Netflixがゲーム分野への拡大を表明、追加料金不要でまずはモバイル向けから

先週、Netflix(ネットフリックス)のゲームに対する野望を示唆する報道があった。同社は2021年第2四半期の業績報告で、いくつかのことを認めた。まず、最初はモバイルに「主に注力」し「Black Mirror Bandersnatch(ブラック・ミラー:バンダースナッチ)」のようなインタラクティブなプロジェクトや「Stranger Things(ストレンジャー・シングス)」のオリジナルゲームのようなコンテンツの拡大を目指すとのこと。今後配信されるタイトルは、定額制サービスの一部として追加料金なしで利用でき、映画やテレビについてもベースを維持していくと、Netflixは明言している。

「オリジナル映画やアニメーション、脚本のないテレビへの進出と同様に、ゲームは当社にとって新たなコンテンツカテゴリーの1つであると考えています」と、同社は株主へ宛てた書簡で述べている。

2020年はNetflixにとって大きな年だった。誰もが家に閉じこもり、映画館も閉鎖されていた中で、このストリーミングサービスは3カ月で1600万人の新規顧客を獲得した。予想どおり、2021年はそのペースが劇的に落ち、新規顧客数においては苦戦が続いている。同社の決算報告によると、第2四半期の加入者数は150万人と、予想指標の100万人を実際には少し上回った。しかし、この数字は、全世界で398万件の新規顧客を獲得した2021年第1四半期から大きく減少している。

Netflixでは、2021年第3四半期の新規加入者数が、前年同期の220万人から350万人に増加すると予想している。もしそうなれば、過去2年間の新規加入者数は合計5400万人になると同社は説明する。成長のペースは落ちいてるものの、Netflixの業績は全体的には順調だ。当四半期の収益は、依然として前年同期を上回り、19%増の73億ドル(約80250億円)となった。

Netflixの発表した数字によると「Shadow and Bone(暗黒と神秘の骨)」は今期の人気シリーズで、1カ月足らずで5500万以上の「メンバー世帯」にストリーミング配信されたという。この数字に基づいて、同番組はすでに第2シーズンの制作が決定している。DCコミック原作のTVドラマ「Sweet Tooth(スイート・トゥース:鹿の角を持つ少年)」は、配信開始から1カ月で6000万世帯にストリーミング配信された。また「Too Hot to Handle(ザ・ジレンマ:もうガマンできない?! )」や「The Circle」などのリアリティ番組シリーズや、犯罪捜査番組「The Sons of Sam」なども人気を博した。映画では、Zac Snyder(ザック・スナイダー)監督の「Army of the Dead(アーミー・オブ・ザ・デッド)」が配信開始から1カ月で7500万世帯の視聴を記録。また「The Mitchells vs. The Machines(ミッチェル家とマシンの反乱)」は5300万世帯にストリーミング配信され、これまでで最大ヒットのアニメーション映画になったと、Netflixは説明している。

Netflixによると、新型コロナウイルスの影響による制作の遅れにより、2021年の前半はコンテンツが「軽め」になったが、年内の残りの期間はペースが上がるとのこと。同社の第3四半期のラインナップには「La Casa de Papel(ペーパー・ハウス)」「Sex Education(セックス・エデュケーション)」「Virgin River(ヴァージンリバー)」「Never Have I Ever(私の”初めて”日記)」などの新シーズンに加え、Jason Momoa(ジェイソン・モモア)主演の「Sweet Girl(スイートガール)」「Kissing Booth 3(キスから始まるものがたり3)」、Mary Elizabeth Winstead(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)主演の「Kate(ケイト)」などの実写映画が含まれている。さらに、Lin-Manuel Miranda(リン=マヌエル・ミランダ)の新曲が収録されるアニメーション映画「Vivo」も配信される予定だ。

編集部注:この記事はEngadgetに掲載されている。本稿を執筆したBilly Steeleは、Engadgetのシニア・ニュース・エディター。

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(文:Billy Steele、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

事業者向け卸仕入れマーケットプレイス「orosy」のスペースエンジンが1.8億円のプレシリーズA調達

事業者向け卸仕入れマーケットプレイス「orosy」のスペースエンジンが1.8億円のプレシリーズA調達

D2Cブランドやクラフト商品など、通常の卸では入手しにくい独自性の強い商品を簡単に仕入れられる業者向け卸仕入れマーケットプレイス「orosy」(オロシー)を運営するスペースエンジンは7月21日、プレシリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額1億8000万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先には、SIG Japan Fundをリードインベスターに、Light Street Capitalパートナーのガーラブ・グプタ(Gaurav Gupta)氏、STRIVE、G-STARTUP、そして既存投資家のCoral Capital、ANOBAKA、Plug and Play Japanが参加している。2018年創設以来の累計調達額は3億4000万円となった。

事業者向け卸仕入れマーケットプレイス「orosy」のスペースエンジンが1.8億円のプレシリーズA調達

通常の問屋では扱わない個性的で高感度な商品を、大手小売店舗・地方の個人商店・EC事業者に提供するorosyは、商品提供のほかにも、契約書作成や口座管理、時間のかかる仕入れ作業などを代行し、支払いを1本化してくれるというサービス。現在は、取り扱い商品1万点、利用店舗は500店にのぼっている。今回の資金は、「海外事例を知る投資家から知見を得る」ための取り組み、「orosyの事業成長の核であるテクノロジー強化に向けたエンジニア採用」「サービス認知拡大のためのマーケティング」に使われるという。

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YouTubeが新しい収益化機能「Super Thanks」発表、個別の動画に対してクリエイターに投げ銭可能に

米国時間7月20日、YouTube(ユーチューブ)は最新の機能「Super Thanks(スーパー・サンクス)」を発表した。これは、ファンが直接クリエイターに支払う仕組みに同社が名づけた「Paid Digital Goods(ペイド・デジタル・グッズ、有料デジタル製品)」の第4弾だ。これまでに「Super Chat(スーパー・チャット)」「Super Stickers(スーパー・ステッカー)」「チャンネルメンバーシップ」の3種類が提供されているが、 Super Thanksは、ファンがライドストリームではなくアップロードされた個々の動画についてクリエイターに投げ銭できる初めての機能だ。

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動画に特別の感謝を表したいとき、視聴者は2ドル(約220円)から50ドル(約5500円)まで4種類の設定金額を現地通貨でクリエイターに支払うことができる。Super Thanksを購入したユーザーはメッセージを書くことができて、コメント欄にハイライト表示される。

YouTubeがこれまで提供してきたクリエイターに直接支払うためのツールは、Twitch(トゥイッチ)に追いつくための機能という印象だったが、今回YouTubeは、Super Thanksで差別化をはかろうとしている。Instagram(インスタグラム)にもクリエイターがライブ出演した時に投げ銭できるBadges(バッジ)などの機能があるが、個別の投稿についてクリエイターがお金を受け取る方法はない。代わりにInstagramはeコマースに大きく転換しをはかっていて、ファンがクリエイターとつながる方法としてはSuper Thanksと比べてオーガニックでも直接的でもない。

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画像クレジット:YouTube

2020年はYouTubeのPaid Digital Goodにとって最大の年になり、1000万人以上がSuper Chat、Super Stikcerまたはチャンネルメンバーシップを初めて購入した。2020年に売上の半分以上をこれらの製品から得たチャンネルの数は2019年の3倍以上だった。

「空き時間の私はYouTubeクリエイターです」とYouTubeのPaid Digital GoodsプロダクトマネージャーのBarbara Macdonald(バーバラ・マクドナルド)氏はいう。「実に幸運なことに、私のクリエイターとしての洞察力は、私やチームがYouTubeユーザーのためによりよいプロダクトを作るのに役立っています」。

2019年以来、マクドナルド氏のチームはYouTubeクリエイターの集団とともに、当初「applause(アプローズ)」と呼ばれていたこの機能のベータテスターとしてパイロットテストを進めてきた。参加したクリエイターはプロダクトに関するフィードバックや提案を送り、YouTubeがそれを参考にしている。名前を「applause」から変更する、高額のオプションを追加して売上の可能性を最大にする、Super Thanksのメッセージを他のコメントと区別するなどの提案があった。YouTubeはファンからクリエイターへの支払いから30%を受け取る。一方ライバルのTwitchはストリーマーのサブスクリプション売上の50%を受け取っている。

7月20日から、Super Thanks機能はYouTube Partner Program(ユーチューブ・パートナー・プログラム)のメンバーになっている68カ国、数千人のクリエイターに向けて提供開始される。対象はランダムに決められるが、YouTube Partner Programの有資格メンバーは全員、2021年中に利用できるようになるマクドナルド氏は述べた。

というわけで、ユーチューバーは動画の最後に「いいね!とコメントとチャンネル登録」のかわりに「いいね!、コメント、チャンネル登録とSuper Thanks」をお願いするようになるだろう。

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nob Takahashi / facebook

さらに成長するインドのeコマースを動画やクリエイターの力でサポートするSimsimをYouTubeが買収

米国時間7月20日、GoogleがオーナーであるYouTubeは、ソーシャルコマースのスタートアップSimsimの買収を発表した。両社は買収の価額などを公表していないが、情報筋によると、買収に際してSimsimの評価額は7000万ドル(約77億円)ほどだった。

創業2年のSimsimは、本日の発表前までにおよそ1700万ドル(約18億7000万円)を調達し、2020年のシリーズBでは5010万ドル(約55億円)と評価されていた。

グルガオンに本社のある同社は、インドの小企業が、ビデオやクリエイターの力を活用してeコマースに移行する努力をサポートしている。その社名と同名のアプリは、プラットフォームとして各地の小企業や店舗、インフルエンサーと顧客を結びつける。

Simsimを初期から支援しているGood CapitalのRohan Malhotra(ロハン・マルホートラ)氏によると「特定のオーディエンスに的を絞って成長し、楽しい体験を提供して常連客になってもらい、信頼を築いて高額商品を買わせ、メッセージングを個人化してコンバージョンを促進するには、マイクロインフルエンサーの利用が最も効果的です。消費者対象のソーシャルプラットフォーム(Facebook、YouTube、Instagramなど)のような、広告を収益源とする経営がインドでは成り立ちにくいため、どうしても商取引を統合したプラットフォームになりがちです。インドで新たにインターネットユーザーになる人たちは、売り手が主導する対話的な体験を必要とし、この市場の慣行であるオフラインのコマースのネット版を求めることになります」という。

マルホートラ氏も買収の価額などは明かさず、またSimsimのCEOも米国時間7月19日に提出した買収に関する質問には応じなかった。

しかしSimsimの共同創業者であるAmit Bagaria(アミット・バガリア)氏とKunal Suri(クナル・スリ)氏、そしてSaurabh Vashishtha(サウラブ・ヴァシシュタ)氏は、共同声明で次のように述べている。「Simsimを始めたときのミッションは、インド中のユーザーがオンラインで簡単に買い物できるようにすることでした。そのためには、信頼されているインフルエンサーが作ったコンテンツのパワーにより、売り手やブランドが商品を展示し販売できなければなりません。今回、YouTubeとGoogleのエコシステムの一員になったことにより、Simsimのミッションをさらに強力に推進できます」。なお、バガリア氏とヴァシシュタ氏は以前、Paytmに在籍していた。

彼らによると「今後のSimsimを作っていく上で、技術や顧客へのリーチ、クリエイターのネットワーク、そして企業文化において、ここにまさるエコシステムは他にありません。YouTubeの一員になることが待ち遠しいし、世界で最も賞賛されているテクノロジー企業の中でSimsimを開発し続けていけるのは本当にうれしいことです」という。

YouTubeにとっては、このビデオストリーミングの巨人がインドの小企業と小売業を助けていくことにより、従来よりも強力な方法で新たな顧客にリーチできる。YouTubeのアジア太平洋担当副社長Gautam Anand(ゴータム・アナンド)氏が、ブログでそう述べている。

このビデオストリーミングサービスは、インドだけでも月間アクティブユーザーが4億5000万を超えるが、さしあたってSimsimを変える意図はなく、Simsimのアプリがそのまま使える状態を続ける。そしてアナンド氏によると「YouTubeのビューワーにSimsimをどのように見せていくか、そのやり方を検討したい」とのこと。

以前から、Googleはさまざまな形でインドに地歩を築く努力を続けているが、7月20日の発表はその最新の動きだ。これを含めてGoogleのインドへの投資は、向こう2年間で100億ドル(約1兆1000億円)に達する。Googleは他にも、インドのスタートアップGlanceとDailyHuntを支援しており、いずれもショートビデオのアプリだ。

「YouTubeには2500を超えるクリエイターがおり、サブスクライバーは100万を超えています。また、インドで最初にローンチしたYouTube Shortsの成功により、私たちはYouTubeの最良の部分をインドに持ち込むことにコミットしており、新世代のモバイルファーストのクリエイターたちがスタートしやすい環境を作って、クリエイターのコミュニティを大きくしていきたい」とアナンド氏はいう。

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タグ:YouTubeインドeコマースSimsim買収クリエイターGoogle

画像クレジット:Simsim/YouTube

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Candeeが空間音響技術のクレプシードラと業務提携、立体的でリアルな音質の動画コンテンツをライブ配信

Candeeが空間音響技術のクレプシードラと業務提携、視聴環境に左右されにくいその場にいるかのような音質の動画コンテンツをライブ配信

ライブ配信や動画制作を中心にデジタルマーケティングを手がけるCandeeは7月19日、空間音響技術のイノベーターであるクレプシードラとの業務提携を発表した。これにより、視聴環境に左右されにくく、その場で聴いているかのような音質の動画コンテンツの提供・ライブ配信を実現する。両社は、検証用の動画コンテンツを複数制作し、今後はライブ配信やVR動画での検証・制作も行う予定。

2015年2月設立のCandeeは、「おいしい、共感をつくる。」をミッションに掲げ、設立以来3万5000本以上のライブ配信や動画制作について、企画から配信までワンストップで手がけてきた。その中で同社は、空間音響という、より人間の聴覚体験に近く、より立体的でリアルな音の再現が可能となる技術に着目し、同動画コンテンツやライブ配信での可能性について検討を重ねてきたそうだ。

2020年2月設立のクレプシードラは、独自の空間音響収録・再生技術およびAIなどを用いた新規開発技術(特許出願済み)により、圧倒的なクオリティの空間音響体験を提供するイノベーター。「Creativity for All. Create a Culture.」をミッションに掲げ、空間音響に関する高い技術力と専門性を通じて、新しい文化創造を追求している。同社の空間音響技術は、様々な現場で取り回しが良い独自マイクで録音が可能で、360度あらゆる方向からの音の到来や遠近感までも表現し、従来の2chステレオにはない空間を感じられる音響体験を提供可能という。

クレプシードラでは、空間音響の技術を生かし、企業・クリエイターとコンテンツを受け取るユーザーが一体となった新しいエンターテインメント文化の創出を目指していることから、両社の創造的な志向とニーズが一致し協業に至ったとしている。

動画制作・ライブ配信実績のあるCandeeと、クレプシードラの持つ人間の聴覚体験をリアルに再現する空間音響技術とが協業することで、動画・ライブ配信を通して、まるで自分がその場・その世界に居ると「錯覚」するような、ユーザー体験を視聴者に届けることを目標とし、実現するという。例えば、プロ野球のバッターボックスでホームランを打った時のバットの音や、実際にアーティストのライブをその場で視聴している音など、限られた人しか体験しえない主観の音を、動画・ライブ配信を通じ提供する。

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新ストリーミングサービス「CNN+」は2022年初頭よりライブとオンデマンドコンテンツを提供

CNNのストリーミングサービスという噂は本当だった。このネットワークが披露したCNN+サービスは、既存のテレビ放送とはまったく異なるライブとオンデマンドの番組のブレンドして提供するという。スタートは、2022年の第1四半期の予定。料金は未発表だが、上級役員のAndrew Morse(アンドリュー・モース)氏はVarietyのインタビューで、最初は広告入りの無料放送はないと述べている。

CNNは元々ニュースのネットワークであるため、主役は想像どおりライブ配信だ。CNN+の計画では1日8時間から12時間のニュース特集と「ライフスタイル」テーマの素材をベテラン、新人入り混ぜて作成する。著作者やエキスパートとのリアルタイムの議論もできる。それはCNNの通常のニュースのデジタルのレプリカではない。それと毎日付き合う別の理由がある。

オンデマンドの方は当然ながら、「Anthony Bourdain:Parts Unknown」や「United Shades of America」といったCNNの既存のコレクションが主になる。インターネットサービス専用のオリジナル番組や動画もいずれ登場するが、その詳細の発表は年内のもっと後になる。

モース氏が公式に語ったところによると、同じWarnerMediaの中でもCNN+はHBO Maxにバンドルされることはない。ただしVarietyの情報筋からは、WarnerMediaとDiscoveryの合併が実現次第、HBO MaxやDiscovery+のバンドルも「ありえる」という展望が聞こえてくる。

モース氏の考えでは、CNN+のローンチは1980年のTVサービス以来、同ネットワークの最大のプロダクトになる。またそれは、エンターテインメントとニュースの境界を曖昧にする新形式を実験するチャンスでもある、と氏は述べている。

疑問はもちろん、視聴者の食いつきだ。CNNは故Anthony Bourdain(アンソニー・ボーディン)氏の番組のような長編で成功しているが、人びとが月額料金を払ってまでそれを見るかどうか。そしてまた、ストリーミングサービスの過剰という現象もある。ストリーミングは見すぎだけど、CNNだったらもう1つ金を払ってもよい、という視聴者がどれくらいいるだろうか。

編集部注:本記事は最初Engadgetに掲載されている。

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画像クレジット:CNN+

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(文:Jon Fingas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

企業がEVサブスクを提供できるようになるプラットフォームimoveが約25億円調達

いくつか挙げると、英国(欧州)で登場したFleks、(Drover買収後の)Cazoo、Care by Volvo Hertzなど「自動車をサブスクする」動きが近年広まりつつある。

この業界に、ノルウェーのimove(アイムーブ)が少なくとも全体的に新たなひねりを加えて参入した。企業が自社ブランドのもとに自動車サブスクサービスを提供できるようにする、ホワイトレーベルのプラットフォームだ。imoveのプラットフォームでは、ユーザーは自動車メーカー18社のモデル50種類超から電気自動車(EV)を選んでサブスクできる。

imoveは欧州で広く事業を展開しているオンライン自動車マーケットAutoScout24がリードした1900万ユーロ(約25億円)のシリーズAラウンドをクローズした。このラウンドにはVCs Norselab、Idekapital、そしてノルウェーの政府系気候投資会社Nysnøも参加した。既存投資家のHedin Automotiveも加わった。資金調達の内訳は1300万ユーロ(約17億円)の新規株式発行と600万ユーロ(約8億円)の株式のセカンダリーセールだ。

2018年創業のimoveは、車業界や金融、保険、そして電力会社や通信会社でも車所有やリースに代わる選択肢として自動車サブスクを提供できるようにしている。

同社は共同創業者でCEOのHans Kristian Aas(ハンス・クリスティアン・アース)氏、CPOのGunnar Birkenfeldt(ガナー・ビルケンフェルト)氏が率いている。2人は、世界の新車販売の20〜30%が2025年までにサブスクに取って替わられると予想されているトレンドに飛びついた。

アース氏は「すばらしい顧客フィードバック、力強いユニットエコノミクス(1単位に対する経済性)、そして業界における変化の機運により、『スケールボタン』を押すときが来たと確信しました」と話した。

AutoScout24は欧州広域で展開している大手のオンライン自動車マーケットで、imoveのEVサブスクサービスのディストリビューションチャンネルとして機能することになる。

「この投資でAutoScout24は明らかに、消費者と顧客のために新しい所有モデルをサポートするという点で自らを先頭に位置づけ、EV導入支持という点で決定的な一歩を踏み出します」と同社の最高戦略責任者Borja Muller(ボルハ・ミュラー)氏は述べた。

imoveは欧州で迅速に動いているが、自動車サブスクのテクノロジーと車両管理を提供している企業は他にもいくつかある。ここには米国拠点のRidecell、米国拠点でCox Automotiveが所有するClutch、イスラエルのFleetonomy、フランスのVulogなどが含まれる。つまり、この分野はまだまだ参入する余地がある。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:電気自動車サブスクリプション資金調達imove

画像クレジット:Gunnar & Hans Kristian, imove

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

ライブビデオストリーミング会社LiveUの買収をPE大手Carlyleが正式に認める

米国時間7月19日にお伝えした、LiveU(ライブユー)の売却が間近に迫っているというニュースに続き、米国時間7月20日には同社とその買い手であるCarlyle(カーライル)がその取引を正式に認めた。LiveUは世界の約3000の主要メディアに採用されているライブストリーミング・ハードウェアおよびソフトウェアの大手開発会社である。

売り手は、2年前にLiveUを2億ドル(約219億円)で買収したFrancisco Partners(フランシスコ・パートナーズ)で、Carlyleと同じプライベート・エクイティ(PE)企業だ。LiveUとCarlyleは、今回の売却条件を明らかにしていないが、有力な情報筋によれば、4億ドル(約438億円)以上だと伝えられている。Carlyleは、投資資金はCarlyle Europe Technology Partners(カーライルヨーロッパテクノロジーパートナーズ、CETP)IVによって提供されると発表している。同ファンドはヨーロッパと米国のミドルマーケットテクノロジーに焦点を当てて投資を行うファンドだ。LiveUはイスラエルに本社を置いているが、今回の買収はCarlyleにとってイスラエルでの初のハイテク企業買収となる。

LiveUの評価額が2年間で2倍になったのは、現在のメディアの状況を反映したものでもある。特に、動画はコンテンツや情報の消費の中心であり、その存在感は高まる一方だ。このため動画の撮影・送信方法を改善するツールを開発する企業が注目されているのだ。

またパンデミックも動画市場を活性化させた別の要素だ。LiveUは、今回の東京オリンピック大会の数千時間におよぶイベントの録画・配信に使用される予定だ。東京大会では、多くの重要なイベントが無観客で行われるため、これまで以上にライブビデオコンテンツへの依存度が高くなるだろう。

そのことはまた、LiveU自体が成長し、その地位を確固たるものにしていることにも由来している。最近では、同社は英国市場のチャネルパートナーであるGarland Partners(ガーランド・パートナーズ)を買収し、同地域の顧客とより直接的な関係を築き、ビジネスを拡大しようとしている。

同社は、映像を撮影するカメラなどの機器だけでなく、それを送信するためのエンコード機器、そして素材を受け取って利用するハードウェアまでの、垂直統合型の提案を行う。

また、高品質な映像を撮影し伝送するために不可欠なデータ圧縮を行うソフトウェアを開発し、携帯電話や衛星などのさまざまなネットワークを組み合わせて動作させている。

要するにこれは非常に奥行きのあるシステムであり、部分的にも、全面的にも採用することが可能なのだ。そしてこの柔軟性と信頼性により、3000社を超えるメディア企業が顧客として名を連ねており、スポーツイベントや大規模なニュースイベントなどの注目度の高いイベントや、日常的なビデオ報道にも使用されている。

FranciscoはLiveUを資産として比較的早く手放したが、Carlyleはより戦略的な計画を持っているようだ。Carlyleは「メディアテック分野での深い経験を活かして、LiveUの成長への熱望を支援したい」と述べている。同社はすでにDisguise(ディスガイズ)、NEP、The Foundry(ザ・ファウンドリ)、Vubiquity(ビュービクイティ)、BTI Studios(BTIスタジオ)、The Mill(ザ・ミル)などの隣接業務企業に投資している。また、LiveUは、同社が連携プレーを継続するための役割を果たすようだ。

LiveUは声明の中で「Carlyleは、高品質なライブ映像配信の需要が急速に高まっていることを利用しつつ、M&A活動や有機的な成長を通じて、LiveUの市場での地位をさらに強固にすることを目指します」と述べている。同社によれば、5Gが広く普及することでその傾向が加速するという。

LiveUの共同創業者であるCEOのSamuel Wasserman(サミュエル・ワッサーマン)氏は「Carlyleと提携することで、LiveUのグローバルな事業展開とサービスの拡大を図ることが可能になり、大変うれしく思っています。今回の買収は、LiveUにとって重要な節目であり、当社の事業に対する強い信頼を示すものです」と述べている。「Carlyleは、メディアやテクノロジー分野での実績に加え、グローバルなネットワークを活用することで、業界の深い専門知識を提供してくれるでしょう。ここ数年のFrancisco PartnersとIGP Capitalのサポートとパートナーシップに大いに感謝しています」。

CETPのアドバイザリーチームの責任者であるMichael Wand(マイケル・ワンド)氏は「Carlyleは、急速に成長している革新的で破壊的なメディアテクノロジー企業に投資してきた実績を持っています。今回急速に成長している市場の最前線にいるLiveUと提携できることを本当にうれしく思っています」と述べている。「LiveUチームとのパートナーシップにより、新しい分野への進出、ターゲットを絞ったM&A、特にライブコンテンツの需要が急増しているライブスポーツに対する主要メディア放送局との関係強化などを通して、彼らの成長をサポートしていきます。高品質のリアルタイムビデオコンテンツへの移行が進んでいること、他の伝送技術と比較した場合のボンディングセルラー技術(複数の電話回線を束ねて伝送速度を上げる技術)のコスト面での優位性、セミプロやノンプロのスポーツなどのこれまで日の当たらなかった分野にライブ放送を導入する機会などは、LiveUに大きな成長の可能性を提供できると考えています」。

関連記事:PE大手Carlyleがライブ放送・ストリーミング技術のLiveUを438億円超で買収すると関係筋

カテゴリー:ネットサービス
タグ:CarlyleLiveU買収ライブストリーミング動画配信イスラエル

画像クレジット:LiveU

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

ライブビデオストリーミング会社LiveUの買収をPE大手Carlyleが正式に認める

米国時間7月19日にお伝えした、LiveU(ライブユー)の売却が間近に迫っているというニュースに続き、米国時間7月20日には同社とその買い手であるCarlyle(カーライル)がその取引を正式に認めた。LiveUは世界の約3000の主要メディアに採用されているライブストリーミング・ハードウェアおよびソフトウェアの大手開発会社である。

売り手は、2年前にLiveUを2億ドル(約219億円)で買収したFrancisco Partners(フランシスコ・パートナーズ)で、Carlyleと同じプライベート・エクイティ(PE)企業だ。LiveUとCarlyleは、今回の売却条件を明らかにしていないが、有力な情報筋によれば、4億ドル(約438億円)以上だと伝えられている。Carlyleは、投資資金はCarlyle Europe Technology Partners(カーライルヨーロッパテクノロジーパートナーズ、CETP)IVによって提供されると発表している。同ファンドはヨーロッパと米国のミドルマーケットテクノロジーに焦点を当てて投資を行うファンドだ。LiveUはイスラエルに本社を置いているが、今回の買収はCarlyleにとってイスラエルでの初のハイテク企業買収となる。

LiveUの評価額が2年間で2倍になったのは、現在のメディアの状況を反映したものでもある。特に、動画はコンテンツや情報の消費の中心であり、その存在感は高まる一方だ。このため動画の撮影・送信方法を改善するツールを開発する企業が注目されているのだ。

またパンデミックも動画市場を活性化させた別の要素だ。LiveUは、今回の東京オリンピック大会の数千時間におよぶイベントの録画・配信に使用される予定だ。東京大会では、多くの重要なイベントが無観客で行われるため、これまで以上にライブビデオコンテンツへの依存度が高くなるだろう。

そのことはまた、LiveU自体が成長し、その地位を確固たるものにしていることにも由来している。最近では、同社は英国市場のチャネルパートナーであるGarland Partners(ガーランド・パートナーズ)を買収し、同地域の顧客とより直接的な関係を築き、ビジネスを拡大しようとしている。

同社は、映像を撮影するカメラなどの機器だけでなく、それを送信するためのエンコード機器、そして素材を受け取って利用するハードウェアまでの、垂直統合型の提案を行う。

また、高品質な映像を撮影し伝送するために不可欠なデータ圧縮を行うソフトウェアを開発し、携帯電話や衛星などのさまざまなネットワークを組み合わせて動作させている。

要するにこれは非常に奥行きのあるシステムであり、部分的にも、全面的にも採用することが可能なのだ。そしてこの柔軟性と信頼性により、3000社を超えるメディア企業が顧客として名を連ねており、スポーツイベントや大規模なニュースイベントなどの注目度の高いイベントや、日常的なビデオ報道にも使用されている。

FranciscoはLiveUを資産として比較的早く手放したが、Carlyleはより戦略的な計画を持っているようだ。Carlyleは「メディアテック分野での深い経験を活かして、LiveUの成長への熱望を支援したい」と述べている。同社はすでにDisguise(ディスガイズ)、NEP、The Foundry(ザ・ファウンドリ)、Vubiquity(ビュービクイティ)、BTI Studios(BTIスタジオ)、The Mill(ザ・ミル)などの隣接業務企業に投資している。また、LiveUは、同社が連携プレーを継続するための役割を果たすようだ。

LiveUは声明の中で「Carlyleは、高品質なライブ映像配信の需要が急速に高まっていることを利用しつつ、M&A活動や有機的な成長を通じて、LiveUの市場での地位をさらに強固にすることを目指します」と述べている。同社によれば、5Gが広く普及することでその傾向が加速するという。

LiveUの共同創業者であるCEOのSamuel Wasserman(サミュエル・ワッサーマン)氏は「Carlyleと提携することで、LiveUのグローバルな事業展開とサービスの拡大を図ることが可能になり、大変うれしく思っています。今回の買収は、LiveUにとって重要な節目であり、当社の事業に対する強い信頼を示すものです」と述べている。「Carlyleは、メディアやテクノロジー分野での実績に加え、グローバルなネットワークを活用することで、業界の深い専門知識を提供してくれるでしょう。ここ数年のFrancisco PartnersとIGP Capitalのサポートとパートナーシップに大いに感謝しています」。

CETPのアドバイザリーチームの責任者であるMichael Wand(マイケル・ワンド)氏は「Carlyleは、急速に成長している革新的で破壊的なメディアテクノロジー企業に投資してきた実績を持っています。今回急速に成長している市場の最前線にいるLiveUと提携できることを本当にうれしく思っています」と述べている。「LiveUチームとのパートナーシップにより、新しい分野への進出、ターゲットを絞ったM&A、特にライブコンテンツの需要が急増しているライブスポーツに対する主要メディア放送局との関係強化などを通して、彼らの成長をサポートしていきます。高品質のリアルタイムビデオコンテンツへの移行が進んでいること、他の伝送技術と比較した場合のボンディングセルラー技術(複数の電話回線を束ねて伝送速度を上げる技術)のコスト面での優位性、セミプロやノンプロのスポーツなどのこれまで日の当たらなかった分野にライブ放送を導入する機会などは、LiveUに大きな成長の可能性を提供できると考えています」。

関連記事:PE大手Carlyleがライブ放送・ストリーミング技術のLiveUを438億円超で買収すると関係筋

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

ウーバーが食料品宅配サービスを全米400以上の市や町に拡大

Uber(ウーバー)が、米国における同社の食料品配送サービスで初となる大規模な拡大を発表した。同社は米国時間7月19日、サービスエリアを従来の倍以上に拡大し、サンフランシスコ、ニューヨーク、ワシントンDCなどの主要都市を含む全米で400以上の市や町に、UberおよびUber Eatsアプリを通じてサービスを提供すると発表した。

この急速な拡大は、Albertsons Companies(アルバートソンズ・カンパニー)との提携と、同社が全米に展開する1200もの食料品店の存在によるところが大きい。Albertsonsは、Safeway(セーフウェイ)、Jewel-Osco(ジュエル・オスコ)、Acme(アクメ)、Tom Thumb(トム・サム)、Randalls(ランドールズ)などのブランドを所有している。また、Uberは、Southeastern Grocers(サウスイースタン・グローサーズ)やニューヨークのRed Apple Group(レッド・アップル・グループ)などの地域チェーンでも配達を行っている。「Uber Pass(ウーバー・パス)」と「Eats Pass(イーツ・パス)」の加入者は、30ドル(約3300円)以上の食料品の注文であれば配送料を支払う必要はない。

新型コロナウイルス感染拡大の最も厳しい時期には、人々の乗車数が大幅に減少したため、食料品の配達がUberの重要なビジネス要素となった。同社はまた、乗車料金の値上げを招くドライバー不足にも対処を迫られている。Uberはここ2、3年の間に、Cornershop(コーナーショップ)、Postmates(ポストメイツ)、Drizly(ドリズリー)など、デリバリー分野のスタートアップ企業をいくつか買収することで、この分野での成長を促進させている。

編集部注:この記事はEngadgetに掲載されている。

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(文:Kris Holt、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

PE大手Carlyleがライブ放送・ストリーミング技術のLiveUを438億円超で買収すると関係筋

コンテンツに関してはストリーミングが何より肝心になってきている中、世界中のどこからでもライブ配信できる技術を開発している企業の1つが買収されることになった。LiveU(ライブユー)は、ライブ中継やブロードキャスト映像をキャプチャして配信するための衛星 / セルラーハードウェアおよびソフトウェアを提供しており、3000以上の大手メディア企業に採用されているが、プライベートエクイティ投資会社であるCarlyle(カーライル)に4億ドル(約438億円)以上で買収されることになったと、複数の関係筋がTechCrunchに語った。

LiveUはイスラエルに拠点を置いており、取引は地元メディアによって進んでいると報じられていた。TechCrunchの情報筋によると、この買収はクロージングの最終段階に入っており、早ければ米国時間7月19日か20日にも発表される可能性があるとのこと。LiveUの広報担当者はこの記事へのコメントを控えており、Carlyleの広報担当者からはコメントを得られなかった。

注目すべき点は、ここ2年の間にLiveUが買収されるのは2度目だということだ。同社は以前、Francisco Partnersという別のPE企業に2億ドル(約219億円)で買収されている。

25カ月で2倍以上になった評価額の急上昇は、動画コンテンツへの関心が大きく高まっていることが一因だ。

少し前までは、テレビの限られたチャンネルでしかライブビデオを観ることはできなかった。それが今では、ライブやそれに近いもの、あるいはオンデマンドの動画が、あらゆる場所で観られる。オンデマンドやライブストリーミングの映像は、アプリ(放送専用のもの、またはYouTubeやFacebookなど他のコンテンツと一緒に提供されるもの)やウェブサイトで観ることができ、テレビだけでなく、スマホやタブレット、PCでも観ることが可能だ。今日では、人々に情報を提供したり楽しませたりするための主要なメディアとなっており、IPトラフィック全体の80%以上を占めている。

そのため、映像を撮影して配信するプロセスを、より簡単に、より安く、より高い品質で実現する技術を開発している企業が注目されるのは当然のことだ。(LiveUは、テニス選手権からDerek Chauvin〔デレク・ショーヴィン〕被告の裁判まで、多くの注目を集める報道に使用されている)。

もう1つの理由は、LiveUが買収によって規模を拡大したことにあるようだ。2021年初め、LiveUは英国市場のチャネルパートナーであるGarland Partnersを非公開で買収し、同地域の顧客に近づくことに成功した。ある情報筋によると、この統合により、LiveUが買収されるための道筋ができ、その評価も上がったとのことだ。

Carlyleと同時期に他の買い手がいたかどうかは定かでないが、Carlyleは2020年、かなり積極的に買収やグロースステージ投資を行っている。2020年は、新型コロナウイルスのパンデミックとそれにともなう消費者や企業の行動の変化を受けて、資金の動きが激しい年だった。

同社の欧州(特に英国)における他の買収事例としては、英国のハイブリッドワークスタートアップである1eを2億7000万ドル(約295億円)で買収した他、ゲーム会社のJagexを約5億3000万ドル(約580億円)で買収した。また、韓国のMaaSスタートアップであるKakao Mobilityへの2億ドル(約219億円)の出資も行っている。今回のLiveUは、イスラエルでの最初の案件になると思われる。

イスラエルは、こうした活動の大きな恩恵を受けている。テルアビブを拠点とするベテラン投資銀行家でスタートアップアドバイザーでもあるAvihai Michaeli(アビハイ・ミカエリ)氏は、2021年の最初の6カ月間に同国内のスタートアップがまとめて110億ドル(約1兆2039億円)を調達したと見積もっており、それは7月19日の時点ですでに120億ドル(約1兆3133億円)にまで拡大している。PE企業は常連客であり、イスラエルでのエグジットに関しては「内部から改善して、さらに高い価値で売却する」というのが常套手段だという。他の例としては、Francisco Partnersが2021年2月にMyHeritageを約6億ドル(約657億円)で買収している。

さらなる情報が得られれば、この記事を更新する。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Aya Nakazato)

サイトUI/UX改善クラウドのi3DESIGNが2億円調達、次世代ノーコードプラットフォームおよびDX人材採用を加速

サイトUI/UX改善クラウドのi3DESIGNが2億円調達、次世代ノーコードプラットフォームおよびDX人材採用を加速

i3DESIGN(​アイスリーデザイン)は7月20日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額約2億円の資金調達を発表した。引受先はDG Daiwa Ventures、みずほキャピタル。調達した資金は、「開発中の次世代のノーコード開発プラットフォーム(SaaS事業)への投資」「DX支援フレームワーク強化のための投資」「採用の強化」にあてる。

2006年7月設立のi3DESIGNは、渋谷に本社、ウクライナに開発拠点を据えるデジタルサービスの創出支援企業Business×Design×Technologyの連携・融合により、デジタルサービスのデザイン・開発・グロースまでワンストップで提供するという。同社の競争優位性は、エンタープライズ企業が持つ既存ウェブシステムのモダナイゼーション(UI改修、機能改修、SEO対策など)を可能にするUI/UX改善クラウドサービス「flamingo」(フラミンゴ)の知見、UI/UXの知見にあるという。既存システムを活かしつつUI/UXの観点からの改修が可能で、DX推進を行えるとしている。

また「i3DESIGN DX支援フレームワーク」は、自社プロダクトの運用・改善に取り組んできた知見を体系化したもので、エンタープライズ企業からベンチャーまで取引実績は累計200社を超えるそうだ。

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4000社導入のクラウド受付システムRECEPTIONISTが資金調達、VC投資先企業へのサービス提供プランも発表

RECEPTIONIST代表取締役CEO橋本真里子氏(写真左)、グローバル・ブレイン田﨑茉莉花氏(写真右)

RECEPTIONIST代表取締役CEO橋本真里子氏(写真左)、グローバル・ブレイン田﨑茉莉花氏(写真右)

非効率な受付業務をデジタル化するクラウド受付システムなどを展開するRECEPTIONIST(レセプショニスト)は7月19日、グローバル・ブレインからの資金調達実施と、ベンチャーキャピタル(VC)9社と連携して、投資先スタートアップをRECEPTIONISTのサービスで支援する「VC連携 スタートアップ支援プラン」の提供開始を発表した。

元受付嬢として、受付業務の非効率性を熟知する代表取締役CEOの橋本真里子氏は、2016年にRECEPTIONISTを設立し、2017年1月に受付業務をデジタル化するクラウド受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。2021年4月時点には、導入企業4000社となったという。橋本氏は、日程調整や会議室管理も受付業務同様に効率化の必要性を感じていたことから、日程調整ツール「調整アポ」、会議室管理の「RECEPTIONIST for Space」も開発し、展開している。

RECEPTIONISTは受付システム・受付方法において特許(第6429965号)を取得しており、調整アポ、RECEPTIONIST For Spaceと併用することで、「日程調整→会議室予約→来客受付→会議室管理までをワンストップで効率化」できるという。橋本氏はこれを、「人がやらなくて良い仕事はシステムに任せ、社会や人々に余白をつくり、工夫して仕事できるためのコミュニケーションサービス」と位置づけて成長を目指している。金額は非公表ながら、今回調達した資金は、これらサービスの拡大・加速をはかるための採用・開発強化に役立てられる。

同時に発表された「VC連携 スタートアップ支援プラン」は、9社のVCとの連携により、各社の投資先企業にRECEPTIONISTの3つのサービスを6カ月間無料で提供するというプログラム。業務の効率化を支援し、本来の事業に専念してもらうという。参加VCは、ANRI、iSGSインベストメントワークス、ABBALab、グローバル・ブレイン、Salesforce Ventures、大和企業投資、ツネイシキャピタルパートナーズ、Bonds Investment Group、One Capitalとなっている。

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500円・約15分間の収録で自分の声によるAI音声合成を可能にする「CoeFont CLOUD」が先行公開を開始

500円・約15分間の収録で自分の声によるAI音声合成を可能にする「CoeFont CLOUD」が先行公開を開始

東京工業大学2年生で19歳の早川尚吾氏が設立し、社長を務めるAI音声合成スタートアップYellston(エールストン)は7月19日、1回の料金500円で約15分間の収録を行えば、AIが自分の声を音声合成用の声のフォント「CoeFont」(コエフォント)に変換してくれるサービス「CoeFont CLOUD」の先行リリース開始を発表した。

2020年11月設立のYellstonは、「CoeFont Studio」(コエフォントスタジオ)を2021年4月にリリースした。デジタルキャラクターや著名人の声でテキストの読み上げをさせることができるサービスだ。リリースから3日で5万人のユーザー数を獲得、月間ユーザー数は20万人に達したという。凪白みとのイラストで、浅木ゆめみが声を提供しているAllial(アリアル)とMillial(ミリアル)という双子キャラクターの声は無料で試すことができ、すでに二次創作などに多く利用されているそうだ。

CoeFont Cloudは、それを自分の声で行えるというもの。自分の声のフォントを公開できるが、「CoeFont Official」を利用すれば、気象予報士の森田正光、野球解説の藪恵壹などの著名人や声優の声フォントを自分の作品に使うこともできる。公開された声は、利用された場合に文字数に応じて本人に料金が支払われる。

このサービスの特徴は、文脈からアクセントを予測し、深層学習で自然な音声合成を行うところにある。ウェブサービスなので利用環境を選ばず、アクセントや速度の編集などすべてがウェブ上で行える。公開範囲は設定によって限定が可能。テキストを読み上げた音声はダウンロードして、オーディオブックや動画のナレーションなどに利用できる。さらに、APIが提供されるので、アプリに組み込んでコメントを読み上げるなどの活用が可能になる。自分の声が悪用される心配があるが、放送禁止用語や汚い言葉は合成できないように配慮されている。

音声作品の制作のみならず、声帯の切除手術を予定しているガン患者が、事前に自分のCoeFontを作っておき、後にそれを使って会話をするという利用法も、すでに実施されているという。

「CoeFont Cloud」は現在、先行体験期間中。先行利用には「CoeFont CLOUD先行利用申請」での申請が必要で、Yellstonが利用できる人を選考する仕組みになっている。

今後も、より自然に、精度の高い音声合成を目指して、これからも研究を重ねてゆくとのことだ。

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ウェブサイト変更モニタリングの誤アラートを80%減らすVisualpingが約6.6億円を追加調達

ウェブサイト上の値下げなどの更新や変更を監視できるサービス「Visualping(ビジュアルピング)」は、2021年初めに発表した200万ドル(約2億2000万円)のシードラウンドに加え、600万ドル(約6億6000万円)のエクステンションを調達したと発表した。今回のラウンドは、シアトルを拠点とするFUSEがリードした。FUSEは、2020年にIgnition Partnersからスピンアウトした比較的新しい投資家を擁するVCだ。先行投資家のMistral Venture PartnersN49Pも参加した。

関連記事:ウェブの変更をスキャンするVisualpingが2.2億円を調達、ワクチン接種状況なども検出可能

バンクーバーを拠点とする同社は、現在カナダで行われているGoogle for Startups Acceleratorクラスの一員だ。このプログラムは、AIや機械学習を活用したサービスに焦点を当てている。ウェブサイトのモニタリングは機械学習が大きな価値をもたらす明白な分野には見えないかもしれないが、これらのサービスを利用したことがあれば、多くの誤アラートが発生する可能性があることをご存知だろう。これらのツールはほとんどの場合、ウェブサイトの基本的なコード内の何かが変更されたことを探し、それに基づいて(そして時には、あなたが設定した他のパラメータに基づいて)警告を発するだけだ。

画像クレジット:Visualping

先にVisualpingは、まさにそれを回避するための初の機械学習(ML)ベースのツールを発表した。同社は、150万人以上のユーザーからのフィードバックと新しいMLアルゴリズムを組み合わせることで、最大80%の誤アラートを排除できるとしている。これによりVisualpingは、ユーザーが新しいアラートを設定する際に、サイトをどのように監視するかの最適な構成を学習できるようになった。

「Visualpingは、世界中で100万人以上のユーザーと、フォーチュン500社の大多数の人々の心を掴んでいます。彼らの旅の一部となり、このラウンドの資金調達をリードすることは夢のようです」とFUSEのBrendan Wales(ブレンダン・ウェールズ)氏は語った。

Visualpingの創業者兼CEOであるSerge Salager(セルジュ・サラガー)氏によると、同社は今回の資金調達を、製品の開発だけでなく、商用チームの構築にも充てる予定だという。これまでのところ、同社は主に製品主導で成長してきたと同氏は語った。

同社はその一環として、これらの新しいMLツールに対応し、コラボレーション機能を追加した「Visualping Business」と、コンサートのチケットの空き状況などを監視したり、ニュースや値下げ、求人情報などを把握したい個人ユーザー向けの「Visualping Personal」の発売を予定している。今のところ、パーソナルプランにはMLのサポートは含まれない。「誤アラートは、個人利用では2〜3のウェブサイトをチェックするので大きな問題にはなりませんが、企業ではチームが1日に何百ものアラートを処理しなければならないので大きな問題になります」とサラガー氏は話してくれた。

現在のところ、これらの新プランは、iOSおよびAndroid用のモバイルアプリとともに、2021年11月にリリースされる予定だ。また、同時期にブラウザ拡張機能もリニューアルする。

また、Visualpingはウェブベースのサービスを収益化しているが、ブラウザ拡張機能はまだ無料で使用できることも言及するに値する。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

印Reliance Retailがローカル検索Just Dialの支配的な持ち分を約516億円で取得

Reliance Retail(リライアンス・リテール)は現地時間7月16日、25年の歴史を持つインドのサーチ・ディスカバリー企業であるJust Dial(ジャストダイヤル)の支配的な持ち分を4億6900万ドル(約516億円)で取得したと発表した。

市場をリードするインドの大手小売企業は、上場企業であるJust Dialの41%の株式を4億6900万ドル(約516億円)で取得したこと、後に追加で26%の株式を取得するためのオープンオファーを行うことを発表した。両社は共同プレスリリースで、Just Dialの創業者で最高経営責任者のVSS Mani(VSSマニ)氏が引き続き同社でリーダーシップを発揮すると発表している。

Just Dialは、ウェブサイト、モバイルアプリ、電話回線を通じて、ローカル検索とeコマースサービスを提供している。インドのユーザーは、「8888888888」をダイヤルするだけで、地元の配管工やホテルの詳細、ハウスキーピングサービスなどについて照会することができる。

創業10年になる同社は上場前にTiger Global、Elevation Capital、Sequoia Capital India、Sapphire Ventures、Nalanda Capitalから約1億200万ドル(約112億円)の資金を調達した。同社は膨大なデータベースを構築しており、その検索結果は、Google(グーグル)などの検索エンジンの上位に表示されるほど有用で適切な情報を提供している。

ユーザーは無料で利用できる。Just Dialは企業や個人のサービスプロバイダーに掲載料を請求する。

Just Dialのウェブサイトのスクリーンショット

「約25年前、私たちは、ユーザーに迅速かつ無料で信頼性の高い包括的な情報を提供し、買い手と売り手を結びつけることに特化した、つながりのある単一のプラットフォームを構築するというビジョンを持っていました」とマニ氏は話した。

「私たちのビジョンは、サーチやディスカバリーを提供するだけでなく、B2Bプラットフォームを通じて商人間の取引を促進し、さらにプラットフォームエンゲージメントによって消費者と商人との間の商取引を可能にすることへと発展しました。Relianceとの戦略的提携により、このビジョンを実現し、今後のビジネスを変革することができます」と語った。

Just Dialの買収は、Reliance Industriesグループが直近四半期に実行した数多くの買収の1つだ。グループには、子会社として通信大手のJio PlatformsやReliance Retailが含まれ、2社は2020年、Facebook(フェイスブック)やGoogleなどの著名な投資家から合計で270億ドル(約2兆9700億円)以上を調達した。

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Relianceは8月、医薬品マーケットプレイスのNetmedsの親会社であるVitalicの株式の60%を約8320万ドル(約92億円)で取得した。また、11月にはオンライン家具のUrban Ladderを2440万ドル(約27億円)で買収した。

加えてReliance Retailは2020年、Future Groupと34億ドル(約3580億円)の契約を締結し、インド第2位の小売チェーンの事業をいくつか買収した。この取引はまだ成立しておらず、米国のeコマース大手Amazon(アマゾン)との訴訟の中心となっている

Reliance RetailのディレクターであるIsha Ambani(イシャ・アンバニ)氏は声明で「Relianceは、ビジネスの洞察力と忍耐力によって強力なビジネスを作り上げたJust Dialと第1世代の起業家であるVSSマニ氏と提携することに興奮しています」と述べた。

「Just Dialへの投資は、当社のパートナーである何百万もの加盟店や零細・中小企業のデジタル・エコシステムをさらに強化し、ニューコマースに対する当社のコミットメントを明確にするものです。今後の事業拡大に向けて、Just Dialの経験豊富な経営陣と協力していくことを楽しみにしています」。

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画像クレジット:Sanjit Das / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

TumblrやWordPressの保有会社が人気の高いポッドキャストPocket Castsを買収

筆者: Kris Holt

Kris HoltはEngadgetからの寄稿ライター。彼の最近の提供記事は: WhatsAppで「最高品質」を指定して写真や動画を送信可能に

Pocket Castsのホームがもうすぐ新しくなる。TumblrやWordPress.comの親会社であるAutomatticが、NPRBBC Studiosのいる公共ラジオグループの集団から、このポッドキャストアプリを買収している。Automatticは、Pocket Castsのためにいくら払うか、公表しなかった。

共同創業者のRussell Ivanovic氏とPhilip Simpson氏はPocket Castsのチームに残る。Automatticはすでに、このマルチプラットホームアプリを同社のブログツールに組み入れる方法を考えているようだ。

WordPress.comのブログ記事はこう言っている: 「Pocket CastsはAutomatticの一部として、あなたのお気に入りのポッドキャストをエンジョイし、あるいは新しい何かを見つけるために必要な機能の提供を続ける。WordPress.comとPocket Castsの深い統合を作ることを今後は探求し、ポッドキャストを配布したり聴いたりすることを、もっと容易にしていきたい」。

ブログもポッドキャストもRSSフィードを使って配布をしているから、両プラットホームの統合は合理的だ。今年初めには、Spotifyが所有するAnchorがWordPress.comとチームを組み、テキストを音声に変換する技術を使って書かれた素材をポッドキャストに換えた。そのパートナーシップにPocket Castsの買収がどう絡むのか、じっくり見ていきたい。

編集者注記: このポストは最初、Engadgetに載った。

(文:Kris Holt、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Pocket Casts

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1兆円超規模の米国防総省JEDIクラウド契約を最終的に破綻させたのは単一ベンダー要件

米国防総省がJEDIのクラウドプログラムを中止したことで、見込みがないように思われていたプロジェクトの長く険しい道のりが終わりを告げた。問題は、結局うまくいかなかったのはなぜかということだ。最終的には、国防総省が単一ベンダー要件に固執していることがその原因として指摘できると思う。その条件は、誰にとっても意味をなさないものであり、表面上は契約を勝ち取ったベンダーでさえもそうである。

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国防総省は2018年3月、次世代のクラウドインフラストラクチャを構築するための100億ドル(約1兆1000億円)規模の10年にわたるクラウド契約発表した。別名「Joint Enterprise Defense Infrastructure」、略称は「JEDI(ジェダイ)」である。スター・ウォーズを思わせる呼称はさておいておこう。

このアイデアは、単一ベンダーとの10年間の契約で、2年間のオプションで開始するものだった。すべてが順調に進めば、5年のオプションが行使され、最終的に3年のオプションで契約はクローズする。年間利益は10億ドル(約1100億円)が見込まれていた。

契約が完了した時点での総額はかなり大きいが、AmazonやOracle、Microsoftのような規模の企業にとって、年間10億ドルは大した金額ではない。その意義は、このような知名度の高い契約を獲得したことの威信と、それが販売を誇示する権利にどのような意味をもたらすかということにあった。つまるところ、国防総省の審査に合格すれば、おそらくほぼあらゆる人の機密データを扱えることになるだろうということだ。

いずれにせよ、単一ベンダー契約のアイデアは、クラウドがクラス最高のベンダーたちと協働するオプションを与えてくれるという一般通念に反するものだった。この不運な契約の最終的な勝者であるMicrosoftは、2018年4月のインタビューで、単一ベンダーのアプローチには欠陥があることを認めている。

Microsoftの防衛事業を統括するLeigh Madden(リー・マデン)氏は、Microsoftがそうした契約を勝ち取ることができると確信しているが、それは必ずしも国防総省にとって最善のアプローチではないとTechCrunchに対して語っていた。「国防総省が単一ベンダーだけを採用する道を行くのなら、私たちは勝つために参加します。しかしそうは言いいながらも、それは私たちが世界で見ているような、80%のお客様がマルチクラウドソリューションを採用している動きとは、対照的なものなのです」。

おそらくそうした要因により、最初から絶望的だったのだろう。その上、要件が完全に明らかになる前から、クラウドインフラストラクチャ市場シェアをリードするAmazonを優遇しているという不満の声が上がっていた。Oracleは特に声高に主張しており、RFPが公表される前から、前大統領に直接訴えていた。同社はその後、米政府説明責任局(Government Accountability Office)に苦情を申し立て、このプロセス全体が不公正で、Amazonに有利になるように設計されていたとして複数の訴訟を起こした。しかし、彼らの苦情はその都度却下された。そしてご存知の通り、結局はAmazonが勝者とはならなかった。

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その過程において多くのドラマが展開される中、2019年4月に国防総省はファイナリストとして2社を指名した。そしておそらく、その2社がクラウドインフラストラクチャ市場のリーダーであるMicrosoftとAmazonであったことはそれほど驚くことではなかっただろう。ゲームが開始された。

前大統領の直接の介入もあった。同年の8月に、前大統領は国防長官に対し、本プロセスがAmazonに有利であるとの懸念を挙げて、事案を再検討するよう命じた。これに対しては、国防総省、会計検査院、裁判所から数度にわたって反論がなされている。また、元国防長官Jim Mattis(ジム・マティス)氏は自身の著書で、同氏が前大統領から「100億ドルの契約からAmazonを締め出せ」と命じられたことを明らかにしており、問題をさらに複雑にしている。前大統領の目的は、ワシントンポスト紙のオーナーでもあるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏に仕返しすることにあるように思われた。

プロセスにおけるAmazonの優位性についてのこうした主張をよそに、2019年10月の金曜日の午後遅くに勝者が発表され、勝利を得たのは実際にはAmazonではなかった。その代わり、Microsoftが契約を勝ち取った。あるいは少なくともそのように思われた。そしてAmazonが法廷でこの決定に異議を唱えるのもそう遠くないだろうと見られていた。

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AWSの前CEOのAndy Jassy(アンディ・ジャシー)氏は、AWSのre:Inventの発表から数カ月後には、大統領がこのプロセスに不当な影響を与えたという考えを表明していた。

「政治的な干渉を受ける事態に陥ってしまったようです。ある会社に対する軽蔑を公にしている現職の大統領と、その会社のリーダーがいる状況では、国防総省を含む政府機関が報復を恐れずに客観的な決定を下すことが非常に難しくなるでしょう」とジャシー氏は当時語っている。

そして訴訟が起こされた。同社は2019年11月に、技術的なメリットではなく政治的な動機によるものだとして、Microsoftを選択する決定に不服を申し立てる意向を示した。そして2020年1月、Amazonは訴訟が解決するまでプロジェクトを停止するよう裁判所に要請した。翌2月、連邦判事はAmazonの主張に同意し、プロジェクトの停止を命じた。プロジェクトが再始動することはないだろうと思われた。

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国防総省は同年4月に、契約調達プロセスに関する内部調査を完了し、不正行為は確認されなかったと結論付けた。当時筆者は次のように書いている。

100億ドルの長期にわたるJEDI契約は当初から論争の的になっていた。国防総省の監察総監室による本日付の報告書には、若干の落ち着かない状況や潜在的な確執がありながらも、全体的な契約調達プロセスは公正かつ合法的なものであり、パブリックコメントが行われたものの、大統領の言動はプロセスに不当な影響を与えなかったと記されている。

2020年9月、国防総省は選定プロセスのレビューを終え、Microsoftが勝者であると再び結論付けたが、訴訟はまだ進行中であり、プロジェクトは停滞したままであったため、それほど重要な意味を持たなかった。

関連記事:米国防総省はMSがJEDIクラウド契約を獲得したことを再確認したがアマゾンとの戦いは終わらない

法的な論争は2021年に入っても続いていた。そして国防総省は先日、「2018年にJEDIのビジョンを発表して以降、状況は変化しており、先に進む時期に来ている」と述べ、ついにこのプロジェクトを白紙に戻した。

国防総省は最終的に、単一ベンダーアプローチは最善の方法ではないという結論に達した。プロジェクトを軌道に乗せることができなかったからではなく、複数のベンダーと協力し、特定のベンダーに縛られない方が、技術的にもビジネス的にも理にかなっているからだ。

国防総省の最高情報責任者を務めるJohn Sherman(ジョン・シャーマン)氏は声明で次のように述べている。「JEDIが計画されたのは、当省のニーズが今とは異なり、CSP(クラウドサービスプロバイダー)の技術と我々のクラウドとの間の知識交流が成熟していなかった時代です。JADC2(Joint All Domain Command and Control、コネクテッドセンサーのネットワーク構築に関するイニチアチブ)やADA(AI and Data Acceleration)などの我々の新しいイニシアチブ、国防総省内のクラウドエコシステムの発展、複数のクラウド環境を活用してミッションを実行するためのユーザー要件の変化などを考慮すると、我々を取り巻く環境は進化しており、従来型と非従来型の戦闘ドメインで優位に立つための新たな道すじが保証されています」。

言い換えれば、国防総省は、世界の他のほとんどの地域と同様に、マルチクラウド、マルチベンダーアプローチを採用することで、より多くの恩恵を受けられるということだ。とはいえ、国防総省はベンダーの選択をMicrosoftとAmazonに限定することも示唆した。

同省は声明で次のように述べている。「当省は、Microsoft Corporation(Microsoft)やAmazon Web Services(AWS)を含む限定された数の業者からの提案を求める意向です。市場調査によると、これら2つのベンダーが当省の要件を満たすことができる唯一のクラウドサービスプロバイダー(CSP)であることが示されています」。

これはGoogleやOracle、IBMには受け入れ難いことかもしれない。ただし同省は、将来的に他のCSPがそれらの要件を処理する能力を持っているかどうかを確認するために、市場を監視し続けるとしている。

最終的に、単一ベンダー要件に大きく左右されたことで、競争が過熱し、政治的に緊張した雰囲気が生まれ、プロジェクトが実現しない結果となった。国防総省はこの先、技術のキャッチアップに取り組む必要がある。JEDIの調達プロセス全体に関わる芝居じみた所行に3年の歳月が費やされたが、それはこの長きにわたる、不穏当な様相も呈する技術の物語において、最も嘆かわしい側面と言えるかもしれない。

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(文:Ron Miller、翻訳:Dragonfly)

デジタル・レンディング・プラットフォームのBlendの新規公開での評価額は約4400億円超

住宅ローンはセクシーではないと思われがちだが、ビッグビジネスだ。

最近、デジタルで住宅の借り換えや購入をした人は、その背後でソフトウェアを動かしている会社に気づかなかったかもしれない。だが、その会社がBlend(ブレンド)である可能性は十分にある。

2012年創業のBlendは、住宅ローンテクノロジー業界のリーダーとして着実に成長してきた。Blend社のホワイトレーベルテクノロジーは、Wells FargoやU.S. Bankなどの銀行のサイトで住宅ローンの申請をサポートしている。その目的は、プロセスをより速く、シンプルにし、透明性を高めることにある。

サンフランシスコを拠点とするBlend社のSaaS(Software-as-a-Service)プラットフォームは、昨年7月には1日あたり約30億ドル(約3300億円)だった住宅ローンや消費者ローンの取り扱い額が、現在では50億ドル(約5500億円)以上に達している。

Blendは米国7月16日、ニューヨーク証券取引所に上場企業としてデビューした。「BLND」というシンボルで取引される。米国東部時間の午後早い時間に、株価は13%以上上昇し、20.36ドル(約2240円)で取引されている。

7月15日夜、同社は1株あたり18ドル(約1980円)の価格で2000万株を市場に出すと述べていた。これは同社が36億ドル(約3960億円)のバリエーションを目標としていたことを示している。

1月に行われた前回の資金調達時のバリエーションは33億ドル(約3630億円)だった。それは3億ドル(約330億円)のシリーズGラウンドで、CoatueやTiger Global Managementが参加した。また、Blendがユニコーンになったのは、昨年8月に7500万ドル(約82億5000万円)を調達したシリーズFからであることも忘れてはならない。同社は、7月16日の上場までに6億6500万ドル(約732億円)を調達した。

Blendは、6月21日に提出したS-1で、収益が2019年の5070万ドル(約55億7700万円)から2020年には9600万ドル(105億6000万円)に増加したことを明らかにした。一方、純損失は、2019年の8150万ドル(約89億6500万円)から2020年には7460万ドル(約82億600万円)に縮小した。

サンフランシスコを拠点とする同社は2020年、そのデジタル消費者金融プラットフォームを大幅に拡大した。拡大に伴い、貸し手である顧客に新しい機能を提供し始め、あらゆる消費者向け銀行商品を「数カ月ではなく数日で」立ち上げることができるようになった。

今後の見通しとして、同社は収益成長率が「将来的に低下する」と予想している。また、しばらく成長に重点を置くために、すぐに黒字化を達成することは想定していない。また、開示資料によると、2020年には上位5社の顧客が収益の34%を占める。

TechCrunchは先日、共同創業者でCEOのNima Ghamsari(ニマ・ガムサリ)氏に、ユビキタスなSPACや、まして直接上場でもなく、伝統的なIPOに踏み切った同社の決断について話を聞いた。

ガムサリ氏は、同社が「長く続く企業」であることを顧客に示すために、成長を続けるための十分な資金をバランスシートに残しておきたいと考えていた。

「世界最大級の投資家の方々に当社への投資を納得していただかなければなりませんでした。それは、当社がどれだけ長くお客様にサービスを提供できるかを説明するということでした」と同氏は語った。「つまり、最も規制の厳しい業界の1つであるこの業界で、本当に信頼できるソフトウェア・プロバイダーとしての地位を確立したいという思いと、当社の資金需要が結びついたのです」

Blendは住宅ローンのプロセスを支援するソフトウェア会社であり、住宅ローンを提供する会社ではない、とガムサリ氏は強調する。そのため、住宅ローンを提供するフィンテックの一群と連携している。

「多くのフィンテック企業が、インフラとしてBlendを利用しています」とガムサリ氏は言う。

同氏は全体としてこれはBlendにとって始まりに過ぎないと考えている。

「金融サービスの特徴の1つは、いまだにそのほとんどが紙で行われていることです。だからこそ、Blendの成長の大部分は、数年前に始めたこのプロセスをさらに深めていくことなのです」と語る。前述の通り、Blendは住宅ローン商品からスタートしたが、その後も商品を増やし続けている。現在では、自動車ローン、個人ローン、ホームエクイティローンなど、他のローンにも対応している。

「当社の成長の多くは、他のビジネスラインによって支えられています」とガムサリ氏はTechCrunchに話した。「金融業界ではデジタル化の流れがまだ始まったばかりで、開発すべきものがたくさんあります。この業界は比較的規模が大きく、変化に富んでいます」

5月には、デジタル住宅ローンの貸し手であるBetter.comがSPACと合併し、2021年後半に株式公開すると発表した。

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

YouTubeの動画レコメンドAIは依然として悪行を重ねていることが大規模調査で判明

YouTubeの動画推薦アルゴリズムは長年、さまざまな社会悪を煽ってきたとして非難されてきた。YouTubeには、AIで増幅されたヘイトスピーチ、過激な政治思想、そして同社の広告インベントリに数十億人の目を釘付けにして荒稼ぎするための策略やデマの類があふれている。

YouTubeの親会社であるGoogle(グーグル)は、YouTubeのアルゴリズムが反社会的な動画を推薦していることをめぐって、ひどくなる一方の非難に対して時折対応策を講じているものの(いくつかのポリシー変更憎しみに満ちたアカウトの制限や削除など)、ひどく不健全なクリックベイトを表示するYouTubeの傾向がどの程度復活しているのかは不明だ。

だが、そうした傾向が復活している疑いは限りなく強い。

Mozilla(モジラ)によって公開された新しい調査も同じ考えを支持している。YouTubeのAIによって「他人の不幸を利用して利益を得る」、低級で、争いの種になる、偽情報の動画コンテツが増え続けている。人々の怒りに火をつけ、分裂や分断を縫い合わせ、根拠のない有害な偽情報を拡散するといった行為によって人の目を引く類の動画だ。これらは、悪質な動画を推薦するYouTubeの問題が同社の体質的なものであることを暗示している。つまり、動画の再生回数を増やして広告の表示回数を稼ぐ同社の強欲さの副作用だ。

YouTubeのAIは依然としてひどい行為をしているというモジラの調査結果は、グーグルが少なくとも表面的には改善を行っていると主張することでうまく批判を和らげていることを示唆している。

このようにYouTubeの戦略が曲がりなりにも成功しているのは、推薦エンジンのアルゴリズムの仕組み(と関連付けられたデータ)を世間の目と外部の監視から隠す主要な保護メカニズムが「経営上の機密事項」という都合の良い隠れ蓑によって機能しているためと思われる。

しかし、このYouTube独自のAIブラックボックスをこじ開ける可能性のある規制が、少なくとも欧州では、採択されそうだ。

YouTubeのアルゴリズムを修正するために、モジラは「常識的な透明性を規定した法律、監視の強化、消費者による圧力」を求めており、YouTube AIの過剰機能による最悪の事態を抑制するために、AIシステムに透明性を強制的に導入し、独立した研究者を保護してアルゴリズムによる影響を調査できるようにし、堅牢な制御権(「パーソナライズ」された推薦をオフにする権利など)をYouTubeのユーザーに付与するといったさまざまな法律の組み合わせが必要になることを示唆している。

YouTubeユーザーが観たことを後悔する残念な動画

YouTubeユーザーに対して行われている具体的な推薦に関するデータ(グーグルはこのデータを外部の研究者に対して定期的に公開していない)を収集するため、モジラはクラウドソーシングによるアプローチを採用した。具体的には、ブラウザーの拡張機能(RegretsReporter)を使用して、ユーザーが視聴したことを後悔しているYouTube動画を自己報告できるようにした。

このツールを使用すると、ユーザーに対して推薦された動画(以前再生された動画も含む)の詳細情報を含むレポートを生成して、YouTubeの推薦システムがどの程度機能している(場合によっては「機能していない」)のかを示す実態を構築できる。

クラウドソースで自主的に回答した(モジラの調査にデータが使用された)ユーザーたちは、感染拡大する新型コロナウイルスの恐怖を利用した動画、政治的なデマ「極めて不適切な」子ども向け漫画など、さまざまな「残念な動画」を報告している。レポートによると、最も頻繁に報告されたコンテンツカテゴリーとして、デマ、暴力 / グラフィックコンテンツ、ヘイトスピーチ、スパム / スキャムなどがある。

残念動画のレポートの圧倒的多数(71%)がYouTubeのアルゴリズムによって推薦された動画に対するものだった。これは、YouTubeのAIがユーザーにゴミのような動画を押し付けるのに大きな役割を果たしていることを明確に示している。

また、この調査によって、推薦された動画のほうが調査回答者が自分で探した動画よりも報告される可能性が40%以上高かったことも判明した。

モジラによると、動画推薦アルゴリズムが、YouTube自身のコミュニティガイドラインに違反しているコンテンツまたは以前視聴された動画と関係のないコンテンツをユーザーに提示しているケースがかなり多数見つかったという。つまり、明らかに推薦に失敗したケースだ。

今回の調査結果で特筆すべき点は、視聴して後悔する残念なコンテンツは、非英語圏国のYouTubeユーザーにとって、より大きな問題となるらしいという点だ。モジラによると、YouTube動画を視聴して後悔する確率は英語が一次言語ではない国のほうが60%高かったという。具体的には、ブラジル、ドイツ、フランスではYouTubeの動画視聴で後悔するレベルが「とりわけ高かった」(この3か国は国際市場として決して小規模ではない)。

レポートによると、パンデミック関連の残念な動画もやはり、非英語圏国でより広く見受けられた。これは、世界中で健康危機が継続している今大いに懸念される点だ。

今回のクラウドソーシングによる調査(モジラによるとYouTubeの推薦アルゴリズムに関する調査では最大規模)は、前述の拡張機能をインストールした3万7000人を超えるYouTubeユーザーのデータに基づいているが、このうち実際に動画を報告したのは91カ国、1162人の回答者で、彼らが指摘した3362本の視聴して後悔した動画に基づいてレポートが作成された。

これらのレポートは2020年7月から2021年5月の間に生成された。

モジラのいうYouTubeの「残念な動画」とは実際のところ何を意味するのだろうか。モジラによると、これは、YouTube動画を視聴したときの悪い体験のユーザによる自己報告に基づくクラウドソーシング型概念だという。しかし、モジラによると、この「人力」方式のアプローチでは、インターネットユーザーの実際の経験に重点を置いているため、社会的に主流ではない、あるいは弱い立場の人たちやコミュニティの声をすくい上げるのに効果的だ(狭義の法的な意味での「有害」という言葉を当てはめて終わるのとは対照的だ)。

モジラのアドボカシー担当上級マネージャーで、今回のプロジェクトの主任研究者であるBrandi Geurkink(ブランディ・ゲルキンク)氏は、今回の調査の目的について次のように説明してくれた。「我々は、YouTube動画視聴の泥沼にはまり込んでしまう人々の体験を掘り下げて調査し、よく言われる不快な体験を率直に確認して、そこに埋もれている傾向を把握したかったのです」。

「この調査を実施して、我々が予想していたことの一部が事実であることが確認されたことは本当にショックでした。調査対象人数も少なく使用した方法にも制限のある調査ですが、それでも結果は極めてシンプルでした。データは我々が考えていたことの一部が確認されたことを示していたのです」。

「例えばコンテンツを推薦するアルゴリズムというのは基本的に誤りを犯すものという事実が確認されました。推薦した後で、『おっと、これは当社のポリシーに違反しているじゃないか。これをユーザーに積極的に推薦すべきではなかったな』という具合に。非英語圏のユーザーベースではもっとひどい体験をしているということもあります。こうしたことは事例としてはよく議論されるのを聞きますし、活動家はこれらの問題を取り上げています。しかし、私が今回の調査結果で感じたのは『すごい!データにはっきりと現れているじゃないか』ということです」。

モジラによると、今回のクラウドソーシングによる調査で、ヘイトスピーチや政治的 / 科学的なデマなど、YouTubeのコミュニティガイドラインに違反する可能性が高い、あるいは実際に違反する膨大な数のコンテンツ例が報告され明らかになったという。

またレポートでは、YouTubeが「ボーダーライン上のコンテンツ」とみなす可能性のある多くの動画が指摘されていたという。つまり、分類するのは難しいが、おそらく許容範囲を逸脱していると思われる低質の動画、アルゴリズムによるモデレーションシステムでは対応するのが難しい動画だ(こうしたコンテンツは削除のリスクを逃れ長期に渡って掲載されたままになる可能性がある)。

これに関連してレポートで指摘されているのは、YouTubeは(ガイドラインの中で説明はしているものの)ボーダーライン上のコンテンツの定義を提供していないという問題だ。このため、多くの回答者が「残念」として報告している動画の大半はYouTubeのいうボーダーライン上のコンテンツというカテゴリーに含まれるのだろうという研究者の仮説を検証する手立てがない、とモジラはいう。

グーグルのテクノロジーとプロセスの社会的影響を独自に研究するのを困難にしているのは、研究の基盤となるテーマに掴みどころがない点だ。ただし、モジラのレポートによると、YouTubeへの批判に対するグーグルの対応は「無気力で不透明」だとして非難されてもいる。

問題は、それだけに留まらない。批評家たちは、YouTubeの親会社であるグーグルが、憎しみに満ちた怒りや有害なデマによって生まれるエンゲージメントから利益を得ていることを長い間非難してきた。グーグルが、ユーザー生成コンテンツという名目の下で低質コンテンツビジネスを擁護している間にも、AIによって生成された憎しみの泡によってさらに有害な(それだけに見るものを強力に惹きつける)コンテンツが出現し、疑うことを知らない無防備なYouTube視聴者はますます不快で過激なコンテンツに曝されることになる。

実際「YouTube動画の泥沼にはまる」という表現は、無防備なインターネットユーザーが暗く不快なウエブの片隅に引きずり込まれるプロセスを説明する常套文句となっている。このユーザーの思考回路の修正(洗脳)はAIによって生成された推薦によって白昼公然と行われており、YouTubeという主流ウエブプラットフォームから陰謀論のパンくずリストをたどるよう人々に叫んでいるのである。

2017年、オンラインテロとソーシャルメディアでのISISコンテンツの拡散について懸念が高まっていた頃、欧州の政治家たちはYouTubeのアルゴリズムを自動過激化と称して非難していた。

とはいえ、個々のYouTubeユーザーが過激なコンテンツや陰謀論動画を再生した後「過激化」されているという事例レポートを裏付ける信頼できるデータを取得するのは依然として難しい。

YouTubeの前社員Guillaume Chaslot(ギヨーム・チャスロット)氏は、algotransparencyプロジェクトによって、これまでYouTubeの独自テクノロジーを詳細な調査から保護してきた障害を排除する取り組みを続けてきた著名な批評家の1人だ。

モジラのクラウドソーシングによる調査は、チャスロット氏の取り組みを基礎として、ユーザー自身の不快な体験の各レポートを照合して、いろいろと問題の多いYouTube AIの全体像を浮かび上がらせようとしたものだ。

もちろん、グーグルのみが(詳細度と量の両面において)全体を保持しているプラットフォームレベルのデータを外部からサンプリングするだけで全体像は得られない。それに、自己報告では、モジラのデータセットにバイアスが導入される可能性もある。しかし、モジラはプラットフォームのパワーの適切な監視を支持する立場をとっているため、テック大手のブラックボックスを効果的に研究するという問題は、今回の調査にともなう重要なポイントだ。

レポートでは、一連の推奨事項として「堅牢な透明性、精密な調査、ユーザーに推薦アルゴリズムのコントロール権を付与すること」を求め、適正な監視なしでは、精神的損害を与え人を脳死状態にするコンテンツに、何も考えずにユーザーを晒すことで、YouTubeは今後も有害であり続けると主張している。

YouTubeの大半の機能において問題となっている透明性の欠如は、レポートのその他の詳細部分からも見て取れる。例えばモジラは推薦された残念な動画のうち約9%(200本近い動画)が削除されていることを確認した。削除の理由はさまざまだが、いつも明確な理由があるわけではない(コンテンツが報告され、おそらくYouTubeが同社のガイドラインに違反していると判断した後に削除されたものもある)。

合計すると、こうした一部の動画だけで、何らかの理由で削除される前の合計再生回数は1億6000万回にもなる。

また、残念な動画ほどYouTubeプラットフォーム上で高い収益を上げる傾向があることも今回の調査で判明した。

狂っているとしか思えない数字だが、報告された残念な動画は、回答者が視聴した他の動画よりも、1日あたりの再生回数が70%も多い。この事実は、YouTubeのエンゲージメント最適化アルゴリズムが、単にクリック回数を稼げるという理由だけで、(よく考えられた、有益な情報をもたらす)高品質の動画よりも扇動的な、あるいは誤解を与えるコンテンツのほうを偏って選択するという主張に説得力を与える。

これはグーグルのビジネスにはすばらしいことかもしれない。しかし、民主社会では、ばかげた情報よりも本物の情報に、人工的な / 増幅されたコンピュータ上のデータよりも正真正銘の公開された議論に、争いの種となる部族主義よりも建設的な市民の団結に価値を見出す。そのような民主社会にとって、YouTubeのアルゴリズムは明らかにマイナスだ。

しかし、広告プラットフォームに対する法的な強制力のある透明性要件がないかぎり、そして何より、監査当局による規制の監視と実施がなければ、今後もこうしたテック大手に、無防備なユーザーに目をつけ、社会的犠牲と引き換えに収益を上げる動機を与え続けることになる。

モジラのレポートでは、YouTubeのアルゴリズムが明らかに、コンテンツ自体とは無関係のロジックによって動いている実例も強調している。回答者が残念な動画を報告する前に視聴した動画についてのデータを研究者が持っているケースのうち、実に43.6%で、以前視聴した動画とまったく無関係の動画が推薦されているという結果が得られた。

レポートでは、このような理屈に合わないAIによる推薦コンテンツの急転換の実例を上げている。例えば米国軍の動画を見た人が、その直後に「口コミ動画でフェミニストを侮辱する男性」というタイトルの女性蔑視動画を推薦された例などだ。

ソフトウェア所有権に関する動画を見た後、銃所有権に関する動画を推薦された例もある。2つの権利(right)によって、YouTubeの推薦間違い(wrong)がまた増えたわけだ。

さらには、Art Garfunkelのミュージック動画を見た後「トランプのディベート司会者が民主党と深いつながりがあることが判明、メディアの偏向が限界点に」というタイトルの政治関連動画を推薦された例もある。

こうした間抜けな推薦に対しては「何だって?!」と反応するしかない。

こうした事例のYouTubeの出力は、控えめにいっても「AIの屁のようなもの」としか思えない。

寛大に解釈すれば、アルゴリズムが混乱して間抜けな推薦をしてしまったということなのかもしれない。とはいえ、レポートでは、こうした混乱によって、YouTubeユーザーが、右寄りの政治的偏向のあるコンテンツを見るよう仕向けられている多くの例が紹介されているのは、興味深い。

モジラのゲルキンク氏に最も懸念される点を尋ねると、次のように答えてくれた。「1つは、デマがYouTubeプラットフォーム上で明らかに大きな問題として浮上しているという点です。モジラの支持者や世界中の人たちに聞いた話によると、人々がオンラインに流れるデマについて懸念していることは明白です。ですから、その問題がYouTubeアルゴリズムで最大の問題として浮上しているという事実は大いに懸念されるところです」。

同氏は、もう1つの大きな懸念材料として、推薦動画の問題が非英語圏のユーザーにとって、より深刻になっている点を挙げ、YouTubeプラットフォーム上における世界的な不平等によって「十分に配慮してもらえない」という問題が、そうした問題が議論されているにもかかわらず起こっていることを示唆した。

モジラのレポートに対してグーグルの広報担当にコメントを求めたところ、次のような返事が返ってきた。

当社の推薦システムの目標は、視聴者をいつでもお好みのコンテンツと結びつけることです。ホームページ上だけで2億本を超える動画が推薦されています。システムには、視聴者に好みの動画を尋ねたアンケートの回答を含め、800億を超える情報が入力として与えられています。当社はYouTube上での体験を改善するための取り組みを継続的に行っており、2020年だけで有害コンテンツの推薦を削減するために30カ所を超える変更を実施しました。この変更により、システムによってボーダーライン上のコンテンツが推薦され、ユーザーがそのコンテンツを再生する率は1%をはるかに下回るようになっています。

グーグルはまた、YouTubeに対する調査を歓迎するとし、プラットフォーム調査のために外部の研究者を迎え入れるオプションを検討していることを示唆したが、具体的な内容については触れなかった。

同時に、モジラの調査における「残念な」コンテンツの定義について疑問を呈し、グーグル独自のユーザー調査では、ユーザーはYouTubeの推薦するコンテンツに概ね満足していると主張した。

さらに、実際の発言は引用できないが、グーグルは2021年はじめ、 YouTube向けに「違反再生率」(VVR)という指標の公開を開始した。これは、YouTubeのポリシーに違反しているコンテンツのYouTube上での再生回数割合を初めて公開したものだ。

最新のVVRは0.16~0.18%で、これは、グーグルによると、YouTube上で1万回動画が再生されるたびに、16~18本の違反コンテンツが見つかることを意味する。この数字は、2017年の同四半期と比較して70%以上低下しており、機械学習に投資したことが大きな低下の要因だとしている。

ただし、ゲルキンク氏が指摘しているとおり、グーグル自身のルールにYouTube上で再生すべきではないと明記されているコンテツの再生回数の増加に、どの程度AIが絡んでいるかをコンテキスト化および定量化するためのデータをグーグルが公開しないかぎり、VVRは指標としてはあまり役に立たない。この重要なデータがないかぎり、VVRは大きな見当違いとなる疑いが強い。

「VVRよりも奥深く、本当に役に立つのは、こうしたことに推薦アルゴリズムが果たしている役割を理解することです」とゲルキンク氏は指摘し、次のように付け加えた。「この点は未だに完全なブラックボックスです。透明性が向上しなければ、改善されているというグーグルの主張は話半分に聞いておく必要があります」。

グーグルは、YouTubeの推薦アルゴリズムが「ボーダーライン上のコンテンツ」(つまり、ポリシーには違反していないがグレーゾーンに入る問題のあるコンテンツ)を処理する方法について、2019年に同社が行った変更についても指摘した。この変更によって、この種のコンテンツの視聴時間が70%減少したという。

グーグルは、こうしたボーダーラインカテゴリーは固定されていないことを認めており、変化するトレンドやコンテキストを考慮に入れ、専門家と協力してボーダーラインに分類される動画を決定しているという。ということは、測定の基準となる固定ベースラインが存在しないということだから、上記の70%の減少という数字はほとんど意味がないことになる。

モジラのレポートに対するグーグルの反応で、英語圏以外の市場のアンケート回答者によって報告された経験の質の低下について言及していない点は注目に値する。ゲルキンク氏が示唆しているとおり、一般に、YouTubeが行っているという多くの緩和策は、米国や英国などの英語圏市場に地理的に限定されている(あるいは、まずそうした英語圏市場で対応策を実施してから、その他の市場に徐々に展開されていく)。

例えば2019年1月に米国で実施された陰謀論コンテンツの増殖を抑える変更は、数カ月後の8月になってようやく英国市場にも拡張された。

「YouTubeはここ数年、米国および英語圏市場についてのみ、有害な、またはボーダライン上のコンテンツの推薦について改善を実施したことを報告してきました」と同氏はいう。「この点について疑問を呈する人はほとんどいませんが、英語圏以外の市場はどうなったのでしょうか。個人的には、そちらのほうがもっと注目および精査されてよいと思います」。

我々はグーグルに対して、2019年の陰謀論関連の変更を全世界の市場に適用したのかどうかを確認する質問をした。同社の広報担当によれば、適用したという。しかし、非英語圏市場のほうが、より広範な残念なコンテンツが報告される率がはるかに高いままであることは注目に値する。

明らかに不釣り合いな高いレポート件数を見ると、その他の要因が作用している可能性もあるが、今回の調査結果によってもう1つわかったことは、YouTubeのネガティブな影響に関するかぎり、グーグルは、同社の評価を下げるリスクとコンテンツを自動分類する機械学習テクノロジーの能力が最も高い市場と言語に最大のリソースを投入しているということだ。

AI関連のリスクに対するこうした不平等な対応によって、一部のユーザーが有害な動画のより大きなリスクに曝されることは明白だ。現時点でも多面的で多岐に渡る問題に、不公平という有害な側面が追加された形だ。

これは、強力なプラットフォームが、自身のAIを自身で評価し、自身の宿題を自身で採点し、心底心配しているユーザーに利己的なPRで対抗する状態を放置していることがいかにばかばかしいかというもう1つの理由でもある。

(グーグルは、記事の背景を埋めるだけの上記の言葉だけでなく、自身を、検索と発見アルゴリズムに「権威」を組み込んだ業界で最初の企業であると説明している。ただし、そのような取り組みを正確にいつ行ったのか、そのような取り組みが「世界中の情報を編成し、世界中でアクセス可能かつ有益なものにする」という同社の掲げるミッションを情報源の相対価値を考慮に入れることなく、どのようにして実現できると考えているのかについては説明されていない。そうした主張には当惑してしまう。おそらく偽情報でライバル企業を惑わす不器用な試みである可能性が高いと思うが)。

規制の話に戻ると、EUの提案しているDigital Services Act(DSA、デジタルサービス法)は、説明責任の手段としての広範なパッケージの一部として、大手デジタルプラットフォームにある程度の透明性要件を導入するものだ。この点についてゲルキンク氏に質問すると「DSAは高い透明性を実現するための有望な手段」であると説明してくれた。

しかし、YouTube AIのような推薦システムを規制するには、さらなる法制化を進める必要があることを同氏は示唆した。

「推薦システムの透明性、ユーザーが自分自身のデータの使用許諾を与える権限を持つこと、そして推薦の出力は非常に重要だと考えています。これらは、現在のDSAでは、対応しきれない手薄な部分でもあります。ですから、この部分に腰を据えて取り組む必要があります」と同氏はいう。

同氏が支持を表明している1つの考え方は「データアクセスフレームワーク」を法律に組み込むことで、チェックを受けた研究者が強力なAIテクノロジーを調査するために必要な情報を十分に取得できるようにするというものだ。このアイデアは「透明性に関するさまざまな条項と適用可能とすべき情報の長いリスト」を法律で提示しようとする方法とは対照的だ。

また、EUは現在、AI規制に関する草案を審議中だ。法制化には、人工知能の特定分野への適用の規制に対するリスクベースのアプローチが必要となる。ただし、YouTubeの推薦システムが、より入念に規制されるカテゴリーの1つに収まるのか、あるいは、計画されている法律のまったくの範囲外になるのかは未定だ。(初期の委員会提案では少なくとも)後者の可能性が高そうだが。

「この提案の初期の草案では、人の振る舞いを操作するシステムについて規定しており、これはまさに推薦システムのことです。と同時に、それはある意味、一般に広告の目標であると考えることもできます。ですから、推薦システムがそうしたシステムのどこに分類されるのかを理解するのは簡単ではありませんでした」。

「DSAにおける堅牢なデータアクセスの提供と新しいAI規制の間には、うまく調和する部分があるのかもしれません」と同氏は付け加えた。「最終的に求められるのは透明性ですから、そうしたより高い透明性を実現できるのであれば、良いことです」。

「YouTubeもやろうと思えば十分な透明性を実現できたはずです。我々は、もう何年もこの問題に取り組んでいますが、同社がこの問題について何か有意義な対策を講じたのを見たことがありません。この点は我々も心に留めておきたいと思います。法制化には数年かかります。ですから、我々が推奨したことが一部でもグーグルに採用されれば、それは正しい方向への大きな一歩となるでしょう」。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)