フィンテックSquareが音楽配信サービスTidalの過半数株を取得、ラッパーのジェイ・Z氏がSquareの取締役に

個人と企業の両方にサービスを提供しているフィンテック企業Square(スクエア)は米国時間3月4日、音楽ストリーミングサービスTidal(タイダル)の過半数の株式を取得したと発表した。2億9700万ドル(約320億円)ほどのこの取引では、アーティストであるパートナーは株保有を維持する。

SquareのCEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は自身の別の会社Twitter(ツイッター)を使ってこの取引を説明した。同氏はこの取引が疑念を生むと予想したようだ。確かにそうだろう。冒頭に、「なぜ音楽ストリーミング会社と金融サービス会社は協力するのか?!」と同氏は修辞疑問を書いた。

まったくだ。ドーシー氏の予想は、自身の会社がCash Appや他のSquareのプロダクトの成功を音楽の世界で再現することができる、というものだ。「新しいアイデアは交差するところで見つかる」と同氏は指摘し「音楽と経済」の合流はそうした1つの集合点だと主張した。

この取引では、ミュージシャンで事業家のJay Z(ジェイ・Z)氏がSquareの取締役に就任した。

この取引に対する最初の反応の中には否定的なものもあった。SquareとTidalがペアというのが奇妙に思える、と繰り返すのは簡単だ。そしてSquareは過去に似たような、しかし最終的に維持できなかった買収を行っている。例えば同社は2014年にフードデリバリーサービスのCaviarを買収し2019年にDoorDashに売却した。Squareがベンチャーレベルのリターンをこの取引で得たことはここでの論点にとって重要ではない。

しかしSquareとTidalのタイアップという強気のケースは同様にリターンを作れる。Squareは自社の時価総額の1桁のパーセンテージの額を使っただけだ。そしてアーティストに株を持たせ続けるという選択を通じてSquareは首尾よくアンバサダーのホストをブランドに取り込んだ。

そしてSquareが展開するカードリーダーで、多くのオフライン事業者のためにコマースゲームを一新したという点でドーシー氏は悪くない。ここ数四半期の零細事業者のように過去数年で物理的な世界からデジタルの世界へと移行した経済の一部である音楽に一撃を加えるのはどうしてダメなのか。

「セラーのエコシステム」であるSquareのビジネスユーザーはますますデジタルに移行している。直近の四半期決算で、セラーの総支払額における「店舗でのみ」の使用の割合は落ち込み「オンラインのみ」と「オムニチャンネル」がその落ち込みを補った。

Squareは消費者にフォーカスしたCash Appサービスでよく知られている。同サービスは2020年12月に月間アクティブユーザーが3600万人に達し、この数字は前年同月の2400万人からアップしたものだ。音楽ストリーミング会社と若者の利用が多いCash Appのタイアップを想像できるだろう。そしてSquareの会議室のテーブルにジェイ・Z氏がいることは同社をイノベーティブにするはずだ。同氏は斬新な見方を持ち込むかもしれない。

それから非代替性トークン(NFT)の疑問がある。これは最近、仮想通貨コミュニティ人気を引き起こしたデジタル資産の新たな形式だ。SquareがCash Appを通じて成長している仮想通貨事業を持っていること、そしてビットコインそのものに何億ドル(何百億円)も投資したことを考えて欲しい。Squareが音楽ベースのNFTをより大きな消費者ユーザーベースに持ち込むスペースがマーケットにあるか、というのは興味深い疑問だ。もし答えがイエスなら、Squareは今そのマーケットを作り出す主要な位置にいることになる。

おそらくSquareとTidalの取引はSquareが想像しているような将来の成長は生み出さない。しかし取引は安く、リーダーとしてジェイ・Z氏を獲得したことは勝利であり、企業防衛を演じるだけでは勝つことは難しい。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Square買収音楽ストリーミング

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

さらに10カ国でRevolutからRevolut Bankへの切り替えが可能に

フィンテックスタートアップのRevolut(レボリュート)は、2018年後半から欧州連合(EU)で独自の銀行ライセンスを取得している。これにより、同社はサードパーティー企業と提携することなくいくつかの金融サービスを提供することができる。そしてRevolutは、さらに10カ国の顧客がRevolut Bankに切り替えられるようにする予定だ。

リトアニア銀行はRevolutに特殊なライセンスを付与したが、それ自体は完全な免許ではなく、いくつかの活動に焦点を当てている。同社は他のヨーロッパ諸国で事業を行うために、ヨーロッパのパスポートルールを利用している。現在、Revolutはポーランドとリトアニアの2カ国で銀行ライセンスを取得している。

例えばリトアニアでは、毎月の給料の2倍(最高6000ユーロ、約77万4000円まで)を限度とするクレジットカードを申し込むことができる。また、1000ユーロ(約12万9000円)から1万5000ユーロ(約193万6000円)までの個人向けローンも提供している。返済期間は1カ月から60カ月までだ。

現在、ブルガリア、クロアチア、キプロス、エストニア、ギリシャ、ラトビア、マルタ、ルーマニア、スロバキア、スロベニアの顧客がRevolut Bankへと切り替えることができるようになった。口座を切り替えるにはいくつかのステップを経る必要があり、これは透明性の高いプロセスではない。

しかしこのプロセスが完了すると、顧客の預金は預金保証制度の下で保護される。もしRevolut Bankが将来的に閉鎖された場合、顧客はこの制度のおかげで最大10万ユーロ(約1290万8000円)を請求することができ、ユーロと外貨の両方が保護される。

10カ国の新しい市場では、新しいクレジット商品が期待できる。これまでにRevolutは1500万人の顧客を獲得している。同社は最近、母国であり最大の市場である英国でも銀行ライセンスを申請中であると発表した。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Revolut

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(文:Romain Dillet、翻訳:塚本直樹 / Twitter

ウェアラブル端末「Fitbit Charge 4」のSuica対応バージョンが3月4日発売

ウェアラブル端末「Fitbit Charge 4」のSuica対応バージョンが3月4日発売

交通系電子マネーSuicaに対応するフィットビットのヘルス&フィットネストラッカー「Fitbit Charge 4」が3月4日に発売されます。Amazonにおける販売価格は税込1万9991円です。

Suica対応の「Fitbit Charge 4」では、Suicaの新規発行や Google Pay によるチャージのほか、残高や利用履歴の表示、払い戻しなどができ、電車やバス、お店での買い物などに利用できます。

再発行や機種変更による残高の引き継ぎ、JRE POINTによるチャージのほか、定期券やSuicaグリーン券の購入などはできません。年会費は無料で、Suicaの発行にかかるデポジットは不要です。

ウェアラブル端末「Fitbit Charge 4」のSuica対応バージョンが3月4日発売

「Fitbit Charge 4」で利用可能なSuica関連サービス

また、これまでに販売された「Fitbit Charge 4」ではSuicaが使えないそうです。

ちなみに腕時計のバンド部分にFeliCaや有機ELディスプレイなどを搭載した「wena 3」や、iPhoneとシームレスに連携できる「Apple Watch」などでもSuicaが使えます。

(Source:JR東日本(PDF)。Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Google / グーグル(企業)JR東日本 / 東日本旅客鉄道(企業)SuicaFitbit(企業)日本(国・地域)

Paytmがインドのモバイル決済市場で過去最高12億件の月間取引を記録しトップの座を獲得

インドで最も価値のあるスタートアップであるPaytm(ペイティーエム)はインド時間3月1日、2021年2月に12億件の取引を処理したと発表した。世界で最も急速に成長している決済市場の1つで、Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、Amazon(アマゾン)、そしてFlipkart(フリップカート)の支援を受けるPhonePe(フォンペ)と競合している同社の浸透度を示している。

Paytmのユーザーは2021年2月、ウォレット、カード、ネットバンキング、UPIを含むいくつかの決済モードで12億回の取引を行ったという。これは、インドの決済会社によってこれまで報告された最大のトランザクション量であり、Paytmは、同社が業界トップの地位を固めたと主張している。

Paytmの広報担当者は2021年1月にも、10億以上のトランザクションを達成したと述べていた。その時に広報担当者がTechCrunchの取材に対し語ったところによると、同社のアプリは2020年12月に10億件のトランザクションを超え、トランザクション量はUPI、ウォレット、クレジット・デビットカード全体で「10億を超えた」とのことだった。

Paytmの数字は、UPIエコシステムにおける支配的なプレイヤーではないにもかかわらず、SoftBank(ソフトバンク)に支援される同スタートアップが成長を続けていることを示している。

小売銀行の連合によって構築され、政府の支援を受けている決済ソリューションであるUPI(Unified Payments Interface、統合決済インターフェース)は、ビジネスモデルを提供していないにもかかわらず、近年ユーザーがオンラインで選ぶ最も人気のある取引方法として台頭してきた。

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2021年2月、UPIサービスは22億9000万件の取引を処理したと、統治機関であるNPCI(National Payments Corporation of India、インド決済公社)はインド時間3月1日に発表した。PhonePeとGoogle Payがインドでは主要なUPIプレイヤーであり、個人間決済市場の85%以上を占めている。PhonePeは2月に約9億7000万件のUPIトランザクションを処理した(NPCIはメンバー企業に市場シェアの上限を設けると発表している)。

ウォレットプレイヤーの中でトップを走るPaytmやPhonePeとは異なり、Google Payや比較的新規参入のWhatsAppはもっぱらUPIで取引を行っている。

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Paytmは近年、いくつかの国際的な企業がインドでの個人間の支払いを解決するサービスを開始したため、マーチャント対象のビジネスを拡大した。同社は、そのサービスがオフラインのマーチャント支払い分野では優位を占めており、前月比で15%ずつ成長していると主張している。Vijay Shekhar Sharma(ヴィジェイ・シェカール・シャルマ)氏が率いる同スタートアップは、1700万以上の加盟店にサービスを提供していると述べた。一方PhonePeは、1750万以上の加盟店にサービスを提供しているとTechCrunchに語った。

Paytmは同社が「デジタル村の構築と拡大の主な原動力となっており、現在ではデジタル決済でインドの6ラーク(60万)以上の村に力を与えている」という。同社は、マーチャントパートナーの50%以上が同社のデジタルバンクであるPaytm Payments Bankの口座を持っており、デジタルウェルスマネジメントサービスであるPaytm Moneyでも市場をリードしていると述べている。

Credit Suisse(クレディ・スイス)によると、インドの決済市場は今後3年間で1兆ドル(約107兆円)の価値があると推定されており、2020年の約2000億ドル(約21兆円)から増加している。

Paytmの副社長であるNarendra Yadav(ナレンドラ・ヤダヴ)氏は声明の中で次のように述べた。「インドが当社を信頼し、Paytmをデジタル決済と金融サービスのプロバイダーとして選んでくれたことに、身の引き締まる思いです。当社は常に業界をリードする市場シェアを維持し、目覚ましい成長を遂げています。当社は、消費者に複数の選択肢を提供するあらゆるデジタル決済方法を推進しており、それがリーダーとしての地位の確立に役立っています。実際、Paytmからデジタル決済の旅を始めたユーザーの多くが、今では当社の金融サービスを選び、利用しています」。

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

決済のSquareが「より機敏に動く」ことを目指して銀行を設立

決済分野のイノベーションで知られるSquareが、正式に銀行になった。

1年前の2020年3月に条件つきの承認を得たSquareは、米国時間3月1日に同社の興業銀行であるSquare Financial Servicesの営業を開始したと発表した。Square Financial ServicesはFDIC(米連邦預金保険公社)とUtah Department of Financial Institutions(UDFI、ユタ州の金融機関局)の設立認可プロセスを完了し、営業を開始できることになった。

この銀行はユタ州ソルトレイクシティに本社を置き、事業資金融資と預金商品を提供する。まずはSquare Capitalの既存の融資商品に対する引受と事業資金融資のオリジネートから開始する。

これまでSquareはカードリーダーとPOS決済システムで知られ、小規模事業者に広く使われてきたが、近年では同社製品を利用する起業家や小規模事業者に対するクレジットの促進も始めていた。

Squareは今後、同社の銀行が「全米のSquare販売業者にとってメインの融資提供者」になるだろうと述べている。

SquareのCFO兼Square Financial Servicesの会長であるAmrita Ahuja(アムリタ・アフジャ)氏は発表の中で、銀行機能を社内に有することで「より機敏に動ける」ようになるだろうと述べた。

Square Financial Servicesは引き続き第三者の投資家に対して融資を販売しバランスシートのエクスポージャーを制限する。Squareは、銀行が2021年の連結バランスシート、売上高合計、売上総利益、調整後EBITDAに重大な影響を及ぼす見込みはないとしている。

同社は銀行を始めることで「Squareの独自性をさらに深め、融資やバンキングツールをこれまで十分にサービスを受けられなかった人々が利用できるようにしていく」と述べている。

Lewis Goodwin(ルイス・ゴールドウィン)氏が銀行のCEOに、Brandon Soto(ブランドン・ソト)氏がCFOになる。さらに以下の人事が発表された。

  • 最高リスク責任者:Sharad Bhasker(シャラド・バスカー)氏
  • 最高執行責任者:Samantha Ku(サマンサ・クー)氏
  • 最高クレジット責任者:Homam Maalouf(オマム・マアルーフ)氏
  • 最高コンプライアンス責任者:David Grodsky(デビッド・グロドスキー)氏
  • キャピタルマーケット&投資家リレーション担当:Jessica Jiang(ジェシカ・ジアン)氏

このところ、フィンテックが銀行になる傾向が見られる。TechCrunchは2021年2月にBrexが銀行の認可を申請したことを報じた。

BrexはEmigrant Bankが発行元となっているクレジットカードをスタートアップ向けにアレンジして販売している急成長中の企業で、同社はFDICとUDFIにBrex Bank設立の認可を申請したと発表した。

フィンテック企業やフィンテックサービスを提供する企業は、預金口座や小切手用の口座、クレジットなど通常は銀行が提供する商品を手がけてきた。こうした商品は、従来の金融機関から有利な条件で資金を調達することは難しくても自社をよく知る業者から事業構築のための融資を受けられる可能性がある企業に対して、資金を提供する設計になっていることが多い。自社をよく知る業者とは、例えばSquareだ。

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Kaori Koyama)

メキシコの中低所得者層にクレカを提供するフィンテックStoriが約35億円調達

米国ではクレジットカードは一般的なものだが、他の多くの国、特に南米においてはユビキタスではない。中でもメキシコでは現金が主な決済手段であり、決済の推定86%が現金によるものだ。

しかしかつてなく人々がオンラインで買い物するようになり、クレジットカードの使用は増えている。最近の調査によると、メキシコは世界で最も急速にeコマースマーケットが成長している国だった。一方で、世界銀行の最新統計によると、15歳以上のメキシコ国民で銀行口座を持っている人の割合は37%に留まる。

こうした要因によりメキシコでは明らかにフィンテックイノベーションの時機が熟している。

それはメキシコシティに拠点を置くスタートアップStori(ストリ)の創業者らにチャンスをもたらしている。

Storiの創業チーム。左から順にJuan Villaseñor(フアン・ヴィラセニョール)氏、Marlene Garayzar(マレーネ・ガライザー)氏、Bin Chen(ビン・チェン)氏、Camila Burne(カミラバーン)氏(画像クレジット:Stori)

Storiは2020年1月にメキシコでクレジットカードプロダクトを立ち上げ、これまでのところ100万人超がカードを申し込んだ。

創業チームの一部のメンバーはCapital Oneで何年も働き、金融サービスを十分に受けられていない人々を引き受けるスキルを磨いた。また他のメンバーはメキシコと米国のMastercard、Morgan Stanley、GE Money、HSBC、Intelといったところで働いていた。

Storiは「メキシコで増えつつある中流階級向けの主要クレジットカード発行者になる」という目標を掲げてシリーズBラウンドで3250万ドル(約35億円)を調達した。

本ラウンドはLightspeed Venture Partnersがリードし、2018年初め以来Storiが調達した総額は5000万ドル(約53億円)になった。Lightspeed Venture PartnersのパートナーMercedes Bent(メルセデス・ベント)氏によると、Storiの案件はLightspeedにとって南米における初の大型投資で「投資案件は今後も続く」ことが見込まれている。

既存投資家のVision Plus Capital、BAI Capital、Source Code Capitalも本ラウンドに参加した。

Storiは「100%モバイルアプリベースのエクスペリエンス」となるクレジットカードをメキシコの増えつつある中所得層に提供する。Storiのチームは最初の2年を同社のインフラとプラットフォームの構築に費やした。

共同創業者Bin Chen(ビン・チェン)氏によると、2021年1月のStoriの月間新規顧客数は2020年1月の14倍で、2020年の平均月間新規顧客数の6倍だった。現顧客数を開示するのは却下した。

メキシコマーケットはかなり巨大であるため(同国の人口は1億3000万人近くだ)、Storiは現在メキシコのみにフォーカスしている。

世界の他の国と同様、デジタル決済に対する顧客需要を増やしている新型コロナウイルスパンデミックはStoriにとって追い風となっている。

「メキシコの消費者のeコマース、そして配車サービスやデリバリーのようなアプリベースのサービスの使用は急増していて、クレジットカードはそうしたチャンネルで好まれている決済方法です」とチェン氏は話した。「消費者はキャッシュフローの変動や不定期の支出、短期的な需要に対応できるフレキシブルなクレジットカードにアクセスする必要性をこれまで以上に経験しています」。

そしてもちろん、パンデミックによるロックダウンの間、多くの人が銀行の支店に直接足を運ぶのを回避するためにデジタルの金融商品を活用している。

チェン氏によると、Storiの共同創業者たちの共通点の1つはメンバーそれぞれが「質素な家庭の育ち」だということだ。

「我々はみな、従来の金融サービスの世界から排除されていると感じた経験があります。20年以上前にイリノイ州で修士号を取得しようとしていた学生のとき、学費と生活費を賄うために私はティーチングアシスタントシップ(優秀な学生が補助教員となること)に完全に頼っていました」とチェン氏は回顧した。「しばしばお金が尽き、やりくりが厳しいときがありました。最初にクレジットカードを手にする前に何回も却下されました」。

米国におけるTomoCreditのミッションと同様、Storiの創業者たちは「正式な金融システムを使うのは初めて」という中・低所得の顧客にクレジットカードを手にする機会を提供することに取り組んでいる。

同社は新たに調達した資金を顧客ベースの成長、従業員の増加、プロダクトデザインへの投資、テクノロジーインフラ、リスク引き受けなどに使う計画だとチェン氏は述べた。同氏は以前米国と新興マーケットでCapital OneとMastercardで働いた経験がある。Storiは現在、メキシコ、米国、中国のオフィスに従業員80人を抱え、この数字は1年前の40人から増えている。

「当社の目標は金融サービスが提供されていない人々のための主要なデジタルバンクになることです」とチェン氏は話した。

Lightspeedは1年以上前にStoriの創業者たちに会った。

「我々はStoriの創業者たちの経験の深さに感銘を受けました。米国スタイルの経済刺激策の恩恵を受けることなく、彼らは新型コロナの落とし穴を見事に避けて進み、リスク引き受けのモデルが強固なもので、そして向上しつつあることを示しました」とベント氏は話した。「それはチームの質を反映しています」

中国拠点のVision Plus Capitalのパートナー、Yiran Liu(イーラン・リュー)氏は同社がStoriのAラウンドをリードし「今回のラウンドでも引き続きかなりの比例配分」だとしている。

「デジタルフィンテックモデルに関して構造的な命題があり、当社は世界中、特に新興マーケットでこうしたモデルに投資しています。我々はStoriのチームが達成したことに感銘を受け、急成長で証明されているメキシコのマーケット機会に興奮しています」と声明で述べた。

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タグ:Stori資金調達メキシコクレジットカード

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

フランス語圏アフリカの消費者向け金融スーパーアプリ構築に力を入れるコートジボアールのDjamo

フランス語圏アフリカの消費者向け金融スーパーアプリを手がけるDjamoは、コートジボワールのスタートアップとしては初めてY Combinatorの支援を受ける企業である。

アフリカではここ数年で膨大な数の金融サービスが出現しているが、Djamoの使命は、フランス語圏アフリカにおいてサービスが極めて不足しているという特定のギャップを埋めることにある。

この地域で銀行口座を持つ成人は25%にも満たず、銀行のターゲットは富裕層の上位10〜20%に留まっている。残りは約1億2000万人の市場の巨大なセグメントであるが、収益性があるとは認識されていない。しかし銀行が変わらぬ中、同地域の電話通信会社からのモバイルマネーがそのギャップを埋めた。過去10年で人口の60%以上がモバイルマネーを使用しており、何百万人ものフランス語を母国語とする人々が金融サービスに飢えていたことを証明している。今日、このモバイルマネーのインフラとリーチによりスタートアップは既存の支払いインフラを利用してさまざまなアプリケーションを通じたアクセスを民主化することができる。

Djamoはこの機会を利用し、手頃でシームレスな銀行取引をこの地域に提供することを目指している。

Hassan Bourgi(ハッサン・ブージ)氏は「2度目の創設者」で、ラテンアメリカを拠点とする自身のかつてのスタートアップBusportalからNaspers傘下のredBusに移った後、2019年にコートジボワールに戻った。そこで同氏は、アフリカ最大の電話会社の1つであるMTNで複数のモバイルマネープロジェクトを率いていたRégis Bamba(レジス・バンバ)氏に出会った。

両氏をはじめ多くのミレニアル世代が直面している銀行業界の不愉快な経験にフラストレーションを感じ、ブージ氏とバンバ氏は2020年、銀行業界の現状に挑戦するためにDjamoを立ち上げた。

「この地域では銀行サービスへのアクセスが非常に難しく、私たちはこれを大きなチャンスだと捉えました」とDjamoのCEOであるブージ氏はTechCrunchに語った。「設立当初から私たちは一般消費者に浸透できるモバイルファーストのプラットフォームを設計したいと考えていました。Djamoをローンチするためには、一般消費者向けの製品を開発する私たちの複合的な経験が非常に重要でした」。

ブージ氏によると、同国のミレニアル世代はテクノロジー企業と関係を築き、通常とは異なるサービスを受けようとしている。そのため、Djamoはこうした顧客に対して、より優れたフロントエンドのエクスペリエンスと迅速なカスタマーサービスの提供を進めることにした。

画像クレジット:Djamo

同社は画一的なアプローチでサービスを提供するのではなく、異なる層のさまざまなユーザーニーズに合わせて提供することに注力した。Amazon、Alibaba、Netflixなどのオンラインサービスへの支払いを可能にすることから、Visaデビットカードをタイムリーに提供することまで、Djamoは独自のカスタマイズされたアプローチにより口コミを通じて有機的に成長してきた。

両CEOによると、Djamoが登場する前はカードを受け取ったり、あるいはクレジットカードを発行したりするために銀行の支店で長い列に並ぶ必要があったという。Djamoはそのストレスを解消し、さらには幅広いサービスにおいて手数料ゼロでカードを利用することができるようにしたのだ。

「一定の限度額まで継続的に手数料がかからないゼロ料金のカードを提供することは、当社にとって重要なことでした。それ以降は、取引手数料として支払うことになります。ユーザーがより高い限度額まで取引できる月額約4ドル(約420円)のプレミアムプランがあります」とブージ氏。

現在Djamoは約9万人の登録ユーザーを擁し、毎月5万件以上の取引を処理しているという。しかしここに到達するまでに同社はさまざまな苦労と工夫を重ねてきた。

FlutterwaveやPaystackのような確立された決済インフラ企業があるナイジェリアとは異なり、コートジボワールにはそのような著名な企業は存在しない。

「プロバイダーが数社ありますが、そのほとんどは信頼性に欠けています。しかしそれはエンドユーザーに関係なく、何らかの方法でうまく機能させる必要があります」と同社のCPO兼CTOであるバンバ氏は説明する。

より優れたオプションがないため、Djamoでは運用を継続するためにプロバイダーを適宜切り替えている。同社はアフリカのフィンテック系スタートアップの多くに共通する懐疑的な見られ方にも直面してきた。Djamoの場合、創設者たちはプラットフォームがオンボーディング、KYC、取引に使用しても安全であることを銀行や顧客に長期にわたって証明しなければならなかった。

CEOのハッサン・ブージ氏とCPO兼CTOのレジス・バンバ氏(画像クレジット:Djamo)

顧客へのサービス提供を開始する際にも、同社のVisaカードの配送をどのように行うかという特有の問題に直面した。ブージ氏によると、アフリカ大陸の他の先進国とは異なり、コートジボワールで効率的な配達や物流サービスを利用することは至難の業であるという。そこで同社は、この目的のために独自の配送エージェントを使った配送アプリを作ったのだ。「私たちの顧客向けの目標は、登録完了の翌日に顧客がタイムリーにカードを受け取れるようにするということです」とブージ氏は説明する。

MVPが発表される前にも、Djamoはすでに製品の金銭的な評価を受けていた。2019年6月にプライベート投資家から35万ドル(約3700万円)のプレシード投資を調達しており、これは現段階ではフランス語圏で最大規模となる。少なくともフランス語圏のアフリカにおいては、同社のソリューションの創意工夫と創設者の実績こそがDjamoがラウンドを完了させる上で重要だったとブージ氏はいう。

フランス語圏のアフリカは、新進のスタートアップシーンの出現を示す兆候があるにもかかわらず、長い間国際投資家から過小評価されてきた。これには、言語の障壁の他、南アフリカを除く英語圏諸国がサハラ以南アフリカの平均GDPの47%を占めている一方でフランス語圏諸国のGDPはわずか19%しか占めていないという地域のGDPと1人当たりの所得が関係している。

しかし、世界銀行は2021年までに同地域がアフリカで最も急速に成長している経済の62.5%を占めるようになると予測しており、今後数年間の成長について明るい見通しを示している。

多くの未開発の事業機会に恵まれ、フランス語圏アフリカのように十分に認知されていない地域に変革の機が熟している。投資家はこのことを認識しており、彼らの評価は依然として英語圏のアフリカ向けに偏ってはいるものの、セネガルのエネルギースタートアップOoluとカメルーンのヘルステックスタートアップHealthlaneの2020年の100万ドル(約1億500万円)の資金調達が、市場に対する彼らの興味の大きさを物語っている。

両スタートアップもDjamo同様にYCの支援を受けたフランス語圏のスタートアップだ。しかし2021年この冬のバッチにより、Djamoは同地域初のフィンテック系スタートアップとなる。また2020年のHealthlaneに続いて、フランス語圏のアフリカ企業が連続して代表者を持つことも初めてとなる。

創設者たちにとってYCの支援は、フランス語圏アフリカ地域全体の金融サービスの流通がアプリケーションへと根本的に変化を遂げているというDjamoの前提を評価するものである。

「コートジボワールでは銀行業界は複雑すぎて対処できないという声が常に聞かれます。しかし私たちはこれを大きなチャンスとみなし、取り組むべき業界であると捉えていました。フラストレーションを感じたり、顧客が苦しんだりしているところには、ビジネスが成功し、向上するチャンスがあります」とバンバ氏は語っている。

3月23日のデモ・デーで締めくくられる3カ月間のプログラムに参加した後、Djamoはフィンテック大手のネットワークを活用して新しい決済体験を提供できるようにする、VisaのFintech Fast Track Programにも参加する予定だ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:DjamoアフリカコートジボアールY Combinator

画像クレジット:Djamo

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

仮想通貨のAnchorageが連邦銀行の認可を受けデジタル資産銀行に、約85.3億円の資金調達

Anchorageはシンガポールの政府系ファンドとしても知られるGICが主導するシリーズCの投資ラウンドで8000万ドル(約85億3000万円)を調達した。Andreessen Horowitz、Blockchain Capital、Lux、Indicoも、米国時間2月25日に実施された資金調達ラウンドに参加している。

今回の資金調達ラウンドの背景にある考え方は、非常にシンプルだ。Tesla(テスラ)やSquare(スクウェア)など一部の企業は最近、仮想通貨への投資を選択した。つまり、彼らは現金残高の一部を仮想通貨に変換している。一部の投資家は現金残高に仮想通貨を追加するのに役立つ企業に投資することを選んでおり、Anchorageもそのうちの1社だ。

関連記事:テスラが約1578億円相当のビットコインを購入、将来的に仮想通貨での支払いも検討

このスタートアップは当初、カストディ(保管)ソリューションを提供していた。これにより暗号化通貨を安全に保つことができ、ウォレットとその公開鍵および秘密鍵を管理する必要がなくなる。最近になってAnchorageは連邦銀行免許を取得し、デジタル資産銀行に生まれ変わった。

規制当局から承認のサインを得たことは、間違いなく信頼につながるだろう。機関投資家は、信頼できる仮想通貨パートナーを探し、その分野に参入しようとしている。

Anchorageは現在、カストディ業務に加えてステーキング、仮想通貨融資などの複数の金融商品を提供している。つまり、機関投資家のためのワンストップショップになりたいということだ。

興味深いことに、Anchorageはサービスとしての仮想通貨バンキングのスタートアップにもなりたいと考えている。このスタートアップはチャレンジャー銀行と伝統的な銀行の両方にとって、暗号資産パートナーになり得ると考えている。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Anchorage仮想通貨資金調達

画像クレジット:Dan Kitwood / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:塚本直樹 / Twitter

印決済大手Paytmの元トップ幹部が自身のスタートアップで金融初心者向けサービスを起業

インドで最も価値のあるスタートアップであるPaytmの金融サービスブティックを築いた経営者が、似たようなことをもう一度やり直そうとしている。

Paytm Moneyの元CEOであるPravin Jadhav(プラヴィン・ジャダヴ)氏はインド時間2月25日、自身のスタートアップであるRaise Financial Servicesを発表した。

ジャダヴ氏のリーダーシップの下、PaytmのMoneyツールは600万人以上のユーザーを集めた。同氏は今回は、異なるユーザー層にサービスを提供することに重点を置くという。

今日、インドでは何億人ものユーザーが金融サービスにアクセスできていない。彼らはクレジットカードを持っておらず、銀行から融資も受けられず、保険に加入したこともなければ、投資信託や株式に投資したこともない。

現在、インドの多くの大企業や新興企業は、申請者の信用度を判断するために代替データを使用できる引受技術を構築することで、これらのユーザーにリーチしようとしている。それは不確実性、仮定、そして希望の柱の上に築かれた、タフで資本集約的なビジネスだ。

TechCrunchとのインタビューに対してジャダヴ氏は、Raise Financial Servicesは主要都市圏、Tier1、Tier2の都市(つまり都市部とその周辺)に住む顧客を対象にしていると述べた。「これらの人々は金融商品を欲しがっていて、どんな商品があるかリテラシーがありますが、提供されるべきサービスを受けていません」。

Paytmの創設者でありCEOであるVijay Shekhar Sharma(ヴィジャイ・シェーカル・シャルマ)氏とプラヴィン・ジャダヴ氏(左)。Jadhav氏は2020年にPaytmを退職した(画像クレジット:Paytm)

同氏の新しいスタートアップは投資、融資、保険、ウェルス、決済などの金融サービス全般にわたる商品を提供する予定だという。「銀行業はインフラストラクチャーの分野だと思っているので、その部分には手を出しません」と同氏は語った。

「目指すのは、誰も提供していない非常に優れた商品を提供することです。2つ目は、テック主導の流通に重点を置くこと。そして3つ目は、今日、カスタマーサービスの経験の質が市場全体で悪いということです。当社はそれを解決しようとしています」と同氏はいう。「時間とともに、これらすべてをつなぎ合わせていけるよう努力します」。

ジャダヴ氏はまた、彼がシードラウンドを調達したことを発表した。同氏は金額を公表していないが、十二分な数の著名投資家を明らかにした。CREDの創設者Kunal Shah(クナル・シャー)氏、FlipkartのCEOであるKalyan Krishnamurthy(カリヤン・クリシュナムルシー)氏、Udaanの共同創設者Amod Malviya(アモッド・マルヴィヤ)氏とSujeet Kumar(スジート・クマール)氏、PhonePeのCEOとCTOであるSameer Nigam(サミーア・ニガム)氏とRahul Chari(ラフル・チャリ)氏、Pine LabsのCEOでCitrus Payのオーナー・CEOであったAmrish Rau(アムリッシュ・ラウ)氏、Freechargeの創設者Sandeep Tandon(サンディープ・タンドン)氏、Jupiterの創設者兼CEOであるJitendra Gupta(ジテンドラ・グプタ)氏、Freshworksの創設者兼CEOであるGirish Mathrubootham(ギリッシュ・マトルボッサム)氏、WazirXの創設者兼CEOであるNischal Shetty(ニッシャル・シェッティ)氏、ClevertapのSVPであるKuldeep Dhankar(クルディープ・ダンカール)氏、Servifyの創設者兼CEOであるSreevatsa Prabhakar(スレーヴァツァ・プラバカール)氏、そしてWalnutの創設者兼CEOであるAmit Bhor(アミット・ボー)がこのラウンドに参加している。

ジャダヴ氏自身も出資しており、今回のラウンドはベンチャー投資家のMirae Asset Ventureが主導した。Multi-Act Private Equity、Blume Ventures(Founder’s Fund経由)、そして米国を拠点とするアーリーステージ投資家のSocial Leverageが参加しており、Social Leverageにとってはこれがインドでの初投資となる。

Mirae Asset Ventureのインド事業CEOであるAshish Dave(アシッシュ・デイブ)氏はTechCrunchの取材に対し、ジャダヴ氏のことは前から知っていたが、彼が手を差し伸べるきっかけとなったのは、Clubhouse(クラブハウス)のさまざまなセッションでジャダヴ氏の話を聞いたことだったと語った。

ジャダヴ氏は、ユーザーにはこのスタートアップの最初の製品が年内に稼働することを期待してもらえると語った(TechCrunchはもっと早くローンチされると理解している。Raise Financial Servicesが提供するサービスは、SoFiやGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)のMarcusといくつか類似点があると予想される)。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Raise Financial Servicesインド

画像クレジット:Sanjit Das / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

クレカ手数料の一部を植林に充てる英フィンテックTreeCardが5.4億円調達

木で作られたクレジットカードを提供し、生み出される手数料を通じて森林再生に資金を提供することを約束している、英国のフィンテックTreeCard(ツリーカード)がシードラウンドで510万ドル(約5億4000万円)を調達した。本ラウンドはEQT Venturesがリードし、SeedcampとEpisode 1が参加した。また、TreeCardのサービスはまだ立ち上がっていない、

GoCardless創業者のMatt Robinson(マット・ロビンソン)氏、Indeed創業者のPaul Forester(ポール・フォレスター)氏、ComplyAdvantage創業者のCharlie Delingpole(チャーリー・デリングポール)氏といったエンジェル投資家も出資している。調達した資金は人材採用、米国と「鍵となる欧州マーケット」への進出に使われる、とTreeCardは話した。

「主要なグリーンファイナンスブランド」になることを目的に、TreeCardはThielフェローのJamie Cox(ジェイミー・コックス)氏(Cashewの共同創業者)、Gary Wu(ゲイリー・ウー)氏、James Dugan(ジェームズ・デュガン)氏によって2020年8月に創業された。チームは社会的影響のあるフィンテックの原動力を生み出すために、ロイヤルティポイントやキャッシュバックを植林に交換するアイデアを思いついた。

サインアップすると、ユーザーはTreeCardアプリを現在持っている銀行口座にリンクし、Mastercardを搭載しているTreeCardを通じて支出のルーティングを開始できる。カードでの購入、具体的には支出により発生するカード決済手数料の一部が、環境に優しい検索エンジンでTreeCardのプレシード投資家でもあるEcosiaが運営する植林プロジェクトに送られる。

「高いレベルで気候危機は過去20万年で人類が直面している、人間を絶滅させる可能性のある最大の危機です。消費者のファイナンスの流れを導くことは変化を促す最もパワフルな方法だと信じています」とCEOのコックス氏は筆者に語った。「消費者が支出によってダメージの少ない行動をとるだけでなく、積極的に世界を改善できるようにするファイナンス会社を構築しています」。

「私たちは消費者が責任を持って使える限度額なしのカードを作っています。カードは消費者の支出に応じて植林するために手数料を使い、どうした支出が健全か、あるいは破壊的なものか消費者が特定できるよう、分析を洗練しました」。

英国や欧州における消費者カード手数料は、米国のものに比べてかなり安い。クレジットカードと口座の提供は、経費がかからないわけではない。そのためTreeCardがどのようにして持続可能になるのかは明らかではない。驚くことではないが、おそらく手数料が高い米国は、TreeCardにとってサービス立ち上げ時の主要なマーケットになると見られている。

「米国の手数料は欧州のものよりかなり高く、これは当社にとって植林投資を行い、マーケティング費用と管理費用をカバーするのに十分な売上高の機会となります」とコックス氏は説明した。「欧州では当社のバンキングインフラを無料で提供する既存のリテールバンクと提携するつもりです。これは、当社の手数料取り分が少なくても、欧州における費用を賄うのに十分なものになることを意味します。銀行名は間もなく発表します」。

一方、初期投資家のEcosiaについて同氏は「親」会社だと表現した。「Ecosiaは当社の最も近しいパートナーであり、成長にともなってEcosiaとかなり緊密に協業するでしょう」と話した。「Ecosiaが最初に小切手を切ってくれ、我々のために当社の植林を引き受けます。Ecosiaのマーケティングチームはかなり経験を積んでおり、今後数年間ユーザーを獲得するために彼らの検索エンジンをコアなチャンネルとして使うのをサポートしてくれます」。

EQT VenturesのディールパートナーであるTom Mendoza(トム・メンドーサ)氏のコメントは以下のとおりだ。「TreeCardは影響力のある財務管理のための実際のプラットフォームを構築するという他のブランドはやっていない分野に足を踏み入れ、主要なグリーンファイナンスブランドになる可能性を秘めています。EQT Venturesは環境と我々の投資が世界におよぼす影響をますます意識しています。地球にとってより良い未来をつくるために金融システムに積極的に取り組んでいるTreeCardのチームをサポートすることに非常に興奮しています」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:TreeCard資金調達気候変動

画像クレジット:TreeCard

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(文:Steve O’Hear、翻訳:Nariko Mizoguchi

BaaSプラットフォーム運営のHIFが約16億円を調達、AI与信審査システム開発などを進める

HIFが資金調達を実施(画像は同社HPより)

BaaSプラットフォーム「Fimple Platform」を開発・運営するH.I.F.は2月26日、エレメンツキャピタルリサーチなどを引受先とする第三者割当増資で15億9000万円のシリーズBラウンド資金調達を完了したと発表した。今回の資金調達は新たなAI与信審査システムの開発などに充てる。HIFはAI与信審査事業を核としたBaaSプラットフォーム事業の強化を図っていく。

2017年11月に設立されたH.I.F.は、主に信用保証業・決済代行業・銀行代理業を行うBaaS(Banking as a Service)プラットフォーム企業だ。売掛金まで保証する企業間決済サービス「Fimple決済」や売掛金を保証する「Fimple保証」を展開している。今回の資金調達で、H.I.F.の累計調達額は74億3000万円(エクイティ・デット含む)となった。

H.I.F.は創業以来、「Fimple決済」で買い取った債権約1万5700件のうち、デフォルトとなったのは19件、デフォルト率約0.12%と極めて低いデフォルト率を維持しているという。

デフォルト率が低いことが売り

H.I.F.は低いデフォルト率を実現するため、一般的に行われている決算書などによる定量審査に加えて、SNSの情報などを活用したH.I.F.独自の定性審査を行っている。

これらの知見に加え、AIを活用することで、与信審査の精度や再現性・迅速性を向上させている。今回の調達資金による資金使途については、同AI与信審査システムの開発に多くを投入し、「Fimple Platform」上に展開していく狙いがある。

また、SPC(特定目的会社)を活用したリスクオフファンドスキームの導入を進めていく。これまで債権の買い取りについてはH.I.F.が調達した資金を元にしていたが、同社の調達力が債権買い取りの上限となり、迅速な事業拡大が困難になるという問題があった。

SPCを活用したリスクオフファンドスキームのイメージ

H.I.F.がすべてのデフォルトリスクを負うかたちとなっており、負担可能リスクも事業規模の上限を決める要因になっていたため、SPCを活用して同事業に投資する投資家を募ってファンドを設立することとした。リスクを分散することで成長スピードをさらに向上させていく方向だ。

このほか、事業展開におけるリスクを適切に管理するためにリスク管理委員会を設置する。エレメンツキャピタルリサーチ代表の林田貴士氏を顧問に迎え、リスク管理委員会を設立した。同委員会によって定期的に事業リスクの評価や管理を行っていく。

カテゴリー:フィンテック
タグ:HIF資金調達日本

急成長中の仮想通貨取引所Coinbaseが上場申請

米国時間2月25日午前、仮想通貨取引所のCoinbase(コインベース)がS-1申請書を提出した。同社は直接上場を想定している。同社の株式公開は、Bitcoin(ビットコイン)をはじめとするブロックチェーン資産を巡る最近の活動、物議を醸している政治との関わり民間取引市場における企業価値急騰のためもあって、大きな注目を集めている。

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Coinbaseの財務状況は2019年から2020にかけて急速に成長している。しかも、調整前収支でも利益を上げた。一般に急成長中のテック企業は、調整後利益などのより見栄えのする数値を使いたがる傾向がある。

2019年、Coinbaseは売上5億3370万ドル(約565億6000万円)で3040万ドル(約32億2000万円)の損失だった。2020年には、売上12億8000万ドル(約1356億5000万円)に対して1億2750万ドル(約135億1000万円)の純利益を計上した。

この仮想通貨ユニコーンは2020年に139%以上成長し、2019年の結果から大きく改善した。この会社の規模と成長は、なぜ非上場市場で1000億ドル(約10兆5960億円)もの価値をつける投資家がいるのかを理解する上で役に立つだろう。

Coinbaseの売上は変化が激しい。2020年第1四半期に1億9060万ドル(約202億円)だった売上が第2四半期には1億8640万ドル(約197億5000万円)に下がった。その後Coinbaseの売上は加速され、2020年第3四半期は3億1540万ドル(約334億2000万円)、第4四半期は5億8510万ドル(約619億9000万円)だった。

Coinbaseが、直接上場に向けて前進している理由は単純だ。つい最近最高の四半期を終えたところだからだ。

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その並外れた第4四半期に、Coinbaseの経常利益は2億2660万ドル(約240億1000万円)、純利益は1億7680万ドル(約187億3000万円)だった。これは過去の四半期と比べて質の高い収益性の改善であり、魅力的な年末収支を会社にもたらした。

仮想通貨取引所であるCoinbaseは、売上のほとんどを取引手数料から得ている。Coinbaseには他に、比較すると地味な「サブスクリプションとサービス」売上カテゴリーがあり、2020年第4四半期の売上は2070万ドル(約21億9000万円)前後だった。

さらにCoinbaseは、営業キャッシュフローが2019年のマイナスから2020年は驚くべきプラスに転じた。ただし、Coinbaseが2020年生み出したプラスの営業キャッシュフロー30億ドル(約3718億5000万円)のうち「27億ドル(約2860億9000万円)は仮受保管ファンドの手数料に関わる現金」によるものなので、それを差し引けば理解可能な規模になる。

以上が初見の感想だが、Coinbaseは急成長中で利益を上げ直接上場に向けて準備万端整っているユニコーンだ。今投資家たちの頭にあるのは、歴史的に流動的な仮想通貨に対する市場の関心を反映しているCoinbaseの売上成長をどう評価するかだけだ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Coinbase新規上場仮想通貨

画像クレジット:Steve Jennings / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nob Takahashi / facebook

「NP後払い」のネットプロテクションズがJCBと資本提携、約60億円の調達とともに事業連携を強化

「NP後払い」のネットプロテクションズがJCBと資本提携、約60億円の調達とともに事業連携を強化

ネットプロテクションズホールディングスは2月25日、ジェーシービー(JCB)を引受先とする約60億円の第三者割当増資について合意したと発表した。今回の資金調達により、JCBの同社に対する出資比率は10.24%となった。また国内外において拡大するBNPL(Buy Now, Pay Later。信用販売)市場における事業連携を開始する。

ネットプロテクションズホールディングスは、子会社ネットプロテクションズを通じて、BtoC EC向け後払い決済を軸に2002年よりサービスを展開。同グループの主力サービス「NP後払い」では、2019年度の年間流通総額が2900億円、年間ユニークユーザーは1450万人以上、サービス開始以来の累計利用件数は2億件に達するなど、国内のECにおける決済プラットフォームとしての成長を実現した。

また、BtoB向け後払い決済「NP掛け払い」においては現在加盟企業数は約2300社、年間流通総額は590億円、累計取引件数780万件超となった。企業の掛け売り業務すべてを代行する決済インフラとして成長しているとした。

同グループでは、国内外において拡大するBNPL市場のプラットフォームおよびBtoB決済インフラとしてのさらなる成長実現、事業推進の強化を図るべく、今回の資本提携を行ったという。

日本発唯一の国際カードブランドを運営するJCBの豊富な加盟店ネットワークおよび多様な決済ソリューションとそれを支える高度なサービス運営オペレーションと連携することで、「NP後払い」「NP掛け払い」に加えて、BtoC向けカードレス決済「atone」(アトネ)においてさらなるサービス拡大と品質向上の実現を目指す。

同グループは「つぎのアタリマエをつくる」をミッションに、テクノロジーを活用して新しい信用を創造する「Credit Tech」(クレジットテック)のパイオニア企業として、あらゆる商取引を円滑にしていくことを目指す。JCBとの資本提携により、後払い決済プラットフォームとしてのさらなる強化を行い、ミッション実現のための成長するとしている。

1961年設立のジェーシービーは、日本で唯一の国際カードブランドを運営する企業としてJCBカードを利用できる加盟店ネットワークを展開。国内外で1億4000万人以上がJCBカードを利用している(2020年9月末現在)。

2000年1月設立のネットプロテクションズは、テクノロジーを活用して新しい信用を創造するCredit Tech企業として、あらゆる商取引を円滑にしていくことを目指しているという。

2002年より、日本で初めて未回収リスク保証型の後払い決済サービス「NP後払い」の提供を開始し、前年比約116%のスピードで成長を続け、現在では累計利用件数が2億件を突破した。

2014年より、同サービスにより培った独自の与信ノウハウとオペレーション力を企業間取引向けに展開した「NP掛け払い」の本格販売を開始し、前年比約137%のスピードで成長を続けているという。

2017年にはatoneを提供開始。2018年には、台湾においてもスマホ後払い決済サービス「AFTEE」(アフティー)をリリースした。

これらの事業を通じて、顧客の購買歴・支払い歴をあわせた取得難度の高い信用ビッグデータを保有しており、今後は様々な領域でのデータ活用・展開を模索していくとしている。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Credit Tech(用語)JCB / ジェーシービー(企業・サービス)資金調達(用語)ネットプロテクションズ(企業)BNPL / 信用販売(用語)FinTech日本(国・地域)

ビットコイン・イーサリアムを「楽天キャッシュ」にチャージし、楽天ペイや楽天ポイントカードで利用可能に

ビットコイン・イーサリアムを「楽天キャッシュ」にチャージし、楽天ペイや楽天ポイントカードで利用可能に

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スマホ決済「楽天ペイ」が、ビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)からのチャージに対応しました。

楽天ペイにチャージできる仮想通貨は、ユーザーが「楽天ウォレット」に現物保有する「ビットコイン(BTC)」「イーサリアム(ETH)」「ビットコインキャッシュ(BCH)」の3種類です。最低1000円から最大10万円(1か月累計)の範囲でチャージでき、楽天キャッシュ残高に反映されます。これによって、保有する仮想通貨を日常の買い物などに利用できるようになります。

ビットコイン・イーサリアムを「楽天キャッシュ」にチャージし、楽天ペイや楽天ポイントカードで利用可能に

なお、通常、楽天ウォレットから銀行口座を経由して日本円で出金する場合には300円の手数料が必要です。一方、楽天ペイにチャージする場合は、そうした手数料は不要です。ただし、市場の変動などにより、実際のチャージ額がユーザーが指示したチャージ金額から数円程度減額される場合があります。

今後については、ウォレット側ではなく楽天ペイアプリ上の操作で、仮想通貨を残高にチャージできる機能を今春提供します。

2月24日から3月24日まで、仮想通貨から楽天キャッシュへチャージで最大1000円相当の楽天ポイントを付与するキャンペーンも実施します。進呈ポイントの内訳は、1回のチャージ金額1000円以上で100ポイント、5000円以上で500ポイント、1万円相当で1000ポイントとなります。

(Source:楽天ペイEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:フィンテック
タグ:暗号資産 / 仮想通貨(用語)Ethereum(製品・サービス)Bitcoin / ビットコイン(用語)楽天 / Rakuten(企業)楽天ペイ日本(国・地域)

インドネシアの投資アプリFUNDtasticがシリーズAで8億円を獲得、狙いはZ世代

パンデミックの市場への影響にもかかわらず、インドネシアでは個人投資家、それも特に18歳から30歳の間で投資が増加している。シンガポール時間2月22日、投資プラットフォームFUNDtasticは、このニーズに対応するために770万ドル(約8億円)のシリーズAを調達したと発表した。同社はこれにより、個人投資家向けの新商品を発売する計画だとDealStreetAsiaは報じている。

このラウンドはシンガポールを拠点とするAscend Capital Groupが主導し、テック系持株会社Indivara Groupを含む他の投資家も参加している。FUNDtasticは、現在の投資信託や金投資の選択肢に個人向け債券、保険、ソーシャルレンディングを追加する予定だ。

FUNDtasticは2020年、投資信託と証券のポータルであるInviseeを650万ドル(約6億8000万円)で買収し、投資信託商品を直接販売できるようになった。

ジャカルタに拠点を置くFUNDtasticは、Harry Hartono(ハリー・ハートノ)氏、Franky Chandra(フランキー・チャンドラ)氏、そしてMedwin Susilo(メドウィン・スシロ)氏によって2019年に設立された。インドネシアでの資本投資はまだ比較的少なく、代わりに不動産への投資を好む人が多い一方で、若手社会人が保有資産を分散させることにより、その数は徐々に増加している。インドネシア証券取引所は、より多くの個人投資家を誘致するための取り組みも開始している。

インドネシア人向けに個人投資をより身近なものにすることに注力している他のスタートアップには、最近資金調達を行ったAjaibやBibitなどがある。

関連記事:インドネシアのロボット投資支援アプリBibitが約31億円を調達、セコイア・キャピタル主導

カテゴリー:フィンテック
タグ:FUNDtasticインドネシア資金調達

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Aya Nakazato)

IPOに先立ち国際送金のTransferWiseが「Wise」に社名変更

先週末に私の受信箱に飛び込んできたプレスリリースは「10年が経ち、TransferWise(トランスファーワイズ)は、Wise(ワイズ)になりました」と叫んでいた。最近未公開市場で50億ドル(約5282億5000万円)の評価を受けたこのフィンテック大手は、IPOに先立ち、リブランディングを行っている。
もちろん、同社は実際には上場には言及していない、規制上の理由から、公表を望んでいたとしてもおそらくそれが許されないのだ。だが名前の変更はより合理的なティッカーの役に立つ。それだけでなく、新しい名前はより広い意味で10年の歴史を持つ同社が、B2Cの国際送金だけではなく、今や「国境を越えた決済ネットワーク」と呼ばれるものを構築しようとしている動きを反映している。

関連記事:国際送金サービスを手掛けるTransferWiseの企業評価は5250億円、330億円のセカンダリーセールを受け

「2011年に個人向けの送金サービスとしてスタートした我が社は、国境を越えた決済ネットワークを構築するまでに拡大し、1000万人の個人ならびに法人顧客のみなさまに対して、より安く、より速く、より快適に国際的な銀行業務をご提供できるよう支援を行っています」とTransferWiseは説明している。

10年の年月が過ぎた同社の、初期の資金調達時の資料はここで見ることができる。今や同社は、毎月45億ポンド(約6660億円)の国際取引を行っており、旧来の銀行を利用した場合と比較して、年間約10億ポンド(約1481億円)の顧客の手数料削減に貢献していると主張している。

これまで銀行のフルライセンスの申請は予定していないと主張していたWiseだが、最近では、独自のデビットカードをはじめとするマルチカレンシー銀行口座のような消費者向け / ビジネス向け商品を発売していて、あたかもチャレンジャー銀行のような雰囲気を醸し出し始めている。

現在の製品ラインは以下のようなものとなっている。

Wise:世界で最も国際的なアカウントを達成している。国際的な送金や支払いを行い、55種類の通貨でお金を保持し、10種類の通貨で本当の口座番号を取得できる。顧客は現在、30億ポンド(約4440億円)以上をWiseに保持し、140万枚のデビットカードが発行されている。

Wise Business(ワイズ・ビジネス):グローバルに展開するためのビジネスアカウントであり、個人アカウントのすべての機能に加えて、銀行フィード、大金の支払い、マルチユーザーアクセスなどの追加機能を備えている。過去12カ月間に15万社以上の企業がWiseに参加している。

Wise Platform(ワイズ・プラットフォーム):Monzo(モンゾ)、GoCardless(ゴーカードレス)、Xeroといったプラットフォーム銀行や企業が、Wiseのインフラストラクチャを利用して、彼らの顧客に対してより安く、より迅速な支払いや国際的な銀行機能を顧客に提供している。Wise Platformは、4大陸10カ国の銀行と提携している。

Wiseの最高経営責任者(CEO)で共同創業者のKristo Käärmann(クリスト・カーマン)氏の言葉を引用しよう。「今回、ようやく私たちの名前が、私たちがすでにお取引をしていただいている方々、すなわちマルチカレンシーを使っている方々や企業の方々に見合ったものとなりました。私たちのお客様のコミュニティにはすでに銀行機能も含まれているのです。私たちは単なる送金以上の課題を解決するために進化してきましたが、Wiseを利用する上での核となる体験は何よりも速く、安く、便利であることに変わりはありません。私たちの使命は変わりません。私たちは今でも、そしてこれからも、国境を越えてお金を働かせるようにします」。

顧客はすでに、新しいウェブサイトであるWise.comにオプトインすることができる。「すべての顧客を対象としたWiseブランドへの最終的な切り替えは、2021年3月に行われます」と同社は述べている。

カテゴリー:フィンテック
タグ:WiseIPO

画像クレジット:TransferWise / Wise

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(文:Steve O’Hear、翻訳:sako)

フィンテック企業は利潤追求とデータ倫理のバランスを取らなければならない

本稿の著者であるオーストラリア出身のRichard Steggall(リチャード・ステッグル)氏は、ニューヨークを拠点とするフィンテック企業Urban FTのCEO。フィンテック、資本成長、M&A、戦略的IPOアドバイザリーで20年以上の経験を持つ。

ーーー

金融機関は消費者の要求する利便を提供するテクノロジーに関して遅れており、Apple(アップル)、Amazon(アマゾン)、Google(グーグル)などの巨大テック企業が大衆の銀行になる道を空けている。2020年11月、Googleは同社の非接触決済サービスであるGoogle Payのデザイン変更を行い、既存銀行のサービスを統合し、ユーザーが大型テック企業に期待するようなシームレスで便利なユーザー体験を実現した。

ただし、そこには裏がある。

Googleが仕かけた巧妙なトリックの裏には、1つの事実がある。Googleは広告会社であり、広告は2019年の収入源の71%を占めている

広告会社が銀行になりたがると何が起きるのか?

気にかけるべきことがある。広告会社、それも私たちの個人メールや位置情報、歌の好みや買い物リストなどから集めたテラバイト単位のデータを持っている会社が、今、私たちの銀行になりたがると何が起きるのか。答は不安だ。特にここ。あるいはここ。そしてここで見られるような巨大テック企業による驚くべきプライバシー軽視を踏まえれば。

金融市場が新たなテクノクラートの触手に干渉され、それも金融サービスの核心ともなると、かつて消費者や企業が依存してきた伝統的な銀行は、自分たちが岐路に立たされていることに気づく。市場シェアを維持するために、金融機関は新たなライバルたちが提供する利便性とパーソナライズにレベルを合わせるためにフィンテックへの投資を続ける一方で、これまでの信用と透明性を守らなくてはならない。

伝統的銀行はデジタル化に失敗した

フィンテックには、金融サービス業界を根底から覆し、金融機関(FI)が運用をより効率的にして卓越したユーザー体験(UX)を提供できるようにする可能性がある。

しかし金融機関、中でも小規模な地方銀行や信用組合には、転換を引き止めるデジタル格差がある。その多くが、豊富な資金を持つ全国規模の銀行や、VaroMonzoといったテック指向の新興あるいはチャレンジャーバンクとの戦いに長年苦闘している。2016年から2019年の間に全世界で1兆ドル(約106兆円)以上を新技術に注ぎ込んできた主要銀行は、デジタル転換プログラムによる財政的恩恵を未だ受けていない、とAccentureは伝えている。

パンデミック下で多くの顧客がオンラインへと大量移動したことで、ギャップはこれまでになく広がっている。2020年4月だけで、モバイルバンキングの新規登録数は200%増加し、モバイルバンキングの総トラフィックは85%増えた、とFidelity National Information Services(FIS)は述べている。

データは巨大テック企業最大の成果で、金融サービスの収益ではない

当然、巨大テックは金融サービスに進出するチャンスを逃さずイノベーションの力を誇示し、銀行や信用組合は互角に戦うために大変な努力を強いられている。しかし、財産のデジタル化を考えている消費者は、伝統的な銀行に別れを告げてビッグテックの胸に飛び込む前に、用心しなければいけないことがある。

まず大型テック企業にとって、決済・金融サービスへの進出には多面的で意味があることを理解する必要がある。たとえば支払い代行機能は、小売やeコマースに焦点を当てている会社に新たな収入源を提供するだけでなく、ショッピングのプロセス全体により大きな力と制御をもたらすことを約束する。

米国における規制はこうした介入にある程度制約を与えるか、少なくとも会社が直接的に利益を上げることは制限するだろう。もちろん巨大企業たちは銀行設立許可についてくる規制の「お荷物」を望んでいない

しかし、テック企業は決済や資産管理などのサービスで直接利益を上げる必要がない、データさえ集められれば。ユーザーの支出パターンの傾向を収集することで企業のROI(投資利益率)は大きく上昇する。ユーザーがどのようにお金を使っているか、住宅ローンはあるか、どんなクレジットカードを使っているか、銀行はどこか、誰と取引しているかなどを知ることができる。

提供されるデータには、プライバシーに大きく関わるもの、たとえば医薬品、保険、さらには婚約指輪の購入情報が含まれる可能性もある。

消費者の懐に対する鋭敏な視界を得ることで、Googleの広告プラットフォームがいかに高い価値を持ち、支配的になるかを想像できる。

銀行はデータ倫理問題をリードすべきだ

金融サービスのデジタル化に関しては、「大いなる力には、大いなる責任がともなう」という古い格言に真実味がある。

顧客データは驚きべきツールであり、銀行はあらゆる財政状態の消費者にサービスを提供できる。たとえば顧客の消費傾向を分析することで銀行は、消費者が貯蓄、投資、消費をより賢く行うためのソリューションを提供できる。

しかし、そのサービスの利用者になることが、自分の検索や購入と直接結びついた広告が殺到することを意味するとしたらどうだろう。あるいはもっと狡猾に、もし銀行があなたのことをあまりにもよく知っていて、ペルソナを作りあなたのニーズや欲求を本人より早く予測するとしたら。それが、Googleの銀行の顧客になった場合のあなたの将来のように見える。

顧客データを使って提供するサービスを改善するだけでは十分ではない。セキュリティとプライバシーを保証するやり方で行わなければならない。水面下で収益をあげようとするのではなく、サービスをパーソナライズするためにデータを使うことによって、銀行は消費者ニーズの理解を深め、信頼を勝ち取ることができる。

信頼は銀行が自らの王座を守るための武器になる。消費者が自分のデータがどのように使えることができているかを気にかけ、それに反抗するようになればなおさらだ。プライバシーとセキュリティに関するPonemonの調査によると、成人の86%がFacebookとGoogleによる自分たちの個人情報の利用について「大変気にしている」。

データ収集が必要ではあるが賛否を呼ぶ状況で、銀行にとって最大の競争優位性は信頼と透明性だ。nCipher Securityの調査によると、消費者は自分の個人情報について未だにほかのどの業界よりも驚くほど銀行を信頼している。同時に、テクノロジーに対する信頼は落ちてきており、36%の消費者が情報共有に関して1年前よりも安心していない、と PwCは報告している。

銀行は、データ倫理戦略と人工知能(AI)テクノロジーの普及をリードしながら、消費者の必要とするものを提供する主要な位置にいる。そうすることで、長期的にデータ収集で巨大テック企業の上を行くことができる。

消費者中心のWin-Winの未来を目指せ

金融サービス業界は重要な岐路に立たされている。消費者は、伝統的銀行を離れて個人データを巨大テック軍団に手渡してデジタル体験とより大きな利便性とパーソナライズを享受する選択肢を与えられている。

しかし銀行は、デジタル化で消費者中心のアプローチを取れば、今からでも消費者を取り戻すことができる。

巨大テックが広告収入を支えるために消費者データを収集するのに対して、銀行はパーソナライズと優れたユーザ体験のためにデータを集めることで消費者の心をとらえることが可能だ。これは、地方銀行や信用組合には特に当てはまる。サービスに対する人間的触れ合いのアプローチは彼らにとって常に大きな差別化要因だ。データ収集の安全と透明性を確保しながらパーソナライズした対応を行うことで、銀行は市場シェアを取り戻し消費者の心を再びとらえることができる。

巨大テック企業は、私たちのデータに関してやってはいけないことの脚本を書く一方で、卓越した体験をどうやって作るかの足場を作ってきた。仮に銀行が、テクノロジーの専門知識もFacebook、Goolge、Appleのように豊富な資金も持っていなくても、倫理的データ利用と優れたユーザー体験の微妙なバランスを理解している責任感あるフィンテックとパートナーを組むことができる。

正しく行えば、誰でも勝者になれる。

カテゴリー:フィンテック
タグ:銀行コラム

画像クレジット:Viktor Kitaykin / Getty Images

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(文:ゲストライター、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Varo BankがNBA選手ラッセル・ウェストブルック選手が主導するラウンドで約66.5億円調達

2020年、米国で初めてネオバンクとして全米銀行免許を付与されたVaro Bank(ヴァロ・バンク)は、米国時間2月18日朝、新たに6300万ドル(約66億5000万円)の資金調達を行ったと発表した。このラウンドは、NBAのスター選手であるRussell Westbrook(ラッセル・ウェストブルック)氏が主導したもので、彼はまたアドバイザーとしても同社に加わり、有色人種のコミュニティなど十分なサービスを受けていないコミュニティを対象としたプログラムの方向性に直接助言を与えていくという。

関連記事:2017年開業のモバイルバンクキングスタートアップのVaroが全米銀行免許を取得しリアル銀行に

ウェストブルック氏の投資は、以前ソーシャルアバターのスタートアップ企業であるGenies(ジーニーズ)を支援したRussell Westbrook Enterprises(ラッセル・ウェストブルック・エンタープライゼス)を通じて行われた。

これまでVaro BankにはWarburg Pincus(ウォーバーグ・ピンカス)、The Rise Fund(ザ・ライズ・ファンド)、Gallatin Point Capital(ギャラティン・ポイント・キャピタル)、HarbourVest Partners(ハーバーヴェスト・パートナーズ)、そしてBlackRock(ブラックロック)が運用するファンドなどが投資してきた。Varo Bankは2020年、シリーズDの資金調達で2億4100万ドル(約254億円)を調達している。今回の追加資金により、現在までの調達総額は4億8240万ドル(約509億円)となった。

2017年に設立されたVaro BankはChime(チャイム)、Current(カレント)、N26、Level(レヴェル)、Step(ステップ)、Moven(ムーヴン)、Empower Finance(エンパワー・ファイナンス)、Dave(デイヴ)、GoBank(ゴーバンク)、Aspiration(アスピレーション)、Stash(スタッシュ)、Zero(ゼロ)など、米国で増えているオールデジタル銀行と競合している。

多くのネオバンクと同様、Varo Bankは、月々の手数料や最低残高の要件がなく、現代的なモバイルアプリを使って簡単に利用できる銀行口座を提供している。また、高金利預金も提供しており、顧客は全米に5万5000台が設置されているAllpoint(オールポイント)の手数料無料のATMネットワークを利用できる。しかし、Varo Bankには実店舗の銀行支店はない。

Varoは2020年、米通貨監督庁(OCC)から全米銀行免許を取得し、連邦預金保険公社と連邦準備制度理事会から認可を得て、Varo Bank, N.A.を開設したことを発表。これで事実上「本物の」銀行となった。

現在、Varo Bankは300万以上の銀行口座を持ち、預金残高は前年比900%以上増加していると同社はいう。Varoのプラットフォームにおける利用額も、前年比で300%以上増加している。

ウェストブルック氏がVaro Bankと仕事をすることに関心を持ったのは、同社が銀行サービスを通じて金融の不平等に影響をおよぼすことに取り組んでいるからだ。具体的には、同社は最大2日分の早期給与預金、全国平均より高金利の普通預金口座、資格を得た顧客がVaro Bankアプリで必要に応じて100ドル(約1万550円)まで利用できる短期の小口融資(キャッシング)「Varo Advance」を導入することに力を入れている。この貸付サービスは2020年12月に開始されたが、新型コロナウイルスの影響で、2021年3月までは手数料無料のままとなっている。

今回調達した新たな資金は、Varo Bankのサービス拡大のために使用されるほか、ウェストブルック氏と協力して、十分なサービスを受けていないコミュニティにおける金融リテラシーの構築に焦点を当てたコミュニティ感化プログラムを共同で作成する予定だと、同社はTechCrunchに語った。

「銀行システムは米国の人口の大部分、特に有色人種のコミュニティに対し、無視したり、十分なサービスを提供していませんでした。私は持続的な社会変革を実現し、より強固で包括的なシステムを構築することに情熱を注いでいます」と、ウェストブルック氏は今回の投資についての声明で述べている。「私はVaroと協力して、これまで相応のサービスが受けられなかった人々に向けた経済再活性化の一翼を担うことに興奮し、その準備を整えています」と、同氏は続けている。

Russell Westbrook Enterprisesは今回の投資に際し、Jefferies LLC(ジェフェリーズLLC)から独占的な助言を受けたと、同社は記している。

【追記】Varo Bankの既存の投資家は今回のラウンドに参加しなかったが、他のVCや、ファミリーオフィス、個人が参加した。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Varo Bank資金調達銀行

画像クレジット:Varo

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

公共料金を分割などで払えるようにするPromiseが約21億円調達

2020年は何十億人という人にとって経済的に試練の年だった。特に試練となったのが公共料金、税金、他の行政関係費用の支払いという基本的なものだ。公的な支払いのためのシステムは簡単に、あるいはフレキシブルに支払えるようにはできていない。Promise(プロミス)はそれらの決済システムを統合し、全額を一度に支払えない人向けに手数料と債務の条件を寛容なものにすることでそうした状況を変えることを目指している。その実現に向け同社は2000万ドル(約21億円)を調達した。

ほぼすべての金が家賃と食費に充てられる場合、水道代や電気代のようなイレギュラーな請求を支払う金をかき集めるのは難しい。そうした公共サービスは携帯電話の契約より短い猶予期間でサービスを止めるということはほぼ考えられないため、それらの支払いを先送りするのは無難だ。しかしそれは請求書が数枚溜まるまでのことで、ある日、未払い料金が何百ドル(数万円)にもなっているのに気づく。そして、未払い料金を分割払いする方法はなく、超過料金を払う。チケット代金やその他の料金、罰金についても同様だ。

PromiseのCEOで共同創業者のPhaedra Ellis-Lamkins(ファエドラ・エリス-ラムキンス)氏はこれが現在のシステムが陥っている状況だ、と説明した。支払い計画がオンライン精算時にワンクリックで提供されるテレビや家具の購入と異なり、地方自治体の支払いサイトあるいは公共料金支払いにはそうしたオプションはほぼない。

「人々が支払う意思のある料金の支払いに苦慮していること、もしそうした人にリマインダーや利用できる支払いオプション、フレキシビリティを提供すれば人々はかなりの率で支払うことがわかりました。システムが問題なのです。システムは銀行口座にいつも余っている金があるわけではない人のためにデザインされていません」と同氏はTechCrunchに語った。

「たとえばもし誰かが15日の午後10時に1回目の支払いをすると、同じ額を翌月15日の午後10時に支払えるだろうとシステムは考えます。こうしたシステムはほとんどの人が最低限必要なものをまかなうのに苦労していることを理解しません。週払いにするか、複数回の支払いに分割される必要があります」。

支払いプランを提供しているものでも多くの欠陥があり、これは少なくとも部分的にはフレキシビリティの欠如のためだ、とエリス-ラムキンス氏は話した。不払いは全プランのキャンセルにつながりかねない。そもそも加入すること自体が難しいことすらあるかもしれない。

「一部の都市は支払いプランを提供していますが、サインアップするのに実際に足を運んで複数ページの書式に記入し、収入の証明を提示して制限基準を満たさなければなりません。税申告や他の書類作成とは対照的にプロセスの簡素化に自己証明を使うために我々はパートナーと協業することができました。現在当社の返済率は90%超です」。

Promiseは一種の仲介人のように機能する。エージェンシーや公共サービスを統合し、滞納している人に異なる支払いシステムの可能性を気づかせる。オンラインショップで購入するときに、分割払いを含むさまざまな支払いオプションを目にするのと似ている。

画像クレジット:Promise

ユーザーは支払いプラン(携帯電話は多くの人が使用するインターネットの形態であることからサービスはモバイルフレンドリーだ)に加入し、Promiseがリマインダーや領収書、処理、エージェンシーへの入金などを行う。同社はコストを前払いで徴収せず、独自のやり方で回収する。要は、Promiseは政府機関や他の公共料金を集める組織を専門とする追加のフレキシブルな支払いメカニズムだ。

Promiseはサブスク料金(たとえばSaaS)と取引手数料で稼いでいて、どちらも顧客にとって理にかなったものだ。想像がつくかもしれないが、公共サービスにとって回収すべき500ドル(約5万2700円)をまったく回収できないリスクをとるより、あるいはもっと手間のかかる手法や高いコストがかかる滞納金回収手法をとるより、500ドルの回収を確実なものにするために数ドル(数百円)の手数料を払う方がよりリーズナブルだ。

あなたがこれは大きな問題ではない(その結果大きなマーケットではない)と考えるといけないので、エリス-ラムキンス氏はカリフォルニア州の160万人が10億ドル(約1056億円)の水道料金を滞納していて、8世帯のうち1世帯が平均500ドル(約5万3000円)を延滞している、という同州水委員会の最近の調査結果を示した。

パンデミックがほぼ全世帯におよぼした大きな経済的影響を考えると、こうした数字は通常より悪いものだろう。しかし他の状況での支払いプランのように、それぞれ収入の異なる世帯がそうしたシステムのメリットを自分の都合に合わせて利用できる。鈍いデザインの公共料金支払いサイトを利用しなければならなかった多くの人が代替手段を歓迎するだろう。

今回のラウンドにより、Promiseの累計調達額は3000万ドル(約32億円)を超えた。うち1000万ドル(約11億円)は2018年にY Combinatorを卒業した直後に調達している。最新の出資は既存投資家のKapor Capital、XYZ、Bronze、First Round、YC、Villageなどによるものだ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Promise資金調達

画像クレジット:SEAN GLADWELL / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

Robinhoodのライバル、株取引アプリPublicが予想通りユニコーン評価で約233億円を調達

Robinhood (ロビンフッド)米議会下院に詰問される前日、国内のライバルPublic.com(パブリック)は米国時間2月17日朝、12億ドル(約1270億7000万円)の評価額で2億2000万ドル(約233億円)の資金調達ラウンドを完了したと発表した。このラウンドのニュースはTechCrunchが最初に報じていた。さらなる報道で、投資規模と評価額の範囲が明らかになった

Publicは今回の資金調達のニュースを確認するとともに、新たに会員数100万人に到達したという指標を追加した。サービス開始からわずか18ヶ月の間にそれを達成したと、同社はすかさず指摘している。

つまり、Publicの投資家(最新のラウンドは、Greycroft、Accel、Tiger Global、Inspired Capital、その他を含む先行投資家によってまとめられた)は、現在の「メンバー」1人あたり約1200ドル(約12万7000円)で同社を評価していることになる。それを高価と感じるかどうかは、読者の方々の判断にお任せする。

しかし、貯蓄と投資の分野への関心が高まっており、Robinhoodの収益は2020年第4四半期に8億ドル(約847億円)以上のランレートに成長し、2021年初めにはさらに良くなると見られている中、投資家がなぜPublicを支援しているのか理解するのは難しいことではない。RobinhoodブランドがGameStop(ゲームストップ)騒動による苦境から重大なダメージを受けたと信じるならば、なおさらだ。

両社は、貯蓄や投資商品を提供する他の多くのフィンテックサービスとともに、物理的な世界(対面ショッピング、銀行の支店、プラスチックカード)からデジタル(ネオバンク、eコマース、バーチャルカード)への銀行業務の長期的なシフトに後押しされてきた。Robinhoodは、ゼロコスト投資で取引の世界を揺るがし、構築が進んでいるモバイルおよびバーチャルバンキングの未来によくフィットしている。そして一方のPublicは、注文フローの支払い(PFOF、Payment For Order Flow)を廃止することによって、そのモデルをさらに一歩踏み出した。PFOFは、Robinhoodのような企業がユーザー取引を特定のマーケットメーカーに発注する際に小額の報酬を得ることにより収益を生み出す方法だ。

TechCrunchでは最近、この予想されていたPublicのラウンドを踏まえて、「株式取引スタートアップのための資金は無限にある」ようだとジョークを飛ばしていた。次の高額小切手は誰が手にするのか、見どころだ。

関連記事:南アフリカのVC企業Knife Capitalが資金52.5億円確保、シリーズB10〜12社への投資を計画

カテゴリー:フィンテック
タグ:投資 資金調達

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Aya Nakazato)