ID確認ソフトウェアのBerbixが9億円調達、新型コロナで需要増

Airbnb Trust and Safetyの前メンバーが創業したID確認のスタートアップであるBerbix(バービックス)は8月27日、MayfieldがリードしたシリーズAラウンドで900万ドル(約9億円)を調達したと発表した。Initialized Capital、 Y Combinator、Fika Venturesといった既存投資家も本ラウンドに参加した。

2018年創業のBerbixは企業のユーザーID確認をサポートしている。特に大麻産業を相手としているが、もちろんこの産業だけに限定しているわけではない。オンラインサービスがIDをスキャンして認証できるようにするBerbixのサービス統合はいくつかのラインズ・オブ・コードで済む。そうした点においては、たとえばStripe(ストライプ)のような決済サービスと大した違いはない。価格設定は月99ドル(約1万円)からで、100件のIDチェックができる。デベロッパーはスタンダードのIDチェック(基本件数を超えるとチェック1件あたり0.99ドル=約100円)、追加でセルフィーやライブネスチェックを選べる。ライブネスチェックは写真を表示してシステムを騙そうとしていないことを確かめるためにユーザーに感情を表すよう、あるいは頭を動かすように尋ねるものだ。

新型コロナウイルスに感染拡大とID確認はあまり関係がないと思うかもしれないが、Berbixのソリューションに対する需要は実際には増大している。というのも、対面でのID確認が難しいものになっているからだ。BerbixのCEOで共同創業者のSteve Kirkham(スティーブ・カークハム)氏は、同社が1年前まで1カ月でこなしていたID確認の件数を今では1日で処理していると話す。

「従来型のIDチェックが対面で行えなくなり、組織は無数のチェックを行うためにオンラインに移行せざるをえなくなった」と声明文で述べた。「1つの例が貧困から脱却する家族の取り組みに資金を提供する非営利団体のFamily Independence Initiative(ファミリー・インディペンス・イニシアチブ)だ。当社のソフトウェアで同団体は詐欺目的の申し込みを排除し、新型コロナで経済的影響を被っている家族にフォーカスできている」

もう1人の共同創業者Eric Levine(エリック・レヴィン)氏は、同社が新たに調達した資金をチームの拡充、特にプロダクトとセールス部門の人員の増加に使うと話した。同氏はまた、ローカリゼーションとサービスのテック基盤に重点的に投資しているとも述べた。加えて、新たなタイプの詐欺を検知する技術にも投資している。結局のところ、詐欺がなくなることはない。

画像クレジット: Fernando Trabanco Fotografía / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

糖尿病コントロールアプリのUndermyforkが4200万円調達、米国にも進出

糖尿病を患っている人が「time-in-range(血糖トレンド)」を改善したり、症状をうまくコントロールしたりするのをサポートする糖尿病トラッキングアプリのUndermyfork(アンダーマイフォーク)がシードラウンドで40万ドル(約4200万円)を調達した。

AltaIR Capital,、AltaClub、Runa Capitalが出資した。Undermyforkの共同創業者Mike Ushakov(マイク・ウシャコフ)氏の前の会社Metabar(メタバー)も数年前にYandexに買収される前(未訳記事)に、Runaの出資を受けている。

Undermyforkのアプリは食事の写真と、継続して作動するブドウ糖モニター(CGM)デバイスから得られるブドウ糖データを合体させる。目的は、ユーザーが食事と血糖値の変化を関連付けられるようにすることだ。具体的には、血糖トレンドにフォーカスしている。血糖トレンドとは、経過中にどれくらいの時間で血糖レベルを理想的な範囲に入れるかを示すもので、近代の糖尿病管理においては最も重要なメトリックと考えられている。

「アプリで、糖尿病を抱える人がライフスタイルや食習慣を見直し、血糖トレンドを改善するのをサポートしたい」とウシャコフ氏はいう。「Undermyforkはかなりシンプルなツールだ。食事の写真と、ブドウ糖データにともなうインスリンデータと結びつけ、どの食事が安全でない血糖レンジにつながっているのかをユーザーがはっきりと認識できるようにする」。

「血糖値データをチェックできるだけでなく、データを解釈して生活を改善できる有用な結論に行き着くように糖尿病の人をサポートする。血糖のためのGoogle分析ともいえる」。

より広汎にいうと、Undermyforkは継続的なブドウ糖モニターデバイスが、数年のうちに従来使われてきた指先を針で刺し血液を採取しての測定器に置き換わるとみている。ブドウ糖モニターのデフォルトアプリという地位を確立するというのが戦略だが、達成するにはブドウ糖モニターが収集するデータへのアクセスを確保する必要がある。

「Undermyforkはブドウ糖モニターのデータに頼っている。なので、そうしたデータを提供するパートナーを必要とする」とウシャコフ氏は説明した。「今月、ラウンドのクローズと同時に、米国のブドウ糖モニター製造をリードしているDexcom(デクスコム)と提携した。当社は現在、DexcomのレトロスペクティブAPIにアクセスできる。ユーザーがDexcomのクラウドからUndermyforkアプリに直接データをストリームできる」。

この提携はまた、Undermyforkの米国での事業展開にもつながった。特筆すべきは、欧州を拠点とするチームがほぼリモートであることだ。ウシャコフ氏はアムステルダムにいて、共同創業者の Eugene Molodkin(ユージーン・モロドキン)氏はサンクトペテルブルグ、他のチームメンバーはドイツ、オランダ、ロシア、スロバニア、イスラエルに居住している。

カテゴリー:ヘルステック

タグ:資金調達

画像クレジット:Undermyfork

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(翻訳:Mizoguchi

「空飛ぶクルマ」開発のSkyDriveが39億円を調達、世界初披露の有人機「SD-03」を公開飛行試験に成功

「空飛ぶクルマ」開発のSkyDriveが39億円を調達、世界初披露の有人機「SD-03」を公開飛行試験

「空飛ぶクルマ」(電動垂直離着陸型無操縦者航空機)と、重量物に特化した産業ドローン「カーゴドローン」を開発するSkyDrive(スカイドライブ)は8月28日、第三者割当増資によりシリーズBラウンドにおいて39億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は日本政策投資銀行をはじめ10社。

また同日、SkyDriveの開発拠点である、日本最大級の1万㎡の屋内飛行試験場を備える豊田テストフィールドにおいて公開有人飛行試験を8月25日に実施。成功のうちに完了したと明らかにした(本稿掲載の飛行写真は8月初旬に撮影したもの)。

「空飛ぶクルマ」開発のSkyDriveが39億円を調達、世界初披露の有人機「SD-03」を公開飛行試験

「空飛ぶクルマ」開発のSkyDriveが39億円を調達、世界初披露の有人機「SD-03」を公開飛行試験

2018年7月設立のSkyDriveは、空飛ぶクルマの実用化、未来のモビリティ社会への貢献を目指し、航空機・ドローン・自動車エンジニアを中心に「空飛ぶクルマ」、「カーゴドローン」を開発。空飛ぶクルマは、2023年度のサービス開始を予定。カーゴドローンは販売中。

有人飛行試験は夕刻に行われ、飛行時間は約4分間だったという。機体は1人乗りで、パイロットが操縦するものの、コンピュータ制御のアシストにより、飛行を安定させていた。また、バックヤードでは飛行状態をモニタリングし、安全を常時確認していた。

「空飛ぶクルマ」開発のSkyDriveが39億円を調達、世界初披露の有人機「SD-03」を公開飛行試験

同社の目標は、およそ高さ2m、幅4m、長さ4m、世界最小の空飛ぶクルマモデルの開発。駆動方式は電動モータでロータを駆動する方式。ローターは、4ヵ所に配置されており、1か所あたり、2つのロータが回転し、駆動力を生み出すという。合計8個のモーターを採用し、電動モーター・ローター系の一部に異常が発生しても、バックアップの役割を果たすため、安全に飛行を続けることが可能という。

飛ぶクルマは、正式名称を「電動垂直離着陸型無操縦者航空機」といい、電動化・完全自律の自動操縦・垂直離着陸が大きな特徴となっている。モビリティ分野の新たな動きとして、世界各国で空飛ぶクルマの開発が進んでおり、日本においても2018年から「空の移動革命に向けた官民協議会」が開催。都市部でのタクシーサービス、離島や山間部の新たな移動手段、災害時の救急搬送などにつながるものとして期待されている(小型無人機の有人地帯での目視外飛行実現に向けた制度設計の基本方針)。

今後は、2023年の事業開始、2030年の本格普及に向けたロードマップ(経済産業省・国土交通省)が制定されている。

「空飛ぶクルマ」開発のSkyDriveが39億円を調達、世界初披露の有人機「SD-03」を公開飛行試験に成功

「空飛ぶクルマ」開発のSkyDriveが39億円を調達、世界初披露の有人機「SD-03」を公開飛行試験

「空飛ぶクルマ」(電動垂直離着陸型無操縦者航空機)と、重量物に特化した産業ドローン「カーゴドローン」を開発するSkyDrive(スカイドライブ)は8月28日、第三者割当増資によりシリーズBラウンドにおいて39億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は日本政策投資銀行をはじめ10社。

また同日、SkyDriveの開発拠点である、日本最大級の1万㎡の屋内飛行試験場を備える豊田テストフィールドにおいて公開有人飛行試験を8月25日に実施。成功のうちに完了したと明らかにした(本稿掲載の飛行写真は8月初旬に撮影したもの)。

「空飛ぶクルマ」開発のSkyDriveが39億円を調達、世界初披露の有人機「SD-03」を公開飛行試験

「空飛ぶクルマ」開発のSkyDriveが39億円を調達、世界初披露の有人機「SD-03」を公開飛行試験

2018年7月設立のSkyDriveは、空飛ぶクルマの実用化、未来のモビリティ社会への貢献を目指し、航空機・ドローン・自動車エンジニアを中心に「空飛ぶクルマ」、「カーゴドローン」を開発。空飛ぶクルマは、2023年度のサービス開始を予定。カーゴドローンは販売中。

有人飛行試験は夕刻に行われ、飛行時間は約4分間だったという。機体は1人乗りで、パイロットが操縦するものの、コンピュータ制御のアシストにより、飛行を安定させていた。また、バックヤードでは飛行状態をモニタリングし、安全を常時確認していた。

「空飛ぶクルマ」開発のSkyDriveが39億円を調達、世界初披露の有人機「SD-03」を公開飛行試験

同社の目標は、およそ高さ2m、幅4m、長さ4m、世界最小の空飛ぶクルマモデルの開発。駆動方式は電動モータでロータを駆動する方式。ローターは、4ヵ所に配置されており、1か所あたり、2つのロータが回転し、駆動力を生み出すという。合計8個のモーターを採用し、電動モーター・ローター系の一部に異常が発生しても、バックアップの役割を果たすため、安全に飛行を続けることが可能という。

飛ぶクルマは、正式名称を「電動垂直離着陸型無操縦者航空機」といい、電動化・完全自律の自動操縦・垂直離着陸が大きな特徴となっている。モビリティ分野の新たな動きとして、世界各国で空飛ぶクルマの開発が進んでおり、日本においても2018年から「空の移動革命に向けた官民協議会」が開催。都市部でのタクシーサービス、離島や山間部の新たな移動手段、災害時の救急搬送などにつながるものとして期待されている(小型無人機の有人地帯での目視外飛行実現に向けた制度設計の基本方針)。

今後は、2023年の事業開始、2030年の本格普及に向けたロードマップ(経済産業省・国土交通省)が制定されている。

決済サービス開発のFinixがシリーズBに約32億円を追加調達、他社の決済処理インフラ立ち上げを支援

決済関連サービスを他社に提供するスタートアップであるFinixは、シリーズBの資金調達ラウンドをLightspeed Venture PartnersAmerican Express Venturesが主導する3000万ドル(約32億円)の投資で延長したと発表した。

このフィンテック系スタートアップはこれで9600万ドル(約10億2200万円)以上のベンチャーキャピタルからの資金調達が完了した。CEO兼共同創業者のRichie Serna(リッチー・セルナ)氏によると、そのうち9000万ドル(約9億6000万円)は昨年だけで調達したという。

FinixはTechCrunchのインタビューで、収益、収益成長、新規評価額、現在の収益性、顧客数などの開示を拒否した。セルナ氏はFinixの取引量が2019年第2四半期から2020年第2四半期にかけて4倍以上に増加したことを顧客の成長のための成果だと喜んで発表したが、データの変化については詳細を明らかにしなかった。

Finixは、他のスタートアップ企業が自社で決済処理インフラシステムを立ち上げるのを支援している。処理手数料やトランザクション手数料を徴収するStripeのような企業が提供するサービスを自社の支払いサービス取り込んでいる企業も多い。Finixも同様で、企業がStripeのようなサービスや決済インフラを社内に導入できるように支援している。これにより、サードパーティの決済プロバイダーが取引から切り離していた小口決済を、Finixが請求するコストを差し引いて企業が手に入れられるという考えだ。

Finixのサービスは企業内のインフラとして機能するものだが、Stripeのような企業はプラグアンドプレイシステムにも似ている。Finixの顧客の内訳を知ることは興味深く、その情報があれば現在のビジネスがどれだけ健全であるかを知ることができるだろう。同社は、顧客にソフトウェア料金を請求し、支払い処理数に応じて変動制料金で請求することで収益を上げている。取引量ごとに収益を上げているわけではないが、もちろん取引量の多い顧客からは利益を得ている。

Finixがターゲットしていた顧客は「年間5000万ドル(約53億3000万円)の取引量のある企業」だった。セルナ氏は、現在の焦点が変わったかどうかについてはコメントを控えた。同社は最近、新しい引受モデル「Finix Flex」を立ち上げた。これは、古いシステムを利用している企業が決済プロバイダー間の切り替えコストを削減できるよう支援することを目的としている。

「私たちは基本的に、企業の高度成長や安定成長の観点から、どのような段階にある企業のための決済プロバイダーになりたいと考えています」とセルナ氏は述べている。新たに調達した資金は、2021年半ばまでにFinixのチームを85人に倍増させるために使われる予定だ。

フィンテックの世界は、現在も進行中の新型コロナウイルスの感染蔓延の影響を少なからず受けた(未訳記事)。Squareのように小規模な個人商店の資金調達を支援している新興企業は、人々が自宅にとどまり、一部の企業が閉鎖されたため、セクターごとに取引量が減少した可能性がある。

Finixはその反対側に位置しており、オンライン通販やアプリでの支払いを可能にしている。このようなeコマースの空前のブーム(未訳記事)が、Finixのようなビジネスが成長している理由かもしれない。別のデータポイントとしてセルナ氏は、その総顧客数は毎月成長していると述べている。

セルナ氏は、2019年第2四半期から2020年第2四半期までのFinixの取引量倍率が4.5倍であることに改めて注目し「新型コロナウイルスの感染蔓延は同社のビジネスに『多くの課題』を突きつけていない」と語る。

今のところFinixの延長ラウンド(未訳記事)は、強さと生き残りの物語であるようだ。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(翻訳:TechCrunch Japan)

AIが専門医並みの精度で不整脈診断を支援、カルディオインテリジェンスが資金調達

写真左から:カルディオインテリジェンス代表取締役社長CEO田村雄一氏、取締役CTO高田智広氏、取締役COO波多野薫氏

がんの画像診断など、AI、ディープラーニングの医療への応用が進んでいる。ヘルステックスタートアップのカルディオインテリジェンスが手がけるのは、心電図をもとに、専門医並みの精度で心臓病の予測・発見を行うAI自動診断支援システムだ。

8月27日、カルディオインテリジェンスはANRIが運営する4号ファンドから、シードラウンドで3500万円の資金調達を実施したことを発表した。

発作時でなくても不整脈を予測できるAI

カルディオインテリジェンスが開発した心電図のAI自動診断支援システムは、ディープラーニングを活用し、不整脈の一種である心房細動を専門医並みの精度で予測・発見するシステムだ。

心房細動は不整脈の中でも特に患者数が多く、日本の患者数は2020年現在、80万〜100万人と推定されている。しかも心房細動は放っておけば、後遺症を残すことが多い脳梗塞の原因ともなる。心房細動を早期に見つけることができれば、脳塞栓の予防薬の投与などにより疾患の進行を抑えることができるのだが、心臓の専門医でなければ診断を付けることは非常に難しいとされる。

また、患者も常に不整脈の発作が起きているわけではなく、動悸(どうき)で困っているときと困っていないときがある。より正しい診断のためにはホルター心電計を身に付けて、24時間生活しながら心電図を記録する方法があるが、専門医であっても24時間の測定では、必ずしも異常を見つけられないことも多いという。

カルディオインテリジェンスが2019年10月の創業後、第1弾プロダクトとして開発したのは、クリニックにおけるパッチ型心電計やホルター心電計などの長時間心電図測定結果と組み合わせることで、従来は見つけられなかった心房細動を特定する、心房細動診断AIだ。

実は従来から、ホルター心電計用のAI自動診断技術は国内外で研究・開発されている。特に近年、欧米を中心にAIの診断制度が向上、技師や医師の作業効率化に貢献している。カルディオインテリジェンスのAIは精度の高さに加えて「説明可能なAI」をプロダクトに搭載している点が特徴だ。

ディープラーニングには、AIの予測結果がどのようにもたらされたか、その根拠が分からず、モデルがブラックボックス化するという課題がある。診断に当たっては、医師自身が納得してデータを使う必要があるが、従来システムでは、医師が患者に何を根拠に診断を下したかを説明できなかった。カルディオインテリジェンスのAIは、高精度で心房細動を検出するだけでなく、診断根拠を可視化。非専門医であっても、診断根拠になる特徴を知っていれば説明ができ、確実な診断につなげることを可能とした。

カルディオインテリジェンスでは、第1弾プロダクトの臨床現場での実用化にめどがついたとして、早期事業化を進めるために今回の資金調達を実施した。同社は、6月に第二種医療機器製造販売業、医療機器製造業を取得。8月21日には「隠れ心房細動人工知能の開発研究」において日本医療研究開発機構(AMED)が公募した「医療機器開発推進研究事業」に採択され、2022年度までの間でAI医療機器の実用化開発と医師主導の知見を実施する予定だ。

遠隔医療や創薬、スマートデバイス連携などへの応用目指す

カルディオインテリジェンス代表取締役の田村雄一氏は、循環器内科を専門とする医師でもあり、心臓難病治療に詳しい人物だ。

「心房細動は頻度が高い不整脈だが、半数しか診断がつかない。間違いがあっては困るので、非専門医はなかなか診断したがらないが、専門医へのアクセスは限られている」という田村氏は、「心房細動が早期に、専門医以外のいろいろなチャネルで発見可能になれば、専門医は治療により多く関われて、忙殺されずに治療に集中することができる」と同社のプロダクト開発の動機について語る。

近い将来には「専門医でも見つけられない、非発作時の心電図波形から心房細動の存在を検知するAIの開発も目指す」という田村氏。心電図は今のところ、いろいろな環境で連続的に、簡単に取れる状況ではないが、スマートデバイスの進化でこれが実現すれば、AI×心電図がさまざまな場面で社会を変える力を持つだろう、と話している。

例えば、医療過疎地での非専門医による高度な診断や、創薬の現場での活用、自動車運転中の発作を検知して自動ブレーキを作動させるといったケースへの対応が想定できると田村氏はいう。今後Apple Watchのようなウェアラブルデバイスとの連携が拡大できれば「さらなる技術の広がりが期待できる」と田村氏は述べている。

カテゴリー:ヘルステック

タグ:カルディオインテリジェンス 資金調達

スプレッドシートからビジュアルな「ストーリー」を生み出すアイスランド拠点のGridが12.8億円調達

スプレッドシートからビジュアルな「ストーリー」を生み出す、アイスランド生まれのSaaSスタートアップのGrid(グリッド)が、シリーズAラウンドで1200万ドル(約12億8000万円)を調達した。

このラウンドはNew Enterprise Associates(NEA)が主導し、既存の投資家のBlueYard Capital、Slack Fund、Acequia Capital、その他の匿名の「戦略的」パートナーたちが参加した。注入された資本は、同社がさらなる製品開発を行い、市場に投入するために使われる予定だ。

Gridは「サービスとしてのデータ」領域の先駆けとして、DataMarket(データマーケット)の創業にも関わったHjalmar Gislason(ヤルマル・ギスラソン)氏によって2018年後半に設立された。同社のミッションはスプレッドシートを起点として、ナレッジワーカーがデータと対話する方法を変えることだ。

このSaaSスタートアップは、米国時間8月26日にベータ版を公開したが、利用者はこのサービスを利用することでスプレッドシートのワークブックをビジュアルで対話的なウェブサイトに変換することができる。このことによってスプレッドシートの中のデータが、さまざまなユーザーに対して、より適切な関わりを持つことができるようになる。

「Gridは、スプレッドシートを日常的に使うユーザーが、簡単にビジュアルで対話的なストーリーを既存のスプレッドシート上に構築して、ウェブを用いてそれらを安全に共有する方法を提供します」とギスラソン氏は説明する。

「ほとんどのデータツールは、最も簡単に入手できる『セルフサービス』ツールでさえ、パワーユーザーツールです。つまり、それらの使用方法を学ぶには時間と着実な努力が必要とされます。それをできた人は、分析、データ主導の意思決定、データストーリー化の中で、組織にとって頼りになる人になります。一方、多くの人たちが、日常業務で作業を行うために使用しているツールは、スプレッドシートなのです」。

ギスラソン氏は、スタートアップがまず焦点を合わせるべき課題は、誰かがデータをまとめたり、スプレッドシート上でモデルを作成したり、それを他の誰かと共有しなければならない瞬間だと捉えている。「現在でも、最も一般的な方法は、Excelファイルをメールに添付することです。その時点で、スプレッドシートの作成者は、それがどのように読まれ、配布されるのかについてのコントロールを諦めてしまっています」と彼はいう。

さらに、そのコンテンツはモバイルデバイスで閲覧することは難しく、全員が最新バージョンを持っているかどうかを保証することも困難だ。クラウドでスプレッドシートを共有すれば、少しはましになるが、それでもまだ最適とは言えない。

これを克服するために、多くのひとはスプレッドシートからチャートやテーブルをコピーしてPowerPointやPDFに貼り付けて、それらを静的な文書として配布する。これは、コントロールの問題をある程度解決するものの、プレゼンテーションが「基礎となるデータおよびモデル」から切り離されてしまうために、再作成や保守が困難になる。Gridはこの状況を変えることを目指している。

プライベートベータ期間中に、Gridは2つのコアユースケースを見出した。1つはモデルのプレゼンテーションだ。これはスプレッドシート上にモデルを構築し、入力が結果にどのように影響するかを伝える必要がある、コンサルタントやビジネスアナリストなどが行う作業である。2つ目はレポートだ。スプレッドシートにまとめたデータを定期的にレポートする必要がある人たちがGridを使っているのが観察された。

「本当に大勢の人たちがそうしているんですよ!」とギスラソン氏は付け加えた。「ユーザーの皆さんには、Gridのドキュメントが直接元となるワークブックと連携していて、データに変更が加わると、たとえそれがオフラインのExcelファイルでも、即座にオンラインレポートに反映されるという事実に加えて、Gridが提供するテキストとデータ視覚化の組み合わせ方が好きだとも言って貰えています」。

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(翻訳:sako)

「量子アニーリング」で計算困難な産業課題の最適化を図るJijが2億円を調達、目指すは世界の最適化

AIスタートアップのJijは8月27日、約2億円の資金調達を発表した。第三者割当増資による調達で、引受先はリード投資家を務めたANRIとDEEPCORE、みらい創造機構の3社。

Jijはイジングマシンや量子アニーリングをはじめとした最先端のハードウェア・研究手法を研究しているAIスタートアップ。従来の計算手法では計算困難な​産業課題の解決を図る技術開発を進めている。今回調達した資金は、企業向け最適化クラウド「Jij-Cloud」の開発強化、スマートシティの実現に求められる最適オペレーション計算のための新たなプラットフォームを構築の構築に投下するという。

まずは、おそらく多く読者が聞き慣れない「イジングマシン」「量子アニーリング」について簡単に説明しておこう。イジングマシンとは、質、量ともに膨大となった予想データや制約条件の中でに最適な判断を下す計算を実現するため、量子技術をベースにした計算手法のこと。量子アニーリングとは、その骨子となる、量子力学を使用した組合せ最適化向けのアルゴリズムを指す。と説明しても難解なのだが、同社は量子力学を活用して、これまではかなりの時間がかかったり、答えが出せなかった問題を解決するための技術を擁しているスタートアップだ。

同社はこれらの技術を使い、人の行動パターンの予測し、そこから生まれるであろう移動ニーズやエネルギー需給変動に対する新たなサービスなどを、従来以上に最適化することを狙っている。

Jij-Cloudは、事業会社向けのミドルウェアで、イジングマシンや量子アルゴリズムの専門知識を必要とせずに、簡単に最先端の量子最適化技術を扱えることを可能にする。2019年より一部アルゴリズムのライブラリは「Open Jij」としてオープンソースで公開している。また各種イジングマシンに対応するべく、NEC、日立、D-Wave、マイクロソフトなどとも提携を進めている。2020年5月当時、Jij はマイクロソフト開発のAzure QIOの利用を日本で唯一許諾された実績もある。

写真に向かって上段左から2人目がJijiの代表取締役社長を務める山城 悠氏、3人目がCTOの西村光嗣氏

このほか、各事業会社に対してコンサルティングや共同研究も進めている。例えば、ネットワークの安定化、電気ガスの供給安定化、生命保険のポートフォリオ最適化などの領域で同社の技術が使われているそうだ。直近では、豊田通商と「交通信号制御の最適化」をテーマとした共同研究も発表、信号機の点滅スケジュール制御によって自動車の待ち時間を20%削減 する試算を発表(Qmedia記事)した。

機械学習のモデルの履歴を辿れて最新データで実動試験もできるVertaが10億円を調達

Vertaの創業者でCEOのManasi Vartak(マナシ・バルタク)氏は、MITの大学院在籍時に、機械学習のモデルのバージョン履歴を追跡するオープンソースのデータベースプロジェクトであるModelDBを構想した。卒業後、彼女はそのビジョンをさらに拡張して、モデルのバージョンを追うだけでなく、それらを実際に使用できる方法を提供したいと考え、Vertaが誕生する。

米国時間8月25日、Vertaはステルスを脱し、Intel Capitalが率いるシリーズAのラウンドで1000万ドル(約10億6000万円)を調達した。参加したGeneral Catalystは、同社の170万ドル(約1億8000万円)のシードラウンドをリードしている。

バルタク氏はModelDBでモデルのバージョン履歴を提供するだけでなく、多くの企業にとって難しいことだった、データサイエンティストたちがこれらのモデルをプロダクション(本番使用)へデプロイするためのプラットフォームを作りたかった。さらに彼女はプロダクションであるからには、対象データが過去のものでなく、現在のデータを正確に反映していることも望んだ。

「Vertaはモデルが今でも有効か調べることができ、モデルのパフォーマンスが急に変化したら警告を出す」と同社は説明している。

画像クレジット:Verta

バルタク氏によると、オープンソースのプロジェクトにしたため、会社を早期に投資家たちに売り込むことができ、多くの顧客を惹きつけるという期待感を彼らに持たせることができたという。「シードラウンドも、私が単独かつ初めて起業し、しかも学校を出たばかりの創業者として調達した。これは一般的な資金調達とはまったく違っていたが、それに関してもオープンソースのプロジェクトであることが有利に働いた」と彼女は語る。

確かに、今回のリード投資家であるIntel Capitalの副社長で専務取締役のMark Rostick(マーク・ロスティック)氏は、Vertaが機械学習のモデル制作における基本的な問題を解こうとしていることを理解していた。「Vertaは、企業がAIを採用するときに直面する重要な問題の1つに取り組んでいる。その問題とは、データサイエンティストとデベロッパーの間にあるギャップを橋渡しして、機械学習のモデルのデプロイメントを加速することだ」とロスティック氏はいう。

バルタク氏は、現在の初期的段階で何社の顧客がいるかなどについて語ろうとしなかったが、このプラットフォームを利用している企業はモデルのプロダクションへの移行をかなり速く行えると述べた。

現在、同社社員は9名だが、この早い段階から彼女はダイバーシティに真剣に取り組んでいる。社員構成はインド人4名、白人3名、ラテンアメリカ系1名、アジア系1名だ。すでにかなり多様である。今後、会社が成長していくときも、このような多様性を維持したいと彼女はいう。2020年はさらに15名を採用し、2021年は倍増を予定している。

バルタク氏は、ジェンダーに関しても半々であることを望んでいる。MITの学生時代は、さまざまなプロジェクトでそれを達成できたため、自分の会社でもそうしたいという。雇用の多様化のために、サードパーティであるSweat Equity Venturesの協力を求めている。

彼女によるとプラットフォームの構築は一気にではなく、いろんな機能を実験しながら段階的にやりたい、小さなチームのときからそうしたいという。現時点では、そんなやり方のためにさまざまな既存の機械学習ツールとの相互運用性を試している。例えばオープンソースの機械学習パイプラインツールであるAmazon SageMakerやKubeflowなどだ。

「顧客の成熟度のレベルに合った仕事をすることが重要だ。そこで最近の2つの四半期では、相互運用性のあるシステムの構築に力を入れてきた。それにより、まるでLogoのブロックのようにコンポーネントを選んで拾い上げ、エンドツーエンドまでシームレスに動くシステムを作れる」とバルタク氏は語った。

画像クレジット: Verta

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

コロナ禍で注目が集まる自動走行フォークリフト製造のFox Roboticsが約10億円を調達

理解できることではあるが、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックはロボティクスオートメーション導入の主原動力となっている。死に至ることもあるかなり感染しやすいウイルスが広まる中で企業がテクノロジーに目を向けていることもあり、すでに注目度の高かったこの部門はいっそう魅力的なものになっている。

倉庫や配送センターは当然、資金を要する大きな部門だ。パンデミック中に必要不可欠なサービスとして操業し続けたAmazon(アマゾン)は、ロボットが担える役割を示すのに貢献した。ただ、残念ながら同社の従業員への感染では訓戒的なニュースもあった。

Fox Robotics(フォックスロボティクス)は、この分野への関心が加速していることによって恩恵を受けている最新のスタートアップだ。オースティンを拠点とする同社は今週、Menlo VenturesがリードするシリーズAで900万ドル(約10億円)を調達したとTechCrunchに語った。本ラウンドにより累計調達額は1300万ドル(約14億円)になった。既存投資家はEniac、Famiglia、SignalFire、Congruent、AME 、Joeだ。

Fox Roboticsの価値を高めているものは極めて明快だ。同社は自動走行のフォークリフトを製造している。これらは労働の生産性を2〜3倍高めることができるとうたっている。同社は労働現場を自動化しようと現在取り組んでいる数多くの企業の1社だが、同社のバリュープロポジションは固定されたシステムよりもフレキシビリティを提供できることにある。そして、既存の倉庫にかなり簡単に導入できることだ。

画像クレジット:Fox Robotics

「倉庫オートメーションに対するマーケットの需要は大きく、増えつつある。倉庫オートメーションの未来は数億ドル(数百億円)もかかる固定されたコンベヤーシステムではない。低コストで、フレキシブル、徐々にそして素早く導入できるモバイルロボットだ」とCEOのCharles DuHadway(チャールズ・デゥハドウェイ)氏は発表文で述べた。

少なくとも、Berkshire Grey(バークシャー・グレイ)のような企業が提供するより複雑なシステムよりも、企業が徐々にオートメーションを導入できるところに価値があると筆者は考えている。複雑なシステムははるかに高価で、リソースを多く必要とし、中小企業や非正規ルートでオートメーションをテストしているだけという企業にとってハードルが高い。他のソリューションと異なり、Fox Roboticsのシステムは人間の監督を必要とするが、1人が同時に複数のシステムを監督することができる。

画像クレジット:Fox Robotics

社名は明らかにしなかったが、Fox Roboticsは「ロジスティック大企業」と2019年10月から試験を行っている。今回調達した資金は製造の促進と現在寄せられている関心への対応に使われる、としている。

画像クレジット:Fox Robotics

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(翻訳:Mizoguchi

XYZ Roboticsがピック&プレイスロボット開発に約18億円の資金を調達

新型コロナウイルス(COVID-19)はロボティクスへの投資を大きく加速させているが、それにはもっともな理由がある。ロボットは病休を取らないし、感染症を拡大させることもない。今回だけでなく将来においても、パンデミックといった不測の事態が起きても工場の稼働を続けようと考える企業はロボティックスの導入に真剣に取り組まざるを得ない。

統計をとったわけではないが、私の経験したところでは倉庫や流通の分野でロボティックスへの関心が大きく高まっている。Amazon(アマゾン)が大勢の労働者をロボットに置き換えることに成功したことは、大小の企業に強い刺激を与えたことは疑いない。もちろんベンチャーキャピタリストも、このトレンドに気づいている。

今週、このトレンドに乗ってXYZ Roboticsは1700万ドル(約18億円)のシリーズA+の資金調達に成功したことを発表した。投資家はCode Capital、Gaorong Capital、Morningside Capitalだ。XYZによれば、調達した資金は研究開発、営業能力などの拡大に充てられる。今回のラウンドの成功により、同社が調達したベンチャー資金の総額は2700万ドル(約28億7000万円)になった。 2018年5月に創立されたばかりのスタートアップとしては強い印象を与える金額だ。

TechCrunchでは2020年にマサチューセッツ州の質素なXYZ Roboticsの本拠を訪れて開発しているロボットを取材した。つまみ上げて所定の位置に置いて作業を行うピック&プレイスロボットをめぐって無数の会社がそれぞれ独自性を出そうとして激しい競争を繰り広げている。スマート視覚システムと作業中でも各種のグリッパーを0.5秒で交換でき、eコマースの倉庫業務などロジスティクスにも適した柔軟性の高いハンドシステムが同社の特徴だという。

カテゴリー:ロボテックス

タグ:XYZ Robotics 資金調達

画像クレジット:Veanne Cao

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

暗号資産取引所コインチェックが企業独自の電子トークンで資金調達可能なIEOプロジェクト発足、Hashpaletteとタッグ

暗号資産取引所コインチェックが独自トークンで資金調達を行う日本初のIEOプロジェクト発足、Hashpaletteとタッグ

マネックスグループ傘下の暗号資産取引所コインチェックと、ブロックチェーンを活用したコンテンツ産業のデジタル化を目指すHashpaletteは8月25日、独自トークンによる資金調達を行える日本初のIEO(Initial Exchange Offering。イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)の実現に向け、共同プロジェクトを発足したと発表した。日本のコンテンツのさらなるグローバル化とともに、投機対象としての暗号資産ではなく、社会的意義を有する暗号資産の創造に取り組むとしている。

Hashpaletteは、合計1000万MAUのマンガアプリ群を運営するLink-Uと、ブロックチェーン領域の事業立案・製品開発を支援するHashPortとによる合弁会社。

今回の共同プロジェクトでは、Hashpaletteがユーティリティ性を有するトークン「パレットトークン」(PaletteToken、PLT)をイーサリアム(Ethereum)上で発行し、コインチェックがPLTを販売する予定。PLTは、マンガ・アニメ、スポーツ、音楽などコンテンツのためのブロックチェーンプラットフォーム「パレット」(Palette)において利用される。

パレットは、コンソーシアム型(プライベート型)ブロックチェーン「パレットチェーン」(Palette Chain)を基盤とし、一定条件を満たす複数のコンテンツ企業がコンセンサスノードとしてコンソーシアムを運営する。コンソーシアム参加企業については現在複数社と協議中で、今後順次発表する予定としている。PLTは、クロスチェーン技術により「パレットチェーン」とイーサリアム上を自由に行き来可能という。

またHashpaletteは、これら詳細をまとめたホワイトペーパー公開時にPLTの発行総額および販売による資金調達額を公表する予定。ホワイトペーパーの公開時期は明らかにしていない。

暗号資産取引所コインチェックが独自トークンで資金調達を行う日本初のIEOプロジェクト発足、Hashpaletteとタッグ

IEOは、企業・プロジェクトが発行した電子的なトークンを、委託を受けた暗号資産取引所が販売する形で資金を調達するという仕組み。スマートコントラクト利用などの体裁で、発行体自身が投資家への販売も手がけるICO(Initial Coin Offering)との違いは、販売をになう暗号資産取引所が主体的な管理・支援を行う点にある。

ICOは、従来の新規株式公開(IPO)に比べ、スタートアップなど企業が資金を手軽に調達できる手法として一時注目されたものの詐欺を含め信頼性の低い案件が数多く存在したことから、2017年には日本の金融庁も消費者・事業者に向けた注意喚起を発するなどを行った。また現在では、販売するトークンが改正資金決済法における暗号資産に該当する場合は、金融庁に対して「暗号資産交換業」の登録を行う必要がある。

IEOでは、暗号資産取引所が、発行体およびトークンについて健全性の調査・審査を行った上販売する形態となる。海外の例では、ゲーム開発会社Animoca Brands(アニモカブランド)が、暗号資産取引所Binance提供のIEOプラットフォームを通じて、ブロックチェーンゲーム「The Sandbox」のSANDユーティリティトークン300万ドル(約3億1700万円)相当を販売すると発表したものがある。

先に触れたパレットは、ファンコミュニティにおいてコンテンツを活用したデジタルアイテムを発行・管理・流通させるためのプラットフォーム。デジタルアイテムは、ノン ファンジブル トークン (Non Fungible Token。NFT)として発行される。様々なコンテンツをNFTとしてデジタル化することで、誰でも簡単に所有・売買可能になると考えているという。将来的には、「マンガの限定読切閲覧権」や「限定コンサート参加権」などの体験をクリエイターやアーティストがユーザーに提供できるエコシステムを構築できるとしている。

PLTは、パレットチェーンにおけるコンセンサスノード運営報酬の支払い、スマートコントラクトの発行手数料(GAS)、NFT売買の決済などの用途で使用される。

NFTの決済にPLTを用いることで、NFTの送付と金銭の受け渡しを同時に実施可能となり、中間者にあたるエスクローサービスを介することなく、安全な2次流通市場を構築可能としている。またPLTは、パレットチェーンの維持・運営におけるインセンティブ設計においても重要な役割を占めるとしている。

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日々増加し分散して存在するマーケティングデータを集約するSupermetricsが50億円を調達

マーケティング担当者向けのデータ管理および分析ツールを提供するフィンランドのSupermetrics(スーパーメトリクス)が、4000万ユーロ(約50億円)の新規資金を調達した。

ラウンドを主導したのはHighland Europeで、IVPもラウンドに参加した。調達された資金は高い利益率を誇る同社によって、マーケティング業界へのデータウェアハウジングの導入といったさらなる拡大のために使用される。

Supermetricsは、2013年にMikael Thuneberg(ミカエル・チューネバーグ)氏によって設立されたSaaSで、マーケティング担当者たちがさまざまなデータを、自分の選択したデータ処理およびレポートツールと互換性のある「すぐに使用できる形式」に編集する手助けをしてくれるサービスだ。ここでのアイデアは、さまざまな種類の異なるマーケティングデータに対して統一されたビューを提供することで、何が実行されて何が実行されていないかを、マーケティングチームや他の利害関係者が確認できるようにすることだ。それによって担当者たちは軌道修正をしたり戦略強化を行ったりすることができる。

Supermetricsはエンジニアではないユーザーでも使用できるよう設計されており、会社のIT資産に別のコードベースを追加する必要はない。

「問題はマーケティングチームが扱わなければならないデータ量が増加していることと、データがますます多くのプラットフォーム、チャネルおよびツールに分散しているということです」とチューネバーグ氏は語る。「マーケティング活動全体を包括的に把握することは困難になり、すべてのデータを管理することは大変な作業になっています。多くのマーケティング担当者は、コピー&ペーストなどの手作業に頼ってデータを収集しレポートを更新しています。それは時間がかかり、間違いも起こりやすく、退屈です」。

こうした作業を改善するために、Supermetricsは70以上のマーケティングデータソースからGoogleスプレッドシート、Googleデータスタジオ、Excel、データウェアハウスそしてさまざまなビジネスインテリジェンスツールなどへのデータ転送を自動化する。

「私たちが開発しているツールは、自動化されたデータ転送でその苦痛を取り除き、マーケティング担当者が統合されたデータから貴重な洞察を引き出すことを助けるのです」とチューネバーグ氏はいう。「Supermetricsの利用は非常に簡単ですし、数回クリックするだけで使い始めることができます。面倒なセットアップ作業は必要ありません。私たちは、誰もが関連データを手に入れて、それを使用して仕事をよりよく行うことができるようになるべきだと考えています」。

さらに、約1年前にSupermetricsは「Supermetrics for BigQuery」プロダクトを発表することによって、データウェアハウスの提供へと踏み出した。「多くのお客様は、管理する必要のあるデータの量に苦労していますが、データウェアハウスをセットアップすれば、多くの問題を解決することができます。私たちはそれをすべてのマーケティングチームから、よりアクセスしやすく、使いやすいものにしたいと考えました。Supermetricsを使用してマーケティングデータウェアハウスをセットアップするには、少しだけ技術的なノウハウが必要ですが、私たちは自分たちの哲学を忠実に守り、それを可能な限りシンプルで簡単なものにしています」。

現在Supermetricsは、Fortune 500企業からマーケティング代理店まで、1万4000を超えるクライアントを抱えていることを明らかにしている。同社は「非常に収益性が高い」ことを主張し、一貫して30%以上の利益率を達成していると公表している。顧客には、Nestle(ネスレ)、Warner Brothers(ワーナー・ブラザース)、L’Oreal(ロレアル)、Hubspot(ハブスポット)、iProspect(アイプロスペクト)といった企業が名前を連ねている。

チューネバーグ氏は、Supermetricsの主な競合相手としてFunnel.io(ファネルio)、Adverity(アドバリティ)、Fivetran(ファイブトラン)、Stitch(スティッチ)、Talend(テレンド)の一部などを挙げている。「マーケティングデータの断片化という同様の一般的な問題に取り組んでいる、たくさんの小規模な企業もあります」と彼は付け加えた。

カテゴリー:ネットサービス

タグ:Supermetrics 資金調達

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(翻訳:sako)

ギグワーカー向け電動自転車サブスクのZoomoが12億円調達、社名もBolt Bikesから変更

ギグエコノミー業界で働く配達員向けの電動自転車プラットフォームを展開するBolt Bikes(ボルトバイクス)が社名を新たにした。またオーストラリアのClean Energy Finance Corporation(クリーンエナジーファイナンスコーポレーション)がリードするシリーズAラウンドで1100万ドル(約11億7000万円)を調達している。

本ラウンドにはHana Ventures、既存投資家のManiv MobilityとContrarian Venturesが参加し、またOneVenturesとViola Creditからのベンチャー債務が含まれる。

2017年創業のBolt Bikesはオーストラリア・シドニーを拠点とし、現在の社名はZoomo(ズーモ)だ。社名の変更は、ギグエコノミーワーカーを超えて法人クライアントや一般消費者へと拡大した顧客ベースを反映させようという意図だ。Zoomoの共同創業者でCEOのMina Nada(ミナ・ナダ)氏はTechCrunchに対し、似たような名前の他の企業と間違われることがないようにしたかった、と述べた。

「我々が2017年にBoltを立ち上げたとき、この社名はオーストラリアでは問題なかった。しかし海外に進出したとき、少なくともBoltという会社が3社あることがわかった。3社のうち2社はモビリティ業界だった」とナダ氏は説明した。オンデマンド輸送のTaxify(タキシファイ)が2020年5月に社名をBoltに変え、またBolt Mobilityという別の企業もスクーターシェアのサービスを提供している。

オーストラリア、英国、ニューヨークでサービスを展開し、間もなくロサンゼルスでも立ち上げるZoomoは、電動バイクを販売あるいはサブスクリプションで提供している。事業の主体は商業使用向けのサブスクだ。このサブスクには電動自転車、車両管理ソフトウェア、ファイナンシング、サービスが含まれ、サブスク利用者は24時間いつでも自転車を利用できる。バッテリー充電器、スマホホルダー、スマホ用USBポート、U字ロック、安全の手引きも用意されている。

Zoomoはサブスクを提供しているマーケット、つまりシドニー、ニューヨーク、英国にセールスとサービスのセンターを置いている。同社は今回調達した資金をロサンゼルスとブリスベーンへの進出、そしてニューヨーク内での事業拡大に使う計画だ。これはセールスとサービスのセンターを新たに設置することを意味する。

同社の戦略は、直接販売を加速させる一方でサブスクサービスを提供するマーケットをゆっくりと拡大するというものだ。センターを設置するためにサブスクはすばやい展開が制限されている。まとまった資本を要するサブスクサービスをゆっくりと拡大させつつ、同社は法人や個人への自転車販売で売上をのばし、地理的サービス範囲を拡大し、またブランドの認知向上も図っている。

Zoomoはまた、自転車や消費者に適した他のモデルの活用が見込める荷物配達、郵便事業、グローサリー配達といった新たな法人部門の開拓にも資金をあてる計画だ。

カテゴリー:モビリティ

タグ:Zoomo 資金調達 電動バイク 電動自転車

画像クレジット:Zoomo

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(翻訳:Mizoguchi

痛くない乳がん用診断装置開発の東大発スタートアップ「Lily MedTech」がNEDOに採択され約2.4億円獲得

痛くない乳がん用診断装置開発の東大発スタートアップ「Lily MedTech」がNEDOに採択され約2.4億円の助成獲得

リング型の超音波振動子を用いた革新的な乳房用画像診断装置の開発を行う東大発スタートアップ「Lily MedTech」は8月24日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下NEDO)が実施する、2020年度「研究開発型スタートアップ支援事業/ Product Commercialization Alliance」(PCA)に採択され、約2.4億円の助成対象に決定したと発表した。

Lily MedTechが開発する乳房用超音波画像診断装置は、ベッド型をしており、ベッド上部に空いた穴の中の水槽にリング状の超音波振動子を搭載。女性がベッドにうつ伏せになり、乳房を水槽に入れることで、乳房全体の3D画像を自動で取得できる。

同装置は非接触のため、マンモグラフィのような圧迫による痛みはなく、超音波を使用するので被ばくのリスクもないという。また、乳房を下垂させた状態で自動撮像を行うため、操作者に依存せず、再現性の高い画像が取得できるという特徴を備えている。

今後国内外へ装置を広く浸透させ、より多くの女性が乳がん検診を受けやすい環境を作るため、同事業のコスト改善のための改良開発を行っていくとしている。

NEDOは、持続可能な社会の実現に必要な技術開発の推進を通じて、イノベーションを創出する、国立研究開発法人。リスクが高い革新的な技術の開発や実証を行い、成果の社会実装を促進する「イノベーション・アクセラレーター」として、社会課題の解決を目指している。

Lily MedTechは、女性に優しい乳がん診断を目指す女性起業家による東京大学発のスタートアップ企業。2019年12月9日に「第一種医療機器製造販売業」の許可を取得、現在は量産体制の構築と、発売に向けた社内体制の構築に注力している。

東京大学医学系研究科・工学系研究科での研究技術を基に、リング型の超音波振動子を用いた革新的な乳房用画像診断装置「リングエコー」を開発を進行。

現在の乳がん検診にはX線マンモグラフィやハンドヘルド型の超音波が用いられており、マンモグラフィは圧迫による乳房の痛み、X線照射による被ばくリスク、デンスブレスト(高濃度乳房)に対する検出精度低下などの課題があり、ハンドヘルド型の超音波はがん発見が検査技師の技術に依存するという課題を抱えているという。

これに対しLily MedTechのリングエコーは、被ばくリスクや圧迫による痛みがなく操作者の技術に依存しない装置として期待されている。

仕事、恋愛、結婚、出産、育児など、公私ともに選択肢が多い世代の女性が、乳がんによりその選択肢を奪われないよう、また乳がん罹患前と生活が大きく変わることのないよう、少しでも貢献するため日々開発を進めているとしている。

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微⽣物ゲノム解析の早大発スタートアップbitBiomeが7億円を調達、疾患と微生物の関連について大規模研究を開始

微⽣物ゲノム解析技術の早稲田大発スタートアップbitBiomeが7億円を調達、疾患と微生物の関連性に関する大規模研究を開始

微⽣物のシングルセルゲノム解析技術「bit-MAP」を⽤い、微⽣物の産業応⽤を⽬指すbitBiomeは、シリーズBラウンドにおける第三者割当増資として総額7億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は東京⼤学エッジキャピタルパートナーズ、ユニバーサル マテリアルズ インキュベーターを含む複数企業(既存・新規)。累計資金調達額は10.5億円となった。

今回調達した資金は、さらなる飛躍に向け、自社起点の研究、最新機器の購入、米国展開など5つの重点テーマに投資し、爆発的な事業成長を促すとしている。

  • 疾患と微生物の関連性を解析する自社研究
  • さらなる研究開発力強化に向けたウェットラボ設備導入(次世代シーケンサーなど)
  • ⽶国での研究・事業活動の加速化
  • 特許の出願・維持
  • 人材採用

またbitBiomeは、先に挙げた自社研究として、がん、腸内疾患、自己免疫疾患、神経精神疾患などを含む20を超える疾患について患者の便および唾液サンプルを取得し、種々の疾患と腸内細菌・⼝腔内細菌の関連性を明らかにする大規模研究を開始する。

患者検体についてはQLifeと協⼒し、同社パネルに登録している患者から取得する。疾患ごとに、医薬品研究開発・新規バイオマーカー探索を⽬指したパートナリング・共同研究、解析データの共有および独占販売などを検討しているという。

bitBiomeは2018年11月創業の早稲田大学発スタートアップ企業。bitBiome開発のゲノム解析技術bit-MAPは、世界唯一の微生物を対象としたシングルセルゲノム解析技術で、地球上のあらゆる環境に生息する微生物のゲノム情報をひとつの細胞から高精度に解読することを可能とする。

bit-MAPによって、従来のマイクロバイオーム研究で必要とされてきた煩雑な単離・培養、あるいは複雑なシーケンスデータの計算処理の必要なく、未知の微生物ゲノム情報を高速・網羅的に獲得可能となった。

同技術を次世代のマイクロバイオーム解析サービスとして提供し、医療・農業領域を中心にあらゆる微生物関連の企業・アカデミアとの協業を通じて、同社のミッション「Unlock the Potential of Microbes」を実現し、社会へこれまでない価値を提供するとしている。

フリーランス美容師向けシェアサロンの「GO TODAY SHAiRE SALON」が10億円を調達、美容師向けSaaS拡充

フリーランス美容師向けシェアサロンの「GO TODAY SHAiRE SALON」が10億円を調達、美容師向けSaaSを拡充

フリーランス美容師向けシェアサロンプラットフォーム「GO TODAY SHAiRE SALON」(ゴウトゥデイ シェア サロン)運営のGO TODAY SHAiRE SALONは8月24日、シリーズBラウンドにおける第三者割当増資などとして総額10億円の資金調達を実施したと発表した。引受先はカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)およびW ventures。これにより累積資金調達額は約13.5億円となった。

今後、シェアサロンプラットフォームにおけるIT投資を本格化。今秋には、専用の予約/決済モバイルアプリを登録美容師および顧客向けにリリースし美容師向けSaaSを拡充、2024年9月をめどに新たに50店舗をオープンし全国で計65店舗を運営予定、店舗内のPopUpスペースを活かし自社開発のヘアケアプロダクトD2Cを展開予定としている。

GO TODAY SHAiRE SALONは、フリーランス美容師向けのコミュニティ型シェアサロンプラットフォーム。充実した設備と立地、テクノロジー導入による高い報酬率、独自のコワーキングコミュニティという。全国15店舗にフリーランス美容師250名以上が登録し、ゆったりとした個室空間と充実した設備の店舗で、それぞれのライフスタイルやスキルに合わせた生産性の高い働き方を実現している。

2016年10月設立の同社は、2017年11月に原宿本店を1号店としてオープン後、約2年半で全国に15店舗を展開。総流通額(GMV)は、高い稼働率と収益性(EBITDA)を保ちながら前年同月比350%ペースで推移し、2020年3月には月次GMVが1億円を突破。コロナ禍の影響を軽微に抑え2020年6月には最高益を更新しているという。

農家や漁師などの生産者と消費者を直接つなぐポケットマルシェが8.5億円を調達

農家や漁師などの生産者と消費者を直接つなぐポケットマルシェが8.5億円を調達

全国の農家や漁師などの生産者と消費者を直接つなぐアプリ「ポケットマルシェ」(iOS版Android版)運営のポケットマルシェは8月24日、第三者割当増資として総額8.5億円の資金調達を調達したと発表した。引受先は丸井グループ、オレンジページなど計6社。

資金調達により、「ポケットマルシェの機能追加や機能改善」、「生産者サポートの強化」、「オンラインとオフラインの融合による物流の課題解決」、「特定の地域に継続的に関わる人々を増やすため地方自治体との連携を強化」などの取り組みを推進するとしている。

ポケットマルシェは、全国の農家・漁師と直接やり取りしながら、旬の食べ物を買えるプラットフォーム。2020年8月現在で、3200名以上の農家・漁師が登録しており、約7000品の食べ物の出品があるという。

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オンライン薬局運営の「ミナカラ」が3億円調達、製薬メーカーとPB医薬品の共同開発強化へ

オンライン薬局を運営するミナカラは8月24日、3億円の資金調達を発表した。第三者割当増資による調達で、引受先は、既存投資家のSpiral Innovation Partners、インキュベイトファンド、STRIVE、カイゲンファーマ、新規投資家として朝日メディアラボベンチャーズが加わった。なお、製薬会社のカイゲンファーマ以外は、VCもしくはCVCだ。今回の調達により同社の累計調達額は10億円となった。前述した以外の既存投資家は以下のとおり。

  • AGキャピタル
  • グロービス経営大学院
  • ジャパンメディック
  • 千葉道場
  • 本田 圭佑氏(プロサッカー選手・個人投資家)

同社は今回調達した資金を、集合調剤・物流施設としてのセントラル薬局の開発、製薬メーカーとの共同開発医薬品(PB医薬品)の企画開発、製薬メーカーのD2C展開の各種支援を行う事業に投下する。

同社が運営するオンライン薬局の「minacolor」(ミナカラ)は、一般的な対面式の薬局と同様に自分の症状にあった薬を薬剤師のアドバイスを受けながら、薬の代金をネット決済後、自宅まで届けてくれるサービス。ネット経由で薬剤師による服薬管理もサポートしてくれる。具体的には、薬剤師とは無料チャットで相談ができ、OTC薬の購入も薬剤師と相談のうえで自分にあったものを購入可能だ。現在提供している薬を中心とした商品の取り扱い点数は800種類(SKU)とのこと。

ミナカラで代表取締役を務める喜納信也氏

現在、一部の医薬品は販売許可を得たECサイトから手軽に購入できるが、本当に自分の病状・症状に合っているかどうかは、購入者自身が各ECサイトの説明文を読み込んで納得するか、CMなどで認知度の高い医薬品を選ぶというの現状だ。minacolorでは、こういった購入者の独自判断だけでなく、薬剤師の的確なアドバイスを基に最適な医薬品を購入できるのが最大の特徴となっている。

現在、オンラインで販売可能なのは、第一類医薬品まで。要指導薬医薬品などは販売できないが、多くの患者は病院の医師や薬剤師の適切指導を受けた後、2年程度で処方薬から手に入りやすい第一〜三類に移行するケースがほとんどとのこと。

ミナカラで代表取締役を務める喜納信也氏によると、前述の薬剤メーカーとのPB医療に品の共同開発については、オンラインとの相性がいい疾患・テーマから先行して製品開発を開発しているとのこと。具体的には、しみ治療、痔、いぼ、女性用薬、水虫、カンジダなど、対面で相談しにくいテーマや継続的に使用する必要のあるテーマだ。元々運営しているメディアコマースのユーザーデータやマーケデータで把握できており、勝算の高いテーマから展開できているというのが同社PB展開の強みだ。

「風邪などのすぐ治したいというニーズが高い急性疾患などは配送時間のかかるECが出遅れているが、こちらについても将来的には配置薬、つまり富山の配置薬のネット版のようなサービスでカバーしたい」喜納氏。

気になる薬が届くまでの時間だが、同社によると注文時間にもよるが現状は沖縄などの一部地域を除けば、土日休日を問わず翌日到着になるという。また喜納氏は、今回の資金調達に加わっているSpiral Innovation Partnersには、LPとしてセイノーホールディングス(西濃運輸)が入っており、西濃運輸とはファイナンスとセットで事業提携が決まっていることを教えてくれた。物流大手の西濃運輸を組み、オンラインで医薬品を配送するのに最適な物流拠点の確保など、物流周りの課題解決も継続的進めていく。

画像提供:ミナカラ

産業廃棄物を回収する収集車の配車最適化をAIで実現するファンファーレが「配車頭」を正式リリース

ファンファーレは8月24日、廃棄物回収に特化したAIによる配車計画の自動作成サービス「配車頭」(ハイシャガシラ)を9月に正式リリースすることを発表した。併せて、Coral Capitalからの3000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。今回調達した資金は、営業体制の強化、サービスリリースに伴うカスタマーサポートの拡充などに活用する予定だ。

「配車頭」は、廃棄物の収集運搬に特化したAIを用いた配車管理サービス。同社によると、複雑で時間のかかっていた配車計画作成に必要な作業時間を従来の100分の1以下にできるとのことで、現在特許出願中だ。

廃棄物回収は、住民の生活の維持に欠かせないエッセンシャルワークの1つだが、現在深刻な人手不足に陥っている。家族経営の業者が多く、高齢化や跡継ぎ不足などの問題を抱えているからだ。同社代表の近藤志人氏によると、業界ではこういった問題を解決するため、現在複数の会社を組織化して業界再編を進めている。ここにも特殊な事情があり、会社自体を吸収してしまうと、その会社が所持していた廃棄物回収の免許が取り直しになってしまう。産業廃棄物にもさまざまな種類があり、それに伴いさまざまな免許取得が必要なのだ。そこでホールディングス形式で子会社化するケースが増えているそうだ。そして株式上場によって、さらなる社会的な信用を得る方向に向かっている。

もう1つの問題は、工事現場などでも最後に残るのが産業廃棄物であり、廃棄物回収事業者が回収タイミングを見極めるのは難しい現状がある。「工事現場側の都合で数時間の待ち時間や日時の再調整が発生したり、住宅地や建物密集地などでは廃棄物回収トラックの長期間の乗り入れが禁止もしくは忌避されることもあるため、数km先で長時間待つというケースも多い」と加藤氏。

配車頭はこういった廃棄物回収業の特殊な事情を条件に組み込んで最適化した配車サービス。ユニック車(クレーン付きトラック)のルート回収にも対応しており、廃棄物品目ごとに最適なコンテナの積み込み、積み下ろし順を踏まえた配車計画を作成できる。もちろん、廃棄物回収・破棄後のコンテナ洗浄など、産廃の収集運搬で発生するさまざな要件もシステムに組み込まれている。配車頭の概要は以下のとおり。

  • 正式名称:配車頭(ハイシャガシラ)
  • サービス対象地域:全国
  • 料金:月額5万円〜(詳細はお問合せフォームから)

なお、今後は配車計画の最適化だけでなく、受発注のオンライン化による発注の効率化や、収集運搬後の処理の効率化にも対応していく予定とのこと。同社は、電話やFAXなどが主流のアナログな廃棄物回収業界を、AIを活用したDXによって人手不足の解消と廃棄物回収車の稼働効率の向上を進めていく考えだ。

ファンファーレは2020年3月、東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)が手掛ける、起業を目指す現役東大生や卒業生などの大学関係者、起業をしてまもない東京大学関連ベンチャーに対して事業化資金や経営支援を提供するプログラムの新たな支援先にも選ばれている企業。同社代表の近藤氏は前職のリクルートホールディングス時代にUX業務を担当する傍らで、副業として産廃大手の基幹システムの改善に携わってた人物。その際に現場の課題を知ったことがの起業につながった。

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