Uberは最高裁判所の判決を受けて英国のドライバーを「労働者」待遇にすると発表

Uber(ウーバー)は現地時間3月16日、英国で同社の配車アプリを利用し営業しているドライバーを「労働者」として扱うと発表した。これによりドライバーたちは、有給休暇などの福利厚生を受けられることになる。ただ、Uberは最高裁判所の2021年2月の決定に従ったかに見えるものの、アプリ上のドライバーの記録に関わらず、乗客を乗せた時点から就業時間を計算するという同社の決定に対して、新たな闘争ののろしはすでに上がっている。

Uberは、3月17日から英国のすべてのドライバーに、収入の12.07%を基準に算出された有給休暇中の給与を、2週間ごとに支払うと話している。またドライバーには、乗車を受け付けた場合、経費を差し引いた上で、少なくとも最低賃金(いわゆる国民生活賃金)が支払われるとUberはいう。さらに英国での年金受給資格を持つドライバーは、Uberの費用補助を受けた年金制度に自動的に組み込まれる。この補助額は、ドライバーの収入のおよそ3%に相当する。

英国では、働き方がSelf-employed(自営業者)、Employed(被用者)、Worker(労働者)の3つに分類されている。「労働者」は雇用されないものの、最低賃金、有給休暇、受給資格を持つ者には年金が保証される。

Uberが3月16日に話したところによれば、現在の予測に基づき、同社は先に発表した第1四半期または2021年の調整EBITDAの予測値は変更しないとのことだ。

Uberは、2016年から英国での「労働者」の定義を巡る争いに巻き込まれてきた。2021年2月、英国の最高裁判所は、Uberの控訴を棄却し、アプリを利用するドライバーは「労働者」であり、独立した業務請負人ではないという先の判断を再確認した。逆転の見込みはなく、Uberはある意味、しぶしぶ承諾するかたちになった。Uberは、ドライバーの就業時間はドライバーが業務開始をアプリに記録した時点からではなく、乗車を受け付けた時点からとしており、福利厚生も乗車を受け付けて初めて発生するとしている。すでに労働活動家たちは、その点に憤慨している。

「最低賃金と有給休暇と年金をやっと認めたことは歓迎しますが、Uberがこの提案の話し合いに応じた時期が遅すぎました」と、App Drivers & Couriers Union(アプリ運転手および配送業者組合)の声明は述べている。これには、Uberに対して訴訟を起こしたドライバーのJames Farrar(ジェームズ・ファーラー)氏とYaseen Aslam(ヤッセン・アスラム)氏が署名している。「最高裁判所は、ドライバーは労働者として認められるべきであり、最低賃金と有給休暇は、Uberが主張する乗客を乗せてから降ろすまでの時間ではなく、ドライバーの就業開始と終了の記録に基づく就業時間に応じて発生するべきだとの判断を下しました。つまり、Uberのドライバーは、いまだに40〜50%ほど釣り銭を誤魔化されているのです。さらに、最低賃金に基づいてドライバーの経費をUberが一方的に決めることも承諾できません。これは労働協約で話し合われるべき問題です。

今回、Uberが1つ前進したことに間違いはありませんが、法律に定められた最低要件に完全に準拠しない部分は、一切受け入れられません。また私たちは、Uberが労働組合の認定、公正な解雇不服申し立て手続き、データアクセスに関する合意に向けても前進することを期待します」。

ファーラー氏はTechCrunchに対して、この問題はまだ解決していないと話した。次なるステップは、労働裁判所に立ち返り、ドライバーが法的に与えられた権利に基づいて確実に給与が支払われるようにすることだ。

英国での労働問題への対応が継続しているUberだが、ヨーロッパの他の国々の裁判所で争われている問題にも注意を向けなければならない。裁判所の決定によっては、Uberの収益に大きく響く。その一方で、EUの議員たちはギグワーカーの待遇改善のための調査も行っている。英国でのUberの譲歩が、ヨーロッパ全体の協議に影響を及ぼす可能性がある。

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(文:Kirsten Korosec、Natasha Lomas、翻訳:金井哲夫)

スペインがデリバリープラットフォームの配達員を従業員と区分する労働改革に合意

スペイン政府は現地時間3月11日、デリバリープラットフォームの配達員を従業員とする労働改革をめぐり、労働組合ならびに業界団体と合意に達したと明らかにした。

法案が可決されればDeliveroo、Glovo、UberEatsなどスペインマーケットで事業を展開しているプラットフォームに大きな影響が及ぶ可能性がある。

「労働社会経済省、労働組合のCCOOとUGT、業界団体CEOEとCEPYMEはデジタルプラットフォームを通じて消費財や商品の配達、流通を専門的に行っている労働者の雇用形態を確立することで合意しました」と労働社会経済省は声明で述べた。

「最高裁判所の裁定に沿って、合意はデジタル配達プラットフォームを通じてサービスを提供している労働者の雇用の推定を認めます」と付け加えた。

「雇用の推定は、サービスや労働条件のアルゴリズミックマネジメントでこの仕事を管理している企業を通じて有料の配達サービスを提供する労働者に認められます」。

厳密にどのように労働法を変更するか何カ月も交渉してきたが、労働改革での合意は政府がいま立法のプロセスを前に進められることを意味する。

欧州連合もより広範なギグワーカーの待遇を改善するか検討中であり、スペインでの合意のタイミングは特に興味深い。他のEU諸国に先駆けて、ギグワーカーの一部を従業員と認めるスペインの法制化計画はより広い地域政策の形成に影響を及ぼすかもしれない。

デジタル事業の成長のサポートを目的としたスペインにおける広範な改革は、政府が近代化への動きで誰も取り残されるべきではないと述べたために社会をかなり巻き込んだ。

労働改革の合意は、配達員の分類をめぐって近年スペインで展開された数多くの訴訟に続くものだ。裁判所によって訴訟の結果は異なっていたが、2020年最高裁判所が配達員の雇用分類に関する裁判で、スペイン発の配達プラットフォームGlovoの訴えを却下してこの問題に終止符を打ち、欧州の最高司法府への諮問も却下した。

スペインの配達プラットフォームは、計画されている改革が何千人という配達員の収入源喪失という結果を引き起こしかねないと主張した。

スペインでは最大3万人が配達プラットフォームでサービスを提供していると報道されている。

自営労働者によって提供されている労働に頼っているより確立された産業よりも、プラットフォームは政治的に簡単なターゲットとして不公平に標的にされているという非難もあった。

しかしながら配達スタートアップは、配達人を雇うための法的要件が自分たちのビジネスモデルにとって意味すること、あるいは(継続中の)収益性の追求についてあまり主張してこなかった。

スペインの労働改革合意のニュースについて、ギグプラットフォームビジネスモデルに対し長らく批判的だったMangrove Capital PartnersのCEOであるMark Tluszcz(マーク・トルシュチ)氏はTechCrunchに次のように述べた。「我々はギグプラットフォームが各国の法律による大きな構造改革を経なければならないだろうという考えを示してきました。ギグワーカーが従業員とみなされなければ、十分な権利や社会保障を持たない労働者のサブクラスをつくるリスクがあります。パンデミックは明らかに全労働者が保護されていることを確かなものにする必要性を示し、ギグプラットフォームが反対のことを主張するのはますます難しくなっています」

アルゴリズミック管理に要注目

今日発表された改革の合意の興味深い追加構成要素の中で、今後の法制化では労働者を管理するのに使われているアルゴリズムやAIシステムの基準について労働者の法定代理人が通知される必要があると政府は述べた。これは労働条件に影響を及ぼすかもしれない。

ここには雇用へのアクセスに関連している、そして労働者の成績やプロフィールをモニターしている評価制度のためのアルゴリズミックシステムが含まれる、と声明は明確に述べている。

この要素は欧州における最近の数多くの訴訟から刺激を得ているようだ。これらの訴訟は配車プラットフォームのアルゴリズミック管理と、プラットフォームが持っているデータへのドライバーのアクセスにフォーカスしていた。

英国でUberの雇用分類についての訴訟で勝訴した元UberドライバーのJames Farrer(ジェームス・ファラー)氏は、団体交渉のためにドライバーのデータトラストを確立する目的で非営利団体を立ち上げた。英国の最高裁判所はこのほどドライバーは従業員だと裁定した。同氏はまた直近のアルゴリズムとデータアクセスに関する訴訟にも加わっている。

スペインの労組は、プラットフォームと労働者の間にある力の不均衡に取り組むためのツールとして配達人を管理するのに使われているアルゴリズミックルールへのアクセスを要求することで似たような動きを取るようだ。

Uberの広報担当は、スペイン政府の発表に対し次のような声明を出した。

過去数週間、スペイン中の何千人という配達人が、彼らが最も価値を置いている独立性を奪うかもしれないこの提案された規制に反対するために団結してきました。Uberは労働者のフレキシビリティとコントロールを守りつつ、仕事の基準の向上と独立労働者へのより多くの便益提供に完全にコミットしています。当社は独立した労働をなくすのではなく改善するためにスペインの関係団体と協業したいと考えています。

DeliverooもまたTechCunchに次のような声明を送ってきた。

この提案はフレキシブルな業務に価値を置いている配達人、配達サービスの恩恵を受けているレストラン、オンデマンド配達を評価している顧客の利益に反しています。自営業者のままでいたいと抗議活動を行った何千人もの配達人の声は無視されました。

配達プラットフォームは、配達人が追加のセキュリティを持ちつつフレキシブルに働けるようにするために建設的な提案をし、強制的な再分類は配達人の仕事減につながり、レストラン業界にダメージを与え、プラットフォームの運営エリアを制限すると警告してきました。残念ながらこうしたメッセージもまた見落とされてきました。

何も確定していません。我々は引き続き、配達人が求めているフレキシビリティとセキュリティを政府が提供すべきだと主張します。前進する別の方法を模索するために今後もスペイン政府に働きかけます。我々は、配達人に耳を傾けてすぐに再考するよう政府に促しています。

Glovoの共同創業者Sacha Michaud(サシャ・ミショー)氏は以下の声明を出した。

労働省の姿勢はかなり過激で、同様の問題を解決するためにイタリアやフランスのような他のEU諸国が取っている動きと一致しません。

今日、政府は小売業者向けの財政援助11Bについて議論しています。にもかかわらず史上最も困難な経済混乱期の1つであるいま、その同じ小売業者にとって生命維持システムとして機能してきたサービスにさらなる障壁を設け、新たな難題を作っています。法案の通過は配達プラットフォームの運営にマイナスに影響します。

2020年、配達プラットフォームは新型コロナウイルスによってもたらされた多種多様な困難に対応する必要不可欠なサービスでした。そしてパンデミックはすぐに過去のものになるという兆しはありません。当社のパートナーの90%はローカルの独立したレストランや店舗ですが、彼らは生き延びるために当社のもののようなプラットフォームに頼ってきました。

規制は必要ですが、プラットフォームと労働者の両側の意見を考慮する必要があり、いずれもソリューションの一部になるようにアプローチされていません。

ギグワーク改善に関するEUの協議プロセスを前に、Uberはこのところ欧州のプラットフォーム労働者のために規制緩和を求めてロビー活動してきた。汎EUフレームワークの可能性を、現代の労働パターンと調和させるために地域の雇用規則を作り直す機会としてとらえている。しかしこの動きはEUの基準を下げようとしているという批判につながっている。

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タグ:スペインギグワーカー労働フードデリバリー

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

Postmatesの元グローバル公共ポリシー担当副社長が語るギグワーカーの将来

現在は「元」が付くPostmates(ポストメイツ)のグローバル公共ポリシーおよび戦略的コミュニケーション担当副社長であるVikrum Aiyer(ビクラム・エイヤー)氏は、元同僚たちと、ギグエコノミーの利害関係者たちに宛てて、この業界が次に必要としているものに関する彼の考えをまとめた意見書を送った

その中でエイヤー氏はこう述べている。「雇用者の分類を微調整したり、1つの州が住民投票を行っただけで、米国人が本当に不安に感じている問題、つまり雇用機会、家族の面倒、将来への不安に抜本的に対処し、堅実な道筋を築けると考えているようでは、過ちを犯します」。

彼はさらに、テックプラットフォームも労働者擁護者も出資者も「それぞれのモデルを改変したり、寸分たりとも動かすことを望んでいない」と指摘する。つまり「臨時雇用にも社会的セイフティーネットにも進歩は期待できない」という。エイヤー氏は「労働者と資本家、テクノロジーと労働組合、保守とリベラルという、この無意味な戦い」を終わらせたいと考えている。

この文書でエイヤー氏は、臨時職員に頼るテック企業にいくつか提言を行っている。たとえば企業は「正規職員と個人事業主との間の待遇の差を縮める」ことに繋がる、取締役会への投票権を持つかたちでの労働者の参加、継続可能な福利厚生の支給を提案し、ギグワーカーの部門別交渉については、次のように考えている。

個人事業主のための部門別交渉は、個人事業主の分類を維持したままで、収入と福利厚生の部門全体にわたる最低基準の革新的な改善に繋がります。一部の組織化された労働者は、分類に関わらず、すべての労働者の交渉権の拡大を主張しています。それを業界が完全に退けてしまわないうちに、またこれは米国では前例のないものであるために、連邦議会、米国政府説明責任局、または大学の労働研究センターが厳格な審査を行う理由は十分にあり、交渉参加希望者の署名入りカードを回収して労組結成を認める制度、反トラスト法、連邦法の優先制度がどのように機能するかを調査すべきです。理想としては、それが労働者に力を与え、誠実性に欠ける企業が底辺への競争で優位になることを阻止できます。

エイヤー氏は、PostmatesとUber(ウーバー)と並んで、ギグワーカーを不法に個人事業主として分類するカリフォルニア州住民立法案(Proposition 22)の提案者ではあるが、まったく同じ法律を米国全土に適用すべきとは考えていないと話す。

「Proposition 22は、テック企業は勤務形態に柔軟性を持たせることで個人事業主の条件をさらに優位な方向へ調整すべきという議論においては、一歩前進でした。しかし、今後に向けて対処しておくべき問題が2つあります」と彼はTechCrunchに語った。

1つめは、こうした種類の勤務形態は、特に新型コロナウイルスのパンデミックにより米国中で数百万もの人々が職を失っこともあり、むしろますます好まれる傾向にあるという点。2つめは、他の地域や連邦レベルで施行されている似たような法律を推進したい企業は、労働者の声を聞くことが重要になるという点だ。

エイヤー氏は、ロサンゼルスとニューヨークとではPostmatesの配達員に大きな違いがあるという。ロサンゼルスでは、Postmatesの配達員の多くはクルマを利用している。それに対してニューヨークでは自転車を使う人が多い。Proposition 22は、保険に関して新しい最低基準を設けたが、「自転車を使っている人が、同じ補償内容を求めるとは限らない」とエイヤー氏は話す。

「Proposition 22は、カリフォルニアでの最低基準を定めましたが、広い意味でのセイフティーネットの改良に上限を設けるものではなく、国全体に押し広めるべきポリシーというわけでもないのです」と彼はいう。

しかし一部のギグワーカーは、優遇措置があったとしても個人事業主にはなりたくないと主張し続けている。企業に雇用され、正規職員とまったく同じ待遇がほしいと訴える人たちもいる。

結論としてエイヤー氏は、福利厚生を受けられる従業員と、受けられない個人事業主が存在する現在の二元的社会には、間違った対立があると考えている。

「フルタイムの正規職員の待遇と、個人事業主の福利厚生のレベルの向上の両方を手に入れられたらどうでしょう」とエイヤー氏。「しかしそれを、労働者と労組を推進する人たちとに分け隔てなく実現するには、ギグワーカー法成立以来、本格的に行われてこなかった議論を最後まで進める必要があります」。

エイヤー氏は、2020年1月初めの、Uber傘下のPostmatesを去る最後の日、彼の意見書によって、この分野での立場の違う利害関係者たちの対話が再び活性化されることを願うと私に伝えた。彼自身の今後については、公益的な仕事に就くことになるとのことだ。

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(文:Megan Rose Dickey、翻訳:金井哲夫)

元Uber社員がブルーカラー向け物流職マーケットプレイスで5.5億円調達

ネバダ州のUber(ウーバー)でゼネラルマネージャーを務めていたJason Radisson(ジェイソン・ラディソン)氏は、いわゆるブルーカラー労働者を、彼らを求めている雇用主と結びつける手段が必要だと気づいた。

そこで2018年にShift One(シフトワン)のアイデアが生まれた。労働者と雇用主を繋ぐマーケットプレイスだ。対象とする職種は、物流・配達のラストマイル、eコマースの発送業務、大規模イベント管理などとなる。

2019年に正式スタートして以来、Shift Oneのプラットフォームに登録された労働者の数は2万5000人に増えた。その多くが雇用される時点で失業していたという。そして現在、米国とコロンビアにAmazon(アマゾン)、NASCAR、Weee!、Mensajeros Urbanos、Consumer Electronics Show(CES)など約50社のクライアント企業がいる。

このサービスは雇用主と労働者を結ぶだけでなく、勤務時間、税金、出退勤、生産性、作業命令の管理なども支援する。

事業の成長とリーチ拡大を目指して、Shift Oneは最近シードラウンドで520万ドル(約5億5000万円)の資金を調達した。ラウンドをリードしたのはCity Light Capitalおよび、Tinder(ティンダー)共同ファウンダーのJustin Mateen(ジャスティン・マティーン)氏率いるJAM Fundで、ほかにK50 Ventures、Ventura Investments、Human Ventures、エンジェル投資家のFelipe Villamarin(フェリペ・ビジャマリン)氏が参加した。

人員を見ると、Shift Oneの創業チームは全員がUberまたはLyftで働いた経験を持つとCEOのラディソン氏は言う。初期の技術チームはすべて元Uber社員だった。

会社を始めた主な動機は「Gig 1.0に内在する問題のいくつかを解決」するためだった、とラディソン氏は語った。

「もっと労働者にとって公正な環境にして、人々がと多くの物流職を転々として賃金が低いという負の連鎖を断ち切りたかったのです」と同氏はTechCrunchに語った。「彼らに安定を与えたいのです」。

それと同時に、物流業社が良い労働者の確保に苦労していることも彼は知っていた。Shift Oneは、入社間もない社員から管理者、倉庫マネジャーまでさまざまなスキルレベルの人たちの協力を得て作業した。

物流労働者の多くが、かつて福祉手当のない契約社員として働いていたことを知っているShift Oneは、同プラットフォーム上の全労働者に対して雇用された初日から「低い積立金」で福祉手当を完全支給する。さらに当座預金口座とデビットカードも支給する。

「登録されている労働者の多くは銀行口座を持たず、給与小切手を受け取ることさえできませんでした」とラディソン氏は言った。

同社はさらに、労働者ができる限り「密なスケジュール」でチームの一員として働けることを目標にしている。

「私たちのチームに団結力があり、高い機能を発揮することは私たちの価値提案の一部です」と彼はつけ加えた。

これまでサンフランシスコ拠点のShift Oneは自己資金のみで賄われていた。収益は「わずか」に黒字で、その利益を事業拡大のために再投資してきた。2020年の売上は「元が少ない」と言いながらも10倍に伸びた。同社のオフィスは、ネバダ州ラスベガス市、ミネソタ州ミネアポリス市、コロンビアのボゴタ市およびルーマニアのブカレスト市にある。

将来に向けて、新たな資金は新市場への拡大(現在米国の12州で運営している)、20名の従業員の増員、テクノロジーロードマップの加速に使用する計画だ。

新型コロナウイルス感染症が続く「過去4~5カ月、当社はラストマイルに大きく注力しました」とラディソン氏は言った。「大学に行かず、長年低い給与に甘んじている何百万という人たちにチャンスを与えたい。彼らに成功のチャンスをもたらしたいのです」。

JAM Fundの責任者でTinderの共同ファウンダーでもあるマティーン氏は、Shift Oneが労働の「逆淘汰」問題を一新すると信じている。

「ギグワークは季節性と供給力で決められている。どちらも労働者にとってあまり良いことではありません」と彼は言った。

フロリダ州マイアミ市長のFrancis Suarez(フランシス・スアレズ)氏も、ブルーカラー労働者は新型コロナの影響を最も強く受けていると指摘する。

Shift Oneによって「労働者は公正な報酬を受けられる職と、成長し進歩する機会を与えられます」と同市長が書面の声明で語った。「企業は、質の高い労働者の安定した予測可能な供給源を利用できるようになります。そしてマイアミ市は、高い雇用率と強い地元企業による好循環の恩恵を受けます」。

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nob Takahashi / facebook

カリフォルニア最高裁がギグワーカーを個人事業主に分類するProp 22を違憲とする訴訟を棄却

カリフォルニア州最高裁判所は米国時間2月3日、同州のライドシェアドライバーのグループとService Employees International Union(国際サービス従業員労働組合)が提出した、Proposition 22を違憲とする訴訟を棄却した。

「私たちの声を聞かなかった最高裁判所の決定に失望しています。しかし、生きるための賃金と基本的人権を勝ち取るための私たちの戦いを止めることはできません」と原告の1人であるHector Castellanos(エクトル・カステリャノス)氏が声明で語った。「私たちは、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)のように自身の利益を改善するために、民主主義を覆し私たちの権利を侵害する会社から、カリフォルニアの労働者を守るためにあらゆる手段を講じるつもりです」。

本訴訟は、Prop 22は州議会がギグワーカーのための労働補償制度を制定、施行することを困難にしていると主張している。さらに、Prop 22は投票法案は単一争点に限るという規則に違反していること、および何を法案の修正条項とするかを憲法に反して定義していることも主張している。現在Proposition 22の修正には、議会の7 / 8という圧倒的多数を必要だ。

「私たちはカリフォルニア最高裁判所がこのメリットのない訴訟を却下したことを喜んでいますが、驚いてはいません」とProp 22を支持し「Yes on 22」キャンペーンに協力したライドシェアドライバーのJim Pyatt(ジム・パイアット)氏は声明で語った。「私たちはこの判決が、ドライバーを圧倒的に支持してProp 22を通過させた有権者の意志を無にしようとするグループに対して、行動を中止するよう強い信号を送ることを望んでいます。この投票提案はカリフォルニア州の政治的立場を越える60%近い有権者から支持されたものであり、そこには何十万人ものライドシェアドライバーも含まれています。今こそ、カリフォルニア有権者の大多数を、そしてProp 22に最も影響を受けるドライバーたちを尊重するときです。

一方、Uber、Lyftをはじめとする各社はProp 22と同じような法案を他州でも推進する考えだ。UberとLyftのアンチ「ギグワーカーは従業員」のスタンスを考えると、UberとLyftが個別に、他の州や世界で同様の法案を推し進めるといったのも驚きではない。

たとえばLyftは独立請負人としての分類を推進する外部団体を複数設立した。Illinoisans for Independent WorkNew Yorkers for Independent Workがそのうちの2つだ。前者は2020年6月に設立されLyftが120万ドル(約1億3000万円)の資金を提供している。提出資料による。同団体の表明された目的 は「本組織の思想と独立した仕事の価値を共有する立候補者を支援すること」となっている。

しかし本誌が以前報じたように、Prop 22の実現は一部のギグワーカーが従業員の地位を得ようとする戦いの終わりを意味していない。協調した取り組みは2021年も進められており、来たるべき次の立法バトルに備えて準備を続けている。

関連記事:ギグワーカーと労働組合がギグワーカーを個人事業主に分類するProp22を州憲法違反として提訴

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(文:Megan Rose Dickey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

バイデン新大統領の労働政策とギグワーカーの未来

オバマ-バイデンの選挙戦で事務局長を務め、ホワイトハウスでは主席補佐官代理だった私は今、サンフランシスコに住んでテクノロジー分野の仕事をしている。そんな私がバイデン-ハリス政権に対して、スマートな政策と規制の安定性を導入することで、業界の大きな可能性をさらに引き出す能力を持っていることに期待している。もちろん、彼らの冷静で思慮あるリーダーシップによる、経済の拡大にも大いに期待したい。

新政権は、シリコンバレーが直面している最も重要な問題の多くに新しい展望をもたらす。確かに、イノベーションの経済とオバマ-バイデン政権のコンビは米国に繁栄をもたらしたが、今やテクノロジー分野は米国人の生活のほとんどあらゆる面に関わっている。

その結果として生じている緊張は、新政権が規制者としての役割を真剣に演じるべきだということを意味しており、投資家と企業はともにバイデン大統領の早急でタイムリーな政策執行を見逃してはならない。とりわけそれは、仕事の未来と米国経済の復興に関わっているからだ。

2020年がギグカンパニーにとって豊年だったことには、疑いの余地がない。ライドシェアの利用は大幅に減ったが、料理や食料品などあらゆるものがデリバリーされ、しかもカリフォルニアの州法Proposition 22の勝利により時価総額は跳ね上がり、多くのスタートアップが上場を目指した。ウェストコーストは大喜びしたが、ワシントンは別のことを考えていた。

議会は何カ月も前から、ギグワーカーの身分を法制化するPRO Actと呼ばれる法案を検討してきた。その法案は、カリフォルニアで叩かれた州議会下院の法案California Assembly Bill 5(AB 5)と酷似していたが、内容のほとんどはProposition 22によって否定された。しかしながらそれは、労働者から広く支持され2021年に息を吹き返す可能性もある。労働者側はすでに、さまざまな議会連合からの支持獲得に奔走しており、同時にギグエコノミーの企業は、彼らの豊かな財力でそれと戦う用意を整えている。

残る問題は、バイデン大統領はどうするかだ。かなり前に彼はAB 5の支持を表明し、選挙戦中にも労働者の分類の間違いを解決する計画を披露していたが、彼は政権スタッフに、テクノロジーに明るい人々を任命している。バイデン大統領は、ほとんどのスタートアップ創業者の年齢よりも長く政治と関わり、妥協の図り方をはじめとしたワシントンの力学を熟知している。法案をめぐる論争において、実際に議論されているのが、その法律の施行方法であることを彼はよく知っている。

法案の多くが何千ページもあるが、それでも具体的な規定は乏しい。詳細は省庁の仕事だ。バイデン大統領は米労働省を監督していたが、PRO Actが成立したら、中身をまとめるのは省の担当だ。

バイデン政権が労働省と業界を召集して、企業による労働者保護の制度化を実現する方法を検討しても意外ではない。バイデン大統領が労働長官に指名したボストン市長のMarty Walsh(マーティ・ウォルシュ)氏は、労働者の強力な支援者であると同時に、企業からは協力し合えるし、妥協に到達することも可能な人物として好感を持たれている。

そのような状況になりそうな理由は、州を見ればわかる。ギグカンパニーはすでに6つの州でProposition 22のような作戦を展開しているし、すでに州法が実効化している州も同程度ある。2021年内におよそ3分の1の州で、Proposition 22をモデルとする労働者保護が法制化されるだろう。

このような時代の勢いというものは無視できないし、労働者もそのことを知っている。労働者はPRO Actの支持では一致しているが、州のアクションに対しては曖昧だ。たとえば北東部の州の多くでは何十年も前からブラックカーとタクシーが参観だ。

したがって、たとえばニューヨーク州とニュージャージー州では、ギグの法律における労働者の位置づけがワシントン州やイリノイ州とはまったく異なる。後者の州ではギグワーカーというものが比較的新しくて、ほんの数年前にUberやLyftが支持した規制が書かれたインクもまだ乾いていない。労働者はPRO Actの支持に関しては一致しているが、全国的な運動はなく、妥協の余地を残している。

これはテクノロジー業界にとっては良いニュースだ。ギグエコノミーの原動力である労働者を、規制が最終的に保護することはないだろうと考えるのは夢物語だ。そしてそれは良いことだ。テクノロジー業界には労働者が正しく行動する道義的責任がある。しかしながら、そういう規制が簡単にテクノロジーに課せられることはありえない。むしろ何週間も、何カ月も運動と法案の審議が各州と議会で行われて、最後に交渉と妥協に辿り着くのだ。

あるいは、何年もかかって規制のプロセスが刷新されることもあるだろう。それらの過程のすべてを、新大統領が監督する。彼は自らの全キャリアを通じて、イノベーションが国を成長させ正常化することを目撃したきた人だ。

4年間続いたトランプ氏の頑固な否定主義と呪術的思考と経済的損害の後を継いだバイデン大統領は、革新的なソリューションに向けて協働するために、厳正な政策と公共の精神、そして民間部門の創意工夫を推し進めるだろう。それは困難な仕事で、しかも決してきれいごとにならないだろう。それでも私たちは、米国のテクノロジー主導のダイナミズムという新しい時代の幕開けを期待すべきだ。

【Japan編集部】本稿著者のJim Messina(ジム・メッシーナ)氏は政治と企業経営のアドバイザーで、The Messina GroupのCEOだ。2009年から2011年までBarack Obama(バラク・オバマ)大統領のもとで大統領主席補佐官代理を務め、2012年にオバマ氏が再選された選挙戦ではキャンペーンマネージャーを務めた。

関連記事:Uberが「ギグワーカーは個人事業主」というカリフォルニアの住民立法を世界展開

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ジョー・バイデンギグワーカーギグエコノミーコラム

画像クレジット:Chip Somodevilla/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ギグワーカーと労働組合がギグワーカーを個人事業主に分類するProp22を州憲法違反として提訴

カリフォルニア州の配車サービスのドライバー団体と、サービス従業員国際連合(SEIU)は、米国時間1月12日、同州住民立法案Proposition 22を、カリフォルニア州の州憲法に違反するとして提訴した。この訴訟の目標は、カリフォルニア州のギグワーカーを個人事業主に分類することを決めたProp 22の撤廃だ。

カリフォルニア州最高裁判所に起こされたこの訴訟は、同州議会によるギグワーカーのための補償制度の立法化と施行が、Prop 22によって阻害されると訴えている。またProp 22は、住民投票は1つの問題に限定することを定めた法令に違反し、州憲法に違反して規定された法令の修正条項であると主張している。現状では、Prop 22の修正には立法府の8分の7という圧倒的多数の賛成を必要とする。

「私のような配車サービスのドライバーは、毎日家計のやりくりに苦労しています。Uber(ウーバー)やLyft(リフト)といった企業が、我々の幸福よりも自社の利益を優先させているからです」とこの訴訟の原告であるサオリ・オオカワ氏は声明の中で述べている。「Prop 22によって、彼らは我々の健康と安全をないがしろにしているばかりか、私たちの州憲法も踏みにじっています。私は、この問題が、我々の労働から利益を得ている裕福な企業幹部ではなく、法律を作ってもらおうと私たちがが選出した人たちに懸かっていると思い、この訴訟に参加しました。裁判所はProp 22が企業の権力掌握のためだけのものであることを認め、Prop 8やProp 187と同様、Prop 22が憲法違反の法令という汚名を着ることになると信じています」

この訴訟は、ギグワーカーとテック企業との間で続けられてきた長い戦いの中の新たな一戦だ。その間、UberとLyftは、Prop 22と同等の法律を他の地域にも求めてきた。UberもLyftも、ギグワーカーは従業員ではないというスタンスを保っているため、両社がそれぞれ個別に、同様の法律が他の地域や他の国でも施行されることを望むと語ったところで、驚くにはあたらない。

Uber、Lyft、DoorDash(ドアダッシュ)からは、すぐにコメントは得られなかった。だが、Prop 22を支持するYes on 22キャンペーン、またはProtect App Based Jobs & Services(アプリベースの仕事とサービスを守れ)運動の支援者が、TechCrunchに以下の声明を送ってくれた。

「アプリベースのドライバーの大半を含む1000万人近いカリフォルニアの有権者は、歴史的にも新しい保護が受けられ、ドライバーの独立が保てるProp 22を通過させました」と、Prop 22を支持するUberドライバーJim Pyatt(ジム・パイアット)氏は述べている。「政治的な立場を超えて多くの有権者たちが明確な主張を繰り広げ、Prop 22を圧倒的大差で承認しました。疑いようのない民主主義による人々の意志をむしばもうとする無意味な訴訟は、法廷の審議を耐え抜くことはできません」。

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(翻訳:金井哲夫)

注目の副業系サービスをまとめた「副業系サービスカオスマップ2020年版」が公開

ギグワーク・副業系サービスをまとめた「副業系サービスカオスマップ2020年版」が公開

副業したい人と企業をつなげるサービス「シューマツワーカー」を運営するシューマツワーカーは12月25日、「副業系サービスカオスマップ」2020年版を公開した。

2019年版と比較すると、「副業社員型」「ギグワーク」「配信・発信型」のサービスが増加傾向にあり、総じて、新型コロナウイルスの影響によると思われる変化が多い点が見てとれるという。

  • 「地方×副業」に注目が集まる:テレワークの一般化が進み「東京に住む必要性」が下がったこと、地方企業のDXニーズが急増したことの2点により、地方企業での副業に注目が集まった。また、各自治体が「関係人口」を目標指標としたことにより、今後さらにこの傾向は大きくなると予想。総務省によると、「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々を指すという
  • 大企業や自治体の副業人材公募の影響:大企業や自治体による副業人材公募が話題となったことで、企業の人出不足に対する打ち手として「副業社員」が今後より一般化し、副業社員市場(副業社員型サービス)のさらなる盛り上がりが予想される
  • 「ギグワーク」の浸透:感染予防のため、フードデリバリーのニーズが急増。同時に「ギグワーク」(単発雇用)というキーワードが浸透した。ギグワークの副業も、2019年は飲食店バイトが中心だったが、2020年はデリバリー・倉庫内作業の副業に変化
  • 「エンタメ×副業」の可能性:家にいる時間が増えたことによりエンタメコンテンツ需要が増加し、ライブ配信系サービスなどの「配信・発信型」は2019年よりさらに盛り上がりを見せた。芸能人のYouTubeやTikTok参入などもあり、個人が配信・発信するプラットフォームは、今後より市場が大きくなることが見込まれる

2016年9月設立のシューマツワーカーは、2017年7月の正式リリース以来、IT人材不足の課題をかかえる企業に対し1200案件以上の副業社員のマッチングを行なってきた。ウェブ業界における経験が豊富なエンジニアやデザイナー・マーケターが多数登録しており、各企業のニーズにあった優秀な副業社員を提案できるとしている。

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時給労働者に柔軟性と福利厚生をもたらすWorkWhileが3.6億円を調達

最近、ギグエコノミーについての議論が盛んに行われているが、Jarah Euston(ジャラ・ユーストン)氏は、労働力のより大きな部分である時給労働者について再考する時期に来ていると主張している。

かつてはモバイル広告スタートアップFlurry(フルリー)の幹部であり、データ運用のスタートアップNexla(ネクスラ、未訳記事)の共同創業者でもあるユーストン氏は、8000万人の米国人が時給制で働いている(BLSレポート)にもかかわらず、現在のシステムは雇用者にとっても労働者にとっても、うまくは機能していないと私に語った。

雇用者側からみた問題は、離職率や欠勤率が高いことで、一方労働者からみたときの問題は、予測不可能なスケジュールに対処しなければならず、希望する時間をすべて割り当ててもらうのに苦労することがよくあるということだ。そこでユーストン氏は、より良いシステムを作るためにWorkWhile(ワークホワイル)を立ち上げ、シードファンディングで350万ドル(約3億6000万円)を調達した。

彼女はWorkWhileを空きシフトと時給労働者をマッチングさせるマーケットプレイスだと説明する。そこでは雇用者が埋めたいシフト時間を指定し、労働者は働きたい時間帯を指定する。つまり、雇用者は必要に応じて労働力を拡大したり、縮小させたりすることができ、一方で労働者は自分が希望する時間だけ働くというということだ。

「労働力をプールすることで…双方が望む柔軟性を提供することができます」とユーストン氏はいう。

画像クレジット:WrokWhile

WorkWhileは、資格と信頼性のある応募者を見極めることを目的として、1対1の面接、身元調査、認知科学に基いたテストを用いて労働者をスクリーニングする。

雇用主はWorkWhileに対してサービス使用料を支払うが、ユーザーにとってはプラットフォーム利用は無料だ。また、スタートアップは労働者たちと長期的な関係を築くことを目指しているため、ユーストン氏は、まずは勤務時に獲得した病欠手当クレジットや、デビットカードへの翌日の支払いなど、追加のメリットを提供することにも投資を行うと述べている。

「自分に合っていて、なおかつスケジュールの不自由さのない仕事を見つけるのは大変です」と声明の中で語っているのは、プラットフォームを利用する労働者のひとりMichael Zavala(マイケル・ザヴァラ)氏だ。「WorkWhileはフルタイムで自分のスケジュールを組み立てることができる、まさに私が探していたものでした」。

このスタートアップは、サンフランシスコ・ベイエリア、ロサンゼルス、オレンジ郡、ダラス・ノースワースで事業を開始している。

パンデミック状況下における広い経済状況や雇用状況を考えると、大勢のひとがさらに多くの仕事を探しているはずだ。一方で、ユーストン氏は、雇用者側の激しい浮き沈みを見ているという。つまり一部の企業は活動を止めスタッフを解雇しなければならない一方で、別の一部の企業は急速に成長している。そうした成長している企業には、たとえばWorkWhileの顧客であるレストランサプライヤーのCheetah(チーター)、食事デリバリーのThistle(シスル)、園芸eコーマスのAnsel & Ivy(アンセル&アイビー)などが含まれる。

今回の資金調達はKhosla Venturesが主導し、Stitch Fix(スティッチ・フィックス)の創業者でCEOのKatrina Lake(カトリーナ・レイク氏)、Jennifer Fonstad(ジェニファー・フォスタッド)氏、F7、Siqi Chen(シキ・チェン)氏、Philip Brenner(フィリップ・ブレナー)氏、Zouhair Belkoura(ゾウヘア・ベルコオウラ)氏、Nicholas Pilkington(ニコラス・ピルキントン)氏が参加している。

「時給労働者の大半は正直で信頼できる人たちですが、中には助けを必要とする困難な個人的事情を抱えているひともいます」とVinod Khosla(ビノッド・コースラ)氏は声明の中で述べている。「多くの企業がそうした従業員を、離職率が高い消耗品のように扱っていますが、そうした従業員も敬意と適切なサポートを与えられれば、より長期的に働ける模範的な従業員になることができるのです。WorkWhileはこの問題を解決する手助けをしたいと考えています」。

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(翻訳:sako)

米証券取引委員会がギグワーカーに報酬として株式を提供する際のルールを発表

証券取引委員会(SEC)が、ギグワーカーに公開企業や非公開企業が株式で報酬を提供する場合のルールを発行した。

このルール策定のほんの数週間前には、カリフォルニアの住民投票が、ギグワーカーを被雇用者とする法律を覆すイニシアティブを支持した。そのイニシアティブは、雇用という身分をギグエコノミー企業が守るべき一連の要求で置き換えた。それらは実労働に対する最低賃金の120%以上の賃金、稼働距離1マイルあたり30セントの経費、ヘルスケア給付金、執務時の負傷に対する労災保険、差別や性的いやがらせに対する保護、交通事故の責任者保険などだ。所得保証と経費払い戻しはドライバーの実稼働時間を反映し、空車時は対象とならない。

今回、証券取引委員会は、企業はギグワーカーに株式を報酬の一形式として支給してもよいという新たな臨時収入の可能性を加えた。

委員のElad Roisman(エラッド・ロイスマン)氏とHester Peirce(ヘスター・パース)氏は「経済と労働の形が進化するにともない、我々の規制においてもそれを反映する変化を積極的に試してみる必要がある」と声明で述べている。

提案されているルールは、ギグワーカーへの株式報酬を5年間に拡張している。その間に株の発行者は委員会に、ルールの有用性を評価するための情報を提供する。

SECのガイドラインには、ギグワーカーに支給される株式が報酬であり、資金調達と混同されないようにするための、ある種の保護措置がある。

この新しいルールには、ワーカーが自由にコメントを送ることができる。

今回提案されたガイドラインでは、サービスをマーケットプレースから提供しているギグワーカーも株式報酬の対象になる。サービスの消費者は対象にならない。委員会は、仕事がモノを売ることであるようなギグワーカーも株式報酬の対象になるかを検討している。

「ギグエコノミーは社会に定着した。私たちが提案しているのは、証券法の特定領域に手を加えて、ギグワークに参加している多くの米国人を法が許容できるようにすることである。なぜならその新しいルールにより、ギグワークが誰もが待ち望んでいた収入源になるだけでなく、長期的な投資も築くからだ。我が国の経済がパンデミックから癒えるにともない、多くの低所得者や失業者が、ギグワークが提供する柔軟性と所得機会に惹かれるだろう。私たちの見方では、本日の提案はこれら重要な労働者の福利を改善し、彼らに強力な役割を紹介する方法である。我が国の資本市場はその役割を、引退に備えた資産育成や次世代への継承として演じることができるであろう」と委員たちは声明で述べている。

関連記事:Uberが「ギグワーカーは個人事業主」というカリフォルニアの住民立法を世界展開へ

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タグ:ギグワーカー

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Uberが「ギグワーカーは個人事業主」というカリフォルニアの住民立法を世界展開へ

先にカリフォルニア州で、ギグワーカーを個人事業主と分類し続けることを可能にする住民立法案の投票が行われ、その日のうちに承認される見通しとなった。これを受けてUber(ウーバー)は同様の動きを引き続き展開する。ビジネスモデルを守る住民立法というUberの野心は舞台を世界へと移す。

UberのCEOであるDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏は米国時間11月5日のアナリストとの決算会見で、同社が「Prop 22のような法律を声高に追求する」と述べた。同氏はその後、「これを実現するために米国中、そして世界中の行政と協業する」ことが社にとって優先すべきことだと付け加えた。

「声高に追求する」の内容はやや不透明だ。Prop 22はUberやLyft(リフト)、そしてDoorDash(ドアダッシュ)やPostmates(ポストメイツ)のようなオンデマンドデリバリー企業が支持した。住民立法案を通し、ギグワーカーを従業員として分類するよう企業に強制するカリフォルニア州議会を通過した州法に置き換える動きはかなり費用のかかるものだった。Yes on 22(Prop 22に賛成)キャンペーンに注入された資金は2億500万ドル(約210億円)で、1999年以来、カリフォルニア州で行われた住民投票で最も費用をかけたものとなった。

以下、コスロシャヒ氏の考えだ。

最後に、 Proposition 22について。カリフォルニア州でかなりの差をつけて賛成多数となったことを喜んでいます。

この重要な問いについての答えがいま、米国で最も人口が多い州で得られました。カリフォルニアの投票者はドライバーの多くが求めていることに耳を傾けています。ドライバーは新たな福利厚生、保護、そしてこれまで同様のフレキシビリティを求めています。これを前に進めることで、カリフォルニアのドライバーや配達員は最低収入、ヘルスケア加入、事故保障、セーフティ保障の増強が保証されます。これは正しいアプローチだと我々は強く確信しています。物事を改善するために、雇用システムを除外するのではなくギグワーカーの福利厚生を手厚くすべきです。

だからこそ今後、Prop 22のような新しい法律をより一層声高に求めていきます。Prop 22は、ドライバーがかなり重視しているフレキシビリティを維持しつつ、すべてのギグワーカーが求めている保護を追加し、バランスが取れているものだと確信しています。我々が提案した新たな実用的アプローチはドライバーの82%、投票者の76%に支持されました。これを実現するために米国中、そして世界中の行政と協業するのが当社の優先事項となります。

さしあたって、コスロシャヒ氏は同社がProp 22を遵守することに注力すると述べた。Prop 22では企業に、最低賃金の少なくとも120%の収入、業務中の1マイルあたり30セント(約31円)の経費支払い、医療保険、業務中の事故に対する労災保険、差別やセクハラからの保護、自動車事故および賠償責任保険などの保証を求めている。収入の保障と経費の支払いにはドライバーの業務時間が反映され、ライドや配達の合間の時間は考慮されない。

「当社はドライバーに関係するProp 22の実行にかなり集中して取り組みます」とコスロシャヒ氏は述べた。そして、これは運賃の引き上げにつながるかもしれないが、過去の経験からしてライド利用には大きな影響は及ぼさないとの考えを示した。

関連記事:「ギグワーカーは個人事業主」の是非を問うカリフォルニア州住民投票で賛成多数

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(翻訳:Mizoguchi

カリフォルニア州でのギガワーカー法案通過を見込んでUberとLyftの株価が高騰

米国ライドシェアリングの両巨人、UberとLyftの株価は本日11月4日午前の時間外取引で急騰した。カリフォルニア州の投票法案、Proposition(プロポジション)22の通過を見込んだ行動だ。同法案が成立すれば、テック利用のオンデマンド企業は、引き続きギグワーカーを個人事業主として分類できる。

Uberの株価は時間外取引で11.88%上昇し、Lyft(米国市場、すなわりカリフォルニア州への依存度が高い)は驚きの14.9%高を市場開始前から示している。

TechCrunchは、この投票法案が通過見込みであることを東海岸時刻11月3日午前3時に指摘した。開票は続いており、Google(グーグル)の選挙データによると、プロポジション22は開票率71%時点で賛成が58.4%だ。

我々が見ているのは「公開」オンデマンド企業の株価だけだが、この日はDoorDashの価値も高まった。DoorDashはSoftBank(ソフトバンク)らが支援する(未訳記事)フードデリバリーの大手企業で、非公開で上場申請しているが、まだS-1書類を公開していない。

それでも同社の投資家は、本日UberとLytfの株主と同じ喜びを享受している。カリフォルニア州で価格やビジネス手法を大きく変えることなく運用を続けられるという意味でも、潜在的企業価値が高まるという意味でも。

プロポジション22を背景に、おそらくDoorDashは上場に向けていっそう意欲的に行動するだろう。

上記3社はPostmatesとともに、プロポジション22の通過に向けて多大な費用を投下していることを米国時間11月2日夜にTechCrunchは報じている。

Prop 22は主にUber、Lyft、DoorDash、Postmatesが支持していた。先週DoorDashは「Yes on 22(Prop 22に賛成)」キャンペーンに追加で375万ドル(約3億9000万円)を注ぎ込んだ。11月2日には、Uberも追加で100万ドル(約1億400万円)を出した。そうした資金の注入もあってYes on 22が集めた総額は約2億500万ドル(約213億8000万円)になる。これによりProp 22は1999年以来、カリフォルニア州で行われた住民投票で最も費用をかけたものとなった。

その費用は、ビジネス視点では有益に使われたといまはいえるだろう。労働者擁護団体にとっては残念な結果だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

「ギグワーカーは個人事業主」の是非を問うカリフォルニア州住民投票で賛成多数

カリフォルニア州の住民立法案「Proposition(プロポジション) 22」を支持してきたUber(ウーバー)、Lyft(リフト)、Instacart(インスタカート)、DoorDash(ドアダッシュ)は目的を達成しつつある。ギグワーカーは個人事業主という分類を継続させる住民立法案は承認される見通しとなった。AP通信が途中経過として開票率67%で賛成多数を報じた。

この記事公開時点で、投票者の58.2%(630万人超)がProp 22に賛成し、41.5%(約450万人)が反対した。

住民立法案は最低賃金の少なくとも120%の収入、業務中の1マイルあたり30セントの経費支払い、医療費、業務中の事故に対する労災保険、差別・セクハラからの保護、そして自動車事故および賠償責任保険を保証する見込みだ。そうした収入保証や経費支払いはドライバーが仕事に従事している間だけに適用され、乗車やデリバリーの合間は考慮されないことは記すに値するだろう。

Prop 22の提案者は、投票者の57%が賛成した米国時間11月3日夜時点で勝利を宣言した。UberのCEOであるDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏は電子メールでこのニュースをドライバーに知らせた。

「今回の投票でドライバーや配達員は、望んでいたあるいは維持したいと考えていたフレキシビリティや独立性を失うことなく、福利厚生や保護へのアクセスといった多くの人が熱望していたものを手に入れます」とコスロシャヒ氏はメールに記している。「あなたたちのようなドライバーの多くが声を上げて意見を述べ、そうした声に州内の投票者が耳を傾けました。個人事業の未来は、より確固たるものになります」。

Uberは今後数週間以内に、労働災害保険やヘルスケア助成といった新たな保障をどのように申し込むか、ドライバーに詳細を知らせると述べた。一方、Prop 22反対者は敗北をしぶしぶ認めた。

「我々は今夜の結果に落胆しています。今回のキャンペーンの成功が嘘や恐怖の利用によるものだからです」とGig Workers Collectiveはブログへの投稿に書いている。「企業は投票を買収できるべきではありません。しかし我々はまだ目的に専念し、戦いを継続します」。

Gig Workers Risingもまた、戦いは終わっていないと述べた。

「この争いは、ギグワーカーが権利や福利厚生、あって然るべき威厳ある労働条件を手にするための戦いを継続する手法に他なりません」とGig Workers Risingは声明文で述べた。

Prop 22は主にUber、Lyft、DoorDash、Postmatesが支持していた。先週DoorDashは「Yes on 22(Prop 22に賛成)」キャンペーンに追加で375万ドル(約4億円)を注ぎ込んだ。11月2日には、Uberも追加で100万ドル(約1億円)を出した。そうした資金の注入もあってYes on 22が集めた総額は約2億500万ドル(約214億円)になる。これによりProp 22は1999年以来、カリフォルニア州で行われた住民投票で最も費用をかけたものとなった。

一方、主なProp 22反対者はService Employees International Union(サービス従業員国際労働組合)、United Food & Commercial Workers(全米食品卸業労働組合)、International Brotherhood of Teamsters(全米トラック運転手組合員労働組合)などだ。

「企業が自前の労働法を書くことを許す危険な前例となります」とギグワーカーでGig Workers Collectiveの組織メンバーであるVanessa Bain(ヴァネッサ・ベイン)氏はつい最近TechCrunchにこう語っていた。「この法案では労働者の不利益で企業が一方的に利益を得ることになります」。

Prop 22は、ギグワーカー州法AB-5に反対する動きだ。AB-5はUber、Lyft、DoorDashといったギグエコノミー企業が労働者を独立請負業者として扱うことを難しくするものだ。

AB-5は、雇用主にABCテストを適用することでギグエコノミー労働者が最低賃金、労災保障、その他の福利厚生を受けられるようにするのをサポートしている。ABCテストによると、雇用する企業が合法的に労働者を独立請負業者として分類するには、労働者が雇用側の管理や指示から自由で、対象となる企業の事業以外の業務を行い、定期的に独立が確立された業務あるいは同様の業務に従事していることを証明する必要がある。

目下、UberとLyftは、カリフォルニア州司法長官であるXavier Becerra(ザビエル・べセラ)氏、そしてロサンゼルス、サンディエゴ、サンフランシスコの法律顧問がAB-5をめぐって2020年5月に起こした訴訟で争っている。べセラ氏らは、UberとLyftが労働者を誤って独立請負業者として分類することで違法な競争上の優位を得ている、と主張した。その後6月に原告はUberとLyftにドライバー再分類を強制することを求めて裁判所に差し止め命令を要望した。

8月に裁判所は差し止め命令を出した。UberとLyftは控訴したが、控訴裁判所は先月下級裁判所の判断を認めた。だが、判決は裁判所が伝達を出した後、30日間延期されることになった。一方、UberとLyftはその前に控訴を検討していると話していた。

この件では、UberとLyftはドライバーを従業員として再分類することによって取り返しのつかない害を被ることになると主張してきた。2020年10月の判決で、裁判官は会社が「法を破ることを禁じられることで、重大または取り返しのつかない害を被ることにはならず」、各企業の経済的負担は「取り返しのつかない害のレベルにまではいかない」と述べている。

しかし現在、Prop 22が承認される見通しとなり、この訴訟は法的根拠が揺らいでいる。また、Uberは他の州でも同様の法案を追求すると述べていることも記すに値するだろう。

カリフォルニア州の州務長官は太平洋時間午後8時に州内58郡の投票結果を段階的に発表し始めた。しかし最終的な投票結果は11月4日夜あるいは11月5日にはわからないだろう。これは部分的にはカリフォルニアが11月3日までの消印の不在者投票を受け付けるためだ。一方、郡選管は12月1日までに最終結果を出すことになっている。

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(翻訳:Mizoguchi

Uberのソフトウェアエンジニアとしてギグワーカーに企業にとって都合のいいルールを押しつける住民投票事項22に反対する

私はUber(ウーバー)のソフトウェアエンジニアを2年続けてきたが、同時に配車サービスのドライバーもしていた。大学時代は定期的にLyft(リフト)のドライバーを務め、生業はUberのAndroid用アプリのプログラマーだが、今でもギグエコノミーの実態を知るために、自転車を漕いでそれらのアプリベースの企業で配達の仕事をしている。

そうした経験から、私はギグエコノミーの決定的な要素に気がついた。それは、Uberが成り立つのは安くて速いからというものだ。車を呼べば数分で到着するため、私たちは支配者になった気分で、一時的な満足感に浸れる。ボタンをワンクリックで、友だちの家や食品スーパーや空港へ行ける世界で一番便利なものだ。

だがこれは、無数のドライバーたちがプライベートな時間までも車の中で過ごしながら客待ちをしているからこそ実現できるものであり、まったく割りに合わないことが次第に明らかになってきた。ドライバーたちは、無償奉仕でそのサービスを補完しているのだ。

儲けのない仕事を強いられているようなものだと気づいた私は、雇い主に対して声を上げることにした。Uberに加わる前も、ディズニーランドのカスタマーサービスからピザの宅配まで、割りに合わない低賃金の仕事をしてきた。Uberは、カリフォルニア州のProposition22(ギグワーカーを保護するカリフォルニア議会法案5条に例外を設け、アプリベースの契約ドライバーを個人事業主扱いにして福利厚生の対象から外せるようにする提案の住民投票事項、Prop22)に資金援助をしている大手企業数社の1つだ。Uberはこのキャンペーンに、これまで4750万ドル(約50億円)を献金している。職場の管理職たちは、Prop22の承認は会社の利益にとって非常に重要だと私たちに訴える。だが、会社の利益が私の投票行動を左右することはないし、そうあるべきでもない。

Uberは、Prop22はドライバーにとって有利なものだと主張するが、それはUberが企業としてドライバーを大切に扱うか否かにかかっている。Uberのエンジニアとしての私の経験からすれば、そうなる見込みは非常に薄い。パンデミックが始まった当初、私たちはUberが一斉レイオフを計画していることを知った。数週間、私たちは仕事と健康保険を確保できるかどうかもわからず、無為に過ごさなければならなかった。

結局、Uberはパンデミックの最中に3500人を解雇した。それも3分間のZoomコールによる通達でだ。私たちの大半にとってこれは、クビにする人数のノルマをいいつけられた管理職が、適当に自己判断で人を選んだように感じられた。何の保証もなくドライバーを解雇するUberのやり方と矛盾しない。頑固なまでに従業員の面倒を見ないその企業文化は、エンジニアにまで及んでいる。私たちも使い捨てのリソースなのだと気づかされた。

ソフトウェアエンジニアとして、私はドライバーとはずいぶん違う経験をUberでしている。社員として分類された私は医療、退職金制度、制限付き株式報酬、有給休暇、病欠の権利といった福利厚生を付与された。Uberのドライバーには、このような福利厚生はない。なぜならUberは、彼らを個人事業主として不当に分類しているからだ。2020年1月1日から、ギグドライバーは社員に分類すべきだと法律に明記された。しかしUberはこの法律に従わず、自分たちに都合のよいルールを規定したいがためにProp22の承認を求めている。

Uberのドライバーは、全員がパートタイムだと誤解している人がいる。定年後のドライブを楽しんでいる人や、私のように大学の授業が終わってから数時間を仕事に当てている人もいるだろうが、Uberの事業を支えているのはフルタイムのドライバーたちだ。5月に発表されたサンフランシスコ市による調査(カリフォルニア大学サンタクルーズ校ニュースセンター記事)では、同市のギグドライバーの71%が少なくとも週30時間働いていることがわかった。客を運んでいるドライバーの大半は、彼らだ。カリフォルニア州は、少なくとも週30時間働いている従業員全員に福利厚生を付与するよう、雇用主に法的義務を負わせているため、71%の日勤ドライバーは、現在、州が定めた福利厚生の付与が拒否されているかたちになる。

Lyftで働いた経験がなければ、雇用主の主張を額面通りに受け取っていただろう。これは決して、業界がダメになるという話ではない。ビジネスモデルは、どの企業も同じだからだ。つまり、利益追及のためのコスト削減に手段を選ばない。私は幸いにも、Gig Workers Rising(ギグ・ワーカーズ・ライジング)という人権団体を運営するUberの素晴らしいドライバーたちに出会えた。サンフランシスコの生活費が高いことは周知の事実だ。彼らは、最低賃金を下回る報酬で働くこともある。車の中で寝泊まりしているドライバー(The Guardian記事)も知っている。1回医者にかかるだけで経済的に立ち行かなくなる人(Twitter投稿)や、命に関わる薬すら買えずにいる人(Twitter投稿)もいる。それを回避できる道はない。そんな彼らの権利を否定するために、企業はProp22に数百万ドル(数億円)も費やされている。

テック業界で働く人たち、そして広く世間一般の人たちに私が訴えたいのは、住民投票の提案事項について、自分でよく調べてみて欲しいということだ。会社にとって最良の道であるから賛成票を入れるようにと雇い主にいわれたら、その雇用主の利益は、あなたの利益とまたは社会の利益と一致していないかもしれないと疑って欲しい。

Uber、Lyft、DoorDashなどのギグエコノミー企業で働く人たちには、あなたが作るものを毎日使っているドライバーたちのことを、よく知って欲しい。みなさんの労働から巨万の富を得ている企業幹部とは違い、ドライバーたちとは非常に多くの共通点がある。

2020年11月、私たちは他の従業員たちの側に立ってProp22に反対するか、あるいは企業幹部や億万長者たちに寄り添って賛成票を投じるかの選択を迫られる。

労働者の側に立って、Prop22に反対しよう。

【編集部注】筆者のKurt Nelson(カート・ネルソン)はサンフランシスコを拠点に活動するUnberのモバイルエンジニア。この記事は同氏の個人的見解です。

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(翻訳:金井哲夫)

データアクセス権とアルゴリズムによる業務管理を巡り配車サービス運転手がOlaを提訴

2人の配車サービス運転手が、インドに本社を置く配車サービスOla(オラ)による、アルゴリズムを使ったギグワーカーの業務管理を巡り、オランダの裁判所に訴えを起こした。この手の訴訟はこれが2つめとなる。

App Drivers & Couriers Union(アプリ運転手および配送業者組合、ADCU)などが支援する今回のケースは、7月にはやりオランダの法廷で起こされたUber(ウーバー)を相手取った運転手による訴訟とよく似ている。

どちらのケースでも、運転手たちは、集団交渉の材料とするべく自分たちの個人データを組合のデータ信託に送るよう要求している。彼らによると、企業側は要求したデータを部分的にしか提供していないという。たとえばUberは、それ以上の情報を渡したくてもEUのプライバシー法によって制限されているとの根拠を持ち出した。

どちらの側も、ヨーロッパの一般データ保護規則(GDPR)に守られたデータアクセス権を掲げて主張している。そのひとつに、業務が完全に自動化された結果として重大な法的または同等の影響を被った個人の保護がある。

Olaの訴訟では、運転手はGDPRに基づき自身の情報の提示を求めたのに対して、一部しか応じられていないとADCUは主張している。例えば、日付入りのGPSのデータなどは提供されていない。

また別の苦情として、Olaがブロックしていると彼らが主張する走行距離レベルあたりの評価データが提示されていないこともある。

運転手たちは、提示されたデータには「膨大な欠落」があるため、運転手の業績をまともに分析できないと訴えている。

さらに、Olaのデータ保護ポリシーは、厳格な運転手の監視と業績管理を行う一方で、運転手を個人事業主と見なし、基本的な労働者の権利の否定を示唆しているとも申し立てている。

「Olaは、労働者の監視と管理をどの程度行っているかを示す詳細情報を出ししぶっています。たとえば、運転手の不正行為の可能性評価です。業績が配車の判断に影響することを認めてほしいのです」と、ADCUの広報担当者はTechCrunchに話した。

ヨーロッパのギグ・プラットフォームは、同地で拡大していく過程で、労働者の分類に関連する数多くの訴訟に直面してきた。この2の最新のケースでは、労働者の管理の度合いを示す手段として、プラットフォームのアルゴリズムによる管理を原告がどう持ち出してくるかに興味が持たれる。

今回の訴訟に関する広報資料で、ADCUはOlaが今年の初めにロンドンで「守護者」として紹介され、人工知能と機械学習を用いて「数百万のデータポイントをリアルタイムで分析し、不規則な移動行動を検知する」という同社の話を指摘している。Olaは「不正可能性評価を計算していることを公表しているにも関わらず、そうしたリスク・プロファイリングで処理された運転手の個人データに関して、一切の情報を提示していない」と述べている。

原告は、そのようなシステムには透明性が欠かせないと主張する。それが運転手の収入に大きく影響するからだ。事例報告を行った運転手の一人は、Olaのアルゴリスムにより走行距離が「不当」(これは正しくないと本人は言うが)と判断された後に給与が減額になったと話している。

この運転手が抗議すると、Olaは処理は自動的に行われていて人は介在していないと主張し、減額は正当であり取り消すことはできないと彼に伝えた。

しかしGDPR第22条は、EUのデータ主体に、重大な法的または同様の影響を及ぼす自動判断に異議を訴える権利を認めている。これには、判断の人による審査の権利も含まれる。そのためこの訴訟は、規制による法的保護がどこまで及ぶかを見極めるという、もうひとつの興味をもたらした。

この訴訟についてADCU委員長Yaseen Aslam(ヤシーン・アズラム)氏は、声明の中でこう述べている。「Olaは、運転手たちの高給、勤務中の保護と尊厳ある扱いのために、善意でテクノロジーを使うのは構わない。ところがOlaは、そのプラットフォームの力を支配できる優位な地位を利用して労働者を搾取し、彼らを貧困に追い込んでいる。今こそ運転手たちは実権を取り戻し、集団の力を高めるときだ。その第一歩が、自分自身の勤務データへのアクセス要求である」。

私たちは、この訴訟に関してOlaに意見を求めている。

原告は、アムステルダムの地方裁判所からOlaに対して、EUデータ保護規則に即刻準拠するよう命令し、それを行わなかった期間、1日につき2000ユーロ(約25万円)の罰金を課するよう求める予定だと話している。

オランダでこの行動を起こした理由は、プラットフォームと運転手のデータを管理しているのがアムステルダムの企業Ola Netherlands BV(非公開株式会社オラ・ネーデルランド)だからだと彼らは話している。

画像クレジット:Hemant Mishra/Mint / Getty Images (Image has been modified)

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(翻訳:金井哲夫)