米大統領選、最大のテーマはヘルスケア制度―主要候補の提案を検討する

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子供が生まれることになり、私はこの数週間、病院で長い時間を過ごした。妻が重労働にあえぐ間、長時間待合室で座っている私は病院のスタッフを観察する時間があった。

そこで気づいたのはスタッフ駐車場にポルシェをはじめとするスマートなスポーツカーがいかに数多く駐められているかだった。この人々はおそらく6桁(10万ドル以上)のサラリーを受け取っているに違いない。専門家の調査によると、内科医の平均年収は30万ドルだという。

患者、来客の駐車場に目を移すと、ホンダ・シビックやら、フォード・フュージョンやら、その他ありとあらゆる安い車が目につき、医師を始めとするヘルスケア・スタッフと一般アメリカ人との間の所得ギャップがさらに拡大していることに気づかざるを得なかった。

オバマ大統領によりオバマケアと呼ばれる国民皆保険が導入された際に、民間保険会社はそろって「この世の終わりだ」と騒ぎたてたが、実際には保険会社の株価も売上も順調にアップを続けた。これがわが国の大手保険会社の収益増大の実態だ。

保険会社の好調を支える原資はいったいどこから来ているのか? 保険加入者の支払う保険料だ。それは最大25%もアップした。消費者の負担は急増している。有力HMO(病院と健康保険を総合的に提供する健康維持組織)の)カイザー・パーマネンテの調査部門によれば、 2010年以來、保険料の急増とペースを合わせて平均的労働者の控除可能医療費は約3倍になっている。これはインフレ率、給与所得のアップ率の7倍にもなる。

【中略】

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以下は現在大統領選予備選に参加している有力候補のヘルスケアに関する提案を私なりに要約、評価したものだ。

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  • ドナルド・トランプ:驚くべき事実かもしれないが、選挙戦を戦っている候補者の中で、民主党と共和党が妥協可能なもっとも現時的なヘルスケア・プランを提案しているのはトランプだ。トランプはACA〔オバマケア〕を廃止しようとはしておらず、不合理な罰則や税制を取り除こうとしている。トランプの主張は煎じ詰めれば、「誰もが費用を負担できるような万人向けのヘルスケアが必要だ」ということになる。ただしトランプのプランには「全員のためのメディケア」が含まれていない。

  • テッド・クルス:ヘルスケアの観点からするとクルスの主張は驚くべきものだ。クルスはオバマケアを廃止することは可能であり、そうしなければならないと信じている。しかしわれわれはその結果がアメリカの経済と市民生活に及ぼす影響を考えてみなければならない。何万という人々が突如ガンの治療に保険が適用されないと通告され、とても支払えないような巨額の医療費を請求されることになる。たとえ共和党が議会の多数派であってもこのような提案が実施される可能性はゼロに近いだろう。

  • マルコ・ルビオ:長年にわたってオバマケア反対の急先鋒だったことを考えればルビオがオバマケアの廃止を主張しているのは驚くにあたらないだろう。その立場は、ヘルスケアから一切の政府補助を取り除き、その代わりに所得税の還付金を交付すべきだというものだ。また現在連邦政府の権限が強いことを改め州の自主性を強化せよと主張している。保険加入者が現在の適用を維持しながら、オバマケアを廃止するという点で、これが共和党でもっとも抜本的な提案とみられる。

  • バーニー・サンダース:「話がうますぎる」と評される野心的な改革プランが提案されている。カイザーの調査によればオバマケアの国民の支持率は高い 。これに対してサンダースはACA(オバマケア)を政府が直営するメディケアで置き換えることを提案して集票を狙っている。この国民皆保険制度はサンダースの自他ともに認める民主社会主義者としての諸政策の一環だ。もしこの提案が実現すれば最大の被害者となる保険会社、製薬会社からの潤沢な資金提供を受ける反対派の絶好の攻撃目標となりそうだ。また政府が国民のヘルスケアに関与することを快く思わない共和党主流派やリバタリアンも反対するだろう。

  • ヒラリー・クリントン:一言でいえば「現状維持」に尽きる。一時はヘルスケア改革の旗手だったクリントンだが、ゼロからその再演をすることには興味を失っているようだ。ただしACA制定の原動力の一人だったクリントンがその廃止を主張する可能性はない。クリントンが当選した場合、ACAは現状のままと考えられる。

ヘルスケア改革の次世代はインフォームド・コンシューマーか?

Affordable Care Act〔オバマケア〕に対する個人的な感情がどうあれ、この制度がアメリカ史上で初めて医療を万人のものとしたことは認めざるを得ないだろう。出生前の状況や過去の雇用歴がどうあれ、誰もが自分と家族を健康保険に加入させることができるようになった。アメリカ人を全体として見た場合、この新しい医療へのアクエスを否定することはないだろう

【中略】

大統領選の結果がどうであっても、ヘルスケアはアメリカの最重要課題の一つだ。ここで重要なのは費用を負担する一般消費者が医療システムに関する正しい知識を持つこと、あるいは医療システムに関して賢い消費者となるよう正しい教育をすることが維持可能なヘルスケア制度を確立するうえで以前にも増して重要になっていると思われる。

画像: Nemanja Cosovic/Shutterstock (IMAGE HAS BEEN MODIFIED)

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Urban.usの$10Mのファンドは、環境浄化など、より良い都市生活を作り出すスタートアップを育てる

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ベンチャーファンドのUrban.usが今年新たに、1000万ドルのファンドを立ち上げて、今年いっぱい、われわれの都市生活の向上に貢献しようとするスタートアップたちに投資していくことになった。テーマは、都市内移動(mobility, 交通ほか)、ロジスティクス(logistics, 総合物流管理)、環境、ユーティリティ(電気、ガス、上下水道、など)、地方行政など、何でもよい。

今年いっぱいといっても、すでに一部の資金は、スマート(電脳)灌漑のRachioや、電気スケボーOneWheel(上図)のFutureMotion、IoTの冷暖房システムFlairなどに投じられている。

このほか、最初のファンド130万ドルは20社にほぼ同額が割り当てられる。今Urban.usのポートフォリオの中にはHandUpBRCKdashRevivnSkycatchなどがいる。投資対象企業は、シード前の段階からシリーズAまでの層だ。そして二度目のファンドは、それまでに成長した企業や、目に見えて公益に貢献した企業への追加投資になる。

Urban.usの協同ファウンダStonly Baptisteはこう語る: “気候変動への対応がこれからの社会の最大の課題になる。中でも、都市の構造や機構を効果的に変えていくことが重要だ。スタートアップはそれに貢献できる”。

つまり世界の都市は現在、国連の都市開発事業United Nations-Habitatによれば、温室効果ガスの約70%を排出している。2050年には都市の人口が今の倍になっていると予想されるので、都市の排ガス量も増える。そこでUrban.usは、5年以内に約100の都市の状況を急速かつ大規模に変えうると思われる技術に、投資しようとしている。

“世界を良くしよう、というこのファンドの方向性はあまりにも対象範囲が広いが、成否は犠牲の大きさにかかっている”、とBaptisteは述べる。“個人レベルでの考え方も、‘そのために自分は何を犠牲にできるか’になるからね”。

BaptisteがとくにOneWheelを気に入っているのも、自然にそれとなく公益に貢献しているからだ(例: 大きな4人乗り自動車に1人で乗らない)。OneWheelのメインの特長は楽しくて便利なことだが、結果的に公益に貢献する。多くの人が一人での都市内移動に、自動車に代えてこれを使えば、都市内の自動車交通量が減る。そして究極的には、都市のCO2排出量を減らす、とBaptisteは説く。

“従来の一般的な概念では、善行と利益追求は一致せず、社会的役割を担うことと人生を楽しむことは一致しない。この考え方を変えて、両者が一致することを人びとが理解できたら、それが最高だ”、と彼は語る。

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レーザー光で絵文字を投射し車の運転者の注意を喚起するBlazeの自転車用ライトをロンドン市が共有自転車事業に採用

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2年前に本誌主催のHardware Battlefieldコンペに出て話題になったBlazeが、このほど大きなクライアントをつかまえた。それはロンドン市の、自転車共有事業だ。

来年からBlazeは、このSantander Cyclesプロジェクトの自転車に、同社の安全なライトを提供する。11500台の自転車すべてが、Blazeのライトを装着する。でもなぜ、ロンドン市が市の公共事業にこの特殊なライトを必要とするのだろうか?

Blazeの自転車用ライトは、これまでのふつうのライトとは違う。目の前の地面に、グリーンの絵文字を投射する。自転車事故の多くは、車が自転車の前を右折や左折するとき、自転車に気づかないことによって起きる。そこで、車の運転者の視界に不思議な光の絵文字があることによって、「おやっ?」と気づかせ、急ブレーキを踏ませる。

ロンドン市交通局によると、Santanderの自転車でのテスト結果は“圧倒的にポジティブ”だそうだ。それはBlazeのような若いスタートアップにとって、大きな成果だ。

ロンドン市が負担するライトの装備費用(USドル換算)130万ドルのうち、90%近くがSantanderの料金収入から賄われ、残りが交通局の予算から出る。もちろんロンドン市は、来年以降の自転車事故の減少を期待している。

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出典: Wired

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ザッカーバーグ、ゲイツ、孫正義らがクリーン・エネルギーに投資―パリで開催のCOP21と協力

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MicrosoftとFacebookのファウンダーが協力して地球温暖化問題に取り組むことになった。今日(米国時間11/30)、マーク・ザッカーバーグは妻のプリシラ・チャン、Microsoftのファウンダー、ビル・ゲイツらと共にBreakthrough Energy Coalitionを立ち上げたことを発表した

この組織は世界の炭素化合物の排出をゼロにするクリーン・エネルギーの創出を目指している。創立メンバーにはヴァージン・グループのリチャード・ブランソン会長、日本のソフトバンクの孫正義会長、Amazonのジェフ・ベゾスCEO、アリババ・グループのジャック・マー会長、KPCBのジョン・ドーア・ゼネラル・パートナーなど、テクノロジー界の著名人が多数含まれる。

このニュースは、今週パリで国連気候変動会議(COP21)が開催されることにタイミングを合わせ発表された。パリ会議ではオバマ大統領とゲイツとビル・ゲイツがミッション・イノベーション(Mission Innovation)と呼ばれる重要なプロジェクトを発表する予定だ。このプロジェクトではこの5年間に民間セクターが政府の投資と同額を出資し、エネルギーに関する研究を支援する。

Washington Postの記事によると、Mission Innovationにはすでに19ヵ国が参加を決めている。このためクリーン・エネルギーの研究開発のために支出される年間予算は2020年までに200億ドルまで増加するという。

Mission InnovationとザッカーバーグらのBreakthrough Energy Coalitionとは別個のプロジェクトだが、各参加国において緊密に協力していくことになっている。

Breakthrough Energy Coalitionはウェブサイトで「この組織の目的はゼロカーボン化に取り組んでいる国において、公的機関等から生まれる有望かつ規模変更に適したアイディアに投資し、収益化を推進することによって政府投資と民間ビジネスの間のギャップを埋めることだ」と述べている。この組織の特長は柔軟な投資戦略で、公的研究機関などで生まれた有望なアイディアに対し、起業の初期投資からシリーズAに至る資金を提供する。対象となる分野は発電、蓄電、電力移送、産業及び農業における電力利用などを始め、エネルギーシステム全般の効率化だという。

画像:Romolo Tavani/Shutterstock

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ホームレス救援のHandUpがクラウドファンディングで寄付のギフトカード化に成功…Googleの賛助で誰もが一枚試せる

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2年半ほど前にRose Broomeは、サンフランシスコの住民なら誰もが知っている、ある経験をした。彼女は路上にいるホームレスの女性のそばを通り過ぎたが、その一瞬、彼女に何をしてあげたらよいのか、分からなかった。多くの人はそんな考えを次の瞬間には忘れてしまうが、Broomeは忘れなかった。

“みんな、困っているし、途方に暮れている。ホームレスの人たちは、自分が人の目に見えない透明人間、誰からも世話してもらえない人間になった、と感じている”、と彼女は語る。“でも本当は、何かしてあげたいと思っている人がとても多い。何をどうやればよいのか、分からないだけだ”。

Broomeにとってそれは、自分が社会起業家になっていく長い道のりの第一歩だった。彼女はProject Homeless ConnectのようなサンフランシスコのNPOとパートナーして、HandUpという名のクラウドファンディングサイトを立ち上げた。人びとはそこへ行って、ホームレスの人たちを助けるための資金提供ができる。

HandUpは、立ち上げから今日までのほぼ2年で、88万6000ドルを集めた。ほとんどがサンフランシスコでだ。このサイトの上には、おむつのためのお金を求めているママたちもいる*。退役軍人のAdamは、歯の治療費数千ドルを求めている。Gladysというお母さんは、二人の息子を動機不明の自殺で失い、彼女の住居であるバンの修理費を求めている。HandUpのパートナー組織に属するソーシャルワーカーやケースマネージャたちが、そういう人たちのためにお金を配分する。〔*: アメリカの都市のホームレスは、日本よりも多様。〕

でも、これまで寄付者からのリクエストがいちばん多かったのは、毎日のように路上で見かけるホームレスの人たちに、直接渡せるようなギフトカードだった。そこでBroomeらは、上記のProject Homeless Connectで食べ物などと交換してもらえる、額面25ドルのギフトカードの、テスト配布を始めた。

“そんなもの、みんなが欲しがるかしら”、と彼女は自問した。しかし、結果は良好だった。“欲しがらない人もいたけど、それはそれでよい。ほとんどの人が、ギフトカードをもらって喜んでいた”。

今日(米国時間8/27)からそれは一般公開され、ここで登録すると、誰でもカードを1枚もらえる(郵送される)。カードの代金(25ドルの寄付金)は、Googleが負担する。カードはもちろん、町で出会ったホームレスの人に進呈すること。

Broomeによると、ギフトカードの利点は二つある。ひとつは、寄付者の寄付方法が増えること。もうひとつは、ホームレスの人たちがケースワーカーなどと接触するきっかけになることだ。後者の支援活動も、やりやすくなる。

Broomeの将来展望は、市の行政が変化の激しいホームレス人口のための福祉行政を管理するためのツールとして、彼女のサイトを利用することだ。すでに同社は、Marc Benioff(Salesforce)やEric Ries(lean startup運動)、SV Angelなどから85万ドルのシード資金を得ている。

“まだ各都市にホームレス人口の統一的なデータベースがないから、彼らが民間や行政の福祉窓口にやってくるたびに、ソーシャルワーカーたちは何度も何度も彼らにゼロから対応しなければならない。まだ、身近なところにやるべきことがたくさんあるし、もっといろんなものを作らなければならない。最大の目標は個人など民間のお金を配ることだけではなくて、行政が行う福祉もっと効率良く分配できるようにすることだ”、とBroomeは述べている。

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ホワイトハウスで最初のデモ・デー開催―シリコンバレーとオバマ大統領、マイノリティの雇用促進で協力

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「全ての人間は平等に造られている」と述べたアメリカ独立宣言にと共にアメリカン・ドリームというコンセプトが生まれた。

アメリカン・ドリームはベンジャミン・フランクリンの自伝に受け継がれ、ハックルベリー・フィンと共にミシシッピ川を遡り、マンハッタンのギャッツビーの黄色のスポーツカーに象徴され、『セールスマンの死』でその幻滅が表現された。

しかし、「すべての人間は平等に造られている」はずなのにアメリカが奴隷制を維持し、婦人参政権を認めない時代が長く続いた。そして現在でさえ、もっとも重要な産業の一つであるテクノロジー分野でマイノリティーと女性の進出がかくも遅れているのはどうしたことだろう? アメリカン・ドリームというのは機会が誰にも平等に開かれているわけではないことを隠すための煙幕に過ぎなかったのだろうか?

今日(米国時間8/4)、アメリカの最初のアフリカ系リーダーであるバラク・オバマ大統領はホワイトハウスで最初のテクノロジー・デモ・デーを開催し、大勢のスタートアップのファウンダーから親しく創業のストーリーを聞いた。.

このデモ・デーには30チーム90人の起業家が参加した。しかしホワイトハウス・デモ・デーはスタートアップのファウンダーたちがステージに上がって投資家やプレスのメンバーに対してプレゼンをするというシリコンバレーで一般的なスタイルとは違っていた。起業家たちはホワイトハウスの西棟の広間に集められ、そこでホワイトハウスのCTO(最高技術責任者)、ミーガン・スミスFUBUの共同ファウンダー、CEOのデイモンド・ジョンの2人に5分ずつインタビューされた。またこの模様はライブでストリーミング中継された。

このフォーマットはわれわれにはいささか奇妙に感じられた。

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Bounce Imaging のFrancisco AguilarとCarolina Aguilarがスミスとジョンに「投げて撮影するカメラ」をプレゼンしている。画像提供: Whitehouse.gov

全員のプレゼンが終わると、オバマ大統領はデモ・エリアを視察し、Duolingo、Base Directory、Partpicのファウンダーたちと会話した。

デモ・デーを紹介する今朝の記者会見でスミスが述べたところによると、アメリカでベンチャーキャピタルが出資するスタートアップのうち女性が最高幹部に加わっているのは3%、アフリカ系アメリカ人が参加しているのはわずか1%だという。またアメリカのベンチャーキャピタリストのうち、女性は4%しかない。

ホワイトハウス・デモ・デーの目的は女性やマイノリティーのテクノロジー分野への参入を促すところにあった。

スミスによれば、今回選定されたスタートアップはすべて何らかの意味で多様性を促進する要素を含んでいるという。

またデモ・デーでオバマ大統領は連邦小企業庁の「スモール・ビジネス賞」の 受賞者116社を発表した。2015年にはこの賞のために400万ドルの予算が割り当てられており、受賞者は通例5万ドルの賞金を受け取る。

またオバマ政権はAndreessen Horowitz、Intel Capital、Kleiner Perkins Caufield Byers、Scale Venture Partnersなど40社のベンチャーキャピタル(投資総額は1000億ドルを超える)と協力してマイノリティ・グループの雇用を促進していくイニシアティブを発表した。

このイニシアティブは、特定の達成目標や義務を設定することはせず、いわゆるルーニー・ルールを採用することとしている。これはNFL会長のダン・ルーニーによって提唱された「監督を採用する際には必ず1人以上のマイノリティの候補者を加えねばならない」という規則だ。ルーニー・ルールは2003年からNFLに導入され、それ以前にはリーグ全体で7人しかいなかったマイノリティの監督が現在では12.5%を占めるまでに増加した。

硬直的で弊害も多い人種別人数割り当て制度を取らなくてもルーニー・ルールはNFLの多様性を向上させるのに効果を上げている。テクノロジー分野でも同様の成功が期待されるところだ。

シリコンバレーとアメリカ政府は、常に親密な関係であったわけではない。2013年11月にはFDA(連邦食品医薬品局)が DNA分析のスタートアップ、23andMeに対して家庭でDNAサンプルを採取するキットの販売を禁止した。しかし1年後、FDAは大きく態度を変え、23andMeに対しブルーム症候群という遺伝子異常による難病の診断のために遺伝子検査キットの販売を許可した。また今年の3月には政府はシリコンバレーの企業トップがアメリカ政府の定める機密取り扱い資格を取得する率が低すぎるとして不満を表明した。サイバーセキュリティーなど国家の安全保障に重大な影響のある事項について、この機密取り扱い資格を取得しているトップとは政府は自由に情報交換ができる。また先月にはイギリスのデビッド・キャメロン首相が「テクノロジー業界はテロリストとの戦いにもっと協力すべきだ」と述べた。そうした背景を考えると、アメリカ政府とシリコンバレーの企業や有力ベンチャーキャピタルが、多様性の促進に関してこれほど密接に協力するようになったのは驚きだ。

未曾有の盛況に湧くテクノロジー産業が人種や性別の平等性を確保できないとしたら、われわれはアメリカ文学に描写された差別的で利己的な1920年代の風土からさして進歩していないことになる。シリコンバレーと政府が本当に真剣に協力して取り組めばあるいはアメリカン・ドリームを夢のままで終わらせないことができるかもしれない。

取材協力:Nitish Kulkarni

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Google、 プロジェクトLoonをスリランカへ―全土に気球からインターネット接続を提供

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Googleは数多くの野心的な試みを進めているが、インターネット・インフラの整備が困難な地域に気球からインターネット・アクセスを提供するプロジェクトLoonもその一つだ。

今日(米国時間7/29)、スリランカ政府はGoogleのプロジェクトLoonによって全土をカバーする最初の国となろうとしていることを発表した。Googleとの協力により、「スリランカの全国民は安価な高速インターネット接続が利用できるようになる」という。

Google Loonは2013年に発表された後、メディアには断片的な情報しか流れていなかった。今回の発表はスリランカとLoonの双方にとって画期的なものだ。

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スリランカの外務大臣は声明の中で、「スリランカは国民同士で、また外部とも結びつきが強いという誇り高い歴史的遺産 を最先端のテクノロジーによって取り戻そうとしている。数ヶ月後にわれわれは『スリランカは結びついた』と言えるだろう」と述べた。

また声明はスリランカ出身でシリコンバレーのベンチャーキャピタリスト、Golden State Warriorsの共同所有者であるChamath Palihapityaがこのプログラムに参加し、大いに貢献したことを称えている。起業家が出身国にこのような形で貢献するのを聞くのは嬉しいことだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

コミュニティの公益訴訟資金をクラウドファンディングで支えるCrowdJustice、沖縄にもあればよいかも

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イギリスの総選挙後の新政権はHuman Rights Act(人権法)を破り捨てようとしているし、司法扶助の予算はすでに削られている。逆説的に今は、コミュニティによる法的扶助を一層充実していくための、絶好の好機だ。

国連の弁護士だったJulia Salaskyがロンドンで立ち上げたCrowdJusticeは、人びとが起こしたいと願っている“公益のための”訴訟を、クラウドファンディングで支えようとする。つまり訴訟資金をKickstarter方式で集めることによって、お金のない人でも公共の正義のためのたたかいができるようにする。

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Salaskyは次のように説明する: “たとえば地域の病院の廃止決定をコミュニティが合法的に廃案にさせたいと思ったとき、そのための法廷闘争資金をCrowdJusticeで募集することができる。コミュニティの誰かが、人権問題で不当扱いを受けているときなども、有志が訴訟のために立ち上がることができる。政権が変わるたびに司法へのアクセスはますます困難で費用のかかるものになっているが、クラウド(crowd, 人びと)の力でその流れを食い止めたい”。

“この前の連立政権のときもそうだったが、今度の保守党政権でも国民に対する法的援助の予算は大幅にカットされるだろう。また、人びとの政府の決定に対抗する能力を抑えるための、法律が作られるだろう。だから、弱者だけでなく一般の人びとも、司法へのアクセスがますます困難になる。とくに、重要だけれど解決に費用を要する問題が、無視されがちになる”、と彼女は語る。

CrowdJusticeで訴訟資金を集めるのが好適、とSalaskyが考えている問題は、バードサンクチュアリの保全のようなきわめてローカルな問題や、逆に、拷問や(政府による)大量監視のような、社会の全体に関わる問題だ。
“これらの問題は、実質的な原告の数が数十万から数百万にのぼることもありえる。しかし今は、それだけのコミュニティが資金を集めて立ち上がり、公益のためにたたかっていくための方法がない。今は、重要な公益的問題でも、勇敢な個人の頑張りと限られた資金能力に頼っている。だから私たちは、司法のシステムをハックして、コミュニティが自分たちの未来のために投資できるようにしたい”。

司法システムをハックする、というと聞こえは良いが、でも、公益のためやコミュニティの利益のために訴訟資金や活動資金を集めるというアイデアは、時代を超えて当たり前のことのようにも思える。それなのに、なぜ今まで、イギリスでは誰もそれをやろうとしなかったのか?

“法律の世界にクラウドファンディングが浸透するのに、こんなに長い時間がかかったなんて、とてもおかしい。CrowdJusticeの売り込みで走り回ったとき、法律家たちは異口同音に、‘今までそれがなかったなんて信じられないね’とか、‘何百年も昔からみんなそれを考えていたんだよ’、と言う。法律の世界には、ふつうの人たちが司法にアクセスする方法に関して絶望感と諦めがあり、とくにここ数年は、政府の施策や予算の面でもますます無視される存在になっていた”、とSalaskyは述べている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

TechCrunch Disrup NY:大統領候補、カーリー・フィオリーナ、テクノロジーによる政治の変革を訴える

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今日(米国時間5/5)、ニューヨークで開催中のTechCrunch Disrupのステージに共和党から大統領候補に名乗りを挙げたカーリー・フィオリーナが登場した。 「アメリカン・アイドル〔人気リアリティーショー〕に人々が毎週携帯電話から何回投票するか皆さんは知っているだろうか? 市民、特に若い市民がアメリカの大統領に対してアメリカン・アイドルに対するのと同様に対話するようになったらすばらしいはずだ」とフィオリーナは問いかけた。

テクノロジーの世界でフィオリーナは1999年から2005年にかけてHPのCEOを務めたことで知られている。大統領選に立候補するにあたってフィオリーナは、「現代のテクノロジーによって政府を再構想する」ことをモットーに掲げている。最近、ストリーミング・アプリのPeriscopeを使って若い有権者にそのことを訴えた。「テクノロジーはディスラプトを起こす力だ。われわれは政治の現状を打ち壊すのにテクノロジーの力を用いるべきだ」とフィオリーナは語った。

「シリコンバレーでの経験は世界がどう動いているかについて深い洞察を与えてくれた。私はそれををホワイトハウスで活かしたい」という。

テクノロジーはディスラプトを起こす力だ。われわれは政治の現状を打ち壊すのにテクノロジーの力を用いるべきだ

— カーリー・フィオリーナ

ただし、フィオリーナの在任期間中、HPでは大規模なレイオフが行われ、Compaqとの合併に失敗し、売上は大幅にダウンした。また彼女は気難しいリーダーで、ウォルター・ヒューレット(HPの共同ファウンダーのウォルター・ヒューレットの息子)を含む一部の取締役と激しく衝突したと言われている。実否はともあれ、女性CEOは経営スタイルについてこのような批判を受けることが多い。

しかしフィオリーナは「HPを停滞からリーダーへと活気づけた。政治では事実はあいまいだが、事実と数字はきわめて明白だ」と自賛した。

フィオリーナは2005年に大きな話題になった取締役会による自身の解任の理由を、一部の取締役の情報リーク、不況、そして変革への抵抗によるものだと説明した。「現状を打ち破り変革を主導しようとすると敵を作ってしまう。これは人間の本性によるものだ」という。

事実当時は他のテクノロジー企業のCEOにとっても環境は非常に厳しかった。Fiorinaはドットコムバブルの絶頂の頃にCEOに就任し、2000年代初期のバブルが破裂した期間を通じてHPを指揮しなければならなかった。とはいえ、Fiorinaの経営者としての実績は「最悪のもののひとつ」だとする声は強い。

「現在はテクノロジー・バブルの再来だと思うか?」という質問に対してフィオリーナは「環境が〔当時と〕同じだとは思わないが、多少の類似点はある。テクノロジー産業は多少泡だっているかもしれない。しかし私が問題にしているのは物理的世界からデジタル世界への30年から40年はかかるはずの変貌だ」と述べた。

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その長期的課題のひとつが最近のFCC〔連邦通信委員会〕によるインターネット中立性を担保する裁定だ。テクノロジー業界を始めとして多くの人々が大手インターネット接続業者による差別的なシステム―金を払えば高速接続が提供される―の構築を許すべきでないとしているのに対して、フィオリーナはFCCの裁定は政府による自由競争への介入だと主張する。「FCCが作った400ページにも上るインターネットへの規制をすべて白紙に戻す」つもりだと述べた。

フィオリーナは自身のテクノロジー産業での経験がホワイトハウスで必須のものだととして、「政府はテクノロジー産業のイノベーションを規制しようとすべきではない」と述べた。

フィオリーナは自身のサイトとソーシャルメディアで昨日大統領選に立候補すると正式に発表した。しかしHPでの経営者として実績への疑問、混戦模様の共和党の大統領予備選など今後の展望には楽観を許さないものがある。お得意のはずのテクノロジー分野でもcarlyfiornia.orgというドメインの取得に失敗し、自称「フィオリーナにレイオフされた怒れる市民」にいたずらサイトを作るのを許してしまった。

「関連ありそうなドメイン名を全部買うわけにはいかない。しかし買っておけばよかったかも」とフィオリーナは述べた。

Fiorinaはテクノロジー産業での経験が自分を大統領にもっともふさわしい候補にしている固く信じている。 最後にTechCruchのサラ・レインに「副大統領になるつもりはあるか?」と尋ねられ「私が男だったらそういう質問をするだろうか?」といったんは問い返した後、「私は大統領以外の職を目指していない。私は勝利するつもりだし、その職にふさわしい能力があると考えている」と答えた。

〔原文に全インタビューのビデオあり〕

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

米連邦通信委員会、厳格なネット中立性を定めた新規則を採択―ISPはコモンキャリヤに分類

今日(米国時間2/26)、アメリカ連邦通信委員会(FCC)は、予想通り、ネット中立性を定める新たな規則を委員の投票により採択した。民主党任命のトム・ウィーラー(Tom Wheeler)委員長と2名の委員の3名が賛成し、共和党任命の委員2名は反対した。

今回のFCCの新規則案は採決の直前に重要な修整が行われたことで注目を集めていた。これは当初案に有料で優先権を買い取る抜け穴になり得る重大な弱点があることをGoogleが指摘したことに対処したものだった。ネット中立性に対するGoogleの立場は、この大きな貢献で明白だろう。

オンライン・マーケットプレイス、EtsyのCEOは投票に先立って、「インターネットのネット中立性を守るためにFCCが鮮明な線を引いたことを賞賛する」と述べた。

FCCではミニヨン・クライバーン(Mignon Clyburn)委員が最初に発言し、「アメリカを形作る人々はFCCの新規則に満足するはずだ」と述べた。クライバーン委員は今回の採決を「FCCとして3度目に重大な試み」と位置づけた。クライバーン委員はまた、これまで報道されていたとおり、Googleが指摘した抜け穴を防ぐ修整を含めて、当初案の改定に同委員が積極的に関与したことを認めた。同委員はまた料金に関する新規則に対して「懸念をもつ必要はない」と述べた。

ジェシカ・ローゼンウォーセル(Jessica Rosenworcel)委員は「インターネット経済は世界の羨望の的だ。われわれアメリカがこれを発明した。これに続いてアプリ経済がまさに台頭の時期を迎えている。インターネットはわれわれの時代の印刷機であり、町の広場である」と述べた。

インターネットはブロードバンド業者が支配するにはあまりにも重要な分野だ

— FCC Chairman Tom Wheeler

ローゼンウォーセル委員は、今回の採決に先立ってパブリック・コメントに公衆から膨大な数の意見が寄せられたことを指摘し、「400万のアメリカ人がコメントを書いた。…ネット中立性の解釈に関する意見の相違はそれとして、その決定の過程は民主主義の活きた見本であり、アメリカ人が等しく支持すべきものだ」と述べた。

共和党任命のアジット・パイ委員は「FCCがインターネットの自由に政府の規制を持ち込んだ残念な結果だった。FCCは正当な手続きに違反するオバマ大統領の介入を許した」と述べた。パイ委員は「新規則は問題を解決しない。それどころか新規則そのものが最大の問題だ」と強く非難した。

同じく共和党任命のマイケル・オライリー(Michael O’Reilly)委員は特にFCCがブロードバンド接続業者を1934年通信法2条(Title Ⅱ)に定めるコモンキャリヤ(公益通信事業者)に分類したことに反対した。 「ネット中立性を保護する規則などは一切必要ない。それより私がFCCが2条を改悪しようとしていることに強い懸念を覚える。これは巨大かつ不当な越権行為だ」と述べた。同委員はまたFCCが2条の一部条項の適用を控えるとしたことを非難した。

ウィーラー委員長は、「政府であれ民間事業者であれ、インターネットへの自由かつオープンなアクセスを支配するようなことがあってはならない。インターネットはブロードバンド業者が支配するにはあまりにも重要な分野だ」と述べた。同委員長はまた「新規則は政府がインターネットを密かに支配しようとする試みだ」とする非難はナンセンスだと述べ、「米国憲法修正第1項が言論の自由を支配する試みでないのと同様、新規則はインターネットを支配する試みではない」と反論した。

新規則に関しては反対勢力からの訴訟が予想される。ウィーラー委員長はインターネット接続事業者を公益事業と分類するために2条(Title II)を適用したが、事業者は長年この事態を恐れていた。つまりFCCでの可決は大きな前進ではあるものの、アメリカにおけるネット中立性はまだ安全ではない。また議会でも数週間前から激しい議論が始まっている。

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〔日本版〕アメリカの1934年通信法(Communications Act of 1934)の2条(Title Ⅱ)はCommon Carrier(公益通信事業者)について定めており、FCCが各種の規制を事業者に強制する際にもっとも強力な手段となる。これまでインターネット接続事業者の地位については「事実上のコモンキャリヤである」という認識は広がっていたものの、AT&Tその他の巨大ISPの強い反対により、法的には明確にコモンキャリアであると位置づけされていなかった。

新規則はISPを2条に定めるコモンキャリヤに分類するもので、その影響は極めて大きい

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+