血糖値に基づきリアルタイムでその人だけの減量アドバイスをするSignos、シリーズAで約14.8億円調達

日常的に歩数を数えて心拍数を測り、週に1度体重計に乗って体にどのくらいの変化が起きているかを時折確認する、というのでは効果はあまり期待できない。質量を告げるガラスのオラクルの上に1日に何度か立ってみても、実際には体重は後を追う指標であり、何が起きそうかではなく、何が起きたかを示すものだ。主要な指標の1つとなるのが血糖値だが、減量スタートアップのSignos(シグノス)は、自分の代謝の違いに興味がある人がリアルタイムの血糖値モニタリングに登録したり、健康状態を維持するためのアラートに登録することに期待を寄せている。そして同社の1300万ドル(約14億8000万円)のシリーズAラウンドをリードするという観点から、GVも同様の考えを持っていることが伺える。

基本的な科学は次の通りである。オートミールを1杯食べると血糖値が急上昇する。散歩やランニングをすると血糖値が下がり、体重増加が抑えられる。筆者の体の反応は、異なる日、異なる時間に、異なる種類の食べ物を接種することでさまざまな影響を受けているかもしれないし、自分の体に関する予測不能のあらゆる要素や、自分が何を食べ、その日どうしているかによっても違ってくるかもしれない。重要な点は、筆者の体を例に挙げても意味がないということだ。あなたの場合は違ったものになるだろう。Signosは、継続的に測定することで、人々が各自の健康に必要なデータを手に入れることができると考えている。少なくとも情報を得ることができれば、体に何を入れるべきか、体重を落とすためにどのくらいの頻度で体を動かすかを選択できる。

同社は米国時間11月10日、総額1700万ドル(約19億4000万円)の資金を調達したことを明らかにした。これには1月にCourtside Ventures(コートサイド・ベンチャーズ)、1984 Ventures(1984ベンチャーズ)、Tau Ventures(タウ・ベンチャーズ)がリードした400万ドル(約4億6000万円)のシード資金も含まれる。現在のラウンドはシリーズAで、GVがリードし1300万ドルを調達している。

同社の創業者は、減量の課題にはかなり密接な個人的関係があると筆者に語り、始まりの経緯を概説してくれた。

「私はかなり太りすぎの、肥満気味の子どもとして育ち、10代の前半まではそういう状態でした。それからスポーツを始め、減量し、実質的にまともなアスリートに成長しました。最終的には大学にホッケーをしに行き、NHLでのプレーの誘いを2回受けるまでに至りました」とSignosのCEOであるSharam Fouladgar-Mercer(シャラム・フーラドガー=マーサー)氏は語る。トップレベルのスポーツを経験した後、同氏の体は再び変化し、体重も大幅に増加した。「数年前にはまたかなり太ってしまい、私は何か良いガイダンスはないかと探し求めるようになりました。標準的なアドバイスとして、成人男性の1日のエネルギー摂取量は2500キロカロリーとされていますが、4000~5000キロカロリーを摂取しながら体重を増やしたことのない友人を持つ人も多いでしょう。また、1500キロカロリーの摂取量で体重を減らせない人もいます。そして私の家族が糖尿病と診断されたときに、持続血糖モニタリング(CGM:Continuous Glucose Monitoring)のことを知りました。家族からその仕組みの説明を受けながら、CGMを使って代謝が実際に体重減少にどのように影響するのかを解明したいという思いを抱いたのです」。

手短にいうと、フーラドガー=マーサー氏は会社を設立し、構築に取りかかった。

「すべての人の体に特有の代謝ニーズを可視化しています。以前はカロリー削減やマクロ栄養素の計算、炭水化物の除去にこだわっていましたが、現在では、効果のないダイエットを効果的なプランに変えるために、人々と協働できるようになっています」とフーラドガー=マーサー氏は説明する。「数日から数週間のうちにプランを考案し、最適な体重管理と全体的な健康のために時間をかけて洗練させていくことができます。優秀なアスリートや入念なダイエッターは多くの場合、膨大な量の試行錯誤を重ねて結果を出しますが、それと同じ成果を短期間で実現できます」。

Signosのプラットフォームは、何を食べるか、いつ食べるか、どのようなエクササイズが減量に役立つかといった基本的な質問に対する、パーソナライズされた回答を出すのに役立つ。このシステムの心臓部には、Dexcom(デクスコム)のG6持続血糖モニタリングデバイスが組み込まれている。これは一般的に糖尿病患者に使用されているものだ。Dexcomは戦略的投資家として、Signosの最新の投資ラウンドにも参加している。

ユーザーの血液中のグルコース濃度を数分ごとに測定するハードウェアコンポーネントに加えて、SignosはAIを強化したアプリを開発し、持続的な体重減少を促すためのリアルタイムデータとレコメンデーションを提供する。Signos体験の最初に、ユーザーは自分が食べたものをログに記録し、Signosのプラットフォームが特定の食べ物に対する体の反応を学習できるようにする。一度調整されると、Signosはそのデータを使用して、各ユーザーに最適な食品や、いつ食事を摂るべきか、いつ運動をすれば血糖値が最適な減量範囲内に戻るかなど、個別の栄養アドバイスを提示する。

「このデバイスを10日間、フルタイムで装着します。シャワーを浴びたり、ランニングをしたり、睡眠をとったりしながら、測定を続けます。測定が終わるとビープ音が鳴り、取り外して新しいものと交換するときが来たことを知らせます」とフーラドガー=マーサー氏は説明し、デバイスの性質上、環境に優しい技術という面では、ここしばらく私たちが目にした中でベストな水準には達していないことを認めた。リサイクルも再利用もできない。「これは医療機器であり、廃棄する必要があります」。

持続血糖測定デバイスを装着するには、地元の薬局に立ち寄って、小さな電子吸血鬼を内臓に解き放つだけでは不十分だ。医師がデバイスを処方する必要がある。

「米国では、CGMを取得するために医師の処方箋が必要であり、そのオーダーに対応するために薬局も必要です。私たちはすべてのオペレーションを水面下で行っています。サイトを訪問してくだされば、私たちがプロセス全体をご案内します」とフーラドガー=マーサー氏は続ける。「それを終えると、適切な州で認可された薬局を経由して、あなたの元にすべてが入った箱が届きます。さらに、ダウンロード可能な当社のソフトウェアも必要です」。

このシステムの魔法は、ほぼリアルタイムのモニタリングとアラートシステムにある。夜寝る前にスマートフォンをチェックし、午後1時35分に血糖値が急上昇したことを知っても役に立たない。行動を起こす適切な時期は、血糖値が上昇しているときだと同社は主張する。

「長期にわたってこのようなフィードバックループを即時かつ継続的に行うことで、当社のメンバーが達成しようと試みる健康上の成果を実現することができるのです」とフーラドガー=マーサー氏は強調した。

同社によると、10万人以上の潜在顧客がこのプロダクトの利用開始を待っているという。今回の資金調達により、2022年のどこかの時点で、このプロダクトが全米で利用可能になる見込みである。

画像クレジット:画像クレジット:Signos

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

米アマゾンの新型スマートバンド「Halo View」予約注文を開始、限定期間約5700円に

9月のハードウェアイベントでフィットネスバンド「Halo」の新バージョンを発表したAmazon(アマゾン)は米国時間11月19日、予約注文の受付を開始した。Amazon初のディスプレイ付きウェアラブル「Halo View」は、予約期間中は50ドル(約5700円)。通常価格は80ドル(約9100円)だ。

12月中に出荷される予定のこのデバイスには、Haloメンバーシップ1年分が付いてくる。Haloプランにはワークアウトと栄養管理ガイドが含まれており、通常は月額4ドル(約450円)で利用することができる。

Halo ViewはFitbitのChargeバンドと似たデザインで、AMOLEDカラーディスプレイには、ライブワークアウト、アクティビティ履歴、血中酸素濃度、睡眠スコアなどの詳細が表示される(これらの機能の一部は、Haloサブスクリプション限定)。テキスト通知も表示可能だ。

「水泳可能」防水レベルのデバイスには、皮膚温度センサー、心拍数モニター、加速度計が搭載されている。Amazonは、1回の充電でバッテリー持続時間は最大7日間、フル充電に2時間かかるとしている。

Halo Viewにマイクは内蔵されていないが、Alexaとの連携機能がある。Haloアプリの設定で音声アシスタントに接続すれば、Alexa対応デバイスにヘルスサマリーや睡眠の質などを教えてもらうことができる。

Amazonは、Haloを設計するにあたり、プライバシーを重要視したとのこと。「データを安全に保ち、ユーザーがコントロールできるよう、何重にも保護されています」と同社は主張している。また、ユーザーに直接リンクされている健康データを転売しないことを約束している。自分の健康データをダウンロードしたり、Haloアプリから削除したりすることも、いつでも可能だという。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Kris Holt(クリス・ホルト)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Amazon

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(文:Kris Holt、翻訳:Aya Nakazato)

RespiraのウェアラブルSylveeは肺の健康状態をモニター、COPDや肺機能低下を検知

この数年、身体のあらゆる側面を測定するウェアラブル製品が登場しているが、肺活量の測定はそれら他の側面よりも難解だ。Respira Labs(レスピラ・ラボ)が開発した「Sylvee」は、肺機能を継続的に測定するまったく新しいウェアラブルデバイスだ。COPD(慢性閉塞性肺疾患)や喘息患者をはじめ、一時的に肺機能が低下している人に最適だ。特に、肺機能に影響を与えるあのパンデミックが思い浮かびあがるだろう。

Sylveeは、胸郭の下部に装着する製品で、息を吹きかけなくても簡単に継続的に肺機能を評価できることを約束している。このパッチにはスピーカーとマイクが内蔵されており、音響的な共鳴の変化を測定する。同社によるとこれは、肺機能検査の基本である肺気量の変化をよく表しているとのことだ。

使われている技術は非常に巧妙だ。Sylveeは、スピーカーからノイズを発生させ、その発生した音をマイクで測定する。空洞があると音の質が変わるという理論で、ドラムセットのドラムヘッドを叩いた後に、綿や羊毛、液体を詰めて同じように叩いたときと同じだ。私は医者ではないが、肺の中には一般的に空気腔があるものと思われる。このウェアラブルは、収集したデータをもとに、肺の容積、容量、流量、そして空気の滞留を測定する。

「確立された科学では、低周波音を使って空気のとらえ込みを90%以上の精度で測定できることがわかっています。慢性閉塞性肺疾患患者と健常者では、音響共鳴スペクトルに明らかな違いがあります。慢性閉塞性肺疾患、新型コロナウイルス(COVID-19)、喘息の患者数は1億人を超え、高齢化も進んでいるため、肺機能を遠隔で正確にモニターし、問題を早期に発見して深刻な事態を回避することは、命を救うことにつながります。私たちの目標は、異常を早期に発見し、自宅での早期治療を可能にし、患者さんが自らの健康を管理できるようにすることです」。とRespira Labの創設者兼CEOであるMaria Artunduaga(マリア・アルトゥンドゥアガ)博士は説明してくれている。

Sylveeは、胸郭に装着して使用する。肺の健康状態を判断するために、音を出し、肺の共鳴をとらえる(画像クレジット:Respira Labs)

製品名のSylveeは、慢性閉塞性肺疾患を患い、発見できずに症状が悪化して亡くなったアルトゥンドゥアガ博士の祖母にちなんで名づけられている。

「このデバイスは、呼吸器系の患者が避けなければならない、急性の悪化の早期診断と管理を容易にしてくれます。私たちは、医師や患者に重要な情報を提供することで、より早い段階で治療法を切り替え、入院を防ぐことができます。これは私の祖母に起こったことです。彼女は慢性閉塞性肺疾患を患っていましたが、突然症状が悪化し、敢えなく亡くなってしまいました。私は、恐ろしくも、一般的なこの結果をきっかけに、医師としてのキャリアを捨て、このSylveeの開発に専念しました」とアルトゥンドゥアガ博士は述べている。

Respira Labsは、米国内外で500人以上の患者を対象とした大規模な試験を実施することで、空気のとらえ込み測定精度を90%にすることを目標としている。また、2022年後半には有名なジャーナルに論文を発表する予定だ。このデバイスは現在試作中で、今後18カ月以内にFDAの認可が下りる予定だ。

画像クレジット:Respira Labs

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Akihito Mizukoshi)

東北大学が擬似固体リチウムイオン電池の光造形3Dプリント製造技術を開発、室温・短時間でオンデマンド製造

東北大学が擬似固体リチウムイオン電池の光造形3Dプリント製造技術を開発、様々な基板上に室温・短時間でオンデマンド製造

東北大学は11月11日、インク化した正極、電解質、負極を光造形方式3Dプリンターで成型して固体リチウムイオン電池を製造する方法を開発した。燃えにくい擬似固体電解質膜を室温で、数分間で作れるため、車載用から体内埋め込み用まで、応用の幅が大きく広がる。

東北大学多元物質科学研究所の小林弘明助教と本間格教授らの研究グループが開発した方法は、擬似固体電解質材料となるリチウムイオン伝導性イオン液体と酸化物ナノ粒子の比率を調整し、ゲル状にしたものを紫外線効果樹脂に混ぜ、光造形3Dプリントで成型するというもの。これにより、室温でごく短時間で製造可能な、難燃性の電解質膜が生成できる。正極はコバルト酸リチウム、負極はチタン酸リチウムをそれぞれインク化してプリントする。

室温でプリントできることから、ポリマーなどの熱に弱い基板上にも直接プリントできるため、ウェアラブルデバイスへの応用も可能となる。また3Dプリントで製造できるため、医療用インプラント機器、生体適合性マイクロ電池のような小さなものから、車載用電池や設置型の電源などの大型のものまでオンデマンドで対応できる。

今後は、素材のインク化技術を活かして、マグネシウム蓄電池などの次世代、次々世代の二次電池への応用も期待されるとのことだ。

北海道大学、太陽電池とプラズモンを結合させ光学的変化を電気的に検出するバイオセンサーを開発

糖尿病患者・予備軍向けに低侵襲・低コストで簡便に利用可能なIoT血糖管理サービスを目指すProvigateが9.1億円調達
北海道大学、太陽電池とプラズモンを結合させ光学的変化を電気的に検出するバイオセンサーを開発

太陽電池-プラズモン結合型バイオセンサー略図。ある条件で表面プラズモンが誘起されるとシリコン膜内を光が往復しないために電流値は小さい。抗体に抗原の新型コロナウイルスのタンパク質が結合すると、屈折率が変化し表面プラズモンが誘起されなくなり、シリコン膜内を光が往復して強い光電流が流れる

北海道大学は11月11日、太陽電池とプラズモンを結合させて光学的変化を電気的に検出する新原理を開発し、バイオセンサーの大幅なコンパクト化と高感度化を同時に実現したと発表した。抗原検査、抗体検査の両方に対応でき、ウェアラブル・バイオセンサーへの応用が期待されるという。

北海道大学電子科学研究所の三澤弘明特任教授と、同大学大学院理学研究院の上野貢生教授らによる研究グループは、石油科学や医薬品などの研究開発を行うイムラ・ジャパンと共同で、シリコン薄膜太陽電池内に閉じ込めた光とプラズモンとの相互作用を利用して電子信号を変化させる原理を発見し、革新的なバイオセンサーを開発した。

プラズモンとは、金属中の自由電子が集団的に振動することで生じる電子の波のこと。金の薄膜に抗体を配置しておくと、光が当たったとき、抗体だけのときと抗体に抗原が結合したときとでは、光の反射率が変化する。この原理を利用した表面プラズモン共鳴(SPR)センサーは、アレルギーやインフルエンザの検査などに使われているが、装置が大型になるという課題点があった。研究グループは、プラズモンを太陽電池と結合させ、金の被膜に光が当たったときに生じる屈折率の違いを発電量の変化として捉えることに成功。そのため、コンパクトなバイオセンサーへの道が拓かれた。

このセンサーでは、SPRの励起(エネルギーを高めること)にプリズムを使っているが、「センサー表面に規則的に配列したナノグレーティング構造を配置」することでも励起が可能であることがわかり、将来的にはLEDによるSPR励起と集積可能な電気検出を組み合わせたウェアラブルなバイオセンサーも可能になると期待されている。

手首に着けて音楽を奏でるウェアラブル「テルミン」のMicticが約2.8億円調達

中国Mooer Audioがエフェクト・ドラムマシン・ルーパー内蔵のエレキギターを開発中

スイスを拠点とするMicticが、何もないところをコンサートホールにする2個1組のウェアラブルデバイスを開発した。本体のないテルミンで、スマートなループステーションと接続されていると想像すれば、だいたい合っている。デモと説明文からすると、CESで長い1日を過ごした後にバーで感想をしゃべって、その後はも話を聞くこともなくなってしまうスタートアップのようだ。しかしMicticはギミックの域を超え、PTK Capitalが主導したシードラウンドで250万ドル(約2億8000万円)を調達した。さらに音楽界の大スターであるMoby(モービー)氏も資本政策に加わっている。

Micticのデバイスは2個1組のリストバンドで、動きを計測するセンサーが付属している。これをスマートフォンに接続すると、アプリの力を借りて音楽のスキルがまったくない初心者も演奏を存分に楽しむことができる。発売時には、さまざまなスタイルやジャンルにわたる15種類のサウンドやサウンドスケープがアプリに内蔵されている。

Micticの創業にはちょっと珍しい話がある。それは、バドミントンから始まった。創業者たちはテニスをしに行ったのだが雨でできなくなり、代わりに室内でできるバドミントンになったのだ。彼らは盛り上がらないゲームについて聴覚の楽しみという観点から話をした。そしてバドミントンのシャトルを打つ音の1つ1つを迫力のある爆発音などの効果音に変えるプロダクトをハックした。そこから彼らはサウンドスケープをさらに追加し、インターフェイスを変え、ついにフル装備の楽器を作り上げた。

あらかじめ用意されているサウンドスケープだけでなく、きちんとした楽器としてのプロダクトの可能性に創業者たちは心をかきたてられている。

同社CTOのMatthias Frey(マティアス・フライ)氏は次のように述べている。「Abletonと接続し、MicticをMIDIコントローラと同じように使うことができます。我々は、ユーザーにこのプロダクトの新しい使い方を見つけて欲しいと思っています。プラットフォームビジネスをまもなく拡大する計画もあります。プロダクトの販売を開始した後、次のステップの1つとしてユーザーがオリジナルのサウンドスケープを簡単に作れるようにします」。

資金を調達して同社はこれから成長し、市場でプロダクトをテストする。同社のメンバーは現在10人で、さらに増やしたいと考えている。

MicticのCEOであるMershad Javan(マーシャド・ジャワン)氏は「我々はしばらくブートストラップでやっていかなくてはならなかったのですが、その後、今回の資金調達ラウンドを実施しました。次のステップはプロダクトを少しでも早く市場に出すことです。我々はプロダクトに自信があり、ユーザーの使い方を知るのを楽しみにしています」と述べている。同氏は250万ドル(約2億8000万円)では夢をすべて叶えるには足りないことを認めた。「十分な金額ではありませんが、我々にとってはプロダクトをお客様に届け、できればそこから生産を増やしていくことが課題です。重要なデータとビジネスのインサイトを実際に得ることができれば、さらに成長し、おそらく次の資金調達ラウンドもすぐに実施できるでしょう」(同氏)

Micticはプレス用の資料でモービー氏が同社の資金政策に加わっていることを大きく取り上げ、コラボレーションやアドバイザーとしての可能性に期待している。ただしモービー氏は今回のラウンドでは大きな投資をしたわけではなく、250万ドル(約2億8000万円)の1割未満であることも同社は認めている。モービー氏はMicticに直接投資しているだけでなく、Micticのラウンドを主導したベンチャーファーム、PTK Capitalのリミテッド・パートナー(つまり投資家)でもある。

Micticはすでに予約注文を開始しており、奇妙で楽しい楽器が119ドル(約1万3000円)で手に入る。12月ごろには出荷を開始する見込みだ。

画像クレジット:Mictic

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Kaori Koyama)

睡眠中の脳卒中を早期に警告するZeitのウェアラブル、実用化に向けシード約2.3億円調達

睡眠中の脳卒中を早期に警告するシステムを開発しているZeit Medicalは、Y Combinator(Yコンビネータ )のSummer 2021コホートを卒業した直後に、シードラウンドで200万ドル(約2億2800万円)を調達した。同社の研究によると、脳モニタリング用ヘッドバンドは、脳卒中の可能性を数時間前に警告することで命を救うことができると考えられており、今回の資金調達は、実用化に向けた推進力となる。

同社のデバイスは、軽量の脳波計(EEG)が内蔵されたソフトなヘッドバンドだ。スマートフォンのアプリと連動して、脳の活動を分析し、人間の専門家によって訓練された機械学習モデルを使って、差し迫った脳卒中の兆候を監視することができる。

共同創業者でCEO(そして現在はFerolynフェロー)のOrestis Vardoulis(オレスティス・バルドゥリス)氏は、使用状況の調査で、CPAPマシンを使用している人も含め、90%の夜にヘッドバンドを装着して、装着感や快適性に関する不満はほとんどなかったと述べている。脳卒中の影響を軽減するという目標を達成するためには、継続して使用することが重要であり、不快なヘッドバンドやかさばるヘッドバンドは確実に悪影響を及ぼす。

「当社は、製品を最終的に完成させ、今後の研究でテストできるようにすることに加えて、入院患者へのAIのさまざまな応用を試してきました。集中治療室の患者の多くは、綿密な虚血モニタリングを必要とします」とバルドゥリス氏は語る。本来であれば専門家や専用のシステムでなければ診断できないような様々な状態を、Zeitが作成したモデルで警告できる可能性がある。「くも膜下出血の患者を脳波でモニターしているいくつかの大規模な国立学術センターに、当社の技術が許容可能なアプリケーションであるかどうかを確認するためにアプローチしました」とも。

バルドゥリス氏によると、脳卒中患者のコミュニティはこの装置に非常に興味を持っており、我々の以前の記事でも、コメント欄にこの装置が自分にどれほど役に立つかを指摘する人がいたという。ZeitはFDA(米国食品医薬品局)の認可に向けて進んでおり、「Breakthrough designation(ブレイクスルー指定)」という一種のファストトラックを取得しているが、広く普及するまでにはまだ1〜2年かかるかもしれない。

これは、医療機器としては非常に短いリードタイムであり、投資家たちは明らかにこの製品がインパクトとROIの両方をもたらす機会であると考えた。

200万ドル(約2億2800万円)のラウンドは、SeedtoBとDigilifeが共同で主導し、Y Combinator、Gaingels、Northsouth Ventures、Tamar Capital、Axial、Citta Capital、そしてエンジェルのGreg Badros(グレッグ・バドロス)氏、Theodore Rekatsinas(テオドール・レカツィナス)氏をはじめとする医療関係者数名が参加した。

この資金はご想像のとおり、事業の継続と拡大、チームの構築、FDAの検討と承認に必要な研究のために使用される予定だ。運がよければZeitのデバイスは、早ければ2023年には、脳卒中のリスクを抱える人々に標準的に使われることになるだろう。

画像クレジット:Zeit

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Aya Nakazato)

第3世代「Oura Ring」は健康状態トラッキングや生理予測など新機能満載のフィットネスリング、有料コンテンツ配信も

2017年初頭、Motiv(モチーブ)はウェアラブルなフィットネストラッカーの装着箇所が手首だけでないことを実証し、テクノロジー業界メディアの想像力を掻き立てた。しかし、同社は最終的に運動トラッキングだけでは飽き足らず、すぐにその技術を生体認証ツールなどへ拡大することに目を向けるようになった。その一方で、Oura(オーラ)は、健康という分野にまだまだ可能性を見出していた。


実際、新型コロナウイルス流行時には、組織が既成概念にとらわれないソリューションを探し求めていたため、Ouraは2020年に大きな成功を収めた。このスタートアップ企業は、そのさまざまな健康指標が、新型コロナウイルスやその他の健康状態の早期発見にいかに役立つかを証明し、NBA(全米バスケットボール協会)、WNBA(全米女子バスケットボール協会)、World Surf League(世界プロサーフィン連盟)、Red Bull Racing(レッドブル・レーシング)、Seattle Mariners(シアトル・マリナーズ)、UFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)、NASCAR(ナスカー)など、米国の大手スポーツ団体が喜んで採用した。

画像クレジット:Oura

これまでにOuraは「数十万個」のリングを販売してきたと記している。家電製品の世界では驚異的な数字というわけではないが、ハードウェアのスタートアップとしては、特にスマートウォッチやフィットネスバンドが氾濫している市場では、目覚ましい成長と言えるだろう。

Ouraの製品は、数多くのセンサーを1個のパッケージに詰め込むという特長で成功を収めており、これがワークアウトや睡眠などに関する質の高い洞察を提供する。同社の新しい第3世代のリングは、Ouraが自分たちの本業に力を入れていることを再認識させる製品に仕上がっている。もっとも、ほとんどのウェアラブルメーカーが健康とウェルネスに力を入れている今、もちろんそれは当然のことだろう。

第3世代Oura Ring(オーラ・リング)の最大の特徴は、24時間365日の健康状態トラッキング機能で、心拍数を常時モニタリングできることだ。体温モニターや睡眠トラッキングも改善された他、生理予測などの機能も備わる。これについては、同社は次のように述べている。

Ouraは、次の生理を30日前に正確に予測し、生理開始の6日前に警告するため、あなたは常に準備を整えておくことができます。Ouraはカレンダー方式だけに頼るのではなく、生理周期を通じて自然に変化する体温から、より総合的なアプローチで生理を予測します。多くのトラッキング法は、あなたの生理周期が毎月同じであることを前提としていますが、Ouraの生理予測は、あなたの生理周期の変化に合わせて予測を調整します。

今回のニュースでは、Ouraが、Apple(アップル)、Fitbit(フィットビット)、Samsung(サムスン)などのメーカーと同様に、ワークアウトのコンテンツにより深く踏み込んでいることもわかった。現在は「近日公開」となっているこのライブラリにはワークアウト、瞑想、睡眠、呼吸法などをテーマにした50以上の映像 / 音声セッションが用意されている。

画像クレジット:Oura

「当社ではこのライブラリを拡大し続ける予定です。ライブラリには、睡眠とカフェインなどの影響を理解するための教育的なコンテンツと、ガイド付きコンテンツの両方があります」と、同社CEOのHarpreet Rai(ハープリート・ライ)氏はTechCrunchに語った。「最初のうちは、瞑想や睡眠のための音が多いですが、我々はこのライブラリを大幅に増やしているところです。今後もどんどん増えていくでしょう。これはあなたの健康のためのワンストップショップになります」。

これらの動画は、より深い健康に関する洞察とともに、新たに開始される月額6ドル(約680円)のOura Membership(オーラ・メンバーシップ)サービスを通じて提供される。

「Peloton(ペロトン)、Tonal(トーナル)、Tempo(テンポ)、Hydro(ハイドロ)などのコネクテッドフィットネスは、ハードウェアとサブスクリプションの組み合わせになっています」と、ライ氏はいう。「ウェアラブルもそのような形になりつつあります。将来的には完全なサブスクリプションモデルに移行できると思うかと訊かれたら、収益を得る方法は色々とあるでしょうが、私はそれも可能だと思います。その方法を除外してはいません。しかし、より多くの消費者は、総所有コストの点からこの製品に惹かれていることも確かです」。

このOura Ringは、今後も新機能の追加が予定されており、2022年には血中酸素濃度を示すSpO2値の測定機能が搭載される予定だ。価格は300ドル(約3万4000円)で、現在予約注文を受け付け中。11月中旬に出荷開始となる。

画像クレジット:Oura

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ナノテクを用いた針不要の血糖値モニターのためにGraphWearが約23億円調達

血糖値のモニタリングに対し、針不要のアプローチを追求するGraphWearは、シリーズBラウンドで2050万ドル(約23億円)を調達した。このシリーズBラウンドは、GraphWearのアプローチ、つまり「皮膚をまったく傷付けずにブドウ糖のような体内の重要な指標を監視する手法」に対する投資家の信任投票のようなものだといえる。

GraphWear Technologiesは2015年、Rajatesh Gudibande(ラジャテシュ・グディバンデ)氏とSaurabh Radhakrishnan(サウラブ・ラダクリシュナン)氏によって創設された。2人はともにペンシルベニア大学でナノテクノロジーの修士号を取得している。具体的にいうと、GraphWearはグラフェン(この材料については後で詳しく説明)で作られた皮膚表面レベルのウェアラブルを開発している。このセンサーは小さく、Apple Watchと同じサイズだが、中核となる重要なテクノロジーは実は裏側部分にある。薄いグラフェン片をウォッチの裏や、下腹部に貼るステッカーの上に設置して使用する。

グディバンデ氏によると、このシリーズBは、同社が以前行ったこのウェアラブルの検証研究を踏まえ、極めて重要な試験を完了し、FDAへの承認申請を提出することに焦点が絞られている。このラウンドはMayfieldが主導し、MissionBio Capital、Builders VC、VSC Venturesが参加して行われた。

「追求すべき重要な課題は、皮膚に穴を開け血液を取るための道具を使わず、血液の中でなにが起きているかを本当に知ることができるのか、ということでした。GraphWear は進歩を遂げつつあり、何百万という人にお届けできる製品を実際に作り出す最初の企業の1つになる可能性があると考えています」とMayfieldの工学生物学投資部門の共同リーダーであるUrsheet Parikh(アーシート・パリク)氏は述べた。

持続血糖モニタリングは、糖尿病関係者の中で注目を集めている。2017年にFDAに承認を受けたFreeStyle Libreなど、いくつかの持続血糖値モニターが近年承認されている。このデバイスは現在でも血糖値を計測するのにアームパッチに取り付けられた皮下フィラメントを利用している。

これらのデバイスは1型糖尿病の糖尿病患者(体がインスリンをほとんどまたはまったく生成しない人々)にとって明確なメリットがある。そうした患者は米国だけでも160万人  いる。米国糖尿病学会は、定期的にインシュリンを注射しているほとんどの患者に対し、持続血糖モニターを含め、血糖値を自己監視できるテクノロジーの使用を「促すべきである」と同学会発行の2020年ガイドラインの中で、述べている。

2型糖尿病の患者(米国では3400万人)、または定期的にインシュリンを注射していない患者の場合は、議論が行われている。一部の人々は、これらの患者にとって、、モニターを用いて定期的に血糖値をモニタリングすることは(これこそ持続血糖モニターが行うことであるが)、それほど意味がないと主張している。例えば、2017年に行われたJAMA Internal Medicineが行った調査によると、患者が血糖値を定期的に自己監視して1年経過しても、患者の A1cレベル(糖尿病の重要なバイオマーカー)は改善しないことが判明した。しかしこの調査は非侵襲的な血糖値モニターではなく、指から血を採血するフィンガースティックテストを定期的に使用していた患者を対象にした調査であった。

しかし、米国糖尿病学会は、インスリン治療と組み合わせて適切に持続血糖モニターを使用することができれば、2型の人々にとってもこのツールは有用になり得ると 述べている

GraphWearの持続血糖モニターのセンサーには、ナノテクノロジーに基づくアプローチが取られている。このデバイスは、小さな引き込み式フィラメントやフィンガースティックを必要とする他の持続血糖モニターと異なり、皮膚をまったく傷付けずに済むとグディバンデ氏はいう。

「グラフェンには分子を引き上げる電場があります。約200の分子が対象になります。次にグラフェンはそれを『吟味』し、電気信号に変換し、Bluetoothを介してユーザーの携帯電話に転送します。携帯電話は、血糖値を持続的にグラフ化して表示することができます」。とグディバンデ氏は説明する。

これらのセンサーは血液中のブドウ糖ではなく、実際には間質液中にあるブドウ糖を計測している。しかし、米国糖尿病学会の2020年のガイドラインによると、間質液中の血糖値は「血漿ブドウ糖とよく相関している」という証拠があるため、この方法で測定された値は糖尿病の患者にとって臨床的に適切なものである。グディバンデ氏は「私たちの経験的臨床データでも同様のことが示されています」と付け加えた。

GraphWearはすでに1型と2型の両方について、40人の患者を対象にこのウェアラブルセンサーの実行可能性調査を実施した。同社は、静脈血から収集した血糖値とこのデバイスがモニタリングした値を比較する検査をしたのだが、結果はまだ公表されていない。しかしグディバンデ氏によると、GraphWearの精度は従来のセンサーの精度と「同等」だったとのことである。

ブドウ糖のモニタリングはさておき、GraphWearについて語る際に、他に注目すべき点は、センサーの素材であるグラフェンだ。

グラフェンは単一原子からなる薄いカーボンシートであり、大変よく電気を通し、強く、軽く、柔軟性がある。グラフェンが2004年に発見されて以来、この素材は大変な注目を集め、まだ完全にそうなってはいないが、次なるシリコンになるだろうと喧伝された。

英国、中国、EUはグラフェンの生産に大々的な投資を行っており、グラフェンを使った製品が少しずつ市場に登場するようになっている(2019年のレビューペーパーで強調されていたいくつかの用途をあげれば、自転車、靴、センサー、テニスラケットがある)

グディバンデ氏によると、GraphWearは、センサーの中で使用されているグラフェンを「新品の状態」に保つことができるため、グラフェンのブドウ糖分子に対する感度を非常に高い状態に保てるという。同社は大規模にその素材を製造することもでき、またナノテクノロジーを用い、ブドウ糖のセンサー以上に有益な新しい用途を開発中である、とパリク氏は述べた。具体的には、同社は分極化された液体をトランジスタとして用いる方法で特許を取得している。

「ブドウ糖分子が皮膚上にあれば、それは一時的なトランジスタのように立ち表れて作用します。これは新しいカテゴリーのトランジスタで、本格的なイノベーションといえます」とパリク氏。

しかし、血糖値モニタリングは GraphWearにとって賢い最初の一歩と言える。というのも承認への道筋がはっきりしているからである。GraphWearの重要な試験が他の持続血糖モニターと同類であることを示せば、同社はFDA 510(k) 承認を求める可ことができる。ただしグディバンデ氏が認識しているように、予測できない落とし穴がいくつかあるかもしれない。例えばGraphWearの非侵襲的なアプローチのために、このデバイ氏が独自のカテゴリーに分類されてしまうことも考えられる。

「ですから、私たちが510(k)になるのかどうかわからない、というリスクはあります。しかし、いずれにしてもそのプロセスは6カ月から14カ月ほどです。当社のゴールは試験を通過して規制機関に承認をもらえるよう申請することです」とグディバンデ氏はいう。

GraphWearがグラフェンプラットフォームを用いて他のバイオ分子を計測できる製品を実現できれば、そのプラットフォームを利用して他の分子を検出したり、あるいは体内でなにが起こっているかを持続的にモニターすることができる。しかしこのシリーズBラウンドは「臨床的に評価された、グラフェンを用いたセンサー」という最初のステップを実現することに焦点をあてている。

画像クレジット:GraphWear

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

ウェアラブルな血糖値トラッカーを掲げるフィットネスプラットフォームUltrahumanが19億円調達

フィットネスプラットフォームのUltrahumanが、アーリーステージ企業を対象としたファンドであるAlpha Wave Incubation、Steadview Capital、Nexus Venture Partners、Blume Venturesの他、Utsav Somani(ウトサヴ・ソマニ)氏のiSeedファンドからの出資を受け、1750万ドル(約19億円)のシリーズB資金調達を正式に発表した。

ベンガルールに本社を置く同スタートアップのシリーズBには、Tiger GlobalのScott Schleifer(スコット・シュライファー)氏、ZomatoのCEOのDeepinder Goyal(ディピンダー・ゴヤル)氏、CredのCEOであるKunal Shah(クナル・シャー)氏、unacademyのCEOおよび共同創業者のGaurav Munjal(ガウラヴ・ムンジャル)氏とRomain Saini(ロマン・サイニ)氏など、数多くの創業者やエンジェル投資家も参加している。今回の資金調達により、同社のこれまでの累計調達額は2500万ドル(約28億ドル)となっている。

このサブスクリプションプラットフォームが登場したのは2019年のこと。以来、同社は自宅向けのワークアウトビデオ、マインドフルネスのコンテンツ、睡眠セッション、心拍数トラッキング(Apple Watchなどのサードパーティ製ウェアラブルとの統合)など、比較的馴染みのあるプログラムを提供してきた。しかし、同社最新のフィットネスツールはかなり斬新なものになっており、ユーザーのグルコースレベル(つまり血糖値)をトラッキングすることで代謝活動を監視できるよう設計されているのだ。

糖尿病を患っている人々にとって血糖値の管理は欠かせない。しかし、米国だけでも何百万人もの人が糖尿病予備軍、つまり血糖値が正常値よりも高く、本人が分かっていないだけで実際は糖尿病になる危険性が高いグループに属している。

さらに、Ultrahumanは世界中で10億人以上もの人々がメタボリックヘルス障害に苦しんでいると主張しており、同社が目をつけている潜在的市場の大きさを物語っている。

血糖値が高い状態が続くとさまざまな健康上の問題が発生するため、食事や運動などの生活習慣を改善させて血糖値を管理することが望ましいとされている。生活習慣の改善は血糖値の上昇を抑え、健康への悪影響を軽減したり、あるいは糖尿病予備軍の人が本格的な糖尿病を発症するリスクを回避したりすることさえできるという。

しかし、人によって、それぞれの食べ物に対する血糖値の反応は大きく異なるため、どのような食事療法や運動療法が自分に合っているのかを知ることは難しく、試行錯誤を繰り返すことになりかねない。

これらの反応は個人の代謝の健康状態に左右されるものであり、さらにマイクロバイオームの多様性、ストレスレベル、時間帯、食品の成分や品質などさまざまな要因に影響を受ける。(関連記事: パーソナライズされた栄養改善アドバイスを提供するスタートアップZoeは、同様に血糖値に注目しているものの、彼らはビッグデータとAIを使ってマイクロバイオームを解読しようとする幅広い取り組みのうちの一要素として扱っている)。

代謝の健康状態には個人差があるため、継続的なグルコースモニタリングが広く普及する可能性は極めて高いと言えるだろう。そのプロセスと価格帯が広く受け入れられるようなものならば、なおさらである。

Ultrahumanは現在、それを達成すべく、フィットネス愛好家に向けたデバイスの製品化に取り組んでいる。6月には最初のデバイスのベータ版を発表しているが、ターゲットとしている価格帯はかなりプレミアムなものとなっている。

創業者兼CEOのMohit Kumar(モヒット・クマール)氏によると「Cyborg」と名付けられた同製品(ウェアラブルとサブスクリプションサービス)は、皮下の間質液からグルコースを抽出する皮膚パッチを備えており、そのデータが分析と視覚化のための付属アプリに供給される仕組みとなっている。

画像クレジット:Ultrahuman

食事中、運動中、睡眠中など、着用者の日常生活における血糖値をこのパッチがトラッキング。バイオマーカーがアプリのトリガーとなって、ユーザーに「ライフスタイルの最適化」を促すシステムだ(Ultrahumanのウェブサイトによると、高血糖イベントを警告し、レベルを下げるための運動を提案するなど)。

継続的な血糖値モニタリングを簡単に行う、とうたうこの製品が実際に効果を発揮すれば、ジャンクフード好きの人は大好きな菓子を食べたらすぐに送られてくる、自分の体の反応に対するフィードバックにショックを受けることになるだろう。

ウェアラブル技術の具体的な内容について尋ねると「スポーツテクノロジーの分野で過去6〜7年にわたって使用されてきた医療グレードのセンサーを使用しており、精度もまずまずです」とクマール氏は回答。(ここでいう「ウェア」とは、センシングハードウェアを素肌に直接装着することを意味する)

Ultrahumanのプラットフォームには一般のフィットネスコンテンツも数多く含まれているが、同社は現在「メタボリックフィットネス・プラットフォーム」と称して開発中の同製品を前面に押し出している。ただし、このサービスは現在のところクローズドベータ版となっている。

現在は技術に磨きをかけながら、登録待ちのリストを受け付けている最中である。

「数千人」もの人々がこの血糖値トラッカーサービスに登録し、その利用を待っているとUltrahumanは伝えている。また、登録者数は前週比で60%増加しており、製品の一般普及は「2022年初頭」を予定しているとのことだ。

シリーズBの資金の一部は、製品の本格的な発売に向けてグルコースバイオマーカーの品質を向上させるために使用される予定だ。

強化面においては、ウェアラブルの改良を進める中で同社は「より正確な方法でグルコースを捉え、14日間以上使用できるような他のフォームファクターや他のタイプのセンサー」を検討しているとクマール氏はTechCrunchに語っている。(現在の皮膚装着型センサーは2週間しか使用できず、その後は別のパッチに交換する必要がある)

「HRV(心拍変動)、スリープゾーン、呼吸数などのバイオマーカーを追加して、代謝の健康状態が回復や睡眠に与える影響や、またその逆を理解してもらえるようにしたいと考えています」と同氏。

グルコースはフィットネスやウェルネスに関するさまざまな問題を数値化するためのプロキシとして使用でき、個人の健康シグナルを測るのに非常に役立つ(可能性のある)指標となるため「主要なバイオマーカー」としてグルコースのトラッキングに焦点を当てることにしたと、Ultrahumanは伝えている。

同スタートアップの技術が血糖値の変化を十分な感度で検知し、ユーザーごとに意味のある提案ができてこその製品である。

「グルコースは運動、睡眠、ストレス、食事などの影響を直に受けるリアルタイムのバイオマーカーで、とても興味深いものです。私たちは、栄養、睡眠、ストレス、運動など、さまざまな要素から人々のライフスタイルを変える手助けをすることができます。また体の反応に合わせ、非常にパーソナライズされたガイダンスを提供することが可能です」とクマール氏は話している。

この製品を使い、どのようにしてユーザーの食事や運動に有益な調整を行うことができるかという例をクマール氏は説明してくれた。例えば、同製品は今食べた食事が「健康的な代謝反応」をもたらすものなのか、それとも「より最適化が必要」なものなのか(血糖値の急降下を避けるため)を特定でき、また体内のグルコース消費率に応じて、ユーザーのライフスタイルに合わせた「最適な食事のタイミング」を特定することもできるという。

また、アスリートやフィットネス愛好家に向けて、センサーを装着したユーザーが最適なパフォーマンスを発揮するため、運動前にどのような食事を補給すればよいかなどのアドバイスも提案してくれるという。

また、1日の最後の食事を最適化することで、睡眠効率を高めることも可能だ。

UltrahumanのCyborgが(我慢できる程度に)装着可能な皮膚パッチと巧妙なアルゴリズム分析でこれらすべてを行うことができるとすれば、セルフトレーニングトレンドの次を行くものになるだろう。

シンプルな貼るタイプのセンサー&アプリは、体内の生体信号を受動的に増幅し、個々のバイオマーカーを実用的なパーソナライズされた健康情報にリアルタイムで変換するもので、これは予防医療の分野における大きな始まりの一歩になるかもしれない。

ただし、繰り返し書くがUltrahumanの初期価格設定を見ると、ここでこの製品を購入できる人は限られてくるだろう。

クマール氏によると、クローズドベータ版のアーリーアダプターは、サブスクリプションサービスに毎月80ドルを支払うことになっている。そして少なくとも今のところ、同社は今後より多くの機能を追加しようと目論んでいる。「製品の価格設定はほぼ同じままですが、さらにサービスやプレミアム機能を追加する可能性があります」と同氏は述べている。

しかし健康的な食事をするためのコストや、運動をして自分の体をケアできるだけの余暇を持つというのは、社会経済的に厳しい制限である。どんなにスマートであっても、こればかりはウェアラブルによって解決できるものではない。

画像クレジット:Ultrahuman

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】Apple Watch Series 7、アップルがトップを走り続ける要素がすべて揃う

スマートウォッチカテゴリー全体の第2四半期の業績は好調で、前年同期比で27%の増加となった。 新型コロナウイルス流行の懸念にもかかわらず、あるいはその懸念があったからこそか、前年同期比で20%の増加となっている。これらのデバイスの人気は、まさに潮の満ち引きのようなもので、大手企業のほとんどが全体的な普及率の上昇から恩恵を受けている。

しかし、かなり成熟したカテゴリーでは滅多に見られないあり方で、1つのモデルが引き続き大きくクローズアップされている。Counterpoint Researchによると、前四半期、Apple Watchのアクティブユーザー数は1億人を超えたそうだ。Apple Watchは「Series 6」「SE」「Series 3」で世界のスマートウォッチ市場のトップ4のうち3つを占めており、Samsungは最新の「Galaxy Watch Active」でなんとか3位に食い込んでいる。

ローエンド市場では、100ドル(約1万1300円)以下のデバイスが続々と登場し、競争が激化しているが、プレミアムおよびミッドレンジ市場では、SamsungやGoogleなどの競合他社が手を組んで対抗するほど、Appleは圧倒的な強さを維持している。Appleはどうしているか?ただ多少の手を加えるだけでいい。画面を少しだけ大きくしたり、充電器の機能を上げたり、そして何よりすでに良いものにはあまり手を加えないようにしている。

画像クレジット:Brian Heater

ヘルス面でのアップデートなど、変わった噂情報が飛び交っていたが、それは間違いで、Appleはデバイスの外観を変えることに注力する道を選んだ。Series 7は、過去数世代の中で最も大きなデザイン変更の1つとなるが、それも急激な変化とはいえない。むしろ、つけて歩いていても誰にも気づかれないかもしれないレベルのものだ。

一方、日常的にApple Watchを使用している方であれば、腕につけた瞬間にその違いに気づくはずだ。Series 6からSeries 7へのアップグレード。大型モデル(今回のレビュー記事ではこちらを中心に扱う)の画面サイズは、1.78インチ(スマートフォンと同様に対角線上の測定)から1.9インチにアップデートされている。これは、Series 6に比べて20%、なぜかいまだに販売されているSeries 3に比べて50%の増加となる。

世代を超えた急激な変化というわけではない。また、電卓のボタンが12%大きくなったからといって、誰もがアップグレードを希望するわけでもないだろう。実は、ウェアラブルという製品の性質上、デザイナーはあまり過激なデザイン変更をすることができない。なぜなら、製品は身体にフィットしなければならないからだ。初期のスマートウォッチは、装着性を阻害してしまう大きなデザインで苦戦した。

画像クレジット:Brian Heater

画面サイズが大きくなっても、周囲のハードウェアが小さくなれば、それに見合うだけの効果が得られるはずだ。それが、ベゼルを1.7mmまで薄くしたことで一部成功することになった。黒いベゼルが完全になくなったわけではないが、Series 6と比較しても、明らかにスリムになっている。にもかかわらず、ケース全体のサイズを40 / 44mmから41 / 45mmへと拡大せざるを得なかった。これまで、スマートウォッチのケースサイズが大きくなることに問題を感じていた者としても(Samsungのことを指している)、この1mmの増加による違いはあまり感じられなかった。手首に装着しても、寝るときに装着しても同じ感覚だ。私は、スマートウォッチを寝るときに着用することが完全に快適だとは思わないが、ヘルス計測結果は変わってくるかもしれない。

2インチ以下の画面では、ミリ単位での調整が必要になるが、このような調整によりUIも調整され、驚くほど多くのコンテンツを追加できるようになった。同社によると、メッセージなどのアプリケーションでは、Series 6に比べてテキストを50%以上追加で表示できるようになったとのことだ。また、文字数が少なくて済む場合には、文字サイズが2倍になり、たとえばパスコード画面のボタンが大きくなるなどの効果がある。

しかし、日常生活での最大の変化は、フルQWERTYキーボードが追加されたことだ。テキスト入力は、タップするか、QuickPathで文字をスライドさせて行う。小さな画面で、どちらもうまく機能していることに驚いた。アプリケーションを開くとすぐに、接続しているiPhoneに「Apple Watchキーボード入力」の通知が表示され、iOSでテキストを入力するかどうかを尋ねてくる。ほとんどの場合、答えはおそらく「イエス」だろう。しかし、もし少しの間携帯電話から離れることになった場合、その選択肢があるのはすばらしいことだ。

画像クレジット:Brian Heater

今回のモデルでは、ディスプレイのクリスタルに厚みを持たせることで、強度を高めている。腕時計は携帯電話ほど砕けて割れるようなことはないだろうが、私にはちょっとしたことで時計をドアにぶつけてしまう悪い癖がある。まだ割れるようなことにはなっていないが、すでに何度か危ない目にあっている。また、この時計は、従来のWR50の防水に加えて、防塵機能を追加した初めてのモデルだ。IP6Xで、完全な防塵性能を実現している。

ディスプレイのエッジが少しだけカーブしてケースと同じ高さになり、横から見たときでもディスプレイが少しだけ見えるようになっている。新しいカウンターウォッチフェイスは、数字を縁に沿って伸ばし、この利点を活かしているといえる。他の2つの新しいフェイス(モジュール式デュオとワールドタイム)は、追加されたスペースを利用して、さらに多くのコンプリケーションを詰め込んでいる。

画像クレジット:Brian Heater

ケースが大きくなったことで、実質より大きなバッテリーも搭載できるようになったことになる。実際に容量を増やしたかどうかについては、Appleが明らかにしていないので、必ず行われるであろう分解の検証結果を待つしかない。しかし、これまでと同じバッテリー駆動時間を維持するために、電池容量を少し増やした可能性は高いと思われる。Appleは18時間を約束しているが、確かに、ディスプレイが大きくなり、常時点灯でもかなり明るくなった(内側では70%、同社調べ)にもかかわらず、問題なく1日を過ごすことができるはずだ。

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競合他社の中には、1回の充電で何日も使えることを謳っているものもあるので、純正の睡眠トラッキング機能が追加されたことで、バッテリー駆動時間に対してもより積極的なアプローチができるのではないかと期待していた。少なくとも新たに得たものは、Series 6に搭載されているものよりも33%高速で、約45分で80%の充電が可能な新しいUSB-Cマグネット式充電器だ。実際には、10分以内にひと晩分の充電ができることを意味する。つまり、計画的に充電すれば、快適に昼夜を問わず装着できるというわけだ。

新しい充電器は、旧モデルの時計との互換性があり、それらを通常速度で充電することができる。しかし、廃棄物を減らすというAppleの方針に基づき、Series 7には電源アダプターは付属していない。しかし、みんなが(願わくば)持っているUSB-Cのものを使って充電することができる。また、新しいバンドもいくつか用意されているが、Series 7は、ありがたいことに、Appleのサイトにある既存のバンドすべてと互換性がある。

画像クレジット:Brian Heater

センサー類はほぼそのままで、Series 7にはこれまでと同じプロセッサとLTEチップが搭載されている。Series 8では5Gになるのだろうか?新色もいい。Appleから送られてきた「グリーンアルミニウム」は、予想以上に繊細な色合いだった。濃いオリーブ色で、光の加減によってはダークグレーやブラックと見間違うほどだ。もうちょっとポップな感じにしたいなら、赤や青がいいかもしれない。

Series 7の価格は、41mmが399ドル(日本では税込4万8800円)から、45mmが429ドル(日本では税込5万2800円)から。バンドの種類や仕上げによって、価格も上がる。もしすでにSeries 6を持っている人にとっては、それほど大きなアップグレードにはならないだろう。まだ使えるのであれば、1年か2年待って、ヘルス機能やその他の機能について、Appleが今後どのような展開を見せてくれるのか見てみてはどうだろうか。今のところ、Appleがトップを走り続けるには十分な要素が揃っている。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Akihito Mizukoshi)

アマゾンは約9000円のエクササイズバンド「Halo View」でFitbitに対抗

Amazon(アマゾン)は、オリジナルのエクササイズバンド「Halo」を発売してから1年後、後継モデル「Halo View」を発表しました。Amazonは、まだスマートウォッチの分野に本格参入する準備ができていないようだが、今回発表されたHalo Viewは、Google(グーグル)傘下のFitbitブランドを直接狙っていることは明らかだ。

Huawei(ファーウェイ)などが独占している低価格帯のフィットネスバンドに挑戦するほどではないが、80ドル(約9000円)という価格(同社のHaloサービス1年分を含む)は、市場の中位層、特にディスプレイを搭載した製品の中では競争力があると考えられる。

画像クレジット:Amazon

Haloは、カラーAMOLEDタッチスクリーンと触覚フィードバックを搭載しており、ユーザーの活動に対してリアルタイムで反応するよう設計されている。水泳用の防水機能を備え、1週間のバッテリー駆動が可能で、90分間でフル充電することができる。内蔵されたセンサーが活動量、ワークアウトのライブトラッキング、睡眠、血中酸素濃度をモニターする。

画像クレジット:Amazon

この新しいデバイスには、さまざまなコンテンツ機能が搭載されている。Michael Hildebrand(マイケル・ヒルデブランド)、Elena Cheung(エレナ・チャン)氏、Elizabeth Andrews(エリザベスアンドリュース)氏といったトレーナーによる何百ものビデオコースを内蔵した「Halo Fitness」は、Appleの「Fitness+」に対抗するものだ。また、ユーザーがより健康的な食習慣を身につけられるように設計された「Halo Nutrition」も新たに加わっており、これらはすべてHaloソフトウェアの一部として提供される。Fitness+と同様に、デバイスで取得したリアルタイムのフィットネス指標は、Halo Fitnessワークアウト中にスクリーン上にリアルタイムで表示される。

関連記事:米アマゾンがHaloサブスクでフィットネスと食事プランナーのサービスを提供

画像クレジット:Amazon

Halo viewは「ホリデーシーズンに間に合うように」3つのバンドカラーで発売される(別売りバンドもある)。初代Haloは、プライバシーに関する懸念を引き起こしました。Amy Klobuchar(エイミー・クロブシャー)上院議員は「最近の報告では、Haloがこのような広範囲の個人的・私的な健康情報にアクセスすることに懸念を抱いています。一般に販売されている消費者向け健康機器の中で、Haloは前例のないレベルの個人情報を収集しているようだ」と指摘している。

関連記事:米上院議員クロブシャー氏がAmazonのフィットネストラッカーHaloについてプライバシー面の懸念を表明

画像クレジット:Amazon

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

東京大学が皮膚に貼り付ける世界最薄100ナノメートル以下の電極で1週間の心電計測に成功

東京大学が皮膚に貼り付ける世界最薄100ナノメートル以下の電極で1週間の心電計測に成功

東京大学大学院工学系研究科は9月17日、世界最軽量でもっとも薄い皮膚貼り付け電極を開発し、1週間の心電計測に成功したと発表した。詳細は、米科学誌「アメリカ科学アカデミー紀要」オンライン版で公開されている。医療、ヘルスケア分野での病気や体調不良を早期発見するウェアラブルデバイスへの応用が期待されるという。

東京大学大学院工学研究科の王燕特任研究員、李成薫講師、横田知之准教授、染谷隆夫教授を中心とする研究チームが開発したこの皮膚貼り付け電極は、シリコンゴムの一種であるジメチルポリシロキサンを、数層のポリウレタンナノファイバーで強化して作られたナノシート(厚さは100万分の1mm以下)。伸縮性があり、日常的な摩擦にも耐えられる。糊や粘着性ゲルを用いず、物理的な力「ファンデルワールス力」(ヤモリが壁にへばりつくのと同じ原理)で吸着するため、皮膚への負担が少なく、ガス透過性が増し、汗が溜まったり皮膚が蒸れたりかぶれたりすることが防げる。このナノシートの上に薄膜金を形成して電極にしている。

東京大学が皮膚に貼り付ける世界最薄100ナノメートル以下の電極で1週間の心電計測に成功

ナノシートは、糊や粘着性ゲルを用いず、物理的な力「ファンデルワールス力」(ヤモリが壁にへばりつくのと同じ原理)で吸着するため、皮膚への負担が少ないという。この上に薄膜金を形成して電極にしている

左は肌に貼り付けたところ。右は拡大写真

左は肌に貼り付けたところ。右は拡大写真

ゲルを使って貼り付ける電極では、1日以上貼り付けると乾燥してしまい、貼り付けた直後と同等の信号計測ができなくなる。このナノシートでは、貼り付けた直後と1週間後に、貼り付けたばかりのゲル電極と同等の信号計測ができた。

Amazon Alexa内蔵、タッチ決済対応のMi Smart Band 6 NFCをシャオミがグローバル発表

Amazon Alexa内蔵、タッチ決済対応「Mi Smart Band 6 NFC」をシャオミがグローバル発表シャオミは9月15日に開催した新製品発表会で、ウェアラブル活動量計「Mi Smart Band 6」のNFC搭載版となる「Mi Smart Band 6 NFC」をグローバル発表しました。Mastercardと提携し、NFCを利用したタッチ決済(コンタクトレス決済)を利用できる点が売りとなります。

Amazon Alexa内蔵、タッチ決済対応「Mi Smart Band 6 NFC」をシャオミがグローバル発表
「Mi Smart Band 6」のNFC搭載版はこれまで中国市場のみの展開となっていました。

グローバル向けのNFC搭載版はAmazon Alexaを内蔵しており、音声操作によるスマートアシスタントも利用できます。SpO2測定や心拍数測定機能なども備えます。

Amazon Alexa内蔵、タッチ決済対応「Mi Smart Band 6 NFC」をシャオミがグローバル発表

本体価格は54.90ユーロ(約7000円)です。

(Source:Mi Smart Band 6 NFC製品ページ(英語)Engadget日本版より転載)

【レビュー】フェイスブックのスマートグラス「Ray-Ban Stories」は「おもちゃ」レベルを超えている

このFacebook(フェイスブック)初のスマートグラスは、Facebook製品のようには感じられない。

Facebookのロゴが刻印されていたり、小さな文字でその名前がシリアルコードの横に印字されていたりもしない。この製品は「Facebook Stories」でも「Ray-Ban(レイバン)のFacebook Stories」でも、あるいは「FacebookとのコラボレーションによるRay-Ban Stories」でもないのだQuest 2やPortalのような他のFacebookデザインハードウェアとは異なり、このRay-Ban Stories(レイバン・ストーリーズ)は、まるで同社がヒットのためのユースケースを正確に知っていたかのように、より自己認識し抑制されていて、余計なことをしようとするのをやめたもののように感じられる。

関連記事:フェイスブックがレイバンと共同でスマートサングラス「Ray-Ban Stories」発売、約3.3万円から

アイウェア大手の仏EssilorLuxottica(エシロール・ルクソティカ)と提携して作られたこのメガネは、Facebookがこれまで販売したものの中でも最も基本的なデバイスだ。できることも限られている。写真や動画を撮ることができ、電話をすることができ、そして音楽を聴くことができるだけだ。そう、それだけだ。しかし、フレームのアームに埋め込まれたニアイヤー(耳近傍)スピーカーを使ってオーディオを聞けるようにしたことで、これらは5年前に出荷されたSnap(スナップ)のSpectacles(スペクタクルス)よりもはるかに実用的なデバイスとなった。

左はレイバンの従来型のWayfarers(ウェイファーラー)と右はスマートグラスのRay-Ban Stories Wayfarers(画像クレジット:Lucas Matney)

ではこのデバイスの機能と、日常での使用感について少し掘り下げてみよう。

299ドル(約3万2900円)のRay-Ban Storiesの特徴の1つは、ほとんど目立たないように着用できることだ。周りの人たちはおそらく、わずかに大きめのサイズよりも、カメラに気づく可能性の方が高いだろう。それはすでに革命的な進歩で、Spectaclesが実際に乗り越えることができなかった「おもちゃ」のレベルを超えることが実現している。標準のWayfarer(ウェイファーラー)デザインのフレームが平均よりも厚いことを考えると、レイバンとのパートナーシップは特に好ましいものだ。

周囲の人が気づく可能性が高いのは、メガネのフレームをタップしてメガネを制御するときだ。右側のアーム上のボタンを押すと30秒の動画が撮影され、長押しすると写真を撮ることができる。また「Hey Facebook、take a video(ヘイ、フェイスブック。ビデオを撮影)」という音声コマンドを使うこともできるし、写真撮影時にも同じことができる(とはいえ、私は公共の場で近くの誰かがこの言葉をいうのを耳にするのが心地良いかどうかは疑問だ)。またかなり控えめな印ではあるが、カメラが映像をキャプチャしている最中は、小さなLEDライトが点灯する。

画像クレジット:Lucas Matney

メガネの写真と動画の品質は中程度だが、デバイスのサイズを考えると、十分に許せるレベルだ。2つの5MPカメラは、2592×1944ピクセルの写真と1184×1184ピクセルの正方形フォーマットの動画を撮影することができる。品質は10年ほど前のスマホカメラ並みのようで、まだまだ改善の余地があることは明らかだ。アップロード中に行われる携帯電話での後処理によって、写真の画質が改善される。露出が高くなって暗い場所がある程度明るくなり、ややポップなものとなる。

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カメラを2つ持つことで、写真に3D効果を追加することができるが、現時点ではフィルターは優れたものではなく、正直なところそれほどでもない。できれば、Facebookにはこの先ソフトウェアにもう少し投資して欲しいが、写真の品質がかなり低いことを思うと、最初に2台のカメラを搭載した理由を完全には理解できない。

また、メガネを使用するには、View(ビュー)という名の新しいFacebookのアプリにリンクする必要がある。これは基本的に、外部デバイスからメディアを携帯電話にアップロードするためのシンプルなメディアビューワーアプリだ。このアプリを使って、写真やビデオをカメラロールに保存したり、FacebookやInstagram(インスタグラム)に共有したりする前に、すばやく編集することもできる。

画像クレジット:Lucas Matney

オーディオはおそらくこのメガネの中で最も興味深い部分だ。このニアイヤー(耳近傍)スピーカーは、静かな空間ではその品質に驚かされるが、騒がしい環境にいると不満を感じるだろう。Facebookにとって残念なことは、ほとんどの屋外スペースは多少なりとも騒がしいし、サングラスはほとんど屋外で使用されるものだということだ。いざというときには屋外で音楽を聴くために使うこともできるだろうが、正直なところ自分のAirPodsをすぐに置き換えられるものとは思えない。このオーディオは、通話などのローファイなアクティビティに向いているが、屋外を歩いているときには3つのマイクアレイがバックグラウンドノイズを拾いすぎるという問題もあった。

バッテリーの寿命はかなり厳しいが、ケースでバッテリーを充電することもできる。これは、メガネを保管するのにも最適な場所だ。ケースは少しかさばるものの、Facebookはレンズを保護するためのマイクロファイバーポーチも別に提供している。Facebookによれば、6時間のオーディオ連続使用が可能で、それ以外の場合には「終日」の使用が可能だという。

奇妙なことだが防水性はもちろん防滴性も備わっていない。これは、サングラスとしては優れた品質とは思えない。これは、厚いフレームのサングラスがスマートグラスのデザインにとってより理に適っていることを示す一方で、この製品が実際には屋内向けであることを示している。

画像クレジット:Lucas Matney

本製品はFacebook初のハードウェアではないが、そこに会社の成熟の歴史を見ることができる。

本製品はAR / VRデバイスではないが、Ray-Ban Storiesのデザインの中に、Oculus Goから生まれたオンイヤーオーディオ、Gear VRを彷彿とさせるタッチパッドインターフェース、Questで最初に採用されたシンプルで抑制されたオーディオコントロールなど何世代にもわたるOculus製品を垣間見ることができる。今回のハードウェアは、長年に渡って徐々に認識は高まってきたものの、基本的にはVRに無関心な人々に販売することから学んだ機能と教訓を凝縮したものだ。

一方Facebookには、マスコミで敵の機嫌をとり、平均的なインターネットユーザーからは大いなる不信を獲得してきた歴史がある。同社はこれまでそのメッセージを台無しにし、その過程でブランド名を毀損してきたその歴史もわかっている。それらがおそらく、今回Facebookのブランドをほとんど目立たせないデザインにつながったのだろう。確かにRay-Ban Storiesには批判者が出てくるだろうが、Facebookが機能性を保守的にして、将来を見越したパッシブセンサーをあまり多く搭載しないよう選択したことは、彼らに有利に働くだろう。

Facebook Viewアプリはシンプルなものであり、またFacebookはStoriesを使用してキャプチャされた写真や動画は広告には使用されないと説明している。とはいえ、2013年のGoogle Glassのデビュー以来、私たちは確かに長い道のりを歩んできたものの、顔にあるカメラは、公共の場でのプライバシーに関しては依然として不快感を覚えさせる。このデバイスは間違いなくその話を大いに再燃させるだろう。

画像クレジット:Lucas Matney

そうした議論はさておき、私の最も強調したいポイントは、 Ray-Ban Storiesが非常に重要な製品のように感じられるということだ。これは、顔に装着するウェアラブルというアイデアを実際に販売する製品なのだ。

メガネはスマートにデザインされていて、目立たないように着用できる。だが、Facebookがそのような野心的なフォームファクターを実現するために多くの犠牲を払ったことは明らかだ。このメガネは正直なところ特に何かをうまくこなせるわけではない。写真と動画の品質はかなり劣っているし、インフレームスピーカーは屋外でのパフォーマンスが低く、通話体験も最も快適とはいえない。299ドル(約3万2900円)という価格は、この第一世代製品を一部の人に売り込むことを難しくするかもしれない。とはいえ、今回Facebookは、拡張現実の未来への道のりの足がかりとなることを繰り返し示してきた製品に対して、ほぼ正しい妥協をしたと思う。

FacebookのRay-Ban Storiesと、私が持っていた旧来のRay-Ban 2140 Wayfarersを並べてみた(画像クレジット:Lucas Matney)

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画像クレジット Lucas Matney/TechCrunch

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(文:Lucas Matney、翻訳:sako)

Sila Nanotechnologiesの次世代バッテリーがWhoopのウェアラブルデバイスで初めて商用利用

米国時間9月8日、Sila Nanotechnologiesの次世代バッテリー技術がWhoopのフィットネストラッカーの新製品で商用製品デビューを果たした。これは、1つのセルにできるだけ多くのエネルギーを低コストで詰め込もうとするこのシリコンバレーの企業にとって10年にわたる謎解きのような研究開発の成果だ。

バッテリーの化学的な改良にはこれまでの数年間で数十億ドル(数千億円)が投じられ、さまざまなスタートアップが、アノードやカソードを、シリコンや固体電池企業の場合はリチウムのような変換材料に置き換えようとしている。

Silaのバッテリー化学のレシピは、バッテリーセルのアノード中のグラファイトをシリコンで置き換えて、エネルギー密度が高く安価なバッテリーパックを実現する。BASFなどその他の企業は、エネルギー密度の高いカソードを作ることにフォーカスしている。

現在では、さまざまな企業がさまざまな化学構造のバッテリーの実現を目指しているが、それらはいずれも今日のリチウムイオンバッテリーのように、従来的なセルの技術をそのまま継承している。最新のヘルス&パフォーマンストラッカーであるWhoop 4.0で使用されるSilaのバッテリーは、この数十年間において世界で初めて市販の次世代バッテリー化学製品となる。

Sila Nanotechnologiesの創業者でCEOのGene Berdichevsky(ジーン・ベルディチェフスキー)氏は「小さなフィットネストラッカーは、些細なものにしか見えないかもしれませんが、市場に初めて登場する弊社の革新性を実証するデバイスです。今後、もっと大きくなりあらゆるものの電動化に使われることになるでしょう」という。

電気自動車と、それらを動かすSilaの役割が、ベルディチェフスキー氏のいう「あらゆるものの電動化」リストのトップにある。そして同社は、そこでもすでにリードしている。

Sila NanotechnologiesはBMWやDaimlerとのバッテリーに関するジョイントベンチャーで、同社のシリコンアノード技術を使ったバッテリーを開発する。自動車としての市販開始は、2025年の予定となっている。

「Whoopの成功を自動車に持ってくる方法にはさまざまなものがある。今日では、走行距離の長いクルマが欲しければ大型車を買えばいい。小型のEVはバッテリーをたくさん倒産できたいため、その距離も短くなります。しかし、弊社の技術が自動車業界で本格的に採用されることになれば、走行距離600kmのシティーカーの実現も可能です。これにより自動車産業におけるより広い分野で、電動化を目指せるようになるでしょう」とベルディチェフスキー氏は語る。

2021年9月初めに、36億ドル(約3967億円)の評価額で2億ドル(約220億円)を調達したWhoopは、Whoop 4.0をウェアラブルデバイスとして市場に投入するが、Sila製バッテリーのおかげで、そのサイズは前モデルよりも33%小さい。ベルディチェフスキー氏によれば、そのエネルギー密度は17%高いという。しかもバッテリーの高密度化でウェアラブルデバイスが小さくなるだけでなく、Whoop 4.0は、睡眠のコーチングや触覚によるアラート、パルスオキシメーター、皮膚温度センサー、ヘルスモニターなど機能が豊富になり、しかもバッテリー寿命は前モデルと同じ5日間のままだ。

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「弊社のような化学構造が可能になったことによって、これまでできなかったことができるようになったのが大きい」とベルディチェフスキー氏はいう。

Whoopの場合は、同社がAny-Wearと呼ぶ新技術により、バンドなど腕時計以外の部分もウェアラブル化し、胴体や腰、ふくらはぎなどからもデータを集めることができる。

製品の成功の鍵となるのは、Sila製バッテリーの新しい化学構造だけでなく、重要なのはむしろ製品のスケーラビリティだ。スケーラビリティは、Silaのロードマップに最初から存在する。

ベルディチェフスキー氏は「弊社のサイエンティストとエンジニアには、最初の頃からグローバルに利用される日用品向けの設計はそのまま、数百万台のクルマの設計に活かすことができると言っています。両者は大量生産の技術という点で共通しており、平面リアクターではなく体積リアクターを使える点が大きい」という。

この、リアクターのタイプの違いについては、次の例がわかりやすいかもしれない。小さな広場で大群衆に食事を提供するためには、大鍋でチリをつくる、つまり体積型の方が1人1人にピザパイを提供する、つまり平面型よりも効率がいい。

また、ベルディチェフスキー氏は、スマートフォンや自動車、ドローンなどのバッテリーを供給するあらゆるのバッテリー工場のプロセスに、シームレスに組み込むことができるものでなければならないとチームに語っている。

ベルディチェフスキー氏によると、Silaはすでにスケーラビリティを2度実証している。最初は、ラボからパイロット事業への100倍のスケールで、約1リットルサイズの体積リアクターから始まった。9月8日に結んだWhoopとのパートナーシップが2度目のスケールアップで、5000リットルのリアクターを実現した。5000リットルのリアクターは、その上に人間が2人乗れるような大きさだ。次の段階のスケールアップは、3年後を狙っている自動車に載せられる量となる。

「現在、自動車に搭載されていない理由は、実際に自動車に搭載するためには100倍のスケールアップが必要であるためです。しかし、材料は同じです。”粒子や粉末は、これまでに作ったどのスケールのものも同じです」とベルディチェフスキー氏はいう。

画像クレジット:Whoop

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ウェアラブルさく乳ポンプやケーゲルトレーナーのヘルステックElvieがシリーズCで約106.4億円調達

コネクテッドさく乳ポンプやスマート骨盤底面エクササイザーを開発した女性向けヘルステックのパイオニアであるElvie(エルビー)は、今夏初め(7月)に発表したシリーズCを上積みし、1270万ポンド(約19億3100万円)を追加して、資金調達額を7000万ポンド(約106億4000万円)に引き上げた。

2013年に設立されたこの英国のスタートアップは、2019年に4200万ドル(約46億3000万円)のシリーズB、そして2017年に600万ドル(約6億6000万円)のシリーズAを調達していたが、当時はフェムテック系スタートアップが今よりずっと珍しい時代だった。女性主導のスタートアップ各社が道を切り拓き、フェムテックにかなり大きな市場があることを示したことで、女性のために(そして多くの場合は女性により)デザインされた製品は、ここにきて大きな勢いを得ており、投資家も機会を逃すまいとしている

アナリストたちは今では、フェムテック業界は2025年までに500億ドル(約5兆5130億円)の市場になると予測している。

Elvieによると、今回のシリーズCエクステンションラウンドは、食品・健康分野に特化したプライベートエクイティ企業であるBlume Equityの共同設立者がスポンサーとなっているファンドに加え、既存投資家であるIPGL、Hiro Capital、Westerly Windsからの資金も含まれている。

7月に第1トランシェ(5800万ポンド、約88億1600万円)を発表した際にElvieは、シリーズCはBGFとBlackRockが主導し、Octopus Venturesを含む既存投資家が参加したと述べていた。

このシリーズCは、地理的な拡大(新規市場への参入を含む)や、女性の人生における他の「重要なステージ」をターゲットとした製品ポートフォリオの多様化など、さらなる成長のために使用されるとのこと。

これはつまり、製品開発をサポートするための研究開発費を惜しまないということだ。物理的なガジェットとソフトウェアを融合させたコネクテッドハードウェアは、依然として強いフォーカスとなりそうだ。また、さらなる規模拡大に備えて、オペレーションとインフラを強化していく予定だ。

現段階でElvieが販売している製品は、コネクテッドケーゲル体操トレーナー、ウェアラブルさく乳ポンプ(に加え電気を使わないポンプも2つ)の4つだ。

同社が製品の面で次に何を開発していくのか、注目したいところだ。

創業者兼CEOのTania Boler(タニア・ボーラー)氏は、声明の中で次のように述べている。「Elvieは、次の成長段階へ行く準備ができています。当社はすでに事業を展開しているカテゴリーに革命を起こしていますが、新しい領域で女性のためのよりよいテクノロジー製品やサービスを生み出す、未開拓の膨大なポテンシャルがあることを知っています」。

Elvieの目標は「あらゆるライフステージにおける女性の健康のための頼れる目的地」を作ることであり、ターゲットとなる女性消費者に「洗練された、的確で、パーソナライズされたソリューション」を販売することだと同氏はいう。

Elvieは製品販売による売上を明らかにしていないが、同社のさく乳ポンプ事業は米国で過去12カ月間に倍増しており、米国のAmazo(アマゾン)ではさく乳器のSKUで最も高い収益を上げているとのこと。

また、欧州事業の成長率は前年比139%と「好調」であることも同社はアピールしている。英国市場では、過去12カ月間で前年比31%の成長を達成したという。

画像クレジット:Elvie

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Aya Nakazato)

プロアスリート向けのウェアラブルトラッカーのWhoopが220億円調達

2012年創業のWhoop(ウープ)はフィットネストラッカーの世界では馴染みのないブランドだ。しかしここ数年、同社はかなりの乗り換えユーザーをひきつけてきた。同様に、ベンチャーキャピタルをひき寄せるのにも苦労はしなかった。ボストン拠点の同社にTechCunchが最後に話を聞いたのは、同社が5500万ドル(約60億円)を調達した2019年後半だった。そしていま、Whoopはさらに2億ドル(約220億円)という巨大な資金調達を行った。

今回のシリーズFラウンドでWhoopの累計調達額は4億500万ドル(約446億円)近くになった。この規模の企業にしてはかなりの額だ。ソフトバンクのVision Fund 2がリードしたFラウンドでのバリュエーションはなんと36億ドル(約3965億円)だ。

その他の投資家にはIVP、Cavu Venture Partners、Thursday Ventures、GP Bullhound、Accomplice、NextView Ventures、Animal Capitalが名を連ねている。既存投資家は全国フットボールリーグ選手協会、Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏、その他数多くのプロアスリートだ。

Whoopがアスリートをターゲットとしているのは、Apple WatchやFitbitなど主要な消費者向けウェアラブルとはかなり対照的だ。事実、Whoopはスポーツチーム、企業やヘルスケア、政府 / 防衛向けソリューションのための特別販売を行っている。

Whoopは、このほどFitbitが新製品Charge 5のための「Daily Readiness Score(体の準備ができているかを示すスコア)」を発表したときに社名を響かせた。このスコアについては、多くの人がより高度なWhoopの分析を引き合いに出した。

Whoopは追加の資金調達を模索するモチベーションとして、2020年の会員数の「大幅な成長」を挙げている。それはおそらく部分的に、18カ月のサービスが月18ドル(約2000円)〜というサブスク(サービス利用期間が短いほど月額料金は高くなる)に注力する一方で、500ドル(約5万5000円)のウェアラブルを無料にするという2019年の決断によるものだった。

Whoopは米国以外のマーケットへの進出もにらんでいて、膨大な額の調達資金をハードウェアのR&D、ソフトウェア、分析ソリューションに注ぐ。また、現在500人超の従業員数の増加にも使う(従業員の半分近くは2020年加わった)。

「当社は国際的に成長していて、ソフトバンクとの提携をさらに深化させることに胸躍らせています」と創業者でCEOのWill Ahmed(ウィル・アーメッド)氏はリリースで述べた。「2020年驚くほどの成長を経験しましたが、当社のテクノロジーの潜在性ならびに健康モニタリングの広大なマーケットの大部分は未開拓のままです」。

画像クレジット:Whoop

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

化学療法による脱毛を過去のものにするLuminateの被る医療用デバイス

化学療法による脱毛は、医療における副作用の中でも目立つものの1つであり、しかも自分の病気や受けている治療を知られたくない場合でも知られてしまうこともある。そこでLuminate Medicalは、特殊な医療用ウェアラブルデバイスで化学薬品が毛包に入り込むことを防ぎ、人生最悪の損失を防ぎ、このあまりにも目立つ状態を過去のものにしようとしている。

LuminateのCEOであるAaron Hannon(アーロン・ハノン)氏と共同創業者のBárbara Oliveira(バルバラ・オリベイラ)氏は、患者や医師に、がんの治療でイノベーションが必要と思われる分野について尋ねると「脱毛が話題になることがとても多いので驚いた」とハノン氏は語る。「それ以来、私たちは研究開発を化学療法による脱毛をなくすことにフォーカスすることにしました」。

患者が化学療法を受けると、抗がん剤が血液によって全身に行き渡る。それによって衰弱や吐き気といったさまざまな副作用が起こり、長期的には薬物が毛包を害して脱毛が起きる。Luminateがアイルランド国立大学ゴールウェイ校と共同で開発したソリューションは、そもそも血液がそれらの細胞に到達しないようにするというものだ。

画像クレジット:Luminate

そんな効果を有するデバイスは、頭に装着する一種の圧力装置だ。ただし柔らかい素材を使っているため不快感はなく、ハノン氏によると圧力も注意深くモニターされているという。

また、それらの細胞に血流が行き渡らなくても危険はない。「圧力療法は十分に研究されている分野です。細胞を傷つけない治療方法を適用できる時間についても、何年も前から研究されていて多くの文献があります。効果と快適性を両立させるためには、若干の機械工学が必要です」とハノン氏はいう。

患者はそのキャップを化学療法を受けているときとその後に装着する。頭皮への血流だけを制限するため、薬は腫瘍やがんの患部がどこにあっても順調に行き渡り、同時に毛包を損傷から守る。

最初の動物実験では体毛の80%が維持され、有害な副作用はなかった。本格的な人体実験は今後の課題だが、健康な患者に対するこのヘッドセットの血流阻止効果は、人に対して予想したとおりだった。

ハノン氏は「この療法がさまざまなタイプの毛髪に有効だとわかってとてもうれしい」という。たしかに、短い毛や真っ直ぐな毛など、毛のタイプを限定する治療方法だと、利用できない人が多くなってしまうだろう。

画像クレジット:Luminate/Wild Island Pictures

ハノン氏によると、圧力ではなく頭皮を冷やす方法もあるが、そちらはウィッグの価格が高すぎるとのこと。費用は患者1人あたり数千ドル(数十万円)であるため、もっと安価なデバイスを開発する余地は十分にある。

脱毛は保険などの保障が症状として認め、ウィッグも対象になっていることが多い。Luminateのデバイスが各種の保障で認められるためには、時間とエビデンスがもっと必要だ。しかしチームは、保険があれば患者負担は1500ドル(約16万5000円)程度に抑えられると確信している。ウィッグだけでなく、より高額な脱毛治療もいろいろある。化学療法で「髪を失わない」にチェックを入れてその費用が1500ドルなら、ためらう人は少ないのではないか。

画像クレジット:Luminate

しかしLuminateは、今後はデバイスの費用を払えない人にも提供していきたいと思っているため、FDAの認可や米国での発売、ヨーロッパ各国への進出などにより、大量生産による低価格化を考えている。

Y Combinatorの夏季を卒業したばかりのLuminateは、幸運にもアイルランド政府の補助金を獲得した。政府補助金であるため、投資と違って非希釈性だ。今後の規模拡大や国際化にはもっと資本が必要だが、現在のところチームはデバイスを最初の患者の手に、そして頭に、渡すことだけで精一杯だ。

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画像クレジット:Luminate/Wild Island Pictures

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

睡眠中の脳卒中も早期に警告、治療開始までの時間を短縮するZeitのウェアラブルデバイス

脳卒中のリスクがある人は、進行中の脳卒中の兆候に常に注意を払っているが、寝ているときに注意を払うことは誰にもできない。つまり、何千人もの人が「目覚めたときの脳卒中」に見舞われ、数時間後にようやく判明するということだ。Zeit Medicalが開発した脳モニタリングウェアラブルは、脳卒中の兆候を早期に発見して病院に搬送することで、脳卒中によるダメージを軽減し、命を救うことができる。

数十年前までは、脳卒中の患者を助けるためにできることはほとんどなかった。しかし、90年代には有効な薬が使われるようになり、その少し後には外科手術も行われるようになったのだが、それらはいずれも脳卒中発症後数時間以内に処置する必要がある。

Orestis Vardoulis(オレスティス・ヴァルドゥリス)氏とUrs Naber(ウルス・ネーバー)氏は、脳卒中に関する911コールから被害者が必要な治療を受けるまでの時間を短縮するために、多くのリソースが使われているのを知り、Zeit(ドイツ語で「時間」の意)を立ち上げた。同社は、Y CombinatorのSummer 2021グループに参加している。

「以前は何もできなかったが、突然、いかに早く病院に行けるかが重要になってきた」とネーバー氏は語る。「脳卒中になると、すぐに脳が死滅し始めるため、時間が最も重要だ。911番通報から搬送までにかかる時間、そして病院の扉を開けてから治療にあたるまでの時間を短縮しようと多くの人が力を注いできたが、誰も911番通報の前に起こる時間には対応していない。だから、イノベーションが必要な分野だと思った」。

本人が気づかないうちに脳卒中を発見できれば、救急車が呼ばれるよりもずっと前に、本人や周囲の人に警告して病院に搬送することができる。しかし、これを実現するためには、手術室での作業が必要となる。

EEG信号の特性が変化した場合、このアルゴリズムによってすばやく検出することができる(画像クレジット:Zeit)

手術を行う外科医や看護師は、患者のバイタルを注意深く観察し、脳波から脳梗塞の兆候を見極めることができる。

「脳波には特定のパターンがあり、彼らはそれらを目で捉えられるように訓練されている。私たちは、最も優秀な神経学者から、彼らがこのデータをどのように視覚的に処理するかを学び、それを自動的に検出するツールを作った」とヴァルドゥリス氏はいう。「この臨床経験は本当に役に立った。というのも、彼らが信号内の特徴を定義付けするのを助けてくれたおかげで、何が重要で何が重要でないかを決定するプロセスの進行を加速させることができたからだ」。

チームは、脳からの関係する信号をモニターするコンパクトなEEGを内蔵した、柔らかいウェアラブルヘッドバンドを作った。このデータがスマートフォンのアプリに送られ、前述のパターンで訓練された機械学習モデルによって分析され、何かが検出されると、ユーザーと事前に指定した介護者にアラームが送られる。また、自動的に911に通報するように設定することもできる。

「私たちが分析したデータの大部分は手術室から出てきたものだ」とヴァルドゥリス氏は語る。このデータをすぐに整合性チェック用データと照合することができる。「その結果、手術室で発生した事象を偽陽性ゼロで確実に捉えることができるアルゴリズムがあることがわかった」。

この結果は、複雑な変数が少ない家庭でも活用できるはずだとのこと。それを実験するために、すでに一度脳卒中にかかったことのある、ハイリスクと言われる人たちのグループと協力して進めている。脳卒中やそれに関連する症状(臨床的にはさまざまなカテゴリーに分類される)が発生した直後の数カ月間は、2回目が多発する危険な時期だ。

画像クレジット:Zeit

「現在、ヘッドバンドと携帯電話をセットにした研究用キットを、研究に参加している人たちに届けている。ユーザーは毎晩それを装着している」とヴァルドゥリス氏はいう。「我々は、2023年のどこかのタイミングで商業化できるような道筋を準備しているところだ。この認可を得るために必要な臨床証明を明確にするため、現在FDAと協力して動いている」。

脳卒中のリハビリテーションを行うBrainQと同様に、彼らのものも「画期的なデバイス」の分類に位置づけられており、試験や認証を迅速に進めることができる。

「まずは米国での販売を開始するが、世界的にもニーズがあると考えている」とネーバー氏はいう。「高齢化がさらに進み、障害者介護のサポート体制がさらに整っていない国もある」。このデバイスは、これまで定期的に病院に通わなければならなかった多くの人々にとって、在宅介護や障害者介護のリスクとコストを大幅に低減することができる。

現在の計画では、データと協力してくれるパートナーを集め続け、大規模な研究を準備することになっている。この研究は、このデバイスを直販から、費用払い戻しの適用(保険適用など)の対象にするために必要なものだ。また、現在は脳卒中に焦点を当てているが、このメソッドは他の神経疾患の検査にも応用できるはずだ。

「将来的には、脳卒中のリスクがある人全員にこのデバイスが支給されるようになることを期待している」とヴァルドゥリス氏は述べている。「私たちは、このデバイスが脳卒中の治療において現在欠けているパズルのピースであると考えている」と述べている。

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Akihito Mizukoshi)