UPSと薬局チェーンのCVSが処方薬をドローン配達、フロリダ州の高齢者地区で

運送大手のUPSと薬局チェーンのCVSは、ドローンを使った処方薬の配達を、フロリダ州の大規模高齢者居住地区であるThe Village(ザ・ビレッジ)で開始する。これは、ドローンメーカーのMatternet(マターネット)との2019年に開始した提携の一環でもあり、同社のドローンシステム、M2を使ってノースカロライナ州の顧客に同様の配達サービスを既に提供している。2019年3月の発表によると、Matternetのドローンはノースカロライナ州のWakeMed(ウェイクメッド)系列の病院に医療用品を届けている。ドローンは5ポンド(約2.3 kg)の貨物を最大12マイル(約19.3 km)運ぶことができる。

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今回のサービス拡大は、各州のロックダウン政策によって全米の住民が外出を制限されていることを受けたものだ。フロリダ州の自宅待機命令は少なくとも4月30日まで継続される予定だが、州内の海岸では一部の制限が緩和されている。

このドローン利用はFAA(連邦航空局)の小型無人航空機規約、パート107に該当するもので、パンデミック中の操縦および期間終了後に必要となる作業を許可されている、とUPSは説明している。同社はあと2カ所の近隣CVS店舗にも配送を行う計画だ。

ご存じの通りシニア世代(60歳以上)はこの新型コロナウイルスに対して最も脆弱な人々だ。80歳以上になるとさらにリスクは高まり、ウイルスに感染した場合の致死率は15%に上る。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

UPSとドイツのWingcopterが共同で配達用多目的ドローンを開発

宅配大手のUPSがドイツのWingcopter(ウイングコプター)と共に、新しいタイプの配達用ドローンを開発している。米国でも世界でも今はロジスティクス企業のドローンによる配送が増えているが、新型機はその方面の需要を狙っている。Wingcopterはすでに電動の垂直離着陸機(eVTOL)を設計しており、最大航続距離約120kmで、許容最大風速は70mで最大約240km/hでフライトさせることができる。

Wingcopterは、UPSのドローンデリバリ子会社Flight Forwardと提携する。昨年の7月にできたこの子会社が、UPSの商用ドローンデリバリ事業を担当する。2019年10月にFlight ForwardはFAA(連邦航空局)から、荷物配達用ドローン専門の航空会社として認可を得ている。

Wingcopterはすでに、ドローンの商用利用のデモを終えており、例えば2020年始めに製薬企業Merckとのデモで、同社の自動操縦eVTOLによる小型荷物のドイツ国内Merk事業所間の配送に成功した。また、UNICEFなどの救援団体とのパートナーシップにより、僻地に医薬品や救命器具などを運んだ経験もある。

このコラボレーションには、Wingcopterの航空機を米国における商用配送に使用する認可を得る目的もある。認可が下りれば、今後両社はこの垂直離着陸タイプの多様な機種を開発して、いろんなニーズに応えていくだろう。ヘルスケアやホスピタリティ、小売業など、想定される需要分野は少なくない。

Wingcopterの主な利点は、ホバーリングや垂直離陸から低ノイズの前進飛行に切り替えができることだ。そのため人口過密地帯での利用に適している。同社のティルトローターの設計は、この垂直飛行と水平飛行をスムーズに切り替えられるだけでなく、雨や強風といった悪天候下でも安定飛行できるという利点もある。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

UPSとCVS、ドローンで処方薬を米住居に初配送

UPSはドローン配送プログラムにてパートナーのCVS Pharmacyと協力し、新たに展開する商用ドローンによって顧客の自宅に処方薬を配送する。11月1日には、UPSはMatternet(マターネット)と提携して開発したドローンシステムのM2を利用し、2人の顧客に医薬品を配送した。

UPSは10月初めにFAAから商用ドローンの飛行許可を得ており、今後数カ月でドローン配送プログラムを複数回実施し、規模を拡大しつつ商業的にドローンを展開できるようにする計画だ。同社はまた、ドローンの自動配送に特化した部門となるUPS Flight Forwardをローンチした。

今回の初期配達では、ノースカロライナ州ケアリーにあるCVS施設にて、薬剤師が処方した医薬品がドローに満載された。UPSの従業員が荷物をドローンに積み込むと、ドローンは店舗から近くの顧客の家まで自律的に飛行し、約20フィート(約6.1m)の高さから荷物を落下した。UPSによると、顧客の1人はCVSの店舗に足を運んで処方箋を受け取るのが難しい状況にあるという。

UPSが医療業界にドローンを導入するのは、今回が初めてではない。同社はノースカロライナ州ローリーのMattternetやWakeMed Hospital(ウェイクメッド病院、ノースカロライナ・ローリーにある大病院)と協力して、B2B分野での医療サンプルの商業配送を行っている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

自動運転のTuSimpleがUPSなどから約130億円を追加調達

自動運転トラックのスタートアップであるTuSimple(ツーシンプル)がシリーズDラウンドで新たに1億2000万ドル(約130億円)を調達した。本ラウンドを主導したのは中国最大のミニブログサイトWeibo(微博)を運営するSina(新浪)で、この調達により総額は2億1500万ドル(約233億円)となった。

2015年に創業し、中国、米国ではカリフォルニア州サンディエゴとアリゾナ州ツーソンに拠点を置くTuSimpleは2月にシリーズDラウンドで9500万ドル(約103億円)を調達してバリュエーションが10億9500万ドル(約1184億円)となり、ユニコーンの仲間入りを果たした。今回の追加調達にはUPSからの投資が含まれる。UPSは、アリゾナでTuSimpleと自動運転トラックの使用テストを開始した数カ月後の8月にTuSimpleの少数株を取得したと発表していた。

TuSimpleの累計調達額は2億9800万ドル(約322億円)となる。本ラウンドにおける新規投資者としてはCDH Investments、Lavender Capital、そして一次部品サプライヤーのMando Corporationが名を連ねる。

TuSimpleは、調達した資金を自動運転車両技術の開発の継続やアリゾナ−テキサス間の長距離輸送ルートの拡大に使う計画だ。

TuSimpleは業界用語で言うところの「フルスタック・ソリューション」に取り組んでいる。これは、自動運転に必要な各技術をすべて開発して統合することを意味する。TuSimpleはレベル4システムを開発中だ。SAEの定義では、このレベル4というのは車両が特定の状況で運転のすべてを担うことになる。

2017年後半にTuSimpleは、中国と米国でフルトラック2台のテストを拡大することを目的に5500万ドル(約59億円)を調達した。そして2018年までに、アリゾナ州のツーソンとフェニックスを結ぶ120マイル(193km)の高速道路、そして上海で公道試験を開始した。

TuSimpleのCFOであるCheng Lu(チェン・ルー)氏によると、同社はトラック50台以上と顧客18社を抱える。

そうした顧客の1社がUPSだ。UPSは当初、TuSimpleにレベル4の自動運転トラックがネットワーク内でどのように機能するか理解を深めるためのサポートを依頼した。その提携関係は拡大した。両社は5月、UPSネットワークのサービスと効率を改善できるか試そうと、ツーソンとフェニックスを結ぶルートで貨物を積んで走る自動運転トレイラーの試験を開始した。UPSとTuSimpleは目下、フェニックス-ツーソン間で毎日試験を行っている。

画像クレジット: TuSimple

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(翻訳:Mizoguchi)

UPSが場所により完全EVモードに切り替え可能なハイブリッド長距離トラックを導入

UPSは英国で15台の新型車両を導入する。これは従来の電気自動車に比べて航続距離が長いが、排気ガス規制がある地域や密集した都市部などで、必要に応じて完全にEVモードでも移動できるものだ。これらのトラックは、商用電気自動車技術のスタートアップであるTevvaとの提携により開発されたもので、ハイブリッドモードと完全EVモードを切り替えることで、同サイズのディーゼルトラックと同じ積載量で、400kmの総走行距離を実現する。

これらのトラックは、通常約60マイル(約97km)の走行距離の完全EV配送トラックよりも、はるかに長い距離を走ることができる。また、地域の交通規則にのっとるためにモードを切り替えることもできる。これは特に、英国のバーミンガムとサウサンプトン地域にて展開するのに役立つ。バーミンガムは、市内中心部で電気自動車以外の商用車を遮断するためのクリーンエアゾーンを来年中に導入するからだ。

UPSはすでにEV配送車両を導入しているが、走行距離が長いため、中央倉庫から市内の集配拠点まで移動できなかった。さらにUPSによれば、このハイブリッド方式の配送車両ソリューションは、完全EVトラックよりも多くの荷物を運ぶことができるため、路上の車の台数を減らすことができる。

これらのトラックと標準的なハイブリッドトラックの決定的な違いは、純粋な電気モーターとディーゼルハイブリッド動力を自動で切り替えることができ、排気ガス規制区域に入る時にはジオフェンシングで切り替えることができる点だ。

UPSはこれらのトラックのうち15台を、英国のタムワースとサウサンプトンの顧客向けにすでにしている。これはUPSによる排気ガスの削減と、環境への配慮の取り組みの1つにすぎない。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

UPSがドローン配達の子会社を設立し米連邦航空局の認可取得へ

ドローン配達の大いなる構想を描いているUPSが、その鍵となる行動を起こそうとしている。まず、ドローン配達だけに特化した子会社、UPS Flightを設立し、密集地域、夜間、人間操縦士の視界外での飛行など、現在一般商用ドローン運営に必要な米連邦航空局(FAA)の認可を取得しようとしている。

UPSが取ろうとしているのは、Alphabet傘下のWingが今年4月に取得したのと同じ認証で、Uber EatsやAmazon Airらも申請しているが未だに承認されていない、とThe Vergeが報じている。

世界最大級の運送会社であるUPSとしては、それが実際に将来のラストマイル輸送手段になってもならなくても、ドローン配達分野で何らかの役割を果たす必要がある。同様の認証を獲得しようとしているAmazonは、同社のドローン配達サービスのマーケティングや宣伝に極めて積極的だ。

今年3月、 UPSはドローンのスタートアップMatternetと提携して、医療サンプル輸送のテストをノースカロライナで行い、2017年にはフロリダで、トラックの荷物をドローンで配達するデモンストレーションも行ったが、テストは思い通りの結果にはならなかった

UPSが認可を取得するまでにどれだけ時間がかかるのかはわからないが、年内には可能であるど同社は確信しているようだ。その時にはドローンを使った商用配達サービスが数多く登場するかもしれない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

UPSがドローンスタートアップのMatternetと組んで医療サンプルを輸送

無人ドローンによる配達がUPSネットワークで採用される。ドローンスタートアップのMatternetとの提携によって、UPSは医療サンプルの無人ドローンによる配達をノースカロライナ州レイリーのWakeMed病院で開始した。

連邦航空局およびノースカロライナ州運輸支局の認可を受け、UPSとMatternetは医療サンプルの定期空中輸送を日々運用する。これまでWakemed病院は自動車輸送に頼っていたため交通渋滞による遅延の恐れがあった。

ドローンによる配送では、まず医療専門家が医療サンプルや血液サンプルなどの検体をドローンに載せる。その後ドローンは事前に決められた経路を飛んでWakeMed病院の本院および中央病理検査研究所に送られる。

UPSとMatternetはその後プログラムを分析し、全米のその他の病院での輸送を改善するためにドローンを利用する方法を検討することができる。以前UPSは、Ziplineと提携して遠隔地域の医療輸送をテストしたことがある

「無人航空システムは顧客ニーズを的確に捉え、ネットワークの効率を高めることでわれわれのビジネスが成長する機会を与えてくれる」とUPSの先端技術グループ担当VPであるBala Ganesh氏が声明で語った。

ドローンを配置することでコスト削減と効率化が見込める。Matternetは、昨年8月にFAAの無人航空機システム統合パイロットプログラム(IPP)の一環としてテスト飛行を実施した。

これ以前にMatternetは1600万ドルの資金調達ラウンドをBoeingのベンチャーキャピタル部門であるBoeing HorizonX Venturesのリードで完了した。最近FAAは、同局の無人航空機パイロットプログラムの一環として、米国病院のドローン輸送業者としてMatternetを指名した。2015年にMatternetは、スイス、チューリッヒで血液と病理サンプルを検査機関に運ぶテストを初めて実施した。

以来Matternetはスイスでの運用を拡大し、人口密集地域を1700回以上飛行し、850回以上患者サンプルを輸送した。

「UPSと共に、当社は米国の医療におけるオンデマンド輸送の現状をドローン配達ネットワークによって変革することを目標にしている」とMatternetのCEOであるAndreas Raptopoulso氏が声明で語った。「我々の技術によって、病院システムは医療物資をこれまでにないスピードで輸送することが可能になり、患者治療の改善と経費の節減に役立つことが期待できる」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米運送大手のUPS、全電動トラックTesla Semiを125台予約

Teslaがまた大物顧客をつかんだ。UPSはTesla Semiをこれまでで最大数予約した。輸送最大手のUPSはTesla Semiトラック125台を予約注文し、先週のPepsiCoの予約100台を上回った。

UPSは代替燃料自動車約8500台を全世界ですでに稼働させており、温室効果ガス排出量を2025年までに12%削減することを約束している。この目標達成には大胆な代替燃料車の導入が必要であり、今後もTesla車を大量に購入する可能性がある。

現在UPSの配達車両は10万8000台以上あり、地元配達用バン、一般車、牽引オートバイのほか、ハイブリッド車などの代替燃料自動車まで多岐にわたる。貨物輸送事業では5500台以上のトラクターが2万1000台以上のトレーラーを牽引しているので、Teslaの巣立ちつつあるトラックビジネスにとって巨大な顧客になる可能性がある。

Teslaにはほかにも、トラックの発売に先駆けて小規模なパイロット注文をする潜在顧客がいくつかある。現在の予約価格は前払い2万ドル(残金15万ドルは配車時に支払う)なので、UPSの予約はTeslaに250万ドルの現金が直ちに流れ込むことになる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

1兆ドルの物流業界の未来を、ブロックチェーン技術に賭けるUPS

【編集部注】執筆者のDeep Patelは、連続起業家、マーケター、そしてA Paperboy’s Fable: The 11 Principles of Successの著者である。

世界は取引(トレード)で運営されている。米国だけでも、貨物と物流にかかる費用は毎年約1.5兆ドル( 2015年のデータ )にも及んでいる。世界の経済規模が拡大するにつれて、その数字は増加の一途をたどることが予想されている、私たちが製品やサービスに関して、国際的なサプライチェーンにさらに依存するようになるからだ。

しかしながら、物流業界そのものは、その成長に耐えられる構造になっていない。現状では、構造的な非効率性と不正行為に晒されやすい、脆弱な基盤の上に載っているからだ。数え切れないほどの仲介業者が手数料を徴収し、輸送価格を引き上げている。問題は、こうしたプロセスの複雑さと不透明さが、適切な価格を算出することを困難にしているということだ。

FBIの推定によれば、貨物盗難により、米国では毎年約300億ドルの損害が発生していて、その平均盗難額は19万ドルに及んでいる。実際に、貨物盗難により、消費者にとっての製品コストは最大20%も増加しているのだ。こうした問題に関しては既に何十年にわたって、十分にレポートされているが、責任が分散していることよって、業界のステークホルダーたちには説明責任がほとんど生じていない。

しかし、いまやブロックチェーンテクノロジーの形で、大変革が業界に起きようととしている。この技術によって、より安く、より効率的な物流システムの登場が約束されているのだ。主要な既存企業たちだけでなく、革新的なスタートアップたちが、ブロックチェーンの開発に膨大な時間とリソースを投入している。

最近UPSは、ブロックチェーン技術標準の開発と貨物業界向けの啓蒙のためのフォーラムであるBlockchain in Transport Alliance(BiTA:輸送業向けブロックチェーン同盟)に参加することを表明した。BiTAは、セキュアなブロックチェーンシステムを導入することにより、運送業界全体向けの標準の開発を促進することを狙っている。

なぜ今なのだろう?なぜUPSは他の何百もの主要企業とともに、ブロックチェーンに賭けているのだろうか?

答:彼らは革命の一部になりたいから。彼らは、将来のスマートな物流ネットワークが構築される中で、重要な役割を果たすことを望んでいるのだ。そして彼ら自身が、自分たちで手を下さなければ、誰かがその役割を果たしてまうことを理解しているからだ。

物流と貨物の将来は、ブロックチェーンに大きく依存することになる。

ブロックチェーン技術の主な魅力は、分散されていて改竄(かいざん)されない台帳を作成できる能力にある。これは単一障害点を持たず、複数の関係者によって維持され、情報がハックされたり破損したりすることのないネットワークである。これにより、1つのトランザクションのライフサイクル全体が1つのブロックチェーンに格納されて、それら全ての情報に対するセキュリティと透明性が向上することになる。

現在貨物および物流業界は、大勢のブローカーと、複雑なサプライチェーンの中に隠された情報を、大量に抱え込んでいる。このチェーンのすべての側面にアクセスすることができる単一の事業者は存在しない。現在、貨物および物流業界は、荷主から運送業者への荷物の引き渡しを、円滑かつ容易にするために存在する、貨物ブローカーたちによって支配されている。ブローカーは荷物を探し出し、利ざやを乗せて、運送業者へと引き渡す。これは、運送業者のコストを上げるだけでなく、消費者に直接影響を与える下流価格の上昇にもつながっている。

現行のグローバルネットワーク全体にわたる効率性、透明性、セキュリティの欠如は、まさにブロックチェーンテクノロジーが解決するのにうってつけの問題なのだ。もしブロックチェーンが適切に活用されれば、より自由で透明性の高い世界的取引に参加する機会が顧客たちに与えられ、ブローカーの必要性が減り、仲介コストが削減される可能性がある。

こうした理由から、UPSのエンタープライズアーキテクチャならびにイノベーションディレクターLinda Weaklandは、ブロックチェーンにとても期待している。彼女は「物流業界の中での沢山の応用が考えられます。特にサプライチェーン、保険、支払い、監査、通関業務などがその対象となります」と語っている。この技術は、荷主、運送業者、ブローカー、消費者、ベンダー、その他のサプライチェーン関係者の間で、透明性と効率性を高める可能性を秘めていいる。

透明性と効率性を向上させる効果的な方法の1つが、Ethereumブロックチェーンを支える重要なイノベーションであるスマートコントラクトを活用することだ。スマートコントラクトは、本質的に、所定の規約が満たされたときに履行される自己実行型契約である。これによって、関連する仲介業者を排除または制限することが可能になり、途中で発生する利ざやを抑え、エスクロー(預託金)の運用効率性を向上させ易くなる。

ブロックチェーンはまた、サプライチェーンの追跡と透明性を高めることができる。荷主は、サプライチェーン全体の可視性を高めることができ、荷重、通過地点、そして基本的なコンプライアンス情報などの重要な情報を、運送業者との間で共有することができる。

一度出荷が確認され、ブロックチェーンに記録されると、それは不変である。つまり、誰も取引の正当性に異議を唱えたり、記録を不正に操作したりすることはできない。トランザクションがログに記録されると、スマートコントラクトはエスクローからの支払いを即座に行い、仲介処理に関連する時間とコストを削減する。

ブロックチェーンテクノロジーはまだ萌芽期であるため、世界中の企業やコンソーシアムが、商用化に先立ってソリューションをテストするために、実証技術を開発しているスタートアップたちに投資したり協業を始めたりしている。こうしたことに取り組むスタートアップの一例がShipChainだ。同社はブロックチェーン技術を物流業界に適用することを目指している。

BiTAの一員である同社は、現在物流プロセスの各段階についての洞察を与える、完全に統合されたサプライチェーン管理システムを構築している。さらに同社は、分散型の仲介システム(本質的に、荷主と運送業者のための公開市場)を構築することを目指している。ブロックチェーン上の情報の透明性を利用することで、荷主は各出荷のコストと時間を、公開市場の中で最適化できるようになる。

言い換えれば、荷主は、市場での決定を下す前に、特定の貨物について異なるルートの許容量、コスト、および推定納期を追跡することができるということだ。同時に、運送業者たちは、所有する輸送車両と輸送航路の、輸送能力に関する情報を継続的に入力し、供給と需要に基づいて最も公平な価格設定を動的に調整することができる。ブロックチェーンによってもたらされる透明性と効率性は、利潤を追求するブローカーによる人為的な利ざやを排除することで、最も効果的な方法でリソースを割り当て、すべての関係者に利便性をもたらす。

現行のグローバルネットワーク全体にわたる効率性、透明性、セキュリティの欠如は、まさにブロックチェーンテクノロジーが解決するのにうってつけの問題なのだ。

このプロセス全体を通しての可視性の向上は、業界を悩ましている盗難やハッキングを大幅に減少させる。ブロックチェーンテクノロジーと切り離せない特徴が、重要な輸送データの全てを記録する、分散型で暗号化された台帳を作成できる能力である。重要な情報を変更または削除することが誰にもできないため、ハッカーによって改変することもできないのだ。

ブロックチェーンの特徴は、非効率のはびこる業界に対しては有望だが、そのテクノロジーはまだ初期段階に過ぎない。現時点の実装では、東アフリカからヨーロッパへの出荷には、最大30箇所の異なる業者たちからの承認が必要となる可能性があり、また目的地に到達するまでには、最大200回の異なる相互作用が発生する可能性がある。

これらの相互作用の多くは、荷主と運送業者との間だけでなく、規制当局、小売業者、卸売業者、さらには顧客との間でさえも発生する。グローバルな物流ブロックチェーンネットワークが効果的に機能するためには、すべてのステークホルダーの参加が必要だ。

物流と貨物の将来は、ブロックチェーンに大きく依存することになる。世界各地の荷主たちは、現在でも、とりあえず輸送コンテナを追跡するための既存の手段は持っているし、ブロックチェーンに批判的な人びとは貨物輸送業界の追跡機能を完全に作り変えることは、大変過ぎる作業だと主張している。それでも業界のリーダーたちは、サプライチェーンを追跡するためのブロックチェーンの可能性を、既に認識している。

世界最大のコンテナ運送会社Maersk Lineは、既にIBMを提携を行い、それぞれの出荷に伴う膨大な事務処理を削減するために、貨物輸送の追跡へブロックチェーンを適用しようとしている。

荷主と運送業者たちは、ブロックチェーン技術の進歩が、この先何年もの間業界の成長を支えてくれるだろうと、楽観視している。

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: JUSTIN SULLIVAN/GETTY IMAGES

Uberが宅配ビジネスで成功する理由

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地理的飽和度は相乗りビジネスのネットワーク効果と利益性の鍵を握る。

ある地域のUberやLyftのドライバーが多ければ多いほど、配車時間は速まり、顧客体験は良くなり、乗車需要が高まる ― その結果ドライバーの収入は増え、多くのドライバーがネットワークに参加する。

昨年David Sacksが描いたUberのポジティブ・フィードバック・サイクルがまししくそれを表している。

もしSacksが正しければ、地理的飽和度の最も高い相乗り事業者が、最低価格と最高の乗車体験を提供することになり、その戦略は明白だ:できる限り多くの資金を調達して需要と供給の両方を助成し、ある意味で「勝者独占」状態を作ることだ。

しかし、果たしてUberのネットワーク効果は無限に拡大するのか、それともある時点で限界効用逓減が始まるのか? Lyftは、Uberのわずか数分の一のスケールで、配車待ち時間とドライバーの遊休時間で対抗できるのか?

仮に、ある地域でUberの地理的飽和度が、Lyftの10倍いや100倍のドライバーを持つまで拡大したとしよう(ドライバーは両方のサービスで同時に働くことが可能なので、現実にはまずあり得ない)。しかし、もしLyftが規模の違い敗れたとしても、Lyftがのドライバーが毎回3分以内に迎えにくるところまで、相乗り市場が拡大することは想像できる。

待ち時間が1分と3分で何が違うだろうか? 殆ど変わらない。

もしLyftがその目標を達成すれば、彼らはUberの密集度優位性を打ち消し、それによって財政的に優位性にも対抗できる。その段階で、Lyftは安定して市場シェアを獲得できることが予想される。なぜなら2社の本質的価値提案の差は小さいからだ。

そうした路線密度による限界効用の逓減は、Uberの戦略にとって何を意味するのだろうか?彼らの前例のない路線密度が価値を生む、そんな価値ある市場は他にないのだろうか?

圧倒的な路線密度によって、小荷物宅配ビジネスへの新規参入はほぼ不可能となっている。

ある。同じスケール経済は、運送ビジネスの最終配達部分に適用できる。そこではFedEx、UPS、USPSらが圧倒的地理的飽和度を達成している。これらの会社は、全米のほぼ全ブロックに毎日ドライバーを走らせているので、1つ余分に荷物を配達するための限界費用は1.50ドルまで下がっている。そしてもし2つの荷物が同じ家に届けられれば、2つ目の配送コストはほぼゼロになる。

この圧倒的な路線密度によって、小荷物宅配ビジネスへの新規参入はほぼ不可能となっている。DHLは世界運送ネットワークのトップ3に入っていながら、国内市場への参入には失敗し、2008年後半に撤退している。

しかしUberには、こうした巨大既存事業者をも上回る優位性がある。大企業運送業者は、各ブロックに毎日ドライバーを配置できるかもしれないが、Uberは各ブロックに〈毎分〉ドライバーがいる。

FedEx、UPS共に時間指定集荷を行っているが、Uberは(恐らくいつかLyftも)オンデマンド配達のための即時集荷に必要な密度を有している。これは、全く新しい世代のリアルタイムEコマース体験を可能にするゲームチェンジャーだ。

すでにUber Poolのユーザーは、低料金と引き換えに赤の他人と相乗りするころを受け入れている。もちろん顧客がトランクに荷物を入れるためにドライバーが停車することにも同じ取引きをするだろう。そしてもしドライバーが荷物を配達するために車を止めても、客は現在のUber Pool体験とさほど違いを感じないだろう。

Postmates等の宅配サービスと異なり、集荷した同じドライバーが配達する必要はない。単にトランクに荷物を積んでいき、一日の終りに集荷センターで荷下ろしするだけでよい。

すでにUberは、単なる相乗りサービスではなく、リアルタイム運送ネットワークへの道を歩み始めている。彼らは香港でUber Cargoを、ニューヨーク市でUber Rushをスタートさせた。現時点でこれらのサービスは、それぞれ運送トラックと自転車メッセンジーからなる別々のネットワークだ。しかし、Uberが相乗りサービスドライバーの密なネットワークを活用した運送ソリューションを提供するのは時間の問題だろう。

これが重要である理由の一次分析は明白だ:物流は世界GDPの12%を占めており、運送ビジネスはUberに膨大な収入源をもたらす。二次分析はおそらくもっと興味深い:荷物と人間が互いに助成し合うことによって、それぞれ単独よりも両サービスともに安くなる。

小荷物宅配サービスはUberにとってライバルLyftに対する強力な武器になる。かつてUberが突然、キャッチフレーズを「みんなのお抱え運転手」から「ライフスタイルが物流と出会う場所」に変えたことが、一層意味を持ってくる。この変更をはるか遡る2013年に実施していたことは、Uberが業界で最も先見性のある経営チームを持っていることを示している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook