グローバルのウェアラブル市場は前年比で16.7%の成長を遂げる、という予測を調査会社のGartnerが発表した。”ウェアラブル”と一言で言っても、そこにはスマートウォッチから体に身につけるカメラ、さらにはヘッドマウントディスプレイまで、さまざまな種類のデバイスが含まれている。
同社の予測によれば、今年中に3億1040万台のウェアラブルデバイスが販売され、売上額は305億ドルにのぼるとのこと。さらに、売上額のうち93億ドルがスマートウォッチによるものとされており、現在このカテゴリーではAppleがSamsungに先行している。
また、Appleが9月に新しいスマートウォッチを発表するという噂がある。新製品はモバイル通信対応で、iPhoneが近くになくてもSiriを使ったり、メッセージやセンサーデータをやりとりしたりできるようになると言われており、利用シーンの増加が販売数にも繋がるかもしれない。
Apple Watchの販売数は公表されていないが、今月始めに行われた業績発表の中で、Apple CEOのTim Cookはウァラブル製品の売上が前年比で50%増加したと語った(レポート内だとApple Watchは「その他の製品」カテゴリーに入っており、ここにはApple TVやBeats製品、iPod、Appleブランドのアクセサリーなども含まれている。2017年第2四半期の同カテゴリーの売上額は27億4000万ドルだった)。
さらにGartnerは、今年中に4150万台ものスマートウォッチが販売されると予想しており、Bluetoothヘッドフォンを除けば、2019〜2021年の間にスマートウォッチがウェアラブルデバイスの中でもっとも販売台数の多い製品カテゴリーになるだろうとも語っている。
同社のレポートには、2021年までにスマートウォッチの販売台数が約8100万台まで増加し、ウェアラブルデバイス全体の販売台数に占めるスマートウォッチの割合が16%に達すると書かれている。
さらに同レポートによれば、スマートウォッチの売上額増加には、比較的安定したApple Watchの平均販売価格(当初の販売価格は269ドル)が関係しているという。
「販売台数が増えることで製造コストが下がり、スマートウォッチカテゴリー全体の平均販売価格も2017年の223.25ドルから2021年には214.99ドルへと下がるだろう。しかしAppleやFossilといったブランド力のある企業の商品は、普通の時計と同じような価格帯にとどまる可能性が高い」とGartnerでリサーチ・ディレクターを務めるAngela Mcintyreは声明の中で語った。
引き続きAppleがスマートウォッチ界を牽引すると予測する一方で、Gartnerは参入企業が増えるにつれて、2016年には全体の3分の1を占めていたCupertinoのシェアが2021年には4分の1まで減ることになると考えている(とは言え、AsusやHuawei、LG、Samsung、Sonyらが躍進するというわけではなく、これらの企業のシェアは2021年でも合計で15%程度とされている)。
面白いことに、Gartnerは子ども向けのスマートフォンを今後伸びるサブカテゴリーとして挙げており、2021年にはスマートウォッチ全体の出荷台数の30%が子ども向けスマートフォンになるだろうと記している。
スマートフォンと言ってもこれは2〜13歳の子どもを対象にしたウェアラブルデバイスで、子どもに普通のスマートフォンを持たせるのはまだ早いと考えている親がそのターゲットだ。
さらに有名時計メーカーや高級ブランド、ファッションブランドなどが、今後若い消費者をひきつけるためにスマートウォッチ界に参入し、2021年までにはこのような企業の販売する製品がスマートウォッチの出荷台数の25%を占めるようになるとも予測されている。
その一方で、スタートアップやホワイトラベルのスマートウォッチを製造する企業(Archos、Cogito、Compal、Martian、Omate、Quantaなど)の販売台数は2021年でも全体の5%程度のようだ。
その他の製品群としては、Bluetoothヘッドフォン・イヤフォンの人気が継続し、2017年のウェアラブルデバイス売上台数の約半分(48%)を占めるようになるとのこと。2021年までの予測を通して見ても、オーディオデバイスはもっとも販売台数の多いサブカテゴリーの座に座り続け、最終的な販売台数予測は2億60万台とされている。
その成長を支えるのが「主要スマートフォンメーカー」によるヘッドフォンジャックの廃止だとGartnerは言う。Appleがその草分けとして知られている(そして彼らはBluetoothを搭載したSiri対応の高価なワイヤレスイヤホンAirPodsの販売を始めた)が、2021年までには、ほぼ全てのプレミアムラインから3.5mmジャックが消え去るだろうとGartnerのアナリストは予測する。古き良きヘッドフォン・イヤフォンの姿を見ることは本当になくなってしまいそうだ。
誕生間もない製品群として挙げられているのが、(VRヘッドセットとは違い)ユーザーの視界を完全に遮らないタイプのAR対応ヘッドマウントディスプレイ(HMD)なのだが、こちらは向こう約5年間にわたって広く普及することはないようだ。
Gartnerの予測によれば、2017年のウェアラブルデバイス出荷台数のうちHMDが占める割合は7%程度で、2021年の段階でさえ個人・法人ユーザーどちらについてもHDMがメインストリームな製品になることはないとされている(この予測はARスタートアップMagic Leapの弱気な短期プランとも一致する。同社はまだプロダクトを市場に出せておらず、ファウンダーももしかしたら来年販売を開始できるかもしれないと匂わせるにとどまっている)。
短期的にはビデオゲームや機械の修繕、検査、メンテナンスでの利用、もしくは製造や教育、デザイン、カスタマーサービスといった分野での活用のほか、テーマパークや映画館、スポーツ会場といったエンターテイメント施設で、臨場感アップや補足情報の提供を目的にHDMが使われることになるかもしれないとGartnerは語る。
「一般消費者市場における現状の普及率を考えると、まだまだHMDは黎明期にあると言わざるをえない。しかし同時に同製品カテゴリーの長期的な可能性を否定しているわけではない」とGartnerのMcIntyreは付け加えた。
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(翻訳:Atsushi Yukutake)