試験対策から生活情報まで、外国人留学生向けEラーニングのLincが1億円調達

外国から日本に留学する人材向けのオンライン教育サービスを提供するLincは2月14日、ジェネシア・ベンチャーズBEENEXTを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は1億円だ。

Lincの中心メンバーたち。写真左が代表取締役の仲思遥氏。ここに写る全員が外国籍の留学生だ。

近年、日本における外国人留学生数は右肩上がりで推移している。2007年には約12万人だった留学生数は、その10年後の2017年には約26万人にまで増えた。そういった人材が日本に来る際に障害となるのが、言語や文化の壁だ。Lincは同社のオンライン教育サービス「羚課日本留学」を通してその壁を取り払おうとしている(羚課はLincの中国語発音だ)。

現在、Lincが主に提供しているのが留学生向けの試験対策カリキュラムだ。外国人留学生が日本の大学に入学する場合、日本留学試験(EJU)を受験する必要がある。これは留学生版のセンター試験とも言えるもので、日本語能力のほか、地理、歴史、政治経済などの文系科目や、物理や化学などの理系科目などの基礎学力を評価するテストだ。

LincではこのEJU対策カリキュラムをオンライン授業という形で提供している。ただし、現在は歴史や数学などの科目の授業のみを提供。語学としての日本語を教える授業は提供していない。また、Lincは今のところ中国人向けにサービスを特化しているため、授業はすべて中国語で提供している。同社によれば、ターゲットとなる中国語圏の日本語学習者は約100万人ほどいるという。

羚課日本留学のオンライン授業には録画とライブ配信の2種類がある。科目授業など知識系の授業では録画形式で授業を行ない、日本に渡航したあとの生活についてレクチャーを行う授業では、受講者からの質問に対応するためにライブ配信で授業を行っている。この、日本の生活についてのレクチャーは、日本の慣習や文化に慣れない留学生にとって価値のある情報だ。

クレジットカードの審査で見られる信用情報(クレジットヒストリー)の履歴は、渡航した直後から蓄積される。留学生はその認識が低くなりがちで、渡航直後に公共料金の支払い遅延があったなどという理由でクレジットカードが発行されないケースもあるという。ライブ配信の授業ではこういった日本のルールについても学ぶことができる。「その人が育った国の常識に従えば良いのではなく、日本ではそういった遅延がのちのちトラブルにつながる可能性があることなどを教える」(Linc代表取締役の仲思遥氏)

こう話す仲氏自身、中国出身の外国人として日本の大学を卒業した元留学生だ。中国で生まれた仲氏は6〜12歳まで日本で暮らした。その後中国に戻ったが、「日本での生活が好きだった」という仲氏は進学先として日本の大学を選んだ。仲氏自身が日本での生活から学んだ“体験”を外国人留学生に伝えたいという。

現在のところ羚課日本留学では約680本の授業動画が提供されていて、総視聴回数は10万回を超えるという。単月ベースでの黒字化はすでに達成しているそうだ。羚課日本留学の利用料金は1年契約で10万円。日本語学校の中には日本留学試験の対策講座を行っている学校もあるが、それらの授業料は1年あたり約60〜70万円の費用がかかることもある。それに比べれば、羚課日本留学の利用料金はかなり安く設定されていると言えるだろう。

外国人が日本に留学しようと決意したとき、彼らの多くはまず留学エージェントに相談する。エージェントはバックマージン欲しさに日本語学校への入学を強く勧めるが、それが唯一の選択肢だと勘違いしてしまっている人もいる。その結果、授業料の支払いのために母国で大きな借金を抱えて来日する人たちもいる。仲氏は羚課日本留学について、「日本語学校以外の選択肢の1つとして見てもらいたい」と話す。

今回のラウンドで1億円を調達したLincは、今後カリキュラムの提供国を東南アジアにまで拡大する。また、将来的には、サービスを通して集めたユーザーデータをもとに外国人材の「信用」をスコア化し、それを利用して外国人向けの住宅探し、アルバイト探し、転職支援サービスなどにビジネス領域を拡大していきたいという。仲氏は今後、さまざまなライフイベントに関わるサービス群を提供していくことで「外国人版のリクルートを目指したい」と将来のビジョンを語った。

日本円の出金は401億円、事業継続と業者登録を目指す——コインチェック大塚COOが説明

コインチェック取締役COOの大塚雄介氏

仮想通貨「NEM」の不正流出事件が起こり、仮想通貨の売買や日本円の出金を停止していた仮想通貨取引所「Coincheck」。サービスを運営するコインチェックは2月13日、日本円の出金を再開した

コインチェックでは同日20時から本社が入居するビルのエントランスで会見を実施。同社取締役COOの大塚雄介氏が現状を説明した。なお、同日午後には複数メディアで同社が会見をするとの報道があったが、報道後も同社広報は「会見は行わない」としていた。

冒頭、大塚氏は「まだすべて話をするわけではなく、後日改めてその機会を設けさせていただきたいと思う」とした上で、現時点での同社の状況を説明した。

コインチェックでは2月13日付けで金融庁の業務改善命令に対して、報告書を提出。「継続して事業をさせて頂くところを一歩一歩、改善を進めている。まず一歩目だが、日本円の出金を再開した」と説明。すでに13日だけで401億円の出金を終了しているという。また明日以降についても、順次出金を行うという。すでに発表済みのNEMに関する補償については「ある程度の目処はついている」としたものの、時期や詳細については「確定したらご報告する」とするにとどめた。

現時点ではいまだ中止している仮想通貨の送金や売買に関しては、外部のセキュリティ専門会社と安全を確認した後に再開するという。ただしこちらに関しても具体的なスケジュールは明示せず、「明確に決まり次第、ちゃんとご報告をさせていただく」とした。

大塚氏かra

説明があったあと、報道陣との質疑応答が行われた。以下はその概要だ。なお会見は「後ろの予定が詰まっている」(同社)とのことで20時20分で終了した。最後に報道陣が投げた「被害者に対してひと言」という質問に回答することなく、大塚氏はその場を去っている。

–業務改善報告書の内容、金融庁とのやり取りについて
お答えすることができないかたちになっている。(記者からの話せる範囲で、という質問に対しても)ちょっとお答えできない。すみません。基本的には今、進めている最中。内容についても、プレスリリースには出しているが、改善報告書の項目の中身に関しては答えられない。

–再発防止策において、不正監視の回数増加やコールドウォレットの扱いについて
今の時点でお答えできない

–経営体制や第三者委員会の設置について
(前の質問と)一緒で、そこについてもお答えできることない

–補償のめどについて
改善計画については、お答えできない。補償のめどなど日付については正式に決まったら。補償金額と数量については報告していることがすべて。(残りの入金額については)今時点ではお答えできない。(ユーザーから返金依頼があれば返せるかについては)はい。

–NEMの補償時期がはっきりしない理由について
資金自体はすでにある。そこの調整を行って、問題ないことを1つ1つ確認していく。補償の資金となる現金は手当できている。(財務状況を金融庁に報告しているかについて)金融庁とのやり取りに関しては話せない。

–NEMの補償時期が言えないと不信感がある
おっしゃることはまさにそうだが、お答えできない。1つずつ確認しているので、確認できれば報告させて頂く。

–顧客資産と会社資産を分別した上で返せるということか
はい。もともと分別管理が前提。今回の日本円の出金も、預かった資金から出している。
(補償の資金についても)自己の資金から。(他の仮想通貨も分別管理しているかについては)、はい。

–そもそも金融庁の仮想通貨交換業者登録が遅れた理由について
事件と関係がないのでお答えしかねる。

–売買機会を逸したユーザーからの損害賠償の動きについて
売買については今しばらくお待ち頂く。(補償については)まだ確認できていないのでお答えしかねる。

–事業者登録ができる確信があるか
はい。基本的には事業を継続する。登録もさせて頂く。(登録ができなければ)違法になるので事業ができないと思う。

–NEM流出からの2週間で決まったことは
外部の専門家にセキュリティの確認をして、日本円の出金ができるようになった。加えて仮想通貨売買も前に進めている。(解決までの時間について)ある程度の見通しはついているが、正式にはまだ。目処についてもお伝えできない。私たちのシステムとして安全に送金できるのかどうかを確認中。一番はユーザーの資産が手元に戻る事。

–だいたいでいいので目処を示せないのか
見通しとズレがないようにしてから正式に報告する。

–なぜ代表取締役社長の和田晃一良氏はいないのか。
私が責任を持っているから。(和田氏は)今日は業務改善命令の報告をしていた。今もオフィスにおり、サービス改善に関わっている。

–コインチェックの現預金について
お答えしかねる。(売上高や営業利益、純利益なども)お答えは控える。(開示の意向について)現時点では、ない。

–経営責任について
繰り返しになってしまうが、業務改善命令の中身に関してお答えできない。(責任の取り方については)今ちゃんと考えているところ。正式な内容がきまれば報告する。(経営陣の辞める意向については)そこらへんも含めて中身が決まれば報告する。

–出金停止、業務停止の是非について
ユーザーの資産を一番に考えて、これ以上被害が出ないためにも妥当な判断だと思っている。

–破産申請の可能性について
破産するつもりはなく、事業継続の意思がある。ある程度の見通しも立っている。事業の継続と金融庁への登録を継続する。

–不正アクセスの原因究明について
報告の内容になるため話せない。(ユーザーへのアナウンスについて)目処が立ち次第報告する。

–不正流出したNEMが換金されているという話について
捜査関係の話はできない。

まずは福岡から、メルカリのシェアサイクル「メルチャリ」が2月27日にリリース

メルカリのグループ子会社であるソウゾウは2月13日、オンデマンドシェアサイクルサービス「メルチャリ」を2月27日より提供開始すると発表した。メルチャリの導入都市の第一号として選ばれたのは、福岡だ。

メルチャリは、フリマアプリなどを提供するメルカリグループが提供するシェアサイクルサービス。メルチャリの利用の流れは以下のようになる。ユーザーはまず、アプリ内にあるマップを見て近くの専用ポート(駐輪場)に行き、自転車をレンタルする。その際、アプリで発行されるQRコードにより自転車の鍵を解除する仕組みだ。

料金は1分あたり4円。例えば、新宿から渋谷まで自転車で行くと約20分ほどかかるから、80円と体力さえあればこの区間を移動できることになる。ちなみに、メルチャリに利用される自転車は折りたたみ自転車にも採用される小型の20インチタイプで、3段変速ギアが搭載されている。電動アシストはない。

先行する競合サービスにはセブンイレブン・ジャパンがソフトバンクグループのOpenStreetと共同で手がける「HELLO CYCLING(ハローサイクリング)」や2017年8月より日本にも上陸した中国の「Mobike(モバイク)」などがある。それらと比べてメルチャリが特徴的なのが、個人宅や店舗の軒先を自転車を駐輪するポートとして利用する点だ。

メルカリは同サービスを“ユーザー・地域参加型”と呼んでいる。その理由は前述のポートの運用だけではない。地域の目がサービスの質向上にもつながる仕組みがある。

メルチャリでは、ユーザーが違反報告や自主的な放置自転車の移動などのアクションをすることで、サービス内のマイルやメルカリポイントが付与されるという。

実際、シェアサイクル先進国の中国では同様のサービスが普及したことによる放置自転車の増加が問題視されている。それを防ぐ良い手となるかもしれない。

メルカリは今後、ユーザーにインセンティブを与えたり、運営の参加にゲーム性をもたせることで、ポートの清掃などその他のサービス運営にも個人を巻き込んでいきたい考えだ。

もちろん放置自転車対策などのサービス運営体制はそれだけに限らず、自転車に内蔵されたGPSで常時自転車の駐輪場所を把握し、サポートトラックが放置・違法駐輪の自転車や故障者を移動・回収することで各ポートを常に最適な状態に保つという。

メルチャリはまず、2月27日に福岡でサービスを開始する。リリース時点での自転車台数は400台、ポート数は50箇所だ。メルカリはこれを2018年夏までに2000台、200箇所にまで拡大するとしている。初めての導入都市に福岡を選んだ理由としては、メルカリのカスタマーサポート拠点が福岡にあること、坂が少ない自転車の移動に適した地形であること、公共交通機関のすきまを埋めることが期待できることなどを挙げている。

「メルカリはこれまでお客様同士の取引の場を提供してきたが、それはオンラインの場だけに限られていた。メルチャリを展開することで、それをオフラインの場にまで広げたいという思いがあった」と話す、ソウゾウ代表取締役の松本龍祐氏。

“個人と個人をつなぐ”ことが得意なメルカリだからこそ、個人をサービス運営に巻き込むというアイデアが生まれたのかもしれない。この仕組みは新しい取り組みだからこそ、どれほどの人々が自宅へのポート設置などに協力するのかという点に注目が集まる。

コインチェックが日本円の出金再開を正式に発表、2月13日から

今朝から一部報道で伝えられていたが、コインチェックは2月9日、日本円の出金を2月13日より再開することを正式に発表した。

同社ではNEMの流出騒動があった1月26日の16時30分すぎから、顧客の資産保護と原因究明のために日本円を含むすべての通貨の出金を一時停止していた。

今回の発表内で「日本円出金機能につきまして、外部専門家による協力のもと技術的な安全性の確認を完了いたしました」と説明。現在顧客の日本円の資産は金融機関の顧客専用口座内で安全に管理されている状況で、2月13日より出金を再開するという。

仮想通貨の出金や出金以外の機能についても技術的な安全性などの確認ができ次第、順次再開するとしている。

なお共同通信によると、流出したNEMは匿名性の高い「ダーク(闇)ウェブ」のサイトを介して、ビットコインなど他の仮想通貨に交換された疑いがあることがわかったという。現時点で交換された疑いがあるNEMは5億円分を超えたと報じられている。

日用品通販の価格比較サイト「スマートショッピング」が約2億円を調達

日用品・食品通販の価格比較サイトや法人向けの残量管理・自動発注システムを展開するスマートショッピング。同社は2月9日、2017年2月までに総額約2億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

同社に出資したのはアドベンチャー、Makers Boot CampのMBC試作ファンド、シリコンバレーのVCであるNOS Ventures LCCに加え、SHIFT代表取締役の丹下大氏を含む数名のエンジェル投資家だ。

現在スマートショッピングはコンシューマー向けに日用品の価格比較サイト「スマートショッピング」、法人向けにIoTデバイスを用いた在庫管理・自動発注サービスを提供している。

価格比較サイトについては食品や生活用品について、Amazonや楽天、ロハコなどの主要ネット通販の送料を含めた価格を調べられることが特徴。購買履歴からの残量予測や商品を選ぶための独自コンテンツ、買い物の手間を減らす購買代行などのサービスも提供している。

またオフィスや飲食店、工場といった法人向けに残量管理、自動発注をサポートするサービスを運営。独自のIoTデバイス「スマートマット」を通じて商品の残量を計測し、そのデータを用いて適切なタイミングで自動発注できる仕組みを開発した。

スマートショッピングでは今回調達した資金で開発・営業基盤を強化するともに、新たなサービス開発にも取り組む方針だ。

17年の国内ベンチャー資金調達額は2717億円、調達規模の「大型化」進む

ベンチャー企業のデータベース「entrepedia」を提供するジャパンベンチャーリサーチは2月8日、2017年通期(1月~12月)の未上場ベンチャー企業の資金調達状況をまとめたレポートを公開した。

同レポートによると、2017年の国内ベンチャーの資金調達額は過去最高となる2717億円。前年比で21.2%増加した。資金調達をした社数自体は、金額不明な案件も含めて1003件と2011年以降でもっとも少ない(ただし公開情報が主となっているため、いわゆる「ステルス」状態のものは必ずしも含まれていないと考えられる)。

一方で1社あたりの調達額が年々増加していて、「大型化」のトレンドが継続している。2017年における最大規模の調達はPreferred Networksの128億円(8月にトヨタから約105億円を調達した際にはTechCrunch Japanでも紹介した)。全体のうち1億円以上の調達が過半数、5億円以上の調達が15%超を占める。

上述した通り資金調達をした社数自体は減少しているので、評価されるスタートアップに大きな資金が集中するという傾向が見られる。実際10億円以上の金額を集めた企業が58社あり、こちらは過去最高の数字。50億円以上を調達した社数も7社となった。

また平均値でも3.3億円とはじめて3億円を突破し、中央値でも1億円に達している。

今回のレポートでは地域別の動向や大学発ベンチャーの動向、事業提携数などについても紹介されている。なお3月中旬には通常版(今回は速報版)のリリースも予定しているという。

飲食店予約代行アプリにリニューアルした「ペコッター」が1億円を調達

グルメコンシェルジュサービス「ペコッター」を運営するブライトテーブルは2月8日、ジェネシア・ベンチャーズ、AGキャピタル株式会社、Das Capital、アコード・ベンチャーズを引受先とする第三者割当増資により、総額約1億円を調達したことを明らかにした。

ブライトテーブルは前回のラウンド(2015年11月から2016年1月にかけて)でインキュベイトファンドやiSGインベストメントワークスなどから資金調達をしていて、今回までの累計調達額は約2億円になる。

2015年3月に飲食店探しをサポートするグルメQ&Aサービスとして始まったペコッター。希望する飲食店の条件を投稿すると、ほかのユーザーが条件に合う飲食店をチャット形式で教えてくれるという仕組みだった。

同年11月からはチャットによるレストラン予約代行サービス「ペコッター予約」を開始。サービス開始からこれまでで約14万件の飲食店探し、約5万件の予約代行をしてきた。

その中で現在も飲食店は電話予約が主流になっている一方で、ユーザーからはオンライン予約のニーズも高まってきている背景のもと、予約代行機能にフォーカスする形でアプリのリニューアルを実施したという(ただSNSの反応などを見る限り、リニューアル前のペコッターが好きだったというユーザーも少なくないようだ)。

今後は予約管理台帳との連携や音声による予約の自動化など、店舗予約のオートメーション化を進める予定。加えてサービス内に蓄積される予約履歴のデータを活用したAIエンジン「Zeus」の精度向上を図り、ユーザーに合ったお店をレコメンドできるグルメ予約代行サービスを目指していく。

【16時更新】ブライトテーブル代表取締役社長の松下勇作氏に、リニューアルの背景や今後の展望について話を聞けたので追記する。

松下氏によると今回のリニューアルは「ペコッターでお店の予約ができる」ことを知らないユーザーが一定数いたことが背景にあるという。

「お店探しコミュニティではなくグルメのコンシェルジュとして、自分にあったお店探しから実際に予約するまでをサポートできるサービスを目指している。従来は予約代行機能がQ&Aの影に隠れる形になってしまって、なかなか認知されなかった」(松下氏)

ユーザーがお店に行くことを考えると、お店探しと予約は切り離せないもの。ペコッターで予約代行を依頼するユーザーはすでに情報収集が終わり、行きたいお店が決まっているケースも多いため、まずは予約代行に絞る形でリニューアルをした。

現時点でMAUなどの変化はあまりないが、Q&Aをなくしたことで今後多少の減少は想定しているそう。ただ1ヶ月の予約代行数については、リニューアル後1.5倍近くに増えているという。

上述した通り、ペコッターが見据えているのはお店探しから予約までをカバーする、グルメのコンシェルジュ。今後はユーザーに合った店舗のレコメンド機能も搭載する予定だが、そのためには基となるデータが必要だ。

「現在は予約の履歴を蓄積することによって、レコメンドの精度をあげる準備をしている段階。これまで予約電話代行をしてきたことで、オンライン予約ができないような店舗の予約履歴までたまっているのがペコッターの特徴だ」(松下氏)

今回の調達は主に人材採用が目的。特にレコメンドエンジンなどの開発体制を強化し、「グルメのことならペコッターに相談したい」と思われるサービスを目指すという。

ちなみに、僕の周りにはリニューアル前のペコッターが好きだったという人もいた。

正直なところリニューアルした際の反響はどうだったのか、松下氏に聞いてみたところ「『Q&Aがなくなった、どうしてくれるんだー』という声と、『これまでも予約代行のパシリと思って使っていたから正しい決定だよね』という声が半分半分くらいだった」そうだ。

トヨタがJapanTaxiに約75億円を出資、タクシー向けサービスの共同開発検討へ

トヨタ自動車とJapanTaxiは2月8日、タクシー業界全体の活性化・効率化を目指し、タクシー事業者向けサービスの共同開発等を検討することに合意したと明らかにした。合わせてトヨタがJapanTaxiに約75億円を出資することにも合意したという。

トヨタは以前からモビリティの管理や利用、分析など様々な機能を備えたプラットフォーム「モビリティサービスプラットフォーム」の開発を進めている。2社での共同開発にあたっては、このプラットフォームとJapanTaxiの連携を強化していく方針だ。

具体的にはタクシー向けのコネクティッド端末、配車支援システムの共同開発、ビッグデータ収集といった分野での協業を検討していくという。

これまで両社はそれぞれタクシー業界でサービスを展開してきた。トヨタは2016年8月5日に全国ハイヤー・タクシー連合会との協業を発表。東京エリアで通信型ドライブレコーダーを活用した実証実験やタクシー業界の効率化を図る研究、サービスの開発にも取り組んでいる。

一方のJapanTaxiもタクシー配車アプリ「全国タクシー」を2011年より提供していて、2017年12月には累計400万ダウンロードを突破。車両登録数は全国のタクシー車両の約4分の1となる約6万台で、タクシー配車アプリとしては国内トップのシェアを誇る。

なおJapanTaxiは2017年6月にもトヨタが出資している未来創生ファンドから、5億円の資金調達をしていた。

累計120万アカウント突破の「Peing-質問箱」がスマホアプリで登場

2017年11月のローンチ後、約1ヶ月で月間2億PVペースまで拡大した匿名質問サービス「Peing – 質問箱(ペイング)」。12月にジラフが買収した際にはTechCrunch Japanでも紹介している。

2018年に入ってから他言語対応や複数の機能追加も続いていたPeingだが、本日2月8日よりスマホアプリ版がリリースされた(iOS版Android版)。

Peingでは1月上旬に「QuestionBox」(英語版)、中旬には香港、マカオ、台湾、シンガポールといった国のユーザーに対応する「提問箱」(中国語・繁体字版)の提供を開始。

機能面でも1月末に誹謗中傷などの質問をフィルタリングできる機能や、アカウントを開設していないユーザーに先駆けして質問できる機能(質問を受けたユーザーは、アカウント開設後に内容を確認できる)、自分がTwitterでフォローしているユーザーのリスト機能などを矢継ぎ早に始めていた。

今回アプリをリリースすることで「自分に質問が届いた際や、(質問に対する)回答があった際に通知がくるためサービスの利便性があがると考えている」(ジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏)という。

累計アカウント数は増加したものの、課題にも直面

現時点で開設されている累計のアカウント数は120万ほど。12月中旬に話を聞いた際は80万ということだったから、2ヶ月弱で40万ほど増えていることになる。ただ麻生氏によると「ピーク時に比べたらアクセス数自体は落ちている」そう。

激減するというわけではなく、継続して使う人と使わない人が分れてきているフェーズを迎えているようだ。確かにアカウントを作ったところでそもそも質問がこなかったり、答えたい質問が少なければ使うのをやめてしまう人もいるだろう。

多くの質問が寄せられるユーザーからは「いい質問が少ない」「同じ質問が何度もくる」といった声もあるそう。今後は(回答者にとって)クオリティが高い質問が上に表示される仕組みなども検討する。

海外展開や新機能で新たな層の開拓目指す

直近でも様々な追加機能を搭載したが、必ずしも全てが狙い通りに進んでいるわけではない。

「想定ほど使われていない機能もある。もともとシンプルなサービスで、個々のユーザーからいろいろな要望をもらうため、本当に求められている機能が何か試行錯誤している段階。今回のアプリやインスタストーリーへの対応など、まずはユーザーの利便性に対する影響度が高いものに着手していきたい」(麻生氏)

また公式Twitterアカウントのツイートが問題視されたり、利用規約の内容について誤解が広がるなど思わぬトラブルもあった。この点については「必要な関係者とはしっかりとコミュニケーションをとって適切な対応を進めている」(麻生氏)という。

現在はイギリスなどを中心にグローバル展開に軸足を置き、ユーザー数の拡大や利便性の向上に取り組んでいる状況。グローバルで見ると「Sarahah(サラハ)」なども勢いがあるが、アプリだけでなく新たな層や新たなエリアのユーザーにも訴求する機能なども増やし、ユーザー数の拡大を目指す。

オーガニック農家と消費者をつなぐ「食べチョク」が4000万円を調達、好みの野菜が届く新サービスも

(写真上段左から)CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏、アドイノベーション代表取締役の石森博光氏、エウレカ創業者の赤坂優氏(写真下段左から)ビビッドガーデンCOOの大河原桂一氏、ビビッドガーデン代表取締役CEOの秋元里奈氏

オーガニック農作物のC2Cマーケットプレイス「食べチョク」を提供するビビッドガーデン。同社は2月8日、エウレカ創業者の赤坂優氏、CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏、アドイノベーション代表取締役の石森博光氏、アカツキ代表取締役の塩田元規氏ほか1名の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により、総額4000万円を調達したことを明らかにした。

ビビッドガーデンは2016年11月の設立で、外部からの資金調達は今回が初めて。調達した資金を基に人材採用やサービスの改善、拡張を進めていく方針。その一環として、本日よりユーザーの好みに合ったオーガニック野菜を定期的に届ける「食べチョクコンシェルジュ」の提供も始めている。

正式リリースから2ヶ月で登録農家が100件に

食べチョクについては2017年8月の正式リリース時にも紹介したが、同社の基準をクリアしたオーガニック農家のみが掲載されたマーケットプレイス。ユーザーと農家を直接つなぐC2Cのモデルだ。

農薬や肥料を使っていない生産物が、鮮度の高い状態で自宅に届く(最短で24時間以内)ことが特徴。時にはスーパーではあまり手に入らないような、珍しい野菜を購入できるという利点もある。

8月時点で60件ほどだった登録農家数は、メディア掲載や農家間の口コミの効果もあり2ヶ月で約100件まで増加した。

ビビッドガーデン代表取締役社長の秋元里奈氏によると、農家にとって食べチョクは「自分たちのこだわりをしっかりと理解してもらった上で販売できる、専用のホームページ」のような位置づけだという。新しい販路になりえるだけでなく、顧客と直接コミュニケーションをとれることをメリットに感じる農家が多いそうだ。

また中には野菜作りは得意でも、商品設計やマーケティングが苦手な人もいる。そこは食べチョクが商品の文言や紹介の仕方を細かくサポート。「風邪予防」などサイト全体で特集パッケージを組み、該当する農家を複数紹介することもやっているという。

秋元氏の実家は以前から農業を営んでいたものの、市場出荷のみで経営を維持することが難しくなり、遊休農地に。小規模農家の販路拡大という課題解決に向けてスタートしたのが食べチョクだ。ただ秋元氏自身がDeNAを経て企業していることをはじめ、チームや今回の投資家陣はIT業界のメンバーが中心。サービス設計や細かい施策などにはそのカラーも反映されている。

ユーザーの好みに合わせて最適な野菜が届く新サービス

一方ユーザー側についても、首都圏エリアで小さな子どもを持つ30代の主婦を中心に利用者が増加。特にリピート率が50%と予想より高い数字になっているという(新たにリリースする定期購入サービスなどを通して、この数値はさらに改善できる余地があるそう)。

「(小さい子は)食べ物の影響が出やすいため、食材に気を使う親御さんが多い。オーガニックということに加え、生産者の顔が見え直接やりとりできる点も安心につながる。他と比べて必ずしも安いわけではなくても、作り手から直接買いたいというニーズがあることがわかった」(秋元氏)

たとえば毎週土日に青山で開催されるファーマーズマーケットには約1万人が集まり、農家を含む生産者と消費者が直接やりとりしながら盛り上がるという。秋元氏いわく、食べチョクは「青山ファーマーズマーケットのオンライン版」のイメージに近いそうだ。

ただ農家や品数が増えるにしたがって、ユーザーからは「何を選んだらいいのかわからない」という声も届くようになった。そんな悩みを解決するためにリリースしたのが、食べチョクコンシェルジュだ。

同サービスでは最初にユーザーが食材の好き嫌いや、オーガニック志向性などを登録して注文する。するとその情報に合わせて最適な農家を運営側で選定し、農作物が届く。届いた作物の感想を送ることで、次回以降さらに好みにあったものが配送されるという「定期購入型」のオーダーメイドサービスだ。

プランはSプラン(税込、送料込みで月額2980円)、Mプラン(同3980円)、Lプラン(同4980円)の3つを用意。今回のサービスでは毎回農家を固定しない形をとるが、今後はAmazonの定期便のように、特定の農家から定期購入できる仕組みも検討するという。

農家にファンがつく“コミュニティ”目指す

秋元氏によると現在の食べチョクは「いろいろなテストを繰り返し、ノウハウを貯めている」フェーズ。そこで培ったナレッジを農家に提供したり、サービスの改善に活かしたりすることで、このプラットフォームを広げていく方針だ。

「将来的に目指しているのは、ECサイトではなくて農家と消費者がつながるコミュニティ。生産者に直接ファンがつくような場所を目指したい」(秋元氏)

たとえば今後は食材だけでなく、食べ方の提案を一緒にすることなども考えているという。現在でも中には自作のレシピを同封している農家もあり、ユーザーからの評判もいいそう。野菜の味を活かした食べ方を伝えることは、双方にとって大きなメリットがある。

ちょうど1月にクックパッドが運営するアクセラレータープログラムに採択されたこともあり、新たな取り組みを検討しているという。

「とはいえ(コミュニティの実現に向けては)超えなければいけない障壁もまだ多い。ITに慣れている農家ばかりではないので、まずはどんな人でも気軽にWebで発信できるような仕組みを整えていく必要がある。生産者と消費者の距離感が近づくような方向で、サービスを大きくしていきたい」(秋元氏)

SoftBank Vision Fund、すでに350億ドルを世界のテクノロジー・スタートアップに投資

昨年5月にSoftBankは1000億ドルを目標とするVision Fundになんと930億ドルもの出資を確保して組成を完了した。このニュースはテクノロジー界に大きな衝撃を与えた。しかも日本のテレコムの巨人は第2次の組成の準備を進めている。またSoftBankの発表(PDF)によれば、Vision Fundの総額の3分の1がすでに投資されている。

先月、この投資の大きな部分、77億ドルがライドシェアリングのUberに投じられた(SoftBankも12億ドルを直接投資している)。これに先立って2017年には、45.8億ドルを投資することで中国のDidi(滴滴)と合意している。ただし、この後者の投資はVision Fundの兄弟分でVision Fundの投資先と競合する可能性がある企業への投資を扱う総額60億ドルのDelta fundからとなる。

今朝発表された資料にはVision Fundが275億ドルを投資済みだとあるが、これは2017年12月31を終期とする9ヶ月におけるデータなので最近のUberへの投資は含まれていない。アメリカのライドシェアリングへの投資を加算すると、投資総額は350億ドルとなる。

Uber以外の企業への投資には、ARM、Nvidia、Flipkart、Paytmの親会社One97 Communication、OYO Rooms、Improbableなどが含まれる。最近の投資には犬の散歩アプリ、Wagへの3億ドルドイツの中古車マーケットプレイス、Auto1への5.6億ドルがある。どちらも今年に入ってからの投資であるためSoftBankが発表した資料には含まれていない。

Vision Fundは「 300年間成長し続ける会社」にするというSoftBankの戦略の一部だ。このため各カテゴリーごとに世界市場での勝者を発見し、支援するというコンセプトだ。SoftBankは投資先企業と協調しテレコムとAIに関連するサービスとテクノロジーの発展を目指す。Vision Fundの投資家はApple、Qualcomm、UAE〔アラブ首長国連邦〕のMubadala Investment Company、サウジアラビアのPID上場ファンド、Foxconn、Foxconn傘下のSharpなどだ。

Vision Fundという巨人が登場したことはアメリカにおける後期ステージのベンチャー投資の構図を大きく変えた。Sequoiaなどの有力ベンチャーキャピタルは急ぎ大型ファンドの組成を始め、Vision Fundに対抗しようとしている。

Vision Fundの影響はすでに各方面に感じられている。Wagへの投資の場合、Vision Fundは投資額を3億ドル以上にすべきだと強く主張したため、NEA(New Enterprise Associates)とKleiner Perkinsはラウンドへの参加を断念したという。両社とも当初Wagに強い関心を示していた。結局、Vision Fundは単独で投資を行ったが、他の投資案件でも同様の例が見られるという。

テクノロジー投資の分野では前代未聞の額のファンドだが、もちろん「先んずれば人を制する」ともいう。

Battery Venturesのジェネラル・パートナー、Roger LeeはTechCrunchのインタビューに対して、同社の最新の大型ファンドについて説明する中で、Vision Fundは「投資における優れたパートナーであり、あるカテゴリーのリーダーとなる可能性のある企業にとって(出資者として)重要な候補となる」と述べている。Battery VenturesはWagに当初から投資していた。

Leeはまた「SoftBankが投資しているジャンルには数多くのライバルが活動しており、それぞれ大きな価値を生んでいる。また〔出資者を探す場合も〕SoftBankが唯一のオプションというわけではない。上場を控えた後期ステージのスタートアップへの投資を専門としてきた投資家は多数いる」とも語っている。

SoftBankによれば、Vision Fundはすでに23億ドルの利益を上げているとしている。これは主としてNvidiaの株価上昇によるものだ。1000億ドルのファンド全体が目指すリターンはもちろんはるかに大きいものだろう。

画像:Tomohiro Ohsumi/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

アパレル業界特化の法人向けフリマサイト「SMASELL」運営が1億円を資金調達

アパレル業界特化型のBtoB向けフリマサイト「SMASELL(スマセル)」を運営するウィファブリックは2月7日、CROOZ VENTURESセプテーニ・ホールディングスKLab Venture PartnersSMBCベンチャーキャピタル池田泉州キャピタルを引受先とする、1億円の第三者割当増資を1月に実施していたことを明らかにした。セプテーニ・ホールディングスとは、業務での連携も検討しているという。

同社が運営するSMASELLは、法人間で在庫売買ができる繊維・ファッションのフリマサイトで、2017年7月にサービスを開始。アパレルで売れ残った不動在庫は従来、廃棄処分するか買取処分業者に安価で下取りしてもらうしかなかったが、在庫を処分したい人と買い取りたい人をマッチングすることによって、これを通常流通価格の30〜99%で売買できるようにした。

ウィファブリックは、2017年8月に行われたB Dash CampでSMASELLのピッチを行い、ファイナルラウンドに進出した。また同年9月のシードアクセラレーションプログラム、Incubate Camp 10thのピッチにも参加している。

リリースから6カ月となる現在、SMASELLには大手アパレル企業・商社・百貨店・リサイクルショップなどの企業が登録。2017年9月時点で150社だった登録社数は、350社超に拡大したそうだ。

ウィファブリックは、アパレル業界で10年以上の経験を持つ福屋剛氏が、2015年3月に設立。これまで、2016年11月にKLab Venture Partnersと日本ベンチャーキャピタルの運営するファンドから数千万円、2017年8月にリサイクルショップ運営のベクトル、KLab Venture Partners、レジェンド・パートナーズなどから約3000万円を資金調達している。

楽天「ラクマ」と「フリル」が統合——グループ他サービスとの連携でメルカリ追随

楽天本体が運営する「ラクマ」と、2016年9月、楽天に買収されたFablicが運営する「フリル」——楽天グループで並行して存在していた2つのフリマアプリが、2月26日にサービス統合されることになった。

統合は、現在のラクマから、フリルにユーザーとデータを集約してフリルへ移行する形で行われる。統合後のサービス名称は、「ラクマ」となる。新ラクマの運営はFablicが行う。

現ラクマは3月以降、段階的に機能制限が行われ、2019年中にサービスを終了する予定。現ラクマのユーザーには、現フリルに登録して楽天IDと連携することで、ラクマの出品物や評価データをフリル(新ラクマ)に反映できる「ラクラクお引っ越しツール」が提供されている。

Fablicは2012年4月の設立で、シードアクセラレーターOpen Network Lab 4期生としてフリルを開発、2012年7月からサービスをスタートした。2016年9月の楽天による買収を経て、楽天傘下へ参入。以降、楽天では、ファッションやコスメなどの取引を中心に、10代から20代の女性に強いフリルと、30代男女を中心とした層に利用されてきたラクマが共存して運営されてきた。

フリマアプリでは、フリルより後発のメルカリが昨年12月に世界累計ダウンロード数1億を突破。日本のダウンロード数6000万超、1日の出品数100万品以上と順調に推移し、事実上、独走状態となっている。

楽天とFablicでは、サービス統合により、経営資源を集中させて運営やマーケティングの効率化を図る。また、「楽天市場」をはじめとするグループの他サービスとの連携強化も行い、メルカリを追う構えだ。

電話予約や紙のカルテが不要に――美容師のカルテ管理アプリ「LiME」が7000万円調達

美容師のカルテ管理サービス「LiME(ライム)」を提供するLiMEは2月7日、「@cosme」などを運営するアイスタイルを引受先とした第三者割当増資を実施した。調達金額は7000万円だ。

LiMEのメンバーら。写真一番左が代表取締役の古木数馬氏

腕の良さそうな美容院をネットで探し、電話で予約する。その際、「ご希望の担当は?」と聞かれるが、初めてで誰がよいのか分からないので、「空いている人で」と言い返す。そんなやり取りがなくなるかもしれない。

美容院で扱う顧客カルテとは、顧客の髪質や過去の髪型を書き留めておく書類のことだ。通常、そのようなカルテは紙で保管されており、人気の美容師であればあるほどその数は膨大になる。

LiMEを使うことで、美容師はその顧客カルテをスマホアプリで管理することが可能になる。アプリなので顧客の検索も簡単で、スマホで写真をとってアップロードすれば過去の髪型もすぐに見返すことができる。また、LiMEは予約管理ツールとしても機能する。受付のPCから予約情報を入力すると、美容師がもつアプリに搭載されたカレンダーにもリアルタイムで予定が反映される。

LiMEは今回調達した資金を利用して、美容師に通う一般ユーザー向けに予約アプリ「STEKiNA」の開発にも着手する予定だという。STEKiNAはLiMEの予約台帳は一元管理される予定で、このアプリが完成すれば、ユーザーはわざわざ美容院に電話連絡をしなくても、アプリ上のカレンダーにある「空き」の部分に予定を入力するだけで予約できる。

また、このアプリはお気に入りの美容師を見つけるための手段にもなる。美容師と一括りに言っても、それぞれが得意・不得意の分野をもっている。ある人はカラーやショートヘアーが得意な一方で、ある人はパーマやロングヘアーが得意といった具合だ。STEKiNAは美容師専門のSNSのような要素もあり、美容師が過去に手がけた髪型や日々の仕事の様子などを投稿することができる。それに加え、ユーザーからのレビュー機能も追加される予定だ。

ユーザーはそれを見て、自分がなりたい髪型が得意そうな美容師を見つけ、そのままアプリでその美容師のスケジュールをチェックし、予約することも可能になるという。

LiMEはフリーミアムのマネタイズモデルを採用。カルテ管理、予定管理、売上レポートなどの基本機能は無料で提供し、美容師間でのカルテの共有・閲覧、より詳細な売上レポートは月額7800円で提供する。

「ユーザーがInstagramを通して(美容室ではなく)美容師を探すという例が増えている。従来のサービスのように事業体である美容室に光を当てるのではなく、個人である美容師に力を与えるようなサービスを作りたかった」と、LiME代表取締役の古木数馬氏は語る。

美容師から起業家へ

ちなみに、古木氏は現役の美容師だ。平日は起業家としてサービスを開発するが、週末には今も美容師としてハサミをもつ。スタートアップ業界とは無縁だったという古木氏が起業するきっかけになったのは、彼が所属していた美容院にたまたま通っていた、ツクルバ代表取締役の村上浩輝氏との出会いだった。

古木氏は美容師として働くうちに、美容業界が抱える課題を認識するようになったという。しかし、その具体的な解決方法を見出すことはできずにいた。「浩暉さんの担当として髪を切っているとき、どんなわけか、僕が胸に抱えていたモヤモヤを話すことがあった。それを聞いた浩暉さんは、その解決策の1つとして『起業』という手段があることを教えてくれた。その言葉を聞いたのは、それが生まれて初めてだった」と古木氏は語る。

起業を決意した古木氏は、これから手がけるビジネスについてのイメージを固め、ピッチイベントにも参加した。でも結果は惨敗で、「ボコボコにされてしまった」(古木氏)。ビジネスについての知識の無さを痛感し、そこから猛勉強を重ねたという。

そして2016年4月、LiMEをリリースした。サービスリリースから約1年半がたった今、LiMEに登録した美容師の数は9000人に拡大している。古木氏は、LiMEはまだ大々的なPR活動を行っておらず、この数のユーザーを集められたのは美容師間の口コミの効果が大きいと話す。美容師である古木氏は、美容院の現場で実際に働く人々の目線でこのサービスを作った。だからこそ美容師たちに受け入れられ、口コミが生まれたのかもしれない。

保険を“シェアする”時代が来るか、justInCaseがP2P型の「スマホ保険」をリリース

テクノロジーを活用した少額保険サービスを提供するjustInCaseは2月7日、既存投資家の500 Startups Japanメルペイ代表取締役の青柳直樹氏を引受先とした資金調達を実施したことを明らかにした。調達金額は3000万円だ。

justInCase代表取締役の畑加寿也氏。写真はTechCrunch Tokyo2017で開かれたスタートアップバトルのもの

TechCrunch Tokyo 2017のスタートアップバトルにも出場したjustInCaseは、テクノロジーを活用した少額保険サービスを手がけるスタートアップ。同社代表取締役の畑加寿也氏は保険数理の専門家(アクチュアリー)だ。

スタートアップバトルに出場した当時、justInCaseはサービスリリースに向けて準備をしている最中だった。しかし今回、同社はスマホの画面割れなどの修理費用を保障する「スマホ保険」を、事前登録者限定の“先行サービス”としてテストリリースすると発表した。

スマホ保険の特徴は大きく分けて3つある。1つ目は、何かと面倒くさいイメージがある保険を身近に感じさせるようなUI/UXだ。

スマホ保険に加入するユーザーは、もちろんスマホの所有者。だから、justInCaseはスマホから簡単に申し込めるようなUI/UXの設計にこだわり、最短90秒程度で加入申し込みができるようにした。

2つ目は、「P2P保険」という新しい保険の仕組みだ。これは、友人同士などの限られたメンバーでグループを作り、そのグループメンバーが互いに保険料を拠出しあうというもの。メンバーの1人に保険金支払いの事由が発生した場合には、グループ内にプールされた保険料から保険金が支払われる。つまり、出しあったお金をメンバーでシェアするのだ。

また、保険期間満了時に保険金請求の額が少なく、プールに残高がある場合には、その残高は保険金請求を行わなかったメンバーにキャッシュバックされるという仕組みもある。保険料はスマホの機種などによって変わるものの、月額最低200円から加入可能だ。

AIが算出する“安全スコア”によって更新保険料の割引額が決まることもスマホ保険の特徴の1つだと言える。ユーザーのスマホから取得した端末の“扱いやすさ”や活動状況などのデータを分析することで安全スコアを算出。それをもとに故障リスクを判断し、それが低いと診断されたメンバーには更新時に割引というかたちで還元するという仕組みだ。

P2P型保険がもつメリットは、グループに加入するもの同士の顔が見えることから保険金詐欺やモラルハザードが起こりにくいという点や、キャッシュバックの仕組みにより保険金請求を行なわなかったユーザーは結果的に安い保険料で保障を受けられるという点だ。海外ではすでに先行事例があり、LemonadoFriendsuranceなどがサービスを提供している。

しかし一方で、日本の金融庁はP2Pという保険の仕組みを認可していない。また、現時点のjustInCaseは少額短期保険業者としての登録も完了していない。そのため、同社はプレスリリースのなかで、今回のテストリリースでは「保険業法の適用除外規定」を適用すると説明している。

保険業法では、ある一定の条件を満たすサービスは保険業法の適用範囲外とするという規定が定められている。その条件の1つが、保険を提供する相手方(ユーザー)が1000人以下であるというものだ。

そのため、justInCaseは先行サービスを事前登録者限定の招待制とし、保険を提供するユーザーの人数を1000人未満に制限することでサービスを開始する。また、今回先行サービスとしてリリースされるスマホ保険も、少額短期保険業者の登録が完了した段階でいったん提供中止となる。その後、P2Pの仕組みを排除した“正式版”がリリースされる予定だ。

justInCase代表取締役の畑氏は、これから金融庁と「長丁場で議論を重ねていく」としているが、同社がP2P保険の仕組みを正式なサービスとして提供できるかどうかは、まだ分からない。ただ、通常の保険もP2P型保険も「相互扶助」の精神をもつという点では同じだ。個人的には、このような新しい仕組みが保険業界に新しい風を吹き込んでくれると面白いと思う。

iPhone 5cの16GBモデルを修理に出すと32GBに交換してもらえる?

eng-logo-2015アップルが正規サービスプロバイダに、修理に出されたiPhone 5c(16GB)の一部をiPhone 5c(32GB)に交換するよう通知したとの噂が報じられています。

アップル関連の情報サイトMacRumorsが入手したメモによると、全てのiPhone 5c(16GB)が32GBにアップグレードされるわけではないとのこと。特定の原因で故障したモデルのみが対象となるとされています。

iPhone 5cは2013年秋、iPhone 5sと同時期に発売された廉価モデル。カラフルなプラスティックの筐体を持つ、唯一の4インチiPhoneです。

2014年9月にはほとんどの国で16GBおよび32GBモデルの販売は中止された一方で、同じ年にヨーロッパ、オーストラリア、中国などで8GB版を販売スタート。そしてインドで2016年2月に販売終了になったのを最後に、完全に販売は終わっています。

iPhone 5cはiOS 11にも更新できず、ポケモンGOもアプリのアップデートにより起動しなくなりました。現在では、iOS 11以降は動かなくなった32bitアプリを楽しむ以外には用途が見出し難い「過去の存在」となっています。

iPhone 5cの16GB版を32GBモデルに交換する理由につき、アップルは説明していないとのこと。もっとも、修理に出したiPhone 6 PlusがiPhone 6s Plusに交換してもらえる可能性があるとの噂が出たときと同様に、「交換品の在庫がない」と推測できそうです。

前回の「iPhone 6 PlusからiPhone 6s Plus」よりもオトク感は薄くありますが、iPhone 5cは「32bitアプリを動かせる環境」としては数少ない選択肢です。愛着あるツールやゲームアプリがある人は、少し期待してもいいのかもしれません。

Engadget 日本版からの転載。

コインロッカー革命へ「ecbo cloak」がJRやメルカリとタッグ、1万店舗への導入と配送サービスの実現目指す

写真右がecbo代表取締役社長の工藤慎一氏、左が取締役の藁谷ケン氏

店舗の空きスペースを活用した荷物預かりシェアリングサービス「ecbo cloak(エクボ クローク)」を運営するecbo。同社は2月6日、事業会社とVC、複数の個人投資家から資金調達を実施したことを明らかにした。

今回ecboに出資したのはJR東日本、JR西日本イノベーションズ(JR西日本のCVC)、メルカリ、エウレカ創業者の赤坂優氏、元グルーポン・ジャパン取締役会長の廣田朋也氏、ラクスルやビズリーチの創業メンバーである河合聡一郎氏だ。調達金額は非公開。ただ関係者の話を総合すると数億円規模の調達ではないかとみられる。

ecboでは今回の調達を踏まえ、引き続き各地で荷物預かり拠点を増やしていくとともに、新たな配送サービスなど機能拡充を進め”荷物のない世界”の実現を目指す。 同社のプロダクトを踏まえると、JR東日本・西日本とタッグを組めた今回のラウンドは、今後のビジネス拡大に向けてかなり大きい意味を持つだろう。

主要地域の開拓、大手企業との提携を通じて導入店舗を拡大

ecboは2015年の創業。当初はオンデマンドの収納サービスを手がけていたが、代表取締役社長の工藤慎一氏が「渋谷駅で訪日外国人旅行客のコインロッカー探しを手伝ったこと」をきっかけに、コインロッカー不足の課題に直面。

店舗の遊休スペースを使った荷物預かりプラットフォームecbo cloakを開発し、2017年1月から渋谷や浅草エリアを中心に約30店舗からサービスを始めた。

3月にANRIや個人投資家の渡瀬ひろみ氏、千葉功太郎氏から数千万円を調達。それ以降は関西(京都と大阪)や福岡、北海道、沖縄など各地域への展開を推進。同時に他社との業務提携、インキュベーションプログラムの参加などを通じて、導入店舗の開拓に力を入れてきた。

「観光は日本全国が対象。荷物を預ける場所の問題も各地で起こっていて、それを解決したいというのは変わらない。コインロッカーの設置は簡単ではないし、企業が預かり事業をやるのもハードルが高い。ecbo cloakならサービスに登録さえすれば、その場所がすぐに荷物預かり所に変わる。その世界観を広めながら店舗の開拓を進めてきた」(工藤氏)

直近では三越TSUTAYAの一部店舗も加わったほか、アパマンショップの18店舗にて試験導入され、東京駅の手荷物預かり所でのサービス提供もテスト的に実施している。2月21日以降は東京、神奈川の一部郵便局でも実証実験(2月21日より5局、3月1日より合計31局で導入)を始めるなど、大手企業との協業も活発だ。

ecbo cloakは2018年1月にサービス開始1周年を迎えた。現在の導入店舗数は非公開だが、直近の取り組みや今回JRとタッグを組むことで、目標とする1万店舗に大きく近づくという

郵便局とは2018年7月頃を目処に荷物配送サービスの実証実験にも取り組む予定。これは2017年12月に工藤氏がピッチコンテスト「Launch Pad」にてプレゼンをしていた、「ecbo delivery」という新たな構想の一環だ。

僕はよくコインロッカーを使うけど、目的が済んだ後でいちいちロッカーまで荷物を取りに戻るのは正直面倒。せっかくなら預けた荷物をそのまま次の目的地まで運んでくれたら楽なのにと思うけれど、ecboが今後実現しようとしているのはまさにそんな世界観。

将来的には預けた荷物をボタン1つで配送手配することを目標に掲げ、実証実験ではまず郵便局からecbo加盟店への配送サービスとして始める予定だという。

鍵を握る「駅前の好立地」を開拓、今後は預けた物の配送サービスも

これまでは「利用できる店舗を1万店舗まで増やすこと」をひとつの目標として、導入店舗数の拡大に注力してきた。地方進出も進めてきたが、工藤氏によると現状では東京や大阪といった都市部の売り上げが高いそう。「まずはこのエリアをしっかりと押さえきること」が今後のポイントだという。

「店舗数はもちろん、いかに駅前の好立地を開拓できるかがユーザーの利便性に直結する。その点では(JR東日本、西日本とタッグを組めた)今回のディールはすごく大きい。ビジネス規模が広がるだけでなく、もし今後大手企業などが参入してきたとしても立地面では優位に立てる」(工藤氏)

JR東日本と共同で、東京駅の手荷物預かり所にてサービスを提供

JR西日本とは業務提携も締結。駅構内の拠点の利用や関西地区の預かり所の開拓などを進める。上述した配送サービスにも東日本、西日本双方と取り組んでいく方針だ。

また今回はメルカリからも出資を受けている。同社の組織構築力やシェアリングエコノミー型サービスの広げ方などの知見をサービス拡大に活用。事業提携も検討する。

ecboでは調達した資金をもとに人材採用やプロモーションに力を入れ、まずは「この領域で圧倒的No.1の存在を目指して」全国1万店舗での導入やアプリ開発などに着手。その先では荷物の“保管“に“配送“の要素を加えた、新たなプラットフォームの実現に取り組んでいく。

「去年1年間は主に訪日外国人向けの荷物預かりサービスだった。ただ自分たちがやりたいのは、単なるマッチングサービスを超えたもの。今後はテクノロジーを活用して『ボタン一つで荷物を保管し、運ぶ』ことができる革新的なプラットフォームを目指していく。今回のディールはその目標に近づくものだ」(工藤氏)

ジャパンネット銀行が2種ブロックチェーンの連携に挑戦、mijinとHyperledger Fabricで実証実験

ジャパンネット銀行は、2018年2月6日から2種類のプライベートブロックチェーン技術を連携させた業務システムの実証実験(PoC)を開始した。2種類のブロックチェーン技術のひとつは日本のスタートアップ企業テックビューロが開発するmijin。もうひとつは大手ITベンダー(後述)が推進するHyperledger Fabricである。この2種類のブロックチェーンの連携を実証するのはこれが初めてである。検証の対象となる業務は、社間の契約書管理のシステム化である(図を参照)。実証実験の期間は3月30日まで。

「実証実験」と聞いても、その意味づけをイメージしにくいと思われるかもしれない。今回の実証実験について、ジャパンネット銀行 執行役員 IT本部副本部長の坪川雅一氏は次のように話す。「オモチャを作っても検証にならない。今回の実証実験では実用化へ向けて課題を洗い出すことを目指す。個人的な意見だが、将来は契約管理のシステムだけでなく、見積もり、契約、発注、検収、請求・支払いまで一連の流れを効率化したい。商取引の透明性を劇的に高めることができる」。実験のための実験ではなく、現実のシステム開発に向けたステップとしての実証実験という位置づけだ。

同社によれば、業務効率化やペーパーレス化を進める上で、契約書をデータとして扱うことは以前から課題だった。そこにテックビューロから「ブロックチェーン製品を試してみて欲しい」との声がかかり、取引先として契約書のやりとりが多い富士通も一緒になって今回の実証実験を進める運びとなったとのことだ。

Hyperledger Fabricとmijinという対照的な2製品を連携

ブロックチェーンとは、利害を共にしない複数の当事者(企業など)が、信頼できる第三者を用いずに、信頼できる台帳を共有できる技術だ。今回の実証実験では、図にあるようにジャパンネット銀行と富士通という2者が契約書を交換する手続きをペーパーレス化、デジタル化することを想定している。これが発展すれば、複数の企業間の手続きの多くをデジタル化でき、効率化が図れる。

なぜ2種類のブロックチェーン技術を使うのだろうか。同社は大きく2つの理由を挙げている。1番目の理由は、契約先企業が使っているブロックチェーン技術に合わせるには複数のブロックチェーンを活用できた方がよいという考え方だ。2番目の理由は、複数のブロックチェーン技術に共通の情報を記録することで、万一障害が発生した場合にもバックアップの役割を果たすと期待できることだ。ブロックチェーン技術は可用性が高く障害が発生しにくいと期待されているが、実際のシステム運用ではなんらかの落とし穴が見つかるかもしれない。それを洗い出すことも同社は実証実験の目的としている。

実証実験で構築するシステムの内容は、まず契約書をデジタル化して、そのハッシュ値をブロックチェーンに記録し、「誰がいつ作成した契約書なのか」を改ざんできないようにする。従来はこのような処理には認定を受けたタイムスタンプサーバーを使うやり方があったが、ブロックチェーン活用を使うことで、より低コストに実現できると期待されている。

今回の実証実験は「絶妙」に見える部分がある。連携させる2製品、Hyperledger Fabricとmijinがきわめて対照的だからだ。大企業が推す製品とスタートアップが推進する製品という点でも性格が違うが、それだけではない。

Hyperledger Fabricは、IBMが開発したソフトウェアをLinux FoundationのHyperledgerプロジェクトに寄贈したものに基づき開発を進めている。富士通、日立、NTTデータ、アクセンチュアなどIT大手を巻き込んで普及推進活動を展開しており、世界中で多くの取り組みが進行中だ。その作りはブロックチェーンのビルディングブロックとも言うべきもので、必要な処理はGo言語やJava言語により開発するスマートコントラクト(Fabric用語では「チェーンコード」と呼ぶ)として開発することが基本となる。作り込みにより幅広い要求に対応できる可能性を秘めている半面で、システム構築の手間は大きくなる可能性がある。Hyperledger Fabricは認証局によりノードを管理する作りや、ファイナリティ(取引の確定)を重視する設計が特徴である。性能面はコンセンサスレイヤーをどう作り込むかで変わるが、Fabric v1.0では毎秒1000取引以上の性能を出せるとしている。

一方、mijinはテックビューロが開発、推進するプライベートブロックチェーン技術で、仮想通貨NEMの開発者らが参加していることで知られている。NEMと共通のAPIを備え、NEMと同じくマルチシグ、マルチアセットに対応する。最近ではmijinとNEM(つまりプライベートブロックチェーンとパブリックブロックチェーン)を連携させたシステム構成も視野に入っているもようだ。

mijinの特筆すべき点は早い段階で処理性能が高いことを実証していることだ。プライベート環境向けにチューニングすることにより毎秒4000取引以上の性能を出せることを、2016年12月時点で実証して発表している(プレスリリース)。mijinはブロックチェーンを操作するAPIを提供し、APIの機能範囲内であれば短期間でシステムを構築できるといわれている。半面、APIの範囲にない部分は新たに作り込む必要が出てくるともいえる。

このように対照的な2製品だが、特に意図して2製品を選んだという訳ではなく、たまたまこの組み合わせになったらしい。「複数のブロックチェーンの連携」は地味に聞こえるしれないが、実は最先端のニーズを取り入れた取り組みといえる。パブリックブロックチェーン上の仮想通貨の分野では、最新の話題として複数のブロックチェーンの間で価値を交換する「クロスチェーン技術」の試行が進んでいる。また、パブリックブロックチェーンとプライベートブロックチェーンを連動させたシステムの取り組みの機運もある。プライベートブロックチェーン2製品を連携させる今回の取り組みからは、はたしてどのような知見が得られるのか。

個人がスキルを売り買いする「ココナラ」にPRO認定制度、ビジネスユース強化に向けて舵取り

個人の働き方が多様になるにつれ、近年クラウドソーシングやスキルシェア系のCtoCサービスが盛り上がっている。最近TechCrunch Japanで紹介したところでは、Zehitomoなど「応募課金モデル」と呼ばれる新しいマネタイズモデルを採用したサービスも生まれている。

“スキルのフリマ”というキャッチフレーズでサービスを展開するココナラも、スキルをもつ個人の働き方を多様化させるサービスの1つだ。

ココナラは、個人が自分の知識やスキルを販売できるCtoC型のECサービスサイト。同サービスはもともと500円均一でスキルを販売できるサービスとして始まったが、現在はランク制を導入し、そのランクに応じて定められた上限価格の範囲内(最高で20万円)でユーザーが価格を決めるというシステムに変更している。一方、ココナラは手数料としてその販売価格の25%を受け取る。

ココナラでは、ロゴやアイコンの作成、Webページの制作などクラウドソーシングでもおなじみのスキルが売り買いされているほか、ユニークなものとしては”占い”なんていうのもある。以前は占いサービスが売上高の大半をしめるという時期もあったそうだが、現在はデザイン系のスキル販売が急激に増えているという。

ココナラ広報担当によれば、同サービスの登録ユーザーは現在70万人で、出店されたスキルの数は17万件だという。累積の成約件数は150万件だ。

また、同社は2016年8月より法律相談というスキルの販売に特化した「ココナラ法律相談」も提供している。同サービスの弁護士登録数やサービス売上高は非公開ということだが、2018年1月時点で売上高は前年同月比で17倍に成長。有料広告掲載弁護士1名あたりへの問い合わせ数も月あたり10件程度となっているという。

そんなココナラは2月5日、おもにビジネス利用などで高いスキルを求めるユーザーに対応した「PRO認定制度」をリリースすると発表した。同サービスは2月下旬より開始する。

PRO認定制度とは、すでにサービス提供の実績が豊富にあり、かつユーザーからのレビュー評価も高い出品者に対してココナラが“お墨付き”を与える制度だ。PRO認定を受けた出品者のページには「PRO」と書かれたラベルが表示され、高品質を求めるビジネスユースのユーザーから注目されやすくなる。同社はPRO認定者に限定した検索機能も設置する予定のため、出品サービスの露出度アップも期待できる。

これに似たようなシステムとして、クラウドソーシングの「ランサーズ」には認定ランサー制度があるし、「クラウドワークス」にもプロクラウドワーカー制度がある。価格も範囲内でユーザーが自由に設定でき、ビジネスユースの強化を狙ったPRO認定制度も始めるとなると、ココナラと他のクラウドソーシング系サービスとの違いが薄くなり寂しい気もする。でも、それだけビジネスの場でもクラウドソーシングを利用する例が増えているということなのだろう。

ちなみに、ココナラは2017年10月に発表したリリースのなかで、「過去3決算期の収益(売上高)に基づく成長率が1252.39%を記録した」と発表している。スタートアップの成長が単純計算できる訳でもないが、単純計算で言うと1年あたりの年間収益成長率は約400%ということだ。前回TechCrunch Japanが取材を行った2016年7月時点における月次の流通高は8000万円だった。ココナラが受け取る手数料はスキル販売価格の25%なので、手数料収入は単月で2000万円。もし、これが過去1年間で4倍になっていたとすれば、2017年7月ごろの単月収益は8000万円となるのだろうか。

ココナラは2012年1月の創業。今回のPRO制度導入に加え、同社は2月中旬よりビデオチャット機能(ベータ版)の導入も発表している。これまで出品者と購入者のやりとりはテキストチャットに限られていたが、これにより英会話や楽器の個人レッスンなど、対面で提供するスキルの販売が可能になる。

バーコードを“ピコ”って即現金化の「PICOL」が正式リリース、ゲームに加えて書籍やマンガも対象に

ゲームのバーコードをスマホでピコる(読み取る)だけで、即座に金額の査定から買取依頼までできる「PICOL(ピコル)」。TechCrunch Japnanでも1月4日に当日限定のテスト版がリリースとなったタイミングで紹介した。

そのPICOLが2月5日、ゲーム機本体やソフトに加えてマンガや書籍にも対応する形で正式に公開された。

2月5日からマンガと書籍、さらに13日からはDVDとCD、19日からはフィギュアにも対応する予定。今回から最低取引金額(換金の対象となる金額)も3000円から1500円に引き下げ、より多くのユーザーが買取を依頼できるサービスを目指していく。

換金するユーザーは、10個以上のゲームを“ピコ”ッた

「(買取までのスピードが早い反面)即時買取サービスは査定金額に対して、一定数批判的なコメントがある印象だったがそれがほぼなかった。実際にどのような状態の商品が送られてくるのかも不安要素だったものの、想像以上に質が高く感触はいい」——PICOLを運営するウリドキネット代表取締役CEOの木暮康雄氏は、テスト版の反響についてこう話す。

実際に換金しているユーザーは平均で11個のアイテムをピコっていて、平均金額は10404円(実際にはゲーム機本体も対象のため、アイテム数などはかなりバラつきがあるそう)。予定していた買取上限金額300万円も超え、途中で引き上げた。

前回取材した際にも木暮氏は「ゲーム感覚でストレスなく複数のゲームをピコれるような設計を意識している」という話をしていたが、その点は今回の反応を見る限りでは当たっているようだ。バーコードを用いることで商品を正確に把握できることに加え、ユーザーによる状態の申告(3段階から選択)も適切なため手応えを得ているそう。

今後は機能面の改善に加えて査定価格のチューニングを進めることで、よりユーザーと買取業者双方に還元していきたいという(PICOLではユーザーから買い取った商品をリユース業者に販売する)。

まずはマンガと書籍に対応、今後はDVDやフィギュアも

前回リリース時の反響として、特に多かったのが「マンガもピコらせて欲しい」という声だった。

そこで冒頭でも触れたとおり、PICOLを再度リリースするにあたって対象商材の拡大と、最低取引金額の引き下げを実施する。1日の買取上限金額は300万円のままで、今回は1日限定ではなく継続的に提供していく予定だ。

「即現金化ということ以上に、ユーザーが最初の段階で買取価格を把握できることがPICOLの価値だと考えている。従来のフローでは無担保の状態で、まず相手に物を渡さなければいけなかった。PICOLでは商品を渡す前に査定金額がわかり、ユーザーはそれを踏まえて買取を依頼するかどうか選択できる。手軽に早く現金化できるのはもちろん、買取の不安をなくすことで多くの人に使ってもらえるサービスにしていきたい」(木暮氏)