今秋リリースのアップルのwatchOS 8にマインドフルネスと呼吸追跡の機能

読者のみなさんは2021年のWWDCではwatchOSの大きなアップデートは発表されないと思っていたのではないだろうか。Apple(アップル)のウェアラブルの出荷台数はiPhoneほどではないが、Apple Watchはスマートウォッチ市場を完全に独占していて、同社にとってかなりの成功となっている。

誰も驚きはしないだろうが、同社はマインドフルネスによりフォーカスしたアプローチを取っている。まだCalmやHeadspaceといったサービスに取って代わるものではないものの、自分に向かい合ってより意識することをユーザーに促す、待ち望まれていた新しいアニメーションが人気の呼吸機能に加わる。

また、これまではバックグラウンド機能だった呼吸トラッキングも、長期的なトラッキングやノーティフィケーションなどでwatchOSのエクスペリエンスの前面にくる。

もちろん、新しいフェイスなしにはwatchOSアップデートとはいえない。Appleは写真がロックスクリーンとしてうまく収まるよう、ポートレートモードをフェイスに加える。Watch Photosアプリも新しいレイアウトとなり、ウォッチからMailやMessagesといった同社のアプリへ写真を共有する機能も加わる。

Fitness+にも大量の新しいコンテンツが加わる。ここにはAlicia Keys(アリシア・キーズ)、Lady Gaga(レディー・ガガ)、Keith Urban(キース・アーバン)といったアーティストのワークアウト向けのものが含まれる。太極拳やピラティスもサポートするワークアウトのリストに加わる。

そして最後に、しかしもちろん多くの人にとって最後ではないが、watchOSはGIFをサポートするようになる。ベータ版が2021年7月から提供され、watchOS 8は今秋正式に展開される。

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルがiOS 15で「通知」を改良、新機能「フォーカス」「サマリー」でよりパーソナライズなものに

iOS 15へのアップデートの一環として、Apple(アップル)はiPhoneユーザーが現在のステータスに基づいて、着信、メール、アプリからのアップデートに関してその通知方法をさらにカスタマイズできるようにする。新機能「Focus(フォーカス)」では「Do Not Disturb」で通話や通知を遮断するだけでなく、運転中、仕事中、睡眠中などのステータスに応じて、さまざまな種類の通知設定が行えるようになる。

また、システムに搭載されたAIが、その時のユーザーの状態を判断。例えば、ジムに到着したら通知をオフにするよう提案するといったことも行う。

新機能の「Focus」では、いつ、どのように通知を受けたいか、通知の方法とタイミングをカスタマイズできる。例えば、同僚やメール、カレンダー、Slackなどのアプリからのみ通知を受けるように設定可能だ。また、ホーム画面上をFocusに合わせたページにして、仕事用アプリだけを表示させて、アプリやウィジェットを整理し誘惑を減らせる。また、Focusを使用することですべてのAppleデバイスにも同期されるとAppleは説明している。

通知機能も新しくなり、連絡先の写真が表示され、アプリのアイコンが大きくなり識別しやすくなる。

2019年、Tim Cook(ティム・クック)氏は、自身が多くの通知をミュートにしていたことを認め「Appleは、ユーザーの使用時間をできるだけ長くしたいと思ったことはない。私たちはそのようなことをしたことはない」と述べたのは有名だ。しかし我々はこれに反論し、Appleはリアルタイムではなく、スケジュールに沿って通知を配信するシステムを設計することができたはずだと述べた。

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また、Appleは「Notification Summary(通知サマリー)」という機能を搭載する。この機能は受信した通知を時間帯などに応じてまとめ、優先順位をつけて表示する。このサマリーは、朝や夜など、任意の時間に配信されるようにスケジュールできる。

Appleによると、ユーザーのアプリケーションの使い方に基づいたデバイスインテリジェンスを使って、この「まとめ」をアレンジし、すばやくキャッチアップしやすくするという。サマリーでは、最も重要な通知が、あまり重要でない通知の上に表示される。

画像クレジット:Apple

もう1つの変更点は「Do Not Disturb(おやすみモード)」がiMessageに直接統合されたことだ。これにより、着信音に煩わされたくないとき、他のユーザーもそれがわかるようになる。

おやすみモードを使用しているときには、iMessageにそのステータスが自動的に表示されるようになる。また、本当に緊急なメッセージの場合であれば、連絡できる方法はあるとAppleは説明している。

また、時間帯ごとに大きなブロックとして説明文を送るように設定することも可能だ。これまでのiOSバージョンと比べて、ロック画面の通知がよりインタラクティブなものになる。

これらの機能は、ユーザーに合わせてスマートフォンをよりパーソナライズすることに関わるもので、何年も前にAndroidデバイスで人気を博した、AviateEverythingMeといった自分の行動や時間帯などに応じてデバイスをカスタマイズするスマートランチャーを思い起こさせる。Appleは、サードパーティ製のアプリが自社のモバイルOSと深く統合したり、デバイスのホーム画面を再設定することを許可していないため、これらのアプリはiOSでは普及することはなかった。

しかし、最近のAppleは、ウィジェットや「Siriからの提案」の導入など、ユーザーの好みをより反映させるためにiPhoneをカスタマイズしており、ホーム画面上におすすめのアプリをウィジェットで表示することもできるようになっている。

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(文:Brian Heater、Sarah Perez、翻訳:Katsuyuki Yasui)

アップルがiOS 15発表、「つながり続ける」「集中する」といった4つの柱を掲げFaceTime、通知などの新機能満載

Apple(アップル)は開発者会議「WWDC 2021」のバーチャル基調講演において、2021年後半にリリース予定の次期メジャーバージョンであるiOS 15の詳細を初めて公開した。2021年のリリースでは「つながり続ける」「気を散らさずに集中する」「インテリジェンスを活用する」「世界を探索する」という4つの柱を掲げている。

ソフトウェアエンジニアリング担当SVPのCraig Federighi(クレイグ・フェデリギ)氏は、次のように述べた。「多くの人にとって、iPhoneは必要不可欠なものとなっています。当社の新しいリリースはiOS 15です。大切な人とのつながりを大事にしたり、気を散らさずに集中できる空間を見つけたり、インテリジェンスを活用して必要な情報を見つけたり、自分の周りの世界を探索したりするなど、あなたのiPhoneの使い方にiOS体験を適応させ、補完する機能が満載です」。

FaceTimeにさまざまな新機能が加わり進化

Appleは、FaceTimeに空間オーディオを追加すると発表した。これにより、スクリーン上の友人・家族の位置に応じて声が広がるようになる。例えば、誰かの顔が左に見える場合、あなたの耳には彼らが左側にいるように聞こえる。FaceTimeの他のニュースとして、iOSはバックグラウンドノイズを検出し、友人や家族の声がより聞き取りやすくなるようにノイズを抑制するようになる。これはオプション機能で、例えばFaceTime通話中にコンサートを見せている場合などには、この機能を無効にすることができる。

もう1つのFaceTime機能は「ポートレートモード」だ。これは、ポートレートモードの写真のように、背景を自動的にぼかすことができるというもの。また、仕事の会議などでFaceTimeを使いたい場合、FaceTimeリンクを作成してカレンダーの招待状に追加することができるようになる。FaceTimeはウェブブラウザでも動作するため、Appleデバイスを持っていないユーザーでもリンクを通じFaceTimeの通話に参加できる。これらの機能により、FaceTimeはZoom(ズーム)やGoogle Meet( グーグル・ミート)などの他のビデオ通話サービスとの競争力を高めることになる。

Appleは「SharePlay」機能も発表し、FaceTimeに注力していることを示した。この同時再生機能を使うことで、FaceTimeで会話をしながら同じ曲や楽曲リストを一緒に聴くことができる。Apple Musicで再生ボタンを押すと、通話中の全員のデバイスで音楽が始まる。キューは共有されるので、参加している誰でも曲の追加や次の曲へのスキップなどが可能だ。

SharePlayでは、映画やテレビ番組を一緒に見ることもできる。通話中の誰かがビデオを開始すると、他の参加者のスマホやタブレットでも同じビデオが始まる。また、AirPlayやピクチャー・イン・ピクチャー(PIP)など、iOS動画に期待されるすべての機能に対応している。

これは、Apple TVアプリ内のビデオとの互換性だけではない。Appleは、動画をSharePlayに対応させるためのAPIを用意すると述べている。現在のパートナーは、Disney+、Hulu(フールー)、HBO Max、Twitch、TikTok(ティクトック)など。初期パートナーのスクリーンショットは下図のようになっている。

さて、Messages(メッセージ)に話を移そう。メッセージアプリは「News」「写真」「ミュージック」など、他のApple標準アプリとの連携が強化された。メッセージで共有されたアイテムは、これらのアプリに共有されたコンテンツとして表示される。つまり、メッセージ(およびiMessage)は、Appleアプリの上にあるソーシャルレイヤーとして機能するのだ。

新しい通知サマリー、フォーカスモード

Appleは、オンデバイスのインテリジェンスを使って通知のサマリーを作成する予定だという。これにより通知は、現在のようにアプリ別、日付別ではなく、優先度別に並べられる。例えば、友だちからの通知はトップに近い位置に表示される。

通知をサイレントモードにすると、iMessageの連絡先には、あなたが「Do not disturb(おやすみモード)」を有効にしていることが表示される。この機能はSlackの「Do not disturb」と少し似ている。しかし、新しい設定がある。Appleはこれを「Focus(フォーカス)モード」と呼んでいる。通知を受け取りたいアプリや人を選び、自分がその時していることに応じてフォーカスを変えることができるというものだ。

例えば仕事中であれば、個人的に使うアプリや個人的な電話・メッセージをサイレントにすることができる。逆に週末であれば、仕事のメールの通知をサイレントにできる。複数のAppleデバイスを持っている場合は、設定がiCloudアカウント間で同期される。さらに、モードによりアプリやウィジェットの表示・非表示を切り替えて、ホーム画面にも変化を与えられる。

新しいスマート機能

Appleは、あなたの写真をスキャンしてテキストを探す機能を導入する。「Live Text(ライブテキスト)」と呼ばれるこの機能により、ユーザーは写真の中のテキストをハイライトしたり、他のアプリにコピー・ペーストできるようになる。iOSはその情報をSpotlight(スポットライト)機能に活用する予定だ。ハイライトした写真の中のテキストは、Spotlightで直接検索することができる。これらの機能はデバイス上で直接処理される。

iOS 15では、Memories(メモリー)機能がアップグレードされる。「この新しい『メモリー』は、その場で生成されます。インタラクティブで、生きています」と、写真エンジニアリング担当シニアマネジャーのChelsea Burnette(チェルシー・バーネット)氏は語った。メモリーは、写真アプリで見ることのできるインタラクティブなムービーだ。今回、指でタップしてムービーを一時停止できるようになった。バックグラウンドでは音楽が流れ続け、指を離すとフォトモンタージュが再開される。

また、メモリーに合わせて特定の曲を検索できるようになる。写真アプリの新機能は、今後詳しく見ていきたい。

Wallet、天気、マップ

Apple Walletのすべての機能をおさらいした上で同社は、将来IDをスキャンしてWalletに保存できるようになることを発表した。これは(米国の)参加しているいくつかの州で利用可能になっていくとのことで、ゆっくりとした展開になるだろう。政府のサービス(空港の保安検査など)がIDから何らかの情報を必要とするとき、ユーザーはiPhone上で直接そのサービスとデータを共有することを選択できるという。

天気アプリに関して言えば、Appleが買収した人気の天気予報アプリ「Dark Sky」にあった機能の多くが含められアップデートされた。新しいデザインと、より多くのデータが期待される。

Apple Maps(マップ)については、新しい地図データがいくつかの国で展開されたところで、同社はまだ欧州でロールアウトしている最中だ。Appleはサンフランシスコなどの一部の地域に、大量の新しい詳細情報を追加した。バスやタクシーのレーン、横断歩道、自転車レーンなどを見られるようになった。高速道路では、複雑なインターチェンジを3Dで見ることができる。これらの機能は、2021年後半にCar Play(カープレイ)でも提供される予定だ。

公共交通機関を利用するユーザーは、お気に入りの路線をピンで固定して、Apple Watchで情報を見ることができる。地下鉄やバスに乗っているときは、リアルタイムで自分の位置を確認できる。また(地域によっては)、携帯電話を目の前にかざすと、AR(拡張現実)で道案内をすることも可能になる。

AirPodsソフトウェアアップデート

Appleは、AirPodsも持っているユーザーのために、多くの新機能を発表した。新しい会話モードでは、スマートな補聴器として会話の音量を上げることができる。また「通知をアナウンスする」設定を有効にしていれば、より多くの通知をAirPodsで受け取ることができる。その設定を微調整することで、特定のアプリに限定したり、フォーカスモードに応じて変更することができる。

また、AirPodsがケースに入っていても、オーディオ通知付きのFind My(探す)アプリでAirPodsを探すことができる。空間オーディオは、M1チップを搭載したApple TVとMacに搭載される。数週間前に発表されたように、Apple Musicの空間オーディオは現在利用できる。

ご覧の通り、iOS 15には新機能が満載されている。Appleは本日(米国時間6月7日)、最初のリリースとなる開発者ベータ版を発表すると思われる。公開ベータ版はその後にリリースが見込まれる。夏の間はベータ版のアップデートが行われ、2021年9月に最終版がリリースされることになる。

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

アップルのiOS 15新機能「Live Text」は写真内の文字を自動認識してテキストデータ化

Apple(アップル)が、カメラシステムに新機能を導入した。それは写真に写っている名刺に書かれた電話番号や、メモでいっぱいのホワイトボードなどから、テキストを自動的に認識して文字に変換する機能だ。Live Text(ライブテキスト)と呼ばれるこの機能は、ユーザーの指示や特別な作業を必要とせず、アイコンをタップするだけですぐに利用することができる。

WWDCのバーチャルステージでCraig Federighi(クレイグ・フェデリギ)氏が発表したLive Textは、iOS 15でiPhoneに搭載される予定だ。彼はミーティング後のホワイトボードや、レストランの看板を背景にしたスナップショットなどのいくつかの写真を使って、デモンストレーションを行った。

右下にあるLive Textボタンをタップすると、写真の中に検出されたテキストに控えめなアンダーラインが引かれ、それをスワイプすることでテキストを選択してコピーすることができる。ホワイトボードの場合は箇条書きを含む複数センテンスのメモを集め、またレストランの看板の場合は電話番号を取り出して電話をかけたり、保存したりすることができた。

この機能は、Googleが長年開発してきたLens(レンズ)アプリに多く見られる機能を連想させるもので、Pixel 4は2019年の時点でさらに堅牢なスキャン機能を追加している。それに比べると新システムを導入したiPhoneでは、撮影した各写真でほぼ自動的にテキストが取り込まれるという違いがある。つまりスキャナーモードに入ったり、別のアプリを起動する必要はない。

これは誰にとってもうれしい機能だが、特に視覚障害のある人には役立つかもしれない。普通なら読むことが困難な文章も、写真撮影をすることで、耳で聴いたり、テキストを保存することが可能になる。

この処理はすべてスマートフォン上で行われるようなので、情報がどこかのデータセンターに送られるという心配はない。また、これは処理がかなり速いということでもある。とはいえ、実際に試してみるまでは、それが瞬時に終わるものなのか、それとも他の機械学習機能のように、撮影してから終了までに数秒から数分かかるものなのかは分からない。

【訳注】当初対応するのは英語、中国語(簡体字、繁体字)、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語となっている。

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(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

アップルが動画や音楽をバーチャル共同視聴できる新機能「SharePlay」をiOS 15で導入

Apple(アップル)はiOS 15でのFaceTimeアップデートの一環として、新しい体験共有機能を発表した。FaceTimeコールで一緒にテレビ番組やTikTokビデオを観たり音楽を聴いたり、あるいはスクリーンシェアしたりできるというものだ。SharePlayというこの機能では、コールそのものからアプリへのアクセスを統合することで、FaceTimeを使いながら家族や友人とリアルタイムにつながることができる、とAppleは説明した。

画像クレジット:Apple

Appleは米国時間6月7日に開催したWWDC基調講演で新しい機能のデモンストレーションを行い、友達と一緒に音楽を聴くためにApple Musicで再生ボタンを押してコールに参加している人に音楽をストリームする様子を見せた。音楽共有では、コールに参加している人は誰でも再生、一時停止、曲送りができる。

また、ストリーミングサービスであるApple TV+の動画をコール参加者の間でリアルタイムに同期する様子も紹介した。パンデミックの間、人々はバーチャルで家族や友人と映画や番組を一緒に観る方法を模索し、HuluやAmazon Prime Videoといったサービスはネイティブの共同視聴機能を搭載した。

しかし AppleのSharePlayは自社サービスの音楽やビデオのストリーミング以外のものもカバーしている。

同社はDisney+、Hulu、 HBO Max、NBA、Twitch、TikTok、MasterClass、ESPN+、 Paramount+、Pluto TVなどとの提携を発表した。またデベロッパーがアプリにSharePlayを統合できるよう、APIにも着手している。

画像クレジット:Apple

ユーザーはSharePlay経由でスクリーンシェアもできる。不動産会社Zillowの物件を一緒にブラウズしたり、モバイルゲームプレイを自慢したりといったことができる、とAppleは紹介した。

「スクリーンシェアリングは、誰かの手助けをしたりその場で質問に答えたりするためのシンプルでかなり効果的な方法でもあり、 Appleの全デバイスで利用できます」とソフトウェアエンジニアリングのSVPであるCraig Federighi(クレイグ・フェデリギ)氏は述べた。

SharePlay機能はiOS 15で提供される。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルがmacOS 12 Montereyを発表、PCとタブレットのギャップを埋める

この1年で、最近の記憶の中で最も劇的なMacのアップデートが行われた。2020年のWWDCで、Apple(アップル)は待望されていたIntelチップから自社のファーストパーティ製シリコンへの移行を発表。年末までに、最初となる3台のM1 Macと、macOSの最大のアップデートの1つとなるBig Surを発表している。

WWDCのキックオフにおいてAppleは、macOS 12を発表した。その名も「Monterey」。同OSに搭載される「Universal Control(ユニバーサルコントロール)」は、デスクトップとタブレット間のギャップを埋める最も重要な新機能だ。Macの隣にiPadを置くと、同じトラックパッドとキーボードを使ってデバイス間でカーソルを移動させることができるようになる。本機能は、同時に3台までのデバイスで動作する。

また「AirPlay to Mac」では、大きなデスクトップ画面にコンテンツを直接キャストできるようになっている(テレビを持たない私のような変人にはうれしい)。ショートカットもmacOSで利用できるようになり、従来のAutomaterよりも簡単に自動化できる。ユーザーは人気モバイルアプリのデスクトップ版にAutomaterのワークフローを直接インポート可能だ。移行は数年がかりのものになると思われるが、Automaterがなくなってしまうのは(少々)寂しい。さらにSiri、Spotlight、メニューバー、そしてFinderにもショートカットが追加される。

もちろん、Safariにもいくつかのアップデートがある。その中でも最大のニュースは「Tab Groups(タブグループ)」の登場だ。その名のとおり、タブをグループ化し、他のユーザーと共有できる機能だ。これは非常に多くの使い方ができるので、多くのユーザーがワークフローを見直す必要がでるだろう。しかし、少なくともタブバー自体は、よりすっきりと合理的になる。

また、iOSとiPadOSで利用できるデスクトップ拡張機能も新たに追加された。デスクトップはAirPods ProのSpatial Audioにも対応するようになり、LaunchPadにはゲームフォルダが追加、コンテンツを1カ所に集められるようになり、ログイン画面にMemojiを表示できるようになる。

いくつかのすばらしい機能が追加されたが、さすがに新macOS「Monterey」は「Big Sur」ほどの大きなアップデートではなかった。大きなニュースの多くはボンネットの中で起こっているようだ。

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(文:Brian Heater、翻訳:Katsuyuki Yasui)

iOSアプリ開発者に訊く:LiDARで空間を演出するアプリ「Effectron」 (アフェクション)

iOSアプリ開発者に訊く:LiDARで空間を演出するEffectron (アフェクション)

AFFEXION

アップルの世界開発者会議 WWDC 2021 を前に、iOS開発者にアプリを巡るストーリーやWWDCへの期待について訊きました。

今回お話をうかがったのは、iPhone 12 Pro や iPad Pro のLiDARセンサを使い、カメラ映像にリアルタイムのARエフェクトをかけるアプリ Effectron の開発元、株式会社アフェクション(Affexion)。

Effectron はカメラを向けた方向の奥行きや三次元形状を取得できる LiDAR センサをエンタテインメントに活用した最初のアプリのひとつで、2020年8月に iPad Pro 版、10月に iPhone 12 Pro 対応をリリースしています。

リアルタイムARエフェクトのアプリは以前からありましたが、Effectron はLiDARで三次元認識した床や壁に光るグリッドを引いて古典的な「サイバースペース」風に変えるといったインパクトのある映像で、搭載されたばかりのLiDARセンサの機能を示すアプリとして話題になりました。

開発元の株式会社アフェクションは、群馬県高崎市に本社を構える社員10名の企業。WebからVR・ARまでデジタルコンテンツ制作を手掛けます。アフェクションの閑 代表と、同社 CG motion 開発室 室長の金井氏にお話をうかがいました。

──Effectron はアフェクションがリリースした最初のアプリだそうですが、そもそもどういった経緯でアプリをリリースすることになったのでしょうか

閑代表:「弊社は2007年にウェブ制作からスタートしました。デザインを基点に広告やウェブ制作を手掛けておりましたが、2年ほど前から社として第二、第三の柱をどうしようか、という話になりまして」

どういったアプリが良いか?を社内で50案ほど考えたなかで、金井氏からこのLiDAR技術を使ってみたいと提案があり、Effectronにつながったとのこと。

金井氏:「提案にはマーケティング的な面と、ビジュアル的なことをやりたかったという2点があります。マーケティングとしては、これまでアプリを出したことがない会社だったので、まず使ってもらう取っ掛かりが欲しかった。新しくLiDARを搭載したiPad Proが出たところで、新機能をアプリで使い新規性を出せればと考えました」

・もう一点は、前職で建築用の測定機器で取得した点群データを見て、これをビジュアル表現やエンタメに使えたら面白いなとは考えていたこと。ミュージックビデオなどでも使われていて、インスピレーションを受けた面もある。

・LiDARセンサは高価で、以前ならば手が出なかったが、WWDCでiPad Proに搭載されたことを知り、世界中のユーザーが身近な環境で使えれば面白いだろうと制作を決めた。

──WWDCで発表を見て一番乗りを狙ったとのことですが、結果的に一番になれましたか?

金井氏:「一番乗りくらい、ですね。LiDARを使ったアプリは他にもあるにはあったのですが、機能が限定的だったり。メッシュを取得して描画するエンタメ系アプリという意味では、確認する限り初めてだったと思います」

──他の開発者もLiDARアプリを一斉に作る中で、エンタメ系で一番乗りになれた理由はどのあたりだったんでしょう

金井氏:「意外とスキャンニングのアプリは出ていたので、アプリ開発者的には実用アプリのほうが安牌だったというか。LiDARに興味を持っていたのがもともと建築系などの層だったので、エンタメに使ったアプリは初期には意外とあんまりでなかったな、という感じです」

──狙いが良かった、ということですね。スケジュール的にはどうでしたか。

金井氏:「7月から開発をはじめて、たしか8月にはリリースしました。スケジュールを間に合わせるため心がけたのは、必要な機能に絞ること。機能を増やしすぎると覚えるのが大変といった面もありますので、できるかぎりシンプルに、背景のメッシュのエフェクト切り替えと、人物のエフェクト切り替えという二点だけに絞って。あとは録画とSNS共有くらいはつけておいて」

──LiDARセンサの利用は、一般の開発者にとって学習コストが高いものなんでしょうか。

金井氏:「作りたいものが決まっていれば、ある程度アップルはサンプルを用意してくれるので、そちらを見れば作りやすいのかなと思います。あとはある程度、映像や3Dに関する知見があればすぐに取りかかれるはずです」

──Effectron は3月時点で3万ダウンロード超だったそうですが、ビジネス的なインパクトはありましたか。

「直接にEffectron を使ったビジネスというよりは、アプリの新規性が話題になったことで、たとえばいま開発している教育向けARアプリなど、開発の案件をいくつもいただけるようになりました。そうした意味で会社のビジネスにつながっています」

──WWDCに向けて、次はこんな機能やデバイスがあったら、といった期待があれば教えてください

「あまり考えたことはなかったですが、ロケーションアンカーが日本中で使えたら良いな、というのはあります。まだ限られた地域でしか使えないので。あれが使えたら、活用はコロナ後になるでしょうが観光アプリだとか、面白いものが作れるかなと考えています」

──ありがとうございました!

iOSアプリ開発者に訊く:LiDARで空間を演出するEffectron (アフェクション)

Apple

WWDC 2021 は米国時間で6月7日から、日本時間では6月8日深夜2時からのキーノートで始まります。

「Effectron」をApp Storeで

株式会社アフェクション | AFFEXION Inc.

Engadget日本版より転載)

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アップルのWWDC 2021基調講演をライブ中継で観よう!

明日、日本時間6月8日午前2時、アップルは開発者会議の初日に(バーチャル)基調講演を行い、大量のソフトウェアアップデートを発表する予定だ。同時刻より、このイベントの様子をライブストリーミングでご覧いただくことができる。

Appleの開発者会議ではいつものことだが、同社OSの次期メジャーアップデートに関する情報が期待できる。iOS 15、iPadOS 15、macOSの新バージョン、そしてwatchOSとtvOSのアップデートも予定されている。

しかし、Appleはこの機会を利用して、開発者に特に人気のある新製品を発表することもできる。Appleはすでに、独自のARMベースのM1チップを搭載したノートPCとデスクトップPCを複数出荷している。

ハイエンドモデルはまだアップデートされていない。噂によると、アップルは今日の機会に、新しいiMac ProやMacBook Proのアップデートモデル、あるいは新しい外付けディスプレイを発表する可能性があります。

ハイエンドモデルはまだアップデートされていない。噂によると、Appleには今回、新しいiMac ProやMacBook Proのアップデートモデル、あるいは新しい外付けディスプレイを発表する可能性があります。

AppleはカンファレンスをYouTubeでストリーミングしているので、このページで直接ライブストリームを見ることができる。

Apple TVがある場合は、新たにアプリをダウンロードする必要はない。アプリ「Apple TV」を開くと「Apple Events」が表示される。今回のイベントをストリーミングしたり、過去のイベントを再視聴できる。

また、Apple TVがなく、YouTubeを使いたくない人は、AppleのウェブサイトApple Event」からイベントをライブストリーミングすることもできる。この動画配信はSafari、Firefox、Microsoft Edge、Google Chromeなどの主要ブラウザーで観ることができる。

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画像クレジット:David Paul Morris / Bloomberg / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Katsuyuki Yasui)

WWDC 2021で期待される発表は?iOS 15、iPadOSリニューアル、もしかしたら新Macも

あらゆることを考え合わせると、Apple(アップル)は2020年、非常に洗練されたバーチャルWWDCを開催した。Microsoft(マイクロソフト)やGoogle(グーグル)のような他の企業がよりライブ感のある(あるいはライブスタイルの)体験を選択したのに対し、Appleは、スムーズなドローン撮影と巧みなトランジションを駆使して出演した幹部たちを引き立てた。そして最初の1年を経て、同社がどのように新しい境地に達するか見ものだ。

キックオフからニュースを提供するWWDCの基調講演はいつも大盛況だが、今回もその例に漏れず、さらに多くの新情報が発表される可能性が高い。iOS / iPadOS、watchOS、macOS、tvOSなど、開発者向けの標準的なアップデートに加えて、このイベントで新しいハードウェアが発表される可能性もある。

いつものようにライブでニュースをお伝えしていくが、今回はライブブログを復活させる。ライブニュースをさまざまな方法でフォローすることが可能だ。イベントは、太平洋標準時6月7日(月)午前10時(日本時間6月8日午前2時)に開始される。

YouTubeのライブストリームはここで見ることができる。

例年通り、このイベントではiOSが最大の目玉となる。なんといっても、Appleは他の何よりも多くiPhoneを販売しているからだ。2020年には特に、同社の最新5Gデバイスが低迷するモバイル市場に救いの手を差し伸べた中でその傾向が強まった。

少なくとも最初の段階では、iOS 15はAndroidの最新バージョンほど過激なアップデートには見えない。しかし、今日から6月7日の朝までの間に、多くのことが起こり得る。(少なくとも今のところ)最重要課題は通知機能のアップデートのようだ。報道によると、モバイルOSの新バージョンでは、睡眠中、仕事中、運転中などのステータスに応じてカスタマイズ可能な通知が提供されるとのこと。

また、iOS 15には、新しいアクセシビリティ機能が多数追加されると考えられている。

画像クレジット:Apple

さらに大きなニュースは、待望のiPadOS 15へのアップデートだろう。最新のiPad Proのレビューではこの古いソフトウェアが問題となっていたが、iPadOS 15は、タブレット端末用のOSをモバイルOSからさらに遠ざけるための重要なステップになりそうだ。現在のiPadOS 15は、ほとんどの意図と目的においては、iOSをタブレット向けにスケールアップしたものとなっている。

関連記事:【レビュー】アップルのiPad Pro 2021は今回もすばらしい、だが……

まだ詳細は明らかになっていないが、ホーム画面はウィジェットを含めて大幅にアップデートされる予定だと言われている。これにより、大きくなったホーム画面をより有効に活用できるようになると思われる。また、新しい通知機能やiMessageの大幅な改良など、iOSの新しいアップデートも行われるはずだ。

Big Surで行われた大規模なオーバーホールの後、macOS 12はより小さな波となることが予想される。ここでのビッグニュースは、ハードウェアかもしれない。噂では、Appleの超高速M1チップがアップデートされると囁かれている。M1X(現在の呼称)は、14インチと16インチの新型MacBook Proと一緒に登場する可能性があり、そうなればAppleのラップトップ製品ラインのハイエンドとローエンドの間に、ようやく少しだけ日が差すことになる。

画像クレジット:Brian Heater

また、今のところ情報が少ないものの、watchOSも大きなアップデートの時期に来ているように見える。特に合併したばかりのGoogleとFitbit(フィットビット)と競合しているAppleにとって、新しい健康機能は確実な賭けだろう(最近発表されたSamsungのアシストはいうまでもない)。

そして、最も興味をそそられるミステリーがhomeOSだ。求人情報ではこの謎のOSが参照されていたが、これは単なるタイプミスかもしれない(その後、求人案件では「HomePod」に変更された)。

画像クレジット:Apple

噂のまとめということで、より大きなものにつながるかもしれない可能性を指摘しておく。これは、既存および近々発売されるAppleのホーム製品と連動するように設計された、より統合的なホームオペレーティングシステムだと思われる。おそらく、tvOSともう少し密接に統合するものだろう。長期にわたる噂の中心にあるのは新しいApple TVデバイスだが、これまでのところ、その点は確認されていない。

他には、新しいMac Miniの噂もある(ただしこちらは、2020年末にリフレッシュされたばかりだが)。また、Beats Studio Budsに関する噂も興味をそそられる。LeBron James(レブロン・ジェームズ)が未発表のハードウェアを身につけているのを見れば、人々は話題にせざるを得ない。しかしAppleは従来、Beatsチームに独自の発表を任せ、このような大きなイベントはAirPodsのような自社ブランドのオーディオ製品のためにとっておくことを選んできた。

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

アップルがWWDC21のスケジュールやOSアップデートを多数発表

Apple(アップル)は米国時間5月24日、iOS、macOS、watchOS、tvOSなど数多くの新しいOSアップデートと、そして6月7日に(バーチャルで)開幕するWorldwide Developers Conference(WWDC)スケジュールに関する情報を公開した。

ほとんどのデバイスに影響を与えるという理由もあり、やはりiOSとiPadOSがアップデートの主役だ。今回公開されたiOS / iPadOS 14.6には、先日のハードウェアイベントで発表された有料ポッドキャスト配信サービスApple Card Familyの追加など、いくつかの大きな更新がある。

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前者はポッドキャスト配信者が番組の定期購読を有料化でき、アップルは初年度に30%の手数料を取る。そして1年後には手数料は半分になる。後者はApple Cardの所有者がカードを実質的に分割し、利用することを可能にする。

Tim Cook(ティム・クック)CEOは発表時にこう述べている。

(Apple Cardを立ち上げた)当初に明らかになったことの1つは、クレジットカードの所有者が2人いる場合、業界がクレジットスコアを算出する方法に公平性が欠けていることでした。1人は良好なクレジットヒストリーを構築するメリットがありますが、もう1人はそうではありません。私たちは、この仕組みを再構築したいと考えています。

macOS 11.4では追加のグラフィックカードのサポート、いくつかのバグ修正、そしてiOSと同様に有料ポッドキャスト購読のサポートが追加されている。また新バージョンのwatchOS 7.5では、前述のポッドキャストとApple Card Family機能、さらにマレーシアとペルーでの追加の健康機能のサポート、Apple Cardの支出追跡機能が追加された。一方でtvOS / HomePod 14.6では、前者ではバグの修正とカラーバランスの変更が行われている。

これらに加えて、2021年のバーチャルWWDCのプログラムも発表された。2021年の同イベントは6月7日午前10時(日本時間6月8日午前2時)より基調講演で幕を開ける。ここでは上記すべての最新バージョンのOSに関するビッグニュースだけでなく、もしかするとハードウェアも発表されるかもしれない。また午後2時(日本時間6月8日午前6時)からは、恒例の「Platforms State of the Union」でさらに詳しい情報が提供される予定だ。

WWWDCの詳しいスケジュールはこちらを参照して欲しい。

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

アップルのWWDC 2021は6月7日に開催、今年もオンラインのみ

Apple(アップル)は米国時間3月30日の朝、2年目となる完全にバーチャルな形式でのイベント開催を発表した。同社は2020年、新型コロナウイルスの影響で対面式のイベントを中止し、初めてオンラインのみでのイベント開催を実施した。世界の多くの地域ではワクチンの導入が始まっているが、オフラインイベントが復活するかどうかはまだわからない。なお、2021年のイベントは6月7日から11日まで開催される。

「私たちは、WWDC 21が史上最大かつ最高のイベントになるよう努めており、Appleの開発者のみなさんが私たちの生活、仕事、遊びを変えるアプリケーションを作り出すのを支援するために、新しいツールを提供できることをとてもうれしく思います」と、Appleのワールドワイドデベロッパリレーションズ、エンタープライズおよびエデュケーションマーケティング担当バイスプレジデントであるSusan Prescott(スーザン・プレスコット)氏はリリースで述べている。

オンライン形式には確かに利点がある。特に、アクセシビリティは最重要課題だ。Appleは2020年のイベント展示会が「過去最大」だったと述べており、今回も世界中から約2800万人の開発者が参加すると予想している。同社はSouth Bayのホテルに泊まる必要がないことはもちろん、移動に対応する必要がなく、すべての資格のある開発者が無料でイベントに参加できるとしている。

このイベントはAppleのさまざまなオペレーティングシステム(OS)にまたがり、iOS、iPadOS、macOS、watchOS、tvOSの新バージョンが発表される。2020年はMacが第一世代のAppleシリコンに移行するという、待ちに待った大きな話題があった。ハードウェア関連の予測は難しいが、なんらかのサプライズがある可能性もある。

大規模なキーノートや開発者をテーマにした1週間分のプログラミングに加えて、Appleは若いコーダーに焦点を当てたコンテスト「Swift Student Challenge」などのイベントを開催する。また、ここ数年オフラインイベントを開催しているサンノゼに拠点を置く教育イニシアチブであるSJ Aspiresに、100万ドル(約11億円)を寄付するとAppleは述べている。

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

インテルCPUからApple Siliconへの移行のキモとなるUniversal 2とRosetta 2とは何か?

MacのCPUをインテルからApple Siliconに乗り換えることは、アップル自身にとってはもちろんのこと、サードパーティのアプリのデベロッパーにとっても、そしてユーザーにとっても、それなりに大事業であり、大きな変化を余儀なくされることがあるのも確かだ。

しかしアップルでは、この大事業をできるだけスムーズかつシームレスに成し遂げられるよう、そしてユーザーやデベロッパーの負担ができるだけ小さくて済むように、何種類、何段階もの施策を用意している。

WWDC20のキーノートでも述べられていたように、こうした動きを広く捉えると全部で4種類の方策が数えられる。そのうち最初の2つが特に重要だ。1つはインテルとApple Silicon、両方のネイティブコードを含む1つのアプリを提供するためのUniversal 2というバイナリフォーマットの採用。もう1つは従来のインテル用のアプリをApple Silicon Mac上で自動的に変換して実行できるようにするRosetta 2の導入だ。アップルでは、それらに加えてサードパーティ製の仮想化技術と、iPhone/iPadアプリがそのままMac上でネイティブ動作するBig Surの新しいアプリ環境を挙げている。

後半の2つのうち、仮想化技術は、これまでのインテルMacでも、非Mac、あるいは非ネイティブなアプリ用の動作環境として重要な役割を果たしてきた。そうした環境がApple Silicon Mac上でも継続的に用意されることは重要だ。

それに比べると、以前には存在しなかったiPhone/iPadアプリの動作環境は、インテルからApple Siliconへのスムーズ/シームレスな移行には直接関係ないように思えるかもしれない。しかし、Apple Siliconに移行した直後には、真にネイティブなサードパーティ製のMacアプリが不足気味になる可能性もあることを考えると、その際にネイティブで動作するiPhone/iPadアプリが存在するのは、ユーザーにとっても心強いことだと考えられる。

ともあれ、やはり今回の移行をストレスのないものにするための重要な技術は、Universal 2とRosetta 2の2つであることは間違いない。これらの技術は、主に誰のためにあるものかと考えると、対照的な位置づけであることに気付く。つまり、Universal 2は、アプリのデベロッパーが利用して、両方のCPUにネイティブ対応できるアプリを作成するためのものであるのに対して、Rosetta 2はもっぱらユーザーが利用して、旧形式のアプリを新しいプラットフォームで動作させるためのもの。それぞれ現時点でわかっている範囲で詳しく見ていこう。

デベロッパーのトランジションをスムーズにするUniversal 2

今回のWWDCで、Universal 2について最初に言及したのは、もちろんキーノートだった。その際には、インテル用とApple Silicon用のネイティブコードを1つのバイナリで供給できるフォーマットであることが紹介されただけで、それ以上の技術的なことは述べられなかった。

ただしデモとしては、すでにApple Siliconにネイティブ対応しているマイクロソフトやアドビなど、大手のデベロッパーのアプリが登場した。こうしたアプリは、インテルからApple Siliconへの移行期間として想定されている少なくとも2年間は、Universal 2アプリとして供給されることになるだろう。実のところユーザーの手元には、さらに長期間インテルMacも残るはずなので、Universal 2アプリが必要とされる期間は2年よりもう少し長くなるはずだ。

キーノート以外では「Platforms State of the Union」でも、実際にXcodeを使ってUniversal 2アプリをビルドするデモを交えなから、より詳しい話が語られた。

そこでまず出た話は、複数のCPU用コードを内蔵するユニバーサルアプリは、特に新しいものではないということ。Macでは、PowerPCからインテルに移行する際にはもちろん、同じインテルでも32ビットから64ビットに移行する際にも同様の仕組みを利用している。それを考えれば、今回は複数のCPUコードの組み合わせが、インテルとApple Siliconになったに過ぎないと考えることも可能だろう。

また、ユニバーサルアプリの基本的な情報として、コードは確かに2種類だが、それ以外のリソースはすべてひととおりしか持たないということも示された。つまり、画像や音声、3Dモデル、機械学習モデルといった容量が大きくなる可能性のあるデータは、コードの種類によらず共通なので、1つ持てばいい。そのため、ユニバーサルアプリにしてもアプリのサイズの増加は最小限に留められる。実際の増分はアプリの内容によって異なるが、通常のアプリでは純粋なコードの容量はアプリサイズの数十%以内だろう。とすれば、その部分だけが2倍になっても全体の増分は元の数十%に収まることになる。仮にリソースとしてのデータをまったく持たず、すべてコードだけで構成されているようなアプリがあったとしても、最大でほぼ2倍には収まるはずだ。

Xcodeでアプリをビルドする場合、そのXcodeが動作しているMacと同じアーキテクチャのネイティブコードをターゲットにビルドするには、単にそのMacの名前(この例では「My Mac」)を選べばいい。そして、Universal 2アプリをビルドするには、その選択を「Any Mac」に変更するだけ。それだけで、インテルとApple Silicon、2種類のCPUの実行コードを含んだユニバーサルアプリがビルドできる。

原理的には、このようにXcodeのターゲットを切り替えるだけでUniversal 2対応のアプリを作成できるわけだが、アップルではインテルアプリからUniversal 2への移行に要する時間を、ほとんどのデベロッパーについて「数日」以内としている。それは、CPUのアーキテクチャの違いからくる可能性のある問題を解決したり、最適化したりするのに時間を要する場合があるからだろう。

それでも、インテルからApple Siliconへの移行は、少なくともPowerPCからインテルへの移行よりは、かなり楽にできるはずだとしている。その理由として、3つの要因を挙げている。

まず、Apple Siliconとインテルのエンディアンが同一だから。つまり2バイト以上で表現するデータのメモリ上での配置の順番が、いずれも下位バイトのデータをメモリアドレスの小さいほうに、上位バイトのデータをアドレスの大きいほうに格納していくリトルエンディアンを採用している。そのため、データのバイト順をスワップする必要がない。

実はPowerPCは、バイエンディアンと言って、リトルエンディアンとビッグエンディアンのいずれに設定することも可能だった。しかしMacでは、それ以前の68Kプロセッサーがビッグエンディアンだったため、PowerPCをインテルとは逆のビッグエンディアンで使用していたのだ。PowerPCからインテルに変換したアプリでは、実行時にデータを扱うたびに余計な時間がかかるだけでなく、トリッキーなデータの扱いをしているプログラムでは、重大な、それでいて見つけにくいバグの原因となっていた。

2つ目の理由は、macOSアプリのデベロッパーは、iOS/iPadOSアプリもリリースしていることが多いことからくるもの。その場合、macOS用とiOS/iPadOS用のコードで、ソースレベルでは共通のものも少なくないはずだ。少なくともその部分は、すでにARMアーキテクチャへの移行が完全に済んでいることになる。そこには触る必要なくユニバーサルに移行できる。

3つ目は作業効率的な問題だが、Apple Silicon用アプリを開発するマシンは、必ずしもApple Silicon搭載Macである必要はない。つまりXcode 12をインストールしたインテルMacでも、Apple Silicon用のコードを含むUniversal 2アプリをクロスコンパイルしてビルドすることが可能なのだ。それによって、Mac用アプリのデベロッパーは既存のリソースをフルに生かしてApple Silicon対応アプリ開発に取り組むことができる。

なお「Port your Mac app to Apple Silicon」というセッションでは、アプリがCPUに関わるローレベルの情報を直接扱っているような場合や、プラグインを利用している場合などに発生しがちな不具合を取り上げて、移行の方法をXcode上で具体的に示している。デベロッパーにとっては参考になるはずだ。

ユーザーに気づかれない移行を目指すRosetta 2

Rosetta 2についても、最初に紹介されたのはキーノートでだった。そこでは大きな特徴として、高性能かつ互換性が高いこと、アプリのコードはインストール時に変換されること、プラグインなどは実行直前にダイナミックに変換することも可能であること、ユーザーにとっては意識せずに動作することなどが挙げられた。

また「Platforms State of the Union」でもRosetta 2は取り上げられた。Metalでも有効で高性能を発揮することが付け加えらたほか、いくつか新しいデモが示されたが、技術的な内容としてはキーノートと大差がなかったと言える。

一方「Explore the new system architecture of Apple Silicon Macs」のセッションでは、比較的詳しい技術的内容も明らかにされた。まず示されたのは、Rosetta 2で動作可能なアプリの種類だ。一般的なmacOSのアプリはもちろん、Mac Catalystを利用して作られたアプリ、ゲーム、JavaScript用のJITコンパイラーなどを含むウェブブラウザーなどが挙げられた。Metalを利用したアプリでも、Rosetta 2によって適切なApple Silicon上のGPUコマンドが生成されるという。さらに、機械学習を扱うCoreMLフレームワークを利用したアプリでも、Apple Siliconに内蔵されるニューラルエンジンを利用して動作するようになる。

次に、Rosetta 2によって実際のコードの変換が発生するタイミングについても説明された。それによると、1つは、App Storeからインストールするタイミング。もう1つは、どこからかダウンロードしたインストーラーのパッケージからインストールするタイミングだ。そして、こうしたアップル製の標準的なインストーラーを使わないアプリでも、初めて起動するタイミングで自動的に変換が実行される。その場合でも、最初だけDockの中でアプリのアイコンがバウンスする回数が多くなる程度だという。

またRosetta 2によるコードの変換は、セキュリティ的にも配慮されたものとなっている。コードは署名され、安全に保存される。また変換を実行したマシンでしか動作しない。こうしたセキュリティ設定は、OSをアップデートする際に更新されるので、変換済のコードはそのまま利用できるはずだ。

変換済のアプリを起動すると、当然ながら変換後のコードが動作する。ただし、プラグインのように、インストール時に変換されなかったコードについては、実行時に自動的に変換されるようになっている。

それでも、インテルCPUとApple Siliconには、細かな点でいろいろと違いがあるため、Rosetta 2で吸収しきれずにうまく動作しないアプリがあることも考えられる。たとえばRosetta 2は、インテルのAVX(Advanced Vector eXtension)と呼ばれるベクトル演算の拡張命令をサポートしていない。行儀のいいアプリであれば、事前にCPUがAVXをサポートしているかどうかを確認してから使うように作られている可能性もある。そうしたアプリでは問題ないかもしれないが、最初からAVXの存在を仮定して、いきなりそうした命令を使うようなアプリは、Apple Silicon上では動作しないだろう。

Rosetta 2は、多くの場合デベロッパーがアップデートをやめてしまったり、Apple Siliconへの移行をあきらめたような過去のアプリを動作させるためのものと考えられる。そのようなアプリにRosetta 2が対応できない部分が出てきてしまった場合、対処方法はほぼない。実際にはApple Silicon搭載Macが登場してみないと何とも言えないが、そのようなアプリがそれほど多くないことを願いたい。

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MacにApple Siliconを搭載するアップルの本当の狙い

2020年6月に開催されたアップルのWWDCでは、MacのメインCPUをIntel(インテル)からアップル製のいわゆるApple Siliconにスイッチすることが発表された。それ以来、その方針があたかも金科玉条のように語られ、ずっと以前から運命付けられていたかのような雰囲気さえ漂っている。それこそが実際の製品の発売にかなり先立って、こうした方針転換を発表したアップルの狙いだったことは間違いない。

いみじくもAPIを公開し、サードパーティにアプリケーションの開発を可能にしているパソコンが、CPUのメーカー、系統を大きく変更するというのには大きく2種類の理由が考えられる。1つは技術的なもの。もう1つは政治的なものだ。WWDCのキーノートなどでは、当然ながら政治的な狙いについては何も語られていない。もちろん技術的なメリットがなければ、政治的な理由だけでCPUを変更するとも考えにくいが、すでに成熟した製品となって久しいMacが、この段階に来て変更に踏み切るからには、政治的なメリットもそれなりに大きいはずだ。

この記事ではそこには深入りしないが、アップルにしてみれば今後はCPUの選択、設計、コスト、納期など、あらゆる面に関して、自らコントロールできるようになる。すべてが自分の責任になるものの、そこから生まれるメリットは絶大だろう。とはいえ、それはあくまでもアップルにとってのメリットだ。デベロッパーやユーザーは、性能や機能、価格など、背に腹は代えられない部分で明らかなメリットがなければ、MacのCPUの変更は面倒の種が1つ増えるだけで、できればやめてもらいたいと思うだろう。

もちろん、MacのCPUがiPhoneやiPadなどのモバイルデバイスと共通になるのは、それだけで大きなメリットだ。「iPhone/iPadアプリは本当にそのままApple Silicon Mac上で動くのか?」でも述べたように、すべてのアップル製品のアプリケーションの基盤が共通化され、膨大な数のiPhone/iPadアプリがそのままMacで動作する夢のような環境への扉を開くからだ。しかし、Apple Silicon採用のメリットは、それだけではない。キーノートでは詳しく述べられていなかった数多くのメリットがある。それらを具体的に見ていこう。

高性能と低消費電力の両立は真のメリットではない

今回のキーノートでは、CEOのティム・クック氏自らが、Apple Siliconへの転換を明らかにした。その際に述べられていた動機は、大義名分としてまことにもっともなものだった。かいつまんで言えば、アップルではハードウェアとソフトウェアのインテグレーションが、すべての基本となっている。「自ら開発するApple Siliconの採用によって、それがさらに高いレベルで実現し、より優れた製品を提供できるようになる」というのだ。

キーノートでクック氏を引き継いだハードウェア技術担当の上級副社長であるJohny Srouji(ジョニー・スルージ)氏も、技術的にはそれほど詳しい具体的な話はしなかった。ただ、「Apple Siliconはパフォーマンスと消費電力のバランスに優れ、1つのアーキテクチャでApple WatchからMac Proまでカバーできるほどのスケーラビリティを備えている」ということを強調していた。

これも確かにそのとおりだろうし、納得しやすい話だが、Apple Siliconでなければならない理由には踏み込んでおらず今ひとつ説得力には欠ける。というのも、現在のコンシューマー機器向けCPUであれば、力点を置く部分に多少の違いこそあれ、どんなメーカーの製品でも高性能と低消費電力の両立を目指していると考えられるからだ。

同じWWDCの「Platforms State of the Union」でも、今年は当然ながらApple Siliconがメインのトピックに据えられた。アップルのプラットフォームに関して、キーノートよりも技術的に突っ込んだ話をすることになっているセッションだ。しかしそこでも、どうしてApple Siliconが優れているかについては漠然とした話しか語られなかった。

そのセッションで挙げられたApple Siliconの技術的なメリットは、次の4点に集約される。

  • Huge Improvements to Speed(速度の飛躍的な向上)
  • Graphic Performance(グラフィック性能)
  • Power Consumption(消費電力)
  • Security(セキュリティ)

これらのメリットについて、いくつかのアプリケーションのデモが示され、すでに実際にApple Silicon上でMacのソフトウェアが動作し、高性能を発揮していることが強調された。それでも、なぜApple Siliconでなければならないのか、簡単なアーキテクチャの図が示されただけで技術的な説明はここでもまだ具体性に欠けている。

Apple Siliconのパフォーマンス面でのメリット

Apple Siliconについて技術的に一歩踏み込んだ詳しい話は、ようやく「Explore the new system architecture of Apple Silicon Mac」というセッションで登場した。実際にmacOSをApple Siliconに移行させる仕事をしているCore OSグループの担当者であるGavin Barraclough(ギャビン・バラクロー)氏による説明だ。

そこではまず、現状のインテルベースのMacの基本的なアーキテクチャの確認から入った。独立したGPUを持つマシンでは、インテル製のCPUとAMD製のGPU、そして主にセキュリティに関するコントローラーとして動作するアップル製のT2チップを備えている。この場合、CPUとGPUは、それそれ独立したメモリを使って動作する。それがメリットになる場合もあるだろうが、両メモリ間でのデータ転送はPCIバス経由となり、大量のデータを扱うには効率が悪い。

それに対してApple Siliconでは、1つのSoC(System on a Chip)として、CPU、GPU、セキュリティ関連の機能はもちろん、ビデオのエンコーダー/デコーダー、機械学習関連の処理をハードウェアで実行するニューラルエンジン、機械学習アクセラレーターなどが詰め込まれている。このように多様な機能をワンチップに統合できるのは、iPhoneやiPad用のSoCとして培ってきた設計技術の成果だろう。

この構成では、CPUとGPUが1つのメモリを共有することになり、画像やテクスチャ、ジオメトリなどのデータ転送は効率化される。アップルではこれをUnified memory architecture(統合メモリアーキテクチャ)と呼んでいる。

またApple SiliconのCPUには、これまで採用していたインテル製のCPUにはない大きな特徴がある。それは内蔵する複数のコアの処理能力が、すべて同一ではないということだ。アップルではこれをAsymmetric multiprocessing(非対称マルチプロセッシング)、略してAMPと呼ぶ。例えば、ユーザーによる操作の追従のような軽い処理は低能力のコアで実行し、負荷の重い高度な演算処理は高能力のコアで実行することで、全体的なコアの利用効率を高めることができる。アプリのデベロッパーとしては、プロセスの優先順位を適切に見積もって設定し、効率的な処理が実行されるよう追求する必要がある。とはいえ、一般的なマルチタスク処理は、これまでどおりGCD(Grand Central Dispatch)を利用して、個々のタスクが適切にスレッドに割り振られるようにすることが推奨される。

アプリとして、こうしたApple Siliconの能力を利用するために、特に新たなAPIを導入する必要ない。例えばGPU処理に関しては、これまでどおりMetalを利用すれば、自動的に最大限のパフォーマンスが発揮される。また、ビデオ関連はAVFoundationやVideoToolbox、機械学習関連はCoreMLのように、それぞれ使い慣れたフレームワークを利用すれば最適な処理が実行される。機械学習関連については、Accelerateフレームワークを利用して、ハードウェアをより効率的に利用することも可能だ。

Apple Siliconが可能にするMacならではの機能

Macに搭載されるApple Siliconは、これまでiPhoneやiPadといったモバイルデバイスに使われてきたアップル製のSoCとは異なる部分もある。それはMacがデスクトップコンピューターであることに関連する機能だ。つまり、Macに搭載されるApple Siliconは、単にiPhoneやiPadにすでに搭載されているものをそのまま、あるいは性能を強化して持ってくるのではなく、Macならではの機能も盛り込んだものとなる。

まず異なるのが起動プロセスだ。Apple Siliconを搭載するMacでは、iPhoneやiPadと同様の起動セキュリティを確保しつつ、外付けのディスクを含めて複数のボリュームから選択的に起動する機能を実現する。それらの複数のボリュームには、異なるバージョンのmacOSがインストールされている可能性がある。そのため、新しいブートローダーは、その時点での過去のバージョンも含め、アップルによってサインされたすべてのバージョンのmacOSから起動できる。

さらに新しいリカバリー機能も含まれている。これは、新世代のMacの大きなメリットの1つに数えられるだろう。「Startup Options UI」という専用のインターフェースが用意され、すべてのMacから共通の操作によってアクセスできる。MacBookシリーズではTouch IDボタン、デスクトップでは電源ボタンを長押しするだけで、このUIを起動できる。

ここからは、起動ディスクの選択だけでなく、新たに搭載される「Startup Manager」(起動マネージャ)、「Mac Sharing Mode」(Mac共有モード)を起動することも可能となる。後者のMac Sharing Modeは、これまでのターゲットディスクモードに代わるものとなる。これはSMBを利用したファイル共有機能によって、外部からユーザーデータにアクセスすることを可能する。当然ながらMac内部のディスクにアクセスするには、正当なユーザー認証が必要となる。

起動ディスクの選択についても、これまでにはなかった細かな設定が可能となる。具体的には、起動ボリュームごと独立にセキュリティポリシーを選べるようになる。Macを何らかの業務に使うだけであれば、iPhoneなどと同様、常に最高のセキュリティポリシーを適用して起動すればいい。しかし、研究者や趣味でいろいろいじりたいユーザーは、それでは自由度が制限されて目的が達成できないことある。そこで、あえてセキュリティを低減させるモードも用意している。

セキュリティポリシーは、これまで同様csrutilコマンドによって設定できる。しかしインテルベースのMacでは、設定したセキュリティーポリシーはシステム全体で有効となるものだった。そのため1つのボリュームのセキュリティを低減させたい場合、他のボリュームのセキュリティも低減させざるを得なかった。Apple Siliconを搭載するMacでは、起動ボリュームごと独立にセキュリティポリシーが設定できるので、他の部分のセキュリティを強固に保ったまま、目的のボリュームだけ低減させるという使い方が可能となる。

リカバリー機能も強化される。macOSには、通常のボリュームから起動できなくなった場合に備えて、リカバリーボリュームが用意されている。そこから起動すれば、通常のボリュームを修復したり、再インストールしたりすることが可能となる。ここまでは、インテルベースのMacでもApple SiliconのMacでも同じだ。リカバリーボリューム自体も起動できない場合、インテルベースのMacでは、インターネットリカバリー機能によって、サーバーにある最小限のOSを起動できるようになっている。Apple Silicon Macでは、さらに最小限のOSを保持した「System Recovery」と呼ばれる隠しコンテナを内蔵している。万一の場合は、そこから起動することでリカバリボリュームや通常のmacOSボリュームを修復、再インストールすることが可能だ。

現時点で明らかにされている内容は、Apple Siliconの全容からすれば、まだほんの一部だと考えられる。しかし、Apple Siliconが単に高性能と低消費電力の両立だけを狙ったものでないことは、すでに明らかだろう。とはいえ仮にそれが本当にメインの理由だったとしても、最近発表されたスーパーコンピュータの世界ランキングで、複数の部門にまたがってトップの座を獲得した理化学研究所の富岳が、ARMベースのアーキテクチャを採用しているという事実は、Macの将来にとっても極めて明るいニュースであることに疑いの余地はない。

画像クレジット:Apple

iPhone/iPadアプリは本当にそのままApple Silicon Mac上で動くのか?

先日のアップルのWWDCのキーノートでは、後半のかなり長い時間を使ってMacが採用することになったアップル独自のCPU「Apple Silicon」に関する発表があった。その中では、ちょっと意外なことも語られた。Apple Siliconを搭載したMac上では、iPhone用やiPad用のアプリが「まったく変更を加えることなくネイティブに」動作するというのだ。そこでは詳しい話はいっさいなく、「Monument Valley 2」というゲームなど、2、3本のアプリがMac上で動く様子がデモされた。この話は、時間にして全部で40秒ほど。そのときは、なんだか狐につままれたような気がした人も多かったのではないだろうか。

本当にiPhone/iPad用のアプリがMac上でそのまま動くのだろうか。確かに今後のMacは、iPhoneやiPadと同じARM系のCPUを採用するようになるのだから、基本的なコードがネイティブで動くのはわかる。また、すでにMac Catalystを使えば、iOSやiPadOSのAPIが、部分的にせよ、macOS上で利用可能になっているのも確かだ。しかし、当然ながらすべてが共通というわけではない。それに、そもそもiPhone/iPadアプリは、専用のApp Storeからダウンロードしてインストールするしかない。Macからはアクセスすらできないようになっている。なんとかアプリのバイナリを持ってくることができたとしても、ライセンスの問題もありそうだ。このように疑問は噴出する。

結論から先に言えば、答えはほぼイエスだ。ここで「ほぼ」を付けるのは、どうしても制限と選択があるから。制限とは、動くアプリは、そのままでまったく問題なく動くが、完全には動かないアプリもあるということ。そして選択とは、アプリのデベロッパーがそれを望まない場合、macOS上では使えないようにすることもできるからだ。どういうことなのか、少し詳しく見ていこう。

Mac上でiPhone/iPadアプリが動く仕組み

キーノートの後のWWDCのセッションの1つに「iPad and iPhone apps on Apple Silicon Macs」というものある。17分程度の短いセッションだが、求める答えはズバリこの中にありそうだ。

このビデオでは、まず現状のmacOS Catalinaのアプリケーションアーキテクチャを確認している。大別すると、現状のMacでは4種類のアプリケーションフレームワークが動いているとしている。つまり、通常のMac用アプリのためのAppKit、元はiPad用のものをMac Catalystを使ってMacに移植したアプリのためのUIKit、ウェブアプリのためのWebKit、そしてゲーム用のMetalというわけだ。

引用:Apple

Apple Siliconを搭載したMacのmacOS Big Surでは、そこにもう1つのフレームワークが加わるのではなく、iPhoneやiPadのアプリをそのまま動かせるように、macOS上のUIKit部分を拡張するかたちを取るようだ。

引用:Apple

確かに、macOS上の実行環境がiOSやiPadOSに近づけば、そしてアプリから見て実質的に同等なものになれば、何も変更していないモバイルアプリがMac上でも動作することになる。それでも、macOSのアプリ実行環境にはiOSやiPadOSとは異なる部分も多い。顕著な例は、指によって直接画面をタッチする操作と、マウスやトラックパッドを使ってカーソルを動かしてクリックする操作の違いがある。また、macOSの画面には必ずメニューバーがあって、アプリの終了など、基本的な操作を担当しているが、iOSやiPadOSにはMacのメニューバーに相当するものはない。逆にiPhone/iPadのホームボタンに相当するものはMacにはない。

そうした基本的な操作環境がうまくコンバートされなければ、アプリは恐ろしく使いにくいものとなったり、操作不能になったりしてしまう。そこでBig Surでは、モバイルアプリがMac上で動くために必要なリソースやインターフェースは、自動的に追加されたり、変換されたりするようだ。例えば、すでに述べたメニューバーの利用、環境設定パネルの表示、Dockへのアクセス、ファイルを開く/保存ダイアログの利用、スクロールバーの表示と操作といったものだ。iOSやiPadOS上での標準的なマルチタッチ操作も、可能な限りmacOSのマウスやトラックパッド操作に置き換えられる。

さらに、マルチタスクに対応したiPadOSアプリなら、macOS上でも自由にウィンドウのリサイズが可能となる。フルスクリーンでの動作も可能だ。またマルチウィンドウに対応したアプリなら、Mac上でも複数のウィンドウを開いて動作できる。macOS上のファイルにもアクセスできるようになり、macOSによる「共有」機能も利用可能となる。細かいところでは、macOSのダークモードにも追従する。

このような自動的な環境への対応がどんな感じになるのかを知るために、一例として現状のMac Catalystのアプリを見てみよう。iOSやiPadOSにもあって、現在のmacOSにもある「ボイスメモ」は、Mac Catalystアプリの代表的なもの。iPadOSの「設定」には「ボイスメモ設定」がある。そこに配置されているのは「削除したものを消去」するまでの日数、「オーディオの品質」、そして「位置情報を録音名に使用」するかどうかのスイッチだ。

それに対してmacOS上の「ボイスメモ」では、「ボイスメモ」メニューの「環境設定…」を選ぶことで、「ボイスメモ環境設定」のウィンドウが開く。そして、その中に並ぶ設定項目は、文言も含めて、iPad用アプリとまったく同じなのだ。

これはあくまでも、現在のMac Catalystアプリのユーザーインターフェースの自動変換の例だが、このようなインターフェースに関しては、Big Sur上のiOS/iPhoneアプリも、Mac Catalystアプリも、だいたい同じ環境になると考えていいだろう。

Apple Silicon Mac上で動かないiPhone/iPadアプリ

一般的なアプリの多くがAPIの利用を含めて自動的に変換されるとしても、どうしても変換しきれない機能もある。そうしたモバイルデバイス特有の機能に大きく依存しているようなアプリは、Mac上でそのままうまく動かすことはできないだろう。少なくとも、iPhoneやiPadとまったく同じような機能を発揮することは期待できない。

そのようなアプリの代表的なものとしては、iPhone/iPadが備えている多様なセンサー類を使ったものが挙げられる。加速度、ジャイロスコープ、磁気、気圧、といったセンサーや、深度センサー付きのカメラ、GPSといったものはMacにはない。そうしたものに依存するアプリは、そのままの機能をMacで発揮するにはどうしても無理がある。

ただし、例えばGPSのハードウェアはMacにはないが、その代わりになる機能はある。位置情報を提供するCoreLocationフレームワークだ。iOSやiPadOSのアプリでも、GPSのハードウェアに直接アクセスしているものは、まずない。通常はmacOSともほぼ共通のAPIであるCoreLocationを利用して位置情報を検出している。そうしたアプリが必要とする位置情報は多くの場合、Mac上でもCoreLocationによって供給され、支障なく動作するものも少なくないだろう。

またMacにはない背面カメラに関しても、最初から背面カメラの存在を前提として動作するiPhone/iPadアプリを、そのままMac上で動かすのは確かに厳しい。しかし、アプリが非常にマナーよく作られていれば、MacにUSB接続された外部カメラなどを利用することも可能になる。AVFoundationフレームワークのAVCaptureDeviceDiscoverySession機能を利用して、デバイスに接続されたカメラを確認してから利用するようなアプリなら、柔軟に対応できる可能性が高い。

Macという新たなプラットフォームを得たことで、今後iPhone/iPadアプリのデベロッパーの意識改革が進み、デバイスへの依存性の低いアプリが増える可能性にも期待できるだろう。

iPhone/iPadアプリはどうやってMacにインストールする?

Mac上で動作するiPhone/iPadアプリがあっても、それらを実際にどうやってMacにインストールするのか。というのも、キーノートではまったく触れられず、大きな疑問が残る部分だった。これについては、実は何も心配はいらない。Apple Siliconを搭載するMac上で動作するiPhone/iPadアプリは、ほぼ自動的にMac App Storeに表示されるからだ。Macユーザーは、通常のMac用アプリとまったく同じようにダウンロードしてインストールできるようになる。

デベロッパーが新たなアプリをiOS(iPadOS)のApp Storeに掲載する際、デフォルトではMac App Storeにも掲載されるようになる。ただし、上で述べたような理由でMac上では十分な機能を発揮できないアプリや、同じデベロッパーがすでにMac用のアプリを別にMac App Storeに掲載しているような場合には、そのアプリをMac App Storeでは公開しないように設定できる。それも、チェックを1つ外すだけだ。

有料アプリについては、もちろんユーザーはMac App Store上で購入手続きを済ませてからダウンロードしてインストールするようになる。また、インストールしたアプリのApp内課金も可能なので、デベロッパーはiPhoneやiPadとまったく同様に、Macユーザーからも収益を得ることができる。

アプリをMacにインストールする際には、特定のモバイルデバイスに特化したようなリソースは、自動的に排除され、Macに最適なリソースのみを含むようになる。このようなApp Thinningのメカニズムも、これまでと同じように動作する。Macが非常に強力なiPad類似の新たなデバイスとして加わるだけだ。

macOSにインストールしたアプリのアイコンは、通常どおりmacOSの「アプリケーション」フォルダーに入る。ただし、これを別の場所に移動しても動作する。例えばデスクトップに移動して配置することも可能だ。現状のCatalinaでは、アプリのアイコンをアプリケーションフォルダーから別の場所にドラッグするとエイリアスが作成されるが、Big Surでは「移動」となるようだ。また、新しいApp Bundleフォーマットの採用によって、ユーザーがアプリの名前を変更することも可能になるという。このあたりは、iOSやiPadOSでは得られなかった新たな動作環境だ。こうしたユーザーに大きな自由度を与える動作環境は、macOS Sierraで導入されたApp Translocationを利用することで可能となっている。

Macにアプリを提供する3つの方法

こうして、Apple Silicon搭載MacでiPhone/iPadアプリが利用可能になることで、言うまでもなくMacのアプリケーション環境は、これまで類を見ないほど充実することになる。そして、デベロッパーとしてMacにネイティブなアプリを提供する経路も、大きく3種類が利用できることになる。

1つは、これまでのMacアプリと同様の、macOSのオーソドックスなアプリで、もちろんMacならではの機能や操作性がフルに活用できる。それから、これまでにも利用可能だったMac Catalystを利用して、iPadからMacに移植したアプリがある。この記事では述べなかったが、Mac Catalystは、Big Surで大幅にアップデートされ、より強力なものとなる。

いずれにせよ、Macならではの機能をできるだけ利用できるようにiPadアプリをカスタマイズしたければ、Mac Catalystの利用が効果的だ。そして3つ目は、iPhone/iPadアプリを、そのまま提供すること。もちろん、その場合にはMac上での動作を事前に十分テストして、不自然なことにならないか確認することは必要だ。しかし、デバイスに大きく依存したアプリでなければ、コードもほとんど修正する必要はないだろう。

以前は、iPhone/iPadとMacは、2つの似て非なる世界だった。同じアプリを両方の世界に提供する場合、基本的には両者をまったく別のアプリとして開発する必要があった。それがMac Catalystの登場で、iPad用を簡単にMacに移植できるようになり、さらにApple Silicon Macの登場で、1種類のソースコードからビルドしたアプリを、そのまま両方の世界に供給できるようになる。デベロッパーにとっては、マーケットが大きく拡がるチャンスであることは間違いない。

ユーザーとしては、今後登場するApple Silicon搭載Macを準備して、ただ待っているだけでいい。そうすれば、iPhone/iPadの世界から、魅力的なアプリがどんどんMacに流入してくる。面白すぎて笑いが止まらない状況が、もうすぐそこに迫っている。Macユーザーとしては、まったくいい時代になったものだ。

Apple Watchの手洗い機能は新型コロナの流行前から準備されていた

先週末のWWDC基調講演では、新型コロナウイルス(COVID-19)関連としてマスクをしたミー文字とともに、Apple Watch(アップルウォッチ)の手洗い機能が追加されるという嬉しい発表があった。手洗いは、誰もが1日何度か行う当たり前の行動だ。しかしこの5カ月の間に、それは私たちの日常生活において非常に重要な位置を占めるようになった。精神を集中して、取り憑かれたように励む行為となっている。

私たちはみな、WHOや米疾病管理予防センター(CDC)のガイドラインを読んだり、ウイルス感染を防ぐための適切な手洗いの時間の目安となる無数の替え歌(ときには自作曲)をシェアしたりしてきた。また、洗面所の蛇口の前に立ったとき、20秒という長さを痛いほど身に染みてわかるようにもなった。

間もなく登場するApple Watch用の手洗いアプリは、新型コロナウイルス禍に見舞われて以降、Apple(アップル)が慌てて実行したその他の即席の取り組みとは違う。テクノロジー担当副社長であるKevin Lynch(ケビン・リンチ)氏がTechCrunchに話したところによると、その機能は「長年の仕事」の成果だという。アップルならではの流儀に従い、数年間の試行錯誤の末に生み出された製品なのだと同氏は話す。

画像クレジット:Apple

このありふれた行動に取り組んだスマートウォッチは、Apple Watchが初めてではない。Samsung(サムスン)は、所定の時間、ユーザーが手を洗えるようにするGalaxy Watch(ギャラクシーウォッチ)用アプリをすぐさま市場投入した。アップルのアプリは、Noise(ノイズ)アプリなどのヘルスケア機能に属し、ウォッチの内蔵センサー類を駆使して利用者の全体的な健康状態の管理に貢献するスマートなものとなっている。

watchOSの次期バージョンに直接組み込まれるこの機能は、いろいろな仕組みでフィットネス用のトラッキング的な働きをする。まずは、有効にしておくと手洗い動作を検知したときに自動的にアプリが起動し、20秒のカウントダウンタイマーがスタートする。ハードウェアの鍵となるのが加速度センサーだ。これが手洗い特有の動作パターンを監視する。もちろん実際に手をゴシゴシする人に合わせて、他にもいろいろな手法が併用される。

関連記事:Apple’s software updates give a glimpse of software in a COVID-19 era(未訳記事)

このシステムでは、複数の方式の管理に機械学習モデルが使われているが、ウォッチのマイクからの信号も追加的に利用される。動きの感知に加えて、アプリは水が流れる音も聞き分ける。だがそれでも十分ではない。近ごろでは水の音が静かで聞き取りにくいエコ洗面台が増えているからだ。最後の頼みは、石けんを握る音だ。石けんは独特な音を発するため、手を洗っていることを確認できるという。

この機能は、石けんの泡の画像を点滅させたり、振動を伝えたりして最後までしっかり洗うよう促してくれる。手を止めると「丁寧な励まし」が示される。フィットネスのトラッキングのように、その情報はアップルのヘルスケアアプリに記録される。つくづく思うが、今回のことさえなければ少しふざけたようなこのささやかな機能は、私たちがにわかにウイルスや細菌感染対策を真剣に考えるようになったことで、突然、非常に重要な意味を持つようになったわけだ。

これはアップルがこの数カ月間に発表した新型コロナ関連の他の取り組みに、思いかけず加えられる形になった。同社はマスクやフェイスシールドを寄付したり、接触追跡の取り組みでは主導的な立場を取ってきた。

画像クレジット:Apple

特にApple Watchに限って見てみると、医師がウォッチ装着者の心電図を、双方にウイルス感染のリスクを与えないよう、遠隔で監視できる機能が解禁された。だが、新型コロナウイルス感染を診断する可能性については、今のところアップルは何も語っていない。「Apple Watchで新型コロナを追跡する方法は、まだ特別に研究はしていませんが、医療分野での研究は喜んでお手伝いしたいと考えています。アップルの人材を医療分野に派遣できるようにして、彼らの取り組みを強力に支援します。そこで何が得られるか、とても楽しみです」と同社のヘルス担当副社長であるSumbul Ahmad Desai(サンブル・アーマド・デサイ)氏はTechCrunchに話した。

現時点ではまだ、アップルはその点に関して具体的な動きは見せていないが、研究者たちがこの広く普及したウェアラブルの応用に興味を示すであろうことは容易に想像できる。2020年5月にFitbit(フィットビット)は、まさにその方面で研究者たちとの取り組みの初期段階にあると発表している。

画像クレジット:Apple

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(翻訳:金井哲夫)

アップルのiMessageにメンション、ピン留め、インラインでの返信などの新機能が多数追加

Apple(アップル)のiMessageプラットフォームが、iOS 14とmacOS Big Surのリリースで大幅にアップデートする。日本時間6月23日に配信されたWWDCのキーノートで、アップルはiMessageの次バージョンに、SlackやFacebook Messengerといったライバルのメッセージングアプリで人気の機能の多くを搭載すると発表した。インラインでの返信、ピンで固定、メンションなどだ。さらにグループチャットのカスタマイズ、ミー文字の拡張、検索機能の向上なども発表されている。

インラインで返信する新機能を使うと、iMessageのグループチャットに参加しているユーザーがスレッドとして特定のメッセージに返信できる。これはSlackなど人気メッセージングアプリの多くに搭載されているのと同様の機能だ。ユーザーは会話全体の中で返信を表示したり、独自スレッドとして表示したりすることができる。

グループチャット内の誰に対するメッセージかをわかりやすくするために、iMessageにメンションの機能が追加される。ただし、他のアプリやTwitterなどのソーシャルプラットフォームで「@」をつけてメンションするのとは異なり、iMessageでは相手の名前を入力するだけだ。記号を追加する必要はない。

送信相手の推測候補がポップアップし、タップして選択できる。テキストメッセージ中では相手の名前が青色で強調表示され、その相手に対するコメントであることが示される。

そして最高の新機能は、会話の中で自分にメンションされたときだけ通知するようにメッセージアプリを設定できることだ。通知をミュートしたくなるほど頻繁に会話が交わされるチャットでも、重要なメッセージを見落とさずについていけるようになるだろう。

グループチャットのデザインも変更され、直近でアクティブだった人のプロフィールアイコンが最も大きく表示される。

グループチャットのメインイメージを写真や絵文字でカスタマイズすることもできる。会話では、グループメンバーのプロフィールアイコンがメインイメージの周囲に表示される。

会話をピンで固定する新機能を使えば、最も重要なiMessageのチャットを常に画面の最上部に表示できる。こうしておけば、親友や家族のグループチャットなど、頻繁に参加する会話に簡単に戻れる。重要な相手、配偶者、子供など頻繁にメッセージをやりとりする人と素早く会話を続けることもできる。

グループチャットに新しいメッセージが届くと、画面上部に表示される。誰かがあなたへのテキストメッセージを入力中であることも、インジケーターでわかる。

この機能はいつも主にiMessageで会話をしていて、長い未読リストの中で重要なメッセージを見落としてしまうことが多い人にとっては特に便利だ。未読リストをスクロールして会話を追いかけなくても、1カ所を見れば急を要するメッセージを見落とすことがないので、画面を見る時間を減らすこともできる。

さらにアップルは、ミー文字もアップデートする。20種類の新しい髪型と被り物、マスク、年齢の選択肢に加え、ミー文字ステッカーにはハグ、グータッチ、照れの3種類が追加される。

Macのメッセージアプリでもインラインの返信やピンで会話を固定、メンションを利用できる。iMessageのメッセージエフェクト、ミー文字のカスタマイズ、新しい写真ピッカー、人気の画像やGIFを見つけてメッセージに追加する#imagesにも対応する。さらに検索機能が強化され、リンクや写真、一致する項目を見つけやすくなるとアップルは紹介している。

これらの新機能は、今秋のiOS 14とmacOS Big Surのリリース時に搭載される。

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(翻訳:Kaori Koyama)

iOS 14でアプリの広告トラッキングの拒否が可能に、セキュリティとプライバシーをさらに強化

iOSの新バージョンには、セキュリティとプライバシーの新機能も多く含まれる。米国時間6月22日、Apple(アップル)はiOS 14に組み込まれる新機能を多数発表した。iOS 14は2020年後半、新しいiPhoneとiPadがリリースされる際に登場する見込みだ。

アップルは、ユーザーがアプリに対して正確な位置情報を共有するのではなく、「大まかな位置情報を共有」できるようにすると述べた。これによりアプリは正確な現在地を特定するのではなく、大まかな現在地を取得できるようになる。これは、ユーザーがどのタイミングで位置情報を提供するかということに続く新しいオプションだ。2019年にアップルは、ユーザーが位置情報の利用を一度だけ許可するオプションを追加し、このオプションを選択するとアプリがその人の動きをずっと追跡することはできなくなった。

iOS 14が動作するiPhoneでは、ステータスバーに「カメラとマイクの記録インジケーター」も表示されるようになる。これはMacでカメラの動作中にライトがつくのと似た機能だ。この記録インジケーターは、前面または背面のカメラを利用している場合、あるいはマイクが有効になっている場合にiPhoneの画面上部に表示される。

しかしアップルは、最も大きく変わるのはアプリ開発者自身だと述べた。iOS 14では、アプリがユーザーに対して「追跡されたいかどうかを尋ねる」ようになる。これは影響力のある大きな変更だ。ユーザーが追跡を拒否できるようになることで、アプリが収集するデータの量が減り、ユーザーのプライバシーが守られる。

アップルは、アプリがどのような許可を要求するかを自己申告するようアプリの開発者に今後求めていくことも説明した。これにより透明性が向上し、ユーザーはそのアプリを使うためにどのようなデータを渡すのかを知ることができる。収集されたデータがアプリ外でどう追跡されるかも説明されるようになる。

Androidユーザーはすでに何年も前から、アプリが求める権限をGoogle Playストアで確認できる。

アップルはプライバシー重視の姿勢を常に口にしている。今回の動きは、その姿勢の一環として広告業界に対してアップルが繰り出した最新の攻撃だ。

広告主、そしてデータをかき集めるFacebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)などのテック大手は、ターゲット広告で巨額の利益を得ている。その両者を巻き込む論争の中で、広告業界はこれまで頻繁にアップルの批判の的となってきた。2015年にアップルのCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は、シリコンバレーのライバルたちは「あなたについて知り得るすべてを食い尽くして収益化しようとしている」と述べた(未訳記事)。ハードウェアを販売して収益を得ているアップルは「そのようにはしないことを選択する」とクック氏は語っている(The Guardian記事)。

ターゲット広告がさらに広まる中で、アップルは自社のソフトウェアにプライバシー関連の新しい機能を追加することで対抗した。例えばインテリジェントなトラッキング防止技術や、広告とトラッカーを読み込まないようにするコンテンツブロッカーをユーザーがSafariにインストールできるようにする機能などだ。

2019年にアップルは、開発者に対してサードパーティ製トラッカーを使用する子供向けアプリはApp Storeで却下されると伝えた。

関連記事:オンライン広告をもっとプライベートするアップルの提案
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画像クレジット:Apple(ライブストリーミング)

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(翻訳:Kaori Koyama)

アップルのマップアプリでEV向けに充電ステーションも含めたルート検索が可能に

Apple(アップル)は、電気自動車のオーナー向けのルート案内機能をマップアプリに追加した。iOSの最新バージョンで利用可能になるEVルーティング機能は、アップルがマップアプリに加えたいくつかの改良のうちの1つだ

米国時間6月22日月曜日、毎年開催される開発者向けカンファレンスのオンラインイベントである「WWDC 2020」で、この新機能は発表された。

EVルーティング機能は、ルートに沿ってユーザーのEV(電気自動車)と互換性のある充電ステーションを表示することで、航続距離とバッテリー切れの心配を解消することを目指している。アップルでシニアディレクターを務めるStacey Lysik(ステイシー・リシック)氏によると、iOS 14のマップアプリは車両の充電状態を追跡し、標高や経路に沿ってルートに充電ステーションを追加するかどうかを決定する。

アップルはBMWやFord(フォード)などの自動車メーカーと協力して、簡単なルート設定をサポートする。リシック氏によると、近い将来にはさらに多くのメーカーが加わる予定だという。フォードはアップルと協力していることを認めたが、それ以上の詳細は明らかにしなかった。

またマップアプリには、渋滞やグリーンゾーンを表示し、必要に応じてこれらのエリアを避ける代替ルートを選択できる機能も追加される。中国のドライバーはiPhoneにナンバープレート番号を安全に保存できるようになり、その番号に基づいて混雑した都市の中心部に入ることができる日を、より簡単に知ることができるようになる。中国の政策では、ドライバーは特定の日にしか混雑区域に入ることができないのだ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Safariはまもなくウェブページに埋め込まれたすべての広告トラッカーをブロックし暴き始める

Apple(アップル)は侵略的な広告トラッカーへの反撃を開始する。

アップルは米国時間6月22日に、同社のウェブブラウザであるSafariの新しいプライバシー機能を発表した。ユーザーが訪問するウェブページやサイトに埋め込まれた広告トラッカーのすべてを暴くものだ。

Safariの新しいトラッキング防止機能はブラウザ上部のアドレスバーの隣に表示され、ウェブを閲覧する際に侵略してくるトラッカーをブロックする。ユーザーはトラッキング防止機能を開いて、プライバシーレポートからページ上のすべてのトラッカーの詳細を閲覧できる。

例えば、TechCrunch USのページをチェックすると、200以上のトラッカーが存在していた。

FirefoxやBraveのようなライバルのブラウザには、すでにトラッキング防止機能が組み込まれている。

これは、ターゲティング広告とトラッキング業界の状況を一変させる最新の機能だ。ターゲティング広告が何年にもわたって侵略的なものになってきたため、アップルは同社のソフトウェアにインテリジェンストラッキング防止技術などの機能を導入し、Safariユーザーが広告やトラッカーの読み込みを防止するコンテンツブロッカーをインストールできるようにすることで対応してきた。

Safariの新機能は、2020年後半にリリースされる予定のmacOS Big Surの最新バージョンに搭載される予定だ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

アップルのApp Storeに対して開発者によるアプリのリジェクトやルールへの異議申し立てが可能に

Apple(アップル)が、近く実施されるApp Storeのルール変更を発表した。これにより、このマーケットプレイスの運用が大きく変わる可能性がある。もうすぐ開発者は、アプリのリジェクトだけでなく、その根拠となったルールにも異議を唱えられるようになる。また、ルール違反のせいでバグ修正のアップデートが保留になることはない。

重要な追加事項にも関わらず、アプリと開発者の変更点についてのブログ記事は淡々としたものだ。

まず第一に、開発者はアプリがApp Store Review Guidelinesの特定のガイドラインに違反しているかどうかの決定に抗議できるだけでなく、ガイドラインそのものに異議を唱える仕組みがある。第二に、すでにApp Storeで公開されているアプリに関しては、法律な問題に関連するものを除き、ガイドラインへの違反のためにバグ修正が遅れることはなくなる。

App Storeのルールは、今週大きく報道された。それは、収益化をめぐる論争のせいであり、メールサービスアプリのHeyが、サブスクリプションの収入をAppleと共有することをためらった(未訳記事)からだ。

これは前からよくある問題であり、Basecampの共同創業者であるDavid Heinemeier Hansson(デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン)ともあろう人が、自分のHeyについてそれを知らなかったとは思われない。しかも、アプリに関するAppleの一方的で画一的なビジネスモデルが批判されたのも、これが初めてではない。

本誌TechCrunchとのインタビューでAppleのマーケティング担当上級副社長Phil Schiller(フィリップ・シラー)氏は、ルールを変えてHeyのようなアプリが収入をAppleと分けずにApp Storeで売られるようにするつもりはない(未訳記事)と語った。

関連記事:Interview: Apple’s Schiller says position on Hey app is unchanged and no rules changes are imminent

しかし、アップルは発表で直ちにルールを変更しないが、そのうち変えるかもしれない、と言っている。開発者からのフィードバックがどのように入手され処理され評価されるのか、それはわからないが、おそらく今週の多くの開発者セッションでさらに聴取を重ね、多くの提案を受け取ってから最終的に決まるのかもしれない。

2つめの変更は、Heyがそうだったようにビジネスの問題があるせいで、セキュリティアップデートもできなかった開発者をほっとさせるだろう。開発者との交渉が行き詰まることで、ユーザーを困らせることはアップルもしたくないだろうから、両者を分離することは完全に正しい。これによって、扱いにくい開発者に対してアップルが振るう鞭(むち)が短くなり、しかもユーザーなど他の関係者のリスクは少なくなる。

App Storeのルール変更は今夏に発効するため、それまでに詳細が決まるだろう。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa