インフィニティ・ベンチャーズが3号ファンド設立、中国出資ではリクルートと連携

インフィニティ・ベンチャーズLLP(IVP)は11月6日、3つめのファンドとなる「Infnity e.ventures Asia III,L.P.」を設立したことを明らかにした。

ファーストクローズの金額は約3200万ドル(1ドル110円換算で約35億円)。ファンドに出資するのはリクルートホールディングス、大和証券グループ本社、サミーネットワークス、ORSO、ミクシィ、ユナイテッドなどの法人のほか、個人経営者など。IVPは2009年に1号ファンドを立ち上げているが、これにはKDDIやミクシィが出資していた。IVP共同代表パートナーの小林雅氏によると、「当時に比べて、規模の大きい事業会社において新規事業開拓のニーズが増えている」とのことで、事業会社による出資が多くなっている。

また10月に上場したばかりのリクルートホールディングスもファンドに出資するが、今後はリクルートグループで海外に特化投資に特化したコーポレートベンチャーキャピタルである「合同会社RGIP」などとも連携して中国での投資を進める。今後IVPでは海外の大口投資家なども含めて、2015年前半に1億ドル規模までファンドを拡大するとしている。

IVPはこれまで、1号ファンドからの累計調達額は約1億2800ドル(1ドル110円換算で約141億円)で、これまで国内外合わせて40社以上に投資をしている。投資金額に対して投資先のバリュエーション(評価額)は3倍だそう。小林氏にもう少し詳しい話を聞いたところ、これまでのイグジット事例として最も大きいのは1号ファンドで出資したグルーポン・ジャパン。

2012年末にクロージングした2号ファンドでは、企業名は非公開とのことだがすでに一部の株式を売却しているほか、中国で決済事業を手がけるYeahkaやアプリ解析のApp Annieをはじめとしてバリュエーションが100万ドル超の企業が4社ほどある状況。「現時点で大きなイグジイットは無いが、含み益は見えている」(小林氏)。3号ファンドでもこれまで同様に日本と中華圏での投資に注力する。


ベンチャーキャピタル、IoT(モノのインターネット)に狙いを定める―過去1年で投資3億ドルに急増

編集部: この記事の筆者、Christine MageeはCrunchBaseのアナリスト

日本発のパーソナル・モビリティ、Whillからワイヤレス充電のuBeamまで、家庭や自動車やオフィスにイノベーションを起こそうとするIoT〔Internet of Things=モノのインターネット〕のスタートアップが何百万ドル単位の資金調達に成功する例が相次いでいる。Kickstarterなどのクラウンドファンディング・プラットフォームではスピーカーやバッテリー充電器にもなるスマート・クーラーボックスとかカスタマイズできるスマートウォッチなどがヒットを飛ばしている。

それにとどまらず、最近ベンチャーキャピタルもホームオートメーションやホームセキュリティーの分野への投資を急増させている。GoogleのNest買収SamsungのSmartThings買収といった大型買収に刺激されて、この分野へのベンチャーキャピタリストの関心がかつてなく高まっている。

過去1年でベンチャーキャピタルは97回のラウンドで3億ドルをIoTスタートアップに投資した。しかも案件の半数は最近の四半期に実施されている。四半期での シードラウンドの件数は過去最高を記録している。

この件数急増の一因はIoTを対象としたアクセラレーターの整備によるものだ。R/GA、TechstarsのニューヨークのIoTアクセラレーター、Microsoft Venturesがシアトルに開設したホーム・オートメーション・アクセラレーター、 グローバルなアクセラレーターのHAXLR8Rなどがその目立つ例だ。ベンチャー投資家がIoTスタートアップの動向を注視していることはシードラウンドだけでなくSeries Aラウンドの数も新記録だったことでも推測できる。

Galvanize VenturesのNick Wymanは「この分野への投資を決断したもっとも大きな理由はIoTこそ将来だというコンセンサスが出てきたことだ。ビッグデータの取得と利用、スマート・ホーム、ホーム・セキュリティー、いずれもIoTテクノロジーが中心的な役割を果たすことになる」と説明する。

先週、GalvanizeはIoTスタートアップのKeen Homeへの投資ラウンドを実施した。これには損保のAmerican Family Insuranceやコミュニケーション企業のComporiumが戦略的投資家として参加している。Keenの最初の製品はスマート換気システムで、家の所有者は部屋ごとに換気をコントロールすることで室温を快適に保ちながら省エネを実現できる。「われわれは今後新しく現れてくる市場に投資している」とWymanは言う。Galvanizeは室内ガーデニングのスタートアップ、Grove Labsや家庭でビールを醸造するキットを開発したBrewBotにも投資している。

Keen Home自体はパズルの小さなピースかもしれないが、家のスマート化というその全体像は巨大だ。個別システムが多数登場すると、それらを協調させるハブの存在が強く求められるようになる。

BoxGroupDavid Tischは現在の状況を「Apple (Homekit)にせよ、 (Nest)、(SmartThings)、GE (Wink)にせよ、こうしたホームオートメーション・プラットフォームが最終的にどのような形を取るのか、まだ見えていない。今のところIoTエコシステムはまったく不透明な状況だ」と考えている。

Tischは去る7月のSamsungの買収に先立って、SmartThingsの1500万ドルのラウンドに参加していた。しかしそれ以後はホームオートメーションの分野で大きな投資の決断をしていない。先行きへの不透明感が、件数は多いものの大型投資案件が比較的少ないという傾向を招いているようだ。IoT分野での大勢が決まるまではあまり大きなリスクを取りたくないというのが投資家の心理なのだろう。ただGoogleなりAppleなりによってホームオートメーションのハブの事実上の標準が成立すれば、投資家には朗報だが、一部の消費者は、そういった巨大プロットフォームにもっとも重要なプライバシー情報をコントロールされたくないと反発するかもしれない。

HAXアクセラレータから巣立ったForm Devicesはそういった懸念に答える形で、 「ソフト・セキュリティー」を提唱している。これは従来のセキュリティーがカメラやセンセーといったデバイスに依存する「ハード・セキュリティー」だったのと対照的なアプローチだ。今週、 Kickstarterでプロジェクトを公開しているが、このシステムは24時間常時セキュリティー情報を記録するのではなく、ソフトウェアによって「何らかの異変」が感知されたときのみ、情報の記録を開始する。ユーザーは大量のプライバシー情報が外部のシステムに蓄積されてしまうことに対する不安を覚えずにすむわけだ。

「いずれにせよ、IoTの進展によって収集されるデータの量は飛躍的に増加する。それにともなってこのデータを効果的に処理、分析することから大きなチャンスが生まれ、ビジネスのあり方に革新が起きる。家庭、自動車、オフィスからIoTが始まろうとしている。その影響はドミノ倒しのようにあらゆる分野に急速に広がっていくだろう。インパクトは巨大だ」とR/GAのConnected DevicesプログラムのJenny Fieldingは予想する。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


マーク・アンドリーセン、スタートアップのバーンレートが過大と18回連続ツイートで警告

シリコンバレー最有力のベンチャーキャピタル、Andreessen Horowitzの共同ファウンダー、マーク・アンドリーセンは得意の連続ツイートでスタートアップのバーンレート〔ベンチャーキャピタルから投資された資金をスタートアップが支出する速さ〕が過大だと強く警告した。先週、ベンチャーキャピタリストのBill Gurleyがした発言に同意して、アンドリーセンは「自分も憂慮している」と述べた。

ツイートでアンドリーセンは「スタートアップはぴかぴかのオフィスや大量の採用などに金を使いすぎている。これらは成功の見掛けを与えるだけで、砂上の楼閣だ」と厳しく批判した。アンドリーセンは(名前こそ挙げなかったものの)こうしたスタートアップはやがて「泡と消える」と断言した。

アンドリーセンは連続18ツイートを「憂慮している」と締めくくった。

〔日本版:アンドリーセンのオリジナル・ツイートは原文参照。現在もTwitter上で活発な議論が続いている。アンドリーセンが高いバーンレートを批判する理由は数多いが、その一つは安易な人員採用の弊害だ。「すべての問題を新たな採用で解決する安易な態度を生む、採用するのは簡単だがレイオフするのは難しい、社員が増えれば内部コミュニケーションが煩雑になり意思決定が遅くなる」などの点を挙げている。〕

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


“活動量計もどき”はいらない–オムロンが30億円規模のベンチャー投資

京都府京都市に本社を置く大手電機メーカーのオムロンが、7月1日付で投資子会社のオムロンベンチャーズを設立。コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)として、2016年までの3年間で30億円規模のベンチャー投資を実施することを明らかにしている。

オムロンと言えば、コンシューマ向けの健康医療機器から制御機器や電子部品、車載電装部品などさまざまな事業を展開している。時価総額ベースで1兆円近い大企業がこのタイミングでベンチャーと組むことを決めた理由はどこにあるのか。

実は日本最古の民間VC設立にも関わったオムロン

実はオムロンは、日本最古の民間VCの設立にも関わっているそうだ。オムロン創業者で当時の代表だった故・立石一真氏が、京都経済同友会のメンバーとともに1972年に立ち上げた「京都エンタープライズディベロップメント(KED)」がそれだ。同社は日本電産などへの投資を行い、1979年に解散している。ちなみにKEDの設立から約2週間後、東京ではトヨタ自動車などが出資する日本エンタープライズ・デベロップメント(NED)が設立されているそうだ。

オムロンベンチャーズ代表取締役社長の小澤尚志氏

最近では通信キャリアだってテレビ局だってCVCを立ち上げているが、オムロンもそんな流れを受けているのだろうか。オムロンベンチャーズ代表取締役社長で博士の小澤尚志氏に率直に聞いたところ、「(オムロンベンチャーズを)立ち上げる中で知ったのだが、案外世の中ではやっていたとは知らなかった」と語る。

オムロンでは、2011年から10年間の長期経営計画「VG2020」を掲げており、その中でも2014年以降では「地球に対する『新たな価値創出』へつながる新規事業づくりに取り組む」としている。この経営計画の中で、ベンチャー投資の可能性を模索していたのだそうだ。

「オムロンは『ソーシャルニーズの創造』を掲げてきた会社。世の中で解決しないといけない課題を技術というよりはコアバリューとして提供してきた。例えばオムロンが世界で初めて提供した自動血圧計。これによって、これまで病院に行って看護師を必要としていた血圧測定が、家庭にいながら実現できるようになった。これは健康状態を手軽に見られる、より長く健康に生きたいという課題を解決しようとしたもの」(小澤氏)

オムロンは「課題解決のための会社」と語る小澤氏。もちろん自社に技術があればそれは活用するが、技術がなければ世の中の別の場所から獲得してくることもいとわないという考えだという。「本質的には、持っている要素技術でどんな課題を解決できるかを考えるのではなく、まず先に課題とその解決方法を考えている」(小澤氏)

しかしそうは言っても大企業の中でイノベーションを起こすのは難しいのは小澤氏も認めるところで、「いいモノを安く作るのは得意だが、新しいモノを作るのはなかなか大変」と語る。そこでオムロンベンチャーズを立ち上げ、速いスピードで投資し、協業できる体制を作る狙いがあるという。

オムロンベンチャーズは、ファンドを組成せず、オムロングループの資本をもとに投資を行う。対象とするのは「安全・安心センシング」「ライフサイエンス」「ヘルスケア」「ウェアラブルデバイス」「IoT」「環境・エネルギー」「農業関連」といった分野。オムロンベンチャーズがオムロングループ各社の新規事業のニーズをヒアリングし、協業の可能性のあるスタートアップを中心に、数千万円から数億円程度の出資を行う予定だ。すでにセンシングや農業関連の分野では具体的な話が進んでいるとのことで、第1号案件については、早ければ9月にも決定する予定だ。

モノづくりのノウハウをスタートアップに開放

小澤氏によると、今後は加工機や成形機など、自社グループの設備に関しても投資先に開放することを検討しているそうだ。「例えばfoxconnのようなEMS(Electronics Manufacturing Service:電子機器の受託生産サービス)がハードウェアベンチャーを助けているところがある。我々もハードウェアを安く製造できるノウハウや検品のノウハウなど、一通りの『モノづくり力』を持っている。そしてグローバルなネットワークもある。逆にベンチャーマインドやそのスピード感、テクノロジーは弱い。ならば我々がやるべきなのは、自分たちの能力やアセットをシェアすることだ」(小澤氏)

例えばスマートフォンアプリであれば、ここ数年のクラウドの普及によってスケールのための課題はある程度解決されたかも知れない。だがモノづくりとなるとQCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)が求められる。その課題を解決するパートナーとしては最適だと小澤氏は語る。

ハードウェアのQCDまでケアできる連携体制と聞けば、ハードウェアスタートアップにとっては期待が高まるかも知れない。実際、ハードウェアスタートアップ関係者から、部品の調達や組み立てに苦労したという話を聞くことは多い。

しかしこの取り組み、M&A先の発掘のための施策にも見えなくもない。小澤氏も「本音を言うとそれがないわけではない」と可能性については否定しないが、あくまでM&Aありきという話ではないと続ける。「M&Aは場合によりけりだと思っている。パートナーという距離のままのほうがいいケースとよくないケースがあると思っている。グループに入った瞬間、大企業のしがらみだってあるはずだ」(小澤氏)

「活動量計もどき」のウェラブルデバイスはいらない

さて、オムロンベンチャーズの投資領域には「ウェラブル」とあるが、オムロンと言えばこれまでにも歩数計や活動量計など、(今時のウェアラブルデバイスとは方向が異なるが)ヘルスケア関連のウェアラブルデバイスを提供してきたメーカーだ。どういうスタートアップと連携する可能性があるのか、改めて聞いてみたところ、小澤氏は以下のように語った。

「血圧、活動量、睡眠時間については、(デバイスを)持っているのでもういいんじゃないかなと思っている。だがこれらのデータを使ってアプリを開発してもらう、さらには身体的な情報だけではなくて、意思やメンタルに関する情報までを取得しないと総合的な健康というのは見ることができないと思っている。活動量計もどきのウェラブルには正直興味がなくて、もっと先を一緒に考えたい」


KDDI ∞ Labo第6期最優秀賞はブラウザー間コンテンツ配信「MistCDN」

KDDIが2014年3月にスタートしたインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo(KDDI無限ラボ)」の第6期プログラムが終了した。7月14日には第6期参加チームが東京・ヒカリエでプレゼンを実施し、最優秀チームにはブラウザー間でコンテンツ交換を行うP2P型コンテンツ配信プラットフォーム「MistCDN」を運営するMist Technogiesが選ばれた。第6期プログラムは一般に公表されていないサービスアイデアを持つ5チームが参加し、KDDIが「独自性」「市場性」「完成度」の観点で最優秀チームを選定した。

アクセスが集中するほどパフォーマンスが向上

MistCDNはユーザーのPCにコンテンツをキャッシュし、同じコンテンツを視聴するユーザーのPC間でコンテンツを交換するコンテンツデリバリネットワーク(CDN)。アクセスが集中するほど配信元となるPCが増え、転送速度が向上する仕組み。PC間の通信は、Web標準技術の「WebRTC」を採用している。MistCDNを導入するウェブサービス運営者は、コードを数行挿入するだけで利用できる。

アカマイに代表される従来のCDNは、アクセスが集中するほどサービス品質が低下する傾向にあるが、「MistCDNはアクセス集中を味方にするのが強み」とMist Technologiesの田中晋太郎氏は話す。逆に言えば、アクセスが集中していない状況は従来のCDNに分があるとも言える。田中氏によれば、従来のCDNをディスラプト(破壊)するのではなく、お互いの強みをウェブサービス運営者が使い分けられる環境を提供したいのだという。

現在はHTML5コンテンツ配信やライブストリーミング配信を行っていて、14日には無料トライアルキャンペーンを開始した。正式サービスの時期や料金は未定だが、コスト面では従来のCDNと比べて平均60〜80%削減できるとしている。

子どもの日常のベストシーンを集めた成長シネマを自動作成できる「filme」

14日に行われたプレゼンでは、来場者の投票により決定する 「オーディエンス賞」も発表され、スマホで撮影した動画を選んでコメントを添えるだけで動画日記が作れるアプリ「filme(フィルミー)」を開発するコトコトが選ばれた。日々の動画が20日分たまると、その期間の成長を振り返れる「成長シネマ」を自動的に作成できるのが特徴。成長シネマは独自の動画編集エンジンにより、子どもの表情や動き、声を自動検出し、日々の動画の中からベストシーンを集める。

動画の保存容量に制限がある無料プランに加え、容量無制限で成長シネマを毎月1枚無料でDVD化できる有料プランを用意する。コトコトの門松信吾氏は「動画版のフォトブックのポジションを目指す」と言い、将来的にはDVDの送付先となる祖父母をターゲットとしたシニア市場や、動画編集技術を転用することで旅行を含めた「思い出市場」も視野に入れているという。8月に正式サービス開始予定で、14日には事前登録を開始した。

第6期プログラムのチームはこのほか、ユーザー投票や審査に通過したクリエイターのみが出店できるハンドメイドジュエリーのECサイト「QuaQua(クアクア)」を運営するダックリングス、独自のクローラーと女子大生キュレーターによって厳選した女性向け媒体の記事を配信する「macaron(マカロン)」を手がけるSPWTECH、ネイティブアプリのユーザー行動を動画として記録して解析するツール「Repro(レプロ)」を開発するReproが参加した。

第7期はセブン&アイやテレビ朝日などのパートナー企業が支援

第7期プログラムは、7月14日より参加チームの募集を開始した。第7期の特徴は「パートナー連合プログラム」として、セブン&アイ・ホールディングスやテレビ朝日など13社が参加すること。これによってスタートアップは、セブン&アイに流通チャネルとの連携をサポートしてもらうことなどが可能となる。

KDDI ∞ Laboのラボ長を務める江幡智広氏は、「各社のアセットをスタートアップに提供して新規事業創出のきっかけが作れれば」と話す。KDDI ∞ LaboのようなCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)は一般的に自社の事業との相乗効果を求めて運営されるが、江端氏は「すぐにシナジーは求めず、スタートアップの成長をひたすら願う」としている。

パートナー連合プログラムに参加する各社は、スタートアップとの協業を通じて新事業シーズの発掘、経営資源の活用やスピード感の不足を補うのが狙いだ。13社のうちセブン&アイ、テレビ朝日、三井物産、コクヨ、プラスの5社はメンタリング企業としてスタートアップをバックアップする。このほか、近畿日本ツーリスト、ソフトフロント、大日本印刷、東京急行電鉄、凸版印刷、パルコ、バンダイナムコゲームスがサポート企業として名を連ねている。

KDDIは14日、新たに約50億円規模の「KDDI新規事業育成2号ファンド」を設立することも発表している。


若手独立系VCのANRIが20億円規模の新ファンド–ポートフォリオも公開

佐俣アンリ氏(前列左から2人目)と投資先の起業家たち

2年前のTechCrunch Japanに、「独立系ベンチャーファンドのANRIを立ち上げたのは28歳の若き投資家」という記事があったのだが、今年30代に入ったばかりの独立系ベンチャーキャピタリストである佐俣アンリ氏が、7月に入って2つめのファンドとなる「ANRI2号投資事業有限責任組合」を始動させた。

ファンド規模は20億円程度を目指すとのことだが、まずはIT系事業会社を中心にして、ファーストクローズで5億円を集めている。これは若手の独立系ベンチャーキャピタルが手がける金額としては大きな規模だ。投資の対象とするのはシード、シリーズAでの調達を目指すスタートアップで、1社につき500万円から最大で1億円程度と、柔軟に出資をしていく予定だという。「シードからシリーズAまでを一緒にやっていきたい。実はこの時期はプロダクトの急成長期。それなのにファイナンスのために経営者のリソースが大きく取られることが多い。その負担を減らすのが投資家の根本的な役割だと思う」(佐俣氏)

新ファンドは、国内スタートアップへの投資を中心にするものの、東南アジアや米国といった海外のスタートアップへの投資も視野に入れているとのこと。投資領域については、「PayPalマフィアは今、社会問題の解決のために投資をしている。同じように世界の大きな問題を解決したい」(佐俣氏)とのことで、「IT」と通貨や物流、交通といった「社会インフラ」とのかけ算に挑戦するようなスタートアップに注目していくという。また、これまで同氏は1人でファンドを運用してきたが、年内にももう1人のパートナーが参画する予定だという。

業界関係者からは漏れ聞こえてきたりするものの、実はANRIは投資先のポートフォリオを一部しか公開していなかった。今回の調達にあわせて改めて話を聞いたのだけれど、これまでにコイニー、クラウドワークス、ラクスル、uuum、スクー、ペロリのほか、U-NOTEやスマートドライブなどに対して、おもにシード期に投資を実行してきたという。新ファンドの投資領域と同じく、決済や印刷、クラウドソーシングをはじめとして、社会のインフラを目指すスタートアップが多い気がする。イグジットこそしていないものの、成長フェーズの企業が並んでおり、ファンドとしても順調だ。

実は僕は佐俣氏が学生の頃からの知り合いなのだけれど、正直ここ1、2年で人間的にも成長していると感じていたし、周囲のベンチャーキャピタリストからもそう聞くことが多くなっている(本人にも言ったので書いておくと、学生の頃などは「なんかやたら起業に詳しい、ツンツンした兄ちゃん」という印象だったし…)。

そんなことを正直に伝えたところ、佐俣氏はちょっと笑って「本質的には一生懸命なところは昔から変わらないんですが」と言いつつ、「昔はハンズオンという言葉を使って、『俺がやってやる』とも思っていた。でもそれはおごりだった。例えば、投資家として事業を分かっているつもりで投資先に半分だけコミットして、実はそれが邪魔になっていることに気づけなかったこともあった」と振り返った。

佐俣氏はこう続ける。「独立して自分の名前でお金を預かることで、そんな批評家からプレーヤーになったと思う。起業家と投資家の関係は太陽と月みたいなもの。投資家は起業家がいてこそ初めて輝くものだから、起業家に輝いてもらう環境を作りたい」


金融庁「ファンド販売規制」の衝撃、独立系VCが連名で反発の声

金融庁が5月14日に公表した「プロ向けファンド」の販売制限案が、一部のスタートアップ業界関係者に衝撃を与えている。改正案の骨子は、ファンドの個人への販売を1億円以上の金融資産を持つ人に限るというもの。政府は金融商品取引法の政令などを改正し、8月1日から施行する。

こうした動きに対しては6月9日、磯崎哲也氏ほか独立系ベンチャーキャピタリストらが販売制限に反対するパブリックコメントを政府に提出。「日本の成長戦略の成功に大きく関わる独立系ベンチャーキャピタルファンドの新たな組成・発展を著しく阻害しかねない」と懸念を表明している。

プロ向けファンドとは

いわゆるファンド業務(ファンドの運用や販売勧誘)を行う場合は本来、「金融商品取引業」を行う者として金融商品取引法上の「登録」が必要。これに対して、ベンチャーキャピタル(VC)ファンドを含むプロ向けファンドは、「登録」でなく「届出」でよいこととされ、販売勧誘規制が緩和されている。

届出をした業者は、証券会社や銀行などの「プロ投資家」(お役所用語で「適格機関投資家」と言う)が1人でもファンドに出資していれば、49人までは一般投資家もファンドに勧誘できるようになっている。国民生活センターが公開しているグラフによれば、次のようなイメージだ。

規制の背景は消費者トラブル

改正案が公表された背景には、「誰でも勧誘できる」制度を悪用する一部のプロ向けファンド届出業者の存在がある。

国民生活センターによれば、いくつかの業者が不特定多数の一般投資家への勧誘を前提としたプロ向けファンドを組成し、投資経験の乏しい高齢者に「必ず儲かる」と勧誘したり、リスクを十分に説明せずに出資契約を結ぶケースが続出。2012年度に同センターに寄せられたプロ向けファンド業者に関する相談件数は1518件に上り、3年前に比べて約10倍に増えている。

また、プロ向けファンド届出業者の一覧を掲載している金融庁のサイトによれば、4月30日現在で業者の届出件数は3546件。このうち、連絡が取れなかったり、営業所が確認できない「問題届出業者」は614件と、全体の約17%を占めている。

消費者トラブルが相次いだことを受けて金融庁は5月14日、プロ向けファンドの販売先を「適格機関投資家と一定の投資判断能力を有すると見込まれる者」に限定する改正案を公表。ここで言う「一定の投資判断能力を有すると見込まれる者」とは以下を指している。

1)金融商品取引業者等(法人のみ)
2)プロ向けファンドの運用者
3)プロ向けファンドの運用者の役員、使用人及び親会社
4)上場会社
5)資本金が5000万円を超える株式会社
6)外国法人
7)投資性金融資産を1億円以上保有かつ証券口座開設後1年経過した個人

個人投資家からの出資のハードルが高くなる

独立系のベンチャーキャピタリストらが改正案で問題視しているのは、ベンチャー企業の創業や経営、新規上場に精通した「エンジェル」をはじめとする個人投資家からの出資のハードルが高くなることだ。

磯崎氏らが提出したパブリックコメントでは、小規模独立系のVCはエンジェルからの出資に一定割合を依存しているが、今回の改正案はエンジェルの出資が要件を満たさないことになるおそれがあると指摘。その結果、独立系VCの投資活動が阻害される可能性があるとして、次のようにエンジェルの重要性を訴えている。

機関決定を要する会社やファンドからの出資と異なり、エンジェルは意思決定が迅速で、かつ多様な領域のベンチャーに対して関心がありますので、新しい可能性へのチャレンジには不可欠なものであります。このただでさえ少ない日本のエンジェルの活動が、形式的な要件でさらに制約されてしまうことは、日本の今後の成長戦略にも大きな足かせとなってしまいかねません。

端的に言えば「個人はVCに出資するべからず」ということ

パブリックコメントに磯崎氏とともに名を連ねる、East Venturesの松山太河氏はFacebookで、「端的にいえば『個人(エンジェルなど)はベンチャーキャピタルに出資するべからず』『大企業だけはベンチャーキャピタルファンドに出資してよし』という内容」と、改正案に危機感を示している。

ベンチャーユナイテッドの丸山聡氏は自らのブログで、独立系VCへの影響を危惧している。「若手にとっては最初のファンド組成をするということはとっても大変です。出資をする適格機関投資家を見つけられたとしても、金融機関などは出資することはまずないですし、上場企業からの出資というのもハードルが高い」。仮に、金融庁が「投資判断能力を有する者」と定義する「投資性金融資産を1億円以上保有し、かつ証券口座開設後1年経過した個人」が見つかったとしても、その資格を満たしていることを届出事業者が確認しなければならない点が最大のハードルだと指摘する。

「そもそもファンドに出資してくださいってお願いにいって、資格を満たしているかどうか確認のための書類を出してくださいって言われたら、なんか面倒だから出資はやっぱり難しいなっていうことになるのが世の常な気がするんですよね。。。」

個人投資家からの投資のハードルが高くなるという点については、金融庁も「投資判断能力を有する者以外の者が、プロ向けファンドを購入できなくなるという社会的費用が発生するおそれがある」と認識。しかし、現状では「適切な勧誘によりプロ向けファンドを購入している投資家の大部分は投資判断能力を有する者であると考えられることから、その影響は限定的」として、規制強化によって不適切な勧誘による投資家被害が減少するメリットのほうが大きいとの見解を示している。

パブリックコメントでは、ベンチャーキャピタルに投資をする場合について、リスクや資産の状況、判断能力などを考慮し、問題が発生する可能性が低いと考えられる投資家については、規制の対象外とするよう求めている。具体的には、過去にファンド運営の経験を持つ個人、上場企業の役員と大株主、公認会計士や弁護士などの士業資格者らを、販売規制適用から除外すべきだと訴えている。

「独立系ベンチャーキャピタリスト等有志」名義で提出されたパブリックコメントには磯崎氏と松山氏のほか、赤浦徹氏、加登住眞氏、木下慶彦氏、郷治友孝氏、榊原健太郎氏、佐俣アンリ氏、孫泰蔵氏、中垣徹二郎氏、村口和孝氏といった独立系ベンチャーキャピタリストや個人投資家が名を連ねている。このほかの賛同者に対しては、パブリックコメント窓口から提出期限である6月12日17時までに、意見を提出してほしいと呼びかけている。

アメリカほどではないとはいえ、広くは伝わらないが日本でも新規株式公開(IPO)や合併・吸収(M&A)を果たすなどして成功した個人が、エンジェルとなって次世代のスタートアップに投資するケースが増えつつある。今回の規制強化は、消費者トラブルが増えていることを受けての対策ということは承知のうえだが、ベンチャーを取り巻くエコシステムに悪影響を与えない落とし所を見つけてほしいものだ。

photo by
TaxCredits.net


500 Startupsの最新デモデーから日本にも関係のありそうな5社をご紹介

5月8日(米国カリフォルニア時間)、500 Startupsがデモデーをマウンテンビューで開催した。これまで500 Startupsはマウンテンビューでアクセラレータープログラムを実施してきたが、今回デモデーに参加したスタートアップは、500 Startupsとして初めてサンフランシスコで実施したアクセラレーター・プログラムに参加した面々だった。

1000社以上の応募の中から選ばれた29社がプレゼンテーションを行ったが、今回は、日本の皆さんにも関係がありそうな企業にしぼって何社か紹介をしよう。

Remark

Remarkは、動画生成のための共同作業のための環境を提供する。全米だけでも25万人の動画関連のプロフェッショナルがいると言われている中で、彼らとのコラボレーションは主にEmailや電話などを使って非常に骨の折れる作業だった。Remarkは、米国企業に限らず、日本企業にとっても、コンテンツマーケティングのための動画や、急拡大している動画広告市場に向けても、効果的な動画生成環境を提供してくれることは間違いない。こういったクリエイティブな労働力に関してもクラウドソーシングが重要になっていく中で、非常に強力なツール、協働環境を提供してくれる。既にTEDやGeorge Town大学が導入している。

SoundBetter

SoundBetterは、ミュージシャンのための音楽制作に関わる仕事のクラウドソーシングを提供する。音楽制作には、楽曲自体を作ってレコーディングをした後にも、ミックスやマスタリングといったポストプロダクションが必要になるが、SoundBetter上で、これらの専門家を探してクラウドソースすることが可能だ。創業者のShachar Giladはミュージシャン、プロデューサーとしての経験と、AppleやWaves Audioのソフトウェア開発にも携わった経験があり、楽曲制作者とその周辺の支援者の両方の立場から、現場の課題を解決するためにSoundBetterを創業した。日本からもSoundBetter経由で5000人のプロフェッショナルに仕事を依頼することができるし、逆に、日本にいながらも、世界中から投稿されている5万件以上の(例えば、ハリウッドの)楽曲制作に関するプロジェクトに携わることができる。

Shippo

Shippoは、1つのシンプルなAPIで、イーコマースの配送を簡単に低コスト化する。既に、150万パッケージの配送を受注していて、2014年のランレート(今年のこれまでの売り上げから通年の売り上げを予測したもの)は、100万ドルを想定している。また、eBayのグループ会社であるエンタープライズ向けイーコマースプラットフォームのMagentoとの統合を発表し、Magento上で製品を販売するセラーは、背後にあるShippoのAPIのおかげで、何も気にすることなくDHL、UPS、FedEx、US Postal Service等から最安値の配送オプションが選択されるようになっている。通常のUS Postal Serviceで依頼した場合26.65ドルかかる配送料が、5.82ドルとなり78%をセーブすることができる。日本製品のブランド価値は高いので、例えば、日本から海外向けに発送する販売業者やイーコマースサイト運営業者には、強力なツールとなることは間違いない。

EquipBoard

EquipBoardは、ミュージシャンなどのセレブリティが使用している楽器やツールなどを見つけて購入することができるサイトだ。僕も子供の頃にギターを弾いていたので、大好きなミュージシャンが使用するギターや、エフェクター、シールドなどを雑誌の写真を隅から隅まで凝視して、いくつもの楽器屋を回ったことを覚えている。僕は今でも、大好きなサッカー選手のはいているスパイクや、プロのサイクリストが使っているホイールやサイクルコンピュータをいつも一生懸命Googleで調べている。EquipBoardは、このようにセレブリティやアスリートのファンが集う場所でもある。これからスポーツやファッション等にも分野を拡大していくとのことで、大いに期待している。

WhalePath

WhalePathは、ビジネスのためのオンデマンドのリサーチをクラウドソーシングで提供している。毎年、ビジネスのリサーチには、240億ドルもの費用が投じられている。WhalePathでは、より一般的で、時間もかかり、高コストな既存の大手リサーチ会社よりも、3倍早く、半分のコストで、100%カスタマイズしたリサーチを提供する。このために、すでに200人以上のハーバード大学やスタンフォード大学、UCバークレー等の修士および博士取得者に直接仕事を依頼できるようにしているのみならず、AfterCollegeを通じて、300万人いると言われている同様の卒業生にもアクセスできるようにしている。2014年は、100万ドルのランレートを見込んでおり、パナソニックやオラクルのような大手企業も既に採用している。WhalePathは、日本に関する需要が拡大すれば、リサーチャーを日本からも募ることを検討しているとのことなので、今後、日本企業が米国や英語圏での調査を依頼するときに便利であるのみならず、米国企業が、日本のリサーチャーに日本語でしか見つけることができないリソースをもとにしたリサーチを依頼できるようにもなっていくかもしれない。

なお、全社のリストはここから参照できる。

(情報開示:筆者はAppSocially Inc.として、500 Startupsの6期生のプログラムに参加している。今回はTechCrunchの記者としてデモデーに招待された)


Y Combinatorの社長Sam Altmanしぶしぶ認める: “うちは独占的アクセラレータだ”

Y Combinatorはスタートアップのアクセラレータの世界を支配している、と思っておられるあなた、YCの社長のSam Altmanもそう思っているのだ。

TechCrunch Disrupt New Yorkのステージで壇上インタビューを担当したTechCrunchのファウンダMichael Arringtonは、Altmanから、ちょいと物議を醸しそうな話を引っ張り出そうとして彼に、“YCがアクセラレータのエコシステムから酸素の99.9%を吸い取っているのではないか”、と尋ねた。Altmanは、ハードウェアなど特定の分野でクールにやってるアクセラレータはほかにもいる、と反論した。

ただしAltmanは、YCはほかの育成事業を経てきたスタートアップにはあまり投資しない、と言葉を加えた。

“そういう意味では、そのほかの段階の投資と違ってアクセラレータの分野には独占がある、と思う”、と彼は言った。

Arringtonは、Y Combinatorが独占だと思うか、としつこく食い下がった。気まずそうな一瞬の沈黙のあとAltmanは、“そうだね。うちは優秀な企業だけをつかまえてる。うちの仕事のいちばん難しい部分、精力の90%を取られる部分がそこだね”、と答えた。

AltmanがYCの社長になったのは2月で、それ以降彼は、YCの投資から起きうる紛争やいわゆる“信号送出リスク(signaling risk)”*の軽減に努めてきた。たとえば投資構造の改革YCのパートナーたちによる投資の制限などを通じて。〔*: signaling risk, 緩い任意のパートナーシップの場合、その後の投資が継続せず、それが、対象企業の内情に関する“悪い信号”として世間に流れること。また逆に、間違った“良い信号”もありえる。〕.

また技術的な面では、デベロッパを一人から三人に増やし、今後もっと増やす予定だ。Altmanによると、今進めている二つの主なプロジェクトは、Hacker Newsのアグリゲータと、同社独自のインターネットツールだ。“VC企業を本当にスケールする方法は、ソフトウェアだ”。

さらに、本誌も記事にしたように、YCはStartup Schoolを国際展開した。

Altmanは、企業が初期の理想や焦点を失う理由について、こう言うWeb: “伝道者(missionaries)だった者が金目当ての傭兵(mercenaries)になってしまう”。とくに問題なのが、IPOだ。

“公開企業になることは、多くの企業にとって、たいへんなことなんだ”、と彼は言う。“FacebookやGoogleは、四半期ごとに恐ろしい顔をしてやってくる数字のプレッシャーをうまくあしらっていると思うが、ぼくが見たかぎりでは、対応の下手な企業がほとんどだね。本来の仕事そっちのけで、この‘四半期問題’に翻弄されてしまうんだよ”。

そしてAltmanの説では、“彼らのいちばん多い間違いは、視野狭窄的に、短期的な最適化に勤しんでしまうことだ”。良い企業とは、長期的な最適化に正しく取り組む企業だ、と彼は主張する。

[ここにスライドが表示されない場合は原文を見てください。]

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


資金調達の好機: VCのスタートアップ投資がバブル崩壊以降の新記録を達成

今は、猫も杓子も資金を調達して会社を作ろうとしているように感じられる。それには理由がある。まさに彼らは今、確かにそうしているからだ。二つの研究調査によると、成長期にある非公開企業がベンチャーキャピタリスト(VC)たちから調達した資金の額は、2001年以来、今が最高である。

MoneyTreeの調査では、今年のQ1に調達された総額は94億7000万ドルだ。この数字は、2001年のQ2に記録された115億ドルから今日までで、最高である。ちなみに前年同期は60億1000万ドルという、ほどほどの額だった。

もうひとつ、DJX VentureSourceの調査では、今年のQ1の投資額が100億7000万ドルで、2001Q2は上と同じく115億ドルだ。

どっちが正しいかはともかくとして、トレンドは明白だ。今は大量のドルが資本市場に投入されて、投資家たちはあらゆるステージの企業に資金を注入しようとしている。NASDAQは高く、IPOの窓が開き、そして豊富な現金を抱える業界の巨人たちがより多くの人材と製品を買おうと躍起になっている。

バブルか? 答は人によって違うが、今が金の動き的には保守的な時代だ、と真顔で言う人は一人もいないだろう。SquareのIPOが遅れている、Box’のS-1が疑問視されている、Kingの公開人気がないなどの傷(きず)はあるけど、そのほかの企業は公開による新たな資金の導入にきわめて積極的だ。

そんな例は山ほどある。

ただし、物差しは正しい物差しを持つ必要がある。上の数字は、投資の水準が2001年半ばのそれに達した、と言っている。しかし、その前については何も言っていない。BusinessInsiderの、いみじくも“VCの投資はドットコムバブルのころのレベルからほど遠い”と題された記事は、下のようなグラフを載せている[データは上記のMoneyTreeの調査より]:

つまりVCの投資は、2001年の大きな爆発以前と比べれば今の方が記録的に高いのだが、この前のバブルに比べると依然として小さいのだ。

2008年のクラッシュの前では、2007Q4の84億5000万ドルがVC投資の最高だが、しかし2000Q1/Q2では280億ドルとバブっている。それは、今の水準のほぼ3倍である。そして今、資金は主に、売上9桁以上の、安定した大企業に行くことが多くなっている。

市場の均衡は完全でなく、相当な額の愚かなお金が、愚行へと投資されている。でも2014Q1の全体としては、成熟期の大きなトップ企業へ大金が行く傾向から見ても、パニックにはほど遠い。

画像: FLICKR/Luz Bratcher; CC BY 2.0のライセンスによる(画像はトリミングした)

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


「日本の起業家よ、小さなIPOで満足するな」、Atomicoが問う日本のスタートアップの課題

時価総額が50億円とか100億円程度で上場するのが本当に良い選択肢なのか? ――今の日本のスタートアップ界に対して、こういう問いを発しているのがベンチャーキャピタル「Atomico」(アトミコ)だ。

AtomicoはSkype創業者のニクラス・ゼンストローム氏が2006年に創設したグローバルなVCで、これまでXobniFabSupercellRovio(Angry Birds)、Last.fm6WunderkinderThe Climate CorporationJawboneなどに投資してきた。日本と関係のあるところだと、元DeNA共同創業者の渡辺雅之氏がロンドンで創業したQuipperや、東京・渋谷にありながらチームもサービスもグローバルなGengoといった投資先もある。Atomicoは2013年末に約480億円の資金を集めて3号ファンドをスタート。日本市場への積極参入もしていくという段階にある。

東京・神谷町にあるAtomicoオフィスで岩田真一氏に話を聞くと、最初に指摘したのが日本のスタートアップ・エコシステムの抱える課題だった。

「途中下車駅」を用意し、大きく育つスタートアップ企業を

「日本では起業家や経営者の先輩として、3億円ほど調達して企業評価額数十億〜百億円程度で上場するという“小さなIPO”がたくさんあります。懸念してるのは、こうした事例をみて日本のスタートアップ企業が小さくまとまってしまいがちなことです。海外では、このぐらいの規模の資金ならIPOではなく、VCから調達しています。上場コストをかけずに、スピード感を持って成長したほうがいいケースもあるはずです」(岩田氏)

岩田真一 氏(Atomico バリュクリエーションチーム)。日本市場における投資先企業とパートナー企業との連携構築、投資先企業のビジネス機会の拡大を支援するバリュークリエーションチーム所属。日本における投資先発掘(ソーシング)も担う。東京を拠点に日本市場での活動に注力。Atomico参画以前は、Skype Japanで代表取締役を務め、日本市場での戦略的パートナーシップの開拓に従事。Skype以前は2001年にアリエル・ネットワークスの設立に参加し、P2P型アプリケーションの開発全体を統括。慶應義塾大学理工学部を卒業後、ロータス(現日本IBM)、マイクロソフトでソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタート。

起業家が成功すること自体は素晴らしいし、もっと起業家を賞賛することが日本にも必要だと岩田氏は話すが、その一方で、日本から1000億円や1兆円といった規模の「メガベンチャー」が出てこずに、小さくまとまりがちな理由の1つは、現状のエコシステムに欠けているものがあるからではないかという。先輩起業家の背中を見て、成功とはこういうものだという「型」を見てしまうと、より大きなポテンシャルを持った起業が出てこなくなるからだ。

数十億円のバリュエーションでエグジットすることでリターンを得る、という比較的短期少額の投資・回収モデルのVCやシードアクセラレーターの存在も、この傾向に拍車をかけている。

「先日、とある会社の創業者2人と会ったんですね。すごくお金をたくさん稼げているというんですが、IPOしないって彼らは言うんですよ。でもそんなに業績良好なら投資家が来てるでしょと聞いたら、来てないというんです。つまり比較的短期のエグジットによるリターンがある程度織り込めないと、日本の一般的な投資家は投資しないんですね」

「VCやシードアクセラレーターによって日本のスタートアップ企業の足元が固まっています。日本の投資家が求めてるのは、短期間で数十億円以上のバリュエーションでエグジットできるもの。だから、ニッチなものであっても、それなりのキャッシュフローが生まれるとか、IPOの可能性が高まるとか、大きな規模でなくてもリターンが出るというものに投資が集まりがちなんです」

日本のスタートアップ企業が小さくまとまりがちなのは、シードファンドや比較的小規模のVCが増えている一方で、「その後」に大きめの金額を投資して成長させる担い手が続かないことが課題という。

「日本でもシードアクセラレーターを中心に500万円や1000万円という資金調達が増えて、スタートアップを始めやすくなっています。そうしたアーリーステージに投資するアクセラレータやエンジェル投資家は、創業間もないスタートアップ企業が、まだ何千万円という(小さな)企業価値にときに、すごく大きなリスクを取ってリードインベスターとして投資しているので、それなりのリターンを求めるのは当然です」

「ただ、1000億円のプロダクトやアイデアに育てていくためには、初期の投資家たちへのリターンを確保しながら大きくしていくことが必要で、そのためにはエンジェル投資家や初期投資家が希望すれば、例えば1つのアイデアとして“途中下車”できるようなエコシステムを作っていくというのがあります。より多くエンジェル投資家が生まれ、かつ日本でも長期的な視点でより大きな成長を目指すことにつながると考えています。われわれAtomicoは、その点で貢献できると考えています」

岩田氏が「途中下車」と表現するのは、リレーでバトンを渡すようにステージごとに投資家が変わっていくモデルを指している。長い投資期間を考えていない投資家と、長い目でスタートアップ企業を支援し、より大きな成長を狙う戦略の矛盾を解消するためのアイデアだ。シードファンドの投資家から、より大きな規模のファンドに引き継ぐ形でシリーズA、シリーズB、シリーズC……と資金調達を続けて、IPOまでに大きく事業規模をスケールするという成長シナリオだ。

起業したばかりで、まだプロダクトに市場があるかどうか、市場に受け入れられるかどうか分からない段階で投資をするのは「プロダクトリスク」を取る行為。一方、プロダクトに市場性があると分かった段階で、その事業を大きくするのはまた別のチャレンジで、ここで経営や組織運営、マーケティングで失敗することもある。そこの「エグゼキューションリスク」を取るVCや投資家は、シードファンドやエンジェル投資家とは別という。

「途中下車する駅を作れば、そこで降りたい人(エンジェル投資家)もいるでしょう。各投資家の性質によって違うはずなんです。われわれがエグゼキューションの面でスケールさせる役割を担っていければ、日本のスタートアップ・エコシステムが盛り上がっていく可能性は高い。シリコンバレーでは、そういうステージごとの投資家の分業が行われていますよね。シードやアーリーステージの投資家と、ミドル、レイターの投資家で、どちらがベターかという話ではありません。取っているリスクの段階が違うんです。ノウハウや経験値も違います。日本のVCやシードステージの投資家が持っているノウハウに、我々はかなわない部分は多くあると思います。ローカルマーケットの知見についても、われわれは日本のVCにかなわないかもしれない。それが役割分担として補い合えると思っています」

進化するファンド、国際展開を積極サポート

2012年末に組成された3号ファンドは規模が大きいが、最初からAtomicoがそうだったわけではない。Atomico創業者のニクラスとともにファンドの資金調達から投資先の発掘や交渉を行う田村裕之氏は、これまでのAtomicoの歩みを、こう振り返る。

田村裕之氏(Atomico パートナー)。Atomico CEO 兼共同創業者のニクラスと共にファンドの資金調達、投資先の発掘、交渉、投資を行なう。アジア市場における投資先企業の事業戦略を支援する。リーマン・ブラザーズ NY本店でキャリアをスタートし、香港の独立系投資銀行、東京のアドバイザリーファームの起業、Skypeの日本戦略アドバイザーを経て、Atomicoに参画。ノースウェスタン大卒。

「以前はAtomicoでもシードファンディングもしていたんですが、いまはアーリーグロースステージ以降が対象です。Atomicoはファンドとして進化しています。2006年の1号ファンドは、外部の資本がない状態でした。約100億円で20数社に投資しました。すでにAtomico以前にリードインベスターがいて、面白い会社に投資していくという形でした。気象の分析データに基いて農家に天災時の保険を提供するThe Climate Corporationなどがそうです」

「2号ファンドはプロアクティブに、リードインベスターとしてやっていこうということになりました。別にシリコンバレーじゃなくても起業して成功できる、というのが前提でした。このときは機関投資家をファンドに入れてアーリーからレイターステージの投資を手がけました。QuipperのようなアーリーステージのものからRovio(Angry Birdsの開発会社)といった売上や利益が出ている会社です」

Atomicoの創業者のニクラスにしても、そのほかのメンバーにしても、かつてSkypeを各国市場で立ち上げてきた経験とノウハウの蓄積があるという。こうしたノウハウと各国にある人的ネットワークを活用して、起業をサポートするというのが、Atomicoのもう1つのVCとしての差別化戦略という。

「3号ファンドでは資金を提供するだけではなく積極的にサポートをしていくという方針です。シリコンバレー以外の市場は、起業家にとってエコシステムが充実していません。メディアのアウトレットだったり、BizDevのサポートだったり、消費者や企業社会でのテクノロジーベンチャーの受け入れのスピードも違います。ここには特定市場のみを対象にするのとは異なるチャレンジがあるのではないかと感じていました。起業時と異なる市場に事業展開するステージに到達しているスタートアップ企業や起業家に対してサポートを提供していく、ということです」

Atomicoはロンドンを本拠地として、北京、サンパウロ、イスタンブール、東京、ソウルと世界に6拠点を置いている。Skype創業者のゼンストローム氏を含む4人のパートナーのほかに、投資担当と、バリュークリエーションという2つのチームにそれぞれ7人ずつ、合計18人で構成されている。Skypeの各地域で展開を経験し、文化的な特徴などに深い洞察を持つメンバーが、各地で人的ネットワークを使ってサポートする、という。

例えば、あるサービスが「画期的だ」という理由ではブラジル(あるいは日本)のユーザーには使われないという。ブラジルでは「みんなが使うから使う」という特性が強いという。こうした文化的な違いによってプロダクトやマーケティングを個々にチューニングしていくことが必要だという。

「ただ、Atomicoとしては起業家がいちばんだと思っていて、こういう考えもあるんじゃない? とデータをインプットするだけです。そうしたアドバイスを受けると、起業家は自分で考えて決断するもの。われわれとしてはプロダクトの個々の話よりも、そういうダイナミズムを大事にしたいですね」

先進国と新興国とでシナジーを出す戦略

グローバル市場におけるスタートアップ投資を見た場合、新興市場と先進国という2つの異なるグループがある。この2つを行き来してシナジーを出せるのも、Atomicoの強みという。

「投資先でみると新興市場と先進国があります。まだポートフォリオは完成ではありませんが、投資先の社数は同じぐらいで、比率は1対1ぐらいです。新興市場と先進国は違います。新興市場からは、世界に出て行く企業やプロダクトは期待していません。ですから、その国でエグゼキューションを上手くやってるところに投資するというのが戦略です。ここでは、先進国のスタートアップのノウハウや技術を新興国に持ってくることができます。KPIをトラッキングするだとか、先進国のトレンドを新興国でインプリするといったことで、ここで大きなアービトラージが取れます。ローカル市場ごとの細かいマーケットのダイナミックが分かるので、先進国のスタートアップのノウハウを持っていくことができるんです」(田村氏)

日本からメガベンチャーが出てくるという見通しはあるのだろうか?

「日本は先進国ですが、スタートアップのエコシステムとしては新興国ですよね。プライベートキャピタルの資本規模も小さいです。一方、日本は市場としては十分に大きく、地域のトップはヤフーや楽天のように大きいわけです」(田村氏)

「だから海外に行く前に日本を取ってからにしようという発想になりがちです。日本のスタートアップ企業は、グローバルマーケットに着手するのが遅くなりがちです。われわれが入ることで早い段階で世界展開ができる可能性があります。実際には、もうちょっと待ったほうがいいとか、そのマーケットには行かないほうがいいというアドバイスをすることもあるのですけどね。競争に勝つためには国内にフォーカスしろ、ということもあるわけです。われわれには、そういうアドバイスができるのです」(岩田氏)

「日本からメガベンチャーが出てこない理由には、そもそも資本がないということもあるでしょうね。長期成長のためにやることって、プロダクト周りだったり、BizDevだったり、そこに時間をかけることによって、最終的に規模感が大きくなるものも出てくる。プロダクトを進化させていって企業規模を1000億円にしていく期間というのが、もうちょっとあっても良いのではないかいうことです。時価総額が50億から100億で上場するのが本当に良い選択肢なのか。そのギャップを埋めるために、われわれがエコシステムに変革を起こす」(田村氏)

「アイデアとか良い発想を持っている個人は日本にもいっぱいいます。それを実行する人もいる。他国に比べて何かが遺伝的に欠けているわけではありません。ですから、日本からグローバルに成功するスタートアップ企業が絶対出てくるだろうという確信を我々は持っています。ただ、プロダクトのノウハウを持っていて、能力が秀でている創業チームでも、マーケット関係のノウハウはないかもしれない。そこをアクセラレートする、という段階はある。われわれはそこでリスクを取っていきます」(田村氏)

「われわれだけでなく、日本市場を投資対象とするVCが生まれたり、新規参入するなどして、VC間の競争が増えるのは良いこと。起業家のオプションが増えますからね。データ集めをして、リスクを最小限にするというのが投資の1つのスタイルですが、VCによって、いろんな違いがある。いろんな視点の投資家がいて活性化するのはいいことですよね」(岩田氏)

日本の場合、資本も人も大企業に偏在しがちという状況がある。大企業とスタートアップ・エコシステムの関係はどうなるのだろうか?

「企業の目的にあった開発をしているのと、(スタートアップ企業が)マーケットが求めるものを開発するのは違います。ここはノウハウというより、政治かもしれません。大企業から出てくるものは、自分たち(企業)のニーズにはいいかもしれないけど、市場が本当にほしがっているものじゃないことがある」(田村氏)

「バルクで新人を何千人も雇って、ゼロから研修して、全てをインハウスで作るという発想は、もう時代に合いません。かつては、R&Dで出てきたものは売れました。昔は研究すれば売れる製品が作れたんですね。でも、今は細分化していてモジュールの組み合わせになっています。そういうところはスタートアップ企業に任せればいいと思うんです。ヘンな稟議もなく新しいプロダクトを生み出せる。それを買ってあげるというのが大企業の役割かもしれませんよね」(岩田氏)

「今までは、大企業とスタートアップ企業とうい2つの世界が合流することはなかったですが、それも変わってくるでしょう。どこかの時点でティッピングポイントがやってくると思います。大企業はマーケットを良く分かってますから、ある程度スタートアップ企業のプロダクトにトラクションが出てきたら、M&Aで持ってくるというような動きが増えるでしょう。このとき、これまで日本企業が製造業でやってきたように、プロダクトを外のマーケットに持って行くというのと同じことは、できないことではないはずです」(田村氏)


TBS子会社のファンドが国内外スタートアップ2社に出資

TBS子会社のベンチャーファンド「TBSイノベーション・パートナーズ(TBS-IP)」は12日、国内外のスタートアップ2社に出資したことを明らかにした。資産管理サービスやクラウド会計サービスを手がけるマネーフォワードと、チャットアプリ「PicChat」を運営するシンガポールのSpicy Cinamon(シナモン)の2社が対象で、出資額は非公表。TBS-IPが2013年8月に設立して以来、初めての出資となる。

マネーフォワードは2012年5月に設立。個人向けの家計・資産管理サービス「マネーフォワード」や、個人および法人向けのクラウド会計サービス「マネーフォワード For BUSINESS」を展開している。2013年11月に開催されたTechCrunch Tokyoでお披露目となったマネーフォワード For BUSINESSは、1月27日に正式版がリリースされたばかりだ(関連記事:専門知識いらずのクラウド会計「マネーフォワード」正式版、価格優位でシェアトップ狙う)。

シナモンは、「今何をしているか」を写真と声で送れるチャットアプリ。2013年5月にタイ、ベトナム、シンガポールの3カ国で前身となるアプリをテストリリースし、20万ダウンロードを突破。日本語を含むグローバル版のiPhoneアプリを2月10日にリリースした。テストリリース中に投稿された写真は多くが自分撮りで、恋人や家族、友人など親密な間柄でのやりとりに利用されていたという。

シナモンは本社をシンガポールに、開発拠点としてベトナムに子会社を持ち、7カ国のメンバーが集まっているスタートアップ。ファウンダーの平野未来氏と堀田創氏の2人は、連続起業家(シリアルアントレプレナー)かつ、スーパークリエーターの発掘・育成を目的とした「未踏ソフトウェア創造事業」に採択されたエンジニア。ミクシィの朝倉祐介社長がかつて代表を務めていたネイキッドテクノロジーの創業メンバーでもある。


Skyland Venturesの新シードプログラム「Morning Sprint」は起業家重視の常時開催型

Y Combinatorの成功を受けて、世界各地でいわゆるシードアクセラレータープログラムが雨後のタケノコのように大量に立ち上がりブームとなっている。すでに米国では失速気味とも言われていたりするが(The Startup Accelerator Trend Is Finally Slowing Down)、日本ではまだまだ黎明期といっていいかもしれない。

シードアクセラレーターといえば、たいていは「バッチ」とか「○期生」と呼ぶ単位で一度に複数のスタートアップに少額ずつ投資するスタイルが一般的だ。1年に2度とか3度、スタートアップを募集する。そこで選ばれ、同時期に投資を受けたスタートアップのメンバーたちはメンタリングを受けたり互いに切磋琢磨したりする。

こうした一般的なスタイルと、ちょっと様子の異なるプログラムを東京に拠点を置くSkyland Venturesが開始すると、今日発表した。応募時期を年2回などと区切らずに、常に起業家に門戸を開いている常時開催型のシードアクセラレータープログラム「Morning Sprint」だ。

名前が示す通り、Morning Sprintは朝に行われる。月、火、木と週に3度、朝7時から8時までシードステージの起業家4名ほどがプロダクトのデモを中心としたピッチを行うという場だ。Morning Sprintの場にはメンター起業家として、MOVIDA JAPANの孫泰蔵氏、East Venturesの松山太河氏、インブルーの大冨智弘氏などが参加して、コミュニティ構築をしていくといい、こうした中で育った起業家に投資して支援してく狙い。Skyland Venturesの木下慶彦氏といえば、これまで同様の朝の集まり「Morning Pitch」を継続して開催してきた中心人物としても知られている。これまでSkylandが投資してきた八面六臂ナナメウエイベントレジストgamba!などは、Morning Pitch出身だ。

今回新たにプログラムを開始するにあたって木下氏は「起業家ファンドを作りたい」と話す。資金を運用するファンドは、出資者と起業家の間に立っているわけだが、そのいずれに重点を置くかという話だ。「ECのアナロジーでいえば、Amazonが顧客ファーストと言うように、われわれは起業家に集中したいのです。だから、事業シナジーは作りません、レポーティングもしませんと最初から明言しています」(木下氏)。ECには売り手と買い手がいて、仲介者であるECサイトは両方の顔を見ながらバランスを取るのが一般的。しかし、Amazonは徹底した買い手優先で知られている。同様に、VCは出資者とベンチャー企業の両方とコミュケーションするわけだが、そうであるにしても徹底して起業家と向き合いたい、というのがSkyland Venturesが出すメッセージということだそうだ。

事業会社が作るファンド、いわゆるCVCでは事業シナジーを求められることがあるし、早期マネタイズの圧力もあってグループ会社と提携することも少なくない。それはスタートアップ企業にとって大きなメリットとなることもあれば、足かせとなることもある。目線を高く起業したはずが、大企業の下請けのような提携プロジェクトばかりこなしていては、コアの事業に集中できないということもあり得るからだ。木下氏は過去の経験から、出資側の思惑やメリットを最大化する施策をスタートアップ企業に押し付けたくないと考えてMorning Sprintというプログラムを始めた面もあるのだという。

ちなみに「朝」にこだわるのは、朝の早いうちに投資家など外部とのコミュケーションを済ませれば、起業家は午前も午後も事業に集中できるからだそう。Skyland Venturesの投資も大方は朝に決まるそうで、額は数百万円から3000万円程度。「決まるときは15分で決まる」(木下氏)という。Skyland Venturesは2012年8月設立で、1号ファンドの総額は約5億円。スマホ分野のプロダクト持つエンジニアや起業家、及びその予備軍を応募していて、ファンドのうち2億円をスマホ投資枠としている


2013年に日本でイグジットに成功した注目のIT・ネット系スタートアップ

2013年もそろそろ終わりを迎えるわけだけれども、今年も数多くのテック系スタートアップが新規株式公開(IPO)や合併・吸収(M&A)によるイグジット(EXIT)に成功した。そこで今回の記事では、日本で2013年にEXITを果たした主なIT・ネット系スタートアップを紹介しよう。

新規株式公開(IPO)

オイシックス
http://www.oisix.co.jp/
有機野菜や自然食品などを定期的に配送するサービス「Oisix」を運営。3月にマザーズ上場。公開時の時価総額は64億円、12月27日時点での時価総額は254億円

オルトプラス
http://www.altplus.co.jp/
RPGカードゲーム「バハムートブレイブ」をはじめとするモバイル向けソーシャルゲームの企画。3月にマザーズ上場。公開時の時価総額は60億円、12月27日時点での時価総額は192億円

オークファン
http://aucfan.com/
ヤフオク・楽天・Amazonの商品を比較・検討できる「オークファン」を運営。4月にマザーズ上場。公開時の時価総額は45億円、12月27日時点での時価総額は265億円

フォトクリエイト
http://www.photocreate.co.jp/
スポーツイベントなどの写真をプロのカメラマンが撮影しネットで販売する「オールスポーツコミュニティ」などを運営。7月にマザーズ上場。公開時の時価総額は19億円、12月27日時点での時価総額は23億円

じげん
http://zigexn.co.jp/
求人や住まい、結婚、クルマなどのライフイベント領域に特化したサイトを多数運営。11月にマザーズ上場。公開時の時価総額は306億円、12月27日時点での時価総額は970億円

メディアドゥ
http://www.mediado.jp/
電子書籍を中心としたコンテンツ販売を手がける。11月にマザーズ上場。公開時の時価総額は73億円、12月27日時点での時価総額は269億円

アライドアーキテクツ
http://www.aainc.co.jp/
企業のソーシャルメディアを利用したマーケティングの企画・運用・分析を展開。11月にマザーズ上場。公開時の時価総額は70億円、12月27日時点での時価総額は171億円

ホットリンク
http://www.hottolink.co.jp/
SNSやネット掲示板の投稿データを分析・監視するクラウドサービスを展開。12月にマザーズ上場。公開時の時価総額は49億円、12月27日時点での時価総額は354億円

ブイキューブ
http://jp.vcube.com/
ビデオ会議ソリューション「V-CUBE」などを展開。12月にマザーズ上場。公開時の時価総額は141億円、12月27日時点での時価総額は277億円

オウチーノ
http://www.o-uccino.jp/
新築マンション・中古マンションなど新築・中古物件の不動産専門サイト「オウチーノ」を運営。公開時の時価総額は43億円、12月27日時点での時価総額は64億円

M&A

エンタークルーズ
http://www.entercrews.com/
「ブラウザ銀河大戦」などのブラウザゲームを提供。ソーシャルゲームのモブキャストが1月に子会社化を発表。買収額は約6億円と言われている

ドリパス
https://www.dreampass.jp/
リクエストの多い映画を映画館で上映するオンデマンドサービス「ドリパス」を運営。ヤフーが3月に子会社化。買収金額は1〜2億円と言われている(関連記事:ヤフーが映画館でのオンデマンド上映を実現するドリパスを買収

コーチ・ユナイテッド
http://cunited.jp/
語学や楽器の対面個人レッスンのマーケットプレイス「Cyta.jp」を運営。クックパッドが9月に子会社化。買収額は約10億円(関連記事:クックパッドがCyta.jpを運営するコーチ・ユナイテッドを買収

ブラケット
http://bracket.co.jp/
ECサイト構築サービス「STORES.jp」を運営。ファッションECサイト「ZOZOTOWN」を手がけるスタートトゥデイが8月に子会社化。買収額は約6億円(関連記事:「ZOZOTOWN」のスタートトゥデイが「Stores.jp」のブラケットを完全子会社化 — 時価総額は約6億5000万円

スポットライト
http://www.smapo.jp/
チェックイン型のポイントサービス「スマポ」を運営。楽天が10月に子会社化(関連記事:楽天が「スマポ」を運営するスポットライトを買収、創業2年1カ月で

スケールアウト
http://www.scaleout.jp/
広告配信システム「ScaleOut DSP」などを提供。KDDI子会社で広告事業を展開するmedibaが8月に子会社化。買収額は十数億円程度と言われている(関連記事:KDDI子会社のmediba、アドテクベンチャーのスケールアウトを買収――買収額は10億円程度

と、ひと通りリストアップしてみたけれど、もし漏れがあるようだったらコメント欄にてご指摘いただければ幸いだ。来年も今年以上にスタートアップ熱が高まってイグジットがさらに増えるかもしれない。


人力でレシートを読み取る家計簿アプリ「Dr.Wallet」運営元が1億円調達

レシートをOCRで自動読み取りする家計簿アプリといえば、クックパッドが出資した「zaim」や「ReceReco」などが人気だが、人間の手の力を借りてレシートを読み取ることで認識精度を高めようとしているアプリが「Dr.Wallet」だ。今年8月のローンチ時にも紹介したこのサービスを運営するBearTailが27日、第三者割当増資を実施して約1億円を調達した。引受先はニッセイ・キャピタル、インキュベイドファンド、SMBCベンチャーキャピタルの3社。

Dr.Walletのサービスイメージ

Dr.Walletはレシートを撮って送るだけで、99%の精度で1日以内にデータ化するという無料クラウド型家計簿アプリ。11月に東京・渋谷で開催した「TechCrunch Tokyo 2013」のスタートアップバトルにも登壇したBearTailの黒崎賢一氏は、OCRを活用したレシート読み取りには、撮影環境によって認識精度にばらつきがあり、結局は自分自身の手で修正しなければならない点を問題視。ならば「人間の力」を借りてデータ化すればいい、という発想でDr.Walletを開発している。

ユーザーが投稿したレシートのデータは、同社と守秘義務契約を結んだ約100人のオペレーターが手動で入力する。人間が入力するため、食券や長いレシートなど、既存のスマホアプリでは読み取りにくいレシートのデータも取り込めるのだという。商品名や店名から自動でレシートのデータをカテゴリ分類する機能も備える。

今回の資金調達では、データの誤入力を検出するシステムを構築する。具体的には、手動で何度も登録された品目と、文字列は似ているが意味を成さない単語を検出し、オペレーターに再度確認を促すようにする。レシートの商品名をもとに、ユーザーにクーポン付きの商品をオススメするサービスも来年1月から開始する。BearTailとしては、クーポン発行元の企業から徴収する費用を主な収益源としたいようだ。

今後は、独自のOCRエンジンを開発し、画像処理や機械学習なども組み合わせていく。データ化の費用は非公表だが、自動読み取りも併用することでデータ入力のコストを抑えていきたいという。


CrunchBaseデータで見る成功したスタートアップの動向(資金調達額とイグジット額の比較)

(本稿執筆はMark Lennon)

CrunchBaseにも、イグジット関連のデータが蓄積されてきた。成功を収めたスタートアップのデータを詳細に分析して、ベンチャー投資との関連などについて分析してみよう。

まず、アメリカ国内の成功したスタートアップについて見ると、平均で4100万ドルの資金を調達していて、そして2億4290万ドルでのイグジットを果たしている。また、より大きな資金規模でのイグジットを果たした企業は、より多くの資金を調達しているという相関を確認することもできる。ただしファンディングを行う期間の長短により、買収ないし公開というイグジットに繋がるかどうかを示す関連性は認められなかった。

買収と公開という2種類のイグジットで比較してみよう。成功裏に買収された米国スタートアップは、平均で2940万ドルの資金を調達して、1億5550万ドルで売却している。投資家側の利益は7.5倍になるという計算だ(もちろんこれは投資家が全てを所有しているとした場合の計算で、現実的にはあり得ない話だ)。IPOを果たしたスタートアップについては、はるかに多くの資金を受け入れている。しかしそれにともなって多くのベンチャーファンドからの資金を受け入れるようにもなり、リターンについてみれば希釈化の問題もあって一概にはいうことが出来ない。

取り敢えずIPO達成したスタートアップの平均値を出してみれば、調達資金は1億6200万ドルとなっている。最近の大規模IPOもあって、公開時の平均は4億6790万ドルになる。単純に計算すれば、投資家のリターンは2.9倍ということになる(もちろんIPO時点ですべての株式を売却するような投資家はいない)。

今回の分析は、2007年以降、イグジットを果たしかつ投資を受け入れたスタートアップを対象としたものだ。但し、他のデータベースでもそうなのだが、スタートアップとベンチャー投資の関係を示すデータは不十分ないし不正確である場合があることも念頭においておいていただきたい。CrunchBaseは、スタートアップのデータを蒐集する最大級の無料データベースではあるが、それでもやはり不正確な面はあるだろう。

データを見ると、Facebookが最高額となる23億ドルという資金をIPO前に受け入れていて、そして株式公開により、こちらも最高額である約184億ドルを調達している。Twitterの方もIPOにより18億ドルを調達しているが、IPO前の調達額も12億ドルという具合になっている。下の図のサークルにマウスを合わせると、それぞれ詳細なデータが表示さえっるようになっている。

ところで、企業の操業年数というのはイグジットの成否に直接の関係はないようだ。買収された企業の平均操業期間は7年間であり、またIPOを果たした企業はだいたい8.25年ということになっている。繰り返すが、平均がその辺りにあるというだけで、どのくらいの期間でイグジットするのが平均的なのかというトレンドは見えていない。

出資企業がイグジットした件数をベンチャー投資家側から見てみよう。するとSV Angelが首位に立つようだ。他にもSequoia CapitalIntel CapitalAccel Partners、あるいはBenchmarkなどの名前が上がってくる。

CB Insights Venture Capitalの公開しているData Comparisonとも比較してみた。下の表には掲載されていないが、Q3およびQ4期間において、CrunchBaseには255件のイグジットデータが追加されている。毎日のように新しいデータが登録されているのだ。

スタートアップと投資家の関係や、上に述べたような動向が続いているのかそれとも変化の兆しがあるのか。ぜひCrunchBaseのデータを活用して、自分でも確認してみてほしい。2013年11月までのデータはこちらからダウンロードできる。新たな発見があれば、ぜひ教えて頂きたい。

原文へ

(翻訳:Maeda, H


カップル専用SNS「Pairy」が1億円増資、来年早々に夫婦版と海外展開

カップル専用アプリ「Pairy」を運営するTIMERは18日、ベンチャーキャピタル4社を引受先とする総額約1億円の第三者割当増資を実施した。増資をもとに開発人員を拡大し、今年度中に夫婦に特化したアプリをリリースするほか、世界展開も予定している。割当先はインキュベイトファンド、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、East Ventures、NTTドコモ・ベンチャーズ。

Pairyは、想い出の写真を2人で共有するアルバム機能、2人だけのチャット機能、行きたいデートスポットを共有できるデート機能、予定調整に使えるカレンダー機能、2人のまとめをつくるペアプロフ機能などがある。デート機能については、これまで15万件以上のスポットのリンクが投稿されていて、うち25%が実際にデートに訪れられているのだとか(デート機能ではリンクを「気になる」へ登録し、行った後は「行った」へと切り替える機能がある)。

当然のことながら、ユーザーは1人の相手としかペアリングできない。別れてしまった場合は「ペア解除」機能があり、解除するとこれまでやりとりしたデータはお互いに見られなくなる。ただし、復縁して再度同じ相手とペアリングすると、今までのデータがすべて復旧するシステムも搭載されている。

アプリは2012年6月に公開し、2013年9月時点で登録会員数13万人を突破。現時点の会員数は非公開。まずはユーザー獲得に注力し、来年度以降に有料会員モデルや広告、ユーザーのアルバムデータを活用したフォトブック販売などを検討する。詳細は未定だが、来年度以降はフジテレビとの連動番組も予定しているという。

カップル向けSNSとしては、Y Combinator出身者による「Pair」や韓国発の「Between」、国内でもリクルートによる「Sweetie」などがあり、これから普及期を迎えようとしているのかもしれない。TIMERの田和晃一郎COOによれば、カップルと夫婦は国内だけでも2000万人以上がターゲット。今回の増資をもとに、夫婦に特化したアプリや海外向けサービスをリリースし、より多くのカップル・夫婦間で使われるサービスを提供したいと話している。


Google Venturesが運用実績を発表―投資残高12億ドル、2013年の新規投資75件、エグジット9件

Googleのベンチャーキャピタル、Google Venturesが2013年の運用実績を発表した。

それによると、今年の新規投資は75件、エグジットは9件、4年前にスタートしてからの総投資件数225件となっている。

今年の新規投資には、新しいタクシー配車システムのUberに対する2億5800万ドルの大型資金調達への参加が含まれている。

エグジット案件については、RetailMeNot、Silver Spring Networks、Foundation Medicineが新規上場した。買収はParse(Facebook)、Astrid (Yahoo)、Makani Power (Google)などが含まれる。またGoogle Venturesも参加したエンジェル投資の専門ファンド、AngelListが2013年に1億2500ドルの資金を調達してスタートアップの創立を手助けしている。またスタートアップ向けデザイン教育のブートキャンプ、 Design Sprintの実績についても詳しい数字が公開された。

Google Ventureは運営パートナーの人材獲得にも力を入れ、元TechCrunchの人気ライターでCrunchFundのパートナーだったMGSieglerをゼネラル・パートナーにスカウトし、同時にパートナーのAndy Wheeler、Blake Byersをゼネラル・パートナーに昇格させた。またShanna Tellerman、DaveMunichielloを投資パートナーに加えた。

人材のと同時に資金も拡充され、昨年の2億ドルから今年は3億ドルとなった。Google VenturesはこれまでTwitter、Pinterestその他の大型案件への投資機会を逃してきたと批判されたが、今年はUberとNestのようなホットな案件に参加することに成功している。ゼネラル・パートナーのDavidKraneはわれわれの取材に対して「現在の投資残高は12億ドルで、唯一のリミテッド・パートナーであるGoogleから来年1月にさらに3億ドルの資金提供を受ける予定だ」と語った。

情報開示:Google Venturesは私の夫がステルスモードで運営しているスタートアップに対して投資を行っている。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


Y Combinatorが‘より株式投資に近い転換社債’Safeの運用を2014年より開始

Y Combinatorは数年前に、スタートアップがアクセラレータから容易にシード資金を調達できる方法として、転換社債を流行(はや)らせるきっかけを作った。本格的な投資ラウンドは弁護士を立てて契約条件をまとめる必要があったりして、なにしろ大げさだが、それに比べると借入れは簡単だ。そしてそのYCがこのほど、新たな株式転換形式として、”Safe“なるものを導入しようとしている。Safeは、”simple agreement for future equity“(将来の株式に関するシンプルな合意)の頭字語だ。

記事の見出しは、Y Combinatorが転換社債離れをする、となってしまうが、でも実際の話はもっと微妙だ。たしかにSafeには、負債を投資の道具として使用することに伴う面倒が少ないが、しかし結局のところ、“Safe”による投資の運用は基本的に転換社債と同じなのだ。

しかもそれは、最初から意図されていることだ。Y Combinatorのパートナーで弁護士でもあるCarolynn Levyによると、投資という観点から見ると、ほとんど何も変わっていない。アクセラレータとしてのYCが望んだのは、転換社債のメリット…弁護士や何週間もの交渉期間などなしで迅速に資金を調達できること…を生かしつつ、そのあまりおもしろくない部分を削ることだ。

Levyは言う: “急速な変化にはついてこれない人が多い。また、あまりにも新しすぎるものは拒否反応を喰らう。Safeは、その名前に慣れてから見ると、転換社債と同じものだと思えるだろう”。

Safeが解決を目指した二つの主な問題は、利息と満期日の取扱い方だ。転換社債は短期負債として発行されるので、満期はふつう1年だ。でも1年なんてすぐに経ってしまうから、スタートアップにとっては頭痛のタネになる。

そして利息の問題は、スタートアップにとって利息が重荷というよりも、ときどき高い利息を求める投資家がいることだ。そこで、転換社債のように投資を単純な短期ローンと位置づけるのではなく、Safeでは、全投資家に転換後の株主権を保証する。

“証券業界のこれまでの固定観念では、負債はあくまでも負債、株式はあくまでも株式、両者は明確に異なるものだ”、とLevyは言う。“でも誰もかれもが企業の株を保有することを求めるのなら、誰も負債を投資の道具として使わなくなるだろう”。つまり、単純な短期債務でなく、株式投資により近い性格の転換社債をYCは模索したのだ。

LevyがY Combinatorに加わったのはほぼ1年半前だが、その前はWilson Sonsiniのスタッフとして2008年以来、YCのAA(ダブルエー)クラスの株式投資や、同社が3年前に始めた標準転換社債型投資に関わる文書作成を担当していた。

Y CombinatorはSafeに関しても、一連の標準的でオープンソースで誰もが利用できる文書を作成するつもりだ。

投資の形式としてふさわしい、新しい形の転換社債を提案したのは、Y Combinatorが初めてではない。Adeo RessiのTheFundedとFounders Instituteは、Wilson Sonsiniと共同で2012年に、‘標準転換株式’に関するドキュメントを発行している。

でもSafeは、Y Combinatorという人気企業がバックにあるから、けっこう流行(はや)るかもしれない。しかもYCの育成事業に参加するスタートアップは、2014年冬のクラス以降、全員がSafeを使うことになるのだ。

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* 転換社債について詳しく知りたい人にはこれこれなどがおすすめだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


日本の京都で行われたInfinity Ventures Summit: そのピッチ大会に出場した12社をご紹介

日本のVC Infinity Venture Partnersが今週前半京都で、Infinity Ventures Summit Fall 2013(IVS)(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット2013年秋)というイベントを開催した。年二回行われるインターネット産業のためのイベントだ。

このイベントでは毎回、2日目(今日(日本時間12/4))に数時間をかけてスタートアップたちのピッチ大会“ローンチパッド”が行われるが、今回は12社がおよそ700名の来場者を前に自社プロダクトの紹介と売り込みを行った。

以下に、出場各社とそのサービスを簡単に紹介しよう。

優勝と準優勝4社

Capy [ENG/JP] (大賞受賞)

優勝したのはCapy、これは新種のCAPTCHAで、PCだけでなく携帯やタブレットでも使える。社名もCapy(合衆国企業)だが、ファウンダのMitsuo Okadaによると、今までのCAPTCHAは使いづらいだけでなく、ユーザの10%はギブアップして逃げてしまう。そこで彼が考案したソリューション(下図)は、文字を解読する従来のCAPTCHAと違って、ユーザが画面上で簡単なパズルを解く。Okadaによると、Capy方式のCAPTCHAは逃げる人が2%しかいない。Capyに関する詳しい記事がここにある。

NinjaPCR [ENG] (準優勝(1))

NinjaPCRはDNA増幅装置の名前で、この装置を使うとDNAのクローンを作るPCR(polymerase chain reaction)反応の費用を従来の90%まで節約できる。作者のShingo Hisakawaによると、そのハードウェアはオープンソースで価格は約1000ドル、今トライしている小型化に成功したら日本以外では来年発売する。この装置を駆動しコントロールし結果を出力するソフトウェアは、Google Chrome用のWebアプリケーションとして提供される。

planBCD [ENG/JP] (準優勝(2))

A/Bテストが簡単にできる(JavaScriptのコードを1行書くだけ)。安上がりなだけでなくマルチプラットホームであることが、planBCDの売りだ。提供する会社の社名は、東京のKAIZEN Platform Inc.で、このサービスの差別化要素の本命は、クラウドソースによるグロースハッカーたちがUIやUXの改善提案をユーザに提供してくれることだ。そのグロースハッカーたちのスキルによって料金が異なり、だいたい1000ドルから5000ドルまでぐらい。planBCDの詳細はこの記事にある。

flier [JP] (準優勝(3))

flierは忙しい日本人のために本を見つけてくれて、しかもその本の要約を提供してくれる。年会費250ドルを払うと、毎月20冊のよく売れてる本の要約をもらえる。それは、わずか10分で読めるそうだ。要約はプロの編集者が作り、それを出版社がチェックし、flierのユーザはいろんなデバイスからそれにアクセスできる。なお、個人だけでなく企業のための料金プランもある。来年は合衆国に進出して、同種サービスのマーケットリーダーgetAbstractに挑戦する。

Userdive [JP] (準優勝(4))

UserdiveはWebサイトの使われ方見られ方をPC、スマートフォン、およびタブレット関して調べ、サイト最適化の方向性を与える。ビジターのアクションはビデオに記録され、ユーザはダッシュボードからそれを見ることができる。マウスがどこでホバーしたか、クリックされたか、スクロールしたか、などのアクションだ。またスマートフォンでは、画面の方向(タテヨコ)の変更に関しても分かる。そしてそのビデオを見ると、言うまでもなく、UIやUXの弱点が分かるのだ。来年は、ネイティブアプリのチェックもできるようになる。

選外

以下は、入賞しなかったサービスの概要だ:

  • Recme [JP]は就活サービスの一種で、自分を撮ったビデオを求人企業に送る。合衆国のHire Vueに似ている(Recmeに関する英語の記事がここにある)。
  • Hairmo [JP]は、ヘアスタイリストに練習用のヘアモデルを紹介するiOSアプリ。そのアポイントのセットアップ費用は5ドルだ。
  • Virtual Cycling [JP]は、フィットネス用の静止自転車をもっと楽しく漕げるために、実際の路上走行、もしくは都市の上空の飛行を写したビデオを再生する。緩急等はペダルの速度に同期し、映像はクラウドから提供される。専用ハードウェアのお値段は40ドル、利用料を払う方式なら月額3ドルだ。詳しくは下のビデオを。

  • Eipontan [JP]は、Drecom製の言語学習用iOSアプリ。ソーシャルな要素とゲーム的な要素があり、同社のモバイル教育プラットホームSmacolo(スマコロ)上で使う。
  • Kodomo Mode [JP]は、子どもに安全なコンテンツ(悪質な広告やアプリ内購入や有害コンテンツのないもの)だけを見せたい親のためのAndroidアプリ。
  • Wonderport [JP]は、親がキャラクターになりきって幼児とコミュニケーションするスマートフォンアプリ(デモでは父親がかわいいサンタクロースの人形になっていた)。
  • vinclu [JP]は、GPSを利用するスマートフォン用アクセサリ(とそれ用のアプリ)で、距離的に離れている恋人同士などが光やそのほかのエフェクトを使ってコミュニケーションする。詳しくは下のビデオを。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))