クリエイターが所有するデジタルコミック、ニュースレター、IP管理プラットフォーム「Zestworld」

コミック界はインターネットが誕生して以来、デジタル革命を待ち望んでいたように思われる。2007 年に立ち上げられたComiXology(コミクソロジー)は、コミックスというメディアにそうした動きをもたらすのに最も近い存在であったため、当然ながらAmazon(アマゾン)はこのサービスを買収して台無しにした。その最新の変更はサブスクライバーを置き去りにし、その結果、同ブランドは「統合プロセスはシームレスとは程遠い」と認め、ユーザーからのフィードバックに対応することを約束した。

これはKickstarterが2021年末、ブロックチェーンに関する重大発表の後に受けた反動と似ていなくもない。同サービスは長年クリエイターの間で人気があったが、その層が最近の発表で疎外感を覚えたのだ。最近では、Substack(サブスタック)がコミック分野に参入し、Grant Morrison(グラント・モリソン)やChip Zdarsky(チップ・ズダースキー)などの大物を起用しているが、このサービスにも賛否両論がないわけでもない。

2021年に発表されたZestworldは、独自のカスタムビルドプラットフォームでこの媒体に挑戦しようとしている。コミックメディアに特化して設計されたこのサービスは、すでにReddit(レディット)の共同創業者であるAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏やTwitch(ツイッチ)の共同創業者として知られるKevin Lin(ケビン・リン)氏など、著名な支援者を獲得している。

オハニアン氏はリリースで「コミッククリエイターが作品をデジタルで公開し、ファンとつながるための現在の状況はひどいものです」と述べている。「Zestworldは、コミッククリエイターのビジネスとコミュニティのあらゆる側面を1つの集中型プラットフォームに集約し、コミッククリエイターがIPを公開し所有する方法を破壊すると同時に、ファンがまったく新しい方法でクリエイターと直接つながることを可能にしています」。

オハニアン氏とリン氏はともに、General Catalystが主導する937万ドル(約11億3000万円)のシリーズAラウンドに参加した。この資金は、クリエイターにコミックに最適化されたニュースレタープラットフォームとIP管理ツールを提供するという同サービスの計画を実現するために使われる予定だ。もちろん、IPは長い間、主流のコミック業界の飯の種として機能してきた。最高レベルでコミックを売って生計はなんとか立てられるが、正直なところ、この業界で本当に儲かる部分はライセンシングだ。

「クリエイター主導のプラットフォームを見つけることはコミックにおける真のチャレンジであり、Zestworldが提供するものは新鮮で透明性があります」と、この立ち上げに関わった作家の1人であるAlex Segura(アレックス・セグラ)氏は述べている。「Zestworldは、私のようなクリエイターが自分のスケジュールに合わせて作品を公開し、特典やクリエイティブチームと私が読者と交流する方法をカスタマイズできるようにし、プラットフォームを通じて公開するすべての作品の知的財産権を維持することを可能にします。これほどすばらしいことはありません」。

セグラ氏は、Amanda Conner(アマンダ・コナー)氏、Jimmy Palmiotti(ジミー・パルミオッティ)氏、Peter J. Tomasi(ピーター・J・トマシ)氏、Eric Canete(エリック・カネテ)氏、Phil Jimenez(フィル・ヒメネス)氏らとともに同プラットフォームに参加する。その他、コミュニティ管理や「NFT / メタバースイベント」などの機能も約束されている。2022年にサービスを開始するには、それらを抜きにしては語れないからだ。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:Den Nakano)

マンガ特化型AI翻訳システムのMantra Engineが新バージョンをリリース、14カ国語・縦スクロール作品に対応開始

マンガ特化型AI翻訳システムのMantra Engineが新バージョンをリリース、14カ国語・縦スクロール作品に対応開始

「Mantra Engine」を用いた縦スクロールコミックの翻訳作業 ©︎table桌子

マンガに特化した機械翻訳技術の研究・開発を行うMantraは2月28日、マンガ翻訳システム「Mantra Engine」の新バージョンをリリースしたことを発表した。新バージョンでは、縦スクロールコミック(Webtoon、SMARTOON)の翻訳対応、14カ国語への多言語翻訳対応が実装された。

Mantra Engineは、出版社やマンガの制作・配信事業者を対象にした法人向けクラウドサービス。Mantraが独自に開発したマンガ専用の機械翻訳技術と、プロの翻訳者による修正・校閲を組み合わせることで、高速な多言語展開・翻訳版の制作を行える。マンガの翻訳版制作に関する様々な作業をウェブブラウザー上で行えるほか、進捗をリアルタイムに把握することも可能。Mantra Engineは、国内外10社以上のマンガ配信事業者や翻訳事業者、出版社に導入されており、月間約2万ページ(単行本換算で約100冊分)のマンガ多言語化に活用されているという。

マンガ特化型AI翻訳システムのMantra Engineが新バージョンをリリース、14カ国語・縦スクロール作品に対応開始

「Mantra Engine」を用いた日本語組版 ©︎朽鷹みつき

「世界の言葉で、マンガを届ける。」をスローガンに掲げるMantraは、国内外のより多くの作品の多言語展開を支援するため、今回のMantra Engineの大規模アップデートを行なった。新バージョンでは、「ルビ・縦中横・禁則処理などCJK言語特有のレイアウト処理」「合成フォントや自動カーニング、ベースラインシフトの組版処理」といった柔軟な編集機能を採用。

また、14カ国語の多言語翻訳をサポート。入稿対応言語は、日本語、英語、中国語(簡・繁)、韓国語。翻訳対象言語は、日本語、英語、中国語(簡・繁)、韓国語、ベトナム語、インドネシア語、タイ語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、ポーランド語、ロシア語となっている。

・入稿対応言語:日本語、英語、中国語(簡・繁)、韓国語
・翻訳対象言語:日本語、英語、中国語(簡・繁)、韓国語、ベトナム語、インドネシア語、タイ語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、ポーランド語、ロシア語

マンガ特化型AI翻訳システムのMantra Engineが新バージョンをリリース、14カ国語・縦スクロール作品に対応開始

「Mantra Engine」での英語組版 ©︎table桌子

ナビタイムがアニメなどに登場するスポット情報整備、全80の「聖地巡礼」ウォーキングコースとロケ地観光情報20本公開

ナビタイムジャパンは11月17日、アニメや漫画、ゲームに関するスポットデータを独自整備し、作品にゆかりのある場所を訪れる「聖地巡礼」オリジナルコースと紹介記事の提供を開始した。全80コースのウォーキングコースは、ウォーキングアプリ「ALKOO by NAVITIME」(Android版iOS版)、「ALKOO forスゴ得」(Android版)、「ALKOO for auスマートパス」(Android版)で、ロケ地の紹介やアクセス情報をまとめた全20本の記事は旅行予約サービス「NAVITIME Travel」で提供されている。

アニメや漫画、ゲーム関連の「聖地」情報は、建物や公園、駅などに加え、道路上の特定の場所(階段や坂道、交差点、マンホール、モニュメントなど)といったより細かなスポットを示す特徴がある。ナビタイムジャパンは、全国900万件以上の地点データを扱ってきたノウハウを活かし、各作品のスポットを確認しデータを拡充。今回、コア技術である経路探索技術をもとに、複数のスポットを徒歩60分間ほどで回るコースやアニメの登場順でめぐるコースを作成した。

アニメ・漫画の舞台となる場所を訪ねる「聖地巡礼」は、地域活性化を促進する観光資源として多くの自治体に取り入れられており、幅広い世代から人気が高い。ナビタイムジャパンは2019年1月より、NAVITIME Travelにて「アニメスポット特集」を公開し、アニメ関連の情報発信に力を入れてきた。

今後は、自転車や自動車向けのコースを拡充し、移動手段に合わせた「聖地巡礼」を楽しめるようサービスの向上に努めたいという。

ナビタイムがアニメ・漫画・ゲームに登場するスポット情報整備、全80の「聖地巡礼」ウォーキングコースとロケ地情報記事20本公開

「ALKOO by NAVITIME」で提供しているウォーキングコースは全80コース。対象作品はラブライブ!、呪術廻戦、ガールズ&パンツァー、恋は雨上がりのように、名探偵コナンなど

ナビタイムがアニメ・漫画・ゲームに登場するスポット情報整備、全80の「聖地巡礼」ウォーキングコースとロケ地情報記事20本公開

「NAVITIME Travel」で提供している記事は全20本。対象作品は鬼滅の刃、天気の子、あひるの空、ヒプノシスマイク、東京リベンジャーズなど

ブロックチェーン・NFT活用したマンガのファンコミュニティーサービス「GANMA!コミュニティ」正式版が提供開始

GaudiyがNFTや分散型IDなどブロックチェーンを活用しファン体験を統合する新規ゲームIPパートナーを募集

ブロックチェーンとエンターテインメントを結び付け、ファンコミュニティー事業を展開するGaudiy(ガウディ)は11月9日、コミックスマートと共同でブロックチェーンを活用したファンコミュニティーサービス「GANMA!コミュニティ」(ガンマ!コミュニティ)正式版の提供開始を発表した。

Gaudiyは、マンガアプリ「GANMA!」(Android版iOS版)を介しマンガ家の育成やマンガコンテンツの配信などを行うコミックスマートと共同で、ファンが自主的にマンガ作者や作品を応援できる共創型のファンコミュニティーサービス「GANMA!コミュニティ」ベータ版の開発と提供を行ってきた。そこでは、「漫画の新たな楽しみ方やファンと漫画の新しい関係性を、ファン主体で創っていくコミュニティ」として、ファン同士の交流や創作活動を促進すると同時に、新しいオークション方式による作品関連のデジタルアイテム(NFT)の販売といったファン体験の実験も行われた。

一般にNFTの販売では、設定価格から値段を下げてゆく「ダッ・チオークション」方式(競り下げ方式)が主流だが、わかりづらいなどの問題が多い。そこでGANMA!コミュニティでは、値段を競り上げてゆく方式をベースに、慶應義塾大学経済学部の坂井豊貴教授との共同研究で生まれた「Gaudiy-Sakai方式」を採用した。これは、事前入札期間を設け、参加者の需要に応じてNFTアイテムの発行枚数を決めるというというもの。価格と発行枚数を適切に調整できる「公正でユーザーフレンドリーな」方式だという。実際にGaudiy-Sakai方式のオークションでは、NFTになじみの薄い中高生も多く参加し、「作品のファンを楽しませる新しい体験を提供」できたとGaudiyでは話している。

ブロックチェーン・NFT活用したマンガのファンコミュニティーサービス「GANMA!コミュニティ」正式版が提供開始ブロックチェーン・NFT活用したマンガのファンコミュニティーサービス「GANMA!コミュニティ」正式版が提供開始

そうした取り組みにより、新規ファンの増加、ファン同士の自発的なコミュニケーションの創出・活性化が見られ、「コミュニティ醸成における一定の成果」が確認されたことから、GANMA!コミュニティ正式版のリリースとなった。Gaudiyとコミックスマートは、今後も「マンガ業界の課題解決と新しいファン体験の創出」に務めてゆくとのことだ。

Mantraがマンガ特化の多言語翻訳システムで小学館「マンガワン」英語版展開を支援、海賊版サイトの作品取り下げにも寄与

暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.11.8~11.14)

マンガに特化したAI翻訳技術の研究・開発を行うMantra(マントラ)は11月1日、小学館のマンガ配信サイト「マンガワン」の英語版展開を、多言語翻訳システム「Mantra Engine」で支援すると発表。共同による取り組みを開始した。


マンガワンの海外展開は、海外で広く普及している海賊版への対処でもある。Mantraが2021年に行った調査では、小学館が出版したマンガのうち、正規の手続きを踏んで翻訳された公式版に対して、海外海賊版は約5倍の量が流通していることがわかった。なかでも、「ケンガンアシュラ」と「ケンガンオメガ」のシリーズは、確認できた海外海賊版サイトだけでも閲覧回数が1億回を超えていた。

ただ、海賊版の制作者に対するアンケートでは、公式な翻訳版がないためという回答が67.7%あり、大好きなマンガを広めたいという気持ちが強い熱烈なファンによる行為であることがわかる。その証拠に、「ケンガンアシュラ」「ケンガンオメガ」の公式な翻訳版の配信予定が発表されると、海外海賊版制作グループは海賊版の制作を停止し、公開済みエピソードの配信取り下げを発表したという。

小学館では、そうした熱烈なファンの力を活用して、正規の翻訳版制作に取り組んでいる。上記の理由から、公式版の公開が急がれるが、そこでMantra Engineの能力が活かされることになる。このシステムでは、翻訳担当者に原稿データを送ることなくウェブブラウザー上で作業が行えるほか、AI技術による支援機能により安全性と効率性が両立され、制作時間が従来の約半分に短縮されるとのことだ。

翻訳を行うのは、Mantraが個別に面談し協力を依頼したマンガファン。彼らはMantra Engineで作業を行った英語版は、英語圏向けマンガ配信サービス「Comikey」から日本語版と同時に公開される。

NASAが女性初の月面歩行を実現する宇宙飛行士を描くARコミック公開、次世代人材の獲得に向けた取り組み

NASAが女性初の月面歩行を実現する宇宙飛行士を描くARコミックを公開、次世代人材の獲得に向けた取り組み
米国では9月25日をコミック本を祝う日”Nationlal Comic Book Day”としてイベントなどが行われていましたが、これに合わせてNASAは、デジタル・インタラクティブ・ノベル「First Woman: NASA’s Promise for Humanity」を公開しました。これは月面探査をする女性宇宙飛行士キャリー・ロドリゲスを描いた架空の物語で、アルテミス計画において、女性で、なおかつ有色人種として、初の月面歩行を実現するという歴史的偉業を達成するというあらすじ。

作品は40ページのコミック版では月への宇宙旅行、着陸、月面探査に使われるNASAの技術が紹介されていて、ブラウザーで読んだり、PDFでダウンロードもできます。また音声バージョンもSoundCloudなどで聴くことが可能です。

そしてモバイルアプリで提供されるデジタル版(Android版iOS版)では、拡張現実(AR)要素を盛り込んだインタラクティブな体験が提供され、読者は実物大であったり3DでOrion宇宙船や月面探索などができるようになります。そのほかにもゲームや動画をプレイまたは視聴したり条件を満たしてバッジを取得したりして楽しめるようになっています。

作品は次の飛行士になる世代に宇宙への興味を持ってもらうことを目的としたもので、NASA宇宙技術ミッション部門のコミュニケーション・ディレクター、デレク・ワン氏は「このグラフィック・ノベルとデジタル・エコシステムは、これまでにない刺激的な方法でNASAの仕事を知っていただくために制作しました。魅力的で親しみやすいコンテンツは幅広い年齢層の宇宙ファンから、STEM教育の新しい方法を探している熱心な教育者まで、誰にでも楽しんでいただける内容になっています」と述べています。

子供向け、と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、コンテンツにはNASAの長期的な計画もわかりやすく記されているとのことなので、興味があれば見てみるのも良さそうです(ただしすべて英語です)。なお、NASAはこのコンテンツのスペイン語版も提供する予定とのこと。スペイン語のほうが得意ならそちらをお待ち下さい。

(Source:NASA(1)(2)Engadget日本版より転載)

マーベルの定額コミック読み放題アプリ「Marvel Unlimited」がアップデート

Marvel(マーベル)が定額制コミックアプリ「Marvel Unlimited(マーベル・アンリミテッド)」の新バージョンをリリースした。今回のアップデートでは、スマートフォンやタブレット端末の画面に合わせてデザインされた高解像度の縦型コミック「Infinity Comics(インフィニティ・コミックス)」の配信が始まている。当初は27作品のInfinity Comicsが提供されているが、年内には100作品以上が読めるようになる予定だ。その中には「X-Men Unlimited(エックスメン・アンリミテッド)」「Captain America(キャプテン・アメリカ)」「Black Widow(ブラック・ウィドウ)」「Deadpool(デッドプール)」「Shang-Chi(シャン・チー)」「Venom / Carnage(ヴェノム / カーネイジ)」などのシリーズが含まれる。

すべてが新しく、すべてが違うMarvelUnlimitedを体験せよ。

マーベルコミックを読むために必要なものがすべて揃ったアプリ! マーベル・ユニバースに飛び込むためのアップデートされた機能をご紹介します。

マーベル・エンターテインメント

Disney Media & Entertainment Distribution(ディズニー・メディア&エンターテインメント・ディストリビューション)の協力を得て一から作り直されたこのアプリでは、コミックをオフラインで読むための無制限のダウンロードが可能になり、コンテンツを別の場所で共有することができるようになった。他にもマーベルは、合理化されたデザイン、安定性の向上「クラス最高のスピードと検索ツール」、自分の好みに基づいてカスタマイズされる読書ガイドなどの改良を約束している。また、Marvel Insider(マーベル・インサイダー)のメンバーは、このアプリを利用することでポイントを貯めることもできる。

月額プランは10ドル(約1100円) / 月、標準年間プランは69ドル(約7600円) / 年。年間99ドル(約1万900円)の「アニュアル・プラス」プランは、月額プランや標準年間プランの特典に加え、メンバーシップキット、イベントへの招待、shopDisney(ショップディズニー)での割引などが含まれる。

Marvel Unlimitedには現在、2万9000冊以上のコミックが登録されており、毎週追加されていく。しかし、紙のコミックが店頭に並んでから作品がアプリに反映させるまでには、少なくとも3カ月のギャップがある。

今回のアップデートは、とっくに更新されるべき時期が過ぎたと思われていたアプリにとって、歓迎すべきものだ。Disney+(ディズニープラス)でマーベルの「What If…?(ホワット・イフ…?)」シリーズを観ていて、あるいはMarvel Cinematic Universe(マーベル・シネマティック・ユニバース)で他の作品を観ていて、コミックも読んでみたいと思っていた人は、この機会にMarvel Unlimitedを試してみてはいかがだろうか。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者Kris Holtは、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Marvel

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(文:Kris Holt、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Mantraと大日本印刷がマンガ用AI翻訳エンジン開発、大日本印刷独自のマンガ多言語化システムに搭載

Mantraと大日本印刷がマンガ用AI翻訳エンジン開発、大日本印刷独自のマンガ多言語化システムに搭載し2021年度中に実用化

大日本印刷(DNP)は9月8日、マンガに特化したAI翻訳サービスを展開するMantraと共同で、マンガのためのAI翻訳エンジンを開発したと発表した。これは、DNPが独自に開発したマンガを多言語化するシステム「DNPマンガオンラインエディトリアルシステム MOES」(モエス)に搭載されるもの。2021年度中の実用化を目指している。

海外での日本のマンガの需要が増加し、マンガを多言語化してグローバル展開するための体制整備が進められているが、マンガの翻訳については、話し言葉が多いことや、吹き出で文章が細切れになることなどから自動翻訳が難しく、翻訳タイトル増加のネックになっているという。コストや負担の面から翻訳タイトルの数を抑える出版社も多いとのこと。そこで、DNPとMantraは、マンガに特化して精度を高めたAI翻訳エンジンを開発した。

MOESは、マンガの翻訳・レンダリング・校正・進捗管理などを行うクラウドシステム。2016年から印刷物や電子書籍の翻訳版マンガ制作に利用されている。DTPソフトを使わずに、マンガのレイアウト上に直接翻訳文章を書き込めるため、文章の入れ違いなどのミスが防止できるほか、時差のある海外との作業では、データの授受や進捗管理を容易にして作業負担の軽減や時間短縮を可能にするという。これにAI翻訳機能が搭載されることで、ある翻訳会社の評価テストでは、翻訳作業時間が従来に比べて30%短縮されたという。

今後は、海外での需要が高い着色や縦スクロール化などの機能を開発し、MOESを軸とした海外版マンガ制作、製造体制を強化するとのこと。また、雑誌から単行本、海外版制作から電子コミックの配信という一連の流れを支援し「海外のマンガファンが多くの作品に触れる機会を創出」するという。さらに、サプライチェーンの最適化、コンテンツ価値の最大化などに取り組み、生み出した利益をコンテンツホルダーなどに還元することで、出版界の継続的な発展に貢献するとDNPは話している。

このシステムと国内外のマンガ制作関連事業で、DNPは5年後までに120億円の売上げを目指す。

2020年1月設立のMantraは、「世界の言葉で、マンガを届ける。」ことを目指し、マンガに特化したAI技術の研究開発およびサービスを提供するスタートアップ。2020年に公開したマンガの多言語翻訳システム「Mantra Engine」は、国内外のマンガ配信事業者・翻訳事業者・出版社に導入され、マンガ多言語展開の高速化に寄与しているという。2021年には、独自のマンガ機械翻訳技術が、人工知能分野のトップ国際会議AAAIに採択された。

 

マンガを独自技術でローカライズし短時間で世界中の読者に配信するシンガポールのINKR

デジタルコミックのプラットフォーム「INKR」のチーム(画像クレジット:INKR)

INKR(インカー)は、独自のローカリゼーション技術を用いることで、クリエイターが文化や言語の壁を越えて世界中の読者にリーチできるデジタルコミックのプラットフォームだ。これまで自己資金のみで運営してきた同社だが、米国時間7月28日、プレシリーズAの資金調達を行い、310万ドル(約3億4000万円)を調達したことを発表した。今回の資金調達はMonk’s Hill Ventures(モンクス・ヒル・ベンチャーズ)が主導し、マンガ配信会社TOKYOPOP(トーキョーポップ)の創業者兼CEOであるStu Levy(ストゥ・レヴィ)氏が参加した。

シンガポールに本社を置き、ホーチミンにもオフィスを構えるINKRは、2019年にKen Luong(ケン・ルオン)氏、Khoa Nguyen(コア・グエン)氏、Hieu Tran(ヒュー・トラン)氏によって設立された。同社によると、2020年10月に運営を開始して以来、月間平均ユーザー数は200%増加しているという。現在はFanFan(ファンファン)、Image Comics(イメージ・コミックス)、Kodansha USA(講談社USA)、Kuaikan(快看)、Mr. Blue(ミスター・ブルー)、SB Creative(SBクリエイティブ)、TOKYOPOP、Toon’s Family(トゥーンズ・ファミリー)など、70以上のコンテンツクリエイターや出版社と提携しており、これまでにマンガ、ウェブトゥーン、グラフィックノベルなど、800以上の作品を読者に提供している。

INKRのルオンCEOは、TechCrunchの取材に対し、このプラットフォームはまず、世界的なトップ出版社の翻訳コミックから力を入れていくものの、2022年には小規模な出版社やインディーズのクリエイターにも開放する計画があると語った。

INKRのプラットフォームの核になっているのは、独自のローカリゼーション技術だ。これによって、異なる市場に向けてコミックを準備するために必要な時間を、数日から数時間に短縮することができるという。

「コミックのローカリゼーションは、単に翻訳するだけではありません。ファイル処理、転写、翻訳、植字、効果音、品質管理など、多くの人が関わる多くの段階が必要な、時間のかかるプロセスです」とルオンCEOは語る。

INKRが配信している作品の一部(画像クレジット:INKR)

漫画の出版には、言語の違いだけでなく、日本の漫画、中国の漫画(manhua)、韓国の漫画(manhwa)、米国のコミックなど、世界各国のコミックスタイルの違いも考慮する必要がある。例えば、漫画には1ページずつレイアウトされているものもあれば、縦にスクロールして読み進めるものもある。左から右へ読む言語もあれば、右から左へ読む言語もある。

ルオン氏によると、INKRが独自に開発したAIエンジン「INKR Comics Vision(インカー・コミックス・ビジョン)」は、テキスト、セリフ、キャラクター、表情、背景、コマなど、コミックページ上のさまざまなフォーマットや要素を認識することができるという。また、人間の翻訳者のためのツール「INKR Localize(インカー・ローカライズ)」は、テキストの書き起こし、語彙の提案、タイプセットなどの作業を自動化することによって、正確な翻訳をより早く提供するために役立つ。

ローカライズ作業は、世界各地の異なる場所にいる人たちのチームによって行われるため、INKRはブラウザベースのコラボレーションソフトウェアを提供している。このプラットフォームは現在、日英、韓英、中英の翻訳に対応しており、今後も言語の追加が予定されている。快看漫画やMr.Blueなどの出版社では、中国語や韓国語で書かれた何千話もの漫画を英語に翻訳するためにINKRを使用している。

INKRはコンテンツ制作者に、広告サポート、購読料、各話ごとの支払いなど、収益化する手段の選択肢をいくつか提供している。ルオン氏によると、同社のプラットフォームはコンテンツを分析し、どの方法が収益を最大化できるかを判断してパブリッシャーに知らせ、得られた収益の一定割合を分配するという。

INKRと競って注目を集めているデジタルコミックプラットフォームには、他にもAmazon(アマゾン)が運営するComixology(コミクソロジー)や、韓国のNaver Corporation(ネイバー株式会社)が運営する出版ポータルのWebtoon(ウェブトゥーン)などがある。

ルオン氏は、INKRの競争力の強みとして、提供するコミックの多様性と価格の手頃さを挙げている。また、同社が起ち上げ前にデータとAIベースの技術に投資したことも、読者と出版社の両方に向けた強みとなっている。これによってユーザーは自分の読書活動に基づいてパーソナライズされた「おすすめ」作品を受け取ることができ、出版社は分析ツールを利用して消費傾向に基づく作品のパフォーマンスを追跡することができる。

Monk’s Hill VenturesのジェネラルパートナーであるJustin Nguyen(ジャスティン・グエン)氏は声明の中で、INKRの「独自のAIを活用したプラットフォームは、デジタル化とグローバル化を必要とするクリエイターやパブリッシャーの痛点に対応できます。多くの言語に、迅速かつ優れたコスト効率でローカライズすることが可能であり、それと同時に、分析ツールやパーソナライズされたインテリジェントなフィードによって、リーチと読者数の向上を支援します。私たちは、世界中の翻訳コミックに対する大きな需要に応えるために、彼らとパートナーシップを組めることを楽しみにしています」と述べている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:INKRデジタルコミック電子書籍ローカライズ翻訳シンガポール資金調達人工知能

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

GaudiyがNFTや分散型IDなどブロックチェーン技術を活用しファン体験を統合する新規ゲームIPパートナーを募集

GaudiyがNFTや分散型IDなどブロックチェーンを活用しファン体験を統合する新規ゲームIPパートナーを募集

ブロックチェーンとエンターテインメントを結び付け「これまでにないエンタメ体験」を創出するブロックチェーン・スタートアップGaudiy(ガウディ)は6月17日、ゲームIP事業者を対象に「数社限定」の新規パートナー募集を行うと発表した。

Gaudiyは、「ソニー・ミュージックエンタテインメントや集英社(週刊少年ジャンプ)などの大手エンタメ企業と協業し、漫画、アニメ、ゲーム、スポーツ、アイドルなどのエンターテインメント領域で、IPコンテンツを中心としたコミュニティサービス事業を展開」している。IPコンテンツ事業者に向けては、複数メディアを横断するデータ連携により「これまで分断されていたファン体験を統合」し、ファンのエンゲージメントを高める「FPaaS」(ファン・プラットフォーム・アズ・ア・サービス)を提供しており、今回の新規パートナー募集によってその活用の幅を拡大する。

このFPaaSは、ファンのエンゲージメントの「科学的」手法による向上、ゲーム外のメディアを横断するファン体験、自社の課題に合わせたカスタマイズ、外部プラットフォームに依存しない独自の経済圏の実現を目指すものという。具体的には、次の4つのソリューション事業を軸に展開している。

  • ファン共創型のコミュニティーサービス:誰でも簡単にファン主導によるゲーム大会などの企画、実施が可能になる機能を提供
  • NFTなどのブロックチェーン技術を活用した、新しいエンタメ体験:NFTを利用して、クロスメディア連携によるイラスト、音楽、チケットなどのデジタルコンテンツを提供
  • あらゆるファン活動に正しく還元する、分散型ID(DID)システム:分散型IDシステムと機械学習でメディア横断的にファンの活動をスコアリング、ファンへの還元や統合的ファン体験を提供
  • ファン参加型のカスタマーサポート機能:ユーザー同士の助け合いや、ファンから企業への要望を投票で優先させるなど。炎上リスクを抑えつつ企業側のカスタマーサポートコストを削減

新規パートナーの募集数は、「課題解決や実現したいファン体験づくりに全力でコミットさせていただくため」に数社に限定するとのこと。

例えば、Gaudiyが提供する大手ゲームIPの公式ファンコミュニティサービスの場合では、コアなファンを中心に1万人以上が登録し、同時接続数は1000人を超えているという(2021年6月時点)。

コミュニティのMAU(月間アクティブユーザー。Monthly Active Users)率は40%を超え、ファンアートやゲーム大会などのファン主催コンテンツや、ファン同士で疑問や困りごとを解決し合うなどの「ファン主体で楽しむ文化」が醸成されている。コミュニティサイエンスなどの知見をGaudiyの外部顧問である大学教授から取り入れることで、炎上リスクを抑えつつ、ファンの自律的な行動を生み出しているのが特徴としている。SNSと連動した参加型のキャンペーン企画(クイズ・投票・マストバイなど)では、累計27万票以上を集めるなどの事例も出ているという。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:アニメ / アニメーション(用語)NFT / 非代替性トークン / クリプトアート(用語)Gaudiy(企業)ゲーム(用語)DID / 分散型ID(用語)ブロックチェーン(用語)マンガ / コミック / デジタルコミック(用語)日本(国・地域)

デジタルコミックのスタートアップ「Madefire」が閉鎖

R.I.P.。Madefireは新しいフォーマットやプラットフォーム向けにコミックを再構築するために、著名なアーティストを採用していたスタートアップだ。

Madefireのウェブサイトに掲載されている通知によると、同社は2021年4月初めに「債権者のための利益の譲渡」(「破産に類似した州レベルの倒産手続き」と説明されている)を行ったとしており、これは米国時間4月29日朝のThe Beatでも報道されていた。その結果、新しい書籍は出版されず、ユーザーは追加で書籍を購入することができなくなり、購入したコンテンツは今月末までにすべてダウンロードすることが推奨されている。

このニュースは、Madefireの技術で作られた他のアプリにも影響を与えている。Archieのコミックアプリも同様に停止しており、出版社は「これが驚きであることは理解していますが、私たちは忠実な顧客へとあらゆる努力をしています」と述べている。具体的には、読者にComixology Unlimitedの1カ月間の無料購読を提供している。(Amazonは2014年にデジタルコミックプラットフォームのComixologyを買収し、その2年後にUnlimited購読サービスを開始した)。

Madefireは出版社がモーションコミックのようなフォーマットを試していた2012年に、最初のサービスを開始した。Madefireはアニメーションやエフェクト、より伝統的な読書体験を組み合わせたタイトルをモーションブックと呼んでいる。

共同創業者兼CEOのBen Wolstenholme(ベン・ウォルステンホルム)氏は当時「モーションコミックは受動的な体験であり、悪いアニメーションと同じような視聴体験であり、映画を見るようなものです」と述べていた。「モーションブックは読書体験であり、読者によってアクティブに制御される。私たちの目標は、iPad用に開発された最高の読書体験になることです」。

Madefireでおそらく最も印象的だったのは、Dave Gibbons(デイブ・ギボンズ)やBill Sienkiewicz(ビル・シンケビッチ)など、立ち上げ前に参加していたアーティストだろう。

最近ではMadefireはSnapchat(スナップチャット)や、経営難に陥っているAR(拡張現実)企業のMagic Leapなど、他の技術プラットフォームとの提携を発表していた。

Crunchbaseによると、MadefireはTrue Ventures、Plus Capital、Kevin Spacey(ケヴィン・スペイシー)氏、Drake(ドレイク)氏などの投資家から1640万ドル(約18億円)の資金を調達していたが、The Beatによるとその総額は「それ以上」だったとのことだ。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Madefireメディアデジタルコミック

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(文:Anthony Ha、翻訳:塚本直樹 / Twitter