レイターステージ向け千葉道場新ファンドが始動、ファーストクローズ25億円、ファイナル50億円規模

Drone Fund代表の千葉功太郎氏が主催する千葉道場は10月30日、新ファンドの設立を発表した。同氏がジェネラルパートナー、石井貴基氏がパートナー、原田大作氏がフェローに就任する。同ファンドは、持続可能なコミュニティの形成、より価値のあるサポート、レイター向けのファイナンスを支援を目的とする。現在ファーストクローズで25億円、最終的には50億円規模のファンドを目指す。

石井氏は、リクルート、ソニー生命を経て株式会社葵を創業。オンライン学習塾のアオイゼミをリリースしたあと、Z会にM&Aを実施後、グループ各社の複数の共同事業を開発したあと、2019年8月に千葉道場ファンドの取締役パートナーに就任した。

原田氏は、サイバード、ウォルト・ディズニー・ジャパンを経てザワット株式会社を起業。2017年にメルカリにM&A後は、メルカリ子会社のソウゾウで執行役員、2018年4月にゾウゾウ代表取締役社長に就任。そして2019年7月からはメルカリのディレクターとして新規事業の立ち上げに従事している。2019年9月に千葉ファンドのフェローに選任された。

詳細は順次追記する。

ソフトバンクはWeWorkを「壊れたので買わざるを得なかった」

ソフトバンクグループやWeWork、WeWorkの共同創業者である元CEOのアダム・ニューマンについてはすでに大量の記事が書かれている。それでもまだいろいろわからない点が多い。

WeWorkが上場を申請し、そして撤回してからの大騒動はあまりに込み入っているので、多くの読者は見出しをちらりと見ただけで記事の中身を読む気が失せたかもしれない。

それでもこれほどマスコミの評判になっているのはニューマンの奇矯さがほとんどマンガの悪漢レベルに達していたからだ。突飛な振る舞いでは(Twitterの)ジャック・ドーシー以上、学生寮の大学生ぽさが抜けない点では(Snapchatの)エヴァン・スピーゲル以上、「世界を変える」という幻想を振りまいた点では(Theranosの)エリザベス・ホームズ以上だった。上場のS-1申請書を提出する前からWeWorkは批判者にこと欠かなかった。

それでも有名ベンチャーキャピタルのトップは創業者を応援するという立場を取っていた。ニューマン氏には、世界最大のベンチャーファンドのパートナーたちを自分の意に従わせ、追従させるカリスマ性があったのだろう。

だが今やWeWorkはベンチャーキャピタルが後期段階のスタートアップに対して行う投資方法そのものに対する疑問の例となっており、追従どころではなくなっている。WeWorkの問題が本格的に露わになり始めたタイミングで185億ドル(約2兆円)にものぼる2回目の投資を行ったソフトバンクは最も大きなトラブルを抱えこんだ。

資金供給し続けていたソフトバンクは、WeWorkという大穴が空けばその投資は期待を大幅に下回る運用成績となる。シリコンバレーの投資家の多くは直感で巨額の資金を動かしたりしない冷静で伝統的な投資家を望んでいる。しかしソフトバンクのファンドから供給される資金が命綱となっているユニコーン(10億ドル級スタートアップ)は多い。こうした企業はソフトバンクからの資金が途絶えれば干上がってしまう危険に直面している。

ソフトバンクはすでに投入してしまった資金がサンクコスト(回収ができなくなった投資費用)となり、ポーカーゲームでいえば手持ち資金を全額賭ける「オールイン」をするしかない状態だ。現在ソフトバンクに残された道は、ニューマンなしでWeWorkを再建する以外ない。ニューマンを作り出したのはソフトバンクだったが、今度はニューマンを追い払った後で大惨事を大成功に一変させるための方法を探っているところだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

世界最大のVCセコイア・キャピタル創業者のドン・バレンタイン氏が86歳で死去

Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)の創業者、Don Valentine(ドン・バレンタイン)氏が米国カリフォルニア州ウッドサイドの自宅で亡くなった。死因は老衰で、87歳だった。

同社は自社サイトにバレンタイン氏に向けた追悼文を掲載し、「シリコンバレーを築いた時代を代表するリーダーの一人」と称賛した。

ニューヨーク生まれの同氏は、フォーダム大学で化学を専攻した後、南カリフォルニアのRaytheon(レイセオン)に入社、その後同州北のベイエリアに移動し、Fairchild Semiconductor(フェアチャイルドセミコンダクター)で働きながら、仕事で出会ったテクノロジー企業にわずかな自己資金を投資するようになった。Sequoia Capitalの記載によると、バレンタイン氏はその後、設立されたばかりの投資信託会社であるCapital Groupの目に止まり、1974年には300万ドル(約3億2600万円)のベンチャーファンドの責任者に抜擢された。その資金の投資先には、Atari(アタリ)とApple(アップル)もいた。のちに同氏は、同社を率いてCisco Systems(シスコ・システムズ)をはじめとする数々の大成功企業へ投資した。

バレンタイン氏は引退年齢よりずっと早くDoug Leone(ダグ・レオーネ)氏およびMichael Moritz(マイケル・モリッツ)氏に経営を引き渡すまでSequoiaを率いてきた。その後も10年間パートナーミーティングに参加し続けた。他のパートナーたちは、同氏がアドバイスと指針を与え続けたことを喜んでいた。必ずしも同意したわけではなかったが。

2017年、会社の継続性とスムーズな移行を確実にするために、パートナーのRoelof Botha(ロエロフ・ボサ)氏は、同社の全世界運用責任者他ったレオーネのもとで米国の責任者となった。ほかの上級幹部には、Sequia Capital Chinaの創業者でマネージングパートナーのNeil Shen(ニール・シェン)氏や、2012年に健康上の理由で退任したが積極的に社内で活動を続けているモリッツ氏がいる。

米国時間10月25日の午後レオーネ氏がバレンタイン氏の逝去について声明を発表した。「残念ながら、2019年10月25日にドン・バレンタインが死去したことをお伝えしなければならない。ドンの人生はシリコンバレーの歴史に深く刻まれている。彼はSequoiaを形作り、一緒に仕事をする幸運に恵まれた我々やSequoiaに投資した数多くの慈善団体ばかりでなく、20世紀後半で最も影響を与えたテクノロジー企業の創業者やリーダーたちに多くの痕跡を残した。ドンの妻、Rachel(レイチェル)とその家族、ならびに彼のパイオニア精神と忘れられない印象に触発されたすべての人たちに哀悼の意を表します」

バレンタイン氏がSequoiaという名前を選んだのは、「アメリカスギ(Redwood)の中で最も背の高い種類の長寿と力強さを示す」ためだったと同社の追悼文に書かれていた。パートナーらも「自分の名前を社名に冠することを避けた謙虚さ」を評した。

Sequoiaによると、バレンタイン氏の遺族には妻および3人の子供、7人の孫がいる。

同氏は、去る2013年のTechCrunch Disruptイベントに参加した。彼はこれもベンチャー業界のパイオニアであるKleiner Perkins Caufield & Byers(クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ)の共同創業者であるTom Perkins(トム・パーキンス)氏とともに登壇した。パーキンス氏は2016年6月に84歳で亡くなった。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米名門VCの共同創業者・ベン・ホロウィッツがWeWorkやUber、企業文化について語る

シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタル、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)の共同創業者である ベン・ホロウィッツ氏の新しい本が来週に出る。同氏は著書「What You Do is Who You Are」(やってきたことがその人自身)で企業文化とその作り方について語っている。

言い古された言葉だが、その意味を捉え常に実行するとなると非常に難しい。ホロウィッツ氏はこのことをCEOとして直接体験してきた。同氏は前著「HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか」に欠けていたのが企業文化に関する分析だったことに気づき、フォローアップを書くことにしたという。自身の経験に加えて他の経営者や組織のリーダーの行動、体験を詳しく観察して取り入れている。ハイチ独立の父で史上初めて黒人による共和国を作ったトゥーサン・ルベルチュールからモンゴル帝国の基礎を築いたチンギス・ハーン、殺人罪で有罪となり20年近く服役した後、著作家、大学講師となり人間の更生の可能性を説くシャカ・センゴアまで幅広く取り上げている。

これらの人々のストーリーは大いに参考になるし、歴史ファンなら特にそうだろう。我々は先日のTechCrunch取材のDisrupt SFイベントにホロウィッツを招き、本書について話を聞くことができた。またこれに関連して最も注目され、社会的にも大きな影響を与えているスタートアップであるUberとWeWorkについても尋ねた。

以下の抜粋は簡明化のために若干編集してある。

TC:あなたの企業文化に関する本が出たとき、ちょうどWeWorkの企業文化について多くの疑問が質問が出された。いったいどういうことが起きたのだろう?

BH:(WeWorkの共同創業者である)アダム・ニューマン氏には、確かにある種の文化があった。同時に彼の人格には大きな穴が空いていた。能力も桁外れだったが欠陥も桁外れだった。こういうことは時折起きる。ある部分で非常に優れていると、自分は必要なものがすべて手に入る人間だと錯覚しやすい。ところが実際は別の部分で非常に無能なのだ。

アダムは驚くべき才能がある。あれだけの巨額を資金を集める力があったことを考えてみるといい。未来に対する素晴らしいビジョンを持っていた。人々がそれを信じたからこそ資金も優秀な人材も集まった。しかしそこまでオプティミスティックな場合、周囲に本当のことを言ってくれる人間、悪いニュースであっても告げてくれる人間を置く企業文化が必須となる。たとえば資金が流出して手がつけられないなどだ。

TC:Uberの創業者で元CEOのトラビス・カラニック氏についても企業文化が非難されていた。これに対してWeWorkのアダム・ニューマン氏は非常にオープンは会社運営をしていた。彼がどういう人間であるかは誰もが知っていたと思うが。

BH:実のところ、トラビスがどのように会社を運営していたかは誰もが知っていた。シリコンバレーでは誰もが知っていたし、もちろん取締役会のメンバーはなおさらだ。企業文化は公開されていた。この記事を読むといいが、当時のUberの企業文化が詳しく説明されている。

トラビスは非常に説得力ある企業文化を創造し、その価値を確信していたし、文章を公開していた。しかし見逃しているものがあり、その結果は誰もが知るとおり(の失脚)だった。つまりトラビスの欠点に対する世間の圧力が耐え難くなってきたと取締役会が判断したわけだ。

TC:こうした例から得られる教訓は?

BH:我々はLyftに(6000万ドルを)投資しているので当然ライバルのUberについてもよく知っている。あれは非常に微妙な問題だった。いってみればトラビスは非常にすぐれたアプリだったが隠れたバグがあった。

トラビスが(社員の)悪い行動を奨励したように報じられがちだ。そんなことは決してなかったと私は見ている。彼に問題があっとすれば、倫理性、合法性は競争に勝つことより決定的に重要だということを周知させることに失敗した点だ。その結果、とにかくUberのような会社では機能は広く分散するので、その一部では人々が暴走することになったのだと思う。

しかもトラビスのおかげで関係者はみな大金を稼いだ。Uberはとてつもない急成長を続けていたから、私のみるところ取締役会も「これだけ儲かっているなら多少のことをとやかく言うまい」という気持ちになっていたのだろう。

最後に誰も責任を取らなかったのは不公平というしかない。 トラビスに落ち度はあった。しかし彼を責めるなら、見て見ぬふりをした人間にも責任はある。ごく控え目に言ってもそうだと私は思う。

いかにして企業文化を確立すべきかという本を私が書いた理由は、スタートアップを立ち上げたCEOにしてみたら、企業文化なんて小さい問題だと思えるかもしれない。しかしやがて大問題に発展するのだ。倫理問題というのはセキュリティ問題に似たところがある。あまりにも本質的な問題なので実際に問題が起きるまでは問題だと気づかない。

TC:なぜこの問題に興味を持つようになったのか?

BH:いくつかあるが、第一にこれが CEOとして体験した中で最も困難で解決にいちばん時間がかかる問題だったからだ。 なるほど誰もがこれは重要だと助言してくれた。「ベン、企業文化に注意しろよ。これがカギになるぞ」というので「オーケー、じゃどうしたらいい?」と尋ねると「ああ、そうだな、会議で検討したらいいんじゃないか?」といった話になって要領を得ない。誰も問題の本質はどこにあり、具体的に何をすればいいか教えてくれない。それなら、ここに私の知識の穴があるのだろうと考えるようになった。

もう1つ、今何をしていようと文化を作ること以上に重要なことはない。 社員たちに常々言っているのだが、10年後、20年後、30年後に振り返ったときに個々の取引で勝ったとか負けたとか、どれだけ儲けたとか覚えている人はいない。覚えているのは、ここで働いていたときの気分、我々とビジネスをしたときの気持ちや印象、我々が周囲に与えた影響だ。つまりそれが企業文化であり、誰もここから逃げることはできない。これはどんな企業にも当てはまることだと思う。

加えて、シリコンバレーの企業は非常に急速に成長し強力になってきたのでこの文化について厳しい批判が出ている。一部はもっともだ。しかし解決策の提案となると、はっきり言って奇妙なものが多い。そこで単に批判や非難をするのではなく、具体的どうすればいいのかまとめてみる必要があると感じるようになった。

TC:先ほどUberの話が出たが、こうした急成長企業の多くは高度に分散的な環境であることが多い。本書ではこうしたリモートワークの場合ついてあまり触れられていないように感じる。広く分散した職場で働く社員についてはどのように考えているだろうか?

BH:確かにこの本ではリモートワークについては触れていないが、もちろん非常に重要な分野だ。ただその環境を支えるテクノロジーが急激に発達しており、リモートワークは進化中だ。以前はコミュニケーションその他のシステムが不十分だったためにエンジニアリングを中心とする組織がリモートワークで機能を発揮するのはほぼ不可能だった。だからMicrosoft(マイクロソフト)は(本社が所在する)レドモンドに移転できるスタートアップだけを買収していた。

しかし最近はSlackやTandemなどがのサービスが普及し、環境は大きく改善されている。企業文化を作ることもこうしたツールの発達によってリモート化可能だろう。ただ、ミーティングで顔を合わせたり廊下でつかまえたりした社員に直接に企業文化を普及させるのに比べて、電子メディアを通じて文化の伝達を図るのはかなり難しいだろう。

実際、最近もメールでいろいろやったし、電子的ツールにはもちろん文化的価値がある。私は起業家をあれこれ批判したくはない。そのアイディアがばかばかしく見えようと問題ではない。起業家はゼロから何かを作ろうとしている。夢に賭けているわけだ。だから我々は彼らをサポートする。以上だ。

(Benchmarkの著名ベンチャーキャピタリストである)ビル・ガーリー氏ばりにTwitterに「あんなクソ会社、1ドルだって儲けていないじゃないか」などと書き込むと誰もが読むことになり会社をクビになるだろう。我々のポッドキャストにはニュース部門があるが「WeWorkの失敗の教訓」といった安易な話はしたくない。そんなことは他の連中がやればいい。企業文化的の問題で教訓などを書きたい人間はいくらでもいる。

つまりリモートで企業文化を構築しようとすることは可能だが、慎重にやる必要がある。また誰がそれを読むのか考えなければならない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

セールス向けオンラインミーティングツール「Demodesk」が約2億5000万円を調達

米国時間10月23日、ドイツ・ミュンヘンを拠点とするDemodeskは230万ドル(約2億5000万円)のシード資金を調達したと発表した。同社はオンラインのセールスミーティングの変革を目指す、アーリーステージのスタートアップだ。

画像:Kelvin Murray / Getty Images

投資したのは、GFC、FundersClub、Y Combinator、Kleiner Perkins、そして匿名のエンジェル投資家グループ。DemodeskはY Combinatorの2019年冬学期に参加していた。

CEOで共同創業者のVeronika Riederle(ヴェロニカ・リーデル)氏は「同社のセールスに特化したミーティングツールは、Zoom、WebEx、GoToMeetingなどの汎用的なツールとは異なる」という。「我々は顧客と対面して話す、初のインテリジェントなオンラインミーティングツールを作っている。インサイドセールスやカスタマーサービスに適したツールだ」と説明する。

「画面共有のユニークなアプローチが技術的なポイントのひとつだ」とリーデル氏は語っている。ミーティングソフトウェアはたいていダウンロードが必要だが、Demodeskでは必要ない。リンクをクリックするだけで参加できる。オンラインになった両者がライブの画面を見ながら会話をすることができる。一方的に見せて説明するのではない。

さらに、セールスでスライドプレゼンテーションを使う場合、顧客とセールス担当者には同じライブ画面が表示されるが、プレゼンテーションのノートはセールス担当者にだけ表示される。

リーデル氏は、同社のツールはカスタマーサービスからITのヘルプデスクまでさまざまな場面に使えるが、開発の現段階ではセールスの場面に集中し、その後時間をかけて対象を広げていきたいという。サービスの利用形態はサブスクリプションで、1ユーザー/1カ月あたり19ドル(約2000円)から利用できる。

同社には、Y Combinatorに参加した時点ですでに動作している製品があって有料の顧客がいた。しかしリーデル氏は、Y Combinatorに参加した経験がビジネスの成長に役立ち、100社以上の顧客を獲得できたという。「YCは我々にとってきわめて重要な機会だった。創業者や将来の顧客のネットワークにすぐに参加できたことはとても有意義で、我々が本当の意味でビジネスを発展させる基盤となった」。

同氏はCTOのAlex Popp(アレックス ・ポップ)氏とともに2017年にドイツ・ミュンヘンで同社を創業。今回のシードラウンド以前は、ほぼ自力で会社を立ち上げた。約2億5000万円を調達したことで、人を雇い、製品をさらに発展させ、顧客ベースを広げるためのセールスとマーケティングを進めていくことになるだろう。

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(翻訳:Kaori Koyama)

人が食べる限りなくならない、フードテック投資機会の現在とこれから

この地球上に、食料と農業ほど大きな産業はない。70億人という安定した忠実な顧客数を誇る。実際、世界銀行は全世界のGDPに占める食料と農業の割合を10%と見積もっている。つまり食料と農業は、2019年の全世界のGDP予測88兆ドル(約9500兆円)に対して、およそ8兆円(約960兆円)になる計算だ。

食料に関して言えば、2018年に食料品店やその他の小売店で飲食料に支出された金額、および外食やスナックに支出された金額の総計は、米国内だけで1兆7100億ドル(約184兆7000億円)が記録された。同年、米国人の可処分所得の9.7%が食品に費やされている。そのうちの5%が自宅、4.7%が自宅外での出費だ。経済が大きく変動する中、この割合は過去20年間で一定水準を保っている。

不動の顧客数を誇る食品産業だが、消費者の傾向に起因する、生産、需要、規制において、いまだかつてない難題に直面している。この数年で、消費者の要求と関心が変化した。持続可能性、健康、鮮度への消費者の関心が高まり、食品産業のイノベーションを求める圧力が非常に大きくなっているのだ。

避けられないイノベーション

近年、アグテック分野の革新を進める者たちは世界の食料供給量を増やそうと、大変に面白く斬新なテクノロジーの使い方を生み出している。アグテックのイノベーションは、穀物を守り、生産量を高める。それは、農業システムの構造変革を促し、温室効果ガスの削減、水の使用量の削減、森林伐採の阻止、さらには二酸化炭素の土中への隔離といった重要な持続可能性の目標達成にもつながる。

しかし、これはまだ序の口だ。人が食べなければならない限り(しかも1日に何度も!)、飲食料の技術革新への巨大な投資機会はなくならない。それは、よりよい食品流通、保存、アクセスを通じて、革新的な食材や栄養価の改善による食料エコシステムの健全化をもたらすフードテックだ。

食料の改善にテクノロジーを利用する機会は膨大にあり、その範囲は世界人口の増加にともなう環境破壊を最小化するために不可欠な食料消費方法の改善から廃棄量の削減にわたっている。この巨大な好機を認識したベンチャー投資家たちは、この分野に密着して観察を行っている。PitchBook(ピッチブック)によれば、フードテックへの投資は2008年のおよそ6000万ドル(約65億円)から2015年の10億ドル(約1080億円)以上へと激増している。またCB Insightsによれば、この分野に特化したベンチャー投資家やプライベート・エクイティ・ファンドからの投資は、2015年の223件から2017年の459件へと倍増している。投資総額とイグジットの動きを見てみると、フードテックは今や両方の分野でアグテックを超えている。フードテックセクターの全世界の潜在顧客数が70億人(さらに増加中)であることを考えると、まだまだ規模は小さい。

フードテック投資を牽引する投資家たち

消費者は、自分たちが食べるものに関して神経質になってきている。忙しい仕事と個人の生活を両立させようとすれば、自分たちの食事には利便性を求めたくなる。だが、便利であっても品質は落としたくない。これまでになく人々は、食品に何が含まれているか、原産地はどこか、その収穫と加工の方法は環境に悪影響を与えていないかを気にするようになっている。

数年前、消費者向けパッケージ製品(CPG)の既存メーカーは、消費者の高まる要求に応じようと、こぞって便利で高品質な食品の提供を約束した。しかし、原材料のマージンが低下して企業統合なども重なると、その努力は腰折れとなって多くの企業は方向転換を余儀なくされた。だが門戸は開かれたままだったので、腹を空かせた投資家やスタートアップに新しい波が沸き立つことになった。

現在の消費者が求めるのは利便性と安定性だけではない。簡単に手に入り、食品ロスが少なく、自己ブランドに合致する栄養価の高い食品も求められている。実際、今ほど食品会社が厳しい思いをする時代はないだろう。消費者の需要は、倫理的な信念にまで広がっているが、利便性は決して落としてはならない。しかしその出費傾向を見ると、消費者は、利便性、健康、環境への影響への高まり続ける要求に応えてくれるフードテックイノベーションのためなら、喜んで高い金を払う覚悟でいることがわかる。革新的な食品業者がこの市場の要求を逆手に取れるチャンスは増え続けているのだ!

フードテックの存在

世界的に食事の出前サービス業界には、ベンチャー投資家に支えられた株式非公開のフードテック系スタートアップがもっとも多く存在しており、今では最大のフードテック分野となっている。去年は、フードテックにとって投資額169億ドル(約1兆8300億円)を記録した特別な年だった。Crunchbaseによれば、その年の投資額トップ3は、インドを代表するオンラインレストランマーケットプレイスSwiggy(スウィギー)の10億ドル(約1080億円)、米国の食品配達サービスInstacart(インスタカート)の6億ドル(約650億円)、ブラジルを拠点とするレストランマーケットプレイスiFood(アイフード)の5億9000万ドル(約640億円)だった。

消費者の食事の出前や食品配達サービスに対する食欲は衰えないものの、食事キットサービスのBlue Apron(ブルー・エイプロン)などの大失敗の余波を受けて、投資家たちは警戒感を強めた。その失敗例は、規模の拡大、役に立たない食品特許、サプライチェーンでの腐敗や汚染といった課題を強調している。この失敗により、多くの投資家は、新しいフードテックの未開拓地に目を向けるようになった。

フードテックのこれから

フードテックのイノベーションにより、まったく新しい画期的なアプローチをバリューチェーンに即して提供する3つの重要な分野が誕生した。これらは、食品産業における深刻な問題点に対処する技術的なアプローチを代表するものであり、今後数年で目覚ましい成長を遂げ、投資家の注目を集めることが期待されるセクターだ。

消費者向けフードテック

消費者向けフードテックは、おもに消費者に向けてマーケティングされる技術開発に焦点を当てたフードテック投資の中のセグメントだ。例えば、植物由来の肉、画期的な配送システム、栄養学に基づくテクノロジーなど、消費者の要求を満たすことを目的としている。消費者向けフードテックのイノベーションを進める企業には、代替タンパク質、代替乳製品、栄養キットや食事キットを配送するものなどが含まれる。

オーガニック食品の流行がピークに達し、商品化が始まると、その隙間に新しい食品の流行が始まった。植物由来、肉を含まない、アニマルフリーなど、呼び方はどうあれ、人々は肉を食べないことに熱狂し始めているようだ。肉を使わない肉が登場したというニュースや広告を見ない日はない。

バーガーキングもマクドナルドも、肉を使わないハンバーガーをメニューに加え、トレーダー・ジョーズやホール・フーズといった自然食品スーパーでよく買い物をしている人たちを呼び込むようになった。バーガーキングはImpossible Foods(インポッシブル・フーズ)の製品を、マクドナルドはBeyond Meat(ビヨンド・ミート)の製品を使っている。もうひとつはMemphis Meats(メンフィス・ミーツ)だ。小売大手のIKEA(イケア)で出しているような悪名高いスウェーデン・ミートボールのベジタリアンバージョンの開発を行っている。

それだけではない。代替タンパク質の商品化を目指す企業がいくつもある。細胞培養で卵白を作るClara Foods(クララ・フーズ)、乳製品やナッツを含まないミルクの代替品の開発に特化したRipple Foods(リップル・フーズ)やOatly(オートリー)など。UBSの見積もりによれば、植物由来タンパク質の市場だけでも、現在の50億ドル(約5400億円)以下の規模から、今後10年で850億ドル(約9兆1800億円)あたりの規模にまで拡大するという。年間およそ28%の成長率だ。

一方、Brightseed(ブライトスティード)、Just(ジャスト)、Renaissance Bioscience(ルネサンス・バイオサイエンス)といった企業は、生物学と栄養機能食品の新しい道を開拓し、清潔で小規模、そして持続可能性のある方法での食品やサプリの製造方法を研究している。

業務用フードテック

食品そのものに取り組む企業もあれば、持続可能で健康で革新的なこのニューウェイブの食品を、どのように加工、パッケージング、配送するかに取り組む企業も数多い。業務用フードテックは、食品産業における基本的なビジネスモデルとB2Bの弱点に対処することを目的としたフードテックのサブセグメントだ。これに携わる企業には、加工とパッケージングの革新的テクノロジーや、栄養、ラベリング、製法が改善された新しい、または機能性のある食材に取り組むところが含まれる。

Apeel Sciences(アピール・サイエンセズ)やHazel Technologies(ヘイゼル・テクノロジーズ)などの食品保存技術を開発する企業は、輸送中の食品の質を保ち、食品の無駄をなくす努力を牽引している。そこはイノベーションを待ち望んでいる分野だ。消費者の手に届く前に無駄になる食品は、米国でのすべての食品ロスのうちの40%を占めている。食品ロスの削減は、必要とされる耕作面積の削減にもつながる。

食品加工と品質評価の技術も、このセグメントの先頭に立つ分野だ。例えば、食品調査のスタートアップであるP&P Optica(ピー・アンド・ピー・オプティカ)は、食品の品質評価と異物検出の技術に投資を受けている。そのハイパースペクトル技術には、異物の自動検出による食品の安全性向上のみならず、食肉の等級付けを標準化し、時間をかけて改善できる可能性がある。

乳化剤、甘味料、安定剤、その他の食品添加物などの業務用素材を扱う急成長中のセクターと合わさり、大手食品加工業者が革新的になること、さらにずっと革新的であることを消費者から強く望まれている中で、このセクターも急成長している。Aromyx(アロミックス)などの企業は、味や匂いといった要素を評価することで、調剤、化学、農業、飲食品、PCGなどさまざまな産業で製造工程を強化することができる。

サプライチェーンと調達

メキシコ料理のファーストフード、チポトレの集団食中毒事件やそれに準ずる問題により、食品サプライチェーンの透明化が重視されるようになった。Safe Traces(セーフ・トレーセズ)をはじめとするスタートアップは、食品原産地の新しい追跡モデルを商品化することで、食品のトレーサビリティーを高めようとしている。食品偽装、トレーサビリティー、さらに原産地表示の必要性から、消費者の意識は高まっている。これが、その問題に対処する食品サプライチェーンのイノベーションという強力なビジネスケースを生み出した。消費者の、食品サービスにおける品質、利便性、グルメ商品に関する好みが変化したことで、ファストカジュアルレストランというカテゴリーが誕生し、ファストフード店はそのデリバリーモデルの再考を迫られることとなった。

Finistere Ventures(フィニステア・ベンチャーズ)のポートフォリオにも含まれているFarmer’s Fridge(ファーマーズ・フリッジ)やBingoBox(ビンゴボックス)といったスタートアップは、シェフが厳選した食事やスナックをパッケージ化して、便利な場所に置かれた自動販売機や無人コンビニで販売している。6D Bytes(シックスディー・バイツ)は、AIと機械学習を使い、スムージーなどの健康的な食品をオーダーメイドしてくれる。Starship Electronics(スターシップ・エレクトロニクス)は、地域の店舗やレストランと提携して人々に食品を配達するロボット軍団を提供している。

このセグメントでのイノベーションは、トレーサビリティー、持続可能性、鮮度の改善、食品ロスの削減に焦点が当てられている。例えば、Good Eggs(グッド・エッグズ)とFarmdrop(ファームドロップ)は、新鮮で持続可能な方法で入手した食品を再利用可能な容器で届けてくれる。Full Harvest(フル・ハーベスト)は、食品サプライチェーンにそのままでは捨てられてしまう規格外または余剰作物を利用する、いわゆるShop Ugly(ショップ・アグリー、不格好なものを買うこと)を推奨している。

テクノロジーは、私たちが食べるものがどのように作られ、どのようにパッケージ化され、どのように届けられ、どんな味、食感、匂いがして、どのように再利用されるかに関して、ますます重要な役割を果たすようになる。フードテックへの投資は、より健康的で、より持続可能な食品システムを世界に届けることを期待して、これからも増え続ける。つまるところ、私たちは私たちが食べたもので作られているのだ。

【編集部注】著者のIngrid Fung(イングリッド・ファン)は、Finistere Ventures(フィニステア・ベンチャーズ)のアソシエイト。

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(翻訳:金井哲夫)

Luge Capitalがカナダのフィンテック投資向けに約92億円を調達

Fintech Growth Syndicate(フィンテック・グロース・シンジケート)が集めたデータによると、カナダ拠点あるいはカナダで操業しているフィンテックのスタートアップ数は831社にのぼる。にもかかわらず、カナダのこの部門を専門とするベンチャーキャピタルファンドは数えるほどしかない。

そのギャップを埋めようとしているのが、モントリオールとトロントに拠点を置き、フィンテックとAIにフォーカスしているベンチャーキャピタルファンドLuge Capitalだ。同社は初めて行う投資と、15万〜200万ドル(約1600万〜2億2000万円)のシード投資計画のために8500万ドル(約92億円)を調達した。

2018年に創業されたばかりの同社を率いるのはDavid Nault(デイビッド・ノールト)氏とKarim Gillan(カリム・ジラン)氏だ。ノールト氏はiNovia Capitalで副社長を務め、ジラン氏はPayPalが買収した送金スタートアップXoomで経営企画の責任者だった。

Luge CapitalにはiA Financial Group、BDC Capital、ケベック州投資信託銀行、Desjardins Group、La Capitale、Sun Life Financial、そしてFonds de solidarité FTQが出資している。あまりないことだが、何人かのリミテッドパートナーがノールト氏とジラン氏に接近し、ファンドを立ち上げたら資金を出す、と言ってきた。そして2人は、カナダで成長中のテックシーンで動いているフィンテック企業をサポートするための資金を調達しようと仕事を辞めた。

Luge Capitalは北米中のスタートアップを対象に投資するが、なかでもカナダのテック企業にフォーカスする。

「フィンテック企業の数は増え続けている」とジラン氏は話す。「これは、資金への新たなアクセスがあるからだと考えている。企業はいま資金を調達でき、大企業はそうしたスタートアップとの提携に意欲的だ」。

Luge Capitalはこれまでに5件の投資を行ない、うち3件のみが明らかにされた。事業者がアプリとユーザーの銀行口座をつなぐのを手伝うFlinks、顧客向けネットサービスや不正利用の検知サービスを金融機関に提供するOwl、そして保険テクノロジー企業のFinaeoだ。

PitchBookによると、カナダのスタートアップには今年30億ドル(約3255億円)近くが投資され、これはこれまでで最多となる。

「カナダのベンチャーはこれからさらに成長するだろう」とジラン氏は語る。「カナダでモデルを確立してから世界展開するという、カナダをまず最初のマーケットとしてとらえているグローバル指向の創業者が今後増えてくるとみている。そうしたダイナミックな動きに伴って、より多くの外部資金がこうしたベンチャーに流入することになるはずだ」

画像クレジット:Luge Capital

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(翻訳:Mizoguchi)

シリコンバレーは分散可能か?ビジネスは最前線でパーティは遠隔地で

長い間、シリコンバレーの魅力は、この地にやって来ることができるかどうかにかかっていた。そのエコシステムは遠隔地からは機能しなかったからだ。Google VenturesのJoe Kraus(ジョー・クラウス)氏は、私が初めて参加したDisruptイベントで、Y Combinatorを含むほぼすべてのVCを代表して、「私たちは何処に居るのかがとても大切であることを知っています。シリコンバレーに来るべきです」と語ったものだ。

米国人ならそれは簡単だ。だがもしここに来るためにビザが必要な場合は、はるかに大変なことになる。今だにシリコンバレーは遠隔地から機能させることはできないのだろうか?それとも最近は、遠く離れた国々のスタートアップたちに、別の道があるのだろうか?先週私はInitialized CapitalのパートナーであるAlexis Ohanian(アレクシス、オハニアン)氏と、彼の祖先の故郷であるアルメニアの地で、この件について話す機会を持った。

最近は、どんな国でも自国のインキュベーターとシード投資家がいるようだ。アルメニアも例外ではない。私がオハニアン氏と会ったのは「アルメニアとアルメニア人のための」VCファンドである、Aybuben Venturesのローンチイベントでの事だった。私が先週報告したように、アルメニア人のディアスポラ(世界的な民族離散)は多大な効果を発揮している。

さて、もし真剣にシリーズAに取り組む必要が出てきたのに、地元の市場があなたのスタートアップを支えられるだけの規模がない場合には、次はどうなるだろうか?

ほんの5年前でさえ、シリコンバレーと関係を築くためには大変な苦労を強いられていたはずだ。しかし、その後事情は変化した。ベイエリアの人材と(そして不動産)の高騰が、Andreessen HorowitzのAndrew Chen(アンドリュー・チェン)氏の命名による、いわゆる「マレット・スタートアップ」(Mullet Startup)の台頭を促したのだ。そうした会社たちは、シリコンバレーを活用するために、その本社をベイエリアに置いているが、彼らの技術チームはもっと安くスペースも広い場所に置くのだ。つまり「ビジネスは最前線で、パーティは遠隔地で」ということだ。

オハニアン氏が指摘した点は、このマレットモデルが逆方向に働かない理由はないということだった。すなわち、どこか遠隔地で強力な技術チームを持った会社を起業し、ある発展段階に達したらベイエリアオフィスを開設して経営チームを移動し、マレット・スタートアップへと転じるのだ(もし企業として米国にやってくるのなら、ビザのオプションとして例えばEB-5移民投資家ビザを選べるようになるといった事実にも助けられる)。このスタイルを「リバース・マレット」と呼ぼう。PicsArtは、その好例のひとつだ。

このモデルは、遠隔地の技術チームが継続的な競争上の優位となるので、エンジニアリングや技術の厚い才能を抱えている国にとってはとりわけ実現可能なやり方なのだ(これこそが、オハニアン氏がアルメニアの滞在中ずっと、故国の人たちに対してコードを書くことを学ぶことの重要性を説き続けていた理由の一部だ。これはすでにチェスを必修科目としている国にとっては比較的取り組みやすいことだろう)。これらはすべて、理屈の上では素晴らしいもののように聞こえる。

とはいえ、今はまだリバース・マレットのユニコーンたちの群れがいるようには見えない。しかし、もしそれが実現すれば、多大な影響を持つ新しい成長モデルとして、非常に興味深いものとなるだろう。実質的にシリコンバレーが世界中に転移する方法のひとつとなるからだ。だが皮肉なことに、多くの非中央集権化の声は挙がりながらも、そのモデルの成功はやがてシリコンバレーの世界のテック産業の中心としての優位な地位を(すべての惑星を周回軌道上に従える太陽のように)強化することになるだろう。これから3年以内に生まれるリバース・マレットのユニコーンを数えてみよう。ほんの数個以上あれば、答えがわかるだろう。

【編集部注】「Mullet」というのはもともとは魚の「ボラ」を指す単語だった。そこから派生してトップの写真にあるようなヘアスタイル(前が短く襟足が長い)を「Mullet Hairstyle」と呼ぶようになった。それが転じて「立派なトップページは用意されているものの、それ以外の部分はそれほど手間のかかっていないウェブサイト」のデザインを「Mullet Strategy」(マレット戦略)と呼ぶようになっている。上記の「マレット・スタートアップ」という名称はそれがさらに転じたものである。

トップ画像クレジット:Tony Alter/Flickr より CC BY 2.0 ライセンスによる

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(翻訳:sako)

動画配信クリエイター支援のライバーライツに赤坂優氏・中川綾太郎氏・W venturesが事業支援

写真左からW ventures代表パートナー東明宏氏、中川綾太郎氏、ライバーライツ代表取締役CEO 上野翔太氏、赤坂優氏、W venturesインベストメント・マネージャー Liu Yangnuo氏

動画の生配信を行うクリエイター「ライバー」専門のプロデュース事業を展開するライバーライツは10月7日、事業支援メンバーとしてエンジェル投資家の中川綾太郎氏、赤坂優氏、W ventures代表パートナーの東明宏氏を迎えたことを明らかにした。

ライバーライツは2018年2月の設立で、同年8月からライバープロデュース事業を本格化したスタートアップだ。「動画配信クリエイター、ライバー(Liver)の権利(Rights)を守り、可能性を最大化する」ため、プロデュースやサポートサービスを提供する。具体的には、クリエイターと契約を結び、ノウハウ提供を含めたプロデュースに加えて、配信スタジオ・機材の提供、ファンイベント開催、グッズ販売などの支援を行っている。

2019年1月には、ライバー育成コミュニティ「LaLa(ララ)」を立ち上げ、これからライバーとして活躍したい、さらに収入を得たいというクリエイターに向けて、出演案件の紹介やファンレターの安全な受け取り先の提供、ライバー同士が情報交換できる交流会の開催など、サポートを行っている。

LaLa通常会員への登録は無料。有償のVIP会員は、通常会員へのサポートメニューに加えて育成コンサルが受けられるほか、機材貸し出し、スタジオ配信などが可能になる。LaLaへの登録メンバー数は、コミュニティ立ち上げから約半年の6月時点で500名を超え、現在も月間約100名ペースで新規ライバー登録があるという。

今回、事業支援メンバー「ギフター」として発表された3氏は、ライバーの活動を応援することを目的として、資金や知見などを提供する。ライバーライツでは、メディア領域での新規事業立ち上げや海外展開経験が豊富な起業家、投資家をギフターとして迎え入れたことで、LaLa登録メンバーの育成や規模拡大とともに、タレントの海外進出支援も視野に入れ、「ライブ配信およびエンターテインメント業界の発展に貢献する」としている。

日系女性アン・ミウラ−コー氏らにトップVCになる方法を聞いた

ベンチャーキャピリストになるのは極めてに難しい。資金は言うまでものないが、タイミング、経験、 人脈がすべて揃っている必要がある。非公開企業への投資方法、ことに自分自身のベンチャーファンドを立ち上げる方法を体験に基づいて教えてもらえるチャンスはめったにない。

TechCrunch Disrupt SFでは新しいベンチャーファンドであるaCrew Capitalの創業者のテリーザ・ゴウ、Floodgateの共同創業者のアン・ミウラ−コーの2人を招き、女性がトップベンチャーキャピリストになる道のりについて詳しく聞くことができた。

実際、道のりは険しく長く、緻密な計算と忍耐を必要とするものだった。最初の一歩は既存のベンチャーキャピタルのアソシエートの職を得ることだ。これには最低でも大卒の学位と投資銀行などの投資ビジネス分野での数年の経験が求められる。アソシエートの地位に就いた後、ベンチャー投資業務の細部を学ぶためにさらに数年かかる。ここでスタートアップの将来性を見抜き、成長させる力があると業界で認識されるようなれば、ベンチャーキャピルのパートナーに昇格し、自身で資金を集めてファンドを組成できるようになる。

10年近く前にFloodgateを設立したミウラ−コー氏はTechCrunchのインタビューに対し、Charles River Ventures(CRV)でアナリストとしての経験を積み、サイバーセキュリティーについての研究で博士号を取得するために7年かかっていることを述べた。

ミウラ−コー氏はこう語った。

2008年に(Floodgateを)スタートさせたときは、誰もが「新しいベンチャーキャピタルなんて必要ない」と言ったものです。しかし今はスタートアップへの投資が活発化し手段も驚くほど多種多様になっています。スタートアップ投資マーケットへの(参入の)チャンスが拡大したと同時に困難さも増しています…問題はどのようにして自分を差別化するかですね …自分の強みがどこにあるのかを発見しなければなりません。

テリーザ・ゴウ氏はBain & Companyのコンサルタントの後、名門ベンチャーキャピタルであるAccel Partnersのマネージングパートナーを1999年から2014年にわたって務めた。2014年に独立し、ジェニファー・フォンスタッド氏とともに女性が経営するベンチャーキャピルのパイオニアのひとつ、Aspect Venturesを設立した。 先月、2人はコンビを解消してそれぞれ別のベンチャーキャピルを設立することを発表した。フォンスタッド氏はOwl Capitalをゴウ氏はaCrewを設立した。

ゴウ氏は女性ベンチャーキャピリスト最大の資産家だとみなされている。これはいくつかの投資案件が巨大な成功をもたらしたからだ。ゴウ氏は「自分のファンドを立ち上げられるかどうかは人脈だ」という。

今はベンチャーキャピリストになるための道筋はたくさんあります。ただ覚えておかねばならないのは、飛び抜けた会社を発見して投資することだけが投資家としての高い評価を得る方法なのです。すると自分自身でファンドを組成しようとしたとき、(先の投資に関連した)人々はこぞってあなたを適任と認めます。ベンチャーキャピリストといのは、大きなことを成し遂げるとする優れた人々に賭けることです。

もっとシンプルな方法もあると2人はいう。要するにベンチャー投資を始めればいい。しかしこの方法は投資に必要な資金を自由にできることが必要だ。スタートアップを成功させ大手テクノロジー企業に首尾よく売却できた起業家ならそういう資格があるだろう。

ゴウ氏は「アドバイザーやエンジェル投資家としてスタートし、実績を挙げて偉大な投資家になった人々もいます。スタートアップを成功させて資金を得てから自分のベンチャーファンドを組成した優秀な起業家も大勢いることはみなさんもよく知っているとおりです」と語った。

【Japan編集部追記】壇上左からミウラ−コー氏、ゴウ氏、TechCrunchのコニー・ロイゾス記者

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Disrupt SF 2019のStartup BattlefieldはRenderが優勝

選抜された20社のスタートアップが2日間の熾烈な戦いを繰り広げ、今年の勝者が決まった。

Startup Battlefieldは競争の激しいピッチコンテストなので、参加を申し込んだ時点ですでにふるいにかけられる。そして選ばれた20社が複数のVCグループとテクノロジー業界のリーダーたちの前でプレゼンテーションを行い、10万ドルの賞金と優勝カップを争った。

審査員たちは何時間も評議し、その後TechCrunchが彼らのメモを集めて検討し、5社に絞り込んだ。決勝に進んだのは、OmniVisOrbit FabRenderStrattyX、そしてTrapticだ。

これら5社のスタートアップが、新しい審査員団の前で決勝のデモを披露した。審査員は、Kleiner PerkinsのMamoon Hamid(マムーン・ハミッド)氏、Sound VenturesのAshton Kutcher(アシュトン・クッチャー)氏、SequoiaのAlfred Lin(アルフレッド・リン)氏、Lumi LabsのMarissa Mayer(マリッサ・メイヤー)氏、Floodgate VenturesのAnn Miura-Ko(アン・ミウラ-コー)氏、そしてTechCrunch編集長のMatthew Panzarino(マシュー・パンツァリーノ)だ。

優勝:Render

Renderは、マネージドクラウドのプラットホームを開発。同社は、AWSやAzure、GCPなど従来のクラウドプロバイダーとは異なるサービスを目指し、特にデプロイの自動化やHerokuを思わせるアプリケーション管理の抽象化などによる、より管理の容易なインフラストラクチャを提供している。

Renderの詳しい記事

準優勝:OmniVis

OmniVisは、コレラなどの病原体の検出を妊娠検査のように迅速かつ簡単、そして安価にチェックできる。スマートフォン上での検査なので、大量の人命を救えると期待されている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

イスラエルのVC ピコ・ベンチャー・パートナーズが約86億円を調達

エルサレムに本社を置き、アーリーステージのスタートアップに投資するPICO Venture Partners(ピコ・ベンチャー・パートナーズ)が、2本目の旗艦ファンドに8000万ドル(約86億円)を集めた。最初のファンドでは3500万ドル(約38億円)を集めている。

設立4年目のピコは業界を絞らず「価値を生み出す実行力があり、技術を活用してプロセスを近代化し、特定の業界で効率を高めることを目指すイスラエルの起業家」に投資するという。言い換えれば日和見的なファンドであり、大きなリターンをもたらす潜在力があるイスラエルの創業者を探している。

ピコは以前、オンライン中古車市場を運営するVroomに投資した。Vroomはこれまでに5億ドル(約540億円)近くの資金を調達したスタートアップだ。他の投資先には、クラウドオートメーションのSpotinst、AI対応キャリア開発ツールのGloat、ビジネス管理ツールのArboxがある。

ピコを率いる3人の共同設立パートナーは、Benchmark Capital IsraelのジェネラルパートナーだったElie Wurtman(エリー・ワートマン)氏、投資銀行出身のTodd Kesselman(トッド・ケセルマン)氏とGina LaVersa(ジーナ・ラバーサ)氏だ。ピコはエルサレムのほか、テルアビブとニューヨークにオフィスを構える。

ワートマン氏はTechCrunchに声明で「PICOはインパクトに重点を置いている。このファンドではイスラエルの起業家を支援したい。新鮮な切り口と革新的なテクノロジーによって業界にインパクトを与える起業家だ。大きく成長する可能性を秘めたアーリーステージの企業を探しているが、マーケット・人・社会に本当のインパクトをもたらす方法について明確なビジョンを持つ起業家にも投資したい」と述べた。

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(翻訳:Mizoguchi)

Googleのベテランことトニー・ワン氏、マネージングパートナーとして500 Startupsに参加

サンフランシスコを拠点とするアクセラレーターの500 Startupsは、Tony Wang(トニー・ワン)氏を雇い、経営チームを拡大する。

ワン氏は2014年からCOO(最高執行責任者)を務めていたColor Genomics(カラー・ゲノミクス)というスタートアップ企業から500 Startupsに移る。Color Genomicsはベンチャーキャピタルから支援を受けている遺伝子検査キットの会社だ。Color Genomicsの前は、Twitter(ツイッター)でグローバルパートナーシップ&開発担当バイスプレジデントを務め、またGoogle(グーグル)の国際事業の法律顧問も務めていた。

ワン氏は声明にて「ベンチャーキャピタルの世界は、500 Startupsが過去十年間に渡ってリーダーとして投資してきた場所で、グローバル化という劇的な変化の最中にあります」と述べた。「世界中に才能ある起業家がいることは、500 Startupsが投資するユニコーン企業の数からも明らかだ」。

CEOのChristine Tsai(クリスティン・ツァイ)氏が率いる500 Startupsは、TalkDeskやTwilio、GitLab、Canvaなどに初期から投資している。

500 Startupsのシードファンドは4カ月のシードプログラムを通じて、6%の株式と引き換えに参加企業に15万ドル(約1600万円)を投資する。こちらでは500 Startupsの最新のプログラムを完了させたスタートアップの詳細が確認できる。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Alchemist Acceleratorのデモデーに登場した22社のスタートアップを紹介

企業を対象としたスタートアップ・インキューベーターAlchemist Accelerator(アルケミスト・アクセラレーター)は、米国時間9月21日に22回目のバッチを紹介するデモデーを開催した。

参加企業には5分間が与えられ、自分たちは何者か、何を作っているのか、なぜ自分たちがそれに誰よりも長けているのかを、満場の投資家たちを前に売り込む。今回は、業務用ロボット掃除機から医療機関のためのプラットフォーム、AI駆動の資金融資プラットフォームまで、さまざまな事業を行う企業が登場していた。

早速どんな企業がデビューしたかを紹介しよう。参加した22社すべての概要を登壇順に列記する。

1.Cresance(クレサンス)
AIを使い、独自のアルゴリズムで無駄を検出し、クラウドの運用コストを削減する。2019年に企業がクラウドのために消費した金額は2000億ドル(約21兆5000億円)に上る。Cresanceは、3~5年後には5000億ドル(約53兆8400億円)にまで膨れ上がると見込んでいる。


2.Bridgefy(ブリッジファイ)
ユーザーが気に入っているインターネット接続が切れたときでも、接続が継続できるモバイルアプリを開発中。彼らのフレームワークは、近くにいる他のユーザーを通じてBluetoothのメッシュネットワークを利用するというもの。創設者Jorge Riso(ホーヘ・リソ)氏によれば、この4カ月間で1万2700件のライセンス契約を交わしたとのこと。また、Bridgefy独自のメッセージアプリは、4週間で14万ダウンロードを記録した(香港の抗議活動の間に利用者が急増)。リソ氏は、Twitter(ツイッター)の共同創設者とブリッジファイの投資企業であるBiz Stone(ビズ・ストーン)からステージに招かれた。

3.Synapbox(シナップボックス)
企業の画像や動画コンテンツにどれだけの効果があるかを調査し、パフォーマンスを高める方法を提供する。創設者Cristina De la Peña(クリスティーナ・ダ・ラ・ペーナ)氏によると、同社の月間経常収益は100万ドル(約1億800万円)を超えると見積もられ、8月の収益は6万ドル(約650万円)、9月は8万5000ドル(約916万円)に上るという。

4.Teleon Health(テレオン・ヘルス)
高齢者介護施設のためのソフトウェアプラットフォーム。同社の最初の製品はHIPAA(米国医療保険の総合運用性と責任に関する法律)に準拠したスタッフ間の通信プラットフォームだ。スタッフ同士が簡単につながり、利用者のデータの交換やそれに関する相談、更新スケジュールの送信などが行える。

5.Particle(パーティクル)
転向、災害、地域紛争など「1日あたり100万件を超える影響力の強いデータポイント」をAIで常に監視し、商品相場(コバルト、プラチナなど)を予測する。2019年には100万ドル(約1億800万円)の収益があり、2020年には3倍に伸びると同社は見込んでいる。

6.Pristēm(プリスティーム)
ポータブルな装置でスチームクリーニングができる。オフィス、ホテル、アパートなどで、ドライクリーニングの代わりに使用されることを想定している。ハードウェアのライセンス料と月間のサブスクリプション料で収益を得る。同社の共同創設者によると、マリオットやハイアットを始めとするホテルチェーンから基本合意をもらっているという。Pristēmという名称はスチームに掛けてある。

7.EveraLabs</span>(エベララブズ)
尿から幹細胞を収集すると同社が主張する在宅の郵送キットだ。若いときの幹細胞を保管しておき、後に健康上の問題が発生したときに役立てるというアイデアだ。

8. testRigor(テストリガー)
開発中のソフトウェアを「人間レベル」で自動テストする。現在は年間経常収益が20万ドル(約2150万円)と推測されるが、今後30日で30万ドル(約3230万円)になると予測している。共同創設者のArtem Golubev(アーテム・ゴリュベフ)氏によれば、testRigorはすでに、GrubHub(グラブハブ)、stockX(ストックエックス)、Genentech(ジェネンテック)など26社と商談を進めているという。

9.Spectrum CannaLabs(スペクトラム・カナラブズ)
合法的な大麻(カナビス)製品のための、速くて正確な専門の検査を提供する。合法カナビス製品は、多くの州で、残留農薬、菌類、重金属、異物の出荷前の検査が義務づけられているが、同社によればそのための研究室の費用は高額になるという。

10.Gritwell(グリットウェル)
栄養士や栄養士、自然療法士と、持病を抱える患者とのマッチングプラットフォームを運営。同社は当初、ループス(全身性エリテマトーデス、全身性紅斑性狼瘡)の患者を対象としていたが、現在は自己免疫疾患の患者にサービスを拡大している。

11.Green Light Labs(グリーン・ライト・ラブズ)
電気自動車への乗り換えを後押しするマーケティングプラットフォーム。MyGreenCar(マイグリーンカー)とMyFleetBuy(マイフリートバイ)という2つのアプリは、車の走行状況を分析して、別の車ならどれぐらいのコストになるかを、個人向けまたは企業向けに分析する。現在、契約で生じた収益は130万ドル(約1億4000万円)。

12.Friendly Robots(フレンドリー・ロボッツ)
業務用のロボット掃除機。ルンバのようなものだが、大型で、広く入り組んだ業務用スペースを掃除する。自律度も劇的に高められている。CEOのXiao Xiao(シャオ・シャオ)氏は以前Apple(アップル)で、おもにApple Watch用の距離計やモーションセンシングのアルゴリズムのデザインと開発を行っていた。

13.Bludot(ブルドット)
地方自治体が、地元の産業の成長を監視し分析できるようにするクラウドベースのプラットフォーム。そのデータを許認可に結びつけ、自治体がビジネスオーナーたちとつながれる場所を提供する。現在、中規模の都市での試験プログラムを完了したところだ。

14.Coolso(クールソー)
手首に装着して筋肉の動きを感知することで、ジェスチャーでデバイスの操作ができるようにする装置。共同創設者のJack Wo(ジャック・ウー)氏によると、同社のソリューションは、Thalmic Labs(サルミック・ラブズ)のMyo(マイオ)やLeap Motion(リープモーション)などのアプローチと違い。安価に製造でき、しかも安定しているという。

15.Crelytics(クレリティクス)
金融業者のためのAIを使ったリスク評価と不正検出のためのソフトウェア・プラットフォーム。カスタマイズ可能な意志決定エンジンでもある。現在の年間経常収益は10万ドル(約1080万円)以上とされている。

16.LEAD(リード)
企業内に「素晴らしい職場文化を築く」ことを目的としたプラットフォーム。従業員を、興味や職歴をもとにマッチングし、1~4週間ごとにお茶やランチや仮想訪問で会合させる。SlackGoogle Suiteなどの既存のソフトウェアと連動させて使用する。

17.Celly.ai(セリー・エーアイ)
AIを使った顕微鏡検査による診断を行う。光学式アダプターで顕微鏡のレンズにiPhoneを接続すると、Celly.aiのニューラル・ネットワークが、まずは血球数をカウントし、血液塗抹標本の分析を行う。

18.Blushup(ブラシュアップ)
美容製品の小売業者(ロレアルやランコムなど)向けのマーケットプレイスであり予約ソリューション。創設者Monique Salvador(モニク・サルバドール)氏によると、オンライン予約ソリューションを利用している美容小売業者ではわずか37%だという。

19.Modality.ai(モダリティ・エーアイ)
ユーザーの動画(アバターで通信している間に録画)で、表情の動きや話のパターンなどから神経疾患の変化を評価する。神経疾患のための薬の試用を、標準化された客観的なデータによってより効率的に行うことを目的としている。

20.Chowmill(チャウミル)
企業の会議やイベントのための食事の注文を、早く簡単にできるシステム。食事の好み、好きなレストラン、予算などを入力すると、Chowmillが残りの作業を自動的に処理する。創設者Mubeen Arbab(ミュービーン・アーバブ)氏によれば、同社の売上総利率は40%とのこと。1月には収益が2万5000ドル(約270万円)だったが、8月には11万8000ドル(約1270万円)に増加した。

21.Yaydoo(イェイドゥー)
値段交渉や再注文など、企業の調達業務を自動化する。年間経常利益は120万ドル(約1億3000万円)と予測されている。

22. SmartBins(スマートビンズ)
食料品店の量り売りのためのスマート・ディスペンサー。既存の容器で使用できる。客は、ディスペンサーを普通に使うだけで、SmartBinsのシステムが自動的に分量を計測し、その近くに置かれてる発券機からラベルが印刷されて出てくる。共同創設者のDavid Conway(デイビッド・コンウェイ)氏によると、すでに市場占有率100%の量り売り用ディスペンサーのメーカーと販売契約を交わしたという。食品メーカーと小売店は、商品ごとの売り上げの分析結果をダッシュボードで見られるようになる。

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(翻訳:金井哲夫)

デジタル契約プラットフォームのIroncladが約54億円を調達

米国時間9月17日、法務部門が契約のワークフローを管理しやすくすることを目指すスタートアップのIroncladが、シリーズCで5000万ドル(約54億円)を調達したと発表した。このラウンドはY Combinator Continuityが主導し、Emergence Capitalや、これまでも投資してきたAccelとSequoia Capitalなどが参加した。Crunchbaseによれば、このラウンドでIroncladのこれまでの調達額の合計は8300万ドル(約90億円)になった。Ironcladは、Y Combinatorの2015年夏学期に参加していた。

Ironcladはこの資金調達に加え、Workflow Designerというツールも発表した。このツールを使うと、それぞれの業務のプロセスやタイムラインに基づいて簡単にオリジナルのワークフローを作ることができる。ワークフローのセットアップはわかりやすそうだ。既存の契約書にタグ付けした後、該当する書類の内容に応じてプロセスをセットアップできる。例えば、契約が一定の金額を超えたら、支払の条項を追加したり金額によって承認プロセスをセットアップしたりする。

Workflow Designerは、契約のライフサイクルを管理し法的書類の共同作業をする同社の既存のツールを補完する。

Ironcladは、今回の資金を使って新たな地域に進出し、製品を発展させるという。

Ironcladの共同創業者でCEOのJason Boehmig氏は「このラウンド、そして我々の継続的な成長は、世界中のあらゆる企業に対する契約業務の効率化に大きなチャンスがあることの表れだ。今回参加した新しい投資家は、後期ステージの企業の経験をより深いものにし、クラウド企業の将来についてのビジョンをもたらしてくれる。新たな資金で、契約業務にかかる時間を85%短縮するWorkflow Designerのような革新的な製品の開発をさらに進める」と述べている。

画像:peepo / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

Incubate Camp12th参加のスタートアップ16社を紹介

独立系ベンチャーキャピタル(VC)のインキュベイトファンドは9月13日、14日の2日間、通算12回目となるIncubate Campを開催した。Incubate Campは、シード/アーリーステージ起業家のための1泊2日の合同経営合宿。国内の著名な投資家やVCからのメンタリングが受けられるほか、数千万〜億円単位の投資の機会もある。今回は16社のスタートアップ企業が参加し、それぞれの事業内容や戦略について語った。早速その16社をピッチ順に見ていこう。

なお、審査結果などについては追って追記する。

Gaudily

ブロックチェーン技術を活用して、企業のプロダクトやサービスのファンコミュニティマーケティングを支援するBaaS(Backend as a service)アプリケーション「Gaudiy」を開発。ブロックチェーンをベースにしDapps(分散型アプリケーション)コミニュティは、ユーザーロイヤリティーが非常に高く、ユーザーが社員のようにコミュニティを熱心にサポートする特徴があるとのこと。Gaudiyは、独自トークン、投げ銭、貢献値、チャンネル、企画などの機能を備えるトークンコミュニティープラットフォームで、現在8社でテスト中とのこと。同社はそのほかブロックチェーン技術の研究を、博報堂、毎日新聞、LIXIL、KONAMI、横浜ベースターズ、ブリヂストン、三菱電機、そのほか海外のブロックチェーン企業、大学機関などと研究を進めているそうだ。

ウェルネス

パーソナルドクターを軸としたウェルネス事業を展開。身体が不調を感じる前に予防することを目的とした、医師によるパーソナルトレーニング「Sylt」を提供している。Syltでは、マスター、目的別、スポットの3コースを用意。マスターコースでは、自分の身体・心について体系的に理解を深め、将来の病気に備えるためのヘルスリテラシーを得ることができる。目的別コースでは、ダイエット、人間ドック、遺伝子検査などを深く理解しながらトレーニングを受けられる。スポットコースでは、ガンや糖尿病、子供の健康など、自分が関心のある領域ついて学べる。

HANOWA

フリーランスの歯科衛生士と歯科医院のマッチングプラットフォーム「HANOWA」を運営。現在、全国的に歯科衛生士の数は不足しているが、実は有資格者(国家資格)の約半分以上は潜在労働力として働いていない。これは女性の歯科衛生士が、出産などを機に休職することが多いうえ、子育てと仕事を両立できる歯科医院が少ないという現状がある。HANOWAでは、歯科衛生士のすきま時間をシェアリングし、複数の歯科医院でパラレルキャリアの就労を可能にする。人材のマッチングだけでなく、医科衛生士と歯科医院の相互レビュー機能も備える。

Nature Innovation Group


1日70円で傘を借りられるサービス「アイカサ」を展開。専用アプリは不要で、LINE上でアイカサのアカウントを友だちに追加することですぐに使えるのが特徴だ。アイカサスポットに設置されている施錠状態の傘に張られているQRコードをスマホで読み取ることで解錠・決済が可能。1日ごとに70円が加算されていくが、6日以降からは1カ月間は420円。ゲリラ豪雨など想定外の雨であっても、コンビニで傘を購入するより安価に利用できる。傘の返却は最寄りのアイカサスポットに返却すればいい。決済方法は、クレジットカードのほかLINE Payを選べる。今後は全国の鉄道事業者を交渉を進め、2022年には773駅13万本を目指す。現在、280円の月額サービスも試験導入しており、最終的には家の傘のリプレースも狙う意気込みだ。利用頻度が高いユーザーの行動をスコア化して、クーポンなどの特典配布も検討しているとのこと。

rite

インフルエンサーがさまざまな商品を自由に紹介できるメディアサービス「rite」を運営。Instagramをプラットフォームとして、ファッションやコスメの分野でインフルエンサーが簡単にセレクトショップを始められる。1年間でインフルエンサー100名、流通総額12億円を目指す。商品を提供する企業からの要望ではなく、インフルエンサーが本当にいいと感じた商品を自らが選び、自由に紹介できる環境を目指す。

Genics

くわえるだけで自動での歯磨きを可能にする「次世代型全自動歯ブラシ」を開発。この歯ブラシのマウスピースには複数のブラシが植えられており、小型電動モーターの駆動により歯列に沿ってブラシが上下左右に運動、約30秒で歯垢を除去するという仕組みだ。ブラシが歯の裏側を含むすべての面に当たるように歯列形状に合わせて設計されているので、あらゆる角度から歯を同時に磨くことが可能とのこと。現在は、大学病院や介護施設での実証実験を進めており、2020年2月までに200台の導入を計画。老人ホームやケアセンターなどへ導入し、要介護者や高齢者の歯磨きを短時間で手間なく済ませることを目指す。保険適用できるように医療機器としての申請も進めているとのこと。将来的には一般ユーザーにも広げていく予定だ。

Carstay

車中泊可能なバンのシェアリングサービス「VAN SHARE」、車中泊スポットのシェアリングサービス「Carstay」、ライフスタイルメディア「VANLIFE JAPAN」を運営。VAN SHAREでは、バンを借りる人である「ドライバー」とバンをシェアする「ホルダー」の両方に自動車保険が自動付保される。鍵の受け渡しは対面なので、車体に特別な装置を装着する必要もない。シェアできるバンは、大人1名以上が快適に車中泊できる自動車のみ。もちろん、キャンピングカーなどの特殊用途自動車も登録可能だ。

EPOQ

「OAO」というブランドを運営。ローンチ直前のため、事業内容など非公開。

RABO

海洋生物の生態行動を調査する研究手法であるバイオロギング技術を活用した首輪型の猫用ロギングデバイス「Catlog」を開発。加速度センサーを内蔵しており、猫の動きを24時間記録・解析。歩行や走行はもちろん、睡眠や飲食などの状況もスマホでチェックできるようになる。通常と異なる動きをした場合に緊急アラートを通知する機能もある。ペット保険大手のアニコムと共同研究を進めており、今後は専用保険なども開発していくという。

ロジレス

受注管理システム(OMS)や倉庫管理システム(WMS)など、EC事業で必須の倉庫のバックヤード業務を効率化するサービスを提供。同社が解決するのはEC事業者の経営課題。商品受注や発送、煩雑でコストもかかる在庫管理などのバックヤード業務をロジレスにアウトソージングすることで、人件費や輸送費などを圧縮できる。ロジレスのシステムでは、受注管理、在庫管理、出荷作業などの一連の業務を1つのシステムで管理可能になるのが特徴。商品の自動出荷はもちろん、商材や配送先、配送方法に応じて最適な場所から出荷する「複数拠点出荷」も可能になる。現在、30社以上と倉庫業務で提携しており、今後も提携数を増やしていく計画だ。将来的にはネットショップだけでなく、POS連携などで卸小売業の商品配送などにもサービスを広げていく。

Elaly

取り扱い1万品目のインテリア家具を月額定額で利用できるサービス「airRoom」を運営。利用者は月額500円から借りることができ、もちろん1カ月単位での家具の入れ替えも可能。高い料金のものでも月5000円程度とのこと。プロのインテリアコーディネーターによるコーディネート提案や配送料、返却料、組立、設置なども無料だ。補償サービスも付帯しており、家具に傷をつけても追加料金を支払う必要はない。今後はハイエンドの家具のラインアップも増やしていく。

アグロデザイン・スタジオ

バイオサイエンスを基盤とした安全な農薬開発を目指すスタートアップ。 最近は人気の除草剤が発がん性の疑いで海外で相次いで販売禁止になるなど、農薬の危険性が再注目されている。この一因は従来の農薬の開発手法にある。さまざま組成を繰り返し試して有効なものを製品化という手法が主流で、なぜ効くのかという点が詳しくわからなかったそうだ。同社はゲノム比較によって特定の害虫だけがが持つ酵素を探し出し、人体に影響がない有効な農薬を開発することを目指す。現在、アンモニア酸化細菌の活動を抑制する分子標的型の硝化抑制剤を開発中。安全性が高く環境にやさしい硝化抑制剤を提供することで、持続的農業に貢献することを目指す。

ドクターメイト

365日利用できる介護スタッフ向けオンライン医療相談サービスを提供。介護施設に医師が常駐するケースは少なく1日数時間しかいないことがほとんどで、ケアスタッフだけで対応できない問題をオンラインで医師がサポートする。無料配布されたタブレット端末から写真やテキストを送ることで、医師から即日回答を受けられるのが特徴。症状はそのまま共有可能で、嘱託医とも自動連携する。皮膚科をメインに各種診療科の症状に対応、現在18施設と提携している。今後は在宅医療にも進出していく予定。

Anyflow

メールやメッセンジャーをはじめとする、さまさまなSaaSアカウントを専門知識がなくても作成・連携可能にするサービス「AnyFlow」を開発。Slack、Chatwork、Dropbox、Money Forwardなど国内外のさまざまなSaaSの公開APIを解析。エクセルのマクロがわかるスキルがあれば手軽に作業でき、一度ワークフローを作ってしまえば業務の自動化が可能だ。サービスは10月のリリースを目指している。

Endroll

商業施設向けのARエンターテインメント事業を展開。これまで、iNTERFACE SHIFTカンファレンス実行委員会、東京急行電鉄、アカツキライブエンターテインメントと組んだARソリューションを開発。それぞれ、テックカンファレンス「iNTERFACE SHIFT 2018」内のAR空間に仕掛けられた爆弾を探し出す「会場ノ爆弾ヲ解除セヨ」、渋谷エリア一帯を利用したリアル謎解きゲーム「渋谷パラレルパラドック」、横浜駅直通のエンターテインメントビル「アソビル」の全館を舞台にしたAR周遊ゲーム「アソビルパーティー」などを展開してきた。

TANOsim

CGクリエイター向けの3DCG作品投稿サイト「CGクラウド」を提供中。CGを制作するには最新の技術を要するうえ、VR/ARなどの登場で需要がさらに高まっている。その一方で、仕事の進め方はアナログでCG技術はクローズド。同社は、パーツライブラリを利用してさまざまなキャラクターを作成できる環境の構築や版権ビジネスへの参入など、CG業界に特化したマッチングプラットフォームを目指す。

成長したスタートアップを潰してしまう「虚栄マーケティング」に手を出すな

2014年、私はロケット宇宙船の1階だと自分で思っていた場所に乗り込んだ。Fling(フリング)は、2014年に急成長したアプリとなり、私は相当気前のいい待遇でその会社のCGO(Chief Growth Officer、最高成長責任者)に抜擢された。今思えば、そこで立ち止まるべきだった。ロンドンに到着して24時間以内に、私はFlingのロゴが入ったハンヴィーに出迎えられた。この特殊車両が一番悪い経費の使い方であるとは、そのときは気が付かなかった。

Flingのマーケティング部門は20人の社員で構成されていた。これは全社員の30%にあたる。これほどの規模のマーケティング部門を本社から離れた場所に置かなければならないスタートアップなんて、ちょっと変だと感じた。私は一人ずつ彼らと面談し、それぞれの専門分野、役割、その人がどれほどの価値を会社にもたらすかを検証した。オンラインユーザーの獲得、ブランド、提携、メトリックスなどなど、彼らの専門分野は多岐にわたっていて、私はなんと、履歴書の文字面だけで彼らの技能に関心させられてしまった。

そこでは資産は無限であるかのように思われ、時間も金も、あらゆる出費は、全体として利益が出る限りは妥当だと感じられた。しかも単独で、おそらく多くの人間(あるいは全員)がプラスの投資対効果を示していた。その結果、「すべてを適正に行っている」にも関わらず、常に現金が不足していた。すべて機能してはいたが、それは持続可能で制御可能なかたちではなかった。そのため最終的に私は、誇大広告に手を染めることになった。マーケティングの肥大化を私は懸念していたのだが、そのとおりになってしまった。会社は、2100万ドル(約23億円)の現金を燃焼した後、行き詰まった

その責任の一端が私にあることは承知している。出血を止めるべきだった。しかし、何をやってもプラスの結果になった。ひとつひとつの数字を示したり説明したりできる内容ではないが、たしかに結果は出ていた。私たちは世界中のお金と時間を手にしていた。そうでなくなる瞬間まで。

Flingに入る前、私は前の会社が倒産してから、世界で最も人気のあるフィットネスアプリを使って必死に腕の筋トレばかりやっていた。Flingの後は、自ら悪習を身につけ、あまり実入りは良くないが、もっと充実感のある、結果がすべてという仕事を点々とせざるを得なくなった。

私の場合、そしてすべてのマーケッターにも言えると思うが、やりくりの高い資質を養うためには、豊かな環境ではなく、貧困な環境に長い間身を置く必要があった。この環境の違いとは、自分で経験を積んで能力を成長させてゆくか、仲良しのベンチャー投資家のおっぱいを吸い続けるかの違いだ。

しかし、「やりくりの資質」という言葉は誤解を招く。そこには見事なまでの皮肉が込められている。資産が底を突いたときに初めて養われる能力だからだ。

そこで、新しい言葉を憶えて欲しい。「虚栄マーケティング」(Vanity Marketing)だ。

虚栄マーケティングは、企業にとっては魅力的な投資だ。漠然としていて儚く、それでいて満足のいく結果をもたらしてくれる。盛大なパーティーを開いたり、ロゴ入りのハンヴィーを乗り回したり、人が羨む存在になれる。そしておそらく、何かを言えば1万件のシェアやリツイートがつく魔法の「バイラリティー」が手に入る。

あなたは人気者になる。これといって特異なところはないまでも、投資家のほうから近づいてくるような、マスコミが話を聞きたがるような、または「成功者」として非常にセクシーな人物になる。これは、例えば担当する営業部門などが、厳しい目で監視されている市場が少ないという事実がもたらす結果だ。クビにならないというだけで多くの人が生き残れる、巨大にして絶大な力を持つ戦車のようなマーケティングの結果だ。

もし、実力を伴わないまま巨大化したことがスタートアップの死につながるとしたら、マーケティングはその原因となる自覚症状のないガンだ。有り余る資産が体に染みついてしまったマーケッターは、空っぽになるまで資産を使い切る。資本を燃やして会社を成長させれば、マーケティングは簡単に成功するからだ。

起業家を自称するだけで起業家のような顔をしている人たちが大勢いるのをご存知か?マーケティングにも同様のパターンがあることを、私は知った。誰もが自分を「グロースハッカー」だと言いたがる。しかし、SQLやPythonの記述方法を勉強したいという人はいない。

なぜか?セクシーでないからだ。または、CPMや平均注文額、「カートに追加」のユニーク数あたりのコストといったメトリックスほど魅力的ではないからだ。セクシーなのは、新しいオーディエンスを獲得するために(他人の)金を使うことであり、大きな数字が増えてゆく様子を誇示することだ。問題は、土の中に自分の手を突っ込まない限り、自分のマーケティングが利益を生んでいるか否かを実際に知る術がないということだ。何十万ドルも浪費して、何の見返りも得られないマーケッターを私は見てきた。同じだけの経費を出張に使って、1セントも売り上げられない営業マンがいたら、あなたはどう思うだろうか。

大きくなって消えていったスタートアップのほとんどが、なんらかの虚栄マーケティングで大枚を浪費している。それは例えば、一人のユーザーを獲得するために必要な経費とはまったく関係のない支出だ。もしこれを読まれたマーケッターのあなたが、自分は違うと思われたなら私は誇りに思う。と同時に疑わしく感じる。楽しい時間を過ごしたり、CESでパーティーを開いたり、ちょっとだけそれを味わってみるぐらいなら、そして数量化が難しい何かを手に入れるための一時的な試みだと自覚しているなら構わない。「みんなもやってるから」というだけの理由で金を使おうとするのなら、まったく馬鹿げている。

しかしダークな事実として、マーケティングの経費には、その効果をまったく数量化できないものが非常に多い。大枚を叩いたという以外に、現実として実証できるものがほとんどないのだ。

退屈で一貫したマーケティング、つまり分析可能でその本当の効果が理解できる仕事は、大きくてキラキラしたものに比べるとまったく面白そうに見えない。人を驚かせることもないだろう。だが、それが役に立つ。そしてそれが、どこへ行っても成功できる秘訣なのだ。

【編集部注】著者のディック・タレンズ(Dick Talens)はフィットネスハッカーでありグロースハッカー。

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(翻訳:金井哲夫)

伊藤穰一氏がMITメディアラボの所長を辞任、資金調達の不正処理で

MITの理事長L.Rafael Reif(L・ラファエル・ライフ)氏の声明によると、今論争のさなかにあるM.I.T.Media Lab(MITメディアラボ)の所長である伊藤穰一氏が辞任した。このニュースを最初に報じたThe New York Timesは、伊藤氏が学長のMartin A. Schmidt(マーティン・A・シュミット)氏に送ったメールのコピーを入手した。

今や元所長になった伊藤氏のメールには「この件については何日も何週間も熟考してきましたが、今では、私が本学のメディアラボの所長職と教授職および職員を今ただちに辞任することが最良と考えています」と書かれていた。

上記ライフ氏の声明には、伊藤氏が本学の教授職を辞任したことも明言されている。

メールが言及している「この件」とは、伊藤氏のJeffrey Epstein(ジェフリー・エプスタイン)との関わりが報道されたことだ。未成年者を性的につけ狙ったとして逮捕されたこの富豪投資家は、収監から1カ月後の8月10日に拘置所で首つり自殺した

この不名誉な億万長者と関係があるとされる著名人や有力な人物は何人もいたが、彼の逮捕後にはそれらの人々にも報道機関が注目。そしてその中に伊藤氏の名前もあった。それらの記事には、MITメディアラボと伊藤氏個人がエプスタインから資金を受け取ったとあり、それについて彼は8月15日の書簡で謝罪した

しかしさらにその後、The New YorkerのRonan Farrow(ロマン・ファロー)氏の記事が、伊藤氏とエプスタインはもっと深い仲だった、とすっぱ抜いてから、嫌疑は一晩で濃くなった。ファロー氏が見つけたメールや文書によると、伊藤氏とメディアラボの開発部長であるPeter Cohen(ピーター・コーエン)氏の二人が協力して、MITの資金調達中央事務局からエプスタインの寄与貢献を隠し、それらを匿名の寄付にしたり、彼の名前を開示文書から消したりした。

伊藤氏は、これまでずっとエプスタインとの関係をめぐる事実は正しく報道されていない、と言い張っていた。Timesへのメールで同氏は、New Yorkerの記事は「事実に関する間違いが多い」と言っている。

MITの理事長であるライフ氏は本日の声明でFarrowの記事について「その記事に書かれている非難は極めて重大なので、緊急かつ徹底的な、そして独立の調査を要する。今朝私はMITの法務部に優秀な法律事務所と契約してこの調査の計画と実施をしてもらうように求めた。その検証作業は迅速に行われてほしいし、また、報告書が私とMITの統治機関であるExecutive Committee of the MIT Corporationに渡されることを望んでいる」とコメントしていた。

MITメディアラボは高名な研究機関であり、科学とテクノロジーとイノベーションに長年貢献してきた。Ito氏に代わる者の名は、まだ挙がっていない。

伊藤氏は、The New York Times Companyの取締役でもある。彼はこの取締役会で、監査委員を務めている。

以下は、伊藤氏が10年あまり前に書いた、資金調達に関する不朽の名言だ。

関連記事:After Epstein, it’s time for the Valley to find a moral view on capital(資本にもモラルが必要だ、未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

従業員アンケートのCulture Ampが約87億円を調達

不幸な企業がどう不幸かはそれぞれだが、従業員が何に満足し、何に満足していないかを理解する道はある。

メルボルンにある創業から8年のCulture Ampは、従業員が匿名で職場についての意見を伝えられるようにする企業のひとつで、多くの顧客から集めた匿名の従業員アンケートのデータをもとに、各社がお互いに学び、どのような取り組みをすべきかを提示している。

Culture Ampはカスタマーベースの拡大を狙い、Sequoia Capital Chinaが主導したシリーズEで新たに8200万ドル(約87億円)と大規模な調達を果たした。このラウンドには、Sapphire Ventures、Felicis Ventures、Index Ventures、Blackbird Ventures、Hostplus、Skip Capital、Grok Ventures、Global Founders Capital、TDM Growth Partnersも参加した。

これにより、同社がこれまでに調達した資金は1億5800万ドル(約168億円)と、それまでのおよそ2倍になった。同社は2018年7月にシリーズDで4000万ドル(約42億5000万円)を調達していた。

同社のアンケートソフトウェアはサブスクリプション方式で、従業員の感情を追跡し得られたデータを視覚化するためのテンプレート、質問、分析がすべてそろっている。このソフトウェアは四半期ごとのエンゲージメント調査などに使えるほか、業績評価、目標設定、自己評価にも活用できる。

従業員アンケートは画期的なものではないが、Culture Ampは匿名のフィードバックをチームレベルにまで落とし込み、従業員が自分の上司に直接フィードバックできるようにすることで、プロセスを改善しようとしている。

同社CEOのDidier Elzinga(ディディエ・エルジンガ)氏は、現在2500社の顧客がいて合計で300万人の従業員が同社のアンケートに参加していると語る。このネットワークの集団的知性を従業員の離職などの予測につなげられることが、おそらく同社の最大の価値提案だという。

同氏はTechCrunchに対し「従業員のエクスペリエンスを理解し、どこに力を入れればいいかがわかったら、お客様が行動するために我々は何ができるだろうか。我々には数千社の集団的知性がすでにあり、これを活用すれば同じような問題を抱える人々から学ぶことができる」と語った。

Culture Ampの従業員数は400人で、顧客にはマクドナルド、Salesforce、Slack、Airbnbなどがある。

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(翻訳:Kaori Koyama)

最新のホテル運営を目指すMewsが35億円を調達

これまでのホテルビジネスを考えてみると、イノベーションはあまり起きていない。たいていチェックインの列に並ぶし、チェックアウトで並ばなくてはならないこともある。ドアの外にプレートをかけて「起こさないでください」とホテルのスタッフに知らせる。Mewsはホテルを、特に管理業務を、もっと現代的でデジタルを取り入れたやり方で運営すべき時が来たと考えている。米国時間8月29日、同社はBattery Venturesが主導したシリーズBで3300万ドル(約35億円)を調達した。

Mewsの創業者のRichard Valtr(リチャード・ヴァルター)氏はそれまでのホテル運営を変えたいと考えて、2012年にプラハで事業を始めた。同氏はTechCrunchに対して「過去100年間変わっていないホテルのプロセスを実行するのではなく、私は本当にホテルのシステムを変えてゲストの体験を向上させたいと思った」と語った。

ヴァルター氏はAirbnbを主な例として挙げながら、ホテル業界のイノベーションの大半はB2Cの領域で起きていると語る。同氏が目指すのはホテル運営のイノベーションだ。「Mewsが目指すのはホテル運営の部分だ。なぜ旅が好きなのか、なぜホテルに滞在し体験しプロフェッショナルのスタッフの接客を受けるのが好きなのかという基本的な事柄に力を入れていきたい。我々は一人ひとりのお客様に対して真に有意義でパーソナライズされた体験を提供することに取り組んでいる」と同氏は説明する。

手始めにMewsは、部屋の割り振りなど多くのタスクを自動化するクラウドベースのシステムを構築している。多くのホテルではこうしたタスクをいまだに手作業で実施している。こうした面倒な作業から解放されればスタッフはもっとゲストに集中できるという信念をヴァルター氏は持っている。

ゲストとホテルが滞在をカスタマイズして体験の質を上げる取り組みもしている。同氏によれば、このアプローチによってホテルは売上の機会を柔軟に創出できる一方、ゲストは自分に合う滞在の仕方を選べるという。

ゲストの立場から見ると、宿泊者情報を事前にホテルに提供し、入室のためのパスコードを携帯電話で受け取ることにより、チェックインのプロセスを省ける。このシステムは、Booking.comやExpediaなど他社のホテル予約サイトやその他のサービスとAPIで統合されていて、地元企業と連携して多くのチャンスを活かすことができる。

Mewsは現在、47カ国で1000カ所の施設を運営しているが、米国ではまだプレゼンスに欠ける。このラウンドで調達した資金でニューヨークにオフィスを開設し、米国へ進出したい考えだ。ヴァルター氏は「米国の市場で成功したい。主要チェーンの意思決定者の多くが米国にいるからだ。最大規模のブランドの考え方を変えなければ、業界を変えることにはならないだろう」と言う。

現在、同社は世界中に10カ所のオフィスを構え、従業員数は270人。本社はプラハとロンドンだが、ニューヨークオフィスの開設も準備中で、開設すれば従業員数も増える見込みだ。

画像:Hispanolistic / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)