元サムライ両角氏のF Venturesが2億円調達――物流や医療分野に注目

中央がF Ventures代表の両角将太氏

サムライインキュベートの両角将太氏が立ち上げた福岡のF Venturesは6月23日、シードステージのスタートアップ投資を目的とした「F Ventures Fund 1号(以下、FVファンド)」の募集を完了し、総額2億円を調達したと発表した。

FVファンドに出資した投資家は合計11名。出資者リストは以下の通りだ:

FVファンドの投資対象はインターネット領域全般で、シードステージのスタートアップへの投資に特化する。1社あたりの投資金額は500〜1000万円程度だ。F Venturesはこれまでに8社のスタートアップに投資を行っていて、その中で明らかになっているのはVR/ARコラボツール開発のCynackと物流のニューレボへの投資だ。両角氏は、投資金額が公開されていたCynack(500万円)に加えて、ニューレボへの投資金額も同じく500万円であったことを今回の取材でTechCrunch Japanに明かした。

F Ventures代表の両角氏はTechCrunch Japanの取材に対し、「物流、医療、一次産業の分野など、モバイル化がまだまだ進んでいない領域には注目している。また、東京では規制が厳しくてできないが、規制緩和が進む福岡であれば実証実験から始められそうな領域にも注目しています」と語る。

ファンド設立時、両角氏は管理報酬に頼らないモデルを目指すと話していた(管理報酬が相場の2%とすると、2億円ファンドの管理報酬は年間400万円だ)。そのための取り組みとして、同社はこれまでに「INNOVATE HACK KYUSHU」や「九州オープンイノベーションサミット」などのイベントを開催してきた。

Growbotsは機械学習でセールスを助ける――急成長して250万ドルを調達

Growbotsは機械学習を利用してリード情報を提供し企業のセールス部隊を助けるサービスだ。 このプロダクトはセールス・パーソンの作業を月に数日分節減できるという。今日(米国時間6/21)、GrwobotsはBuran VC、Lighter Capitalおよび何人かのエンジェル投資家から250万ドルの資金を 調達したことを発表した。これにより同社の資金調達総額は420万ドルとなった。

GrowbotsのCEO、共同ファウンダーのGreg Pietruszynskiはわれわれのインタビューに答えて「Growbotのサービスは企業のCRM〔顧客関係管理〕データを見て顧客情報を抽出し、セールス・ターゲットのリストを自動的に更新する。「GrowbotsのAIアルゴリズムはセールス・パーソン向けにカスタム連絡先リストを数分で作成する。また潜在顧客向けの各種キャンペーンを実施し、セールス・チームおよび個々のメンバーの活動を評価、管理する。セールス・メンバーはデータ処理作業をGrowbotsに任せて見込み顧客との対話に努力を集中できる」と述べた。

このサービスを提供するために同社では多数のソースから2億件に上る潜在顧客のデータを収集している。Growbotsの機械学習システムは毎日数百万のウェブサイトを巡回して企業や社員のデータを抽出する。Pietruszynskiによれば同社は見込み顧客のデータを購入することはしていないという。「われわれは情報源の選択にこの上なく注意を払っている。サードパーティーから既成の名簿を購入することはしていない。信頼性が低く、またデータが非常に古いからだ」と語った。

各社ごとに情報が整備された後もGrowbotsは引き続きアルゴリズムのアップデートを続ける。Growbotsを利用したセールス・キャンペーンの成果を分析し、そのデータをベースに次のキャンペーンを最適化する。Growbotsを1ヶ月利用すると、ポジティブな反応が平均40%増える。またCRMデータからキャンペーンの対象リストを作成するのに数日かかるのが普通だが、Growbotsを利用すればさらに質の高いリストを作るのにものの数分ですむという。

セールス・キャンペーンの自動化について、Growbotsはそれぞれの相手に合わせてカスタマイズしたセールスメールを自動的に作成するという(セールスパーソンはメールの文面を自分で作ることもできる)。Growbotsはセールスメールに対するフォローのメールも自動的に送信できるし、相手から反応があった場合、メッセージを出先に転送してくれる。

Growbotsは現在、前月比10%のペースで成長を続けている。Pietruszynskiによれば、プロダクトをリリースしてから16カ月で年間換算で400万ドルの売上を得たという。利用顧客は500社で大部分はアメリカ国内の企業だが、サービス自体は世界的に利用可能だという。現在の顧客にはBetterment、Relatable、Highfiveなどの企業が含まれる

Growbotsのオフィスはサンフランシスコとクリーブランドにあり、アメリカにおける社員は20人で、さらに26人の人員を募集中だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

深層学習とは異なる機械学習モデル「Deep Binary Tree」を開発するエイシングが約2億円を資金調達

人工知能の活用と聞くと、先日トップ棋士に連勝して引退を表明したAlphaGoのDeepMindや、IBM Watsonなどがまず思い浮かぶだろうか。日本でもPreferred NetworksNextremerといったAIベンチャーのほか、さまざまな企業が機械学習モデルの開発やサービス提供に乗り出している。これらの企業で採用されている機械学習モデルの共通点は、ディープラーニング(深層学習)を利用しているところだ。

ところが、エイシングが提供する「Deep Binary Tree」は、ディープラーニングとは別のアルゴリズムを採用した、独自の機械学習モデルだという。そのエイシングが6月21日、テックアクセルベンチャーズが運営するファンドを引受先とする第三者割当増資により、1億9800万円の資金調達を実施したと明かした。

エイシング代表取締役CEOの出澤純一氏は、2007年、早稲田大学大学院修士課程在学中に、エイシングの前身となるベンチャー企業・ひらめきを創業。卸売・小売・医療機器販売事業のかたわら、水面下で人工知能の研究開発を進めていたそうだ。2016年12月、ひらめきからAI開発事業をスピンアウトする形でエイシングを設立。岩手大学准教授の金天海氏とともに開発した独自のAIアルゴリズム、Deep Binary Treeの提供を行っている。同社は2017年2月には、日本総合研究所が主催するアクセラレーションプログラム「未来2017」のピッチコンテストで日本総研賞を受賞している。

エイシング代表取締役CEOの出澤純一氏

Deep Binary Treeは、機械学習モデルではあるもののディープラーニングとは異なるアルゴリズムで動く、機械制御や統計解析を得意とするAIプログラムだ。ニューラルネットワークを使ったディープラーニングでは多数の情報を処理することが可能なため、画像認識や音声認識に強く、囲碁の対局など複雑なタスクにも対応できる。ただし学習精度を高めるためには、エンジニアが適切な学習データを与えたり、パラメーターの調整を行ったりする必要がある。また計算量も多く、時間もかかる上に、一度できあがったモデルで最適化されると動的な応用は難しくなる。例えば物をつかむ学習を行ったロボットアームが、缶をつかむ学習を強化して最適化されると、ビンをつかむことが難しくなってしまう、といったことが起こる。

Deep Binary Treeでは、ディープラーニングのような大量の入力には対応していないため、画像の解析などには使えない。しかし、機械制御や統計解析の分野では高精度な学習・解析が可能で、動的な追加学習もできるという。パラメーター調整が不要で学習速度も速く、学習アルゴリズムファイルが約40KB、獲得学習ネットワークが3MB〜50MBと軽量なため、IoTデバイスでのリアルタイム学習も可能。速く、小さく学習して、新たな情報をどんどん覚え直して修正していく、というイメージだ。エイシングでは「ディープラーニングは認識をつかさどる頭頂葉的な働きに近く、Deep Binary Treeは反射的な反応ができる小脳的な働き」と説明している。

ディープラーニングでは発生しやすい過学習問題(ある特定の学習データにモデルが特化してしまうことで、それ以外の新たなデータに対して正しい解を出せなくなってしまう問題)や局所解問題(ある範囲内で収束した解を最適解としてしまうことで、本来の最適解に到達することができなくなってしまう問題)の影響も、Deep Binary Treeでは受けることがない。エイシングによれば、ある機械メーカーで、ディープラーニングによる解析で問題があり、行き詰まっていたところをDeep Binary Treeで解決した例もあるそうだ。

Deep Binary Treeがどういった用途で採用されているのか、出澤氏に聞いてみたところ、機械制御分野では「自動車メーカーのエンジン制御ユニット(ECU)の制御チップの最適化や流体力学シミュレーターに利用されている例がある。また、センサーのオートキャリブレーション、ファクトリーオートメーションでの異常検知や、職人の勘をエキスパートシステム化するための動作データ学習などでも使われている」とのこと。統計解析分野では「金融業界で株価予測や与信調査に採用されたり、コールセンターのオペレーターの需給予測や、本の増刷冊数の予測などにも使われている例がある」ということだ。

こうした大手企業向けのカスタマイズ提供のほかに、エイシングでは、2017年3月からSaaS版Deep Binary Treeも提供を開始している。また出澤氏によれば「AIチップ(SoC:System on Chip)の開発も各社と共同で進める準備をしている」ということだ。海外からの引き合いもあるそうで「グローバルな半導体メーカーや、ヨーロッパの自動車メーカーからも声がかかっている」と出澤氏は言う。

今回の調達資金について、出澤氏は「研究職・技術職の人材確保と営業力の強化、研究開発のさらなる強化に投資していく」と話している。

ICOは新しいエグジットの形――Kik CEOが語る仮想通貨の魅力

メッセージングアプリKikのCEOであるTed Livingtonが、本日(現地時間6月20日)中国の深センで行われたTechCrunchのイベントに登壇した。その中でモデレーターのJon Russelは、なぜ同社が最近資金調達手段としての人気が高まっているイニシャル・コイン・オファリング(ICO)を選択したのかを彼に尋ねた。

まず、LivingtonはICOが「外部から資金を調達し、企業に資金を供給するための新しい方法」だと語った。「欧米でマネタイズに困っていた私たちにとって、仮想通貨はとても魅力的でした」

ICOの結果、「Kin」と呼ばれるビットコインのようなKik独自の仮想通貨が誕生した。Livingtonによれば、Kikのコミュニティ内にKinベースの決済システムを導入することで、「Kikは何百万人という月間アクティブユーザーが参加する、ある種の経済に変化する」という。

最近多くのスタートアップがICOの道を選んでいる一方で、Kikがこれまでに多額の資金をベンチャーキャピタルから調達しているということは特筆に値する。ユニコーン企業であるKikが追加資金を調達できなかったのかという質問に対して、Livingtonはそれを否定し、ICOは新しいエグジットの形なのだと主張した。

ICOによって株主は十分なリターンを得られるため、結果的にM&AやIPOへのプレッシャーが弱まると彼は考えているのだ。

「いつかKikを売却しなきゃいけないと考えるのが嫌なんです」と彼は言い、IPOについては「しなくてもいいといいんですけどね」と話した。

ビットコインで一山稼いだ人もいれば、ボラティリティの高さゆえに仮想通貨のことを投資対象として信用していない人もいる。Livingtonは、仮想通貨がどちらの道にも進み得ると考えているようだ。

「私は最近頻発しているICOのことをドットコムバブルのように捉えています。当時はお祭り騒ぎのような状態で、大金をつかんだ人もいれば、大金を失った人もいました。でも、その中からAmazonやGoogleが誕生したんです」

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Netflixはもう不要?――次世代のコンテンツ配信方法を開発するPulitが1億円調達

電子透かし技術を利用した新しいコンテンツ配信方法を開発するPulitは6月21日、CVC1社と投資会社1社から合計1億円を調達したと発表した。今回の資金調達は戦略的な事業提携を見据えたものであり、そのリリースまで具体名は明かせないということだが、Pulit代表のKunwoo Lee氏によれば「それぞれ広告系とメディア系1社ずつからの調達だ」という。

Pulitは、画像などに情報を埋め込む”電子透かし技術”を利用することで、TV局などのコンテンツホルダーとユーザーを直接つなげる新しいコンテンツ配信方法を開発するスタートアップだ。

コンテンツホルダーはSNSなどにURLを貼ることでコンテンツを配信することができる。一方のユーザーは、Pulitと提携するアプリをデバイスにダウンロードしているという条件をクリアしてさえいれば、URLをクリックするだけでコンテンツを視聴したり、デバイスに保存した特殊な画像からコンテンツを再度呼び出したりすることもできる。

その具体的な流れは以下のようになる。

  1. コンテンツホルダーは有料コンテンツ(映画、アニメ、マンガ、雑誌など)に紐付けられたURLを発行し、それをSNSやメディアに貼り付けることでコンテンツを配信する。
  2. ユーザーは専用アプリのダウンロードや入会手続きをすることなく、URLをクリックするだけで即座にコンテンツを視聴可能(ただし、後述するPulit提携アプリがデバイスにダウンロードされている必要がある。ダウンロードされていない場合、提携アプリのダウンロードページに遷移する)。
  3. 視聴したコンテンツを保存する場合、コンテンツに関する情報が埋め込まれた画像ファイルをスマートフォンに保存する。これは通常のJPEG画像なので、スマホの”ギャラリー”アプリで閲覧可能。この画像にはURLやコンテンツの利用条件などの情報が埋め込まれている。同社はこの画像を”MDI(Multicast Distribution Image)”と呼ぶ。
  4. 次回にコンテンツを視聴する場合、ユーザーはデバイスのギャラリーアプリでMDIを選択する。デバイスにPulitが提携するアプリがダウンロードされていれば、画像の共有ボタンを押すと”MDIを観る”というアイコンが現れる。それを押すことでコンテンツを視聴することができる。
  1. 1

    コンテンツホルダーがSNSなどでコンテンツを拡散
  2. 2

    クリックでコンテンツを表示
  3. 3

    MDIに変換
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    変換したMDIはデバイスのギャラリーアプリで閲覧可能
  5. 6

    MDI
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    ”MDIを観る”ボタンからコンテンツを再度表示できる

コンテンツホルダーは配信方式として課金方式と広告方式の2つを選択することが可能で、Netflixなどのように、1つのコンテンツを共有できるデバイス数に制限をかけることができる。

Pulitの配信モデルを実現するための必要条件

このビジネスをワークさせるには、Pulitモデルに参加するコンテンツホルダーと、PulitのViewer機能を搭載した提携アプリの存在が不可欠だ。この配信モデルがスケールするためには、コンテンツを販売したいと思うコンテンツホルダーが必要だし、そもそも、提携アプリがデバイスにダウンロードされていなければコンテンツを視聴することができない。

Pulitは2017年7月〜8月にかけて100人程度を対象にしたクローズドβテストを実施し、つづく9月〜10月にオープンβテストを行う予定としている。

現時点でPulitのβテストへの参加を決めたコンテンツホルダーは全部で13社。内訳は、民営放送局6社、出版社4社、アニメ制作会社3社だ。これらの具体名は現在非公開だが、約2ヶ月後に控えたオープンβのリリース日にあわせて公開する予定だという。

もう一方の提携アプリだが、こちらは現時点でβテストへの参加を決めたアプリは3つ。こちらも具体名は非公開であるものの、内訳は「2つのメディアアプリと1つのSNSアプリ。3つを合計すると7000万ダウンロードの実績がある」(Lee氏)という。コンテンツホルダーと提携アプリともに、実際の契約はβテスト後に締結するという。

Lee氏によれば、特に民営放送局は、いつかはNetflixなどのプラットフォームにコンテンツを提供しなければならない時が来るという危機感を持っているからこそ、ユーザーにコンテンツを直接販売することが可能になるPulitモデルに興味を示しているという。

また、提携アプリには「トップティアのコンテンツをミニマムギャランティー0円で迅速に提供できるということで、アプリ側のアクティブユーザー数やダウンロード数にポジティブな影響を与えられる」とLee氏は話す。

Pulitのコンテンツ配信方式が主流になれば、ユーザーは異なるコンテンツを視聴するために複数のコンテンツ配信プラットフォームに加入したり、専用アプリをいくつもダウンロードしたりする必要がなくなる。僕はNetflixユーザーなのだけれど、先日、Netflixにはないがどうしても観たいドラマを視聴するためにdTVにも加入した。こんな僕の悩みもなくなるわけだ。

コンテンツホルダーにとってもメリットがある。これまで、自前の配信プラットフォームを持たないコンテンツホルダーたちは、NetflixやHuluなどの外部のプラットフォームに乗っかってコンテンツを販売するしかなかった。当然、この方法では中間マージンを取られてしまうわけだが、ユーザ直販型のPulitのモデルを利用すれば、より高い利益率を確保しながらコンテンツを販売できる。

一方でPulitは、コンテンツホルダーが弊社のサーバーにコンテンツを乗せた後、ユーザーがストリーミングする際に発生するトラフィック容量に従量制課金をするかたちでマネタイズする。

Pulitのコア技術

Pulitの配信モデルを可能にするのが、Pulit独自の電子透かし技術と、シームレスなコンテンツ視聴を可能にする「Pulit SDK」だ。

PulitのMDIの例。この画像にURLやコンテンツの利用条件などの情報が埋め込まれている。

MDIのように、情報が埋め込まれた画像の代表例がQRコードだ。しかし、このような従来の方式では、SNSなどに画像をアップロードする際のJPEG圧縮により画像が劣化し、「95%以上のデータが閲覧不可能になってしまう」(Lee氏)そうだ。

一方、Pulitはそのような劣化にも耐えうる電子透かし技術を開発した。これは、圧縮によって取り除かれてしまう空間周波数が高い領域ではなく、中間の領域に情報を埋め込むというものだ。

また、MDIの隅にある丸いカラフルなマークは、画像に埋め込まれたデータを解析するためのヒントが埋め込まれており、いわば”解析ガイドブック”の役割をしている。

そして、URLやMDIからのシームレスなコンテンツ視聴を可能にしているのがPulitの”Viewerアプリ”だ。

ただし、Pulitは専用アプリを自前で提供するのではなく、SDKを提供してサードパーティアプリにコンテンツの視聴機能を搭載してもらうというアプローチを採っている。

先ほど説明した”MDIを観る”ボタンは、提携アプリがデバイスにダウンロードされていれば表示される仕組みだ(仮にTwitterとPulitが連携しているとした場合、Twitterアプリをダウンロードしていればボタンが表示される)。

正式リリースは2017年12月予定

これまでに、Pulitは韓国のBonAngels Venture Partnersなどから合計5000万円を調達している。サービスの正式リリースは2017年12月の予定だ。

「12月サービスリリースに向けて、国内のすべての放送関係者、出版関係者に事業展開を進めて行きたいと思っております。最終的なビジョンとして、日本国内のコンテンツホルダーが発信に困らない世界、そしてより良い作品を作ることに集中できる世界を目指しております」とLee氏は語る。

訪日外国人観光客と飲食店を繋ぐグルメサービス「Japan Foodie」、運営が1.3億円の資金調達

インバウンド観光客および飲食店向けのグルメサービス「Japan Foodie」を運営する日本美食は6月20日、第三者割当増資により総額1.3億円の資金調達を実施したことを発表した。

引受先は、イノベーション研究所 代表取締役社長の西岡郁夫氏、MSキャピタル パートナーの袁小航氏、個人投資家の千葉功太郎氏、ピー・アンド・イー・ディレクションズ 代表取締役社長の島田直樹氏、ヤフー執行役員の田中祐介氏のほか、レジェンド・パートナーズだ。

訪日外国人観光客、飲食店の課題を解消するサービス

Japan Foodieは、訪日外国人観光客および飲食店向けのグルメサービス。厳選された日本国内の飲食店を紹介する「メディア機能」、予約と事前決済が行える「予約機能」、QRコード方式かつ9種類のスマホ決済に対応する「スマホ決済機能」という3つの機能を保有している。これにより、訪日外国人観光客と飲食店の双方が抱える悩みを解決するという。

両者が抱える悩みとは一体何か——日本美食 代表取締役のLu Dong(董路)氏はこう語る。

「日本には美味しい飲食店がたくさんあり、訪日外国人観光客の多くは“日本食”を食べることを楽しみにしています。しかし、どのお店に行けばいいのか、何を食べればいいのか、全然分からない。『食べログ』や『ぐるなび』など日本人向けのグルメサービスはありますが、訪日外国人観光客向けのものはなく、予約も取りにくい。また中国はキャッシュレス、カードレスの社会が進み、スマホ決済が当たり前となっていますが、日本はまだ現金主義。決済方法が非常に少ないです」(Dong氏)

Dong氏自身、日本国内の飲食店に対して課題を感じる一方、飲食店側も訪日外国人観光客の「No Show(いわゆる無断でのバックレ、連絡なしで来店しないケースだ)率」が高い、という課題を持っていた。そこで、Dong氏はこのスキームを考えた。

訪日外国人観光客に対して、東京カレンダー創刊チームが厳選した飲食店情報を提供するほか、事前にスマホ決済による予約を行えるようにする。飲食店側には事前に許可をとった上でJapan Foodieに掲載し、システムを導入してもらう。これによって、訪日外国人観光客が感じる課題を解決するだけでなく、飲食店側のNo Show率も低下させる。実際、Japan Foodie経由での予約者のNo Show率は0パーセントだという。

また、飲食店側は新規集客を行えるだけでなく、スマホ決済にも対応できるようになる。

成果報酬型の送客手数料でマネタイズ

サービス開始から約半年で、提携先も含めて日本全国8000店舗(日本美食が直接契約しているのは360店舗)以上の飲食店に利用されているJapan Foodie。飲食店をリストアップし、掲載する前に営業をかけているそうだが、なぜ、ここまで利用店舗を増やせているのか。Lu Dong氏によれば、リスクが一切ないところが好評だという。

「Japan Foodieはユーザーはもちろん無料で使えますが、飲食店側も初期費用は一切かかりません。初期費用をかけずにスマホ決済のシステムを導入することができます」(Lu Dong氏)

飲食店側は成果報酬型で送客手数料を日本美食に支払うだけでいい。この手軽さにより、飲食店側の導入も進んでいるそうだ。今後は調達した資金をもとに、新機能の開発やサービス改善、人員の増強に充てる予定だという。

若者向けメディアのViceが4億5000万ドル調達――上場も近い

Vice Mediaが未公開株式投資会社、TPGから4億5000万ドルの資金を調達した。投資後の会社評価額は57億ドル前後だったもよう。

Viceの共同ファウンダー、CEOのShane Smithは今日(米国時間6/19)、CNBCに出演してこの資金調達と上場を含む将来計画について質問に答えた。

いつもどおり謎めいた発言が多かったものの、Smithは資金調達について「仮にわれわれが上場を目指すとしているなら…ホッケースティック型の急成長を維持してそれに見合う売上を得る〔必要があるだろう〕」と述べた。

Smithはまた「最近の上場(特にSnapの場合)を見ると、高い売り出し価格を得るためにはそれを裏づける売上をベースにしたストーリーが必要だとわかる」と強調した。その上で、今回の資金調達はViceが対前年比ベースでさらに急成長を続けるために必要だったと認めた。

同社は特にVice Studiosを立ち上げるための資金を必要としている。このサービスはスクリプトが用意されたマルチスクリーンの番組を提供し、既存のニュースやドキュメンタリー番組を補完するものだ。Viceの既存の13のチャンネルにはVICELANDや人気のドキュメンタリー、VICE on HBOなどが含まれる。

Viceは調達した資金をOTT(高速な動画配信)ネットワークや熱心なファン向けのサブスクリプション契約の構築にも充てるという。 2018年の第1四半期までに80カ国でコンテンツを配信できるようにすることを目指している。

Smithは「われわれの現在の目標はミレニアル世代向けの世界最大のビデオライブラリーを構築することだ」と説明した。これに成功すれば他のメディアはそうしたコンテンツを配信しようとすればViceにライセンス料を支払わねければならない。〔Viceのプレスリリースは原文参照〕

WSJによれば、 既存の株主であるDisneyは今回のラウンドには参加していない。Disneyの4億ドル、18%の株式持ち分は新しい資金調達で希釈されたことになる。

〔日本版〕日本版Vicedではドキュメンタリーを中心とした記事が提供されている。動画ではAbema TVで6/23(金)に台灣黑社會を放映予定。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Alibaba、東南アジアにおけるUberのライバルGrabへの投資を検討中か

Alibabaは、東南アジアにおけるUberのライバルGrabへの投資を通じて、同地域へさらに攻勢をかけるつもりなのかもしれない。

Bloombergの報道によれば、Alibaba社長のジャック・マーは、同社と関係の深いSoftBankが率いるGrabの投資ラウンド(総額14億ドル)への参加を検討しているとのこと。さらにTechCrunchでは、AlibabaがGrabと投資に関する話し合いを行ったという情報を入手しており、Alibaba傘下のAnt Financialが運営する決済サービスAlipayがGrabアプリに導入される可能性も出てきた。また、AlibabaはGrabの決済プラットフォーム「GrabPay」にも関わろうとしているようだ。

本件に関して両社にコンタクトしたが、Grabはコメントを控えており、Alibabaからは返答も得られなかった。

シンガポールに拠点を置くGrabは、昨年9月に行われたシリーズFで7億5000万ドルを調達しており、その際のバリュエーションは30億ドルだった。設立から5年が経ち、Grabアプリのダウンロード数は4500万回を記録しているほか、ドライバーの数は90万人を超え、現在営業している7か国での1日の合計利用回数は250万回におよぶという。

AlibabaとAnt FinancialのどちらがGrabに投資するかはまだハッキリしていないが、両社ともネット業界の成長が著しい東南アジアでいち早く礎を築くべく、同地域での投資を加速させている。Alibabaは東南アジアで活躍するEC企業Lazadaの株式の過半数を握っている一方で、Ant FinancialはAscend Money(タイ)やMynt(Philippines)といった金融サービスを提供する企業に投資しているほか、インドネシアでも金融サービス系のジョイントベンチャーを立ち上げた

AlibabaがGrabに興味を示したことで、Alibabaと同社最大のライバルTencentは、東南アジアやアジアの他の地域で新しい戦いを繰り広げることになるかもしれない。なお、東南アジアのインターネット市場は今後10年間で2000億ドル規模に成長すると予測されている

先月お伝えした通り、TencentはUberやGrabと競合するインドネシア企業Go-Jekへの投資を決め、12億ドルのラウンドでリードインベスターを務めることになった。本件に詳しい情報筋によれば、AlibabaとAnt FinancialもGo-Jekと話を進めていたが、結局Tencentが本件を勝ち取ったようだ。ちなみに、Go-Jekはまだこの資金調達について正式なアナウンスを行っていない。

両社のインドでの戦いはさらに熱を帯びている。Tencentは、AmazonのライバルであるFlipkartの投資ラウンドにMicrosoftやeBayらと共に参加した一方、Alibabaは決済・EC事業を行うPaytmをインドの投資先に選んだ

先月SoftBankが14億ドルという大金をPaytmに投資したが、それ以前にもAlibabaとAnt FinancialはPaytmに大金を投じていたのだ。そう考えると、Grab絡みの話でこの3社の名前が一緒に出てくるのも何ら不思議ではない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

韓国の電子書籍企業RidibooksがシリーズCで2000万ドル調達――市場は未だに年25〜30%のペースで成長

アメリカやイギリスでは電子書籍売上に陰りが見られるが、韓国では未だに多くの人が紙のページをめくる代わりにモバイル端末をスワイプしながら読書を楽しんでいる。ウェブ漫画の人気もあってか、同国の電子書籍売上は毎年増加傾向にあるのだ。そんな韓国で最大規模の電子書籍プロバイダーと言われているRidibooksが、成長を続ける市場でさらに攻勢をかけるべく、シリーズCで2000万ドルを調達した。

今回のラウンドにはPraxis Capital Partnersm、ShinHan Finance Investment、Company K Partnersらが参加していた。調達資金は各プロダクトのユーザーエクスペリエンスの向上に使われる予定だ。なお、彼らのビジネスはRidibooksと呼ばれるオンラインストアや電子書籍リーダーのRidipaper、そして1月にローンチされた連載小説・漫画用のプラットフォームRidistoryから構成されている。

Ridibooksで事業部長を務めるTaeWoo Kimによれば、韓国の電子書籍売上は毎年25〜30%も伸びているという。ちなみに、Ridistoryはシリーズものの小説や漫画を求めるユーザーの声に応えるかたちでローンチされ、売上1位の恋愛小説『Under the Oak Tree(ナラの木の下で)』のビュー数は既に100万回を突破している。

また、昨年のRidibooksの売上は5000万ドルで、250万以上のユーザーがこれまでに同社のプラットフォームから1億7500万冊の電子書籍をダウンロードしている。登録されているタイトルの総数は78万4000冊におよび、プラットフォームに参加している出版社の数は2000社にのぼる。さらに、2014年末に行われた800万ドルのシリーズBやそれ以前のラウンドを含め、Ridibooksがこれまでに調達した資金の合計額は3500万ドルとなった。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Slack、再度5億ドル調達へ――エンタープライズ・チャットサービスの確立を目指す

Slackは再度資金調達ラウンドを進めている。 Recodeによれば50億ドルの会社評価額で5億ドルの資金調達を試みているという。この資金は大企業を顧客に加えて新たなビジネスモデルを確立するために必須だ。

昨夜のBloombergの記事によれば、AmazonはSlackの買収に90億ドルを提示したという。Slackはこの買収に興味を示していないようだが、評価額は50億ドルからさらに上昇する可能性がある。

Slackが大口顧客獲得や新たな大型資金調達ラウンドを進める上で、こうしたトレンドは追い風となるだろう。大企業の多くは(たとえ機能が劣っていても)既存のシステムにロックインされている可能性が高い。大口顧客の獲得と同時にSlackの優れたデザインを発展させていくには多額の資金を必要とする。

Slackはシリコンバレーの寵児だ。単にシリコンバレーだけでなく世界のスタートアップ・コミュニティーの心をしっかりつかんでいる。同社のチャット・インターフェイスはきわめてシンプルなデザインで、誰であれ訓練の必要なしにすぐに使える。Slackではこのサービスを大きなチームがプロジェクトを進める上でのツールにしようと努力している。Slackの機能はこれまでもメジャー・アップデートを重ねて進化してきた。たとえばこの1月の メッセージのスレッド化だ(Slackはスレッドの開発に1年以上かけたという)。

Slackのメリットであるシンプルなインターフェイスを維持しようとするあまり、大企業が要求するような機能の導入に消極的であると、結果として成長の頭打ちを招きかねない。
昨年10月の発表によれば、1日当りアクティブ・ユーザーは500万、有料ユーザーは150万だった。Recodeの記事によれば、年間10億ドルの売上があるもののまだ黒字化を達成していないという。

今年5月のアップデートでは特定の質問に対して詳しい情報を持っているメンバーにすぐ回答してもらえる仕組みが導入された。Slackを利用するチームのサイズが大きくなればなるほど情報は混雑してくる。既存のビジネス・コミュニケーション・ツールと競争するには、Slackは使いやすいシンプルなインターフェイスを維持しつつ、情報の混雑をかきわける方法を編み出する必要がある。もちろんライバルはいつでもSlackの機能をコピーできる。SlackはFacebookが容赦なくSnapの機能をコピーして成長を続けた例を教訓とすることができるだろう。

今年に入ってSlackははっきりと大企業に狙いを定め、エンタープライズ・グリッドをスタートさせた(これも1年以上前から準備されていた)。5月には画面共有がサポートされた。こうした段階的なアップデートはすべてライバルの先を越して大企業ユーザーを取り込もうとする努力だ。

昨年4月、Slackは38億ドルの会社評価額で2億ドルの資金を調達している。SaaS企業、成長企業を探している強気の資金マーケット(先週はやや陰りがみえたが)はSlackを利するだろう。新たな資金調達は成長をさらに加速し、単にSlackの機能を強化するだけでなく、企業イメージも改善するに違いない。これは大企業に対しライバルのプロダクト、たとえばMicrosoftなどの既存のツールからの乗り換えを説得するにあたって大きな武器となる。

新たな資金調達ラウンドについてSlackの広報担当者に問い合わせたがまだ回答はない。

F画像: David Paul Morris/Bloomberg via Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

医師向けのInstagram――Figure 1が1000万ドル調達

Figure 1は血を見るのが苦手な人向けではないが、どうやら投資家の心は上手くつかんだようだ。同プラットフォームは100万人以上の医療関係者が登録するソーシャルネットワークのようなもので、ユーザーは珍しい症状や新しい治療法、さらには治療事例を投稿できるようになっている。この度、運営元のFigure 1, Inc.はシリーズBで1000万ドルを調達した。

医師向けのInstagram」とも呼ばれるFigure 1が行った今回の資金調達では、Kensington Capital Partnersがリードインベスターを務めた。さらに、Samsung NEXTや保険コングロマリットのJohn Hancock(アメリカ以外ではManulifeとして知られている)、スタートアップ向けに貸出を行うWTI、カナダの投資会社Hedgewood、そして既存投資家のUnion Square Ventures、Rho Canada Ventures、Verison One Venturesらがこの度のラウンドに参加した。

先週、Figure 1のファウンダーでCEOのGregory Leveyと話す機会があり、最近のオペレーションについて聞いてきたので、以下にその様子をお伝えしたい。なお、トロントを拠点に4年前に設立され、今では50人の社員を抱えるFigure 1は、これまでに合計で2000万ドルを調達している。

TC:Figure 1に登録できるのは医療関係者だけというイメージが広がっていますが、そうではないんですよね?

GL:はい、誰でも登録できます。実際にサービスに興味を持ってくれているのは、ジャーナリストとVCばかりだと冗談を言っているくらいですから。でも写真やコメントを投稿できるのは医療関係者だけです。それ以外のユーザーは、投稿内容を見ることはできますが、何かを投稿することはできません。医療関係者だという認証を受けたユーザーは、その他にもさまざまな機能を利用できます。

TC:”医療関係者”というのは、医師と看護師のことを指していますよね。学生はどうですか?

GL:プレメディカル(医学部進学課程)の生徒は対象に含まれませんが、看護学生は例外的に医療関係者とみなしています。さらに、アメリカ中の医学生の約70%がFigures 1に登録しています。

TC:つまりユーザーのほとんどがアメリカ国内にいるということですか?

GL:全体の約3分の2がアメリカに住む人たちで、その次にエンゲージメント率が高いのが南米のユーザーです。彼らのニーズに応えるため、(ブラジル人を大量に雇った結果)オフィスの一部がポルトガル語圏のようになっています(笑)。アプリもスペイン語版・ポルトガル語版の両方が準備されています。あとは、イギリスやオーストラリアのユーザーが多く、新興国の人たちもFigure 1を気に入ってくれているようです。ただ、新興国では回線スピードの問題がありますし、一般に販売されている携帯電話の記憶容量が少ないため(Figure 1のアプリを)インストールしておくのもなかなか難しいようです。

TC:具体的な登録ユーザー数やアクティブユーザー数についてはいかがでしょう?

GL:今は次なるマイルストーンに向けて努力を重ねている段階ですが、以前データを公開した時点では登録者数が200万人強、MAU(月間アクティブユーザー数)は数十万人でした。ちなみにアメリカの医師の総数は80万人です。

TC:エンゲージメントに関してはどうですか? 他のソーシャルネットワークのように、一部のユーザーが積極的に情報を発信していて、他の人たちはただ単にそれを覗き見ているという状況でしょうか?

GL:他のソーシャルネットワークとそこまで大差ないと思いますが、もしかしたらFigure 1の方がユーザー同士の議論が活発に行われているかもしれません。最近では、事例をテキストベースで投稿できる機能をローンチし、写真撮影の許可がとれない人たちでも文字で何が起きたかを共有できるようになりました。精神医療を専門とする人たちもこの機能を使って事例を投稿していて、プラットフォーム上の情報量が一気に増えました。

サービスが成長するにつれて、ユーザー行動についても色んなことを学びました。当初私は、ユーザー全員が事例を投稿するべきだと思っていましたが、最近ではFigure 1のサービスはTwitterよりもYouTubeに近いと気づき始めたんです。これはどういうことかというと、私はYouTubeに動画を投稿したことは一度もありませんが、いつも視聴者として動画を楽しんでいます。同様にFigure 1のユーザーも、投稿されている情報に価値を感じている一方で、全員が自分の治療事例を共有したいと思っているわけではありません。でもそれでいいんです。

TC:専門分野によってコンテンツに偏りがでないよう何か対策をとっていますか? それとも、そこはユーザーにまかせていますか?

GL:最初は専門分野をひとつに絞ろうという話をしていたんですが、結局かなり門戸を広げ、臨床検査技師から精神科医までさまざまな専門の人をユーザーとして迎え、そこからは自然と増えていきましたね。意識的にある専門分野に特化していこうとは考えていません。

TC:最近はマネタイズに向けた実験を開始し、スポンサードコンテンツの掲載を始めましたよね。企業の支援の下、ある医師が他の医師にプラットフォーム上で治療法などについて教えるプログラムもあるようですが、そちらの調子はいかがですか?

GL:上手くいってますよ。まだ始まったばかりですが、かなり多くの企業から問い合わせをもらっていて、私たちでは手に負えないほどです。もちろんそれは良いことなんですけどね。また、コンテンツの質にはかなりこだわっているので、今のところユーザーの反応も上々です。むしろユーザーが投稿したコンテンツよりも、スポンサードコンテンツのエンゲージメント率の方が高いくらいです。

TC:今後はFigure 1主導のコンテンツの数を増やしていく予定ですか?

GL:私たちはメディア企業になりたいわけではないので、そうしないように気をつけています。Figure 1の中心はあくまでユーザーです。

TC:調達資金の使い道について教えてください。

GL:まずはユーザーベースの拡大です。現状マネタイズも上手くいっているので、収益面も(さらに)強化していきたいですね。サービス内容の拡充や新しい収益源の獲得も検討しています。4年前の設立時、Figure 1は新しくてワクワクするようなサービスでしたが、今後もそうあり続けたいと思っています。例えば治療事例にはとても価値があるので、このコンテンツを活用するために先日機械学習の専門家をチームに迎えました。これまで私は(一般的に企業が設定している)マーケティング予算について全く理解していませんでしたが、スポンサードコンテンツも収益面で大きな可能性を秘めているとわかりました。さらに、スタッフ向けの特別機能を開発することに興味をもっている医療機関とも話を進めています。

TC:他分野への進出も考えていますか?

GL:笑い話ですが、「競馬業界でも同じサービスをやるべきだよ!」と言う友人がいて、私は「いやー、それはどうかな」と返していました。一方で、歯科業界には独自のニーズがありそうなので、そちらへの進出については現在検討中です。あとは私自身が犬好きということもあり、獣医学にも興味を持っています。Figure 1にもたくさんの獣医が登録してくれていますが、彼らは自身は事例を投稿することができません。でも彼らの中には、(人間の事例に対して)「これは猫科の動物にも見られる症状ですね」といったコメントをする人がいて、他のユーザーから「ここから出て行け」といった具合で追い払われてしまっています。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

レンタルスペース手配代行のエイチが資金調達――リクルートとの共同ビジネス構想も

レンタルスペースの手配代行サービスを手がけるエイチは6月14日、複数の個人投資家を引受先とした第三者割当増資を実施し、資金調達を実施した。調達額は非公開だが、数千万規模と推測される。

エイチが手がけるのは、同社が「スペースコンシェルジュ」と呼ぶ法人向けのレンタルスペース手配代行サービス。会議室だけでなく、コワーキングスペースやカフェなどを手配することも可能だ。

同サービスは無料で利用することができ、エイチは会場側から紹介料を得るかたちでマネタイズしている。紹介手数料はレンタル費用の約25%だという。これまでに、NTTドコモソフトバンクリクルートなどが同サービスを利用している。

エイチでは、1万件以上のレンタルスペースをデータベース化し、顧客からの要望やクレームもデータとして取り入れることで、顧客のニーズに適した会場を提示する。エイチ代表の伏見匡矩氏は「会場を手配するという作業は、PDFの申込用紙を印刷し、総務課に提出して、郵送するというような非常に煩雑なもの。エイチが提供するバリューは、その”面倒くささ”の解消だ。エイチでは、約30秒で手配依頼のフォームを埋めることができ、大幅な時間の削減ができる」と話す。

エイチ代表の伏見氏は、グループ内の別会社として、ベビー用品レンタルの「Babyrenta」などを手がけるココロイロも経営している。そのため、オフィス備品やケータリング(およびそれに付随する物流業務)のレンタルをグループ内の別会社で行うことでコストを削減したと伏見氏は語る。

ちなみに、TechCrunch Japanでは2015年7月に同社に取材を実施しているが、その際にエイチが手がけていたのは、コンシューマー向けのスペースマッチングサービスだった。現在、同社はコンシューマー向けビジネスと法人向けビジネスの両方を行ってはいるが、いまの事業の中心は法人向けビジネスだという。

伏見氏は、この”toC”から”toB”へのピボットの理由として、「単純に法人向けビジネスでのニーズを感じたのが大きな理由だ。また、法人向けのビジネスは(伏見氏がCSOとして経営に参画する、求人サイトの)リジョブから得た経験も活かせる領域だと感じた」と話す。

2015年4月創業のエイチは、リクルートとスタートアップが協働して新規事業を開発することを目指す「MEET SPAAC!」の第1期生メンバーとして採択されている。伏見氏は「まだ内容については公開できないが、具体的な共同ビジネスの構想はあり、今年の11月か12月頃にはサービスをローンチできそうだ」と話している。

Mrs. Wordsmithが200万ポンドを調達――絵で単語を覚える新サービス

何かが間違っているような気がする。ニュースフィードは、不愉快で不安になるブレグジットやトランプに関する報道や、広告収益に関する方針に不機嫌な顔をしている若者の写真で溢れかえっている。私たちは大事なことを忘れてしまったようだ。それは、文字の力だ。「新語法(Newspeak)」に関する記述の中で、ジョージ・オーウェルは言葉を操る者こそが世界を操ると綴っている。

「新語法の目的は思考の範囲を狭めることだと気づいていないのか? 最終的には思考犯罪を行うのに必要な言葉さえ存在しないような世の中になろうとしているんだよ。必要な概念は全て意味が限定された一語で表現され、その言葉に付随する他の意味は全て消され、忘れ去られてしまうんだ……このプロセスは僕や君が死んだ後もずっと続くだろう。毎年言葉の数は減っていき、思考の範囲も狭まっていってしまう。だからといって、現時点では思考犯罪を犯す理由や言い訳があるということではない。全ては自制心や現実管理の問題だ。でも、最終的にはその必要さえなくなってしまう……遅くとも2050年までには今僕たちがしているような会話をできる人は1人もいなくなってしまうということをWinston、君は分かっているのかい?」

――ジョージ・オーウェル『1984年』

上記のような世界が現実にならないことを祈っている。今ならそれを防ぐことができるはずだ。神経科学の分野では、人間が新しい情報を習得する際、見慣れない、もしくは面白い情報と一緒に学習することで、記憶の定着度が上がると言われている。であれば、そのような形で学習を支援するプラットフォームをつくることで、子どもが喜んで言葉を学習するようになり、『1984年』が描くディストピア世界の到来を防ぐことができるのではないだろうか。

1年前に設立されたエドテック企業のMrs. Wordsmithは、まさにそんなプラットフォームをつくろうとしている。高品質なビジュアルコンテンツの制作を行っている同社は、この度シードラウンドで200万ポンドを調達した。ロンドンを拠点とするKindred Capitalがリードインベスターを努めた今回のラウンドには、アメリカでエドテック企業への投資を行うReach CapitalやSaatciNvest、Raopart Asse Managementらが参加した。Mrs. Wordsmithの狙いは、月額制のプログラムで言語教育をディスラプトすることだ。

現状、同社のサービスは全て紙ベースで提供されている。サービス内で紹介される語彙は、教育機関が読み書きの能力の向上に繋がると判断した、比較的使用頻度が少なく難しい単語1万語に含まれているものだ。

エドテック企業が集うThe Europasにて資金調達のニュースを伝えた、Mrs. WordsmithファウンダーのSofia Fenichellは、「私たちが対象としているような語彙のビジュアル化を試みた出版社はこれまで存在しませんでした。Mrs. Wordsmithはどの単語を教えるかだけでなく、単語と紐づいたイラストや間隔反復の技術を利用し、新しい教育方法を考えだしたのです」と語った。

自分の子どもの書く力を育てるために、2016年にCEOのFenichellが設立したMrs. Wordsmithは、子どもが単語を学習し、覚え、使うまでの過程を変えようとしている。さらに、最終的にはその効果が言語能力や成績の向上という形で表れると同社は考えている。

語彙力が学業的な成功につながるというのは、全くその通りだ。しかし、読み書きの力を増幅させる1万語もの語彙の学習を、Mrs. Wordsmithのように効率的に支援する方法はこれまでほぼなかった。

同社はサブスクリプション制の語彙習得プログラムを開発し、視覚的で覚えやすい方法で子どもの学習を支援しようとしている。見慣れない情報と組み合わさることで記憶の定着率が上がるという神経科学の考え方に基いて、各単語は映画『マダガスカル』や『モンスター・ホテル』の制作にも携わり、数々の賞に輝いたCraig Kellman(Mrs. Wordsmithではアートディレクターを務める)のチームによってイラスト化された。

同社は今回調達した資金を使い、ユーザーに人気の紙ベースのプロダクトをさらに進化させると共に、テクノロジー部隊を構築して、消費者と学校の両方をターゲットに海外展開を進めていく予定だ。

Kindred CapitalのLeila Zegnaは「世界中の子どもたちの学習を支援するためにMrs. Wordsmithが考案したユニークなアプローチや、彼らの野心的なビジョンにはとてもワクワクしています。最初のプロダクトは大成功をおさめ、ユーザー数と売上が大きく伸びました。しかも、ユーザーベース拡大の大部分は口コミの力によるもので、Mrs. Wordsmithが短期間のうちに築いたブランドの強さを証明しています。紙ベース版・デジタル版の両方にまだまだ大きな可能性があると私たちは考えています」と話す。

さらに、Reach CapitalのWayee Chuは「Mrs. Wordsmithは視覚的な学習方法と高品質なコンテンツを求める市場の声に応えようとしています。私たちはこれまで、彼らほどの学習用ビジュアルコンテンツをつくっている企業を見たことがありません。さらに教育者・消費者の両方を対象に、彼らはサービス開始早々から素晴らしいトラクションを残してきました。ユーモアと取り組みやすさ、そして学習効率を兼ね備えた彼らのプロダクトは、アメリカでもきっと受け入れられることでしょう。今年中を予定している、Mrs. Wordsmithのアメリカでのローンチに携われるのを楽しみにしています」と語った。

今回のラウンドを受けて、Kindred CapitalのLeila Zegnaと、ゲーム会社PlayifhとSuperCellの株主でもあるエンジェル投資家のBasma AlirezaがMrs. Wordsmithの取締役会に参画したほか、ケンブリッジ大学の自然言語情報処理研究所を率いるTed Briscoe教授が顧問に就任した。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

処方箋デリバリーのScriptDash、社名をAltoに変更し2300万ドル調達

デジタル薬局のScriptDashは米国時間12日、社名の変更とシリーズBで2300万ドルを調達したことを発表した。新しいAltoという社名は、同社が今後単なるデリバリーサービス以上のビジネスを行っていくという意気込みの表れだ。

「Altoのラテン語源は”高められた”や”高い”という意味の言葉です。この言葉の通り、私たちはデジタル薬局のカスタマーエクスペリエンスを高めていきます」と共同創業者のMattieu Gamache-Asselin氏は語る。

2015年に創業のAltoは、これまでに10万以上の処方薬をサンフランシスコ・ベイエリアに住む1万2000人の患者に届けてきた。同社は今後、医者やクリニック向けに薬の処方を簡略化するバックエンド・システムを提供していく構えだ。

「医者や専門家たちが話し合い、協力して何かを生み出そうとしていますが、彼らにはテクノロジー・プラットフォームが必要なのです」とGamache-Asselin氏は電話で語る。

もちろん、医者や薬局のコミュニケーション問題を解決しようとする企業はAltoだけではない。ボストンを拠点とするZappRXは、現代の薬局業界に存在する古びたインフラストラクチャーにとって代わるモバイルソリューションを提供する企業だ。また、Capsuleはニューヨークで薬品のデリバリービジネスを行っているし、Zipdrugは処方薬デリバリーのPostmatesのようなビジネスを行っている。

それぞれの企業が異なる強みを持ち、異なるアプローチで問題を解決しようとしている。しかし、Altoがやろうとしているのは、バックエンドを近代化し、同社のコミュニケーション・プラットフォームをプロバイダーたちに使ってもらうというものだ。

この取り組みによってAltoの売上が伸びる可能性もある。Alto共同創業者のVlad Blumen氏によれば、処方薬の補充(リフィル)は薬局ビジネス全体から見れば、ほんの僅かな規模でしかないという。店舗での薬品販売や先日付の処方箋の発行が一番活発な領域なのだそうだ。だから、Altoが成長するためには、医者が同社のシステムを通して多くの薬を処方する必要がある。それを考えれば、同社が処方薬のデリバリーだけでなく、バックエンドのシステムを構築しようとしているのは理にかなったことだと言える。

また、Altoは今回調達した資金を利用してBay Area以外の地域にも進出していく構えだ。同社の競合企業の多くは特定の都市や地域にフォーカスしている。そのため、地域を拡大した後、Altoがどのようにビジネスを運営していくのかには注目だ。

今回の資金調達ラウンドをリードしたのはGreenoaks Capitalで、その他にもJackson Square Ventures、DSTのRahul Mehta氏、Meritech CapitalのCraig Sherman氏、Y CombinatorおよびTwitch出身のJustin Kan氏、そして彼の兄弟で現Cruise COOのDaniel Kan氏などが本ラウンドに参加している。

[原文]

(翻訳:木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

ドローンレースを主催するDRLがシリーズBで2000万ドル調達

Drone Racing Leagueは米国時間12日、シリーズBで2000万ドルを調達したと発表した。リード投資家はイギリスのテレコミュニケーションズ企業であるSkyLiberty Media Corporation(F1の興行権をもつ企業)、Lux Capitalだ。

Drone Racing League(DRL)はこれまでに3度の資金調達を実施しており、合計で3200万ドルを調達している。Allianz(DRLのタイトルスポンサーでもある)とWorld Wrestling Entertainmentなどの新規投資家も今回の調達ラウンドに参加している。

知らない人のために述べておくと、DRLはアマチュア・ドローンレーシングの流行をうけて2015年に設立された団体だ――今ではこの領域で確固たる地位を確立している。昨シーズンは7500万人以上のドローンファンがDRLのレースを観戦した。視聴チャネルとしてオンラインとESPNとの提携で放送されるTV番組がある。

DRLが新しく調達した資金から恩恵を受けるのは確かだが、創業者兼CEOのNicholas Horbaczewski氏によれば、今回の資金調達ラウンドが実現したのは、DRLが投資家と戦略的な共同ビジネスを行うことを望んだ結果だという。

例えば、Liberty Mediaは世界中のスポーツエンターテイメントとブロードキャスティング業界にコネクションを持っている――同社はLive Nation、Sirius XM、Atlanta Bravesなどの株式を保有する企業だ。また、Liberty MediaはF1の興行権をもつフォーミュラーワン・グループも買収している。具体的なことはまだ発表されていないが、DRLとFormula 1が非常に似たビジネスモデルを持っていることを考えれば、この2つが何らかのかたちで共同ビジネスを行う可能性は高いだろう。

DRLの2017年シーズンは6月20日に開幕する。ESPNのほか、SKY Sports、DisneyXDなどのTVネットワークでも放映される予定だ。40カ国で放映された昨年に比べ、今年は75カ国以上で放映されるという。

DRLのレース映像は生放送ではないのだが、Horbaczewski氏によれば、まだ始まって間もないレーシングリーグにとってはこの方が良いのだという。実際にレースが行なわれた時間よりも遅れて放送することで、異なるタイムゾーンに住むユーザーにコンテンツが行き届くようにしているのだ。また、こうすることでDRLは戦略的に放映スケジュールを組み立てることができ、ESPNやSkyが放送する他のスポーツイベントと時間帯が被らないようにすることが可能だ。

しかし、すべてのレースが”ライブ”で撮影されているのは確かであり、DRLがより多くのモメンタムを獲得すれば、将来的に彼らが生放送に踏み切る可能性は多いにある。

[原文]

(翻訳:木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

電通V、DNAシークエンシングの米Grailに出資――ファンド規模は2倍の100億円へ

電通が運用するCVCの電通ベンチャーズは、がんの早期発見に向けた血液検査手法を開発する米国のGrailに出資したと発表した。

Grailは2016年1月にシリーズAで1億ドルを調達しており、その際には、ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス、Illumina、Arch Venturesなどが調達ラウンドに参加している。今回はそれに続くシリーズBの調達ラウンドだ。

2017年3月1日(米国時間)、GrailはシリーズBのファーストクローズで9億ドルを調達したと発表している。今回電通ベンチャーズが参加したのはセカンドクローズという位置づけであり、GrailはこのシリーズB全体で10億ドル〜18億ドルの調達を目指している。電通ベンチャーズは具体的な出資金額を明らかにしなかったが、関係者によれば数億円程度の出資金額だと見られる。

GrailはDNAシークエンス・キット大手のIlluminaからのスピンアウトによって誕生したスタートアップ。Illuminaから継承した独自のDNAシークエンシング技術をもち、大規模な臨床実験を裏付けとした血液検査手法を開発している。

Grailが開発する血液検査手法は、内視鏡や針を使って腫瘍組織を採取する従来の手法とは違い、血液を使って診断を行うというもの。血液などの体液を使った検査手法はリキッドバイオプシーと呼ばれ、患者への負担が小さい低侵襲な検査手法として注目されている。

電通ベンチャーズのジェネラルパートナーである平山悠氏は、同社がGrailに注目した理由として、「大規模な臨床実験を行うGrailは、ライフサイエンス企業であると同時にデータサイエンス企業でもある。また、予防医療という分野はマーケティングのノウハウが活かせる領域。そのことから、電通グループのクライアントやパートナー企業とのアライアンスによって彼らのサポートができると考えた」と話す。

「直接的に関わりのある医療分野の企業だけではなく、データの解析技術をもつ企業やデータセンターを有する企業など、幅広い種類のパートナーを紹介していきたい」(平山氏)

ファンド総額を100億円に増額。日本を含むアジア、欧州への投資強化

Grailへの出資の発表と同時に、電通ベンチャーズはファンド総額をこれまでの50億円からその2倍の100億円に増額することも発表した。

マネージングパートナーの笹本康太郎氏は、「2015年4月に誕生した電通ベンチャーズだが、これまでの投資案件には非常に良い手応えを感じている。今後、ファンド規模と人員を増やし、ビジネス開発を含む投資先企業へのサポートを強化していく」と話す。

グローバルファンドとして海外企業を中心に投資を行ってきた電通ベンチャーズだが、これまでは米国企業への出資案件が多かった。笹本氏は「電通グループがもつ専門性を活用できる幅広い領域の企業に投資するという方針は今後も変わらない。しかし、今後は日本を含むアジア太平洋や欧州地域への投資も強化していく」と話している。

電通ベンチャーズがライフサイエンス系のスタートアップに出資したのは今回で3度目だ。同ファンドはこれまでに健康管理デバイスのCueに出資しているほか、コオロギから抽出したタンパク質で健康食品を作るEXOにも資本参加している。

電通ベンチャーズのチーム。右から2番目が平山悠氏、その左が笹本康太郎氏。

インド発、牛乳配達サービスのSupr Dialyが150万ドル調達――国内の営業地域拡大を目指す

牛乳配達はディスラプションとは無縁なサービスのように思えるが、インド発のスタートアップSupr Dailyはまさに牛乳配達の在り方を変えようとしている。Y Combinatorのプログラムを今年修了した同社は、この度サービス提供地域の拡大を目的に複数の投資家から150万ドルを調達した。

2月のSupr Dailyに関する記事の通り、同社のサービスの目的は、カオス状態にあるインドの牛乳配達システムを整備し、付随する品質問題を解決することだ。

インド政府の調査によれば、配達される牛乳の68%が配達人のせいで”汚染されている”可能性がある。彼らは収入を増やすために牛乳をかさ増ししているのだ。そのため、配達される牛乳には洗剤や苛性ソーダ、グルコースのほか、変色を防ぐために白い塗料や精製油が含まれているとTimes Internetは報じている。そこで、Supr Dailyは新鮮な牛乳を直接供給し、配達スタッフにも普通より高い賃金を支払うことで、本物の牛乳を顧客に届けようとしているのだ。さらに顧客は、牛乳と一緒に届けられるテスターを使って品質をチェックすることもできる。

Supr Dailyの主力商品は牛乳だが、定期的に食料品店に足を運ぶのが面倒という人向けに、パンや卵、バター、ココナッツミルクなども販売されている。

2015年に設立されたSupr Dailyは、現在ムンバイ市内の15地区でサービスを提供している。共同ファウンダーのPuneet Kumarによれば、配達数は間もなく100万件に達するとのこと。ローンチ時は、サービスが受け入れられるかを試すために意図的に営業地域を絞っていたが、現在Kumarともう一人の共同ファウンダーであるShreyas Nagdawaneは市場の拡大を狙っている。まずはムンバイ全体にサービスを広げ、その後に他の主要都市にも手を伸ばそうという考えのようだ。

「(調達した)資金はスケールのほか、今後インドの主要都市にビジネスを展開するため、どうやればひとつの都市を制覇できるのかという戦略を練るために使われる予定です」とKumarは話す。

また、Supr Dialyの株主には、Soma CapitalやGreat Oaks Ventures、122 West Venturesのほか、エンジェル投資家のPaul Buchheit(Y Combinatorパートナー)、Jared Friedman、Roger Eganなど、さまざまな投資家が名を連ねている。なお、昨年Roger Eganは、シンガポールを拠点に生鮮食料品のEC事業を行っていたRedmartをAlibaba傘下のLazadaに売却していた。

「食品を扱う私たちを支えてくれるような、食料品市場のことを良く知る人たちを投資家に迎えました」とKumarは話す。

Supr Dailyの業績に関する詳しい情報は明らかになっておらず、同社はY Combinatorのプログラムに在籍中の今年のQ1に売上が4倍になったとだけ語った。その一方で、Supr Dailyは他のオンデマンド事業やデリバリー事業とは違って採算がとれているとKumarは言う。

「1件1件の配達で利益が出ていますし、ユニットエコノミクスは健全な水準です」と彼は説明する。「バーンレートもかなり低いので、今回の調達資金があればスケールに時間がかかっても問題ありません」

「ラストワンマイルの配達にかかるコストは5セント以下で、Supr Dialyには(他の配達サービスと比べて)20〜30倍のコスト優位性があるので、私たちはかなり有利な立場にあると言えます」とKumarは付け加えた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

独自の配信技術は特許出願中――ターゲット広告のオメガが資金調達

前列右から2番目がオメガ代表の荒木康介氏

ビッグデータを活用したアドネットワーク事業を展開するオメガは6月9日、シードラウンドでSOLERA INVESTMENTKlab Venture PartnersVOYAGE VENTURESから資金調達を実施したと発表した。金額は非公開だ。

オメガは2016年10月に朝日新聞社と個人投資家2名から同社初となる資金調達を実施しており、今回が2回目の外部調達となる。

オメガは、独自に取得したデータを活用したアドネットワークの構築・運営を行うスタートアップ。同社の広告配信技術は国際特許出願中だ。オメガ代表の荒木康介氏は、「私たちは5社の企業と提携を結んでいて、彼らから取得した独自のデータを活用している」と話す。提携企業の名前は明かせないということだが、メディア系の企業が大半を占めるようだ。

「私たちが取得するデータは提携しないと得られないようなもの。提携先企業のサービス内における行動データなどが含まれる。従来の技術に使われるデータに加えて、3種類の新しいデータを組み合わせている」(荒木氏)

荒木氏は、角川デジックス(現、角川アスキー総合研究所)にてラーメンウォーカーなどの立ち上げを行ったあと、KLabに入社。新規事業担当として、SNS、ネイティブモバイルオンラインゲーム、Adtech、Fintechなど数々の新規事業の立ち上げを行ってきた。その後2015年8月にオメガを設立した。

オメガは今回調達した資金を利用してエンジニアの採用に力を入れるとしている。

Androidの始祖Andy Rubinの新会社Essentialは3億ドルを調達か…本番生産の資金として

Andy Rubinの新しいハードウェアスタートアップEssentialはこれまで、意外と騒がれなかった。Googleを突然去ったAndroidの創始者をめぐっては、憶測だけが渦巻いていた。

しかし、資金もこれまた、問題ではなかったようだ。Bloombergの報道によると、この生まれたばかりのスマートフォンメーカーは、研究開発から本番生産への移行のために3億ドルを確保したらしい。

同社のスポークスパーソンはコメントを拒否したが、Rubin自身はその資金調達の数日後にCodeカンファレンスのステージに立ち、“数億ドルの大金を調達した”、と聴衆に語った。そのときRubinは三本の指を立て、笑顔で繰り返した: “詳しくは言えないけど数億ドルだよ”。

それが本当なら、その、先月申請されたシリーズBによって同社は、ユニコーンまであと髪の毛数本という位置に達する。9億9300万ドルという評価額だ。非上場スタートアップの評価額を投資企業に提供しているEquidateが計算するとその額になる。同社によると、計算の根拠は一般公開されている申請書類だ。

昨年のEssentialはシリーズAで3000万ドルを獲得し、それによって会社の幼児期を支えた。そのときの投資家はRedpoint Venturesと、Rubin自身の投資企業Playground Globalだ。

それよりも前にRubinは、SoftBankグループに出資を打診した。その投資は、10億ドルの評価額で1億ドルになるはずだったが、結局実現しなかった。噂では同社がAppleに投資していることが、不発の原因だったという。iPhoneの成功から株主利益を得たい投資家が、その敵対機種の企業にも投資することは、ふつうありえない。Essentialのスマートホームハブ製品も、Appleの新製品、HomePodスピーカーと競合する。

投資家としては、TencentやFoxconnなどもEssentialの将来に賭けているが、問題は、二つの競争の激しい分野における、一般大衆の関心の獲得だ。EssentialのCOO Niccolo de Masiは本誌のインタビューで、同社が軌道に乗るまでの10年計画について語った: “ブランドの認知度、知名度、評価〜ロイヤリティを確立してからでないと、利益の話などできない。最初の仕事は、ブランドの構築だ”。

Rubinの名前はテクノロジー業界という狭い空間では騒がれるが、一般大衆は何も知らない。彼への期待投資が、今後どれだけ続くか、それも問題だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

IoTで「がんばらない介護」を支援、Z-WorksがシリーズAで4億円を資金調達

IoT介護支援システムを開発するZ-WorksがシリーズAラウンドで総額4億円の資金調達をしたことを発表した。この調達ラウンドに参加したのは、Spiral Ventures JapanキヤノンマーケティングジャパンインフォコムLIXIL国際航業KSP投資ファンドだ。資金調達に合わせて取締役2名を新たに選任したほか、新株主から3名の社外取締役を選任するなど経営体制も強化している。

Z-Works創業者の小川誠CEOは、もともとはシリコンバレーの半導体メーカーで働いていたエンジニアだ。Z-Worksの社名の由来ともなっている近距離の無線通信規格、Z-Waveを使って海外に比べて遅れがちな「スマートホーム」を推進することを目指して2015年4月にZ-Worksを創業した。当初はメーカーズムーブメントに乗る形でIoTやDIY的なスマートホームに関心のある層に向けて、Z-Wave対応のハブなどをクラウドファンディングを通じて販売していた。

Z-Wave自体は興味深い通信規格だ。基地局免許不要のサブギガヘルツ帯を使ったメッシュネットワークは、家屋程度の範囲をカバーできて、1台のハブで200種のデバイスを接続できるという特徴がある。ただ、自分自身で実験的にホームオートメーションをDIYしてしまおうという層だけを対象していても、特に日本国内だけではビジネスにはなりづらい。Z-Wave関連デバイスを半ばむき出しのままに出しても市場が広がらなかったのが現実だ。

そうしたことからZ-Worksは、まず「IoT介護」にターゲットを絞ったという背景がある。小川CEO自身、身内の介護経験でつらい思いをしたことがあり、「頑張らない介護」を打ち出している。小川CEOいわく、介護のつらさの中には部屋のなかの淀んだ空気や「におい」といったこともあるのだそうだ。自分の親や配偶者であるのに1年、2年と介護を続けると疲れ切ってしまい、においですら気が滅入るのだという。

2025年には団塊の世代が75歳以上となり、介護の現場は施設から在宅へと移る。そのとき介護は大きな社会問題となるだろう。すでに介護疲れから「介護殺人」へと発展してしまう悲劇が報じられることが増えている。

そこで大事なのが「頑張りすぎない」こと。そのためにはそばにいる必要があるときだけ、そばにいることができること、と小川CEOは言う。ネットワークに接続したセンサーを居室や寝室からトイレへの動線に設置し、徘徊が起こっていないかどうかなどを遠隔で確認できる手段を提供する、というのが「IoT介護支援」の1つの形だ。Z-Worksが開発する介護支援システム「LiveConnect Care」は、高齢者のベッド周りに非接触型センサーを設置して、ベッドでの在・不在や心拍、呼吸、睡眠時間、離床行動などのデータを得てクラウドで解析。在宅なら介護者、施設であれば介護スタッフのスマホやナースコールシステムに状況を通知するという。今後はセンサーだけでなく画像認識技術も組み合わせていく。

Z-Works小川氏はTechCrunch Japanの取材に対して、「資本参加いただいた事業会社さまと連携しながら、介護支援から介護予防・ヘルスケアに事業を広げ、日本の少子高齢化社会をフィールドに様々な課題に挑戦していきたいと思っています」とコメントしている。