競争激化が進むアメリカのバイクシェアリングサービス――Spinが800万ドルを調達

中国に続き、アメリカでもバイクシェアリングサービスが盛り上がってきている。特別な駐輪場を設置せずに、街中やキャンパス上のさまざまな場所に自転車を配置する「ドックレス」と呼ばれるタイプのサービスが現在の主流だ。自転車の位置はGPSで把握できるようになっているため、ユーザーはスマートフォンを使って自転車を見つけられる上、解錠や支払いも全てモバイルアプリを通じて行える。何と言っても、使い終わった後に(法律で認められているエリアであれば)どこにでも自転車を停められるのがこのサービスの魅力だ。

以前TechCrunchでも報じた通り、現在VCはアメリカ国内でドックレス・バイクシェアリング・サービスの普及を目指すスタートアップに大金を投じている。しかし新興企業は、当局の規制や資金力で勝る中国企業の進出といった困難に苛まれてほか、彼らの競合にあたるMotivate Co.の”ドック有”・バイクシェアリング・サービスは、さまざまな都市に導入され始めている。

そんな中、テック界での経験豊富なDerrick Ko(CEO)、Euwyn Poon(社長)、Zaizhuang Cheng(CTO)によって設立されたサンフランシスコ発のSpin(登記上の企業名はSkinny Labs Inc.)は、最近800万ドルを調達した。Grishin Roboticsがリードインベスターを務めたこのシリーズAラウンドには、Exponent.VCCRCM、そしてエンジェル投資家のMatt BrezinaとCharlie Cheeverが参加した。

Euwyn Poonによれば、今後Spinは調達資金を使って人員を増強しながら、”波風を立てずに”同社のバイクシェアリングサービスを国内に広げるため、各都市との交渉に入っていく予定だという。

というのも、ドックレス・バイクシェアリング・サービスが一般に認知されるようになるにつれて、歩行者の安全確保を求める声や景観を損なうのではないかという不安の声が市民の間に広がっているのだ。この点に関しSpinは、規制当局や各都市との関係性を悪化させないために、Airbnbのポリシーチームを創設したMolly Turnerをアドバイザーに迎えた。

サンフランシスコ ー Spinの共同ファウンダーたち。

Grishin RoboticsのファウンダーDmitry Grishinは、Spinのサービスが大気汚染の改善や渋滞の解消ばかりか、市民の運動促進にも繋がる可能性を持っているため、各都市には導入のメリットがあると言う。「ライドシェアリングサービスが一般に普及しても、サンフランシスコのような都市では渋滞が解消しなかったのには驚きました。むしろ渋滞は悪化するばかりです。そこで私は、短距離移動に適したシステムの導入が不可欠で、バイクシェアリングサービスには効果があると考えています。通勤者だけでなく旅行者にとっても便利ですしね。全て合わせて考えると、市場規模もかなり大きくなると思います」と彼は語る。

Spinの競合にも既に資金調達を終えた企業がいくつかある。アメリカで初めてドックレスサービスを開始したSocial Bicyclesは、これまでに700万ドルを調達しており、既に黒字化も果たしている。新興スタートアップのZagsterは、今年の1月にシリーズBで1000万ドルを調達したと発表しており、春にはLimeBikeがAndreessen Horowitzを中心とするシリーズAで1200万ドルを調達した。

以前Lyftでプロダクトマネージャーを務めていたDerrick Koは、乗り心地がよく自動的に施錠される自転車と使いやすいモバイルアプリがSpinの差別化のポイントだと話す。現在同社はApple PayやAndroid Pay、クレジットカードでの支払いを受け付けているが、将来的には支払いオプションを増やしていこうとしている。

CTOのZaizhuang Chengは「私たちのゴールのひとつは、クレジットカードやスマートフォンが普及していないコミュニティにも、他の都市と同じようにバイクシェアリングサービスを提供することです。既に台湾には前例があり、電車に乗ったユーザーは目的の駅で降りると、自転車に乗って移動を続けています」と話す(つまり、地下鉄に乗るときに使うICカードを自転車でも使えるようにすればいいのかもしれない)。

今年の6月にSpinはシアトルに進出する予定だが、何台の自転車を設置するかや、シアトルの次に狙っている都市については明らかにされなかった。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

中国のバイクシェアリング企業がアメリカへ接近中―、高まる投資家の期待

Uberの悲痛な叫び声がアメリカ国内にこだまする中、中国で成長を遂げた新たなオンデマンドサービスがアメリカに進出しようとしている。

これはカーシェアリングでなければバスシェアリングでもない。街中の交通手段の変化を必死に追っている投資家自動車メーカーが、バスシェアリングに注目しているというのは間違いないが、この記事のテーマは別だ。その新たなビジネスとはバイクシェアリング(自動車レンタル)、それも自転車を停めるドックが必要ないバイクシェアリングサービスだ。世界中の起業家やVCが、このサービスの可能性に大いに期待している一方、規制機関は(また)突然のように現れたトレンドで被害を被らないよう格闘している。

「ドックレス・バイクシェアリングは、人々がその(社会的な)メリットに気付くまでは、何かと不安をかき立てることになるでしょう」とAtomicoの共同ファウンダーMattias Ljungmanは話す。さらに彼は、目的地がどこであれ、ユーザーが移動し終えたタイミングで自転車を手放すことができる仕組みこそ「このサービスの本当に革命的なポイント」だと言う。ドッキングステーションの仕組みは「とても複雑」で、「ユーザーは予めどこに自転車を停められるか把握しておかなければならない上、ステーションがいっぱいで自転車が停められないということもあります。これは大変不便なことです」と彼は付け加える。

Atomicoは数ある企業の中でも、北京を本拠地とするドックレス・バイクシェアリングサービスのOfoに賭けることにした。同社はこれまでに、複数のVCから総額5億8000万ドルを調達しており、ポストマネーの評価額は10億ドルを超えている。Ljungmanによれば、Ofoの勢いを見た中国の投資家は、設立から3年しか経っていない同社にさらにお金をつぎ込もうとしているようだ。Ofoは100万台以上のコネクテッドバイクを中国の街中に配備しており、1日あたりの利用数は1000万回を超えるという。ちなみに、ロンドンが運営しているバイクシェアリングサービスの利用数は”1年で”約1000万回と言われている。

上海生まれで設立から16ヶ月が経ったMobikeも、Ofoと同じような過程をたどっており、保有している自転車の数は100万台以上、累計調達額は4億1000万ドル、さらに評価額は10億ドル強とのこと(WSJ調べ)。

上記の2社には劣るものの、半年前に設立されたばかりで北京に拠点を置くBluegogoも、既に6500万ドルを調達している。

とは言っても、アメリカと中国は全く別の国だ。中国で成功をおさめたビジネスモデルが、アメリカでもうまくやっていけるかどうかはまだわからない。「世界中でうまくいっているビジネスが、5000年におよぶ歴史を持つ中国ではうまくいかないケースがあるように、中国で成功したビジネスが、(アメリカでも)人気を呼ぶかどうかはわかりません」とSOSVのファウンダーでマネージングパートナーのSean O’Sullivanは言う。

仲間か敵か

O’Sullivanは、誰よりもドックレス・バイクシェアリングサービスに注目してきた。多くのVC同様、彼もこの分野の投資合戦に参加している。アメリカでは、ニューヨーク発のSocial Bicycles(またはSoBi)が、位置確認のためのGPSシステムを搭載したドックレスバイクや、ユーザーがどんな駐輪場にでも自転車を停められるような統合型ロックシステムを作った初めての企業だと言われている。

ファウンダーのRyan Rzepeckiは、2010年のSoBi設立以前、ニューヨーク市運輸局にプロジェクトマネージャーとして17か月間勤めていた。彼は、ニューヨーク市が当時Citi Bikeの親会社だったAltaとパートナーシップを結ぶずっと前の段階から、バイクシェアリングに関する同市の構想について知っていたと言う。今やアメリカ最大のバイクシェアリング・プログラムを運営しているニューヨーク市だが、その実現に向けては、何年も前から入念な準備を行っていたのだ。このことについてRzepeckiは、「街がどのように管理されているかや、何が地方自治体にとっての心配点なのかを知るきっかけになった」と話す。

数ある必要条件の中には「各自転車がきちんと検査・整備されるかや、ドッキングステーションがきれいに管理されるか、街全体に偏りなく自転車が配備されるか、データは共有されるか」といったものがあったと、当時はRzepeckiの上司にあたるニューヨーク市運輸局長で、現在はさまざまな地方自治体で都市計画関連の顧問を務めているJanette Sadik-Khanは話す。さらに彼女は、諸々の条件が「かなり基本的なもの」で、ニューヨーク市民の利益を最優先してプログラムに関する議論が進められていたという。しかし、「自分勝手な企業が提供するサービス」では、市民の優先順位が下げられてしまう危険性もあるとSadik-Khanは漏らす。

彼女はOfoやMobikeに関し、「最近設立された企業は、(自転車を)マーケティング用の車両のようなものと捉え、公共の道路を自分たちの利益のために使おうとしているように見えます」と語っている。上海のような渋滞の多い街では、バイクシェアリングサービスの登場によって、市民が自由に街中を移動することができるようになったが、その過程では、自転車が歩道に散乱したり、空に向かって高く積み上げられたりしている光景も見られた。「津波のような自転車の流入を全て受け入れてしまうと、街中の至るところに乗り捨てられた自転車が散乱するという危険な状況が生まれかねません」

Rzepeckiも、OfoとMobikeはSoBiに比べ、街への影響をしっかり考えていないと感じている。なおSoBiは、何千台もの自転車を既にカリフォルニア州のサンタモニカやオレゴン州のポートランド、その他のアメリカ、カナダ、ヨーロッパの各地に配備している。

さらに重要なこととして、SoBiは「営業している全ての都市で、地方自治体とパートナーシップを結んでいる」と彼は話す。「自治体側での経験から、私たちは彼らにとっての良きパートナーであることの重要性を理解しています」

さらにSoBiは駐輪に関してインセンティブを提供しているため、ユーザーは「自転車を探し求めて街を歩き回る代わりに、事前に数ブロック先にたくさん自転車が停めてあると把握できる」ようになっている。その仕組は次のようなものだ。まず利用料は、1時間あたり3〜8ドル(都市によって異なる)に設定されている料金に基いて、1分ごとにチャージされるようになっている。利用時間の平均は15分程度なので、1回あたりの利用料は2ドル前後となる。しかし、もしも自転車がSoBiの定めるエリア外に停められた場合、その自転車を利用していたユーザーは追加料金を払わなければならない。逆にSoBiがリクエストするエリアに自転車を停めたユーザーに対しては、クレジットが支払われるようになっている。

それだけで本当に効果があるのかと疑う人もいるかもしれないが、街全体に自転車を配備する上で、この作戦には「かなりの効果がある」とRzepeckiは話す。一方OfoとMobikeは、そのようなインセンティブプログラムを導入しておらず、将来的に自主規制されていくだろうと高をくくっている。さらに両社は、中国の各都市へ進出した際にも、現地規制当局との相談なしに営業を開始しており、投資家(XiaomiやTencent Holdingsなど中国の大企業を含む)はこの動きを容認しているようだ。

しかし、それも最近変わりつつあるようで、「Ofoは政府と協力して営業しています」とLjungmanは主張する。一方Rzepeckiは、「Ofoは常に解決策を探していますからね」と話し、彼らには政府と協力する以外の道はなかったことを示唆した。「深センや上海では、街で混乱が起きないようサービス基準が導入され始めています」

善か悪か

それぞれの街が、バイクシェアリング・プログラム(ドックレスかどうかは置いておいて)の成功を願う理由はたくさんある。自転車は二酸化炭素を排出しないし、車よりも場所をとらず、サイクリング自体も心臓に良い運動として知られている。

OfoとBluegogoの突然のアメリカ進出計画で不意をつかれたサンフランシスコでは、最近ドックレス・バイクシェアリングサービスの認可に関する法案が提出された(当初は公共の自転車置場を使うつもりでいたBluegogoも、最近では民間の駐車場内に設置されたバイクステーションを使う予定だと言いはじめている)。

北米の主要51都市が加入しているNACTOは、今週はじめに「街の交通網やビジョンに沿った」ものであれば、どんなバイクシェアリングサービスも歓迎するという旨の声明を発表した(さらに同声明には「本当の意味での交通手段を市民に提供するつもりがなく……(むしろ)メディアの注目を集め、いち早くエグジットすることを画策しているような(企業は)……各都市にとっての脅威だ」とも記載されている)。

公共交通機関ではカバーできない短い距離を移動する手段を求めている通勤者にとっても、ドックレスバイクは大変便利なサービスだろう。Rzapeckiは既にこの時点で、SoBiの自転車が電動になり、自動運転車や自動運転シャトルバスと共に通勤の足となる未来を思い描いている。Ofoも同じような野望を抱いているとLjungmanは言う。これには配車サービス大手のDidiがOfoの株主であるということも大いに関係しており、既にDidiのユーザーはDidiのアプリを通じて、Ofoの自転車を予約することができる。

設立当初から物流企業を目指しているUberのことを考えると、自転車には人以外のものを運ぶ力もあるということに気がつく。デリバリーサービスを例にすると、「(Ofoは)現状デリバリーサービスを始めようとは考えていませんが、同社が構築しているネットワークやそこでの流通の可能性を考えると……彼らのネットワークを利用できる製品やサービスはかなりたくさんあると思います」とLjungmnaは言う。

いずれにせよ、投資家やファウンダーがいわゆるデカコーン企業(評価額100億ドル以上の非上場企業)を目指したレースの先頭を走っているということは、恐らく間違いないだろう。

Ofoは、今年7月までにアメリカの約10都市に5万台の自転車を導入するという、グローバルな野望を抱いているようだが、Ljungmanはアメリカ市場はそう簡単に攻略できないと考えている。「進出先の都市は慎重に選ばなければいけません。世界の都市の中には、自動車の利用には適していない街がたくさん存在します。そのような街は、歩行や自転車、さらには馬での移動を前提につくられているのです」と彼は話す。「文化的な側面も重要です。例えばアムステルダムでは、街のいたるところで自転車を見かけ、自転車が主要な移動手段だということがすぐにわかります」しかし、アメリカの多くの都市では、通勤で自転車を利用している人の割合が1%以下だ。

また、バイクシェアリングというビジネスの経済性自体にも課題が残っているように見える。各社は中国メーカーとタッグを組んで、できる限り効率的かつコスト効率よく自転車を製造していると主張しているが、現時点でもバイクシェアリングが本当にもうかるビジネスなのかどうかはハッキリしていない。例えば、2014年にAltaからCiti Bikeを買収したMotivateは、国内10都市で1万台以上の自転車を管理しており、去年の利用回数は1400万回を記録していたものの、まだ黒字化を果たしていない、と同社に近い情報筋は語っている。電動自転車を使うとなると、コストはさらに上がってくるだろう。

さらにこの業界にはペテン師のような輩までいる。O’Sullivanによれば、あるドックレス・バイクシェアリングサービス企業の共同ファウンダーたちが、投資家を装ってSoBiのRzepeckiに近づき、累計調達資金額700万ドルで黒字化を果たしながら現在大型資金調達を検討している同社の詳細を聞き出していたという。その後、彼らは手に入れた情報をもとに資金を調達し、別のスタートアップを立ち上げたのだ。

Rzepeckiはこの件についてはコメントを控えており、「この業界に参入しようとしている人は大勢いて、なかには他社のスキに付け込もうとしている人もいるのかもしれません。これはバイクシェアリングがビジネスとして成り立つということを表しているという意味では、良いサインなのかもしれませんが、必ずしも全てのプレイヤーが私たちと同じことを重要視しているわけではないようです」と話すに留まっている。

バイクシェアリング業界の様子を見ていると、第二のUberとなる企業が誕生しそうな気さえする。少なくとも、同業界に注目している人たちはそう願っているようだ。

「Uberの問題児っぽい行動に影響を受けた企業は、法を破って何かしらの報いを受けるまで突進しようとしているように感じます」とO’Sullivanは言う。「実際にUberはそのような戦略をとった結果、何億ドルという罰金を支払いながらも、莫大なお金を手にしました」

「Uberが登場するまで、そのような戦略がうまくいくとは思ってもみませんでしたが、最近ではUberを真似しようとする企業もいるのかもしれません」

取材協力(かつ貴重な情報提供者):Lora Koldony

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

イメージ戦略の一環?―、Uberが財務情報の一部を公開

人気配車スタートアップのUberは、この度Bloombergに財務情報の一部を公開した。その後Bloombergが報じた数字からは、同社が未だに凄まじい勢いで成長を続ける様子や、巨額の赤字を記録しながらも現金の流出を抑えつつある様子がうかがえる。

これまでにもUberの財務状況がリークしたことは何度かあったが、今回発表された内容は同社にとってポジティブなものだった。また、Uberがこのタイミングで情報を公開したというのにも納得がいく。というのも、4月に入って2017年Q1の結果が出揃ったということもあるが、崩壊しきった企業文化や短気なCEO、相次ぐ幹部の離脱を背景に同社には批判が集中している。さらにアメリカのライバルLyftが最近6億ドルを調達し、評価額がさらに上昇したことも関係しているかもしれない。

どうやらUberは、売上が増加している様子を伝えることで、同社に対する論調を変えようとしているようだ。一連のスキャンダルが起きる以前のUberは、売上記録を次々と破るディスラプティブな企業として評価されていたため、同社の経営陣がポジティブな財務情報を公開することで、当時のような評価を取り戻そうとしているのかもしれない。

この記事では、公開された数字をもとに、まずは事実としての数字を並べ、その後にそれぞれが何を意味するのかについて考えていきたい。

事実、数字、調整後損失

Bloombergが公開した情報によれば、2016年度のUberの総取引額は200億ドルだった。そして、その3分の1以下にあたる65億ドルが純売上(GAAPベース)とされている。

さらに、2016年Q4の純損失はQ3よりも5%増大したと報じられている。Q4の純損失が9億9100万ドルだったとするBloombergの報道内容を考慮すると、Q3の損失は約9億4300万ドルだったとわかる。

また、2016年度の純損失額(調整済み)は28億ドルだった。ここに中国事業関連の損失を加えると、トータルの純損失額は38億ドルに達するとBloombergは試算している(なお、以前の報道では、2015年度の純損失額が”少なくとも20億ドル以上”とされていた)。しかしどちらの数字も、「従業員向けの株式報酬や不動産投資、車両購入費などの経費」を考慮していないと記されている。

そのため、”調整後”の2016年度の純損失が38億ドルだったとしても、厳密なGAAPベースの数字はもっと悪かったと考えられる。仮に38億ドルという数字を使うと、2016年度のUberの純利益率は-58.5%だった。

この膨大な赤字額は、急激な売上額の伸びで一部正当化されている。

2016年Q4の総取引額がQ3と比較して28%伸びた結果、Q4の純売上額は29億ドルに到達したとBloombergは報じているが、29億ドルという純売上額は、Q3に比べて74%も伸びている。

なぜだろうか?この差には純売上の計上の仕方が関係しているようだ。

純売上はユーザーが支払う料金のうち、Uberの取り分のみをカウントしている。しかしカープーリングサービス(UberPOOL)に関しては、料金全体が純売上として捉えられている。つまり、複数人のユーザーが1台の車を共有するカープーリングサービスにUberの売上がシフトするにつれて、同社の売上の増加率も高まっていくのだ。

上記を考慮すると、2016年のUberの売上額は、そこまで驚くようなものではないと言えるだろう。さらに、これによってQ4の成績の見方も変わってくるばかりか、総取引額と純売上額の伸び率の差分も一考に値する。

最後に、現在Uberは70億ドル分の現金を保有しており、さらに数十億ドル分の借入ができる状態にあるようだ。ここから、同社がすぐに現金不足の状態に陥る可能性は低いと言える。

赤字は問題なのか?

Uberが赤字を計上すること自体は想定の範囲内だ。会社の規模もあって、同社の赤字は長いあいだ見逃されてきた。

しかし、各四半期の調整後損失額が10億ドル弱というのは注目に値する。特にUberのコスト構造を考えると、圧倒的なバーンレートだ。

以前までのUberであれば、オペレーションや成長を支えるために新たな資金を調達するのにも、何の心配もいらなかった。しかし、数々のスキャンダルや、設立からの年数・評価額・市場の成熟度と見合わない継続的な赤字を考慮すると、投資家はそこまでUberへの投資に意欲的ではないかもしれない。

これまでUberに投資したことがない、もしくは今後同社への継続的な投資を考えている投資家は、きっと「UberPOOLの売上の考え方がUberXの売上とは違うのであれば、GAAPよりもNon-GAAPの数字を信用したほうがいいということですか?」という質問を投げかけたくなるだろう。そうなるとUberは難しい立場に立たされる。というのも、Uberは売上に関してはGAAPベース、損失に関してはNon-GAAPベースの数字を見てもらいたい一方で、投資家は保守的にNon-GAAPベースの(小さな)売上とGAAPベースの(大きな)損失に注目するかもしれないからだ。

以上をまとめると、なかなか答えが見えづらい問いにたどり着く。Uberはどのように黒字化しようとしているのだろうか?

黒字化への道

修正や注意書きを無視すれば、Q4の調整済み営業利益はQ3と比較して大幅に改善している。GAAPベースの純売上額は74%も増加している一方で、調整後の赤字幅は5%しか拡大していない。つまり、売上に対する損失の割合は改善しているのだ。

急速に成長しながらも未だ赤字続きのUberは、このような改善点を投資家に見せ、同社の将来に投資家の目を向けようとしている。永遠に赤字を出し続けようと考えている企業は存在せず、もちろんUberも例外ではない。長期的な利益のために短期的な損失を背負うというのは、資金豊富で成長志向な企業が目指す姿でもある。

そうすると、黒字化はむしろタイミングの問題だと言える。では、Uberはいつ頃黒字化を果たせるのだろうか?

この問いには、オペレーション上のコストを含むさまざまな要因が関わってくる。例えば、特定の時間内の走行距離に応じて、Uberは一定数のドライバーにインセンティブを支払っている。

なぜUberは情報公開に踏み切ったのか?

これまでのリークと違い、今回Uberは自らBloombergに財務情報を手渡すと決めた。その様子からは、同社に対する世間の厳しい風当たりをどうにかしようという、Uberの裏の狙いが垣間見える。

多くの私企業がそうであるように、Uberも基本的には事業に関する情報をできるだけ公開しないようにしている。しかしCEOのTravis Kalanickはそこから一歩踏み出して、繰り返しIPOに対する関心のなさを表明しており、昨年にはIPOを”できるだけ後ろ倒しにしたい”とさえ語っていた。

その一方で、Bloombergの記事からも分かる通り、Uberは赤字を垂れ流し続けているため、資金面では投資家に頼るしかない状態にある。

これまでUberは、さまざま投資家から資金を引き出すことに成功しており、680億ドルという膨大な評価額で、VCからの投資を受けたスタートアップとしては、他社を大きく引き離す最大規模の企業へと成長した。

しかし、その結果株価も急上昇したため、投資家は段々とUberの将来的な成長度合いに疑問を抱きだしているかもしれない。通常ベンチャー投資家は10年間で3倍のリターンを求めているものの、厳しい競争にさらされ、スキャンダル騒ぎで企業文化が疑われているUberの株価が、今後3倍になるというのは想像しづらい。

つまり、Uberが引き続き資金を調達するためには、株式上場以外の道はないのだ。上場を果たせば、Uberの従業員もストックオプションのメリットを享受することができる。

もしかしたら、今回の情報公開は市場の反応をうかがうための作戦だったのかもしれないが、それよりはむしろ、Uberに対して否定的な意見を持っている人を黙らせるための動きであったように見える。

まだわかっていないこと

これまでにも断続的にUberの財務情報がリークされてきたが、四半期ごとや年度ごとの売上成長率に関してはまだハッキリしていない。

さらに、UberPOOLに関する売上の計上の仕方にも疑問が残る。ドライバーの取り分がわかれば、もっと全体像が見えてくるだろう。

また、先日公開された”貢献利益(contribution margins)”に関する記事では、Uberのメイン事業における売上やコストの詳細が明らかになったが、他事業の詳細については未だわかっていない。

例えばフードデリバリー事業のUberEATSは、これまでに世界中の数十都市への進出を果たしている。The Informationの昨年のレポートによれば、2017年度の純売上額におけるUberEATS関連の金額は1億ドルくらいになると予測されている一方、この新規サービスのドライバーに対するインセンティブがかさみ、関連赤字額は1億ドル以上になるだろうと推測されている。

Uberは確かに成長しているが、赤字幅も(売上成長率よりは低いものの)拡大し続けている。同社は明らかに、Amazon式の成長への再投資を見逃してもらおうとしているようだが、いつかはUberも投資家に対して黒字化への戦略を(大々的に発表するかどうかは別にして)示さなければいけなくなるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

会議室シェアリング「スペイシー」が2億円調達、運用代行サービスも提供

民泊やライドシェアなどが普及し、シェアリングエコノミーが身近になってきているが、職場の会議室もいずれはシェアするものになるのかもしれない。会議室のシェアリングサービスを展開するスペイシーは本日、ニッセイキャピタルおよび既存投資家のフリービットインベストメントらを引受先とし、総額2億円の第三者割当増資を実施した。また、調達と同時に4月より新たに会議室の運用代行サービス「だれでも会議室」を提供すると発表した。

スペイシーは遊休スペースを会議室として一般ユーザーに貸し出せるシェアリングサービスだ。ユーザーはスペイシーのサイトから会議室を利用したい地域や時間帯、無線LANやホワイトボードなどの使いたい設備から検索することができる。場所にもよるが、利用料金は1時間500円程度から利用できる。これまでに登録されている会議室は首都圏ビジネス街を中心に2000室になり、これまでに60万人以上が利用したという。

今回の資金調達は、プロダクト開発や人材採用に充てるとスペイシーの代表取締役を務める内田圭祐氏は話す。特にスペイシーの会議室の登録物件を増やすことに注力していく計画で、本日発表した「だれでも会議室」サービスはそのための施策だという。「だれでも会議室」は物件オーナーや企業向けにWiFiや什器といった備品の提供から運営代行、保険までカバーした会議室の運用代行サービスだ。賃貸で物件を借りている企業や個人には、物件オーナーから貸し会議室として運営する許可を得るところからスペイシーで担うという。

会議室運用を始める際に一番のハードルとなっているのがこの物件オーナーへの説明と交渉と内田氏は説明する。物件オーナーから許可を得ることを手間に感じるユーザーが多く、そこで会議室運用を諦める人も多いのだそうだ。スペイシーは「だれでも会議室」でそうしたユーザーの代わりに物件オーナーにサービスの内容やリスクを丁寧に説明し、理解してもらった上で許可を得られるようにするという。

今後の事業展開としてはC2Cのサービスのみならず、法人向けにもプランを提供していきたいと内田氏は言う。今後ビジネスパーソンのリモートワークが進み、貸し会議室を利用する機会も増えるだろう。リモートワークを取り入れる企業が社員のために外で利用できる会議室をいくつか確保し、社員らが自由にいつでもどこでも会議室を利用できるようにするプランをスペイシーで提供したいと内田氏は話す。

スペイシーは2013年10月に設立し、2016年4月の調達ラウンドで複数の投資家から数千万円規模の資金調達を行った。また、スペイシーは2016年11月に開催したTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルには、広告スペースと広告主をマッチングするアドスペイシーというサービスで参加した。このアドスペイシーに関しては、広告の掲載店舗の開拓に動いているところと内田氏は話している。

社員数は3倍、投資額は2倍に引き上げ―、Airbnbが中国市場に攻め込む

中国進出に失敗した欧米テック企業の長いリストに、最近Uberが加わったように思われたが、Uberと共にギグエコノミーの寵児となったAirbnbは現在同国に攻勢をかけようとしている。

本日同社は、中国事業の新たなブランド名と旅行サービス機能Tripsの中国でのローンチについて発表した。さらに、Airbnbは中国でのプレゼンスを高めるために、現地にいる社員数を3倍、投資額も2倍に引き上げていくとも語った。

まず、China Broadband CapitalやSequoia Chinaらを株主に持つ現地法人Airbnb Chinaは、サービス名を“Aibiying”(爱彼迎)へと変更した。Airbnbによれば、この名前には「愛を持って互いを迎える」という意味があるようだ。

Aibnbは現在中国でのビジネスに力を入れています。この度、現地での名称を「愛を持って互いを迎える」という意味の爱彼迎 (Aibiying)へと変更しました。

一方Tripsとは、旅行中のユーザーが観光情報を入手したり、アクティビティの予約をしたりするためのサービスだ。中国最初の都市として、上海の情報が現在公開されており、Airbnbが注目しているもうひとつの市場であるインドのデリーでも最近同サービスが公開された。

Airbnbによれば、現在同社のプラットフォームには191ヶ国から約300万軒の物件が登録されており、そのうち約8万軒は中国国内の物件だ。さらに、これまでに中国の物件が利用された回数は、160万回にのぼるという。

中国は旅の目的地としても人気が高い一方で、中国人旅行者も世界から注目を浴びている。最近発表された、VISAが共著したレポートによれば、昨年の中国の旅行関連消費額は1370億ドルだった。この数字はこれから10年間で87%も増加すると予想されており、その頃の中国の旅行関連消費額はアメリカの倍、さらにはイギリス・ロシア・ドイツの消費額を足したものより大きくなると言われている。

Airbnbも、これまで530万人の中国人観光客が世界中のAirbnb物件を利用しており、2016年の1年間だけで、中国人旅行者による海外のAirbnb物件の利用数が142%も伸びたと話している。

このような背景もあり、同社は現在60人いる現地子会社の社員数を3倍に増やして、現地でのプレゼンスを高めようとしているのだ。また中国は、Airbnbがアメリカ国外で唯一開発拠点を置いている国でもあり、同社は開発スタッフの増強に注力しながら、中国事業への投資自体も2倍に増やすと語っている。

「これまでとは違うスタイルで世界中を旅行したいと考えている、新しい世代の中国人旅行者は大勢います」とAirbnb CEOのBrian Cheskyは声明の中で語った。「AibiyingとTripsが彼らの共感をよび、これまで無縁だった世界中の人やコミュニティーや地域を、彼らが訪れたいと思えるようなサービスを提供できればと私たちは考えています。Airbnbの中国事業がこれからどうなっていくかとても楽しみです」。

最近Airbnbが310億ドルの評価額で10億ドルを調達したと報じられ、さらに興味深いことに、その際2016年の下期は黒字だったことがわかった。リーチや売上という意味では、同社はこれまでとは違う地域に注目しはじめたようだが、依然中国では劣勢に立たされている。Airbnbに比べるとずっと低い10億円の評価額がついている地元企業のTujiaは、国内のAirbnbのコピー企業を駆逐しながら、中国トップの座を狙っている。

Expedia傘下のHomeAwayとパートナーシップを結んでいるTujiaによれば、現在プラットフォームには40万軒の物件が登録されており、同社は物件のオーナー・ユーザーの両方に関して中国市場を狙い撃ちしているという。Airbnbも最近Alipayでの支払いやWeChatのサポートを開始した一方、Tujiaは中国人旅行者の期待に沿うようなサービス重視のアプローチをとっている。具体的には、チェックイン専門の担当者や清掃担当者の配備や、さらに物件管理さえ行っていると、CEOのMelissa Yangは2015年のインタビューで語っていた

中国を訪れる欧米の旅行者にとっては、引き続きAirbnbが第一候補になるかもしれないが、Tujiaは徹底的に中国人旅行者のニーズを満たすことを目指しており、Airbnbのライバルで2015年に39億ドルでExpediaに買収されたHomeAwayとのパートナーシップを通じて、海外の旅行者にもリーチできる可能性がある。そうは言っても、Airbnbは中国を除く世界のほぼ全ての国を支配しており、特に中国で失敗を繰り返してきたアメリカの大手テック企業のことを考えると、今後同社の動向からは目を離せない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

荷物預かりサービスecbo cloakが数千万円の調達、登録店舗の拡充を目指す

旅行するとなると、スーツケースの他に購入したお土産などで荷物が多くなりがちだ。十分に観光を楽しむためには荷物を預けたいところだが、コインロッカーがすぐに見つかるとも限らないし、大型の荷物が入らないものも多い。ecboはそういった課題を解決するため、店舗が遊休資産を使って荷物を預かれるようにするシェアリングサービス「ecbo cloak」を提供している。本日ecboは、数千万円規模の第三者割当増資を実施したことを発表した。引受先は、既存投資家のANRI、個人投資家の渡瀬ひろみ氏と千葉功太郎氏だ。

ecbo cloakは荷物を預けたい人と荷物を預る店舗をつなぐシェアリングサービスだ。ユーザーはecbo cloackで荷物を預けておく場所と時間を予約し、決済まで完結できる。店舗側にとっては使っていない場所を荷物預かりで有効活用するとともに、観光客に店舗のことを知ってもらう機会を得られる。

ecbo cloakは1月18日にローンチし、登録店舗は100店舗になったとecboの代表取締役社長を務める工藤慎一氏は話す。登録店舗にはカフェやレンタサイクル店、ネイルサロンやアパレルショップ、コワーキングスペースなどがあるそうだ。

サービスローンチ後に台湾のメディアでも紹介されたことから、ecbo cloakの利用者は台湾、香港からの旅行客が増えているという。現在は、ユーザーの9割が外国人と工藤氏は説明する。ecboを利用した訪日外国人旅行客に話を聞いたところ、コインロッカーの場合、空いていなかったり、大型の荷物は入らないことに困っていていて、ecbo cloakは彼らのニーズに応えられているという手応えを感じているという。

ecboは2015年6月に創業し、これまでにANRIから資金調達を行っている。今回の資金調達は主にプロダクトの開発と店舗開拓を進めるのに充てるという。まずは主要都市やイベント会場付近に提携店舗を増やし、年内には全国1万カ所の荷物預かり拠点を置くことを目標としていると工藤氏は話す。

ecbo cloakは現状、預かった荷物の手数料30%を得るビジネスモデルだ。ecbo cloakの1日の利用料は小型の荷物で300円、大型の荷物で600円なので、収益を上げるには店舗と荷物を預けたいユーザーのマッチング数をとにかく伸ばさなければならない。

ただecboは荷物預かりにとどまらず、ゆくゆくは海外への荷物の発送といったサービスを付加していくことも視野に入れていると工藤氏は話す。そのためにも、まずは物流拠点となる荷物を預かる店舗のネットワークを構築することに注力するという。「Uberは人の移動を変え、Airbnbは人の宿泊を変えました。ecboが目指すのは、モノの住まいとなり、モノの移動を変えることです」と工藤氏は話している。

Airbnbのようにオフィスをレンタル―、ドイツのOptionspaceが正式ローンチ

ベルリン発のスタートアップOptionspaceが、”オフィススペースのAirbnb”といった感じのサービスと共に、本日正式にローンチした。

具体的なサービス内容として、オフィス用の物件を探している企業(ここにはもちろんスタートアップも含まれる)は、Optionspaceのサイトを使うことで、最短1ヶ月から家具付き/家具なしのオフィススペースを借りることができる。

既にベルリン、ミュンヘン、ハンブルグ、フランクフルトの4都市でサービスを開始しているOptionspaceだが、「今後数週間のうちに」他のドイツの都市にもサービスを展開していく予定とのこと。

「オフィススペースの賃貸契約のほとんどは、長期契約を前提にしており、柔軟性に欠けます。一方オフィスを借りる企業は、そこまで長い期間に及ぶ計画を具体的に立てられないことが多いため、長期契約は彼らにとって大きな金銭的リスクに繋がる可能性があるのです」とOptionspaceの共同ファウンダーでCEOのMoritz ten Eikelderは話す。なお彼は以前、Rocket Internet傘下の清掃代行サービスHelplingで、フィナンス部門のグローバルヘッドを務めていた。

しかしOptionspaceのマーケットプレイスには、従来のオフィス契約とは対照的に、フレキシブルな契約内容の物件しか掲載されていない。中には契約の終了日が決まっておらず、解約通知の期間が短いものもある。さらにユーザーは、物件のタイプやオフィスで働く人の数、最小敷地面積などから物件候補を絞り込めるようになっている。契約までのやりとりは基本的に全てオンラインで行われるが、必要に応じて事前に希望物件を内覧することもできる。

「物件を掲載している側の顧客にはふたつのタイプがいます。ひとつめが、オフィススペースに余りがある企業で、彼らは使っていない部屋を貸し出すことで、収益をあげることができます。そしてふたつめのタイプが物件の所有者や資産管理会社で、彼らはフレキシブルな契約内容を提示することで、通常よりも高めの値段設定で物件を貸し出すことができます」とEikelderは付け加える。

Opetionspaceのビジネスモデル自体は、そこまで目新しいものではない。一旦ユーザー間で賃貸契約が結ばれると、同社は月々の賃貸料の10%を最大12ヶ月間、貸し主から徴収するようになっている。

競合サービスについてEikelderは、「フレキシブルなオフィススペースの選択肢を見てみると、ビジネスセンターやコーワーキングスペースが私たちの主な競合サービスにあたるとわかります。しかし、私たち自身も何ヶ月間かそのような場所で仕事をしたことがありますが、完全にオフィスにとって代わるような気はしませんでした。料金が高めに設定されているということもありますが、ほとんどのビジネスセンターやコーワーキングスペースは、ある程度の社員数がいる企業のニーズを満たしきれていません」と語る。

Optionspaceの投資家には、Vito One(Viessmann Group内でシード投資を専門に行っている組織)や、シード期前の段階にある企業への投資を積極的に行っているMakers、FactoryファウンダーのUdo Scholemer、Helpling共同ファウンダーのBenediktFrankeとPhilip Huffmann、Andrew Goldstein(LMU Entrepreneurship Centerの共同ファウンダー)、Paul Bauwens-Adenauer、Patrick Adenauer博士(BAUWENS Unternehmensgruppeオーナー)が含まれている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

終わらない中国の配車サービス戦争―、DidiのライバルUCARが10億ドルを調達へ

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【編集部注】オリジナルの英語記事は、中国におけるTechCrunchのパートナーメディアTechNodeからの転載。

Uberの中国事業買収を経て、Didi Chuxingは中国の配車サービス業界に残った唯一のプレイヤー、つまり広大な中国市場を掌握する企業になったと考えられていた。しかしDidiの成功は、同時に競合企業に新たなチャンスをもたらすことになった。たとえDidiであっても、どうやらひとつの企業が中国市場全体を支配するというのは不可能なようだ。

Didiの中国における有力なライバルUCARは、中国の銀行システムを運営しているUnionPayを含む4社から、合計46億中国元(6億7000万ドル)を調達したと今週発表した。同社の株主には、Warburg PincusやJack Maといったビッグネームも含まれている。

さらにUCAR会長のLu Zhengyaoは現地メディアに対し、追加調達資金を含めた合計調達額は70億中国元(10億2000万ドル)を超える予定だと話している。彼によれば、調達資金はマーケティングや採用、オフラインでのプレゼンス向上や車両の購入に充てられるという。

UCARは過去にも巨額の資金を調達しており、昨年10月には100億中国元(14億5000万ドル)をプライベートプレースメント(私募)で調達した。これは素晴らしい数字である一方、資金調達に関してDidiは他社に大きくリードしている。同社は最近行われた73億ドルのラウンド(Apple、Tencent、Alibaba、Softbankなど大手IT企業が参加)を含め、これまでに105億ドルを投資家から調達しているのだ。

Didiはドライバーをクラウドソースで集め、個人の車を使って営業しているのに対し、UCARは自社で車を保有し、タクシー業のライセンスを持ったドライバーが業務にあたっている。認可を受けたドライバーを売りに、UCARは今後利益を拡大できる可能性があると共に、彼らは規制面でのトラブルを回避するという重要な役割も担っている。

Shenzhou Zhuancheと呼ばれる配車サービスに加え、UCAR傘下で香港株式市場に上場しているCar. Incが提供しているレンタカーサービス、その他にも自動車のオンラインマーケットプイス、自動車ローンとUCARは現在4種類のビジネスを運営している。業務内容には既にかなり広がりがあるように見えるが、CEOのCharles Luはさらに新しい分野へ進出していきたいと言う。現状のまま行けば4つのビジネス全てが今期黒字になる予定で、新たなビジネスとしては自動車製造業という案が挙がっている。

多くの中国発テック系スタートアップ同様、UCARも中国の店頭取引(OTC)市場に上場している。彼らは昨年9月に、配車サービス企業としては初となる上場を果たし、現在の時価総額は409億3000万中国元(59億5000万ドル)に達している。一方Didiはまだ上場しておらず、具体的なIPOの計画についても発表されていない

厳しい競争環境や政府の締め付けにも関わらず、中国の配車サービス市場を狙う現地企業は後を絶たない。LeEcoの投資先であるYidaoは、長引いているDidiのUber中国事業買収が完了したタイミングで生まれるギャップを狙っており、2015年には10億ドルの評価額で7億ドルを調達した。

他には、中国トップのネット企業Meituanも、最近自社のアプリに配車機能を追加し、自動車メーカーのGeelyは、Caocao Zhuancheと呼ばれる配車サービスの営業範囲を拡大させた。

2015年のDidi DacheとKuadi Dacheの合併や、現在進行中のDidiとUberの話など、大手企業の統合が進む中、中国の配車サービス業界における戦いは終わったというのが大方の見方だった。しかし、UCARの資金調達のニュースからもわかる通り、市場は成熟しつつありながらも、戦いはまだ終わっていないようだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

中国で新たなユニコーン企業が誕生―、オンデマンドレンタサイクルのOfo

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ユニコーン企業なしに業界は盛り上がらない。最近中国で投資が集中している、オンデマンドで自転車を借りられるサービスを提供する企業の中から、初めて評価額が10億ドルを超える企業が誕生した。

オンデマンドレンタサイクル業界には、今年だけでもこれまでに3億ドル以上のお金が集まっており(しかもその投資は1社に集中している)、Ofoはついに誰もが待ち望んでいた、この業界初となる評価額10億ドルを達成した。北京に拠点を置く同社は、DSTが中心となったシリーズDで4億5000万ドルを調達したと本日発表した。

配車サービスで中国トップのDidi Chuxingは、昨年Ofoと投資契約を結んでおり、今回のラウンドでもその存在感を発揮していた。Didi以外でOfoのシリーズDに参加した投資家は、全てDidiにも投資したことがある企業だったのだ。具体的には、リードインベスターのDST、Matrix China、CITICがそうで、今回のラウンドではDidi自体も投資を行った。

Ofoと競合サービスの戦いは、DidiとUberの戦いと似ている部分が多いため、Ofoへの投資はDidiらしく映る。なお、DidiとUberの対決の結果はご存知の通りで、Uberが負けを認め中国事業をDidiに売却することになった

一方Ofoは、Tencent、Xiaomi、Sequoia China、シンガポールの政府系ファンドTemasekなどから資金を調達したライバルMobikeと、助成金・資金調達バトルを繰り広げている。Mobikeは、年明け1月にシリーズDで2億1500万ドルを調達し、その後FoxconnTemasekからの戦略的投資として少なくとも8500万ドルを追加調達した。MobikeはOfoに先んじて、レンタサイクル業界でもっとも多くの資金を集めたスタートアップだと主張していたが、今度はOfoが「初のユニコーン企業」というタイトルで反撃した。

あまり深い意味を持たない形だけのタイトルや自賛は置いておいて、彼らのビジネスモデル自体にはさまざまな疑問が浮かんでくる。Uberが考案しDidiが中国でスケールしたライドシェアサービスには、長期的な利益率に関して問題があると思っている人もいるかもしれないが、MobileとOfoの話は全く別物だ。

両社とも表向きは、テクノロジーを使って誰でも自転車を借りれるような環境をつくろうとしている。自転車にはGPSチップが搭載されているので、どこかにまとめて駐輪しておく必要がなく、ユーザーはモバイルアプリを使って簡単に自転車を借りられる。この仕組みは、ロンドンの「Boris Bikes」や世界中の国々で公的機関が提供しているレンタサイクルサービスとほぼ同じだ。

仕組み自体は大変便利だが、1時間当たり1中国元(0.15ドル≒17円)という利用料でどのくらいの利益が出ているのかはよくわかっていない。さらに自転車を壊そうとする人(どこにでも嫌な人はいるものだ)の問題やデポジットの取り扱いに関する問題もある。TechCrunchのパートナーサイトTechnodeの最近の報道によれば、レンタサイクルを提供している規模の小さな企業の中には、デポジットを資金繰りに利用しているところまであるという。

スケールに関しては、昨年6月からこれまでに2000万人の登録ユーザーに対して、100万台を貸し出したとOfoは発表している。さらに同社は中国の40都市で営業しており、現在はアメリカ、イギリス、シンガポールなどへの進出に向けた初期段階にあるという。

一方Mobikeは、これまでに1000万人のユニークユーザーが、2億回以上も同社のサービスを利用したと最近発表した。彼らは大都市を対象にサービスをスタートさせたが、その後拡大を続け、今では北京、上海、広州、深センを含む国内21都市をカバーしている。さらにOfo同様、Mobikeも今年中にアジア、ヨーロッパ、北米といった海外市場へ進出しようとしている。

Uberの中国事業の買収によって、Didiはひとつの戦いを終わらせることができたかもしれないが、またすぐに新たな戦いが起きようとしている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

複数のブランドで店舗をシェア―、Bulletinが提案する小売店の新形態

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スタートアップの世界にいると、物理的な店舗を設けるというのは少し古臭い感じがする。都市部で人気の地域に出店するためにバカ高い賃貸料を払って、ましてや長期間の契約を結ぶなど考えたくもないほどだ。

しかしY Combinatorの投資先であるBulletinは、実店舗で商品を販売したいと考えているブランドのために柔軟に使えるスペースを提供しようとしている。COOのAli Kriegsman(CEOのAlana Branstonと共に下の写真に写っている)は、自分たちのアプローチを「小売のためのWeWork」と表現する。

Bulltinは店舗となる場所をおさえ、さまざまなサイズ(少し棚が置いてある程度のものから、もっと大きいものまで)のセクションに区切ることで、顧客企業に販売スペースを提供しており、顧客は気に入ったセクションを1ヶ月単位で借りられるようになっている。

店を訪れるお客さんは、小規模で独立したさまざまなブランドの商品を、ひとつの店舗でまとめて見ることができる。恐らくブランドの入れ替わりのスピードも速いので、店を訪れる度に違った雰囲気を味わうこともできるかもしれない。

しかも通常の小売店と違い、ブランド側は「大きなスペースにある各ブランドの店舗」とKriegsmanが表現する各セクションを、自分たちの好きなように形作ることができる。具体的には、どの商品がどこに陳列されるかや商品の価格もブランドが決められるほか、陳列されていない商品をiPadでお客さんに見せたり、メールアドレスなどの顧客情報を集めたりと、自分たちがやりたいことを何でもできるようになっている(店内の販売員はBulletinのスタッフだが、各ブランドは販売員を教育することも可能)。

ブランドの中には、Bulletinのサービスを小売販売モデルのテストに使うところもあれば、新商品のローンチ時に1、2ヶ月だけスペースを借りるところもある。解約の1ヶ月前に連絡さえすれば、顧客は好きなタイミングで好きなようにBulletinのスペースを使えるとKriegsmanは話す(賃貸契約と準備には5日ほどしかかからないと彼女は付け加える)。

Ali Kriegsman, Alana Branston

実はBulletinは、YCの2017年冬期アクセラレータープログラムに参加する前に、昨年の助成金プログラムにも参加していた。Branstonによれば、当初ふたりは「素晴らしい新進気鋭のブランドを扱っていて、実際に商品を購入できるウェブマガジン」をつくろうとしていたが、その流れでニューヨークシティ周辺にポップアップストアをオープンしたところ、ポップアップストアの方が儲かることがわかったという。

「顧客は別に新しいオンライン販売のチャンネルを必要としていないことに、私たちはすぐに気が付きました」とBranstonは話す。ブランドが実際に必要としていたのは、人がたくさん訪れて「すぐに商品を販売できる」小売スペースだったのだ。

Bulletinはまだオンラインストアも続けているが、今はポップアップ戦略を続けつつ、そのノウハウを応用して長期的に店舗を構えることに注力している。同社は、昨年11月にニューヨークのウィリアムズバーグに初めての店舗をオープンし、現在各スペースは「キャンセル待ちの状態」だとKriegsmanは言う。

本日(米国時間2月21日)Bulletinは2つめとなる店舗をソーホーにオープンした。ウィリアムズバーグの店舗は家財を中心に扱っているが、ソーホーの新店舗は女性向けの商品を集中的に扱っていく(核となるテナントにはシャワーキャップのShhhowercapや、キャンドルのKeapなどが含まれている)。そのほかにもBulletin Pantry(食料品)、Bulletin Baby(子供用品)、Bulletin Wellness(健康用品)といった新しい店舗を現在計画中だ。

彼女たちの計画から考えると、今後はもちろん店舗を増やしていくことになるが、当面の間全ての店舗はニューヨーク内でオープンし、将来的にはロサンゼルスを皮切りに他の街にも進出していきたいとBranstonは話す。

さらにBulletinは、スペースの予約や売上情報の確認が簡単にできるソフトの初期バージョンを既にローンチしており、今後もソフトの改良を続けていくとKriegsmanは付け加える。

YCに加え、BulletinはこれまでにNotation Capital、Halogen Ventures、Jesse Draperからも資金を調達している。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

富裕層向けサービスの拡充を狙うAirbnbーLuxury Retreatsの買収を検討中か

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設立当初のAirbnbは、ホテルの代わりに空いているソファーやベッドを安く貸りられるというサービスにフォーカスしていたが、高所得者向けサービスの拡充も大々的に進めており、今まさにその動きをさらに加速させようとしている。情報筋によれば、現在同社はLuxury Retreatsの買収話の大詰めに入っており、買収額は2億ドル近くなると言われているのだ。なおLuxry Retreatsは、Airbnbと似たサービスを提供しており、高級住宅を主に扱っている。

Bloombergが最初にこの話を報じ、そのときは買収額は3億ドルを下回るくらいだと言われていた。

あるソースによれば、Airbnbは「高級住宅の分野で豊富な経験を持つ、Luxury Retreatsの才能あふれるチームに強い興味を示しており、彼らの高級住宅に関する類を見ない強さは、Airbnbの強みと相互補完関係にある」。Luxury Retreatsが扱う物件の中には、フランシス・フォード・コッポラが保有するイタリア・プーリア州のヴィラや、リチャード・ブランソンのネッカーアイランドも含まれている。

Luxury Retreatsの買収は、できればIPO前にユーザベースや収益源の多様化を進めたいという、Airbnbの目的にもかなっている。なおAirbnbのこれまでの調達資金総額は30億ドル近く、昨夏には300億ドルの評価額で8億5000万ドルの調達を申請していた

関係者からの情報以外にも、この話を裏付ける別の証拠がある。私がLuxury RetreatsのCEO兼共同ファウンダーであるJoe Poulinに、何か話を聞けないかメールを送ったところ、なぜかAirbnbの広報担当者から返信が返ってきたのだ。私はAirbnbにはコンタクトしていないのにだ。

ちなみに彼からのコメントには「私たちは常に、Luxury Retreatsのユーザーに新しいオプションを提案しようとしていますが、現在発表すべき事項はありません」と書かれていた。

カナダのモントリオールに拠点を置くLuxury Retreatsは、これまでに1600万ドルの資金調達を行っている。また、2015年に行われた1100万ドルの資金調達を報じたときにも触れたが、同社は既に何年間も黒字をキープしている。

Airbnb式の宿泊施設探しに対する、消費者の興味を上手く利用したばかりか、Luxury Retreatsは富裕層を狙ったサービスでビジネスを展開してきた。

「シェアリングエコノミーの爆発的な人気をうけ、私たちは期待通りのサービスを一貫して提供するということに商機を見出しました」とPoulinは資金調達時に話していた。

富裕層をターゲットにしているサービスとしては、最近AccorHotelsに1億7000万ドルで買収されたOneFineStayや、Index VenturesやGoogle Venturesの投資先で、高級宿泊施設のフラッシュセールをメンバー限定で提供しているSecret Escapes、さらにHomeAwayのサブブランドで、Luxury Retreatsに名前の似たLuxury Rentalsなどがある。

しかしLuxury Retreatsは、先述のどのサービスとも少し違っている。というのも、彼らは物件(Poulinは”キュレーション”と呼んでいる)を入念にチェックし、掲載する物件にさまざまな条件を儲けているのだ。Airbnbもサービスの品質向上にむけて、同じような仕組みを導入しようとしている。

「サイト上にたくさん物件を載せればOK、というわけにはいきません」とPoulinは話す。「私たちの秘密は、他のサービスよりも厳しく物件をコントロールしていることにあります。Luxury Retreatsのサービスは本当の意味でのP2Pではなく、全ての物件は認証を経ています。さらに富裕層向けの市場でも、シェアリングエコノミー系のサービスは求められています。高級感というのは、販売されるものではなく、届けられるものなんです」

物件の所有者のニーズに応じて、同社は20%もしくは「場合によってはもう少し多い」手数料をとっている。実はこの数字は、Airbnbや他の競合サービスが設定している種々の手数料を足し合わせたものとそこまで変わらない。Airbnbは5%前後を物件の所有者からとり、さらに6-12%を利用者からとっている(クリーニング費用を除く)。

現在Airbnbは、Luxury Retreatsの他にも、クラウドファンディングプラットフォームのTiltを5000万ドル以上で買収しようとしていると言われている。

興味深いことに、昨年末トルドー政権を代表して、在米カナダ大使がAirbnbに対して、カナダへの投資を行い雇用創出に貢献して欲しいとアピールした後に、今回の買収話が浮上した。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Airsortedが150万ポンドを調達ー競争が激化するAirbnb物件管理サービス

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Airbnbホストに対して、物件の管理やコンシェルジュサービスを提供しているスタートアップは山ほど存在する。シリコンバレーのPillowやヨーロッパのHostmaker、さらにはオンデマンドモデルを採用しているBnbsitterなど例をあげるとキリがない。

そんな中、現在急成長中で規模が1番大きいと言われているのが、ロンドン発のAirsortedだ。同社は1000軒もの物件を管理しており、その数は過去6ヶ月間に4倍も膨れ上がった。

さらなる成長、そしてオーストラリア・シドニーへの進出のため、Airsortedはこの度150万ポンドの資金調達を行ったと発表した。Concentricがリードインベスターとなった今回のラウンドには、500 StartupsとPi Labsも参加していた。

2015年初頭に設立され、不動産関連のテック企業にフォーカスしたPi Labsのアクセラレータープログラムの卒業生でもあるAirsortedは、Airbnbのホストの手間を軽減し、最終的にはホストがもっと利益を上げられるような数々のサービスを提供している。具体的には、ゲストの管理や、宿泊料の最適化、マーケティング、クリーニング、洗濯などのサービスをホストは利用できる。

他社と比較したAirsortedの利用料について尋ねたところ、共同ファウンダー兼CEOのJames Jenkins-Yatesは、同社を新規で利用するホストのほとんどが、他社サービスからの「乗り換え」ではなく、Airbnbホスト向けのサービスを初めて利用する人たちだと言う。

「私たち以外にもホスト向けのサービスを提供している企業はありますが、市場の規模は大きく、成長スピードもとても速いです」と彼は言う。「私たちは常にホストの利益を第一に考えています。というのも、Airbnbを通して手にいれたお金で素晴らしい生活を送ったり、夢を叶えたりと、素晴らしい物語はいつもホストから聞きますからね。また、素早く動くことこそが最大の戦略だと考えており、ホストとゲストの両方に高品質なサービスを継続的に提供できるよう努力しています」

Airsortedは管理している物件の売上の数%を手数料としてとっているため、Jenkins-Yatesは、Airsortedとホストの利害が一致していると話す。

「私たちは、顧客であるホストが最大限の収益を上げられるように、宿泊料の最適化からゲストに快適に過ごしてもらう仕組みづくりまで、管理している物件の価値を上げるためにできることは何でもやります」と彼は言う。

「Airbnb自体はカリフォルニアの企業ですが、登録物件のほとんどが、旅行の目的地として人気のヨーロッパの各都市にあるということは見落とされがちです」と500 StartupsのMatt Lernerは声明の中で語った。「2年弱で3都市(ロンドン、エディンバラ、ダブリン)へ進出するというのは、簡単なことではありませんでした。しかしAirsortedは、このマーケットの可能性を証明することに成功し、今後もスピードを維持しながら物件数を伸ばしていくことでしょう」

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

コンシューマー向けプロダクトの成功に欠かせないネットワーク効果

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【編集部注】本記事はBattery Venturesに勤めるRoger Lee(ジェネラルパートナー)、Jeff Lu(ヴァイスプレジデント)、Deepak Ravichandran(アソシエイト)によって共同執筆された。

各分野でトップのシェアを握り、「カテゴリーキング」と呼ばれる企業が、そこまで厳しい競争にさらされているわけでもないのに、市場価値の大部分を生み出しているというケースが多く見られる。テック業界ではこの傾向が顕著で、ある調査によれば業界全体が生み出す価値のうち、70%をカテゴリーキング(小売のAmazon、ソーシャルメディアのFacebookなど)がつくりだしているとさえ言われている。

さらに私たちが最近行った調査では、カテゴリーキングによって創出された価値の6分の5が、「ネットワーク効果」を利用したビジネスによって生み出されていることがわかった(この考察は、当初Play Bigger Advisorsのコンサルタントによってまとめられた調査を、私たちが2016年12月31日時点の数値を使ってアップデートした結果得られたものだ)。なおネットワーク効果とは、利用者が増えるほど、その製品やサービスの利便性が高まることを指す。

また、ネットワーク効果についてもっと深く分析したところ、ネットワーク効果の持つ力はさまざまな観点で、私たちの想像を超えるものであることが判明した。ネットワーク効果は、販促活動の効果を高めたり、参入障壁を作ったりするだけでなく、ユーザー数の急増と共にカテゴリーキングの爆発的な成長を支えているということがわかったのだ。

AirbnbやUber、Snapなど今後12〜18ヶ月中のIPOも噂されている(既にSnapは上場を発表した)、ネットワーク効果を有効活用した企業は、それぞれの分野で自分たちがつくり上げた「勝者独り勝ち」の市場をほぼ独占している。

彼らが成功を収め、その名が世に広まっていくにつれ、私たちはコンシューマーテクノロジー市場の中でも、特にカテゴリーキングが持つネットワーク効果の価値を数値化してみたいと考えるようになった。その結果生まれたのが、Battery Ventures Network-Effect Index(詳細はウェブサイト参照)だ。この指数や関連データからは、ネットワーク効果に突き動かされている経済への洞察が得られると私たちは信じている。

ネットワーク効果を生み出すのにこれまで有効だった手段が、明日には通用しなくなるかもしれない。

そもそもBattery Ventures Network-Effect Index(BNI)とは、次の条件を満たす36社の時価総額/評価額を加重平均したものだ。1)現在上場中もしくは過去に上場していた 2)2016年12月31日時点で10億ドル以上の時価総額/評価額を記録していた 3)ビジネスモデルの全体もしくは一部にネットワーク効果が利用されている 4)コンシューマー向けネット企業。以下のチャートからわかる通り、BNIに含まれる企業の株価は過去5年間に全体で161%も伸びており、S&P 500を84%、テック系企業の多いナスダック総合指数を60%も上回っている。つまり、2011年の時点でBNIに含まれる企業群へ1000ドル投資していれば、そのお金が今では2606ドルになっているという計算になる。

さらにBNIに含まれる企業の評価総額は1兆800億ドルに及び、設立からIPOまでにかかった期間の平均は8年だった。これに対し、ベンチャーキャピタルから資金調達を行ったスタートアップ全体を対象にした場合のIPOまでの平均期間は11年だった。

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各月の値は、調査会社CapitalIQが公開しているデータをもとに算出されており、Y軸の数字は全体の時価総額/評価額の伸び率を表している。

以下がBNIに含まれている36社だ。

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印(*)のついている企業は、これまでにBattery Venturesが投資したことのある企業を表している。併記されている金額は、2016年12月31日時点での時価総額。買収の結果、非上場企業になったHomeAway、OpenTable、Kayak、Truliaについては買収額を記載している。

さらにBNIの企業は、以下の3つのカテゴリーにわけることができる。

  • 決済型マーケットプレイス:売り主と買い主が出会い、モノやサービスの売買が行われるプラットフォーム。旅行サイトのPriceline、フードデリバリーのGrubHub、中国のECサイトAlibabaなどが含まれる。
  • 広告型マーケットプレイス:このカテゴリーに含まれるZillow、Yelp、TripAdvisorなどは、消費者に対しては無料でサービスを提供しているが、売り主(不動産業者、クリーニング店、ホテルなど)から広告掲載の対価を受け取っている。
  • ソーシャル・ネットワーク:Facebook、Snapchat、WhatsAppなどがこのカテゴリーの代表的な企業として挙げられる。

そして下のチャートが、過去5年間の時価総額/評価額の推移をカテゴリー別に示したものだ。

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各月の値は、調査会社CapitalIQが公開しているデータをもとに算出されており、Y軸の数字は全体の時価総額/評価額の伸び率を表している。

FacebookやTencent、LinkedInといったサービスの成長をうけ、予想通りソーシャル・ネットワークのパフォーマンスが突出しており、過去5年間の伸び率は254%を記録している。広告型マーケットプレイスの成長率が他の指数を上回り、決済型マーケットプレイスにも勝っているのはなかなか興味深い。広告型マーケットプレイスの時価総額/評価額の伸び率は、S&P 500を57%、ナスダック総合指数を32%上回っており、ネットワーク効果によって彼らは株式公開後も成長し続けていたことを示唆している。

その他にも、私たちの調査から以下のような高次元の洞察を得ることができた。

市場規模の重要性 コンシューマー向け決済型マーケットプレイスは、狙っている市場の規模が500億ドル以上でないと爆発的な成長スピードに達しないことがわかっている。10億ドルの規模を持つターゲット市場というだけでも、スタートアップのピッチ上はまずまずなように感じられる。しかしBNIに含まれるコンシューマー向けマーケットプレイスを運営する企業は、10億ドル以上の評価額を達成するために、最大で500億ドル以上の規模になりえる市場を狙わなければならなかったのだ。

しかし、各企業は最初から大きな市場を狙っていたわけではない。HomeAwayは別荘、OpenTableはレストラン予約、Uberは黒塗りのタクシーというニッチな市場からそれぞれのビジネスをはじめた。その後ビジネスが成長するにつれて、彼らは既存の市場に近い市場へと進出していき、最終的にTAM(Total Addressable Market:狙いうる最大の市場規模)が500億ドルを超えたのだ。

一方TAMに関するルールは、カテゴリーによって変わってくる。私たちが調査対象として選んだソーシャル・ネットワークは、ほとんど需要に際限がないような巨大な市場(消費者全員)を相手にしている。対照的に広告型マーケットプレイスは、決済型マーケットプレイスが狙っている市場の小集団にあたるような、比較的小さな市場を相手にしている。

大きな市場を開拓するための方法のひとつが、既存の市場に隠れている「影の市場」をみつけだすということだ。

例えば、オンラインレビューサイトのYelpは飲食店をターゲットにしているが、同社の収益は広告を掲載したいと考えている各地域の飲食店によってもたらされている。つまりYelp自体は飲食サービスのやりとりには関わっていないため、同社が狙っている市場が飲食業界全体に占める割合は小さい。一方、レストランメニューの配達サービスを行っているGrubHubは、全ての注文から手数料をとっている(私たちはこちらの方が優れたビジネスモデルだと考えている)ため、飲食ビジネスの流れに食い込んだビジネスを展開していると言える。

そのため、Yelpは準独占的な立場にいて、GrubHubは厳しい競争にさらされているにも関わらず、両社の時価総額はほぼ同じ水準にあるのだ。Zillow(不動産)やTripAdvisor(旅行)のように、広告型マーケットプレイスのモデルで、高いパフォーマンスを誇るビジネスを生み出すことは今でも可能だが、そのためにはかなり規模の大きなカテゴリーで魅力あるサービスを売っていかなければならない。

  • 「影の市場」をみつける 大きな市場を開拓するための方法のひとつが、既存の市場に隠れている「影の市場」をみつけだすということだ。AirbnbとUberがその典型例だ。誰が空き部屋をホテルに、自家用車をタクシーに使えると思っていただろうか?彼らは当時まだ発掘されていなかった需要と供給をみつけだし、魔法のように新しい経済行動を消費者に植え付けることに成功したのだ。そして当然のように、この分野の企業は現在自らの功績の恩恵にあずかっている。BNIには含まれていないが、この分野で今後活躍が期待される企業としては、ペットシッター検索サービスのRoverや、スポットコンサルティングサービスのCatalantなどが挙げられる。

小規模な市場を狙っている企業でも、独占状態さえ築くことができれば、何十億ドルという評価額も夢ではない。GrubHubのイギリス・ヨーロッパ版にあたるJust Eatや、Zillowのオーストラリア版にあたるREA Groupは、小規模市場を席巻することで、今の地位につくことができている。

ビジネスモデルを考えるときには需給分析をしっかりと行う コンシューマー向けのマーケットプレイスで、10億ドルを超えるビジネスをつくろうとした場合、まず経営者はどちらの側から料金をとるかというのを決めなければならない。私たちの研究結果を参考にすると、一般的に企業は余裕のある側(単にプレイヤーの数が多い側とも言えるし、よりそのサービスを必要としている側と読み換えることもできる)からお金をとったほうが良い。

例えば300億ドルの評価額を誇るAirbnbは、設立当初より家の所有者ではなく宿泊者から手数料をとっている。というのも、ホテルがすぐに埋まってしまう(しかも高い)ような街で、泊まる場所を必死に探しているのは家の所有者ではなく、宿泊者側だからだ。一方この分野の先駆者にあたり、Expediaによる買収時の評価額が40億ドルだったHomeAwayは、物件を登録する所有者から手数料をとっていた。これこそ、先行者利益がありながら、HomeAwayがシェアを伸ばせなかった理由なのかもしれない。その反面、Airbnbは物件数をどんどん伸ばし、サービスの訴求力を高めていった。

販促費がカギ 最後に、BNIに含まれる企業に共通して見られたのが、販促費とネットワーク効果の関連性だった。ネットワーク効果を大いに発揮し、2200億ドルの時価総額を(2016年12月31日時点で)記録しているAlibabaの販促費は、売上の15%未満におさえられている。一方で育児や介護サービスのマーケットプレイスで、2億4700万ドルの評価額(2016年12月31日時点)を記録しているCare.comは、売上の48%以上を販促費に充てている。結局、ベビーシッターや介護スタッフの検索というのは、一時的に発生するニーズで、中抜きのリスクが高く、ネットワーク効果も薄い。その結果、Care.comは成長を維持するために、大金を販促費につぎ込まなければいけなくなってしまったのだ。

私たちは、ネットワーク効果が未来のスタートアップの成功に欠かせないものであると考えている。しかしルールは常に変化しているため、ネットワーク効果を生み出すのにこれまで有効だった手段が、明日には通用しなくなるかもしれず、起業家は常に新しい情報を仕入れなければならなくなるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

コンシューマー向けプロダクトの成功に欠かせないネットワーク効果

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【編集部注】本記事はBattery Venturesに勤めるRoger Lee(ジェネラルパートナー)、Jeff Lu(ヴァイスプレジデント)、Deepak Ravichandran(アソシエイト)によって共同執筆された。

各分野でトップのシェアを握り、「カテゴリーキング」と呼ばれる企業が、そこまで厳しい競争にさらされているわけでもないのに、市場価値の大部分を生み出しているというケースが多く見られる。テック業界ではこの傾向が顕著で、ある調査によれば業界全体が生み出す価値のうち、70%をカテゴリーキング(小売のAmazon、ソーシャルメディアのFacebookなど)がつくりだしているとさえ言われている。

さらに私たちが最近行った調査では、カテゴリーキングによって創出された価値の6分の5が、「ネットワーク効果」を利用したビジネスによって生み出されていることがわかった(この考察は、当初Play Bigger Advisorsのコンサルタントによってまとめられた調査を、私たちが2016年12月31日時点の数値を使ってアップデートした結果得られたものだ)。なおネットワーク効果とは、利用者が増えるほど、その製品やサービスの利便性が高まることを指す。

また、ネットワーク効果についてもっと深く分析したところ、ネットワーク効果の持つ力はさまざまな観点で、私たちの想像を超えるものであることが判明した。ネットワーク効果は、販促活動の効果を高めたり、参入障壁を作ったりするだけでなく、ユーザー数の急増と共にカテゴリーキングの爆発的な成長を支えているということがわかったのだ。

AirbnbやUber、Snapなど今後12〜18ヶ月中のIPOも噂されている(既にSnapは上場を発表した)、ネットワーク効果を有効活用した企業は、それぞれの分野で自分たちがつくり上げた「勝者独り勝ち」の市場をほぼ独占している。

彼らが成功を収め、その名が世に広まっていくにつれ、私たちはコンシューマーテクノロジー市場の中でも、特にカテゴリーキングが持つネットワーク効果の価値を数値化してみたいと考えるようになった。その結果生まれたのが、Battery Ventures Network-Effect Index(詳細はウェブサイト参照)だ。この指数や関連データからは、ネットワーク効果に突き動かされている経済への洞察が得られると私たちは信じている。

ネットワーク効果を生み出すのにこれまで有効だった手段が、明日には通用しなくなるかもしれない。

そもそもBattery Ventures Network-Effect Index(BNI)とは、次の条件を満たす36社の時価総額/評価額を加重平均したものだ。1)現在上場中もしくは過去に上場していた 2)2016年12月31日時点で10億ドル以上の時価総額/評価額を記録していた 3)ビジネスモデルの全体もしくは一部にネットワーク効果が利用されている 4)コンシューマー向けネット企業。以下のチャートからわかる通り、BNIに含まれる企業の株価は過去5年間に全体で161%も伸びており、S&P 500を84%、テック系企業の多いナスダック総合指数を60%も上回っている。つまり、2011年の時点でBNIに含まれる企業群へ1000ドル投資していれば、そのお金が今では2606ドルになっているという計算になる。

さらにBNIに含まれる企業の評価総額は1兆800億ドルに及び、設立からIPOまでにかかった期間の平均は8年だった。これに対し、ベンチャーキャピタルから資金調達を行ったスタートアップ全体を対象にした場合のIPOまでの平均期間は11年だった。

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各月の値は、調査会社CapitalIQが公開しているデータをもとに算出されており、Y軸の数字は全体の時価総額/評価額の伸び率を表している。

以下がBNIに含まれている36社だ。

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印(*)のついている企業は、これまでにBattery Venturesが投資したことのある企業を表している。併記されている金額は、2016年12月31日時点での時価総額。買収の結果、非上場企業になったHomeAway、OpenTable、Kayak、Truliaについては買収額を記載している。

さらにBNIの企業は、以下の3つのカテゴリーにわけることができる。

  • 決済型マーケットプレイス:売り主と買い主が出会い、モノやサービスの売買が行われるプラットフォーム。旅行サイトのPriceline、フードデリバリーのGrubHub、中国のECサイトAlibabaなどが含まれる。
  • 広告型マーケットプレイス:このカテゴリーに含まれるZillow、Yelp、TripAdvisorなどは、消費者に対しては無料でサービスを提供しているが、売り主(不動産業者、クリーニング店、ホテルなど)から広告掲載の対価を受け取っている。
  • ソーシャル・ネットワーク:Facebook、Snapchat、WhatsAppなどがこのカテゴリーの代表的な企業として挙げられる。

そして下のチャートが、過去5年間の時価総額/評価額の推移をカテゴリー別に示したものだ。

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各月の値は、調査会社CapitalIQが公開しているデータをもとに算出されており、Y軸の数字は全体の時価総額/評価額の伸び率を表している。

FacebookやTencent、LinkedInといったサービスの成長をうけ、予想通りソーシャル・ネットワークのパフォーマンスが突出しており、過去5年間の伸び率は254%を記録している。広告型マーケットプレイスの成長率が他の指数を上回り、決済型マーケットプレイスにも勝っているのはなかなか興味深い。広告型マーケットプレイスの時価総額/評価額の伸び率は、S&P 500を57%、ナスダック総合指数を32%上回っており、ネットワーク効果によって彼らは株式公開後も成長し続けていたことを示唆している。

その他にも、私たちの調査から以下のような高次元の洞察を得ることができた。

市場規模の重要性 コンシューマー向け決済型マーケットプレイスは、狙っている市場の規模が500億ドル以上でないと爆発的な成長スピードに達しないことがわかっている。10億ドルの規模を持つターゲット市場というだけでも、スタートアップのピッチ上はまずまずなように感じられる。しかしBNIに含まれるコンシューマー向けマーケットプレイスを運営する企業は、10億ドル以上の評価額を達成するために、最大で500億ドル以上の規模になりえる市場を狙わなければならなかったのだ。

しかし、各企業は最初から大きな市場を狙っていたわけではない。HomeAwayは別荘、OpenTableはレストラン予約、Uberは黒塗りのタクシーというニッチな市場からそれぞれのビジネスをはじめた。その後ビジネスが成長するにつれて、彼らは既存の市場に近い市場へと進出していき、最終的にTAM(Total Addressable Market:狙いうる最大の市場規模)が500億ドルを超えたのだ。

一方TAMに関するルールは、カテゴリーによって変わってくる。私たちが調査対象として選んだソーシャル・ネットワークは、ほとんど需要に際限がないような巨大な市場(消費者全員)を相手にしている。対照的に広告型マーケットプレイスは、決済型マーケットプレイスが狙っている市場の小集団にあたるような、比較的小さな市場を相手にしている。

大きな市場を開拓するための方法のひとつが、既存の市場に隠れている「影の市場」をみつけだすということだ。

例えば、オンラインレビューサイトのYelpは飲食店をターゲットにしているが、同社の収益は広告を掲載したいと考えている各地域の飲食店によってもたらされている。つまりYelp自体は飲食サービスのやりとりには関わっていないため、同社が狙っている市場が飲食業界全体に占める割合は小さい。一方、レストランメニューの配達サービスを行っているGrubHubは、全ての注文から手数料をとっている(私たちはこちらの方が優れたビジネスモデルだと考えている)ため、飲食ビジネスの流れに食い込んだビジネスを展開していると言える。

そのため、Yelpは準独占的な立場にいて、GrubHubは厳しい競争にさらされているにも関わらず、両社の時価総額はほぼ同じ水準にあるのだ。Zillow(不動産)やTripAdvisor(旅行)のように、広告型マーケットプレイスのモデルで、高いパフォーマンスを誇るビジネスを生み出すことは今でも可能だが、そのためにはかなり規模の大きなカテゴリーで魅力あるサービスを売っていかなければならない。

  • 「影の市場」をみつける 大きな市場を開拓するための方法のひとつが、既存の市場に隠れている「影の市場」をみつけだすということだ。AirbnbとUberがその典型例だ。誰が空き部屋をホテルに、自家用車をタクシーに使えると思っていただろうか?彼らは当時まだ発掘されていなかった需要と供給をみつけだし、魔法のように新しい経済行動を消費者に植え付けることに成功したのだ。そして当然のように、この分野の企業は現在自らの功績の恩恵にあずかっている。BNIには含まれていないが、この分野で今後活躍が期待される企業としては、ペットシッター検索サービスのRoverや、スポットコンサルティングサービスのCatalantなどが挙げられる。

小規模な市場を狙っている企業でも、独占状態さえ築くことができれば、何十億ドルという評価額も夢ではない。GrubHubのイギリス・ヨーロッパ版にあたるJust Eatや、Zillowのオーストラリア版にあたるREA Groupは、小規模市場を席巻することで、今の地位につくことができている。

ビジネスモデルを考えるときには需給分析をしっかりと行う コンシューマー向けのマーケットプレイスで、10億ドルを超えるビジネスをつくろうとした場合、まず経営者はどちらの側から料金をとるかというのを決めなければならない。私たちの研究結果を参考にすると、一般的に企業は余裕のある側(単にプレイヤーの数が多い側とも言えるし、よりそのサービスを必要としている側と読み換えることもできる)からお金をとったほうが良い。

例えば300億ドルの評価額を誇るAirbnbは、設立当初より家の所有者ではなく宿泊者から手数料をとっている。というのも、ホテルがすぐに埋まってしまう(しかも高い)ような街で、泊まる場所を必死に探しているのは家の所有者ではなく、宿泊者側だからだ。一方この分野の先駆者にあたり、Expediaによる買収時の評価額が40億ドルだったHomeAwayは、物件を登録する所有者から手数料をとっていた。これこそ、先行者利益がありながら、HomeAwayがシェアを伸ばせなかった理由なのかもしれない。その反面、Airbnbは物件数をどんどん伸ばし、サービスの訴求力を高めていった。

販促費がカギ 最後に、BNIに含まれる企業に共通して見られたのが、販促費とネットワーク効果の関連性だった。ネットワーク効果を大いに発揮し、2200億ドルの時価総額を(2016年12月31日時点で)記録しているAlibabaの販促費は、売上の15%未満におさえられている。一方で育児や介護サービスのマーケットプレイスで、2億4700万ドルの評価額(2016年12月31日時点)を記録しているCare.comは、売上の48%以上を販促費に充てている。結局、ベビーシッターや介護スタッフの検索というのは、一時的に発生するニーズで、中抜きのリスクが高く、ネットワーク効果も薄い。その結果、Care.comは成長を維持するために、大金を販促費につぎ込まなければいけなくなってしまったのだ。

私たちは、ネットワーク効果が未来のスタートアップの成功に欠かせないものであると考えている。しかしルールは常に変化しているため、ネットワーク効果を生み出すのにこれまで有効だった手段が、明日には通用しなくなるかもしれず、起業家は常に新しい情報を仕入れなければならなくなるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

50年ぶりのコインロッカー革命、渋谷のカフェを荷物預かり所にするecbo cloakスタート

手ぶらで観光を

せっかくの旅行なのだから、身軽に観光したい。しかし、旅行には手荷物がつきものだ。ホテルのチェックインまでの時間や観光の合間、荷物を預けておくことができればもっと満喫できるのに。確かに、駅にはコインロッカーがあるが、都合よくコインロッカーが空いているとも限らない。本日ローンチしたecbo cloakはこうした手荷物の問題を解消する。ecbo cloakは店舗の空きスペースを可視化し、ユーザーが荷物を預けられるようにするサービスだ。

ecbo cloakにはカフェやレンタサイクルといった店舗が空きスペースを登録している。ユーザーはエリア別に空きスペースが検索可能だ。店舗までのアクセス、店舗で預かれる荷物の個数や営業時間など詳細情報を確認し、必要事項を入力して空きスペースが予約できる。

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お店に着いたら、店舗側は預る時に荷物をスマホで撮影して「預かり証明」を発行し、ユーザーと共有する。写真を撮るのは、荷物の引き渡し時に荷物を間違えないためでもある。用事や観光が終わってユーザーが荷物を受け取ったら、承認ボタンを押して、引き渡しが完了だ。

このサービスを利用するにあたり、ユーザーは氏名、電話番号、メールアドレス、クレジットカードの決済情報を予め登録しておく。荷物の引き渡しが完了した時点で、決済が自動で行われる。ユーザー登録があれば、ユーザーが荷物を預けっぱなしで取りに来ないといった問題も減りそうだ。預かり料金は一律でバッグサイズが1日300円、スーツケースが1日600円だ。

サービスのローンチ時点で、すでに渋谷のカフェを中心に100店舗以上がecbo cloakに登録しているという。ただ、登録店舗は運営の様子を見ながら順次公開していく予定だとecboは説明している。現時点ではウェブブラウザでのみサービスを展開しているが、今後iOSとAndroidアプリもリリースする計画だ。

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店舗がecbo cloakに登録するメリットとしては空きスペースの活用で副収入を得られることと観光客へのPR効果とecboの代表取締役社長の工藤慎一氏は説明する。ユーザーは荷物を預ける時と引き取る時に必ずその店舗を訪れることになり、その店のサービスにも興味を持つきっかけになるだろう。ecbo cloakではカフェやレンタサイクル店の他に、レンタル着物といった観光客向けにサービスを提供する店舗の登録も進めていく計画だという。

50年ぶりのコインロッカー革命

工藤氏はUber Japanにインターンとして立ち上げ初期から関わり、2015年6月に自分でもシェアリングサービスの立ち上げを考えecboを創業したという。当初は、オンデマンドの収納サービスを手がけていたが、渋谷駅で訪日外国人旅行客のコインロッカー探しを手伝ったのがecbo cloackを開発するきっかけになったと工藤氏は話す。その旅行客はスーツケースを預けられる場所を探していたが、渋谷にはそのような場所が少なく困っていたそうだ。工藤氏がその後調べたところ、渋谷駅のコインロッカーの数は1400個程度で、そのうちキャリーケースも収まるサイズのものはたった80個程しかなかったという。

2016年は訪日外国人旅行客が2000万人を突破し、政府は2020年には4000万人に伸ばす計画でいる。2020年には東京五輪も控えている。「初めて日本を訪れる旅行客にとって、どこにあるか分からないコインロッカーを探すのも手間ですし、行ってみるまで空いているか分からないのも問題です」と工藤氏は指摘する。訪日旅行客が荷物に煩わされず、旅行や観光を存分に楽しんでもらうためにも、ecbo cloakは店舗の空スペースのシェアリングでこの手荷物の課題を解消したい考えだ。

日本でコインロッカーが普及したのは、1964年の東京五輪の時なのだと工藤氏は話す。観光客の増加を見込み、荷物預かりの体制を整えるために駅などでコインロッカーの導入が進んだ。ただ、それ以降50年間、コインロッカーはさほど進化していない。2020年には再び東京五輪が開催されるが、今回はこのシェアリングで荷物の預かりに革新的な変化を起こしたいと工藤氏は話している。

ソーシャルレンディング界のユニコーンFunding Circleが新たに1億ドルを調達

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ヨーロッパでフィンテック企業に対する新たな大型投資が行われた。ロンドンに拠点を置き、小規模事業者に融資をしたいと考えている投資家と企業を結ぶソーシャルレンディングプレットフォームを運営しているFunding Circleが、1億ドルの資金調達を行ったのだ。Accelがリードインベスターとなった今回のラウンドには、以前からFunding Circleに出資していたBaillie Gifford、DST Global、Index Ventures、Ribbit Capital、Rocket Internet、Sands Capital Ventures、Temasek、Union Square Venturesも参加していた。

共同ファウンダー兼CEOのSamir DesaiはFunding Circleの評価額を公開せず、2015年の資金調達時より「すこし増加した」と話すにとどまった。なお、TechCrunchでは前回の資金調達時に、同社の評価額が既に10億ドルを超えていたことを確認した

今回の調達額は、2015年4月以降ヨーロッパのフィンテック企業を対象に行われたラウンドで最大だとFunding Circleは話す(2015年4月には他でもないFunding Circleが1億5000万ドルを調達していた)。今週だけでもモバイル決済のiZettleが6300万ドル、CompareEuropeGroupが2100万ドルを調達しており、全体的に2017年はフィンテックへの投資が加速していきそうな雰囲気だ。

シリーズFとなる今回のラウンドの結果、Funding Cicleの調達資金総額は約3億7500万ドルに達した。

そしてこの1億ドルの資金調達は、Funding Circleにとって面白いタイミングで起きた。

まず同社は猛烈な勢いで成長を遂げており、2016年の世界中での貸出額合計は11億ポンド(13億ドル)に及ぶ(Funding Circleはヨーロッパとアメリカで営業しており、Desaiによれば採算のとれているイギリスが同社にとって最大の市場だ)。そして合計額のうち4億ポンドがQ4単独の数字で、前年同期比で90%も増加している。

昨年のFunding Circleの成長度合いをわかりやすくするために書くと、2010年の設立からこれまでの貸出額の合計は25億ポンドだと同社は話している。

その一方でFunding Circleは特に追加資金を必要としていなかったが、Lending ClubWongaなど他社のスキャンダルを考慮すると、レンディングサービスを提供するスタートアップにとっては今がとても大事な時期なのだ。

「昨年の市況は、特にオンラインレンディング企業にとって厳しいものでした。それでも私たちはFunding Circleの状況を喜ばしく思っています。前回のラウンドで調達した資金の大半は未だに手元に残っていますが、私たちはさらに事業へ投資できるチャンスを利用したいと考えていました。今回の資金調達によって、イギリスやヨーロッパ当局に対して私たちが今後もビジネスを続けていこうとしていることをアピールできます。Funding Circleは旧来の銀行を代替し、信頼に値する企業という地位を確立しようとしており、今回のラウンドは私たちの進歩やFunding Circleのビジネスの未来を証明するものでもあります」とDesaiは話す。さらに彼によると、調達資金の一部は、同社のプラットフォームや「プラットフォームをさらに強力なものにする」アルゴリズムの開発にあてられる予定だ。

プラットフォーム上での貸出と、実業家コミュニティや労働市場、経済への貢献という、Funding Cirleの政府へのアピールはうまく機能しているようだ。

「Funding Circleはイギリスのフィンテックにおける、本当の意味での成功モデルになりました。そして8000万ポンドもの投資を受けることができたという事実が、フィンテックの重要性が増していることを証明しています。また今回のラウンドは、ビジネスの成長や雇用創出というイギリス経済における重要な役割を担った企業が、新たに信任を得たということを意味しています」と財務大臣のPhilip HammondはTechCrunchへの声明の中で語った。

現在Funding Circleのプラットフォーム上では、個人や地方自治体、中央政府、欧州投資銀行、年金ファンドといった金融機関を含む6万人の認定投資家が、2万5000もの企業へ貸し出しを行っている。Desaiによれば、今後は小口投資家の参加も目論んでいるようだ。さらにリターンについては、同社がこれまでに1億ポンド以上を払いだしており、年間の利回りは7%に達するとDesaiは話す。

次の一歩として、Funing Circleは現在の市場での売上を拡大すると共に、2013年にEndurance Lending Networkを買収してアメリカ市場へ進出したように、買収を通して新たな市場でビジネスを展開していくことも考えている。

Desaiは「現状IPOに関しては何も計画していない」と語っているが、長期的な目標としてはIPOも視野に入れている。「企業としての透明性や債権者ではなくプラットフォームであり続けることなど、私たちが大切だと考えている事項に加え、私たちはいつもFunding Circleを上場させたいと話してきました」

この継続性こそ、Funding Circleが新たな投資家を招かずに、既存の投資家との関係を保っているように見える理由なのだ。

「私たちは初期の投資段階から、Funding Circleのチームに感心していました。同社は中小企業が求める借入のオプションを準備するとともに、投資家に対しても魅力的なリスク調整後利益を提供することで、世界中の市場において大きな成長を遂げてきました。今回のラウンドの結果、Funding Circleは世界最大かつ最も自己資本の多い中小企業向けレンディングプラットフォームとなり、私たちは今後も同社をサポートしていけることを嬉しく思っています」とAccelのパートナーであるHarry Nelisは声明の中で語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ホンダが東南アジアのタクシー配車サービスGrabに投資

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東南アジアのGrabはライドシェアサービスUberの競合だ。Grabは今回、ホンダから戦略投資を受けたことを発表した。金額は非公開だ。

Grabは今年の9月、ソフトバンクが率いるラウンドで7億5000万ドルを調達している。評価額は30億ドルだった。それでもさらに投資家を追加したいようだ。今回の調達は巨額だったシリーズFラウンドに付随する2回目の追加調達だ。今月はすでに金融サービスの東京センチュリーから、金額は非公開だが追加調達を行っている。Grabの投資家リストの中でもホンダは有名どころだ。今のところ、両社がどのように協力し、事業を進めるかは示されていない。ただ、まず注力するのはバイク事業だという。

Grabについて少し説明すると、Grabは東南アジアの6カ国で個人の車や免許を持つタクシーと共にバイクタクシーも配車するサービスだ。そのため、世界で最もバイクを販売しているホンダは大きな役割を担うことができるだろう。ただ、Grabは現時点でバイクタクシー配車サービス「GrabBike」をGrabが展開するすべての地域で展開しているわけではない。

「ドライバーへのバイク販売も含め、協力できる複数の分野について話し合いをしています」とGrabのスポークスマンはTechCrunchに話す。ホンダとはまず情報通信技術や安全設備の拡充に注力するという。その後、Grabの4輪自動車事業でも協力することも検討するそうだ。

プレスリリースにはホンダとGrabは「GrabBikeのドライバーやライダーにとって有益となる施策に協力して取り組む」とあったが、それ以上の情報を得ることができた。

GrabにとってUberは明らかな競合だが、Grabはインドネシア市場に重点を置いている。インドネシアではGo-Jekという最近13億ドルの評価を得たスタートアップが成長するバイクタクシー市場をリードしている。1000万人の人口を抱え、渋滞の多いインドネシアの首都ジャカルタを訪れたことがあるなら、A地点からB地点まで行くにはタクシーよりバイクの方が断然早いというのが分かる。それを念頭に置くと、ホンダとの協力によりGrabは東南アジア最大の経済圏であり、世界で5番目に人口の多いインドネシアで先を進むGo-Jekからシェアを取る方法を考えているのだろう。

ホンダの投資も東京センチュリーとのアライアンスと同様に、以前ソフトバンクで役員を務めた経験を持ち、10月にGrabの社長に就任したMing Maaが決めた話のようだ。Maaは案件を決めるのと同時に、Grabを去るCFOの仕事を引き継ぎGrabの財務管理も担っている。彼のソフトバンクでの経歴とGrabには上場によるエグジットができるポテンシャルがあるのを考えると、彼の役回りは興味深い。Grabはこうした話をしてこなかったが、Grabは2017年に本拠地のシンガポール、あるいは他の市場で新規上場するダークホースとなるかもしれない。

Grabは東南アジアの6カ国、34都市でサービスを展開している。2400万アプリダウンロードがあり、50万人以上のドライバーの登録があるという。Uberはこの地域のデータは開示していない。またGo-Jekがサービスを展開している地域はインドネシアのみだ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

トヨタ、カーシェアリングサービスGetaroundとパートナーシップを締結

NEW YORK, NY - MAY 24:  (L to R) Tony Conrad, Elliot Kroo, Jessica Scorpio, and Sam Zaid of Getaround attend TechCrunch Disrupt New York May 2011 at Pier 94 on May 24, 2011 in New York City.  (Photo by Joe Corrigan/Getty Images for AOL) *** Local Caption *** Elliot Kroo; Jessica Scorpio; Sam Zaid; Tony Conrad

自動車メーカーは、個人が自動車を所有する以外の未来の交通手段を模索したり、投資先を探したりしている。トヨタは、スタートアップが提供する交通モデルに賭けるようだ。トヨタはサンフランシスコに拠点を置くカーシェアリングサービスGetaroundに戦略的な投資を実施すると発表した。トヨタは投資の他に、Getaroundのプラットフォームのテクノロジーと車を購入する時のファイナンスの部分を連携する。この施策は、トヨタの自動車を持つオーナーがGetaroundに参加するインセンティブになるだろう。

Getaroundは、車を使っていない時に貸し出すことができるサービスだ。ユーザーは車が動いていない時間を減らし、また車を所有することでかかるコストをいくらか賄うことができる。

戦略的なパートナーシップの一環として、トヨタはLexusを始めとする車両を提供する。これらの車をGetaroundで借りる時、スマホがあれば鍵なしで解錠して運転することができる。2017年1月からはトヨタの金融サービス部門と連携し、トヨタの車の支払いをGetaroundで得た収益から引き落とすことができるようになるという。車で得た利益を車のコストに充てるための手順が減る。

トヨタとGetaroundの提携は、他の自動車メーカーとスタートアップのパートナーシップと似ている。例えば、GMはLyftと提携している。また、これはTeslaがTesla Networkで実現しようとしているモデルにも似ている。車の所有者は、車を使用していない時にオンデマンドで貸し出すことができるモデルだ。ただ、Teslaのカーシャエアリングでは自動運転車を想定しているという違いもある。

車メーカーは特に都市部での交通において、個人が車を所有する以外の選択肢を広く検討している。カーシェアリングサービスを直接支援し、今回トヨタが行ったような車の購入資金の工面につなぎこむというのは賢い施策だ。

Getaroundは2011年のDisrupt New Yorkで開催したTechCrunchのStartup Battlefield で優勝している。競合にはTuroや同じビジネスモデルを目指すTeslaのような大手自動車メーカーもある。今後この分野の競争は過熱しそうだ。自動車メーカーが自社の専門性を用いて参入しようとすれば企業の統合も加速することが予想される。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

Furlencoが3000万ドルを調達、インドのミレニアル世代に広がる家具レンタルサービスの利用

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近年、アメリカ経済の所有に関する概念が大きく変わり、以前はモノを所有するということに重きが置かれていたのを忘れてしまうほどだ。振り返って考えてみると、ほとんどの人は、両親とAirbnbやUberについて話した後に、他人のモノを使うことの危険性に関して諭されたことが一回はあるだろう。

インドに本社を置くFurlencoでCEOを務めるAjith Mohan Karimpanaは、モノの所有に関するミレニアム世代の価値観や優先順位について、インドでも同じような考え方の変化が起きていると説明する。端的に言うと、彼らはモノを所有することに全く興味を持っていないのだ。インドのミレニアム世代は頻繁に旅行をしてチャンスを探し求め、無機質なモノを所有するよりも経験を重視している。

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アメリカと同様にインドでも若者の動きに反対する意見が出ているが、もともとゴールドマン・サックスに勤めていたKarimpanaは、将来有望な若者に”モノ”という重荷を負わせないために、そもそもモノを購入しなくてすむようなサービスを提供するFurlencoの設立にこぎつけた。Furlencoは手始めに家具のレンタルサービスに注力しているが、Karimpanaはこれが終着点とは考えていない。

そしてFurlencoはこの度、大型の資金調達を完了したと発表した。総額3000万ドルにおよぶ調達資金のうち、1500万ドルはLightbox VenturesとAxis Capitalをはじめとする投資家からエクイティで調達され、残りの1500万ドルが銀行やノンバンク、個人、ファミリーオフィスからの借入で調達された。アメリカでは調達金額がこのレベルに達するとプロダクトマーケットフィットを意味するが、インドではこの金額はもっと大きな意味を持っている。1500万ドルという金額の借入はインドでは珍しく、これはKarimpanaが消費者の行動を正しく理解しているというだけでなく、レンタルモデルが本当に儲かるビジネスだということを表している。

ここで誤解してほしくないのだが、Furlencoを家具のAirbnbと呼ぶのは間違っている。Furlencoは、インドの家具市場の上流でディスラプションを起こすに足りるAirbnbの精神を持った、Jonathan Ive(アップルのチーフ・デザイン・オフィサー)とIkeaの間の子ような存在だ。実際に同社は、より良い家具を作るべく多数のデザイナーを雇用している。そしてそれぞれの家具は、長い間使えるように、修繕がしやすい無垢材をたくさん使って作られている。

他の世代の人たちは、ミレニアル世代の何でも欲しがる性格をよくからかうが、Karimpanaはこの特徴を頭痛の種ではなく、チャンスとして捉えている。現在Furlencoのチームは、高品質なリクライニングチェアーを作っており、これは見た目に美しいだけではなく、携帯電話よりも簡単に別のものと交換することができる。部屋の雰囲気に飽きたら家具を交換すればいいし、給料の良いテック系の仕事をみつけ、バンガロールからプネーに引っ越すときも家具を交換すればいいのだ。この仕組みは、人生の節目で計画が変わる度に使っている家具を売って新たな家具を購入するよりも安く、そして簡単に家具が変えられるようにするために作られたものだ。

「必要だから借りるのではなく、借りたいと思えるものを借りるべきです」とKarimpanaは語る。

float-1これまでに1万5000世帯へ2000万ドル分の貸し出しを行っていることから、Furlencoの狙いは当っていると言っていいだろう。そしてこの急速な成長にも関わらず、家具の使用率は95%以上を保っている。つまり、利益を圧迫する原因となる使われていない家具をしまっておくための大きな倉庫は、Furlencoには必要ないのだ。

他の経営者の逸話のように、Karimpanaのアイディアは30〜40社のベンチャーキャピタルに断られ、最終的に1社だけが興味をもってくれたと彼は説明する。その証拠に、FurlencoのシリーズAのクローズには一年以上かかった。結局、Lightbox Venturesが、このコスト集中型のビジネスモデルに賭けることにしたのだ。

自社で家具のデザイン・製造を行うのにはお金がかかるが、借入には役立つ。というのも、Furlencoは実質的に物理的な担保のある金融商品なのだ。さらにKarimpanaは、サブスクリプションモデルのおかげで、Furlencoの売上予測は立てやすいと言う。一般的に家具の回転率は低く、Netflixユーザーなどに比べて、家具の購入を検討している人は、その家具を購入することで得られる価値をかなり現実的にみているのだ。 work-from-home-1

レンタルサービスから成り立つ生活スタイルを試してみようと思っているが、自分の好みにあった家の雰囲気を作りだすほど十分な選択肢がないのではと心配している人がいれば安心してほしい。Karimpanaは、クォーター毎に1、2種類の新しい家具を市場へ送り出すというアグレッシブな計画を立てている。さらにKarimpanaは家具と電子機器のつながりにも何か考えをもっているようで、今後Furlencoが他の革新的なレンタルサービスを提供していく中で、その考えが具現化していくのを見るのが楽しみだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

クラウドワークスがCtoC型スキルマーケットプレイスに参入、11月15日に新サービス「WoWme」提供へ

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クラウドソーシングサービス「クラウドワークス」を手がけるクラウドワークス。これまではおもに企業と個人を繋ぐためのプラットフォームを提供してきた同社だが、今度はCtoC、個人間取引の領域に進出する。同社はCtoC型で知識や経験を売買するマーケットプレイス「WoWme(ワオミー)」の提供を11月15日より開始する。サービスのローンチに向けて10月17日より11月10日までユーザーの事前登録を実施する。

WoWmeでは、ユーザーが自らのスキルや知識、経験をサービスとして出品し、それを他のユーザーが購入することができるという、いわばスキルのマーケットプレイスだ。クラウドワークスでは「これまで仕事にするには時間や心理的ハードルが高いと思われた個人が有する『ちょっとした特技や趣味』で収入を得る機会創出の実現を目指す」としている。

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出品したサービスが売れた際にかかる販売手数料は当面無料。ただし電話を利用するようなサービス(占いや電話相談などのスキルを売るなど)の場合、1分50円のシステム利用料がかかる。またサービスの購入時には3%のシステム利用料が必要となる。また、事前登録期間内に出品登録を行えばサービスの価格を自由に設定可能だとしている。

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CtoC型サービスのマーケットプレイスと言えば、「ココナラ」や「TimeTicket」といったサービスが先行している。このタイミングでの参入の理由について、クラウドワークス取締役副社長の成田修造氏に尋ねたところ、「競合を意識したというよりは、クラウドワークスの中で試行錯誤する中で出てきたサービス」だと語る。

「(2016年の)年明けに個人が自分のスキルを売りたいニーズがあるかを検証するため『お仕事メニュー』という機能を作ったが、1カ月で1万件超の出品があり、クラウドワークスにいるプロフェッショナル層が個人の得意を売り買いするというコンセプト自体に可能性があると感じたのがきっかけ。それを昇華させた」

「あくまでクラウドワークスのビジョンである『働き方革命』という文脈の中で、企業のデマンドサイド主導のプラットフォームではなく個人のサプライサイド主導のプラットフォームを作ろうという点に立脚している。(クラウドワークスと)アプローチは違えど個人の生き方・働き方を大きく変えていく可能性があり、両方とも総契約額100億円を超える事業に成長させたいと考えている」(成田氏)

前述のとおり、事前登録すれば出品の価格は自由に設定できることもあり、今後は高単価な商品を集めていく方針。また、さまざまなジャンルですでにプロとして活躍している個人などもオフィシャルパートナーとして参加を促していく。さらに当面販売手数料を無料にすることで、総契約額の拡大に努めるとしている。

ところでクラウドワークスの直近の決算(2016年9月期第3四半期決算、2015年10月〜2016年6月の累計)を見ると、営業収益は9億円、営業利益は4億3400万円の赤字、経常利益は4億3300万円の赤字、純利益は4億7700万円の赤字となっている。

プラットフォームサービスが好調なことから8月に上方修正を発表しているが、具体的な黒字化のスケジュールについては明言しておらず、決算資料に短期目標として「総契約額100億円(での黒字化)」という数字が掲げられているのみ。果たしてWoWmeの提供がこの目標にどう寄与するのか?

「今回の事業は(総契約額)100億円への影響度についてはそこまで大きく無いと考えている。むしろその先の年間1000億円単位を想定した上で必要な戦略として立ち上げた事業だ」(成田氏)