Apple Cardの3月分支払いを無利息で先送りできると利用者へ通達

AppleとGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)は、Apple Cardの所有者に対して、Customer Assistance Program(顧客支援措置)に登録することで2020年3月分の支払いを無利息で先送りにできると通達した。現在、Apple Cardを所有している人たちへは、先週末にこのオプションが電子メールで伝えられている。そこでは、COVID-19により引き起こされた困難な状況に際して、通常の支払いができなくなる利用者もいるからだと説明されている。

「Apple Cardは、あなたが経済的に健全な生活が送れるようにお手伝いすることを確約します」とメールには書かれている。

顧客支援措置に登録するには、Apple Card利用者は電子メールのリンク(こちら)をクリックするか、Apple WalletアプリからAppleのサポート係に直接メッセージまたは電話をする。

「メッセージ」で手続きするのがいちばん簡単だ。リンクをクリックすると自動的に次のメッセージが表示される。「あなたのご苦労をお察しし、お手伝いいたしたく存じます」

そして、ゴールドマン・サックスへ転送されて手続きを進めることになる。

送られてきたリンクをクリックすると、2つめの自動応答メッセージが届く。これは顧客支援措置が提供する内容の説明だが、特に重要なのは、無利息で支払いを遅らせる件だ。その後、登録するか否かをたずねられる。

登録を申請すると、数日内に確認書類が電子メールで送られ、そこで登録が完了する、とAppleから伝えられる。これで終了だ。

登録手続きはわかりやすく、電話を掛けるよりもメッセージを使えばさらに楽に行える。だが、メッセージでこの措置に関する質問をして答えを得るのは、少し難しい。実験として、私たちはAppleのチャットボットに質問してみたが、「Appleのスペシャリストとゴールドマン・サックスにおつなぎします」と返ってきた。それが1時間前だが、今これを書いている時点ではまだサポート係からの応答はない。

提示されている電話番号(1-877-255-5923)での人によるサポートのほうが簡単だったが、あるサポート担当者によると電話の量が「激増」しているとのことだった。電話の自動応答システムで登録に関する説明を聞かされた後、2を押すとサポート担当者と直接話せるようになる。その日の午後は、意外に早くつながり、担当者がすぐに出てくれた。

支払いの先延ばしを申請した時点におけるカード口座の残高で、何らかの制限を受けることはないと私たちは知った。だが、この申請が自分の信用情報や信用スコアに影響するかについては、担当者は答えられなかった。自然災害の場合は、被災した利用者を特定して、支払いが滞っても信用情報に不利な影響がないように貸し手側が配慮する制度がある(Appleは利用者の口座は流動負債として報告されると認めている)。

この措置が4月まで続くかどうかについては、未確定事項のため、担当者は明言できなかった。

支払いの先延ばしを決めたカードはApple Cardだけではない。

Citi(シティ)は、3月早々に利用者のための支援措置を講じた。これには、信用枠の引き上げと支払猶予が含まれる。最近では、PNC Bank(PNCバンク)、Capital One(キャピタル・ワン)、Bank of America(バンク・オブ・アメリカ)、Chase(チェイス)、Discover(ディスカバー)、U.S. Bank(USバンク)、Wells Fargo(ウェルズ・ファーゴ)、Fifth Third(フィフス・サード)他のカードも、新型コロナウイルスが流行している間、それぞれの支援措置を提供する旨を利用者に伝えている。

American Express(アメリカン・エキスプレス)も、利用者からの要請があれば対応するとTechCrunchに語っている。

「アメリカン・エキスプレスは、COVID-19の影響で経済的な困難に陥っている利用者を救済する準備ができています。カードの裏面に記されているカスタマー・ケア・プロフェッショナルに電話をするか、デジタル・サービス・チャンネル(オンライン・チャットまたはAmexアプリ)を通じていつでも対応します」と広報担当者は話している。支払いの先延ばし、戻り小切手手数料、利子などについて、利用者との個別の相談に応じるとのことだ。

「私たちには、経済的困難に対処する短期から長期にわたる数々の支援措置があります」と彼らは話す。

新型コロナウイルス流行時に家計を守るためのNerdWalletのガイドには、金融業者やクレジットカード発行会社は、その他の問題についても個人ベースで対応してもらえるケースがあると書かれている。

「利用者と1対1で対応する他に、銀行の中には一部の手数料を一律に変更するところもあります。たとえばシティカードは、3月9日から(30日間)数々の手数料を免除します。銀行口座の月間利用料や現金自動支払機での期限前払い戻しの違反金などです」とNerdWalletの広報担当者は言う。「助けが必要なときは、こうした提案を利用してください。あなたの負担が軽くなり、態勢を立て直して、先へ進むための計画を立てる時間が得られます」と彼らは話している。

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(翻訳:金井哲夫)

オンライン個人認証の需要がCOVID-19により急上昇

COVID-19のパンデミックの中、従業員をテレワークに切り替える企業が増え、ビデオ会議やZoomなどのコミュニケーションツールが爆発的な需要の伸びを記録している。

その他のタイプのスタートアップでも、世界的な健康危機の中、さまざまな用事をオンラインで済ませようと考える消費者や企業の間で利用者が急激に高まっている。Telehealth(テレヘルス)はその最たる例だ。2020年3月初旬に米国のトランプ大統領は、連邦政府による公的医療保険制度「メディケア」での遠隔医療サービスの規制を撤廃し、保険適用として急増する米国人向け遠隔診療に扉を開いた。

一方、COVID-19の感染が確認された人の増加率が最も高い欧州でも、遠隔検査の需要が高まっている。

スウェーデンに拠点を置くビデオ診療のスタートアップKRY(クリー)は、本日、そのすべての市場(スウェーデン、ノルウェー、イギリス、フランス、ドイツ)で需要が増大しており、それは現在進行中の新型コロナウイルスのパンデミックの影響だと報告した。ウイルスの感染症状に関する診察だけで、2月1日から240%も増えている。

いくつかのオンライン個人認証スタートアップも、この数週間で需要が増大しているという。そのひとつは、個人の機密情報を伴う患者の本人確認が大変に重要となる遠隔診療の需要と並行して伸びている。

デジタル認証のスタートアップPassbase(パスベース)は、消費者が使いやすい本人確認方式に幅広く対応し、接続や統合を簡略化するAPIを開発者に提供しているが、ここもまた、この2週間強の間に、医療技術分野で活動する欧州と北米の企業からの需要が、ウイルスの拡散を防ごうと遠隔診療の道を探る人たちの増加に伴い、「前例のない」急上昇を見せていると話していた。

Passbaseの顧客にはドイツの遠隔医療プラットフォームTeleClinic(テレクリニック)があるが、同社はドイツで最初にCOVID-19の感染が見つかった自動車工場の従業員の診察に直接協力している。

「私たちのサービスにおいては、医療とデジタル製品の信頼性が不可欠です」とTeleClinicの創設者でCEOのKatharina Jünger(カタリーナ・ユンガー)氏は、Passbaseを利用する企業が急速に増えた要因を解説した声明の中で述べている。「個々の患者が医療の専門家と話をして、信頼に足る情報を即座に受け取れるという事実が、特に現在のような時期には、きわめて重要なのです」

Passbaseは、最優先事項を統合した支援とCOVID−19の危機と戦う個人への支援に専念するすべての企業に対して、利用料金を免除するとしている。「このような前代未聞の事態においては、進行する感染拡大に対してともに戦いつつ、各々が自分のやるべき仕事に専念することが大切です。そうした企業をいち早く参加させることで、私たちは新型コロナウイルスに感染した人たちを少しでも助けられるようになります」と、共同創設者でCEOのMathias Klenk(マティアス・クレンク)氏は言い添えた。

また、同社のウェブサイトなら15秒で本人確認ができると謳うデジタル認証スタートアップのOnfido(オンフィド)は、医療分野での需要が一気に増大したと私たちに話してくれた。

「オンラインの遠隔診療を提供している私たちの顧客企業では、2019年の同時期と比較して利用申し込み数が370%も増えています」と同社の広報担当者は言う。「明らかに、病院や近所の医院の待合室でウイルスに感染する心配をしなくて済むという利点によるものです」

同社はまた、非常にニッチではあるが、旅行関連でも大きな需要の伸びがあるとも話している。レンタカーだ。

この分野では、3月に利用を開始した顧客の数は、2019年の同じ時期に比べて26%以上も増えているという。「車を所有していない人たちが、混雑する電車やバスでウイルスに感染するのを恐れて、公共交通機関を使わずに自分で車を運転して通勤する方法を選んだ、という説明が当てはまると思います」と広報担当者は話す。

オンラインバンキングやフィンテックでも需要が高まり、今のところ同社ツールの利用者を急増させていると広報担当者は言う。「今月の登録者数が21%増加したことが、最初の兆候のようでした。金融機関の店舗へ赴くことなく、自宅から金融サービスを利用できるためだと想像できます」と同社は話している。

先週、入力された認証情報の自動と手動の分析方法を組み合わせた「エンド・ツー・エンドの認証サービス」を提供する、この分野の別のスタートアップVeriff(ベリフ)は、認証製品が「着実な伸び」を見せていると報告した。COVID-19の大流行と部分的に関連しているという。

だが、彼らのサービスへの問い合わせ件数が急増していることから、今後さらに大きな伸びが期待できるとのことだ。

「新型コロナウイルスは、新たな使用事例と遠隔個人認証の必要性をもたらしました」と創設者でCEOのKaarel Kotkas(カーレル・コットカス)氏は言う。「たとえば、私たちは遠隔試験の可能性を模索している大学からの問い合わせがありましたし、テレワークを支えるアカウントの回復や資格情報のリセットを行う大手ハイテク企業からも連絡がありました」

「現在の顧客の間でも、2020年3月に個人認証で着実な伸びがありました。全体でおよそ20%の増加です。すべて新型コロナウイルスの影響とは言い切れませんが。それでも、欧州と米国で新型コロナウイルスの感染が大幅に拡大したこの2週間を振り返ると、電子公証人やデジタル医療など、新型コロナウイルスにまつわる数多くの統合の引き金にはなっています。そのため、来月の4月は50%パーセントの急増を予測しています」

デジタル認証分野の古参であり、オムニチャンネルの個人認証やKYCサービスを販売しているAuthenteq(オーセンテック)もまた、需要の急増を認めている。

「テレワーク市場の需要に応える企業ばかりでなく、テレワークにや自宅勤務の方針に大きく移行したい企業の両方からの問い合わせが増えています」と、共同創設者でCEOのKari Thor(カリ・ソア)氏は言う。

「私たちは大手多国籍企業と、我々の個人認証ソリューションを統合する計画を進めていましたが、数週間前、それを従業員のテレワークのための認証という使用事例に切り替えることにしました。会社のイントラネットなどにアクセスできるようにするだけでなく、Authenteqの技術を使って自宅で仕事をする人が電子的に書類や契約書にサインできるようにするものです」

「これまでそれは、私たちの本筋の価値提案ではなく、しかも特殊な状況で従業員の電子IDを取り扱うだけのものでしたが、この不確実な時期に企業に提供できるこの製品に重点を置き始めました」

「アジアや欧州に比べて、米国がやや遅れているのは明らかなようです。今週あたりから米国企業も、この10日の間に欧州が取り組んできた自宅勤務の方針と同じ方向に進むものと気づき、興味を持ち始めるでしょう」と彼はつけ加えた。

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(翻訳:金井哲夫)

Twitterはヘイト禁止規則に年齢、障害、疾患にもとづく人間性を否定する言動を追加

昨年、Twitterはヘイトスピーチに関する規定の禁止項目を拡大し、宗教団体に対する人間性を否定する言動を加えた。米国時間3月5日、Twitterはその規定を拡大し、年齢、障害、または疾患を理由に人間性を否定する言動も禁止すると発表した。最後のひとつは、もちろん、感染が広がりつつある新型コロナウイルス(COVID-19)に関連させたTwitter上での憎悪に満ちた、または人種差別的発言に即応するためのものだ。

Twitterは、本日以前にこのルールを破った投稿は削除する必要があるが、投稿された時点ではまだこのルールが適用されていないため、このことで投稿者のアカウントが停止されることはないと話している。ただし、今から投稿されるものに関しては、Twitterの改訂版「暴言や脅迫、差別的言動に対するTwitterのポリシー」のルールに従うこととなる。この包括的なポリシーには、ヘイト行為(暴力行為や脅迫行為を助長する投稿)や、ヘイト表現を伴う画像やユーザー名の公表に関するルールが記されている。

Twitter Safety:私たちはTwitterをより安全にするためのルールを常に刷新しています。昨年、私たちは 『ヘイト行為に対するTwitterポリシー』 を改訂し、非人間的な言葉に対応しました。この度、年齢、障がいや病気にもとづいて人間性を否定する言葉もポリシーの対象に含めます。

そのポリシーはすでに、人種、民族、出身地、社会的地位、性的指向、性別、性同一性など、人間性を否定する言動を広範な分野にわたり禁止している。Twitterは、そのプラットフォームで禁止したいヘイトスピーチやヘイト行為の対象となる分野をより広くカバーできるよう、時と共に禁止対象を拡大してきた。

ヘイト行為を禁止するTwitterのポリシーが抱える問題には、投稿されるツイートの量が多すぎて、処分が追いつかない点がある。さらに、投稿を審査対象とするか否かの判断をユーザーに委ねているため、ヘイトスピーチの排除は積極的に行えず、後手の処理となる。Twitterは、そのポリシーを適切に施行せず、ネット上の嫌がらせを野放しにしているとして激しく非難されている。

本日の発表でTwitterは、上記のものも含めいくつか問題があることを率直に認めている。そこで、より徹底したトレーニングを行い、テスト期間を延長して、いつ、どのように行動するか、さらに、非主流派の人たちの発言をいかにして守るかを審査担当者に理解させることにしたと話している。加えてTwitterは、人種、民族、出身地といった複雑な話題でのニュアンスや文脈をより正しく理解するためのTrust & Safety(信頼と安全)協議会を設立した。

[年齢層]はみな寄生虫だ。我々から支援を受ける資格はない
[疾患]にかかった人間は周囲の人たちに病気をうつすドブネズミだ
[障害]者は人間以下なので公共の場に出るべきではない
[宗教団体]は処罰すべきだ。その汚らわしい動物どもの排除対策が手ぬるい

 

残念なことにTwitterの最大の問題は、長年にわたって公共の広場として運用され、利用者は本名を隠して比較的自由に自己表現ができ、その発言や行動の責任を負わないという点にある。匿名でのネット利用には、たとえば、抑圧的な政権下であっても人々が自由に意見交換できるなど、それなりの正当性がある。しかしその反面、実名では言えないような発言を助長してしまう。そこに社会の監視の目は働かない。それが今、現実の世界で起きていることだ。

しかも、Twitterがヘイトスピーチやヘイト行為を取り締まろうとすれば、いつだって言論の自由を阻害すると批判されてしまう。あたかもそのソーシャルメディアのプラットフォームが、アメリカ合衆国憲法修正第1条(言論の自由)に守られた場であるかのように言われるのだ。アメリカの裁判所はそれを否定している。実際、最近になって裁判所は、YouTubeは公共の広場ではないと判断した。従って、利用者の言論の自由を保証する義務はない。これが前例となり、他のソーシャル・プラットフォームも同様の扱いとなった。Twitterもこれに含まれる。

Twitterは、もっと多くの人に登録してもらい、参加してもらえるよう奮闘してきた。だが同時に、そのプラットフォームの悪用は感知しないという方針が、その目標の達成を阻んでいる。そのためTwitterは、より多くのエンゲージメントを促すことが期待される、たとえば時間が経つと消える「ストーリー」など、新機能のテストを行っている。実際には、ポリシーを適切に施行しさえすれば実現することなのだが。投稿入力欄で教育的な助言を表示する機能(その投稿が通報されたり削除される恐れがあると利用者に警告するInstagramの仕組みと似たようなもの)の追加も遅すぎた。

Twitterがポリシーで規制する対象の幅を広げたのはいいことだ。しかし、行動を伴って初めて言葉は意味を持つ。

Twitterは、この新しい規定は本日付けで発効されると話している。

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(翻訳:金井哲夫)

新型コロナの影響で波乱に満ちた株式市場は広い分野で記録的回復

さて株式市場はどうなっただろう?

新型コロナウイルス、COVID-19の感染者が米国で増加していることを懸念して先週の市場は全面安となった。しかし米国時間3月2日の月曜日になると、外国企業を含め米国で上場している企業の株価は回復し、記録的な利益をもたらしている。

先週、新型コロナウイルスの感染によって国際的な経済の減速に対する懸念が高まり、世界的に株価は暴落した。週末も新型コロナ関連のニュースは流れ続け、感染者、死亡者が増え続けていることが報じられた。

しかし週が明けると米国の投資家のマインドは熊(弱気)から雄牛(強気)に変わり、買いが入り始めた。記録的な下げは、記録的な上げとなった。3月2日の市場では、

  • ダウは1293ドル(約13万9605円)、5%強アップ
  • S&P 500は136ドル(約1万4684円)、4.6%アップ
  • テクノロジー系株が多いNasdaqは385ドル(約4万1564円)、4.5%アップ

市場全般の上げ潮に乗り、Twitterは8%アップで引け「もの言う株主」がトップの交代を狙っているというニュースも流れた。

ただし、すべての企業が上げ潮に乗れたわけではない。 いささか驚きだが、ベンチャーキャピタルのBessemerがまとめているSaaS企業のインデックスの上昇はわずか1.5ポイントにとどまった。つまりその前の暴落で失った価値をほとんど取り戻していない。 この傾向が続くようだと、株価が全面的に戻しているという楽観主義をいささか修正する必要が出てくるだろう。つまり上げ潮もジャンルによるのだと考えねばならない。かつて投資家は、SaaS企業は収入と利益の双方を拡大させ続けると期待して空前の高値を出現させた。

暗号通貨関係企業さえ好調で、bitcoinに続いて4%前後アップした。

Nasdaq総合指数は、この1年の高値(史上最高値)と比べるとまだ9%前後低い。 つまりまだ回復の余地があるはずだが、実際そうなるかどうかは市場のみが知っている。ただし下げ一色は終わり、上下する値動きが戻ってきたということ間違いない。

アップデート:この間の乱高下に関連してTechchCrunchでも最近紹介したRobinhoodの運命に留意する必要がある。この無料オンラン株取引アプリは取引が殺到したためにダウンした。アプリが成功したのはよいが、サービスを稼働させ続けるために苦労しているようだ。企業価値が数十億ドル(数千億円)にも達する企業にとってダウンタイムは名誉ではないだろう。

画像:Drew Angerer / Getty Images

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滑川海彦@Facebook

不確実な時代のテクノロジー

近未来のテクノロジーについて議論しようとするとき、まず疫学について話さなくてはならないのは決していい兆候ではない。しかしながら、今はその時だと言わざるをえない。1週間前私は「パンデミックがやってくる」と書いた。残念ながら、それ以来私が間違っていたことは証明されていない。

現時点の推測では、中国のような厳格な措置がなされないかきり、コロナウィルスは今後一年のうちに世界の成人の4070%に感染する(ただし、これは非常に重要なことだが、ほとんどのケースで症状は軽微あるいは無症状である)。

当然さまざまな疑問が湧いてくる。最も重要なのは「伝染を阻止することはできるのか?」ではない。答えはすでに明確なノーだ。最も重要なのは「伝染は速いのか遅いのか?」だ。この違いは極めて重要だ。先週のツイートとグラフを再掲する。

急激に立ち上がっているように見える曲線は、医療システムに過大な負荷がかかるリスクを生み、あらゆる状況を悪化させているが、実際には感染者のうち医療措置を必要とする割合はごくわずかだ。幸い、少なくとも私にとって優れた医療システムと強力な社会一体性、そして有能な指導体制のある国では、曲線を対応可能な勾配まで引き下げられる可能性が高い。

残念ながら、筆者のようにこの世界一裕福な国に住んでいる人には、上記3つの条件が「ひとつも」当てはまらない。しかしここは楽観的に米国の強大な富が最悪のシナリオを回避してくれると仮定しよう。それでどうなるのか?

では、世界のサプライチェーンは破綻しているのか、および、人々の多くは引きこもり生活を行っているかを月単位で見てみよう。前者はすでに始まっている

ロサンゼルス港では、コロナウィルスが船舶運航と海外サプライチェーンに与える経済打撃によって今月のコンテナ量が25%減少すると予測している。4つに1つ、アジアからの輸入品が突然来なくなることを想像してほしい。影響はもう始まっている

需要と供給の同時ショックを前にして、不況を避けられることは想像できない。さらに、もしCovid-19が伝染したニュースが出るたびに株式市場が数%下がり続けるとすれば、1~2カ月のうちにダウ平均株価は300、FTSEは75になっているかもしれない。しばらくの間その手のニュースは定常的にやってくると私は予想している。トレーダーたちもいずれ気づくだろう。では、テクノロジー、そしてテック業界には何が起こるのか?

わかりきったことは、リモートワークやコラボレーションを可能にしたり便利にしたりするテクノロジーは成長する。バイオテクノロジーとヘルステックは新たな注目を浴びるだろう。しかし、全般的にみて、これが世界中のテクノロジーによる変化を加速するだろうか?

1年と少し前、私は「テクノロジー・スタートアップは景気後退に備えよ、今やるべきことはこれだ」という記事を書いた(専門家は2019年終わりか2020年始めと予測した)。拙文を以下に引用する。

一方、「ソフトウェアが世界を食い尽くす」現在、すべての産業はソフトウェア産業になりつつあるので景気後退はこのシフトを加速する」という理論がある。こうした過激なディスラプトによって苦しめられる個人の数を考えると無条件に喜ぶことはためらわれる。しかし一部の起業家はこのプロセスから利益を得るし、長期的かつマクロの観点からはこうした展開はあり得る。景気後退は隕石の衝突のようなもので、それが恐竜を滅ぼし、身軽な哺乳類―ソフトウェア企業―の繁栄をもたらすかもしれない。

仮にこうした理論が事実であっても、多数の個別企業が激しく揺さぶられることは間違いない。起業家は支出を抑えることが至上命題となる。長期的には大きな価値を生む可能性があるが、短期的には利益を生まないプロジェクトはまっさきにコストカットの対象になるだろう。消費者は財布の紐を固く締めるようになるだろうし、アプリを購入したり広告をクリックしたりする回数は現象するだろう。誰もが万一に備えてキャッシュを後生大事と抱え込み、リスクの大きい投資をしなくなるだろう。

どれをとっても、経済的でなく物理的ショックによって起こる不況より重要でないとはいえない。私が予想するに、不況は比較的短期で急激にやってくる。そして今度はパンデミックと景気後退が事実上同時に起きている。しかしそれまでの間、怖くなるほど面白い月日を経験することになる可能性は高い。面白さの度が過ぎないことを願うばかりだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ビジネスパーソンのための新型コロナ向けパンデミック対策5カ条

COVID-19、SARS-COV-12などと呼ばれる新型コロナウイルスによる感染症が世界で拡大を続けるのは避けらそうにない成り行きだ。米国、ことにノンストップで働くことを当然とするスタートアップのカルチャーでは「そんなことは自分たちと無縁だ」考えがちだ。

しかし今回はビジネス・アズ・ユージュアルではすまない。自分自身だけでなく他人も危険にさらすからだ。自分自身や同僚、他の人々に対する困難や危険性を軽減する助けとなる基本的なルールを以下に公開することにした。

この時期に何をするのが適切か、何をすべきでないのかについて正しい情報を得ていない起業家、起業家志望者始めテクノロジー企業の社員、関係者が多い。ヘルス関連の最新ニュースを求めている場合、またウイルスについてさらに正確な情報を知りたい場合は、CDC(疾病管理予防センター)またはWHO(世界保健機関)の専用サイトにアクセスしてほしい(編集部注:日本では厚労省の「新型コロナウィルスに関するQ&A」を参照)。

1. 合理的な予防措置を取り、周囲の人々にもそれを知らせる

CDCでは「頻繁に手洗いを実行し、衛生に留意することがウイルスの拡散を防ぐための最良の方法だ」としている。マスクをつけることは特に必要とされていないが、しても悪いことはない。ただし主要な効果は健康な人(の感染防止という)より、感染した人々が拡大を防止することにある。

また感染のリスクは感染者に接触することによって生じるというのが重要な点だ。窓の隙間から密かに部屋の空気に入り込んでくる神経ガスとはわけが違う。 リスクを最小限に抑えには家にとどまるのが重要だ。実際に人と顔を合わせるミーティングはキャンセルし、リモートワークを取り入れ、(メジャーなイベントの多くがすでにキャンセルされているが)コンベンションへの参加も取り止めるほうがいいだろう。

カップラーメン、レトルト食品、冷凍庫の残り物などを活用し、外出する場合は頻繁に手を洗う。手指消毒剤を携帯するのもいい。オンラインで商品を購入する場合、玄関の前などに荷物を置いてもらえるならそれもいい考えだ。

予防措置が他の人に影響を与える可能性がある場合、これは予防措置を取っているのだとはっきり説明する。ただし言葉は慎重に選ぼう。「実際に会う代わりにビデオ会議にすることはできますか?今のところ人との接触をを最小限にしようとしています」などと言うのは賢明だ。相手が「私が感染していると疑っているのか?」などと思ったとしてもこれは相手の問題なのでやむを得ない。この文章を読んでもらうのがいいかもしれない。

はっきりさせておく必要があるが、世界は死の罠に捕らえられているわけではない。新ウイルスによる死亡率はさほど高くない。しかしこのウイルスは感染しても無症状の場合があるためり、どこに潜んでいるのかどこなら安全かを推測することが困難だ。そこで公衆への露出・接触を最小限に抑えておく。

2. 予防措置を人マネせず、権威ある情報を拡散する

今後数週間、厄介なことが続く可能性がある。大型イベントだけでなく、対面のミーティングも多数がスキップされるだろう。しかしそうした対処には理由があり、性急な判断は控えるべきだ。

新型コロナウィルスが心配なので握手したり拳を打ち合わせて挨拶したりするのを避ける。 ミーティングをコーヒーショップではなくビデオチャットにしたいという。会社を早退して家に戻る。こういうことはすべてもっともであり、相手を非難してはならない。

普段でも我々は他人の動機や能力について詳しい知識はもっていない。新型コロナウィルスに対する対処の関連ならなおさらだ。 企業や個人が家族、経済、社会、宗教などどんな方面からどんな圧力を受けているのか我々は知りようがない。イベントやミーティングのキャンセルなどその結果が自分にとっていかに不都合であっても当面はそのまま受け入れるしかない。

これは部下の社員についても同様だ。誰かが病休取得を申し出たら認める。リモートワーク、リモートミーティングにしても同様だ。どさくさに紛れた不当利得だった違いないと後で気づくかもしれないが、それは後で考えればいい。パンデミックの危険がある現在、そんなことをいちいち言い立てる必要はない。

ここしばらく感染の予防だといって中華料理店を避けたり風船ガムを破裂させると中国の空気が吹き出すから危ないといった馬鹿げた、そして多くは人種差別的な言動を目にすることになりそうだ。家族や同僚をこういった誤認や偏見の中に放置することなく、CDCなど権威ある情報源の発表を共有する努力を続ける必要がある。これによって少しでも正しい知識の力が増すようにすべきだ。単なる個人のツイートでは影響力はほとんどないかもしれないが、CDCや医療専門家の発表であれば耳を傾けるかもしれない。ともあれそう希望しよう。

3. ダメージはやむを得ない

新型ウィルス感染の予防は金も時間も食う。ビジネスチャンスを減らす。会議は遅れる。非効率が増大する。プロダクトもサービスも予定のスケジュールでリリースできなくなる。スケジュールは右往左往し、それをどうすることもできない。必要な情報を知ったときには手遅れということも出てくる。ありがたくない話ばかりだ。

しかしこれは覚えおかねばならない。困っているのは自分や自分の会社だけではない。全員が困っているのだ。株式市場の暴落ぶりは歴史的レベルだ。韓国や中国沿岸部からのツイートは深刻なものだ。

MWC(モバイル・ワールド・コングレス)は早々にキャンセルされた。開催を強行したとしても誰も参加せず、ゴーストタウンだっただろう。Facebookも今年のF8を中止した。イベントの一部はオンラインに切り替えて実行するという。ライブストリーミングでカンファレンスを主催、運営するサービスはTechCrunchでも紹介した。

主催者、参加者が今後どうすればいいのかは、「感染を避ける方法」ではなく「ダメージコントロール」だ。ただ困っているのではなく、この後どうなるののか何をすればいいのかを考えねばならない。予定表には対策のリマインダーを書き込み、関係者のスケジュール変更を確認し、取引先にも変更を連絡して謝罪する。この記事のトップにも書いたが「合理的な予防措置を取り、周囲の人々にもそれを知らせる」というルールに従うべきだ。

4. 最新情報に留意し、対策を改善する

こうした事態が自分や自分の会社の生産性、機能に深刻な打撃を与えているなら、よく検討してみる必要がある。何ができなくなったのか? 何がどのように損害を与えているのか?具体的に考えることが重要だ。

「対面コミュニケーションに頼りすぎていないか?」「そのためテキストで複雑なコンセプトを説明できないと思い込んでいないか?」「Slackのような生産性の高いコミュニケーションツールを使わないでいるということはないか?」「プレスリリースとメールのピッチはぐったりしているか?」「自分の強みから後退することを余儀なくされると、必然的に自分の弱点に遭遇します。退屈なセールスピッチやプレスリリースを惰性で出し津続けていないか?」。自分の強みがブロックされると必然的に自分の弱みと向き合わざるを得なくなる。

今回の危機は自分と自分の会社にとってコミュニケーションと生産性のうえで何が弱点であるか検討するチャンスでもある。好むと好まざるとに変わらず、否応なくこうした欠点に直面する。単に打撃を受けたままでいるのか、新たな強みを作っていくのかは本人次第だ。

それに多くの活動が止まった今はキャッチアップの絶好のチャンスでもある。時間がかかるので先延ばしにしていた仕事を片付けることができる。メールの受信ボックスを空にする。数週間前に読むと約束しておいたレポートを実際に読む。聞き取りにくいと評判が悪かったセールスピッチを改めて練習することもできる。

テクノロジー企業、またテクノロジー関連企業(現在はとほうもなく広い範囲だ)の仕事の大部分は実際に会ったり、会議したりしなくても可能だ。自分の仕事ができない場合でも、仕事のやり方を改善する努力はできる。

5. 困っているのは自分だけではない

現在起きているのは、医療だけでなく経済、社会活動を含めた複雑かつ広範囲にわたる影響を伴う世界的問題だ。我々が目にしているのはそのごく一部に過ぎない。

自分だけが困っている個人的問題と考えてはならない。新型コロナウィルス(COVID-19)は自分がプロモーションしているB2Bサービスを打ち壊すために現れたわけではない。台風や地震のように突然起きて無差別に損害を引き起こすものだ。影響を受けるの自分だけではない。読者がいかに困っていようと、もっと困った状況に置かれている人々が大勢いることは確実だ。

苛立たしく、不安をかきたてる不快な状況だが、他の人々も同じことを体験し、同じように感じ、それぞれに対処の努力をしていることを思い出すべきだろう。

画像:Marc Romanelli / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Facebookも新コロナへの懸念でF8カンファレンスを中止

Facebookは、COVID-19コロナウイルスのパンデミックに対する懸念の高まりを考慮し、毎年開催されているF8デベロッパーカンファレンスをキャンセルしたことを発表した。

発表によれば、キャンセルされたのはサンノゼで開催予定だった「オフラインのイベント」であり、F8のキーノートやビデオプレゼンなどはリアルタイムでストリーミングされるという。Facebookのデベロッパープラットフォームとプログラムの責任者であるKonstantinos Papamiltiadis(コンスタンティノス・パパミリタディス)氏は声明で次のように述べている。

「毎年のF8は世界のFacebook開発者コミュニティの祝日として非常に重要であるものの、メンバーの健康と安全には換えられない。COVID-19ウィルスに関する懸念から、F8の現実のイベント部分はキャンセルする。しかしライブストリーミングを含む各種のビデオ・コンテンツを通じて世界のデベロッパーパートナーとつながることができるものと期待している」。

このFacebookの決定は、今週バルセロナで開催される予定だったMWCキャンセルに続くものだ。Microsoft(マイクロソフト)を始め多くの企業が来月のゲーム・デベロッパーのカンファレンス、GDCから撤退したが、主催者は昨日「予定どおりに開催される」と述べた

Facebookは「F8カンファレンスのオフライン部分を実施する方策を各種検討したが、(外国からの参加を禁止するなどの方法は)F8を世界の開発者コミュニティーの祭典とするという我々の方針に反する(ので採用されなかった)」とパパミリタディス氏はブログ記事で述べている。Facebookはこの数週間内にさらに詳細を発表するとしている。

F8カンファレンスのキャンセルの影響を軽減するため、同氏は「Facebookはテクノロジーの多様化に取り組んでいる組織に50万ドル(通常の2倍の金額)を寄付する」と述べた。対象はF8が開催される予定だったサンノゼ市民にサービスを提供する組織が優先されるという。Facebookは例年、地元の学生をF8に招待しているため、今年はF8そのものに代わって、「F8に触発された体験」を提供するという。

大規模なハイテクイベントにとってコロナウイルスに対する懸念が2020年を通じてどのような影響を与えるのかは不明だ。株式市場や決算にはすでに影響が及んでいる。WHOによれば 、世界47カ国で8万2000人以上のCOVID-19感染が確認されており、2800人前後が死亡している。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

血液検査で新型コロナなどの病原体を特定し最適な治療法を見極める液状生検技術のKariusが183億円調達

「新型コロナウイルスのような新しい病原菌を感染が大流行する前に特定するのがKarius(カリウス)の得意技です」と、最高責任者のMickey Kertesz(ミッキー・ケルテス)氏は言う。彼のこのライフサイエンス系スタートアップは、つい先日、1億6500万ドル(約183億円)を新規に調達した。

この新規投資は、次第に脅威を増すCOVID-19のおかげで決まったように見えるが、同社の技術は、免疫不全の小児患者のための感染症を引き起こす病原体または複合体肺炎、真菌感染症、心内膜炎の潜在的原因の検査にすでに使われていると、同社の説明には書かれている。

液状生検技術は、癌の治療に広く用いられているものだ。患者の癌細胞から流れ出た血液中の微量な遺伝物質の有無から、患者にとって最適な治療法を見極めることができる。

Kariusは、患者の血液サンプルの中の遺伝物質の特定を行うDNAシークエンシングと機械学習技術を活用するためのハードウェアとソフトウェアを開発し、それと同じ原理を応用して血中の病原体を特定できるようにした。

同社の説明によると、人間の体に感染した病原菌は、血中にDNAの痕跡を残すという。これを微生物無細胞DNA(mcfDNA)と呼ぶ。Kariusの検査方法ではバクテリア、DNAウイルス、菌類、寄生虫といった臨床的に意義のある1000以上のサンプルの無細胞DNAを測定できる。この検査によって、無数にある病原菌の中から患者に悪影響を及ぼす恐れのあるものが提示される。

「現在私たちは、採択の段階を通過し、臨床研究によってこの技術が文字どおり人の命を救うものであることが示された段階にあります」とケルテス氏。

初期段階の成功だが、これはソフトバンクを惹きつけるのに十分だった。ソフトバンクは、ビジョン・ファンド2からの投資により同社を支援している。

ソフトバンクは、約束を果たせなかった消費者系スタートアップ(内部崩壊したBrandlessやZume、WeWorkに代表される壊滅的打撃を招きかねない企業)への投資が多すぎ、早すぎる(または遅すぎる)ことで激しい批判を浴びているが、ライフサイエンス分野の投資チームは目覚ましい実績を挙げている。「彼らには経験と専門知識とネットワークがあり、まさにそれが私たちにつながりました」とケルテス氏は、ソフトバンクからの支援を決めたことについて話していた。「彼らは以前、Guardant Healthと10X Genomics(テンエックス・ゲノミクス)の取締役会のメンバーでした」

どちらの企業も、公開市場で成功し、その技術の有効性を証明してきた。その同じ気質をKariusも備えている。同社は、その検査方法の分析的検証と臨床的有効性に関する記事を、同業者の審査を経てNature Microbiology誌に掲載。通常の方法と比較して、感染を引き起こす可能性のある病原菌をより早く、より正確に特定できることを示した。

その技術の有効性が初めて認められたことで新たな投資を獲得した同社は、その検査方法の商品化を急ぎ、技術の有効活用を推し進めつつ、新たな技術の開発を行うことにしている。

彼らが第一に考えている開拓分野に、新しい生体指標の特定がある。これはCOVID−19のような新しい病気の指標になることが期待される。

「人類はまだ、感染症を解明できていません」と、同社の最高技術責任者Sivan Bercovici(シビアン・バーコビッチ)氏は言う。「私たちの技術で特定できない病原体の痕跡について、今後も公共のデータベースにある高品質なゲノムの設計図をさらに取り込み、私たちがダークマターと呼んでいるそうしたグループのデータを個別にまとめて将来に備えています。最大の挑戦は、知らないものを、いかにして知るかです」

Kariusは、血液サンプルの中の病原菌の情報をデジタル化し、機械学習とDNAシークエンシングを使って病原体の指標を認識している。同社は、30万種類以上の病原体のデータが記録されている公共のデータベースを利用しているが、同社で特定できない種類については、そのための識別子も作成している。

1回の費用が2000ドル(約22万円)というKariusの検査は決して安くはない。しかしケルテス氏によれば、外科手術よりも安全で費用対効果も高いという。患者の体に穴をあけて組織を摘出する必要がなくなるばかりか、この技術はすでに100以上の病院と医療機関で使われていると同社は話す。

ここまで達成できたことを受けて、General CatalystやHBM Healthcare Investmentsといった新しい投資企業も、ソフトバンクのビジョン・ファンド、そして前回のラウンドに参加したKhosla VenturesやLightSpeed Venture Partnersなどの以前の投資企業とともに契約したい意向を示している。

「感染病は、死亡原因の世界第2位です。Kariusの革新的なmcfDNA技術は、感染病を正確に診断します。これは、既存の技術では判別できません」とソフトバンク投資顧問のDeep Nishar(ディープ・ニシャー)氏は声明の中で述べている。

画像クレジット:SCIEPRO

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(翻訳:金井哲夫)

新型コロナウイルスがパンデミックになったら何が起きるか?

もし、新型コロナウイルス(COVID-19)がパンデミック(爆発的感染)になったら何が起きるのか? ウイルスが世界中に蔓延したら、どんな悪影響が心配されるのか? 私たちの生活、仕事、社会、そして移動にどんな変化が起こるのか?

ここでパニック映画を想像するのは待って欲しい。パンデミックは国境を封鎖し、壁を築き、すべての航空便を欠航にして、国全体を無期限に隔離することになると考える人がいるようだが、まったくの誤りだ。封じ込め作戦は大流行を遅らせて、対策のための時間稼ぎにはなるが、ひとたびパンデミックになれば、当然のことながら、封じ込めは失敗だったことになり、逆効果とは言わないまでも、それ以上の試みは意味をなさなくなる。

Marc Lipsitch(マーク・リップシッチ)「必読。Peter Sandman(ピーター・サンドマン)とJody Lanard(ジョディ・ラナード)はすばらしい思考を持つ作家だ。これが自分で書けたらよかったのだが。ともかく、合理的な対応が説明されている。政府が実行すべき対策ばかりではない。

「隔離、渡航制限、感染経路の特定、その他の『私たち』に感染しないように『彼ら』を遠ざけるための対策を止めて、私たちがお互いにうつし合わないよう大規模イベントを中止するといった方向転換を図るには何を変えるべきか。パンデミックだと騒ぐだけでは、一般の人々に理解してもらえない」

Kal Kupferschmidt(カル・クファーシュミット)「過去の流行の際に、リスクコミュニケーションの専門家ピーター・サンドマンとジョディ・ラナードに話を聞いた。@MachayIM(この人もフォローすべき)のブログに掲載された論文は一読の価値あり」

焦点は、封じ込めから緩和に移行する。ウイルスが定着してしまった社会で、いかにして感染速度を緩めるかだ。緩和はよく手を洗うといった個人的な対策と、大規模イベントの中止、施設の一時閉鎖、できる限りテレワークや遠隔教育利用するといった複合的な「社会的距離戦略」によって成り立つ。

パンデミックの速度は落ちれば、それだけ医療システムの需要も均一化される。医療機関の許容限度を超えるリスクが抑えられ、ウイルス対策の研究に時間を割けるようになり、ワクチンが開発された暁には、大勢の人たちが救われるようになる。このわかりやすいグラフを含むスレッドを読んで欲しい。

Josh Michaud(ジョシュ・ミショー)「疾病対策センターの指導では、緩和対策を柔軟に導入し、新情報が入るごとに効果を継続的に再評価することを求めている。現状への対応として『標的を定めた、多層的な』アプローチが最適である」

ジョシュ・ミショー「この対策の最大の目標は流行の強度を落とすことにある。流行の曲線を平坦化することで、医療機関と社会経済的な健全性への負担が減る(下のグラフを参照)」

(グラフの縦軸は1日の患者数、横軸は最初の患者発生からの日数、紫の山は対策を行わない場合のパンデミックの状態、斜線の山は対策を行ったパンデミックの状態)

我々メディアは重要な問題として、きわめて流動的で不確実なこの時期に、どのようにCOVID-19の報道をすべきかを問われている。そこで、ハーバード大学のBill Hanage(ビル・ヘイネージ)氏とMarc Lipsitch(マーク・リプシッチ)氏が寄稿したScientific American誌のすばらしい記事『How to Report on the COVID-19 Outbreak Responsibly』(COVID-19の流行についていかに責任ある報道をするか)を紹介したい(実を言うとビルは私の個人的友人だ)。

我々が考えるに、報道は少なくとも次の3つのレベルの情報に区分される。(A)私たちの知識は正しいか、(B)私たちの考えは正しいか、つまり、何が一番起こりやすいかに関する個人的な見解を反映する、これもまた推理、外挿、または学識に基づく解釈に依存した真実に基づく評価、そして(C)意見と推測【略】数日間続いた流行に関する事実は、発見されたばかりの、間違いを含む、または正しく事実を反映していないために誤解を招く恐れのある最新の「事実」よりもずっと信頼性が高い。【略】ずっと起きていることは何か、一定の周期で起きていることは何かを区別することが重要になる。

すべて読んで欲しい。意見記事の筆者として、私は実に安全な立場にある。私が書いているものはすべて、上の分類では(C)に属する。しかし、私が引用している内容はすべて(B)からのものだ。

それには、こんな但し書きがつく。この記事の最初の段落で私は「もし……になったら」と書いているが、その本当の意味は「……になったときには」だ。パンデミックは近づいている。無責任に恐怖を煽っているような言い方だとはわかっている。私は、みなさんに懐疑的になって、いろいろなもの広くを読んで、自分の結論を導き出すよう強くお勧めする。だが、専門家の主張する声はますます大きくなり、無視できない状況にある。ここに、ハーバード大学の伝染病学者Johns Hopkins(ジョン・ホプキンス)氏とバーゼル大学とベルン大学が、パンデミックについて明言したことに関連するTwitterのスレッドを紹介する。

Chris Wymant(クリス・ワイマント)「(助)教授たちの伝染病の蔓延に関する意見をまとめると、コロナウイルスを封じ込められる時期はすでに過ぎている。つまり、パンデミックと緩和の方向に進んでいる(ただし現在の封じ込め対策が無意味だとは言っていない)」

マーク・リップシッチ「世界は、COVID-19の蔓延が封じ込め可能な大発生の段階からパンデミックの段階に移ったと見ている。明らかに次は、どの対策が有効かが問題になる。その対策の分類が役に立つだろう」

怖がることはない。パンデミックを緩和するために我々に実行可能な手段はたくさんある。恐怖心はウイルスそのものよりも危険であることは、容易に想像できる。そうなってはいけない。致死率は大きく騒がれている2パーセントよりもずっと低いであろうことを明記すべきだ。しかもそこには、症状の軽い、診断が下っていない患者は含まれていない。

Helen Branswell(ヘレン・ブランズウェル)「これは決定的な情報であり、COVID-19に対する我々の認識を大きく変える可能性がある。簡単な病気ではないが、現在考えられているほど危険ではない可能性がある」

ヘレン・ブランズウェル「氷山を思い浮かべて欲しい。COVID-19では、死亡または重篤化した患者を見分けやすい。しかし、症状が軽い人は病院にも行かず、検査も受けない。研究者は、そうした人たちを探し出すべきだ。現状をもっと明確に知る必要がある。それに関するデータをお持ちの方はシェアして欲しい。もしなければ、作らなければいけない。

(図:水の上が目に見えるケース、水中が無症状または軽症の目に見えないケース)

60歳未満の人たちは、その率がさらに下がる。50歳未満となると急激に低下する。緩和に関するツイートをもう少し紹介しよう。

Kail Kupferschmidt(ケイル・クファーシュミット)「昨日感じたことを言いたい。COVID-19対策は封じ込めから緩和に移行するに従い、準備のためのチャンスの窓が世界に開かれた。これはどういう意味か?」

まずあり得ないことだが、これまで引用した人たちが間違っていない限り、私たちはみな、ノートパソコンや携帯電話やTwitterやマスメディアを通して集団で見守るという珍しい体験をしながら次の1週間、または1カ月を過ごすことになるだろう。世界にパンデミックが広がる様子は、スローモーションに見えるはずだ。私たちの日常生活は、いずれは何かしら変化することになるだろう(今のオフィスがテレワーク対応になっていないとしても、来年の今ごろはなっているに違いない)。しかし、世界の終焉からはほど遠い。通常に戻るのが意外に早かったねと、驚くことになるのではないかと私は思っている。

画像クレジットJoão P. M. Lima  / Wikimedia Common under a Public domain license.

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(翻訳:金井哲夫)

中国ハイテク企業はこうしてコロナと戦っている

新型コロナウイルス感染症の影響についてはTechCrunchでもたびたび取り上げてきたが、今回、中国のハイテク企業がこの大流行にどのように対処してているかを取材した。また、これが中国以外の世界にとっての意味についても紹介する。

新型コロナウイルス感染症の大流行は中国の社会、経済全般に大打撃をもたらしているが、わずかな救いはテクノロジーが人々の相互の接触を最小限とする手助けとなっている点だ。巨大な人口が自宅で過ごすためにテクノロジー企業がどのような役割を果たしているかにも触れたい。

2002年に中国で流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)は800人近い死者を出したが、これが中国におけるeコマースを立ち上げるきっかけとなった。人々は感染を避けようとして外出を控えることととなり、オンライン通販に頼るようになった。ジャック・マ氏の伝記によれば、Alibabaのオンライン・マーケットプレイス、Taobaoが急成長したのも、ちょうどこのSARS流行期だった。

それから20年近く経ってさらに深刻な新型コロナウイルス感染症が中国の多数の都市をマヒさせている。この中でテクノロジー企業は自らの活動を維持すると同時に生活のライフラインとなり、また新型コロナウイルスを封じ込めるための国や民間の努力を助けようとしている。

データ分析企業のQuestMobileのレポートによれば、中国の市民がモバイルデバイスでインターネットを利用する時間は時間は2020年1月には平均1日6.1時間だったが、旧正月(2020年1月25日前後)には6.8時間にアップし、さらに新型コロナウイルス流行で7.3時間という驚くべき数字に跳ね上がった。これはウイルスの影響で旧正月休み明けにも閉鎖を続けている企業が多いことによる。同時に企業がリモートワークを取り入れつつあることも要因だろう。

以下に紹介するのはテクノロジー企業の努力の例だ。

リモートワークアプリが大ブーム

中国のエンタープライズソフトウェアビジネスは西側に比べると立ち上がりが遅かった。しかし消費者向けオンラインビジネスのプレイヤーが激増するにつれ、テクノロジー系大企業から投資家 までいっせいにエンタープライズ部門に目を向けるようになった。 ここにきて新型コロナウイルスの流行により何百万人ものオフィスワーカーが家に閉じ込められることになったため、リモートワーク向けアプリがブームとなっている。

全国的に学校、大学が閉鎖されたことで、Sensor Towerのデータによれば、オンライン教育ビジネスも同様の活況を呈している。

リモートワーク・アプリのメジャー・プレイヤーはAlibabaのDingTalk、Tencentの WeChat(微信)、 ByteDanceのLark. Appで、 Sensor Towerのレポートによれば、2020年の1月22日から2月20日の期間でDingTalkの14倍をはじめとして、以下のとおり著しい伸びを記録している(対前年同期比)。

DingTalk: 1446%

Lark: 6085%

WeChat Work: 572%

AlibabaはWeChat(微信)に対抗しようとして失敗した後、2014年にDingTalk(釘釘)をスタートさせたが、2020年2月に入って突然急成長し、中国におけるiOSアプリの首位に躍り出た。2019年8月時点の発表ではユーザーは1000万人以上ということだったが、現在は登録ユーザーは2億人以上だという。

新型コロナウイルス感染症の流行でiOS無料アプリのダウンロード数トップとなったDingtalk (Sensor Tower)

WeChat(微信)のエンタープライズ版、WeChat Work(企業微信)は2016年に生まれ、DingTalkの後を追い、当時iOSのダウンロードで2位となった。2019年12月にはWeChat Workには250万社、6000万人以上のアクティブユーザーがいると発表された

BytedanceがLarkをリリースしたのは2019年と新しい。上記2つの巨大サービスに比べれば小型で、 2月上旬までは300位台だった。しかし新型コロナウイルス流行後、Larkは爆発的に急成長した。LarkはTikTokの中国国内版であるDouyin(抖音)に広告を出し始めた。Douyin(抖音)はショートビデオの人気が高まると同時に企業マーケティングの寵児となりLarkに大きな注目が集まるようになった。一方、WeChatは月間ユーザー10億という巨大なサイズに達しているものの収益化には踏み出していない。

問題は新型コロナウイルスによる突然のブームが、維持可能な安定した市場に結びつくかどうかだ。DingTalkとWeChat Workは、あまりに急激なユーザー拡大のためにたびたびシステムがクラッシュしている。両サービスともこれほどの規模のユーザー殺到は予期していなかった。 また多くの企業は新型コロナウイルスの流行が収束すればリモートワークから従来のオフィスに出勤する勤務体制に戻ると予測される。

実際、「在宅勤務時間中はウェブカメラを常時オンにしておくこと」といったプライバシーの侵害につながるような要求をする企業もあるため、在宅勤務は社員からは評判が悪いことが多い。 またDingTalkは最近スタートさせたオンライン学習クラスに思わぬ反撃を受けている。旧正月休みが延長されたと思ったらオンライン学習クラスで勉強させられることになった生徒たちが一斉にアプリに一つ星の低評価をつけている。

マスク着用と国民監視システム

ウイルスの拡散を防ぐために多数の自治体が公衆の前に出るときはマスクを着用することを人々に義務付けたが、これは中国で一般化している監視カメラによる顔認証に重大な障害となっている。しかし、顔認証に代わる虹彩認証などの新しいテクノロジーが導入されつつある。

私が取材した旅行者によれば、駅で列車に乗る際、セキュリティゲートでいちいちマスクを外す必要はなかったという。マスクをしていても個人が特定できるならプライバシーを重視する立場からいえば大きな問題だ。しかし当局がそのような進化した生体認証行うようになったのか、ウイルスの流行で一時的にセキュリティを緩めているのかは不明だ。【略】

デジタル記録の活用

中国政府はClose Contact Detector(濃厚接触検知器というウェブベースのアプリを開発し公開した。ユーザーは氏名、身分証番号、電話番号を入力することでデジタル化された移動情報にアクセスすることができる。たとえば航空機で感染者の3列以内に座っていたことが確認されれば「リスクあり」と判断される。これは感染拡大防止に役立つだろうが、一方では「政府がここまで詳しい個人の旅行データを持っているのなら、なぜもっと早く流行の封じ込めに役立てなかったのか?」という深刻な疑問も生んでいる。なぜ流行が拡大し始めて数週間も経ってからこのサービスが公開されたのだろうか?

もちろん中国の膨大な人口と無数の政府機関の存在を考えると実名で登録されたビッグデータを横断的に処理することが極めて困難な問題を引き起こすことは予測できる。新型コロナウイルスの流行は中国政府によるビッグデータの処理の努力を加速しているようだ。旅行許可のデジタル発行の多くは膨大なユーザー数を考慮してWeChatを利用している。【略】

写真:新華社

デマと戦う

感染症の流行はデマの温床となる。Dxy.cn (丁香园)は医療関係者を対象としたオンラインコミュニティで新型コロナウイルス関連の情報の迅速なファクトチェックの提供を目的としている。また中国全土のマップで流行の現状をリアルタイムで確認できるようにしている。

Yikuangは独立のデベロッパーとアプリレビューサイトのSspai.comが開発したWeChatベースのサービスで、新型コロナウイルス感染症の流行地域を示す。データは自治体の公式発表に基づいており、近隣で感染があったかどうかがわかる。

上海の高等学校の生徒によって始められたブログは世界中の諸機関による新型コロナウイルス情報をまとめたもので、中国の多数の若者が参加してサービスを拡充している。

食事とエンターテインメント

全国的な社会のロックダウンは当然ながらオンラインエンターテインメントにブームをもたらす。QuestMobileのデータによれば、ショートビデオ市場は1日当たりのアクティブユーザーが5億6900万人に達した。流行以前の4億9200万人から大きく増加している。多くのミュージシャンがコンサートが不可能にあったため、ビデオストリーミングによるバーチャルコンサートに切り替えている。同様に映画も上映館の閉鎖によりオンライン封切りを行っている。

中国の都市の多くがレストランでの外食を禁じたため、料理宅配サービスが肩代わりを余儀なくされている。飲食店の口コミサイト、Meituan Dianpin(美団点評)が運営するで宅配サービスではコンタクトレスと呼ばれる人的接触を避ける宅配システムを作った。これは料理を入れたロッカーで、注文した顧客はロッカーを開いて料理を取り出すことができる(下のツイートの動画参照)

画像:ROMEO GACAD/AFP via Getty Images

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滑川海彦@Facebook

新型コロナウイルスの流行で2020年のPC出荷台数は減少へ

新型コロナウイルスの流行によって、2020年に全世界で出荷されるPCの台数は、少なくとも3.3%、多ければ9%減少する可能性があると、調査会社Canalysが、米国時間2月20日の夕方にこれまでの予想を修正するかたちでクライアントに報告した。

画像クレジット:Drew Angerer/Getty Images

報告によると、PCの出荷台数は、2020年の第1四半期に10.1%から20.6%の範囲で減少するという予測となっている。第2四半期にも影響は続き、出荷台数は8.9%(Canalysによるベストケースのシナリオ)から23.4%(同ワーストケースのシナリオ)の間で減少することが予想されるという。

ベストケースのシナリオでは、新型コロナウイルスが流行しても、2020年に3億8200万台が出荷されるとしている。これは、2019年の3億9600万台と比較して3.4%の減少だ。

ワーストケースの場合は、落ち込みはもっと大きくなり、2020年の出荷は、約3億6200万台となる。2019年より8.5%減少だ。

「ベストケースのシナリオの場合、生産レベルは2020年4月までにフル稼働の状態に戻ると予想しているので、前半の2つの四半期にメーカーから販売店への出荷が受ける影響が最も強くなります。第3四半期および第4四半期には市場も回復すると考えています」と、Canalysは述べている。

「したがって、世界のPC市場の出荷台数は、2020年には前年比で3.4%の減少に留まるのです。内訳は第1四半期は10%、第2四半期は9%の減少としています。PC市場での供給は、第3四半期までに正常化されると考えます。1年単位では、Canalysは、2021年以降には、世界のPC市場が徐々に回復し始めると予想しています」

ワーストケースのシナリオでは、2020年6月までは生産レベルがフル稼働状態には戻らないと仮定している。「このシナリオの仮定では、中国における生産および需要レベルの回復には、さらに時間がかかり、その結果として第2四半期にも、第1四半期と同程度の影響を見込んでいます。市場が回復するのは、2020年第4四半期までかかると見ているのです」

いずれのシナリオでも、最も大きな影響を受けるのは、世界最大のPC市場の1つである中国だ。最悪のシナリオについて「このシナリオでは、2020年には中国市場が大きな影響を受け、2019年と比べて12%も減少し、その後の安定化にはさらに長い時間がかかります。2021年の予想は、ベストケースのシナリオと比較して、出荷台数で600万台ほど低く見積もっています。中国の2021年から2024年までの予想CAGR(複合年間成長率)は6.3%となっています」と、Canalysは述べている。

中国は、生産とサプライチェーンのグローバルハブだ。新型コロナウイルスの影響を封じ込めようとして、まず旧正月の公式な祝日を延長した。その後、厳しい移動制限を課して市民の安全を確保しようと努めてきた。「これにより、オフラインの小売の流通が大幅に減少し、消費者による購入が劇的に減少しました」と、Canalysのアナリストは述べた。

新型コロナウイルスの流行は、部品の供給不足ももたらしている。たとえばプリント基板やメモリなどは、中国だけでなく他の市場でも不足している。「同様にチャンネルパートナーも、この2週間で主要なPCベンダーから通告を受けています。それによると、PCの出荷と交換部品の調達に、最長で14週もかかるということです。これは、パートナーの所在地にもよりますが、通常の配送に要する時間の3倍にもなります」と、Canalysはいう。

「アジア太平洋地域の技術ベンダーとチャンネルパートナーは、COVID-19(新型コロナウイルス)の、突然の流行に対処するという、予期していなかった課題に直面しています。今回の危機は、1月中旬の段階でも、まったく予想されていませんでした。ほとんどの指導者が2020年に予想していたのは、政治的な不安定と自然災害による混乱で、伝染病ではありませんでした」と、Canalysのアナリスト、Sharon Hiu(シャロン・ヒウ)氏は、また別のレポートで述べている。

今回の流行はスマートフォン、自動車、テレビ、スマートスピーカー、ビデオゲーム機など、かなり多くの産業に影響を与えている

Apple(アップル)の主要な製造業者あるFoxconn(フォックスコン)は、米国時間2月20日、2020年の収益は武漢の新型コロナウイルスによって影響を受けると述べた。同社によるとインド、ベトナム、メキシコの工場はすでにフル稼働しており、他の国々での生産拡大を計画しているという。

2月のはじめにアップルは、2020年3月までの四半期には、収益の見通しを満たせそうにないと発表した。その原因は、iPhoneの供給の制約と、中国における店舗の閉鎖による需要の低迷にあるという。

アップルは、広く噂されている低価格版iPhoneの本格的な生産のスケジュールを延期すると予想されている。その一方で、既存のモデルの在庫は、4月あるいはそれ以降まで品薄になるという予想を、米国時間2月19日にNikkei Asian Reviewが公表している

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

MWCの開催中止が決定、主催者のGSMAが新型コロナウィルスを懸念

モバイル・デバイスの世界最大のトレードショーであるMWCの開催が中止となった。主催者のGSMAが公式に発表した。 例年、MWCは200カ国から10万人の参加者をスペインのバルセロナに集めてきた。今年は2月下旬の24日から27日にかけて開催されるはずだった。

一部のメディアはGSMAからキャンセルの通知を受け取っている。それによれば、「GSMAはMWC Barcelona 2020の開催をキャンセルした。世界的にコロナウィルス感染症の拡大が憂慮されているため旅行業等に大きな影響が出ており、GSMAがこのイベントを開催することが不可能になった」という。GSMAのCEOであるJohn Hoffman(ジョン・ホフマン)氏はBloomberg(ブルームバーグ)の取材に対して述べた。Financial TimesEl DiarioEl PaísLa VanguardiaもMWCのキャンセルを報じている。

現在、GSMAは次のような声明を発表し、この決定について説明している。

2006年にバルセロナで最初のMobile World Congressを開催して以降、GSMAはモバイルのキャリヤ、デバイスのメーカーなどモバイル関係業界のリーダーだけでなく各国政府首脳、政官界のトップを含む広汎なエコシステムに影響を与えてきた。

しかしながら、バルセロナおよびスペインにおける健康と安全な環境の維持を最優先する立場から、本日、GSMAはMWC Barcelona 2020の開催を中止することを決定した。世界的にコロナウィルス感染症の拡大が憂慮されているため旅行業等に大きな影響が出ているため、GSMAがこのイベントを開催することは不可能となった。

主催に協力してきた。バルセロナ市の諸団体もこの決定を理解し、尊重するとしている。

GSMAおよび関係諸団体は今後も協力してMWC Barcelona 2021の開催に向けて努力していく。

我々はコロナウィルス感染症により影響を受けた中国と世界の人々に深甚な同情を抱いている。

GSMAはこれに関する今後の情報をwww.mwcbarcelona.comで発表する。

この数日、メジャーな出展者からの「今年のMWCをキャンセルする」という発表が相次いでいた。 まずLGがコロナウィルスを理由に不参加を声明、Nvidia(エヌビディア)、Ericsson(エリクソン)も続いた。

2月9日にGSMAはコロナウィルス感染症に関する長文メールを参加者に送り、湖北省からの旅行者に参加を禁ずるなど各種の措置が取りコロナウィルス感染症の拡大を抑えるため最大限の努力を払っていると説明した。

【略】

しかしこのメールは参加者の不安を増大させるだけの逆効果となったようだ。この後、コンシューマ・エレクトロニクスのトップ企業が次々に撤退を表明した。GSMAは事態を掌握していると考えていた企業も、トップ企業が参加しないならバルセロナに行く理由はないと考えてキャンセルを決定した。

参加取りやめを発表したトップ企業のリストには、Amazon、ドイツテレコム、エリクソン、Facebook、HMD、Intel(インテル)、LG、Nokia、NTTドコモ、ソニー、Sprint(スプリント)などが含まれている。主要出展者は展示やデモのスペースを確保するために数百万ドルを支払うのが普通だから、MWCが全面的に開催中止を余儀なくされたことはGSMAにとって大打撃となるはずだ。

El Paísによれば、GSMAは当初金曜に今後の方針を検討する会議を開く予定だったが、現地時間の2月12日の朝に緊急会議を開催し、中止を決定したものらしい。

MWCは当初、モバイルキャリア向けのトレードショーで、テレコム関係の巨大企業がハードウェアメーカーのデモに出席し、ネットワークの新テクノロジーや製品を研究するのが主たる目的だった。その後、モバイル端末のメーカーもキャリヤに製品を売り込むよいチャンスとみて参加するようになり、規模が大きく拡大した。

【略】

WHOによれば、世界で4万3000人がコロナウィルスに感染したことが確認されており、死者は1000人を越えているという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

新型コロナウイルスの懸念からLGとZTEがMWC出展をキャンセル

LGとZTEは、新型コロナウィルス関連の懸念から今月末にスペインバルセロナで開催予定のMWCへの出展計画のキャンセルすると発表した。 LG社のサイトに掲載された声明によれば、同社は世界最大のモバイルトレードショーであるMWCをスキップし、その代替となる別箇のイベントを「近日中」に開催するという。

韓国ソウルに本社を置くLG社は、その声明の中で「従業員、パートナー、そして顧客の皆様の安全を第一に考え、LGは今月末にスペインバルセロナで開催予定のMWC2020への出展ならびに参加を中止します」と述べている。 「この決定によって、国境を超えて感染拡大の続くウィルスの影響ですでに制約の増大している国際移動による危険に、多くのLG従業員を晒す事態を避けることができます」。

中国四川省に本社を置くZTEもまた、MWCへの参加中止を米国時間2月4日に発表した。Vergeに対しプレスカンファレンスを中止したことを告げたが、同社はその理由として移動とビザ発行の遅れはもちろん、「私たちはどちらかと言えば過剰な気遣いをする企業ですし、単純に関係者に不快な思いをしてないのです」と述べている。

今回のコロナウィルスの流行は、全世界の人間の移動とサプライチェーンを破壊している。 中国国内で多数の感染者が報告されている一方で、今回の流行はまた、世界に広がるアジア系の人々を対象とした、人種差別と外国人嫌悪の動きへとつながっている。

MWCを主催するGSMAが本日サイトに投稿した声明は以下のものだ。「バルセロナ、上海、そしてロサンゼルスで毎年開催されるMWCイベントだけではなく、各地で開催されるMobile 360カンファレンスへのコロナウィルスによる影響の可能性の評価を継続しています。 GSMAは現段階ではイベントに対する影響は些少なものだと結論付けています」。

2月24日から27日にかけて予定されているバルセロナでの全てのイベントは、予定通り開催される。 GSMAは既にウィルス拡散を防ぐための対策を発表している。例えば、清掃の徹底、混雑する場所(ケータリング、手すり、トイレ、入出場口、タッチスクリーンなど)の滅菌消毒などや、会場での様々な医療サポートなどだ。 また同社は、話者ごとの「マイク交換プロトコル」適用することを発表し、参加者に「握手はしないポリシー」を採用することを呼びかけている。

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(翻訳:sako)

テスラが新型コロナウイルス懸念で上海工場を一時的に閉鎖

Tesla(テスラ)は、コロナウイルスに関する懸念により同社の上海工場を閉鎖するよう中国政府から命令された。これによりModel 3の生産が遅れるだけでなく、米国時間1月29日に発表された決算報告ではCFOのZach Kirkhorn(ザック・カークホーン)氏が「本会計年度第1四半期の利益に対する軽微な下向き圧力になる」と述べている。

テスラは1月29日に、1億500万ドル(約114億円)、希薄後1株あたり56セントの純利益を報告した。それは前年同期では1億4000万ドル(約1524億円)、1株あたり78セントだった。第4四半期の調整後収益は3億8600万ドル(約420億円)で、1株あたり2.14ドルだった。売上は73億8000万ドル(約8036億円)で、2018年の同期の72億ドル(約7840億円)に比べてわずかに1%伸びた。

カークホーン氏によると、Model 3の生産は1週間半遅れる。新型コロナウイルスは、コロナウイルスとして認知されるウィルスの新しい系統で、2019年12月に中国・武漢で突然現れた。その後、数千人がこのウィルスに感染し、政府は国中の公共交通機関やFoxconn(フォックスコン)などの工場を閉鎖するなどの策を講じた。The New York Timesの報道によると、自動車メーカーのFord(フォード)とトヨタでは、中国の組み立て工場のアイドル期間がさらに1週間増えるそうだ。

Apple(アップル)のCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は投資家に、同社の中国のサプライヤーの閉鎖は2月10日まで続くと告げた。Starbucks(スターバックス)も1月29日に、中国で2000店あまりを一時的に閉鎖すると発表した。

カークホーン氏は「現状では、コロナウイルスの今後の被害状況をまだほとんど把握していない。そんな中で言えるのは、1週間か1週間半ぐらい、政府の要求により、上海製のModel 3の増産が遅れるということだ。それによって今四半期の利益にやや影響が及ぶと思われるが、生産の初期でもあるので影響は限定的だろう」と説明する。

テスラはフリーモントで作られる車のサプライチェーンについても、コロナウイルスによる中断を警戒している。「まだ具体的には何もないが、今後の展開が長そうだから警戒が重要だ」と同氏はコメントしている。

上海プラントにおけるModel 3セダンの生産は1月初めにスタートした。これは、同社の初めての海外プラントの建設工事が始まってから1年後のことだ。

テスラにとって重要なのはあくまでも顧客への納車であり、それをもって初めて、世界最大の自動車市場にマーケットシェアを刻み、また関税による財務の障害を克服できるのだ。

画像クレジット:Qilai Shen/Bloomberg/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa