ぶどうを畑から包装場まで運ぶ農業用自律走行ロボットのBurroがトヨタなどから約12億円調達

Burroと最初に出会ったのは、アグリテック企業である同社が、2020年に開催されたTechCrunchロボティクスイベントのピッチオフに参加したときだった。この(以前はAugeanという、今ほど楽しくない名前で活動していた)会社は、今週、シリーズAで1090万ドル(約12億1500万円)の資金を調達したことを発表し、着実にステップアップしているようだ。今回のラウンドは、S2G VenturesとToyota Ventures(トヨタ・ベンチャーズ)が主導し、既存投資家であるRadicle GrowthとffVCに加えて、F-PrimeとADM Capitalが参加した。

Burroの主な製品は、農作物を畑から移動させるための自律走行ロボカートだ。Burroは、同社が「ポップアップ自律性」と呼ぶ、トレーニングなしで空間を移動できるシステムを活用している。このシステムは、現在不足している農園作業員を補充するために使用することができる。

画像クレジット:Burro

同社はすでに約90台のロボットを現場に投入しており、それらはブドウを運搬しながら1日に約100~300マイル(約161〜483km)移動し、週6日運用されているという。今回の資金調達は、既存および新規顧客向けの生産拡大のために使用され、2022年には世界で500台以上のロボットを導入する計画だ。

Charlie Andersen(チャーリー・アンダーセン)CEOはリリースでこう述べている。「農業分野に参入した多くの自律化企業は、まず自律走行トラクターや自律除草、収穫などに焦点を当て、非常に難しい技術的作業を包括的に自動化しようとしてきましたが、多くの場合、大規模な市場への参入には苦戦しています。このアプローチのすばらしさは、最も労働集約的な農業分野におけるどこにでもある問題を中心に、今日、スケールアップできる点にあります。また、我々のプラットフォームがデータを取得し、多くの環境について学習することで、他の数え切れないほどのアプリケーションにスケールアップするための基盤を提供します」。

画像クレジット:Burro

アグリテックは、パンデミックの際に労働力不足が顕著になったことで、関心が加速したいくつかのロボティクス分野の1つだ。自社の技術を迅速に実用化することで、Burroが投資家の関心を集めたことは間違いない。

画像クレジット:Burro

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

Iron Oxのロボット温室は農業の環境負荷を大幅に減らす

ベイエリアを拠点に自動化農業の開発を手がけるスタートアップ企業のIron Ox(アイアン・オックス)は先週、5300万ドル(約59億円)の資金調達を実施したことを発表した。Breakthrough Energy Venture(ブレークスルー・エナジー・ベンチャー)が主導した今回のシリーズCラウンドで、同社の資金総額は9800万ドル(約109億円)に達した。

Iron Oxは人口増加、気候変動、労働力不足など、さまざまな問題が山積する21世紀の農業に革命を起こそうとしている数多くの企業の1つだ。同社のソリューションは、大規模な屋内農園から、従来の農園でもプラグアンドプレイで運用できる農場ロボットまで、多岐にわたる。

このスタートアップは、そのアプローチを「クローズド・ループ・システム」と呼んでいる。それは実質的に、独自の収穫技術を活用したロボット温室だ。収穫量について同社は、従来の農業とほぼ同等と、突飛な主張はしていないものの、環境への負荷を大幅に軽減し、一般的な農業よりも季節の変化に左右されないモデルを目指しているという。

Iron Oxのシステムでは、従来の農業に比べて水の使用量を約90%削減することができる。また、この種のシステムでは、すべてのプロセスにデータが統合されているため、栽培した農産物に関する多くの情報を収集し、将来の収穫量の向上に役立てることもできる。

「世界的な投資家たちは、人類の最も重要な課題は気候変動を食い止めることだと知っています。そのためには、持続可能な作物を少しずつ増やしていくだけでは足りませんし、消費者に味や利便性、価値の面で妥協を求めることもできません」と、共同創業者兼CEOのBrandon Alexander(ブランドン・アレクサンダー)氏は、今回のニュースに関連したリリースで述べている。「私たちは、増加する人口を養うために必要な土地、水、エネルギーの量を最小限に抑える技術を適用しています。Iron Oxのチームは、農業をカーボンネガティブにするという長期的な使命を果たすまで、決して立ち止まりません」。

同社によれば、今回の資金調達は、製造規模の拡大、米国での事業拡大、研究開発の強化、従業員の増員に充てられるという。

画像クレジット:Iron Ox

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Actuator:中国ロボット企業の大型ラウンドとLocusの買収

このちょっとした地域内の同時性はどうだろう。今週、中国のロボット企業2社が2億ドル(約220億円)の資金調達に成功した。いずれも、我々がたまに目にする、活気に満ちたエコシステムの一部だ。中国のロボット分野には非常に多くのプレイヤーが存在するため、当地で起こっているイノベーションを追跡するのは難しいが、こうした大規模な資金調達は確実に波紋を呼ぶ。

新型コロナウイルスのパンデミックは、中国にとって大きな加速のタイミングになると予想されている。世界のサプライチェーンを停滞させた大規模な製造不足が背景にある。だが、今週の大きな発表2件は、製造業の枠を超えた自動化の導入を示唆するものだ。

画像クレジット:Hai Robotics

Hai Robotics(ハイロボティクス)は、シリーズCとDを合わせて2億ドル(約220億円)の資金調達を発表し、大きな話題となった。同社は深圳という中国の製造業の中心地に拠点を置く。得意とする分野は倉庫・荷役用ロボットだ。豪州の大手オンライン書籍販売会社であるBooktopiaとの取引を含め、すでに30カ国で展開しており、海外での実績も十分にある。

今回のラウンドでは、5YキャピタルとCapital Todayが、それぞれシリーズCとDを担当した。また、Sequoia Capital China、Source Code Capital、VMS、Walden International、Scheme Capitalが参加した。今回調達した資金は、国際的な事業拡大と中国でのプレゼンス向上に使用される見込みだ。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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Keenon Robotics(キーノンロボティクス)の2億ドル(約220億円)のシリーズDは、あまり注意を引かなかった。このラウンドは、ソフトバンク・ビジョンファンド2がリードし、CICC ALPHAとProsperity7 Venturesが参加した。Keenonはサービスロボットを専門としており、カリフォルニア州に本社を置くBear Robotsのロボウェイターに似ている。この分野に絞ってもかなりの規模の産業だ。同社はすでに、ホテルや病院などで使用実績を積み上げている。

画像クレジット:Keenon Robotics

Keenonによると、同社のロボットは米国、欧州、韓国、シンガポールで導入されており、今回調達した資金でその実績をさらに拡大する。

「ロボティクス・ソリューションは、退屈な反復するワークフローを支援することで、サービス業界全体に大きな影響を与えることができると考えています」とソフトバンクの松井健太郎氏はプレスリリースで述べた。「AIと機械学習を使用し、高度な製造能力と組み合わせて、Keenonは中国および世界のレストラン、ホテル、病院の生産性向上を支援する革新的なロボットを開発しています」

Locus RoboticsがWaypoint Roboticsを買収。画像クレジット:ローカス・ロボティクス

潤沢な資金を持つLocus Robotics(ローカス・ロボティクス)は、Waypoint Robotics(ウェイポイント・ロボティクス)の買収に合意した。Waypointは、Locusとほぼ同じカテゴリーの倉庫を運営している。Waypointの主力製品は、300ポンド(約136キログラム)の荷物まで運搬可能な自律型全方向ロボット「Vector」だ。

「Locusは、生産性の高い革新的なAMR(自律走行物流ロボット)技術を開発した実績のあるリーダーであり、倉庫の全体的な最適化を求める顧客のニーズを効率的に解決します」とLocusのCEOであるRick Faulk(リック・フォールク)氏はプレスリリースで述べた。「世界中の物流現場で取扱量増加と労働力不足が続くなか、Waypoint Roboticsの買収は、そうした世界的なニーズに数年ではなくわずか数カ月で対応する能力を高め、倉庫のデジタルトランスフォーメーションを推進するのに役立ちます」

Locusは2月、1億5000万ドル(約165億円)のシリーズEを発表し、今月にはさらに5000万ドル(約55億円)を調達した。同社は、Amazon(アマゾン)に対抗できる強固なフルフィルメントエコシステムの構築を目指している。

現代自動車によるBoston Dynamicsの買収の最初の成果がついに得られようとしている。「Factory Safety Service Robot」と名付けられたこのロボットは、工場を巡回するために設計された特注の4脚ロボットで、まず現代自動車が所有するソウルの起亜の工場で試験的に導入された。このロボットにはLiDARとサーモグラフィが搭載されており、自律的に工場内を巡回することも、ブラウザを使って遠隔操作することも可能だ。

画像クレジット:Nvidia

Nvidiaと(エヌビディア)Open Robotics(オープンロボティクス)は今週、2社にとって有益となりそうな提携を発表した。この契約は、NvidiaのJetson開発プラットフォームとOpen RoboticsのROS 2ソフトウェアとの連携が基本的な目的だ。この取引は、Nvidiaの知覚技術を利用するロボット開発者の開発期間を短縮する狙いがある。

「多くのROS(ロボット・オペレーティングシステム)の開発者が、ホストのCPUの負荷を軽減するために設計され、追加の計算機能を備えたハードウェア・プラットフォームを活用するようになりました。ROSはこうした高度なハードウェア・リソースを効率的に活用しやすくなるように進化しています」とOpen RoboticsのCEOであるBrian Gerkey(ブライアン・ガーキー)氏はプレスリリースで述べた。「NVIDIAのようなアクセラレーション・コンピューティングのリーダーと、同社のAIとロボット工学のイノベーションにおける豊富な経験は、ROSコミュニティ全体に大きな利益をもたらします」

そして、ハッピーDisruptウィーク!デッキメンテナンスロボットのRoboDeckにエールを送りたい。同社は今週のStartup Battlefieldに、「ただのルンバではなく、デッキの塗り直し用」(グレッグ氏のコメントを引用)とうたう製品で参加している。このシステムはシーリング剤を塗布し、内蔵されたマッピング技術によりデッキから落ちないよう、端の位置を判別する。

画像クレジット:RoboDeck

同社には現在、1回の充電で500平方フィート(約46平方メートル)のデッキを処理できるプロトタイプがある。このデバイスをRaaSレンタルモデルとして市場に投入する。同社はこれまでに50万ドル(約5500万円)を調達しており、そのほとんどはSOSVからの資金提供によるものだ。

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画像クレジット:Hai Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

ボストン・ダイナミクスを買収した現代自動車が4足歩行ロボットを工場の安全監視に活用

Hyundai(現代自動車)がBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)の買収を完了させたのは2021年6月のこと。この韓国の巨大自動車メーカーは、マサチューセッツ州に本拠を置くロボット企業の技術を、将来を見据えた多くのコンセプトモビリティ車に統合させるという壮大な計画を持っていることは間違いない。しかし現時点では、既存のロボットを活用することに、より力を入れているようだ。

現代自動車は米国時間9月17日「Factory Safety Service Robot(工場安全サービスロボット)」と名付けられたロボットを発表した。同社は発表文書の中で、簡潔にするためにすぐにこのユニットを「the Robot(このロボット)」と呼び始めたが「Factory Safety Service Robot」と何十回もタイプする時間がある人はいないだろうから、私もそうしたいと思う。

このロボット(わかるよね?)は基本的に、工場の安全点検用に開発された「Spot(スポット)」を改造したものだという。当然ながら、現代自動車は身近なところから始めることにしたようで、子会社であるKia(起亜自動車)のソウル工場で最初の試験運用を開始した。

Spot…ではなくこのロボットには、LiDARと熱検知カメラが搭載されており、空間内の高温になっている場所や火災の危険性、開いているドアなどを検知できる。何か異常を感知すると、安全確認用のウェブページを通じて警告を送信し、リアルタイムでその画像やデータを共有することができる。Spotと同様に自律的に動作することも、人間が遠隔操作することも可能だ。

「Factory Safety Service Robotは、ボストン・ダイナミクス社との最初のコラボレーション・プロジェクトです。このロボットは、産業現場における危険性を検知し、人々の安全を確保するのに役立ちます」と、現代自動車のDong Jin Hyun(ドン・ジン・ヒョン)氏はリリースで述べている。「私たちはボストン・ダイナミクスとの継続的な協業を通じて、産業現場の危険を検知し、安全な労働環境を支えるスマートサービスを、これからも作り出していきます」。

画像クレジット:Hyundai

全体的には、Spotに何ができるかを知っている人なら、センサーが追加されているとはいえ、このロボットの要点をほぼ理解できるだろう。ボストン・ダイナミクスは先週、このロボットにデータ収集機能を追加することを発表している。

画像クレジット:Hyundai

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スマホでロボットを遠隔操作し農作業に参加できるRaraaSをH2LとPwC財団が共同開発

スマホでロボットを遠隔操作し農業作業を行えるRaraaSをH2LとPwC財団が共同開発

「オーディオビジュアルに次ぐ新世代の感覚共有技術BodySharingの研究開発」を進めるH2Lは9月15日、環境社会問題に取り組む団体への助成を行う公益財団法人PwC財団と共同で、スマートフォンで遠隔地のロボットを操作して農作業に参加できるシステム「RaraaS」(ララース)を開発した。RaraaSは、Remote Agricultural Robot as a Service(遠隔農業ロボットサービス)の略称という。

RaraaSは、農業従事者の減少、都市一極集中型の社会構造、障害者の社会参画機会の制限と低賃金という3つの社会課題の解決を目指して開発された。H2Lは、筋肉の動きを検出する独自の筋変位センサーで人の動作や感覚をデータ化して、それをバーチャルアバター、ロボット、他の人に伝えるという「BodySharing」(ボディシェアリング)技術を開発している。RaraaSは、それを使って農作業を支援しようという試みだ。細かな指の動きや力の入れ具合などがロボットに伝えられ、ロボットからは果実の重さをフィードバックするといったシステムの実現を目指している。

7月から、RaraaSを使った「遠隔ロボットdeいちご摘み」という体験会が実施されている。現在は開発関係者のみで行われているが、10月から12月までは一般から募集した参加者が体験できるようになる予定。申し込み方法などの詳細はまだ発表されていないが、所要時間は15分程度で、Zoomに接続できるPCとiOSを利用できる15歳以上の人が対象となるとのことだ。体験者には、体験写真、遠隔ロボットの操作レポートなどが贈られるとのこと。

2012年7月設立のH2Lは、肉の膨らみから手の動作を検出する技術と、多電極の電気刺激を腕に与えて触感を伝える技術に強みを持つスタートアップ。これらの技術と、アバター合成技術、遠隔操作ロボットなどを組み合わせ、BodySharingを実現している。

PwC財団は、PwC Japanグループに属するPwCコンサルティング合同会社が設立。「人」と「環境」に関する社会課題に取り組む団体を支援するために2020年5月1日に設立され、2021年5月1日に公益財団法人へ移行した。教育やアップスキリング(スキルの向上)、個性や多様性(ダイバーシティ&インクルージョン。D&I)の支援、環境問題への対策など、社会における重要な課題解決に取り組む団体を対象に、公募による助成金交付を中心とした活動を行っている。

高度医療ロボのリバーフィールドが30億円調達、執刀医にリアルタイムで力覚を伝える空気圧駆動手術支援ロボの上市加速

高度医療ロボのリバーフィールドが約30億円調達、執刀医にリアルタイムで力覚を伝える空気圧精密駆動手術支援ロボの上市加速

高度医療ロボット各種の開発を手がけるリバーフィールドは9月10日、第三者割当増資による総額約30億円の資金調達を発表した。引受先は、東レエンジニアリング、第一生命保険、MEDIPAL Innovation投資事業有限責任組合(SBIインベストメント)をはじめ、事業会社、ベンチャーキャピタルなど。調達した資金により、同社独自の空気圧精密制御技術を用いた手術支援ロボットの上市を加速させる。

執刀医に鉗子先端にかかる力をリアルタイムで伝える力覚提示が可能な手術支援ロボットの上市を2023年1月に予定。またその他、次世代内視鏡把持ロボット、眼科用ロボットを2022年中に順次上市していく計画としている。

2014年5月設立のリバーフィールドは、大学で培ってきた技術を活かした医療ロボットを開発している大学発スタートアップ。東京大学大学院 情報理工学系研究科教授の川嶋健嗣氏が創業者代表および会長、また東京工業大学准教授の只野耕太郎氏が代表取締役社長を務めている。

同社は、2003年から東京工業大学において手術支援ロボットの研究をスタート。当時、低侵襲外科手術支援用ロボットは優れたシステムである一方、操作を視覚に頼っており、触った感覚が操作者に伝わらないとの声が挙がっていたことから、空気圧システムによる精密駆動技術を手術支援ロボットに適用することでニーズに応えられると考えたという。

その後、先に挙げた力覚フィードバック実現のニーズと、研究室で有していた空気圧の計測制御技術のシーズを合わせ、空気圧駆動の手術支援ロボットを研究試作として完成させた。これらの研究成果を研究として終わらせず、社会・医療現場に実際に役立てたいとの思いから同社を起業したという。

さらに賢くなったロボット掃除機「ルンバ」、ペットの排泄物は避けて飼い主に報告

Roomba(ルンバ)は、明らかに世界で最も普及しているロボットの1つだが、最も賢いロボットの1つだったわけではない。とはいえ、全体的に見れば、それは大きな問題ではない。このトップセラーの掃除機は、自分のやるべきことに関しては優秀な仕事をする。それはつまり、床をきれいにするということだ。しかし、ロボット工学者の仕事に終わりはない。iRobot(アイロボット)がその注目とリソースの大半をこの分野に注いできたことには理由がある。この会社は事実上すべての時代を、非常に特殊なタスクを実行するロボットの能力を向上させることに費やしてきた。

そして今回は、搭載したセンサーを使って、家の中のエリアやレイアウト、掃除に余計に時間がかかる領域などを記憶することができるようになった。

「継続的な学習機能が有効になっているので、あなたが家の中で何かを変えると、Roombaはそれを理解します」と、iRobotのColin Angle(コリン・アングル)CEOは、TechCrunchに語った。

「今まで開けたことのないドアを開けたら、ルンバはそこを探索します。ソファを移動させれば、家の中が以前とは少し違っていることを理解し、それを承知します。収集した情報はどんどん豊かになっていきます」。

画像クレジット:iRobot

もう1つの大きな進化は、特定の物体を識別して避けるようになったことだ。同社はこれまでに何百もの物体を識別する作業を行ってきたが、まずは2つの具体的な問題領域から着手している。コードとウンチだ。理由はそれぞれ大きく異なるものの、どちらもロボット掃除機にとって大きな問題となる。どちらの場合も、手やヒザをついて後処理をしなければならなくなるのは嫌だろう。

ウンチ(poop)に関しては、iRobotはそれを頭文字とする保証を付けた。Pet Owner Official Promise(P.O.O.P.、ペット飼い主公式契約)と呼ばれるこの保証は、動物の排泄物を轢いてしまった「Roomba j7+」を交換するというものだ(本キャンペーンは、購入から1年間有効で、交換製品のみを対象とする。限られた地域でのみ実施され、追加の規約と条件が適用される。詳細はこちらをご覧いただきたい)。

「Google(グーグル)で検索すると、ロボットが動物のウンチを轢いてしまったというあまり愉快ではない例が見られます」と、iRobotで製品管理ディレクターを務めるHooman Shahidi(フーマン・シャヒディ)氏はいう。「私たちはこの問題をお客様と一緒に解決しました。動物のウンチを発見したら、それを避けて、お客様にお知らせします」。

画像クレジット:iRobot

アングル氏は次のように付け加えた。「人を家に送って何百ものウンチのモデルを作っていた頃は、ロボット工学者としての輝かしいキャリアはまったく忘れられていたかもしれません。人を送り込んで、ウンチの模造品を撮影・作成しました。何万枚のさまざまな形の模造ウンチの画像が必要だったかはわかりませんが、これは明らかにデモコードではありません。オシッコは無理です。3次元的な要素が必要ですが、しかしロボットは識別して避けることができると我々は信じています」。

3つ目の改良は、ユーザーの行動にシステムを適合させるスケジューリングだ。例えば、留守中に自動的に掃除をしたり(携帯電話の位置情報をトリガーとして利用する)、人がいる部屋は避けるようにすることができる。ロボットが家の中を移動する必要がある場合は、静かに走行し、実際に作業を開始する時間になるまで起動しない。清掃時間の目安を表示し、ユーザーに作業時間がどれだけ掛かるかを知らせることもできるようになった。

Roomba j7は、米国およびカナダでは、649ドル(約7万1000円)という価格で販売されている。Roombaが集めたゴミを収容しておけるコンパクトなクリーニングベースが付属する「j7+」は849ドル(約9万3000円)だ。欧州でも販売されており、来年には他の市場にも展開が予定されている。一方、バージョンアップしたソフトウェア「Genius 3.0」は、同社の他のコネクテッド・ロボットにOTAアップデートで提供される予定だ。

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画像クレジット:iRobot

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

子供が乗れるロボユニコーンは中国のEVスタートアップXpeng製

子どものためにロボット犬を買うのではなく、神話上の生き物を買ってあげるといいかもしれない。中国の電気自動車メーカーXpengは、子どもたちが乗れるロボットユニコーンを発表した。SCMPによると、この四足歩行ロボットは、Xpengの自律走行やその他のAIタスクの経験を活かして複数の地形タイプをナビゲートし、物体を認識し「感情的なインタラクション」を行うという。

その他の詳細については明らかにされていないが、デザインはBoston RoboticsのSpotをよりかわいく、より子ども向けにしたようなものだ。サイズは子どもと同じくらい。ただ申し訳ないが、あなたが仕事に向かうときに踊ることはない。

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このユニコーンロボットは、本物のユニコーンと同じくらい神話的な存在でもある。Xpengは、価格や入手方法はおろか「角付きロボット馬」の販売予定時期も明らかにしていない。7万5000ドル(約826億円)のSpotほどではないかもしれないが、洗練されていることもあり2019年に発売された2900ドル(日本では21万7800円)のaiboよりも高いと予想される。

ある程度までは、利益は問題ではない。XpengのチーフであるHe Xiaopeng(ホー・シャオペン)氏は、今回のユニコーンは同社の既存技術を活用してロボット分野に進出する広範な動きの一環であるという。これは第一歩だと思って欲しい。Xpengがユニコーンから学んだことは、より洗練された(そしてできれば大人向けの)ロボットの開発につながるかもしれない。

編集部注:本記事の初出はEngadget

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画像クレジット:Xpeng

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(文:Jon Fingas、翻訳:Katsuyuki Yasui)

ロボット学者・石黒浩教授が大阪大学発スタートアップ「AVITA」を設立し5.2億円の資金調達

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ロボット学者として知られる石黒浩教授は9月7日、大阪大学発スタートアップとして「AVITA株式会社」を設立するとともに、5.2億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、大阪ガス、サイバーエージェント、塩野義製薬、凸版印刷、フジキン。各社と事業連携を行いながら、アバターの社会実装に取り組む。ロボット学者・石黒浩教授が大阪大学発スタートアップ「AVITA」を設立し5.2億円の資金調達

大阪大学大学院基礎工学研究科の石黒浩教授は、20年以上に渡り、人と関わるロボットやアバターを研究・開発してきた。今回、これまでの研究成果と、石黒教授がプロジェクトマネージャーを務めるムーンショット型研究開発制度、テーマ事業プロデューサーを務める大阪・関西万博などの様々なプロジェクト、また企業との連携によって新たに生み出す研究成果を社会に実装するための新会社としてAVITAを設立した。

AVITAは、「Virtualize the Real World」というビジョンのもと、アバター技術によって人々の可能性を拡張するという。人は、複数の自分(働く自分、家庭の自分、友達との自分など)で活動しており、アバターを用いれば、その自分を実世界でさらに多様に拡張し、状況や目的に応じた様々な自分として自由に活動できるとしている。このことを、アバターを用いた実世界の仮想化と多重化(virtualize the real world)と呼ぶという。

AVITAは、大学発スタートアップとして実世界の仮想化と多重化により、人々を解放する新たな世界を創造するとしている。

調理ロボット開発のTechMagicが15億円調達、自動パスタ調理ロボットの実店舗導入に向け量産化体制構築

調理ロボット開発のTechMagicが15億円調達、自動パスタ調理ロボットの実店舗導入に向け量産化体制構築

食産業の人手不足を補い、新たな食体験を創出する調理ロボットを開発するTechMagicは9月7日、シリーズBラウンドにおいて、15億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先には、既存投資家のジャフコ グループに加え、新たにSBIインベストメント、JA三井リース、日清食品ホールディングス、DEEPCORE、西山知義氏(ダイニングイノベーション創業者)が加わった。この資金調達により、2018年2月設立以降の累積調達額は約23億円となった。

またTechMagicは同日、日清食品が開発進める「完全栄養食メニュー」の研究において、盛り付け作業や栄養バランス調整を自動で担う調理ロボットの開発・実装を目指し共同開発契約を締結したと明らかにした。

2021年下期から実店舗導入予定のP-Robo量産化に向けた製造・保守メンテナンス体制の構築

食産業は人材の欠員率と離職率が高く、少ない人員による過重労働が深刻化しているとのこと。これに対してTechMagicは、調理工程や単純作業の自動化、データの可視化による味の品質安定化、仕入れや在庫の最適化などをロボットに担当させることで、この課題解決に貢献すると話す。

また「新たな食体験の創出」として、嗜好の多様化、食事制限、食物アレルギーなどに対応するため、「膨大な調理情報、注文に紐づく食材、顧客情報などの各種情報を蓄積」し、各個人に寄りそった食体験を提供するという。

現在TechMagicでは、麺を茹でてソースと混ぜて皿に盛るまでを自動化するパスタ調理ロボット「P-Robo」、画像認識技術で洗浄後の食器を仕分けして格納までを行う食器自動仕分けロボット「finibo」、1杯30秒で冷えた飲み物を提供するドリンクロボット「D-Robo」を展開している。

今回の資金調達でTechMagicは、2021年下期から実店舗導入予定のP-Robo量産化に向けた製造と保守メンテナンス体制の構築、ハードウェアおよびソフトウェアの要素技術の研究開発強化、新たな食体験創造を目指す新規事業開発、これらを実現するためのエンジニアをはじめとする人材採用の強化を行うとしている。

食べる人ごとに栄養バランスのとれた食事を調理・提供する調理ロボットにより、「食のパーソナライズサービス」目指す

日清食品が研究を進める完全栄養食メニュー向け調理ロボットについては、構成する種類や形状が様々な食材について、必要な量を正確に盛り付け、1食に含まれる栄養バランスを自動で整えることを目指す。

初期段階では、「チンジャオロース」など不定形の食材を具材から判別し、正確に必要量を盛り付ける技術開発に注力。将来的には、最適な品質を保ちながら食事の調理、盛り付けから提供までを完全に自動化する「スマートキッチン」の実現や、個々人の栄養状態や目標摂取数値をデータとしてインプットすることで、その人に合った栄養バランスの食事を調理・提供する「食のパーソナライズサービス」も視野に入れ、取り組む予定。調理ロボット開発のTechMagicが15億円調達、自動パスタ調理ロボットの実店舗導入に向け量産化体制構築

自律型潜水機とクラウドベースのデータでBedrockは海底マッピングを近代化

再生可能エネルギーの推進により、多くのエネルギー会社の最重要課題となっている洋上風力発電。これを実現するには設置場所となる海底を詳細に調査する必要があるのだが、幸いなことにBedrock(ベッドロック)が自律型水中ロボットと最新のクラウドベースのデータサービスを用いてそのマッピングプロセスを21世紀にもたらそうとしている。

「大きな船に大きなソナー(音波探知機)を」という一般的なアプローチに代わり、より速くよりスマートで、よりモダンなサービスの提供を目指している同社。ウェブサイトをホストするためにサーバーを立ち上げるのと同じくらい簡単に、企業が超高精度の海底画像を得られるようにしたいと考えている。

BedrockのCTOであるCharlie Chiau(チャーリー・チャウ)氏と共同で同社を設立したCEOのAnthony DiMare(アンソニー・ディマーレ)氏は次のように話している。「当社はおそらく、海底データのための初のクラウドネイティブ・プラットフォームです。これはビッグデータの問題であり、そのソリューションをサポートするためのシステムをどのように設計できるかというのが鍵です。私たちは巨大な海洋事業のようなものではなく、最新のデータサービスとして考えています。海に浮かぶ巨大なインフラに縛られることもありません。ソナーを海中で移動させる方法から、エンジニアにデータを届ける方法まですべてを見直しました」。

関連記事:海底マッピングロボティクスのBedrockが8.7億円調達、洋上風力発電に注力

同社が顧客に提供する製品は、海底の高解像度マップだ。これは解析やホスティングをすべて代行してくれるウェブサービスのMosaic(モザイク)を介して提供される。「データ移行」というといまだに「ハードディスクの箱を発送する」ことを意味するこの業界にとって、これは大きな前進だ。

通常、これらのデータは船上で収集、処理、保存されていたとディマーレ氏は説明する。港湾検査から深海調査まですべてをこなすように設計されていたが、インターネット接続環境が整っているとは言えず、ローデータでは何の役にも立たない。他の巨大データと同様、データを可視化し文脈を整理する必要があるのだ。

画像クレジット:Bedrock

「これらのデータセットは、数十テラバイトという非常に大きなサイズです。一般的なクラウドシステムは、ソナーからの2万個のファイルを管理するのには適していません」とディマーレ氏は話す。

現在の市場では、成長中の風力発電市場に参加するため、深海よりも詳細な近海のデータに焦点が当てられている。そのため通常のインターネットインフラに近いところでデータが収集され、以前よりも簡単にクラウドでの処理や保存ができるようになった。需要が高まったちょうど良いタイミングで、より早くデータを処理して提供することができるようになったわけである。

過去数十年にわたって設置候補地を見つけるための海底調査が行われているが、これは単なる最初の一歩に過ぎないとディマーレ氏は話す。何年も前の地図を確認し、詳細な情報を追加するために地図作成を行い、その後、環境アセスメント、エンジニアリング、建設、定期検査のための許可申請を行う必要がある場合もある。これが自動化されたターンキープロセスによって、乗組員のいる船よりもさらに優れた結果をより少ない費用で実現できるのであれば、従来の方法に頼っていた顧客にとっては大きなメリットとなるだろう。また、業界が期待通りに成長し、米国のすべての海岸沿いの海底をより積極的に監視する必要が出てくれば、当然ながらBedrockにとってもメリットとなるわけだ。

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当然そのためにはデータを収集するための機体が必要である。「AUVは、データを取得するために開発された技術です」とディマーレ氏はいうが、もともとは「こういった技術を作りたかったわけではない」と話している。

「既製のシステムを使用することを想定した仕様を検討し始めていました」と同氏は振り返る。「しかし、とてつもなくスケーラブルで非常に効率的なシステムを構築し、1平方メートルあたりのコストを最大化しようとすると、特定の機能、特定のソナーや計算スタックなどが必要になってきます。これらをすべてリストアップし終わった頃には、すでに自分たちで設計した基本的なシステムができあがっていました。より速くより柔軟な運用が可能で、より良いデータ品質が得られ、より信頼性の高いものとなっています」。

船が必要ないというのも驚きである。バンのバックドアから出して、桟橋やビーチから打ち上げるだけである。

「最初から、ボートは使わないという制約を自分たちに課していました。それが私たちのアプローチを完全に変えました」とディマーレ氏は話している。

画像クレジット:Bedrock

AUVは小さな機体の中に多くのものを詰め込んでいる。センサーの搭載量は作業内容によって異なるが、この機体を特徴づけるものの1つに高周波ソナーがある。

ソナーの周波数は数百から数十万ヘルツと広範囲にわたる。残念ながらこの周波数帯の音を聞き分けることができる海洋生物は、騒音にさらされることになり、時には有害であったり、このエリアに近づくことができなくなったりすることがある。200kHz程度のソナーであれば生物にとっても安全だが、周波数が高ければ信号の減衰が早く、到達距離は50〜75メートル程度と限られてくる。

明らかに、海面に浮いている船では意味がない。深さ75メートル以上の場所の地図を作る必要があるわけだが、常に海底から50メートル以内にとどまる機体を作ることができれば、そのメリットは十分にある。BedrockのAUVはまさにそのために設計されているのである。

ソナーの周波数を上げることでより詳細な情報を得ることができるため、観測機器が描く画像は大きな波形で得られるものよりも優れたものになる。また、動物の周りで使用しても安全なので、野生動物保護局でのお役所仕事(とても重要なことだが、時間がかかってしょうがない)を省くことができる。より良く、より早く、より安く、より安全にという、これ以上にないピッチである。

米国時間8月19日はMosaicの公式発表日となっており、Bedrockはプロモーションのため50GBの無料ストレージを提供する。

世の中には、厳密には「パブリック」であっても、見つけるのも使うのも非常に困難なデータがたくさん存在する。20年前に行われた詳細な調査や、研究グループが調査したエリアの超詳細なスキャンデータなど、もしそれらが1カ所に集められていたらもっと便利になるだろうとディマーレ氏はいう。

「最終的には全海域を1年単位で調査できるようにしたいと考えています。やるべきことはたくさんあります」と同氏は語っている。

画像クレジット:Bedrock

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

Agility Roboticsが倉庫で働く二足歩行ロボット「Digit」のビデオを公開

Agility Robotics(アジリティー・ロボティクス)が公開した新しいビデオでは、だんだん見慣れてきつつある光景が紹介されている。それは高度な自律型ロボットが、退屈な倉庫作業を行う様子だ。同社にとってこのビデオは、拡散させて世間の注目を集めようとしたものではない。むしろ、Boston Dynamics(ボストンダイナミクス)のような企業が、派手なパルクールのビデオと高度に振り付けられたダンスセッションの間に挟む、最も基本的なコンセプトの証明のようなものだ。

しかし最終的に、このロボットの開発者たちがターゲットにしているのは、まさに「退屈」「汚い」「危険」の三拍子が揃ったことで知られる作業である。荷物を運搬して往復する動作は、確かにその最初の項目にぴたりと当てはまる。倉庫で働く人たちが、自分たちの仕事をロボットに例えるのには理由があるのだ。

「自動化に関する議論は、少しずつ変化しています」と、AgilityのCEOであるDamion Shelton(ダミオン・シェルトン)氏は、TechCrunchに語った。「自動化は、今いる労働力を維持できるようにするための技術だと考えられています。自動化を導入することによるリスクや雇用の喪失については、多くの議論が交わされていますが、しかし雇用の喪失は自動化の導入を待たず、現実に今、起こっているのです」。

同社が2020年に発表した二足歩行ロボット「Digit(ディジット)」が最も注目を集めたのは、大手自動車会社のFord(フォード)との提携をCESで発表した後のことだ。フォードは現在、このロボットを2台所有しており、長期的にはこの技術を配送に活用することを計画している。

今回公開されたビデオは、Digitをより単純作業に使用するという短期的なソリューションを紹介しようとするものだ。

画像クレジット:Agility Robotics

「Digitのような機械の価値と目標は、その汎用性にあります」と、CTO(最高技術責任者)のJonathan Hurst(ジョナサン・ハースト)氏はいう。「これは人間と同じ環境や空間で働くロボットです。構造化された反復作業に向いています。例えば、『あそこに行けば箱があります。どれがどの箱かはデータベースシステムから指示するので、それをあそこに移動させなさい』というような命令を与えれば、1日に3〜4時間作業した後、また別の場所に移動して3〜4時間作業し、その後、トレーラーの荷降ろしを行うことができます」。

Berkshire Gray(バークシャー・グレイ)が提供しているような、完全に自動化された倉庫を一から構築するのに比べ、Digitの価値はよりプラグアンドプレイなソリューションであることだと、同社は考えている。もちろん、それでもプログラミングは必要だが、Agilityの担当者が現場に出向き、事前に場所をマッピングして、ロボットが反復的な作業を実行することを支援する。

「実際に導入して、お客様の役に立つ仕事ができるという意味において、このような環境では、例えば、A地点からB地点まで移動し、荷物を拾い上げて運ぶ、といった具合に、多くの作業が移行可能であることがわかりました」と、シェルトン氏は述べている。「屋内と屋外では、開発する技術の中核となる部分がまったく異なるというわけではありません。それは単に成熟度の問題です。屋内用の技術はすぐに達成することができたので、最初に導入する場所としては理に適っていると思います」。

画像クレジット:Agility Robotics

Agilityは、フォード以外のパートナーについては発表していないものの「大手物流企業」と協力していると述べている。AgilityはDigitの販売台数も明らかにしていないが、TechCrunchに語った話によると、Digit以前に販売していた数十台の「Cassie(キャシー)」よりも「大幅に多い」とのこと。もっとも、Cassieは実務用ではなく、主に研究目的として販売されていたものだ。現時点で、販売は主にCapEx(資本的支出)になるが、同社はRaaS(Robotics-as-a-Service、サービスとしてのロボット)など、他の機会も模索している。

Agilityの従業員は現在56名で、そのロボットの製造を主に行っているオレゴン州に拠点を置いている(同社はオレゴン州立大学でロボット部門が設立された頃、その一部としてスタートした)。

「2020年12月以降、当社は急速に成長しています」と、シェルトン氏はいう。「オレゴンオフィスに加えて、年内にはピッツバーグオフィスも拡張する予定です。かなりの急成長を遂げています。ロボットの生産量を増やしているので、そのためにかなりの人員を雇用しました。6月には改築した新施設に移ったばかりです」。

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画像クレジット:Agility Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

レーザーを使って雑草を刈る自律型除草機開発のCarbon Roboticsが約29.7億円を獲得

農業用ロボットを開発する企業のCarbon Robotics(カーボン・ロボティクス、バトルフィールドの元出場者と混同してはいけない)は今週、2700万ドル(約29億7000万円)の資金を確保したと発表した。Anthos Capital(アントス・キャピタル)、Ignition Capital(イグニション・キャピタル)、Fuse Venture Partners(フューズ・ベンチャー・パートナーズ)、Voyager Capital(ボイジャー・キャピタル)が参加した今回のラウンドは、2019年に調達した840万ドル(約9億2400万円)のシリーズAに続くものだ。同社の資金調達総額は約3600万ドル(約39億6000万円)となった。

「除草は農家が直面する最大の課題の1つであり、特に除草剤耐性のある雑草の増加や、オーガニックや再生法への関心の高まりを受けて、除草の重要性が高まっています。今回のラウンドの投資により、この技術に対する需要の高まりに対応して事業を拡大することができるようになります。さらに、この資金で、当社のチームは新製品の開発を続け、テクノロジーを農業に応用する革新的な方法を見出すことができるようになります」と創業者兼CEOのPaul Mikesell(ポール・マイクスル)氏はリリースで述べている。

シアトルを拠点とするこのスタートアップ企業の主要製品は、レーザーを使って雑草を刈る自律型ロボットだ。今回のラウンドは、Carbonが2021年4月に発表した最新型のAutonomous Weederに続くもので、1時間あたり約10万本の雑草を除去することができるという。世界的なパンデミックは、労働力の不足が続く中、多くの農業用ロボット企業への人々の関心を高め続けている。

Carbonは、世界的にさまざまな農薬が使用禁止になっていることを受け、多くの農家が代替手段を模索していることを指摘している。有害な化学物質を使用せずに動作し、人手不足に悩まされることの多い業界において、人手を減らすことができるシステムは、明らかに魅力的だ。

同社によると、2021年と2022年の在庫はすでに完売しており、今回のラウンドでは、生産量と人員数の拡大が重要な投資対象になると考えられる。

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(文:Brian Heater、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ルンバのように動いて建築現場にレイアウトをプリントするRugged Roboticsのロボット

2020年の出来事の中で、最も追い風を受けたロボティクスの分野の1つは建設業だろう。自動化によって大きな利益を得られる可能性のある建設業は、ロボティクスの急成長分野だ。新型コロナウイルスの影響から多くの不要不急の事業が停止したことで、この事実はさらに強調された。過去1年余りの間に、Toggle(トグル)、Dusty(ダスティ)、Scaled(スケールド)、SkyMul(スカイミュル)など、この分野における多くのプレイヤーが、注目に値する資金を調達するのを、我々は目にしてきた。

2018年にヒューストンで設立されたRugged Robotics(ラグド・ロボティクス)は、2019年のシードラウンドで250万ドル(約2億7400万円)を調達した。現在は積極的な資金調達を行っていないが、マサチューセッツ州に拠点を置く建設会社のConsigli(コンシーリ)と提携するなど、すでに初期のパイロット段階における技術の運用を開始している。

画像クレジット:Rugged Robotics

ConsigliのJack Moran(ジャック・モラン)氏は「私たちには、かなり先進的なクライアントがいました」と語る。「その建築物は、プロジェクトの中核となるシェルを我々が管理しており、非常に複雑で、多くの奇妙な形状の装備を施さなければならず、私たちにとってはチャレンジングなものでした」。

Ruggedが「レイアウト・ルンバ」と自称するこのロボットは、マサチューセッツ州ケンブリッジにある10階建てのビルの建設に使用され、実際に1フロアあたり約4万平方フィートの空間の設計図を地面に描き出した。この提携により、Ruggedは初期の研究開発モードから商業化への重要な一歩を踏み出すことになった。

「レイアウト作業は、建設プロセスの中で最も重要な作業です」と、Ruggedの創業者兼CEOであるDerrick Morse(デリック・モース)氏はTechCrunchによるインタビューで語った。「どこに何が設置されるかを記すことから、どこに何が作られるかが決まります。レイアウト中のミスは、建設プロセス全体に影響を及ぼし、手直しや遅延、追加費用につながります」。

Ruggedのチームはまだ小規模で、NASAやSamsung(サムスン)での経歴を持つ共同設立者を含む、6名ほどのフルタイム従業員で構成されている。チームは現在、3台のロボットを保有しているが、5台に増やすことを計画している。これらのロボットは、地面にドットマトリクスインクのパターンを印刷し、建設チームが実際に作成する建物の位置確認を示す。

Ruggedチームのメンバーは、ロボットと一緒に現場に行き、ロボットが計画を実行するのを監督し、RaaS(Robotics as a Service)として建設会社に課金する。

「私たちには果てしない顧客ニーズがあります」とモース氏はいう。「我々と一緒にパイロットやデモを行うことに熱意を持つ数十億ドル(数千億円)規模の建設会社がいくつかあります。私たちは今後1年間で組織とフリートを拡大していく予定ですが、その成長のために追加の資本投入を行うことになるでしょう」。

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画像クレジット:Rugged Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ロボット配達スタートアップCocoが年内に従業員数と事業展開地域の拡大を計画

ロサンゼルスを拠点とする配達ロボットのスタートアップ企業であるCoco(ココ)は、3600万ドル(約40億円)の資金調達を発表した。このシリーズA投資ラウンドは、Sam Altman(サム・アルトマン)氏、Silicon Valley Bank(シリコンバレー・バンク)、Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)が主導し、Sam Nazarian(サム・ナザリアン)氏、Ellen Chen(エレン・チェン)氏、Mario Del Pero(マリオ・デル・ペロ)氏が参加した。これにより、同社が調達した資金の総額は約4300万ドル(約47億円)となった。

「現状のデリバリーサービス業界は、加盟店へのサービスが大幅に不足していると、私は強く感じています」と、共同創業者でCEOのZach Rash(ザック・ラッシュ)氏はリリースの中で述べている。「これは、将来的にいつか製品化されそうな技術を実験する研究プログラムではありません」。

画像クレジット:Coco

UCLAからスピンアウトし、かつてCyan Robotics(シアン・ロボティクス)と呼ばれていたこの会社が事業を展開している分野には、Starship(スターシップ)、Nuro(ニューロ)、UCバークレー校アクセラレーター・プログラム卒業生のKiwibot(キウイボット)など、多くの企業がひしめき合っている。Cocoのソリューションは、完全な自律運転を追求するのではなく、遠隔操作を活用するというものだ(これは多くの企業が認めるよりも一般的なソリューションである)。

Cocoは2020年2月に創業したばかりのまだ若い会社である。現在の従業員数は120名だが、新型コロナウイルス流行の影響でロボットによる配送への関心がますます高まっていることから、年末までに「1000名以上に成長する」計画だという。今回の資金調達は、ハードウェアの開発や事業展開する都市を増やすためにも充てられる予定だ。

Cocoによると、同社は97%のオンタイム率で運営できており、顧客の配達時間を約30%短縮できるという。同社には、NuroにとってのDomino’s(ドミノ・ピザ)のような大規模なパートナーはいないが、カリフォルニアを拠点とするUmami Burger(ウマミ・バーガー)は、Cocoのサイトに現在掲載されている18のレストランパートナーの中で、おそらく最も大規模な企業だ。

「当社は現在、サンタモニカとロサンゼルス近郊の5つの地域で事業を展開しています」と、CocoはTechCrunchに語っている。「2021年後半には、いくつか米国の他の主要都市にも進出する予定です。SBE(Umami Burger)のような全米規模のレストランブランドと提携し、多くの地域で積極的に展開を拡大する他、サンタモニカのBangkok West Thai(バンコック・ウエスト・タイ)やロサンゼルスのSan Pedro Brewing Company(サン・ペドロ・ブルーイング・カンパニー)のような家族経営のレストランにも広くサービスを提供しています。当社はパイロット段階を終え、毎日数十件の新たな店舗とサービスを起ち上げています」。

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画像クレジット:Coco

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米中西部の食料品チェーンSchnucksにSimbeの商品棚スキャンロボットTallyが導入される

セントルイスに本拠地を置く食料品チェーンSchnucks(ジャムブランドSmucker’sのキャッチコピー「Smucker’sのような名前が付いているのだから、良いものでなければならない」を想起する)は今週、全米111カ所の店舗にSimbe Roboticsの技術を導入すると発表した。

この契約は、食料品店をはじめとする、エッセンシャルビジネスにおける自動化への関心が大幅に高まることとなった世界的なパンデミックから1年半後に結ばれることとなった。

Simbeのモバイルロボットは、在庫のスキャンを行い、店舗の棚に何があるのか、何を補充する必要があるのか、常に最新の情報を提供してくれる。小売業で働いたことのある人ならばわかると思うが、在庫管理は業界において最も大きな悩みの種の1つだ。数時間の営業停止や徹夜での作業が必要になることも少なくない。

Schnucksが最初にこの技術をテスト導入し始めてから4年後、今回の「複数年にわたる」チェーン全体への導入が決定した。数年をかけ、パートナーシップは徐々に拡大している。Simbeによると、同社の商品棚スキャンロボットこと「Tally」は、在庫切れの商品を20〜30%減らすことができ、従来の人による確認に比べて14倍も多く在庫切れを見つけることができるという。

Schnuck Marketsは、Simbe RoboticsのTallyロボットを店舗に導入し、棚の状況を把握することでより良いショッピング体験を提供。2021年8月13日、米国Des Peres, MOで撮影(画像クレジット:Simbe)

「Tallyを全店舗に導入することで、これらの新たな識見をサプライチェーン全体で運用可能にし、収益に直結するような意思決定を行うために必要なリアルタイムデータを活用する能力を強化することができる」。とSchnucksのVPであるDave Steck(デイブ・ステック)氏は、リリースで述べている。「Tallyはオペレーションを効率化し、最終的には我々のお客様とチームにとってより良い店舗体験を生んでくれる、当社の店舗に欠かせない一部となっている」と述べている。

Brain CorpやBossa Novaなど、多くの企業が在庫スキャンの自動化に取り組んでいるが、後者はWalmartが2020年末に大口の契約を打ち切ったことで、大きな挫折を味わうことになった。

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画像クレジット:Simbe

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(文:Brian Heater、翻訳:Akihito Mizukoshi)

サラダのチェーン店SweetgreenがキッチンロボットのSpyceを買収

パンデミックでロボットの世界にも多くの変化が訪れたが、キッチンの自動化への関心が加速したこともその1つだ。結局のところ、食品とレストランの業界は、店舗などの閉鎖が相次ぐ中でもエッセンシャル(必要不可欠)と見なされたが、キッチンスタッフの確保が難しくなり、ウイルスの感染に関する疑問が多かった初期には、求職者を見つけるのも困難だった。

カリフォルニアのサラダのファストフード店Sweetgreenが、Spyceを買収して本格的に自動化を進めると発表した。2015年にボストンに登場したSpyceは当時、MITの機械工学の学生たちのスピンアウトとして話題になった。最初は学生食堂で配膳の自動化を手がけたが、その後、ボストンで自動化レストランを2店開いた。買収が決まってもSpyceのレストランは営業を続けると告知している。

最終的にSweetgreenは、Spyceの技術をレストランに取り入れるつもりだ。ただしチェーン店は全米に120以上あるため、行き渡るまでには時間がかかるだろう。

画像クレジット:Spyce

SweetgreenのCEOで共同創業者のJonathan Neman(ジョナサン・ネマン)氏は、声明で次のように述べている。「多くの人たちに本物の食べ物を提供して、健康的なファストフードの大型チェーン店を次世代のために作りたいと考えています。Spyceには、そのビジョンにぴったりの最新技術があります。両社の、各分野最高のチームが力を合わせれば、チームのメンバーの仕事の内容を高めることができ、顧客にはもっと均質な体験を提供して、本物の食べ物を多くのコミュニティに広げていけるでしょう」。

ピザと同様に、サラダも初期の食品自動化の明確なターゲットだ。人気があり、比較的簡単に自動化できる。基本的には、さまざまなシュートの材料をボウルに混ぜ合わせるだけだからだ。

Sweetgreenは、従業員がすぐにクビになることはないと声明の最後に付け加えている:

「高度なテクノロジーと一緒に仕事をすることによって、チームのメンバーは料理の調整準備やホスピタリティにより集中できるようになります。教育訓練と人材開発への投資を増やし、チームのメンバーをサポートしてヘッドコーチになってもらいます。テクノロジーに関心のあるチームメンバーは自らスキルを磨いて、Spyceの技術の運用やメンテナンスを担当してもらいます」。

買収の完了は、第3四半期を予定している。価額などの条件は公表されていない。

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画像クレジット:Spyce

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

製造現場にプログラムの知識不要で導入できる柔軟なRapid Roboticsのロボットシステム

Rapid Robotics(ラピッド・ロボティクス)が、シリーズAラウンドで1200万ドル(約13億2000万円)の資金を調達したと発表したのは、2021年4月のことだった。それから4カ月後、ベイエリアを拠点とするこのロボット製造企業は、Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)とTiger Global(タイガー・グローバル)が主導するシリーズBラウンドで、3670万ドル(約40億3000万円)の資金調達を実施した。このラウンドには、既存投資家のNEA、Greycroft(グレイクロフト)、Bee Partners(ビー・パートナーズ)、468 Capital(468キャピタル)も参加し、同社の資金調達総額は5420万ドル(約59億6000万円)に達した。

今回の資金調達により、同社の評価額は1億9250万ドルとなった。2020年にシード資金調達を行った会社としては驚異的な数字だ。今回のシリーズBラウンドは、Rapidにとって1年以内に3回目(!)の資金調達となるが、その背景には、無限に続くかのように思われる世界的なウイルスの大流行によって煽られた、ロボットや自動化に対する関心の高まりがあることは疑う余地がない。

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企業が「ノンエッセンシャル(必須ではない)」な労働者の代わりになるものを探していることから、これらの技術への投資は加速する一方だ。新型コロナウイルス感染拡大期間中には、製造業のボトルネックもまた、柔軟でグローバルな生産体制の必要性を浮き彫りにした。

Rapidの価値提案は、プログラミングなどのロボット工学の知識がなくても、数時間で製造現場に導入できるRapid Machine Operator(RMO)ロボットだ。このシステムは、RaaS(Robotics as a Service「サービスとしてのロボット」)モデルとして提供されており、年間2万5000ドル(約275万円)で利用できる。このシステムには柔軟性があり、さまざまなタスクを割り当てることが可能であることも、専用のシステムを導入できない企業にとってはありがたい機能だ。

「半導体が不足しているという話はよく聞きますが、それは氷山の一角にすぎません。下請け製造業者の現場では、ガスケット、バイアル、ラベルなど、あらゆるものの製造が滞ってしまっているのです」と、RapidのJordan Kretchmer(ジョーダン・クレッチマー)CEOは、今回のニュースに関連したリリースで述べている。「U字型の黒いプラスチック部品1つが製造できなくなったために、自動車の生産ライン全体が停止してしまったケースを、私は見たことがあります」。

自動車業界はRapidが狙っている市場の1つだが、例えばベイエリアに拠点を置く健康関連企業のTruePill(トゥルーピル)という会社では、処方薬びんの充填とラベル貼りに同社のシステムを採用しているという。

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

物流ロボットのサブスクを展開する「+A」がZOZO大型物流拠点に商品仕分けロボットシステム280台を提供

物流ロボットのサブスクを展開する「+A」がZOZO大型物流拠点に商品仕分けロボットシステム280台を提供初期投資のいらないサブスクリプションで物流ロボットを提供するプラスオートメーション(+A)は8月19日、ZOZOの大規模物流拠点のひとつ千葉県のZOZOBASE習志野1において、「t-Sort」(ティーソート)2ユニットの導入を完了したことを発表した。ロボット280台を含む、大規模2段式ソーティングロボットシステムだ。

この導入は、月額定額制のサブスクリプション型の一貫サービス「RaaS」(Robotics as a Service。サービスとしてのロボティクス)という+A独自の形態で提供された。その特徴を活かし、当初はロボット50台規模からスタートし、課題抽出と改善を繰り返しつつ3カ月あまりで280台という本格稼働を実現させた。物流ロボットのサブスクを展開する「+A」がZOZO大型物流拠点に商品仕分けロボットシステム280台を提供

ソーティングロボットとは、物流倉庫で荷物の仕分けを行うロボットシステムのこと。+Aのt-Sortは、ロボットの走行ステージを2段にすることで、限られたスペースを有効活用しつつインダクション数とシュート数を倍増し、単位面積あたりの処理能力を大幅に向上させるというもの。運用にあたっては、+Aの庫内実行システム「+Hub」(プラスハブ)が用いられる。これによって直感的なロボット操作が行え、作業進捗確認や実績の可視化も可能になるという。

+Aは、三井物産と日本GLPの出資を受け2019年6月に設立。2020年9月には物流ソリューションプロバイダーの豊田自動織機への第三者割当増資も実施した。2021年8月19日現在累計ロボット導入台数は1000台を超えるという。

 

分身ロボット「OriHime」開発者が「テレワークで肉体労働」に挑戦したワケ

オリィ研究所所長吉藤オリィ氏

OriHimeは病気や子育て、単身赴任などで行きたいところに行けない人が使う「分身ロボット」だ。最近では、カフェでの接客・運搬や展示会の案内に適したOriHime Porterがモスバーガーの実証実験で導入され、接客用OriHime Dを活用した実験カフェ「分身カフェDAWN version β」がアップデートを重ね、初めて常設店としてオープンしている。OriHimeのパイロット(操作者)には自室から出ることが難しいALS患者などがおり、障がい者雇用の観点からも注目されている。ロボットを使ったテレワークは働き方をどう変えるのか。どんな可能性が生まれるのか。OriHimeを開発、運用するオリィ研究所 所長 吉藤オリィ氏に話を聞いた。

オリィ研究所は「ロボットの会社」なのか?

OriHimeはオリィ研究所が開発した分身ロボットだ。リモートワークに適したOriHime Biz、カフェでの接客、展示会の説明、受付 / 誘導に適したOriHime PorterやOriHime Dなどがある。

OriHime Biz

OriHimeの操作者はパイロットと呼ばれる。パイロットは自宅などの遠隔地からiPad / iPhoneを通して職場にあるOriHimeを操作する。OriHimeにはカメラがついており、パイロットは職場の状況を見ながら、職場で働く同僚とマイクを使って話すことができる。

「遠隔で話す」というと、最近ではオンライン会議システムをイメージする人も多いだろうが、OriHimeはオンライン会議システムと違い、パイロット側の顔や動作を見ることはできない。その代わり、パイロットはOriHimeを操作してOriHimeの顔や手を動かし、ボディランゲージを伝える。

ここまで読んで「オリィ研究所はロボットの会社だ」と思う人もいるかもしれない。しかし、吉藤氏は「当社はロボット会社ではありません。孤独を解消するためのツールを提供し、研究する会社です」と断言する。

吉藤氏は自身が小・中学校で不登校を経験し、子どもの頃には入院も経験した。「孤独」を感じることが多く「孤独」は「人生の問い」のようなものだったという。

「不登校や入院の状態にある時、多くの人は『自分の居場所がない』と感じます。自分の居場所がないと、誰かとコミュニケーションをとったり、誰かの役に立つこともありません。人の役に立てなければ自己肯定感も湧きませんわきません。人は孤独になると死にたくなることだってあります。でも孤独な人はコミュニケーションが苦手だったり、何らかの理由でコミュニケーション自体が難しいわけです。目が悪い人には眼鏡があります。足の悪い人には車椅子があります。コミュニケーションが難しい人にはどんなツールが必要でしょうか?この問いから、私はOriHimeを開発しました」と吉藤氏は語る。

吉藤氏は「OriHimeは着ぐるみのようなもの。だからこそパイロットはコミュニケーションに前向きになれる」ともいう。

OriHimeのパイロットにはALS(筋萎縮性側索硬化症)、筋ジストロフィー、SMA(脊髄性筋萎縮症)、脊髄損傷などの重度障害を持つ寝たきりの人もいる。そうした人が初対面の初めて会う人と対面で話したり、逆に寝たきりの人に慣れていない人が寝たきりの人と対面でコミュニケーションをとると、お互いに構えてしまうところがある。しかし、OriHimeを通すと、パイロットは自分の姿を直接見られない。「自分がどう見えているのか」を気にせずコミュニケーションをとることができる。パイロットではない方は、パイロットのバックグラウンドを気にせず、パイロットとのコミュニケーションの内容そのものに集中できる。

「いつも真面目に怖い顔をしている人でも、かわいいキャラクターの着ぐるみに入ってしまえば、やたらとかわいい仕草ができたりしますよね。それと同じで、OriHimeを通すと自分のいろいろなブレーキを外してコミュニケーションがとれるんです」と吉藤氏は説明する。

ここまで読んでわかるように、OriHimeはあくまで「外側」「分身の体」だ。OriHimeの中身は人間、つまりパイロットでなければいけない。これは最近のデータ活用やAI活用といった「情報を活用してコンテンツを作り、ビジネスを行う」流れとは異なるように見える。

吉藤氏は「OriHimeはコミュニケーションを補助し、人と繋がり、孤独を解消するためのロボットです。確かに、AI技術がものすごく進化すればAIと友達になって孤独を解消できるかもしれません。あるいは、AIを介して人間と友達になれるかもしれない。でも、それは現段階ではできないことです。今AIに褒められてもうれしくないし、自己肯定感には繋がりません。だからOriHimeの中身は人間でなければいけないのです」と人間の重要性を強調した。

遠隔で働くのに「体」は必要なのか?

「遠隔で働く」だけなら、オンライン会議システム、チャット、メール、電話など、さまざまな方法がある。OriHimeのような「物理的な分身」「アバター」を職場に置く必要はない。分身が職場にあると何が変わるのだろうか。

吉藤氏は「『体が同じ空間にある』ということは『一緒に何かをする』という感覚と密接に結びついています」という。

OriHime D

例えばある人が1人でショッピングに行って、その間ずっとショッピングの状況をスマホで撮影しながら実況し、家で寝ている病気の家族と話ことができる。しかし、その人がOriHimeと一緒にショッピングに行って、病気の家族がパイロットとして同行したらどうだろう。おそらくこちらの方が「一緒にショッピングをしている」感覚が強くなる。

実は、物理的な分身にはもう1つの側面もある。就業のハードルを下げることだ。

障がい者、特にOriHimeのパイロットに多い寝たきりの人は、移動が難しい。「それならテレワークをすればいい」と考える人もいるだろう。しかしテレワークは基本的にデスクワークだ。多くのデスクワークには一定の学校教育のバックグラウンドとコミュニケーション能力が必要だ。

しかし、寝たきりの人にはそもそも教育へのアクセスに限りがある。小学校、中学校、高校、大学など「学校に通う」「教室を移動する」ことが難しい。さらに、コロナ禍の今でこそオンライン教育は珍しくなくなったが、それまでは選択肢が限られていた。つまり、寝たきりの人は、教育にアクセスするハードルが高いため、デスクワークに必要な教育を受けてこられなかった人もいるのだ。

OriHime Porter

また、学校や部活動、アルバイト、職場で得られるコミュニケーション経験も得ることが難しい。教育やコミュニケーション経験が少ない人はデスクワークの就業が難しく、したがってテレワークで働くことが非常に難しいのだ。

「当社で秘書として働いていた番田という者がいるのですが、彼がまさにそういう状況でした。デスクワークをしたいが、それに必要な教育やコミュニケーションの場にアクセスできなかったんです。そこで番田と考えたところ、肉体労働であれば就業のハードルが低いのではないかという結論に至りました。『テレワークで肉体労働ができないか?』その問いから、接客や食べ物・飲み物を運ぶ仕事をOriHime PorterやOriHime Dなど、大型のOriHimeでテレワーク化することに繋げました」と吉藤氏は振り返る。

「人助け」ではなく「一緒にミッションを背負う」

吉藤氏は「OriHimeプロジェクトは障がい者とのとの共創で進んできた」と語る。OriHimeの開発、改善のプロセスで障がい者のある友人とコミュニケーションをとり、彼らが困っていることの解決に努めたからだ。

「OriHimeのビジネスは『人助け』に見えるかもしれませんが、そうではありません。まず最初に、OriHimeは私自身の孤独の問題に対する1つの答えです。孤独に苦しんだ自分が、かつて苦しんだ自分を救うために作ったものです。そして私はOriHimeという選択肢を次世代に残したいのです」と吉藤氏は強調する。

さらに、OriHimeは「障がい者を助けるためのプロジェクト」でもないという。

吉藤氏は「寝たきりの人たちは、人と繋がるための最初のステップのサポートを必要としているかもしれません。ですが、それは『いつまでもずっと助けて欲しい』という意味ではありません。多くの障害のある人たちは自立したいのです。それはOriHimeの開発過程でも同じでした。OriHimeの開発に関わった障害のある友人たちは、次の世代の自分と似た境遇にいる人々を助けるために私と一緒に研究をしてくれました。ALS患者の友人は『こういう体に生まれてきたからこそ残せるものがあるなら、私の人生に意味がある』と言っていました。私は『OriHimeで障がい者を助けている』のではなく、『OriHimeという共通のミッションを障がいのある友人たちと背負っている』のです」と話す。

脱「機能」、脱「効率」で経済的自立へ

オリィ研究所は6月から日本橋に「分身カフェDAWN version β」(以下、分身カフェ)を常設で開いている。これはALSなどの難病や障害で外出困難な人々がパイロットとしてOriHime、OriHime-Dを遠隔操作し、スタッフとして働く実験カフェだ。元々は期間限定の実験としてスタートし、これまで4回開催されてきた。今回は常設店として初の開店となる。

分身カフェDAWN version β

その他にも、群馬県庁にあるカフェ「YAMATOYA COFFEE32」でOriHimeが、モスバーガー大崎店ではOriHime Porterが期間限定であるが活用されている。

外出が難しい人々の就業の機会創出の手段としてOriHimeが活用されているわけだが、パイロットはこうしたカフェで経済的に自立できるのだろうか。

吉藤氏は「パイロットの経済的自立は重要なテーマです。オリィ研究所が直接マネジメントする分身ロボットカフェでは東京都の最低時給以上を出せています。ただ、これまでは3週間程度のイベントでこの水準を保ってきました。次の課題は常設カフェとして同じ結果を出せるかどうかです」と力を込める。

分身ロボットカフェでの利益追求には戦略が重要になる。遠隔操作のOriHimeを使う時点で「安さ」「速さ」での戦いは不可能だからだ。

「分身ロボットカフェでは、効率と機能を追求しているわけではありません。食べ物・飲み物を速く安く提供するのであれば、自動販売機やファストフードと競合しないといけません。ですが、私たちが目指すのは『パイロットと話す体験』というエンターテインメントです」と吉藤氏は説明する。

実は、分身カフェには思わぬ効果もあった。接客に当たっていたパイロットが客として来ていた有名企業の人事担当者にヘッドハンティングされたのだ。

「障がい者雇用促進法は、企業に障がい者を雇用することを義務付けていますが、法定雇用率に達していない企業も数多くあります。このような企業にとって、分身カフェは障害を持つOriHimeのパイロットと出会う接点になり得ることがわかりました」と吉藤氏は振り返る。

また、島根県に住むあるパイロットは、障害が重く、部屋から出られない。しかし、大阪のチーズケーキ店でOriHimeパイロットとして販売に従事。さらに東京の分身カフェでもOriHimeを使って働いている。ある日、このパイロットと仲良くなった東京の顧客が大阪のチーズケーキ店を訪れ、そこでチーズケーキを買ったという。

「店員が客のいる店に来て働くのではなく、客が店員のいる店に行くというおもしろい流れが生まれました」と吉藤氏。

障害者雇用の可能性を各方面で広めているOriHimeだが、吉藤氏は今後どんな展開を目指しているのか。

「これまで部屋を出られなかった人たちは『オンラインで勉強すればいい』『遠隔で働けばいい』と言われてきました。ですが、今、コロナを経験し、『その場にいること』『その人と一緒にいること』の大切さがわかった人も増えたと思います。部屋を出られない寝たきりの人たちは、ある意味でニューノーマルの大先輩だったわけです。部屋から一歩も出られなくなった時、『OriHimeを使って外で働きたい』と思ってもらえるようにすること。分身ロボットカフェを常設にして長期運用し、パイロットが継続的に働けるようにすることが直近の目標です。コロナが終わったら、OriHimeを使ったスナックも挑戦したいです。部屋の中から、ベッドの上で、目や指を使ってパイロットがOriHimeを通して接客することを、もっと身近にしたいですね」。

吉藤氏はそう語り、インタビューを後にした。

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