翌日配達の技術を提供するスタートアップVehoは、配送のラストワンマイル(最後の1マイル)、つまり配送センターから注文客の自宅玄関までの荷物配達の問題解決を目指している。また、同社は顧客がいつ、どこへ、どのように荷物を配送してもらいたいか、そしてプロセス全体を通してリアルタイムのコミュニケーションにより配送に透明性を提供するという、ユニークな才能を利用してそれを実行したいと考えている。
ニューヨークに拠点を置くVehoの収益は2020年夏のシードラウンドの資金調達から40倍増加し、従業員数も15人から400人に増えたと、Vehoの共同設立者でCEOのItamar Zur(イタマー・ツア)氏はTechCrunchに語った。
同社はすでに米国の14の市場で事業活動を行っているが、2022年末には50市場に増やす計画である。チームを増員し、再配達対策プログラムを導入および拡大して、それに向けて技術開発に投資するために、同社はシリーズAの資金調達が1億2500万ドル(約144億円)に上り、企業価値が10億ドル(約1148億円)と評価されたことを発表した。
General Catalyst(ゼネラル・カタリスト)がラウンドを率いConstruct Capital (コンストラクト・キャピタル)、Rachel Holt(レイチェル・ホルト)、Bling Capital(ブリング・キャピタル)、Industry Ventures(インダストリー・ベンチャーズ)、Fontinalis Partners(フォンティナリス・パートナーズ)、Origin Ventures(オリジン・ベンチャーズ)が参加した。直近の資金調達ラウンドではVehoに対してこれまで合計1億3000万ドル(約149億円)が集まったとツア氏は述べた。
いったいなぜ、新興企業がそれほどの資本を事前に集めたのか疑問に思うかもしれない。しかしツア氏は、Vehoが「しっかりとしたプラットフォームであり、現時点で小さな事業ではない。急成長を維持したいと思っている」と回答した。
「最大のeコマース革命の最中にチャンスがあります。パンデミックを通して急成長した後もそれは終わりません」と付け加えた。「顧客体験は私達の目前で変化しています。スピードとコミュニケーション以外に、ブランドが提供したいのは可視性とデータです。より多くの資本を取り入れ驚異的なスピードで成長を続けるには完璧なタイミングだと考えています」。
もちろん、Amazon(アマゾン)はラストワンマイル市場の約50%を抱え込んでおり、ここでは、アマゾンがうまくやっているかは議論するまでもない。ツア氏もそれを否定しないが、7~10営業日かけるより早くサービスを提供したいと考えているeコマース企業の50%に、同種の配送サービスを提供する好機を見出している。
Vehoの技術は、有資格のドライバーパートナーがいることにより宅配の需要と一致するとともに、顧客が配達中でも実際の到着時間を知らせることができる。リアルタイムで配達スケジュールを変更したり、届け先を変更したり、個人的な配達指示を出すことも可能だ。
Vehoチーム(画像クレジット:Veho)
同社のアイデアはツア氏自身の経験から来ている。ビジネススクール在学中に食事配達のサブスクリプションに入ったが、初めて注文した品が届かなかった。ツア氏は配送会社に連絡を取った。そして40分待った後、電話はつながらなくなった。彼はサブスクリプションをキャンセルしたが、それは荷物の到着が遅れたり受け取れなかったりすることに我慢できない他の客と同じである。
「ますます競争的なeコマース分野において、多くの企業がアマゾンと同様のすばやい配達を求めているが、そうするほどの規模に欠けています」とツア氏はいう。「Vehoはそのようなブランドのために公平な条件を作っています。逃した最大の機会は、前もって包装されていることと、ブランドがよりロイヤルティを作り、顧客を長く引き止めてもっと頻繁に購買してもらえるような配達の、点と点をつなげることである」。
ラストワンマイルの問題解決だけに取り組むのはVehoだけではない。他にもそのアプローチのために資本調達をする企業が世界中にある。例えば、過去6カ月間でZoomo(ズーモ)、 Cargamos(カルガモス)、Coco(ココ)、Deliverr(デリバー)、Bringg(ブリング)が新たなラウンドを発表した。Walmart(ウォルマート)も夏にWalmart GoLocalプログラムを導入し、リテーラーがリテール大手の配送網に入り込めるようにした。
ツア氏は、Vehoがデリバーなどの他社と競合しているとは見ていないが、国有の運送会社を競合と考えている。そのような国有企業の技術はeコマースのない「旧世界」のために設計されており、それがそのセクターが今後10年でいかに成長するかという展望とともに「完全にeコマース顧客のニーズに基づいて」創設されたVehoとの違いだ。
世界のラストワンマイル配送市場は2020年に約1080億ドル(約12兆3993万円)と評価され、今後4年で1469億6000万ドル(約16兆8720万円)増加する。テクノロジーおよび調査会社のTechnavio(テックナビオ)によると、北米がその成長の39%を占める。
購買におけるeコマースへの移行にともない、物流および宅配便セクターは競って需要に追いつこうとしている。彼らは2020年のホリデーシーズンにおける、ハルマゲドンならぬ「shipaggedon(シッパゲドン)」から、半導体の製造と出荷の遅延、入港まで、ここ数年で大きな挫折も味わっている。
Vehoは、顧客が戻ってきて注文してくれるような、顧客とeコマース企業間の信頼を促進する真にすばらしい配送体験を作り出したいと考えている。ツア氏はアパレルとアクセサリー、食品雑貨類の販売を行う顧客に言及し、従来の配送会社から箱を受け取っていた顧客と比べて、すでに顧客の再購入で20%の増加、顧客生涯価値で40%の増加、ネットプロモータースコアで8ポイントの増加がみられたことを付け加えた。
一方で、ゼネラルカタリストのKyle Doherty(カイル・ドハーティ)氏は、8000億ドル(約91兆8516万円)のeコマース市場を狙う多くの企業にとってチャンスがあると述べた。その半数が米国にあり、毎年全体で約1000億ドル(約11兆4815億円)ずつ成長することが予測される。
ツア氏と同じくドハーティ氏も、サンフランシスコの自宅で荷物を受け取る際に失望してきたが、そこでは荷物の盗難が起きているという。
「どうしようもなく感じますし、状況を管理できません」と彼は付け加えた。「我々は最前線でeコマースの使用と、ストレスを受けるサプライチェーンにおける劇的な加速を見てきました。コンピューター技術が物流業者に優れた体験をもたらすことができると信じてきました。私がイタマーさんに紹介されたとき、すぐにわかりました。彼も顧客体験について業者と消費者に共感している。それがよくわかりました」。
画像クレジット:Getty Images
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(文:Christine Hall、翻訳:Dragonfly)