スタートアップの資金調達における明白な男女格差を克服する方法

著者紹介:Ximena Aleman(キシメナ・アレマン)氏は南米のオープンバンキングプラットフォームであるPrometeo(プロメテオ)の共同創業者兼最高ビジネス開発責任者。

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ベンチャーキャピタル投資において、女性創業者は今でも相変わらず男女格差の問題に直面している。他の領域(例えばテック業界全体の女性の数など)では男女格差は解消の方向に向かっているが、資金調達においては格差が解消される兆しが一向に見えない。2012年以降、女性創業者の企業が調達したVC出資額はほとんど変わっていない

フィンテック業界では特にこの男女格差の問題が顕著だ。過去10年間のフィンテック投資額全体のうち、女性創業社のフィンテック企業が調達した額はわずか1%にすぎない。もともと男性偏重の傾向が強い2つの業界、すなわちファイナンスとテクノロジーを融合させたものがフィンテックであることを考えると、この数字も不思議ではない。しかし、この数字は決して、女性がこの分野で優れた仕事をしていないという意味ではない。女性創業者も相応の公平なVC出資を受けてしかるべきだ。

短期的に見ると、現在の投資環境においてVC資金調達を成功させる確率を高めるために女性創業者にできることもある。例えば、コミュニティと自分を支援してくれる人たちの力を借りる、成功するために必要な自分を信じる力を育む、といったことだ。しかし、長期的に考えると、女性起業家に公平な機会を与えるには、根本的な変化が必要だ。VCファンドは、経営幹部を含め、意思決定が可能な役職に就く女性の数を増やすよう、より一層の努力をする必要がある。

この記事では、VC投資における男女格差の現状と格差を是正するために、創業者、出資者、およびファンド自体ができることについて考察してみたい。

公平な競争条件とはほど遠いベンチャーキャピタルの現状

VCによる2019年の全出資額のうち、女性創業者が獲得したのは3%未満であり、創業者に1人でも女性が含まれるスタートアップに出資した米国のVCは全体の5分の1にすぎない。また、平均出資額の規模で比較しても、女性創業企業または共同創業者に女性が含まれる企業は男性のみの創業者によるスタートアップの半分以下である。創業者コミュニティに占める女性の割合が増えていることを考えると、女性創業者がその割合(創業者の約28%は女性である)に応じた調達資金を獲得できていないというのはゆゆしき問題だ。これに人種と民族性の要素を加味すると、数字はさらに厳しいものとなる。2009年以降の調達資金総額のうち黒人女性創業者が獲得したのはわずか0.6%であり、ラテン系女性創業者に至っては全投資額の0.4%しか獲得していない。

統計の数字は厳しい現実を示しているが、筆者はこうした男女格差を個人的に体験したことがある。例えば、私の目の前で、私の共同創業者に「どうして君ではなくこの女性が話をしているのかね」と尋ねたVC投資家がいた。あるいは、出資者となる可能性のある投資家が私の共同創業者に、「君はこの女性とビジネスを始めるつもりかね」と尋ね、「いや、仕事終わりに君が飲みに行く相手を確認しておきたかったのでね」と付け加えたこともある。

こうした話は、VC投資家たちが彼らのポートフォリオ企業の創業チームに男性がいることを当然のこととして期待しており、無意識であれ意識的であれ、経営陣の中の女性の意見より男性の意見を重視することが多い。

では、もしあなたが女性創業者で、資金を調達するためにVCの前でプレゼンする必要があるとしたら、どのような手順を踏めば無事資金調達に成功できるだろうか。

女性として資金を調達する

このように女性にとって圧倒的に不利と思える環境ではあるが、それでもVCからの資金調達を成功させるために女性創業者ができることはいろいろとある。まずは、自分のコミュニティと自分を支援してくれる人たち(メンターやロールモデルがいれば理想的だ)のネットワークを存分に活用して、可能性のある出資者に自分を紹介してもらうようにする。あなたのビジネスをよく理解していて信頼している人たちなら、喜んで協力してくれるだろう。誰かから個人的に推薦された人物となれば、VC側のあなたに対する見方も随分と違ってくるはずだ。

強力な支援者と呼べるような人がいない場合は、女性創業者やスタートアップグループを探して自分のコミュニティの構築を始めることだ。例えば、成長企業の女性リーダーたちのグローバルネットワークであるNext Women(ネクスト・ウーマン)や、テック業界で働く女性同士をつなぎ支援することをミッションとする草の根団体であるWomen Tech Founders(ウーマン・テック・ファウンダーズ)などを活用できる。

資金調達を成功させる鍵は自信を持つことだ。売り込み、プレゼンテーション、交渉スキルなど、すべてにおいて完璧である必要がある。こうした分野でトレーニングが必要だと思うなら、ワークショップか指導プログラムを探して、資金調達のプレゼンテーションを行う前に必要なスキルを習得しておこう。

男性のVCや出資企業の幹部と話していると、こちらが女性であるために差別的な対応を受けていると感じることがあるかもしれない。そのような場合は、自分を信じる気持ちと内面の強さが重要となる。自分が有望で信頼に値する創業者であることを彼らに信じさせる唯一の方法は、あなた自身がそう信じることだ。

結局のところ、現代の女性創業者たちは、女性としてVCからの資金調達を受ける初めての世代であると認識する必要がある。それは本当に大変なことかもしれないが、エキサイティングな体験でもある。無意識の偏見に直面しても、少しずつ分かってもらうしかないと考えることが不可欠だ。男性の共同創業者にすべて任せてしまっているようでは、次世代の女性たちの成功は期待できない。

女性VCが増えれば女性創業者の調達額も増える

確かに、女性創業者が個人レベルで取り組めることはある。しかし、さまざまな障害を乗り越えるにはベンチャーキャピタル自体が内部から変革しなければならない。女性創業者の資金調達額が男性創業者に比べて少ない最も大きな理由は、VCファンド内で女性が占める割合が極端に少ないからだ。

Harvard Business Review(ハーバード・ビジネス・レビュー)の調査によると、投資家は投資の判断を性別に基づいて行い、女性に対して男性とは異なる質問をすることが多いという。男性投資家から真剣に受け止めてもらえず、結果として価値ある投資対象とみなされない女性企業家の話は枚挙にいとまがない。VCの経営陣にはこうした男女格差があるため、資金調達における男女差別を是正する方法として、女性創業者に特化したファンドが出現している。このようなVCは、女性創業者の企業だけでなく黒人創業者の企業にも投資することが多いことは注目に値する。VCコミュニティは、女性および人種的マイノリティーを中心とする投資家を受け入れるだけでなく、コミュニティ全体として、経営幹部により多くの女性リーダーを登用する必要がある。

VCにおける男女平等はビジネスにも有利

Prometeo(プロメテオ)のチームでは創業初日から、意思決定権を持つ役職に男性と女性の両方を配属するよう協力して取り組んできた。創業チームと経営幹部に女性を含めることは、同社において、無意識の偏見に対抗できるという意味でも、よりダイナミックな労働環境を作るという意味でも、重要な役割を果たしてきた。そうした環境では、思考の多様化によってビジネス上の意思決定の質が向上するからだ。

VCファンド内部と創業者コミュニティの両方で男女平等の取り組みを進めることは、収益向上にも良い結果をもたらす。実際、Boston Consulting Group(ボストン・コンサルティング・グループ)の調査によると、1ドルの投資に対する利益率は、女性創業者のスタートアップで78%、男性創業者の企業では31%となっている。

南米は、女性創業者が獲得するVC出資額がVC全体の投資額に占める割合が世界一高い地域だ。そのため、女性が南米のフィンテック革命を主導したことも驚くには当たらない。経営幹部に占める女性の割合を増やすことは、結果的に、ビジネスにも良い結果をもたらす。

VCファンドにおける男女格差を軽減するのは容易なことではないが、是が非でも実現する必要がある。VC内部の改革と外部的な取り組み(コミュニティの構築、トレーニングの機会、女性中心の支援ネットワークなど)により、最終的にはすべての人に公平なVC活動の実現に向けて歩を進めることができる。

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タグ:中南米 差別

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(翻訳:Dragonfly)

ソフトバンク孫正義氏「手元キャッシュ8.3兆円、楽観的だが短期的には突発事態も予測」

日本のテクノロジーコングロマリット、SoftBank(ソフトバンク)の創業者で会長、CEO(最高経営責任者)の孫正義氏は、この1、2年大波乱を経験した。しかし今回のDealBookでのインタビュー(The New York Times記事)で孫氏は「自分が復帰してからグループは黒字になった」という点を強く主張した。

米国時間11月17日、バーチャル開催されたDealBookカンファレンスが配信され、孫正義氏は東京から参加してTikTokの今後を含め、幅広い話題について語った。ソフトバンクはTikTokの親会社、ByteDanceの大口投資家であるため当然見通しは楽観的だ。一方、ソフトバンクが投資失敗で数十億ドル(数千億円)を失ったWeWorkの追放された共同ファウンダーであるAdam Newman(アダム・ニューマン)氏については「いつか彼は大成功するだろうと強く信じています」と述べている。一方、孫氏が大規模な資産売却を実行したことにより、ソフトバンクには「手持ちキャッシュが800億ドル(約8兆3200億円)ある」として臨機に大型投資する能力に不安がないことを強調している。

孫氏の発言をリアルタイムで見なかった読者も多いと思うので、ハイライトを紹介したい。孫氏は「楽観的だが短期的には悲観的事態も予測」しているらしい。

新型コロナウイルスパンデミックの影響

孫氏は去る2020年3月、新型コロナウイルス(COVID-19)に対する見解をツイートした後、日本の医療専門家からパニックを引き起こそうとしたと強く批判されたと語った。

その後ソフトバンクは、日本最大級の民間検査施設の運営をスタートした。日本は人口1億2650万人で、現在1日あたり約1300件の新規感染が確認されている(米国は人口3億2800万人に対して、1日あたり16万6000以上の新規感染)。

パンデミックとの戦いで日本がこれまで成功を収めている点について孫氏は「人々は自発的にマスクを着用しています。みんなマスクの重要性を強く意識している」と述べ市民を称賛した。しかしワクチンの大量生産と接種が実現には、時間がかかる。孫氏は「この2、3カ月であらゆる災害」が発生し得ると警告した。「大手企業が突然破綻してドミノ現象を引き起こす」可能性があるという。つまり2008年にリーマン・ブラザーズが突如倒産し、金融業界全体に激震が走ったのと似たような事態だ。

孫氏は「現在のような状況ではどんなことが起きるかわからない。ワクチン開発が進んでいるというのは良いニュースですが、まだ最悪のシナリオに備える必要があると考えています。いま私たちの手元には800億ドルのキャッシュがあります。この種の危機では万一の場合に備えたキャッシュの用意が非常に重要になると思います」と述べた。

巨額キャッシュの使いみち

インタビューを行ったAndrew Ross Sorkin(アンドルー・ロス・ソーキン)氏は、孫氏はElliott Managementについては特に言及しなかったと述べた。このヘッジファンドはソフトバンクグループの第2の大株主であり、同ファンドが孫氏に大規模な資産売却と株価テコ入れのための自社株買いを行うよう圧力をかけたと報道されている

孫氏は、低迷したソフトバンク株を買い戻したのは自分で決めたことだと述べた。3月に株価が暴落したとき同氏は「時価総額が70%、いや75%も下がった。あ、これは最高のタイミングだと思って買い戻しを決断した」という。つまり以前の4分の1の価格で自社株を購入できたわけだ。「これは絶対に買いだ」と思ったという。

資産売却で得たキャッシュの使いみちについて、孫氏は「パンデミックのために業績が悪化している既存のポートフォリオ企業に資金を供給するためなのか、それとも株価が暴落した他の企業の株を割安に買えると期待したのか」という質問にも答えた。

当然のことながら孫氏は資金の使いみちとしてポートフォリ企業を挙げ、「こうしたトップ企業にすかさず投資することにはとても積極的です」と述べた。こうした追加資金によってユニコーンの株価は大きく改善したという。

WeWorkへの投資失敗の教訓

ソーキン氏はユニコーンでは、WeWorkの件について触れた。WeWorkは、ソフトバンクが少なくとも185億ドル(約1兆9240億円円)を投資したことで有名だが、孫氏は同社の事業不振で数十億ドルの損失を被った(The Japan Times記事)ことを認めた。

ソーキン氏は、WeWork事件からソフトバンクはどういう教訓を得たのかと尋ねた。孫氏はインタビューの後半で「間違った決定をしたと認めることが、失敗から教訓を得る方法です」と述べたものの、WeWorkに関しては必ずしもソフトバンク側の失敗だとは考えていないらしく、共同ファウンダーで1年前に会社を追われた元CEO、アダム・ニューマン氏に問題があったことを示唆した。

「これは、アダム・ニューマン氏が自分の間違いから教訓を汲み取っているところだと思います。ニューマン氏は非常に優秀な人間なので、いくつかの判断ミスをしたことを認めていると思います。彼は頭が良くアグレッシブで、多くの才能を持ち、自分のビジョンを売り込む高い能力がある。リーダーとして素晴らしいタイプだと思います。しかしニューマン氏がいくつかの間違いを犯したことも確かです。間違いを犯さない人間はいません」と孫氏は述べた。

「私(孫)にも間違った意思決定の責任の一部があります。いまでもニューマン氏が好きですし、尊敬しています。ニューマン氏はやがて復活して、素晴らしいことをしれくれるはずだと確信しています。いつか大成功を収めるでしょう。WeWork時代のあれこれから多くの教訓を学んだと思います」と孫氏は付け加えた。

米国政府とTikTokの米国事業

TikTok事業の成否にも孫氏は重大な関係がある。TikTokの親会社であるBytedanceの30億ドル(約3120億円)の資金調達ラウンドをリードしたのは約2年前だった。当時780億ドル(約8兆1100億円)の価値があったが、最近の報道によれば、未公開企業でありながら1800億ドルと(約18兆7200億円)いう途方もない会社評価額で新ラウンド(Reuters記事)を実施中だという(このアグレッシブさは極めてソフトバンク的スタイルの投資だ。ソフトバンクが次のラウンドを以前の評価額の2倍以上でリードできるかどうかは興味あるところ)。

この秋、TikTokの米国事業を売却するようBytedanceに強い圧力がかかりOracle、Walmartが共同で値付けした点についても触れ、「大勢が楽しんでいるサービスが、ありもしないことに対する懸念から政治的に中断されるなら残念なこと」と述べた。

実際、孫氏は親会社Bytedanceのトップと話し合った結果として、「TikTokは米国であれインド、日本、ヨーロッパであれ事業を展開している国々の国家安全保障やユーザーのプライバシーを損なう意図はまったくありません」と保証した。またTikTokに対する疑念が続く地域には、「国内にサーバーを設置するなど国家安全保障の保護について安心できるような解決策はあります。技術的な解決策は常にあるのです」と述べた。

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タグ:孫正義ソフトバンクWeWorkTikTokByteDanceCOVID-19新型コロナウイルス

画像クレジット:Alessandro Di Ciommo/NurPhoto / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

元WeWork中国幹部が不動産業界向け「スタートアップスタジオ」REinventを立ち上げ

Switchオンデマンドワーキングブース(画像クレジット:REinvent)

不動産業界は、他の多くの分野に比べて、テクノロジーの採用が遅れている。そこで、2020年春WeWork中国のイノベーションならびにテクノロジー責任者の職を離れたDominic Penaloza(ドミニク・ペナロザ)氏は、アジアの不動産業テックに注力することを決心した。

ペナロザ氏はスタートアップを自分で創業したり、投資するのではなく、その両方の目的を合わせ持つ「スタートアップスタジオ」を開設した。スタジオの名前はREinvent(リインベント)だ(REは「real estate」(不動産)の略。英単語の「reinvent」は「再発明」という意味)。この用語は、社内チームでスタートアップを生み出す組織を指していて、「スタートアップファクトリー」または「ベンチャービルダー」とも呼ばれている。有名な例は、東南アジアのLazada(ラザダ)、アフリカのJumia(ジュミア)の立ち上げで知られるRocket Internet(ロケットインターネット)である。

2018年に自分自身のコワーキングスタートアップであるNaked Hub(ネイキッド・ハブ)をWeWork中国に売却した(未訳記事)連続起業家のペナロザ氏は 、現在、上海、台北、シンガポールで45名のチームを率いている。そのほとんどがWeWorkとNaked Hubで一緒に働いていたメンバーだ。同スタジオは、CEOのペナロザ氏が「squads(分隊)」と呼ぶ単位に組織化されていて、各分隊はプロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニア、AI専門家などで構成されている。また各分隊は同時に4つのプロジェクトに取り組む能力を持っている。

創業者はまた、既存の業者で深く凝り固まった分野に、自身のスタートアップスタジオが取り組めるように、重量級の投資家も招き入れた。REinventの支援者として並んでいるのは、アジア太平洋の大手コワーキング企業であるJustCo (同社はアジア最大の不動産オーナー、例えばシンガポールのソブリンウェルスファンドであるGIC に支援されている)、 多国籍不動産開発業者Frasers Property(フレイザーズ・プロパティ)、日本有数の不動産会社大東建託だ。

REinventは、それが立ち上げる各ベンチャーの完全な所有権を持っているが、投資家3社はそれぞれREinventの株式を所有している。同社は、これまで投資家たちからどれくらいの額を調達額を明らかにするのを拒んでいる。

投資家たちはまた、重要な戦略的リソースに対して貢献してくれていると、ペナロザ氏はTechCrunchとのインタビューで答えている。5月にスタートしたREinventは、すでに2つのベンチャーを立ち上げている。その1つが、自転車シェアと同等の仕組みを使って、個人や企業はワークスペースを予約し、分単位で仕払うことができるSwitch(スイッチ)というベンチャーだ。自転車シェアとの違いは、SwitchがJustCoやFrasersのような第三者の地主と協力する市場であるのに対して、自転車シェア企業はしばしば自転車を自社で供給し運営しているということだ。

Switchアプリのスクリーンショット

現在、その市場はシンガポールの20カ所以上に、2500個以上のデスクネットワークを拡大している。その中には、たくさんのショッピングモールに散在する小規模なオフィスブースも含まれている。新型コロナウイルスのパンデミックによって全世界が物理的に働く場所を再考するように強制されている現在、同社はオンデマンドワークスペースを提案している。

「不動産会社はみな、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)にどのように対応すべきか、各組織が新型コロナを生き延びるにはどうすればよいのか、そして今回のような大きなインパクトを受けなくてもよいようにどのように次のパンデミックに備えれば良いかを検討しています」とペナロザ氏は語る。

一方、設置に柔軟性のあるワークブース(トップ写真)は、モールの所有者、特にeコマースによるオフライン小売が広がる中で、新しいテナントを探している中国のモール所有者たちには魅力的な提案だ。

「eコマースは、新型コロナ以前の段階でも、伝統的な小売モデルを食い尽くしつつありました。中国の不動産開発業者は、ショッピングモールの一部を別目的で再利用しようとしています。【略】 いまではモールの中に、多くの飲食店、体験型店舗、カフェ、コワーキングスペースさえあります」とペナロザ氏はいう。

ペナロザ氏は、自身のオンデマンドワークスペース構想に関する早期バージョンの実験を、WeWork中国で行っていた。店舗のパブリックスペースをメンバーショップなしで使えるようにして、ミーティングやリモートワークにスターバックスを使用するプロフェッショナルたちに、より静かな環境とより良いWi-Fiを提供して、その心を掴んだのだ。

REinventがローンチしたもう1つのプロダクトは、空間分析とソーシャルディスタンス検出のためのソフトウェアであるSixSense(シックスセンス)だ。

「不動産は多くの人が考えているものではありませんが、それは地球上で最大の産業の1つです」とペナロザ氏は語る。「アジアと中国の不動産テックはきわめて初期段階ですが、それは成長しています」。

関連記事:WeWorkが中国国内で提供する新しいサービスは、スターバックスの良きライバル?

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タグ:REinvent不動産テック

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(翻訳:sako)

スペインのAll Iron Venturesが約82億円の初ファンドをクローズ

B2Cマーケットプレイスとeコマースに出資するスペインのAll Iron Ventures(AIV、オールアイロンベンチャーズ)が計6650万ユーロ(約82億円)の初ファンドをクローズした。初ファンドとしてはスペインにおいて最大規模の1つと同社はうたう。

このファンドに出資を約束している親グループの出資パートナーや他の投資家からの資金により、投資能力は約1億1000万ユーロ(約135億円)となる。

ファンドへの支援は個人投資家によるもので、公的なサポートはない。AIVは自らを、欧州で出現している起業家が支援するVCの「新種」とみなしている。

ビルバオに拠点を置く同ファンドは2017年後半に創設され、2人の共同ディレクター、Hugo Fernández-Mardomingo(ヒューゴ・フェルナンデス・マルドミンゴ)氏とDiego Recondo(ディエゴ・レコンド)氏が運営している。All Iron Group(オールアイロングループ)の一部であり、傘下には他に上場不動産ホールディングカンパニーもある。All Iron GroupはTicketbis(チケットビス)創業者によって設立された。Ticketbis創業者はチケット再販マーケットプレイスを2016年に1億6500万ユーロ(約202億円)でeBay(イーベイ)に売却した。これはスペインのエコシステムの中でこれまでに最も成功したエグジットだ。

AIVのFund Iには150もの投資家が出資しており、 Iñaki Ecenarro(イニャキ・エセナロ)氏やフィンテックスタートアップEbury(エブリー)の共同創業者でCEOのSalvador García(サルバドール・ガルシア)氏、後にMasMóvil(マスモビル)と合併したIbercom(イベルコム)の創業者Jose Poza(ホセ・ポザ)氏といったスペインの起業家も含まれる。

同ファンドは主にシリーズA、プレAの投資ラウンドをリードあるいは共同投資する。ただし、シード期の投資にも柔軟に対応するとしている。通常、最初の小切手は最大200万ユーロ(約2億5000万円)で、ポートフォリオ企業のその後のラウンドもサポートする。

地理的には、AIVは自らをスペインやその他の国でも投資を行う国際VCのパートナーとして位置付け、中でも欧州と米国にフォーカスしている。

直近の投資にはウクライナ拠点のオンライン指導マーケットプレイスPreply(プレプリー)やスペインのオンデマンドランドリーサービスMr Jeff(ミスタージェフ)などがある。

他には、スペインのLookiero(ルッキエロ)、Lingokids(リンゴキッズ)、Spotahome(スポタホーム)、Seedtag(シードタッグ) 、ポルトガルのBarkyn (バーキン)、オーストリアのRefurbed(リファーベッド)、ドイツのPaul Camper(ポールキャンパー)、フィンランドのKodit(コディット)、米国のRebag(リバッグ)、ブラジルのZenklub(ゼンクラブ)といったスタートアップがポートフォリオに名を連ねている。

カテゴリー: VC / エンジェル
タグ:All Iron Venturesスペイン

画像クレジット:All Iron Group/All Iron Ventures

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(翻訳:Mizoguchi

吉野家とIdeinがAIオープンイノベーションプログラム「⽜丼テック」の募集開始

吉野家とIdeinがAIオープンイノベーションプログラム「⽜丼テック」の募集開始吉野家Idein(イデイン)は11月4日、新しい吉野家の形を共創するためのオープンイノベーションプログラム「⽜丼テック」を共同開催し、共創パートナーを同日より募集する。応募締切は2020年12月4日。

「牛丼テック」概要

  • 対象者: 個⼈・法⼈・分野・業種を問わず、「テーマ1: 顧客満足度向上」「テーマ2: サービス品質改善」の加速といった⽬的にかなうソリューションを提供できるすべての⽅
  • 選考基準: 「⽜丼テック」プログラムの⽬的に対する適性、提案ソリューションの実現可能性など
  • 応募費⽤: 無料。最終審査を経て共創パートナーとして採択され、協働に至った際に開発などで発生する費用などについては、別途協議の上契約などを締結することを想定
  • 応募⽅法: 牛丼テック応募フォームより応募
  • 募集開始: 2020年11月4日
  • 応募締切: 2020年12月4日

牛丼テック説明会(オンライン)

  • 説明会参加申し込み期限: 11月19日15時
  • 説明会開催日時: 11月20日13時~14時
  • 説明会参加申し込み: 牛丼テック説明会申込フォームより応募(牛丼テック応募フォームとは別URLである点に注意)

共創パートナーにもたらされる機会

  • PoC(実証実験)実施: 吉野家の実店舗でのPoC機会を提供。本事例は共創パートナーの実績として広報活動などに活用可能
  • ビックデータ活用: 吉野家の店舗でセンシングしたビックデータを、共創パートナーの分析ソリューション・コンサルティングに活用可能
  • 本導入検討: プログラムの結果を踏まえ、主催企業における実運用に向けた協議の機会を提供
  • 牛丼券(365日分): 共創パートナーのソリューションが導入された実店舗において、当該ソリューションによる店舗競争力向上を顧客目線かつ長期時系列で実感できる
  • 社名入り特製吉野家どんぶり(上位3社): 共創パートナーの社名が入ったどんぶり(各社1個)。採用ソリューションによって改善されたテイクアウトのオペレーションを実感し、自宅で特製どんぶりを使用した吉野家牛丼を完全に再現できる

現在吉野家とIdeinは、吉野家店舗の顧客満⾜度向上及びサービス品質改善を実現するための店舗センシングプロジェクトで協働している。

Idein開発のActcastは、Actcastは、エッジデバイス上で画像解析AIなどを実⾏して実世界の情報を取得し、ウェブと連携するIoTシステムを構築・運⽤するためのプラットフォームサービス(PaaS)。AI/IoTシステムの開発・導⼊・活⽤には多くの要素があり、Actcastでは様々なパートナー企業が有する場や技術、リソースのエコシステムを通じて最適な組み合わせを実現可能という。

吉野家とIdeinがAIオープンイノベーションプログラム「⽜丼テック」の募集開始

吉野家とIdeinがAIオープンイノベーションプログラム「⽜丼テック」の募集開始

同プログラムでは、応募した共創パートナーのソリューションとActcastを組み合わせることで、店舗センシングプロジェクトが掲げる以下テーマへの取組を加速させることを⽬的としている。

吉野家とIdeinがAIオープンイノベーションプログラム「⽜丼テック」の募集開始

  • テーマ1: 「顧客満足度向上」。レジ前の人数カウント、サイネージのインプレッション把握、サイネージのコンバージョン把握など
  • テーマ2: 「サービス品質改善」。返却口の状況把握、箸の残量測定、キッチンの温度、トイレの清掃回数検知、ダスターの一検知、店舗の清掃状況(モップ動作など)の検知など

同プログラムにおける参加者との共創イメージ

同プログラムにおける参加者との共創イメージ

(1)共創パートナーによるアプリケーション開発、(2)実店舗でのセンシング、(3)データをエッジ処理、プライバシー保護に配慮してデータ収集、(4)収集データを活用した付加価値情報の創造、(5)店舗運営に活用し顧客足度の向上とサービス品質改善を実現

想定される共創パートナーの主な属性

  • AIアルゴリズム開発者: 今回の取り組みではActcastプラットフォームを利用することから、参加者はアイデアと機械学習モデルの作成に専念でき、それを実店舗でのPoCを実施できるだけでなく、将来的なビジネスのスケールを目指すことが可能。上記の共創イメージにおける(1)に該当
  • BIツール提供者: 吉野家の実店舗で収集された生きたデータを分析し、店舗競争力の強化に資する付加価値情報を創造する機会が提供され、将来的なビジネス機会となりえる。上記の共創イメージにおける(4)に該当

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カテゴリー: 人工知能・AI
タグ: IoT(用語)Idein吉野家日本

スパークス、トヨタ、メガバンク3行が国内モノづくり企業対象の新ファンドで合意、12月初旬設立目指す

スパークス、トヨタ、メガバンク3行が国内モノづくり企業対象の新ファンドで合意、12月初旬設立目指す

スパークス・グループトヨタ自動車三井住友銀行三菱UFJ銀行みずほ銀行の5社は11月2日、新ファンド設立に向け覚書に調印したと発表した。同ファンドは、国内のモノづくり企業が投資対象。今後5社で、出資規模・その他の出資者・投資対象などの詳細な検討を進め、12月初旬のファンド設立を目指す。

同ファンドでは、優れた技術・人財を有する企業を、TPS(トヨタ生産方式)や経営戦略の策定などにより支援。企業の持続的な成長を通じて、日本のモノづくりの発展に寄与することを主たる目的とする。

これは、「働きがいも経済成長も」(Decent Work and Economic Growth)、「産業と技術革新の基盤をつくろう」(Industry, Innovation and Infrastructure)など国際社会が取り組んでいるSDGs(持続可能な開発目標)の目標にも合致するもので、新型コロナウィルスの影響が長期化する厳しい環境下、日本のモノづくりの競争力向上を通じて社会に貢献する。

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カテゴリー: VC / エンジェル
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自己資金が少なくてベンチャーキャピタリストになる方法

(編集部)この記事は同じ記者による「初のファンドマネージャーにとって新型コロナ禍は『パーフェクト・ストーム』」の続編

長年、正確にはこの数十年、金持ちでなければベンチャーキャピタリストになれないのは自明のことと考えられてきた。個人投資家も機関投資家もファンド運営者自身が金持ちで相当の割合のポケットマネーを注ぎ込んでいるのでない限りベンチャーファンドに一口乗ろうとはしなかった。

実際私は5年前に、ベンチャーキャピタリストになるための大きな障壁としてジェダーギャップが大きいことを指した。アフリカ系、ヒスパニック系女性の場合これは特に顕著だった。しかし資産が少ない人間がベンチャーキャピタリストになるのが困難なのは人種や性別を問わず同様だった。

幸いなことにこの状況は最近変わってきた。ベンチャーキャピタリスト志望者が最初のファンドの資金を調達する方法が多様化してきたからだ。もちろんどれを使うにせよ、これでファンド組成に100%成功するという保証付きの方法などはない。しかしどれも現実に利用されており、ベンチャーキャピタルの仕組みの理解にも有効だ。

ともあれまずカネの主要な出し手、つまりファンドのリミッテッドパートナーが必要だ。通常ファンドの組成目標額の3%から2%(1%以下のこともある)の出資を約束する。この「コミット」の割合が小さくなると投資者を見つけるのが困難になる。ともかく非公開株式ポートフォリオで110億ドル(1152億円)の価値をもつシカゴ大学信託基金のファンドを運用するJoanna Rupp(ジョアンナ・ラップ)氏によればRupp氏や他のファンドマネージャーは「ジェネラル・パートナーの出資額については柔軟」だという。

Rupp氏は「業界の標準的はあるが、資産の少ない若いジェネラル パートナーに対しては特定の出資比率を求めていない」という。

ファンド運営企業のStandish Managementのファウンダー、Bob Raynard(ボブ・レナード)氏によれば、「比較的少額の出資しかしていなくてもジェネラルパートナーになれるという考え方は一般的になっています。(出資比率が少ない場合)管理費や報酬を減額するという慣行は以前から行われてきました」という。

ファンド管理費の節約はベンチャーキャピタリストがファンドの魅力を増すために利用される。Cendana CapitalのMichael Kim(マイケル・キム)氏によればこれは珍しいことではないで、何十ものシードファンドで行われており、節税にも役立つという。ただしIRS(内国歳入庁)はこの抜け穴を防ぎたい意向を示している。

具体的に例を挙げればこうだ。ファンドを組成する投資家の平均的コミット(確約出資額)が100万ドルを10年間(これもファンド活動期間だ)に払い込むものだとしよう。100万ドルの用意ができない場合、 ファン総額に対する持ち分割合はそのままにして払込額を80%減額し、20万ドルとする方法がある。その代わり他の出身者に請求する10年間のファンド管理費をそれだけ減額する。つまり確定した管理費収入を投資実績に応じて変動する収入に置き換えるわけだ。

また手持ちの株式も抵当として利用できる。Kim氏は、著名なベンチャーキャピタリスト2人がキャッシュをいっさい支払わず、代わりにスタートアップ企業の持ち分を現物出資したファンドがあるという。

どちらの方式でもポートフォリ企業の株価は大きくアップしKim氏にとっては大成功だった。ファンド管理者はキャッシュを払いこまずに減額前の持ち分比率で投資利益の配分を受けられたわけだ。

金持ちの知り合いや友達と契約を結ぶのも有力な手法だ。Kim氏はファンドを組成する際、6人の友達から合計100万ドルの資金を調達した。当時のKim氏は家の抵当とまだ小さい子供たちをかかかえていたが、この資金で2年間の活動が保証された。出資した友人たちはKim氏のベンチャーキャピタリストとしての能力に賭けたわけだ。しかし上で例を挙げたようなファンドの有利性をアップする手法も用いられた。Kim氏のケースでは友人たちにCendanae Fundの一定の持ち分を永久的に譲渡している。

コミット資金に銀行融資を利用することもできる。ただしRupp氏はジェネラルパートナーがコミットを銀行融資に頼る手法には懸念を抱くという。投資結果は予測ができない。投資が期待した収益を実現できなかった場合、融資は大きな問題となる。またジェネラルパートナーにとって投資の返済が至上命題になりやすく、スタートアップが順調に成長しているにもかかわらず売却を急ぎすぎるというリスクも高まる。

そうではあっても融資による資金調達の例は多いとRaynard氏は述べた。Silicon Valley BankやFirst Republic Bankのようなベンチャー投資に経験、実績のある銀行はジェネラルパートナー志望者に対してファンド組成資金の貸付に熱心であり、キャッシュのコミットを可能とする貸付極度額を設定してくれるという。 しかし同氏によれば、ファンドに誰が参加するのかによって銀行融資の可否は大きく影響されるとして「 ファンドへの投資家が多様性に富んだグループであれば銀行はベンチャービジネスに参加し、有望なスタートアップとの関係を確立する助けになるというメリットを考えて融資に前向きになることは多いです」と述べた。

いわゆる「フロントローディング(管理コストの組み込み)」という手法が用いられる場合もある。Kim氏によれば「これは大胆なパートナー向きの手法」だという。Chris Sacca(クリス・サッカ)氏は現在はビリオネアの著名なベンチャーキャピタリストだが、最初のファンドを組成したときにはこの方式を取った。ビジネスに参入したばかりのベンチャーキャピタリストはファンドの管理費と持ち分に応じた投資収益を分けず、ファンドの存続期間を通じて投資結果に応じた収益のみ受け取るという仕組みだ。

フロントローディング方式の場合、ポートフォリオが実際に利益を出すまでファンドの組成者は収入が得られるない。しかし最近のスタートアップ市場の動きは速まっているため、ファンドを管理するジェネラルパートナーはすぐに次のファンドを組成し、そちらから収入を得ることができる。

これらは大金持でなくてジェネラルパートナーになろうとする場合の手法のいくつかの例だ。Alphabetのベンチャーキャピタル、GVのパートナーを務め現在Plexo CapitalのマネーjングパートナーであるLo Toney(ロ・トニー)氏によれば、他にも「自身の個人年金も資金として利用できる」という。またスタートアップ企業の持ち分の一部、あるいは自身のキャリー(投資利益持ち分)の一部を売却してコミットの資金とすることもよく行われる。しかしPrecursor Venturesの Charles Hudson(チャールズ・ハドソン)氏、 Fika Ventures のEva Ho(エヴァ・ホー)氏らは「できるかぎりこうした道は割けたほうががよいです」と述べている。

トニー氏は「いずれにせよ、重要な点はベンチャーファンドのための資金を調達するためにはこれだけが正しいという方法などはない。一つの方法がよくて別の方法はいけないということはありません」と述べた。

今週Toney氏から受け取ったメールには「ベンチャーキャピタリストの過去の実績は将来の成功の保証にはまったくなりません」ともあった。

画像:John Lund / Getty Images

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滑川海彦@Facebook

スタートアップ育成アクセラレーター「ERA」を2020年秋に卒業する11社

混乱は小さなスタートアップを好み、パンデミックは混乱そのものだ。そのため、アクセラレーターやインキュベーターが、2020年の問題に取り組もうと意気込む新しいスタートアップをせっせと世に送り出すのは自然の流れだ。

そんなアクセラレーターにEntrepreneurs Roundtable Accelerator(ERA、アントロプレヌアーズ・ラウンドテーブル・アクセラレーター)がある。米国時間10月29日のSummer 2020デモデーにて、同プログラムから11の新しいスタートアップが卒業する。発足以来、ERAは215社以上のスタートアップを立ち上げてきた。それらは合計で5億ドル(約523億円)以上の資金を調達している。

ではさっそく、企業の紹介をしよう。

Aires Medical(アイレス・メディカル)は、慢性閉塞性肺疾患患者のためのハンドヘルド人工呼吸器を開発したハードウェア企業だ。この病気を持つ人たちは、外出時には必ずあの大きくてやっかいな医療機械を連れて行く必要がある。同社は現在、米食品医薬品局のFDA 510(k)認可を申請しているが、認可が下り次第、医療機器販売業者向けに販売を開始する。

Alaffia(アラフィア)は健康保険の請求審査を自動化する。同社の機械学習ダッシュボードは、いちはやく不適切な支払いを検出し、臨床調査をやり直し、報告書を作成する。こうして、ほとんど人の手によって非効率に行われてきた作業をスピードアップし明確化する。同社は、健康保険会社の過払い金を回収した中から収益を得る。

Caire(ケア)は、40代以上の女性のためのスキンケア製品に特化した直販ブランドだ。女性の閉経(およびそれにともなう天然ホルモンの減少)によって肌に起きる変化に専門に対処する成分を独自に開発した。Caireはサブスクリプションモデルを採用している。スターターキットのDefiance Science Duoは、月80ドル(約8400円)。

ChalkTalk(チョークトーク)は、パーソナル化したカリキュラムと授業計画で急速に変化するエデュテックのエコシステムに対処する。同社のプラットフォームは、それらの情報を元にパーソナル化した教材、グループ活動、練習問題を作り出す。対象は幼稚園から高校卒業までの数学と英語。その使命は、授業計画や宿題の準備に追われることなく、生徒たちと意義深い関係が築ける時間を教師に与えることなどだ。

Cquence(シークエンス)は、動画制作の市場に食い込もうとするSaaSプラットフォームだ。動画編集や、無数のメタデータポイントのインデックスマーキングとタグ付けの初期段階から機械学習を用いて映像の評価と分類を行うことで、編集者に最初から整頓されたライブラリーを提供できる。これにより、編集者は特定の人物、オブジェクト、または話を探せるようになる。Cquenceは、プラットフォームを利用する人数と利用した映像の分数で料金を徴収する。

Flourish Savings(フローリッシュ・セービングズ)は銀行、信用組合、金融業者などと協力して、ゲーム形式で、エンドユーザーの適切な経済感覚を養う。同社はパートナーにその技術をライセンスし、アクティブユーザー数に応じた料金を徴収する。

Masonry(メイソンリー)は、集合住宅の管理業務を自動化する。同社のソフトウェアは、集合住宅の維持管理に関連する幅広い業務を最適化し、完全なデータ分析と洞察を行うダッシュボードを管理者に提供する。料金は、ユニットごと、または月ごとの徴収となる。

Mosaic(モザイク)は、すべての個人と組織にとって最も貴重な資源の最適化を目指す。それは時間。同社はAIを用いて、誰が何にいつ取りかかっているかに基づき、人々の仕事の計画をアップデートし、組織の時間管理の生産性と利益性を評価する。Mosaicは、利用人数ごとに年間料金を徴収する。

OLIMP(オリンプ)は、配送を拒否されたときに、トラックの運転手が短期入庫可能な倉庫を探して予約できるようにすることで、車両の時間と経費を節約する。また同社はオンラインでの支払いを可能にし、長距離輸送の後の手続きをできる限り簡素化する。

StartSure(スタートシュアー)は、主にスタートアップのための保険証券を作成し、成長を続ける保険テックの分野で奮闘している。他社との違いは、5つの質問による非常に簡単な査定で、企業の必要最低限の債務と財産をカバーする方式だ。その後は、企業ごとの個別の特殊な条件に、AIの助言を元に対応する。StartSureの証券は月25ドル(約2600円)から。

Virtuleap(バーチュリープ)は、製薬会社に向けて、認知症治療薬の効果の検証を助けるVRを使った診断ツールを提供する。同スタートアップには、神経科学者と共同開発したVRゲームのライブラリーがあり、認知機能の幅広い検査が行える。これを使うことで、製薬会社は薬の測定が可能な効果を知ることができる。

関連記事:NYのスタートアップ育成アクセラレーター「ERA」から13社が卒業

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:アクセラレータープログラム

画像クレジット:Steve Long / Shoot By Daylight

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(翻訳:金井哲夫)

SPAC(特別買収目的会社)がブームだが、女性投資家はほとんどいない

SPAC(特別買収目的会社)ブームを追いかけている人なら、株式公開された非公開企業を買収するためのブランクチェックカンパニーが続々と現れていることにお気付きかもしれない。こうした企業は主に男性によって組織されている。

銀行やベンチャー業界において財務の上級職に就く女性が比較的少ないことを考えれば、驚くことではない。しかし、この傾向に弾みがついた場合、すでに貧富の差を克服しようと躍起になっている女性が取り残されるのではないかという疑問も生じている。

女性投資家は少なくとも1人の女性創業者がいるスタートアップに2倍、女性CEOがいるスタートアップに3倍投資する傾向があることが調査で示されていることを考えてみよう。女性主導のSPACが、合併して株式公開する女性主導の企業を特定する傾向が強まることは想像に難くない。

また、SPACのスポンサーは多額の報酬を得ることができる。SPACが2年以内の合併を目指している場合、スポンサーは通常、投資家を確保した上でターゲット企業を説得する。そして提示された条件を受け入れるよう説得する見返りに、SPACの設立者の株式の25%を受け取るのだ。実際、SPACの業績がひどいものであっても(例えば合併した企業が後に詐欺で告発されるなど)、スポンサーには報酬が支払われる。

Eventbrite(イベントブライト)の共同創設者であるKevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏は2億ドル(約210億円)のSPACを管理しているが、8月に次のように語っている。「2億ドルのSPACには5000万ドル(約53億円)の 『プロモーション』が入ります。しかしその会社が業績を上げず、例えば1年か18ヶ月で資金が半分になったとしても、株価は2500万ドル(約26億円)のままです」。ハーツ氏自身はこの保証された支払いについて「ひどいことです」と述べていたが、同氏とSPACのパートナーであるTroy Steckenrider(トニー・ステッケンライダー)氏は、SPACの最初のスポンサーとして物事を単純にしておきたいと、組織の構造は変えなかった。

現在のSPACブームでは、女性が完全に行方不明になっているわけではない。Axios(アクシオス)が先に報じたように、2018年にカリフォルニア州で可決された州法のおかげで、カリフォルニア州に拠点を置くほとんどすべてのSPACには女性ディレクターがいる。

特にこの2週間で、SECに登録するための少なくとも3つのSPACが、女性のスポンサーによって、排他的に、または部分的に立ち上げられた。ニューヨークを拠点とする投資家Hope Taiz(ホープ・タイズ)氏は、Drexel Burnham Lambert(ドレクセル・バーナム・ランバート )で投資銀行業務のキャリアを積み始めたが、今週、SECに3億ドル(約316億円)のブランクチェックカンパニーAequi Acquisition(アエクウィ・アクイジション)を設立する計画を届け出た

一方、雑誌編集者のJoanna Coles(ジョアンナ・コールズ)氏が率いる消費者中心のSPAC、Northern Star Acquisition(ノーザン・スター・アクイジション)は先週、3億ドル(約316億円)のIPOを申請し、気候変動技術に焦点を当てたSPACのClimate Change Crisis Real Impact I Acquisition(クライメイト・チェンジ・クライシス・リアル・インパクトIアクイジション)はIPOで2億ドル(約211憶円)を調達した。このブランクチェックカンパニーを率いるのはGreen Mountain Power(グリーン・マウンテン・パワー)のCEOであったMary Powell(メアリー・パウエル)氏だ。

SPACのスポンサーであるBetsy Cohen(ベッツィー・コーエン)氏は、金融サービス企業Bancorp(バンコープ)の創設者であり元CEOでもあるが、実際にSPACを利用して、これまでに4つのフィンテック関連のシェルファームを設立しており、直近では先月7億5000万ドル(約790億円)を調達している。興味深いことに、Goldman Sachs(ゴールドマンサックス)Jefferies(ジェフリーズ)のSPACプログラムはどちらも女性が主導している。

このような発展を考えると、女性がこのゴールドラッシュを見逃すのではないかと心配する人もいるかもしれない。とはいえ、今年500億ドル(約5兆2600億円)以上を調達した133のSPAC(最新の集計による)のうち、女性主導のSPACはごく一部にすぎない。

さらに、これまでこのプールに飛び込んできた伝統的なテック投資家は、何十ものSPACを念頭に置いているSocial Capital(ソーシャルキャピタル)のChamath Palihapitiya(カマス・パリーハピティヤ)氏を始め、ハーツ氏とステッケンライダー氏、起業家投資家のReid Hoffman(リード・ホフマン)氏とMark Pincus(マーク・ピンクス)氏、Ribbit Capital(リビットキャピタル)のMickey Malka(マイヤー・マルカ)氏、元Uber(ウーバー)幹部のEmil Michael(エイミル・マイケル)氏FirstMark Capital(ファーストマークキャピタル)の創設者など、もっぱら男性だけだ。

対する女性が注意を怠っているわけではない。私たちが話をした多くのトップ女性VCは、行動に従い、参加する方法を検討していると述べている。そうした著名な投資家の1人は、どのような状況でVCファームがSPACの設立に関与することが理にかなっているのかについて調査していると語った。

他の投資家は、まずポートフォリオ企業を通じてSPACへのエクスポージャーを得ようとするかもしれない。例えばConstruct Capital(コンストラクトキャピタル)のDayna Grayson(ダイナ・グレイソン)氏は、3Dプリント会社Desktop Metal(デスクトップメタル)への初期投資を主導したが、これはSPAC主導の取引で株式公開されることになっており、NEAのパートナーでもある。グレイソン氏はTechCrunchの最近のDisruptイベントでDesktop Metalについて話し、SPACを「企業にとって新しい可能性のある素晴らしい選択肢です」と表現した。

いずれにしても、元投資銀行家で現在はデータサイトSPACInsider(SPACインサイダー)を運営しているKristi Marvin(クリスティ・マービン)氏によると、今はパニックに陥る時ではないという。

その根拠の一つとして「ほとんどの銀行業務ではSPACは男性に偏っています」と説明する。SPACを後援している男性はもっと多いことが想定される。マービン氏による視点では、SPAC市場は過熱気味なので、今しばらく待つのも理にかなっているかもしれない。「同じ日に10件の取引を成立させようとすると、投資家は締め出されます」。

また、SPACには、一部の人が過小評価するような学習曲線が必要だ。「ヘッジファンドやPEファームがSPACに関与しているのはそのためです。インフラが整っているのとは対照的に、3人のスタッフが管理面だけで大変な仕事をしています」と彼女は語る。

マービン氏は、他の金融商品と同様に、時間の経過とともにSPACを受け入れる女性が増えると予想している。特に、多くの初期の支持者が示唆するように、SPACに耐久性があることが証明されればそうなるだろう。「1、2年たっても、まだSPACに足を踏み入れるのが男性のVCだけなら、それは問題かもしれません」と付け加えた。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:SPAC / 特別買収目的会社

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(翻訳:Dragonfly)

ジェネシア・ベンチャーズがシード・アーリーステージに特化した2号ファンドを設立、ファンド規模は約80億円

ジェネシア・ベンチャーズがシード・アーリーステージに特化した2号ファンドを設立、ファンド規模は約80億円

ジェネシア・ベンチャーズは10月26日、シード・アーリステージのスタートアップへの投資に特化した2号ファンド「Genesia Venture Fund 2号投資事業有限責任組合」の最終募集を締め切り、総額約80億円規模で設立したと発表した。

スタートアップ、LP(Limited Partnership)投資家はじめ、このデジタル時代の産業創造に関わるすべてのステークホルダーと、ひとつのチームとして本質的なDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指すプラットフォームの構築に取り組むとしている。

同ファンドへの主な出資者は、以下の通り。

  • 藍澤證券
  • オリエンタルランド・イノベーションズ
  • 日本ユニシス運営のCVCF2投資事業有限責任組合
  • キヤノンマーケティングジャパン
  • グリー
  • JA 三井リース
  • 大日本印刷
  • 東急不動産ホールディングスが取り組むTFHD Open Innovation Program
  • 日本政策投資銀行
  • 博報堂DYベンチャーズ運営のHAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUND投資事業有限責任組合
  • 丸井グループ
  • ミクシィ
  • みずほキャピタル
  • みずほ銀行
  • みずほ証券プリンシパルインベストメント

2017年12月に総額40億円規模で最終募集を完了した1号ファンドからは、原則リード投資家として、日本・東南アジア地域(主にASEAN主要国)のシード・アーリーステージのスタートアップ47社に投資を実行している(国内35社、海外12社。2020年10月26日時点)。

2号ファンドからも、2020年10月26日時点ですでに40社(国内29社、海外11社)への投資を実行。

2号ファンドにおいても、1号ファンドと基本的なコンセプトは変えずに投資を実施していく方針で、主な対象領域は、DX、ニューエコノミー、メディア・エンターテインメントとしている。

  • DX: 産業のビジネス・ストラクチャーをアップデートするXaaS(”X” as a Service。ザース)、多重構造を解消するプラットフォーマーなどのデジタル・トランスフォーメーション周辺領域
  • ニューエコノミー: 個人のエンパワーメントや顧客体験の最適化、循環型経済を実現するOMO(Online Merges with Offline)、C2C(EC、SERVICE)、シェアリングエコノミー、非中央集権型プラットフォームなどのニューエ
    コノミー周辺領域
  • メディア・エンターテインメント: 個人の興味関心が多様化する中で、人々の心を動かす体験価値を提供するメディア、コンテンツ、VR/ARなどのメディア・エンターテインメント周辺領域

ジェネシア・ベンチャーズがシード・アーリーステージに特化した2号ファンドを設立、ファンド規模は約80億円

ジェネシア・ベンチャーズは、「すべての人に豊かさと機会をもたらす社会を実現する」というビジョンを掲げ、シード・アーリーステージのスタートアップへ投資とバリューアップ支援を行う、独立系のベンチャーキャピタル。

ジェネシア・ベンチャーズの「Genesia」(ジェネシア)は、起源や創生の意味を持つ「Genesis」(ジェネシス)に「Asia」(アジア)を掛け合わせた造語で、「アジアの創生を担うベンチャーキャピタルでありたい」という思いを表現しているという。

東京、ジャカルタ(インドネシア)、ホーチミン(ベトナム)の3拠点を構え、アジア全域において、スタートアップ・事業会社・投資家・政府・自治体・非営利団体など、社会を形成するすべてのステークホルダーとともに、持続可能かつ大きな産業創造に挑むプラットフォームの構築を目指している。

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カテゴリー: VC / エンジェル
タグ: ジェネシア・ベンチャーズ日本

ソフトバンクのダイバーシティ&インクルージョンファンドによる最初の投資は健康分野

SoftBank(ソフトバンク)のOpportunity Growth Fund(オポチュニティー・グロース・ファンド)は、健康保険のスタートアップであるVitable Health(バイタブルヘルス)に投資する。同ファンドは有色人種の起業家が創業したスタートアップへの投資に特化する1億ドル(約105億円)のファンドで、今回の投資は同ファンドからの最初のコミットメントとなる。

Y Combinatorで最近立ち上げられ(未訳記事)、フィラデルフィアを拠点とするVitable Healthは、サービスの行き届いていない低所得のコミュニティーに基本的な健康保険を提供する。

Vitable Healthは23歳の起業家であるJoseph Kitonga(ジョセフ・キントガ)氏が創業した。同氏の両親は10年前に米国に移住した。同社は保険が不十分または無保険の人々に手頃な価格で緊急ケアをカバーする医療保険を提供する。両親が経営する在宅医療機関の従業員が基本的な補償を受けるのにも苦労しているのを目の当たりにしてきたキントガ氏の経験から生まれた。

同社のブログ投稿によると、150万ドル(約1億6000万円)のコミットメントは、SoftBank Group Corp Opportunity FundがリードしY Combinator、DNA Capital、Commerce Ventures、MSA Capital、Coughdrop Capital、MercuryBankの最高経営責任者であるImmad Akhund(イマド・アクンド)氏やGainsightの最高執行責任者を務めたAllison Pickens(アリソン・ピケンズ)氏のようなエンジェルも参加した。

「優れたヘルスケアは、誰であれ、すべての米国人に当然に与えられるべき基本的な権利です」と、アトランタを拠点とするファンドのアーリーステージ投資リードであり、TechSquare Labsという投資ファンドの創業者であるPaul Judge(ポール・ジャッジ)氏は語っている。「私たちは、ジョセフ氏自身とこの課題に取り組む彼のアプローチに触発されました。Vitable Healthは患者ケアの重大な空白領域を埋めつつあり、無保険や保険不足の人、そしてもっと良いライフスタイルを求めるすべての人にとって必要不可欠なサービスとして浮上しています」。

ソフトバンクは、米国各地の都市で市民による抗議の波が起こる最中にOpportunity Growth Fundを創設した。白人警察官の手による黒人のミネアポリス市民、George Floyd(ジョージ・フロイド)氏の殺害がきっかけとなり、組織的人種差別と警察の残虐行為に対して抗議活動が頻発した。フロイド氏の殺害では、警察の残虐行為、警察当局の軍隊化、人種プロファイリングなどの問題をめぐって、全米の都市で市民と警察の間の緊張が再び激しく高まった。

ソフトバンク自身も2020年に、ポートフォリオに人種差別に関する問題を抱えていた。同社がファンドを立ち上げる数カ月前に、ポートフォリオ企業の1つであるBanjo(バンジョー)のCEOで創業者がかつてKKKと関係があったことが明らかになった後、辞任した

ソフトバンクはOpportunity Growth Fundから問題に取り組もうとしている。特に注目すべきはファンドが取引に関して従来のマネジメントフィーを徴収しないことだ。「その代わりに、有色人種の創業者や起業家の手元にできるだけ多くの資本を投入しようとしています」。

Opportunity Growth Fundは、過去数年間にソフトバンクが発表した中で3番目の投資ビークルだ。その中で最大は1000億ドル(約10兆5000億円)のビジョンファンド(Techmeme記事)だ。その後、2019年に、ラテンアメリカに特化した20億ドル(約2100億円)のイノベーションファンド(未訳記事)を発表している。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Softbank GroupOpportunity Growth FundVitable Health資金調達

画像クレジット:James Steidl / Shutterstock

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(翻訳:Mizoguchi

急成長オープンソース・スタートアップは殆どがベイエリア以外出身でベンチャー資金を拒否(調査結果)

2020年の急成長するオープンソース企業の90%以上がサンフランシスコ・ベイエリア「以外で」設立され、トップ20のうち12社はヨーロッパ出身であることが、最新の調査でわかった。ROSS Index”は、Runa Capitalが発行しているレポートで、GitHubに公開リポジトリをもつ急成長のオープンソース・スタートアップを掲載している。

興味深いのは、最新リストで最速成長株に選ばれたPlausible(プローシブル)が「オープン・スタートアップ」(収益を含むすべてのデータが公開されている)であり、自社のウェブサイトで次のように謳っていることだ。「資金調達や出資の受け入れには興味がありません。個人からも、組織からも、ベンチャーキャピタルからも。私たちのビジネスモデルは、ウェブユーザーから膨大な量の個人情報を集めて分析し行動形態を予測して広告を売ることとは何の関係もありません」。同社は、自立可能な「非常に人気が高く広く使われている監視資本主義的ウェブ解析ツールプライバシーではないプライバシーに優しい代替手段」を作ることだと言っている。

実際のところ、「GitHubのスター」はオープンソース企業のプロダクトマーケットフィットを測る理想的な基準とは言えない。それでもこの調査結果は、過去10年間のVC支援スタートアップのトレンドを脱する興味深い可能性を示している。

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同様のリストを作る試みは過去にもあった。2017年に、Battery Ventures(バッテリー・ベンチャーズ)は独自のBOSS Indexを出版したが、続かなかった。2020年9月にAccelが発表したOpen100マーケットマップには多くのオープン・スタートアップが入っている。

しかし、リストに載る企業は四半期ごとに大きく変わる可能性が高い。それはGitHubで何四半期も急成長を維持する例は稀だからだ。ROSS Indexに登場する会社が頻繁に入れ替わる可能性が高いのはそれが理由だ。

たとえば、ROSSのトップ20のうち、前回のリスト(2020年Q2)に掲載された会社はHugging Face、Meili、Prisma、Framerの4社だけだ。

もちろん、オープンソースだからといって将来収益化したりベンチャー資金を調達することが絶対ないわけではない。

そして、Runa Capitalがこのリストの公開に興味をもっているのは間違いない。同社はいくつかのオープンソース・スタートアップに投資をしていて、Nginx(F5 Networksが6億7000万ドルで買収)、MariaDB、N8Nなどがいるほか、最近ではオープンソース・スタートアップ向けに1億5700万ドルのファンドを立ち上げた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

電子商取引ビジュアル検索プラットフォームのSyteが、米国とアジアでの拡大のためにシリーズCで31.4億円を調達

Syteの共同創業者、最高経営責任者Ofer Freyman(オファー・フレイマン)氏、最高収益責任者 Lihi Pinto-Fryman(リヒ・ピント=フライマン)氏、最高執行責任者Idan Pinto(アイダン・ピント)氏

イスラエルのテルアビブを拠点とする、ビジュアル検索ならびにプロダクト発見プラットフォームのSyte(サイト)は、Farfetch(ファーフェッチ)やFashion Nova(ファッション・ノバ)といったブランドですでに使用されており、今回の資金調達終了後に米国およびアジア太平洋地域へと拡大する予定だ。スタートアップは米国時間10月21日、3000万ドル(約31億4000万円)のシリーズC調達を行い、さらに1000万ドル(約10億5000万円)の借入を行ったことを発表した。

このラウンドは、Viola Venturesによって主導され、新規の投資家としてLg Tech Ventures、La Maison、MizMaa Ventures、Kreos Capital、および既存の投資家としてMagma、Naver Corporation、Commerce Ventures、Storm Ventures、Axess Ventures、Remagine Media VenturesおよびKDS Media Fundが参加した。Syteの最後の資金調達ラウンド、2150万ドル(約22億5000万円)のシリーズBが公表されたのは2019年のことだ。スタートアップはこれまでに合計で、7100万ドル(約74億2000万円)を調達している。

洋服のビジュアル検索に焦点を当てて2015年に立ち上げられた(未訳記事)Syteの技術は、今ではジュエリーや家の装飾のような他の品目をカバーし、Farfetch、Fashion Nova、Castorama(キャストラマ)、Signet Jewelers(シグネット・ジュエラーズ)などのブランドで使用されている。Syteによれば、そのソリューションを使うことでコンバージョンが平均177%上昇するという。

同社のプラットフォームは3つの主要プロダクトで構成されている。1つめのVisual Discovery(ビジュアル・ディスカバリー)は企業にビジュアル検索、レコメンデーションエンジン、そしてディスカバリーボタンを提供する。2つめの「Searchendising」(サーチエンディジング)は検索ならびにレコメンデーション結果を改善するために、ビジュアルAIに基きタグを自動生成する。そして出版社、スマートデバイスメーカー、ソーシャルプラットフォームによって使われる3つめのDiscovery Marketplace(ディスカバリー・マーケットプレイス)はプロダクト広告のリーチを広げる役割を果たす。

Syteは、2020年の初頭に比べて、顧客基盤が38%成長していると述べている。この理由の一部には、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に伴う移動制限によるeコマーストラフィックの増加も挙げられる。

同社のプレス発表で、CEOで共同創業者のOfer Freyman(オファー・フレイマン)氏は、Syteはパーソナライズされたレコメンデーションを生み出すために、「視覚、テキスト、音声など、私たちの感覚の全範囲にまたがる」プロダクト発見技術の開発または買収に焦点を当てると述べた。

Syteの現在の顧客の多くはヨーロッパ、中東、アフリカにいるため、米国およびアジア太平洋市場でのプレゼンスを高めるためにも新しい資金が使われる。

ますます多くのソーシャルメディアプラットフォームや、Amazon(アマゾン)、Target(ターゲット)、IKEA(イケア)、Walmart(ウォルマート)、eBay(イーベイ)、Snap(スナップ)、Pinterest(ピンタレスト)などのeコマースプラットフォームは、ユーザーにキーワード検索の代替手段を提供するために、ビジュアル検索ならびに認識技術を利用している。検索プロセスを簡素化したり、タグを自動的に生成したりすることで、ビジュアル認識技術は検索結果や製品レコメンデーションを改善し、より多くのコンバージョンが可能になる。

電子商取引のためのAIベースのビジュアル認識と検索技術に取り組んでいる企業は他にもある。ベンチャーキャピタルの資金を調達している、同じ分野の他のスタートアップには、Donde Search(ドンデサーチ)、ViSenze(ビセンゼ)、Slyce(スライス)などがある。

Syteのマーケティング担当副社長にGal Fontyn(ギャル・フォンティン)氏はTechCrunchに対して、同社の技術は、以前CERN(欧州核研究機関)で物理学者として働いていた、共同創業者で最高技術責任者のHelge Voss(ヘルガ・ボス)氏によって開発されたビジュアルAIアルゴリズムによって差別化されているのだと語った。

ボス氏のニューラルネットワークと機械学習のバックグラウンドによって、Syteは1秒未満で95%以上の精度のオブジェクトマッチング結果を生成できる、ビジュアル検索ソリューションを構築することができたのだとフォンティン氏はいう。そのアルゴリズムは、世界中のベンダーの何百万もの製品についても訓練されていて、それをSyteは「最大の特定業界向け辞書」だと主張している。これにより、画像内の複数のオブジェクトを認識し、詳細なタグを割り当てることができるのだ。

Syteを使用するブランドは、ROIの平均として423%の増加を見ている、とフォンティン氏は付け加えた。

関連記事:
・Syte snaps up $21.5M for its smartphone-based visual search engine for e-commerce(未訳記事)
・Walmart is testing its own, in-house visual search technology on Hayneedle(未訳記事)

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(翻訳:sako)

2020年のPearオンラインデモデーに登壇した18組の前途有望なスタートアップ

創業8年となるカリフォルニア州パロアルトに拠点を置くシードステージベンチャー企業のPearは、設立当初から、前途有望な才能を見抜く力をもっている(未訳記事)と一部のVCたちからの注目を集めていた。そのPearが先週初めに7回目の年次デモデーを開催した。今回はオンラインでの開催となったが、参加スタートアップの1つはすでに最高ランクのVCから条件規定書を提示されている。

読者のみなさんに、内容を垣間見てもらうため登壇したすべてのスタートアップたちの概要をお届けしよう(以下、人名敬称略)。


1.AccessBell(アクセスベル)
エンタープライズワークフロー用のビデオ会議プラットフォーム

ウェブサイト:accessbell.com

創業者:Martin Aguinis(マーティン・アギニス)CEO、Josh Payne(ジョシュ・ペイン)COO、Kamil Ali(カミル・アリ)CTO

発表内容:企業が顧客やパートナーと社内外でコミュニケーションをとるための優れた方法の1つとして、ビデオが注目されてきている。ZoomやWebExなどの現行のビデオ会議ツールは、個別のビデオには最適だが、それ自身のエコシステムを持っていて、多くのエンタープライズワークフローには統合されていない。つまり、AgoraやTwilioのような統合を行うAPIツールを使うためには、カスタマイズやメンテナンスのために開発チームの手作業を必要とする。AccessBellは、Zoomの拡張性と信頼性、およびTwilioのカスタマイズ性と統合性を、ローコード統合とノーコードコード拡張で可能にするプラットフォームだ。

チームが追いかけているのは大きな市場で、2027年までには86億ドル(約9064億円)に成長する(Grand Viewer Research記事)と予想されている。AccessBellをテストしたいユーザーための現在のコストは、1ホストあたり月額27ドル(約2850円)だ。


2.FarmRaise(ファームレイズ)
農民たちに対して、持続可能な農場を作り生活を改善するための経済的機会を解放する

ウェブサイト:farmraise.com

創業者:Jayce Hafner(ジェイス・ハフナー)CEOSami Tellatin(サミテ・ラティン)COOAlbert Abedi(アルバート・アベディ)プロダクト

発表内容:米国の農場の半数以上は、農場を改善して利益を上げる方法を発見するために必要な、ツールや処理能力を持っていない。このスタートアップのAPIは農家の銀行口座にリンクし、アルゴリズムで財務を評価して、農場の財務健全性をスコアリングした「農場報告」を提供する。次に、定期的に農場のデータをモニタリングして、顧客の農場を改善する方法に関するクリーンな財務ならびに推奨事項を継続的に提供し、同時にスコアを改善するために農家と資本を結び付ける(例えばある農場が特定の持続可能性の実践に投資している情報を共有するかもしれない)。

いずれは同社が収集した大局的な洞察を、ヘッジファンドや州政府もしくは食料安全保障や気候変動に関する今後の問題を、より適切に処理したいその他の組織に販売するというアイデアもある。


3.Sequel(シークエル)
生活必需品をリエンジニアリングする─手始めはタンポンから。

ウェブサイト:thesequelisbetter.com

創業者:Greta Meyer(グレタ・マイヤー)CEOAmanda Calabrese(アマンダ・カラブレーゼ)COO

発表内容:スタンフォード大学の学生アスリートによって設立されたSequelは、世の女性の10人のうち7人が、1931年に(男性によって)最初にデザインされたタンポンを信用していないと主張している。Lola(ローラ)のような新しいブランドはキャッチーなブランドを持っているが、主な違いは素材であり、製品のデザインやパフォーマンスではない。その代わりにSequelは流体力学、特に流速を遅くすることに重点を置いているため、タンポンがいっぱいになる前に漏れることはない。このことは会議室にいるか、スタジアムにいるかにかかわらず、顧客の信頼を徐々に勝ち取ることになるだろう。

同社によれば、すでに特許を申請して製造パートナーを確保しており、2021年には自社のウェブサイトや他の店舗から、直接購入できるようになることを見込んでいるという。


4.Interface Bio(インターフェース・バイオ)
スタンフォード大学での長年の研究に基づく微生物、代謝物、治療反応を特徴づけるハイスループットパイプラインを使って、マイクロバイオーム(細菌叢)による治療の可能性を解き放つ

創業者:Will Van Treuren(ウィル・ヴァン・トレウレン)Hannah Wastyk(ハンナ・ワスティク)

発表内容:マイクロバイオーム(細菌叢)は心臓病、腎臓病、肝臓病、癌などの、さまざまな人間の病気で主要な役割を果たしている。実際、PhDを持つInterfaceの2人の創業者は、マイクロバイオームの影響を受けた病気が、米国の死因トップ10のうち4つに関与していると述べている。では、マイクロバイオームを利用することで、治療法を特定する機会をどのようにうまく捉えるのだろうか。彼らは、代謝物とその免疫表現型を特徴づけるための高速パイプラインを使ってそれを行うと説明している。マイクロバイオームによって媒介される、化学の世界最大のデータベースを開発することによって、そのパイプラインを構築するのだ。その後、スタートアップは新しい治療法につながる可能性のある潜在的な代謝物をスクリーニングしていく(この発表の最中にコーヒーをこぼしたので、一部の詳細を見逃したが、おそらくスタートアップの創業者とサイトからもっと学ぶことができるだろう)。


5.Gryps(グリップス)
Grypsは、サイロ化した建設情報に取り組み、建物や施設のオーナーが文書を中心とした情報に、リッチかつ永続的なアクセスをできるようにする、共通の情報レイヤーを作成している

ウェブサイト:gryps.io

創業者:ダリーン・サラマアミール・タスビヒ

発表内容:建設業界の広大さと複雑さにより、建設プロセスのさまざまな側面に対応するあらゆる種類のソフトウェアとサービスが生まれてきた。その結果データとドキュメントが多くのサイロ化されたツールに分散することになった。Grypsは、すべての建設向けツールが置き去りにしているところを取り上げるのだという。建設作業の最後にプロジェクトの成果物を取り込み、施設のオーナーが将来のプロジェクトを運用、改修、または構築するために必要なすべての情報を、さまざまな建設ツールから取り込み、埋め込まれた情報をマイニングするプラットフォームを通して提供する。そしてオーナー中心のワークフローを通じてアクセスを提供する。


6.Expedock(エクスペドック)
サプライチェーンビジネスの自動化インフラ。まずはAIを活用した貨物取扱ソリューションから。

ウェブサイト:expedock.com

創業者:King Alandy Dy(キング・アランディ・ダイ)CEOJeff Tan(ジェフ・タン)COORui Aguiar(ルイ・アギアル)CTO

発表内容:貨物取扱人は発送人と受取人両者の地域事務所で、輸送貨物に関わるすべての財務、承認、事務処理などを処理するが、こうした地域事務所とのやりとりは記入用紙、文書、そして電子メールなどの非構造化データを介して行われることが多く、その結果運用コストの最大60%が使われる可能性がある。Expedockは、非構造化データの処理と入力をデジタル化して自動化し、さまざまなローカルパートナーや政府システムに渡せるようにすることで、貨物取扱業界を変革しようとしている。これには「人間を取り込んだ」(human in the loop)AIソフトウェアサービスも含まれる。


7.Illume(イリューム)
感謝を共有する新しい方法

ウェブサイト:illumenotes.com

創業者:Sohale Sizar(ソハレ・サザー)CEOPhil Armor(フィル・アーマー)エンジニアリングMaxine Stern(マクシン・スターン)デザイン

発表内容:人に感謝を伝えるプロセスには困難が多い。紙のカードを購入し、署名し、渡す必要がある。Facebook(フェイスブック)での挨拶では限界がある。Illumeを使用すれば、チームや個人がアプリをダウンロードしたり、Slackに集まったりして、カスタマイズ可能でプライベートな共有可能メモを作成できる。この生まれたてのスタートアップによれば、1枚のカードには通常10人の寄稿者がいるという。企業に対しての請求額は、1ユーザーあたり月額3ドル(約316円)であり、特に営業チームがそれを活用できる。


8.Quansa(クワンザ)
Quansaは、雇用主ベースの経済的ケアを通じてラテンアメリカ労働者の経済生活を改善する

ウェブサイト:quansa.io

創業者:Gonzalo Blanco(ゴンザロ・ブランコ),Mafalda Barros(マファルダ・バロス)

発表内容:ラテンアメリカ全体で、従業員全体の40%が、経済的な問題のために過去12カ月の間に仕事を失った。Quansaは、雇用主たちが同社のソフトウェアを使用して、従業員の給与データを銀行、フィンテック、その他の金融機関にリンクし、従業員が経済的に健全な軌道に乗る支援ができるようにしたいと考えている。

同社は数に強みがあるという。例えば雇用主を通じて、より多くの顧客を貸付機関に集めることによって、従業員は最終的にはより有利な自動車ローンにアクセスできるようになるはずだ。


9.SpotlightAI(スポットライトAI)
Spotlightは、NLP(自然言語処理)技術を使用して、PIIやその他の機密性の高いビジネスデータへのアクセスを識別、匿名化および管理することにより、機密性の高い顧客情報を負債から資産に変える

ウェブサイト:hellospotlight.com

創業者:Austin Osborne(オースティン・オズボーン)CEO

発表内容:GDPRやCCPAなどのデータプライバシー法によって、罰金、訴訟、否定的なメディア報道のリスクがあるために、企業がもはや顧客データを使用してビジネスを運営することができない時代が生まれている。Spotlightのソフトウェアは、APIを介して既存のデータストレージエンジンにプラグインされて、企業のネットワーク内のミドルウェアとして動作する。同社によれば、高度なNLPおよびOCR(光学文字認識)技術を使用して、非構造化データ内にある機密情報を検出し、複数のタイプの匿名化を実行して、深いアクセス制御レイヤーを提供できるという。


10.Bennu(ベンヌ)
Bennuはマネジメントコミュニケーションのループを完結させる

ウェブサイト:bennu.io

創業者:Brenda Jin(ブレンダ・ジン)CEO

発表内容:今どきの仕事のコミュニケーションはフォーム、電子メール、Slack、文書を介して行われている。タイムラインというものは不自然なものだ。Bennuは、統合と機能と従業員が数時間ではなく数秒で実質的なマネジメント対話のための準備をすることに役立つスマートトピックの提案を利用することで、コミュニケーションループの問題を解決しようとしている。


11.Playbook(プレイブック)
Playbookは、チームや顧客などと行うプロセスを、作成、実行、追跡できるシンプルなシステムを使用して、繰り返し可能なワークフローにおける人びとの調整を自動化する。

ウェブサイト:startplaybook.com

創業者:Alkarim Lalani(アルカリム・ララニ)CEOBlaise Bradley(ブレイズ・ブラッドリー)CTO

発表内容:例えば毎週20人の時間給労働者からタイムカードを収集する場合でも、30人のカスタマーオンボーディング管理する場合でも、通常は電子メールを介して人びと全体を相手にした反復ワークフローを調整し、スプレッドシートを使ってその内容を追跡する。Playbookによれば、同社のシステムは変数や条件付きロジックなどのプログラミングコンセプトを採用することで、顧客が任意のワークフローをモデル化し、人びとの間での大規模なワークフローを調整できるようにする。そしてすべてをインターフェイス付きでパッケージ化することで、誰でも数分でワークフローを構築できるようにする。


12.June Motherhood(ジューン・マザーフッド)
人生の最も重要な移行期に対するコミュニティベースのケア

ウェブサイト:junemotherhood.com

創業者:Tina Beilinson(ティナ・ベイリンソン)CEOJulia Cole(ジュリア・コール)COOSophia Richter(ソフィア・リヒター)CPO

発表内容:Juneはコミュニティを中心として、母体の健康に焦点を当てるデジタルヘルス企業だ。糖尿病管理のためのLivongo(リヴォンゴ)のように、Juneは共有アポイントメント、ピアツーピアサポート、認知行動療法に関する最新の研究を組み合わせて、毎週のプログラムを通じて、結果を改善し、コストを削減する。


13.Wagr(ワグ)
友好的な賭けで誰にでも挑戦できる

ウェブサイト:wagr.us

創業者: Mario Malavé(マリオ・マラヴェ)CEOEliana Eskinazi(エリアナ・エスキナージ)CPO

発表内容:Wagrはスポーツファンの仲間内で、公正かつ簡単な方法で賭けを行うことを可能にする。賭けを設定するのも3つのステップが必要なだけだ。すなわちチームを選び、金額を設定して、送るだけ。Wagrは正しいオッズを設定し、賭金を処理する。

ユーザーは友達に挑戦したり、グループを開始したり、リーダーボードを眺めたり、他の人が何に賭けているかを確認したりすることができる。このため、たとえ一緒にいなくても、つながりを感じることができる。プラットフォームを使用して賭けの対象を探すときに手数料が発生するが、友人との間の賭けは無料だ。計画ではまずテネシー州から運用を始め、そこから外部に拡大していく予定だ。


14.Federato(フェデラート)
リスク新時代のための情報サービス

ウェブサイト:federato.ai

創業者:Will Ross(ウィルロス)CEOWilliam Steenbergen(ウィリアム・ステンベルゲン)CTO

発表内容:自然災害の量と深刻さが増し続けているため、保険会社はリスク管理に苦労している。再保険はもはや信頼できるバックネットではなく、最大規模の保険会社の一部は、再保険を差し引いても6億ドル(約632億8000万円)以上の四半期損失を被っている。

Federatoはポートフォリオ全体の動的最適化を使用して、保険業者ををより良いポートフォリオバランスに導く、保険業者ワークフローを構築している。このソフトウェアは、アクチュアリーとポートフォリオアナリストによる高レベルのリスク分析を、最前線の保険業者の手に与えることで、任意の時点における「次に取るべき最善のアクション」を知るのに役立てることができる。


15.rePurpose Global(リパーパス・グローバル)
どのような規模の消費者ブランドでもプラスチック中立になることを支援する、プラスチッククレジットプラットフォーム

ウェブサイト:business.repurpose.global

創業者:Svanika Balasubramanian(スベニカ・バラサブラマニアン)CEOAditya Siroya(アディティア・シロヤ)CIOPeter Wang Hjemdahl(ピーター・ワン・ヘムダール)CMO

発表内容:世界中の消費者が、数分ごとに380万ポンド(約1700トン)が環境に漏れ出ているプラスチック廃棄物を排除するための行動をとることを、企業に要求している。しかし、たとえ各ブランドが努力してもその代替品はしばしば高価すぎるか、環境にとってより悪いものだ。

このスタートアップを通して、各ブランドは一定量のプラスチックの除去を約束することができる、その後スタートアップと提携する各地の廃棄物管理パートナーによって実際の除去が行われ、元のブランドの名の下にリサイクルが行われる(除去プロセスが特定の基準に準拠していることはrePurposeが確認する)。スタートアップは、このプラスチッククレジット市場を運営することで、健全な余裕を維持できると述べているが、その究極のビジョンは、社会的、経済的、環境的影響を生み出す企業のためのワンストップショップになることだ。


16.Ladder(ラダー)
次世代のためのプロフェッショナルコミュニティプラットフォーム

ウェブサイト:ladder.io

創業者:Akshaya Dinesh(アクシャヤ・ディネッシュ)CEOAndrew Tan(アンドリュー・タン)

発表内容:LinkedInは最悪だ、誰もがそれを嫌っている。ラダー(今後、商標権侵害による争いが勃発する可能性がある)は、ネットワークではなくコミュニティを中心にプラットフォームを構築している。ここでのアイデアは、ユーザーが興味を持つ個別の業界とロールに対して、同じ関心をもつ個人同士のコミュニティに参加するということだ。参加することで、ユーザーは業界の専門家とのAMA(Ask Me Anything、「〇〇だけど質問ある?」のようなもの)に参加し、さまざまな機会を共有し、1対1で会話することができる。

長期的な観点における「moat」(「堀」、競争から守ってくれるもの)は 、ユーザーから収集したデータだ。同社はそれがLinkedInよりも1ユーザーあたりの収益を与えてくれると考えている(ちなみに、Ladderがすでに条件規定書にサインしたスタートアップだ)。


17.Exporta(エクスポータ)
Exportaは、ラテンアメリカのサプライヤーと北米のバイヤーをつなぐB2B卸売市場を構築している

ウェブサイト:exporta.io

創業者:Pierre Thys(ピエール・タイズ)CEORobert Monaco(ロバート・モナコ)社長

発表内容:現在米国は、毎年中国よりもラテンアメリカからたくさんのものを輸入しているが、ラテンアメリカから調達は断片化されており、手作業のままだ。Exportaは、現地での関係を構築し、ラテンアメリカのサプライヤーたちを、より速い納期とより透明性の高い製造関係を求めている米国のバイヤーとマッチングさせるプラットフォームへと導く。


18.Via(ビア)
Viaは、新しい国の中にまるで本社にいるように簡単にチームを編成する手助けをする

ウェブサイト:via.work

創業者:Maite Diez-Canedo(マイテ・ディエス=カネド)Itziar Diez-Canedo(イチア・ディエス=カネド)

発表内容:新しい国でチームを編成することは非常に複雑だ。企業には現地の事業体、契約、給与、福利厚生、会計、税金、コンプライアンスなどが必要となる。Viaを使用することで企業は、現地の事業体を活用して、チームを合法的に雇用し、新しい国で自社のチームを迅速かつ合法的に構築できる。そしてローカル契約、給与、福利厚生を1つのプラットフォームに統合できる Viaは、地元の採用エコシステムに入り込み、顧客のためにすべての面倒な作業を行い、従来の代替手段よりも少ない費用で48時間以内にチームを立ち上げることを約束する。同社によれば、カナダとメキシコでは、すでに事業が開始されており、従業員1人あたり月額600ドル(約6万3000円)が請求されているということだ。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Pear

画像クレジット:Franck Bichon / Getty Images
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(翻訳:sako)

東大IPCインキュベーションプログラム「東大IPC 1st Round」が第3回支援先を発表

東大IPCインキュベーションプログラム「東大IPC 1st Round」が第3回支援先を発表

東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)は10月15日、国内リーディングカンパニーとのコンソーシアム型インキュベーションプログラム「東大IPC 1st Round」の第3回支援先を発表した。また新たな陸運業界のパートナー企業として、ヤマトホールディングスが参画することを明らかにした。なお、同プログラムは1年に2回実施しており、現在第4回の公募(11月25日まで)も実施している。

東大IPC 1stRoundは、米スタンフォード大学出身者によるアクセラレータプログラム「StartX」をベンチマークに東大IPCが開始したインキュベーションプログラム。その対象は、スタートアップの起業を目指す卒業生・教員・学生などの東京大学関係者や、資金調達を実施していない東京大学関連のシードベンチャーとなっている。

支援先となるスタートアップ企業には、パートナー企業の協賛による各社最大1000万円の活動資金を支援。このパートナー企業としては、先のヤマトホールディングス以外では、すでにJR東日本スタートアップ、芙蓉総合リース、三井住友海上火災保険、三井不動産、三菱重工業、日本生命保険、トヨタ自動車の7社が参画済みだ。

さらに東大IPCは、本格的な事業開始に必要なリソースを実証実験・体制構築・広報・資本政策策定などのハンズオン支援とともに6ヵ月間併走し、視線先事業の垂直立上げの実現を目指す。

東大IPC 1st Roundでは、すでに過去2年間に累計29チームを採択し、会社設立・資金調達を支援。採択1年以内の会社設立割合は100%、資金調達成功率は約90%、大型助成金の採択率は50%となっているという。

また同プログラムは、会社立ち上げと最初の資金調達を支援すると同時に、大手企業と有望な東大関連ベンチャーの協業関係の創出にも注力。すでに採択先とパートナー企業の資本業務提携など、パートナー企業と採択先企業のアライアンスが多数実現しているという。2020年からは採択先に対する東大IPCによる投資も開始しており、BionicMおよびアーバンエックステクノロジーズに対する投資を実行済みとしている。

今回支援先として採択された7チームは、以下の通りだ。

JIYU Laboratories: 学術論文の自動要約サービスによる情報収集の効率化

JIYU Laboratoriesは、学術論文をAI技術により要約し、非英語圏研究者の研究効率を劇的に向上させることを目指すスタートアップ。

一般に学術論文は英語で書かれており、非英語圏研究者の場合、何時間もかけてそれら論文を読んだ末に、結局自分にとって関係ない内容であることが判明することが多々ある。

そこでJIYU Laboratoriesは、論文要約サービス「Paper Digest(ペーパー・ダイジェスト)」を開発することで、文章全体を読むことなく、その内容がユーザーにとって有益であるかを判断できるようにした。

JIYU Laboratoriesのメンバー2名は、いずれも大学の研究者であり、多くの非英語圏研究者の目線を意識した開発を強みとしている。

セレイドセラピューティクス: 造血幹細胞の体外増幅技術を用いた医療への応用

近年、新たな治療法として、幹細胞を用いた医療への応用が注目されている。なかでも血液の源である造血幹細胞は、白血病などのがんをはじめ難治性の血液疾患や遺伝子疾患など、様々な疾患の治療に有益であるとされている。

しかし、セレイドセラピューティクスによると、現在の臨床現場では造血幹細胞を体外で増幅することは難しく、性質の良さを最大限に利用できていないという。

これを解決すべくセレイドセラピューティクスは、造血幹細胞の体外増幅技術を活用することで、これまでにない医療への応用方法を提案し、新たな治療法を開発することを目指すとしている。

SoftRoid: 建築現場を巡回しデータ収集するソフトロボットおよびアプリの開発

SoftRoidは、不整地などを走破可能なソフトロボットと、現場の可視化・分析アプリケーションにより、建設業界の労働生産性向上を目指すスタートアップ。

製造現場ではセンサーを配置し「データ収集→可視化→分析→改善」により生産性向上を図るものの、多くの建築現場では人手による断片的な写真撮影と目視による進捗管理が行われており、データ収集・活用が進んでいないという状況にある。

この課題の解決に向けSoftRoidは、建築現場で想定される不整地や階段を走破可能なソフトロボットと、現場の可視化・分析アプリケーションを開発。

センサーを搭載したロボットが建築現場を自動巡回することで、「データ収集→可視化→分析→改善」というサイクルを可能にし、建築現場の労働生産性向上を推進する。

ARAV: 重機の遠隔・自動化により現場をアップデート

ARAVは、既存の建設機械に後付で先進機能を追加することで、建設現場のDX・自動化を目指すスタートアップ。

ARAVによると、建設業界は、市場規模60兆円にもかかわらず、求人に対して16.6%しか働き手が集まらず、55歳以上が約35%かつ29歳以下が約11%と他業界よりも高齢化が進行し、深刻な人手不足が続いているという。

ARAVは、自動運転技術による協調無人施工建機、自動運転技術による協調無人施工建機、建機を含む現場の状況管理クラウドサービスを提供。

2020年6月には、油圧ショベルをインターネット経由でリアルタイムに遠隔操作する実証実験に成功、同システムの事業化を開始した。同遠隔操作装置は、メーカー・機種を問わずに既存の建設機械に後付けで搭載でき、インターネットに接続したノートPC、スマートフォンであればどこからでも遠隔操作が可能となっている。

HarvestX: 植物工場における自動受粉・収穫ロボットシステムの開発

HarvestXは、農作物の完全自動栽培による食糧問題の解決をミッションとして掲げるスタートアップ。その実現の一歩としてイチゴの完全自動栽培の実現に取り組んでいる。

現在、レタスやバジルといった葉物野菜の植物工場は多い一方、果菜類の植物工場はほとんど存在しない。その理由としては、一般的に受粉に用いられるミツバチの飼育が困難、工場内における受粉手段の欠如といった課題が挙げられる。

この受粉については、現状ほとんどの作物がミツバチによる虫媒受粉に頼っているため、代替手段となる技術開発が求められているという。

これら課題解決のため、HarvestXはロボットによる受粉・収穫技術を確立し、果菜類の植物工場、完全自動栽培を実現することを目指している。今後イチゴだけでなく多種多様な作物への応用など、研究開発および事業化を推進していく。

ヤモリ: 収益不動産を最適化するクラウド不動産経営管理ソフト

ヤモリは、「不動産の民主化」をミッションに、所有不動産の収支を可視化し、管理業務を効率化するクラウドサービスを提供するスタートアップ。すでに個人・法人の不動産オーナーと管理会社が利用しており、約100億円の不動産資産を管理している。

不動産投資に関する情報は閉ざされているため、不動産の所有は一部の人に偏っているという。これが空き家や建物の老朽化、低属性の方の入居拒否増加といった社会課題の根幹にあるとしている。

ヤモリは、デジタル技術を活用し、しっかりと賃貸経営を行える不動産オーナーを増やすことで、賃貸市場を活性化させ、透明性ある不動産市場の実現を目指している。

ORLIB: 二次電池および関連製品の企画・製造・販売・輸出入と知的財産許諾事業

ORLIBは、リチウムイオン電池の技術をベースに、多電子反応を利用した高エネルギーで、エコ・安全・低コストの新世代二次電池の実用化を目指すスタートアップ。

まずは軽量・高エネルギーの特徴を活かしドローン向け電池に取り組み、現在のドローンが抱える飛行時間が短いという課題への解決策を提示する。これにより新型電池としての実績を確保し、他の広範な用途への電池の展開の基礎とすることを目指している。

ORLIBの新世代二次電池は、従来よりも大きなエネルギーを手軽かつ安価に貯蔵し、必要に応じて取り出せるため、持続的で豊かな社会の実現に貢献できるとしている。

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カテゴリー: VC / エンジェル
タグ: 東京大学協創プラットフォーム開発 / 東大IPC日本

Bullpen Capital(ブルペン・キャピタル)が遠隔地の過小評価を受けているスタートアップへの資金提供に向け1億3000万ドルを調達

今年創立10周年を迎えるブルペン・キャピタルは、サンフランシスコに拠点を起く、ポストシード投資と呼ばれる投資に力を入れているベンチャーファンドである。共同創設者であるPaul Martino(ポール・マルティノ)氏によると、同社は既に500万ドル(約5億3000万円)を調達し、かつ「1000万ドル(約10億6000万円)の資金を調達する準備は整っていないものの、さらに500万ドル(5億3000万円)を得られれば大いに能力を発揮しそうな」スタートアップに資金提供を行っている。このブルペン・キャピタルがキャピタルコミットメントにおいて1億3000万ドル(約137億3000万円)に上る5回目の資金調達を完了した。

また同社には、新たなジェネラルパートナーとしてAnn Lai(アン・ライ)氏が加わった。ハーバード大学で工学博士号を取得した彼女は、かつてBinary Capital(バイナリ・キャピタル)(現在は閉業している)に在籍し、そこで創設者と地理的観点の両方から、より多様なスタートアップを取り込むことに関するテーゼを打ち立てたのだが、この考え方は、ブルペンが最も力を注いでいることでもある。

今週始めに行ったマルティノ氏とライ氏に対する電話取材の中で、彼らは、スタートアップのHemster(ヘムスター)を挙げながら、ブルペンとライ氏がそれぞれスタートアップにどういった考えを持っているか、またライ氏が約1年前にヘムスターの話をブルペンへ持ち込んだ直後に、同社が彼女を新たなGPとして迎え入れようと決めた理由を説明した。

ヘムスターは、たまたま「初めて起業する」「女性(Allison Lee)」が、「単独で」設立した。ベンチャーキャピタル業界では従来、これは三重に不利な条件とされている。

ヘムスターが行っていること(オンデマンドによる仕立てサービス)も、必ずしもベンチャー的観点から魅力のあるものには見えない。ライ氏のプレゼンテーションに対する彼の最初の反応は、「なぜ我々がこの会社に投資をしなければならないのか?」であったとマルティノ氏は認めた。

しかし、彼女には(最終的にはブルペンもライ氏の見方に同調したのだが)、ヘムスターがオフラインからオンラインショッピングへの継続的な移行をつかむための好位置につけている企業であるということがわかっていた。オンラインショッピングでは、あらゆる種類のテクノロジーを用いて、顧客により良いフィット感を保証するために体型を数値化しようとしてきた経緯がある。しかしヘムスターは、顧客と彼らの好むサイズデータを構築することを通し、デジタルリテールの世界で個人がどこででも使えるポータブルIDを開発できる可能性を持っていた。

同社はAlo Yoga(アロー ヨガ)やFarfetch(ファーフェッチ)と共に既にその技術を検証している。仮にすべてが順調にいけば、ヘムスターはゆくゆくは主要リテーラーのパートナーになるだろう。また「サイズ調整を行って気に入ったフィット感が見つかれば、リテーラーに関係なく、同じフィット感を再現できるのです」とライ氏は述べた。

ブルペンは、Eric Wiesen(エリック・ウィエセン)氏やDuncan Davidson(ダンカン・ダビッドソン)氏の2名のGPも運営に加わっているのだが、他の投資家により見過ごされているスタートアップの提案に耳を傾け、それを積極的に推進していく、という立場をとっている。

今週初めに行われた会談の中で、マルティノ氏は、Nigel(ナイジェル・エクレス)氏とLesley Eccles(レスリー・エクレス)氏夫妻が共同で設立した、スコットランド、エディンバラに拠点を置くゲーム会社、FanDuel(ファンデュエル)を挙げた。「どのファンドもこの会社を過小評価していました」とマルティノ氏。「同社の地理的位置もチーム組成も好条件とは言えませんでした。私たちが共同で投資するファンドとして接触した企業のうち、何社が『カテゴリー的に、夫婦からなるチームへの投資は、100%ありえない』と言ったかしれません」。

ファンデュエルはFlutter Entertainment(フラッター・エンターテインメント)に改名し、評価額は最終的に10億ドル(約1055億円)に達し、その後アイランド、ダブリンに拠点を置くブックメーカーのPaddy Power Betfair(パディ・パワー・ベットフェア)にその半額で売却された。 ファンデュエルのエグジットはマルティノ氏の指摘を裏付けるものだが、この話の結末はハッピーエンドではなかったことを伝える必要がある。今年はじめ、ファンデュエルの創設者は、プライベートエクイティ投資会社のKKRおよびShamrock Capital(シャムロック・キャピタル)を相手取り、この売却後、彼らがファンデュエルの創設者、初期の従業員、および初期の資金提供者を、スポーツゲームサイトにおける権益から締め出したとして訴訟を起こした

ブルペンの型破りな姿勢を示す最近の投資としては、アイルランドに拠点を置くコスメティッククリニックチェーンで、現在米国へ進出中のSisu Cosmeticsへの投資が挙げられる。創立2周年を迎えようとしている同社は、Greycroft(グレイクロフト)およびブルペンがリードするシリーズA資金調達で、今週初め550万ドル(約5億8000万円)を調達したと発表した。

ブルペンが提供する資金はすべて額面が似通っており、ざっと25のスタートアップを支援している。同社の資金提供は通常、400万ドルから600万ドル(約4億2000万円から6億3000万円)規模のラウンドに200万ドルから400万ドル(約2億1000万円から4億2000万円)が投資されるが、マルティノ氏は同社の新しい資金提供も同様だと見込んでいると語った。

ライ氏は、バイナリにおいては、女性求職者は顔写真を提出しなければならないなど、ハラスメントの社風があるとしてバイナリの共同創設者に対する訴訟を起こしていたが、この訴訟は今年始めに解決に至った。彼女は今回の資金提供では全体の4分の1の小切手を発行する立場となる。

やや有名なこの訴訟について、なにかコメントはあるかと尋ねたところ、彼女は、この訴訟は彼女の中では随分前に済んだことだと述べた。

関連記事:ベンチャーキャピタリストの「リーン」資金モデル
カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:資金調達 Bullpen Capital

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(翻訳:Dragonfly)

エースタートが宇宙特化型「スペーステック2号ファンド」を運用開始、ファンド規模は38億円

エースタートが宇宙特化型「スペーステック2号ファンド」を運用開始、ファンド規模は38億円

独立系VCのエースタートは10月14日、宇宙特化型「スペーステック2号ファンド」(ASエースタート1号投資事業有限責任組合)の設立・運用開始を発表した。ファンド規模は38億円。同社の累計運用総額は115億円規模となった。

スペーステック2号ファンドは、コロナ渦の影響から当初予定を変更し、約2ヵ月という限定的な募集期間設定となったものの、大手証券会社との連携などによる出資者募集は堅調に推移。宇宙ベンチャー業界への期待の高まりを改めて反映する形となったという。

同社は昨年、日本初となる宇宙特化型投資ファンド「スペーステック1号ファンド」を組成しており、今回はそのコンセプトを引き継いだ2号ファンドとなっている。

同ファンド運営のエースタートは、渡邊一正氏が2015年に設立した独立系VC。「事業家系VC」という独自のポジションを取り、実務経験に基づいて、特にIPOに向けた体制やシナリオ作りなど、出資先企業の要望に応じて伴走することを特徴としているという。

これまでにも、テック系ベンチャー投資ファンド「@tech(エーテック)ファンド」1号(2015年)、2号(2018年)、「スペーステックファンド」1号(2019年)を組成、スペーステック2号ファンドと並行して運用している。今回のローンチにより、同社が運用するファンドの累計総額は115億円となる。

またスペーステック2号ファンドは、アストロスケールホールディングスのシリーズEのファイナンスにおいて、リードインベスターとしてすでに出資を行っている。

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DRONE FUNDが目標調達額100億円とする3号ファンドからの新規投資活動を順次開始

DRONE FUNDが目標調達額100億円とする3号ファンドによる新規投資活動を順次開始

「ドローン・エアモビリティ前提社会」の実現を目指すベンチャーキャピタル「DRONE FUND」(ドローンファンド)は10月14日、目標調達額を100億円とする「DRONE FUND 3号投資事業有限責任組合」(3号ファンド)を2020年5月に設立し、2020年9月にファーストクローズを迎えたと発表した。SMBC日興証券、NTTドコモ、ソフトバンク、小橋工業、国際航業、リバネスなどが投資家として参加している。

また、ドローンファンドは2021年3月(予定)のファイナルクローズに向けて資金調達を続けるともに、今回の発表をもって3号ファンドからの新規投資活動を順次開始すると明らかにした。

DRONE FUNDが目標調達額100億円とする3号ファンドによる新規投資活動を順次開始

ドローンファンドは、「ドローン・エアモビリティ社会実装ファンド ~社会受容性の強化と5Gの徹底活用~」というコンセプトのもと、3号ファンドの活動を展開予定。具体的には、次世代通信規格の5Gをはじめ通信インフラの徹底活用などを通じて、フィールド業務の自動化やリモート化などの産業活動のDXを可能とし、ドローン・エアモビリティの社会実装に寄与するテクノロジーへの投資を実行する。

また既存ファンドも含めると、ドローンファンドには大手通信事業者3社が投資家として参画しており、スタートアップ支援に限らずドローン・エアモビリティ産業の発展にあたって理想的な座組みが形成できつつある。ドローンファンドは、今後3号ファンドに参画する投資家とも精力的な連携を行いながら、ドローン・エアモビリティ前提社会の実現にむけた投資を加速していくとしている。

ドローンファンドは、「ドローン・エアモビリティ前提社会」の実現を目指し、関連スタートアップへの投資を積極的に実施。15.9億円で組成した1号ファンド、52億円で組成した2号ファンドを通じて、国内外40社以上のポートフォリオを形成している。

1号ファンドの代表的な投資先としては、2018年12月、ドローン銘柄として初の東証マザーズ上場を果たした自律制御システム研究所が挙げられる。2号ファンドでは、SkyDriveなどのエアモビリティ領域、マレーシアのAerodyne Groupに代表される海外の有力スタートアップ、その他必要不可欠なコアテクノロジーを有するスタートアップなどに投資領域を拡大するなど、「空の産業革命/移動革命」を全方位的に牽引してきた。

また、昨年度は「2022年度におけるドローンのレベル4運用の解禁」、「2023年度におけるエアモビリティの事業化開始」という政策目標が閣議決定され、地方自治体の活動も活発化している点を指摘。これらの機運を追い風に、日本のドローン・エアモビリティ関連のスタートアップにはますます飛躍が期待されているとした。
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London Business SchoolとLocalGlobeが女性、黒人、アジア人に力を入れる新しいVCコースを発表

今週、英国で開催されているBlack Tech Fest(ブラック・テック・フェスト )に足並みを揃えるように、VC業界に入りたい人たちを教育するための新しいエグゼクティブ教育コースが英国で発足した。このコースはこれまで過小評価されてきたグループ、特に女性、黒人、アジア人、その他のマイノリティを対象にすることを意識している。

このたびLondon Business School(ロンドン・ビジネス・スクール)とヨーロッパを代表するシード投資家の1つであるLocalGlobe(ローカルグローブ)が共同で、VC業界全体が必要とする役割への正式なビジネス教育を提供するために、新しいプログラムを作成した。そのNewton Venture Program(ニュートン・ベンチャー・プログラム)コースは、VC投資家からリミテッドパートナー、エンジェル投資家、アクセラレーター、技術移転担当者までを含む、ベンチャーエコシステムにおける投資側の役割の全範囲をカバーしている。このプログラムの目的は、人びとがベンチャーキャピタル業界に参加できるルートを広げながら、業界のスキルを底上げすることだ。

コースでは性別の割合が半々になることを目指しており、同時に少なくとも半数が黒人、アジア人、その他のマイノリティになるように考慮されている。コースは初心者もしくは中堅を広く対象としている。

毎年、最大60人の学生からなる2つのクラスが用意され、最初のオンラインプログラムは2021年4月に開始される予定だ。また最初の実キャンパスクラスは、2021年10月に開始される予定となっている。世界中のどこからでも応募することが可能だが、大部分は英国、EU、アフリカ、イスラエルからと予想されている。

オンラインのみのプログラムには2050ポンド(約27万9000円)、中堅の専門家を対象としたLondon Business Schoolキャンパスでの対面式プログラムには1万6000ポンド(約217万8000円)の費用がかかる。どちらのプログラムも最大100%の奨学金を利用することができる。

この動きは、英国研究技術革新機構(UKRI)の一部であるResearch England(リサーチ・イングランド)からの助成金によって支えられており、Newtonプログラムは、コースに協力する機関やVC企業を募集している。LocalGlobeとPhoenix Court Works(フェニックス・コート・ワークス)は、20のデジタルスカラーシップを後援することを約束している。

このプログラムに参加することで、受講生たちはa16z、Benchmark、USVなどのトップパフォーマンスを叩き出すグローバルVC企業の専門家、および経験豊富な起業家とその創業チームに直接アクセスすることができる。例えばLuisa Alemany(ルイーザ・アルメニー)氏、Julian Birkinshaw(ジュリアン・バーキンショウ)氏、Gary Dushnitsky(ゲイリー・ダシュニツキー)氏、Florin Vasvari(フローリン・バスバリ)氏といった、VC業界の学術的権威者たちが重要な概念を教え、ケーススタディのディスカッションを主導し、参加者たちと最新の研究知見を共有する。

そして現役投資家とエコシステムの専門家たちが、取引を見つけ獲得する方法、ベンチャーの財務および法務、資金管理、ポートフォリオ企業を支援する方法といったテーマで、クラスを指導する。学生はまた業界の円卓会議、近隣の会合に参加し、Newton同窓会ネットワークの一員になることができる。

始まりと終わりがLondon Business Schoolで開講されるキャンパスプログラムは、トータル5年から15年の実務経験を持つ人間を対象としている。これには、すでに投資家である者だけでなく、投資家になりたいと考えている強力な運用バックグラウンドを持つ参加者も含まれる。シラバスに含まれるのは、スポンサーVC企業での研修、一流のベンチャーキャピタル投資家やリミテッドパートナーの側での実習、そして技術移転オフィス、アクセラレーターオフィス、その他のパートナーやスポンサーとの協業体験などだ。各参加者はフィンテックからAIまで、特定の業界とテクノロジーをカバーする1対1のメンタリングや徹底した詳細コースの恩恵を受ける。

Atomico(アトミコ)の信頼されているState of European Tech(ヨーロッパテック企業の状況)レポートによれば、ヨーロッパの創業者に黒人の占める割合はわずか0.9%に過ぎない。また、より広いITセクターであっても、それほどぱっとはしていない。英国コンピュータ協会(The Chartered Institute for IT)によれば、2019年の英国には26万8000人の黒人、アジア人、その他のマイノリティ(いわゆるBAME)のITスペシャリストがいた。これは全IT従事者の18%を占めていて、過去5年の間に(16%だった2015年と比べて)2ポイント上昇している。

Diversity.VCによれば、2019年にはベンチャーキャピタルで働く人材のうち、女性はわずか30%に過ぎなかった。英国ビジネスバンク(The British Business Bank)が発表した2019年のレポート(UK VC Female Founders)によれば、英国で投資されたベンチャーキャピタル投資のうち、女性創業者だけで構成されているチームに投資された額は、1ポンド(約136円)あたり1ペンス(100分の1ポンド=約1.36円)未満に過ぎない。

Newton Venture ProgramのエグゼクティブディレクターであるLisa Shu(リサ・シュウ)氏(上の写真)は声明で次のように述べてる。「世界をリードする次世代のハイテクビジネスを見つけるためには、投資家は私たちの社会の良き代表となる必要があります。【略】Newton Venture Programは次世代の投資専門家を育成する機会であり、ベンチャーキャピタル投資をより広く、より代表的な範囲の意見と経験に対して開放するのです」。

デジタル文化大臣であるCaroline Dinenage(キャロライン・ダインネージ)議員は次のように語る「投資家は、起業家がビジネスの夢を実現する過程における財政的支援とガイダンスによって、テクノロジーセクターで重要な役割を果たしているのです。このセクターは、社会を反映する必要があります。それが正しい事だというだけでなく、ビジネスとしても理に適っているためです。なので、今回の新しいコースの創設は、多様性を高め、あらゆる分野の創業者が成功する機会を増やすための歓迎すべきステップなのです」。

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画像クレジット:Lisa Shu, Newton Venture Program

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(翻訳:sako)

ゴミ排出やプラスチック使用を削減する企業がVCの注目を集めている

Zuleyka Strasner(ズレイカ・ストラスナー)氏は、はじめからゴミ排出ゼロを提唱しようとしていたわけではない。

Felicis Ventures(フェリシス・ベンチャーズ)のパートナーオペレーション担当マネージャーだったストラスナー氏は、夫とサンフランシスコへ来る前は、英国で政界でのキャリアを志していた。プラスチック使用による環境破壊の様子をストラスナー氏が最初に目にしたのは、新婚旅行でカリブ海に浮かぶ小さな島であるコーン島を訪れていたときだったという。

その経験が、以前は政界で活躍していた同氏を、ゴミ排出ゼロを目指す活動家に変えた。この転身により、結果的にZero Grocery(ゼロ・グローサリー)を創設することになった。ゼロ・グローサリーはサブスクリプションによる食品配達サービスを提供しており、すべての商品をゴミ排出ゼロのパッケージで販売している。

ストラスナー氏はプラスチック使用を減らすという目標を持ってコーン島から戻った。そして、Fort Negrita(フォート・ネグリタ)の創設者であるAnamarie Shreeves(アナマリー・シュリーブズ)氏、ゴミを出さない生活について語ったTEDxTeenトークで有名になりPackage Free(パッケージ・フリー)を立ち上げたLauren Singer(ローレン・シンガー)氏、消費の削減とゴミを出さない生活の取り組みでソーシャルメディアのセレブリティとなったBea Johnson(ベア・ジョンソン)氏のような女性のソーシャルメディア投稿や活動からアイデアを得た。

他の人のゴミ排出ゼロに向けた足跡をたどることで、結果的にストラスナー氏はカリフォルニア州レッドウッドシティの自宅から、サンフランシスコにある、持続可能なビジネスに力を入れている食品協同組合であるRainbow Grocery(レインボー・グローサリー)に行くことになった。45分かけて車でストアを訪れ、必需品ばかりの買い物なのに1時間かけて瓶やボトルと格闘しなければならなかったという体験から、ストラスナー氏は、特に忙しい親や、専門職の人、単身者の人向けに、ゴミ排出ゼロの買い物を行うもっと良い方法が必要だと考えた。

そこで同氏は、そういうサービスを自分で立ち上げることにした。

創業初期の資金調達について、ストラスナー氏はMediumの投稿で次のように書いている。「1人での起業でしたし、資金もありませんでしたが、アイデアがありました。6か月かけてZero(ゼロ)の初期バージョンのアルファテストを行いました。ご多分にもれず、私も最初は自宅で仕事をしていました。そして、実際の申し込みを受け付け、実際のお客様に対応し、グロースハックもたくさん行いました。本当に大変でしたが、調査レポート、市場データ、生身の人間から自分で集めたデータを見て、ゼロのサービスを拡大するとどうなるのか、根拠に基づく展望を投資家に提示できると思いました」。

コロナ禍のせいでゴミが増えている

使い捨てプラスチックが急増し、食品配達サービスが急成長する中で、ストラスナー氏は食品配達における使い捨てプラスチックの代替品を作ろうとした。それにより同氏の新しい会社は、誰の目にもはっきりと見えてきた明確な問題を解決するという、人がうらやむポジションを得た。

投資銀行Jefferies(ジェフェリーズ)が8月に実施した使い捨てプラスチックに関する調査では、パンデミックが原因でプラスチック使用が急増したことが報告されている。

「Drowning in Plastics(プラスチックにおぼれる)」と題されFortuneでも引用された同調査のレポートでは次のように述べられている。「禁止措置は緩和され、税金は引き下げられている。物理的および化学的なリサイクルの活動は減っている。ウイルスに対する懸念のせいで、使い捨てプラスチックの使用を最小限に抑えようという消費者の意識が低下している可能性がある」。

宅配および消費者向け商品で使用されるプラスチックの多くは、各種業界における製造業のペースが遅くなり、製造工程でのプラスチック使用が減ったことで相殺されている。一方、国際的な経済活動の再開により、消費者が再びプラスチックを使用するようになり、それにともなって産業利用も増える可能性がある。

ストラスナー氏が創業したような会社は、ゴミの排出量が削減されるのであれば割高でも購入したいと考えている消費者に道を示すものだ。そして、同様の取り組みを行っているのは同氏だけではない。

食料品のサプライチェーンと消費者向けパッケージ商品を変える

ローレン・シンガー氏が、プラスチックフリーかつゴミ排出ゼロの商品を提供するために9月に450万ドル(約4億7400万円)を調達したとき、同氏はすでにブルックリンに拠点を置くeコマースの店舗を2年間運営していた(この事業は開始時点から収益性が高くキャッシュフローがプラスであった)。

数年分のゴミを集めたら1本の瓶に収まった、という説明つきの画像を自身のInstagram(インスタグラム)に投稿したところ、それが爆発的に広まり、シンガー氏はその投稿と自身の知名度をビジネスにつなげた。同様の事例は他にもある。ゴミ排出ゼロ運動のもう1人のスターであるベア・ジョンソン氏は、ゴミ排出ゼロに向けた取り組みについて本を書き、それを自身のビジネスにつなげた。

パッケージ・フリーは、竹の歯ブラシやメイソンジャーなど、プラスチックフリーかつゴミ排出ゼロのライフスタイル向け製品、天然素材の歯磨き粉やおしゃぶり犬用の固形シャンプーなど製品を取り扱っている。パッケージ・フリーによると、同社の製品のパッケージには、100%アップサイクル(廃棄物に新たな付加価値を持たせること。創造的再利用とも呼ばれる)されたポストコンシューマー材料(消費者が製品を使用した後に回収された材料)の箱と、紙の包装、紙のテープしか使われていない。

一方で、ニューヨークを拠点とする別のスタートアップであるFresh Bowl(フレッシュ・ボウル)は、瓶詰め惣菜のビジネスでゴミ排出ゼロのパッケージと循環型経済の原則を実現するために、1月に210万ドル(約2億2100万円)を調達した。Zach Lawless(ザック・ローレス)氏、Chloe Vichot(クロエ・ビショ)氏、Paul Christophe(ポール・クリストフ)氏が創業した同社は、5日間保存できる約220種類の調理済み惣菜をニューヨーク周辺の自動販売機で提供している。惣菜は再利用可能なコンテナで提供され、消費者はコンテナを返却するとデポジットの払い戻しを受け取ることができる。

1月に最高経営責任者であるザック・ローレス氏にインタビューした際、同氏は、パンデミック前に同社が資金調達を行っていた時期に、各自動販売機は順調に7万5000ドル(約790万円)の収益を生み出し、コンテナの約85%は再利用のために返却されていた、と語ってくれた。

ローレス氏によると、埋め立てられるゴミの約40%が食料品とその包装材だそうだ。「便利さと持続可能性をどう両立させるかは消費者にとって難しい問題です」と同氏は言う。フレッシュ・ボウルやストラスナー氏のゼロ・グローサリーなどの企業は、それぞれの方法でそのトレードオフをより簡単にしようとしている。

ゴミ排出ゼロの配達サービスを設計する

ストラスナー氏によると、ゼロ・グローサリーでは現在、約850種類の商品を用意しており、年末には商品数が1000を超える予定だ。また、これらはすべて再利用可能またはコンポスト可能なパッケージで配達される。

「当社の目標は、埋め立ての対象となるものは作らず、リサイクルが必要なものを実際に制限することです。使い捨ての製品であるトイレットペーパーのロールは1枚の紙で包みます。すべてコンポスト可能です」とストラスナー氏は言う。

ゼロ・グローサリーの現在の営業範囲はベイエリアに限られているが、ストラスナー氏によると、同社は3月にパンデミックが発生した時点で、その前と比較して3倍の成長を見せており、その後の期間では20倍もの成長を遂げたという。シンガー氏やローレス氏の企業とは違い、ストラスナー氏は小規模な資本構成表を見せて資金調達を打診するために数人の投資家に接触するチャンスはなかった。

「私はこの期間中にも継続的に資金を調達し、現在に至っています。最初は、一般的なラウンド構成で進められると思っていました。自分が普通ではない創業者だと気づいていなかったのかもしれません」とストラスナー氏は語る。黒人でトランスジェンダーの女性として投資家から「イエス」と言われるまでに、250回を超える提案と理不尽なほど数多くの「ノー」を乗り越えなければならなかった。

創業初期の主な協力者は、2019年にゼロのシードラウンドをリードした、Precursor Ventures(プレカーサー・ベンチャーズ)の創業者Charles Hudson(チャールズ・ハドソン)氏だ。ハドソン氏の投資により、同社は最初のサービスで、好みに合わせてカスタマイズできる会員制の宅配サービスを立ち上げることができた。基本的には、農産物、穀物、コンポスト可能な商品をたくさん積んだカートをストラスナー氏が顧客の自宅まで運び、顧客の瓶に詰めていた。

ゼロ・グローサリーで初期の配達を行う最高経営責任者のズレイカ・ストラスナー氏。画像のクレジット:Zero Grocery

ストラスナー氏は、長期的な継続は不可能だった最初のサービスを通して食品配達業を運営するための知見を得て、2つ目のサービスを作ることができた。

それは現代の牛乳配達に近いもので、100種類を超えるゴミ排出ゼロの商品をゼロ・グローサリーのスタッフが翌日、顧客の自宅まで配達するというものだ。商品は事前に包装容器に詰められ、ゼロ・グローサリーがそれを顧客の自宅に配達し、容器は後日返却してもらう(フレッシュ・ボウルの販売戦略と同じ考え方だ)。

2019年11月頃、ゼロ・グローサリーはこの新サービスをベイエリアで一般向けに開始した。サービスは開始当初から注目を集めた。それによりストラスナー氏は、既存の投資家に加え、Chingona Ventures(チンゴナベンチャーズ)やCleo Capital(クレオキャピタル)などの新しい企業から、さらに50万ドル(約5270万円)を調達できた。

「その時点でプラットフォームには60人のメンバーが登録していて、その月は数千ドル(約数十万円)の収益がありました」とストラスナー氏は語る。

その後、新型コロナウイルス感染症がベイエリアを襲い、売上は急上昇し始めた。ゼロ・グローサリーでは配達に外部企業のサービスを使用しておらず、再利用できるようにコンテナを十分衛生的に維持しているため、サプライチェーンが滞っていた当時の市場ニーズを満たす用意が整っていた。そのため、Incite(インサイト)、Gaingels(ゲインジェルズ)、Arlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)、MaC Ventures(マック・ベンチャーズ)からさらに7万ドル(約740万円)を調達できた、

ストラスナー氏はMediumの投稿で次のように書いている:

新型コロナウイルス感染症が米国を襲ったとき、ゼロ・グローサリーは最初のロックダウン対象企業に含まれていました。2月下旬には、必要な人員のみが全身に個人防護具を着用して、倉庫で注文の準備と配達の対応を行うようになりました。その直後にベイエリアは完全に自宅待機の状態になり、

食品配達分野の他の企業と同様、当社のサービスに対する需要も急増しました。それに対応するために、当社は予定の半分の期間でチームを拡大し、計画中だったサービスを不十分な状態で開始しました。カスタマーエクスペリエンスも重要です。それを守るために、当社のチームは人手不足の中で必死に闘い、ほとんど眠らずに長時間働き、計画を立てる間もなくとにかく動き続けました。各々の職務範囲は忘れて、カスタマーサービス、注文品の梱包、目玉商品の開発などの仕事に関する責任を全員で分担しました。

ストラスナー氏は、移民・黒人・トランスジェンダーの創業者としての経験から、持続可能性について、環境という観点だけでなく社会的側面からも考えている。同氏が、人材サービスを提供するR3 Score(R3スコア)と協力して前科のある人たちに機会を提供しているのはそのためだ。R3スコアは、前科のある求職者のリスク分析を雇用者向けに提供している。雇用者はこの分析により、求職者が従業員としての能力を備えているかどうかを詳しく確認できる。

ストラスナー氏はFast Company(ファスト・カンパニー)に次のように話した。「このような人たちは、非常に有能で、能力開発の余地があり、働く用意ができていて、積極的に機会を求めている労働者です。当社にとってこれは、単にコロナ禍に対応するその場しのぎの方法ではありません。当社のビジネスに長期的に組み込んでいく採用方法です」。

お金が増えれば問題は減るのか

現在、数千の顧客がゼロ・グローサリーのサービスを利用しており、事業拡大に向け、投資会社1984のリードでさらに300万ドル(約3億1600万円)を調達したところだ。ゼロ・グローサリーの会員料金は25ドル(約2600円)だ。これには、無料配達と空のコンテナの回収が含まれる。会員以外は7.99ドル(約842円)の配達料金を支払う。これはWhole Foods(ホールフーズ)や他のハイエンドの食品サービスと競争できる価格設定だ。

現在、ゼロ・グローサリーは米国で唯一のゴミ排出ゼロのオンライン食料品ストアとして運営されており、数字は急成長している。

ただし、このような成功は競争を生む可能性があり、同じ土俵で競合する企業がこれから次々に出てくることは間違いない。

米国の消費者向けパッケージ商品の大手企業の中には、すでにゴミ排出ゼロで商品を配達するサービスの提供を開始しているところもある。例えば、Procter & Gamble(プロクター・アンド・ギャンブル)や、アイスクリームブランドHäagen-Dazs(ハーゲンダッツ)などのオーナーであるFroneri(フロネリ)などだ。4月に、それらの企業が参加する再利用可能でゴミ排出ゼロの配達サービスLoop(ループ)が全米で開始され、国中の顧客にリサイクル可能かつ再利用可能なパッケージコンテナを提供し始めた。

NotPla(ノットプラ)、Varden(バーデン)、Vericool(ベリクール)などの企業が提供する新しい種類のパッケージ技術が商業化されたことにより、コンポスト可能な梱包素材が、ゴミ排出のジレンマをより広範に解決するソリューションになる可能性がある。

それでも、梱包材のゴミ問題に対するこのようなソリューションは別の問題を生む。例えば、製造に使用されるサプライチェーンの持続可能性、製造工程での二酸化炭素排出量だ。そのような場合、新しい素材を製造する必要性を低下させることが、最も持続可能な方法である可能性が高い。

また、多くの場合、ゼロ・グローサリーのような企業は、取引するベンダーがそのサプライチェーンの二酸化炭素排出量を削減するために努力するよう働きかけている。

ベンダーと一緒に取り組んだ仕事についてストラスナー氏は「仕事の大部分は、ベンダーが当社のテクノロジーを使用してプラスチックフリーのサプライチェーン内で生き残れるようにすることです」と語った。

ストラスナー氏はこう言う。「私がゼロ・グローサリーを起業したのは、ゴミ排出ゼロの食料品の買い物を簡単に行えるようにするため、そして、人々が便利に買い物をしながら地球を守れるよう支援するためです」。これは誰もが大切にできる考え方だ。

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タグ:環境問題

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(翻訳:Dragonfly)