今週のTechCrunch重要記事ラウンドアップ〔US版〕

今週末は感謝祭の連休に入るので、少し早いが今週のまとめをお送りする(米国時間 11/22-11/26)。

1. Matt Burns記者が、アメリカ最大のケーブルテレビ会社、Comcastがなぜかくも嫌われるのかを書いた。 Comcastにボラれないためにこっちも嘘をつかねばならないわけ

2. 最近のUberスキャンダルについて Jon Evans記者はピーター・ティールの「Uberはシリコンバレーでもっとも倫理的に問題のある会社だ」という発言を引き、反社会的な企業文化を変えていかねばならないと批判した。〔日本版〕 Uber、相次ぐ幹部のスキャンダルに大揺れ―モラルの立て直しが即刻必要

3. イーロン・マスクは 連続ツイートで〔日本版〕「SpaceXがインターネット接続用低価格小型衛星を開発」という報道を確認した。スターウォーズのXウィング機のような翼で打ち上げロケットをコントロールして海上の艀に回収するという野心的な計画だ。

4. オンラインデートサイトのTinderの元社員、Whitney WolfeがTinderの直接のライバルとなるBumbleというサービスを立ち上げた

5. シリコンバレーのスタートアップのSM問題というDanny Crichtonの寄稿は、セールスとマーケティングのコストが過大化している傾向に警鐘を鳴らしている。

6. ケーブルテレビの終わりの始まり? 新しい時代の始まり?というBraxton Jarrattの寄稿は、HBOが スタンドアローンのストリーミングサービスを準備しているという情報を詳しく分析した。

7. 〔日本版〕Yahoo、写真関連サービスを展開してきたCoolirisを買収

8. The American Music Awardsを舞台としたユーザーが協力してライブ中継するOur Storyのマネタイズの実験は、Samsungがスポンサーだった

9. Darrell Etherington記者はしばらく実際に使った後で、〔日本版〕GoogleのNexux 6: 今は大きすぎても将来はぴったりサイズになると考えを改めた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


今週のまとめ:Microsoft、大胆変身続く、Amazonはre:Invent開催など

Visual Basicフルバージョン無料に、.NET、オープンソース化へ

サティア・ナデラがスティーブ・バルマーの後任としてMicrosoftのCEOに就任したのは今年の2月で、まだ9ヶ月経っていない。だがナデラはMSウォッチャーの予想を大きく上回るスピードと規模でMicrosoftの改革を進めている。

まず11月に入ってiOS版Microsoft Officeが無料化されるとたちまちApp Storeのトップに飛び出した。Microsoftは手を緩めることなく、11月13日には開発プラットフォームの中心をなす2つのプロダクト、Visual Studioを無料化し、.Netをオープンソース化することを発表した。

Visual Studioの無料化は即日実施され、日本でもすでにダウンロード可能だ。無料版は個人または5以下のチームでの利用という制限がつくが、機能は有料フルバージョンとまったく変わりなく、商用アプリの開発も自由だ。高度なツールの利用は有償で、MicrosoftはVisual Studioをフリーミアムモデル化したことになる。

.NETのサーバサイドはオープンソース化されると同時に、クロスプラットフォーム化されてMacとLinuxに移植される。クラウドとエンタープライズ担当「われわれはデベロッパーからしばしば『.NETはすばらしいプロダクトだと思うが、クローズドでWindowsしかサポートしていないから使わない』という声を聞いていた。水曜日の発表を聞けば.NETを使わない理由がすべて消滅したと知るだろう」と述べた。実際、そのとおりだろう。

Microsoftの改革は行き当たりばったりの対症療法ではなく世界におけるMicrosoftの役割を的確にとらえたサティア・ナデラのビジョンに支えられている。ナデラはMicrosoft本社で開催されたイベントで、Apple、GoogleとMicrosoftの本質を比較し、「Appleはデバイスを売るメーカー、Googleはデータの処理と広告の企業だ」と述べた。それに対してMicrosoftは、

プラットフォームのプロバイダー、ツールのプロバイダーであることこそ、Microsoftの根本的なアイデンティティなのだ。

と述べた。つまりWindowsやOfficeなど個々のプロダクトが問題なのではなく、膨大なユーザーにコンピュータとインターネット上でさまざまなプロダクトを作る力を与えることがMicrosoftの本質なのだ、という大胆な自己認識だ。モバイル化でAppleとGoogleに出遅れ、クラウド化でAmazonに出遅れたMicrosoftだが、時価総額はAppleに及ばないもののまだGoogleより大きい。利益率も依然高い。勢いが落ちていないうちの改革は成功する可能性が高い。11月15日には懸案だったSkypeのウェブアプリ化もほぼ完成した。手を緩めることなく着実に進み続けるナデラのMicrosoftの将来には期待が持てる。

Amazon、re:Inventデベロッパーカンファレンス開催

今回のre:Inventでは派手なローンチはなかったが、それでもこのデベロッパーカンファレンスの前後で新しいプロダクトがいくつもリリースされた。エンタープライズからみていちばん興味をひかれるのはAuroraリレーショナル・データベースのリリースかもしれない。MySQL互換だが、高パフォーマンスで既存の同種のサービスの10分の1くらいの料金だという。AWS上でDockerコンテナを管理するEC2 Container Service ステートレスでイベント・ドリブンのコンピューティング・サービスIntelがAmazon専用に作ったプロセッサを使用したこれまでで最速のEC2インスタンスなども発表されている。

カンファンレンスの会場ではないが、ジェフ・ベゾスは奇妙なデバイスを発表した。Mac Proを思わせなくもない黒い円筒形で常時オンの音声認識機能とスピーカーが仕込まれたAmazon Echoというパーソナル・アシスタントだ。グレッグ・クンパラク記者は「そのうち音声認識のゼロクリック買い物端末に化けるはず」と揶揄しているが、べゾスもできればそうしたいだろうが、ショッピングに利用するには安全な認証が大きな問題になるだろう。

なおeブック関係の話題としては、HachetteとAmazonがKindle版価格設定問題で和解した。AmazonはHachetteに価格設定権を認めるが、Amazonに対して安い価格を設定した場合には金銭的インセンティブを与えるのだという。詳細は明らかになっていないが、双方ともクリスマス商戦を前に消耗戦を続けるのは割に合わないと考えたのだろう。

GoogleはNASAからモフェット基地を全面借受、イーロン・マスク、宇宙計画に参入

Googleはマウンテンビュー本社キャンパスのお隣のモフェット基地の滑走路をプライベートジェットの発着に借りていたが、こんどは基地全体の運営をNASAから全面引き継いだ。1930年代にアメリカ海軍が飛行船の格納庫として建設したハンガーワンも修復して利用するという。秘密研究所Xが主として利用するなるらしい。気球やドローンで辺鄙な地方にインターネット接続を提供するというバルーン計画の本拠もここになるのだろう。

11月に入ってバージン・ギャラクティックのスペースシップ2が墜落してパイロット1人が死亡、1人が重傷を負う事故があり、ブランソンの民間宇宙旅行ビジネスの計画も大きく公開した。その一方でテスラのCEO、イーロン・マスクのもうひとつのベンチャー、SpaceXが多数の小型衛星のネットワークで地球を覆うインターネット接続提供を計画しているという報道を確認した。正式発表は数ヶ月になるもよう。700基もの衛星を打ち上げる資金をどのように調達する計画なのか興味が持たれる。

滑川海彦@Facebook Google+


今週のまとめ ― 激減する(?)国内iPhoneシェア、本気だったGoogleのモジュール型スマートフォン、およびA.I.の近未来についてなど

少々遅くなってしまったが、本稿では先週の訳出記事のうち、なかなかの注目を集めたものや、あるいはちょっと気になった記事などを改めてまとめておきたい。

日本国内でのiOSシェアが急落?

iPhone 6や6 Plusは、発売直後からかなりの頻度でみかけるようになっていると思う。Appleの新モデル買い替え率は75%以上にものぼるそうで(日本経済新聞記事)、たしかに実感でもそのように感じる。

そんな中、少々気になるのが「ヨーロッパでWindows Phone一人負け―日本ではAndroidがiOSのシェアを大幅に奪う」の記事だ。Windows Phoneの話はさておき、日本国内でのiOSシェアが大きく減っているという統計が掲載されている(9月までの3ヶ月セールス統計)。

掲載されている表によると、iOSのシェアが2013年の47.2%から、2014年には31.3%と急落している。そのシェアを食っているのはもちろんAndroidで、年間比で+14.5%となっている。少なくとも電車の中の風景にはさほどの変化は感じられないように思うが、はたしてiOS率が突出して高かった日本に、何か変化がおきつつあるのだろうか。

Fireフォンに「Kindle再び」を期待するAmazon

「シェア低下」というか、ほとんどシェアのない機種についての記事もあった。言うまでもなFireスマートフォンの話だ。覚悟を決めて「Amazonは不評のFireスマートフォンを殺さずに長期な視野で育てる気だ」ということのようだ。

「Kindleだって最初は不人気デバイスだったのだ」という、過去の「失敗体験」をもとに、未来への可能性を見出そうとしているらしい。

Googleのモジュール式スマートフォンは「遊び」ではない…らしい

ちなみに、非実用(あるいは非実在)デバイス扱いであったGoogleのモジュール型スマートフォンは、どうやら実際に動き始めるようだ。先週「スマホがLEGOになったGoogleのProject Ara、初のプロトタイプがお目見え」という記事が公開された。

モジュール型スマートフォンのProject Araについては、翻訳記事でも何度か紹介している。過去記事のタイトルを引いておこう。

Google発のブックマークサービス

ところで先週はGoogle発の注目記事も多かったような気がする。一番多くの注目を集めたのは「Googleの新しいブックマークサービス(旧称 Stars)が一般公開」だろうか。

正式アナウンスがない中、他のサービスとの差別要因や発展性ないし拡張性が見えにくい気もするが、興味深い動きであるのは間違いない。

Googleがブラウザを作ったとき(もちろんChromeの話だ)には「そんなもんいらねえよ」の声もあった。しかしコンテンツを扱うサービスが、コンテンツを表示するアプリケーションを作るのは、確かに「自然」なこととも言えたわけだ。そしてブラウザを作っている企業が、ブックマークを扱って、そしてそれが大きく発展するような可能性も小さくはないだろう。

但し、以下のようなツイートもある。

あるいは次のようなツイートもあり、確かに躊躇いを感じてしまう。

Google Playブックスもひっそり(?)アップデート

ところで拙訳ながらあまり注目を集めず寂しかったのが「Google Playブックス、教科書や料理本の閲覧に便利な“スキムモード”を搭載」の記事だ。

  • 「スキム」(Skim)モードにすることで、フリップにより無限スクロール風にページ間を移動することができます。
  • 「Quick Bookmarks」にてブックマーク間の移動がより簡単に行えるようになります。200ページも離れたところにある注釈などを頻繁に参照する際に便利でしょう。
  • 書き加えたメモやハイライトしたところを一度に確認し、そこから該当のページにジャンプすることができます。教科書などを読むときにとても便利な機能となります。

確か、こうしたモードを備えていた電子書籍リーダーはあったはずだ。しかし新規性云々ではなく、メジャープレイヤーのひとつであるGoogle Playブックスが、この機能を入れたことを喜びたい。

TechCrunch Japan編集長のツイートを載せておこう。

医療分野でもGoogle

ところで以前(今もかもしれない)、新規サービスのアピールを受けた投資家の決まり文句として「ではGoogleが参入してきたらどうしますか?」というものがあった。ことほどさようにGoogleはさまざまな分野に頭を突っ込む。もちろんヘルス分野も含まれる。今回は「Google X、ナノ粒子を飲んでガン細胞を早期発見する画期的検査方法を開発中」という記事が出ていた。

簡単に言えば「いよいよ現実化する現実化したミクロ決死圏」だ(?)。いろいろな未来予測を投入した「ミクロ決死圏」だったが、まさかソフトウェアカンパニーが現実化するとは思いもよらなかったのではなかろうか。

ちなみにWikipediaでみると「Google X(グーグル エックス)とは、Googleの機密施設によって、次世代技術の開発を担うプロジェクトである」そうだ。いろいろな意味でおそろしそうな存在だ。

YouTubeはハイクオリティに対応し、そして有料モデルを準備中?

Googleでいえば、YouTubeの話題もあった。

「パーソナルコンピュータの上で動画を見ることができる」と感動したのは1991年頃のことだっただろうか。但しその時代に見られる「動画」は「ビデオ」とは一線を画すもので、おかげでぼくたちはまだPC上で見るビデオを「動画」と表現する癖がついている。

時代はうつり「YouTubeのビデオ再生が60fpsにアップ、バターのようになめらか」という時代になった。

「解像度720p以上で見ると、フレームが洪水のようにあなたの目に押し寄せる」そうだ。ただ、こうした高画質であっても「まあそんなもの」と受け取る時代にはなりつつあるかもしれない。

また(以前から噂はあったものの)「YouTube、広告のない有料サービスの提供を準備中?!」という記事もあった。

先の「動画」の話との関連でいえば、「インターネット」が普及し始めた当時、サービスを「広告」で運用するというのはあり得ない話だった。だからこそ「広告」でサービスが運用できるようになったことに『大いなる可能性」を感じたりもしたのだった。しかし「広告運用すげー」の時代は古(いにしえ)の話となり、そのあとは「サブスクリプションモデル」などが生まれた。

どうやら、「金を払う準備はできている」という利用者もおおぜいいるようだ。

ティム・クック

さて、長くなってしまった。ただ、日経新聞などでも記事になっていた「ティム・クック」の話題は紹介しておくべきか。

ティム・クック:誇りをもって、自らゲイであることを認めたい」という記事の話だ。あくまで個人的な話ながら、さすがに世界中で、いろいろな視点から話題になった様子だ。

ところでティム・クックは先週「Apple Watchは毎日の充電が必要となる」という話もしている。

これについては「ティム・クックがうっかり漏らしたんだろう」という感想や、「そんな話は当たり前」といった感想まで、さまざまなものがある。「夜間に時計をする人はいないだろう」という意見も多かった。

そう、寝るときに時計をしない人は多い。ただ、「ウェアラブル」は時計ではなかろう。「ウェアラブル」とは「Quantified Self」(身体データの数値化)のための究極のツールではなかろうか。そうした類のデバイスであるにも関わらず「外して充電」というのが正しいのかどうか、疑問に感じる面もある。

その他、注目記事

Microsoft、Office 365のユーザーにOneDriveストレージを容量無制限で提供」という記事はもちろん興味深い。ぜひリンク先の記事を見てもらいたい。あるいは「W3Cが宣言: HTML5の標準規格は最終的に確定した」も注目だ。

全部を紹介すると長すぎるが、それでも紹介したいのは「この救急ドローンはリモート指導つきのAEDを搭載…心停止の生存率をアップ」だろうか。

NHKは「アメリカの“新たな戦争”?~無人機攻撃の実態~」という番組を放送していた。ドローンのせいで、民間人が殺されているという内容だった。しかしドローンは人命を救うのにも役立つらしい。

まあ確かに、新技術とは往々にしてそうした両面を持つものではあるかもしれない。

余談:A.I.はどう世界を変えていくのか

ちょうど東大を目指す人工知能が話題(例:日経記事)になる中、TechCrunchにも人工知能系の話があった。

ひとつは「普通」の話で「音声指示に従って自動で返信メールを書いてくれるA.I.搭載のLess.Mail」というものだ。

受信したメールに対し、人工知能と協力しつつ返信して時短するというものだ。「断ってくれ。でも丁寧にな」というようなインタフェースで、メールの返信が打てるらしい。

そしてもうひとつは、宇宙関係の話から、またいろいろと注目を集めそうなElon Muskの話だ。講演における質疑応答の中で「人工知能研究は現代の悪魔を召喚する」というような話をしたらしい(記事中に貼っていたビデオはMITからの著作権侵害の申し立てで削除されています)。

人工知能はバズワード的扱いをうけた時代もあったように思う。しかし今や、可能不可能の論議を超えた、たとえていえば生命科学における「倫理」のような話をしなければならない段階にあるのかもしれない。

原文へ

(翻訳:Maeda, H


今週のまとめ―iPadは種類が増えすぎ? iMacの5Kディスプレイは驚異的、パスワード使い回しはやめよう

今週はAppleがクパチーノの本社でプレスイベントを開催し、iPadの次世代モデルを発表した。また同時に5Kディスプレイの新しいiMacも紹介された。TechCrunch Japanでも詳しく取り上げたので、振り返ってみよう。

iPadは18%薄く、40%速く、指紋認証が付いた

10月17日(米国時間10/16)のイベントでは予想どおり、iPadとiPad miniがバージョンアップされた。フラグシップモデルのフルサイズiPadはiPad Air 2となり、18%薄く、40%速く、指紋認証が付いた。Appleは新しいモバイル支払システム、Apple Payの普及を目指しているので指紋認証機能は必須といえる。Appleもプレゼンも強調していたが、初代iPadに比べてパフォーマンスが数倍になったにもかかわらず厚みが半分になったというのは大きな進歩だ。

新しいiPad Air2の重量は437gでiPad Airからの軽減は32gにとどまっが、もともとが十分軽い。初代iPadの重量と厚みではeブックの「ごろ寝読み」は少々辛かったが、iPad Airになって劇的に軽量化され、長時間片手で支えるのも苦にならない重さになった。iPad 2ではさらに快適になっただろう。WiFi接続とWiFi+セルラー接続のモデルにそれぞれゴールド、シルバー、スペース・グレー(黒)の3色が用意される。メモリー容量は16GB、64GB、128GB。つまりバリエーションは2x3x3=18種類となる。その他スペックは以下のとおり。

・画面は単一のラミネートされた部品から成り、空気を排除し反射が少ない
・アンチグレアコーティングで56%反射を防止
・新世代Appleチップセット、A8Xを使用。CPUは40%速く、GPUは2.5倍速い
・最新iPhoneのCPUと同じく、A8Xにはいくつか新しいチップが加わった。モーションセンサーがチップに内蔵され、内蔵気圧計で周囲の空気データを追跡する
・バッテリー寿命は10時間
・802.11ac WiFiをサポートし、理論的ダウンロード速度は最大866 Mb/s
・リアカメラは8メガピクセル(明るさf 2.4)

一方、iPad miniではmini 3が発表された。基本的はハードウェアは既存のmini with Retinaとほとんど同じだが、指紋センサーが付加され、メモリーが64GBと128Gモデルが加わり、カラーバリエーションにゴールドが加わった。

これまでminiはオリジナルのminiと高精細度ディスプレイ搭載のmini with Retinaモデルの2本立てだったが、今回の新モデル登場で、mini with Retinaはmini 2となった。旧モデル2機種も少々値下げして販売が続けられる。つまりminiは非RetinaでA5プロセッサ搭載のmini、RetinaでA7搭載のmini 2、mini 2に、TouchID等を付加したmini 3の3シリーズ構成となった。

iPadは種類増えすぎ?

さて、ここまで見てきてわかるとおり、iPadの製品構成は一気にバリエーションが増えた。増やし過ぎではないかという声もあちこちから上がった。TechCrunchでもSarah Perez記者がiPadは種類が多すぎる―迷ったらこうして選ぼうという記事でこの点に触れている。

この中でPerez記者はiPadのベーシックモデルがなぜいまだに16GBなのかという点に触れ、「いまどき16GBがどんな役に立つというのだろう? HDでビデオを撮影したり、ちょっとしたゲームをダウンロードしたらファイルがどのくらいのサイズになるのかAppleは知らないのだろうか?」と皮肉を言っている。

Perez記者は「Appleは市場に出回っている低価格タブレットに対抗するためにカタログに載せる最低価格モデルとして16GBを捨てられないのだろう」と推測している。これまでAppleは製品の圧倒的なユニークさで独自の世界を構築し、ライバルをよせつけなかったが、Androidによって低価格市場を席巻され、さらにスマートフォンでもタブレットでもコストパフォーマンスの高いハイエンドAndrodi製品が現れている。Appleも価格と製品バリエーションという伝統的な競争に巻き込まれつつあるようだ。

iOS 8.1の目玉はカメラロール復活

新iPadお披露目の週明けにiOS 8初のメジャー・アップデート8.1が公開された。長期的にみてAppleにとってもっとも重要な新機能はApple Pay支払いサービスのサポートだ。

ユーザーがデバイスにクレジットカード情報を登録しておくと、店舗やレストランで支払いができる「おサイフケータイ」の一種だが、読み取り機にデバイスを触れる代わりに、TouchIDボタンに指を載せ指紋認証で支払いを実行する。普及のためには金融機関と多数の実店舗をプラットフォームに参加させねばならない。Google、Square、PayPalなどの先行サービスはいずれも当初の話題になったほどにはその後の普及が進んでいない。Apple Payがジンクスを破って急速に離陸できるか大いに注目される。ただし日本での展開については情報がない。

日本のユーザーにとって8.1のアップデートでいちばん便利になったのはカメラロールが復活したことかもしれない。iOS 8.1の詳細についてはこちら

iMacの5Kディスプレイは文句なしにすごい

Appleのイベントでは新しいiPadよりむしろ同時に発表されたiMacのスーパー高精細度ディスプレイ、いわゆるRetina 5Kモデルが話題を集めた。

Etherington記者も5180×2880、1470万ピクセのディスプレイには驚いたたようだ。「新しいスクリーンは一目見ただけで美しさに圧倒される。しかも長く見ていれば見ているほど賛嘆が深まる。私のように日頃Retina MacBook Proをメインマシンとしているユーザーにそう思わせるのだからただごとでない」と絶賛。日本では25万8000円から

Android Lはロリポップと命名、Nexus 5が登場

話題としてはiPadイベントにかき消された形だが、ライバルのGoogleにも動きがあった。まずこれまで単にLと呼ばれてきた次世代Anroid OSがLollipopと命名された。ユーザー側からはUIがMatarial Designに全面的に変更されたことが目立つ。新しいAPIの追加、ART仮想マシンのデフォールト化などむしろデベロッパーにとって意味が大きいかもしれない。

同時にGoogleは、5.9インチ、5.0 Lollipop搭載の強力AndroidファブレットNexus 6を発表した。出荷は11月中になるらしい。ディスプレイも1440×2560、496 ppiとスペックとしてはRetina iPad2をしのぐ解像度だ。

Amazonは実店舗、Googleは宅配

eコマース戦線でも動きがあった。Googleが実験していた即日宅配サービスはGoogle Expressという有料サービスとして本格的に展開されることになった。サポート都市は既存のカリフォルニア北部に加えて、新たにシカゴ、ボストン、ワシントンD.Cの3都市が追加された。会費は年額95ドルだという。これはAmazonのプライム会員のアメリカでの会費99ドルよりは少し安い。しかし、プライム会員には映画、テレビ番組、音楽のストリーミングなど充実したサービスが付加されているのでGoogleの料金はやや割高感jがある。

一方、Amazohもニューヨークのブルックリンで生鮮食品の配達を開始した。 Amazonは長年実店舗を設けることを避けてきたが、ついにマンハッタンのエンパイアステート・ビルの向かいという超一等地にミニ店舗を開設するという情報も流れている。これがクリスマス商戦向けの一時的なものか、恒久的な施設なのかも含めて今後の取材待ちだ。

Dropboxのパスワード流出―パスワードの使い回しでサードパーティーから

毎週のようにセキュリティーが破られた事件が起きているが、今回はDropboxのパスワードを盗み出すことに成功したと匿名サイトで主張するハッカーが現れた。事実数百件のDropboxのログイン情報が公開されたようだ。しかしDropboxでは「われわれはハックされていない。漏洩パスワードは他サービスからの使い回しだ」と発表した。またDropboxは「不審なログインを検知してリークしたパスワードを無効化した」としている。改めて言うまでもないが、パスワードの使い回しは危険だ。またDropboxやGoogleのような乗っ取られると致命的な被害が出るようなアカウントでは2段階認証を有効にしておくのが必須だ。

滑川海彦@Facebook Google+


先週のUS注目記事 ― 外部サービスと連携して 「ひとりブレインストーム」も可能にするEvernote Context等

少々遅くなってしまった。本稿では先週のTechCrunch記事で、未翻訳ながらちょっと気になったものを簡単に紹介したい。

Androidスマートフォンの利用統計+「繋がらない時間」を生み出すOfftime

1日にどれくらいスマートフォンを使ったのか。一番長く使ったアプリケーションはどれか。そういった統計を出してくれるアプリケーションはいろいろと出ている。そこに「バランス」の観点を持ち込んだのが「Offtime」だ。

上の図のように、利用時間統計を出すアプリケーションはほかにもたくさんある。このOfftimeは「スマートフォンを使わない時間」を生み出す仕組みを備えているのだ。オリジナルの記事は「A New App Called Offtime Helps You Unplug Without Missing Out」だ。

たとえば上の図のように「Focused Work」(仕事中)とか「家族の時間」(Time for Family)といったプロフィールを作成し、それぞれのケースに応じて、スマートフォンの「利用制限」を行う。たとえば電話やメッセージ、アプリケーションからの通知などを選択的に「オフ」にできるのだ。

もちろん細かな例外設定も行うことができる。オフタイム中のアクティビティについては、情報をまとめた画面で表示させることができる。

ちなみにOfftimeは、ホワイトレーベル化して企業への販売も行うのだそうだ。従業員に「オフタイム」を作らせるのがトップの役割であるという発想のもとらしい。本アプリケーションはドイツ発なのだが、これはいかにもかの国らしい発想だと言えるのだろうか。

スマートウォッチからのプッシュ通知連発には耐えられるだろうか?

上の記事にも関係するが、スマートウォッチ上でのプッシュ通知の在り方を、もっと丁寧に考えたいとする動きもある。ある意味でスマートフォン以上に「身近」な存在となるスマートウォッチで、あまりにも頻繁な通知を送り続けるアプリケーションがあれば、利用者の不興をかうことになるだろう。

この問題に対処しようとするのは、現在もモバイルアプリケーションで適切にプッシュ通知を送るためのロジックを提供するKafunaだ。「Kahuna Plans To Avoid “Wrist Fatigue” With New Algorithm For Smartwatch App Notifications」という記事で紹介されている。

Sequoia Capitalも出資するKafunaは、これまでYahoo、QuizUp、1-800-Flowersなどにサービスを提供している。「mobile engagement engine」を標榜する同サービスは「最適なプッシュ通知」を実現するためのマーケティング/エンゲージメントツールを開発・提供していくそうだ。

各種デバイスの「スマート化」は、そもそも「いかに繋がるか」を意識したものだった。相互作用が多くなればなるほど、エンゲージメント効果が高まるという考えもあった。しかし繋がることが当たり前になってきた現在、「繋がらないこと」や「繋がり過ぎないこと」、あるいは「通知を減らすこと」が意識されているのは面白い。

インターフォン + ホームセキュリティのDoorbot

繋がりすぎることも問題になる時代ながら、セキュリティ関連ツールは、むしろ積極的に繋がることを目指している。紹介している記事は「Doorbot Becomes Ring, A Home Security Solution That Also Greets Your Visitors」だ。「ドアベル、ホームセキュリティ、遠来のお客を歓迎するためのDoorbot」といった感じだろうか。

簡単にいってしまえばネットワーク対応したカメラ付きインターフォンだ。遠隔地にいてもドアベルに対応することができるし、また訪問者の様子を見ることもできる。さらには検知する範囲を指定して、モーションセンサーを働かせて自動的にビデオを撮影しておくこともできる。

ベルを鳴らして不在を確認してから空き巣を働こうとする悪人や、あるいはいつも家の前で犬に粗相をさせる人の様子などを納めておくこともできる。

もちろんそうしたネガティブなシーンだけでなく、たとえば宅配便への対応や、留守中に訪れてくれた友人とも直接に話をすることができるわけだ。IoT含め、こうした分野ではますます「繋がった」サービスないしデバイスが登場してくるのだろう。

全世界のインターネット接続速度平均は4Mbpsを突破

もちろん「繋がり」を実現するのはネットワークインフラストラクチャーだ。Akamaiのレポートによれば、全世界での接続速度平均が4Mbpsを突破したのだそうだ(「Akamai: Broadband Speeds Tip 4 Mbps Globally; DDoS Attacks Down 15%」)。

1年前の調査では4Mbpsを超えるのは世界の半分の国でしかなかった。通信速度に関して言えば、この1年で40%も成長していることになる。

記事でとりあげているAkamaiレポートによれば、モバイルデバイスが普及してデータ通信量は大きく伸びているものの、音声データ量は頭打ちの傾向にあるとのこと。これは確かに、多くの人も実感するところかもしれない。

セキュリティ関連についてもレポートされている。セキュリティアタックのトラフィック発信元第一位は中国で、全攻撃的トラフィックの43%を占めているそうだ。アタック発信量が急増したインドネシアが第二位で15%、三位はアメリカで13%であるとのこと。

Evernote Context登場

「繋がる」ことによって、むしろセキュリティ問題が顕在化するという側面もある中、しかしやはり繋がることには、大きな便利さがある。その便利さを徹底的に活用しようとするのがEvernote Contextだ。10月2日付けで「Evernote Unveils Evernote Context, An AI Play That Surfaces Content From Outside Sources As You Write」という記事が公開されている。

Evernoteに登録したり、あるいは作成するコンテンツに関連する情報を、外部から探して表示してくれるというサービスだ。これまでもEvernoteでは、他のノートの情報を検索して「関連するノート」という情報が表示されていた。この仕組みを外部サービスにも展開するイメージだ。LinkedIn、CrunchBase、WSJ、あるいはTechCrunchなどの情報が表示されるようになるのだろう。

このサービスは「next month」にも開始予定なのだそうだ。

情報保管庫としてEvernoteを使っている人は多いだろうが、Contextの登場で使い方を再考したくなるかもしれない。自分の知識に限られないアウトラインプロセッサ的な使い方ができるようになるのかもしれないのだ。ひとりで何かを書くとという行為が、ネットワーク上でのインタラクティブな振る舞いとなるのかもしれない。サービスインを楽しみにしたいと思う。

「ポテトサラダ・イベント」、本当に開催

最後に「面白さ」を求めた繋がりの話を紹介しておきたい。以前、日本語訳で「データで振り返るKickstarterの“ポテトサラダ”プロジェクト(調達額は$55,492)」という記事を紹介した。

同プロジェクト主催者は、何万ドルもの金額を集めたので、それを使ってイベントを行いたいと言っていたのだった。

この幸せな人々の集いに冠せられたスローガンは、「PEACE. LOVE. POTATO SALAD」だった。

Maeda, H


今週のまとめ ― クラウド化するPhotoshopや容量無限なGoogle Drive、そしてRetinaを進化させるiMacなど

TechCrunch日本版で紹介した先週の記事の中で、ざっと振り返って気になったものを改めてご紹介したい。いろんな意味で「進化の速度」を感じさせる記事も多かったように思う。

「クラウド化」したPhotoshop

たとえば「Adobe、ChromebookおよびChrome上で動作するPhotoshopの提供を開始」。Photoshopのほぼすべての機能をクラウド化してしまったという話だ。

記事中にもあるが、「Chrmebook」や、あるいは「クラウドコンピューティング」ないし「ネットブック」(古いか)の欠点を言い募るのに、「Photoshop」はよく出てきたものだった。

覚えている人も多いと思うのだが、Photoshopといえば少し前まで「ローカル」で使っても「重い」アプリケーションだった。それがネットワーク上で動くようになってしまったわけだ。トータルな技術進化とともに、もちろんネットワーク容量の圧倒的増加のおかげでもある。

「無限化」するGoogle Drive

「圧倒的増加」しつつあるのは、記憶容量も同じだ。今週も「Google、容量無制限のDrive for Educationの提供を開始」という話があった。

「無限の記憶容量」とは、少し前まで「リムーバブルハードディスク」や「MO」を指す言葉だった。ディスクを差し替えることで無限になるという話だ。しだいに「差し替える」べき「ディスク」すら必要としない「無限」が実現されつつある。

Retinaを進化させるiMac


処理速度や記憶域の増大は、グラフィック関連に大きな恩恵を施した。WYSIWYGが「新しい」ものだった時代、画面解像度は72dpiが基本だった。それがいつの間にか「Retina」な時代になった。ナチュラルボーンに「Jags Are Gone」な時代になったわけだ。そしてそんな環境はさらなる進化を目指しているらしい。

そんな進化を体現してきそうなのは、最初は「おもちゃ」だったはず(?)のiMacだ。「Apple、来月Retina iMacを発表か? 高DPI時代の幕明けだ」という記事がいろいろ考えさせる。

iMacといえばこんな感じのものだったのだが。

iMacの話は、Yosemite関連の記事にも出てくるのであわせてどうぞ。

ところでApple関連ということで言えば、ネガティブなコメントが多かった記事もある。「Apple、iOS 8の通知センターからアプリを起動するアプリを禁止」。

「残念」を通り越して「怒り」を感じている人も多いようだ。

Windowsは再びふた桁に

Windowsが普及し、PCがコンシューマーデバイスとなり始めたのは、Windows 95からだっただろう。それからいろいろあって、そしてWindowsは「7」や「8」といったひと桁名称を経て「10」とふた桁に戻ってくるようだ。

再ふた桁化するWindowsについては「Microsoft、Windows 10プレビュー版を公開―次世代OSは“Windows 9”ではなかった」という記事がある。さまざまなデバイスを統合する環境の構築に時間がかかったが、いよいよMicrosoftによる「理想の姿」が実現するのかもしれない。

ちなみにWindows 10関連では「Windows 10、テクニカル・プレビュー版のダウンロード開始―有効期限は来年4月15日」や「[ビデオ]Windows 10ではマウスとタッチをどうやって併用するのか」という記事もある。

訪れつつある「未来」

どうも昔を思い出した話が多くなってしまった。「未来」を見てみよう。まずはこちらから。「腕から飛び立ってセルフィーを撮るウェアラブル・ドローン」だ。

「セルフィー」が未来なのかどうかはよくわからない。しかし「ドローン」はさまざまな未来で活躍するデバイスだ。「ウェアラブル」も同様だ。そのふたつの未来デバイスが連結するのだから、当然に輝かしい未来を体現しているに違いない。もちろん、未来の「不確かさ」を示している可能性もないではない。

ところで上のビデオ。プロトタイプ製作の場面もなかなか面白い。

ウェアラブルな未来ということでいえば、GoProもまた新たな一歩を踏み出した。「GoProの129ドルの新しいエントリーモデルHeroはアクションカメラのキングだ」の記事にあるように、GoProがさらに身近な存在となるようだ。

電子デバイスによる日常の記録といえば、たとえばQuickTake 100なら高画質モードで8枚しか写真を記録できなかった。今やビデオログもお手軽に、誰でもが行える時代になりつつある。

そしてさまざまなハードウェアやソフトウェアの進化は「コンテンツ』の進化も呼ぶ。「これはCGです」という記事で紹介した「コンテンツ」を下に貼っておこう。

「そっちもかよ」と叫んでしまうのは筆者だけではないだろう。

さらに、今後の動きに注目したいものとして「Google、アプリを介さずモノのインターネットと会話できる標準規格Physical Webを開発中」という記事は注目だ。ウェアラブルとIoTの可能性を広げようとするプロジェクトで、ぜひ記事や記事からのリンクなどをご覧頂きたい。

もう少し具体的な未来の話はといえば、たとえば「Facebook、モバイルアプリ用“いいね!ボタン”を正式公開」という記事もあった。「人」のネットワークとしてスタートしたFacebookだが、ウェブ上のコンテンツを取り込み、そしてアプリケーションで扱うコンテンツについても自らの世界にとり込もうとしているわけだ。

「モバイル」や「ウェアラブル」や「IoT」など。それぞれ単独で「未来」を感じさせてくれるものだった。それらが一気に統合化進化を遂げる時代が近づいてきているようだ。

Maeda, H


DeNAがiemoとMERYの2社を計50億円で買収、キュレーション事業に参入

遺伝子にマンガ、動画ストリーミング……と、苦戦のゲームに変わる新事業を模索するディー・エヌ・エー(DeNA)が次に目を付けたのはキュレーションメディアだ。10月1日、住まいに特化したまとめサイト「iemo」を手がけるiemoと、女性向けファッションのまとめサイト「MERY」を運営するペロリの2社を合わせて約50億円で買収した。それぞれの買収金額は非公表。

自社事業との相乗効果を狙ったベンチャーへの投資に力を入れているDeNAだが、日本企業を買収するのは、実に横浜ベイスターズを95億円で買収した2011年12月ぶり。両社を傘下に収めることで、キュレーションプラットフォーム事業を始動する。収益の大半を依存するゲーム事業は引き続き注力する一方、キュレーションを新たな稼ぎ頭にしようとしている。

iemoの村田マリ氏(左)とペロリの中川綾太郎氏(右)

iemoはインテリアやリフォームに関する数万点の写真の中から、気に入ったものをクリッピングしたり、まとめ記事を作成できるサイト。「☆IKEA☆¥1000でおつりがくる?!オシャレな家具5選」「水を入れるだけなんてもったいない!製氷皿のいろんな使い道教えます。」といった「住」に関する記事が数多く投稿されている。サイトには毎月、25〜40歳の主婦を中心とする約150万人がアクセスしている。

2014年4月には建築家やリフォーム業者、インテリアメーカーといった事業者向けの「ビジネスアカウント」を開設し、無料でiemoに自社の商品を掲載できるプラットフォームを構築。現在は約400事業者が登録している。

11月以降、ユーザーがリフォーム業者に仕事を発注できる機能をリリースする。同機能では今後、不動産販売業者とマッチングすることも視野に入れている。現在展開中のネイティブ広告に加えて、マッチングに応じて事業者が支払う報酬がiemoの収益の柱となる見込みだ。

買収後は、iemo創業者の村田マリを含めた全人員と、DeNAからの出向社員が共同で、これまで通りサービスを継続していく。

 

創業からわずか9カ月でイグジット

村田マリは、早稲田大学卒業後にサイバーエージェントの新卒1期生として入社し、新規事業を立ち上げに参画。退職後の2005年3月、1社目の創業となるコントロールプラスを設立した。結婚と出産を経て、2012年1月にソーシャルゲーム事業をgumiに譲渡し、2億円弱の売却益を得ている。iemoは、彼女がシンガポールに移住して第二の創業として2013年12月に設立した。

過去のインタビューで、スマホ向けメディアで「衣食住の『住』だけが未開拓だった」という理由からiemoを創業したと語った村田マリは、「買収までに想定外だったことはなく、完全に事業計画通り」と振り返る。創業からわずか9カ月でイグジットを果たしたのは、シリアルアントレプレナー(連続起業家)ならではの手腕と言えそうだ。DeNA傘下に入るに至った経緯については次のように語る。

「ここまでは過去の経験でやってこれても、今後、億単位の金額を投資するのは未知の領域。DeNAであれば経験も豊富で、失敗の確率も減る。私自身、IPOに夢がある経営者ではなく、サービスをたくさんの人に使ってもらい、家の作り方を圧倒的に変えたいという思いが強い。絶対にIPOをしなければいけないプレッシャーから解放され、サービスに注力できるのが魅力だった。」

月間ユーザー1200万人のMERYはEC強化へ

MERYは、ファッションに特化した女性向けまとめサイト。美容師やネイリスト、編集者をはじめとするキュレーターがまとめ記事を投稿している。2013年4月にサービス開始から1年半で、月間アクティブユーザー(MAU)は1200万人を突破。創業者の中川綾太郎によれば、ユーザー層は18〜25歳の女性が中心。夜10時以降がアクセスのピークタイムで、「雑誌を読むようなテンションで暇な時間や寝る前に見られている」という。

投稿されている記事は、「ロングブーツ履く前に!にっくき膝上の肉にさよならダイエット◎」「プチプラ&シンプルで着回し力抜群!GUデニムアイテムで一週間コーデ」といったように、ファッション雑誌にありそうな内容が多いのが特徴。「オンラインで圧倒的なファッションメディアがない中、スマホでファッション誌を読むような体験ができるのが上手くはまった」と分析する。

現時点で収益面は「広告を一応やってますという程度」だが、今後はEC化を進める。具体的には「まだモヤモヤしている」が、ユーザーが読んだ記事から商品を購入できるイメージだと話す。「ブランドを指名買いするECは発達しているが、実際のショッピングでは絶対にパンツを買うつもりでも、ニットを買っちゃうようなことが多い。そんな新しいコマース体験をやっていければ」。なお、iemoと同様、MERYも引き続きサービスを継続する。

2社のノウハウでキュレーションメディアを横展開

今回買収された両社がメリットとして口を揃えるのは、スタートアップならではの課題である採用面での恩恵だ。

「買収前のiemoは8人の会社だったが、10月1日にはDeNAからの出向を受けて20人体制になる。アプリエンジニアやデザイナーなど、不足している人材をバッと出してもらえるのはありがたい。こうした人材は簡単に取れないし、(iemoではDeNAみたいに)東大卒の人材なんていない。」(村田マリ)

「うまくいっているスタートアップでも、さらに伸びれば人が必要になる。MERYは『見てもらう』メディアの部分では順調に成長したが、今後は別領域のECを組み込んでいくことになる。DeNAからコマース経験のある人材をサポートしてもらえるのは大きい。売却思考はなかったが、理想をどれだけ早く実現できるかを大事にしたかった。」(中川綾太郎)

iemoとMERYは、「スマホでダラダラ見られるキュレーションメディア」という点で共通している。iemoは「スマホ × 住」、MERYは「スマホ × 衣」という圧倒的な勝者不在のジャンルでユーザーを増やしてきた。そして、キュレーションの枠にとどまらず、「住」と「衣」という巨大産業のECを変えようとしている。

DeNAとしては、2社の人材を抱えてノウハウを得ることで、スピーディーに他のジャンルのキュレーションメディアを構築する思惑もありそうだ。各メディアで相互送客を行い、数年後にはキュレーションプラットフォーム全体でMAU5000万人を目指すという。


US版今週の重要記事まとめ―エリソン引退、ホームデポの5400万件流出、Facebook、女装者を削除など

9月13日から9月19日(いずれも米国時間。以下同様)にかけての重要記事をまとめてみた。

1. 1977年にOracleを創業して以来CEOを務めてきたラリー・エリソンLarry Ellison)がCEOから退いた。後任はMark HurdとSafra Catzが共同CEOとなる。

2. 9月19日、中国のeコマースの巨人、Alibabaがニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した。上場価格は1株68ドルだったが、取引開始後、92.70ドルまで36%も値上がりした。上場価格での時価総額は2377億ドルとなり、上場総額の新記録(日本語)となった。TechCrunchもNYSEの現場からレポートした

3. 17歳の高校生、Kai Kloepferが指紋でロック解除されるスマート・ピストルを開発した(日本語)。コロラド州ボウルダーの高校生のこの発明はまだプロトタイプだが、銃を用いた犯罪や事故を防ぐ効果を期待されている。

4. TechCrucnchのSarah Buhr記者がManServantsを取材した。このサンフランシスコのスタートアップは1時間125ドルで魅力的な男性を貸し出してくれるというもの。これに触発されてMatt Burns記者が、その女性版というパロディー記事を書いた。Burns記者は「利用者を男性から女性に変えてみてもこの種のサービスの本質が変わるわけではない」と論じている。

5. MicrosoftはMinecraftの開発元のゲーム会社Mojangを買収したことを確認した(日本語)。Minecraftは買収後もXboxとWindowsに加えて iOS、Android、PlayStationの各プラットフォームに提供されるという。Josh Constine記者はMicrosoftにとってこの買収は 長期的には得策ではないと論じている。

6. Facebookは最近、女装した男性ユーザーのプロフィールを数百人単位で削除した。理由はFacebookのユーザー名は実名でなければならないという「実名主義ルール」に違反しているためと説明された。Facebookはサンフランシスコの女装男性コミュニティーの代表と面談したものの、実名主義に例外を設けることは拒否した

7. Tomorrow Groupのファウンダー、Tom Goodwinは「インターネットが利潤を破壊した」(How The Internet Killed Profit)という記事を書き、「インターネットとデジタル化がビジネスの基盤と経済的均衡を破壊した」と主張した。

8. iPhoneについて詳しい情報が入ってきた。Darrell Etherington記者がiPhone 6iPhone 6 Plusについてレビューし、Matthew Panzarino共同編集長は 新しいiPhoneを持って家族でディズニーランドに行った体験を投稿した。

9.ベテラン・ベンチャーキャピタリストでありBenchmarkのパートナのBill Gurleyが「最近のシリコンバレーのベンチャーキャピタルは節度を失っている」と警告したことをDanny CrichtonAlex Wilhelmの両記者が紹介した。

10. Mike Duckerは「第2のシリコンバレーをつくろうとするより第2のデトロイトを作らない努力が大切」という記事で長期的に雇用を維持できるような起業エコシステムの必要性を説いた。

11. 起業家でFacebookに多額の投資をしているベンチャーキャピタリスト、ピーター・ティールlが「Twitterは経営に多くの問題がある。トップはマリファナで吸っているのだろう」と批判したことに対しTwitterのCEO、ディック・カストロは「ティールにはドリトス(ポテトチップを)を食べ終わってから返事をするさ」と鮮やかに切り返した

この他、ホームセンター・チェーンのHome Depotのユーザー情報がハックされ、5600万人分のカード情報が漏洩した可能性があることが明らかになった。Josh Constine記者はプライバシーに特に配慮したFacebookの新しい共有アプリ、Momentsについて詳しく紹介した。 こちらは新iPhoneのパロディー・ビデオ集。iOS 8でサードパーティーのキーボードが利用可能になったが、こちらはApp Storeで人気のキーボードのリストだ

[原文へ]


今週のまとめ―iPhone 6はカメラがすごい、Amazonは新Kindle発表、IBMのWatson、いよいよ商用化

新iPhoneはカメラがすごい

先週発表されたiPhone 6/6 Plusは24時間で400万台予約受付と大人気だ。インターネットは新しいiPhoneのファーストインプレッションで花盛りだが、TechCrunch記事で反響があったのはEtherington記者のiPhone 6のカメラはやはりすごい―とうとうコンデジを捨てる決心がついたという記事だった。カメラ・フリークを自認し、自ら記事のフォトグラファーも勤めるEtherington記者は私生活でもコンデジを離さない。しかしiPhone 6をじっくり使った結論は、「これは普段使いのメインカメラになる」だった。

しかしiPhone 6/6 Plusを実際に使ってみて、低光量での写真が十分以上に使いものになることがわかった。もちろんデスクトップ・パソコンの大画面で表示すればノイズが目立つし、周辺の解像度も甘い。しかしiPhone自体のディスプレイで見た場合はすばらしくきれいだし、Facebook、 Twitter、Instagramに投稿した場合も十分な画質だ。

特に低光量で十分が画質が得られる点が決めてになったようだ。たしかにこの作例を見ても納得できる。



暗いシーンではさすがに粒子がやや荒れるが、光が十分回っていれば、犬の毛並みもはっきり写るし、花の背景もきれいにボケている。

新しいiPhoneの解像度と画質は、普通の人間の98%のユースケースで十分以上のものがある―いや、私のようなカメラ・フリークにとってさえ十分だ。コンパクト・デジタルカメラにまだ居場所があるという幻想は最終的に消えていこうとしている。

というのがEtherington記者の宣告だ。


コンパクト・デジタルカメラ、いわゆるコンデジはここ数年、スマートフォンのカメラの進化に正確に反比例して売上を落としてきた。CIPA(カメラ映像機器工業会)によると、2014年のデジタルカメラの販売台数は5000万台という予測で、2010年の1億2000万台から60%の急減だ。

この減少の大部分はコンデジによるものだ。キヤノン、ニコン、ソニーのトップ3社の場合は半減程度だが、下位メーカー中には90%減という壊滅的な例もある。iPhone 6/6 Plusのカメラがこれだけ進歩すればAndroid機も当然対抗してカメラに力を入れてくる。Panasonicは高機能コンデジにスマートフォン機能をもたせたカメラフォンMC-CM1を発表した。その意欲は買えるが、ニッチ製品という印象は免れない。来年はコンデジ市場の消滅がますます加速することは間違いない。日本の下位カメラメーカーから脱落者が出ることになるかもしれない。

iOS 8―キーボードが大人気、日本ではiOS版ATOKが登場

iOS 8のアップデート内容のまとめはiOS 8レビュー:洗練されてユーザー体験は大きく進化―制限緩和はデベロッパーのチャンスを参照。メッセージ、写真、QuickType、サードパーティー・キーボード、ヘルスケア、ファミリー共有、iCloud Drive、連携、通知と拡張、音声認識などカテゴリーごとに要点がまとめてある。アメリカではiOS 8がリリースされてからのApple App Storeの上位はキーボードアプリが占拠しているという

Swypeはキーボードに指を滑らせることで入力され、予測変換によって高い確率で正しい候補が表示される。Swiftkeyも予測変換の精度が売りだ。いずれもAndroidで人気の高いアプリだった。もちろんこれらはいずれも英語入力用だ。日本ではジャストシステムがATOKのiOS 8版を開発中だと告知しているが、詳しいことは明らかになっていないアップデート:ATOK for iOSはこちらから購入できる。料金は1500円。

Amazon、プレミアムeブックリーダー、Kindle Voyageを発表

Appleが新iPhoneを発表した直後にAmazonも新しいデバイスをリリースした。出荷は10月中の予定で、クリスマス商戦に十分間に合う。新製品はe-inkタブレットの新しいKindleとKindle Voyage、タブレットのFire HD 6、HD 7、8.9インチディスプレイとKitKatベースのFire OS 4.0を搭載したFire HDX 8.9、それに子供向けにペアレンタル・コントロールや丈夫なケースを備えたFire for Kidsだ。日本のAmazonサイトではFire for Kids以外の5モデルについて予約受け付け中

クイズ王を破ったIBMの人工知能、Watsonで誰でもビッグデータ解析ができる

アメリカの人気クイズ番組『ジェパディー』で人間のチャンピオン2人を打ち破った人工知能としてあまりにも有名なWatson人工知能の商用利用がいよいよ始まった。 IBM、Watson Analyticsを発表―Watson人工知能が万人にビッグデータ解析能力を与えるという記事によると、Watson Analyticsという新しいプロダクトは一般のビジネス・ユーザーに高度なビッグデータ解析能力を与えるという。

ユーザーは既存のビッグデータ、たとえばSalesforce.comのCRMデータなどをそのままインポートして利用できる。このサービスにはポピュラーなビジネス・ツールによって生成されるデータをインポートするためのコネクター・ツールが用意されており、データをセットすれば、ユーザーは思いつくままに自然言語で次々に質問をすることができる。またサービスにバンドルされているストーリー・テンプレートを利用して標準的な統計分析を行うこともできるという。IBMではこれまでデータサイエンティストとビッグデータ処理に通じたエンジニアのチームがなければ不可能だった高度、大規模な処理が誰でもできるようになるとしている。しかもベーシック版は料金無料というフリーミアム・モデルだ。

「このミステリー作家とその夫はシリアの古代都市ウルケシュの発掘を試みました」という質問に即座に「アガサ・クリスティー」と答える(ビデオの0:41あたり)ことができるWatsonがさまざまな知的専門分野に進出してくることを考えると、いささか不気味なものがある。

滑川海彦@Facebook Google+


今週のまとめ ― 全部Apple。iPhone 6、iPhone 6 Plus、そして…iPod classic

先週は当然ながらAppleのiPhone 6関連の話題が多くなった1週間だった。ちなみに予想通りと言うべきか、iPhone 6 Plusは供給が追いつかないのではないかという話も出ているようだ。

まずは発表イベントのキーノート講演で使われた全ビデオを貼っておこう。

主役はもちろんiPhone 6だ。

iPhone 6登場


新iPhone、「新iPhone、予約は9月12日から、出荷は9月19日午前8時〔日本時間〕、価格は6万7800円から」だとのこと。

記事によれば、iPhone 6 Plusは、同容量比でiPhone 6よりも100ドルずつ高いのだそうだ。カメラ機能や解像度による差別化もあり、Plusを購入する人が多くなりそうにも思うがどうなのだろう。

ちなみに実際に触ってみた記事によると「ピクセル密度の違いは見てすぐにわかる」らしい。詳細は「iPhone 6とiPhone 6 Plusを使ってみた」の記事をご覧頂きたい。

また両者の比較を動画で見せてくれる記事もあった。「iPhone 6と6 Plusを個人的に試用…その様子を超接写ビデオ」がその記事だ。画面解像度の差はあまりよくわからないようにも思ったが、いずれにせよiPhone 6が動作する様子は興味深い。

ついに登場したApple製ウェアラブル

どんな機能を持つのだろうかとか、あるいはどんな形で登場してくるのだろうかと、長らく噂されていたApple Watchがついにベールを脱いだ。外見的な奇抜さはなかったと思う。「Apple Watch登場」に、いろいろと写真も紹介されているのでぜひご覧頂きたい。

なお、小さな画面で有効に操作するために、従来の時計でいう「竜頭」の部分を活用するのはAppleらしいと言えるかもしれない。「竜頭」インタフェースについては「Apple、スクロールホイールを復活」という記事でも紹介されている。

もちろんハンズオンの記事もある。動作の様子は「Apple Watchに触ってみた…その第一印象」こちらからご確認を(動画あり)。

日本での普及はどうなる? Apple Pay発表

Apple Payは画期的NFC支払システム―登録はカメラ、指紋認証、店にカード番号が渡らず」の記事では、詳しくApple Payの仕組みについて解説している。

実のところ筆者は、Android端末にて日頃からSuicaやDocomo iDを買い物に利用している。日常から相当に外れたことをしない限り、財布を忘れてしまっても何も困らない。既にそのような環境にいるために、逆にApple Payのもたらしてくれる「消費者向け」のメリットがよく見えてこなかったりはする。

ただ、前述の記事によれば「メーシー、ブルーミングデール、ウォルグリーン、サブウェイ、マクドナルド、ホールフーズなどの22万箇所のマーチャントがすでに対応するターミナルを設置ずみ」だとのことで、ここには確かに大きな可能性を感じる。

既存電子決済のしくみと比較すれば、簡単かつ安心にクレジットカード利用者を電子決済サービスにとり込もうという狙いがあるのだろう。しかし「安心」を意図する場合、クレジットカードを使わないという層も多いのが日本であるようにも思う。Apple WatchもApple Payに対応しているのだそうだが、このApple Payは今後の動きを追いながら、状況について理解していきたいと思っている。

余談その1:iPhone 6 (Plus)は大きすぎるのか

iPhone 6 Plusについて、1000円札と同じくらいの大きさであるとか、いやそうではなくて1万円札だろうとか、間をとって5000円札程度だというのが妥当だろうというような意見がネット上で拡散されているようだ。

そう言われて、じっと1000円札などを机の上に置いて眺めてみるが、やはり厚みがないと実際の感覚はよくわからない。そんなときに参考になる(?)のが「“大きすぎるか?”と心配する皆様へ」という記事だ。

どうやらiPhone 6 Plusなどについては3Dプリンター用のデータも出回っているのだそうだ。またAmazonなどからもモックアップを購入することができるようだ。実機が入手できるようになるまでには少々時間がかかるかもしれないという噂もある中、予めサイズを実感しておくのも良いかもしれない。ちなみにTechCrunchの記事ではないが、実際の大きさを体感できるペーパークラフトなどもあるらしいので探してみると良いかもしれない。

余談その2:延命をはかる(?)Fireフォンと、そして消え去るiPod classic

iPhone発表イベントに先立ち、Amazonからは驚きの(案の定、という人もいるかもしれない)発表があった。「iPhone 6のローンチ前夜、AmazonはFireスマートフォンを99セントに値下げ」というものだ。

価格を下げつつ、なんとか市場での地位を確立したいという動きだ。

一方、ついに歴史的な役割を終えて消え去るものについての記事もあった。「世界を変えたiPod classic、ついにその役割を終了」というタイトルの通り、消え去るのはiPod classicだ。

デジタルオーディオプレイヤーは、今でこそ「どこにでもあるプロダクト」といった感じだが、普及し始めたのは2000年代に入ってのことだった(iPodも2001年)。14年ほどを長いと見るか短いと見るかは人それぞれだろうが、オープンリールやレコードなどを使っていた世代からすると、本当に「いろいろあった」と感慨深く振り返ってしまうのだ。

Maeda, H


今週のまとめ―来週はiPhone 6発表、スマホカメラの進化続く、ゲームはクラウド化へ

iPhone 6いよいよ来週9/9(火)に発表、iWatchは?

Apple、プレスイベントへの招待状を発送―いよいよ9月9日に新iPhoneのお披露目ということになった。イベント開始は日本時間では9月10日(水)の午前2時くらいからになる。

会場は昨年までのサンフランシスコのイェルバ・ブエナ・センターではなく、サンノゼのフリント・センターだ。フリント・センターは1984年にスティーブ・ジョブズがMacを発表したAppleにとって由緒ある会場で、イェルバ・ブエナの収容人が757人なのに対してフリント・センターは2405人と3倍近い。Appleは今回のイベントに例年以上に力を入れているようだ。

ビデオはフリント・センターでMacを発表する若きジョブズ。

現在、確実となっているのは、次世代iPhoneの4.7インチ版とiOS 8の公開だ。iPhoneの5.5インチ版とウェラブルデバイス、いわゆるiWatchが開発の最終段階にあることは確実だが、9日のイベントで発表されるかどうかについては説が分かれている。発表されたとしても年内の出荷はなさそうだという見方が強い。iPhone 6 4.7インチはイベント後、1週間から10日程度で出荷される見込み。

Androidのフラグシップ機がほぼすべて4.7インチ以上になったのに、Appleが長らく大型化を拒んでいたのはiPad、特にiPad mimiとの「共食い」を恐れていたからだろう。しかし、タブレットの売上は先進国市場で早くも横ばいへ、騒がれたわりには…という記事にもあるように、タブレット市場の拡大に急ブレーキがかかり、Appleとしても本丸のiPhoneのシェアを守るためには背に腹は代えられなくなったものとみられる。iWatchは心拍、血圧、歩数などのセンサーを備え、ヘルス、フィットネス機能を目玉にするらしい。

大型プロダクトのローンチといえば、Microsoftは、Microsoft、Windows 9プレビュー版を9月30日に公開のもようだ。

Google、Amazonともにドローンに本気だ

ジェフ・ベゾスが昨年12月のチャーリー・ローズ・ショーで配送用ドローンを開発していることを公表したときには「クリスマス商戦向けの話題作りだろう」と眉唾に見る声が多かった。しかしドローン配送のPrime AirにAmazonは本気だという記事によるとベゾスはNASAの宇宙飛行士やGooglen Earthのベースになった衛星画像サービスのスタートアップ、Keyholeのファウンダー、Avi Bar-Zeevなどトップクラスの人材多数をドローン・プロジェクトのためにスカウトしていた。これからすると単なる話題づくりではなさそうだ。

一方、GoogleもProject Wingというデリバリー・ドローンを開発していることが判明した。Google Xが開発中のドローンは4つのローターで機体を浮上、コントロールする点はクアドコプターだが、機体デザインはむしろオスプレイのようなティルトローター方式だ。ただしエンジンナセルを傾けるのではなく機体全体を傾ける。離着陸時は垂直だが、移動は飛行機のように水平飛行する。

デリバリー・ドローンの実用化に向けての大きなハードルが人間の歩く歩道などにドローンが離着陸する際の安全性の確保だ。Googleドローンはこの問題をユニークな方法で解決しようとしている。上のビデオで分かるように、配送先で離着陸しないのだ。ドローンは安全な高度にとどまって細いワイヤで荷物を吊り下ろす。ちなみにGoogle Xの責任者アストロ・テラー(エリック・テラー)は水爆の父、エドワード・テラーとノーベル賞を受けた経済学者、ジェラール・ドブルーの孫にあたる。

3Dプリンターで世の中の鍵の半数が開く?

3Dプリンターで銃を製作したとして大学職員が逮捕される事件があったが、実のところ3Dプリンターが銃の製作を特に容易にしているわけではない。ホームセンターで買えるドリルや旋盤の方がよほど効率的かつ強力な銃を作れる。しかし解錠工具となると少々話は違ってくる。脅威! ピンタンブラー錠を瞬時に解錠できるバンプキーが3Dプリンターで簡単に作れるという記事には、3Dプリンターで出力したバンプキーでピンタンブラー錠を瞬時に解錠するビデオがエンベッドされている。2005年以降日本で販売されているピンタンブラー錠の大部分はバンプキー解錠の対策済みということだが、現在使われている錠前の多くは未対策のはずだ。合鍵作成業者から鍵サイズのデータが流出すると誰でも3Dプリンターで簡単にピンタンブラー錠の解錠工具を出力できるようになってしまう。

タイムラプスとステディーカムでスマホカメラますます進化

スマートフォンのカメラに押されてカメラメーカーの作るコンパクト・デジタルカメラの市場が恐ろしいほどのスピードで縮小している。どうやらそのスピードはさらに加速することになりそうだ。先週、Facebook傘下のInstagramはモバイルで安定したタイムラプス動画が撮影できるアプリHyperlapseをリリースした。iOSデバイス内蔵のジャイロセンサーを利用して動画を強力に安定させる。Android版はしばらく後になりそうだ。

一方Googleは8月に入って自動で360°全天球パノラマを撮って共有できるカメラアプリPhoto SphereのiOS版をリリースした。カメラを顔の前で構えると画面に白いリングとオレンジ色の丸が表示される。ユーザーがカメラを動かして白いリングをオレンジの丸に重ねると自動的にシャッターが切られる。表示されるオレンジの丸をすべて撮影すれば全天パノラマの完成だ。水平パノラマが撮れるアプリは何種類か出ているが、こちらはGoogleストリートビューのような全天球写真が撮れる。またパノラマの自動合成能力も非常に高い。

Twitterはアナリティクス提供、Facebookはクリック稼ぎの取り締まりへ

既存の大手ソーシャルメディアも進化を続けている。これまでTwitterへの投稿のパフォーマンスを調べることができるのは広告主と認証ユーザーだけだったが、Twitterがアナリティクス・ダッシュボードを一般ユーザーに公開した。ツイートごとに何人が読んだか、何人がリンクいをクリックしたかなどユーザーのパフォーマンスが細大漏らさず分かる。ページは日本語化されている。またFacebookはクリック稼ぎの釣りネタ投稿の排除するために表示アルゴリズムを調整していくことを発表した。今後は「内容について有益な情報を与えずに人々に記事をクリックさせようとするような見出し」は表示に関してペナルティーを受けることになる。

ゲームはクラウド化する

8月26日にAmazonはゲームストリーミングの有力スタートアップ、Twitchを9億7000万ドルで買収した。5月にGoogleはTwitchを10億ドルで買収することが確実視されていたので、土壇場でAmazonがひっくり返すことに成功したことに業界では驚きの声が上がっている。

Amazonがゲームビジネスにどう取り組んでいくのか、まだ不明だが、ゲームがクラウド化していくことは決定的なようだ。ゲームのストリーミング化には多くのメリットがある。HDビデオがストリーミング再生できさえすればどんなデバイスでも使えるし、専用機がアップデートされるより、クラウドやモバイルデバイスの技術的な進歩の方が速い。またゲームがどんなに巨大化しようとダウンロードせずにプレイできる。近い将来、カジュアルゲームだけなく、コアなゲームもNetflixやhuluのようにストリーミングで楽しむことになりそうだ。

またMicrosoftがゲームを完全にクラウド化しても遅延が生じないネットワーキング技術“DeLorean”を発表したことも注目される。DeLoreanは推論型実行エンジンで、プレーヤーが次の瞬間に取ることが可能なアクションを推測し、それらを事前にプレーヤーのデバイスのメモリに送信する。実際のアクションの直後にクラウドからでなくローカルメモリから、最適画像をレンダリングするという手法だという。このテクノロジーが普及すれば、カジュアルゲームだけでなくコアゲームもクラウド化が可能になる。任天堂やソニーなど日本のゲーム企業についても、クラウド化に対応できるかどうかが重大な影響を与えそうだ。

滑川海彦@Facebook Google+


先週のUS注目記事 ― BuzzFeedが5000万ドルを調達、SnapchatがNo.3ソーシャルアプリケーションに、など

本稿では先週1週間に登場した、翻訳にはいたらなかったものの面白そうな記事を紹介したい。

まずは一部に熱狂的なファンを持つBuzzFeedの話題から。BuzzFeedは「バイラルメディア」と呼ばれるサービスを展開している。

BuzzFeed、Andreessen Horowitzから5000万ドルを調達

このBuzzFeed、10日の記事によればAndreessen Horowitzから5000万ドルの資金を調達したとのことだ。記事は「BuzzFeed Raises $50 Million From Andreessen Horowitz」だ。これまでにも数回のラウンドで4600万ドルを調達していたが、これまでのラウンドすべてを合わせたよりも大きな資金調達となった。

「リスト記事」と呼ばれる手軽そうなコンテンツが主となっていて、そのコンテンツとほぼ同じ体裁の「ネイティブ広告」を展開していることでも注目を集めている。200名以上のエディトリアルスタッフをはじめ550名の社員を抱えつつ、さらに有名記者も積極的に採用しているらしい。記事コンテンツからネイティブ広告までも内製化し、柔軟に連携しつつサイト運営を行なっているようだ。

バイラルメディア上でのコンテンツの在り方や、あるいは広告ビジネスの方向性などを探る意味でも、注目して面白いメディアだろう。「BuzzFeed’s Future Depends On Convincing Us Ads Aren’t Ads」の記事にても、「ネイティブ広告」の在り方などについて議論を呼びかけている。

Snapchatは今や人気No.3のソーシャルネットアプリケーション?!

読者の方々はよくご存知のことだろう。Snapchatとは一定の時間がたつと自動的に消えてしまう写真などを送ることのできるアプリケーションだ。このSnapchatが若者の間で大人気であるという記事があった。「Snapchat Is Now The #3 Social App Among Millennials」がその記事だ。

comScoreの調査によれば、18歳から34歳の間のスマートフォン利用者のうち、32.9%がSnapchatをインストールしているのだそうだ。これはFacebookとInstagramに続く成績で、すなわちTwitterやPinterestを上回っている。

ところでSnapchatと逆を行くようなアプリケーションについての記事もあった。

シェアした写真が一定時間で消えるという点では同じなのだが、人から「いいね」されたり、シェアされたりすると、消えるまでの時間が長くなるという仕組みを採用している。記事は「Shotclock Turns Messaging Into A Popularity Contest」。投稿が評価されれば表示時間が長くなるわけで、たしかに「人気コンテスト」(Popularity Contest)の側面がある。

本アプリケーションをリリースしているのはRumrで、同名の匿名型グループチャットアプリケーションもリリースしている。そちらについては「Rumr, Group Messaging With An Anonymous Twist, Launches On iOS And Android」で説明されている。今回のShotclockはiOS版Android版がリリースされている。

ニッチなソーシャル系サービス

大流行らしいSnapchatは既に、「ニッチ」なサービスというのはあたらないのだろう。

しかし独自のニッチを求めるサービスは(相変わらず)いろいろと登場してきている。

ソーシャルネットワークと呼ぶことはできないかもしれないが、スポーツファン同士のみならず、スポーツ主催者をもネットワークで結ぼうとするサービスも記事になっていた。

Fanmode Lets Sports Fans Share Their Emotions From The Couch To The Stadium」という記事で取り上げられたFanmodeというのがそれだ。

自宅やスポーツパブなどでスポーツ観戦を行いつつ、アプリケーション経由で拍手や声援、あるいはブーイングを行う。またスマートフォンのみでなく、スマートウォッチなどのウェアラブル上での展開も行おうとしている。

視聴者からの反応をスタジアムやテレビなどにフィードバックすることにより、より多くのファンに臨場感などを感じてもらうことができるわけだ。スポーツチームやメディアとの連携ができれば面白いサービスに育つ可能性もある。こちらもiOS版Android版がリリースされている。

廉価版ドローンと小規模核融合

本稿最後はドローンの話と核融合の話を取り上げておきたい。

廉価版ドローンについての記事は「Parrot Jumping Sumo And Rolling Spider Review: Mini Bots Best For Drone Newcomers」だ。Parrotから2種類の無線操縦ガジェットがリリースされた。


 


 

Jumping Sumoのジャンプにはつい声を出してしまいそうになる。ビデオだけからはよくわからないが、結構高度な技術が使われていそうな気もする。しかしやはり本命はドローンの方か。記事にあるように「廉価版」であり「熱心なファンを満足させるものではない」だろう。しかし価格と可愛らしさのバランスは、なかなかにうまく取れているようにも思うのだ。

これからまた「玩具」的なドローンが登場してくるかもしれない。

もうひとつ触れるだけ触れておきたいのが「Y Combinator And Mithril Invest In Helion, A Nuclear Fusion Startup」だ。すなわち、Y CombinatorとMithril Capital Managementが、商用核融合炉の構築を目指すHelion Energyに150万ドルを出資するそうだ。

いきなりの大規模発電施設建設を目指すのではなく、小規模なディーゼル発電機の代替となり得るものを作るつもりにしているとのこと。まだまだ研究段階のもので、直ちに実稼働に入るというようなものではない。記事はもちろんこの画像で締めくくっている。

Maeda, H


今週のUS記事まとめ ― 9月に発表されるiPhone 6、登場がまたれるWindows 9など

日本ではお盆休みだった先週、TechCrunchでは徐々に本年後半にリリースされるであろうプロダクトの話題がのぼりはじめた。多くの人が気にしているのは、やはりApple関連の情報だったようだ。

iPhone 6は9月9日


先週も「速報:AppleのiPhoneイベントは9月9日で事実上確定」という記事があった。今週はその続編として「9月9日に発表されるiPhone 6がデバイス・オブ・ザ・イヤー確実なこれだけの理由」という記事がリリースされ、やはり注目を集めた。

新モデルは5.5インチモデルもリリースされるようで、これはやはり流行ることになるのだろう。但し、レスポンシブデザインが一般化するなど、ひとむかし前に比べると「大画面」へのニーズはやや低くなっているようにも感じる。それでも「大は小を兼ねる」イメージから大画面モデルが主力となるのではと想像しているが、リリース後の動きに注目したい。

なお、Apple関連でいえば「Apple、次期iPadには反射防止コーティングを採用か」という記事もあった。Kindleが直射日光のプールサイドでも本が読めますよと宣伝した当時は「そんなところで本を読むなよ」という意見も多かった(ように思う)。しかしいつでもどこでもスマートガジェットを持ち運ぶことが一般化している中、反射防止コーティングも当然のものとなっていくのかもしれない。

年末に向けての「新リリース」という話では、Windows 9の話もいろいろと具体的に語られるようになってきた。そしてこのWindows 9の記事もいつもたくさんの人に読んでもらえる。

今回掲載したのは「グッドバイ、Windows 8―Windows 9は8の悪名をそそぐ」というものだ。しかしこちらは「明るい未来」を感じさせてくれるから注目するというわけではなく、Windows 8を「なかったことにしたい」という意識もあるようだ。記事の関連ツイートにも「だって偶数バージョンだったわけだし」とするものもある。Windows 8は、タブレット大旋風時代の中で生まれた徒花という扱いになってしまうのかもしれない。

Bing、会話型検索サービスを実現

もちろんMicrosoftについても悪い話ばかりではない。「Microsoftの検索エンジンBingが質問の文脈を記憶して会話のような検索が可能に」という記事は面白かった。

最近はそうでもないように思うが、2000年前後、いかに効率良く検索エンジンを利用できるかというのがITリテラシーの主要部分であると考えられていたりもした。「リテラシーである」と大上段に構えずとも、検索エンジンを「うまく使う」のは利用者側の能力であると考えられていた。

今回の「会話型検索」は、まだ英語のみでの実装の様子。しかし利用者の「能力」を期待していた「検索の仕方」を大幅に変えていくことになるのかもしれない。

Google、教育機関向けClassroomを一般公開

時代が変わっていくことを実感する意味では、教育現場へのIT進出を見るのもわかりやすいだろう。今週は「Google、教師向け教室管理ツール、Classroomを一般公開」という記事が掲載された。

ビデオ中、利用している教師が「以前より良い先生になれたと思う」と発言している。MOOCなどの「新しい」学習環境だけでなく、学校など既存の学習環境においても、ITが本格的に活用される時代となりつつあるようだ。

時代を変える「ヘルメット」

もうひとつ「そういう時代か」と感じ入ってしまった記事を紹介しておこう。それは「Skully AR-1は、GPS、HUD塔載のスマートヘルメット」という記事だ。オートバイ乗車時、目の前にGPS情報や後方の様子を表示するものだ。

ちなみにこのヘルメットはIndiegogoにてキャンペーン展開されたが、あっという間に目標額を達成してしまったそうだ。「スマートヘルメットのSkully、Indiegogo最速で目標額を調達し100万ドルも突破」という続編記事も出ている。

便利になった(?)「Yo」と役に立つようになった(?)「Foursquare」

友だちに、ただ「Yo」のひとことを送るアプリケーションである「Yo」は使っているだろうか。どうやら海外での方がメジャーなようで、たとえば以前「フランスサッカー連盟、チームの応援ツールに“Yo”を導入」という記事もあった。

あまりにシンプルな機能しか持っておらず、どうみても「冗談アプリケーション」という位置づけだったのが、その姿を変えつつあるようだ。150万ドルの資金を調達し、さまざまな機能を追加したことを紹介するのが「あの1語メッセージのYoがアップデート―“バカバカしく単純”ではなくなった」の記事だ。

たとえば事前にURLをコピーしておいてYoを送ると、相手にURLを送信することができるようになっているのだ。使ってみるとなるほど便利なように思える。ただ、そうしたいろいろな機能を利用するのであれば、従来のメッセージングアプリケーションを使おうと考えるのが普通なのかもしれない。Yoの今後がどうなるのかは注目していきたい。

もうひとつ大きく姿を変えたのがFoursquareだ。 「“レコメンド”サービスとなったFoursquareの今後はどうなる?!」という記事が掲載されている。


 

Foursquareにもともとあった「レコメンド」の機能を強化させていこうとするものなのだろう。ただ、利用者数の差であるのか、国内ではFoursquareをレコメンドツールとして使っていた人は少ないように思う。「ゲーミフィケーション」というほどでもないが、ライフログの一貫として「チェックインアプリケーション」として使っていた人が多いように思うのだ。そうであるならば、今回のリニューアルを期に日本国内での利用者数は減ってしまうことにもなるのではないかと思ったりもする。

個人的に「チェックイン」を大いに楽しんでいたので、そのヒガミであるかもしれない。

Maeda, H


今週のUS記事まとめ―Snapchatは10兆円、Google+とFacebookは方向転換、3Dプリンタにうまい話はなかった

Twitter復活、Snapchatが100億ドル!

Snapchat、評価額ついに100億ドル―Alibabaも投資交渉に参加

「読んだらすぐに消えるメッセージ」で大ブームを巻き起こしたSnapchatが新たな投資ラウンドで10兆円の評価を得た。Bloombergの記事はスタートアップの「100億ドルクラブ」としてAirbnb、Dropbox、Uberを挙げているという。これらの3社はすでにビジネスモデルを確立しているがSnapchatの場合はまずその点が未知数だ。強いソーシャルグラフを形成するFacebookはと違って、「その場で消える」メッセージにはユーザーを囲い込む力が弱い。果たしてそれだけの評価額を長期にわたって維持できるだけの売上が得られるのだろうか?

Twitter株急騰。Q2売上3.12億ドル、EPS 0.02ドルで予測を大幅超

一方でビジネスモデルが弱いという印象から上場後株価が低迷ぎみだったTwitterはQ2に月間アクティブ1600万人増で売上もアナリストの予想を大きく超え、四半期で黒字を出した。今期の売上の81%がモバイル広告収入で、Facebookと共にTwitterも急速なモバイル化に成功しているいることをうかがわせた。

ビッグソーシャルメディアは再編へ

Google+の「写真」が単体サービスになるかもしれない

Googleはビデオチャットのハングアウトの利用からGoogle+登録の要件を外すなどGoogle+の利用をユーザーに無理押しすることを徐々に止めている。もともとGoogle+の写真共有機能はPicasa Web版をベースにしたものだったが、Google+のスタート時にいささか強引にこれと統合してしまった(Piacsa Web版もなくなったわけではなく、こちらのリンクから以前どおり利用できる)。

Google+の写真には強力なオンライン編集があるだけでなく、ユーザーの画像を自動的に最適化したり、パノラマ写真を合成したり、GIFを作ったり、一連の写真からたとえば「旅行のストーリー」を自動作成したりできる。またアップロードも高速でGoogleドライブと連携しているため保存容量も巨大だ。もし報道のとおり「Google写真」がスタンドアローン化されれば普及に大きな弾みがつくかもしれない。

一方、Facebookもモバイルアプリに際限なく機能を追加するのを止めて、スタンドアローン・アプリのファミリーを作っていく方針に転換したようだ。これまでメッセージ(チャット)をメインのアプリとスタンドアローンのアプリの双方で行ってきたが、近くチャット機能をMessengerアプリに全面的に切り替えると発表した。これと前後してギフトを終了しBuyボタン等のコマースプラットフォームに集中することも決定された。13億人のユーザーを抱えていればわずかなユーザー体験の変更でも不満を抱くユーザー数は膨大になる。しかしそれを恐れていては全体の改良は進まない。まだ日本版ではMessageアプリへの切り替えは行われていないようだが、方向としては正しいだろう。

3Dと電子出版はハイプ・サイクルの幻滅の谷間か

市場調査会社のGartnerは「ハイプ・サイクル」という理論を唱えた。新しいテクノロジーが安定して受容されるためには当初の過剰な期待が現実によって裏切られる「幻滅の谷間」をとおり抜ける必要があるという。3Dプリンターはその時期にあるのかもしれない。

Motaの99ドル3Dプリンターは「うますぎる話」だったという記事では、Kickstarterで大人気になった3Dプリンター・プロジェクトが数日で中止となった経緯が紹介されている。「大量生産効果を狙ってMotaは製品に99ドルという破格の値付けをした。おそらくは数千万ドルという規模の投資を集める計画だったのだろうが、集まったのは6万5000ドルで、その程度の資金で99ドルで利益が上がるような大量生産は無理だった。Amazonが3Dプリント製品のストアをオープンしたが、目玉はカフェイン分子式を模したイヤリングといった「話しのタネ」のようなアイテムでまだ実用には遠いことをうかがわせた。

eブックでも一時の楽観的な熱狂は過ぎ去ったようだ。「われわれが知っていた本の姿は、変わりつつある。本は、雑誌や新聞と同じ運命をたどりつつある。散文テキストの分厚い塊は価値を失いつつあり、人びとがそれに対して払う価格も下がっていく」とジョン・ビッグズ記者が本が本でなくなる日でいささか憂鬱なスケッチを描いている。既存の版元、書店のビジネスが圧迫され崩壊の危機に瀕しているのに、新しいデジタル・エコシステムは一人勝ちAmazon以外の関係者に十分なメリットをもたらしていない。「かくして出版産業は衰退していく。そして、ベゾスが勝つ」とビッグズ。これも幻滅の谷のようだ。

メガネ不要の夢のディスプレイ開発中

ガジェットではMITとカリフォルニア大学バークレー校の研究チームが開発中の視力に応じて自動的に表示を調節するでメガネがいらなくなるディスプレイという記事が注目を集めた。裸眼3Dディスプレイの技術を応用して水晶体の焦点調節機能を補助した像を網膜に結ばせるという技術のようだ(PDFの元論文)。老眼鏡をかけて長時間ディスプレイを見るのは負担が大きい。また近眼のメガネをかけて自動車を運転するとカーナビの字が読めなかったりする。ユーザーの視度に合わせて表示を調節してくれるディスプレイが実用化すれば一大マーケットが開けることになるだろう。

滑川海彦 Facebook Google+


GoogleやAmazonも参入、熾烈を極める米国の即日配達ビジネス、日本の可能性は?

編集部注:この原稿は内藤聡氏(@satoruitter)による寄稿である。内藤氏はEast Venturesアソシエートで、海外のテクノロジー情報を発信するブログ「シリコンバレーによろしく」を書くテクノロジー・ブロガーだ。

昨今、ベイエリア(サンフランシスコからシリコンバレーを含む一帯)ではオンデマンド系のプロダクトを目にする機会が増えてきました。オンデマンド系のプロダクトとは、消費者が必要なモノやサービスを必要な分だけ即座に購入・利用できるといった形式のビジネスで、P2Pの低価格タクシー配車サービスのuberXや、家事代行サービスのHomejoyなどが代表的な例です。また、消費者のみならず、労働者(サービス提供側)も必要な時に必要な分だけ働けるということが、この分野をオンデマンドと呼ぶ所以になっています。

そんなオンデマンド系ビジネスの中でも、とりわけオンデマンドECの分野が注目を集めており、InstacartやPostmates、SpoonRocketなどのスタートアップからGoogle、eBay、Amazonといった大手企業までがこの分野に進出しています。

今回は、米国におけるオンデマンドEC分野の主要プロダクトを紹介した後に、この分野の今後と、日本での可能性について言及していきたいと思います。

オンデマンドECとは?

オンデマンドECとは、注文された商品を最短で1時間以内(フード系であれば数十分以内)、遅くとも当日に配達するといったビジネスを指します。食品、日用品、料理のデリバリーなどが主要な分野です。

ベイエリアでオンデマンドECが台頭した背景

ベイエリアでこの分野のプロダクトが台頭してきた背景として、ベイエリアの不便な消費環境とスマートフォンの普及の2点が考えられます。

まず、ベイエリアの消費環境ですが、日本の都市部のように徒歩圏内にコンビニやスーパーが存在しないので、日々の買い物がとても億劫に感じます。食品や日用品は大量に買い貯めすることが主な消費習慣で、必要に応じてコンビニでちょこっと何かを購入するといったことができません。また、日用品をAmazonなどで購入する際も、日本のように物流インフラが整っていないため、通常配達で数週間、Amazonプライムでさえ在庫の場所によっては到着までに数日かかるのが当たり前です。

食事に関しても、日本の都市部のように少し歩けば美味しい飲食店が見つかるといった地理的環境ではないため、外食ひとつをとってもそれなりの移動を必要とします。それゆえ、自宅にいながらデリバリーを利用して食事を取る、いわゆる中食のスタイルが日本以上に好まれているように感じます。上記のような環境的な不便さを解決するための手段として、現在オンデマンドECが多くの人に受け入れられつつあるのです。

次に、スマートフォンの普及がオンデマンドECの台頭要因になったという点です。ユーザーがモバイルを通じて時間と場所を問わず商品を閲覧・注文できるようになったことや、配送状況をリアルタイムでトラッキングできることなど消費者視点の利便性向上はもちろんありますが、それ以上に労働者側の人間が1人1台モバイルを持つようになった時代背景が大きな要因であると考えます。

オンデマンド系のサービスは、配達を仕事とするパートタイムのスタッフが好きな時間に必要な分だけ働くといった仕組みが主流です。そして、彼らはタイムカードを切る代わりに、専用のアプリを立ち上げることで仕事を開始します。このように、彼らがスマートフォン経由で注文を受け取り、商品を配達するというサービスを提供できるのは、多くの働き手がスマートフォンを所有している今の時代だから機能しているのだと考えます。上記のような端末の普及がオンデマンド系のプロダクトの提供を可能にした大きな要因と言えるでしょう。

オンデマンドECの主要分野は食品、日用品、料理

続いて、オンデマンドECの分野における主要プロダクトを紹介していきます。なお、オンデマンド系のサービスは、自分で在庫を持つ形式(リテイラー型)と、在庫を持たず自前のスタッフが商品を配達する形式(ロジスティック型)がありますが、ここでは一括りでオンデマンドECとします。

Instacart

Instacartは、食品の分野に特化したオンデマンドECです。注文が入ると、Shoppersと呼ばれるパートタイムのスタッフがSafewayやWhole Foodなどのスーパーに出向いて商品を購入・配達してくれるというもの。最短1時間以内で配達してくれる上に時間指定もできるため、主婦を中心に人気を集めているアプリです。1時間以内の配達だと送料が$5.99(約600円)、2時間以上であれば$3.99(約400円)といった価格設定。年間$99(約1万円)のInstacart Expressに加入することで$35(約3500円)以上の買い物の送料が無料になります。Instacartは通常の料金より30%程度水増しして販売し利益を上げているという意見もありますが、現在は店頭価格と同様の価格の商品を見かけることが多く、各リテイラーから売上に応じてコミッションを取る形式に変更したのかもしれません。

Postmates

Postmatesは、近所のレストランやスーパーの商品を何でも最短で1時間以内に配達してくれるデリバリーサービスです。他のプロダクトと違い24時間利用できます。Postmates側がレストランのメニューやスーパーの商品等の情報を収集しており、ユーザーはその中から欲しい商品を選ぶだけで注文を完了させることができます。欲しい商品がPostmates上にない場合は、メモ形式で商品名とその説明を文章で記入し注文することが可能。商品はPostmateというメッセンジャーバイクに乗ったスタッフが配達します。料金は1回につき$5(約500円)の基本料に加え、購入額の9%と移動距離から計算された追加手数料がかかります。

WunWun

WunWunは、どんな商品でも基本的に無料で配達してくれるデリバリーサービスです。現在はマンハッタンとブルックリンでのみサービスを提供しています。注文を受付ける最低購入金額は$10(約1000円)。ビジネスモデルは、商品を購入したリテイラーや、その商品のメーカーにコミッションフィーを請求するといったもの。

Google Shopping ExpresseBay Now

Google Shopping ExpressとeBay Nowは、電化製品やアパレルなどの商品を最短で1時間以内に配達してくれるオンデマンドECです。Instacartが食品に特化しているのに対して、GoogleとeBayは、Best Buy(家電)やOffice Depot(オフィス用品)、Walgreen(ドラッグストア)、Uben Outfitters(アパレル)などで販売されている日用品を取り扱っています。Googleは1回の配達につき$4.99(約500円)で最低購入金額は要求しない一方、eBayは1回の配送料は$5(約500円)で、$25(約2500円)から注文を受け付けています。

AmazonFresh

AmazonFreshは、食品のデリバリーサービスです。大手で唯一、生鮮食品・加工食品の分野をカバーしています。年間$299(約3万円)のAmazonFresh会員に加入することで、無料で商品を即日配達してくれるといったもの。最低購入額が$35(約3500円)に設定されていますが、本やDVDといったAmazonで販売している通常の商品も合計額に加算できる仕組みになっており、食品以外の商品も抱き合わせて購入させたい狙いが伺えます。今後は、ローカルのレストランや食品小売店(パンや惣菜等)の商品の販売をマーケットプレイス形式で拡大させていくようです。

CaviaZestyDoorDash

オンデマンド系ECの分野で、特に注目されているのがフードデリバリーです。各プレイヤーが各々の基準でレストランをキュレーションし、その店舗のメニューを宅配するといったもの。Caviaは地元の人気レストラン、Zestyは健康志向のメニューを提供しています。また、多くのサービスがサンフランシスコ(ベイエリア北部)で提供されている一方で、DoorDashはサンノゼやパロアルトといったサウスベイ(ベイエリア南部)に特化しており、地理的に差別化を図っているようです。

SpoonRocketSprigMunchery

キュレーション型のものとは別に、自前でシェフを雇う、もしくはシェフと提携して料理を提供するプレイヤーも存在します。SpoonRocketは、日本のbento.jpのようなサービスで、自前で製造した料理を注文から最短15分以内で配達するといったサービスをランチの時間限定で提供しています。料理の選択肢は4つしかなく(内容は毎日変更)、価格は送料込みで一律$8(約800円)。Sprigも同様に、食材にこだわった料理を注文から最短で20分以内に届けるサービスをランチとディナーの時間に提供しています。またMuncheryは、一流シェフの料理を自宅で楽しめるというコンセプトのもと、有名シェフと提携して$10(約1000円)前後の料理を調理・配達しています。『俺のフレンチ・レストラン』のデリバリー版と説明すると分かりやすいかもしれません。

オンデマンドECの今後と日本での可能性

上記のように、現在では食品、日用品、料理といったジャンルを中心に数々のプレイヤーがオンデマンドECの分野でサービスを提供しています。そして今後も、主に以下の3つの形式でスタートアップが新たにこの分野に参入する余地があると考えています。

1つ目は、提供する商品を特定の分野に絞ることで品揃えの幅を広げ、ユーザー体験を向上させる形式。アルコールの販売に特化したMinibarDrizlyが良い例です。

2つ目は、同業者がまだカバーしていない地域でいち早くサービスを開始し市場を獲得する形式。サービスの提供地域をサウスベイに絞っているDoorDashや、シアトルに特化しているPeachなどが良い例です。

3つ目は、購入方法に差別的要素を加えるといった形式。例えば、深夜帯の配達に特化したものや、共同購入を可能にさせるスタートアップが出てくるかもしれません。

一方、日本でオンデマンドEC系のビジネスがスケールするのかといった点も気になるところです。先述したように、日用品や食事を購入するのが億劫な米国ベイエリアとは違い、日本ではコンビニやスーパー、レストランが充実しており、いつでも徒歩圏内で必要な食品や日用品、おいしい食事を手に入れることができるため、この手のサービスにおいて、日本に米国ほど強い需要はないかもしれません。

しかし、既存のコンビニやスーパー、一部のレストランがデリバリーのサービスを提供していることから分かるように、買い物に行く時間や労力を節約したいビジネスパーソンや高齢者、主婦などが一定数存在するのも事実です。コンビニや近所のレストラン、またネットスーパーとは異なった形のユーザー体験を提供することができれば、日本でも評価額$1B(1000億円)には届かなくとも数百億円規模のビジネスになる可能性は十分にあると思います。Muncheryのように、行列のできるレストランの料理をハイエンド向けに提供するフードデリバリーや、人口密度の高い日本の都市部では、配達よりもテイクアウトに特化した事前注文型のECなどに需要がありそうです。

日米問わず、今後もオンデマンドECの分野から目が離せません。


先週のUS注目記事 ― 過去を振り返るためのTimehopが1000万ドルを追加調達、など

自分の手帳を読み返すのが好きだ。過去を振り返るのが好きなのだ。そういうとあまりにジジくさいかもしれないが、中学生の頃からの趣味だ。自分の過去を記録に残しやすくなった昨今、そういう趣味の人も増えているのではないかと思ったりする。

そんな「振り返り好き」の人の存在を期待しつつ、本稿ではこの1週間を振り返り、日本語版では紹介できなかったものの、注目した記事を紹介したいと思う。

1000万ドルを調達した過去振り返りサービスなど

やはり過去振り返り系サービスの話から始めよう。自分の過去を振り返るためのサービスといえばTimehopが思いつく。そのTimehopが1000万ドルを調達したという記事があった。「Timehop, The App That Works As A Digital Time Capsule, Raises $10M Led By Shasta Ventures」がその記事だ。

「『今』を共有するのがソーシャルネットワークの一般的在り方であるが、しかし自分の来し方を振り返るサービスにも価値があることをTimehopは示している」という記事も格好良い。

尚、当方Androidがメインデバイスであるので、Timehopはしばらくウェブ版で利用していた。しかしiPhone版にかなり遅れてリリースされたアプリケーションをインストールしてみると、アプリケーション版の方がかなり手軽で便利に感じる。ウェブ版を利用していながらアプリケーションをインストールしていない方は、ぜひともアプリケーションをインストールしてみるべきだと思う。Android版アプリケーションはこちらからダウンロードできる。

また、自分で過去を振り返るだけでなく、友だちと一緒に振り返ってみようとするアプリケーションの話題もあった。アプリケーションの名前は「Anniversary」で、記事は「Anniversary For iPhone Offers A Moment Of Nostalgia In The Age Of Disposable Photos」だ。

友だちと一緒に何かイベントとなる出来事を経験したとき、指定した時期に(1日後、1週間後、1ヶ月後、あるいは1年後など)自分で撮影した写真などを送るという仕組みだ。ひとりで振り返っても楽しめる思い出を、ともに過ごした人と一緒に振り返ることができるわけだ。1年後に、その「友だち」との関係がどうなっているかという微妙な問題もあるが、そういうところをのぞけばとても面白そうなアプリケーションに思える。

ネット時代の「危険」に対処する


現実世界であるとネットの世界であるとを問わず、人間関係というのは移ろいやすいものではあるかもしれない。そんな中、ネットを媒介とする思わぬ危険にさらされることもある。大人であればそういう危険も「自己責任」なのかもしれないが、子供の振る舞いについては気を使ってあげたいと思う人も多いことだろう。

もともと、ペアレンタルコントロールといえば、見てはいけないサイトを指定するという簡単な仕組みのことだった。しかし「ソーシャル化」が進む中、ソーシャル全般を排除することはできないものの、しかし特定の危険からは子供を守りたいとする考えも出てきている。そのような方針をソフトウェア化したもののひとつが「Mamabear」で、最近になって140万ドルの資金を調達した。記事は「Mamabear Raises $1.4 Million For A Parenting App That Monitors Children’s Social Media Use And More」だ。

ところでネットワークでの活動がもたらす危険とは、いわゆる「炎上」のみでなく、実際の暴力に繋がることもある。そうした面にも対処しようとするのが「Defender」というデバイスだ。

このデバイスは、暴漢の写真を撮影しつつ、催涙スプレーで攻撃することもできる。さらに24時間体制の監視センターにも繋がるようになっている。Indiegogoでキャンペーン中だが、本稿執筆時点で目的額の212%を獲得している。

American Users Spend An Average Of 40 Minutes Per Day On Facebook」の記事にあるように、ネットに触れ、ネットで繋がることがますます増えていく時代の中、安全対策の進化も大いに必要とされる分野なのだろう。

ハードウェア・クラウドファンディングの今後

ところで上に紹介したDefenderは、ハードウェアのみならず監視センターなども含んだキャンペーンだが、クラウドファンディングの隆盛により、いろいろなハードウェアが世の中に出てきやすくなったと言えるのではないかと思う。

このハードウェア系クラウドファンディングにつき、現状をまとめているのが「The Crowdfunded Hardware Ecosystem」の記事だ。

ジャンルによる調達額平均などにも触れていて、自らプロジェクトを立ち上げようとする人にもきっと参考になることと思う。

夏休みに80sを振り返るテック映画を

などと過去記事を振り返っているうちに、いよいよ関東地方にも本格的な夏がやってくる。昨今の異常に思える気温上昇や豪雨ないし突風などは辛いところだが、「夏休み」を楽しみにしている人もいることだろう。

夏休みの楽しみ方はいろいろなれど、チープに楽しむのなら自宅でDVDやBlu-rayの鑑賞に明け暮れるというのも手だ。「なるほど」と同意してくださる方のため、80年代風ハッキングシーンが楽しめる映画を紹介する記事もあった。「Hacking In The 80′s, Your Summer Movie Guide」がその記事だ。

紹介されているのは「War Game」や「Tron」など。「没入型デバイス」などなかったが、80年代の「ナード」たちは、たしかにVRに没入していたことを思い出す。

みなさま、熱中症などにならず、没入型ハッピーな夏休みを。

Maeda, H


今週のUS記事まとめ ― 「絶好調」らしきFacebookの決算報告、など

決算報告もいろいろとあった一週間だった。最も注目を集めたのはFacebookだったように思う。

絶好調らしいFacebook

比較がわかりやすかったのが「Facebook、時価総額1900億ドルでAmazonを上回る」という記事だ。Amazonとの比較について「便利さからいえばAmazonじゃないか」というツイートもあったが、ソーシャルネットワークとしては「身の回りのいろいろなこと」(広告含む)を「巻き込む」力を持っていることが大きな評価ポイントであるわけだ。

ところでFacebookは2012年に株式公開したわけだが、その時点でのモバイルアプリケーションについては「使い物にならない」という意見も多かった。今でこそソーシャルのNo.1プラットフォームはモバイルであると誰もが思っているが、当時はまだモバイル対応に及び腰であると感じられることも多かった。Facebookのモバイルアプリケーションが「使い物になる」ようになったのは、2012年も押し迫ってのことだった。

ちなみに比較の対象となったAmazonについての記事もあった。ドローン配送Unlimitedで話題を集めるAmazonではあるが、決算的には厳しいところもあるようだ。「Amazonの第2四半期は売上193.4億ドル、赤字1700万ドルで株価は5%急落」という記事が投稿されていた。

Facebook、「あとで読む」サービスを開始

Facebook関連でもうひとつ、多くの人が「やっときた」と感じたサービスがリリースされていた。記事は「Facebook、“保存”機能をリリース、URL、場所などを“あとで読む”リストに保存できる」だ。

これまで「いいね」したくなるのとはちょっと違うタイプのリンクについて、リンク先にジャンプしてからPocketなどに登録していた人が多いだろう。しかしFacebook発の情報はFacebook内でまとめておきたいと感じることも多かったはずだ。そのような声にこたえる形で、(ようやく)Facebook内で「あとで読む」ことができるようになった。

「保存」しておいた記事は、Facebook画面左にある「保存済み」項目の中に一覧で表示されるようになっている。

クール・ジャパン

ところで今週は「世界で戦う日本」もいろいろと感じさせてくれる一週間だった。例えば、訳出時には全く気づいていなかった(不勉強をお詫びする)「“職場エクササイズ”は普及するか? デスク下でペダル運動をするCubii登場」だ。

訳出してすぐに@ツイートを頂いた。

展開中だったKickstarterプロジェクトは8万ドル目標額を余裕で突破し、そしてスマートフォン充電機能をもたせるためのゴールとしていた15万ドルすらもはるかに超えてしまった。

もうひとつ、記事中でも「日本発」が言われていた「日本発! デジタルアートワーク作品の活躍場所を広げるFRAMEDが世界を相手に勝負中」のプロジェクトもあった。

こちらも大成功プロジェクトで、終了までまだかなりの日数を残しつつ、目標額の7万5000ドルに対し30万ドル近くの資金を集めている。

教育素材としてプログラミング

実は、誰もがすぐにコーディングして、それをコンパイルして実行するなどという環境が身近になったのは、筆者の実感タイムスパンとしては「ごく最近」のことだ。以前は「CPUタイムがどうしたこうした」で、コンピューターを使いながらコーディングして、それをコンパイル/実行することを気軽に行うことなどできなかった。趣味としてはもちろんのこと、仕事としてプログラミングを行う場合も、さまざまな制約があったものだった。

そんな時代「オープンソース」は、どこか「ヒッピー的」な文化であるとみなされていたが時代はかわった。コンピューターサイエンスの分野に「オープンソース」を積極的に導入すべきだという記事があった。「コンピュータ科学(CS)の教育にも現代化が必要だ」がその記事だ。読者の年齢層によっては、いろいろと「時代の流れ」を感じることのできる記事かもしれない。

もうひとつプログラミング教育関連で注目を集めた記事があった。 ウェアラブルでファッショナブルな電脳玩具Linkitzがプログラミングを愛する女の子を育てる」がそれだ。

アクセサリにいろいろとギミックを仕込むという発想は「男の子的」ではないかと思ったりするものの、しかしそれも筆者の偏見なのかもしれない。

男の子なら誰もが興味を持つ赤外線カメラ

ギミックといえば、iPhoneを赤外線カメラに変えるという話もあった。「iPhoneを本格的赤外線カメラに変えるFLIR ONEがApple Storeに―明日から予約受付」の記事だ。

赤外線カメラといえば、テレビなどで「意味ありげ」なシーンに登場して、男の子たちの胸を熱くさせたものだ。そんな赤外線カメラが自分専用で使えるようになる。まあ「価格は349.99ドルだ」けれども。

ちょっとそちらには手が届かないなという人には、こちらを紹介しよう。目標額に到達しないかもしれないKickstarterプロジェクトではあるが「人類の危機を救う」ことを目的としたものだ。記事のタイトルは「トイレ・パニックを防いでくれるトイレットペーパー残量検知メカ」というものだった。

最後の「危機を救う」繋がりでこちらを紹介しよう。場合によってはトイレ以上の危機的状況に対応するものだと言えるかもしれない。記事のタイトルはスマートフォンを渡して写真を見てもらうときの“心配”を軽減するOverswipe」だった。

人にスマートフォンを渡して写真を見せるとき、「頼むからそれ以上はスワイプしないでくれ!」と祈るときがある。そういう危機的状況を招かないようにしてくれるアプリケーションだ。Android版の登場が待たれる。

上にも掲載したアイキャッチ画像のキャプションを意訳しておく。曰く「スワイプしてんじゃねえよ、タコ」という感じじゃないかと思う。

原文へ

(翻訳:Maeda, H


最新アメリカ記事まとめ―Microsoftの攻勢、ファウンダーが語ったGoogle、ベゾスは喧嘩上等

Microsoftはクラウド化に邁進

Microsoft、パートナー・カンファレンスでクラウド戦略を説明―「未来ではなく今の話だ」と強調

Microsoftは米国時間7/14にWindowsパートナーを集めたカンファレンスで「クラウド・サービスを利益と顧客を増加させる有力な手段だ。クラウドは未来の話ではない。現在の話だ」と述べた。ケビン・ターナーCOOは「MicrosoftはパソコンOSでこそ90%を握っているがモバイルを含めた全デバイスでのシェアはわずか14%だ」として、攻めの姿勢で努力しなければならないと力説した。

このカンファレンスでMicrosoftが述べたところによれば、サティヤ・ナデラがCEOに就任してから一段と精力的に進められているOffice 365などのクラウド化、サービス化は成功しているようだ。しかし「全デバイスでは14%」という数字が示しているとおり、モバイル分野で先行のiOSとAndroidに追いつくための特効薬はまだ見えていない。

Microsoft Office 365の小企業向けプランを改定、ますます安売り指向に

Microsoftはこのカンファレンスに先立ってOffice 365の料金をいっそう引き下げた。先月は無料クラウドストレージの容量を倍増して15GBに、Officeユーザは1TBにしている。

Googleのファウンダーが久々にGoogleを語る

ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンがGoogleを語る―ヘルス分野は規制が重荷、手を広げすぎた方が実は効率的

表に出るのをあまり好まないGoogleのファウンダーたちだが、Khosla Venturesの例年のサミット・カンファレンスに登場してシリコンバレーを代表するベンチャーキャピタリストの一人、ヴィノド・コースラとリラックスした雰囲気で長時間対談した。

この中で「Googleはあまりにも多方面に手を広げすぎている」という批判に対してラリー・ペイジは、ユニークな見解を述べた。ペイジはスティーブ・ジョブズにも同じことを言われたとした上で、「密接に関連した問題の決定はCEOまで上がってくる。しかし自動走行車はサーゲイがすべて取り仕切っていて私は関与する必要がない。巨大な一つのプロジェクトより関連性のあまりないプロジェクト多数の方が管理コストが低いということに私は気づいた」と述べた。企業は自分の熟知している分野の周辺に業務を拡張しがちだが、それはかえって管理コストの増大を招くという。

自動走行車プロジェクトを担当するサーゲイ・ブリンは「アメリカの都市の面積のなんと3割から5割が駐車スペースだ。これは途方もない浪費だ。〔自動走行車が普及すれば〕車は必要なときに道ばたで呼び止めれば行きたいところへ連れて行ってくれるようになる」と遠大なビジョンを熱烈に語った。またブリンはヘルス・健康関連について「規制が煩瑣過ぎ、参入の障壁が高すぎる」とした。

この点については、Google、製薬大手のNovartisと提携―血糖値測定コンタクトレンズなどを5年以内に実用化へという動きの予告だったことが判明した。

またGoogleはChromecastとGoogleマップの機能強化も実施した。

ここ数日中にAndroidデバイスからChromecastに画面ミラーリングできるようになる

Googleマップがとうとう距離計測ツールをサポート

ジェフ・ベゾスの「喧嘩上等」と戦略

ジェフ・ベゾスの戦闘的な姿勢は創業以来少しも変わらないようだ。フランス系の世界的巨大出版社、アシェットとの交渉が難航するとベゾスはアシェット系出版物のAmazonでの近刊予約受付や割引販売を停止するという強硬手段に出た。世界最大の出版コングロマリットの一つであるアシェットも後に引かず、戦いは膠着状態に陥っている。

するとベゾスは、交渉が決着するまでの間、HachetteとAmazonは著者たちにeブック売上の100%を支払うという条件でAmazonはHachetteの取り扱いを従来どおりに戻す、という破天荒な提案を行った。もちろんこれはアシェットが同意するはずはないので「嫌がらせ」に近いが、この裏には「アシェットがいつまでも妥協しないのなら法外な好条件を提示してベストセラーの著者を引きぬくぞ」という脅しがあるのだろう。

一方でAmazonは親が知らない内に子どもが巨額のアプリ内購入をする問題で連邦取引委員会と争っている。Amazonは「ペアレンタル・コントロールについては十分な手立てを尽くした」として法廷闘争を辞さない構えだ。未成年者に対するアプリ内課金はAmazonに限らず問題を生じやすい分野だが、記事はAmazonの言い分に理があるという専門家の言葉を引用している。

アメリカの「ネット中立性」はどこへ?

ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)は一部の顧客を優遇してはならないというのがネットワーク中立性だが、FCC(アメリカ連邦通信委員会)は近く、ネット中立性を事実上廃止するような決定を行おうとしている。これに対して現在Googleを始めとするシリコンバレーのインターネット企業は強く反対している。

ISPに金を払えばインターネットの高速レーンを使える…新法(悪法?)に対し647000通の一般意見が集まる

Apple App Storeは早くも6年目

App AnnieのレポートによればApp Storeで現在公開されているアプリは125万2777種類で、6年間のダウンロードの総計は750億回、現在は毎月6万の新しいアプリがアップロードされているそうだ。昨年のAppStoreの売上は100億ドルを記録した。このレポートでは新参のデベロッパーがApp Storeでアプリを見つけてもらうことがさらに困難になっていることなどいくつかの重要なトレンドを詳しく紹介している。

ハッピー・バースデイ! 6年目のApp Storeのトレンドを探る

Android Wearウォッチ、そろりとスタート

スマートウォッチ戦争ではGoogleが先制した。Lardinois記者はこの使用レポートで「Google Nowみたいにユーザのことをよく知っているアプリを他社が作るのはたいへんだろう。だからiWatchがよっぽどすごい・すばらしい製品でもないかぎり、スマートウォッチの競争では、Google Nowのおかげで、Android Wearがかなり有利だろう」とAppleの苦戦を予想している。

長年腕時計嫌いだったぼくがAndroid Wearスマートウォッチを常用したくなった理由

滑川海彦 Facebook Google+


iOSおよびAndroidを完全にエミュレートする「Virtual」、など ― 先週のUS注目記事

この1週間、米国版TechCrunchに掲載されたものの、日本語版で紹介できなかった記事をいくつか振り返ってみたい。

面白そうでも失敗することのあるKickstarterキャンペーン

ちょっと気になったものとして、失敗しそうなKickstarterキャンペーンから見てみたい。「Phonotonic Is A Nifty Music Device That Turns Movement Into Music」という記事で紹介されたプロダクト自体はなかなか面白そうなものだった。

ビデオを載せておこう。

ビデオを見ておわかりのように、身体を動かすことで音楽を生み出すデバイスだ。実直そうな青年が行うデモはかなり面白そうに見える。

ただこちらのキャンペーン、残り日数も少なくなる中、目標額には5万ドル以上不足している。早期割引のオプションはすべて完了となっていることから、プロジェクトに興味を持った人はそれなりにいたはずだ。目標調達額が大きすぎたのかもしれない。

もうひとつ、面白そうなのだキャンペーンがどうなるかわからないものがあった。「Kudoso Is A Router That Rewards Your Kids With Facebook Time For Studying, Doing Chores」で紹介されているものだ。

ペアレンタルコントロールを行うことができるルーターなのだが、子供たちは「ネット利用時間」を「稼ぐ」ことができるようになっている。すなわち犬の散歩をするだとかバイオリンの練習をするとか、あるいはKhan Academyで特定のレッスンを受講した場合などに、たとえばNetflixを閲覧する時間を稼ぎだすことができるわけだ。

使いこなすことができれば、かなり有効なペアレンタルコントロールとして機能しそうには思える。但し、導入する手間がかなり大きそうにも見える。本稿執筆時点、17日を残して目標5万ドルに対して2万ドル程度の調達状況となっている。

iOSおよびAndroidをネイティブ品質でエミュレートする「Virtual」

Virtual Says It Can Emulate iOS Or Android Devices In The Cloud」で紹介する「Virtual」は、iOSおよびAndroidのほぼすべてのデバイスをエミュレートする標榜しているサービスだ。

現在のところはまだ一般公開とはなっておらず、サイトにアクセスしても招待してもらうための登録画面が表示されるだけだ。

ちなみに実はこれもKickstarterつながりのようだ。もともとKickstarterキャンペーンでの資金調達を考えたらしいのだが、訴訟などに巻き込まれるリスクを考慮して、キャンペーンを取り下げたのだそうだ。「エミュレーション」を超えた「バーチャライズ」(仮想化)を提供すると主張している。

増大するアプリケーションがもたらすものは?

上に述べたような完璧なエミュレート機能などはまだ存在しないが、開発者たちは多くの努力をはらってさまざまなアプリケーションをリリースし続けている。Google PlayおよびiTunes App Storeの双方に100万本位上のソフトウェアが存在し、これはますます増加しつつある。

しかし、最近のニールセンのレポートによれば、利用しているアプリケーションの数が増えているわけではないそうなのだ。レポートについての分析は「An Upper Limit For Apps? New Data Suggests Consumers Only Use Around Two Dozen Apps Per Month」にある。1ヵ月間で利用するアプリケーションの平均本数は2011年が23.2本、2012年が26.5本、そして2013年Q4で26.8本となっているのだそうだ。アプリケーション本数自体の増加に比べれば、伸びは微々たるものにとどまっている。

年齢別の比較など、詳細な分析も掲載されているので、お時間のある方はぜひ本文をご覧頂きたい。

タブレットとPCの逆転は2015年?!

モバイルの世界はますます広がりつつある中、最後はGartnerからのレポートを紹介しておこう。記事は「Gartner: Device Shipments Break 2.4B Units In 2014, Tablets To Overtake PC Sales In 2015」だ。

Worldwide Device Shipments by Segment (Thousands of Units)

Device Type 2013 2014 2015
Traditonal PCs (Desk-Based and Notebook) 296,131 276,221 261,657
Ultramobiles, Premium 21,517 32,251 55,032
PC Market Total 317,648 308,472 316,689
Tablets 206,807 256,308 320,964
Mobile Phones 1,806,964 1,862,766 1,946,456
Other Ultramobiles (Hybrid and Clamshell) 2,981 5,381 7,645
Total 2,334,400 2,432,927 2,591,753

Source: Gartner (June 2014)

ちなみにGartnerのいう「Shipment」はメーカーから販社に送られたものをいい、消費者の手に渡ったものをいうわけでないことは留意しておくべきかもしれない。

いずれにせよ「タブレットこそが次世代PCだ」ということが各所で言われているが、台数ベースでみれば、まだPCも健在だということだ。PCとタブレットの逆転は2015年になるだろうと、Gartnerは予測している。

いずれにせよ、「情報通信機器」ということでまとめてみれば、市場はいぜんとして拡大を続けているわけだ(ところでウルトラモバイルの市場は動き出しているのだろうか)。

(翻訳:Maeda, H


2014年ちょうど半ば、消えるOrkutと消えるかもしれないMetroスタート画面 ― 今週のUS記事まとめ

6月が終わり7月になった。一年のちょうど半分が経過したことになる。ちょうどそんな時期、懐かしいサービスの停止の話と、そしてもちろん新しい動きを示すニュースなどが入ってきた。

Orkut、ついにサービス停止へ


Orkutを知っている人もすでに少なくなっているのかもしれない。2004年頃から運営されてきたGoogleによるソーシャル・ネットワークだ。名前はサービスを開発した社員のOrkut Büyükköktenからとったもの。2008年頃にはMySpace、Friendster、Hi5などと並んで「Facebookのライバル」と呼ばれていたこともあった。結局は大ブレイクすることもなく「Google、提供してきたソーシャルネットワークのOrkutを9月に停止予定」ということになった。

尚、利用登録していた人には、廃止のお知らせというメールが送られているようだ。一部分、転載しておく。

10 年間にわたり楽しい会話や出会いの場を提供してきましたが、このたび orkut を終了することとなりました。この 10 年間、YouTube、Blogger、Google+ というサービスが生まれ、世界中いたるところにコミュニティが広がりました。これらのコミュニティの成長が orkut の成長を大きく上回ったこともあり、ユーザーの皆様に心より楽しんでいただけるよう、Google ではこれらのソーシャル プラットフォームに重点を置くこととなりました。

投稿したデータなどはGoogle Takeoutを使ってダウンロードすることができる。このGoogle TakeoutはOrkutのみならず、利用しているGoogleサービスから自分の情報をダウンロードするためのツールだ。Gmailなどのデータもダウンロードすることができる

Windows 8は消えていくのか?

こちらは噂レベルの話ではある。「MicrosoftはWindows 9でデスクトップ重視に戻る―Metroのスタート画面廃止の情報も」という話が入ってきた。

Windows 8関連ということでいえば、少し前の記事ではあるが「時代はWindows 8.xのはずなのにWin 7マシンが絶好調」という記事もあった。Windows 8はかくまで嫌われているのだろうか。

まあOSの変更ということではいろいろな意見が出てくるもので「Microsoftの次期OSの名前は“Windows 7”。マジで」という記事があったことも思い出しておこう。

Amazon対Google、大手間のクラウドコンピューティング低価格化競争は止まず

消えていくものもあるが、もちろん新しく登場したりあるいは新機能が追加されたりすることも多いのがネットワークサービスだ。今では「あたりまえ」となった「クラウドコンピューティング」がさらにその適用範囲を広げようとしつつあるようだ。

Amazon、超低価格のEC2インスタンス、T2をリリース」というニュースが多くの人の注目を集めた。

完成プロダクトの稼働プラットフォームとしてのみでなく、実験的プロダクトのテスト環境としての活用も視野にいれた方向に拡大しつつあるようだ。

Google App Engineにて「Dart」をサポート


適用範囲を広げていくということでは、こちらも大いに注目を集めた。「Dartプログラミング言語をGoogleのApp Engineがサポート…ついにサーバ言語としても位置づけ」がその記事だ。

登場以来、利用領域を広げる予定であるとは言われてきていた。しかしこれまでは、JavaScriptと共通の範囲をターゲットとするものであると受け取らてきた。すなわちウェブアプリのフロントエンド向け言語として利用されてきたわけだ。しかしついにApp Engineでのサポートも行うこととなり、開発環境および実行環境の双方ともに一気に進化する可能性も出てきた。

Oculus Riftはメインストリーム化するのか

関連ニュースが毎日のように入ってくるOculus Riftだが、そろそろ身近なデバイスとして普及し始めるのかもしれない。「Oculus Rift、第2世代ヘッドセットを7月14日から出荷。予約は4万5000台以上」というニュースが入ってきたのだ。

予約受付を開始していたのは3月だった。OculusはFacebookに買収され、潤沢な資金を得たものと思われるが、しかし希望者に対して直ちに出荷するといった生産体制を整えるにはいたっていないようだ。今月に出荷される予定なのは1万台であるとのこと。しかしともかく状況が動き始めたことには間違いない。今後の開発製造体制にもいろいろな動きが出てくるかもしれない。

ところでOculus Rift関連では「“千と千尋の神隠し”や“となりのトトロ”に続き“サウスパーク”もOculus Rift化完了」という記事もあった。アニメや映画の世界を「現実」に体験するのは面白そうだ。

上のビデオ、説明が長い丁寧なので、ちょっと待ちきれないという人は5分くらいしたところから見始めると良いかもしれない。

Facebookによる感情操作実験に対するさまざまな意見

常にネットワークに接続した状態で生活を送る人が増える中、気になるニュースも入ってきた。Facebookによるユーザー感情操作実験の倫理性」がそれだ。

利用者の許可を得ることなく、実験目的でポジティブないしネガティブに偏ったフィードを表示させる実験を行なっていたということらしい。Facebook側からの「説明」も掲載されているが、要するに「より良いサービスを提供するため」とのこと。

当然ながら「そのような操作は許しがたい」とする意見がある中、「ネットワークサービスというのは常にそういう操作があるものだと考えておくべき」といった冷めた意見もある。興味のある方はぜひ記事と、記事についてのツイートなどもご覧になると面白いと思う。

かなりの確率で高い好感度で迎えられるApple CM

新登場とか、変化ではなく「安定性」を示す記事もひとつ紹介しておこう。それはAppleの新CMは、親視点」という記事だ。AppleのCMはいつもなかなかの好感度をもって迎えられることが多いように思う。

CMに登場するアプリケーションやデバイスなどは、記事本文中で紹介している。

ところでApple関連では「Appleが高級腕時計のTag Heuerから営業部長を引き抜く、iWatchを高級ブランドに育てる気?」という記事もあった。こちらの方は、どのように展開していくのかまだまだ先の見えないところだ。

Googleによるトリビアゲーム

最後に、Google発のゲームを1本。個人的にはこれをゲームと呼ばれるとちょっと辛い。難しすぎるのだ。「Googleのトリビア・クイズ、Smarty Pinsは地図マニアにはたまらない」という記事で紹介している。こちらで遊ぶことができる。

クイズは「芸術、カルチャー、科学、スポーツなど6分野から地理の知識を試す問題が出される」。いろいろと細かなルールがある様子。われこそはとお考えの方は、ぜひ記事本文をご参考に。

Maeda, H