のYik YakのUIと似ている(Yik Yakはロケーショントラッキングの許可と通知の許可だけ)。すぐにコンテンツを楽しめるように、わざと最小限のオンボーディングにしている。

TikTokは裏側でデバイスID別に裏アカウントを作っている。そのため、ほとんどのTikTokユーザーはアカウントを作らずコンテンツを見ている。できるだけ大きく動画を見せて、必要があるボタン(プロフィールページ、いいね、コメント、共有)のアイコンだけ出している。Toutiaoのようにアプリ内の行動を見てデータプロフィールをTikTokが作っている。他社のサービスも同じようにアルゴリズムを使ってコンテンツを提供しているが、TikTokとのUIを比較するとどちらがデスクトップベースで作られ、どちらがスマホベースで作られたがわかる。

Instagramでさえスクリーンスペースを無駄にしている。上記の動画、もしくは広告を見ると、スクリーンの100%のTikTok、16%のWeChat、31%のInstagramのどちらをユーザーは選ぶか?

ショートフォーム動画
TikTok上のコンテンツは短い。もともと15秒のリミットがあった(中国のDouyinでは2分まで伸びた)。スマホでは短めのコンテンツが好まれるので、それ専用のプロダクトを作るとUI/UX、ユーザーの期待値も変わる。アテンションスパンが短くなっている中、10分のYouTube動画でも見られなくなっている。有名YouTuberのDavid Dobrikも3分〜5分動画の方がパフォーマンスがいいと発言している。このロングフォームコンテンツからショートフォームのトレンドは多くの人が感じていると思う。

ショートフォーム動画は制作と消費の摩擦を減らしている。いま現在はほとんどのTikTok動画はクリエイター1人で作っていて、1日複数の動画を投稿している。2018年のByteDance広告主向けの資料によると34%のユーザーは毎日コンテンツをアップしているとのこと。

引用:AdAge

これがロングフォームコンテンツであればスマホで撮影と編集はせずに、チームで撮影を行うことが多い。TikTokクリエイターは自分自身でコンテンツを編集しているため、視聴者を理解するためにTikTokコミュニティに入り込んで自分自身でコンテンツを消費しなければいけない。

そしてコンテンツを消費するユーザー側からするとショート動画だからこそコミットしなくてもいい。すぐに始まり、すぐに終わる動画は最悪でもたったの15秒の無駄。各動画は最後のほうにきちんとクライマックスを用意して、もし一部見られなくてもデフォルトで動画がリプレイするので何回も見てしまう。TikTokは裏では各動画の視聴長さ(どこまで見たのか)や複数回見たときはアルゴリズム上かなり高い評価をつける。

短い動画のため、他社サービスより圧倒的なスピードでデータ収集ができて、それでよりアルゴリズムを改善できる。10分間のYouTube動画の時間帯でTikTokでは40個の15秒動画のデータを取得できる。下記データを見ても他のSNSと比較すると圧倒的な差があることがわかる。

引用:Digiday

TikTokの一番近い競合はYouTubeだが、YouTubeはテレビやデスクトップ向けのコンテンツ。実際に2020年3月では1億人はYouTubeをテレビで見ていた。そしてYouTube、Twitter、Instagram、TikTokの1セッションあたりの消費されるコンテンツ量を見るとすごい。

そして今後ショートフォームの動画の間に広告を入れられることを考えると、かなりマネタイズポイントがあると思われる。

The InformationでもTikTokの特徴的なUIをうまくまとめている。

TikTokは「ソーシャルではないSNS」

TikTokのすごいところは、これだけ大きいSNS企業なのにソーシャルグラフを必要としていないところ。Facebookは10日以内で7人の友達が「マジックナンバー」と言われていたり、TwitterやInstagramも人気になるにはフォロワーが重要。逆にTikTokは、友達、フォロワー、アカウントですらいらない。人ではなく、完全にアルゴリズムがコンテンツ、タグ、そして動画内のアクションやものを把握しながらユーザーの視聴履歴、見直した動画、いいね、コメント、共有、視聴後の行動をすべてモニタリングしている。a16z(Andreessen Horowitz)パートナーのConnie Chen(コニー・チェン)氏が言うように、TikTokは初めてC向け商品の中でAIがプロダクトであること。これは過去のFacebookなど、ユーザーとその周りのユーザーのインタラクションを元に作られたアルゴリズムとはかなり違う。

このアンチソーシャルなアプローチはもしかしたら他社プラットフォームと比べて、より長持ちできる施策かもしれない。ほとんどのSNSは友達やフォロワーが増えるとプロダクトのバリューが下がる傾向にある。以前SNSについて説明した記事でもソーシャルメディアからステータスメディアへ進化する話をした。そのフォロワーや友達の概念がそこまでないTikTokはもしかしたら有利なポジションにあるかもしれない。
実際の事例を見てみよう。ハリウッド女優のジェニファー・ロペスのTwitterとTikTokのフォロワー数は、

  • Twitter:4,400万人
  • TikTok:280万人

だが、

  • TwitterにアップしたTikTok動画:100万再生回数
  • TikTokにアップしたTikTok動画:1790万再生回数

とTwitterのフォロワー数が多くてもTikTokのほうがバズった。

TikTokの拡大戦略

チェン氏が言うように、TikTokは初めてC向け商品の中でAIがプロダクトであること。これは過去のFacebookなど、ユーザーとその周りのユーザーのインタラクションを元に作られたアルゴリズムとはかなり違う。計画的な拡大戦略をとっていた。

まず、スマホで最も優れたショートフォームの動画編集ツールを作った。簡単にクリッピングしたり、フィルター、音楽を追加できるようにした。そして他社プラットフォームへ簡単に共有できるようにした。そこでTikTokがとった戦略は動画をTikTokからエクスポートする際には必ずTikTokで投稿すること、そしてエクスポートされた動画は必ずTikTokのウォーターマークが自動的に付けられたこと。それによって、もともと動画編集ツールとして使ってたクリエイターはTikTok上でファンがつき始めたらTikTokで投稿することに注力してくれるようになる。

さらにInstagramのように鍵がかかったアカウントが存在しないこと。Instagramコンテンツを共有したが、そのアカウントが鍵がかかったアカウントだったのでコンテンツが見られない不満はある。TikTokは全世界に公開しているので、そこを気にすることはない。

そしてクリエイターをプライオリティーと置くようにした。クリエイターにはTikTokスタッフからのサポート、どう言うコンテンツを投稿するべきかのメールを送ったり、TikTokスタッフと1対1のデモ、TikTokクリエイターコミュニティ用のイベントやコラボ企画を勧めたりもしている。しかもスマホを安定させるためのスマホスタンドも送ってくれるらしい。以下クリエイター向けのイベントがどのようなものかを見せている動画だ。

初期では各SNSの有名インフルエンサーを囲い込むようにオペレーションチームが託された。うわさによるとTikTokに投稿してもらう代わりにお金を払ったと出ているが、実態はわからない。中国ではセレブにお金を払ってDouyinの初期コンテンツを作っていた。タレントショーのオーディション動画や、Michael Korsとのイベントパートナーシップを行なってグロースした。中国では他のプラットフォームの動画を勝手にとって自社プラットフォームにアップしたも言われている。そして米国とヨーロッパに入るためにMusical.lyを10億ドルで買収。ByteDanceとMusical.lyは同じ株主がいたため、その株主が間に入ってM&Aを仲介したと言われている。

そしてTikTokクリエイターにすぐにソーシャルキャピタルを与えられたのが重要なポイント。過去だと各プラットフォームの初期ユーザーが一番ソーシャルキャピタルを獲得できる仕組みになっていた。TikTokだとフォロワー数関係なく、前コンテンツをプロモーションする。TikTokでは既存のクリエイターに十分なソーシャルキャピタルを与えながら新規ユーザーにも割り当てられるようにしなければいけなかった。Musical.ly創業者で現在TikTokのプロダクトのトップを務めるAlex Zhu(アレックス・チュー)氏はこのプロセスを新しい国を作るように例えている。

このソーシャルキャピタルのアロケーションを計画的に割り振るためにはTikTokとしてはショートフォーム動画、アルゴリズムからのコンテンツディスカバリー、フォロワーに重きをおかないこと、ソーシャルグラフを使わないこととオンボーディングを最小限にすることが重要だった。

SNS事業含め、ビジネスの多くではよりユーザーにリーチできる会社が長期的に勝つ。リーチがなければより良いプロダクトで勝ちに行くのが大まかな戦略だ。TikTokはプロダクトのイノベーションでより大きいユーザーベースにリーチできるようにした。Twitterだと何か投稿したときに基本的にフォロワーが見てくれるため、フォロワー数が少ないほど広がるチャンスが少ない。TikTokはフォロワー数を無視しているため、よりコンテンツが広がる仕組みを作っているからこそ、みんなが使いたがる。これはInstagramがSnapchatをコピーしてStories機能を追加した時と同じ。SnapchatよりInstagramでフォロワーが多かったクリエイターはSnapchatではなくInstagramでStoriesを投稿し始めた。クリエイターは多くのユーザーに一気にリーチするのが目的なため、TikTokに行く理由はわかる。

TikTokがコンテンツの共有を強調するのもリーチを広げるため。動画が2回ループするとシェアするアイコンが緑になる(日本の場合はLINEのアイコンが出る)。そこをタップすると他社プラットフォーム含めて共有できるように見せている。TikTokはモバイルウェブ対応もしていて、友達から受けた動画はかなり高い確度で見てくれると確信している。しかもこのオフプラットフォームで共有するとTikTokは裏側でそのデバイスID別にソーシャルグラフを作れて、将来的にSNSを作る際には役に立つデータを取得できる。

引用:TikTok

そして最後の拡大戦略は圧倒的なマーケティング。2018年から2019年にかけて、1日3000万人のユーザー獲得とPRに使ったと言われている。他社プラットフォームを資金を溶かしたケースも多々ある。

2018年ではGoogle広告で3億ドル、インドだけで毎月1000万ドル使っていた。2019年Q1ではFacebookのAndroid版アプリでは見られた13%の広告はTikTokだった。ピークは2018年9月で、Facebook配下のプラットフォームで米国で見られた広告の22%はTikTok関連だった。

引用:Reuters

しかもこのようなインフルエンサー動画もTikTokのウォーターマークを入れてTikTokを告知してくれていた。

Instagramのユーザー数はTikTokの2倍、合計利用時間はTikTokが上

初期のTikTokの米国の新規ユーザーの30日リテンションの数字は10%と言われていた(だいたい20%が「良い」アプリと分類されるが、SNSだともっと高いケースが多い)。これはおそらく最初のターケティングの問題でもあった。徐々に改善してアプリ調査会社のApp Annieによると2019年初旬では28%〜40%の間にまで上がっていたらしい。

ByteDanceは多額の資金を使って多くの批判を受けたが、これも1つのネットワークを作る戦略である。InstagramもFacebookフィードを活用したからこそ新規ユーザー獲得ができた。以下グラフのように、50〜75%のInstagramダウンロードはFacebook買収のあとに来ている。特に買収直後のグロースはFacebookから来たユーザーが多かったのは間違いない。

引用:MacStories

ByteDanceはFacebookみたいなプラットフォームがなかったので、ハイマージンな広告ビジネスが生む70億ドルの売上とソフトバンク・ビジョン・ファンドからの30億ドルの出資を受けて似たようなことを資金力で解決できた。

そして他社プラットフォームのグロースが遅まっている中、TikTokのユーザー数と平均利用時間が爆発的に伸びている。このグラフを見ると、明らかにInstagramのダウンロードに影響を及ぼしている。

さらに2019年1月と2020年4月の米国での月次のリーチ数を見ると、Instagramの広告プラットフォームは1.2億人でフラット。

引用:DataReportal

いまのところ、FacebookやInstagramのユーザー成長率を見て投資家は心配ではなさそうだが、今後は変わりそうだ。App Annieのデータを見ると、米国のユーザーはInstagramはTikTokより2倍のユーザーがいるのにもかかわらず、合計利用時間はTikTokのほうが上回っている。ComScoreもTikTokの利用時間が2019年10月から2020年3月で93%増したと報道している。そして過去半年では利用時間が倍増したとも報道がある。

引用:eMarketer

TikTokのダウンロードも2020年Q1でかなり加速している。しかも去年末あたりから広告費用を下げると発言しているので、もしかしたらコストを下げながらユーザー獲得ができているかもしれない。

引用:Techcrunch

TikTokの成長振りは2019年のVidCon(米国で毎年開催される多ジャンルのオンラインビデオテクノロジー会議)でも明らかだった。いつもYouTubeインフルエンサーが行くイベントとして知られていたのが、2019年はTikTokインフルエンサーが評判だった。そして全TikTok関連のセッションは満員にお客さんが入っていた。

TikTokのYouTube 2.0へのカギは「音楽」と「ミーム」

SNSを始める際にはだいたい、コンテンツの消費と制作の摩擦を減らす新しいコンテンツ制作ツール、もしくはコンテンツフォーマット、さらにはクリエイターにソーシャルキャピタルを与えられるように仕組みが必要。うまくいけばグロースサイクルが作られ、ネットワーク効果が生まれる。TikTokのグロースサイクルは数字を見るだけでもきちんと回っているのがわかる。

YouTubeは動画フォーマットの大きな成功事例で動画市場では大きなプレーヤーとして存在しているが、YouTubeのプロダクトは横型動画向け、いわゆるデスクトップとテレビ向けのプロダクトで、YouTubeクリエイターはスマホで動画編集をしない。このスマホファースト(縦型)、尚且つショートフォームの動画プロダクトにギャップがあった。このニーズを表しているのがSnapchatとInstagram Storiesだった。

そして米国ではミーム文化が進んでいて、今では若手層がミームをコミュニケーションツール、時にはニュース情報を得るためのものとなっている。ミームの特徴としてはリミックスされることが多くて、一つのミームがリミックスされるほどより世の中で受け入れられているミームとなっている。例えば映画ロード・オブ・ザ・リングから生まれた人気ミームの「One does not simply」をGoogleで検索してもこれだけのバージョンが出てくる。

引用:Google検索

Instagramが公開したデータによるとミーム投稿はミームではない投稿と比べて7倍以上シェアされる。そしてReddit上では新しいミームの人気度を予測するスレッドまで出てきている。

引用:Reddit

TikTokは2つのトレンドに乗っかって成長してきた。それはミームとAirpods。Musical.lyを統合した時には最初はMusical.lyで人気だったリップシンク系のユースケースが多かった。2018年中旬から下旬でTikTokアプリを見ると、元々のMusical.lyコンテンツからVineっぽいコンテンツに進化していくのが見えた。そして使ってたGen Zはミレニアル世代が好む「完璧」なインスタ映えとは違く、より皮肉なジョークやリアルなものを好んでいたため、TikTokがフィットした。

Vineに近しい部分は多かった。Vineも若手層が皮肉なジョークを共有し合う場、そしてリミックスする場でもあった。

そしてVineユーザーのリミックス文化をスケールさせられたのがTikTok。TikTok(Musical.ly)のリップシンク編集ツールを使うと同じ音楽で動画をリミックスできるようにした。TikTokの重要なUIの1つとして、動画内の曲ベースで検索が可能なところがある。これはどの他社プラットフォームも出していない(一瞬Vineも同じような機能を出したが、すぐにシャットダウンした)。

タイミングも重要だった。TikTokが米国で人気になり始めていたときにはAirPodsが爆発的に売れ始めていた。2017年にはApple(アップル)は1600万個のAirPodsを売り、2018年には3500万個、2019年は6000万個、2020年には1億個売ると言われている。AirPodsユーザーは音声付きのミームを聞くのに最適なユーザー層だった。それで生まれたのが音声ミーム。音声ミームの初期の有名事例はAdele(アデル)の「Someone Like You」という曲だ。

その他TikTokのミーム活用法について知りたい方は、以下のポッドキャストでTIkTokが作り上げたミームからのソーシャルコマースの話「#22 TikTokから生まれたOK, Boomerって?」を聞いてほしい。

Lil Nas XとアーティストのTikTok活用方法
Musical.lyのルーツが音楽にあった中、TikTokもそこを強調した。TikTok上で人気になった多くのミームは音楽ベースでもあった。その中で最も有名なのはやはりLil Nas X(リル・ナズ・X)の「Old Town Road」だ。

17週間連続でBillboard Hot 100の1位にランクイン。しかしこれはたまたまTikTokでバイラル化して伸びたのではなく、Lil Nas X自身がTikTokのリミックス文化を活用して伸ばした。

Lil Nas Xは音楽のキャリアをやるために大学を中退した。中退したものの新しい曲作りにフォーカスしなかった。まずはTwitter上で友達作り、ミームをひたすら投稿してフォロワー数を3万人まで伸ばした。フォロワー数を伸ばした後に自分の音楽の投稿をすればバズると思っていたが、そんなに簡単に行かなかった。

面白いミームを投稿すると2000リツイートされるが、歌を投稿すると10リツイートぐらいしかもらえない(Lil Nas X)

それを見たLil Nas Xは戦略を変えて、SoundCloudのURLを出すのではなく、ミームに合わせた歌のプロモーションを考えた。

短く、キャッチーで、面白くなければいけなかった(Lil Nas X)

その結果が「Old Town Road」。踊っているカウボーイと合わせてフォロワーに共有した。

その動画がバイラルになったので、Lil Nasはこれで新しいプレイブックを作った。

  • Old Town Roadに合わせた
  • 短いバイラル動画
  • 曲のリンクは動画の下にリンクする

Twitterで広がり始めた曲がついにTikTokまで、そして爆発的に伸びてBillboardのカントリー・ミュージックカテゴリーに載った。

Lil Nas Xはカントリー・ミュージックのカテゴリーの競争率がほかと比べて低いと知っていて、わざとカントリー・ミュージックとリストしていた。その1週間後にBillboardがカントリー・ミュージックではないと判断し、ランキングから取り除いた。この判断がLil Nas Xにとって良い展開だった。これによって全米でニュースになり、2週間後にはBillboardの全体ランキングで1位になった。

この勢いをさらに加速するためにLil Nas Xは、次に音楽業界のスターとOld Town Roadのコラボ(リミックス)曲を出した。Billboardのちょっと変わったルール上で、リミックス曲はオリジナル曲の再生回数としてカウントされる仕組みになっていた。

リミックス曲が出るたびに何百万と再生回数が増え、Old Town Roadのランキング首位を堅持した。そして17週間後にはマライア・キャリーの記録を破った。5カ月前まで大学中退で銀行口座がマイナスだったと考えると、すごい成長だ。

Lil Nas X自身もこれはラッキーなことではなく、計画性がちゃんとあってここまで伸びたものとのこと。その一例、Old Town RoadがTwitterでバズり始めた1つのきっかけが、1人の男性が馬の上に立ちながら馬が走っている動画だ。この動画はいろんなバージョンが出てきたが、すべての動画はOld Town Roadが音声となっていた。

一番最初のこの動画は2018年12月24日に投稿されていた。そのTwitterユーザーになぜその動画を作ったかと聞いたところ、Lil Nas Xが彼にDMを送ってそのアイデアを提案したとのこと。しかもその動画を見て曲を検索すると知っていたLil Nas Xは、YouTubeとSoundCloud上で曲のタイトルを変更し、バイラル動画で入っている歌詞を追記したのだ!

TikTokでもLil Nas XはTikTokを活用してチャレンジを作り、さまざまなユーザーがOld Town Roadに合わせてミームを作り始めていた。

そして2018年からTikTokから生まれた人気曲が出てきたが、今はアーティスト側がリリース前にTikTokに曲の一部を出してバズらせている。ネットで有名ダンサーのToosieがDrakeから直接連絡もらって、まだタイトルが付いてない曲の一部を渡され「ダンスを考えてくれないか?」と聞かれた。

それで出来上がったのが「Toosie Slide」で、それを踊るチャレンジが出てきた。

最終的にTikTokでヒットして、Drakeが音楽配信アプリで公開した。

これはDrakeだけではなく、多くのアーティストが一部公開をしてTikTokで流行らせてから公開する流れになり始めている。

TikTokは徐々にリップシンクからミーム、そして今ではコメディー、教育(チュートリアル)、アートなどさまざまなコンテンツに広げている。コンテンツ領域を広めるとターゲットユーザー層も拡大するし、TikTokにとってはユーザーの興味グラフを作れるようになる。これはByteDanceが今後YouTubeやほかのSNSと対抗に戦うためには重要な要素となる。

引用記事
The Rise of TikTok and Understanding Its Parent Company, ByteDance(Turner Blog)
Old Town Road: The Best Entertainment Case Study of 2019(Medium)
Here Are The Songs That Went Totally Viral On TikTok In 2019(BuzzFeed News)
TikTok’s Underappreciated Wins (from a former Yik Yak employee(Zack Hargettブログ)
The 10 Ways TikTok Will Change Social Product Design(The Information)
TikTok Top 100: Celebrating the videos and creative community that made TikTok so lovable in 2019
(TikTok)
Songs Are Becoming Hits on TikTok Before They’re Even Released(Rolling Stone)
Why Fintech May Be the Future of Ridehailing for Grab, Uber(Fortune)
TikTok owner ByteDance scores video game hit in Japan, sharpening rivalry with Tencent(South China Morning Post)
ByteDance’s move into gaming is already paying off(Abacus)
四处挖人,字节跳动横扫教育圈(36Kr)
・Bytedance tiktok Douyin viamakershort video china regulation cyberspace administrationBytedance launches consumer lending app on Android(TechNode)
TikTok owner ByteDance scores video game hit in Japan, sharpening rivalry with Tencent(South China Morning Post)
TikTok Owner’s Plan: Be More Than Just TikTok(The Wall Street Journal)
Introducing TikTok Donation Stickers with British Red Cross and Help Musicians(TikTok)
China’s Bytedance is buying Musical.ly in a deal worth $800M-$1B(TechCrunch)
The popular Musical.ly app has been rebranded as TikTokThe Verge)
China’s $11 Billion News Aggregator Jinri Toutiao Is No Fake(Forbes)
Chamath Palihapitiya – how we put Facebook on the path to 1 billion users(YouTube)
Memers are Taking Over TikTok(The NewYork Times)
Inside the New York City Bodegas Going Viral on TikTok(The NewYork Times)
The Original Renegade(The NewYork Times)・The owner of TikTok is reportedly in talks with major record labels to launch a music streaming service(Business Insider)
TikTok’s Videos Are Goofy. Its Strategy to Dominate Social Media Is Serious(The Wall Street Journal)
TikTok Owner’s Value Exceeds $100 Billion in Private Markets(Bloomberg)
Musical.ly’s Alex Zhu on Igniting Viral Growth and Building a User Community | #ProductSF 2016(YouTube)

成功の原点はToutia、TikTokが米国市場でも伸びている理由(その1)

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するポッドキャスト「Off Topic」がnoteに投稿した記事を、内容別に3つの記事に分割・転載したものだ。第2部第3部も併せてチェックしてほしい。

自己紹介

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。これまで日本のVCで米国を拠点にキャピタリストとして働いてきて、現在は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。Off Topicでは、次世代SNS企業の話や最新テックニュースの解説をしているポッドキャストもやってます。まだ購読されてない方はチェックしてみてください!

はじめに

過去4年間で世界で最も勢いがあるアプリ「TikTok」。AirPodsやMeme(ミーム)文化が爆発的に伸びていた流れに乗っかったのは確かだが、それ以外にも自社のUI判断やグロース戦略でここまで成長できた。そして何よりもソーシャルグラフが必要のないSNS、コンテンツベースのアルゴリズムを作ったのは過去に存在しなかったこと。そんなTikTokの裏で、運営元であるByteDance(バイトダンス)の最初のサービスであるToutiaoから実際にTikTokのインフラが作られていた。

今ではByteDanceの時価総額が1000億〜1400億ドルになっていると言われている。

2017年11月にBytedanceは当時米国で次世代SNSだったMusical.lyを10億ドルで買収。2018年8月にMusical.lyとTikTokを1つのアプリとして統合。そのすぐ後に30億ドル調達して時価総額が750億ドルまで上がった。当時はほとんどの人から高すぎる時価総額と言われていたが、いま見ると間違ってはなかった。

ByteDanceの2019年の数字を見ると160億〜200億ドルの売上で、2018年から2倍になっている。そして中国のデジタル広告市場のシェアが22%(2017年にはたったの5%)。

引用:Technode

しかもこの160億~200億ドルの売上の5%しかTikTokから来ていない。TikTokはこれから広告プラットフォームとして伸びるので、今後の成長率が加速する可能性もある。今年で創業8年目のByteDanceはTencent(テンセント)、Twitter、Facebook、Snap、Googleの8年目よりも圧倒的に売上が伸びている。

それでは、ByteDanceの凄さの始まりであるToutiao、TikTokなどの他社サービスへの拡大、Musical.lyを買収して米国市場へ参入、そして今後の展望について紹介していこう。

今回の記事の多くはGelt VCで働くTurner Novak(ターナー・ノバック)氏のブログ「The Rise of TikTok and Understanding Its Parent Company, ByteDance」から引用している。興味がある読者はぜひ彼のメルマガや記事をチェックしてほしい。もちろん本記事は、ノバック氏から許諾を得たうえで翻訳・公開している

ByteDanceの初プロダクトはToutiao(今日頭条)

ByteDanceが作った最初のプロダクトは2012年8月にリリースしたJinri Toutiao(ジンリー・トウティァオ)。類似サービスとしては、Facebookの友達のコンテンツがないニュースフィードが一番近いかもしれない。同社はJinri Toutiaoでハイパーターゲティングしたコンテンツや広告をユーザーに提供していた。2018年中旬の2億人DAUがピークで、1ユーザーは1日平均74分使っていた。これはFacebook、Instagram、Snapchatの約2倍の利用時間だ。

引用:Y Combinator

ローンチと初期グロース
創業者の張一鳴(Zhang Yiming)氏は2008年にアイデアを思いついたらしい。当時はMeituan創業者である王興(Wang Xing)氏と一緒にSNSサイトHainei.comを運用していた。Hainei後も張氏はいくつかの会社を作った。彼の経歴を見ると、OTAサイトのKuxanのCTO、Twitter類似サービスfanfouのCEO、不動産リスティングポートあるサイトの99FangのCEOなど。そして大学生時代でもエンタープライズ向けソフトウェアを作り、その後にMicrosoft Chinaで勤務していた。

Toutaioローンチ時の中国のスマホニュース市場は、国がコントロールしていたSinaやSohuなどのメディアやポータルサイトしかなく、デスクトップ向けの長めのテキストコンテンツが多かった。Toutiaoの初期プロダクトは中国のウェブメディアのひたすらクローリングしてスマホ用にフォーマットし直してコンテンツを提供していた。一時期コンテンツの広告も自社広告に変更するまでのこともやっていたらしい。

初期のToutiaoのグロースは、中国版TwitterであるWeiboのインフルエンサーが広げてくれた。Toutiao自体はかなりアグレッシブなプッシュ通知やユーザーにコンテンツ共有を勧めたりした。その結果、90日で1000万ユーザーまで成長できた。新規ユーザーがSinaもしくはWeiboアカウントでログインした際にはまずToutiaoはそのユーザーの趣味・興味あるものや友達の情報をスクレーピングした。そしてユーザーの利用データ(どうタップやスワイプをしたのか、どのタイミングで戸惑ったのか、記事のかける時間、コメント、場所、時間など)をトラッキングして、そのデータを基にユーザーに合わせたコンテンツを提供。これは今のTikTokにも存在する手法だ。

そしてコンテンツのタイトル、カバー写真、記事の長さまでかえるようにした。さまざまな変更をした結果、80%と恐るべし読了率を得られて、それがユーザーの生涯のリテンションレート(Lifetime Retention Rate)を45%という圧倒的に高い数字を初期に達成できた。しかも編集チームを使わず、完全自動化していたため、コストを抑えながら良いプロダクトを作ることができた。

批判とサービスの進化
もちろん多くの大手メディア企業はToutiaoが嫌いでToutiaoを常に訴訟バトルの間に入っていた。TikTokでも起きているが、Toutaio記事の引用元がわからなかったケースが多々あった。さらに記事のフォーマットをToutiaoが変更した時にアプリがクラッシュした。最終的にはToutiaoはユーザーに他社サイトへの誘導を許したが、多くのメディアのほとんどのトラフィックがToutiaoから来ていたのは間違いない。2014年にWeiboのトラフィックが落ち始めた際に、Toutiaoの1億ドルのシリーズCラウンドに参加してトラフィックを流してもらうように約束した。

そしてToutiaoは出版社やキュレーターに直接Toutiaoアプリでコンテンツ制作を依頼して、代わりレベニューシェアを渡した。うまく行き始めた瞬間にToutiaoはすぐにパートナー制作記事へシフトし始めた。2017年には120万人の外部クリエイターと提携していた。最終的にTencent、Alibaba、Baidu、その他スタートアップは中国で似たニュースプロダクトをリリースするが、Toutiaoでうまくマネタイズできていたクリエイターがほかのプラットフォームへ変更する意味がなかった。実際にToutiaoのビジネスモデルはかなりハイマージンで、2015年では2億2000万ドルの売上で黒字化できていたと言われている。

そして徐々にToutiaoは、記事にコメント機能、フィードに写真や就職情報、フィットネス・音楽・ポッドキャストアプリを開けられるボタン、生配信番組、インタラクティブなQ&Aチャネル、そしてNetflix類似の映画視聴プラットフォームXiguaを追加。2018年には他の中国テック企業と同じようにミニプログラムをリリース。第三者にToutiao上でアプリを開発してリリースできるようにした。レストラン、スーパー、薬局のデリバリーアプリが開発された。Toutiao内でも常に新しいアプリを開発して市場のリアクションを試していた。2カ月以内でパフォーマンスがなければシャットダウンするようにしていた。

そしてToutiaoはアプリ内に動画を入れるように注力していた。Facebookと同じように動画フィードの広告を入れられるようになった。初期はスマホ広告に投資し始めていた大手ブランドと交渉していた。ブランド側としては、BaiduやTencentよりToutiaoの広告プロダクトの方がハイパーターゲティングができるため、主要客により簡単いリーチできると思い締結した。そのターゲティングのパフォーマンスが高かったからこそ、2019年7月時点のMeituanの広告費用の85%はByteDanceサービス(Toutiao、Douyin)で使っていた。

Toutiaoはアルゴリズムとディトリビューション基盤とした新規サービス
Toutiaoのフォロワーを使わず、ユーザーの行動をベースにコンテンツ・広告をレコメンドするエンジン、そしてToutiaoによって多くの中国人へリーチできる配信プラットフォームを活用して2016年9月にDouyin(初期はA.meと呼ばれていた)、2017年にはTikTokの2つのショートフォーム動画アプリをリリース。動画アプリをリリースすることによってToutiaoの動画広告在庫が増えるのと、ユーザー層が男性に偏っていたのを変えて女性ユーザーへリーチできるだけでなく、EC要素を入れられるアプリとなった。

それ以外に重要点としては2018年にToutiaoがピークに達していたことをByteDance側も理解していたこと。今後の成長のためには、別のプロダクトから来なければいけないことを理解していた。

引用記事
The Rise of TikTok and Understanding Its Parent Company, ByteDance(Turner Blog)
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(TikTok)
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・Bytedance tiktok Douyin viamakershort video china regulation cyberspace administrationBytedance launches consumer lending app on Android(TechNode)
TikTok owner ByteDance scores video game hit in Japan, sharpening rivalry with Tencent(South China Morning Post)
TikTok Owner’s Plan: Be More Than Just TikTok(The Wall Street Journal)
Introducing TikTok Donation Stickers with British Red Cross and Help Musicians(TikTok)
China’s Bytedance is buying Musical.ly in a deal worth $800M-$1B(TechCrunch)
The popular Musical.ly app has been rebranded as TikTokThe Verge)
China’s $11 Billion News Aggregator Jinri Toutiao Is No Fake(Forbes)
Chamath Palihapitiya – how we put Facebook on the path to 1 billion users(YouTube)
Memers are Taking Over TikTok(The NewYork Times)
Inside the New York City Bodegas Going Viral on TikTok(The NewYork Times)
The Original Renegade(The NewYork Times)・The owner of TikTok is reportedly in talks with major record labels to launch a music streaming service(Business Insider)
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TikTok Owner’s Value Exceeds $100 Billion in Private Markets(Bloomberg)
Musical.ly’s Alex Zhu on Igniting Viral Growth and Building a User Community | #ProductSF 2016(YouTube)

インドでのTikTokに対する何百万件もの批判レビューをグーグルが削除

インドに何億人ものユーザーを抱えるByteDance(バイトダンス)のショートビデオアプリTikTok(ティクトック)にとって、インドは中国外で最大のマーケットだ。そのインドで、多くの人の目に触れることになったビデオを配信した後、批判にさらされている。

中国の大企業ByteDanceの宝的アプリであるTikTokで出回っていたいくつかのビデオに対して多くのユーザーが嫌悪感を示し、過去3週間にわたって「BanTikTok」「DeleteTikTok,」「BlockTikTok」といったフレーズがインドのTwitter(ツイッター )上でトレンドとなっている。

ユーザーは、家庭内暴力や動物虐待、人種差別、児童虐待、女性のモノ扱いを促進するような数多くのTikTokのビデオを見つけ、Twitter上でシェアした。

その結果、何百万という人々がGoogle PlayストアでTikTokにスター1つという評価をつけ、批判的なレビューを投稿することとなった。TikTokのグローバル評価は4.5だったのが、Google(グーグル)が介入する前の今月初めには1.2まで下がった。

グーグルの広報担当は、虐待の拡散を抑えるための措置として、同社はユーザーが投稿した数多くの批判的なTikTokレビューを削除した、と話した。対応後、TikTokの評価はわずかに上がって1.6となったが、欧州では現在も1.4だ。

「レビューに基づくユーザーのアプリ満足度を示す総合評価は、一時期86%から39%へと落ちた」とモバイル分析会社のApptopiaはTechCrunchに語った。

インドのGoogle PlayストアにおけるTikTokアプリのスクリーンショット

アプリに対して憤慨するという現象は目新しいものではなく、インドだけでもいくつかの例がある。たとえば、Snapchat共同創業者の伝えられたコメントが多くのインド人を怒らせ、そうした人々が誤ってSnapdealのeコマースアプリを削除(Gadget 360記事)し、無残な評価となった例もある。

しかし今回の件は、ソーシャルメディアインフルエンサーのFaizal Siddiqui氏が酸攻撃のパロディービデオを投稿した後に問題が大きくなり、TikTokのインドにおけるコンテンツモデレーションの取り組みに注意が注がれることになった。インドのTikTokユーザー数は昨年後半に2億人に達した(未訳記事)。

インドの政治家Maneka Sanjay Gandhi(マネーカー・ガンディ)氏は、TikTokとインド事業責任者がフィードバックに耳を傾けず、傷つけるような内容のビデオを調べず、指摘を受けたにもかかわらずそうしたビデオを投稿したユーザーに責任を押し付けていたと主張した(Twitter投稿)。

声明文の中で、TikTokの広報担当は「TikTokを利用する人の安全を守ることは最優先事項であり、当社の利用規約やコミュニティガイドラインにはどのようなことが許されないのかを明記してあることをはっきりとさせておく。ポリシーにより、他人の安全性を損なうリスクがあるコンテンツ、あるいは物理的な危害を加えたり、女性への暴力を称賛するようなコンテンツを当社は許さない。問題の行いは当社のガイドラインを守っておらず、我々はコンテンツを調べ、アカウントを凍結した。法執行当局とも連携を取っている」

しかしByteDanceはインドに何人のモデレーターを配置しているのか、どれくらい積極的に不快コンテンツを取り除いているのか(取り組んでいればの話しだが)明らかにしなかった。インドでByteDanceに厳しい精査の目が向けられるのは今回が初めてではない。

昨年、インドの高等裁判所はポルノや不法コンテンツを理由(未訳記事)にGoogleとAppleにTikTokアプリの配信を停止するよう命じた。禁止命令は数週間後に解除(未訳記事)された。

画像クレジット: Presley Ann / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

TikTokの運営のByteDance日本法人が経団連入り

スマートフォン向け短編動画のプラットフォーム「TikTok」(ティックトック)を運営するByteDance(バイトダンス)の日本法人(ByteDance株式会社)は3月12日、2月3日付けで日本経済団体連合会(経団連)に入会したことを明らかにした。

ByteDanceは中国のネット企業で、TikTokのほか、AIを活用したニュースサービスである「今日头条」(今日頭條、Toutiao)を運営している。2017年11月に米国で人気のソーシャルメディアプラットフォームだった「musical.ly」を買収し、現在はTikTokとサービス統合している。

日本法人では、TikTokのほか、2019年10月に、コミュニケーション、スケジュール管理、オンラインドキュメント、クラウドスペース、アプリセンターなどのツールをまとめた統合型オフィスコラボレーションツールの「Lark」をリリース。

関連記事:TikTokのByteDanceが世界最大のスタートアップに、Uberを抜く会社評価額で資金調達完了

同社は経団連に入会した目的として、Society 5.0 for SDGsの実現への貢献、日本の社会課題の解決への寄与、日本経済活性化に向けた活動への参画の3つを掲げている。今後TikTokがメインユーザーの若年層はもちろん、日本の文化にどのように浸透していくのか注目したい。

TikTokが密かにディープフェイク機能を開発か

TikTok(ティクトック)の開発元であるByteDance(バイトダンス)は、他の誰かが出ている動画に顔を挿入できる技術を開発した。TechCrunchは、ByteDanceが未発表だが本物そっくりのディープフェイクを作る機能を開発したとの情報を入手した。そのコードは「Face Swap」(顔交換)という。TikTokと中国の姉妹アプリであるDouyin(ドウイン)のいずれでも、ユーザーは顔をさまざまな角度から撮り、共有したい動画に自分の顔を挿入できる。

ByteDanceの新しい顔交換機能では、ユーザーは自身をスキャンして動画を選ぶことで、クリップ内の誰かの顔に自分の顔を重ねることができる

ディープフェイク機能がDouyinとTikTokでリリースされた場合、偽情報を広めるためではなく、コントロールされた環境で、ユーザーが顔交換技術そのものや動画を純粋に楽しむために使われる可能性はある。テクノロジーに対する注意を喚起し、オンラインにあるものをそのまま信じるべきではないということを多くの人が理解するようになるかもしれない。だが、ByteDanceが機密性の高い生体認証データで何をするのか、懸念が高まることも考えられる。iPhoneで設定するFace IDが何に使われるのかという懸念と同じだ。

他のテック企業が最近、ディープフェイクの下位バージョンを商業化しようとしている。Morphin(モーフィン)のアプリでは、GIF画像上の俳優の顔にコンピューターが生成した顔データを上から重ねることができる。Snapchat(スナップチャット)は、フレームやカメラロールの中の2人の顔を入れ替える顔交換オプションを長年にわたって提供している。Face Swap Liveのようなスタンドアロンアプリもある。TechCrunchは2019年12月、Snapchatの新しいCameoについて、Snapchatが提供する動画クリップに本物の自撮り写真を挿入できるが、挿入しても混乱を招くほど現実的には見えないと報告した。

最も問題なのは、中国のディープフェイクアプリであるZaoだ。これは、人工知能を使用して、ある人の顔を他人の動きにあわせてその体に溶け込ませ、表情を同期させる。スキャンされたユーザーの顔が悪用される可能性があるため、プライバシーとセキュリティの懸念がある。Zaoは9月に急速に広まった。中国のWeChatは以前、Zaoを「セキュリティリスク」のためブロックしていた。なお、ここではセキュリティリスクの例として「Zao」を取り上げたが、ByteDanceとZaoが提携しているわけではない。

だがByteDanceは、15億回のダウンロードを超えるTikTokとDouyinという世界で最も人気のある2つのアプリ上で本物そっくりのディープフェイクを提供できそうだ。

中国のiOS App StoreのZao

TikTokとDouyinの中に密かに存在する

TechCrunchは、イスラエルの市場調査アプリのスタートアップであるWatchful.aiからこのニュースに関する手がかりを入手した。同社は、TikTokおよびDouyinのAndroidアプリの最新バージョンの中にディープフェイク機能のコードを発見した。Watchful.aiは、Douyinのコードをアクティブにして、機能のスクリーンショットを生成することができたが、現在は公開していない。

まず、ユーザーはDouyinで顔をスキャンする。これはIDチェックとしても機能する。つまり、自分自身の顔だけを送信していることを確認し、同意を得ていない他人の既存または新規の顔写真を使用したディープフェイクの作成を防ぐためだ。Douyinは、焦点を合わせ照明を当てる際に、瞬き、うなずき、口を開閉するよう求める。こうすることで、ユーザーが生きている人間であることを確認する。その上で、編集可能な顔のスキャンを生成すると、さまざまな感情表現に応用したり、異なる情景に埋め込めるようになる。

次に、ByteDanceが使用権を持つと主張する動画から1つ選択すると、クリップの人物の顔が自分のものに置き換えられ、ディープフェイク動画となり、共有・ダウンロードが可能になる。動画に入れる透かしによって、コンテンツが本物ではないと判断できると同社は主張する。Watchfulがこの機能によって作成した動画への機密アクセスを筆者は受け取った。顔の交換は非常にスムーズにできる。動き、表情、色合いのすべてに非常に説得力がある。

Watchfulは、ディープフェイク機能のプライバシーと使用に関するTikTokとDouyinの利用規約の未公開更新版も発見した。TikTokの米国版Androidアプリ内にある英文が、機能と使用条件の一部を説明している:

この機能には、顔のパターンが使用されます。詳細については、Drama Faceの利用規約とプライバシーポリシーをお読みください。続行する前に、利用規約とプライバシーポリシーを読んで同意してください。

1.この機能をすべての人にとって安全なものにするため、ID検証が必要です。ID検証により、ユーザー自身の顔でこの機能を使用していることを確認します。このため、アップロードした写真は使用できません。

2.顔のパターンは、投稿する前に自分だけに表示される顔変更動画を生成するためにのみ使用されます。個人情報保護のため、後でこの機能を使用する場合は、本人確認が必要です。

3.この機能は、未成年者向けのインターネット個人情報保護規則に準拠しています。未成年のユーザーはこの機能にアクセスできません。

4. Douyinが提供するこの機能に関連するすべての動画素材は、著作権を取得しています。

10月18日に中国東部の浙江省杭州で開催された2019年 Smart ExpoのTiktokのブース(クレジット: Costfoto / Barcroft Media via Getty Images)

Douyin内の中国語でも、使用条件とプライバシーに関して、より長いポリシーが見つかった。主要箇所の翻訳は以下のとおり。

  • この機能が提供する「顔を変える」効果は、写真に基づいて写真を重ね合わせることによって生成される架空の画像です。元の作品が変更され、この機能を使用して生成された動画が実際の動画ではないことを示すために、この機能を使用して生成された動画に透かしを入れます。 透かしを消さないでください。
  • 前述の検出プロセス中に収集された情報及びあなたの写真を使用して顔を変える動画のために生成する情報は、検出及び顔の変更の際の照合にのみ使用されます。他の目的には使用されません。また、照合された情報はすぐに削除され、顔の特徴は保存されません。
  •  この機能を使用する場合、当社が提供する素材のみを使用できます。素材を自分でアップロードすることはできません。当社が提供する素材は、著作権者により承認されています。
  • 「未成年のインターネット個人情報保護規則」および関連する法律と規制の条項に従い、子供や若者の個人情報を保護するため、この機能は未成年者の使用を制限しています。

TechCrunchはTikTokとDouyinに対し、ディープフェイク機能のリリース時期、生体認証情報のプライバシー保護方法、年齢制限について問い合わせた。TikTokは質問への回答を控えたが、広報担当者は「チームで確認した結果、TikTokの機能にはないこと、また今後導入するつもりはないことを確認した。あなたが探しているのはDouyinに予定されているものだと思う。あなたのメールにはDouyinのスクリーンショットとDouyinに言及するプライバシーポリシーが含まれている。TikTokではDouyinを使用していない」と述べた。TikTokはその後TechCrunchに「アクティブではないコードフラグメントを削除して混乱を排除しているところだ」と述べた。これは、TikTokで顔交換コードが見つかったことを暗に確認したものだといえる。

Douyinの広報担当者はTechCrunchに「Douyinは事業を展開する管轄区域、つまり中国の法律および規制に従っている」と答えた。TechCrunchはTikTokのアプリに顔交換の利用規約と機能が含まれていることを確認したものの、Douyinは否定した。

これは疑わしいし、ディープフェイク機能のコードと英語の利用規約が、アプリがすでにアクティブ化され利用規約が見つかったDouyinだけでなく、TikTokの中で見つかった理由を説明していない。ワシントン・ポストは情報筋の話として、同社が中国の要請で政治的・性的コンテンツを検閲していると報道したが、TikTokの米国法人は中国政府からの検閲要求に従っていることを否定した。

ディープフェイクの一般化

ディープフェイクの顔交換機能は、中国や米国では公式にリリースされない可能性はあり得る。だが、リリースされていなくてもすでに機能は完全で、偽情報や同意のないポルノで批判されているにもかかわらず論争の的となっている技術を採用するByteDanceの意欲を示している。少なくとも同社は、未成年者によるこの機能の使用を制限し、自分自身の顔を入れ替えることのみを許可し、ユーザーが自分のソース動画をアップロードできないようにはしている。従って危険な偽情報の動画の作成、例えば下院議長のNancy Pelosi(ナンシー・ペロシ)氏が酔っ払ったように見せる動画や、トランプ大統領のような話し方をする人のクリップを作成することは避けられる。

Watchful.aiの共同創業者でCEOのItay Kahana(イテイ・カハナ)氏はTechCrunchに「ソーシャルネットワーキングアプリが、18歳以上のユーザーのみに新しい高度な機能を制限することは滅多にない」と語った。「ディープフェイクアプリは表面的には楽しく見えるかもしれないが、トロイの木馬になったり、知的財産権と個人データ、特にTikTokの圧倒的ヘビーユーザーである未成年者の個人データを危険にさらしたりすることは許されない」と述べた。

TikTokはすでに米国海軍では禁止されている。ByteDanceによるMusical.lyの買収とTikTokとの合併は、対米外国投資委員会が調査中だ。ディープフェイクの恐怖は、さらに厳しい精査を招く可能性がある。

だが適切な安全対策を講じれば、顔を変える技術は作り手中心のコンテンツ新時代を招くかもしれない。これは、2020年に成長する可能性のあるパーソナライズされたメディアの新しいトレンドの一部にすぎない。ソーシャルメディアは、自撮り写真からBitmoji、Animoji、Cameoへと進化し、現在ではディープフェイクが消費者の手に入りつつある。我々の注意をそらす無数のアプリ、動画、通知がある中で、スターになれるというのは注意を引く最良の方法かもしれない。

[原文へ]

(翻訳・Mizoguchi

TikTokの第4四半期売上高が前年同期比300%以上増加した模様

新しくリリースされたサードパーティのデータによると、TikTok(ティクトク)には小躍りする理由がある。

モバイルアプリの売上高と使用状況を追跡するスタートアップApptopiaによると、誰もが知るショートビデオアプリであるTikTokのアプリ内購入による売上高が前年同期比310%増となった(ボストン拠点のスタートアップであるApptopiaは、これまでに820万ドル(約8億9000万円)を調達し、AppAnnieと競合している)。

TikTokの売上高増加は、パーセンテージで見ると印象的だ。ApptopiaのAdam Blacker(アダム・ブラッカー)氏が公開したチャートによると、人気のソーシャルアプリのアプリ内購入関連の四半期売上高は5000万ドル(約54億円)と相当の規模に達した。前年同期比でも急速な成長だが、第3四半期のアプリ内購入による売上高約2000万ドル(約22億円)からの増加幅のほうに目を奪われるもしれない。

1つの四半期で5000万ドル(約54億円)なら、年間売上高は数百万ドル(数百億円)も可能だし、株式公開には十分だ。おそらく親会社であるByteDanceを手厚く支援することもできる。

【更新】モバイルアプリ情報ビジネスの別のプレーヤー、SensorTowerTechCrunchに、上記データが「App StoreGoogle Playを足した市場合計で、第4四半期のTikTokのアプリ内総費用は中国を除き約8700万ドル(約94億円)、純費用は6200万ドル(約67億円)」であることを示していると語った。さらに、SensorTowerRandy Nelson(ランディ・ネルソン)氏はメールで、同社の計算によるとTikTokの「年間成長率見込みは521%に近い」と述べた。すごい。

中国に本拠を置くテック企業で、バリュエーションが700億ドル(約7兆6000億円)を超えるByteDance(バイトダンス)は、TikTokのほかにソーシャルメディアサービスのToutiaoで知られる。TikTokは、ByteDanceが2017年後半に買収したMusical.lyと、独自のアプリケーションであるDouyinの融合により生まれた。TikTokは疑う余地のない成功を世界中で収めた。

TikTokは米国市場でも大きな成功を収めたが、親会社が中国政府とつながっている可能性があるとの懸念から、米国政府の複数の組織がその使用を禁止した

トランプ政権の貿易に対する姿勢に一部起因して、米国と中国の間の緊張は近年高まっており、両国間に密接な結びつきがあるテクノロジー産業にも波及している。

公正かどうかはともかく、Huawei(ファーウェイ)とByteDanceだけが飛び交う砲火の中で捕らえられた中国企業ではないが、現在、大西洋をまたぐ敵意によって制約を受けている最も知られた会社だ。

少なくとも投資家にとっては、ByteDanceは非常に価値ある企業だ。  TechCrunch2018年に報告したように、同社は800億ドル(86000億円)近くの価値がある。2020年のIPO候補とみられている。おそらく、TikTokのアプリ内購入による売上高の爆発的な成長はSECへの申請にあたって有利に働く。

画像クレジット:Costfoto / Barcroft Media / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

TikTokのByteDanceが2020年第1四半期の香港での株式上場を否定

ByteDance(バイトダンス)は、Financial Times紙による早ければ来年の第1四半期に香港で株式を公開する計画であるとの報道に反応した。「第1四半期に香港で上場する予定の噂には、まったく真実はない」とTikTokを運営する同社の広報担当者は述べた。

同紙の報道によると、2012年に設立され、ソフトバンクを含む投資筋からの支援を受けているByteDanceは、上場の準備に向けて法律事務所K&L Gatesと契約し、最高法務責任者と元米国担当者を直接雇用し、TikTokが米国のユーザーのデータを中国当局に引き渡すことを強制されるという「国家安全保障上のリスク」を招く可能性があるとする米議員の懸念に対処しているという。

ByteDanceがIPOに向けて準備しているという推測は、同社の評価額を世界で最も価値あるスタートアップとなる750億ドル(約8兆2000億円)〜780億ドル(約8兆5000億円)へと押し上げた、30億ドル(約3300億円)の資金調達ラウンドを完了した昨年から始まった。

ByteDanceのアプリには、中国版TikTokに相当するDouyin、ニュースアプリのToutiao、そして同紙によればIPOの準備に向けて販売が計画されていル米国市場向けニュースアグリゲーションアプリのTopBuzzも含まれている。

9月のReuters(ロイター)の報道によれば、ByteDanceが今年上半期に70億ドル(約7600億円)から84億ドル(約9100億円)の収益を上げ、6月に計上したとされている。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

TikTokがインドで教育コンテンツサービスを開始

現地時間10月17日、中国のTikTokはインドで教育プログラムのサービスを開始した。TikTokはショートビデオアプリとして人気だが、世界最大のマーケットのひとつであるインドでコンテンツを増やし、地元当局にアピールしようとしている。TikTokの広報はTechCrunchに対し、このようなプログラムの導入は世界初だと述べた。

世界最大のスタートアップであるBytedanceが運営するTikTokは、インドで多くのコンテンツクリエイターや制作会社と連携して教育用ビデオのプラットフォームを作っていると語った。学校で学ぶ内容の科学や数学から新しい言語の習得まで、幅広いトピックの短いビデオがそろっている。心身の健康のヒントや啓発的な内容もある。

TikTokはインドで1カ月に2億人以上に利用されている。教育プログラムは「インドのデジタルコミュニティにおける学びの民主化」を目指しているとしている(TikTokの今年4月の月間アクティブユーザーは1億2000万人だった)。

VedantuToppr、Made Easy、Gradeupといった教育テックのスタートアップが協力して、TikTok用の教育コンテンツを制作する。ソーシャル企業のJosh TalksやNudge Foundationとも連携してインド全体で5000人を指導する(こうした連携の一部は数カ月前に明らかにされていた)。Josh Talksの幹部は、TikTokでは2カ月足らずでほかのプラットフォームより多い3500万人以上にリーチすることができたと語る。

TikTokのセールス・提携担当ディレクターのSachin Sharma(サチン・シャルマ)氏は、教育分野への進出はユーザーの需要に応えるものだと言う。同氏はニューデリーでの記者会見で、世界的に見て教育ビデオは人気がありエンゲージメントが高いと語った。

シャルマ氏によれば、ここ数カ月で1000万本以上の教育ビデオが制作され、TikTokで共有されて480億ビュー以上を記録したという。同氏は、クリエイターとのパートナー契約に関する財務構造は明らかにしなかった。

低価格のデータ通信とAndroidデバイスの急増によりインドでモバイルビデオ視聴のブームが起きており、インド国内の教育テックの数も増えてオンラインでコンテンツを配信している。

学習アプリを提供している創業8年のスタートアップのByju’sは、ここ数年でカスタマーベースを大幅に増やしている。同社の評価額は57億5000万ドル(約6200億円)で、7月時点のユーザー数は3500万人だ。

教育コンテンツは広告主にとっても魅力がある。教育コンテンツはTikTokが効果的なマネタイズの方法を探るのに役立つだろうとアナリストは見ている。

eラーニングへの進出は、地元当局に対するTikTokのブランドイメージの向上にも役立つだろう。TikTokはこれまでに数回、インドで問題となっている。今年の4月には、ポルノなどの違法なコンテンツを公開し促進しているとしてインドの裁判所がTikTokを禁止した。この禁止措置はその後解除された。

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(翻訳:Kaori Koyama)

ByteDanceが検索ポータルをオープン、ウェブと独自プラットフォームの結果をミックス

ByteDanceは米国時間8月12日、新しい検索ポータルをオープンし、新たな一歩を踏み出した。Toutiao Sarchというこのポータルは、ByteDanceが所有するニュース収集サイトのToutiaoの一部で、現在はモバイル向けのみに最適化されている。

これはToutiaoのウェブサイトの一部だが、ポータルはユーザーがアプリ内でニュースやトピックが検索できるToutiao独自の検索機能とは別だ。Toutiao Searchはウェブからの検索結果を表示するが、中国の他の検索エンジンと同様、その結果は検閲される。例えば、現在大規模な民主化運動が行われている「香港」を検索すると、国家が認証したメディアやXigua Video、Douyin(中国国内向けのTikTok)やToutiaoといった、ByteDanc独自のサービスからの結果のみが表示される。

「レストラン」といったあまり議論のないトピックを検索すると、ByteDanceのアプリとウェブからの結果がミックスされて表示される。これはつまり同社の検索事業への参入が、現在検索エンジン市場の76%を占め、Sogou、Bing、360を所有しているBaiduへの競合となるだけでなく、ByteDanceが同社の全プラットフォームへのトラフィックを促進するのを助けることになる。中国市場への再参入を目指すGoogle(グーグル)の取り組みは、閲覧を受ける検索エンジンの開発に従業員が抗議したため、昨年行き詰まった。

TechCrunchのManish Singh(マニッシュ・シン)が今月始めに報じたところによると、世界で最も高く評価されているテックスタートアップのByteDanceは、GoogleやBaidu、Bing、360からすでに人材を獲得している。今月始めにByteDanceのWeChatアカウントで公開されたとある求人投稿は、同社による初めての「ユニバーサルな検索エンジン」の公式発表だった。

TechCrunchは、この新しい検索ポータルについてByteDanceに問い合わせている。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

TikTokの子どものデータの安全な取り扱いを英政府も調査開始

TikTok(ティックトック)は、未成年ユーザーの安全性と個人データの扱いに関して、英国でも調べられている。The Guardian(ガーディアン)紙によると、英国の個人情報保護監督機関であるICOの長官を務めるElizabeth Denham(エリザベス・デンハム)氏が「米国の連邦取引委員会(FTC)が児童のプライバシーに関する法律違反でTikTokに570万ドルの罰金を課した直後の2月に、その調査は始まった」と委員会で述べたそうだ。

デンハム氏はガーディアン紙に、今調べているのはTikTokのプライバシーデータの集め方であり、特にオープンなメッセージングシステムは大人のユーザーが子どもに接触できる点で懸念がある、と述べている。彼女は曰く「我々は子どもたちに情報の防御服がないことを懸念している。メッセージングシステムが完全にオープンであることにも着目している。子どもたちがオンラインで集めたり共有したりしているビデオも調べている。目下、TikTokに対する積極的な調査をしているので、しばらく見守っていただきたい」。

調査は、TikTokの運営元であるByteDanceが保有するこの人気アプリが、EUの一般データ保護規則(GDPR)に違反していないかも調べている。EUのこの規則は、企業が未成年ユーザーに対する特別の保護策をとっていることと、彼らには大人向けとは異なる別のサービスを提供することを要求している。

FTCの調査は、TikTokがまだMusical.lyという名前だったころに始まり、その結果、13歳未満の子どもが名前やメールアドレスなどの個人情報を入力する前に親の同意を求めるなどの、児童オンラインプライバシー保護法(Children’s Online Privacy Protection Act)の規定に違反していると判定した。この判定の結果アプリには年齢制限が加えられ、13歳未満のユーザーによるビデオの撮影や投稿が禁じられた。

ByteDanceは評価額が750億ドルに達し、ガーディアン紙への声明ではこう述べている。「ICOのような機関とは協力して弊社のプロダクトに関する適切な情報を提供し彼らの仕事を支援している。データの保護という原則を堅持することはTikTokの最上位のプライオリティである」。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

TikTokの親会社ByteDanceがスマホを開発しているという噂

世界でもっとも企業価値の高いスタートアップであり、世界的に人気の動画アプリTikTokの運営会社ByteDanceにとって、この2カ月間は何かと忙しかった。北京に本社を置く同社は、仕事の共同作業アプリLark、インスタントメッセージ・アプリFeiliao音楽ストリーミング・アプリなどなど、アプリの品揃えを次々に増やしてきたが、ついに、ハードウエアの世界への野心的な一歩を踏み出そうとしているようだ。

Bytedanceは、自前のスマートフォンの開発を計画している。Financial Times(有料版)は、2つの情報筋からの話として伝えている。ByteDanceの広報担当者は、この件に関してコメントを控えたが、中国のインターネット企業の間では、ユーザー数を増やす方法として、最初から自社アプリをインストールしたスマートフォンを販売するスタイルが長期にわたって人気だったことから、その噂に特段の驚きはない。

しかもByteDanceには、もっと多くのユーザー獲得チャンネルを開拓しなけらばならない差し迫った事情がある。Bloombergの記事によると、この2年ほどで急速に成長したByteDanceだが、昨年、中国での広告収入低迷の煽りを受け、目標収益の達成に初めて失敗している。

ByteDanceよりも前から市場にいる企業の中に、自撮りアプリのメーカーMeituがあるが、同社は写真編集アプリなどの自社製アプリ一式をあらかじめインストールしたスマートフォンを開発した。先日、その部門はXiaomiに売却され、Xiaomiは女性ユーザーや新規ユーザーの獲得数を増やそうと試みている。Snowが所有するカメラアプリB612やByteDanceのFaceuも、Meituのすぐ後に迫っている。

中国のインターネット業界の黎明期においては、その他の企業は、多くの資産を持たないアプローチを好んだ。Baidu、Alibaba、Tencentは、中国の技術界を牽引する企業として、まとめて「BAT」と呼ばれているが、彼らはみな、Android ROMをカスタマイズして使っている。これなら、スマートフォンのメーカーがプリインストールした市販のROMよりも、多くの機能が使える。

Alibabaの野心は、2016年のMeizuに対する5億9000万ドル(約650億円)の投資からも伺える。このEコマースの巨人は、携帯端末メーカーのためにオペレーティングシステムを注文生産するという冒険に打って出た。最近では3月、WeChatのオーナーであるTencentが、ゲーム用スマートフォンのメーカーRazerと手を組んで、ハードウエアをカバーする数々の構想に挑むことにした。

 

TikTokの親会社ByteDanceは無料音楽ストリーミング・アプリの立ち上げを計画(本文は英語)

ByteDanceのスマートフォン開発には、以前から兆候があった。同社は、1月、スマートフォンのメーカーSmartisanからいくつかの特許を買い取り、従業員も数名引き抜いたことを認めている。しかしその当時、同社は、この取り引きは「教育ビジネスを研究するため」と話していた。Smartisanの事業は教育とはほとんど関係ないことを考えると、この声明はおかしい。少なくともこの提携は、このモバイルインターネットの新興企業にハードウエア開発能力を与えている。

事実、Financial Timesの情報筋は、ByteDanceの創設者Zhang Yimingは「ByteDanceのアプリがあらかじめインストールされたスマートフォンを長年夢見ていた」と伝えている。とは言え、これは非常に厳しい戦いになるはずだ。少なくともスマートフォンの売り上げが低迷し、Huawei、Vivo、Oppo、Xiaomi、Appleといったメーカーがしっかりと堀を固めている中での過酷な競争となる。

ByteDanceは、モバイルアプリの帝国を築いたお陰で、古巣を遠く離れても有利な立場にいられる。同社は、世界的な足場をしっかりと固めることに成功した数少ない(最初だと主張する人も多いが)中国のインターネット系スタートアップのひとつだ。TikTokは、この数カ月間、世界のアプリランキングのトップの地位を保っている。しかし、世界のより大きな市場では、障害物に悩まされてもいる。

アメリカでは、連邦取引委員会が子どものプライバシー保護ための法律に違反したとして、TikTokに罰金を科したTikTokの近年の成長をおもに支えているインドでは、不法なコンテンツが含まれているとして、政府から一時的にアプリを使用禁止にされるという問題が降りかかった。

中国企業にはセキュリティー問題がついてまわるとするワシントンの懸念があるために、アメリカ市場に浸透するのは難しいかも知れないが、インドには現在、中国ブランドがひしめいている。Counterpointの調査によれば、第一四半期はXiaomiを筆頭とする中国メーカーが、インドのスマートフォン市場の66パーセントという大きなシェアを握っているという。ということは、ByteDanceは、同盟を組むであろうSmartisanと共に、インドの地元ライバルのみならず、故郷の市場で見慣れた顔ぶれとも戦うことになる。

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(翻訳:金井哲夫)

中国のアプリデベロッパーがインド市場に大進出、金も人も「地元主義」が成功の鍵に

中国を征服したら、次はインドだ。世界で人口が二番目に多いこの国が、次の寄港地であることは当然だから、消費者向けアプリの世界はまさしくインドブームになりつつある。

スマートフォン本体では中国のXiaomiとOppoがこのところインド市場を支配し、そしてそのタッチスクリーンのガラスの背後のコンテンツでも、中国勢がますます増えている。FactorDaily誌によると、インドのAndroidアプリの上位100のうち44が中国製で、それは昨年の18からの急上昇だ。インドの5億人と言われるインターネットユーザーのほとんどがAndroidのユーザーだから、メディアの記事がもっぱらAndroidにフォーカスするのも当然だ。

上位の中国製アプリとそのベンダーには、ByteDanceのような大物もいる。ここは評価額が世界最高のスタートアップで、大人気のTikTokや、インド語のニュースアプリHeloを提供している。そのほか、AlibabaのUCbrowserや、知名度はやや低いTencent傘下のNewsDog、目立たないけど稼いでいるストリーミングアプリBigoなどが顔を揃えている。

Sensor Towerのデータでは、Androidアプリのトップテンのうちの5つが中国製で、それは2017年末にはわずか2つだった。

近年のインドのテクノロジーシーンをウォッチしてきた者にとって、このようなアプリストアの中国ブームは意外ではないが、変化のスピードは予想外だ。

中国の二大企業AlibabaとTencentは、インドの有望なスタートアップへの投資を増やし、他の中国企業にとってもそれ(地元投資)が中国進出の標準形になりつつある。

Alibabaは2015年に、数億ドルを投資してSnapdealPaytmを買収し、その後は買収のペースをさらに上げている。2017年にTencentは、Gaana(音楽ストリーミング)とSwiggy(フードデリバリー)に大型投資をし、その前年にはByju’s(教育)とOla(ライドシェア)にも投資した。またAli–、Ten–の両社は昨年、インド国内用のクラウドコンピューティングサービスを立ち上げた。

またXiaomiも、スマートフォンを売るだけでなく地元企業を支援し、またその顧客のためのローカルサービスを開発している

このような、地元に根ざす主義のアプローチが、インドで成功するアプリメーカーに共通している。かつてTencentが保有する中国のメッセージングアプリWeChatは硬直的なやり方で失敗したが、対してByteDanceは、地元にチームを育てるだけでなく、インドだけ用の完全にローカルなアプリを作ることもある。今後の何億というインドの新しいインターネットユーザーは、いよいよますます田舎の人たちで、言語は各地固有の方言でばらばらだ、…だからローカルなコンテンツと音声対応の技術が成功の鍵になる。そういうローカル対応はスマートフォンメーカーが当然のように前からやってきたことだが、中国のアプリデベロッパーも、インド市場で一発屋で終わらないためには、その点を十分に意識する必要がある。

FactorDailyの記事はここで読める。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

中国人が熱狂するショートビデオにネットの巨人も気が気ではない

[著者:Rita Liao]

中国で地下鉄に乗ると、多くの人がスマホのTikTok(ティックトック)の動画に見入っている。

モバイルインターネット専門調査研究会社QuestMbileの調査によれば、中国人のインターネット利用時間のうち、TikTokなどの動画の視聴に占める割合は、2017年には5.2パーセントだったものが、現在は90パーセント近くまで跳ね上がっているという。

750億ドル(約8億5500万円)という世界最高の評価額を誇るスタートアップByteDanceが運営するTikTokのようなアプリは、これまでカメラに映ることを嫌がっていた人たちの間で人気を博した。動画編集の技術を持たない人でも簡単に操作でき、フィルターで映像をきれい加工できる。また、音楽を加えて作品を楽しくすることもできる。

Douyin(抖音)で動画を制作を楽しむ老夫婦 / 提供:Douyin ID @淘气陈奶奶

これには、近年のスマートフォンのデータ通信料の値下げや、スマートフォンの普及も手伝っている。中国政府の資料によれば、現在、中国には8億人のスマートフォン利用者がいる。CBNDataのデータベースによれば、インターネット利用者の中で、スマートフォンで動画のストリーミングを利用していた人は2013年には40パーセント以下だったが、2017年にはその割合は80パーセントに急上昇しているという

当初は若い人たち向けに開発されたショートビデオ・アプリだが、高齢者を含むあらゆる世代での人気が高まっている。中国の14億人の総人口のうちの3分の1以上の人たちが、毎月、活発にこれらのアプリを利用しており、50歳以上の人たちも、今では毎日50分もの時間をこのアプリに費やしてる。ちなみに、昨年は17分だった。

Tencentの不安

近年、中国では、Tencentのメッセージング・アプリWeChatのように、多くの注目を集めるモバイルアプリは少ない。WeChatは、買い物、タクシーの配車、ホテルの予約、その他の日常的な作業がワンストップで行えるサービスを提供するまでに発展している。

そこへショートビデオ・アプリが登場し、人々のスマートフォン利用時間が奪われるようになった。TikTokなどのアプリは、そもそもの目的が違うため、WeChatと直接競合するものではないが、本格的な動画の配信アプリに包囲されて、インスタントメッセージ・サービスの利用回数が減少していることをデータが示している。

今年、WeChatとその同類のアプリが、人々のインターネット利用時間で占めた割合は、前年比で3.6パーセント減少したとQuestMobileは報告している。

Tencentが、人気の陰りとByteDanceの台頭を心配するのは無理もない話だ。普段は低姿勢なTencentのCEO馬化騰(ポニー・マー)は、ByteDanceのCEO張一嗚(チャオ・インミン)に対し、盗作とWeChatでのTikTokのブロックに関して、珍しくネット上で喧嘩を売った。

十代の女性による、よくあるフィンガーダンスの動画 / 提供:Douyin ID @李雨霏2007

別のところで、Tencentは行動に出た。4月から、この巨大テック企業はTikTokに対抗するアプリをいくつも展開し始めた。しかし、今のところはまだ、世界に5億人のアクティブユーザーを抱える王者の数字に近づくことすらできていない。この中には、2017年後半にByteDanceが買収し、8月に合併したMusical.lyの総利用者数1億人は含まれていない。

だが、Tencentには代替策がある。同社は、TikTokの中国での最大のライバルKuaishou(快手)の株式を保有している。Kuaishouは、データ集計サービスJigunag(極光)によれば、9月には22.7パーセントの普及率を記録した。それでも、TikTokの33.8パーセントの前では小さな数字に見える。Jigunagの調査では、TikTokは、3分の1以上のモバイルデバイスにインストールされていることになるという。さらに、ByteDanceのHoushan(火山)、Xigua(西瓜)といった、その他のショートビデオ・アプリも、別のニッチ市場で健闘している。それぞれ、13.1パーセント、12.6パーセントという普及率だ。

Alibabaとの同盟は微妙

最近まで、ByteDanceは、中国のもうひとつのインターネットの巨人、Alibabaとうまくやって来たように見える。両社は、3月、TikTokが自社製アプリでの電子商取引にAlibabaのインターネット・マーケットプレイスTaoBaoを利用することを目的に提携した。認証されたTikTok利用者(大変に多いのだが)は、動画を自分のTaoBaoショップにリンクできる。金儲けを可能にするこのシステムで、TikTokは、より質の高い動画クリエイターを集めることができる。一方、Alibabaは、新種のソーシャルメディア・アプリからのトラフィックが得られ、WeChatにブロックされた電子商取引アプリの損失を補える。

だが、蜜月は続かないものだ。ByteDanceはAlibabaのテリトリーに急襲をかけた。ByteDanceは、電子商取引プラットフォームを導入し、長尺の動画ストリーミングの分野に進出してきたのだ。そこは、Alibaba、Tencent、BaiduのiQIYIが支配する領域だ。

ライフハックも人気だ。この男性は植木栽培のコツを伝授している / 提供:Douyin ID @速效三元化合肥

ByteDanceは独立を目指しているようだ。大半の中国のスタートアップとは違い、設立から6年目のByteDanceは、Baidu、Alibaba、Tencentの技術系大手トリオからの資金援助を受けていない。この3社はBATと呼ばれ、中国の一般消費者向け技術を独占してる。

ByteDanceの新分野への進出は、フィードに広告を掲載する以外の新しい収益チャンネルの獲得を急いでいるようにも見える。同社は、2018年の収入目標を72億ドル(約8200億円)に引き上げた。Bloombergによると、昨年の収益を25億ドル(約2850億円)上回る数字だ。

ホームとアウェイ

ブームとは裏腹に、中国のショートビデオ市場に対する規制の逆風が強まっている。この数カ月間、Kuaishou、ByteDanceの動画アプリ、その他の同様の企業やアプリは、違法または不適切とされるコンテンツを排除するとの理由で、当局から締め付けられている。

違反すればアプリストアは閉鎖され、Miaopai(秒拍)のように厳しい罰則を受ける。中国版TwitterのWeibo(微博)の支援を受けたMiaopaiだが、そのおかげでアプリのインストール件数は激減した。

Douyinは真面目な動画も流す。北京のテレビ局はDouyinにアカウントを持ち、動画を配信している / 提供:Douyin ID @BTV新闻

ByteDanceはまだ閉鎖にはなっていないが、そのAIを使った推薦アルゴリズムは攻撃の的になっている。同社自慢のアルゴリズムなのだが、メディアの監視機関は良い顔をしない。TikTokは、未成年の妊娠など「許容できない」動画を推薦することで注意を受けた。ByteDanceの人気のニュースサイト今日头条(今日のヘッドライン)も、1日1億2000万人の利用者に「失言」をして、同様の批判を受けた。

これを受けてByteDanceは、提供するアプリのAIによる推薦を監視する人材を、数千人単位で増員した。

ByteDanceは、TikTokを通じてそのテリトリーを中国の外にまで広げようとしている。今年、このショートムービー・アプリは、世界のアプリストアのランキングを上昇し、Musical.lyと一緒になってその速度を高めている。それに警戒しているのは、もはやTencentだけではない。FacebookTikTokのクローンを作っていることを、先日、TechCrunchがお伝えしたばかりだ。

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(翻訳:金井哲夫)

TikTokのByteDanceが世界最大のスタートアップに――Uberを抜く会社評価額で資金調達完了

オンライン広告ネットワークやTikTokなどのサービスを運営する中国のByteDanceがUberを抜いて会社評価額で世界最大のスタートアップとなった。

ForbesBloombergは同社が750億ドルの会社評価額で30億ドルの資金調達を完了したと報じている。TechCrunchの取材に対し、事情に通じた情報源はこの報道が事実であると確認し、会社評価額はプレマネー、つまり資金調達を実施する前の評価額だと述べた。つまり今回のラウンドで得た30億ドルを加えるとByteDanceの評価額は780億ドルとなる。これは配車サービスの巨人、Uberの直近の会社評価額720億ドルを抜くものだ。ただUberはf評価額1200億ドルで来年上場するものとみられる。.

ByteDance にコメントを求めたが回答は得られていない。

TechCrunchはByteDanceがアメリカのベンチャーキャピタルKKR、General Atlanticに加えて日本のSoftBankと新たな資金調達ラウンドに関して協議していることを8月に報じている。 BloombergはこのラウンドでSoftBankが18億ドル程度を出資し、その一部でセカンダリーマーケットで既存の投資家の株式を買取ると報じた。この記事はラウンドは完了しておらず新たな投資家の参加によって資金調達総額がさらに跳ね上がる可能性を指摘していた。

ByteDanceは多様なデジタルメディアを運営しているが、中でも有名なプラットフォームは 今日头条(今日頭條、Toutiao)だろう。これはAIを活用したニュース・サービスで1億2000万のユーザーがおり、中国最大級のダウンロードを集めたアプリとなっている。またByteDanceが運営するYouTube的な短編ビデオ共有サイト、TikTokはライバルの動画サイト、Music.lyと統合された。ByteDanceはMusica.lyを昨年 10億ドルで買収していた。

TikTokが人気があるのは中国だけではない。TikTok-Music.lyの統合は世界的な動画共有プラットフォームとなることを目指す戦略の一環だ。ByteDanceは今日頭條方式のサービスを世界で展開している。ただし、中国内のサービスと国際的サービスの間に慎重に障壁が設けられており、
TikTok(月間5億ユーザー)とその中国版の抖音(Douyin、月間3億ユーザー)はまったく別のサービスとして運営されている。これは主として検閲の影響を考慮したものだ。

ByteDanceはBATと呼ばれるBaidu、Alibaba、Tencentなどの先発企業を押しのけて中国のインターネットでトップクラスの地位を築くという離れ業に成功した。しかしアメリカのテクノロジー企業もByteDanceの動向には注目している。「模倣は最高の賛辞」といいう言葉があるがGoogleは中国向けにo今日頭條に似たニュースアプリを開発中だ(検閲に対応する点が議論を呼んでいる)。一方、TechCrunchはFacebookはTikTokクローンを準備していると報じた。

ただしByteDanceにとってすべてが順風満帆ではない。中国政府はオンラインメディアに対しても厳しい検閲を行っており、メディアやアプリストアが一時停止される制裁を受けている。これにともない同社のメディア審査チームは6000人から1万人に急増した。しかしこうした逆風も一時的な傷みだろうし、政府から厳しい視線が注がれるのも同社の影響力の重要性を物語っていると考えるべきだろう。

〔日本版〕11月15日、16日に渋谷ヒカリエで開催されるTechCrunch Tokyo 2018TikTok日本法人の西田副社長が登壇する。

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滑川海彦@Facebook Google+

Twitter、TikTok、楽天—TC Tokyo 2018登壇者を追加発表

Kayvon_Beykpour

Kayvon Beykpour氏/Twitter プロダクトリード、Periscope共同創業者

11月15日(木)と16日(金)に東京・渋谷ヒカリエで開催する日本最大級のスタートアップ・テクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。

現在、一般来場者向けの「前売りチケット」(3万円)、創業3年未満(2015年10月以降に創業)のスタートアップ企業の皆さんに向けた「スタートアップチケット」(1万8000円)、創業3年未満のスタートアップ企業を対象とした2日間のデモブース出展の権利と2名ぶんの参加チケットがセットになった「スタートアップデモブース券」(3万5000円)の3種類のチケットを販売中だ。なお、前売りチケットは10月31日までの販売、スタートアップデモブース券は残りわずかとなっている。

今回は、登壇が決定している皆さんをご紹介したい(アルファベット、五十音順)。

  • Harinder Takhar氏/Paytm Labs CEO
  • Heather Sittig氏/Relola CEO
  • Jim Adler氏/TOYOTA AI Ventures マネージングディレクター
  • Jonathan Palley氏/Spire CEO
  • Julio Avalos氏/GitHub チーフ・ストラテジー・オフィサー兼ジェネラル・カウンセル
  • Kayvon Beykpour氏/Twitter プロダクトリード、Periscope共同創業者
  • Long N. Phan氏/Top Flight Technologies CEO
  • 有川鴻哉氏/Hotspring 代表取締役
  • 小泉文明氏/メルカリ 取締役社長兼COO
  • 中山一郎氏/PayPay 社長
  • 西田真樹氏/Bytedance 副社長
  • 林 隆弘氏/HEROZ 代表取締役CEO
  • 堀江裕介氏/dely 代表取締役
  • 向井秀明氏/楽天インベストメント&インキュベーションカンパニー ジェネラルマネージャー
  • 芳川裕誠氏/Treasure Data CEO

それぞれのセッションの詳細やTechCrunch Tokyo 2018のスケジュールについては追って記事を公開する予定なので、楽しみに待っていてほしい。

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Apple、中国のApp Storeからギャンブルアプリを削除

Appleは中国で違法コンテンツの取締りを行い、「宝くじ」サービスを始めとするギャンブル関連アプリ数万点を削除した。

The Wall Street Journalによると、同社が削除したアプリは2万5000点に上る——この数字を最初に報じたのは国営放送のCCTV [リンク先は中国語]。Appleは削除したアプリの数についてコメントしていないが、行動を起こしたことは認めている。

「ギャンブルアプリは違法であり中国のApp Storeでは許されていない。当社はすでに多数のアプリを削除し、違法ギャンブルアプリApp Storeで配布しようとするデベロッパーを排除した。われわれはこうしたアプリを見つけだしApp Store上に存在させないために最善の努力を尽くしている」と広報担当者がTechCrunchに伝えた。

Appleは150万点以上のアプリを中国で提供している。中国、香港、台湾をあわせた大中華圏はAppleの世界で3番目のビジネス地域であり、最近の四半期に96億ドルを売り上げている。これは総売上の約18%にあたる。

削除措置が行われたのは、Appleがスパム、ギャンブル、ボルノなどの問題防止を怠り、アジアでのビジネス拡大に注力しているとの批判を、複数の国営メディアが報じてから数週間後のことだ。

そうした批判は、これらの問題を現在中国と米国の間で進行中の貿易戦争——その結果Qualcommは440億ドルのNXP買収を断念した——と関連付けているが、おそらく見当違いだろう。中国政府からコンテンツが不適切であるとして非難されているのはAppleだけではない。中国の数多くの有望スタートアップが圧力を受けている。

今年、意欲的なニューメディア企業、ByteDance——ニュースとビデオアプリを運営し、現在25~35億ドルの資金調達を求めて投資家と交渉中——が中国で運用していたパロディーアプリの中止を命じられた。さらに4件のニュースアプリとコンテンツアプリが、権力を冒涜しているとしてApp StoreとGoogle Playから削除された。ByteDanceはこれに呼応して、コンテンツ監視チームを倍増し、コンテンツをチェックする強力なシステムを開発している。

「一連のコンテンツは社会主義の中心的価値と一致しておらず、世論を良い方向に導くものではなかった。過去数年間、われわれはビジネスの拡大に資源を投入し、プラットフォームの監視に十分な対策を講じてこなかった」とファウンダー・CEOのZhang Yimingが、インターネット監視当局をなだめるためとおぼしき声明で語った。

一方Appleは、50件以上のVPNアプリをApp Storeから削除して中国政府にへつらっていることを批判されている。それらのアプリは中国のインターネット検閲システムを回避するために用いることができる。CEO Tim Cookは、中国の法律に則って削除したアプリがいずれ戻ってくると信じていると語ったが、それが起きるシナリオは考えにくい。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook