半導体不足でメーカーが偽造チップを買わされる被害多発か、詐欺にあった企業が隠すため歯止めかからず

半導体不足でメーカーが偽造チップを買わされる被害多発か、詐欺にあった企業が隠すため歯止めかからず

FILE PHOTO: A researcher plants a semiconductor on an interface board during a research work to design and develop a semiconductor product at Tsinghua Unigroup research centre in Beijing

新型コロナ感染拡大の収束(一時的にしろ)により落ち込んでいた需要が急増したことにより、スマートフォンから自動車まであらゆるメーカーが半導体不足に悩まされています。そんななか、半導体詐欺師が偽造チップを企業に売りさばいているとの報告が公表されています。

IT製品情報サイトTechRepublicによると、半導体詐欺師らは深刻なチップ不足のなか、チップ調達に必死になっている企業らにつけ込んでいるとのことです。

記事執筆時点では、正規のチップを発注してから納品されるまでのリードタイムが半年に及ぶこともあり、自動車メーカーが大量の新車を受注をしてから部品の在庫がないと気づくことも珍しくありません。

そこに目を付けたのが、チップ詐欺業者というわけです。彼らは検索エンジンの広告を使って製品を宣伝し始めているものの、こうした場所は正規のチップメーカーがビジネスを展開するはずがないところです。また詐欺の手口としては、粗悪な半導体や動作しない半導体を出荷したり、チップの代金を前払いさせてから商品を送らず、言い訳して先延ばしにするなど様々です。

企業向けITアナリスト企業Info-Tech ResearchグループのJohn Annand氏いわく「多くの詐欺事件は、買い手が急きょ立ち上げたWebベースのチップ販売業者に資金を出すように迫られ、約束の製品が到着する頃には急いでWebサイトを閉鎖され、救済の可能性を失ってしまうことで発生しています」とのことです。

さらに悪いことに、詐欺に遭ったメーカーの多くは競合他社に知られたくない理由で、騙されたことを公にしようとしません。そのため口コミで偽造品の販売の歯止めが掛らないというわけです。

被害に遭った企業が隠しておきたい第2の理由としては「チップの不正使用を防ぐための知識やサプライチェーンの管理が不十分であることを認めたくない」とのSynopsys社(電子系設計ソフトウェア大手企業)の首席セキュリティ技術者であるMike Borza氏の見解が紹介されています。

巨大なチップ需要に応じて供給量を増やせばいいとも思えますが、そう上手くはいかない模様です。上記のAnnand氏によれば、チップ製造工場の建設には莫大な費用が必要となる上に、完成までに1年半〜2年もかかるとのこと。古い工場に最新設備を導入すれば理論上は生産能力を向上できるものの、やはり費用がかさむとの趣旨が述べられています。

偽造チップの販売は、深刻な結果を招きかねません。上記のBorza氏いわく「特定の条件下で誤った動作をしたり、通常の期待寿命よりも早く永久的な故障を起こしたりする可能性があります。こうした不具合は信頼性や返品の問題を引き起こし、製品メーカーにコストをかけ、顧客の信頼を損ないます」とのこと。金銭的な被害はまだしも、深刻な人的被害が起こらないうちに、対策が講じられるよう願いたいところです。

(Source:TechPublic。Via PhoneArenaEngadget日本版より転載)

半導体不足解消と新車需要によりフォードは2021年の利益増加を予想

Ford(フォード)は、2021年の第2四半期に、半導体不足がピークを迎えたにもかかわらず、SUV「Bronco(ブロンコ)」などの新型車の強い需要が追い風となり、予想を上回る営業成績を収めたと、直近の決算報告で述べた。

4月の時点で同社は、第2四半期に予定していた生産台数の約50%が失われ、同期間の利益が赤字になると予想していた。しかし、決算報告によると、会社全体で11億ドル(約1200億円)の利払前・税引前利益を計上することができたという。

米国時間7月28日の決算説明会で、フォードのJim Farley(ジム・ファーレイ)CEOが「すでに利益が出ている」と述べた電気自動車「Mustang Mach-E(マスタング・マックE)」をはじめとするフォード車に対する需要は、米国では2020年の7倍に増えており「半導体の供給が安定し、需要により密接に沿うことが可能になれば、事業は『バネのように跳ね返る』」と、フォードから発表された声明でファーレイ氏は語っている。

今後については「半導体の供給状況の改善が予想される中、自動車生産量の増加に伴い下半期の運転資本の好転が期待されるため、通期の調整後フリー・キャッシュ・フローの目標を40億ドル(4380億円)から50億ドル(約5480億円)に引き上げました」と、同社は述べている。

表面上は楽観的に見えるものの、会見中に質問を受けたファーレイ氏は、もう少し慎重で現実的な意見を述べた。

「半導体不足の問題は2021年いっぱい続くと見られ、来年の前半にも影響が出る可能性があります」と語った同氏は、次のように続けた。「我々はFABサプライヤー各社と話し合いを続けてきました。彼らは資源を再配分し、自動車向けの供給を増やしていると言っています。しかし、この困難を乗り越えたと本当に安心できるまで、予断を許さないと私は思います」。

自動車業界は、第3四半期に入ってからチップの供給に改善の兆しが見えてきているものの「状況はまだ流動的だ」とファーレイ氏は語っている。

ファーレイ氏は間違っていない。Semiconductor Industry Association(半導体工業会)によると、半導体の売上は、2021年4月に前月比1.9%増加したのに対し、5月には4.1%増加したという。さらに、6月に発表されたWorld Semiconductor Trade Statistics(世界半導体市場統計)の報告によれば、世界における半導体の年間売上高は、2021年に19.7%、2022年に8.8%増加すると予測されている。今月初め、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(台湾積体電路製造公司)は、生産努力を強化したことにより、今期から製造現場での半導体不足が大幅に解消されると予想していると述べていた。同社は、すでに2021年の上半期にマイクロコントローラユニットの生産量を前年同期比で30%増加させており、新型コロナウイルス流行前の2018年の水準より最大30%以上まで引き上げるつもりだと述べている。

それは期待できそうだ。しかし、誰もが同じ考えを持っているわけではない。国際的なチップメーカーであるシンガポールのFlex(フレックス)は最近、世界的なチップ不足が2022年半ばまで続くだろうと警告している。これは、自動車、特に電気自動車の需要が増加していることに加え、新型コロナウイルスの影響からゲーム機、タブレット、ノートパソコンなど、娯楽用電子機器を購入する人が増えていることが原因だ。

フォードはSK Innovation(SKイノベーション)と提携し、バッテリーセルの製造者となることで、バッテリー供給の不安を解消しようとしているのと同様に、半導体メーカーやサプライヤーと緊密に連携することによって、将来必要となるチップ数の予測に役立てようとしていると、ファーレイ氏は述べている。

半導体が不足している大きな理由の1つは、2020年の春に新型コロナウイルス流行の影響から販売台数が減少した際に、自動車メーカーが発注を減らしたことにある。だが、2020年の第3四半期になって乗用車の需要が回復してきた頃には、すでにチップメーカーは家電やIT関連の顧客からの注文をこなすのに手一杯な状態になっていたのだ。

フォードの擁護のためにいうと、ウイルスの流行を予測し、そのためにどれだけのチップが必要になるかを予測するのは簡単ではない。2020年のトイレットペーパー買い占めによる品不足のような事態にならないことを祈ろう。

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画像クレジット:Ford Motor Company

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Intelが3.3兆円でチップメーカーGlobalFoundries買収を交渉中との噂

チップ業界でのM&Aとなると、数字は決して小さなものではない。NVIDIA(エヌビディア)がARM(アーム)を400億ドル(約4兆4030億円)で買収したのをはじめ、2020年のチップ業界の4件の取引合計額は1060億ドル(約11兆6680億円)だった。2020年のチップをめぐるM&A騒ぎで1つ驚きだったのは、Intel(インテル)が傍観者のままだったことだ。もし、噂になっているチップメーカーGlobalFoundries(グローバルファウンダリーズ)の買収案件が実現すれば、それも変わる。

噂は最初にウォールストリートジャーナル紙が7月15日に報じた

チップ業界に詳しいMoor Insight & Strategiesの創業者で主任アナリストであるPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏は、GlobalFoundriesの買収はIntelにとって合理的だと話す。GlobalFoundriesは現在、社の方針転換を図るために1月に取締役会に加わったCEOのPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏のもと、Intelや他の企業向けにチップを製造・販売する新たな戦略を推進している。

「GlobalFoundriesは5G RF、IoT、そして自動車に特化したテクノロジーとプロセスを有しています。GlobalFoundriesを獲得すればIntelは顧客にすべてを提供できる『フルスタック・プロバイダー』になるでしょう。これは(Intelのチップ製造戦略である)IDM 2.0に完全に当てはまり、GlobalFoundriesなしだと戦略を達成するのに何年もかかることになります」とムーアヘッド氏はTechCrunchに語った。

この買収ではまた、部分的にはパンデミックとパンデミックがグローバルサプライチェーンに与えた影響のために世界的にチップが不足して膨大な需要がある中で、Intelは製造施設を手に入れることになる。同社はアリゾナでの2つのファブ(チップ製造プラント)建設に200億ドル(約2兆2015億円)超を注入する計画をすでに明らかにしている。こうした計画にGlobalFoundriesを加えることで、実現すれば今後数年で広範な製造能力を手に入れることになるが、そこに辿り着くには数百億ドル(数兆円)というかなりの投資をともなう。

GlobalFoundriesは米国拠点の世界的なチップ製造メーカーだ。同社はIntelのライバル、AMDから2012年にスピンオフされ、現在はアブダビ政府の投資部門、Mubadala Investment Companyによって所有されている。

投資家らはGlobalFoundriesとIntelが合体するというアイデアが気に入っているようで、Intelの株価は記事執筆時点で1.59%上昇している。この取引はまだ噂の段階であり、決定的なものは何もなく、最終確定しているわけでもないことを強調しておく。何か動きがあればお伝えする。

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

半導体ウェハメーカーのSK SiltronがEVサプライチェーン強化へ米国で330億円投資

国際クリーン交通委員会(ICCT)の調査によると、電気自動車(EV)の生産と浸透という点で米国は特に2017年から2020年にかけて中国と欧州の後塵を拝してきた。しかし米国が主権を握っているパズルの重要なピースの1つが、スマートフォンからコンピューター、EVに至るまであらゆるものに使われている半導体の生産だ。そしていま、米国はその強みをさらに強化することになりそうだ。

韓国の半導体ウェハメーカーであるSK Siltron(SKシルトロン)の部門SK Siltron CSSは米国時間7月14日、ミシガン州ベイ郡に3億ドル(約330億円)投資し、高給技能職150人を雇用すると発表した。ベイ郡は米国の初の車産業集積地であるデトロイトからクルマで北に数時間のところに位置する。SK Siltronはすでに近くのオーバーンに拠点を持っていて、新しい工場は従業員の数を倍増させることになる。向こう3年間で投資はEV向けの高度な材料の生産とR&Dに充てられると同社はいう。

SK Siltron CSSの最高経営責任者であるJianwei Dong(ジャンウェイ・ドン)氏は、最初にこのニュースを報じたロイターに「当社は周辺のコミュニティにエンドカスタマーを抱えるため、3億ドルの投資はミシガン拠点の米国内EVサプライチェーンを構築するのに役立ちます」と述べた。

この新たな投資は、General MotorsFordといった老舗企業、TeslaそしてRivianなどの新規企業を含む米国の自動車メーカーがこれまでになく次々に新しいEVを発表し、電動化に投資している中でのものだ。

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また、中国と米国の貿易戦争が膠着状態にあるという要素もある。

中国は2010年から2020年にかけて世界中で生産されたEV車両の44%を担ったが、米国は半導体の手綱を握り絶えず中国が他のチップメーカーを買収するのを阻止してきた。ICCTのレポートによると、EV生産に投資して需要を刺激するという強固な政策は中国と欧州で成功した。バイデン政権のEV補助金と充電ネットワーク拡大のための1740億ドル(約19兆円)という予算は、米国が遅れを取り戻すのに役立つかもしれない。

「より持続可能な未来に向け、企業や末端消費者をサポートするためには確固たる新サプライチェーンを米国に構築することが重要です」と米商務長官のGina M. Raimondo(ジーナ・M・ライモンド)氏は声明で述べた。「自動車産業はEVの台頭で絶好の機会を手にしていて、SK Siltron CSSのような企業がクリーンな未来に向けた移行のサポートを拡大するのを楽しみにしています」。

SK Siltron CSSの事業拡大は州政府と地元自治体からの承認を得る必要があると同社は話したが、抵抗にあうというのは考えにくい。ミシガン州経済開発公社は、同州がEV関連の雇用を創出すべく、過去2年で90億ドル(約9890億円)を投資に注ぎ、EVトランジッション絡みで1万人超の雇用を生み出した、と述べた。SK Siltronは従業員の雇用で州と地元の当局と連携していて、70%が技能職の従業員、残りがエンジニアになると話した。

ウェハ101

ウェハは集積回路を作るのに使われる半導体の薄いスライスで、半導体チップを小さく、そして速くするのに役立つ。ウェハは半導体の残り部分のベースとなり、プロセス全体にとって重要な役割を担っている。半導体はバッテリーを高ボルテージで動かし、パワートレインを駆動させ、そしてタッチスクリーンのインタラクティブ性のような現代の車の機能をサポートするため、EVは半導体を必要としている。

SK Siltronのウェハは炭化ケイ素でできていて、通常のシリコン製よりも高パワーに対応でき、熱伝導もいい、と同社は話す。

「EVシステム部品で使われるとき、こうした特性によってバッテリーからモーターへの電力伝送がより効率的になり、EVの航続距離を5〜10%伸ばします」と同社は声明文で述べた。

ウェハはまた、5G通信装置にも使うことができ、SK Siltron CSSは追加の投資を検討しているとDong氏はロイターに話した。

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タグ:SK Siltron電気自動車半導体ミシガン投資

画像クレジット:SK Siltron

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

車部品サプライヤーのBoschがドイツにチップ工場を開所、コネクテッドカーに供給

ドイツのパーツサプライヤーのRobert Bosch(ロバート・ボッシュ)は現地時間6月7日、10億ユーロ(約1332億円)を投じたチップ工場をドイツ・ドレスデンに開所した。同社にとってこれまでで最大の投資だ。主に車産業の顧客に供給する同工場はコネクテッドEV(電気自動車)が定着しつつあることを如実に示している。

「どのパワートレインかにかかわらず、我々は常に半導体とセンサーを必要としています」と同社の車エレクトロニクスを担当する上級副社長Jens Fabrowsky(ジェンス・ファブロースキー)氏はTechCrunchに語った。

工場は半導体製造プロセスで最前線の処理、つまりウェハファブを行う。300ミリメーターのウェハは半導体のパッケージングと組立のために通常アジアの提携企業に送られる。

300ミリメーターは「テクノロジーの新しいフィールド」だとファブロースキー氏は説明した。Boschのドイツ・ロイトリンゲンにある工場で製造される150ミリメーターあるいは200ミリメーターのウェハとは対照的に、大きなサイズのウェハは1つでより多くのチップを製造することができるため、規模の経済性が向上する。

広さ7万7500平方フィート(約7200平方メートル)の工場はBoschがいうところの「AIoT」で操業する。この言葉は、同工場の特徴である完全に接続されデータ主導のシステムを示すために人工知能(AI)とIoTを組み合わせたものだ。Boschは約100台のマシーンでリアルタイムのデータを動かすだけでなく、電気や水、他の要素でも1秒あたり最大500ページの情報を持つ、とファブロースキー氏は話した。AIで駆動するアルゴリズムはコネクテッドセンサーからすぐさま異変を感知する。

かなり高度なオートメーションにもかかわらず、工場はフル操業となれば700人を雇用する。

この工場が現在続いている世界的な半導体不足の解決に貢献するかは不明だ。半導体不足により、General Motors(ゼネラル・モーターズ)やFord(フォード)などの車メーカーは製造量の抑制と製造施設の一時休止を余儀なくされた。

「当社が工場建設を決めた時点では、建設理由は純粋にテクノロジーでした。300ミリメーターを製造する必要があったのは明らかで、キャパシティ拡大に投資する必要もありました」とファブロースキー氏は話した。

工場は7月にパワーツール向けチップの製造を開始し、9月から車向けチップに取り掛かる。半導体チップを製造するのに、ウェハ施設だけで600もの工程があり、通常20週間以上かかると同氏は説明した。

Boschはロイトリンゲン工場のクリーンルーム施設を拡張するのに5000万ユーロ(約66億円)投資する、と同社役員のHarald Kroeger(ハラルド・クローガー)氏は6月7日の記者会見で述べた。

Boschは、工場建設のための支出を最大2億ユーロ(約266億円)助成するドイツの連邦経済エネルギー省のマイクロエレクトロニクス投資プログラムに適用を申請した。資金を受け取るには支出の証明を提出しなければならない、と広報担当は説明した。

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タグ:Boschドイツ工場EV半導体

画像クレジット:Bosch

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

半導体不足がさらに深刻化し「危険水域」に突入か、MacやiPadの製造にも影響する可能性も

半導体不足がさらに深刻化し「危険水域」に突入か、MacやiPadの製造にも影響する可能性も

Nikada via Getty Images

昨今、あらゆる業界を悩ませていると言っても過言ではない半導体製造の不足。ここ最近は製造側の取り組みにも関わらず悪化の一途を辿っているといった状況ですが、リードタイム(発注から納品までの時間)が17週間にも及ぶことから、この問題では比較的影響の少なかったアップル製品にも、ついに影響が出る可能性があると報じられています。

この動向を報じているのは、米国Bloomberg。同誌の報道によると、サスケハナ・ファイナンシャル・グループはチップ製造の遅延(リードタイム)が3月時点での16週から4月では17週に延びており「ユーザーが供給の確保に必死になっていることを示している」と分析しているとのことです。

これは同誌が2017年にデータを追跡し始めて以来最も長い待ち時間であり、記事ではこれを称して「危険水域」と表現されています。

なお、さらに小規模な企業の場合はもっと影響が大きく、待ち時間が52週間を超えるほどの大問題になっており、製品の再設計や優先順位の変更さえも余儀なくされているとのこと。実際に最近は、日米の自動車メーカーにおいて一部のハイテク機能を省いて需要に応えているとの報道もありました

現状でのアップルは半導体メーカーにとっては最上級とも呼べる顧客である点や、ティム・クックCEOがサプライチェーンの構築や物流に長けた達人であるため、これまでは部品の供給不足に大きく悩まされたといった話はほとんどありませんでした。

しかし先日の第2四半期決算説明会では、幹部ら自らが今後MacやiPadが品薄になる見込みと警告していたほどです

特にアップルにとって重大と思われるのが、iPhoneのAシリーズチップやMacおよびiPad Pro用のM1チップを製造しているTSMCがある台湾が、目下危機的状況に置かれていることです。

台湾は新型コロナウイルス感染が再び拡大していることに加えて、雨期にほとんど雨が降らなかったために節水対策を強化するとも発表されており、こちらもチップ生産に影響するとの懸念もあります。

もっともTSMC側は今のところ「この措置が当社の事業に影響を与えるとは考えていない」との声明を出しています。

こうしたチップ不足が、今年のMacやiPadの生産や入手しやすさにどの程度の影響を与えるかはまだ不明です。またサスケハナは、リードタイムが長くなったことで各企業が在庫の積み増しや二重発注をするなど「悪い行動」に拍車をかけたようだも推測しています。

もしも今回のチップ不足が解消されても、その後の混乱は長引くのかもしれません。

(Source:BloombergEngadget日本版より転載)

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タグ:サプライチェーン(用語)TSMC / 台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(企業)半導体(用語)台湾(国・地域)

半導体IPのカナダ企業Alphawave IPが英国で上場へ、本社も移転

Alphawave IPは、半導体の回路にフォーカスしているグローバルの半導体IP会社だ。5Gデータネットワークが展開され、家庭から産業、自動走行車両まであらゆるものを動かし始めるときに、半導体の回路は重要なものとなる。

それゆえに、トロントで創業した同社が評価額45億ドル(約4842億円)でロンドンでの上場を計画しているというのは興味深い。同社はBlackrockとJanus Hendersonから5億1000万ドル(約548億円)を調達した。また、同社は上場の一環として本社を英国へと移す予定だ。

Deliverooの評価額が英国でのIPO後に悲惨なものになったこともあり、Alphawave IPの動きは英国のテック株式リストウォッチャーに歓迎されている。

CEOのTony Pialis(トニー・ピアリス)氏は「当社は事業を成長させるために英国に来ることを選びました。英国は驚くべきテクノロジーと半導体産業のエコシステムを持っています。知識、経験、そして人材の蓄積が英国にはあります。我々はコネクティビティの専門家です。創業チームは20年以上にわたって一緒に働いていて、半導体イノベーションと投資家のために大きな価値を創造することにおいて長い歴史を持っています」。

Alphawave IPの上場は、別の英国拠点のディープテック会社である半導体設計のArm Holdingsが米国の会社に売却されようとしている中でのものとなる。Arm Holdingsの売却は英国の国家安全保障上の懸念から調査が行わることになり、遅延している。

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タグ:Alphawave IP半導体カナダイギリス新規上場

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

Google、Intel、Dell、GMなどテックと自動車業界のCEOたちが世界的なチップ供給不足問題で米政府と討議

ITと自動車ビジネスのトップが米国時間4月12日にホワイトハウスに集まり世界的なチップ供給不足問題について討議した。

リモートで参加したのはGoogle、Intel、HP、Dell、 Ford、GMのCEOで、テクノロジーと自動車産業のバーチャルサミットとなった。テーマは世界的な半導体のサプライチェーンの維持についてだ。政権側からはJake Sullivan(ジェイク・サリバン)国家安全保障問題担当顧問、Gina Raimondo( ジーナ・ライモンド)商務長官が参加し、Brian Deese(ブライアン・ディーズ)国家経済会議委員長が議長を務めた。Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領も短時間顔を出した。

IntelのCEOであるPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏は、サミットに先立って、米国は半導体生産量を増やし、国内で販売されるチップの3分の1を米国産とすべきだと述べている。Intelは自動車メーカー向け専用チップを国内自社工場で製造することを検討しており、これによりサプライチェーンにかかる圧力を軽減できるとしている。

カーエンタテインメントシステムからスマートフォンまで、あらゆる機器に使用されている集積回路部品の供給不足が続いており、数カ月前からこれが消費者にも感じられるようになっている。ゲーム機やグラフィックカードの新製品は需要に追いつかず、発売後数カ月経っても品薄状態が続いている。しかも現在、あらゆる機器には半導体チップが組み込まれており、供給不足は自動車やゲーム以外の産業にも深刻な影響を与えている。

バイデン大統領は2021年2月に半導体チップの供給問題を解決するための大統領命令に署名している。この行政命令により、電気自動車に搭載される高度なバッテリーをはじめ、半導体やハイテク製品に必要なレアメタルや医薬品の原料などの経済に大きな影響を与えるサプライチェーンについて100日間でレビューを行うとこととされた。

バイデン大統領は「チップ不足により自動車の生産に遅れが生じ、米国の労働者の労働が阻害された」と述べた。また、パンデミックの初期にはPPE(マスクなどの個人用防護具)の供給不足が生じ多数の医療従事者が適切な保護具なしに働かざるを得い状況が生まれたことを指摘した。

またこの行政命令は、さらに長期的なサプライチェーンの見直しをも要求ししている。現在のサプライチェーンに関する問題を軽減するために、何が実行可能なのかを政府とビジネスリーダーが協力して検討することになる。

サリバン国家安全保障問題担当顧問がサミットに参加したことでも明らかなように、テクノロジー部品のサプライチェーンの問題は中国との緊張関係に大きな関連を持つものだ。バイデン大統領は重要ハイテク部品のサプライチェーンに大々的は見直しを行う理由の1つとして「長期的な国際競争力」の低下への懸念を挙げている。

Mark Warner(マーク・ウォーナー)上院議員(民主党、バージニア州)は、防衛技術における半導体の重要性を指摘し「半導体の供給不足は経済上の問題であると同時に国家安全保障上の問題としても重要」と指摘した。

ワーナー上院議員は、2020年夏にJohn Kane(ジョン・コーニン上院議員(共和党、テキサス州)と共同提出した半導体生産促進決議を例として、米国の自立と中国の影響力の抑制に向けた立法措置の必要性を強調した。

バイデン大統領は以前、「経済にとって重要な半導体の供給が不足している現状を打開するために努力し、現在直面しているボトルネックを解決するために生産量を増やすよう同盟国にも政治的に働きかけねばならない」と述べている。

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画像クレジット:Mick Ryan

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:滑川海彦@Facebook

半導体チップ不足によりGMがさら多くの工場を操業停止に

General Motors (ゼネラルモーターズ)は、インフォテインメント、パワーステアリング、ブレーキシステムなど、自動車で無数の動作を制御するために使用される半導体チップが引き続き不足しているため、より多くの工場を休止させることにした。すでに操業停止となっている北米の他の施設でも閉鎖を延長している。

GMは米国時間4月8日、8つの組立工場が一時的に閉鎖されていることを明らかにした。この一時的な工場閉鎖については、CNBCが最初に報じている。TechCrunchが問い合わせたところ、GMはこの閉鎖を認め、ミズーリ州のウェンツビル組立工場では来週から生産を再開する予定だと付け加えた。

「GMは、利用可能なすべての半導体を活用して、フルサイズトラックやSUVなど、最も人気があり需要の高い製品の製造・出荷をお客様に向けて続けています」と、広報担当者は電子メールに書いている。「私たちは、これらの工場で失われた生産量を可能な限り補うことに力を尽くしています」。

世界的な半導体チップ不足が長引く中、GMやフォードなどの自動車メーカーは工場を休止し、SUVのような利益率の高いクルマの生産にリソースを振り分けざるを得ないでいる。GMによれば、フルサイズトラックやフルサイズSUVの工場では、チップ不足による操業停止やシフト削減は行っていないという。また、自動車メーカーは、特定の部品を使わずにクルマを製造する方策も取るようになっている。例えば、GMは2021年3月、一部のピックアップトラックに、最大限の燃費向上を可能にするフューエルマネジメントモジュールを装着せずに生産すると発表した。

自動車メーカー各社は、この部品不足が2021年の業績にどのような影響を与えるかについてのガイダンスを発表している。フォードは、半導体不足のシナリオが2021年上半期まで延長された場合、コスト回収や下半期における一部の生産補填を差し引いても、10億ドル(約1093億円)から25億ドル(約2732億円)の収益減少になる可能性があると述べている。

GMは2021年2月、半導体の世界的な供給不足により、2021年の生産、収益、キャッシュフローに短期的な影響が出ると発表した。

Cadillac(キャデラック)XT5とキャデラックXT6、GMC Acadia(アカディア)を製造しているGMのテネシー州スプリングヒル組立工場は、4月12日から2週間にわたって操業を停止する予定だ。GMは4月19日から始まる週に、メキシコのラモス組立工場におけるChevrolet Blazer(シボレー・ブレイザー)の生産と、ミシガン州ランシングデルタタウンシップ組立工場でのChevrolet Traverse(シボレー・トラバース)およびBuick Enclave(ビュイック・エンクレーブ)の生産ラインを一時的に停止する。

GMはまた、ミシガン州ランシンググランドリバー組立工場の休業を4月26日の週まで延長した。キャデラックCT4とキャデラックCT5およびChevrolet Camaro(シボレー・カマロ)を生産しているこの工場は、3月15日から操業を停止している。

同自動車メーカーは、カナダのCAMI組立工場と、Chevrolet Malibu(シボレー・マリブ)やキャデラックXT4を生産しているカンザス州フェアファックス組立工場の操業停止を5月10日まで延長すると発表した。GMによると、両工場とも2月8日の週から停止しているという。

韓国にあるGMの富平2組立工場は2月8日から生産量を半分に減らしており、ブラジルのグラヴァタイ工場では4月と5月の間は休業期間となっている。

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タグ:GM半導体自動車Ford

画像クレジット:GM

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Mithril CapitalがFlex Logixに約60億円を投じ、再びチップ市場に参入

かつては手がつけられなかった半導体分野が、ベンチャーキャピタルから熱い注目を集め続けている。

米国時間8月22日朝の最新ニュースは、Mithril CapitalのAjay Royan(アジェイ・ロヤン)氏がAIワークフローをコンピューティングエッジに導入するためのチップを製造するFlex Logixに対し、5500万ドル(約60億円)のシリーズDラウンドの資金調達を行ったというものだ。これはLuxやEclipse Ventures、そしてFlex Logixの創業者兼CEOであるGeoff Tate(ジェフ・テイト)氏の投資会社であるTate Family Trustなどによる総額2700万ドル(約29億円)の初期ラウンドに続くものだ。

Mithrilがチップ投資の世界に進出したのは、これが初めてではない。同社は以前、Apple(アップル)のAラインプロセッサのトップチップ設計者の数名によって設立され、サーバーチップ市場への参入が期待されるNUVIAを支援したことがある。Mithrilは2020年9月にNUVIAに2億4000万ドル(約260億円)を投資したが、それは2021年1月に発表された14億ドル(約1500億円)の取引でNUVIAがQualcomm(クアルコム)に買収される数カ月前のことだった。

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Flex Logixについては、2020年10月に同社がX1 AIチップを発表したときに以下のように紹介している。

Flex LogixはAI処理ワークフローをコンピューティングエッジに持ち込みたいと考えている。つまり、医療用画像処理装置やロボットなどの製品に人工知能を追加する技術を提供しようとしている。エッジでは処理能力はもちろん重要だが、サイズや価格も重要だ。より効率的なチップを製品に製品に搭載しやすく、価格によって個々の部品コストが制約される可能性がある。

Mithrilは声明の中で、同社の強みは半導体の中でも特に注目されている分野で、消費電力とコストの厳しい要求を満たす競争力のあるプロセッサを設計したことだと述べている。また、Flex LogixがeFPGA分野で強力な知的財産を開発していることも高く評価している。eFPGAの分野では、アプリケーションのニーズに適応できる柔軟なプロセッサに対する顧客の関心の高まりを受けて、活発な活動が行われている。

Flex Logixとその設立の経緯については、以前に記事を参考にして欲しい。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Mithril CapitalFlex Logix半導体投資

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Danny Crichton、翻訳:塚本直樹 / Twitter

Google CloudがIntelのベテランをカスタムチップ開発チームに招く

近年、本来半導体企業ではない大企業が自社独自のチップを開発するトレンドがある。米国時間3月22日、はGoogleが同社のカスタムチップ事業部門を率いる人物として、長年Intelに役員として在籍したUri Frank(ウーリー・フランク)氏を副社長に迎えた。

Googleのフェローでシステムインフラストラクチャ担当の副社長Amin Vahdat(アミン・ヴァーダット)氏は、この新規雇用を発表するブログ記事で次のように述べている。「クラウドインフラストラクチャーの未来は明るく、そしてそれは急速に変化している。私たちが世界中からのコンピューティングの需要に応え続けようと日々努力している中で、ウーリー・フランク氏をサーバー用チップの設計を担うエンジニアリング担当副社長として迎えることができたのは、とても喜ばしいことだ」。

フランク氏の雇用でGoogleが得るのは、チップ業界の経験豊富な執行役員だ。彼は20年ほどをIntelで過ごし、技術者から副社長にまで昇進して、2021年3月に同社を去るまでDesign Engineering Group(設計工学集団)を率いてきた。

フランク氏はGoogleの一員として、イスラエルにあるカスタムチップ部門を率いる。彼はLinkedInに発表した声明で、これはカスタムシリコンの開発で長年の履歴を有する企業に加わるという大きな一歩だ、と述べている。

「Googleは、世界最大で最も効率の良いコンピューティングシステムを設計し構築してきました。長年、カスタムチップはこの戦略の重要な一部でした。ここイスラエルでチームを育てていくことと、コンピュートインフラストラクチャーにおけるGoogleクラウドのイノベーションを加速することが、今から楽しみです」とフランク氏はいう。

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Googleのチップ内製の歴史は2015年にさかのぼり、そのとき同社は最初のTensorFlowチップを立ち上げた。2018年には動画処理用チップに進出してOpenTitanを加え、セキュリティを重視するチップを2019年にローンチした。

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フランク氏の仕事は、これまでの同社の経験をベースとする開発の継続であり、顧客やパートナーと協力して新しいカスタムチップのアーキテクチャーを作っていくだろう。Googleは、さまざまなベンダーからマザーボードを手に入れていくやり方から卒業して、独自の「system on a chip」すなわちSoCを作る方向へ向かおうとしている。それにより効率が大幅に向上する、と同社はいう。

「マザーボードの上に部品を集積するこれまでのやり方では、各部品が数インチずつ離れることになる。そこで私たちは『Systems on Chip(SoC)』に目を向け、複数の機能が1つの同じチップの上にあり、複数のチップが1つのパッケージに収まっているアーキテクチャーを目指した。つまり、SoCは新しいマザーボードだ」とヴァーダット氏は語る。

Googleは早期から「Build Your Own Chip(自分のチップは自分で作ろう)」運動を推進してきた。現在では、AmazonやFacebook、Apple、Microsoftといったその他の大企業も自分たち独自のニーズを満たし、ハードウェアとソフトウェアの関係をより精密にコントロールするために、チップの内製を始めている。

フランク氏の仕事は、Googleのカスタムチップチームを率いて、それを次の高いレベルへと引き上げることだ。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:GoogleSoC半導体

画像クレジット:zf L/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

台湾の水不足でわかるテックへの気候変動の脅威

前代未聞の干ばつに直面している台湾のチップメーカーへの給水能力について台湾政府が週末に出した声明は、気候変動がテック産業の基盤にとって直接の脅威であることをはっきりと示している。

Bloombergが報じたように、台湾の蔡英文総統は現地時間3月7日、56年の歴史で最悪の干ばつに直面している市民や事業所への給水能力についてFacebookに投稿した

総統は台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(TSMC)のような企業による半導体製造を停止させないだけの十分な貯水量は確保される、と述べた。

チップはテック産業の基礎であり、チップ製造の混乱は世界経済に悲惨な結果をもたらす可能性がある。チップ供給の逼迫はすでにGeneral Motors(ゼネラル・モーターズ)やVolkswagen(フォルクスワーゲン)といった自動車メーカーの生産停止を招き、チップ製造施設の稼働は限界に近づいている。

バイデン政権は、米国各地で製造プラント停止を引き起こしている現在も続くチップ不足を解決するために2021年2月に大統領令を出した際に、米国が半導体製造供給を強化する必要があると強調した。

「台湾の水不足、そして半導体への影響はあらゆるテクノロジー投資家、創業者、全ベンチャーエコシステムへの警鐘です。はっきりとした複雑性理論であり、産業マーケットで広く急速に展開されているスケーラブルでデータを活用しているソリューションはコース修正で唯一の望みであることを示しています」とエネルギー専門の投資会社Blue Bear Capitalのパートナー、Vaughn Blake(ヴォーン・ブレイク)氏は書いた。

台湾の水危機と半導体産業への大きな影響は目新しいものではない。そうした問題は2016年のハーバードビジネススクールのケーススタディ分析でも取り上げられた。そしてTSMCはすでに水の消費を解決するために取り組んでいる。

TSMCは2016年には水の浄化とリサイクルの改善に取り組んでいた。これは1日あたり200万〜900万ガロンの水を消費する産業にとっては必要不可欠だ(Intelだけで2015年に90億ガロンの水を使用した)。ハーバードのケーススタディによると、少なくともTSMCの製造施設の一部は90%という率で工業廃水リサイクルをなんとか達成した。

しかしムーアの法則によってそのサイズは小さくなり、製造工程におけるさらなる正確さとより少ない不純物に対する需要が増えるにつれ、製造施設での水使用は増えている。次世代チップはおそらく1.5倍の水を消費し、これは、増加分を埋め合わせるためにリサイクル改善が必要とされることを意味する。

スタートアップはコストを下げ、ますますエネルギー集約的になっている排水リサイクルと脱塩のパフォーマンスを改善する方策を探す必要がある。

一部の企業はそうした方策を実践している。量子ベースの水処理テクノロジーを開発したと主張している英国のBlue Bosonのような企業もある。同社の主張はサイエンスフィクションのように聞こえるが、同社ウェブサイトは世界で最も優れた研究だとうたっている。同じく英国企業である漏れ検知のFidoは水が浪費されている可能性がある箇所を追跡する。そしてPontic TechnologyとMicronicは水と液体の減菌システムを開発している米国企業だ。

浄水のスタートアップNumixは工業生産の要である重金属を排除することを目的としている。そしてロサンゼルスのDivining Labsは水使用のためにより多くのリソースを集めるため、雨水流出を予測・管理を向上させるのに人工知能を使っている。

「『その人の給料が理解していないことに基づくとき、その人に何かを理解させるのは難しい』とUpton Sinclair(アプトン・シンクレア)氏はいう」とブレイク氏は述べている。「さて、そこにいるすべての創業者と投資家のみなさん、当分の間、すべてのテクノロジーは気候対策のもののようだが、技術がまったくないということにならないように」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:TSMC台湾災害気候変動半導体

画像クレジット:Usis / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

韓国がAI半導体の生産を推進、2030年までに50タイプを開発へ

韓国政府は世界のAI産業において主要プレイヤーになるという野心を明らかにしてきた。ここにはAIの機能性を支える半導体の製造も含まれている。

10月12日の週に韓国の情報通信テクノロジー当局はAIにフォーカスしたシステム半導体50タイプを2030年までに開発する計画を発表した、と聯合ニュースが報じた。韓国政府はこの新たなイノベーションを率いる専門家を何千人と募集することになる。

同国はこのところ、次世代チップ企業をサポートしようといくつかの約束をしてきた。例えば2020年初めに同国は、2029年までのAIチップ商業化と生産に約1兆ウォン(約920億円)を拠出する計画( BusinessKorea記事)を明らかにした。2019年、文在寅大統領はこの業界への注意を喚起しようと「大統領AIイニシアチブ」を発表している

こうした取り組みはAI関連チップに対する需要の高まりを受けてのものだ。マッキンゼーの予測では、半導体需要の約20%を占め、2025年までに670億ドル(約7兆700億円)の売上を生み出す。

韓国は世界最大のメモリチップメーカーであるSamsung(サムスン)とSK hynix(SKハイニックス)が拠点を置いている国だ。儲かる産業である一方で、独立したIT業界専門家Seewan Toong(シーワン・トング)氏は「コアなテクノロジーよりも製造プロセス」により大きく頼っている産業だとみている。

「これまでのものより小型で密、そして効率的なチップを製造することに主眼を置いていて、1つのチップに多くの資金を投じています」と付け加えた。

聯合ニュースによると、韓国政府は半導体を一層スマートなものにし、2030年までに世界のAIチップ市場で20%のシェアを獲得したいと考えている。

Samsungは2019年末にBaiduのAIチップ大量生産パートナー(Samsungリリース)となり、次世代チップの生産を倍増させた。7月にSamsungはチップとAIに取り組むスタッフを新たに1000人雇用することを発表した(The Korea Herald記事)。SK hynixは中国企業Horizon Roboticsに出資して手を組んだ。Horizon RoboticsはAIチップデザインを手掛けていて、直近のバリュエーションは30億ドル(約3200億円)だ(未訳記事)。

基礎研究よりAI応用に長らく注力してきた中国は、米国による基幹テクノロジー関係での制裁に苦慮する中で、韓国と同じように自国の半導体企業に金を投じている。問題は、国の支援を受けたいくつのスタートアップがNvidia(エヌビディア)やQualcomm(クアルコム)のような世界的大企業との競争で生き残るかだ。

「韓国の動きは本当に賢いものです」とKneron(クネロン)のCEO、Albert Liu(アルバート・リュー)氏は話した。同社はAlibaba(アリババ)やHorizons Ventures(ホライゾン・ベンチャーズ)、Qualcommの支援を受けた資金潤沢な最先端AIスタートアップだ。

「Tesla(テスラ)からトースターに至るまで、あらゆるものが今後数年のうちに最先端AIチップを必要とします。マーケットそのものが巨大な機会であるため、新興プレイヤーはかなり大きなチャンスを手にしています。5G、AI 、IoTの時代が到来し、これらは安全でプライベートな方法で我々の暮らしを向上させるテクノロジーエコシステムを可能にします」と同氏は述べた。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:韓国半導体

画像クレジット:Ufuk ZIVANA / Shutterstock

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(翻訳:Mizoguchi