モノを瞬時にお金に変える「カシャリ」は次のメルカリになりうるか

現代の若者が持っているものは、ほとんどが「モノ」だ。口座残高は乏しくとも、10万円以上もするiPhoneを毎年のように買い替えるし、愛用しているパソコンは高額なMacBook Proだったりする。2020年1月に創業し、同年のスタートアップバトルのファイナリストでもあるガレージバンクの「カシャリ」は、そんなモノにあふれる若者たちにはぴったりのアプリかもしれない。

カシャリは、ユーザーの所有物(スマホ、PC、ブランドバッグなど)をスマホで写真に撮ると、すぐに査定額で買い取ってくれるアプリだ。手続きはすべてスマホで完結し、買取代金はセブン銀行ATMや、銀行振込みで受け取れる。カシャリがおもしろいのは、売ったモノを「そのまま使い続ける」ことができる点だ。ユーザーは、アイテムをカシャリから「借り」ながら、売却前と変わらずに使い続けることができる。

リース期間は3カ月。リース終了後に残存価格を支払えば、ユーザーは売ったアイテムを再び買い戻すことができる。あるいはリース期間の延長もできるし、アイテムをそのまま手放したい人は、無料で手配される業者を使って郵送すれば、追加でお金を払う必要はない。たとえば手持ちのMacBook Proを3万8000円で売却して代金を受け取る。それから3カ月間、月額9000円のリース料金を支払う。3カ月後に1万5000円でMacBook Proを買い戻して契約終了という具合だ(差額の4000円はリース料)。この間、Macは常に自分の手元にある。

「お金を工面する手段は他にいくらでもあるのでは」という声が聞こえてきそうだが、若い世代にとっては、実はそうでもない。過去に信用情報に傷をつけてしまった人は、新たにカードローンに申し込んでも簡単にはじかれてしまう。またメルカリでモノを売ろうにも、要らないモノが高く売れるほど甘くはないし、売れるまでにかなり時間がかかる場合もある。カシャリを使えば、「今持っているモノを手放さずに、すぐお金に替える」ことができる。

カシャリのビジネスモデルは「リースバック」と呼ばれ、主に不動産業界で活用されている。資金需要はあるものの、住んでいる家を手放したくない人に対して、不動産会社が家を買い取りそのままリースを行う。リース期間終了後は借り手が家を買い戻すことで、不動産会社はリース料と売却代金で利益を得ることができる。万が一借り手の経済状況が悪化し、買い戻しが行われなかったとしても、家を中古市場で売却すれば、利益を得られるというものだ。

ここまで読んで「それって『CASH』とどう違うの?」と感じた読者もいるだろう。CASHは、2017年に「質屋アプリ」としてリリースされ話題になったが、現在はアイテムを査定して郵送した後に初めて、買取代金を受け取れる仕組みに変更されている。撮影するだけで最短30秒で査定と買取が完了し、申し込み完了の通知が届けばすぐにお金が受け取れるカシャリは、市場ではユニークな存在といえる。

そんなカシャリの最大の強みは査定技術だ。実家が質屋を経営する共同創業者の磯田岳洋氏の知見を用いて、アイテムの撮影方法に独自のメソッドを取り入れる。アイテム毎に異なる撮影ポイントをユーザーに提示し、真贋・状態判定のキーとなる情報を入手。また現在、査定依頼全体の約3割を閉めるiPhoneに関しては、OCRなどを活用することで、近い将来は自動的に査定を行えるようにもなるという。

一方で同社によると、査定依頼の中には偽物のブランドアイテムや、店頭に並ぶ商品の写真を使うなど、「悪意」を持ったユーザーが一定数存在する。これに対してカシャリは、ユーザーのGPS確認や、銀行レベルの徹底したeKYC(本人確認)を行うことで、不正を行うユーザーをできる限り排除する。

DXで既存の市場を若者へ開放

ガレージバンクCEOの山本義仁氏は「質屋は鎌倉時代から続く非常に優れた業態にもかかわらず、近年は衰退の一途を辿っています。特に、若年層からは『怖い』『怪しい』というイメージを持たれてしまっていて、この状況を何とか変えたいと思っていました」と語る。

そんな想いから生まれたサービスがカシャリだった。元銀行員の同氏と元質屋の磯田氏がタッグを組み、「人が持つモノを手軽に換金する」というニーズに応える手段を実現したのだ。

現状、まだ「質屋は怪しい」という従来のイメージを完全に拭う段階には至っていない。一方で、β版アプリのリリースから約2カ月でダウンロード数は2000件超、査定依頼数は1600件以上で、これまで約520万円分のアイテムをユーザーから買い取るなど少しずつ実績を積み重ねてきた。さらに、カシャリのユーザーは20~30代が大半を占め、査定依頼されるアイテムの大部分はデジタルガジェットだ。つまり、従来の質屋とはまったく異なる層の需要を取り込めていることを意味している。

日本を代表するスタートアップとなったメルカリは、「フリーマーケット」という昔から存在するビジネスモデルを、若者に親しみやすいインターフェイスで提供することで爆発的に普及させることに成功した。それと同じように、カシャリが質屋という既存の市場を若者たちに開放することで、すでにそこにあるニーズを掘り起こし、同社が急成長する可能性は大きいのではないだろうか。

関連記事:質屋のDXを目指すセール アンド リースバック「CASHARi」のガレージバンクが資金調達

カテゴリー:フィンテック
タグ:ガレージバンク

モバイル決算アプリVenmoは暗号資産、家計管理、貯蓄に進出、2021年中にHoneyを統合

モバイル決算アプリVenmo(ベンモ)の2021年は、これまでとはずいぶん違う展開になりそうだ。Venmoの親会社であるPayPal(ペイパル)は米国時間2月3日に行った第4四半期収支報告において、Venmoは家計、貯蓄、暗号資産へと範囲を広げ、ネオバンクの領域に少しずつ近づくと話した。さらに、40億ドル(約4210億円)でHoneyを買収し、商品価格の割引、特典、価格調査、ほしいものリストといった機能を含むその買い物ツールをVenmoアプリに統合する計画も発表した。

PayPalは、以前からVenmoに暗号資産を導入する意向を示していた。同社は2020年11月に暗号資産市場に参入し、特定暗号資産サービスプロバイダーPaxos Trust Company(パクソス・トラスト・カンパニー)と提携して米国内での暗号資産の購入、保有、売却を可能にした。当時PayPalは、同様の機能一式を2021年中にVenmoにも導入すると表明している。

そのタイムスケジュールは今も変わりがないことを、PayPalは今回の収支報告で投資家たちに対して明言した。

同社は、Venmoのユーザーは数カ月以内に暗号資産の購入、保有、売却をVenmoアプリ内で行えるようになると話している。これにはその他の「投資選択」も含まれるという(これは、ブロックチェーンで独自の暗号資産を展開したいと考える中央銀行にPayPalが協力していることを示すものだ)。

その他Venmoで新しくなるものを見ると、同アプリがますますネオバンクのライバルになっていくように感じられる。

たとえばPayPalは、2021年に金融業界のパートナーと共同で家計管理や貯蓄のためのツールや、PayPal内での請求書の支払いを可能にするオプションなどを導入すると話している。これらは、現代のモバイルバンキングアプリで一般的に見られるものだ。

Venmoに導入される貯蓄機能は、PayPalですでに利用可能なCash Plusアカウントと似たようなものとなり、米連邦保険公社と提携してパススルー保険が提供される。現在、Cash Plusアカウントにある資金にパススルー保険が適用されるのは、利用者がPayPalのデビッドカードであるCash Cardを所有し、Direct Deposit(口座振り込み)を行ってるか、Cash PlusアカウントでGoal(目標)を設定している場合のみだ。Venmoでも、同じ保険が適用されるように準備を整えている。

もう1つの進化は、Honeyの統合だ。PayPalは、ことあるごとにそれを公言してきたが、その統合のかたちに関する詳細がようやく明らかにされた。PayPalの計画によれば、2021年前半に、Honeyの機能がPayPalとVenmoの両プラットフォームに導入される。これには、Honeyのほしいものリスト、価格調査ツール、おまけ、クーポン、特典なども含まれる。

関連記事:PayPalが仮想通貨の対応やHoneyの統合など2021年のデジタルウォレット計画の詳細を公表

この統合により、小売り業者はPayPalの両面マーケットプレイスを利用して、PayPalとVenmoの利用者の特定の顧客層を狙ってパーソナライズした商品の提示や割り引きができるようになる。言い換えれば、特定の商品の特典を探したり、価格を調べたりといった買い物の初期段階から消費者を囲い込もうという狙いだ。Honeyの買い物ツールによって、利用者を最適な取引に導いた上に、Venmoアプリで決済まで完了させることが可能になる。

パンデミックによる店舗の閉鎖や政府によるロックダウンのために実店舗や対面での販売が減少し、商取引がますますオンラインへと移行していく中、さらに、マスクの着用やソーシャルディスタンスの確保など基本的な安全対策が徹底されていない実店舗はもう怖くて行けないという人々が、オンラインショッピングのほうを好むようになってきたこの時期に、それらの新機能が登場することになる。

電子商取引と「非接触」決済が急速に増加したことも手伝って、PayPalにはこの第4四半期に140万件もの小売り業者が新たに加盟した現在、同プラットフォームには2900万件の業者が登録し、3億5000万人もの消費者に対応している。

その一方で、Venmoの総決済額は、前年比で60%増となる470億ドル(約5兆円)に達した。顧客ベースは32%増加し、最終的にアカウント数は7000万件弱にまでなった。同社は2021年の収益が9億ドル(約950億円)に達すると見込んでいる。

画像クレジット:Venmo

Venmoは、単なる決済アプリを超えて急速に成長を遂げている。この数カ月間で、同社は初めてのクレジットカードをローンチし、月末までには100%本格展開される。また、店舗でのQRコード決済、ビジネスプロフィール小切手の換金機能(景気刺激給付金小切手の支給に間に合った)もローンチされる。

関連記事
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Venmoは、少なくとも今の時点では、完全なネオバンクになろうとしているわけではない。むしろ、いわゆる「デジタルウォレット」と目指している。

「今日のデジタル世界では決済、金融サービス、買い物を視野に入れたデジタルウォレットの必要性が急激に加速しています」とPayPalのCEOであるDan Schulman(ダン・シュルマン)氏は投資家たちに向けて述べた。「今年、私たちのデジタルウォレットは、これまでの進化にも増して大きく変化し、単一の、総合的で美しくデザインされたアプリの機能が劇的に増加します。これが、顧客エンゲージメントの大幅な増加を招くでしょう」と彼は話す。

Venmoの新機能が利用可能になれば、アプリの利用数や決済額は増大するとPayPalは期待している。

「今後、エンゲージメントは歴史的な比率で上向きになると思われます。それはすべて、単なる決済アプリから大きく飛躍したデジタルウォレット・アプリの卓越機能によるものです」とシュルマン氏は語った。

カテゴリー:フィンテック
タグ:VenmoPayPal暗号資産電子ウォレット

画像クレジット:Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:金井哲夫)

PayPalが激戦地インドでの決済事業から撤退へ

米国の決済サービス大手PayPal(ペイパル)は、世界第2位のインターネット市場であるインドでの事業を開始してから4年足らずで、同国での国内業務を終了すると発表した。

「2021年4月1日からは、インド企業の国際的な販売を可能にすることに専念し、インド国内の製品から焦点を移していきます。これは、4月1日よりインド国内での決済サービスの提供を終了することを意味します」と同社の広報担当者は述べている。

PayPalは長い声明の中で同社のインドでの優先事項がシフトしたと述べたが、業務を縮小する理由は詳しく説明していない。最近のニュースでは、同社はインドで36万以上の加盟店と契約したものの、インド市場に浸透するには苦戦していると報じられていた。

インドの報道機関The Morning Contextは2020年12月に、PayPalがインドでの現地決済事業を見限ったようだと報じていたが、同社は当時この主張を否定していた。

同社の広報担当者はTechCrunchにこう語った。「優先事項のシフトにともない、一部のPayPal従業員は新しいチームに配属されました。当社は常に、可能な限り従業員への影響を最小限に抑えることを重視しています。全体的に、当社がインドで雇用している従業員は増加しており、減少してはいません。我々は現在、インド各地のオフィスで多数スタッフを募集しています」。

それにしても、この動きは意外だといえる。同社は2020年の時点で、インドのUPI(Unified Payment Interface、統一支払いインターフェース)を利用した決済サービスを構築していると述べており、インドへの投資の増加を示唆していた。

PayPalはまた、長年にわたり、チケットサービスのBookMyShowやMakeMyTrip、フードデリバリープラットフォームSwiggyなどの多岐にわたるインドの人気ビジネスと提携し、より迅速なチェックアウト体験を提供してきた。本稿執筆時点では、インドのPayPalのウェブサイトは、そうした参照をすべて削除してあるようだ。

インドは近年、モバイル決済企業にとっては世界最大の激戦地の1つとして浮上してきた。
Paytm、PhonePe、Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)、そしてFacebook(フェイスブック)を含む多額の資金に支えられた企業の数々が、 2023年には1兆ドル(約105兆円)の価値があるだろうと推定されるインド市場でのシェアを増やそうと競合している。これらの企業のいくつかは、加盟店向けの様々な決済サービスも提供している。

2020年、インドの加盟店向けに14億ドル(約1475億円)相当の国際売上を処理したとする同社は、「インドの企業が世界で3億5000万人近くいるPayPalユーザーにリーチし、国際的に売上を伸ばすお手伝いをし、インド経済の成長回帰を支援するための製品開発」に今後も投資していく、とつけ加えた。

PayPalは10年以上前からインドでクロスボーダー決済サポートを提供している。インドに進出してからは、インドの消費者がオンライン加盟店で買い物をする際、現地通貨で支払うことを可能にしていた。

この記事は、PayPalから提供された追加の詳細を元に更新された。

カテゴリー:フィンテック
タグ:PayPalインド

画像クレジット:Yichuan Cao/ NurPhoto / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

Joompayがヨーロッパ全域で割り勘払いができるアプリをリリース、Transferwiseなどに対抗

VenmoやTransferWiseに似たiOSとAndroidアプリのスタートアップであるJoompayは、ルクセンブルクの電子マネー機関(EMI)の認可を取得してヨーロッパでサービスを開始した。このアプリを使うと誰とでもすぐに無料でお金のやり取りができる。ピア・ツー・ピア決済はRevolut、N26、Monese、Monzoなど競合の多い厳しい市場で、Joompayはここに参入することになる。Joompayを始めたのは、eコマースマーケットプレイスのJoomの創業者たちだ。

ユーザーは相手のメールアドレスか電話番号がわかれば送金できる。あるいは、個人情報を一切明かさないカスタムのペイタグを使うこともできる。共同で支払いをしたり、オンラインで買い物をしたり、別の国にいる人に送金したりするのに使える。ユーザーは専用の決済ページを作って自分のJoompay URLを共有し、顧客から集金したりPayPalのように寄付を受けつけたりすることもできる。

JoompayのCEOで共同創業者のYuri Alekseev(ユーリ・アレクセーエフ)氏は発表の中で「ヨーロッパ全域にわたるものとしては初となる最高クラスのピア・ツー・ピア決済ソリューション体験を提供するアプリを開発しています。新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大で現金以外での決済の人気が高まり、我々にとってはさらに発展する絶好のチャンスとなっています」と述べた。

2020年12月にJoompayはVISAカードスキームのプリンシパルメンバーになり、ヨーロッパ全域で新規のJoompayカードを発行できるようになった。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Joompayヨーロッパ

画像クレジット:JoomPay

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

評価額2170億円を超えるMambu、バンキングサービスを強化するSaaSプラットフォームに約140億円を調達

チャレンジャー銀行、既存の銀行、そしてあらゆる銀行サービスに参入してくる多くの企業には共通点がある。それは、クレジットラインや預金、当座預金などの新商品を立ち上げる際に、最近ではそうした多くの企業が一から作り上げるのではなく、サードパーティーのテクノロジーを利用してサービスを提供していることだ。米国時間1月7日、そのようなテクノロジーを提供する大手企業の1つが、事業拡大のための大規模な資金調達を発表し、この市場の成長を裏付けた。

Mambu(マンブー)は、ベルリンを拠点とするスタートアップで、SaaSバンキングプラットフォームを自称していて、銀行などにAPIを介して融資や預金などの銀行商品を強化するテクノロジーを提供している。マンブーは、1億1000万ユーロ(1月7日時点のレートで約1億3500万ドル、約140億円)のラウンドを終了し、この資金調達により、調達後の評価額は17億ユーロ(同20億ドル強、約2160億円)になることが確認された。

CEO兼共同創業者のEugene Danilkis(ユジーン・ダニルキス)氏は、この資金を利用して、すでに事業を展開している50の市場をより手厚く拡充し、南米やアジアなどの特定の地域にも力を入れていく予定だと述べている(「シリコンバレーは死んだのか?」という話題に注目している方へ。同社は、マイアミに米国オフィスを構える数多くのテック企業の1つだ)。

マンブーは前年比100%の成長を遂げているが、注目すべきは、同社が前回2019年に3000万ユーロ(当時のレートで約37億6000万円)を調達したときには50の市場をカバーしていたことだ。マンブーはそうした市場に投資し、事業を拡大していく予定だ。

今回のラウンドはTCV(ティーシーブイ)が主導しており、Tiger Global(タイガーグローバル)とArena Holdings(アリーナホールディングス)に加え、以前の出資者であるBessemer Venture Partners(ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ)、Runa Capital(ルナキャピタル)、Acton Capital Partners(アクトン・キャピタル・パートナーズ)も参加している。Netflix(ネットフリックス)、Facebook(フェイスブック)、Spotify(スポティファイ)などに投資を行ってきたTCVは、大規模な成長ラウンドへの投資を行うことで知られ、最近ではRevolut(レボリュート)Spryker(スプライカー)Mollie(モリー)Relex(リレックス)などへの投資を行い、ヨーロッパのフィンテックやeコマースの大手企業を支援することでも名を馳せている。

マンブーが注力する市場では、スマートフォンやウェブの利用増加を活用する銀行や金融機関のサービスの新勢力に大きなチャンスがある。

預金の入出金、ローン申請書の記入、個人やビジネスへの融資を最終的に判断する審査役との面会のために銀行のリアル店舗に行く必要がある時代は遠い過去の話だ。実際、そのような従来型の店舗の多くはもはや存在さえしていない。その役割は、アプリやウェブサイト、オンデマンドサービスが取って代わり、人々が時間とお金を費やすオンライン上に存在している。

ダニルキス氏によると、マンブーのプラットフォームは現在、約7000種類の銀行商品をカバーしている。これらの商品は、融資、当座預金口座、普通預金口座の3つの主要なカテゴリーに大別されるが、商品の数の多さは、今日の銀行サービスがいかに多くの方法や形態で提供されているかを如実に物語っている(例えばクレジットを例にとると、さまざまな種類のカード、店頭販売のペイレイター商品、ストレートローンなどを介してサービスを利用できる)。また、独自の商品に加え、TransferWise(トランスファーワイズ)のようなサードパーティーの金融サービスへのリンク、セキュリティなどの追加サービス(銀行のプラットフォームとしては当然のことだろうが)、「プロセスオーケストレーション」(ビジネスプロセス管理ツールの提供に等しい)のためのプラットフォームも提供している。

Gartner(ガートナー)の推計(マンブーが引用)によると、銀行系ソフトウェア市場の規模は1000億ドル(約10兆4000億円)を超え、2桁台の成長率で拡大している。マンブーの顧客リストを見ると、最近そのシェアの一部を争っている企業の顔ぶれが見えてくる。N26やOakNorth(オークノース)のようなチャレンジャー銀行だけでなく、Santander(サンタンデール)やABN Amro(エービーエヌアムロ)のような大手の既存銀行、Orange(オレンジ)のような通信事業者も含まれており、これらを合わせて約2000万人の顧客と約120億ドル(1兆2500億円)が管理下にあるとマンブーは述べている。

そして当然のことながら、大きな好機があるということは、マンブーのような企業にとって競合他社の数も増加していることを意味している。Rapyd(ラピッド)やUnit(ユニット)のような新しい企業だけでなく、昨年大規模な資金調達を行ったThought Machine(ソートマシン)Temenos(テメノス)、イタリアのEdera(エデラ)などがそうだ。SaaS銀行プラットフォームの分野に新規参入した企業が、事実上「既存」となった企業とどのように対峙していくのか、興味深いところだ。2011年に創立したマンブーは設立から10年を迎えようとしている。こうした動きは統合につながる可能性もある。

顧客リストに立ち戻ると、通信会社やネオバンクのような実際には金融サービス事業を行っていない企業が、APIベースのサービスを銀行業務に活用するというロジックが理解できる。そうした企業は金融サービス自体を提供する代わりに、金融サービスを提供するための質の高いアルゴリズムと、金融サービスを使いやすくするための高速なインターフェースを構築することに重点を置いている。この顧客リストに大手銀行も載っていたことは興味深い。その理由は、大手銀行も新興勢力に対して対抗策を練っているということだ。

「確かに、銀行は機能と能力を持っているが、新しいことを立ち上げるには、スピードやコストが問題となることが多い」とダニルキス氏は言う。「第2世代のシステムを持っている銀行もあるかもしれないが、多くはもっと古いシステムだろう。そして、金融商品の動作を変更することは、小さな変更でも問題が起きる可能性があるため、非常に困難でありリスクが高い。また、APIを使って動作するように設計されていないシステムを、他のシステムに接続することは不可能ではないにしても非常に困難であり、リアルタイムでの接続などは到底無理だ。特定のソリューションやサービスを、独自に構築することは不可能であるか、現実的ではない」。

TCVのパートナーであるJohn Doran(ジョン・ドラン)氏は、今回のラウンドでマンブーの取締役会に参加している。またマンブーは、一部の人からは既存の企業と見られているかもしれないが、その早期参入者としての立場を活かしてマーケットシェアを獲得しただけでなく、投資家の間でも持続力のある企業の1つとして注目を集めている。

「マンブーは、銀行のソフトウェアをクラウドに移行する機会をいち早く活用した企業の1つだ」とドラン氏は声明の中で述べ、次のように続けている。「従来、市場は大規模で動きの鈍いオンプレミスのベンダーに支配されてきたが、マンブーのチームは、数十億ドル規模で急速に成長しているこの市場において、高度に構成可能で完全にクラウドネイティブな製品を構築した。長年にわたってマンブーの発展を見守ってきたが、ユジーン氏とマンブーのチーム全員が世界中の顧客にサービスを拡大するための過程でパートナーを組むことができたことを本当に嬉しく思っている」。

関連記事:LINE PayでVisaタッチ決済可能に、「Google Pay」対応でLINEアプリの起動不要

カテゴリー:フィンテック
タグ:SaaS 資金調達

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

LINE PayでVisaタッチ決済可能に、「Google Pay」対応でLINEアプリの起動不要

LINE Payが「Google Pay」対応開始、LINEアプリ起動せずにかざして支払い

LINE Payは2月4日、LINE(ライン)のモバイル送金・決済サービス「LINE Pay」において、「Visa LINE Payプリペイドカード」対応非接触決済サービスの追加および「Google Pay」対応開始を発表した。「iD」「Visaのタッチ決済」「オンライン支払い」の3種のGoogle Payによる支払い方法をサポートしている。

ユーザーは、LINEアプリ上でバーチャルカード「Visa LINE Payプリペイドカード」を発行しGoogle Payに登録することで、国内121万カ所以上(2020年9月時点)のiD設置店舗、Visaのタッチ決済加盟店においてGoogle Pay対応Android端末をかざすだけで、QRコード決済と共通のLINE Pay残高での支払いが可能になる(LINEアプリを起動する必要はない)。

Android 5.0以降かつiDを利用の場合、おサイフケータイのバージョン6.1.5以降が必要。

またオンライン支払いは、Google Pay公式サイトの「お支払い方法を追加」タブからも登録設定できる。

「Visa LINE Payプリペイドカード」概要

  • 正式名称:Visa LINE Payプリペイドカード(カード番号のみ発行。プラスチックカードの発行はない)
  • 国際カードブランド:Visa
  • 年会費・発行手数料:無料
  • 有効期限:5年
  • 対象:年齢制限なし(未成年者は、親権者など法定代理人の同意を得た上で申し込み)
  • バーチャルカード:オンラインのVisa加盟店で利用可
  • Google Pay:iD加盟店、Visaのタッチ決済加盟店で利用可
  • Apple Pay:iD加盟店で利用可
  1. LINE Payが「Google Pay」対応開始、LINEアプリ起動せずにかざして支払い

 

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Google Pay(製品・サービス)Visa LINE PayプリペイドカードLINE(企業・サービス)LINE Pay日本(国・地域)

組み込み融資の独スタートアップ「Banxware」がシード資金5.1億円調達

エンベデッドファイナンス(組み込み型金融)とは、すでに汎用ソリューションとAPIでシステムを構築している顧客に融資機能を提供する仕組みであり、まったく新しいコンセプトというわけではない。実際、POSクレジットはシリコンバレーのベンチャーキャピタル / メディア会社であるAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)が大騒ぎするずっと前から存在したコンセプトだ。しかし、クラウド技術に加えて山ほどのフィンテックや「サービスとしてのバンキング」スタートアップが出現したことによって、組み込み型金融のトレンドは間違いなく加速している。

そこに最近参加したのが、ドイツ・ベルリン拠点のBanxwareで、中小企業向けローンやマーケットプレイス、決済プロバイダーなどとの提携というかたちで組み込み型金融を提供している。2020年12月に開業し、シード資金400万ユーロ(約5億1000万円)を調達したことを2月2日に発表した。

ラウンドをリードしたのはForce Over MassとVR Venturesで、ほかにHTGFおよびバンキング、決済、Eコマースの個人投資家が参加した。

Banxwareはこの資金を、同社の組み込みホワイトレーベル融資サービスの開発と成長、およびチーム拡大のために使うという。融資に加えて、近くカードベースの商品やその他の金融サービスも提供する予定だ。

Banxwareの技術とインフラを使えば、どんな会社でも中小企業向けに融資その他のバンキングサービスを提供できるようになる。つまりは、銀行(貸し手)とデジタルプラットフォームと売り手を繋ぐ役目を果たすということだ。銀行は手の届きにくい中小企業ユーザーと繋がる機会を得られる。プラットフォーム、たとえばオンラインマーケットプレイスなら自社の中核製品に加えて金融商品のアップセリング(より高額な商品を売る)が可能になる。そして売り手は運転資金をすばやく手にすることがきる。

「中小企業は必要なときに資金を得ることが難しく、設立3年以内の会社や信用履歴のない会社は特にそうです」と共同ファウンダーでCEOのJens Röhrborn(イェンス・ラーボルン)氏が説明した。「しかも融資申請、つまり融資の決定と支払いまでには数週間かかるのがほとんどです」。

「デジタルプラットフォームを使って商品の販売やデジタル支払いの処理を行う売り手は益々増えています。プラットフォームから提供される売り手の最近の履歴データを使うことで、私たちは会社の将来の売上を見込んで融資することができるのです」。

これまでにBanxwareは、AML(アンチ・マネーロンダリング)とKYC(顧客を知ること)の規則を遵守した即時融資ツールと、プラットフォームの履歴データに加えて口座情報プロバイダーや外部スコアリングサービスなどのサードパーティーから得たデータを分析するスコアリングエンジンを作ってきた。

「融資に関して私たちは、直接融資するバランスシートレンダーと、事前に融資条件と融資判断基準を合意した上で当社が代わって融資判断をする融資サービスの両方を取り扱っています」とラーボルン氏はいう。「売り手は融資の返済を、プラットフォームが将来の売上から一定の割合を差し引くかたちで行います」。

ラーボルン氏は自社の即時融資ツールについて、「まだ始まったばかり」であり、Banxwareは今後も組み込み型金融サービスを拡張し、海外にも進出するつもりだと語った。

ちなみこのドイツのフィンテックは現在、同社プラットフォーム経由で処理された融資ごとの一時手数料と、1回限りのカスタマイズ費用を受け取っている。

関連記事:中小企業向けの組み込み融資業者Liberisがさらに97.9億円を負債で調達

カテゴリー:フィンテック
タグ:Banxware資金調達

画像クレジット:Banxware

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(文:Steve O’Hear、翻訳:Nob Takahashi / facebook

インドネシアの中小企業をデジタル化するBukuWarungがRocketship.vcから新たな資金を調達

米国時間2月2日、インドネシアで国内6000万の小規模事業者のデジタル化に取り組むスタートアップのBukuWarungが、Rocketship.vcおよびインドネシアの小売コングロマリットから新たに資金を調達したと発表した。

金額は明らかにされていないが、情報筋によるとBukuWarungのこれまでの調達金額の合計は2000万ドル(約21億円)だという。BukuWarungの直近のラウンドは2020年9月に発表されたもので、1000万〜1500万ドル(約10億5000万〜15億7500万円)だった。2019年にChinmay Chauhan(チンメイ・チャウハン)氏とAbhinay Peddisetty(アビネイ・ペディセッティ)氏が同社を創業し、2020年にはY Combinatorに参加した

Rocketship.vcは、インドのスタートアップであるKhatabookにも投資している。Khatabookは直近の資金調達ラウンドでバリュエーションが2億7500万〜3億ドル(約288億7500万〜315億円)に達した。Khatabookと同様にBukuWarungも、ワルンと呼ばれる町の商店のような小規模事業者が紙の帳簿に頼っていたのをデジタル簿記とオンライン決済に移行できるよう支援している。BukuWarungは最近、Tokokoというサービスも開始した。これは商店がアプリでオンラインストアを開設できるShopifyのようなツールで、すでに50万の商店がTokokoを利用しているという。

BukuWarungの社長であるチャウハン氏は、決済ソリューションで収益が出始めたと語る。同社は、インドネシアの750の都市で350万以上の商店がBukuWarungに登録したと公表している。同社プラットフォーム上で150億ドル(約1兆5700億円)相当を超える取引が記録され、取引量では5億ドル(約525億円)以上を処理しているという。

インドネシアのGDPの約60%は中小企業が占め、国内労働力の97%を中小企業が雇用している。しかし中小企業の多くは、成長につながる金融サービスをなかなか利用できない。BukuWarungのようなサービスで財務記録をデジタル化すれば、中小企業は信用枠や運転資金の融資などを利用しやすくなる。東南アジア最大の経済大国であるインドネシアで中小企業向けに同様のサービスを提供している企業には、BukuKasやCrediBookがある。

BukuWarungは新たに調達した資金でインドネシア、インド、シンガポールの技術チームと製品チームを増強する。2021年はクレジットなど収益化できるプロダクトをさらに公開し、決済ソリューションを成長させる計画だ。

関連記事:インドネシアの零細ショップ向け簿記アプリ「BukuWarung」

カテゴリー:フィンテック
タグ:BukuWarungインドネシア資金調達

画像クレジット:Selective Focus/Willy Sebastian / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

後払い販売(Buy-Now-Pay-Later)が英国で規制対象に

政府による審査の結果、英国の金融サービス規制当局はKlarna(クラーナ)、AfterPay(アフターペイ、英国内ではClearpay)などの企業によって普及した「buy now, pay later(バイ・ナウ・ペイ・レイター、後払い販売)」業界を規制するよう指示された。

業界への聞き取りは継続中であり、その後議会の日程が合い次第「buy now, pay later」規制法案が可決される見込みだ。

これによって英国の金融行動監視機構(FCA)は、無利息のbuy now, pay later契約の規制を厳格化することを求められる。たとえば企業は融資の前に包括的な支払い能力審査を行い、顧客が公正に扱われることの確認を「特に返済に苦しむ弱者」について要求される。これまでこの業界は、クレジットカードなどの利付商品に含まれていないために規制対象から外れており、消費者は問題が起きた時に頼る術がなかった。

「多くの消費者は無利息のbuy-now-pay-laterを信用販売の一種であると認識していないため、信用販売と同レベルの監視が適用されず、サービス提供者によるチェックも企業にとってのリスクに焦点を当てたものであり顧客にとって購入可能であるかどうかの視点がありませんでした」と英国財務省は語った。

FCAのChristopher Woolard(クリストファー・ウーラード)氏による審査報告では、信用調査の問題および売買契約者間における透明性の欠如が適切に指摘されている。「通常の取引は比較的少額ですが、買い手は複数のサービス提供者と契約することが可能であり、審査結果によると、信用照会期間や主要金融機関から見えない状態で1000ポンド(約14万3000円)程度の負債が容易に生じます」と財務省は指摘する。

さらに審査結果によると、英国における後払い販売市場は27億ポンド(約3885億円)に上り、パンデミックでオンラインショッピングがブームになって以来、500万人が利用しており、その多くはすでにその他の信用販売で支払いを滞納している。

これまで小売業者が提供する無利息後払い販売は、英国の信用に基づく金融商品から消費者を守る目的の規制の対象外だった。英国の金融問題活動家であるAlice Tapper(アリス・タッパー)氏は2020年6月に「#regulateBuyNowPayLater(BuyNowPayLaterを規制せよ)」キャンペーンを開始し、これは「規制がテック巨人に追いついていない典型例」だと以前。私に話している。

「消費者信用法は1970年に制定されたもので、アルゴリズムや瞬時の融資判断を想定していません」と彼女は説明した。「これは事実上消費者保護がゼロであることを意味しています。消費者は購入あるいは広告を見た時点でリスクに関する情報を与えられていません。債務回収や責任ある支出についの言及もありません。これは、若者や脆弱な消費者など信用商品を使った経験のない人たちにとって特に深刻です」。

一方、たとえばKlarnaは規制強化に反対ではないという姿勢を貫いている。もちろん悪魔は細部に宿っていて、まだ決着はついていない。「有意義なかたちで作られた良い規制は意味をなすと思っています」とCEO・共同ファウンダーのSebastian Siemiatkowski(セバスチャン・シェミアトコフスキ)氏は2020年私に話した。「私たちはどの点についても反対ではありません、それが市場にいる全プレーヤーに公平である限り」。

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タグ:Klarnaイギリス

画像クレジット:FCA

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(文:Steve O’Hear、翻訳:Nob Takahashi / facebook

新型コロナで日常となったレストランのデジタル注文方式に中国の人々は反発

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック前からすでに、中国のレストランではデジタルによる注文と支払いが定着していた。スマートフォンをタップして注文する方式は、現金と紙の文書が消えつつある中国で大きく発展したものの1つだ。大きな街では、人件費削減のためのデジタルメニューが欠かせない状態にまでなっている。

そんな中、一般市民や行政は、過度なデジタル化への反発を見せている。中国共産党の機関紙である人民日報には、今週、「注文のスキャンだけが唯一の選択肢ではない」と題した記事が掲載された。

消費者の選択の自由と客が喜ぶ人によるサービスが奪われることに加え、スマートフォンの使用を強要される環境は、データプライバシーの懸念も呼び起こしている。スマホで注文する際には、レストランのデジタルサービスを利用可能にするためにWeChat、Alipay、Meituanといったインターネットプラットフォームの個人プロフィールへのアクセスが求められることがあるからだ。そんなお宝データの山を利用して、企業はユーザーに広告を送りつける。

「このアプローチは消費者のデータ保護の権利を侵害します」と人民日報は、中国の法学者の公的機関である中国法学会の幹部の言葉を引用している。

中国はまた、キャッシュレス決済の過度な普及にも目を光らせている。2018年、中国の中央銀行は現金決済の拒否は、特に高齢者など電子決済に不慣れな人たちに対して「違法」で「不公正」な行為だと非難した

高齢者は、パンデミックによって日常となったSIMカードの位置情報などから人の移動の記録を生成する、デジタル保険条例によるジレンマにも直面している。スマホで健康パスを提示できなければ、高齢者はバスの運転手、地下鉄の警備員、レストランの従業員、公共施設の守衛に追い払われてしまう恐れがあるのだ。

こうしたデジタルデバイドの谷を埋めようと、広東省南部では最近になって、指定されたスキャナーに物理的なIDカードをかざすだけで自分の健康状態を証明できるサービスを開始した

だが、キャッシュレス決済を後戻りするのは難しい。公的なデータによれば、2015年から2020年にかけて、中国のモバイルインターネットユーザーの間のデジタル決済の普及率は60%未満から85%以上に伸びている。しかも政府は、デジタル人民元の展開ペースを速めている。これはサードパーティの決済方式と違い、中央銀行が発行し管理するものであり、中国の物理的な法定通貨のデジタル版だ。

関連記事:中国のデジタル人民元の大規模な実験が深圳でスタート

カテゴリー:フィンテック
タグ:デジタルデバイド中国キャッシュレス決済

画像クレジット:The future of restaurant ordering:Alipay

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(文:Rita Liao、翻訳:金井哲夫)

株取引アプリRobinhoodが週末だけで合計3566億円の資金を獲得

厳しい監視下にある人気株取引アプリのRobinhood(ロビンフッド)が、株主らから得た24億ドル(約2516億円)をバランスシートに加えた。Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)が報じた後、同社が正式に認めている。非上場のスタートアップは米国時間1月29日に10億ドル(約1048億円)を調達したばかりであり、多数の民間投資家が個別株に投資しようとRobinhoodのアプリに殺到するのに対応するべく、これで同社はわずか数日の間に34億ドル(約3566億円)を手に入れた。Redditユーザーが空売り人たちを困らせようとGameStopに投資したことが大きな要因だ。

Robinhoodによると、新たな調達ラウンドは「Ribbit Capitalのリードで、既存出資者のICONIQ、Andreessen Horowitz、Sequios、Index Ventures、NEAが参加し、最終条件は調整中」という。未確定の調達ラウンドについて発表するのはかなり異例だが、早く心を落ち着けたいRobihoodが、手続き完了前に資金について叫ぶのは理に適っている。

新たな資金は、2021年にIPOを実施する可能性のあるユニコーンにとって厳しい時期にやってきた。しかし、同時に世間の大きな関心を集めやすいときでもあり、多くの潜在新規ユーザーを引きつけるに違いない。

先週Robinhoodは、GameStop(ゲームストップ)やAMCといった、いわゆるミーム株に投資しようとする新たな投資家の需要に圧倒された。厳格な資金要件に答えるために、Robinhoodは一時的にこれらの株の取引を中止せざるを得なかった。現在RobinhoodユーザーはGameStopなどの株をわずかしか買うことができない。GameStopの爆走が始まった後、Robinhoodは追加資金を獲得したが状況は変わっていない。

TechCrunchはRobinhoodにメールを送り、24億ドルの資金調達の詳細を尋ねた。会社の第一次資本として調達したのか、上場時に転換可能な転換社債なのか、それとも別の方法なのか。

【更新】Robinhoodは正式なコメントを拒んだ。しかし事情に詳しい筋が、資金はConvertible Note(コンバーチブルノート)のかたちで調達されたとTechCrunchに語った。Forbesは資金調達がコンバーチブルノートで行われたことを最初に報じていている

「今週の株式市場における異常な状況の中、本日当社は一部株式の購入を一時的に制限する苦渋の決断を下しました。証券会社として、当社にはSECの資本準備義務や清算預託金など数多くの財務要件があります。要件の中には市場変動に応じて変動するものがあり、現在の環境下では著しい金額になりえます。これらの要件は投資家と市場を保護するために存在するものなので、私たちは規則に従う義務を果たしており、本日の措置もその1つです」と同社がブログに書いている。

言い換えると、Robinhoodは資金が底をつき、そのために同社アプリの狂った活動を制限せざるを得なかった。Robinhoodによる制限の理由は手続き的なものだが、多くの投資家たちはこの締めつけをヘッジファンドを優遇する仕打ちだと受け取っている。米国時間1月29日、Robinhoodは新たなブログ記事を投稿し、この同社の軌道における重大な週とも見られている期間に起きたことを詳しく説明した。

「私たちのゴールは、このプラットフォームであらゆる銘柄を購入できるようにすることです。これは活動的で変化の多い市場であり、私たちはこれまで通り仲介業者としての要求に答える行動を継続し、長期に渡ってお客様にサービスを提供していきます」と声明に書かれている。

この日の新たな資金はRobinhoodが切望していた緩衝となるもので、顧客である投資家たちを喜ばせる手助けになるだろう。

関連記事:RobinhoodがGameStopなどのユーザー保有株数を1株に制限

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タグ:Robinhood資金調達

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Mascarenhas、Alex Wilhelm、翻訳:Nob Takahashi / facebook

GameStop株を買いまくることで個人投資家たち、ボスのボスのボスのボスとの話

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

なんという1週間だったのだろう。そして、なんという1カ月だったのだろうか。読者のみなさんはお元気だろうか。疲れ果てていても仕方がない。みんなそうだ。週末があるのはそのためだ。

先週起こったことを振り返ってみよう。個人のトレーダーたちが結束して、多くのプロの投資家たちを激怒させたのだ。それは縮小しつつある物理的な小売業者の衰退がこの先も続くだろうというプロの投資家たちの合理的な賭けを反転させることで行われた。

GameStop(ゲームストップ)株を買いまくることで、個人投資家たちがスマートマネーの台本をひっくり返したのだ。その後は大混乱だ、いくつかの株は取引サービスでブロックされ、議会は怒り、億万長者がまるで一般人であるかのようにTwitter(ツイッター)に投稿し、Dogecoin(ドージコイン)を含む複数の仮想通貨が急騰し、何もまともに解決しないまま週末へと突入した。奇妙な出来事だ。

この教訓について語り合おう。第一に、過度に株の空売りをしてはならないということだ。その取引が世間の目に晒され、不利益を被らせようと反転させられるリスクがあるからだ。第二に、TechCrunchが長年にわたって取材してきたフィンテックスタートアップは、積立金要件や単純なプラットフォームリスクのために、予想以上に脆弱なものになっていたということだ。そして第三に、物事は常により悪化することがあるということだ。

その最後の教訓の証拠は、それがWeWorkがSPACを介して上場を模索する可能性があることが知られるようになった週の最中にやってきた。これは2021年が2020年よりも重要でいつも通りの年になったことを示している。

振り返りは止めて、本日のメイントピックへ入ろう、それは、私が実際に一緒に働いている人物、Guru Gowrappan(グル・ゴウラッパン)氏(ベライゾン・メディア・グループ、VMGのCEO)との対話だ。ご存知ない方のために言い添えておくなら、Verizon(ベライゾン)はVMGを所有しており、結果としてTechCrunchを所有している。VMGは、Yahoo!(ヤフー)から各種メディアブランド、その他のテクノロジー製品に至るまでの、さまざまな資産が集められた企業だ。それは年間に何十億ドル(何千億円)もの売り上げを得ているが、そのことを知れば、ゴウラッパン氏がどれくらい私のいる場所から高い場所にいるかがわかるだろう。私もTechCrunchの中ではそこそこの地位だが、全体の組織図の中では埋もれた立場だ。

要するにとても遠いということだ。

しかし、私たちはTwitter上でお互いをフォローしていて、 先週Verizonが報告したVMGの決算のかなり良かった数字をツイートした後、私は30分ほどゴウラッパン氏と話す機会を得た。つまりボスのボスの(中略)ボスを、特に前提なしに取材できるということだ。断るわけがない。

背景をお話ししておくと、VMGの第4四半期の売上は23億ドル(約2408億円)で、前年同期比11%増となった。Verizonはそれを「Yahoo!を買収して以来、前年同期比で成長した初めての四半期」だと述べている。何がその結果をもたらしたのか?Verizonの業績報告によれば「デマンドサイドのプラットフォームの収益が前年比41%増となり、広告が好調な傾向にある」とのことだ。

ゴウラッパン氏だけではなく、正直なところ私も、この成長は嬉しい。なにしろVMGの売上は、2020年第2四半期には前年同期比24.5%減の14億ドル(約1466億円)にまで落ち込んでいたのだから。

私はいくつかの質問を用意していた。最近の広告の勢いは2021年も続くのだろうか(それはVMGの組織をはるかに超えて多くのビジネスに影響を与える可能性があるだろう)。VMGが前年比で成長していることはVerizonにとってどれほど重要であったのか。彼は商業収入とジャーナリズムのバランスをどう取ろうと考えているのか。そして最近復活を見せて、Substack(サブスタック)やTwitter(ツイッター)そしてFacebook(フェイスブック)さえもが手を出しているニュースレター技術のような新しいメディアプロダクトについて、ゴウラッパン氏はどう考えているのだろうか。

私が聞き出したのは以下のようなものだ。

  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の年の最後の数カ月に見られた強力な広告パフォーマンスについて、ゴウラッパン氏は「市場のダイナミクスのコア部分がより永続性のあるものへと変化している」と語った。そして消費者の行動が以前よりも「よりデジタルに、よりオンラインに」なっていると付け加えた。
  • VMGのCEOは、2021年第1四半期の予想を詳細に語ることは拒んだが、VMGは「その勢いを継続する」ことを目指していると口にした。
  • その勢いの一部は、サブスクリプションプロダクトから来ており、ゴウラッパン氏はそれを勝因の1つとして挙げている。「新型コロナによって起こったトレンドの1つを見てみると、消費者がより信頼できるコンテンツに移行し、より多くの時間とお金をサブスクリプションベースのプロダクトを消費するために使おうとしていることがわかりますね【略】TechCrunch / Extra Crunchは前年比で196%近く成長しました」
  • 現況に対する彼の回答から読み取れたことは、オンラインメディア事業にとって、今は悪い状況ではないということだ。ジャーナリズム業界の生き残りを見渡せばわかるが、ここ数年はとてもそのような状況とは言い難かったのだ。
  • Buzzfeed(バズフィード)によるVMGからのHuffPost(ハフポスト)買収後に考えたことだが、Verizon内部でのVMGの位置づけについて、私はゴウラッパン氏に、VMGの最近の財務実績が会社をVerizonにとってより魅力的なものにしたかどうか、また、当社がやろうとしていた挑戦が結果を出したのかどうかを尋ねてみた。ところで、この質問は、書くことは簡単だが、自分を解雇できる人間と話をしているときに口にするのはやや難しい質問だ。とにかく、ゴウラッパン氏はそれに対して「完璧ですね」と答えた。VMGのCEOは、VerizonのCEOの意見を、メディア事業はVerizonにとって「コア」であり、「VMGが約束を果たす一方で、Verizonはメディア事業に投資を続けていきます」とまとめている。
  • ゴウラッパン氏は、VMGはプラットフォーム上でeコマースを推進する際に、信頼性を売上と交換することはないと述べている。「いかなる場合も、信用を金銭と交換することはありません。とんでもない。編集チームが私を正直にしてくれるのです」と彼は言い、ジャーナリズムのバランスを崩すような変更はしないと付け加えた。そう聞くことができて良かった。
  • 最後の質問は、VMGが真似したい、もしくは買いたいと思うような新しいメディアプロダクトはあるかというものだった。ゴウラッパン氏は全体的にパーソナライゼーションには強気だったが、VMGがSubstackのような企業を買収しようとしているのかどうかといった話題には触れようとはしなかった。

おっともう1つ、HuffPostのBuzzFeedへの売却を受けて、VMGが他のメディアを売却もしくは処分するつもりはあるのかという質問もしてみた。ゴウラッパン氏によれば、VerizonのCEOはメディア事業に「完全にコミットしています」と述べ、「それは売却によって生み出されるものではありません」と述べているという。売却ではなく「投資と成長の上に築かれます」と述べ「追加の事業を売却する予定はありません」と付け加えている。現在の健康保険が気に入っている身としてはひと安心だ。

以上がいつものExchange的な話題ではないことは承知しているが、私が常に心がけていることの1つは、仕事のおかげで自分のところにやってくる話題を、みなさんのところにお届けするということだ。

ということで、ここからはベンチャーキャピタルの話に戻ろう。

マーケットノート

先週のTwitterフィードはGameStopで埋め尽くされていたが、他にも知っておくべきことがある。例を挙げるなら、米国に拠点を置くフィンテックのAlfred(アルフレッド)が米国時間1月26日火曜日に1億ドル(約105億円)を調達した。同社はデジタルインテリジェンスと人間を融合させ、ユーザーの金融生活の管理を支援する。すばらしい。

また、アフリカのVC市場の掘り下げを含む、2020年のベンチャーデータに焦点を当てた私たちの最近のレポートに加えて、投資グループのWork-Benchが、2020年後半にニューヨークのエンタープライズテックシーンがどのように推移したかをまとめた。いつもの週なら私が分析してご紹介するような種類のデータなのだが、なにしろ今週は大変だったので中身の読み込みはみなさんにお任せする。

データといえば、企業がより多くの多様な候補者を採用するのを支援するスタートアップHalloがその「Black Founder Funding Q4 2020」にまとまったデータを発表している。読むべし。時間がないようなら、とりあえず私の目に留まり、気分を落ち込ませた見出しを挙げておこう。「Halloの調査によると、(2020年第4四半期に)分析された1537社のうち、黒人の創業者が率いていたのは40社に止まっっていた」 。

そして先週私は、決算報告後のMicrosoft(マイクロソフト)からいろいろと話を聞いた。詳細は後日に譲るが、2つのことがはっきりした。まずクラウドの世界にはまだまだ大きな成長の余地があるということだ。これはスタートアップのソフトウェア市場にとっては良い報せだ。また、Salesforce(セールスフォース)がSlack(スラック)を買収した理由を理解するために、Teams(チームス)の成長に関するデータをもっと知りたいと思っていたのなら、次の四半期を待とう。

その他のことなど

締めくくりに。私は2014年8月に、レイルガン方式のブリトーデリバリーサービスを思いついた。アプリでボタンを押せば、適当な店からブリトーをオフィスにまっすぐ届けてくれる。その後、Postmates(ポストメイツ)が実際にアプリに「ブリトー砲」機能を組み込んだが、これは陽気で楽しいものだった。

さて時は2021年。Postmatesは今ではUberの一部となっている。その彼らがブリトー砲をひっさげて帰ってきた

私の怠惰で愚かなアイデアが、5年以上も経ってから、プロ仕様のポテト砲から打ち出されたブリトーめがけて、NFLのスター選手を走らせることになるとは予想もしていなかった。でも2021年になってここまでたどり着いたのだ。

つまり、これは私のスタートアップのアイデアはすべてすばらしいものだという証拠だと思う。

関連記事:WeWorkがSPACとの合併を通じて上場を検討中、WSJが報道

カテゴリー:フィンテック
タグ:The TechCrunch Exchange

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

ブラジルの新進フィンテックNubankが2.6兆円の評価額で420億円調達

パンデミックで資金不足に陥るスタートアップがある時代を、実にふさわしい名前をしたブラジルのネオバンクNubank(ヌーバンク)はかきわけて進んでいる。同社は米国時間1月28日、シリーズGラウンドで4億ドル(約420億円)を調達し、累計調達額は12億ドル(約1260億円)になったと発表した。しかし、250億ドル(約2兆6200億円)という新たなバリュエーションに加え(2019年の100億ドル、約1兆500億円から増加している)、さらに注目すべきはユーザー3400万人という顧客ベースで、同社はこの数字を2013年のフィンテック立ち上げから築き上げた。

「顧客の数は2019年の1200万人からほぼ口コミだけで3400万人に増えました」と同社の共同創業者でCEOのDavid Velez(デイビッド・ベレズ)氏は話した。2020年9月まで同社は1日あたり4万1000人の新規顧客を獲得していた。同社は顧客を獲得するのにコストがかかっていないことを誇りにしている。ベレズ氏は、同社がマーケティング費用を「いい給料」と優れた顧客サービスに充てていると述べた。優れた顧客サービスはブランドに対する好感を他人と共有する「熱狂的」な顧客につながる。

新たなバリュエーションにより、Nubankは南米で4番目に価値の大きな金融機関に、そして顧客数とアプリダウンロード数では世界で最も大きなデジタルバンクになった。

シリーズGラウンドは既存投資家であるシンガポールのGIC、Whale Rock、Invescoなどを含むプライベートとパブリックの投資家がリードした。他の既存投資家からはTencent、Dragoneer、Ribbit Capital、Sequoiaが参加した。ベレズ氏はSequoiaの前パートナーで、コロンビア出身。スタンフォード大学で学び、米国で何年も働いた。

南米の金融首都であり1280万人が暮らすサンパウロに拠点を置くNubankはコロンビアとメキシコに事業を拡大した。ブラジルで新サービスを構築しつつも、今回調達した資金はそうしたマーケットでの事業にあてる。

同社はクレジットカード会社として始まり、今やフルサービスを提供する銀行となっているが、支店は持たない。そのため同社は資金を主に成長に充てることができた。

ブラジルの悪名高い官僚的で恐ろしい銀行体験について、「人々はひどい扱いを受けたり高い手数料を払ったりするのに本当にうんざりしていました」とベレズ氏は話した。これまでブラジルで毎月の請求の支払いをするには、銀行の支店に足を運び、往々にして暑い中、銀行の外に並んで順番がくるまで待たなければならなかった。この順番待ちは、最新iPhoneのリリースのときにApple Storeの外にできる列のように長かった。

「銀行は口座を開くことであなたの願いに応え、その後、年間金利450%を課します」とベレズ氏は述べた。「人々は本当に人間として扱われたいのだと我々は思っていました」と付け加えた。

1994年にブラジルレアル通貨が導入されたとき、米ドルに対し1:1と固定された。しかし近年は、3人の大統領が続けざまに投獄や弾劾され、有罪になるという同国史上最大のスキャンダルがあり、ブラジルの経済は急激に悪化した。そして新型コロナウイルスももちろん状況を悪化させた。為替レートはいま1米ドルに対し5.40ブラジルレアルだ。ブラジル、コロンビア、メキシコの低い為替レートにより、特にNubankのブラジル事業のキャッシュフローがポジティブになった2018年以降、4億ドル(約420億円)の投資はかなりのランウェイ(会社の資金がなくなるまでの期間のこと)を生み出した。

同社はブラジルで銀行サービスを十分に受けられていない人々、特にクレジットカードを入手できるような経済状況にない人々にリーチしていることで知られている。従来の銀行はブラジルの市町村の80%に存在するが、Nubankのアプリベース型プロダクトは場所にとらわれず、あらゆる市町村からアクセスできる、と同社は話した。加えて、同社はブラジル人が信用を築くのをサポートしてきた。同社の紫色のBarneyクレジットカードは1カ月あたりの限度額が50レアル(おおよそ10ドル、1050円)からとなっている。顧客が最初の月に期限内に支払えば、信用はその後増す。

多数のプロダクトを展開しているなかで、Nubankはデビットカードと普通預金口座も提供しており、自前の支店は持っていないものの米国でも一般的なようにお金はATMのネットワークから引き出せる。

「Nubankは、人々がより良いもので透明性があり、そして自分のお金や将来をコントロールすることが可能になる人間的な金融サービスを受ける権利があるという信念の下に生まれました。当社は7年前に、世界で最も凝縮した銀行部門を持つブラジルで始まり、何百万という人を官僚主義と苦痛から解放することができました。テクノロジーと人間的な顧客サービスを通じて、当社は人々の日々の暮らしにポジティブな影響を与えることができました」とベレズ氏は述べた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Nubank資金調達ブラジル

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Nariko Mizoguchi)

ドイツの低手数料・低リスク株取引アプリTrade Republicがフランスに進出

ドイツのスタートアップTrade Republicは2021年1月第5週から、フランスでアプリとサービスを展開する。Trade Republicはこれまでドイツとオーストリアでしか利用できず、これは大きな拡大の動きとなる。

Trade Republicのサービスでは低価格かつ透明性の高い手数料で、スマートフォンから株式やETF(上場投資信託)を売買できる。同社はあなたが100ユーロ(約1万3000円)の株式を購入した場合、あるいは1万ユーロ(約127万1000円)の貯蓄をETFに割り当てた場合でも、注文ごとに1ユーロ(約127円)しか請求しない。さらにTrade Republicは、この1ユーロに手数料を追加しないと約束している。

Trade Republicではヨーロッパの株式だけでなく、アジアや米国企業の株式も購入できる。全体で7500の銘柄とETFがアプリから購入可能だ。サービスは比較的新しいもので、Trade Republicは数年間インフラの整備に取り組んできた。

Trade Republicは舞台裏で、ドイツ当局が管理する同国の銀行型サービスプラットフォームであるSolarisbankと提携している。つまり、破産した場合に10万ユーロ(約1270万1000円) までカバーされることを意味する。ユーザーが注文を出すと、Trade RepublicはLS ExchangeおよびHSBC Transaction Servicesと連携してこれらの株式の処理を行う。

Trade Republicは、Robinhoodとは異なるポジションにいたいと考えている。同社は現在、取引には2つの選択肢があると考えている。

銀行や現地のブローカーから取引口座を開設することはできるが、多額の手数料がかかる。またはモバイルファーストのブローカーを使うこともできるが、彼らはリスクの高い資産とデイトレーディングを押し付けるだろう。そして先のGameStop騒動からわかるように、2番目の選択肢は反発を招く可能性がある。

Trade Republicは低手数料かつ低リスクという、第3の方法を推進している。たとえば同社は、貯蓄プランを推進したいと考えている。このプランでは段階的に株式を購入することができるため、ユーザーを変動から守れるはずだ。

同社は2020年、6200万ユーロ(約78億8000万円)の資金調達を行った。シリーズBラウンドはAccelとFounders Fundが共同で主導した。

フランスのユーザーは、税金を申告する際に外国の銀行口座を持っていることを申告する必要があることを忘れてはいけない。また外国のブローカーは、必ずしも税務当局に情報を送信して納税申告書に記入する必要はない。それでもよければ、Trade Republicの方が銀行よりも安い可能性が高い。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Trade Republicドイツフランス

画像クレジット:Trade Republic

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(文:Romain Dillet、翻訳:塚本直樹 / Twitter

米下院はGameStop問題でオンライン株取引サービスの公聴会実施へ

米国時間1月29日にGameStop株をめぐるショートスクイズ問題は議会の注目するところとなった。すでにこの問題に関する公聴会が計画されている。

米下院の金融サービス委員長で民主党、カリフォルニア州選出のMaxine Waters(マクシーン・ウォーターズ)議員は、ヘッジファンドによるこれまでの略奪的経済行為を指摘し、状況を調査する必要があるとした。

ウォーターズ議員は、Robinhoodといった金融サービスを名指ししなかったものの、将来のヒアリングでは、ショート(空売り)の「ゲーミフィケーション」だけでなく、オンライン取引プラットフォーム全体の経済的影響について体系的に調査すると述べた。ただし公聴会のスケジュールはまだ決定されていない。

ウォーターズ議員は「略奪的かつ市場操縦的な行為に対処することは議会と証券規制当局の義務です。我々には投資家を保護し、資本市場が公正かつ秩序をもって効率的に運営されるようにする責任があります」と述べている。

一方、米上院では、銀行委員会の次期委員長のSherrod Brown(シェロッド・ブラウン)上院議員が「最近の株式市場の現状」を明らかにする公聴会開催計画を発表した。「ウォールストリートの証券ビジネスの人々は、自分たちが損害を受けたとき以外は規則など無視しがちです」とブラウン議員は述べた。

民主党選出のRashida Tlaib(ラシダ・タリーブ)、Alexandria Ocasio-Cortez(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス)、Ro Khanna(ロ・カーンナ)の各議員は、Redditに集まった個人投資家が主導した株価の急騰の最中にそうした株の売買を停止したとしてRobinhoodを非難した。なおMorgan Stanley(モルガン・スタンレー)が所有するE-TradeもRobinhoodに続いた。

共和党テキサス州選出のTed Cruz(テッド・クリーズ)上院議員は、 民主党の主張に同調するかたちでRobinhoodの行動に懸念を示した。パンデミックへの対応や大統領弾劾をめぐる争いの最中であっても、両党の議員はテクノロジー企業に対して厳しい質問を用意する点では同調していることを示すものだろう。

この態度は議会だけのものではない。ニューヨーク州司法長官のLetitia James(レティシア・ジェームズ)氏も短い声明を発表し、「我々はRobinhoodの活動に関して多くの懸念が提起されたことを認識している」と述べ、状況をさらに検討すると述べた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Robinhood株式市場

画像クレジット:AaronP/Bauer-Griffin/GC Images / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker 翻訳:滑川海彦@Facebook

フランスの法人用クレジットカードスタートアップMooncardがエールフランスのマイルを付与、アメックス以外では初

フランスのスタートアップのMooncardは、エールフランス-KLMのロイヤルティプログラムであるフライング・ブルーとの提携によりエールフランスのマイルを顧客に付与する。フランスの決済カードでマイルを獲得できるのは、アメリカン・エキスプレスカード以外では初めてだ。

Mooncardは、法人用の決済カードを提供して経費処理を効率化している。フランスでは法人カードを使用する企業は少ない。しかしMooncardは経費処理を効率化する法人カードに取り組んでいる。

MooncardはVISAカードとして使えることに加え、領収書の写真を撮って詳細を追加し経理に経費を申告できる。さまざまな制限や検証プロセスの設定もある。

アメリカン・エキスプレスは長年にわたってフライング・ブルーとの提携に関して独占的な立場にあったため、このニュースは興味深い。フランスでは、特典としてマイルを貯めたい企業の選択肢はアメリカン・エキスプレスしかなかった。

Mooncardの価格設定は、以下の図のようにアメリカン・エキスプレスと似ている。

大きな違いが1つある。MooncardはVISAのネットワークを利用していることだ。アメリカン・エキスプレスを使えないレストランや店舗は多いため、アメリカン・エキスプレスの顧客を乗り換えさせる効果があるかもしれない。利用企業の従業員は獲得したマイルを個人の旅行に使用できる。

Mooncardを利用している企業は3000社で、多くの公共機関でも利用されている。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Mooncardフランス

画像クレジット:Mooncard

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(翻訳:Kaori Koyama)

オンライン決済各社への巨額投資が続くなかFastが105.8億円調達

米国時間1月26日、オンラインチェックアウトと個人認証サービスを提供するスタートアップのFast(ファスト)がシリースBラウンドで1億200万ドル(約105億8000万円)調達したことを発表した。ラウンドをリードしたのはFastの既存の出資者であるStripe(ストライプ)だ。

オンライン決済の巨人であるStripeは2020年のシリーズAもリードしており2000万ドル(約20億7000万円)を出資した。Fastはこれまでに1億2400万ドル(約128億6000万円)調達したとリリースでは述べられている。

TechCrunchはFastに同社の成長ペースについてコメントを求めた。同社のチェックアウトサービスが処理した流通取引総額(GMV)は「毎月3倍以上増えている」と話し、「この傾向は今後も続き伸びていく」と予測していることをつけ加えた。この成長ペースを評価することは、基準がわからないので難しいが、Fastから得た将来のGMVの予測から評価することはできる。

Fastの並外れたシリーズBは、ライバルである数多くのオンラインチェックアウト企業の大型ラウンドに続くものだ。

2020年12月にオンラインチェックアウト、認証、決済サービスを提供するBolt(ボルト)がシリーズCラウンドで7500万ドル(約77億8000万円)を追加調達した。同社は他にも成長指標の数値を共有しており、TechCrunchは現在の規模や将来業績の予測する手がかりを得ている。

そして2021年1月半ばにはCheckout.comが4億5000万ドル(約466億8000万円)を調達、評価額は150億ドル(約1兆5660億1000万円)だった。当時TechCrunchは、「Checkout.comは取引の受けつけから処理、詐欺の検出まで決済に関するすべてを扱うワンストップサービスになりたがっている」と書いた。つまりBoltと同様、Fastの提供するサービスの一部と競合している。

そして、その翌日Rapyd(ラピッド)が評価額25億ドル(約2593億5000万円)で3億ドル(約311億2000万円)調達したことを発表した。RapydはフィンテックサービスをAPI経由で提供しているとTechCrunchでは書いているが、国際的なeコマース決済を行い不正防止技術の販売も行っていることからこのグループに入ると思われる。

Fastは最新のシリーズBラウンドに加えて、202012月以降、(少なくとも)9億2700万ドル(約961億6000蔓延)がeコマースインフラ市場にひしめくスタートアップに流入している。これはBoltのラウンド以降、1日あたり2600万ドル(約27億円)弱にあたり、短期間で巨大な金額の資金が集まったこととなる。

なぜ企業はそれほど矢継ぎ早に資金を調達しているのか?最もわかりやすい答えは、eコマースはあまりにも巨大であり世界経済にとってあまりにも重要なので、オンラインの商品販売体験を売り手にとっても買い手にとっても改善することは、多くのプレイヤーが参入する余地のある問題のある空間だということだ。オンラインコマースを解決するレースにいる多くのスタートアップが資金を調達していることは、いずれの企業も、現在のところ強力な成長率を享受していることを示唆しており、それはまた彼ら全員が成長を望んでいる巨大な市場であることの可能性を示唆している。

そして新型コロナウイルス(COVID-19)がeコマースを活性化させ、世界経済のデジタル化を加速させていることを考えると、こうしたテクノロジーが近いうちに市場規模の制約を受けることは否定できない。

関連記事:オンラインチェックアウトの支配をめぐる戦いが続く中、BoltがシリーズCで78億円を追加調達

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Fastオンライン決済資金調達

画像クレジット:picture alliance / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

急成長・高インパクト企業に資金を提供するベルリンのRemagineがシードで約25億円調達

「インパクト」のひねりを加えたバンキングサービスを急成長企業に提供する資金調達プラットフォームRemagineは、シードラウンドで2000万ユーロ(2400万ドル、約25億円)を調達した。ベルリンを拠点とするこのスタートアップはステルスモードで活動してきたが、以前のブランド名「Get Conscious Growth」の下、すでに20社のクライアントを有する。同社の投資家には、元Google PaymentのグローバルヘッドであるJonathan Weiner(ジョナサン・ウェイナー)氏や、元VenmoのCOOであるMichael Vaughn(マイケル・ヴォーン)氏が含まれている。Remagineのリード投資家は不明だが、Techcrunchはそれが主にデットファイナンスで構成されていると理解している。

このフィンテックは、急成長企業や社会的インパクトに導かれる企業に収益ベースの資金調達を提供することに特化している。これは、エクイティやデット(融資)商品よりも創業者にとってフレンドリーな傾向があり、企業のコントロールを保持しながら迅速に資金を確保することができる。Remagineは今後数ヶ月のうちにドイツを拠点にビジネスアカウントを展開し、ヨーロッパ全域への拡大を計画している。

ここしばらくの間、フィンテックの流行は「ネオ」や「チャレンジャー」バンクだったが、新たなタイプ、金融プラットフォームが現れ始めている。これらはバンキングサービスを提供するだけでなく、新規事業を対象とした追加機能も提供している。もう一つの例はニューヨークのRhoで、最近1500万ドル(約15億5000万円)を調達した

Remagineのいう「ひねり」は、「持続可能でインパクトの強い」ビジネスモデルのもと、「ポジティブな社会的・環境的影響」をもたらす可能性のある企業に狙いを定めている点だ。
Remagine自身も、インパクト主導のイニシアチブにコミットしていると言い、同社の利益の10%を(社会的・環境的)インパクトのある活動に寄付する予定だという。

同社はJulia M. Profeta Johansson(ユリア・M・プロフェタ・ヨハンソン)氏とSebastian Dienst(セバスチャン・ディエンスト)氏によって設立された。共同CEOのディエンスト氏は声明の中でこう述べている。「私たちは、資本とテクノロジーが善のための力になり得ると信じています。ともに使うことにより、未来を形作る強力なツールとなります。今の課題は、人々と地球を利益と協調させる方法で未来を形成することです」。また、「私たちは、大小を問わずすべてのビジネスが、より持続可能でインパクトのあるものになり得ると信じています。Remagineは、その実現を支援するために設立されました」とも。

ヨハンソン氏は次のように付け加えた。「すでに多くの企業に資金を提供してきましたが、今回の資金調達により、より多くのスタートアップを支援することが可能になります。この度の口座とカードの発売により、チームを成長させ、製品にさらに投資し、お金とビジネスが善のための力となる世界の創造に貢献できることを楽しみにしています」。

ウェイナー氏は次のように述べている。「持続可能性とインパクトは、過去10年間で企業にとってますます重要性を増しており、今日では、CEOの5分の4近くが事業戦略を社会的・環境的な目標と協調させることを計画しているという調査結果が出ています。Remagineのミッションとビジネスモデルは、創業者が収益とインパクトの両方を考慮することを可能にします。これがファイナンシングの未来であり、その一翼を担えることを嬉しく思います」。

Remagineの製品には、チームカード(経費管理を改善するための、チームメンバーのための無制限の別々のカード)、マルチIBAN、アナリティクス、ゼロマイナス金利、無料口座などが含まれる。競合他社にはFinomやPentaなどがあるが、これらはスタートアップよりも中小企業をターゲットにしている傾向がある。

関連記事:経費精算を効率化する法人クレジットカードプラットフォームのMossが約26億円調達

カテゴリー:フィンテック
タグ:ドイツ 資金調達

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(翻訳:Nakazato)

Klarnaのような分割決済オプションを提供する仏Almaが約62億円調達

フランスのスタートアップのAlmaがシリーズBの資金調達ラウンドで4900万ユーロ(約61億7000万円)を調達した。同社は高額な商品のための新しい支払いオプションを提供しており、3回または4回の分割払いを選ぶことができる。過去にKlarnaを使ったことのある人なら、このような製品をよく知っているだろう。しかし、Klarnaはフランスでは利用できない。

今回の資金調達ラウンドにはCathay Innovation、Idinvest、Bpifranceといった大型ベンチャーファンドに加え、Seaya Ventures、Picus Capitalらが参加した。また本日の出資ラウンドに加えて、Almaは加盟店の決済資金を調達するために2100万ユーロ(約26億5000万円)の与信枠を調達した。

Almaが加盟店にとって魅力的なのは、複数回の分割払いにともなうリスクの100%を同スタートアップが肩代わりしていることだ。ユーザーが4回払いで自転車を購入した場合、数カ月に渡って請求が発生するが、加盟店は初日に支払いを受け取る。

以前に米TechCrunchがAlmaを取り上げた後、同社は後払い機能をローンチした。カード情報を入力し購入しても、請求は15日後か1カ月後となる。これは購入したものに確信が持てない場合や、返品する可能性があると場合に特に便利だ。

クレジットカードではなくデビットカードが一般的なフランスでは、Almaは魅力的なオプションだ。同社は6回、10回、12回の分割払いなど、より長期のプランも提供する予定だ。

今回の資金調達により、同スタートアップはチームの規模を3倍に拡大し、2年以内の年商10億ユーロ(約1260億円)への到達を計画している。またサービスを他の国にも拡大する予定だが、特にフランスの加盟店が他のヨーロッパ諸国に住んでいる顧客にリーチできるよう支援することに重点を置いている。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Almaフランス

画像クレジット:Unsplash

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

Visaによる買収が未遂に終わったPlaidが無名のフィンテック企業家を支援するインキュベーターを立ち上げる

Plaid(プレイド)は、バックグラウンドがよく知られていないアーリーステージのフィンテック起業家を対象とする9カ月間のインキュベーター「FinRise(フィンライズ)」を起ち上げた。2020年の夏、Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)抗議活動の中で行われた社内ハッカソンに触発されたこのアクセラレーターは黒人、先住民、有色人種(BIPOC)が主導するスタートアップを明確に探している。

PlaidのグロースマネジャーであるNell Malone(ネル・マローン)氏と、デザインマネージャーのBhargavi Kamakshivalli(バルガビ・カマクシバリ)氏が、このプロジェクトの先頭に立っている。

このインキュベーターでは、ベータ段階の製品を持つポストシードおよびプレシリーズBのテック系スタートアップを、3社から5社ほど募集していると、マローン氏はTechCrunchに語った。応募には最低2人の従業員と1人の創業者が必要だ。また、明らかにフィンテック分野で活動中のスタートアップであることも条件で、具体的には消費者ビジネスのファイナンスデータに焦点を当てた事業を行っている必要がある。

この最後の前提条件は、Plaidの事業と正確に一致する。Plaidは、消費者の銀行口座とフィンテックアプリ間の結合組織として機能するソフトウェアのスタートアップ企業だ。ゆえにFinRiseは、これらの統合の創造的な延長線に感じられるが、単に新規顧客を獲得することよりも、創業者の起業を支援することに重点を置いている。

合格したスタートアップは、Plaidのリーダーからメンターシップを受け、製品の洞察を助ける専任のアカウントマネージャーと、ブートキャンプのセッションでアドバイスを受けられる起業家のネットワークを得ることができる。このインキュベーターは、Y CombinatorやTechStarsのような通常3カ月間のアクセラレータープログラムよりも長いが、そこまで集中的ではない。

「3日間のバーチャルブートキャンプは、FinRiseプログラムの中で最も集中的な部分になります」と、マローン氏は述べている。「ワークショップの後、参加者は専任のアカウントマネージャーと一緒に仕事を行い、継続的なプログラミングサポート体制を受けることになります。【略】私たちの目標は、9カ月にわたるプログラムの間、参加者にあらゆる段階で継続的なサポートを提供することです」。

奇しくも今回の発表は、Visaが規制上の問題からPlaidの買収を断念したと発表してから、わずか1週間後に行われたものだ。発表当時に買収額53億ドル(約5500億円)といわれていたこの契約は、フィンテックの創業者たちやベンチャーキャピタルから楽観的な見方をされていた。この買収を断念の発表は、民間のフィンテック企業が成長を続ける中で、政策的な問題に対処しなければならないことがいかに増えているかも明らかにしている。

3日間のブートキャンプでは、金融サービス分野における規制や法的な圧力に、スタートアップ企業がどのように対処すべきかという焦点から、このダイナミックな動きに取り組む計画だ。その他の論題としては、情報セキュリティ、エンジニアリングの実践、ユーザー中心の設計などが予定されている。

無名な起業家にとってハードルとなるのは、メンターシップではなく資金調達へのアクセスとなる傾向がある。今のところ、FinRise自身が株を取得したり資金を提供することはないが、小切手帳を持っているVC企業やアクセラレーターのネットワークに紹介することを、このインキュベーターは約束している。

もちろん、Plaidがこれらのスタートアップ企業のどこかに投資を検討するという、古典的なコーポレートベンチャーキャピタルのアプローチを取ることもあり得る。その可能性を尋ねられたマローン氏は「現在のところ、それは我々の計画には入っていません。まだこれからですから。今はプログラムを試験的に実施して、どうなるかを見るのを楽しみにしているところです」と答えた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Plaidアクセラレータープログラムインキュベーター

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(翻訳:TechCrunch Japan)