110兆円の馬たち、過剰な調達ラウンド、そしてFutureの未来

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

短い1週間が過ぎた。雑談のネタはあまりないが、お伝えしたいことはたくさんある。だが、それは楽しい話題ばかりなので、一緒に楽しむことにしよう!

まずは、高価な四足動物についての話題。

1兆ドル(110兆円)の馬とは?

The Echangeは、先週から2021年第2四半期のベンチャーキャピタル市場の調査を始めている。Anna(アンナ)の協力で、最初の記事はかなりいい感じに仕上がったと思う。他にもたくさんの記事が待ち構えている。しかし、ユニコーン関連の数字が、私の心を鷲掴みにした。考えてみて欲しい

  • 2021年第2四半期に生まれたユニコーンの数は136社で、過去最高を記録した。
  • CB Insights(CBインサイツ)が指摘するように、これは「1年前の2020年第2四半期に誕生した23社のユニコーンの約6倍であり、2020年全体で誕生した128社のユニコーンをすでに上回っている」のだ。

この角の生えた馬(ユニコーン)ブームの結果、現在世界には750頭のユニコーンがいることになった。元TechCrunch関係者で優秀な人間であるKatie Roof(ケイティ・ルーフ)氏がこの統計をツイートしたとき、私が最初に思ったのは、ユニコーンの価値が合わせて1兆ドル(約110兆円)を超えたということだ。

だがその直感は大きく外れていた。実際の数字は2.4兆ドル(約260兆円)近くなのだ(CB Insightsのデータによる)。これは驚くべき大きな数字だ。比較してみると、世界の未上場ユニコーンの合計は、現在のApple(アップル)の価値の2兆4200億ドル(約266兆円、Yahoo Finance調べ)とほぼ同額である。

ひょっとすると私は、現在ほとんど凍結された状態で非公開市場に置かれているユニコーン株式の量に、過剰反応しているのかもしれない。特にユニコーンのエグジットは増えているのだから。しかし、今日の高いエグジットレベルをもってしても、時間をかけてこの特別な状況を解消していくことは可能なのだろうか?いや、そうとは思えない。第2四半期に、週末を含めても1日あたり1.5社のユニコーンが増え続ける状況の中ではそれは無理な話だ。

資金調達ラウンド

先週は1つの資金調達ラウンド(非常に興味深かったこのr2cラウンド)についてしか書けなかった。その大きな理由は、他に噛み砕くべきことがたくさんあったからだ。しかし、より詳細な財務情報を掲載していないラウンドは取材しないと宣言してから、ベンチャーキャピタルからのピッチの入力がゆっくりになったのも事実だ。

先週の連休でピッチのボリュームが減ったのか、それとも私がみんなを怖がらせてしまったのかはまだはっきりしない。しかし、私は資金調達ラウンドのピッチのインバウンド量を、全体としても、業界別 としても、何が起こっているのかを判断するための材料に利用している。だから私は読者のみなさんに(1)私に何かネタを送ってもらえること、(2)それと同時にたくさんの情報も共有してもらえることを期待している。

宇宙のSPAC

Y Combinator(Yコンビネーター)はきちんとした組織だ。その最近の投資先の1つが、 Albedo(アルベド)だ。同社は地球の超高解像度写真を撮影する低軌道衛星のネットワークを構築することを目指すスタートアップである。それを実現するのはNatasha(ナターシャ)記者の言葉を借りるならクソ難しいことだが、既製の衛星部品や軌道上での燃料補給などの、さまざまな新しい技術を導入することで、可能になるかもしれない。

関連記事:10cmの高解像度衛星画像提供を目指すAlbedoが10.8億円調達

Albedoやそれに似た会社があるからこそ、私は毎年Demo Day(デモデー)を見に行くのだ。今後何が起きるかを目にする機会を持つことができるし、非常にわかりやすく楽しい体験だ。

だからこそ、今週、衛星画像処理会社2社がSPACで株式公開することを発表したときに、私は興味をそそられた。わかったことは、この両社が狙っているのは、低解像度の画像を提供することなので、真の意味でAlbedoとは競合しないということだ。しかし、彼らは……別の理由で注目されている。

Satellogic(サテロジック)は、このシンプルで芸術的な一連のチャートを提供している(各チャートの日付は必ず確認して欲しい)。

画像クレジット:Satellogic

また、Planet(プラネット)は下のグラフのように、衛星技術の経済がいかに未来にかかっているかを強調している。

画像クレジット:Planet

同社の長期的な粗利益率の目標は80~85%(資料によれば売上原価は15~20%)だが、そこに到達するまでにどれだけの時間がかかるかがここから読み取れる。これは、ベンチャーキャピタルの世界に興味深い問題を投げかけている。

つまり、Albedoのような企業が、十分なネットワークを構築し、スケールアップするためには多くの時間と資金が必要になるということだ。そして、普通のソフトウェア会社なら製品を販売した初日から得られるような粗利益を得るために、規模を拡大していくことにも時間がかかるだろう。

これが、たとえわずかでも持続的な成長が期待できるソフトウェア製品に多くの資金が集まっている理由の1つだ。利益率の高い経常収益は、価値創造のためのチートコードのようなものなのだ。そうして、投資家はだれでもそこに資金を投入したいと考えることになる。衛星技術は、一般に非常に重要なものなのだが、とにかくコストが高く、時間がかかる技術なのだ。

私の疑問は、ソフトウェア企業がベンチャーキャピタルへのリターンを生み出すことに長けているせいで、他の形態のスタートアップ企業が注目や資本を得るために苦労するのではないか?ということだ。すでにそうなのだろうか?

Future

最後に、取り上げるのはFuture(フューチャー)だ。正確にいえば、Future(未来)の未来だ。私はこのa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)によるサイトが気になっている。

このサイトが開設されて以来、私は毎週数回チェックしては、ベンチャーキャピタルの集合的意識を知りたいと思ってきた。私がそうするのは、私が変人だからというだけではない──まあ変人だけど!──またメディアがハイテクを嫌っているという記事を読んで心配したからでもあるが──率直に言えば──宇宙的に潤沢な資金を持つベンチャーグループがどんなサイトを作るのかに興味があったからだ。やはりすばらしい人材が採用されている。

私たちはFutureブログの発行サイクルの合間を縫っているようだ。メインコンテンツの最後の記事が出たのは約1カ月前で、最新のエントリーは6月25日付だ。そしてその最新記事は、7月にさらなるコンテンツを出す約束をしたメモに過ぎない。

これは予算、約束、派手なドメイン、そしてa16zの世界の中で何かを語るべき人の数を考えると、少々物足りないかも?もっとたくさんの言葉を尽くせばよいのに。7月がどうなるかに期待しよう。

さて今回はここまでとしよう。ではまた。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch Exchangeユニコーン企業SPACa16z

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

元Alibabaの科学者がコンピューターサイエンス分野以外の創業者に出資する理由

North Summit CapitalとAlibaba Cloudの元チーフサイエンティストであるミン・ワンリ氏(画像クレジット:North Summit Capital)

Min Wanli(ミン・ワンリ)氏は、コンピューターサイエンスを追求している人みなが切望するキャリアパスを持っていた。天才のミン氏は14歳のときに中国の一流大学に入学を許可された。同氏はその後、シカゴ大学で物理学と統計学の博士号を取得し、IBMとGoogleに計10年近く勤めた。

米国で働く多くの野心を持つ若い中国人科学者と同様、ミン氏は2010年代初めに中国でインターネットブームが起きたときに帰国した。同氏はAlibabaに設置されたばかりのクラウド部門に加わり、高速道路の交通量を抑制するために視覚的識別を使ったり、工場の効率を高めるためにコンピューティングを活用したりするような、同社のテックを産業面で応用する取り組みの最前線にいた。

そして2019年7月に、ミン氏は思い切った行動にで出た。eコマースの巨人Alibabaの成長の主要原動力となり、当時中国最大の公共クラウドインフラプロバイダーだった(今でもそうだ)Alibaba Cloudを辞めた。投資の経験はなかったが、ミン氏はNorth Summit Capitalというベンチャーキャピタル会社を興した。

「2016年と2017年ごろは、多くの企業が『デジタルトランスフォーメーション』についてかなり懐疑的でした。しかし(Alibaba Cloudからの)成功ケースを目にし、企業は2019年には実行可能性について疑問に思わなくなりました」とミン氏は深圳市の街並みや高層オフィスビルを見下ろしながら自身のオフィスで語った。きれいにアイロンがかけられた水色のシャツに身を包んだ同氏は子どものようなピュアな笑顔で話した。

「突然誰もがデジタル化したがりました。しかしわずか400〜500人のチームでそうした需要にどうやって応えられるでしょう」。

ミン氏のソリューションは、時代遅れの工場や会社に自らサービスを提供するのではなく、多数の企業がサービスを提供するよう資金を提供しサポートすることだった。間もなく、同氏はアラブ首長国連邦の氏名非公表の富裕人物から「数億ドル(数百億円)」を獲得してNorth Summit最初のファンドをクローズした。この人物とミン氏は、ミン氏が2018年に開催されたドバイテック会議にAlibabaの代表として参加したときに出会った。

「ベンチャーキャピタルは、私が多くのテック企業とコネクトし、私が昔得た教訓を共有できる拡大鏡のようなものです。ですので、テック企業はすばやく、そして効率的に従来の産業の顧客と協業できます」とミン氏は話した。

「たとえばポートフォリオにある企業と、まずハードウェア、あるいはソフトウェアの販売にフォーカスすべきなのか、それとも同等に重視すべきなのかを話し合います」。

ミン氏は支援する会社に深く関与するよう努めている。North Summitはこれまでのところ約500万〜2500万ドル(約5億5000万〜27億7000万円)の範囲で投資している。同氏はまた、ポートフォリオ企業に投資後のサポートを提供するQuadtalentというテクノロジーサービス会社も興した。

深圳市にあるNorth Summitのオフィス

デジタルトランスフォーメーションの概念は、従来の産業の性質がかなり複雑で細分化されているために、多くの投資家にとって手強いものだ。しかしミン氏はターゲットを絞るのに役立つ基準のリストを持っている。

まず最初に、投資可能なエリアはデータ集約型であるべきだ。たとえば地下鉄の追跡は鉄道システムの状況をモニターするかなりの数のセンサーを埋め込むことで恩恵を得ることができるかもしれない。2つめに、製造あるいは事業プロセスは、とてつもない設備を使う製造ラインのように、資本集約的でなければならない。そして最後に、産業は警察の交通誘導のように反復的な人間の経験にかなり頼るものでなけれなならない。

産業問題の解決は、創業者のコンピューティングの発明の才だけを要するのではなく、より重要なのは伝統的なセクターでの経験だ。なので、ミン氏は起業家を探すときに、コンピューターサイエンスウィザードの向こう側「遠く離れたところ」を見ている。

「今日我々が必要としているものは、『複合アルゴリズム』を扱える、複数の異なる分野にまたがる人材です。それは、センサーシグナル、ビジネスの論理的根拠、製造、コンピューターアルゴリズムの理解を意味します。他の要素なしにアルゴリズミックなブラックボックスを通じてニュートラルネットワークを適用するのは単なる無駄です」。

投資家らが次のABB、Schneider、中国Siemensを捉えようとするのにともなってミン氏はかなりの競争に直面している。中国は経済のすべての面でテクノロジーでの独立に向かっていて、新型コロナウイルスが世界のサプライチェーンをディスラプトしている中でその任務は緊急性を帯びている。その結果「産業用アップグレード」ソリューションをうたうスタートアップの評価額はうなぎのぼりだ。

しかし工場長たちは、自動化ソリューションプロバイダーが勝ち目のない企業なのか、あるいはユニコーンのスタートアップなのかは気にしない。「結局のところ、工場のCFOは『このソフトウェアや設備はいくら節約したり儲けたりするのに役立つのか』と聞くだけです」。

投資家らはミン氏の初のファンドの展開について慎重だ。展開を開始して2年、North Summitはこれまでに4件のディールを完了した。オートメーションを取り込んでいる創業17年の履き物メーカーTopScore、ロンドンを拠点とする就学前の中国人の子ども向けの英語学習アプリLingumi、マレーシアのドローンサービスプロバイダーのAerodyne、中小企業に安価なAIビジョンソリューションを紹介するマーケットプレイスのExtreme Visionだ。

North Summitは2021年、中国内外で企業に1億ドル(約111億円)近くを投資することを目指している。このところミン氏が注目している分野は光学式記憶装置とロボティックプロセスオートメーション(RPA)だ。

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タグ:North Summit CapitalAlibabaDX中国Alibaba Cloud

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

BMW i Venturesが持続可能な技術への投資を目的とした約336億円の新ファンドを発表

BMWグループのベンチャーキャピタル部門であるBMW i Venturesは、輸送、製造、サプライチェーンをより持続可能にする技術への投資を促進するため、新たに3億ドル(約336億円)のファンドを設立するとを発表した。

このファンドは、従来のコーポレートベンチャーキャピタルとしては運営されておらず、ドイツの自動車メーカーであるBMWの全面的な支援を受けながら、BMWから独立して活動している。2016年のシリコンバレー移転時に発表した1つ前の5億ユーロ(約660億円)のファンドは、新規投資の期間が終了した。今後、新規投資はファンドIIから行われる。

ファンドIでは、自律走行車やデジタル車両技術、カスタマーエクスペリエンス、先進的な生産に重点を置いていた。例えば、先週、BMW i Venturesからの投資を発表した自律走行トラックのKodiak Robotics(コディアック・ロボティクス)は、このファンドの投資先だった。ファンドIIでは、自動車のコア技術に特化して投資するのではなく、自動車の設計、製造、製造に至るすべての分野で、持続可能性とゼロエミッションをさらに重視していく。

「持続可能なサプライチェーンは、我々が今、本当に関心を寄せていることの1つです」と、BMW i VenturesのマネージングパートナーであるMarcus Behrendt(マーカス・ベーレント)氏はTechCrunchに話した。「BMWは二酸化炭素排出量を大幅に削減したいと発表しました。そのため、自動車からの排出だけでなく、自動車の製造や開発の際に発生する排出も含めて、あらゆる形態の二酸化炭素排出を視野に検討しています」。

BMW i Venturesは、2019年末にこうした持続可能な投資に足を踏み入れ始め、スマートな電気モーターシステムを開発しているTurntide Technologies、固体電池技術のSolid Power、金属産業の脱炭素化を目指すBoston Metalに投資した。ベーレント氏によれば、最近の投資はファンドIIがもたらすものを示唆している。新ファンドの最初の投資先は、英国の中古車販売会社であるMotorwayだ。

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「我々には今、2つの目標があります。第1は財務的な目標で、これは我々の最も重要な原動力です」と、BMW i VenturesのマネージングパートナーであるKasper Sage(カスパー・セイジ)氏はTechCrunchに語った。「世の中のコーポレートベンチャーキャピタルには、投資収益率を気にせず、投資にともなう事業上の取引から利益を得ようとするところもありますが、それは実際には投資先のビジネスを傷つける可能性があります。我々の目標は、その会社をできる限り成功させることです」。

第2の目標は「母艦」であるミュンヘンのBMWグループに戦略的価値を提供することだ。主にアーリーステージの企業に投資することで、早期に市場のシグナルをつかみ、それをBMWに伝えることができる。

「場合によっては、こういう新しい技術が存在し、あなたにも関係のあることかもしれないということを認識してもらうだけです」とセイジ氏はいう。「例えば、当社はLimeに投資しましたが、これはマイクロモビリティであり、自動車との接点はありません。しかし、これは人々がAからBへ移動する方法に関する未来の一部であることを理解することが重要です」。

ベーレント氏とセージ氏はいずれも、BMW i Venturesは投資先を買収する意図はなく、将来的にBMWや他の業界と協力できる可能性の高い企業を見つけるために最前線に立っていたいと話した。

セイジ氏によると、同社はこれまでに12社のイグジットを行い、加えて現時点で6社の上場企業と、最近S-1を申請し、間もなく上場する予定の1社に投資しているという。

「投資をするのに会社の賛同は必要ありません」とベーレント氏はいう。「デューデリジェンスのためにエンジニアに相談したり、他のスタートアップとつながりを持ったりしています。我々は両方の良いところを組み合わせようとしています。つまり、当社はファイナンシャルVCのように行動し、取締役会に席を確保し、ラウンドをリードし、迅速な決断を下すことができます。また、当社は組織内のあらゆるコネクションを企業に提供しています」。

BMW i Venturesが投資するスタートアップ企業は、BMWのエンジニアや社員とのネットワークを築くことができ、また、自動車のエコシステムがどのように機能するかをレガシー企業から学ぶことができるというメリットがある。ベーレント氏によると、Solid Powerのように技術の確立がさらに4、5年先になる企業の場合、BMWの事業部門との間に、そうした企業の成長を支援する強い協力関係があるという。

「これはWin-Winの状況です」とベーレント氏は話す。「当社は彼らを紹介し、会社に連れて行きます。彼らは適切なエンジニアと話をすることになります。契約を獲得できるという保証はありませんが、一緒に仕事をして、模索して、サポートを得て、もしかしたらすばやい解決策で助けてくれるかもしれません」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:BMW持続可能性二酸化炭素排出量二酸化炭素投資ファンド

画像クレジット:MW i Ventures

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

リモート投資とビッグデータがカギ、パンデミック中に誕生したMoonfireが初となる65億円規模のシードファンドを設立

Moonfire VCのチーム

パンデミック渦中、ベンチャーキャピタルがZoomやGoogle Meetなどのビデオ会議ツールを用いて起業家からピッチを受ける「Zoom投資」なるものが台頭した。そして今、ヨーロッパの新たなシードファンドがこの方法を活用し、自らのモデルに組み込もうと目論んでいる。

Atomicoの元共同創業者であるMattias Ljungman(マシアス・ユンマン)氏は、2019年12月に同社を去った後Moonfireを設立したが、この新事業の詳細についてはこれまでほとんど明かされていなかった。先日、Moonfireは6000万ドル(約65億円)規模のシードステージの「データ駆動型」ベンチャーキャピタルとなることを明らかにした。リモートワークの新たな利点を活用して起業家らにもそれに適応させていくようだ。

正直なところ、ユンマン氏にはさほど選択の余地があるわけではなかった。2020年1月からファンドの設立、調達、クローズ、そして投資までのほとんどすべてをリモートで行った同氏。しかし、同氏によるとこれは裏を返せば「ニューノーマル」を継続することができるという証であるという。「Zoom投資を行っています。地理的制限がなくなり、またこの方法が皆にとって違和感のないものになりました」と同氏はもちろんZoomで話す。

Moonfireの第1号ファンドは、機関投資家、起業家、VCといった幅広い層のLPから資金を調達しており、米国のシードファンド投資会社であるCendanaがアンカーインベスターとなっている。加えてユタ州のSITFO(学校および機関投資家向け信託ファンド事務局)やReference Capitalなども参加。同社によるとこのファンドには上限を超過する応募申し込みがあったという。

同社は健康と福祉、仕事と知識、ゲーム、コミュニティとレジャー、資本と金融などの幅広い分野に焦点を当てていく予定だ。ヨーロッパにおける直近の投資先にはHumaans、Electric Noir Studios、Skunkworks、Pento、Awell Health、Mindstone、Business Score、Homerun、HiPeople、LoveShark、WillaPay、Oliva、Equifyなどが名を連ねる。

経験豊富なユンマン氏はAtomicoの共同設立者として、20年にわたってKlarna、Supercell、Viagogo、Climate Corpなど、テック系スタートアップからユニコーンになった多数の企業への投資実績を持つ。

Mike Arpaia(マイク・アルパイア)氏とCandice Lo(キャンディース・ロー)氏がユンマン氏とともにパートナーになる。元コンピュータサイエンティストのアルパイア氏は、Etsy、Facebook、Kolide、Workdayでの経験を活かしてMoonfireに参画。起業家としての経験もあるロー氏は、オペレーターから投資家に転身し、ヨーロッパと中国のUberでの経験や、英国のBlossom Capitalでのアーリーステージの投資家としての経験も持つ。

データこそが同ファンドの土台となるとユンマン氏は話す。「ベンチャーは人との関わりがポイントとなるビジネスですが、企業の発掘、スクリーニング、評価、創業者へのインサイトの提供などすべての作業を強化して最適化するためには、データやソフトウェア、機械学習がフル活用されるべきです。それにより従来のテーマ型投資を強化し、意思決定をより迅速かつ効果的に行うことができます」。

当然のことながら、最近ではどのVCもデータを駆使して投資を行っている。例えばロンドンのInreach Venturesはこのアイデアを見事に活用している数多くのVCの1つである。

これに対してビデオ電話でユンマン氏は次のように反論している。「至るところでソフトウェア、自動化、機械学習が活用されています。どの業界を見てもソフトウェアで溢れており、ソフトウェアは企業の発掘から管理、評価、サポートに至るまでプロセスのあらゆる要素に関わっています。我々はテーマを中心としたアプローチを続けていますが、それをソフトウェアと組み合わせることにより、まるでバイオニックスーツのように我々がやっていることを補強し、拡大し磨きをかけるのです」。

「現在、ヨーロッパのエコシステムは非常に大きくなっており、直感や人間関係、ネットワークに頼るというだけでは効率的ではありません。我々にとってはソフトウェアの活用が非常に重要です。弊社のデータベースにはすでに140万人が登録されており、こういった起業家の多くがすばらしい経歴を持っています。平均的な起業家の年齢も以前に比べてかなり高くなっています。1年に何千社もの企業を見ていると、本当の意味でのネットワーク効果を見出すことができます。データを構築すればするほど、ポートフォリオを構築すればするほど、そして投資を増やせば増やすほど、その知識が制度化されるので投資先企業への支援やサポートがより充実したものになります」。

Cendana CapitalのパートナーであるGraham Pingree(グラハム・ピングリー)氏は、声明の中で次のように述べている。「この1年間、欧州のスタートアップエコシステムの成熟と成長を見守ってきましたが、ポートフォリオの拡大を目指すMoonfireとパートナーシップを組む機会を得ることができとてもうれしく思っています。MoonfireはCendanaと同様に、創業者らを初期段階から支援することに情熱を傾けており、また新世代の創業者を育てるために必要なスキルと専門知識を持っています」。

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誰もがオープンソースのスタートアップに投資したいと思っている
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タグ:ビデオ会議投資MoonfireZoom投資

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

誰もがオープンソースのスタートアップに投資したいと思っている

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

みなさん良い週末は過ごせただろうか。先週があまり慌ただし過ぎず、週末にしっかりと充電できていることを願っている。といいつつ、お話したいことはてんこ盛りだ。

私のメール受信箱やSMSフォルダー、Twitter(ツイッター)のDMにどんどん積み上がっているのが、オープンソースをバックボーンにしたスタートアップの調達ラウンドの知らせだ。基本的にスタートアップ企業はオープンソースプロジェクトにルーツを持ち、多くの場合そのオープンテックの創始者がその企業内にいる。

スタートアップの世界での、最新の良い例がConfluent(コンフルーエント)だ。同社は先週公開されたが、その結果はすばらしいもので、IPOレンジを上回る価格が付けられて、その後さらに上昇した。Confluentは、オープンソース技術であるKafka(カフカ)をベースにしている。おそらくKafkaを耳にしたことのある人は多いだろう。

The Exchangeは同社のIPO当日に、Confluentの初期からの支援者であるIndex VenturesのMike Volpi(マイク・ボルピ)氏に、インタビューを行った。そのインタビューを通して、ボルピ氏がいうところの、この数年で劇的に変化したオープンソース(OSS)スタートアップの世界を垣間見ることができた。彼の話によれば、2015年頃のベンチャー投資家たちは、オープンソースのスタートアップにあまり興味を示しておらず、すでに1社(Red Hat、レッドハット)があるし、それでほぼ十分だろうと話していたという。

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私の計算が正しければ、Index VenturesはConfluentの今回のIPO価格から株価にして10億ドル(約1108億円)を超える価値を得たことになる。つまりOSSを嫌っていた者たちは間違っていたということだ。

とはいえ、ボルピ氏は、オープンソースに特化したスタートアップに対して相変わらず強気であるものの、より多くの投資家がこのモデルを支持するようになったことで、市場は徐々に選別が必要になってきていると付け加えた。投資家たちがより多くの資金を投入していることは、スタートアップの資金調達に関する報道を読んでいれば、驚くようなことではない。その例の1つが、2020年12月に書いたBuildBuddy(ビルドバディ)だ。また同僚のRon Miller(ロン・ミラー)記者は最近、Tecton(テクトン)とAirbyte(エアバイト)を取り上げている。

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ベンチャーキャピタルがOSSに関心を持つ傾向は以前から見られていた。実際2017年には、VCたちがTechCrunchのために、オープンソーススタートアップの隆盛についての記事を書いている。しかし、ConfluentのIPOや、この領域のスタートアップ企業の最近の相次ぐ資金調達は、このような企業に対する市場の需要が、新たな高みに達したことを示しているように思える(もしOSSに特化したスタートアップを立ち上げていて、最近資金調達をしたのであれば、ひと声かけていただければ幸いだ)。

ConfluentのIPOについてさらに詳しく

また、同社のIPO当日にはConfluentのCEOであるJay Kreps(ジェイ・クレプス)氏にも話を聞いた。そこから残されたメモのいくつかは、取り上げる価値がある。ここでは、そのキーポイントをご紹介しよう。

  • 投資は決して「普通」には戻らない:ベンチャーキャピタルがZoom(ズーム)で取引を始められたことは、それだけで大変な驚きだった。つまり、平均的なVCはテクノロジーに精通しているのだろうと思うだろう。クレプス氏によれば、IPOロードショーはデジタルチャネルでうまく機能し、ジェット機で全国を飛び回って対面式のミーティングを行うよりも、より多くの人々と迅速に話をすることができたという。もしさらに保守的な公開市場の投資家たちがZoomを良しとすれば、デジタルピッチングはそれで決まりだ。
  • 公開市場はまだ熱い: Confluentは急成長しているソフトウェア企業だが、まだ利益を出していない。このIPOの高評価は、現在の市場では損をしてもまだまったく問題ないことを示している。クレプス氏によれば、もし巨大な市場(彼はConfluentの市場を500億ドル(約5兆5000億円)規模とみなしている)があり、非効率な事業とコスト構造に完全に苦しめられていないCEOの証として、資本がきちんと投資されていることを示すことができれば、損失は問題ないという。これは、現在第3四半期のIPOを希望している、当期純利益よりも成長率が高い企業にとって重要なことだ。ほとんどの企業に当てはまる。
  • 一般投資家もオープンソースを好んでいる:The Exchangeはクレプス氏に対して、公開市場にアプローチするオープンソース企業であることについても質問をした。それはプラス要因だったのかマイナス要因だったのか?CEOはプラスだったという。テクノロジーにはオープンスタンダードに基づいて構築されてきた歴史があり、OSSはそうした歴史的な流れにうまく合致している、とCEOは付け加えた。また、オープンソース・プロジェクトには有機的な強い勢いがあるため、一般投資家が企業レベルでの将来の成長を見極めるのに役立つと付け加えた。すばらしい。

OK、さらにオープンソースのニュースはいかがだろう?

実はさらにオープンソースソフトウェアのニュースがあるので、聞いていただきたい。2021年6月初めに、Prefect(プレフェクト)は3200万ドル(約35億5000万円)のシリーズBを行った。このラウンドはそのときには記事にしなかったが、先週同社に簡単に話を聞くことができた。

同社は、オープンソースプロジェクトであるPrefectCore(プレフェクトコア)を中心に活動している。PrefectCoreは、スケジューリング、モニタリング、ロギングなどに注目し、企業のデータ流入が正しく設定されているかどうかの確認をサポートしている。同社は、このような作業をネガティブエンジニアリングと呼んでおり、ある種の盲点になっている。スタートアップによれば、この種の作業は誰も本気で取り組みたいとは思っていない種類のものなのだという。

注目すべきなのは、Prefectは、オープンソースプロジェクトのホスティングバージョンを提供するのではなく、モニタリングサービスを販売している点だ。私はOSSプロジェクトそのもののホスティングは、そうしたプロジェクトを収益化するためにはやや古臭い方法であると考えている。そのため、ホスティングやフィーチャーゲーティングを販売するのではなく、PrefectCoreが管理しているものを追跡するAPIそのものが同社の製品となっている。オールグリーンなら問題がない状態だということで、そうでなければ、何か問題があるという意味だ。

今回取り上げた重要なポイントは、Confluentが、OSSスタートアップが巨大なスケールに達し、大きなIPOになることができる可能性を示したことだ。そしてPrefectが示したのは、オープンソース・ソフトウェアでお金を稼ぐための方法が、さらにあるかもしれないということである。

ということで、2021年はより多くのOSS VC案件が期待される。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch Exchangeオープンソース

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

アトランタが米国南東部でユニコーンを量産するテクノロジーハブに成長した理由

ここ5年間、米国南東部はアトランタを筆頭に、テック業界における「指折りの穴場の1つ」から、10億ドル(約1091億円)規模のテック企業が群がる活気あるエコシステムになった。ちなみに、このような10億ドル規模のテック企業は(その希少性から)投資業界では「ユニコーン」と呼ばれる。

アトランタに本社を置くValor Ventures(バローア・ベンチャーズ)のパートナーであるLisa Calhoun(リサ・カルフーン)氏によると、この5年間で米国南東部におけるベンチャーキャピタル投資額は急増して21億ドル(約2292億円)に達した。そして、そのうち10億ドル(約1091億円)は2020年1年間で投資されたものだという。

これは、ジョージア工科大学、アラバマ大学、オーバーン大学、ジョージア大学、バンダービルト大学、エモリー大学や、歴史的に黒人学生を対象として設立されたモアハウス大学、スペルマン大学、ザビエル大学など、南東部の私大と公立大学から才能ある起業家が生まれていることを示す兆候だ。また、地元の起業家への再投資が行われているサインでもある。地元への再投資は、アトランタをハブ都市としてマイアミ、バーミングハム、ナッシュビル、ニューオーリンズなどのスタートアップ都市を結ぶネットワークを作ることを目指す数十年来の取り組みだ。

カルフーン氏はメール取材に対して次のように答えてくれた。「アトランタは、次世代のグローバルなポストシリコンバレー型テクノロジーハブだ。今から10年後、米国社会ではマイノリティが全体として多数派になる。アトランタの現在の人口はその動態を先取りしている。南東部には米国人口の40%以上が南東部に住んでおり、有色人種の創業者や企業経営者の密度は米国一で、AirBnB(エアビーアンドビー)をはじめとする数多くのテック企業が拠点を置いており、地元でも昔からトップレベルのテック企業や人材が生まれていることを考えると、アトランタは未来のテクノロジーハブのあるべき姿を示していると思う。この地域の人口基盤は多様で拡大し続けている。これは、力のある創業者なら誰もが考慮すべき要素だ」。

とはいえ、ベンチャーキャピタル企業や投資企業に経済的なリターンをもたらす次なる主要地域の1つとして数えられるには、まだ課題が山積みである。

アトランタに本社を置く投資会社Tech Square Ventures(テック・スクエア・ベンチャーズ)の創業者兼ジェネラルパートナーであるBlake Patton(ブレイク・パットン)氏は次のように述べる。「米国のGDPのうち、南東部が占める割合は24%で、そのうちベンチャー投資が占める割合はわずか7%だ。しかし、南東部における最近の動向を見ると、その状況は変わり始めている。投資企業が南東部に注目してその地域の担当者をサポートし、その担当者が南東部の優れた才能豊かな起業家に投資する、というケースが増えている」。

アトランタにおけるドットコムバブルの到来と崩壊

1996年に夏季オリンピックを開催してから数年の間、アトランタは米国の次なる大型スタートアップハブの候補都市として飛ぶ鳥を落とす勢いを見せていた。

オリンピックを開催したことにより、アトランタは世界の表舞台に躍り出た。さらに、バージニア州のAmerica Online(AOL)をはじめとするインターネット企業の誕生により、企業活動が活発になり、注目度が上がり、投資家が集まるようになったのを見たアトランタの市議会と市長は、第一次ドットコムバブルの初期、アトランタをテレコム企業とスタートアップのハブ都市にしようと力を入れていた。

アトランタを拠点とする非営利団体Launchpad2X(ローンチパッド2X)の創設者で連続起業家および経営者でもあり、アトランタのエコシステムと深いつながりを持つChristy Brown(クリスティ・ブラウン)氏は次のように語る。「1990年代半ばにオリンピックを開催したことによって何かが起こり、アトランタは世界中で認知されるようになった。アトランタがサプライチェーンやロジスティクスのハブだったことが唯一の理由ではない。1990年後半にドットコムバブルがいよいよ盛り上がりを見せると、本来であれば表から見えるべき物事が舞台裏で進行した。Atlanta Gas Light(アトランタ・ガス・ライト)はオリンピックのためだけにアトランタ周辺に米国最大のダークファイバ―網(敷設されたが未使用状態の光ファイバー網)を敷設した。次世代の宇宙航空技術を研究しているはずのジョージア工科大学はコンピューターサイエンスにも力を入れ始めた」。

アトランタは初期の成功にある程度貢献した。第一次ドットコムバブル期の革命的な変化を引き起こした(が、その後はスキャンダルの泥沼にはまったり大企業に買収されたりした)優秀なテレコム企業やネットワーク企業を輩出したからだ。MCI Worldcom(MCIワールドコム)や、Cingular Wireless(シンギュラー・ワイヤレス)に買収されたAirtouch Cellular(エアタッチ・セルラー)は、最終的には再編後のAT&Tの傘下に収まった。

ブラウン氏は次のように説明する。「アトランタのテック業界ではさまざまな出来事が進行していた。これらの創業者の多くは机上の空論に基づいてドットコム企業を立ち上げており、それがドットコムバブルへと発展していった。このような状態が1990年代半ばから後半にかけて続き、ドットコムバブルが崩壊すると、アトランタとその周辺で数多くのドットコム企業が廃業した」。

初期のドットコム企業が2000年のドットコムバブル崩壊とともに崩れ去ると、その影響はアトランタのテックエコシステムに波及して、企業が手にしていた初期の好業績は消え去り、このバブル崩壊を何とか耐え抜いたいくつかの企業は成功したものの、アトランタは10年に及ぶ再建の道を歩むことになった。

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不況の日々

そのような企業の1つがMailChimp(メールチンプ)だ。テックバブル崩壊直後の2001年に創業した同社はメールマーケティング用サービスを提供する非上場のスタートアップで、Ben Chestnut(ベン・チェストナット)氏とDan Kurzius(ダン・カージアス)氏のウェブ開発企業が手がけたいくつかのプロジェクトのうちの1つである。

両氏はCox Interactive Media(コックス・インタラクティブ・メディア)で知り合い、初期のMP3製品の開発にともに携わった。このプロジェクトが下火になって結局は失業した両氏は一緒に事業を始めることにした。両氏は事業収益を元手にメールチンプのサービスを開発し、ベンチャー資本の投資を受けずにメールチンプ事業を一から立ち上げたのだが、この企業モデルは後に南東部の多くのテック起業家が見習うものになった。

数年後の2003年には、John Marshall(ジョン・マーシャル)氏という別の起業家がホスピタリティ業界の施設にインターネット接続用のホットスポットを設置する事業を始めて、最終的には他のネットワークインフラの監視と管理を含むWandering WiFi(ワンダーリングWiFi)というサービスへと成長させた。スタートアップの世界に勢いよく進出したワンダーリングWiFiはその後AirWatch(エアウォッチ)としてエグジットを達成し、アトランタ発の大型テックエグジット事例となった。

メールチンプは創業後6年間、共同創業者2人の副業だった。両氏とも同サービスに引き続き携わってはいたが、フルタイムでは関わっていなかった。2007年に1万ユーザーを達成してはじめて、両氏ともフルタイムでこの事業に従事するようになった。

起業当初はまとまりのなかったメールチンプが、両氏を億万長者に押し上げた。2018年のForbes(フォーブス)には、メールチンプの評価額は42億ドル(約4582億円)、収益額は6億ドル(約655億円)だと記されている。

アトランタのテック業界再生が本格的に始まった時期を挙げるとするなら、それは2006年だろう。世界的な金融危機が発生する数年前、テック業界で今よりも多くの企業がもっと安定した収益見通しを投資家に提示できていた頃だ。1990年代終わり頃にIPOを達成したアトランタエリア発のドットコム企業であるInternet Security Systems(インターネット・セキュリティ・システムズ)が13億ドル(約1418億円)でIBMに売却された年でもある。

インターネット・セキュリティ・システムズの共同創業者であるTom Noonan(トム・ノーナン)氏とChris Klaus(クリス・クラウス)氏も同じように長い道のりを経験した。1990年代半ば、クラウス氏がアトランタにあるノーナン氏の自宅のガレージに住んでいたときに立ち上げた事業は、IBMによる買収直前には年間収益4億ドル(約436億円)の企業に変身していた。

資本が流れ込んでくるようになると、アトランタはテック業界でいくらか体勢を立て直し、自分の事業に夢中になっていた創業者が地元の企業に再投資するようになった。さらにアトランタは起業家精神を育てるためのイベントを増やすべく行動を起こした。2006年には南東部出身の新しい人材や初期スタートアップを紹介する場となるVenture Atlantaというカンファレンスが創設され、アトランタのテック業界の未来を形作る起業家が数名、このカンファレンスを登竜門として飛び立っていった。

画像クレジット:TechCrunch

新たなスタートアップシーンのモデル都市

2006年は、アトランタ企業のエグジットにとって重大な年だっただけでなく、新たなスタートアップが大量に生まれた年でもある。そのことが原動力となり、アトランタはその後の10年間で現在のように活発なスタートアップ都市になり、10億ドル規模のテック企業をいくつも生み出すようになった。

David Cummings(デービッド・カミングス)氏とAdam Blitzer(アダム・ブリッツァー)氏がマーケティングと営業の自動化ソフトウェアを開発するPardot(パードット)を創業したのも2006年だ。パードットは急成長し、ExactTarget(イグザクトターゲット)などの業界大手から注目されるようになった。Manhattan Associates(マンハッタン・アソシエイツ)の経営幹部だったAlan Dabbiere(アラン・ダビエーレ)氏がマーシャル氏と手を組み、ワンダーリングWiFiがエアウォッチに変わって、モバイル企業のネットワーク管理やセキュリティに関するサービスを提供するようになったのも、やはり2006年だった。

2006年以降の数年間、メールチンプはより活発に活動した。現在はSean O’Brien(ショーン・オブライエン)氏とともに投資会社Overline Ventures(オーバーライン・ベンチャーズ)の共同創業者であるMichael Cohn(マイケル・コーン)氏がCloud Sherpas(クラウド・シェルパス)を立ち上げたのも、動画配信サービスを開発するClearLeap(クリアリープ、2015年にIBMに買収され、評価額は1億1000万ドル(約120億円)だった)、サイバーセキュリティのDamballa(ダムバラ、後年アトランタ近郊に本社を置くCore Security[コア・セキュリティ]に買収された)、多くの大手銀行が顧客向けポイントプログラムの実施に利用しているCardlytic(カードリティクス、現在はNASDAQに上場しており時価は40億ドル[約4364億円])などの企業が起業したのも、すべてこの時期だ。

台頭するこれらのテック企業に鼓舞されて、他の起業家も次々とこの波に乗った。Kabbage(カベッジ、後に8億5000万ドル[約927億円]で買収された)、Calendlyカレンドリー、2021年の時点で事業規模30億ドル[約3273億円])、音声認識テクノロジーを開発するPindrop(ピンドロップ、2018年に9000万ドル[約98億円]を調達)などの企業がスタートアップシーンに姿を現したのも同じ時期である。

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これらの企業は、決済・金融サービス、クラウドベースのビジネスソリューション、インターネットセキュリティを中心とする多種多様なスタートアップが生まれる土壌を整えた。Scientific Atlanta(サイエンティフィック・アトランタ)のようなハードウェア製品に特化したテレコム企業やネットワーク企業は姿を消した。ちなみに、サイエンティフィック・アメリカは、Hewlett Packard(ヒューレットパッカード)がシリコンバレーでそうだったように、1950年代のアトランタにおいてハイテク企業の草分けとなった企業だ。

一方で、新世代の投資家がアトランタを視界に入れ始めた。その前兆となったのが、2006年のBIP Capital(BIPキャピタル)創設だ。これはアトランタの新米起業家にとっても重要な意味を持つ出来事だった。

アトランタの未来を信じた投資家たち

アトランタ出身の起業家が増えるにつれて、瀕死の状態にあった現地の投資コミュニティが活力を取り戻した。CrunchBaseのデータや数人の投資家および創業者への取材によると、ドットコムバブルの崩壊後、深刻な痛手を負いつつも何とか生き残ったアトランタエリアの投資会社は、レイターステージのスタートアップやアトランタ以外のエコシステムに属するスタートアップを探し始めたという。

例えばNoro-Moseley Partners(ノロ=モーゼリー・パートナーズ)はアトランタ発の投資会社の中では群を抜いて活発に投資を行っている。Crunchbaseのデータによると、同社はその長い歴史の中で123件を超える投資案件を取り扱ってきたが、直近5年間でアトランタを本拠とする企業へ投資した案件はわずか4件しかない。

対照的に、BIPキャピタルの創設以降、同社に飛びついた企業は、資本を展開し、連続して何度も巨額の資金調達を成功させてきた。ここ5年間でBIPキャピタルは最低でも15社のアトランタエリア企業に投資しており、現在は米国南東部と中西部を本拠とするアーリーステージのスタートアップを対象とする3億ドル(約327億円)規模のファンドPanoramic Ventures(パノラミック・ベンチャーズ)の設立を計画している。

BIPキャピタルの共同創業者兼CEOであるMark Buffington(マーク・バフィントン)氏はTechCrunchによるメール取材の中で次のように説明した。「アトランタや南東部の創業者が出資者を見つけることは昔から困難だった。以前は、テクノロジーハブの古株であるシリコンバレーや北東部の都市以外でテック企業を創業するのは不利だと考えられていた。投資資本を確保することがさらに難しくなるからだ。大手ファンドはハブ都市にあり、そのようなファンドが提供する豊富なチャンスをつかめるのは、地理的にそのハブに所在する企業だけだった。古参のハブ都市は、資本が集まるという意味では現在でも重要な存在だが、スタートアップも物理的にハブ都市に所在する必要性は変わった。イノベーションが進行している他の都市に拠点を移すベンチャーファンドが増えている。同時に、地元の都市や地域を本拠とする投資会社の投資額も増えている。その主な原因は、非公開市場に資金が流入していることだ」。

アトランタの投資シーンを変えつつあるこのような一連の新たな投資家の1人がパットン氏だ。同氏は、テック・スクエア・ベンチャーズや、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)投資を行うと同時にアトランタに本社を置く大企業数社の力を活用してスタートアップを支援する投資会社Engage(エンゲージ)のパートナーとして働くことにより、起業家たちを奮い立たせ、新たに芽生えたテック企業スタートアップへの関心を高めた。

パットン氏は次のように説明する。「南東部で最近高まっている機運の原動力となっているのは、イノベーションのエコシステム全体でつながりが強化されたこと、そして、この地域から生まれて成功しているスタートアップから輩出される起業家や人材の数がクリティカルマスに達したことだ。企業がデジタル変革とイノベーションに重点を置いている今、どの企業もある程度はテック企業にならざるを得なくなっており、そのことがスタートアップとテック企業との間で人材の流動を促し、つながりを強めている。この地域の最大の強みは多様性とHBCU(歴史的黒人大学)のトップ4校があることだ。5年間には、南東部が、多様性のある起業家により創業され、多様性豊かなチームによって運営されるスタートアップの成功例を生み出す点で主導的な存在になっていて欲しいと思う。単に人間としての責務に関する話ではない。米国の黒人人口の半分を擁する南東部には、チャンスに恵まれない起業家がリードする立場になれるようサポートする点で成功する義務がある。南東部で多様性の課題に取り組めないなら、米国全土で取り組めるわけがない」。

とはいえ、アトランタでスタートアップの活動を再び活性化させるには別の材料も必要だった。例えば、2012年にカミングス氏が立ち上げたAtlanta Tech Village(アトランタ・テック・ビレッジ)が提供するコワーキングスペース、Advanced Technology Development Center(ATDC、先進テクノロジー開発センター)による継続的な関与、Venture AtlantaカンファレンスやHypepotamus(ハイプポタマス)を中心に展開されたコワーキング環境などだ。Hypepotamusは今でも南東部におけるスタートアップ活動に関して一番頼りになるメディアである。

カミングス氏がアトランタで再投資することを決め、都心から少し離れた上品なバックヘッド地区の近くにテック・ビレッジを立ち上げたことが、アトランタの起業熱を再燃させた大きな要因の1つだと、どの起業家や投資家も口をそろえていう。カミングス氏はパードットを売却後、David Lightburn(デービッド・ライトバーン)氏とともに、起業家向けのコワーキングスペースとしてアトランタ・テック・ビレッジを設立した。このスペースは、大型スタートアップの次なる波を作り出すであろう新たなスタートアップ創業者を何人も引きつけた。アトランタのテックコミュニティで長年活動する人は次のように語る。「デービッド・カミングスがパードットを売却したのは、起業家たちのコミュニティになる場所を作りたかったからだ。スタートアップの創業者が一緒にランチを食べられる場所を作り、起業家たちがビジネスを作り上げていくのを強力にサポートしていた」。

それと同じくらい主要な鍵となったのは、ジョージア工科大学と関連したスタートアップ向けのハブとして長年活動してきた先進テクノロジー開発センターだと、起業家と投資家はいう。Venture Atlantaカンファレンスも、米国全土から投資家をアトランタに集めて地元の人材を紹介するという役割を果たした。CreateX(クリエイトX)とVenture Atlantaのプログラム、アーリーステージの起業家を対象とした4つのイニチアチブとワークスペースは、後にPartPic(パートピク)、Greenlight(グリーンライト、現在の評価額は23億ドル[約2507億円])、カバッジ、ピンドロップなどのような大輪の花を咲かせるための種をまいた。

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多様性のある創業者や投資家が活躍できる都市

アトランタのスタートアップエコシステムの初期において、多様性のある創業者や女性創業者にとって他の何よりもうれしかったサポートが、Hypepotamusが提供するコワーキング用スペースとオフィスだ。

連続起業家のMonique Mills(モニーク・ミルズ)氏も、2016年にパートピクをAmazon(アマゾン)に売却し、現在はGoogle(グーグル)の米国スタートアップ部門を統括するJewel Burks Solomon(ジュエル・バークス・ソロモン)氏も、Hypepotamusを利用していた。

バークス・ソロモン氏は当時を振り返ってこう語る。「Hyperpotamusが無料で提供していたスペースが私の初めてのオフィスになった。当時、手元にそれほど資金が残されていなかった私が次にまとまった額を調達できたのはATDCでのことだった。ATDCでジョージア州のインキューベーターに会えたからだ。ATDCはスペースを貸し出してくれるだけではなく、起業家を常駐させており、ATDC全体がアトランタ発のテック系スタートアップを支援する包括的なプログラムとなっていた」。

数人の創業者や投資家は、Hyperpotamusが提供していたスペースと、後続のOpportunity Hub(オポチュニティ・ハブ)やThe Gathering Spot(ザ・ギャザリング・スポット)などのコワーキングスペースが、アトランタの黒人起業家コミュニティが成功につながる化学反応を引き起こしたと述べている。

さらに、National Builder Supply(ナショナル・ビルダー・サプライ)から派生したHypepotamusのスペースが触媒の1つだとしたら、エンジェル投資家のMike Ross(マイク・ロス)氏もまた成功につながる化学反応を引き起こす役割を果たしたと言える。

起業家のCandace Mitchell Harris(キャンディス・ミッチェル・ハリス)氏が最近UrbanGeekz(アーバンギークズ)に語ったプロフィールの中で次のように述べている。「マイク(ロス氏)はアトランタのエコシステム内の成功した黒人創業者スタートアップの多くに投資してきた。マイクがいなかったら現在の私たちはない。私たちの多くは、から約束に振り回されたり、あからさまな拒絶を受けたりしてきた。そんな創業者に対して確信を込めて投資して創業者の背中を押してくれたのがマイクだった」。

モアハウス大学を卒業したロス氏は、建設・業務請負業界でコンサルティング業を営んで富を築き、Luma(ルマ)、パートピク、Monsieur(ムッシュ)、Axis Replay(アクシス・リプレイ)、Myavana(ミヤバナ)、TechSquare Labs(テックスクエア・ラブズ)、オポチュニティ・ハブザ・ギャザリング・スポットなど、黒人の創業者や投資家に出資してきた。

投資家のPaul Judge(ポール・ジャッジ)氏や、Joey Womack(ジョーイ・ウォマック)氏、Barry Givens(バリー・ギブンズ)氏、Mitchell Harris(ミッチェル・ハリス)氏などの起業家は皆、ロス氏による気前の良い投資の恩恵を受けてきた。

美容テック系スタートアップのミヤバナの共同創業者兼CEOであるミッチェル・ハリス氏はUrbanGeekzに次のように語っている。「マイク(・ロス氏)は当社を支援してくれた最初のエンジェル投資家で、当社が成功するきっかけを作ってくれた。2012年6月にBlack Founders Conferenceで初めてマイクに会ったときのことを今でも覚えている。彼は探求心があって、当時アトランタのテック系スタートアップシーンで生まれつつあった機運を高めたいという意欲にあふれていた」。

ロス氏は他の投資家のためにも道を切り開いた。例えば、Arian Simone(アリアン・シモーネ)氏、Ayanna Parsons(アヤナ・パーソンズ)氏、Keshia Knight Pulliam(ケシア・ナイト・プリアム)氏が運営する、女性投資家によるファンドFearless Fund(フィアレス・ファンド)だ。同社は2019年に最初のファンドを発表した。別の例はCollab Capital(コラブ・キャピタル)だ。2020年設立されたこの投資会社は、Burks Solomon(バークス・ソロモン)氏、Justin Dawkins(ジャスティン・ドーキンス)氏、Barry Givens(バリー・ギブンズ)氏によって運営されている。どちらの例も、ロス氏が最初に投資を始めてから10年近くたった後の出来事だ。

シモーネ氏は次のように述べている。「現在、有色人種の女性創業者は数の点では最も多いが、調達できる資金は最も少ない。アトランタは黒人起業家のメッカであり、私たちがベンチャーキャピタルやテクノロジーを利用できる場所であるはずだ。私たちがアトランタで行っていることを支援して欲しいと、アトランタ市、ジョージア州、そして各銀行に訴えたい。彼らの支援が必要だ」。

そのような支援は単に必要なだけではなく、成功に寄与する。TechCrunchによるリサーチの中で「アトランタエリアでアーリーステージ投資に力を入れている」と判明したベンチャーキャピタル36社のうち41%が、(1)全投資案件において多様性を重視している、(2)ファンドマネジメントチームが多様性に富んでいる、という2つの基準の片方または両方を満たしていた(Crunchbaseのデータによる)。

さらに、TechCrunchによるリサーチの対象としてサンプリングされたアトランタエリア拠点のプレシード、シード、シリーズAスタートアップ全158社のうち、48%が、(1)創業者チームの性別が多様、または(2)創業者チームの民族が多様、あるいはその両方の基準を満たしていた。創業者チームが自分たちについて紹介していないスタートアップも多かったため、多様性に富んだ創業者チームの数は現在公表されているデータよりも多い可能性がある。

UrbanGeekzが述べているように、アトランタのテック業界で働く従業員の約25%は黒人だ。対照的に、サンフランシスコではその割合が6%に下がる。

ロス氏はUrbanGeekzに次のように語った。「10年前は(黒人創業者のテック系スタートアップは)まだ始まったばかりだった。今ではアトランタが米国でトップレベルのテクノロジーハブになっており、そのエコシステムの多様性もトップクラスだ」。

今後の展望

「現在起きている出来事について考えると非常にワクワクする。資本を配置する能力を持つ人たち自身が多様性に富んでいる。この地域のテック業界の未来は明るいと思う」とバークス・ソロモン氏は語る。

そう感じているのはソロモン氏だけではない。コーン氏とオブライエン氏が共同で立ち上げたオーバーライン・ベンチャーズ、Panoramic(パノラミック)、以前はロサンゼルスで投資活動を行っていたPaige Craig(ペイジ・クレイグ)氏とLeura Craig(ローラ・クレイグ)氏が立ち上げたOutlander Labs(アウトランダー・ラブズ)なども、アトランタのスタートアップエコシステムは長い目で見て有望であると投資家たちが考えている証拠だ。

アウトランダー・ラブズの共同創業者であるローラ・クレイグ氏はメールで次ように説明してくれた。「南東部、特にアトランタは今後5年間で主要なテック系スタートアップハブになれる可能性がある。まるで5年前のロサンゼルスを見ているかのようだ。人材も地元にいる。ただし、昔から問題だったのは、メンターが少ないこと、アーリーステージ向けのキャピタルが少ないこと、成長・拡大したレイターステージ向けのキャピタルも少ないことだ。しかし、これらすべてが今、変わりつつある。非常に多くの投資家が米国各地に移転しており、以前には投資対象にならなかった地域での投資を検討し始めている。新型コロナウイルス感染症によって、カリフォルニアやニューヨークから転出する動きが大幅に加速されたが、この動向によって圧倒的な勝ち組になるのが南東部のテックシーンだ」。

大手テック企業もアトランタのエコシステムに多額の資金を投じることにより、同市のスタートアップシーンに期待を寄せていることを示している。直近では、Apple(アップル)がアトランタでの新たなプロジェクトに合計で約1億ドル(約109億円)を投じることを発表した。これには、2500万ドル(約27億円)を投じてアトランタの歴史的黒人大学の近くに多様性を促進し、起業家精神を育てるための施設を建設するPropel Center(プロペル・センター)プロジェクトが含まれている。

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このプロジェクトは、バーチャルプラットフォームと、Atlanta University Center(アトランタ大学センター)内の物理的キャンパスの両方で構成される予定だ。

学生たちは、人工知能、アグリテック、社会的公正、エンターテインメント、アプリ開発、拡張現実、デザイン、クリエイティブアート、起業など、さまざまなコースを選んで学ぶことができる。アップルはこのプロジェクトに対して金銭的な投資を行っているだけではない。アップルの社員がカリキュラムを開発し、メンターとしての助言も提供する。学生たちにはインターンシップの機会も与えられる。

アトランタの好調なテックコミュニティへの支援を表明している大手テック企業はアップルだけではない。Facebook(フェイスブック)はアトランタ市近況のデータセンター施設の拡大に数十億ドル規模の巨額投資を行う予定だ。また、Google(グーグル)は米国全土を対象とした雇用創出投資のために取り分けた90億ドル(約9811億円)の一部をアトランタエリアに投入することを決めている。

現在成長しているアトランタのスタートアップシーンは、台頭している他の都市エリアが参考にできる事例になるだろう。必要なのは、優秀な技術系の高等教育機関、コラボレーションを通してスタートアップを生み出すためのリソースへの投資、地元のコミュニティに再投資する意欲にあふれた投資家のネットワーク、非営利の活動やプロモーション活動を通じた地元自治体によるサポート、そして最後に、その都市が持つ多様な歴史を擁護することである。シリコンバレーをまねする必要はないが、急成長するテックコミュニティをさらに良くするためにシリコンバレーのツールを活用することは可能だ。

最後に、TechCrunchの取材に応じてくださったみなさんに御礼申し上げるとともに、今後も南東部からうれしいニュースが数多く届くことを期待したい。

【注記】本記事はTechCrunchのアナリストKathleen Hamrickの取材協力を得て執筆された。

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タグ:アトランタユニコーン

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(文:Jonathan Shieber、Kathleen Hamrick、翻訳:Dragonfly)

SPACの作るグラフは誇大広告の限界を探るものになっている

この1年、自分でも認めたくないほどSPAC(特別買収目的会社)投資のプレゼン資料を見てきた私は、彼らの異常な強気に強い苛立ちを感じている。保守的だと言われるかもしれないが、上場企業たるもの、でたらめばかりであってはならないし、上場しようとする会社もおそらく同様の目標を目指すべきだ。

その点、従来型IPOのS-1申請資料はすばらしい。数字に関して実に誠実だ。資料に来年の予測は入っていないし、今後5年間のことなどもちろん書かれていない。たしかに会社は自分たちのビジネスモデルや方法を売り込むだろうが、S-1申請は誠実さという意味でかなりよくできている、多くの場合

SPAC投資家の資料は正反対だ。どういう意味かは下のグラフを見て欲しい。


過去の売上?そんなの必要?。これを見てください、今後もしかしたら、理論上、起きるかもしれない成長率です。CAGR(年複利成長率)201%!といったところだろうか。

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はい、そうですか。

Local Bounti(ローカル・バウンティ)のSPAC投資家プレゼン資料の超高精細画像がここにある。私の見つけた最も鮮明なバージョンだ。グラフをお楽しみあれ。


私はグラフのタイトルを「Alexの将来のブログ投稿数」に変えて、次の評価面接で使おうと思う。

これもすごい、今度はPear Therapeutics(ペア・セラピューティクス)の作品だ。


そしてもう1つ、これは最近のEmbark(エンバーク)の資料にあったもので、TechCrunchも取り上げている

関連記事:自動運転トラックのEmbarkがSPAC合併で上場へ、評価額は約5770億円


過去の売上実績はどうなっているんだ?2021年や2022年、2023年の予測は?そんなの知らん!

SPACの実績予測の正確性について我々が学んだことを踏まえると、一連の数値を受け入れるためにはゴジラサイズのSalt Bae(ソルト・ベイ / 塩振りおじさん)が必要だと私は思う。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:SPAC

画像クレジット:Paitoonpati / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nob Takahashi / facebook

スマートシティ創造に向けたアクセラレータ「SmartCityX」が1年目の成果を発表、6つの共創事例を紹介

日本企業とグローバルスタートアップによる新規事業創出をスクラムスタジオは、自社プログラムの1つである、大企業とスタートアップの共創を促す「グローバル・アクセラレーター・プログラム」で、スマートシティを題材とした「SmartCityX」に関するついて1年目の成果発表会を6月23日に開催、代表的な事業共創事例6件を発表した。

同プログラムは2020年8月に発表された。日本の各業界を代表する大企業13社と世界20カ国と地域から採択されたスタートアップ95社が、6つの先進自治体・経済団体、60名超の専門家メンターとともにサービス・アプリケーションの開発に取り組み、事業共創案件を創出することを目指している。

SmartCityXでは、産業や技術の視点のみならず、特に生活者の視点でので議論を深めており、多様性を意味する「カラフル」、DX化を意味する「ライフアップデート」、愛着と主体性を意味する「オーナーシップ」の3つを「SmartCityX Principles」と定義し、事業共創が行われているという。

生活者目線でスマートシティを目指す6つの共創事例

発表会では共創事例として「1.予防医療」「2.公衆衛生」「3.防災」「4.事故防止」「5.スポーツ観戦」「6.マイレージプログラム」という6ジャンルの生活サービスが紹介された。

  1. 予防医療
    地域エコシステム「スマートよろず屋」。スピード脳ドックやオンライン予約・診療を提供するスマートスキャンのサービスを、2021年2021年6月10日から三重県の東員町にて、トレーラーを用いて実証実験として地域に提供する。出光興産、スマートスキャン、三重県が参画。
  2. 公衆衛生
    「Infection Control & Public Hygiene ~街をきれいに安心に~」では、消毒液が見える場所に定点カメラを設置し、手指の消毒を組織中何名が行なったかを観測。衛生行動をモニタリングし、行動喚起して、衛生観念を高めてくことを目指す。匿名性に配慮しており、映像の中では人物特定ができないようになっている。ライオン、東日本旅客鉄道、博報堂、エクサウィザーズが参画。
  3. 防災
    「住民の行動変容を促す、日常使いできる防災ソリューション」には、あいおいニッセイ同和損害保険と東京都渋谷区が参画。あいおいニッセイ同和損害保険の被災建物数予想システムcmapをベースに、注意喚起や災害時の避難誘導などを進める狙いとなっている。2021年度内にはプロトタイプを開発し、渋谷区内での実証実験を予定する。
  4. 事故防止
    あいおいニッセイ同和損保はこれ以降のプロジェクトにも参画している。事故防止に関する事例である「デジタル時代の新たな交通安全対策~テレマティクス技術を活用した新たな交通システム~」では、福井県、福井県警察と協働し地域交通課題に取り組む。急加速、急ブレーキ、スマホ操作といった危険挙動を示すタグをマッピングし、県内ドライバーの運転データと組み合わせ、地域内の危険エリアを検出する。警察側は実際に事故があった地点の突合を行うという。
  5. スポーツ観戦
    「トラストあるデータ流通基盤を軸とした、鹿島アントラーズファン向けの新たな価値提供およびホームタウン地域課題へのチャレンジ」では、日本ユニシス、ジェーシービー、あいおいニッセイ同和損保、茨城県鹿嶋市、鹿島アントラーズ・エフ・シーに、すべての移動に価値を持たせることを掲げるスタートアップ米Milesが協業する。試合当日の混雑緩和などなどをデータ、インセンティブ設計などで解消し、地元とファンのストレスを緩和する狙い。
  6. マイレージプログラム
    「生活者向け行動変容型サービスで実現する『地方創生』『地域活性化』」では東日本旅客鉄道、あいおいニッセイ同和損害保険、Milesが、生活者の移動情報に応じてリワードを提供するスマートフォンアプリ『JREAD』を共同開発し、訪れたことのない店舗への移動を誘導するといった行動変容やデータの地方創生への活用を目指す。2021年2月、3月に実証実験を実施し、アンケートやモニタリングを通じてサービスの受容性が確認できているという。

いずれも、実証実験で一定のニーズや成果が見えたものについては他の地域でも展開を検討していくとのことだ。

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タグ:Scrum VenturesScrum Studioスマートシティ日本

アマゾンの中国販売者にVCやロールアップ戦略の企業は熱視線を送っている

Amazon(アマゾン)で販売している中国の販売業者は、今まさにチャンスが訪れている。郊外の工場地帯を歩き回り、常に資金繰りに追われることに慣れている無骨な輸出業者は、突然、次のSHEINAnkerを探すために多額の小切手を持ってきている中国のトップベンチャーキャピタルやインターネット大手の投資担当者とコーヒーを飲んでいる。ベンチャーキャピタルは、彼らが迅速にスケールするための資金提供はできるが、多くのVCには戦略的な面で支援するための専門知識がない。

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そこでブランドアグリゲーターという人たちが現れ、小売に関する有効なノウハウを提供する。また彼らはロールアップと呼ばれる手段で、将来性がありそうなeコマースブランドを経営の相乗効果を狙って買収していく。ロールアップ戦略は当初、米国とヨーロッパで始まり、最近は東南アジア、今ではひっそりとと中国に上陸している。中国では、従来のホワイトレーベルのメーカーがバリューチェーンを拡大し、独自のブランドを確立しようとしている。

中国に進出した最新のロールアップ戦略の企業がBerlin Brands Group(BBG)で、創業者でCEOのPeter Chaljawski(ピーター・チャルジャウスキー)氏によると、同社は今後数年間で数十件のブランドを買う予定だという。現在、このドイツ企業のポートフォリオの中身は、自社ブランドが14、買収したブランドが20だが、中国進出で大きく膨らむだろう。

中国進出に備えてBBGは2億4000万ドル(約265億8000万円)を借入金で調達し、企業買収に3億ドル(約332億3000万円)をつぎ込むと発表した。同社が負債を選んだ理由の1つは、すでに創業時から利益を上げているためだ。しかし創業者によると、最近の資金調達が最後ではなく、将来的には他の金融手段を利用することもあるという。

チャルジャウスキー氏は、VCや企業投資家をブランド探しの直接のライバルとは考えていない。「中国には、Amazonで大きな収益を上げている販売者は何万もいます。VCの資金が適用されるのは一部の企業だけであり、ロールアップモデルはさらにそのうちの一部にしか適用されません。しかしその『一部』はとてもとても大きな数字なのです」とチャルジャウスキー氏はいう。

BBGにとって中国は初めてではない。15年前に創業した同社はこれまで、中国のメーカーに依存して同社のキッチンウェアやガーデニングツール、スポーツ用品、家電製品などを作ってきたし、今でも同社製品の90%はこの国で作られている。ブランド買収という新しいビジネスでも、深圳に数十名のスタッフを雇っており、チャルジャウスキー氏によると、グローバルな輸出と製造、最近はデザインにおいても重要な役割を果たしていることからて、深圳は「Amazonのシリコンバレー」だという。

Amazonに代わるブランド

BBGは、中国の消費者製品に、Amazon上の無名のブランドであることを超えて、ヨーロッパと米国で成長する新しい道を提供したいと期待している。販売業者は米国の巨大な怪物から自由になって、自分で消費者データをコントロールしたい。しかし彼らが自力でD2Cブランドを構築するのは、難しすぎる。

チャルジャウスキー氏によると、Amazonのサードパーティービジネスとして好調な販売業者も、その多くは、自前のロジスティクスなどでAmazonを超えるだけのインフラを持たない。ヨーロッパでは、BBGが計12万平方メートルのフルフィルメントセンターを管理しており、Amazonへの依存を解消できる。

ヨーロッパにおいて、中国のブランドはAmazonではないブランドで勝負したいと考えているかもしれないとチャルジャウスキー氏はいう。ヨーロッパでは、eコマースの状況も米国よりずっと細分化されているからだ。

チャルジャウスキー氏は「米国はAmazonが支配している。しかしヨーロッパでは、Amazonが握っているオンラインリテールのシェアはわずか10%です。つまり、90%はAmazon以外なのです。オランダにはBolというブランドがあり、ポーランドにはAllegroがある。そしてフランスには複数の上位プレイヤーがいる」という。

ヨーロッパを狙っている国際的なブランドが抱えているギャップを埋めるためにBBGは、20近いD2Cブランドを、Amazonで販売するだけでなく、それらのウェブ専門店をヨーロッパの主な国でオープンしている。また同社の売上は、米国でも伸びている。現在、同社の売上の60%以上がAmazon以外の流通経路からによるものだ。

BBGはすでに中国の一部のブランドとの交渉を進めているが、現時点ではその名前は明かされていない。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Berlin Brands GroupAmazon中国eコマース

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

湘南アイパークがVC・CVC・製薬会社の連携の場「日本VCコンソーシアム」の第2期会員企業を募集

湘南アイパークがVC・CVC・製薬会社の連携の場「日本VCコンソーシアム」の第2期会員企業を募集

湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)は6月22日、「日本VCコンソーシアム」の第2期会員企業の募集開始を発表した。募集期間は6月22日から7月21日まで。同コンソーシアムは、日本のライフサイエンス業界の投資を活性化させるため、ベンチャーキャピタル(VC)、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)、製薬会社の研究または事業開発部門が連携し投資促進に向けた議論の場として発足したもの。

2020年、米国の製薬およびバイオ企業へのVC投資は総額約232億ドル(約2兆5600億円)に上り、コロナ禍で大幅に増加した。IPO件数も過去最大となり、資金調達総額は97億円(約1兆710億円)を記録したという。これに対して日本のヘルスケアVC市場は、湘南アイパークの分析によれば、2020年時点で約1360億円と、アメリカ市場の約2.5%にすぎない。

「個々のVC、CVCの活動規模が小さく、また横のつながりが希薄なために、大胆なリスク投資を行えない」という日本の現状を踏まえて活動を行う日本VCコンソーシアムは、2020年の第1期ではVC・CVCが10社参加し、「デジタル医療」「オリゴ核酸のデリバリー技術」などをテーマに、今後の投資トレンドなどを議論した。2021年は「最前線のBio-Informatics活用」と「New Chemical Spaceを実現してきたBiotech」をテーマに、さらに実践的な議論を行うという。

湘南アイパークのジェネラルマネジャー藤本利夫氏は、こう述べている。
「欧米や中国で加熱するバイオテク投資に比べて、日本での投資規模はまだまだ小さいことに危機感を覚えています。本コンソーシアムにおいて参加各社が研究開発の最前線の情報を共有し、日本の技術開発およびその投資への意識を高めていくことで、イノベーションを加速し、国際競争力を高めていく1つの原動力になればと期待しています」

日本VCコンソーシアム第2期募集概要

  • 名称:日本VCコンソーシアム(英語名:Japan VC Consortium)
  • 募集対象企業:VCまたはCVC、Pharmaなど(1年ごとに更新)
  • 募集期間:2021年6月22日~7月21日
  • 第2期開始日:2021年7月27日
  • 会費:22万円(税込)
  • 応募・問い合わせ:shonan-health-innovation-park@takeda.com (担当:中川)

日本VCコンソーシアム活動内容概要

  • 活動内容:各領域における最先端の情報をもとに会員間で実践的なディスカッションすることで、会員企業がそれぞれ投資・ライセンシングのケイパビリティを向上させる
  • 上期テーマ(2021年7月~12月):最前線のBio-Informatics活用
  • 下期テーマ(2022年1月~6月):New Chemical Spaceを実現してきたBiotech
  • 毎月、「Biotech最先端の講演を聴講・議論」「個別企業間の面談」「運営事務局と個別企業の面談」といった活動を行う

カテゴリー:VC / エンジェル

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タグ:湘南ヘルスイノベーションパーク / 湘南アイパーク日本VCコンソーシアム(組織)ヘルスケア(用語)VC / ベンチャーキャピタル(用語)日本(国・地域)

災害の最前線で働く人たちを肉体的、精神的そしてその後もサポートするために資金を提供するRisk & Return

悲しいことに、災害は成長中のビジネスだ。かつては遠い場所のことだと思っていた被災地が今やずっと身近なものになっている。山火事、ハリケーン、洪水、竜巻、そしてパンデミック。米国の多くの地域や世界中のあらゆる場所が今、実質的に安全な場所などどこにも存在しないという新たな現実に直面している。

大災害に見舞われた人々の死亡率は、その危機にどう対応するかによって大きく左右され、適切な情報、迅速な対応、強力な実行力が生死を分けることになる。しかし、第一線で働く人々は、必要なツールやトレーニングを受けられないことが多く、また政府のサプライチェーンを簡単には通過できないような新しいイノベーションにもアクセスできないことが多い。そしておそらく最も重要なこととして、災害が収束した後も彼らが心のケアを必要としているということを忘れてはいけない。

Risk & Return(リスク・アンド・リターン)は、ベンチャーファンドと慈善事業を組み合わせた比類のない組織で、最前線で働く人々の現場での活動だけでなく、肉体的にも精神的にも過酷な任務に立ち向かうそうした人々のその後を支援するために、次世代のテクノロジーを追求して資金を提供することをミッションとしている。

米国の救急隊員から退役軍人までさまざまな人が同じような課題を抱え、今日も解決策を必要としているが、こういったコミュニティ特有のニーズを知る由もない一般のベンチャー企業にとっては資金調達が困難である。

この組織を設立したのは、2020年15億ドル(約163億円)の2ファンドを発表したバイオテック分野のVCリーダーであるARCH Venture Partners(アーチ・ベンチャー・パートナーズ)の共同創設者兼マネージングディレクターとして名を馳せたRobert Nelsen(ロバート・ネルセン)氏だ。そこに、9/11 Commission(米国同時多発テロ事件に関する国家調査委員会)元共同議長であり、元ネブラスカ州知事兼上院議員でもあるBob Kerrey(ボブ・ケーリー)氏が理事長として、またNavy SEALs(ネイビーシールズ)出身でオバマ大統領の国家安全保障会議でアフガニスタン・パキスタン担当シニアディレクターを務めたJeff Eggers(ジェフ・エガース)氏がマネージングディレクターとして参加した。

ネルセン氏とケーリー氏が出会ったのは、ネルソン氏が事業のアイデアについて思いを巡らせていた頃だ。ケーリー氏はNavy SEALsの資金調達イベントでの当時の会話を振り返り「最前線で活躍する人々には多くの苦しみがともないます。ロバートが事業のアイデアを持っており、私もそれがとてもスマートな考えだと感じたため慈善活動に対して異なるアプローチを取ることを試みたのです」と話している。

同ベンチャーファンドの規模は2500万ドル(約27億円)で、そのうち約35%がすでに展開済みだ。このファンドでは第一線で働く人々のメンタルヘルスに大きく力を入れており、資金提供を受けた企業の75%がそのカテゴリーに属している。

同ファンドの最初の投資先は、心的外傷後ストレスを治療するための精密医療ツールを開発しているAlto Neuroscience(アルト・ニューロサイエンス)だ。また、行動管理に取り組むスタートアップのNeuroFlow(ニューロフロー)、幸福度評価の代替ツールであるQntfy、商業データと健康データを繋げて人間のパフォーマンスを最適化することを目的とした新規スピンアウト企業であるSpear Human Performance(スピア・ヒューマン・パフォーマンス)、義肢装具用のより優れた接続ソケットを設計しているXtremity(エクストリミティ)にも投資している。また、数週間前に筆者が紹介したPerimeter(ペリメーター)を含め、さらに6社のスタートアップにも投資している。

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典型的なベンチャーポートフォリオとはかけ離れたセレクションだが、これこそがRisk & Returnが注力している分野なのである。「この種のテクノロジーは第一線で働く人々にとって有益なだけでなく、地域社会にも利益をもたらすという二重の目的を持っているためすばらしいのです」とエガース氏はいう。

同社が投資しているスタートアップの多くが第一線で働く人々に焦点を当てていることは明らかだが、彼らが開発するテクノロジーはその市場だけにはとどまらない。「退役軍人はみな、一般市民であり、またこれらは軍事市場をターゲットにしたビジネスではありません」とケーリー氏は指摘する。この1年を振り返ると「このパンデミック禍で何からのPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症していない人間を見つけるのは難しい」という。政府への販売は非常に困難であり、また現場で働く人々が必要とする専門的なメンタルヘルスサービスの市場は期待しているほど商業的に成り立つものではないのかもしれない。

Risk & Returnの共同創設者ジェフ・エガース氏、ロバート・ネルセン氏、ボブ・ケーリー氏(画像クレジット:Risk & Return)

政府もこの分野への研究やイノベーションに取り組んではいるものの、ケーリー氏は民間企業がさらに関与することで大きなチャンスが開けると考えている。幻覚剤のような分野について政府が今日このカテゴリーに触れることはほとんどないが、民間部門は興味を持っているという事実を指摘し「PTSDの代替療法を探すということは公共部門にとっては困難でも、民間部門では可能です」と話している。ただし現時点ではRisk & Returnもこの分野への投資は行っていない。

このファンドの収益の半分はRisk & Returnの慈善事業部門に還元され、現場で働く人々を任務中も任務後も支援するという同じテーマに沿って慈善団体に助成金を提供している。同組織らは複雑な対応が求められる分野に多面的にアプローチすることで、潜在的なニーズと最適な資金源をマッチングさせることができるのではないかと期待を寄せている。

このように営利と非営利を組み合わせたハイブリッドなベンチャーモデルは、他の分野でも見られるようになっている。スウェーデンの財団兼ベンチャーファンドNorrsken(ノールスケン)は、メンタルヘルスや気候変動など、国連の持続可能な開発目標(SDG)に掲げられている分野に投資している。MIT Solve(MITソルブ)は、パンデミックやヘルスセキュリティなど、ハイブリッドなアプローチによるスタートアップイノベーションに取り組んでいるプログラムだ。災害が身近になってしまった今、パンデミックやヘルスセキュリティなどの非常に重要な分野のテクノロジーに対する資金提供が増えるということは、実にすばらしい動きなのではないだろうか。

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タグ:自然災害Risk & Return

画像クレジット:Spencer Platt / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

Plug and Play Japanがワクチン合同職域接種に向けパートナーVC・アクセラレーターを募集

Plug and Play Japanは6月16日、東京(渋谷)と大阪(大阪市)で、それぞれの都市に本社を構えるスタートアップの従業員や家族を対象に、新型コロナワクチンの合同職域接種の機会を提供する。また、趣旨に賛同し協力するアクセラレーターやベンチャーキャピタル(VC)、スタートアップなど、同取り組みを推進するスタートアップ・エコシステムに参加する企業を募集する。登録は「渋谷・大阪コンソーシアム | コロナワクチン職域合同接種 受付フォーム」から行える。

渋谷・大阪コンソーシアム | コロナワクチン職域合同接種 受付フォーム

今回の合同職域接種はAI.Accelerator、B-SKET、Creww、東急アクセラレートプログラム(TAP)、東急不動産、ゼロワンブースターらの協力企業各社と共に実施しており、東京(渋谷区)では東急不動産が施設を接種会場として提供する。また、大阪(大阪市)はi-plugと本取り組みを進めている。

今回の取り組みは、VCであるCoral Capitalが6月4日に発表した合同職域接種に続くものだ。VCから投資を受けていないスタートアップも多く、投資状況に関わらず幅広い実施を望む声が多くあるという。各自治体が運営するワクチン接種も予定より早く始まる見込みとされるものの、居住地に関わらず会社単位で接種が受けられる職域接種の重要性を鑑み、今回の取り組みを実施することになった。

アクセラレーター・VCの募集に関しては現在、先行してアクセラレーター各社と人数の取りまとめを進めている。事前のアンケートではすでに最低接種数の1000人を超えているが、より多くのスタートアップに接種機会を提供できるよう、パートナーになるアクセラレーター・VCを募集する。

またスタートアップ・エコシステムに携わる企業・団体の募集については、アクセラレーターに採択されていない、またVCから出資を受けていないスタートアップも多くある。そのため、各拠点でスタートアップ・エコシステムに携わる企業や団体にも機会を提供する。

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タグ:職域接種(用語)新型コロナウイルス(用語)Plug and Play Japan(企業)ワクチン(用語)日本(国・地域)

グーグルが総額2億2000万円の黒人ファウンダー基金を欧州のスタートアップ30社に分配

Google(グーグル)は、ヨーロッパのスタートアップ企業から、総額200 万ドル(約2億2000万円)の黒人ファウンダー基金の対象となる30社を決定した。これらの企業は現金とGoogle関係者とのネットワークを獲得し、Googleの価値のあるクラウドサービスを利用できることになる。

2020年秋に発表されたこの基金は、助成金や新たなスポンサーシップと並んで「すべての人にとってより公平な未来を築く」ための全社的な取り組みの一環として行われたものだ。800社以上の企業が応募し、Googleはそのうちの100社と面接を行い、最終的に米国時間6月3日発表された30社に絞られた

各企業には、最大10万ドル(約1100万円)の株式の希薄化を伴わない資金と、最大12万ドル(約1300万円)の広告助成金および10万ドル(約1100万円)のクラウド利用のクレジットが提供される(この資金がどのように分配されたのか、全額を受け取った企業があるのかどうかについて、Googleに詳細を問い合わせている。回答があれば記事を更新する)。

また、Googleの起業家ネットワークや技術サポートなど、数字には現れない資産も利用できるようになる。

そのうちの1人は、LINEDOCK(ラインドック) の共同設立者であるNancy de Fays(ナンシー・デ・フェイズ)である。LINEDOCKは、MacBook Pro用のクールなバッテリーとハブを組み合わせたガジェットを販売。このガジェットでたくさんのポートとバッテリーが追加され、見た目もスマートだ。展示会で彼女と話していると、多くのことを学ぶことができる。残念ながら筆者はほとんどの仕事をデスクトップで行っており、LINEDOCKのガジェットを使う機会がない。

黒人ファウンダー基金に選ばれたことを受けて、デ・フェイ氏はブログで、企業は社会変革のために力を尽くすべきであり、スタートアップ企業は多様性と公平性をリードしていかなければならない、と主張する。

私たちは、製品よりも価値や基準で選んで購入します。私たちは現実よりも理想の人生を購入します。大企業の発信力と、ブランドの価値やメッセージに対する消費者の受容性という2つのパラメータを方程式に入れると、このような社会変革を推進するためには、大企業が強いメッセージを発し、伝えていくべきだと私は思います。

創業者は、二次受傷に陥らずに多様性のあるチームを作る必要があります。共感と敬意を示し、最高の人材を採用しなければなりません。創業者は、自分たちの価値観を率直に語り、強力でグローバルな考え方を伝え、それを中心に組織を構築する必要があります。そして、その過程で多様性スコアが低いことに気づいたら、その理由を自問自答し、慈善事業ではなく行動に移すべきなのです。

最近よく聞く「企業はミッションに集中し、客観的であるべき」とは対極にある考え方だ。

Googleが支援する他の29社は以下のとおりだ(説明は各社のブログ記事から引用)。

Googleのスタートアッププログラムの詳細はこちら。続報をお楽しみに!

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Googleヨーロッパ

画像クレジット:Google

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

【コラム】多様性、公平性、包括性の面から評価した現在米VC業界の進歩

編集部注:Maryam Haque(マリアム・ハケ)氏はVenture Forwardのエグゼクティブディレクター。Bobby Franklin(ボビー・フランクリン)氏はNational Venture Capital Associationの社長兼CEOで、以前CTIA-The Wireless Associationのエグゼクティブバイスプレジデントを務めていた。

ーーー

これまでベンチャーキャピタル業界が多様性に欠けていたことは明らかだが、業界が改善に取り組んでいることは喜ばしい。

そもそもベンチャーキャピタルは業界として、筆者らが測定したものを改善することしかできない。2016年、筆者らは、ベンチャーキャピタルの多様性、公平性、包括性(DEI:Diversity, Equity and Inclusion)の進捗状況を追跡するための厳密な方法論を開発し、2年に1度開催されるVC Human Capital Surveyで、これらのデータを測定し、ベンチマークとすることに着手した。

この調査はNVCA(National Venture Capital Association:全米ベンチャーキャピタル協会)、Venture Forward(ベンチャ―フォワード)、Deloitte(デロイト)の協力を得て実施され、あらゆる種類、規模、ステージ、セクター、地域のベンチャーキャピタル従業員の人口統計データを収集すること、および企業のタレントマネジメントや採用活動の傾向を把握することを目的としている。これまでの調査では、進歩が遅く、落胆させられることもあったが、すべての分野ではないとはいえ、一部の分野では多様性(および多様性を促進するための会社の取り組み)が高まっている証拠を得ることができた。

繰り返しになるが、業界としてのベンチャーキャピタルの改善は、筆者らだけが測定できる。

筆者らは2016年、2018年、2020年に調査を実施し、2021年3月に2020年の成果を発表した。この調査では、2020年6月30日時点で378社の企業から収集したデータを掲載しており、203社だった2018年から大幅に増加している。さらに、145社以上の企業が#VCHumanCapital pledge(誓約)に署名し、DEIのデータを提出することを約束した。

ざっくりとまとめるとデータからは、投資パートナーにおける多様性の改善は、主に女性投資家の採用と昇進によってもたらされていて、黒人やヒスパニック系の投資パートナーの公平な代表性にはほとんど進展がなかったことがわかる。

しかしながら、若手投資家の人口構成が多様化し、多様性を重視したタレントマネジメントや採用手法の導入が進んでいることから、楽観的な見方もできるようになった。業界の前進にはまだ先が長いが、今回の調査で明らかになった重要なインサイトと変化をいくつか紹介する。

多様性の改善に向けた取り組み

多様性および包括性の推進を社内で明確にする企業が増加し、50%の企業がこの課題に責任を持つスタッフやチームを擁している(2018年は34%、2016年は16%)。同時に、多様性戦略と包括性戦略も普及し、43%の企業が多様性戦略を導入(2018年は32%、2016年は24%)、41%が包括性戦略を導入している(2018年は31%、2016年は17%)。

この取り組みは多様性の改善につながる。専任のスタッフ、戦略、プログラムを持つ企業では、投資チームや投資パートナーの性別や人種の多様性が向上している。DEIの重要性が増していることも、より広範なエコシステムにつながっている。過去12カ月の間に、リミテッドパートナー(有限責任パートナー)や投資先企業からDEIの詳細を求められたと報告する企業が増えている。

人材の採用と育成に明るい兆し

ベンチャー企業は比較的規模が小さく、離職率は一般的に低いが、2020年には21%の企業がシニアレベルの投資担当者ポジションが増えたと回答し、43%がジュニアレベルのポジションが拡大したと回答している。ジュニアレベルの投資担当者の人口構成は、性別や人種の多様性が高くなっており、将来の投資パートナーの多様性を示すポジティブな先行指標となっている。

全体的にEI戦略が普及するにつれ、より多くの企業がDEIに焦点を当てた採用・雇用プログラムを開発するようになった。正式なプログラムを持つ企業は33%、非公式なプログラムを持つ企業は74%で、いずれも2016年から着実に増加している。また、企業は2018年に比べて、空席が出た際の候補者を外部に求めることが多くなったと回答している。

しかし、企業は依然として、採用活動の大部分を社内ネットワークで行っていて、(人口構成上)同質な採用結果に結びつくことが多い。外部の候補者を採用するためのパイプは細く、2018年と2020年の調査でほとんど変化は見られない。VC業界の同業者を頼る(78%)、会社の内部で採用をかける(59%)が最も多く挙げられた戦略だった。例外的に、LinkedInなどのサードパーティのウェブサイトやニュースレターへの掲載は、2020年には54%の企業が回答しており(2018年の37%から大幅に増加)、既存のネットワーク以外のより幅広い候補者にアプローチするための手段の1つもなっている。

未だ困難な包括性の評価

人材の獲得後は、包括的な文化と定着率がDEIの進捗を測る重要な指標となる。リーダーシップ開発、メンターシップ、定着に特化したプログラムを実施する企業が増えており、約3分の2の企業が非公式のプログラムを提供し(2016年と比べて20ポイント増)、20%の企業が正式なプログラムを提供していると回答している。

VC Human Capital Surveyで包括性を評価することは困難である。なぜなら、この調査は1社につき1人を代表として行っていて、1人では他の人が感じている包括性の度合いを回答することができないからである。2020年の調査では、企業自体が包括性をどのように評価しているかを測るために、新たな質問を追加した。41%の企業が包括性戦略があると回答した一方で、包括性を評価するために従業員を対象とした調査を行っていると答えたのは26%に留まった。

依然主観的な要素が昇進における重要な考慮事項

多様な人材が業界の最高レベルの意思決定者になるためには、キャリアアップのための十分に構造化され、一貫して適用されるポリシーが欠かせない。昇進に焦点を当てた正式なDEIプログラムを提供していると回答した企業は約20%(2016年の5%から増加)、非公式なプログラムを提供している企業は65%(2016年の39%から増加)である。

昇格に焦点を当てたDEIプログラムは広まっているものの、主観的な要素は依然として昇格決定の重要な考慮事項であり、不平等で偏った結果につながる可能性がある。

ほぼすべての企業が、昇進を検討する上で「ファンドのパフォーマンスへの貢献」(90%)と「取引の組成」(82%)が「非常に重要」または「重要」な要素であると回答した。しかし、最も重要と回答されたのは「ソフトスキル」であり、94%の企業が「非常に重要」または「重要」と回答している。このような主観的な要素は、無意識のバイアスが入り込む可能性が高く、より明確にパフォーマンスに関連する客観的指標による重みづけを損なう可能性がある。

推進力の維持

2020年の調査結果は、社会正義と人種的公平性が国を挙げて注目され、政策立案者がサービスの行き届いていないコミュニティからの資本へのアクセスを向上させようとし、VC業界が新たにDEIに着目し始めた1年の直後という時宜を得たものとなった。今回の調査は、VC業界がどこに注力すべきかを示すとともに、DEIにフォーカスした取り組みの共通のニーズを思い出させる重要な指摘となった。

データは、疎外された複数のコミュニティを代表する人を見ると、1つの人口統計要素内の進歩がより小さくなる可能性があることを示している(例えば女性である投資パートナーの割合は着実に増加しているが、有色の女性である投資パートナーの割合は増加していない) 。

DEIの進歩のペースは遅く、不均一な部分もあるが、楽観できる根拠もある。4月6日、NVCA、Venture Forward、Deloitteは、最新の調査結果をさらに検討し、DEIの課題、機会、業界の戦略について議論するために、業界のリーダーとの討論会を開催した。社内での、また公の場における業界の同業者との建設的な会話を優先事項と考え、協調的な精神で行動し、熟考した具体的なDEI戦略を採用し、意欲的かつ緊急性を持って行動する企業が増えている。

業界がDEIの取り組みに対して勢いを持ち続け、結果を出すことができれば、有意義な進展につながる転換点に到達し、今後の調査に反映されることになるだろう。

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(文:Maryam Haque、Bobby Franklin、翻訳:Dragonfly)

ベルファストの現状と展望について8人の投資家、創業者、経営者に聞く、サイバーセキュリティとフィンテックが旋風を巻き起こす

ザ・トラブルズと呼ばれた北アイルランド紛争の終結以降、ベルファストの状況はずっと上向いてきた。北アイルランド経済省によると、この20年でインフラの改善が進み、タイタニック号が建造された造船所や「Game of Thrones(ゲーム・オブ・スローンズ)」のロケ地などの観光名所のおかげで観光ブームが起き、2016年以来、雇用率は安定して上昇を続けている。また、有名なクィーンズ大学があることや、生活費が低いことも魅力だ。さらに、ジェントリフィケーション(富裕化)が起き始めており、これは、北アイルランドの資本価値が上昇していることを示している。

英国のTech Nationの調べによると、ベルファストのスタートアップシーンでは、2018年現在、就労者の26%がテック関連であり、ベルファストは2021年に最大の成長が見込まれる英国の都市の1つに数えられている。

以上を踏まえた上で、テック関連スタートアップエコシステムの内部の現状を知るために、TechCrunchはベルファストの創業者、投資家、経営者に対してアンケート調査を実施した。その回答によると、ベルファストは、フィンテック、アグリテック、ホスピタリティテック、新興テック、サイバーセキュリティ、SaaS、メドテックといった分野に強い。また、アイルランド生え抜きのインキュベーター兼アクセラレーターとして、Ignite NIが出現している。

アンケートの回答者が言及した興味深いスタートアップには、CropSafe(クロップセーフ)、SideQuest(サイドクエスト)、Aflo(アフロ)、Material Evolution(マテリアル・エボリューション)、Cloudsmith(クラウドスミス)、LegitFit(レジッドフィット)、Continually(コンティニュアリ)、Gratsi 54(グラスティ54)、North Design(ノースデザイン)、Animal Manager(アニマル・マネージャー)、Kairos Sports Tech(カイロス・スポーツ・テック)、Budibase(ブディベース)、Incisiv(インサイシブ)、Automated Intelligence(オートメイテッド・インテリジェンス)、loyalBe(ロイヤルビー)、Konvi(コンヴィ)、Lane 44(レーン44)、Teamfeepay.com、Axial3D(アクシアル3D)、Neurovalens(ニューロバレンズ)、Payhere(ペイヒア)、Civic Dollars(シビック・ダラーズ)などがある。

ベルファストのテック関連投資は、ソフトウェアとライフサイエンス分野は活発だが、保守的でリスクを回避する傾向が強い側面があった。しかし、それも改善されてきており、海外からの直接投資(FDI)がエコシステムの主要な成長要因となっている。

ブレグジットが北アイルランドに与える影響については不確定要素がまだ残っているが、ある経営幹部は次のように語った。「うまく対処すれば、ブレグジットをフルに活用できるでしょう。北アイルランドは、EUと英国の両方に属する位置付けとなるため、市場ではいろいろとメリットがあります。それを活かさない手はありません」。

ある創業者は「地元の著名な大学と海外からの直接投資の急増により、優秀なエンジニアが惹きつけられている」ことに世界中の投資家が気づいているため、ベルファストに流れ込む民間資本は増えると予測している。生活費が安いこともあって人材がこの街に留まるようになっており、そのおかげでテック業界が羽ばたける環境が生み出されていると、この創業者はいう。

以下の方々が、TechCrunchのインタビューに応じてくれた。

コーマック・クイン氏、loyalBe、創業者兼CEO

貴社のテックエコシステムの中で特に強い分野を教えてください。どんなことに対して最もワクワクしますか。逆に、欠けていることは何ですか。

当社の強い分野は、サイバーセキュリティと、(サイバーセキュリティほどではありませんが)フィンテックです。さまざまな分野で新しいスタートアップがいくつも創業されているのを見るとワクワクします。従来、ベルファストにはテック関連スタートアップはそれほど多くありませんでしたが、それがまさに今変わりつつあります。これには大いに期待しています。私はこれまで、テック関連会社を起業するにはベルファストから米国に移転する必要があると思っていましたが、その必要はなくなっており、標準的な方法でもなくなっています。

ベルファストで最も興味深いスタートアップを挙げてください。

いくつかありますが、Cloudsmith(開発ツール)、LegitFit(スケジューリング)、Continually(チャットボット / マーケティング)、Automated Intelligence(データ管理)あたりでしょうか。もちろん、これらは思いついた企業を挙げただけで、他にもたくさんあります。

ベルファストのテック関連投資家の特徴を教えてください。投資家が注目するポイントは何ですか。

ベルファストの投資家はいくらか保守的で、少し従来的なやり方に固執しているところがあります。100万ユーロ(約1億3000万円)以上を調達するつもりなら、外部の投資家に目を向ける必要があるでしょう。現時点では、残念ながら民間資本の量も十分とは言えませんが、優秀な人材もおり、生活費も安いため、投資額はさらに増大していくと思われます(家賃の高騰もなく、人件費も比較的安いため)。ベルファストでは、これから良い循環が始まるところだと思います。今から数年以内に、地元で多くのイグジットが生み出され、結果として、民間資本の流入がさらに増えることになるでしょう。

リモートワークへの移行が進む中、人々はベルファストに留まると思いますか。それともベルファストから出ていくのでしょうか。逆に、ベルファストに入ってくる人もいると思いますか。

パンデミック以前、ベルファストは成長していました。以前の状態に近い日常が戻ってくれば、この成長トレンドは継続すると思います。ベルファストは歴史的な問題を抱えていることもあって、長い間、人々が住みたがりませんでしたが、それも少しずつ変わってきています。街のあちこちに、学生寮、ホテル、おしゃれなアパートなどが、次々に出現しています。15~20年前のベルファストには、そのようなものはほとんどありませんでした。

ベルファストのスタートアップ業界の重要人物(投資家、創業者、弁護士、デザイナーなど)を挙げていただけますか。

Ignite NIのMD Chris McClelland(クリス・マクレランド)氏。ベルファストで最高のアクセラレータープログラムのメンターで、BrewBotの共同創業者。

Ignite NIのCOO Ian Browne(イーアン・ブラウン)氏。企業家で、ベルファストのスタートアップ業界のもう1人のメンター。

Mark Dowds(マーク・ダウズ)氏。Anthemisのベンチャーパートナー、Ormeau Baths(私見ではベルファストで最高のコワーキング・スペース)の共同創業者。

5年後、ベルファストのテック関連業界はどうなっていると思いますか。

今はブレグジットのため不確定要素の多い時期ですが、うまく対処すれば、ブレグジットをフルに活かすことができると思います。北アイルランドは、EUと英国の両方に属する位置付けとなるため、市場ではいろいろとメリットがあります。それを活かさない手はありません。地元の有名大学の存在と海外からの直接投資の急増に惹きつけられて優秀なエンジニアが集まっていることに、世界中の投資家が気づいているため、今後、ベルファストへの民間資本の流入量は増えると思います。生活費がかなり安い分、資本が(賃貸料などに使われることなく)広く循環できるため、テック業界が羽ばたける環境が生み出されています。

TechCrunchのグローバルStartup Battlefieldコンペに参加すべき企業を挙げていただけますか。

Cloudsmithです。

スーザン・ケリー氏、Respiratory Analytics、CEO

貴社のテックエコシステムの中で特に強い分野を教えてください。どんなことに対して最もワクワクしますか。逆に、欠けていることは何ですか。

サイバーセキュリティ、フィンテック、デジタル(メドテックは強い)は構築が必要です。Igniteのインキュベーターとアクセラレーターはすばらしいですが、貧困と貧弱なインフラという問題を抱える北西部への拡大が必要です。公的資金による支援はあるものの、分断化されており、容易には利用できない状態です。

ベルファストで最も興味深いスタートアップを挙げてください。

CropSafe、SideQuest、Aflo(私が創業したスタートアップ)、Material Evolution。

ベルファストのテック関連投資家の特徴を教えてください。投資家が注目するポイントは何ですか。

ベルファストのテック関連投資家は、かなり保守的で「中年白人男性(stale、pale、male)」が多く、リスクを回避する傾向がありますが、これも徐々に変わりつつあります。法定投資はかなり高コストで、米国式のモデルへシフトする必要があります。女性の数が少なすぎます。ソフトウェアに傾注しており、それ自体は良いことなのですが、ハードウェアへの投資に関してはリスク回避の傾向が強すぎます。Halo Business Angel Networkは少し堅苦しい感じがします。

リモートワークへの移行が進む中、人々はベルファストに留まると思いますか。それともベルファストから出ていくのでしょうか。逆に、ベルファストに入ってくる人もいると思いますか。

新型コロナウイルス感染症のため、大勢の人がベルファストと北アイルランド各地に戻ってきています。

ベルファストのスタートアップ業界の重要人物(投資家、創業者、弁護士、デザイナーなど)を挙げていただけますか。

Ignite NIは、同社の「Propelプログラム」(プリアクセラレーター)と「Acceleratorプログラム」を通じてスタートアップシーンを牽引しており、すばらしい仕事をしています。Clarendon、Techstart、さまざまなエンジェル投資家、Catalystなどがいます。また、Big Motiveは、重要なデザインエンジンです。

5年後、ベルファストのテック関連業界はどうなっていると思いますか。

Invest NIからの支援強化を受け、北アイルランド全体が、スタートアップエコシステムを介してアイルランドにリンクされたイノベーションハブになる可能性があります。

TechCrunchのグローバルStartup Battlefieldコンペに参加すべき企業を挙げていただけますか。

CropSafeです。

ライアン・クラウン氏、Hill Street Hatch、共同創業者

貴社のテックエコシステムの中で特に強い分野を教えてください。どんなことに対して最もワクワクしますか。逆に、欠けていることは何ですか。

当社が強いのはテック分野です。ホスピタリティ関連ベンチャーの起業方法を変えることにワクワクします。ベルファストの弱点は投資と投資家です。

ベルファストで最も興味深いスタートアップを挙げてください。

Payhere、Civic Dollars、Konviです。

ベルファストのテック関連投資家の特徴を教えてください。投資家が注目するポイントは何ですか。

北アイルランドには適切な投資家が不足しています。

リモートワークへの移行が進む中、人々はベルファストに留まると思いますか。それともベルファストから出ていくのでしょうか。逆に、ベルファストに入ってくる人もいると思いますか。

北アイルランドとベルファストは、生活費も安く、クオリティ・オブ・ライフは高いと思います。新型コロナウイルス感染症のため、大勢の人たちが、ロンドン、マンチェスター、ダブリンといった生活費の高い都市部を離れ、ベルファストへ移転してきています。

ベルファストのスタートアップ業界の重要人物(投資家、創業者、弁護士、デザイナーなど)を挙げていただけますか。

Chris McClelland(クリス・マクレランド)氏。

5年後、ベルファストのテック関連業界はどうなっていると思いますか。

好景気に沸いていると思います。

フェガール・キャンベル氏、Pitchbooking、創業者

貴社のテックエコシステムの中で特に強い分野を教えてください。どんなことに対して最もワクワクしますか。逆に、欠けていることは何ですか。

当社が強いのは、サイバーセキュリティ、SaaS、スポーツテックです。アーリーステージのさまざまなテック企業に投資しているときが最もワクワクします。プレシードレベルおよびシードレベルの企業がここ2、3年で急増しています。スケールアップ投資は弱いと思います。地元のスケールアップ企業が相対的に少ない状態です。米国本拠の企業からの大量の海外直接投資が流入してきています。

ベルファストで最も興味深いスタートアップを挙げてください。

スポーツテック分野では、teamfeepay.comが急成長しています。loyalBeはシードステージのフィンテック企業で、小売ロイヤルティプログラムを再発明するための壮大な計画を立てており、当社も常に注目しています。メドテックの中心的企業であるAxial3DやNeurovalensなどのレイターステージ企業もすばらしいビジネスを展開しています。

ベルファストのテック関連投資家の特徴を教えてください。投資家が注目するポイントは何ですか。

ベルファストには、エンジェル投資家と機関投資家が混在しています。彼らが注力している特定の業界を挙げるのは難しいですが、地元の大学が注目されていることもあって、いくつか強い分野があります。メドテックとサイバーセキュリティは、スタートアップシーンで特に目立つ存在です。

リモートワークへの移行が進む中、人々はベルファストに留まると思いますか。それともベルファストから出ていくのでしょうか。逆に、ベルファストに入ってくる人もいると思いますか。

ベルファストは、英国の他の地域と比較して生活費が安いため、大都市からベルファストへ移転してくるスタートアップが増えることになるでしょう。アーリーステージスタートアップの支援策もこのスタートアップの流入に一役買っています。また、ベルファストの街も、いつでもハイブリッド的な働き方に移行する準備ができています。街の中心部は徒歩15分で横断できるほどの広さですので、都市の中心部のオフィスにも気軽に立ち寄ることができます。

ベルファストのスタートアップ業界の重要人物(投資家、創業者、弁護士、デザイナーなど)を挙げていただけますか。

Invest NI:政府の支援機関。

Ignite NI:シードステージのアクセラレータープログラム。

UlsterBank Accelerator:アーリーステージのアクセラレータープログラム。

Aurient Investments:多様な投資ポートフォリオを持つエンジェル投資グループ。

5年後、ベルファストのテック関連業界はどうなっていると思いますか。

2017年~2020年の期間に創業した最強のシード企業がテックシーンで確固たる地位を築き、FDI(海外直接投資)企業の流入にも対抗できる存在になっていると思います。

ジャック・スパルゴー氏、Gratsi、共同創業者兼CEO

貴社のテックエコシステムの中で特に強い分野を教えてください。どんなことに対して最もワクワクしますか。逆に、欠けていることは何ですか。

強い分野:フィンテック、アグリテック、ホスピタリティテック、新興テック。

最もワクワクすること:支援(ファイナンス、メンタリングなど)が受けられること、起業と成長のコストが安いこと。

弱い点:英国やEU諸国から地理的に離れていること。

ベルファストで最も興味深いスタートアップを挙げてください。

loyalBe、Konvi、Lane 44です。

ベルファストのテック関連投資家の特徴を教えてください。投資家が注目するポイントは何ですか。

Ignite NI、Catalyst、Techstart、Ormeau Bathsなどのアクセラレーターによって起業支援が強化されています。

リモートワークへの移行が進む中、人々はベルファストに留まると思いますか。それともベルファストから出ていくのでしょうか。逆に、ベルファストに入ってくる人もいると思いますか。

ベルファストに入ってくる人たちが増えると思います。生活費が安く、リモートワークへの移行準備も整っているからです。

ベルファストのスタートアップ業界の重要人物(投資家、創業者、弁護士、デザイナーなど)を挙げていただけますか。

Ignite NIのChris McClelland(クリス・マクレランド)氏とIan Browne(イーアン・ブラウン)氏、  anthemisのMark Dowds(マーク・ダウズ)氏、loyalBeのCormac Quinn(コーミック・クイン)氏。

5年後、ベルファストのテック関連業界はどうなっていると思いますか。

英国とEUのテックハブとして確固とした地位を築いていると思います。

ブレンダン・ディグニー氏、Machine Eye Technology、創業者

貴社のテックエコシステムの中で特に強い分野を教えてください。どんなことに対して最もワクワクしますか。逆に、欠けていることは何ですか。

アグリテックと建設テックは、とりわけアイルランドと北アイルランドで大きな潜在性を有する分野です。これらの分野では、AIとデータを活用することによって、従来の強みと機会をさらに強化できます。

ベルファストで最も興味深いスタートアップを挙げてください。

Kairos Sports Tech、Budibase、Incisiv、Automated Intelligenceです。

ベルファストのテック関連投資家の特徴を教えてください。投資家が注目するポイントは何ですか。

相互につながりのある、またInvest NIとつながりのある多くのVC / ファンドがあります。Invest NIは強力な支援機関であり資金提供者です。Catalystはおそらくシステム全体で最も価値のある非営利支援機関です。投資対象は、ソフトウェアとライフサイエンスが中心ですが、他の分野にも広く投資されています。海外企業と国内企業の両方に注力しています。

リモートワークへの移行が進む中、人々はベルファストに留まると思いますか。それともベルファストから出ていくのでしょうか。逆に、ベルファストに入ってくる人もいると思いますか。

人々は都市部から車で1時間以内の農村地域へ移転すると思います。

ベルファストのスタートアップ業界の重要人物(投資家、創業者、弁護士、デザイナーなど)を挙げていただけますか。

Catalyst、Ormeau Baths、Raise Venturesです。

5年後、ベルファストのテック関連業界はどうなっていると思いますか。

テックシーンは急成長を遂げ、レイターステージに入る起業が増えると思います。

トーヤ・ワーノック氏、Lane 44、共同創業者

貴社のテックエコシステムの中で特に強い分野を教えてください。どんなことに対して最もワクワクしますか。逆に、欠けていることは何ですか。

ベルファストは、すばらしいビジネスチャンスと投資機会のハブとして成長しています。

ベルファストで最も興味深いスタートアップを挙げてください。

Gratsi、54 North Design、Animal Managerです。

ベルファストのテック関連投資家の特徴を教えてください。投資家が注目するポイントは何ですか。

SaaSです。

リモートワークへの移行が進む中、人々はベルファストに留まると思いますか。それともベルファストから出ていくのでしょうか。逆に、ベルファストに入ってくる人もいると思いますか。

ベルファストの生活費は安いため、多くの人たちが入ってくると思います。

ベルファストのスタートアップ業界の重要人物(投資家、創業者、弁護士、デザイナーなど)を挙げていただけますか。

Ormeau Bathsです。

5年後、ベルファストのテック関連業界はどうなっていると思いますか。

急成長していると思います。ベルファストは今、ジェントリフィケーションの時期を経験しています。

TechCrunchのグローバルStartup Battlefieldコンペに参加すべき企業を挙げていただけますか。

Lane 44、Animal Manager、Gratsiです。

アラン・カールソン氏、Cloudsmith、CEO

貴社のテックエコシステムの中で特に強い分野を教えてください。どんなことに対して最もワクワクしますか。逆に、欠けていることは何ですか。

強い分野は、セキュリティ、フィンテック、メドテックです。開発ツールにはワクワクします。

ベルファストで最も興味深いスタートアップを挙げてください。

CloudsmithとAxial3Dです。

ベルファストのテック関連投資家の特徴を教えてください。投資家が注目するポイントは何ですか。

投資家環境の規模は小さいものの、野心のある創業者がいます。人気のある投資対象分野は、メドテックとセキュリティでしょうか。

リモートワークへの移行が進む中、人々はベルファストに留まると思いますか。それともベルファストから出ていくのでしょうか。逆に、ベルファストに入ってくる人もいると思いますか。

わかりません。どちらもある程度増えるのではないでしょうか。

ベルファストのスタートアップ業界の重要人物(投資家、創業者、弁護士、デザイナーなど)を挙げていただけますか。

Techstart Ventures、Ignite NI、Catalyst、Clarendon Co-Fund、Denis Murphy(デニス・マーフィ)氏、Colm McGoldrick(コルム・マクゴールドリック)氏、Alastair Bell(アラステアー・ベル)氏。

5年後、ベルファストのテック関連業界はどうなっていると思いますか。

規模も質もかつてないレベルになっていると思います。

TechCrunchのグローバルStartup Battlefieldコンペに参加すべき企業を挙げていただけますか。

VideoFirstです。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:ベルファスト北アイルランドブレグジットインタビュー

画像クレジット:benkrut / Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

技術シーズ向けアクセラレータープログラム「BRAVE2021 Autumn」が参加スタートアップ募集開始

技術シーズ向けアクセラレータープログラム「BRAVE2021 Autumn」が参加スタートアップ募集開始主にシード、アーリー期のディープテック・スタートアップへの出資や支援を行う独立系ベンチャーキャピタル(VC)Beyond Next Venturesは6月9日、アクセラレータープログラム「BRAVE」(ブレイブ)の2021年秋コース参加者の募集を開始すると発表した。

高度な技術シーズを事業化し成長させることを目標に、2016年にスタートした「BRAVE」は、これまで6回開催され、102チームが参加し、うち45%が起業に成功。卒業後の累計資金調達額は121億円にのぼる日本最大級のプログラム。

デモデイで優秀な成績を収めたチームには、最大200万円の賞金か、金額相当の事業化支援が贈られる。さらに、パートナー企業からの特別賞のほか、総額1億円規模の助成金への推薦、Beyond Next Venturesからの出資が受けられる。

プログラム概要およびエントリー方法

  • 応募期間:2021日8月27日午後11時59分まで
  • 応募資格:高度な科学技術シーズを持つ研究チーム・スタートアップ・カーブアウトを狙うチーム(学生、社会人、国籍、起業の有無は問わない)
  • 募集領域:アグリ・フード、AI、環境・エネルギー、メディカル・デジタルヘルス、バイオ・創薬
  • プログラム期間:2021年10月2日から11月20日までの約2カ月間。デモデイは12月22日に予定
  • BRAVE2021 Demo Day開催日:2021年12月22日
  • BRAVE2021 Demo Day開催場所:日本橋ライフサイエンスビルディング(オンラインで開催に変更する可能性がある)
  • 参加費:無料
  • 申し込み方法BRAVE公式サイトの「APPLY」ボタンより応募

賞金・特典

  • 最大200万円の賞金または金額相当の事業化支援を授与
  • 総額1億円規模の助成金への推薦。Beyond Next Venturesがプロモーターを務める助成金「START:研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム」(JST START)、NEDO STSなど
  • パートナー企業からの特別賞
  • Beyond Next Venturesからの出資

またBRAVEの特徴としては、同社が保有する2000名以上の経営人材プールを活用した経営幹部候補人材とのマッチング、ビジネス・技術・知財・法律などのスペシャリストによる事業プラン・事業計画作成サポート・ピッチ大会/Demo Dayに向けたプレゼンのアドバイスなどの実戦的メンタリングなどがある。BRAVEの卒業生(BRAVE Alumni)だけが参加するコミュニティへのアクセスも可能となるほか、BRAVEのコンセプトに共感しスタートアップとの連携機会を模索しているパートナー企業とのマッチングも実施される。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:アクセラレータープログラム(用語)Beyond Next VenturesVC / ベンチャーキャピタル(用語)日本(国・地域)

Coral Capitalが投資先スタートアップ向けに新型コロナワクチン合同職域接種の開始を発表

Coral Capitalが投資先スタートアップ向けに新型コロナワクチン合同職域接種の開始を発表

約150億円を運用するシードステージのベンチャーキャピタル「Coral Capital」(コーラル・キャピタル)は6月4日、投資先スタートアップ企業のためのワクチンの職域接種を実施する体制が整ったことを発表した。これは、職域での新型コロナワクチン接種を開始する政府方針に沿う取り組み。

Coral Capitalでは、投資先約80社のスタートアップの正社員、業務委託スタッフ、インターン、その家族を対象に、すでに接種希望者の集計を完了。1800人の希望者リストを作成した。

同社の投資先で、都内を中心に9拠点の内科クリニック「キャップスクリニック」を展開するCAPSグループの協力で医療従事者を確保した。政府からのモデルナ製ワクチンの配布を受け次第、6月21日を目途に接種を開始する予定。

政府方針に従い職域接種に対応できる大手企業と異なり、小規模なスタートアップは医療従事者や会場の確保に苦労している現状を受け、スタートアップの従業員とその家族に職域接種の機会を提供することには、社会的に大きな意味があるとCoral Capitalは考えた。同社はこの合同職域の意義として、「効率化の知見共有」「新興企業の救済」「イノベーションの加速」を掲げている。つまり、ITリテラシーが高いスタートアップ従業員と効率のよい合同接種オペレーションを構築し、その知見を自治体や中小企業の合同職域接種に提供できること、福利厚生が充実していない中小企業に合同接種モデルをいち早く構築し摂取率向上を加速できること、日本の未来を作るスタートアップとその家族の健康を守り、社会のイノベーションを加速することだ。

Coral Capitalでは、投資先以外のスタートアップ従業員と家族に合同職域接種の機会を提供しようと、希望するパートナーVCの募集を行っていたが、すでに締め切られている。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Coral Capital(企業)新型コロナウイルス(用語)ワクチン(用語)日本(国・地域)

名称変更したToyota Venturesが先行技術やカーボンニュートラルに取り組む企業への約330億円投資を発表

トヨタ自動車の独立系ベンチャーキャピタルファンドであるToyota AI Ventures(トヨタAIベンチャーズ)は「AI」がなくなり、単にToyota Ventures(トヨタ・ベンチャーズ)として生まれ変わった。この新名称を記念して、3億ドル(約330億円)の資金を追加投入し、Toyota Ventures Frontier Fund(トヨタ・ベンチャーズ・フロンティア・ファンド)とToyota Ventures Climate Fund(トヨタ・ベンチャーズ・クライメイト・ファンド)という2つのファンドを通じて、将来の実用化が期待される先端技術や、カーボンニュートラルに取り組む企業に投資する。

この2つのファンドの規模はそれぞれ1億5000万ドル(約165億円)ずつで、Toyota Venturesの運用資産は5億ドル(約550億円)を超えることになる。これまでAI、自動運転技術、モビリティ、ロボティクス、クラウドを中核としてきた同社の投資分野は、Frontier Fundへの新たに資本注入により、スマートシティ、デジタルヘルス、フィンテック、エネルギーなどの分野も加わることになる。投資アプローチは変わらないが、投資先として検討するスタートアップ企業の範囲が広がるわけだ。

「AIの全体に占める割合が縮小するような感じです」と、Toyota Venturesのマネージングダイレクターを務めるJim Adler(ジム・アドラー)氏はTechCrunchに語っている。「Frontier Fundの最初のミッションは、トヨタにとっての次を発見することです。トヨタは1930年代には自動車を中核にしていましたが、今後は他の事業でも成長していくでしょう。スタートアップは市場での実験であり、我々はイノベーションがどこから生まれるかを理解し、それに慣れることができるのです」。

グローバル企業としてのトヨタは、37万人以上の従業員を雇用し、金融テクノロジーのように投資から会社全体が利益を得ることができるさまざまな事業部門をカバーしている。Frontier Fundはモビリティの域から一歩踏み出したものだ。エマージングテクノロジーを市場にもたらすだけでなく、顧客として、あるいは買収によって、新たなイノベーションを引き込むことを目的としていると、アドラー氏は語っている。

「私が思うに、この会社のビジョンは、機械はこれからも存在し、人間のできることを増幅させるものだということです。そしてトヨタは、機械が人間を増幅して社会に利益をもたらすということを理解しています。これは非常に陳腐に聞こえるかもしれませんが、トヨタは本当にそれを信じているのです」と、アドラー氏はいう。

同じ意味で、新たに設立されたClimate Fundは、トヨタが2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を加速させるのに役立つスタートアップ企業に投資することを目指している。トヨタは、何年も前から水素への投資を行っており、日本の燃料会社であるENEOSとの最近の提携もその一環だ。だが、アドラー氏によれば、カーボンニュートラルの達成に役立つものであればどんな技術でも受け入れるという。

「再生可能エネルギーが大きな役割を果たすと、私たちは考えています」と、アドラー氏は語る。「水素の製造、貯蔵、流通、利用が重要な意味を持つことになるでしょう。炭素の回収と貯蔵も重要です。私たちは水素に関して何十年もやってきましたが、もしかしたら状況が変わるかもしれないので、独断的になるつもりはありません。水素はこれまで市場がなかったため、スタートアップコミュニティでクラウドソーシングされていませんでした。しかし、市場は生まれつつあると思います」。

このファンドは、アーリーステージの資金調達を希望する起業家からの売り込みをウェブサイト上で受け付けている。Toyota Venturesはまた、製品開発から多様性や人材採用まで、あらゆる面で助言を求める創業者のためのリソースとして、新しいアドバイザー・ネットワークと協力することも発表した。

Boxbot(ボックスボット)の共同創業者でCEOのAustin Oehlerking(オースティン・オーラーキング)氏は、声明で次のように述べている。「Toyota Venturesは、2018年のシードラウンドに投資していただいて以来、Boxbotにとってかけがえのないパートナーです。コンセプトから製品 / 市場適合までの道のりにおいて、複雑で実存的な課題を乗り越えるために、彼らは大きな力となって私たちを助けてくれました。ジムとチームは、ベンチャー企業との提携を成功させるためには、コーポレートベンチャーキャピタルがどのように機能すべきかをよく理解しています」。

アドラー氏は、彼と彼のチームが起業家出身であることから、テーブルの反対側がどのようなものであるかを理解していると、同氏はいう。Toyota Venturesがアーリーステージのスタートアップに焦点を当てているのは、そこから最も興味深いイノベーションが生まれると信じているからだ。

「アーリーステージのベンチャーキャピタルは未来への望遠鏡だと、私は強く信じています」とアドラーはいう。「そうして私たちは、すべての人々のためになる価値のあるイノベーションを見つけることができるのです」。

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タグ:トヨタ自動車Toyota Ventures日本ベンチャーファンドカーボンニュートラル

画像クレジット:Toyota Ventures

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

独立系ベンチャーキャピタル「ゼロイチキャピタル」が1号ファンド設立、ファンド規模は10億円

独立系ベンチャーキャピタル「ゼロイチキャピタル」が1号ファンド設立、ファンド規模は10億円

独立系ベンチャーキャピタル「ゼロイチキャピタル」は、2021年5月にインキュベイトファンドLP投資事業有限責任組合からの出資を受け、同社運営によるゼロイチキャピタル1号投資事業有限責任組合を設立。投資活動を開始したことを発表した。ファンド規模は10億円で、投資対象は創業前からシード期のスタートアップ。

ゼロイチキャピタルは、「創業前後のインターネット/研究開発型スタートアップのファーストラウンドに投資を行う独立系ベンチャーキャピタル」として、スタートアップのシリーズAラウンドを早期に実現させ、成長軌道に乗せることを目標にしている。

SDGs達成を目指す人と企業の変容を踏まえ、「社会に大きな改革をもたらすインパクトの大きなテーマ」に取り組むスタートアップや起業家を支援するというゼロイチキャピタルが、何を投資領域と定め、どのようなスタートアップや投資家を支援したいかを、次のように説明している。

  • eコマース:オンライン・オフラインにおける購買体験やロジスティクスの効率化、POSなどのEC周辺領域のアップデートに取り組むスタートアップ
  • エンターテインメント:新しい世代の感覚を捉えた圧倒的な体験をオンライン・オフラインで実現することに挑む「新進気鋭の」投資家
  • デジタルヘルス:医療業界経験者で、超高齢化社会の問題に対処する現場に根ざした事業展開仮説を持ち、先端医療やプライマリケーケアに取り組む起業家
  • 産業DX:特定産業が抱える「ペイン」(課題)を誰よりも理解し、DXによって産業の高度化と効率化を実現しようとする「志の高い」起業家
  • ディープテック:アカデミアや研究機関において産業構造を転換し得る最先端研究に取り組み、その社会実装を志す人材。ビジネス面で創業チーム組成を支援し、起業へつなげる

ゼロイチキャピタル代表パートナーの種市亮氏は、楽天に入社後、楽天市場出店企業のコンサルティング業務、CVC部門の立ち上げ、さらに投資先のECおよびデジタルマーケティングの仕組み作りをサポートしてきた経験を持つ。その後は、独立系ベンチャーキャピタルのインキュベイトファンドへの参画などを経て、ゼロイチキャピタルを2021年6月に創設した。その豊富な経験を活かし、事業プラン立案、創業、戦略、資金調達、事業開発、組織・人材、経営管理と多岐にわたる起業家の課題に、「徹底的なハンズオンスタイルで起業家と一緒に汗をかきながら伴走いたします」とのことだ。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:ゼロイチキャピタル(企業)VC / ベンチャーキャピタル(用語)日本(国・地域)

インターネットファーストの創業者に向けたBanana Capitalのデビューファンド

度々話題になるツイートからTurner Novak(ターナー・ノヴァック)氏を知る人も多いかもしれないが、同氏は常にミームメーカーとして活躍していたわけではない。

米国の地でシングルマザーに育てられたノヴァック氏。経済的な事情からインターネットにアクセスできないことも多々あった。あらゆるインターネット会社のお試しサービスを活用しながら乗り切り、トライアル後はインターネットがない状況が何カ月も続いたこともある。このときの経験こそが、同氏とテクノロジーとの関わり方を形成してくれたと同氏は振り返る。

「インターネットがいかに影響力の強いものであり、重要であるかを実感しました。またその時の経験のおかげで効率的な使い方を学ぶことができました」と同氏はいう。

そして現在、投資家となったノヴァック氏はその理念に基づいた会社を立ち上げた。Banana Capital(バナナキャピタル)はウェブ上に存在するコンシューマーテック系の創設者を見つけて資金調達する会社である。応募超過となったデビューファンドは999万ドル(約10億円)で、平均的な小切手の額は2万5千ドル(約270万円)から30万ドル(約3300万円)。Banana Capitalへの投資家にはWinnie(ウィニー)の共同創業者であるSara Mauskopf(サラ・マウスコフ)氏、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)のジェネラルパートナーであるSriram Krishnan(シュリラーム・クリシュナン)氏、GGVのマネージングパートナーであるHans Tung(ハンズ・タング)氏などが含まれる。またTwitter(ツイッター)のミームアカウントであるVC Starter Kit(VCスターター・キット)もLPとなっている。

ノヴァック氏は幅広い消費者セクターへの投資を予定しているが、中でも特にソーシャル、医療、eコマース分野におけるアーリーステージのスタートアップに関心を持っており、0.2〜3%の所有権を目標としているという。それと比較して、同じ運用資産を持つプレシードステージのCleo Capital(クレオ・キャピタル)は、ラウンドのリードと15〜20%の所有権を目標としている。

長期的にどのステージでプレーするかの柔軟性を持たせるため、同氏はラウンドをリードするのではなく、低い所有権を積極的に狙うという選択をしたという。

ミームとバナナの関係性

ノヴァック氏はBanana Capitalをインターネットファーストのファンドと表現している。この言葉はしばしばバズワードになるが、地理的なものではなくインターネットによって構築されたネットワークがどのようなものなのか、同氏の実績を見ればその信憑性は疑う余地もない。

ノヴァック氏のあり方は、同氏のミームに最もよく表れている。同氏は2020年6月にシリコンバレーを揺るがした「Eye Mouth Eye」キャンペーンに参加し、投資家の注目を集めるのはFOMO(取り残されることへの恐れ)と誇大広告であることをミーム文化を使って説明した。同氏はTwitterやTikTokでテクノロジーに関するミームを投稿し続けているひと握りの投資家の1人であり、オーディオソーシャルアプリClubhouse(クラブハウス)とその資金調達者に関するシリーズを繰り返し投稿している。スタートアップがVCに売り込む様子を撮影した模擬動画はTwitterで18万6200回以上再生され話題となり、TikTokでも何度か再生されている。

単なるスパイスのような役割を果たしているツイートもあるが、ミームはこの新進ファンドマネージャーにとってある種の戦略となっている。例えば、同氏の模擬ピッチ動画がきっかけで、ある企業への投資が実現したことがある。ツイート後に創業者から直接メッセージが届き、キャップテーブルの空き枠に招待されることも少なくない。この戦略はディールフローにおいての同氏の差別化の1つとなっている。Banana Capitalのポートフォリオには、Flexbase(フレックスベース)、Skillful(スキルフル)、Bottomless(ボトムレス)など11の投資先が存在する。

「インターネットの文化やミームを理解し、ウィットやユーモアを楽しみそれを評価してくれる人たちが自然と私の投資先になっています。こういった人たちはおそらく直感的な投資感覚を備え持っているタイプなので、確かにその方向に偏っているかもしれません」。

同氏は多様な創業者への投資に関する明確な目標や義務については話していないものの、Gelt VCでは資本の41%を女性のCEOに提供したという実績を挙げている。現在までにBanana Capitalのポートフォリオの創業チームの65%に非白人の創業者が含まれ、50%のチームに複数の性別が含まれている。

ノヴァック氏は当面、ミシガン州のアナーバーに住み続ける予定でいるが、成長著しいハイテクの中心地であるマイアミを無視できないでいるようだ。URLジョークはさておき、同氏の住所はいわばインターネットだと言えるのだろう。

「私のネットワークはサンフランシスコやニューヨークにあるわけではなく、単にインターネット上にいる人々なのです。それが私の人との出会い方です」。

同氏は自身の会社をBanana Capitalと呼ぶ理由を説明してくれた。第一に、バナナは世界で最も消費されている果物の1つであり、歴史の中で何度も改良され、生物工学的なプロセスを経てきているため、同氏の投資対象が消費者分野であることと繋がりがあるためだ。

第二の理由?同氏によるとそれは「果物のファンドなんて存在しないからです。私は人よりも少し真面目じゃないため、名前にそれが反映されているというわけです」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Banana Capital投資ファンドミーム

画像クレジット:Yulia Reznikov / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)