パンデミック下で成長する多種多様なフェムテック企業、従業員への福利厚生としても注目が集まる

女性の健康とウェルネスを支える技術「フェムテック」。McKinsey & Companyによると、2021年のフェムテック領域の資金調達総額は、25億ドル(約2830億円)に到達し、過去最高を記録した。

The dawn of the FemTech revolutio Published by McKinsey & Company(2022/2/14)


女性の健康とウェルネスに特化したVCであるCoyote Venturesと、フェムテック領域の情報配信やスタートアップサポートを行うNPO団体であるFemtech Focusの予測によれば、フェムテック市場は2027年までに1兆1860億ドル(約138兆円)の市場規模にまで成長するという。

そんなフェムテック業界だが、その注目領域も変化している。Crunchbaseによると、過去5年間は妊娠と子育てがVCの資金調達の最大のシェアを占めていたが、2021年に最も投資を集めたのは、プライマリ・ケアや予防医療領域だった。不妊や更年期など、困った時に頼るフェムテックから、すべての女性が常に自分の健康を守るために必要不可欠な技術になりつつあることがわかる。

欧米での盛り上がりを受け、日本でも注目が集まる領域だが、今回は、パンデミック後も続くと予測されるフェムテック業界のトレンドと注目領域について解説する。

新型コロナの影響で広まった手軽にできる自宅検査・治療

パンデミックによって、病院に行きづらくなったことを受け、遠隔医療や自宅検査キットが注目を集めた。これまで当たり前に診察や検査のために病院に行っていた人々が、パンデミックによって自宅でもできるという便利さを経験した。安全に病院に行けるようになっても、人々がこの便利さを捨てるとは考えにくい。実際に、2021年のMcKinsey & Companyの調査によると、調査対象の消費者の約40%が、今後も遠隔医療を利用すると回答しており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前の遠隔医療利用者の11%から上昇している。

膣内マイクロバイオーム検査キットEvvy

Evvyは、膣内のマイクロバイオームの状態を分析し、健康状態の把握とライフスタイル改善アドバイスなどを提供する。General Catalyst、Box Groupなどから500万ドル(約5億7000万円)を調達している。

筆者も2021年末実際に試してみた。下記のように、検査キットが送られてくる。採取は簡単で、インストラクションを見ながら3分程度で終わった。

画像クレジット:Evvy

箱には「The female body shouldn’t be a medical mystery(女性の身体は、医療で解明できないミステリーであるべきではない)」と記されており、現状研究段階ではあるものの、マイクロバイオーム分析を通して女性の不調を改善したいという気概が感じられた。

次に、オンラインで質問に回答する。生理サイクル、健康の悩み、感染症歴や今回の検査で知りたいことなどを回答する。10分ほどの割と長い質問票だった。


​​採取したサンプルを送付すると、2週間ほどで結果がメールで送られてくる。結果を解説してくれるマイクロバイオーム専門家とのビデオコールも追加コストなしでリクエストできる。ビデオコールでは、自分の悩みを伝え、結果を見ながら改善方法などを教えてくれた。結果を見てもどのように実生活に活用すれば良いのか、わかりにくかったので、マイクロバイオーム初心者の筆者からするとありがたかった。

ユーザーは、3カ月ごとの定期検査のサブスクリプションモデルと1回のみの検査キット購入が選べる。定期的に検査することで、自分の健康状態を見てみたかったので、筆者はサブスクリプションを選択した。

細菌性腟症などの感染症は、一度なると再発しやすい。実際、一部のユーザーは、膣内感染症の再発を防ぐためのヒントを求めてEvvyにたどり着く。また、早産、不妊の可能性や予防法をマイクロバイオームから知りたいというユーザーもいる。

筆者が最も注目しているのは、同社のビジョンだ。まだ研究段階のマイクロバイオームだが、同社は今後、膣内マイクロバイオームと不妊、子宮頸がん、早産などとの関連を調査し解明するというビジョンを持っている。マイクロバイオームから自分の身体の状態を把握するという未来がくるのかもしれない。

カップルの唾液から遺伝疾患リスクを解明する出生前唾液検査キット

画像クレジット:Orchid ウェブサイトより

Orchidは、パートナー両方の唾液サンプルを送付するだけで60億ものゲノムを解析し、子どもが遺伝性疾患を発症するリスクが高いかどうかを判定する唾液検査キットを提供している。2021年4月、シードラウンドで450万ドル(約5億3000万円)を調達。遺伝子キットを開発、販売する23 and Meの創業者も出資​​している。

対象となる遺伝性疾患は、乳がん・前立腺がん・心臓病・心房細動・脳卒中・1型糖尿病・2型糖尿病・炎症性腸疾患・統合失調症・アルツハイマー病の10種類。唾液を送ると、カップル向け、女性・男性の各パートナー向けの3種類のレポートが送付される。

子どもを作る前に、遺伝リスクを検査するというアプローチをとる同社。心配な結果が出たとしても、遺伝カウンセラーと、リスクを最小限に抑える方法などを相談できる。

2020年にシリーズDラウンドで1億2100万ドル(約143億円)の大型調達を発表したSema4も、出生前検査・遺伝性がん検査を手がける企業だ。同社は、2020年フェムテック領域の中で最大額を調達した企業だった。

テレヘルスユニコーンRoが買収、精子分析・保存キット

画像クレジット:Ro

フェムテックではないが、精子を自宅で採取し、分析結果を送ってくれるサービスを提供するDadiを紹介する。同社は、2022年3月にテレヘルスユニコーンのRoに買収されている。米国の国保健社会福祉省によると、不妊症の約3分の1は男性の不妊症に関連しているため、精液の分析と保存は重要な不妊治療サービスだ。自宅で精子を採取した後、採取キットと保存カプセルの両方が、温度変化や提携ラボへの輸送中の障害などから精子を保護・保存するように設計されている。サンプルの分析が完了すると、精子の数、濃度、運動性の評価を含む個人別の報告書が送付される。また、採取した精子は提携ラボで冷凍保存される。

Roは、コアビジネスである勃起不全治療テレヘルスプラットフォームから、テレヘルス全体へ事業拡大を進めるため、過去12カ月に3社(Workpath, Kit, Modern Fertility)を買収している。

成功の鍵は、丁寧なインストラクションと行動に落とし込める分析結果表示

ここまで自宅検査のスタートアップを解説してきた。筆者自身、自宅検査を複数試して感じたのは、自宅検査ビジネスをグロースさせる上で重要なのは「わかりやすい検査のインストラクション」と「ユーザーが行動に落とし込める分析結果を提示する」という点だ。家庭で正しく検査するためには、動画や簡単なイラストなどで、わかりやすいインストラクションが必要だ。

また、検査を受けて良かったと感じてもらうためには、明日からできる行動の変化を促す分析結果を提示することが重要だろう。自分の状態を把握するだけでは、一度きりの購入で終わってしまう。消費者は「xxのサプリを毎日飲む」「○○の栄養素を避ける」「有酸素運動を30分する」など改善のための方法を知りたいのだ。

この満足感が、安定的な収益を達成するためのサブスク顧客獲得に繋がる。現状、専門カウンセラーとのビデオコールを提供し、テスト結果を解説することでこの部分を補う企業が出てきている。専門家たちは、医学的・生物学的な専門知識がない一般消費者をガイドする役割を担っている。ここでの問題点は、スケールだ。ユーザー数が増えるごとに、専門家の数を増やさなければいけない状況では、スケールは難しい。技術を活用し、ある程度自動化をしながら満足度も担保するようなサービスが、今後伸びていくと考える。

人材獲得戦争時代、さらに重要視される企業の充実した福利厚生

米国では現在、労働者が大量に仕事を辞めている。この現象は、大規模離職を意味する「グレイト・レジグネーション(大退職時代)」と呼ばれ、メディアで頻繁に報道されている。​​Fortuneが2000人以上の米国人労働者を対象に行った調査によると、80%が新しい仕事に就くことを考える際に柔軟なスケジュールが重要であると回答している。また、約70%の労働者がリモートワークの選択肢を重要視している。優秀な人材プールを惹きつけるためには、働きやすい環境を作ることが必須だ。そのため、企業は、福利厚生にこれまで以上に投資している。

パンデミックで完全リモートを経験した労働者たちは、今後も働きやすさを求めている。この流れは、B to B to E(Employee)モデルと呼ばれるかたちで、企業向けに福利厚生としてのソリューションを提供するフェムテック企業にとって追い風となる。

働く親のための福利厚生プラットフォーム​​

画像クレジット:Cleoウェブサイトより

従業員は、Cleoを通して、育休からの復職時に悩みを相談できる専門家や、子どもの健康の専門家、助産師や産後うつ専門家などにアクセスできる。同社は、Pinterest、Uber、Upwork、Salesforceなどを含む、55カ国以上の100社を超える多様な企業に導入されている。​​実際、産休・育休後の復職率は、全米での平均が60%であるのに対し、Cleo会員は92%と改善している。

妊娠・出産のサポートから始まった同社のサービスだが、現在は、5歳から12歳の子どもを対象とするCleo Kids、ティーンエイジャーの子どもを対象とするCleo Teensにも拡大している。

多様なニーズに応える福利厚生の変化

画像クレジット:Carrot Fertilityウェブサイトより

これまで対面での不妊治療を中心に提供してきた福利厚生プロバイダーも、パンデミックを受け、そのサービス提供内容と方法をユーザーの求める形に変化させている。

企業の従業員向けに不妊治療を提供するCarrot Fertilityは、SlackやBox groupなど北米、アジア、ヨーロッパ、南米、中東の50カ国以上で、約200社の企業​​を顧客に抱える。これまで約135億円($115M)を調達している。同社は、パンデミックで通院を避けたい患者のニーズを受け、2020年8月に遠隔医療プラットフォームのCarrot at Homeを開始した。また、2021年12月には、自宅で排卵誘発ホルモンや関連バイオマーカーをモニタリングできる自宅検査キットの提供も開始している。2022年2月には、更年期障害向けのプランも追加した。

従業員それぞれのニーズが異なる点に注目し、福利厚生をパーソナライズできるプラットフォームも登場してきている。

画像クレジット:Nayyaウェブサイトより

2022年2月にシリーズCラウンドで5500万ドル(約64億円)を調達したNayyaは、企業の人事福利厚生システムに組み込んで、従業員のための福利厚生をパーソナライズするツールを提供している。

RPAを使って、従業員がプランをより良く選択し、節約する方法を見つけ、より良い支払いオプションを提供し、保険などの福利厚生を総合的にナビゲートできるようにしている。

画像クレジット:Forma

Formaは、​​裁量型福利厚生管理プラットフォームを提供している。同社も2022年2月、シリーズBラウンドで4000万ドル(約47億50000万円)を調達した。同社は、人事担当者が、従業員による福利厚生ベンダーの選定、払い戻し手続き、デジタルウォレットによるプラン利用をチェックできるようなシステムを構築している。

同社によると、企業の福利厚生は通常、企業が従業員に必要なものを決定するトップダウン・モデルで展開されており、これは雇用者と従業員の双方にとって非効率的だという。Formaの使命は、従業員ファーストの福利厚生プログラムを設計することによって、この関係を逆転させることだ。

Formaはプロバイダーと提携し、家族・人間関係、教育・キャリア、ウェルビーイング・ライフスタイル、基礎健康・保護、資産運用、仕事・パフォーマンスの6つの大きなカテゴリーで福利厚生を提供する。Formaの顧客は、社内の予算と戦略に基づいて、これらのカテゴリーから提供するものを選び、従業員に提供したい福利厚生プログラムを設計することができる。

Twitch、Stripe、Zoom、Lululemon、Palo Alto Networks、Squareなど、前年比330%の125社を顧客に抱えており、定着率は99%だという。この1年間で同社は収益を4倍に増やした。

優秀な人材を惹きつけ、繋ぎ止めるために、今後も企業の従業員への投資は、続いていくだろう。​​上記のパーソナライズ福利厚生が成功していることからも、従業員それぞれニーズが異なっており、企業がそのニーズに応えようとしている姿勢が感じられる。

編集部中:本稿の執筆者は大嶋紗季(Saki Oshima)。日本企業と海外スタートアップの新規事業創出を手がけるスクラムスタジオで、大企業とスタートアップのオープンイノベーションを支援するスタジオ事業部門に所属し、既存プログラムの運営や新規プログラムの立ち上げに従事する。各プログラムで培った日本企業とスタートアップをつなぐ経験を生かし、米国スタートアップ情報プラットフォームScrum Connect Onlineの立ち上げ、運営を担当する。欧米のフェムテックトレンドやサービスを日本語で配信。日本初のフェムテックコミュニティFemtech Community Japan創立メンバー。UCサンディエゴ大学院修了(MBA)。

 

リクルーターが直接投稿した求人と求人サイトの広告を集約、既存サービスと対抗する求人情報ポータルTalent.comが約141億調達

オンライン採用は、第一次インターネットブームの初期の大ヒット商品の1つだった。しかし、より多くのビジネスプロセスがオンラインに移行する中、オンライン求人検索はただ与え続け贈り物のような存在だ。そこで米国時間3月16日、この分野の別のポータルが、より革新的で確かな技術でこの分野の既存企業に対抗するために、大規模な資金調達を行ったというニュースが飛び込んできた。リクルーターが直接投稿した求人広告と、サードパーティの求人サイトの広告の両方を集約するポータルサイトのTalent.com(タレントドットコム)は、シリーズ Bラウンドの1億2000 万ドル(約141億9800万円)を調達した。同社はこの資金を、国際展開を続け、このプログラム検索プラットフォームにさらに投資し、ユーザー向けの新しい製品とサービスを導入するために使用する予定である。

Talent.comはかなり国際的なプロフィールを持っている。現在、78カ国、29言語にわたって100万社の約3000万件の求人情報を掲載し、その範囲内で毎月2800万人以上のアクティブな訪問者があるのだ。しかし、このスタートアップ自体はモントリオールを拠点とし、今回のラウンドではカナダのVC、Inovia Capital(イノヴィア・キャピタル)がリードし、以前の支援者 Caisse de depôt et placement du Québec (ケベック州金融公社/CDPQ) と新しい投資者 Investissement Québec(インベストメント・ケベック)、Climb Ventures(クライム・ベンチャーズ)、BDC Capital(ビーディーシー・キャピタル)、Fondaction(フォンダクション)およびHarbourVest Partners(ハーバーべスト・パートナー)も参加している。この1億2000万ドル(約141億9800万円)の株式と同時に、BMO Financial Group(ビーエムオー・ファイナンシャル・グループ)のTechnology & Innovation Banking Group(テクノロジー&イノベーション・バンキング・グループ)から新たに3000万ドル(約35億5000万円)の負債性資金も調達している。

Talent.comの共同創業者で共同CEOのLucas Martínez(ルーカス・マルティネス)氏は、Maxime Droux(マキシム・ドルー)氏、Benjamin Philion(ベンジャミン・フィリオン)氏と共同で同社を設立した。同士はインタビューの中で、この資金を使って、消費者が探しているものにもっと関連した結果を見るための技術をさらに構築し、広告の反応性を測定するツールやクリックされた人に応じて料金を請求するツールを使って、雇用主にとってより魅力あるプラットフォームとすることが目的だと語っている。

(コンテンツに興味を持ってもらうためには、適切な表現が必要であることを、同社自身が身をもって知っている。同社は以前、フィンランド語で「アドバイス」を意味するNeuvooという社名だったのだが、収益性は高かったものの、その単語の発音につまずく人が多く、またその意味が大衆市場とは特に関係がないこともあり、あまり急成長しなかった。そこでNeuvooは2019年に社名を見直すことを決め、Talent.comが売りに出されているのを見ると、それに飛びつき、ブランドを変更したのだ。このドメインには130万ドル[約1億5000万円]を支払ったが、不思議なことに残りの詳細は3年間NDAの対象であり、誰が売却を行ったのかは不明である。マルティネス氏は「Google?」と私が聞くと、笑って「違う」と答えたが、それ以上詳しくは語らなかった)

また、同社はこの資金をさらなる国際展開のために投資している。マルティネス氏は、同社が欧州の新たなハブ拠点を設立しているバルセロナから取材に応じた。

現在、この市場には、Indeed.com(時価総額660億ドル[約7兆8090億円]、SimplyHiredなどのブランドを所有する日本の人材大手Recruit Holdingsが所有)や、2021年上場したZipRecruiter(ジップリクルーター)、LinkedIn(リンクトイン)、検索大手Google(グーグル)などのビッグプレイヤーがいる。しかし、今日、新しいテクノロジーと市場からの期待の変化を活用して、新たな競争戦線を導入し、これらの老舗企業に真っ向から立ち向かうスタートアップが数多く存在する。

Deel(ディール)Remote(リモート)のように、自らをリモート従業員の雇用を支援するプラットフォームと位置づける企業もあれば、Turing(テューリング)のように、リモートという概念を取り入れ、エンジニアという特定の人材プールに焦点を絞っている企業もある。SmartRecruiters(スマートリクルーターズ)は、人材紹介の「Salesforce(セールスフォース)」になることを目指しており、Beamery(ビームリー)のような他の企業もこの目標を追いかけている。Dover(ドーバー)は、別の企業分野からコンセプトを借りて(そのバズワードはオーケストレーション)、採用プラットフォームを構築している。そしてJobandtalent(ジョブアンドタレント)Workstream(ワークストリーム)Fountain(ファウンテン)は、カジュアル、ギグ、時間給労働者をターゲットにしたビジネスモデルを持っている。

Talent.comは、後者3社と同様に、時間給労働者やギグワーカー、熟練労働者を含む市場を主なターゲットとしている。求人広告のプログラムアプローチに加え、雇用主向けのその他のツールとしては、既存の応募者追跡システムやCRMを統合する機能がある。消費者向けには、基本的な求人情報の検索に加え、給与の調査、居住地の税金を差し引いた給与の計算、検索結果をより適切にするためのプロフィール質問への回答などの機能が提供されている。これは、この製品が将来どのように発展していくかという道筋を示すものでもあるだろう。

「これは非常に重要なことです」とマルティネス氏はいう。「就職活動は意欲的なものです。多くの人が、応募している仕事に適性がありません。そこで私たちは、経験と教育を組み合わせ、ユーザーが例えばエンジニアになりたいのであれば、そうすべきであると導いているのです。私たちは、あなたが誰であるかを知り、あなたの履歴書を私たちのプラットフォーム上に置き、その分野の教育プログラムをオンラインで紹介します。これが、ユーザーに対してより多くの価値を提供することになるのです」。と語った。

投資家の興味をそそったのは、ユーザーからより多くの収入を得るための幅広いサービス群に対する取り組みだ。

「人材獲得競争は、企業が今直面している大きな課題によって、さらに激化しています。Talent.comは、雇用主が人材を調達し、採用するための最大かつ最も国際的なプラットフォームの1つになるまで急成長しました。このパートナーシップは、真の求職者中心のプラットフォームとなるための一連の付加価値製品を立ち上げ、成長の新たな段階を促すものです」とInovia CapitalのパートナーであるChris Arsenault(クリス・アーセノー)氏は声明の中で語っている。

画像クレジット:Patrick Strattner / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Akihito Mizukoshi)

プレステ版Robloxが登場しそう、PlayStationコンソールのソフトウェアエンジニアを募集中

Roblox(ロブロックス)の新しい求人情報は、Sony(ソニー)のゲーム機に進出するという同社の緩やかな計画が、かなり現実に近づいていることを示唆している。この求人では、PlayStation用のRobloxアプリを開発するPlayStationコンソールのシニアソフトウェアエンジニアを募集している。

この求人には、このポジションが「ターゲットプラットフォームとの統合、ユーザーインターフェースの適合、パフォーマンスの最適化など、アプリケーションのすべての部分」を含む「世界中の何百万人ものユーザーに使用されているゲームエンジンをSony PlayStationプラットフォーム向けに構築しサポートする」と記載されている。

RobloxのCEOを務めるDavid Baszucki(デイビット・バシュッキ)氏は、Nintendo Switchとソニーの PlayStation、Oculus Questがいずれも長期的に「Robloxにとって完全に理に適っている」と述べ、2021年の追加プラットフォームに関する同社の拡張ビジョンを示唆していた。

「今、みなさんが見ているのは、私たちが信じられないほどスマートフォンに焦点を当てていることです。これは、信じられないほど難しいフォームファクターであり、その没入感を得るには最も難しいフォームファクターだと考えています」とバシュッキ氏は決算説明会で述べている。「しかし、これらはすべて合理的なプラットフォームであり、同時に、我々がそれらのリリース日を共有することはないでしょう」と述べた。

PlayStationで発売されることは、Robloxのコンソールデビューを意味するものではない。PCでよく知られているかもしれないが、Robloxは2016年初頭にXbox Oneで発売され、Microsoft(マイクロソフト)の最もプレイされたゲームトップ50のリストに今でもランクインしている。また、Robloxはモバイルでも人気があり、iPad向けゲームの最高売上高チャートでは、「原神」を抑えて定期的に上位にランクインしている(これは並大抵のことではない)。

この求人情報は、採用動向データ会社のRevealEra(リビールイーラ)によって最初に発見されたもので、週5回の無料ケータリングランチと「無制限のスナック」が付いてくるという、給料が下がるインフレの時代には計り知れない恩恵があることに注目したい。

RobloxはPlayStationの展開時期についてコメントを避け、同社が「熱心に採用中」であることだけを強調した。

画像クレジット:Simon Dawson/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Akihito Mizukoshi)

労働者が「フレキシブルな仕事」に何を求めているのか、WorkWhileは新たな見解を示す

WorkWhile(ワークワイル)の共同設立者であるJarah Euston(ジャラ・ユーストン)氏は、労働者を柔軟で信頼できる仕事に結びつけるという使命感を持っており、そう考えるのは彼女1人だけではない。しかし、彼女が際立っているのは、彼女が今日の労働市場の多くは誤った考え方の上に成り立っていると考えていることだ。

「私は、労働者が求めるのは無限の柔軟性だという考えには賛成できません」と、彼女はTechCrunchのインタビューで語っている。「それはおそらく、時給制の仕事で家賃を払おうとしたことがない人たちによるもので、請求書を支払うだけの十分な収入がある見通しや保証をするものではありません」と語る。

彼女はさらに「労働者は柔軟なスケジュールを必要としていますが、無限の柔軟性を求めているわけではありません【略】誰かがUberのドライバーになり、30分運転して、3時間ビーチに座って、さらに10分運転したいといった考えは、市場が自ら語った偽りなのです」と述べた。

労働者が何を得て、どのくらいの頻度でそれを得ることができるのかを理解するのに役立つプラットフォームがないことが、ユーストン氏が共同創業者のAmol Jain(アモル・ジャイン)氏とともにWorkWhileを立ち上げることに興味を持たせるきっかけとなった。2019年に設立されたWorkWhileは、時間給労働者を空いているシフトにつなげるだけでなく、翌日払い、遠隔地からのヘルスサービスへのアクセス、給与の透明性といった特典を提供する。

WorkWhileは、本拠地であるサンフランシスコ・ベイエリアをはじめ、ロサンゼルス、アトランタ、マイアミ、北ニュージャージー、アトランタ、シアトル、ヒューストン、ニューヨーク・メトロなど13の市場でサービスを運営している。ユーストン氏のビジョンに沿ったこの成長は、投資家の大きな関心を集めている。

このスタートアップは本日(米国時間2月23日)、Reach Capital(リーチ・キャピタル)が主導し、Khosla Ventures(コスラ・ベンチャーズ)、F7 Ventures(F7ベンチャーズ)などの既存投資家、Chamaeleon(カメレオン)、Position Ventures(ポジション・ベンチャーズ)、Gaingels(ガインガル)などの新規投資家が参加して、1300万ドル(約14億8900万円)のシリーズAを最近調達したと発表している。

最終的にWorkWhileが目指すのは、シフトだけでなく、常駐サポートやサービスも含めて(週の働き方にかかわらず)、より離れづらい労働者を持つマーケットプレイスを構築することだ。Arlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏が設立したRunner(ランナー)は、最近、同じようなアプローチで立ち上がった。パートタイムのオンデマンド労働者をW-2社員として雇用し、より安定した仕事を提供し、その後、テック関連のオペレーションでの仕事へとつなげるという方法だ。Bluecrew(ブルークルー)も同様のサービスを提供しているが、バーテンダー、イベント管理、警備、データ入力、カスタマーサポートなどの仕事を紹介する前に人材を雇用している。

安定した柔軟な仕事への関心が高まっているのは、大型辞職の反動もあるだろうが、フリーランス経済が成熟し、非定型の仕事を求める労働者でもサポートを求めるようになったことを示す、さらなるサインでもある。WorkWhileによると、Advance Auto Parts(アドバンス・オート・パーツ)、Ollie’s Bargain Outlet(オーリーズ・バーゲン・アウトレット)、Good Eggs(グッド・エッグズ)、Thistle(シスル)、Edible Arrangements(エディブル・アレンジメンツ)、Dandelion Chocolate(ダンデライオン・チョコレート)、Bassett Furniture(バセット・ファニチャー)といった企業でシフトが埋まっているとのことだ。

画像クレジット:WorkWhile

ユーストン氏によると、WorkWhileのプラットフォームで働く人の80%が週に30時間以上働きたいと考えており、60%が週に40時間以上働きたいと考えているという。「WorkWhileでは、『ギグ』という言葉は使わないようにしています。ギグプラットフォームと見られたくありません」とユーストン氏はいう。「安定した給料を得るための最高の場所として見てもらいたいのです」と語る。

労働者に優しいという売り文句に加え、WorkWhileは労働者にサービスの利用料を一切課さない。その代わり、WorkWhileを利用する企業には、労働者に支払われる料金に応じたパーセント型の手数料を請求することで利益を得ている。もちろん、雇用主にとっては、より信頼性が高く、離職率の低い労働力が期待できる。

ユーストン氏によると、同社は「人々が仕事についてどう感じるか」を示すデータポイントを見つけ、それを基にプロフィールを作成することが重要であるという。例えば、WorkWhileに入社した社員は、まずオリエンテーションを受け、その後、行動テストを受けることになる。

「難しくはありませんが、まさに指示に従っていくテストです」と彼女はいう。「1年に何回病欠の電話をしたかや、他の人は1年に何回病欠の電話をすると思うかといった、職場を取り巻く意識について確認しているのです」と語る。WorkWhileの現在の欠勤率はわずか5%で、予定されている労働者がシフトに参加するかどうかを予測する精度は76%だ。

このような方法でデータポイントを追跡することの課題は、歴史的に見過ごされてきた人々や社会経済的に低いバックグランドを持つ人々に不釣り合いに重くのしかかることである。結局のところ、このスタートアップは、主にパートタイムでフレキシブルな仕事を探している人向けではない。それは市場のすべての層を取り除いてしまいかねない。もう1つ興味深いデータがある。WorkWhileのプラットフォームで働く時間給労働者の約28%が暗号資産を所有しているということだ。

ユーストン氏によると、アプリでは「あえて意図的に」人口統計学的な質問をせず、前述の理由から予測モデリングの要因に年齢を含めないようにしているとのことだ。WorkWhileは、任意の労働者調査に基づいて、ユーザーの80%がPOC(有色な肌を持つ人々)であると認識しているという。

「私たちのモデルの哲学は、人々が働くことを妨げるのではなく、むしろリスクを管理することです。例えば、誰かがシフトに現れる可能性が50%未満であると予測した場合、顧客の要求が満たされるように予備の労働者を送ったほうがよいでしょう」と彼女は付け加えた。「我々のモデルが間違っていて、労働者がシフトに現れた場合は、そのバックアップの労働者には支払いは行われますが、顧客には請求されません」と語る。

同社は、誰もが働こうとすることを制限していないと主張しているが、より高い評価を受けた人に新しいシフトの最初の機会を優先して提供している。「将来的に、現場への移動が困難かもしれないと私たちが予測する人たちへのサポートを充実させることも視野に入れています。[…]もし私たちが、あなたが車を持っていないとわかった場合、相乗りオプションを提示することを検討することができます」と彼女は言った。

画像クレジット:WorkWhile

画像クレジット:SunnyGraph / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Akihito Mizukoshi)

学生向けジョブマッチングマーケットプレイスのZenjobが約57.5億円を獲得

欧州のカジュアルなジョブマッチングにさらなる資金を。小売、物流、接客などの分野で副業を探す学生を対象とし、一時的な労働力を必要とする雇用者と結びつけることを約束するマーケットプレイス・プラットフォームのZenjob(ゼンジョブ)は、5000万ドル(約57億5100万円)のシリーズDラウンドの資金調達を完了した。

ベルリンを拠点とするこのスタートアップは、3000万ドル(約34億5100万円)のシリーズCを調達して以来、わずか2年弱の間に、このような資金調達を行った。

他の多くの「現代的人材派遣会社」と同様、Zenjobは派遣社員を直接雇用し、給与や事務処理など関連する管理業務を請け負い、派遣社員の経験をさらに簡易化する。また、シフト終了後72時間以内に給与の半額を支払うという約束もあり、従来の派遣会社に比べて送金が早くなる可能性がある。

一方、雇用主はZenjobと契約を結び、必要に応じて短期・長期の仕事を含む派遣社員を予約することができる。

Zenjobは配送、小売、物流、eコマース、接客、サービス業などの「大手」企業と取引をしているというが、顧客名は明らかにしていない。

現在、欧州の2つの市場で1万カ所以上の場所にある2500社以上が、オンデマンドで派遣社員を確保するために同社のプラットフォームに登録しており、毎月4万人以上の労働者が副業を予約するためにこのプラットフォームを使っているという。

2015年に設立されたこのスタートアップによると、これまでにドイツとオランダで100万件以上の仕事をマッチングしているとのことだ。

今回のシリーズD調達はAragon(アラゴン)が主導し、Acton Capital(アクトン・キャピタル)、Atlantic Labs(アトランティック・ラボ)、Forestay(フォーステイ)、Axa Venture Partners(アクサ・ベンチャー・パートナーズ)などZenjobの既存の全投資家が参加している。

この新しい資金調達は、2022年夏に立ち上げを予定している英国市場を含む欧州内での事業拡大と、新しく「ホワイトカラー」タイプの職種のサポートなど、拡大する顧客基盤のニーズに対応するための、データに基づく新たな自動化機能を含む製品開発に当てられるという。

「当社は2022年、英国でZenjobの販売を開始し、欧州の新規市場に対する投資を継続します。また、ドイツとオランダでも事業を拡大しています」と、同社は説明している。「技術チームを増強し、プラットフォームのスケーリングと新しい自動化機能に多大な投資を行う予定です」とも付け加えた。

「需要が多いので、ナレッジワークとオフィスワークのオファーを拡大する予定です」と語る。

Zenjobは、スペインのJobandtalent(ジョブアンドタレント)CornerJob(コーナージョブ)、ルクセンブルグのJob Today(ジョブ・トゥディ)など、増加する、技術者を対象とした派遣社員のジョブマッチングを行うプラットフォームと競合している。

ギグプラットフォームのUber(ウーバー)もこの分野に注目しており、パンデミック時のロックダウンで乗り合いタクシーが需要の打撃を受けたため、2020年に英国のドライバー向けにWork Hubを立ち上げ、2019年には米国でUber Worksという、シフトを見つけるためのアプリを発表している。

欧州連合(EU)では、ギグプラットフォームにおける偽りの自己雇用に対処することを目的とした規制が導入され、プラットフォームワーカーに関する最低基準を定めた汎EU的な法的枠組みが設けられる予定だが、これにより、オンデマンド労働の需要が直接雇用する人材仲介業者に流れ、エージェント型の人材派遣プラットフォームの需要が加速される可能性がある。これにより、ギグプラットフォームは、何千人もの配達員やその他の非正規労働者を雇用する必要がなくなる。

競合状況について話すと、Zenjobは、人材派遣市場、ジョブマッチング、プラットフォームに関しては、テクノロジーが最大の差別化要因になると主張している。

「この市場に目を向けると、人材派遣と仕事探しを面倒で時間のかかるものにしているタスクを処理するためのテクノロジーを利用することに関して、私たちは表面を削ったにすぎません」と指摘する。「そのため、私たちは、プラットフォームと必要なすべてのプロセスの内部技術開発に多くの重点を置いています。現在、約75%のプロセスが完全に自動化されていますが、近い将来、95%以上にすることを目指しています」と語っている。

「私たちのモデルがうまく機能しているのは、技術に重点を置くことで、(高度な自動化により)高品質の人材を使った非常に迅速なサービスを、取引先の企業に提供することができるからです。私たちのビジネスの残りの半分は、人材に最高の経験と利益を提供することだけに集中しているので、高い成就率と信頼できる人材を提供することができるのです。提供する仕事には相場以上の報酬を支払い、現在アプリを使っていつでも仕事を予約できる4万人以上の人たちの体験と満足度をとても大切にしています」。と語る。

また、Zenjobは、まだ開拓されていない大きな成長があると主張している。例として、ドイツを挙げ、人材派遣の95%以上はまだほとんどオフラインで行われているという。

「そのため、私たちは、非常に伝統的な方法でジョブマッチングや人材派遣に取り組んでいる大企業と競合しています」と同社は述べている。「私たちのアプローチは100%デジタルで、私たちを通して仕事を予約してくれる人たちに提供できる利点を常に改善するよう努力しています。迅速な支払い、24時間365日いつでも仕事の予約が可能です」と語った。

画像クレジット:Zenjob

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Akihito Mizukoshi)

異色の投資家アーラン・ハミルトン氏はスタートアップの雇用ルートを変えようとしている

ベンチャーキャピタルのBackstage Capital(バックステージ・キャンピタル)を2015年に設立して以来、Arlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏は、自動車保険に挑戦する2人組からバーチャル学習のやり方を見直しているチームまで、数百万ドル(数億円)の資金を過小評価されたファウンダー率いる195の会社に投資してきた。業種の多様さにもかかわらず、ハミルトン氏は常に2つの質問を投資先企業から受けてきた。

「資金調達を手伝ってくれますか?」「雇用を手伝ってくれますか?」。

ハミルトン氏のファンドは、最初の質問への答えだが、彼女が今賭けているのは、後者を探求する(ハミルトン氏自身が作った)スタートアップだ。Runner(ランナー)は、スタートアップをパートタイムで働く人を探している人たちとをつなぐ労働マーケットプレイスだ。目的はアーリーステージスタートアップ構築における最大の不安のいくつかと戦うこと、最初の人事責任者をいつ雇うか、何を外注して何を内製すべきかといった人材配置などだ。Runnerは事業運営の職種に明確に特化してスタートする。

「コードの書き方を習いたかったり、技術色の強い職を探したければ、いくらでも行く場所はあります」とハミルトン氏はいう。「しかし、誰かの右腕、たとえばCOOになりたい人は今どこへ行けばいいでしょう。これは多くの会社が見落としてきた部分です」。

概念上、Runnerは逆張り投資家ではない。Upwork(アップワーク)とFiverr(ファイバー)はフリーランス経済の上で堅調なビジネスを構築した。この会社の違うところは、そのターゲットがテック業界の事業運営者であり、彼らをどう雇うかである点だ。”runner”、すなわちギグワークを求めているパートタイムプロフェッショナルは、W-2雇用者としてRunnerに雇われる。現在、同プラットフォームには200人前後の runnerがおり、その中には幹部経験者や、新たな収入源を求める元企業家もいる。

同社の現在の幹部の多くは、かつてrunnerとして入った人たちだ。例えばカスタマーサクセス(顧客を成功に導く)を率いるMelanie Jones(メラニー・ジョーンズ)氏は、歯科医ネットワークのプロダクトマネージャーを経て同プラットフォームに加わった。1カ月以内に彼女は幹部として雇用され、runnerから企業の意思決定者へと転じた人々に仲間入りした。それとは別に、Boeing(ボーイング)の幹部、Diana Moore(ダイアナ・ムーア)氏が4カ月前にCOOとして加わった。

runnerを請負人ではなく従業員に分類することによって、彼らは基本的な保護とより安定した雇用を得ることができる。Y Combinator(ワイ・コンビネーター)出身のBluecrew(ブルークルー)もオンデマンドワーカーを派遣する類似の組織をつくり、バーテンダー、イベントスタッフ、警備員、データ入力、カスタマーサポートなどの職種でも福利厚生のある従業員として労働者を雇用した。

ハミルトン氏にとって、Runnerは彼女がベンチャー業界に入る前から温めていたアイデアに立ち返るものだ。Backstage Capitalを始める前、ハミルトン氏は4人のミュージシャンの制作コーディネーターとツアーマネージャーだった(今も彼女は投資家としての仕事の中で音楽を引き合いに出す)。その仕事をする中で、彼女は多くのrunnerたち、すなわち遠征先で右腕として役に立ってくれる地元のエキスパートたちと仕事をした。Backstageを立ち上げる中で、彼女は自身の生活でrunnerを使い始め、国を横断してファウンダーらと合う際に1日だけ手伝ってくれる人を雇った。

音楽制作の世界におけるこの役割と、テック業界の柔軟性への愛との間にシナジーを見出した彼女は、Runnerを、ロゴを含め1から立ち上げた。

「Backstageを作っている時、私たちにリソースはありませんでした。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生して以来、人々はこのアイデアに困惑しました」と彼女はいう。「だから当時は机上のアイデアの1つにすぎませんでした」。そして2年近くパンデミックが続く今、機は熟した。

同社のビジネスモデルでは、runnerの時給の25%を受け取る。また、runnerが顧客にフルタイムとして採用された場合、顧客企業はrunnerの初年報酬の10%を斡旋料として支払う。

Backstage Ventureがベンチャーキャピタルの配り方と行き先を一変させようとしているのに対して、Runnerは企業が過小評価された人材を採用する手助けをする、という立場では作られていない。それはハミルトン氏がこの会社を固定概念化したくなかったからだという。

「私たちをDEI(多様性、公平性、インクルーシブ)な採用会社として位置づけるのは実に簡単なことでしたが、その責任を私たちがとることはしたくありませんでした。これは全員の責任であるべきことです」と彼女はいう。そういいながらも、現在Runnerの幹部は全員が、歴史的に見過ごされてきた経歴の持ち主だ。

需要にうまく応えるためにウェイティングリストモデルを採用する前、Runnerは約120社のパイロット顧客を確保し、年間50万ドル(約5700万円)の収益を見込んでいる。アプリは2022年3月15日の公開を予定している。

資金調達に関して、ハミルトン氏は同社を自己資金で立ち上げ、設立100日以内に50万ドル(約5700万円)のエンジェルラウンドを完了した。直近では、RunnerはSAFE(将来株式取得略式契約スキーム)によるプレシード・ラウンドで150万ドル(約1億7000万ドル)を評価額非公開で調達した。

ラウンドの出資者は、Precursor、Lunar Startups、Kabor CapitalのFreada Klein(フリーダ・クライン)氏、360 Venture Collective、およびGaingels。Backstage Capitalのクラウド・シンジケートであるBackstage Flex Fund IIおよびBackstage Opportunity Fund IもRunnerに投資した。

投資家が自身のファンドの資金を、自分が立ち上げた企業に投入することは稀だが、ハミルトン氏がいうように皆無ではなく、Guy Oseary(ガイ・オゼアリー)氏のSound Venturesが自身の会社のBrightに投資したり、David Sacks(デビッド・サックス)氏のCraft Ventuesが彼のオーディオ会社に投資した例はある。それでも、GP(ゼネラルパートナー)の会社に投資する時、意思決定者たちがプレッシャーを感じることがあれば利益の衝突が起きかねない。なんといってもGPなのだから。

ハミルトン氏は、Runnerへの出資を決定した投資委員会の一員だったが、各委員には自主決定する権限を与えたと彼女はいう。さらに、8ページにわたる契約概要(課題、機会、ギャップなどが書かれている)をまとめたのはBackstageのパートナーであるBrittany Davis(ブリタニー・デービス)氏とアソシエートのKelly Lei(ケリー・リー)氏であり、彼女は手を加えていないことを付け加えた。Runnerチームはプレゼン資料を提供してくれた。

「会社が利益をもたらすことは私の信託義務であり、RunnerのCEOとしての私の義務は、最良の投資パートナーを連れてくることです。私は両方をやりました」とハミルトン氏はTwitterのDMで付け加えた。Backstageの投資先でRunnerを利用している企業は25%のサービス手数料や収益の一部を支払わなくてよいこともバランスを保つ一因だ。

「私たちのゴールは2022年中に1000人以上の参加者を集め、平均4万ドル(約458万円)を達成することです」とハミルトン氏は言った。「そうすれば、私たちは5億ドル(約573億4000万円)企業になります」。

画像クレジット:Blake Little / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

遠隔地採用のスタートアップDeelの新機能は企業が暗号資産でペイロールを蓄えるオプション

2019年、Alex Bouaziz(アレックス・ブアジズ)氏とShuo Wang(シュオ・ワン)氏は、企業がコンプライアンスに基づいて世界中の人材を遠隔地から雇用し、給与を支払うことを目指すスタートアップ、Deel(ディール)を設立した。

2人のミッションは真剣そのものであり、リモートワークがこれからは主流になるというビジョンは、新型コロナの大流行よりも先にあり、新型コロナは同社の提供するサービスへの需要を一層高めることになった。

Deelは、企業が現地法人を介さずに5分以内に従業員や契約社員を雇用することを可能にすると主張している。また「ワンクリックで」で150以上の通貨でチームへの支払いが可能だとのことだ。

「私たちは、企業がどこでも誰でも雇用できるようにしたいのです」とブアジズ氏はTechCrunchに語っている。「才能はどこにでもありますが、チャンスはそうではありません。だから、我々はそれを少し平準化し、企業が誰でも採用できるようにしたいのです。ただ、もっと重要なのは、出身地に関係なく、彼らにふさわしい経験を提供することです」と語る。

ブアジズ氏は、これまで「一度もオフィスで働いたことがない」と告白するなど、確実に有言実行している。

ブアジズ氏とワン氏は、明らかに何かを掴んでいた。10月のDeelは、シリーズDで4億2500万ドル(約489億円)を調達し、55億ドル(約6331億円)と評価された。ブアジズ氏は12月に、2021年の同社が「400万ドル(約4億6000万円)から5000万ドル(約57億5500万円)以上のARRになり、60カ国以上で50人から550人以上に……そして6億ドル(約690億円)以上を調達した」と公に語っており、その成長ぶりは驚くほど透明である。

2021年、Deelは契約者向けに「Crypto Withdrawals(クリプト・ウィズドローワル)」を開始し、Deelを通じて支払われた人は、支払いの一定割合をビットコイン、イーサリアム、USDC、ソラナとダッシュで直接Coinbaseアカウントに引き出し、ほぼ瞬時に出金できるようになった。

しかし、これまでDeelを利用する雇用主は、遠隔地の従業員への支払いに暗号資産を使用するオプションを持っていなかった。

現在、このスタートアップはその使命をさらに一歩進め、企業に暗号資産で給与資金を確保する方法を提供しようとしている。まず、ブアジズ氏によると「最も急速に成長しているステーブルコインであり、ドルに固定されているため、変動する余地が少ない」ことからUSDCを利用することにした。企業がインターナショナルなチームに対して暗号資産を使って支払いを行うことは、Coinbase(コインベース)、Shopify(ショッピファイ)、Dropbox(ドロップボックス)など、Deelの6000を超える既存顧客の多くに歓迎されそうなオプションである。

Deelチームによると「柔軟性は、どこで雇うかだけでなく、どのようにチームに支払うかということでもあるはずです」とのことだ。

共同創業者のシュオ・ワン氏、アレックス・ブアジズ氏(画像クレジット:Deel)

この新しい製品機能は、暗号資産で資金を引き出すことを労働力に任せるのに対して、雇用者がUSDCでチームに即座に支払うことができるようになるという点で「Crypto Withdrawals」とは異なるものだと同社は述べている。

具体的には、USDCで資金を保有している企業は、グローバルチームの給与や支払いをまかなうために、Coinbaseのアカウントを介してDeelに直接支払いを行うことができる。企業がDeelにお金を払い込むと、契約者は暗号資産を含む150以上の通貨で出金することができる。

Deelによると、企業が主に暗号資産で業務を行っている場合、従業員に支払う前に、例えば米ドルに変換するための為替手数料を支払うことを心配する必要もない。暗号資産で直接支払えばいいのだ。

「これは、取引手数料や通貨手数料が少ないエンド・ツー・エンドの暗号資産支払い体験であり、さらに、企業や請負業者が銀行口座にお金を保持する必要性を排除します」と述べている。

Deelにとって、この動きは暗号資産の主流化における次のステップだ。

「これは暗号資産企業にとって画期的なことです」とBouazizは述べている。

Deelによると、この動きは、会社の暗号資産残高を使用してチームに支払いを行いたい企業と、暗号資産で支払いを受けたいというチームメンバーの両方からの「急増」した需要によって促されたとのことだ。例えば、同スタートアップによると、暗号資産給与支払いに対する需要は前月比10%増となった。

その他、同社が発表した愉快な統計データをいくつか紹介しよう。2021年の7月から12月の間に、支払いの2%が暗号資産で引き出された。2021年12月にDeel経由で約470万ドル(約5億4100万円)が暗号資産で従業員に支払われ、2021年11月から49%増加した。興味深いことに、暗号資産の出金の地域別内訳は、ラタム(52%)、EMEA(ヨーロッパ、中東およびアフリカ、34%)、NAM(北米)(7%)、APAC(アジア太平洋、7%)とのこと。

画像クレジット:cokada / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

逼迫した労働市場の中でサイバーセキュリティ人材を見つける5つの方法

彼は私が聞いたことのない大学を卒業した。Villanova(ビラノバ大学)で修士号を取得したが、テーマは人材育成だった。米国海兵隊で16年過ごし、軍事、文民のさまざまな職についたが、サイバーセキュリティに直接関わったことはなかった。直近の職は建設会社のプロジェクトマネージャーだった。

私の会社、Sumo Logic(スモー・ロジック)の幹部たちに、セキュリティ運用センター(SOC)のマネージャー職として彼を雇うための面接をしてくれるよう頼んだとき、私は困惑と軽蔑のまなざしで迎えられた。「なぜ私がこの男と話をするのですか?」が典型的な反応だった。「まったく向いていないと思います」。

彼らが知らなかったのは、以前私がRoland Palmer(ローランド・パーマー)氏と面接して、30分で彼が適任だと結論を下したことだった。困難な任務に挑戦することへの彼の強い願望に私は感銘を受けた。この元海兵隊員はこれまでに、アフガニスタンにおける通信運用管理や、日本の放射性物質で汚染された地域から何百人もの人々を避難させるしごとなど、数々の厳しい挑戦と直面してきた。SOCの管理は、多くの危機とトラブル報告が絶え間なく起きる過酷な仕事だが、ローランド氏は履歴書にセキュリティ業務の経験がなかったにもかかわらず、生まれついた適任者に思えた。

私は同僚たちにこう言った。「あなたがたには彼と話して欲しいのですが、しなてくも私は彼を雇うつもりです」。結局全員がローランド氏に一目惚れした。彼は職を得た。

あれは3年前のことだった。2020年にローランドはシニアSOCマネージャーに昇進した。同じ年、彼は会社で最高水準の従業員功績表彰を受けた。

私がこの話をしているのは、信じられないほど競争の激しい雇用市場で優れた人材を雇う、という最大の難関を超えるために会社とサイバーセキュリティ組織は何をすべきかをものがたっていると思うからだ。

「サイバーセキュリティスキル危機は年々悪化の一途をたどり、半数以上(57%)の組織が影響を受けています」と、Information Systems Security Association(情報システムセキュリティ協会)とアナリスト会社のEnterprise Strategy Group(エンタープライズ・ストラテジー・グループ)がまとめた最新の報告書はいう。現在サイバーセキュリティ職には350万の空席があり、これはNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のスタジアム50個を満席にする人数だとCybersecurity Ventures(サイバーセキュリティ・ベンチャーズ)はいう。

ランサムウェア攻撃やデータ侵害、サプライチェーン襲撃が急増する今、2021年前半の全世界におけるサイバー攻撃の件数は、前年同時期に比べて125%増加した。Accenture(アクセンチュア)の調査による。果たして企業は何をすべきなのか?

今日の最高セキュリティ責任者(CSO)は、人材探しを主要業務の1つとして受け入れるだけではなく、積極的に活用していく必要がある(私は週の少なくとも10%を充てており、それ以上のことも多い)。そして、優れたセキュリティ専門家がどこから来るかに関する古い先入観を捨て、自由で創造的な人探しをしなくてはならない。

5つのアドバイス:

窓際族症候群に注意せよ

正直な話をしよう。採用にあたり、誰でもいいから連れてこようという誘惑にかられることがある。それは、サイバーセキュリティ職が必要だからだけでなく、不調な四半期の後に空席の職がレイオフで減らされないよう人員を確保しなくてはいけない、という圧力が加わるためだ。

これをやってはいけない。サイバーセキュリティは、仕事のできないチームメンバーを抱えておくにはリスクが高すぎるくらい重要だ。

学歴偏見

有名大学を出ることは名誉であり、その価値を疑うつもりは毛頭ないが、私の必要条件リストでは下の方に位置する。意欲、熱意、ストレス下での平静、団結心、そして状況認識のほうがはるかに重要だ。

2015年のSumoでの最初の1週間、私はスタンフォード、UCバークレー、MITなどの大学を卒業した同僚幹部たち数人と、顔合わせを行った。自分について話す番が来たとき、私は会議室の全員に向かって自分の母校について話した。Regis University(レジス大学)はコロラド州デンバーにあるイエズス会系の小さな大学だ。

私は気後れしなかった。誇りを持っていた。そして人を雇うとき、私はスキルと個人の資質を学歴よりも優先する哲学を今も守っている。

立ち直る力は経験と同じかそれ以上に重要だ

サイバーセキュリティ部門で働くことは、世界で最もストレスのかかる仕事の1つであり、慢性的な悩みで燃え尽きてしまいがちだ。 Chartered Institute of Information Security(情報セキュリティ協会)の報告によると、セキュリティ専門家の51%が仕事のストレスで夜寝られないという。

そういうわけで、過去のセキュリティ経験は大きなプラスではあるものの、プレッシャーに対処し、さらにはプレッシャーを楽しむ能力が等しく重要だ。私は求職者に必ずこういう「この仕事は単調でつらいものになります。しかしその使命は絶対不可欠です」。これを聞いて目を輝かせる人がいる、それこそ求めている人材だ、履歴書になんと書かれていようとも。

従来と異なる情報源を活用する

ローランド・パーマー氏は、最高のサイバーセキュリティ専門家が必ずしもサイバーセキュリティ世界から来る必要がないことを示す一例だ。しかし、他にもたくさんある。

例えば私はソフトウェア開発組織がセキュリティ人材の育成に好適な場所であることを発見した。 DevOps(デブオプス)などのアジャイル開発手法は、開発と運用とセキュリティを伝統的な縦割り構造から引っ張り出した。今や全員が力を合わせて、迅速で効率的で堅牢なソフトウェアパイプラインを育てることを期待されている。

これによって、デベロッパーがセキュリティの専門知識の幅を広げ、会社のソフトウェアライフサイクルを別な形で推進しながら、自らの領域を広げる新しい機会を与えることができる。

私はよく開発者にこういう「うちのチームに入れば、クラウドのインフラストラクチャの仕事も、アプリケーションの仕事も、APIとマイクロサービスを融合させる仕事もすることができます。そしてその過程でソフトウェアパイプラインの高いレベルの理解を深め、セキュリティが織り込まれたカルチャーを推進することができます。そして将来エンジニアリングに戻ることにした時、あなたは今や決定的に重要な幅広い経験とセキュリティ習慣を身につけたうえで戻ることができます」。

私は経理業務の経験者にも注目している、それは彼らに規制遵守の姿勢とセキュリティ業務に不可欠な細部への注意力があるからだ。

共感を呼ぼう

私がセキュリティ業務を始めた頃、他の社員が廊下を歩く私を見て隠れるようになったのを感じた。彼らには私が、何かのセキュリティ問題で叱りつけにきた悪い奴に見えていた。

今のより協調的なカルチャーでは、もはやそれは受け入れられない。セキュリティ専門家は、信頼できるてームメートとして近くにいて安心感をあたえる存在にならなければならない。

好むと好まざるとにかかわらず、一流の人材を雇うことは、CSOの仕事の中で最も重要かつ困難な部分になってきており、すぐには変わりそうにない。しかし、決断力と形にとらわれない思考があれば、困難に打ち勝つ答えを導くことができるだろう。

編集部注:本稿の執筆者George Gerchow(ジョージ・ガーチョウ)氏は、 Sumo Logicの最高セキュティ責任者。

画像クレジット:Ivan balvan / Getty Images

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(文:George Gerchow、翻訳:Nob Takahashi / facebook

リファラル採用SaaSのMyRefer、タレント・アクイジションSaaS「MyTalent」のベータ版をリリース

リファラル採用プラットフォームを提供するMyReferは、欠員補充などの短期的な採用ニーズを充足させる短期的な「リクルーティング」ではなく、中長期を見据えて会社を成長させるために転職潜在層から優秀なタレントを持続可能に獲得する「タレント・アクイジション」を実現するHRX(Human Resource Transformation)構想を発表した。

第1弾として、採用候補者との「つながり」を管理することで、掛け捨て型の採用から積立型の採用活動に変えるタレント・アクイジションSaaS「MyTalent(マイタレント)」のβ版を本日、2022年2月7日より提供開始する。

MyTalentでは、採用候補者のタレントプール構築、アプローチ、持続可能な仕組み化までを一元管理。過去の採用候補者で当時見送りとなった人材、社員の紹介での候補者、退職社員、ホームページの問い合わせなどから登録があった人材など、あらゆる応募チャネルから形成されるタレントデータを蓄積する。また、採用サイトへの来訪やメール反応から興味スコアを自動計測したり、過去の辞退・不合格理由からメールテンプレートを設計、ファン度をもとに最適なスカウトメールを送信、採用率向上を目指すという。

人材情報を蓄積していくタレント・アクイジションの時代へ

海外のHR市場では、欠員補充などの短期的な採用ニーズを充足させるために人材紹介や求人広告から母集団を形成して選考する短期的なリクルーティングではなく、中長期を見据えて会社を成長させるために転職潜在層へ採用マーケティングを行い、優秀なタレントを持続可能に獲得するタレント・アクイジションの概念が一般化してきているという。

代表の鈴木貴史氏は「日本企業がより競争力を高めるには、人をベースに事業を作り、優秀なタレント人材を獲得することが最重要課題です。その上で企業成長を促進させるために、候補者を資産化して戦略的にタレントを獲得、育成する『タレント・アクイジション』へと変革していく必要性を感じ、本件のリリースに至りました」と語った。同社は、リファラル採用SaaS「MyRefer」、タレント・アクイジションSaaS「MyTalent」を皮切りに、戦略的採用マーケティングを支援するプラットフォーム構想を進めていくという。

【コラム】「大量退職時代」はテックワーカーがキャリア代理人を利用するきっかけになるか?

大量退職時代(The Great Resignation、ザ・グレート・リジグネーション)は、テックワーカーに彼らの力を再認識させた。給料は上がり、人材需要は高まり、もしあなたがStripe(ストライプ)のエンジニアなら、アイデアのタネもないうちからプレ・シード会社を支援してくれる投資家が少なくとも3人いる。

しかし、求人熱の高まりは、進路決定をやさしくするわけでは決してない。もしあなたがShopify(ショッピファイ)のクリエイティブ・ディレクターか、Thrasio(スラシオ)のプロダクト責任者なら、オファーが殺到するだろう。

Free Agency(フリー・エージェンシー)は、2019年にSherveen Mashayekhi(シャービーン・マシャエキ)氏とAlex Rothberg(アレックス・ロスバーグ)氏が共同設立したスタートアップで、スタートアップ人材に対する熱望をビジネスの糧にしようとしている。テックワーカーも、ハリウッドスターやスポーツ選手が代理人から受けているのと同じようなサービスの恩恵に預かれるはずだ、とこのスタートアップは考えた。Free Agencyは、プロダクト、エンジニアリング、マーケティング、デザインなどの分野にわたり、中級から上級幹部レベルの候補者に代理人サービスを提供する。これまでに同社は、4700回の面接で候補者を支援し、交渉の結果獲得した提示給与総額は2億ドル(約229億4000万円)に上るとFree Agencyは推定している。

例えばFree Agencyが手がけたあるクライアントは、プロダクト担当シニアディレクターとして90万ドル(約1億円)の報酬を得て前職の総報酬から53%急増した。その過程で同社は、Snapchat(スナップチャット)、Coinbase(コインベース)、Lyft(リフト)などの企業と計21回の面接を設定し、クライアントは求職活動中1通の応募書類もメールも送る必要がなかった。

「当社のネットワークと仕事検索エンジンを使って、クライアントが寝ている間に面接を設定しました」とマシャエキ氏はメールに書いた。

このエージェントモデルは、ハリウッドでは比較的よく見かけるものだが、テック業界はサードパーティーを通じたキャリアマネージメントという発想をまだ受け入れていない。転職マーケットプレイスを設立し、Toptal(トプタル)やStella.ai(ステラ・エーアイ)などの求人会社で働いた経験を持つマシャエキ氏は、人材活用におけるテクノロジー利用は、伝統的に雇用者を喜ばすためのもので、従業員のためではないと話す。

「もしあなたが人材テック分野のエンタープライズ向けスタートアップのファウンダーなら、雇用者のところへ行って『私のツールを買ってください』と『マーケットプレイスにお金を払ってください』というほうが簡単です。なぜなら相手は問題の緊急性を理解しているから」と彼はいう。「雇用者は、そのお金が雇用と従業員維持の問題を解決することを理解していますが、候補者は歴史的にそういうお金の使い方をしてきませんでした」。

「スパム」を送ったり候補者の「パターンマッチ」をするために雇用者から料金を取るのではなく、Free Agencyは候補者の目的のみに焦点を当てている。同社は、候補者に初年度報酬の5~10%程度を請求して利益を得る。

一方雇用者は、Free Agencyが1週間に最大5人の候補者を紹介するサブスクリプションサービスを無料で利用できる。キャリアを管理するためにリクルーターに金を払えと従業員にいうのは大きな頼み事だ。しかも、候補者は今の職に満足していれば、そのサービスを少なくとも数年間、おそらくもっと長い間必要としない、

マシャエキ氏は、Free Agencyは入社時だけでなく、社内異動、能力向上など昇進サイクルを通じて候補者を手助けすることで価値を示すことができると強調する。現在同社は積極的にプロダクトを拡充しており、エンジニアリング・チームはキャリア・オペレーティング・システムの開発を進めている。そこではユーザーが求人情報や勤務評価、報酬評価などを行える。

もう1つの疑問は、Free Agencyは同社のサービスを最も必要としている人たちに提供するのか、という点だ。歴史的に過小評価され、概してネットワークとのつながりがなく重要な情報を得られない人たちだ。それとも、すでに十分つながりのある人たちをもっとよいところに着地させる手伝いをするだけなのか。

「率直に言って、Free Agentsに登録されている人たちの多様性の内訳は可もなし不可もなしです」とマシャエキ氏がメールで語った。同社は営業、顧客獲得、および市場開拓プログラムを展開してこれを変えようとしている。現在同社のプラットフォーム上にいる代理人は60%が女性で、20%が過小評価グループ出身だ。

こうした疑問符をつけられながらも、Free Agencyは2021年12月、1000万ドル(約11億5000万円)のシリーズAラウンドをアーリー・ステージ投資会社、Maveron(マベロン)のリードで完了した。さらに、Free Agencyのクライアント20社も出資しており、他にKevin Durant(ケビン・デュラント)氏のThirty Five Ventures、Resoloute、Bloomberg Beta、Kygo(カイゴ)氏のPalm Tree Crewなども参加した。同社は以前に、535万ドル(約6億1000万円)のシードラウンドも完了している。

それでもFree Agencyの最終テストは、管理された職探しを積極的に外部委託しようとい候補者を十分な数集められるかどうかだ。大量退職時代は、転職希望者がFree Agencyのようなサービスを試してみる推進力になっているかもしれないが、一度、波が去った後、求職者がどこまで確信を持てるかは不透明だ。

関連記事:従業員のウェルビーイングを管理、ポストコロナ期の燃え尽き症候群を防ぐQuan

画像クレジット:Gary Waters / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

従業員のウェルビーイングを管理、ポストコロナ期の燃え尽き症候群を防ぐQuan

新型コロナウイルス流行収束後のバーンアウト(燃え尽き症候群)の増加、リモートワークへの移行、そして「大量退職時代」が辞書に載るようになった今、企業は人材を確保するのに苦労している。

Culture Amp(カルチャー・アンプ)やGlint(グリント)のようなカルチャープラットフォームは、別の時代に構築されたものであり、人事部にインサイトやレポートを提供するが、それらの多くは2022年に適合しているとは言えない。また、従業員のウェルビーイングは、依然としてますます重要な課題になっている。

新たなスタートアップ企業のQuan(クアン)は、エンゲージメント調査とウェルビーイング手当の間にあるギャップに対処するために、Y Combinator(ワイコンビネーター)をはじめ、オランダのインパクトファンドや複数の匿名のエンジェル投資家たちから、プレシード資金として115万ドル(約1億3000万円)を調達した。

女性が主導するオランダのスタートアップとして初めてY Combinatorに採用された創業者のArosha Brouwer(アロシャ・ブラウワー)氏とLucy Howie(ルーシー・ハウイー)氏は、医師、心理学者、セラピストと一緒にこの問題を研究し、200以上の予測因子に裏打ちされた20以上のウェルビーイングの下位次元を特定したと述べている。

Quanは、2021年3月にベータ版製品を発表し、現在は12の組織と提携を結び、1000人以上の有料ユーザーを獲得しており、プラットフォームのエンゲージメント率は88%に達しているという。

ブラウワー氏は筆者に次のように語った。「あまりにも長い間、人材・行動様式プラットフォームのプレイヤーたちは、ウェルビーイングを効果的に管理する方法を提供せずに『従業員エンゲージメント』や『従業員エクスペリエンス』を測定し、それをビジネス指標に直接結び付けてきました。そのため、バーンアウトや有害な企業文化といった問題が誤った方向に進んでしまう傾向にあるのです。Quanは、社会的な問題を効果的に解決するためには、それを経済的な問題(またはインセンティブ)にもしなければならないと考えています。冷厳な事実ですが、企業に従業員を大事にさせるためには、それが企業の利益にどのように影響するかを直接測定する必要があるのです」。

Quan社は現在、企業のリーダー向けに無料のアクセストライアルを提供している。

画像クレジット:Quan founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】アクセシブルな雇用が「大量退職時代」の解決策となる

さまざまな業界で従業員が仕事を辞めている。最近では、米国で2021年に4人に1人が仕事を辞めたという調査がある。転職がコロナ禍の不安定な経済状況によるものか、仕事を取り巻く環境の見直しか、納得のいかない雇用主に対する反抗なのかなどが考えられるが、いずれにしても確かなことが1つある。米国では2021年11月時点で1000万以上の求人件数があるのだ。

求職者の中には障がい者も数多くいる。障がいのある労働者は新型コロナウイルスに関連する解雇の影響を不当に大きく受けたからだ。2020年3〜4月に、障がいのある労働者の数は20%減少した。多くの組織がすでにダイバーシティ、公平性、インクルージョンに対する取り組みを見直している中、採用担当者はアクセシビリティを「すべての人」を迎える職場づくりにとって重要な要素として認識する必要がある。

アクセシブルな採用活動は適切なことであり、ADA(Americans with Disabilities Act、障害を持つアメリカ人法)が求める要件だが、それだけではなく広範囲に及ぶ労働力不足を解消し、企業が優秀な多くの人材を集めることにもつながる。

しかし障がいのある応募者にアプローチする戦略を考える前に、それを邪魔する誤解をいくつか挙げておこう。

誤解:障がいのある人を雇おうとしたら、採用の基準を下げなくてはならない。

事実:障がいのある人が他の人より高いパフォーマンスを示すことは少なくない。しかも障がい者を雇用する企業では、インクルーシブなプロダクトを開発して新たな市場の獲得につながるイノベーションが進むため、結果として年間収益が28%多い。

誤解:障がいのある従業員は他の人に比べて欠勤が多い。

事実:障がい者の出勤率は他の従業員と変わらないか、むしろ高い。また、離職率も低い。離職率は2021年に生産性に大きな影響を与えた問題だ。

誤解:受け入れの配慮に費用がかかりすぎる。

事実:まず、配慮の56%には費用がまったくかからない。そして費用がかかる場合のうち50%は500ドル(約5万7000円)未満だ。さらに障がい者のインクルーシブな雇用からは利益の増加や株主還元も期待できるので、組織にとっては得るものばかりだ。

アクセシビリティの文化による好影響を組織が認識したら、次は障がいのある候補者の採用方法を考えることになる。採用方法の検討には、カリフォルニアに住む障がい者の権利向上に取り組むNPO法人、Disability Rights CaliforniaのLoule Gebremedhin(ルール・ゲブレメドヒン)氏とJennifer Stark(ジェニファー・スターク)氏によるガイドラインを利用するとよい。

第1段階:募集

組織内を客観的に見る

採用プロセスを始める前に、組織は内部をよく見る必要がある。現実を認識し、障がい者を戦力として雇用するだけではない。障がいのある従業員の専門性と経験を評価し、専門性の成長を支援する環境を作るということだ。

次の質問に対する答えを考えて、ゴールを明確にしよう。障がいに関する現在の自分たちの文化はどのようなものだろうか。成長と定着を受け入れる準備はできているだろうか。公平な雇用プロセスは自分たちの大きなゴールにどのようにつながるだろうか。

組織内では福利厚生も検討する必要がある。よく知られていることだが、候補者が入社を検討する際に充実した福利厚生が検討材料となることは多い。障がい者にとってその意味はさらに大きい。多くの場合、包括的な心身の医療保障制度が勤務先を選ぶ際に最も重視されるポイントだ。

リモートワークも重要な福利厚生だ。近年、我々は家で仕事をするメリットを目撃してきた。通勤にかかる時間や費用の減少、子育ての柔軟性、高い生産性などだ。障がいのある人にとっても同様で、さらに自分のニーズに合う仕事の環境を作れるメリットもある。例えば視覚障がい者は自分にとって最も見やすい部屋の明るさを決められる。

募集の準備を整える

次に、採用担当者は職務内容と応募書類を改訂して障がい者が応募しやすいようにする。「どのように」業務を遂行するかではなく、ゴールを達成するために必要な最終的なスキルを記述するように構成し直す。例えば「口頭での高いコミュニケーション能力」ではなく「効果的にコミュニケーションできる能力」とする。米国労働省の取り組みであるEmployer Assistance and Resource Network on Disability Inclusion(障がい者インクルージョンに関する雇用主向けサポートとリソースのネットワーク)が出しているガイドが、記述を改訂する際の参考になる。

障がい者にとって応募書類を見つけて記入することは極めて難しい。デジタル応募書類の多くはアクセシビリティの要件を満たしていないからだ。このままでは障がいのある応募者の数が少なくなってしまうだけでなく、組織にとってはADA違反という法的リスクとなりかねない。応募のプロセスに対応するアクセシブルなサイトやフォームを作る開発者向けのトレーニングとツールを活用するのが、コンプライアンスを維持しつつ対象となるすべての候補者が等しくアクセスできるようにするための手軽な方法だ。

第2段階:面接

前もって対応する

障がい者は対応を要請することに慣れている。しかし要請する必要がないとしたらどうだろうか。面接のプロセスであらかじめ求職者に対して配慮していれば、求職者にとってはその組織がアクセシビリティを重視していることの確認になる(そしてこれはADAの要件でもある)。

例えば対面での面接なら、車いす利用者が面接会場に問題なく到着できるかを考慮する。バーチャル面接なら、ミーティングのプラットフォームで最低でも自動キャプション機能を有効にできることを確認する。ライブキャプションや手話を利用できればなお良い。

採用責任者をトレーニングする

採用責任者の偏見が、障がい者雇用率の低さの根底にある。組織は障がいに関するエチケットと倫理の基本や、ADAに準拠した質問に関するトレーニングを実施することで、認知度を高め偏見をなくす上で積極的な役割を果たすことができる。採用チームに障がい者を含めることも、障がいに対する意識を高めることにつながる。

第3段階:オファー

障がいのある従業員を雇用する際には、組織は競争力があり候補者のニーズにも合うオファーを提示する段階を踏む必要がある。

  • 業界全体の同様の職務と同等の報酬であることを確認する:障がい者の報酬が不当に低いことはよくあり、最低賃金以下で障がい者が働くことを許す方針がいまだに残っていることを忘れないようにする。
  • 対応できるシステムを作る:採用予定者に対して、対応を要請できることを知らせる。また、その要請に応える方針を策定する。米国労働省が資金を提供し障がい者雇用のリソースとなっているJob Accommodation Networkは、どのように対応するかの知見を得るのに役立つ。
  • メンタリングと定着のプログラムを構築する:成長とリーダーシップを支援するために、専門のメンタリング、教育、ネットワーキングの機会を提供する。

この1年間で、組織は職場のダイバーシティ、公平性、インクルージョンに関して大きな進歩を遂げた。アクセシビリティはこうした考え方の一部であり、組織が包括的なゴールを達成するためのものととらえる必要がある。

適切な行動をとることからさらに進んで、障がいのある候補者を求め、その人が成功できる環境を提供する雇用プロセスを促進すれば、現在の人材不足を解消し、イノベーションを加速し、組織の文化を強くすることにつながる。

編集部注:本記事の筆者のMeagan Taylor(ミーガン・テイラー)氏はDeque Systemsのプロジェクトマネージャーで、ウェブを含め資本や機会に対する組織の障壁をなくすことに熱心に取り組んでいる。

画像クレジット:kyotokushige / Getty Images

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(文:Meagan Taylor、翻訳:Kaori Koyama)

企業の法務の形を変え、その活用方法の進化を目指すLawtrades

Lawtradesの共同創業者アシシ・ワリア氏とラード・アーメッド氏(画像クレジット:Lawtrades)

企業の法務も、独立の弁護士や法律事務所との契約を採用しているところが多い。そこでLawtradesは法律のプロたちに、独立して独自のバーチャルな法律家になる方法を提供する。

Raad Ahmed(ラード・アーメッド)氏とAshish Walia(アシシ・ワリア)氏が2016年に同社を立ち上げたときは、スタートアップや小企業を主な顧客と想定し、誰もがやるようにプロダクトを市場に合わせようとしたが、わかってきたのは、そんな大きさの企業が法律業務を利用するのはプロジェクトベースが多く、頻度も少なく、会社が倒産して短期で終わる場合もあることだ。

2019年、同社は法務部門に売り込むことで中堅企業やエンタープライズレベルの企業との取引にピボットし、そこから成長が加速したとアーメッド氏はいう。

今日、LawtradesはDoordashやGusto、Pinterestなどを顧客とし、彼らにリモートで雇うことができるプロフェッショナルの柔軟性に富むマーケットプレイスを提供している。同社の技術で、法律のプロと企業の両方がプロフィールを作り、お互いをマッチさせ、プロジェクトをモニターし、当プラットフォーム経由で決済する。

「つまりそれは新たなインターネットネイティブのワークモデルで、私たちが法務から始めたのは、それが1000億ドル(約11兆4000億円)の市場でありながら過去100年間ディスラプトされていないからです」とアーメッド氏はいう。

Lawtradesアプリのデザイン(画像クレジット:Lawtrades)

LinkedInでは、何百人もの応募者の中から優秀な人材を探し出さなければなりませんが、アーメッド氏とワリア氏は、それとは異なる採用体験を構築したいと考えていた。また、プロフェッショナルは、オーバーヘッドやその他の費用が請求可能な時間数に含まれている法律事務所とは異なり、一律の価格体系を提供することができる。

2021年には売上が倍増し、Four Cities Capitalがリードする600万ドル(約6億9000万円)のシリーズAを完了した。参加した投資家はDraper Associatesと500 Startupsだ。そのラウンドには100近い顧客やエンジェル投資家、そしてGumroadの創業者Sahil Lavingia(サヒール・ラヴィンヤ)氏やTeachableのAnkur Nagpal(アンクル・ナグパル)氏、GoDaddyのCEOであるAman Bhutani(
アマン・ブタニ)氏など、企業の創業者も参加した。

「リモートの法律業務がやっと認められるようになり、多くの法律家たちが大きな法律事務所を去って自分で仕事をするようになっているため、私たちはすでに黒字で、収益をベースとする資金調達ができる。大量の希薄株による資金調達をする必要がない」とアーメッド氏はいう。

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2021年の終わりに、Lawtradesの顧客は80社、進行中の仕事は150だった。人材の面では、預かっているプロフィールが1000を超え、それは2020年の400に比べて大幅増だ。現在は招待制のみで、ネットワークが5%を受け取る。ネットワークの構成は女性60%、マイノリティーが35%以上いる。

アーメッド氏によると、12月に同社の推定年商は800万ドル(約9億1000万円)に達し、前年の300万ドル(約3億4000万円)から大きく伸びた。今日まで、ネットワークのプラットフォーム上での収益が110万ドル(約1億3000万円)、プラットフォーム上でログオンされた仕事時間は2021年で6万時間を超え、前年比で200%の増だった。

アーメッド氏の計画では、今回の資金を社名変更とiOSアプリの立ち上げ、法律以外に財務や経営コンサルティングなど他の専門分野への拡張に使いたいとのこと。また、国際化も狙っている。そして社員数を現在の15名から30名に増やし、プロダクトやサポート、そして営業方面を充実したいという。

「仕事の世界は今、ユニークな位置にいる。人びとはリモートで仕事をし、企業は人材を求めている。そこで今は全面的な人材戦争が起きていて、優秀な人ほど待遇が良い。私たちのモデルの良い点は、個人が自分のやりたい仕事を得られることだ。すばらしい人材が集まってくるのも、そして彼らが待遇の良い仕事にありつけるのも、そのためだ。今後も改良を進めて、週40時間労働の限界を広げたい」とアーメッド氏はいう。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

学習プログラム紹介サービスCareer Karmaが企業向けに事業転換を画策、世界最大の人材紹介会社を目指す

Career Karma(キャリアカルマ)は、コーディング・ブートキャンプを検索したことがある人なら誰でも共感するような速さで、最初の数百万ドル(数億円)を調達した。それは、意欲を持った学生や社会人のためのナビゲーションツールだ。Career Karmaは独自のカリキュラムを作成するのではなく、学生が自分の予算とキャリア目標に最適なプログラムを見つけられるように支援する。

2018年にRuben Harris(ルーベン・ハリス)氏、Artur Meyster(アルトゥール・メイスター)氏、Timur Meyster(ティムール・メイスター)氏の3人によって設立されたこのスタートアップは、現在、行き詰まったブートキャンプの学生以外にもサービスを提供しようと意欲を高めているところだ。

この数カ月の間、Career Karmaは雇用者とのパートナーシップの種をまいてきた。これによって同社は、一般消費者に向けとして始めたEdtechスタートアップが、規模の拡大にともなって雇用者から利益を得るルートを開拓した最新の企業となった。ハリス氏は現在、Career Karmaが過去数年間に構築してきたマーケットプレイスで、従業員や契約社員に職業訓練プログラムにマッチングさせるというビジョンを掲げている。

この段階へ進むために、Career Karmaは米国時間1月10日、非公開の評価額で4000万ドル(約46億円)のシリーズB資金調達を実施したことを発表した。このラウンドは、Top Tier Capital Partnersが主導し、旧Google Ventures(グーグル・ベンチャーズ)であるGV、Bronze Venture Fund(ブロンズ・ベンチャーズ・ファンド)、Stardust(スターダスト)、Trousdale Ventures(トロウスデール・ベンチャーズ)、Alumni Ventures Group(アルムニ・ベンチャーズ・グループ)などが参加。既存投資家であるSoftBank(ソフトバンク)、Emerson Collective(エマーソン・コレクティブ)、Kapor Capital(ケイパー・キャピタル)、Backstage(バックステージ)、4S Bay Partners(4Sベイ・パートナーズ)、Y Combinator(Yコンビネーター)なども参加した。

ハリス氏はTechCrunchによるインタビューで「第1段階は、インターネット上でナンバーワンのキャリアアドバイスサービスになること、第2段階では、世界最大のキャリアトランジショナーのコミュニティになることでした。そして今回の第3段階は、世界最大の人材紹介会社になることです」と語っている。

数十億ドル(数千億円)規模のビジネスとして評価されているHandshake(ハンドシェイク)やGuild Education(ギルド・エデュケーション)と同様、Career Karmaは仲介役を担う。従業員の福利厚生として、Career Karmaは雇用者が費用を負担する従業員の受講者を得ることができ、彼らにより理想的な高度な仕事のスキルを身につけるための再教育や技能向上を提供することが可能になる。

雇用主は、Career Karmaが大規模に多くの被雇用者と結びつくためのゼロコストの獲得チャネルとなるわけだ。それは同社が起ち上げ当初から取り組んでいる事業である。

「ユーザー側に関しては、興味のある職業訓練プログラム、現在持っているスキル、希望する仕事を、我々の方で特定することができます」とハリスはいう。「最終的には、当社内に強力なデータベースを持つことになるでしょう」。

Career Karmaの戦略変更は、そのビジネスモデルも一新する必要があることを意味する。同社はこれまで、ブートキャンプが提供するプログラムに首尾よく学生を斡旋できた場合、そのブートキャンプに手数料を請求していた。料金は通常、入学した学生の授業料の10%で、ハリス氏によればその授業料は1万ドル(約115万円)から5万ドル(約577万円)の間になるという。この戦略はインセンティブを揃えているように見えるかもしれない(Career Karmaは学生をブートキャンプに参加させることに成功した場合にのみ利益を得る)が、それは学生斡旋のパーソナライゼーションよりも斡旋を成功させるペースを重視するように圧力がかかるということでもある。企業向けビジネスは、プログラムのマッチングだけでなく、就職紹介サービスを提供することを目的に構築されるため、必ずしも同じ種類の圧力をもたらすことはないだろう。

同社の企業向け事業では、新たに最適な価格戦略を検討するための人材を募集しているとハリス氏はいう。2021年、Codecademy(コーデカデミー)は、自社のサービスを企業向けに販売するために、シリーズDラウンドで同じく4000万ドルの資金を調達した。数週間前には、同じ会社が5億2500万ドル(約607億円)でSkillsoft(スキルソフト)に買収されている

画像クレジット:Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)