ロケット企業のAstraが初の商業軌道打ち上げを8月27日から9月11日の間に行うと発表

ロケット打ち上げスタートアップ企業のAstra(アストラ)が行った最後のテスト打ち上げは予想以上にうまくいき、軌道速度にあと一歩で達するところだったが、これは特定のミッションのためのストレッチゴールのようなものだ。同社は当時、軌道に到達するためにはソフトウェアを調整するだけでよいと述べていたが、それを証明する機会はいつ到来するのかが判明した。Astraは米国時間8月5日、米国宇宙軍のためのデモンストレーション・ミッションである、初の商業軌道打ち上げのローンチウィンドウが、8月27日より始まることを明らかにした。

Astraが米国宇宙軍と結んでいる契約には、2021年後半に予定されている2回目の打ち上げも含まれているが、その正確なスケジュールはまだ確定していない。

Astraのロケットが宇宙軍のために運ぶペイロードは、同局のSpace Test Program(宇宙テストプログラム)のために飛ばすテスト宇宙機になる。打ち上げは、これまでもテストミッションを行ってきたアラスカ州のコディアックにあるAstraの宇宙港から行われる予定だ。

ローンチウィンドウは、米国太平洋夏時間の8月27日午後1時から始まるが、9月11日まで継続されるため、天候などの条件を考慮した上、この期間内で打ち上げ時間が変更になる可能性もある。

2021年7月1日にSPAC(特別買収目的会社)との合併により上場企業となったAstraは、カリフォルニア州アラメダにある工場でロケットを製造している。この打ち上げプロバイダがターゲットとしているのは、同社の規模と同様、安価で、大量の、質量が小さな打ち上げであり、SpaceX(スペースX)よりも柔軟なサービスを提供し、Rocket Lab(ロケットラボ)に比べてコスト面で優位性がある。

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タグ:Astraロケット民間宇宙飛行米宇宙軍

画像クレジット:Astra / John Kraus

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

再利用可能ロケット開発iRocketがわずか2年以内の商業化を目指しNASAと新たに提携

再利用可能ロケットのスタートアップ、iRocket(アイロケット)は、わずか2年以内に商業化するという目標を掲げて、NASA(米航空宇宙局)と新たな提携を結んだ。

この提携によって、iRocketはNASAの試験施設と技術サポートを、主にアラバマ州ハンツビルのマーシャル宇宙飛行センターで利用できるようになる。会社は最初のロケットエンジンテスト(地上燃焼試験)をハンツビル施設で2021年9月に実施したいと考えている。

iRocketは今後5年間の再利用可能エンジンと打ち上げロケットの試験、開発のために5000万ドル(約55億円)を準備している。NASA施設を利用できるということは、エンジン試験のための制御された環境を提供する重要設備である試験台を利用できることを意味している。iRocketは、オハイオ州のグレン研究センターで真空試験(宇宙環境をシミュレートする)を、マーシャル宇宙飛行センターで海上試験を行う予定だ。

「当社はマーシャル宇宙飛行センターと、非常に綿密な検討を重ねてきました」とiRocketのCEOであるAsad Malik(アサド・マリク)氏はTechCrunchのインタビューで語った。

このエンジンは最終的にiRocketの新しい打ち上げロケットShockwave(ショックウェーブ)の動力になる。ロケットは完全再利用可能な無人小型ロケットで最大積載能力は約300kgおよび1500kg。3Dプリンティングで作られたエンジンは、メタンと液体酸素を燃料とする。「メタンは深宇宙ミッションに最適な燃料になるでしょう」とマリク氏は言った。

ニューヨーク拠点のスタートアップはエンジンを極超音速(hypsesonic)にすることも目標にしている。野心的なゴールだ。そしてiRocketには野心的な計画がある。マリク氏は再利用可能ロケットエンジンとロケット自身、両方の主要サプライヤーになろうとしている。ロケットステージも再利用できる設計(他のロケット開発者との決定的な違い)なので、衛星や貨物の打ち上げミッションだけでなく、いずれ宇宙ごみの除去やバイオテク企業のための回収実験もできるとマリク氏は言っている。

Aerojet Rocketdyne(エアロジェット・ロケットダイン)のLockeed Martin(ロッキード・マーティン)への売却(現在も連邦取引委員会が審査中)は市場に空白を作る、とマリク氏は指摘する。「そうなることで、海外製部品を避けるよう議会が強く押している今、独立系ロケットメーカーのいない米国市場が開放されます」と彼は言った。「つまりこれは、私たちが政府や国防省、NASAなどのパートナーと協力して、私たちに必要な次世代宇宙推進システムを開発するチャンスなのです」。

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カテゴリー:宇宙
タグ:iRocketロケットNASA

画像クレジット:iRocket<

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ヴァージン・ギャラクティックとブランソン氏は宇宙への乗客初打ち上げを祝う

Virgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)は、億万長者である創業者のRichard Branson(リチャード・ブランソン)氏を含む最初の乗客を宇宙に運ぶことに成功した。ニューメキシコ州のスペースポート・アメリカで開催されたイベントでは、ブランソン氏とクルーによる早朝のハリッドセットやヒーローウォークなどが行われ、報道関係者や従業員にとってちょっとした運動会となった。

「想像してみてくださいあらゆる年齢、あらゆるバックグラウンド、あらゆる性別、あらゆる民族の人々が宇宙に平等にアクセスできる世界を。新しい宇宙時代の幕開けにようこそ!」と着陸後、ブランソン氏は語る。

もちろん、この発言は時期尚早なものであり、そのような世界が訪れるのはまだ先のことだが、今回の打ち上げが、始まったばかりの宇宙旅行産業にとって歴史的な瞬間であることは間違いない。現在のところ、搭乗者はまだエリート階級となるが、この日の出来事は、その変化かつてないほど近づいていることを示している。

スペースポートへのシャトルは現地時間午前2時45分に、近くのラスクルーセスから出発したが、この日のイベントは遅れて始まった。一晩中、雷雨に見舞われたため、濡れてはいけない宇宙船を展開することができなかったのだ。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

やがて日が昇り、大勢の人々が集まってきた。VIP、従業員、地元の学生たち、そしてブランソン氏自身のゲストリスト(約150人と言われている)。Elon Musk(イーロン・マスク)氏も現れたが、おそらく宇宙飛行士仲間である億万長者から億万長者への個人的なお祝いのためだろう。

現地時間8時30分、VMS Eveのエンジンが始動した。VMS Eveは、ブランソン氏がヴァージン・ギャラクティックのBeth Moses(ベス・モーゼス)氏(2回目の飛行)、Sirisha Bandla(シリシャ・バンドラ)氏、そしてColin Bennett(コリン・ベネット)氏とともに宇宙の端まで乗るロケット動力の宇宙船VSS Unityを運ぶ「母船」だ。

VMS Eveが離陸(画像クレジット:Virgin Galactic)

VMS Eveは8時40分に車輪を上げて地上で待機し始め、約3万6000フィートまで上昇。VSS Unityは9時24分頃に切り離され、ロケットでの上昇を開始し、マッハ3に達した後、2分後には予定どおり、ピーク高度約28万2000フィート(約53マイル、約86km)に達した。

乗組員と乗客は1~2分間の微小重力を楽しみ、それを有効に活用したようだ。

画像クレジット:Virgin Galactic

ブランソン氏が予定していた空中でのスピーチは、信号が途切れ途切れになったために不可能となったが、機体自体はより信頼性が高く、9時38分に着陸した。

ブランソン氏は、Khalid(カリード)氏による短いコンサートに続いてステージに登場した。「暑いですね、すいません」と始まった話は、すぐに感動的なものになった。「子どもの頃からこの瞬間を夢見てきましたが、宇宙から見る地球の景色に対して何の準備もできませんでした。私たちは新たな宇宙時代の先頭に立っています」。

その後の記者会見では、ブランソン氏が小学生からの質問に答えたり、クルーが宇宙からの眺めや惑星を見たかどうかを説明した(パイロットが「降下中に振り払ったエイリアンを見ただけだ」というと、私が見た限り1人の子どもはそれを信じていた)。

宇宙への長い道のり

ヴァージン・ギャラクティック宇宙飛行システムに向かう同社のパイロットたち(画像クレジット:Virgin Galactic)

ヴァージン・ギャラクティックとブランソン氏にとって、これは長い間待ち望んでいた成功だ。同社は、宇宙旅行という野望を掲げて先行していましたが、2014年に行われたテストフライトでは墜落事故が発生し、パイロットの1人が亡くなっている。

しかし、ヴァージンのエンジニアとリーダーたちは、この事故を乗り越えて、より強力で優れた宇宙船開発し、当時まだ存命だったStephen Hawking(スティーブン・ホーキング)博士に「Unity(ユニティ)」と命名してもらっている(驚くなかれ、ホーキング博士はいつか乗ってみたいと思っていた)。

パイロットたちは何年にもわたってテスト飛行を繰り返し、徐々に出力を上げていき、2018年にはついに宇宙の端に触れることができた。ただし、大気が宇宙に放出される正確な高度が完全に合意されていないという点で、若干の論争がある。カルマン・ラインと呼ばれる仮想のラインを、海抜100kmとする専門家もいれば、50マイル(約80km)とする専門家もいる。

Unity 22は降下中にその「羽」を広げる(画像クレジット:Virgin Galactic)

ヴァージンは低い仮想ラインを使い、ライバルであるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏のBlue Originは高い仮想ラインを使っている。これを受けて、ベゾス氏はヴァージンのフライトに陰口を叩き、顧客は宇宙への旅に「注意点」があることを望まないと述べた。以前、このことについて質問したとき、ヴァージン・ギャラクティックの担当者は、NASAや米空軍と同じ基準を使っていると述べた(パイロットは高度50マイルを飛行すると「宇宙飛行士の翼」を与えられる)。

カールマン博士の言い分はさておき、宇宙への乗客輸送競争は最近激化している。ベゾス氏は先日、7月22日にブルーオリジンのNew Shepardロケットが初の有人打ち上げに参加することを発表した。その際には、2800万ドル(約31億円)を支払った謎の乗客であるベゾス氏の弟と、1961年に宇宙飛行士になるための訓練を受けたが宇宙に行けなかった最初の女性の1人であるWally Funk(ウォリー・ファンク)氏も一緒に参加するという。

しかし、その後すぐにブランソン氏はその約1週間後前に行われるヴァージン初の乗客がいる打ち上げ(クルーとパイロットは何度も打ち上げられている)に搭乗することを発表し、ベゾス氏のパレードに雨を降らせた。

ブランソン氏は、自分とベゾス氏との競争を気さくに否定しているが(「我々はジェフの成功を願っている」と述べ、飛行前にベゾス氏が好意的なメッセージを送ってきたと付け加えた)、それが完全に真実だとは思えない。しかし、ブランソン氏が単に宇宙に行くだけではなく(彼は生涯の夢だったと言っている)、新興のライバルよりも先に宇宙に行くことに満足しているのは確かだろう。本人がどんなに否定しても、この物語は完全に打ち消すにはあまりにも魅力的なものだ。

現在、ヴァージン・ギャラクティックが進むべき方向は、明らかに有料の顧客に向けたものであり、そのために多くの顧客が登録されている。もちろん、彼らはみんな25万ドル(約2750万円)の余裕がありますが、あなたはそうではないかもしれない。そんなあなたのために、ブランソン氏は特別なオファーを用意た。ブランソン氏はOmazeと提携しており、選ばれた慈善団体に寄付をすると、抽選でヴァージン・ギャラクティックのフライトのチケット2枚が当たるというものだ。「ウィリー・ウォンカの帽子をかぶって、スペースポート・アメリカのガイドツアーをご案内します」とブランソン氏は付け加えた。

ブランソン氏は、寄付が続く限り、このイベントが継続的なものになることを期待している。これが、彼が頻繁に約束している、誰もが宇宙を利用できるようにするための答えなのかもしれない。

当日の様子は、以下のヴァージンギャラクティックのライブストリームで観ることができる。

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タグ:Virgin Galacticロケット民間宇宙飛行

画像クレジット:Virgin Galactic

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Katsuyuki Yasui)

無料で宇宙に招待、Virgin Galacticが宇宙旅行チケットが当たる懸賞を開催

無料で宇宙に招待、Virgin Galacticが宇宙旅行チケットが当たる懸賞を開催

Omaze/Virgin Galactic

創業者リチャード・ブランソン卿の宇宙旅行を無事に成功させたVirgin Galacticが、一般の人々にも同じ体験を提供すべく、SpaceShipTwoの商業宇宙飛行のチケットを無料で獲得できる懸賞を行うと発表しました。

これはVirgin GalacticとOmaze社の提携による企画。Omazeは商品や何らかの財産、著名人との何らかの体験などを懸賞として慈善団体への資金を集める企業。そのため今回のチケットも無料で応募することができるものの、宇宙旅行をもっと身近にするための慈善団体”Space for Humanity”への寄付をすれば応募口数を増やす(5ドルで50口、100ドルなら2千口)ことが可能になっています。

応募の〆切は9月1日(現地時間)までで、当選発表は9月29日。もし当選した場合は、通常なら約25万ドル(約2750万円)かかる宇宙へのチケットを無料で手にできる一方で、SpaceShipTwoに搭乗するために必要な訓練を受ける必要があるため、会社や学校を一定期間休む必要があります。なお、当選者には副賞として宇宙への発着場となるSpaceport Americaの見学ツアーもあります。

このキャンペーンはVirgin Galacticにとっては格好の宣伝材料になるはずです。さらにわれわれ庶民にとっても、お金か強運があれば宇宙へ行ける時代が唐突にやってきました。

(Source:OmazeEngadget日本版より転載)

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タグ:チャリティー / 慈善活動(用語)Virgin Galactic(企業)民間宇宙飛行(用語)有人宇宙飛行(用語)ロケット(用語)

ヴァージン・ギャラクティック初の旅客機が宇宙へ離陸する様子をライブで観よう!グループ創設者ブランソン氏搭乗

Virgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)社は、7月11日朝に、最初の乗客を宇宙に送り出す予定だが、その一部始終をここで見ることができる。打ち上げは太平時間午前6時(日本時間7月11日午後22:00)に予定されており、1時間後にはストリーミングによる祝賀イベントも始まる。

今回の打ち上げは、ヴァージン・ギャラクティック初の宇宙船であるVSS Unity(VSSユニティ)にとって22回目の大気圏外への打ち上げとなる。前回同様、ユニティはVMS Eve(VNSイブ)の腹部に取り付けられてスペースポートを離れ、大気の最も厚い部分から上昇する。

ドロップしたUnityは、ロケットエンジンに点火し、宇宙とされる最低高度の80km地点に到達するまで、マッハ3に近い速度で到達する。エンジンが停止すると、パイロットと乗客は短時間の無重力状態になり、すばらしい景色を楽しむことができる。

その様子は、地上から、接続が良ければ船体からもライブ配信される。無事に帰還した際には、凱旋記者会見が行われ、Khalid(カリード)のライブ演奏も披露される。

筆者は現地にいるが、私が目にする光景は以下の公式ストリーム配信で見ることができる。

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Katsuyuki Yasui)

小さいほうがコストも下がる、小型ロケットに特化した豪スタートアップGilmour Spaceが約50億円調達

オーストラリアのロケット打ち上げスタートアップGilmour Space Technologies(ギルモア・スペース・テクノロジーズ)は、大きければいいとは限らない、という考えに賭けている。同社はErisと呼ぶ、最大215kgのペイロードを太陽同期軌道へと運ぶことができる小型の打ち上げビークルを開発した。そして現在、同社はErisを2022年に宇宙へと送るためにシリーズCラウンドで6100万豪ドル(約50億円)を調達した。

Gilmour Spaceの創業者、アダム・ギルモア氏とジェームズ・ギルモア氏(画像クレジット:Gilmour Space Technologies)

Erisは他の打ち上げ会社のロケットよりもずいぶん小さい。Relativity SpaceのTerran Oneの地球低軌道への最大ペイロードは1250kgで、SpaceXの初かつ最小の軌道ロケットFalcon 1ですら450kg運ぶことができた。Gilmour Spaceは、軽量のペイロードの方がスペースクラフトを軌道に送ろうとしている急増中の顧客のためにコストを下げることができると請け合っている。

調達した資金は、同社の従業員を70人から120人へとおよそ倍増させるのに、そしてオーストラリア・クイーンズランド州のアボットポイントに新規の商業スペースポートを設置するのにも使われる。オーストラリアの当局は5月に打ち上げサイトの建設を承認した。同社はまた、極軌道打ち上げを促進するために南オーストラリア州にある提案された打ち上げサイトを調査している。

Gilmour Spaceはすでに、将来のEris打ち上げのために見込み顧客との契約書にサインした。ここには、オーストラリアの宇宙スタートアップ2社との契約も含まれる。1社はEris初打ち上げで35kgのスペースクラフトを打ち上げる予定のSpace Machines Company、もう1社は2023年に小型衛星6基を運ぶ予定のFleet Space Technologiesだ。Gilmour Spaceは米国拠点のMomentusとも同社の軌道移行サービスの使用で契約書を交わした。

シリーズCラウンドはFine Structure Venturesがリードし、オーストラリアのVCであるBlackbirdとMain Sequence、豪州年金基金HESTA、Hostplus、NGS Superなどが参加した。BlackbirdはGilmour SpaceのシリーズAを、Main SequenceはシリーズBをリードした既存投資家だ。今回のラウンドは、オーストラリアの宇宙企業によるプライベートエクイティ調達額としては過去最高で、Gilmour Spaceの累計調達額は8700万豪ドル(約72億円)となった。

カテゴリー:宇宙
タグ:Gilmour Space資金調達オーストラリアロケット

画像クレジット:Gilmour Space Technologies

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

ヴァージン・オービットが初の商業ペイロード輸送の打ち上げに成功

Virgin Orbit(ヴァージン・オービット)が、初の商業打ち上げを成功させた。これにより、宇宙へのペイロード輸送の実績がある小型衛星打ち上げ業者が、正式にもう1社誕生したことになる。ヴァージン・オービットのLauncherOne(ランチャーワン)ロケットは、東部夏時間の午前11時45分頃に運搬用航空機から発射され、一連のエンジン燃焼とステージ分離に成功して地球低軌道に到達した。

今回の打ち上げでヴァージン・オービットは、オランダ初の防衛衛星や、米国防総省が推進するRapid Agile Launch Initiative(ラピッド・アジャイル・ローンチ・イニシアティブ)のために開発されたキューブサット(超小型衛星)など、7つのペイロードを輸送した。このイニシアティブでは、柔軟性の高い打ち上げプラットフォームを用いて、比較的迅速に小型の宇宙船を宇宙に送り出すことの可能性を検証しようとしているが、ヴァージン・オービットは一般的な滑走路から水平に離陸することができるので、米国防総省の構想に適う打ち上げが可能だ。

ヴァージン・オービットは、ポーランドのスタートアップ企業であるSatRevolution(サットレボリューション)から2基の地球観測衛星の輸送も請けている。同社が計画している14機の衛星コンステレーションを構築するため、今後もさらに多くの衛星を運ぶ予定だ。

2021年1月、ヴァージン・オービットは最後の試験飛行ミッションを完了し、LauncherOneによる初めての軌道投入に成功した。それが今回の商業打ち上げへの道を開いたわけだが、同社は今後、商業ミッションのペースと頻度を高めていくことを計画しており、2021年後半に少なくともあと1回、2022年にはさらに多くのミッションを予定している。

ヴァージン・オービットのLauncherOneは、地球低軌道に約500kgのペイロードを輸送することができる。これは同じ目的地に約300kgまでの積載物を運搬できるRocket Lab(ロケットラボ)のElectron(エレクトロン)と比べても勝っている。

これは現在多くの需要がある小型衛星事業者向けのサービスとして適しており、SpaceX(スペースX)も同様のライドシェアリング・ミッションを提供しているが、ヴァージン・オービットは、小規模な衛星コンステレーションのために数機の小型宇宙船を打ち上げたいと考えている事業者に、より専門的なサービスを提供できる潜在能力を持っている。また、前述したようにヴァージン・オービットの打ち上げシステムは、さまざまな場所から離陸が可能であるため、将来的にはそれが防衛・安全保障産業において高い競争力を発揮する大きな利点となるだろう。

関連記事:ヴァージン・オービットがオランダ初の防衛衛星を打ち上げ、航空機を使った同社の柔軟な打ち上げ能力を実証へ

カテゴリー:宇宙
タグ:Virgin OrbitLauncherOneロケット

画像クレジット:Virgin Orbit

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Relativity Spaceが生産能力を10倍にすべく9万平米超の工場を建設、再利用可能3DプリントロケットTerran R製造へ

6億5000万ドル(約722億円)のシリーズEラウンドで資金調達を終えたばかりの3Dプリントロケットのスタートアップである Relativity Space(リラティビティー・スペース)が、その生産能力を10倍に増やすべく、100万平方フィート(9万2900平方メートル)の本社工場をカリフォルニア州ロングビーチに建設する。

Relativityの同じくロングビーチにある15万平方フィート(1万3900平方メートル)の現工場も生産を続ける。この工場は同社初のロケットとなる使い捨て型Terran 1に、引き続き焦点を当てる。このロケットは少量貨物向けの設計だ。新しい工場はRelativityの重量貨物用完全再利用可能な2段ロケット、Terran Rの開発および生産を目的としている。どちらのロケットもまだ軌道を見たことはないが、RelativityはTerran 1を2021年末に、Terran Rを2024年初めに打ち上げる計画だ。

2022年1月の新工場稼働に合わせて、同社は雇用の拡大も計画している。2021年中に少なくとも200名の社員を追加したい、とCEOのTim Ellis(ティム・エリス)氏がTechCrunchに語った。新工場の必要労働力は2000人を超えるため「Terran 1の打ち上げとTerran Rの開発開始に向けて1000人単位の新規雇用を行うことは間違いない」とエリス氏は言った。

画像クレジット:Relativity Space

Relativity独自の3DプリンターであるStargate(スターゲート)は、同社のどちらのロケットもプリントできる。しかし、能力はそれにとどまらない。少なくとも理論的には。Terran Rは再利用可能なので、巨大な新工場で生産可能な数よりもはるかに少ないロケットしか必要としないはずだ。そこで疑問が生じる。一連のプリンターは何を作ることになるのか?

エリス氏はいくつか可能性を示唆した。「ここではTerran Rを製造し、当初は開発を行いますが、長期的には次に当社が宇宙に送り込む何かを作るために、この工場の改善と再構成を続けていくことができるでしょう」と彼は言った。しかし、それがどんなものなのか正確には言わなかった。

「たしかに時間とともにプリント能力に余剰ができます、Terran Rは再利用するので。このため、ある時点で私たちには山ほどのプリンターと大量の空き時間があることになります。そんな能力を得たら何ができるか想像してみてください。次の破壊的製品に向けて突き進むだけです」。

Stargateプリンター群に加えて、敷地内にはカスタマイズ版DMLS(直接金属レーザー焼結方)メタル・プリンター、冶金研究所、機械工場、ミッション管制センターなどがある。ミッション管制センターではその名の通りミッションオペレーターが、フロリダ州ケープ・カナベラルとカリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地で行われる打ち上げの監視と管理ができる。

Relativityはこの場所を、土地所有者であるGodman Groupから「長期間契約」で賃借しているとエリス氏は言った。かつて当地は、Boeing(ボーイング)が軍用輸送機C-17の製造に使用していた。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Relativity Space工場3Dプリントロケット

画像クレジット:Relativity Space

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceXが開発中の新型宇宙船「Starship」初軌道投入試験の7月実施を目指す

SpaceX(スペースX)は、開発中の宇宙船「Starship(スターシップ)」を7月に初めて軌道に乗せることを目指していると、同社社長のGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏が語った。同氏は国際宇宙開発会議のバーチャルスピーチで、このタイムラインを明らかにした。

Starshipは数年前から開発が進められており、2020年から何度か短いテスト飛行を行っているものの、いまだ地球の大気圏内に留まっている。5月に行われた最近の飛行では、初めて完全着陸に成功した。これは、SpaceX初の完全に再利用可能なロケットシステムとなることを目指しているStarshipの開発にとって、必須の要素だ。

Starship初の軌道飛行を7月に行うというのは、野心的なスケジュールと言えるだろう。SpaceXは、テキサス州南部のブラウンズビル近郊にある同社の開発拠点(通称「スターベース」)から離陸し、最終的にはハワイ沖の太平洋上に着水して地球に帰還するというこの飛行計画のコースを、5月に提出したばかりだからだ。

初の軌道飛行では、5月の試験飛行のように、制御された着陸を行って終了というわけではない。目標は軌道に到達することであり、その過程を通して宇宙船のコンポーネントをテストすることにある。その後のテストには、Starship宇宙船で制御された着陸を行うことも含まれており、最終的には軌道への推進を助ける「Super Heavy(スーパーヘビー)」ブースターを含むシステム全体を、完全に再使用可能にすることを目標としている。

ショットウェル氏は、SpaceXがStarshipの軌道試験飛行を開始するために必要な技術的な準備をほぼ整えていると、高い自信を示しているようだが、SpaceXが現在取得しているライセンスは、準軌道飛行のみを対象としているため、軌道試験飛行を行うためには、連邦航空局(FAA)から新たにライセンスの承認を得なければならない。FAAは現在、周辺地域への環境影響評価を含め、ライセンス取得のための要件を検討しているところだ。

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カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXStarshipロケット宇宙船

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

3Dプリントでわずか60日で完成するRelativity Spaceの新しい大型ロケットTerran R、もちろん再利用可能

3Dプリント製ロケットのスタートアップであるRelativity SpaceがシリーズEラウンドで6億5000万ドル(約712億円)を調達し、調達総額は12億ドル(約1315億円)を超えた。この件に詳しい情報筋がTechCrunchに語ったところによると、Relativityのポストマネー評価額は現在42億ドル(約4602億円)だという。

今回のラウンドを主導したのはFidelity Management & Research Companyで、他にBlackRock、Centricus、Coatue、Soroban Capitalが運用するファンドやアカウントを持つ新規投資家や、既存投資家のBaillie Gifford、K5 Global、Tiger Global、Tribe Capital、XN、Brad Buss(ブラッド・バス)氏、Mark Cuban(マーク・キューバン)氏、Jared Leto(ジャレッド・レト)氏、Spencer Rascoff(スペンサー・ラスコフ)氏らが参加した。

シリーズEからの資金は、同社の完全に再利用可能な2段式重量物打ち上げロケット「Terran R」の生産を加速するために使われる。Terran Rは、2021年末に初の軌道飛行を行うRelativityのデビューロケット「Terran 1」に加わることになる。

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同社はTerran Rについて固く口を閉ざしてきたが、今回の資金調達の発表と合わせてさらに詳しい情報を明らかにした。予想通り、Terran 1とTerran Rはかなり大きな違いがある。Terran 1は消耗品であり、Terran Rは再利用可能だ。前者は小型ペイロード用、後者は大型ペイロード用に設計されている。Terran Rのペイロードフェアリングでさえ再利用可能であり、Relativityは回収とリサイクルを容易にするシステムを案出した。

この大型ロケットは、高度216フィート(約66メートル)、最大ペイロード2万ポンド(約9トン)で低地球軌道(LEO)に投入される(ちなみにSpaceXのFalcon 9ロケットの高度は約230フィート[約70メートル]、LEOへの最大ペイロードは2万2800ポンド[約10トン]である)。

左がRelativityのTerran 1、右がTerran R(画像クレジット:Relativity)

Terran Rは、1段目に7個の新しい「Aeon R」エンジンを搭載し、それぞれが30万2000ポンド(約134トン)の推進力を持つ。Terran Rのエンジンとロケットを製造するのと同じ3Dプリンターが、Terran 1の動力源となる9個の「Aeon 1」エンジンも製造しており、Relativityは新ロケットを製造するために生産ラインを大幅に再構成する必要がない。

CEOのTim Ellis(ティム・エリス)氏によると、Terran Rを1基製造するのにかかる日数は60日ほどだという。このようなペイロード容量を持つロケットとしては信じられない速さだ。

Terran 1の打ち上げはまだ行われていないが、RelativityがTerran Rの開発を遅らせる様子はない。エリス氏は、同社は2024年にはケープカナベラルの発射台からのTerran Rの打ち上げにも着手する予定であり、今回の新ロケットの最初のアンカー顧客として「有名な優良企業」と契約済みだと述べている。

Relativityは、2021年末に同社初の軌道飛行を行うロケットの約85%のプリントを終えたところだ。このミッションを遂行するTerran 1にペイロードは搭載されない。Terran 1の2回目の打ち上げは2022年6月に予定されており、NASAとの契約「Venture Class Launch Services Demonstration 2(VCLS Demo 2)」の一環としてCubeSat(キューブサット)をLEOに投入する。

RelativityのCEOであるティム・エリス氏はTechCrunchとのインタビューで、3Dプリントを製造におけるパラダイムシフトであると形容した。「私たちのアプローチ、あるいは一般的な3Dプリントは実際のところ、ガスの内燃機関から電気へ、あるいはオンプレミスサービスからクラウドへの移行に近いものだということが、人々にはあまり認識されていないように思います」とエリス氏。「3Dプリントはクールなテクノロジーですが、それ以上に、実用上ソフトウェアであり、データ駆動型の製造および自動化技術でもあるのです」。

3Dプリントのコアはテクノロジースタックであり、同社は従来の製造方法では「不可能だった幾何学的構造」をアルゴリズム的に生成することができる、とエリス氏は説明する。また、設計は市場の需要に合わせて簡単に調整可能だ。

Relativityの設立前にBlue Originで金属3Dプリント部門の立ち上げを担当したエリス氏は、Terran 1と、カウンターパートである重量物運搬仕様を設計、構築することが、Day1(創業初日)からの戦略だったと語っている。

3Dプリントの実際のメカニズムは、地球上の重力の38%しかない火星のように重力がはるかに小さい環境でも技術的に実現できる。しかしより重要なのは、それが惑星外の不確実な環境で「必然的に必須の」アプローチだということだ。

「Relativity設立へのインスピレーションは、SpaceXがロケットを着陸させ、宇宙ステーションにドッキングするところを目にしたことでした。創業して13年の同社は、その輝かしい成功に留まることなく、人類を多惑星化しようと考え、火星に行くことを目指す唯一の企業でした」とエリス氏は語る。「そして私は、3Dプリント技術が他の惑星に産業基盤を現実的に構築する上で避けられないものだと考えたのです。火星に行こうと実際に試みたり、それが自分たちのコアミッションだと主張する人さえいないときでした。それは5年後の今でも、実際にはまだ当社とSpaceXだけです。そしてそのミッションの後に進むべき数十から数百の企業にインスピレーションを与えたいと、私は心から願っています」。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Relativity Spaceロケット資金調達3Dプリント

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

ヴァージン・ オービットがYouTubeで6月末の衛星打ち上げをストリーミング配信

Virgin Orbit(ヴァージン・オービット)が2021年6月末に予定している次の宇宙への打ち上げミッションに向けて着々と準備を整えている。2021年1月に初めて軌道上への打ち上げを成功させて以来のミッションで、クライアントの米国防総省やオランダ空軍などに代わって小型衛星7基を打ち上げる。そして今回の打ち上げではミッションをYouTubeでストリーミングし、Virgin Galacticが宇宙へ旅する様子を誰もが視聴できる初の機会となる。

Virgin Orbitはこれまでフライトのライブ動画は提供せず、その代わりソーシャルメディアチャンネルでテキストによるアップデートを行っていた。YouTubeストリームでは、改造されたボーイング747旅客機の翼の下から高高度で空中打ち上げする小型ロケットLauncher Oneの輸送を含め、Virginの打ち上げプロセスのこれまでにない映像が提供されるはずだ。

打ち上げの様子のライブストリーミングは現時点で宇宙産業においてはかなり必要不可欠なものだ。特にSpaceX、Rocket Lab、Blue Originを含む、いわゆる「新宇宙」企業においてはそうだ。SpaceXはStarship開発のプロセス全体でもストリーミングした。成功に加えてかなりの失敗を広く流すことになるため、これは異例だ。

Virgin Orbitの打ち上げは飛行機を使うという斬新なものであり、垂直に打ち上げるものに比べてストリームは幾分ユニークな光景を提供するはずだ。なので今回の打ち上げは注目に値するだろう。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Virgin Orbit人工衛星ロケット

画像クレジット:Virgin Orbit

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

スペースXが再利用Dragon宇宙船での宇宙飛行士の打ち上げに初成功

SpaceX(スペースX)は米国時間4月23日の金曜日朝、Crew Dragon宇宙船の打ち上げと軌道投入を予定通り実施し、またしても有人宇宙飛行を成功させた。Crew DragonはFalcon 9ロケットに搭載され、米フロリダ州ケープカナベラルから東部時間4月23日午前5時49分(日本時間4月23日午後18時49分)に離陸した。搭乗したのはNASAのMegan McArthur(メーガン・マッカーサー)飛行士、Shane Kimbrough(シェーン・キンブロー)飛行士をはじめ、JAXAの星出彰彦、ESAのThomas Pesquet(トーマス・ペスケ)氏ら4名の宇宙飛行士である。

これはスペースXにとって、2020年のCrew-1に続く2回目のNASA向けの正式な宇宙飛行士輸送ミッションだ。Crew-1とは異なりCrew-2では、Crew-1の打ち上げ時に使用された第1段ブースターや、ペースXが初めて有人宇宙飛行を行った際に使用されたCrew Dragonカプセルなど、宇宙船システムのうちの2つの再使用部品が使用された。Crew DragonカプセルはNASA向けの宇宙船認証プログラムの最終デモンストレーションミッションで、Bob Behnken(ボブ・ベンケン飛行士、このミッションのパイロットであるマッカーサー飛行士はベンケン飛行士の妻)とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)飛行士をISSに送り込んだ。同社は再使用部品を使用することは新品部品を使用するよりも間違いなく安全であると指摘しており、Elon Musk(イーロン・マスク)CEOは4月22日の夜に行われたXPRIZEのPeter Diamandis(ピーター・ディアマンディス)氏との会話の中で「工場から出てきた宇宙船の初飛行」には参加したくないと述べている。

Crew Dragonは目標とする軌道に到達し、これから24時間弱かけて国際宇宙ステーション(ISS)とのランデブーを実施する。そして翌日の早朝には、スペースXのもう1機のCrew Dragonが2021年4月初めにISSの別のポートに移動した際に空けられたばかりのドッキングポートに取り付けられる予定だ。

今回の打ち上げにはブースターの回収も含まれており、スペースXのドローン着陸パッドを使って海上に着陸した。このブースターはすでに2組の宇宙飛行士を搭乗させており、改修後にさらに別の宇宙飛行士を乗せることができる。

スペースXとNASAとのCommercial Crewプログラムは、NASAが研究や宇宙開発ミッションのためにより多くの民間企業と提携する動きの中でも、重要な成功例であり続けている。アポロ計画以来初めて月に人間を帰還させるアルテミス計画の有人着陸システムの開発に、NASAはスペースXを起用した。同社の有人宇宙飛行計画にとって次の大きなマイルストーンは、現在秋に予定されている民間人のみで構成されたミッションの初飛行だ。

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カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXCrew DragonFalcon 9ロケットNASAJAXA

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

ブルーオリジンがNew Shepardの打ち上げと着陸を実施、有人飛行のための重要な準備飛行

Blue Origin(ブルーオリジン)が2021年2回目となるNew Shepardロケットの打ち上げを実施した。今回のミッションでは、再使用可能な宇宙船がサブオービタルの宇宙空間まで飛行し、その後テキサス州西部にあるブルーオリジンの発射施設にパラシュートで着陸する様子が確認できた。

このフライトは通常のミッションとは少し異なり、ブルーオリジンが最終的には有償で提供する商業宇宙旅行の顧客の代わりとなる宇宙飛行士によるリハーサルの要素が含まれていた。つまり、彼らは飛行準備を行い、パッドへの移動やNew Shepardに乗り込んで着席するなど、あたかも自分が飛行に参加しているかのような体験をした。

実際の商業飛行との決定的な違いは、ブルーオリジンがカウントダウンを一時停止し、模擬クルーが下船した後にカウントダウンが再開され、予定どおりの打ち上げが行われたことだ。同社のテスト用ダミーである「Mannequin Skywalker(マネキン・スカイウォーカー)」はこの準備ミッションで飛行し、打ち上げと帰還時に重要な測定を行った。

ニューシェパードは問題なく帰還・着陸し、これまでで最もスムーズな着陸を披露した。これは、このブースターの2回目の打ち上げと着陸だった。カプセルも計画どおりに着陸し、宇宙船のパラシュート降下システムによって軟着陸を達成した。

画像クレジット:Blue Origin

ブルーオリジンは次に、実際の有人ミッションの最終段階を再現する予行演習を行い、リハーサルを行った宇宙飛行士をカプセルに戻して、商業飛行中に発生する宇宙飛行士の回収と出発のプロセスを完全にリハーサルすることになる。

今回のミッションはすべて、ブルーオリジンが2021年中に有人ミッションを達成したいと考えていることを示している。これは、民間宇宙飛行士が宇宙に行くための新たな手段であり、スペースXのDragon宇宙船の飛行や、願わくば近い将来に実現するかもしれないVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)による打ち上げなどの選択肢が増えている。

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タグ:Blue OriginNew Shepardロケット有人宇宙飛行民間宇宙飛行

画像クレジット:Blue Origin

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

月へNASAの水探索車を届けるためにスペースXがFalcon Heavyロケットの打ち上げを2023年に予定

SpaceX(スペースX)は、2023年に大型の(そしてあまり使われていない方の)ロケット「Falcon Heavy(ファルコン・ヘビー)」を使用して、月にペイロードを送り込むことを予定している。このミッションでは、宇宙ベンチャー企業のAstrobotic(アストロボティック)が製造した月面着陸船を打ち上げることになっており、それにはNASAのVIPER(Volatiles Investigating Polar Exploration Rover、揮発性物質調査極地探索車。この機関は、楽しい頭字語を付けるために言葉に無理させることを好む)が搭載される。

打ち上げは現在のところ2023年後半に予定されており、計画どおりに進めばFalcon Heavyにとって初の月ミッションとなる。しかし、それがSpaceXにとって初の月旅行になるというわけではない。同社はMasten Space Systems(マステン・スペース・システムズ)とIntuitive Machines(インテュイティブ・マシンズ)の委託を受けて、早ければ2022年に月面着陸機を打ち上げるミッションを予定しているからだ。これらのミッションでは、少なくとも現在の計画仕様のとおりであれば、どちらも「Falcon 9(ファルコン・ナイン)」ロケットが使用される。また、上記のスケジュールは今のところ、すべて書類上のものであり、宇宙ビジネスでは遅延やスケジュールの変更も珍しくはない。

しかし、このミッションは関係者にとって重要なものであるため、優先的に実行される可能性が高い。NASAにとっては、人類を再び月に送り込み、最終的には軌道上と地表の両方でより永続的な科学的プレゼンスの確立を目指す「Artemis(アルテミス)」プログラムの長期的な目標において、重要なミッションとなる。月面にステーションを設置するためには、その場にある資源を利用しなければならないが、中でも水は非常に重要な資源だ(VIPERは月の南極で氷結水を探索する)。

画像クレジット:Astrobotic

Astroboticは2020年、NASAから委託を受けてVIPERを月に届ける契約を獲得した。このミッションには、月の南極にペイロードを着陸させることが含まれているが、月の南極は有人宇宙飛行士が参加するNASAのArtemisミッションで目標着陸地点となる予定だ。Astroboticがこのミッションに投入する着陸船は「Peregrine(ペレグリン)」型よりも大型の「Griffin(グリフィン)」型で、VIPERを搭載するためのスペースが確保されている。そのため、SpaceXのロケットの中でも大型のFalcon Heavyを使用する必要があるというわけだ。

2024年までに宇宙飛行士を再び月に送り込むというNASAの野心的な目標は、新政権がスケジュールや予算を見直す中で流動的になっているものの、その達成のためには官民パートナーシップを活用して道を切り開くことが依然として約束されているようだ。このGriffinを使う最初のミッションは、先に予定されているPeregrineの着陸とともに、NASAの商業月面輸送サービス(CLPS)プログラムの一環である。このCLPSでは、NASAを1つの顧客として、月面着陸機を製造・提供する民間企業を求めている。

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タグ:NASASpaceXFalcon Heavyロケットアルテミス計画Astrobotic Technology

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ブルーオリジンが4月14日の打ち上げで「宇宙飛行士リハーサル」を実施、有人宇宙飛行にまた一歩前進

Blue Originは、有人宇宙飛行の実現に向けて一歩前進している。米国時間4月14日に予定している打ち上げでは「宇宙飛行士リハーサル」を行う計画だ。Blue Originの再利用可能な準軌道ロケット「New Shepard」の打ち上げは、同社宇宙船に有料の旅客を乗せて飛ばせることを検証するための重要なステップとなる。

そのリハーサルは、何をするのか?それは、実際の大気圏外飛行を除く宇宙旅行のすべてで、まず乗船、そして飛行前の各種操作、着地したらカプセルへ戻る、そして、ポストミッションの操作となるカプセルから出るための段階的な操作だ。これらはBlue Originの打ち上げと並行して行われる操作で、本番では民間人の宇宙飛行士数名が乗る。ただし今回のリハーサルでは、実際のエンジン点火と打ち上げの前にそれら顧客の役を演じる職員がカプセルを出て、カプセル着地地点へ移送される。着陸地点でカプセルに戻されてからはずっと乗っていたかのように振る舞う。

しかし打ち上げ時にカプセルから出ずに、実際に打ち上げられる乗客が1名いる。それは「Mannequin Skywalker」と呼ばれるマネキン人形で、打ち上げが人間にとってどうであるかをテストし計測するためのダミーだ。このマネキンは以前にも飛んだことがあるが、地上部分のリハーサル操作をするクルーと一緒に、有人宇宙飛行のような役を演じるのはこれが初めてだ。

Blue Originは最初のNew Shepardロケットを2021年の1月にローンチし、そのミッションには、音響特性と温度管理システムの改良や、新しいディスプレイと実際には乗組員が使用する通信機器のテストといったカプセルの乗組員用機能改善テストも行われた。最近公表されたタイムラインによると、ロケットの有人飛行開始は2021年のいつかで、となっている。

今週の打ち上げは、予定時刻は米国中部標準時(夏時間)4月14日午前8時(日本標準時4月14日午後10時)で、場所はテキサス州西部にある同社の発射場だ。打ち上げ時刻の1時間前からライブ中継を開始する予定で、宇宙飛行士のリハーサル風景などの映像も予定している。Blue Originの観光打ち上げがどのようなものになるかを知ることができるだろう。

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タグ:Blue Originロケット民間宇宙飛行New Shepard

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hiroshi Iwatani)

再利用化を進めるRocket Labは次のElectron打ち上げでも第1段回収を実施

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は次の打ち上げ準備を行っている。今のところ、ニュージーランドの施設から2021年5月に打ち上げられる予定だ。このフライトのペイロードは、BlackSky(ブラックスカイ)の地上観測コンステレーションに追加される2基の衛星だが、Rocket Labにはもう1つ、Electron(エレクトロン)ロケットの再利用化に向けた重要な目標もある。つまり、宇宙から帰還したブースター(第1段)の回収だ。

Rocket Labにとって、第1段の回収はこれが初めてではない。2020年11月、Return to Sender(送り主に戻す)とそのものズバリの名が付けられたミッションの際、同社は第1段を海から回収している。Run Out of Toes(つま先が足りなくなる)と名づけられた今回のフライトの目標は前回とほぼ同じながら、Electronには部分的な改良と、同社が多くのデータを収集しやすくする改造が施されている。さらに、回収後の完全な再利用に向けて進歩もしている。

「私たちは、回収した第1段の状態に大変に満足しています。どの耐熱システムにも、基本的に変更を加える必要はありませんでした」とRocket LabのCEOにして創設者のPeter Beck(ピーター・ベック)氏はインタビューに応えて話した。「私たちの第1段の再突入方法は、エンジンを下にして、大きな衝撃波を前方に逃がすというやり方です。次のフライトは次なる改良版であり、負荷の大きさが判明したことから、熱シールドを強化して負荷に耐えられるようにしています」。

最初のフライトでは、大気圏再突入の際にElectronの第1段にかかる実際の負荷に関する貴重なデータを大量に収集できた。そうした情報は、地上の技術者たちが専門知識から推測はできても、現実にやってみなければ本当に知ることはできないものだ。11月のフライトでロケットに装着したセンサーからのデータによって、Electronは、熱シールドの「性能と強度の大幅な向上」のためののデザイン変更が可能になったとベック氏はいう。

2回目のフライトでは、この改良策の効果を見極め、さらに多くのデータを回収して、3回目にして最後の回収テストに活すことにしている。これは、Electronの第1段が大気圏に突入する際の速度をさらに落とせるよう、再突入手順の調整に重点が置かれる。Rocket Labが回収計画の最終目標としている、パラシュートで降下速度を下げてヘリコプターで空中捕捉する方式の実現性を高めるためのものだ。

「その後に、空中での速度をさらに下げて、第1段の熱を取ることを目指して、もう一回、設計の見直しを行います。それにより、回収ヘリコプターのような要素を導入してまで、第1段をわざわざ取りに行ってもう一度飛ばすことに本当に価値があると感じられるレベルに、私たちは到達できます」とベック氏はいう。

その3回目にして最後の着水テストは、物事が順調に進めば、2021年後半に実施される。この3回の開発テストで回収した第1段を実際に再び打ち上げる予定はないが、最初に回収した第1段の部品の一部が、今回のテストで飛ばされる第1段に再利用されているとベック氏は教えてくれた。3回目のテストでは、さらに多くの部品を回収して再利用するという。

ベック氏によれば、再突入の際に何が起きたか、どの部分がいちばん損傷を受けているかを技術者たちが学ぶには、Rocket Labの工場に持ち帰った第1段を細かく切り刻むのが一番だと話す。

「第1段を工場に持ち帰ること以上に、本当にそれを理解する方法はありません」と彼はいう。「必要な道具はすべて揃っています。しかし、第1段をここへ運び込んで真っ先にするのは、切り刻むことでした。熱の影響を受けた部分、空気の流れから隠れていた部分をすべて切り取り、材料の特性を調べる張力試験を行いました」。

これらすべての作業が、回収したElectronの第1段を再び飛ばすという最終目標への推進力になっている。これが実現すれば大変な偉業となる。なぜなら、Rocket Labは打ち上げ回数を増やせるからだが、それだけではない。そもそも再利用を考慮せずに設計されたロケットだったという点が大きい。私は、Electronの回収した第1段の最初の再飛行は商用ミッションになるのか、または顧客のペイロードを積まないテスト飛行になるのかをベック氏に尋ねてみた。

「商用ミッションになることは考えられます。そのわけは、単に私たちは、心底自信を持てないものを打ち上げ台に載せたりはしないからです」と彼は答えた。「最初の再利用ロケットは、かなりの量の修繕が加えられると思います。他に再飛行を実際に行っている唯一の企業(SpaceX)を見てください。そこには長い長い年月におよぶ研究と知識があります。ロケットを回収して、大丈夫そうだから発射台に載せようなんて簡単にはいかないのです。自信と確実性を積み上げるには、何度も何度もやり直すプロセスを経る必要があります」。

Electronの再利用化は、このロケットにとって、それ自体に価値のあることだが、この機能を開発する過程は、Rocket Labの大積載量を誇る新型ロケットNeutron(ニュートロン)の建造に、かけがえのないものを与えているとベック氏は話す。Neutronは、推進力を使って離陸と着陸が行えるよう設計されている。また、最初から高い利便性がデザインに織り込まれている。

「Electronは、世界で最も建造しやすいロケットとして設計されました。Neutronは、もっとも再利用しやすいロケットとして設計されています」とベック氏。「これらはパラダイムが大きく異なるものですが、尋常でないことに、私たちはその両方の体験を有しています。Neutronでは、革新的技術は再利用性に集中しています。間もなく、おもしろい情報を少しだけお伝えしますが、このロケットの構造をほんの少しだけ見れば、私たちが作っているロケットが、どの程度まで再利用可能なのかが明白になるでしょう」。

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タグ:Rocket LabロケットElectron

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)

ロケット打ち上げ用OSを元SpaceXエンジニアの企業Epsilon3が開発

Laura Crabtree(ローラ・クラブツリー)氏は、子供の頃からロケットの打ち上げをテレビで見るのが大好きで、仕事も最初に入社したNorthrup Grumman(ノースラップ・グラマン)から、次に移ったSpaceX(スペースエックス)で、ずっとロケットの打ち上げに携わってきた。

SpaceXのシニアミッションオペレーションエンジニアを務めていた彼女だが、現在はロサンゼルスに拠点を置くEpsilon3(エプシロンスリー)という宇宙関連スタートアップ企業の共同設立者兼CEOとして、打ち上げオペレーション用のオペレーティングシステム開発を手がけている。

「私が欲しかったツールは存在しませんでした」と、クラブツリー氏はいう。そこで、次の機会を求めてSpaceXを離れたとき、自分が持っていなかったツールキットを開発しようとするのは当然のことだった。「私は、宇宙産業がより効率的になりエラーが減ることに貢献できる方法を探し始めました」と、初めて起業家となった同氏は語っている。

クラブツリー氏とともにこの新事業に参加した人物は、前に起ち上げた会社のEpirus(イピロス)で、8VC、Bedrock Capital(ベッドロック・キャピタル)、L3 Harris Technologies(L3ハリス・テクノロジーズ)などの投資家から少なくとも1億4470万ドル(約157億6000万円)を調達した連続起業家のMax Mednik(マックス・メドニック)氏と、元Google(グーグル)でチーフソフトウェアエンジニアを務めていたAaron Sullivan(アーロン・サリバン)氏だ。メドニック氏も起業に目を向ける前にはGoogleで働いていた経験がある。同氏がそれまで手がけてきた事業は、金融サービス用ソフトウェアから法律サービス用ソフトウェアまで多岐にわたるが、メドニック氏は航空宇宙にも興味を持っていた。学校を卒業して最初に求職したのはSpaceX、JPL、Googleだった。

SpaceX出身者が起業したネットワークの中でも、Epsilon3は、First Resonance(ファースト・レゾナンス)やPrewitt Ridge(プルウィット・リッジ)と同様に、ロケットの設計、製造、ミッション管理、運用のうち、これまで手作業や特別に作られたツールで対応していた部分をプロダクト化している。

「この会社は、ロケット打ち上げ会社やそのペイロードとなる衛星会社に向けて、ミッション管理ソフトウェアを製作しています」と、最近のシードラウンドに参加したStage Venture Partners(ステージ・ベンチャーズ・パートナーズ)の創業者でマネージングパートナーであるAlex Rubalcava(アレックス・ルバルカバ)氏は述べている。「設計や仕様だけではなく、実際に動作しているとき、データのアップリンクやダウンリンク、ソフトウェアの変更をしているときに、何をしているのかが重要なのです」。

ルバルカバ氏は、Epsilon3の市場はまったく新しいものだが、急速に成長していると認めた。

「これは、かつて宇宙へのアクセスは非常に高価で、各国政府の機関や世界で10〜20社の商業衛星事業者にしか提供されていなかったという事実に基づく分析でした。そして実際に打ち上げが可能な企業は、ごく限られていました」と、ルバルカバ氏はいう。「しかし今では、突然、30もの異なる宇宙飛行が行われるようになりました。30もの異なる会社がロケットを所有しているのです。宇宙へのアクセスは、かつては希少で、高価で、非常に制限されていましたが、今ではもはや、そうではありません」。

画像クレジット:Relativity Space

宇宙サービスの需要は爆発的に増加しており、2026年には打ち上げサービス産業が180億ドル(約1兆9600億円)を超えると予測するアナリストもいる

「とてもよく似た話ですが、私たちはみんなSpaceXの異なる部署の出身です」と、クラブツリー氏は語っている。First Resonanceは試作から製造までのソフトウェアを提供し、Prewitt Ridgeはエンジニアリングおよび管理ツールを提供し、Epsilon3は打ち上げオペレーション用のオペレーティングシステムを開発している。

「設計開発、製造、統合試験、運用という段階があり、私たちはその統合試験と運用をサポートしようとしています」と、クラブツリー氏はいう。

First ResonanceとPrewitt Ridgeは航空宇宙や製造業にまで広く応用されているが、クラブツリー氏の目、そして彼女の会社の使命は、依然として星に向けられている。

「私たちは宇宙に焦点を絞り、最も困難で複雑な環境でもソフトウェアが機能することを証明しています」と、メドニック氏はいう。「原子力発電所の建設や操業、エネルギー、採鉱、航空など、複雑なワークフローを必要とする他の分野にも応用できますが、今のところ、そして予測可能な将来のことを考えると、宇宙ビジネスがすべてなのです」。

メドニック氏は、このソフトウェアを、ワークフローや手順を制御・編集するための電子ツールキットと表現した。「Asana(アサナ)のプロジェクト管理とGitHub(ギットハブ)のバージョン管理を融合させたようなものだと思っていただければよいでしょう」と、同氏はいう。「サブシステムやシステムと、システムの運用を統合させるためのものでなければなりません」。

SFドラマ「Babylon 5(バビロン5)」に登場する惑星にちなんで名付けられたEpsilon3は、将来的に他の世界を探査するロケットミッションに欠かせない存在になるかもしれない。少なくとも、Stage Venture PartnersやMaC Ventures(マック・ベンチャーズ)などの投資会社は、180万ドル(約1億9600万円)の初期投資を行って、この事業に賭けている。

現時点で、Epislon3の初期の顧客は、打ち上げ時に同社のプラットフォームを使用している初期段階の宇宙企業で、Stoke Space(ストーク・スペース)のような新規参入のロケット企業などだ。

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「我々にとって、宇宙とディープテックはホットなテーマです」と、MaC Venturesの共同設立者でマネージングパートナーであるAdrian Fenty(エイドリアン・フェンティ)氏は述べている。この前ワシントン市長は、メドニック氏の連続起業家としての信用と、クラブツリー氏のこの分野における極めて深い専門知識の組み合わせに注目した。

「私たちは一般的なオペレーティングシステムを見てきて、良いものが出てくるのではないかと考えていました」とフェンティ氏はいう。彼の会社は、深宇宙、深技術、そして垂直統合型オペレーティングシステム開発にともなう命題という、すべての条件を満たす組み合わせを、Epislon3に見つけた。

MaC Venturesの前身であるM Venturesの共同設立者で、フェンティ氏とともにマネージングパートナーを務めるMichael Palank(マイケル・パランク)氏は「この会社を調査してみると【略】宇宙がいかに大きなビジネスであり、今後もそうなるだろうということがわかります」と語る。「地球上の課題の多くは、宇宙でしか解決できません。そして、宇宙への往来を管理するためには、より優れたオペレーティングシステムが必要です」。

AstraのRocket 3.2第2段から見た宇宙(画像クレジット:Astra)

カテゴリー:宇宙
タグ:Epsilon3ロケットOS

画像クレジット:NASA/Bill Ingalls / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スペースXの次世代超大型ロケットブースターが完成間近

SpaceX(スペースX)は、Starship宇宙船を軌道に乗せるための次世代の超大型ロケットブースターSuper Heavyの試作品1号機の「スタッキング」を完了した。Super Heavy高さは約220フィート(約67メートル)で、これはBoeing 747の翼幅とほぼ同じか、あるいはフロリダ州のウォルト・ディズニー・ワールドにあるシンデレラ城よりも少し高いくらいだ。

ここにはStarshipがないので、あと160フィート(約49メートル)ほど高さが追加される。しかしSuper Heavyは、Starshipと結合されて飛行する前に独自の飛行テストを実施する予定であり、その主な目的はエンジンが実際に燃焼する前に、点火可能な燃料を安定状態に保つために必要な加圧と、極端な温度に燃料タンクが耐えられることを確認することに焦点が当てられる。

Super HeavyはStarshipと同じエンジンを使用している。これはRaptorエンジンで、スペースXはこの次世代ロケットのために新しいエンジンを製造した。最終バージョンには合計28基のRaptorエンジンが搭載されるが、この最初のプロトタイプに搭載されるエンジン数ははるかに少なく、同社CEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、組み立てや輸送の仕組みなどのテストにのみ使用されるため、地上に留まることになると認めた。

マスク氏は次のプロトタイプでは飛行すると述べている。同氏はスケジュールに関しては必ずしも正確ではないが、Starshipの上段ステージ(フィンがついた大きな穀物サイロのような形状のもの)の開発は急速に進んでり、最近のテスト飛行ではほぼ完璧な着陸を達成したようにみえたが、数分後に起きた爆発でプロトタイプの機体は完全に吹き飛んでしまった

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マスク氏がStarshipとSuper Heavyの開発を急いでいるのは、Artemis(アルテミス)計画の一環として将来の有人月面着陸ミッションをNASAに提供するという野心的な目標を持っていることと、2023年までのわずか2年間でStarshipの初の商用観光飛行を計画していることが理由だ。

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カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXSuper Heavyロケット

画像クレジット:Elon Musk

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

ロケット史上最高の事前契約数を記録したRelativity Spaceが米国防総省と初打ち上げ契約を締結

Relativity Space(レラティビティー・スペース)は、すでに相当数の打ち上げ契約を交わしている。事実、CEOで共同創設者のTim Ellis(ティム・エリス)氏によれば、同社のTerran 1(テランワン)ロケットの事前契約の数は、ロケット史上最高を記録したという。だが、とりわけ重要なのは最も新しい契約先だ。それは米国防総省(ペンタゴン)。同省は国防イノベーション部門(Defense Innovation Unit、DIU)の取り組みとして、450〜1200kgのペイロードの地球低軌道への打ち上げに即応できるパートナーを探し続けてきたが、Relativity Spaceは、今回の契約でその役割を担うこととなった。

「かなり大型の衛星です。これだけの宇宙船を打ち上げられる業者はかなり限られます」とエリス氏はインタビューに応えて話した。「3mのペイロードフェアリングを持つTerran 1は、実際にそのサイズのペイロードが打ち上げられるすべての米国企業の中でも特異な存在です。そのスケールに十分に対応できるフェアリングを有しているのは、いまだに私たちだけです」。

DIUには、革新的な米国企業、特に技術開発が比較的初歩の段階の企業と協力するという特別な使命があり、その契約は、将来にわたり国防総省との深い関係が保証されるお墨つきとも見られている。だが今回のケースは、Relativity Spaceが比較的成熟した企業であり、国防関係以外の政府機関のものを含むミッションの事前契約数が多いことが評価された。

「今回は、特定のロケットを必要とする現実のミッションがあったからです」とエリス氏。「またこれは、国防総省を初めて顧客として迎えともに仕事ができる、そして私たちが聞いてきた政府の要望を実現できる大きなエコシステムへ駆け上がるすばらしいチャンスでもあります。これはすべてTerran 1に焦点を当てたものですが、もちろん、このプロジェクトとはまったく別に、私たちはTerran Rについてもすでに公表しています。これは、ほんのきっかけに過ぎません。私たちが作るあらゆるものを活用して、さまざまな分野で国益を支えてゆく多大な好機を私たちは見据えています」。

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エリス氏が話していたのは、先日Relativity Spaceが発表した大積載量ロケットTerran Rだ。これは3Dプリントでロケットを建造するこの会社が2021年2月に発表した大型ロケット計画であり、地球低軌道に衛星コンステレーションを投入する目的で注文に応じて作られる。変化するニーズに即応でき、冗長性の高い衛星技術を特に求める国防総省は、これまでに何度も衛星コンステレーションへの強い関心を示してきた。

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タグ:Relativity Spaceロケット3Dプリントペンタゴン

画像クレジット:Relativity Space

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(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)

SpaceXが新たにStarlink衛星60機打ち上げ、Starshipロケットは一度に最大400機まで打ち上げ可能に

SpaceX(スペースエックス)が、Starlink(スターリンク)衛星の新しいバッチを打ち上げた。いつものように地球低軌道向けの60機の衛星で構成されており、打ち上げ済みの1000機の衛星コンステレーションに加わることになった。今回の打ち上げは、SpaceXにとって2021年5回目のStarlink衛星の打ち上げであり、トータルでは20回目の打ち上げとなる。

2021年の初めにSpaceXは、払い戻し可能な前払いの予約システムを介して、現在または計画されているStarlinkのサービスエリアへ、誰でもアクセスできるようにした。同社は、このような打ち上げを2021年を通して続け、世界のはるか広い範囲で顧客にサービスを提供できる、衛星コンステレーションを構成することを目指している。以前SpaceXのCOOで社長であるGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏は、同社は約1200個の衛星で世界の多くの地域をカバーできると予想していると語っていたが、現在同社はネットワークの容量と速度を完全に作り上げるために3万個以上の衛星打ち上げを計画している。

SpaceXは、Falcon 9ロケットを使ったStarlinkの打ち上げを順調に進めているが、その一方で衛星コンステレーション成長のキードライバーとしてStarshipにも目を向けている。南テキサスで開発中のSpaceXの次世代ロケット「Starship」は、一度に400個のStarlink衛星を軌道に投入することが可能で、完全な再利用性と迅速なターンアラウンドを考慮して設計されている。

1回のミッションで6倍以上の衛星を打ち上げることができるようになれば、Starlinkネットワークの展開速度や計画の全体的なコストの面で、SpaceX社にとって大きな助けになるだろう(なおここでは、Starshipが量産ロケットとなった際には、Starlinkが一般的に手頃な価格になるとしている彼らのコスト予測が正確であると仮定している)。少なくともそれは間違いなく数年先のことだが、SpaceXは米国時間3月3日に新しいマイルストーンを達成し、それが実現する可能性があることを十分に示している。

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同社の最新のStarship試作機は、米国時間3月3日にこれまでで最も成功したテスト打ち上げを行った。同機はSpaceX社のテキサス州ボカチカ開発サイトから離陸し、高度約3万2000フィート(約9728m)まで飛行した後「フロップ」操作を実行して、垂直方向の軟着陸のために自身の向きを変えた。今回のテストロケットも、着陸後10分以内に爆発を起こしたが、その派手な結末にもかかわらず、今回のテストでは、SpaceXがStarshipを現実のものにするために必要な基本的なエンジニアリング作業の多くが証明された。

Starlinkは数年に渡る巨大な取り組みであり、Starshipの大量生産や飛行が数年先になったとしても、プロジェクト全体にまだ大きな影響を与えられるはずだ。そして、Starlinkが完全に展開され運用が始まった後は、定期的な保守作業が発生する。ネットワーク内の個々の衛星は、実際には最大で5年までの運用ができるように設計されているに過ぎない。そのため運用をスムースに行い続けるためには、定期的な交換が必要となるのだ。

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXStarshipロケット衛星コンステレーション人工衛星

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:sako)