ニューヨークの全世帯に光ファイバーを敷設しなかったVerizonを市が協定違反で訴訟…‘解釈’の違いか?

【抄訳】
ニューヨーク市がVerizonを、全市に光ファイバー接続を提供するという2008年の市との契約に違反したとして訴訟した。一部の住民に競争性のある妥当な料金でテレビ受信やインターネットサービスが提供されない、と市は主張している

市長のBill de Blasioはこう声明している: “Verizonは850万のニューヨーク市民の信頼を裏切ったことの結果に直面すべきである。Verizonは2014年までに市の全世帯が光ファイバーサービスFiOSにアクセスできるようになる、と約束した。すでに2017年であるが、われわれはまだ待っている。どんなに強力な大企業であろうとも、ニューヨーク市民への約束を破ってそのままで済むことはありえない”。

Verizonは、すでにニューヨーク市の220万の世帯にFiOSを提供できる、と主張しているが、Ars Technicaによると、ニューヨーク市の世帯数は310万なので、それでは、残る100万近くの世帯がVerizonのファイバーネットワークにアクセスできないことになる。

月曜日(米国時間3/13)にニューヨーク高位裁判所に提出された訴状でニューヨーク市は、協定によってVerizonは2014年までに“光ファイバーケーブルを地下導管と地上電柱によってすべての住居建造物の前または後部に設置する”、となっている、と述べている。

市によると、しかしVerizonはその協定を守らなかっただけでなく、申込者への約束の日時に設置が間に合わなかった例が多く(数万ぐらい)ある。それらのニューヨーク市民は、目的とするテレビジョンサービスを享受できなかった。それだけでなくVerizonは、申し込みの受け付けができなかった例すらある。それもまた、市との協定の内容に違反している。

【中略】

一方Verizonはニューヨーク市の情報技術と電気通信局長官Anne Roestに宛てた書簡で、市との協定はこれまで銅線が使われていた同じルートに光ファイバーネットワークを敷設するという意味、と理解しており、市の、全世帯という解釈は非現実的である、と反論した。

同社の法務および公共政策担当VP Craig Sillimanの言い分はこうだ: “市の街路や歩道を貴市が要求する規模で掘り返せば車両と歩行者の交通に巨大かつ不必要な障害をもたらし、多数の住民と企業に不便と困苦を強いる”。

この係争の起源は、ニューヨーク市が2015年に発表した、Verizonの光ファイバー敷設状況に対する監査報告書にある。

情報開示: 本誌TechCrunchはAOLが所有し、AOLはVerizon傘下の企業である。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

トランプ大統領、マクマスター陸軍中将を安全保障補佐官に―未来志向の学者肌だが大のスライド嫌い

2017-02-22-national-security-advisor-mcmaster

マイケル・フリンの突然の失脚から1週間後、トランプ大統領は新しい国家安全保障担当補佐官を任命した。大統領は各方面との関係修復を図るつもりなのか、新補佐官は、少なくとも前任者よりも多くの人々に受け入れられそうだ。

ハーバート・マクマスター陸軍中将は戦士にして学者とももっとも珍しい種類の軍人とも評されてきた。セルゲイ・キスリャク駐米ロシア大使と会談していたことに非難が高まる中で辞任したフリンが断固たる信念のタイプだったのに対してマクマスターは正反対だ。

マクマスターはよく「軍を代表するフューチャリスト」と呼ばれるが、テクノロジーに対する態度は複雑で、単純な擁護者ではない。マクマスターはテクノロジーが戦争さえ解決するという「テクノロジー万能の傲慢」に陥ることを強く批判する。マクマスターは2013年のニューヨークタイムの意見コラム(op-ed)欄に「テクノロジーによって迅速、安価に勝利をもたらすことができるから戦争をその政治的本質から分離できるというコンセプトは強く疑うべきだ」と書いている。この記事、The Pipe Dream of Easy War〔安楽椅子の戦争〕では次のように続く。

アフガニスタンやイラクの戦争はリモコンで操作することはできない。予算削減の圧力とテクノロジーの魅惑は一部に「われわれが知っていた戦争は終わりを告げた」という主張を呼び起こしている。先進テクノロジーは戦争に勝つための不可欠の要素ではあるが、テクノロジーを賞賛するあまり、精密攻撃であるとか外科手術的作戦であるとかテクノロジーによって敵を局限できるという幻想は軍事の本質を混乱させ、より大きな戦争目的の達成を妨害するものだ。

テクノロジーに対する深い考察はマクマスターの著書、Dereliction of Duty〔責任の放棄〕という議論を巻き起こしたものの全体として高い評価を受けた本にも反映されている。この本は ベトナム戦争の拡大に関して当時のアメリカ指導部、特にジョンソン大統領、マクナマラ国防長官、統合参謀本部の責任を分析している。マクマスターのこうしたアカデミックな気質は前任者のフリンと鋭い対象をなしている。フリンはイデオロギー的であり、反イスラム過激派感情が強すぎると批判されていた。

陸軍の改革に関して、 2015年4月のシンポジウムでマクマスターは軍事テクノロジーに依存しすぎることから生ずる危険について講演した。「われわれが直面することになる最大のリスクは、必ず長引くことになるという戦争の本質に矛盾するコンセプトの拡大だ。戦争の複雑な本質を単純化して将来の戦争を攻撃対象を選択する演習のようなものにしてしまおうという動きをわれわれは目撃している。次世代テクノロジーは次の戦争をこれまでの戦争と本質的に異なるものにしてくれるに違いないという考え方だ。

その数ヶ月後、ロンドンにおける防衛問題のカンファレンスでマクマスターはテクノロジーの進歩は伝統的なマンパワーを代替するものではないと述べている。派手な新しいテクノロジーは短期的なメリットしかもたらさないとして次のように強く警告した。「将来の戦争では[次世代テクノロジーが]決定的役割を果たすというのは幻想にすぎない。…テクノロジーはわれわれが敵に優越する要因のごく一部だ。しかもテクノロジーは敵もわれわれと同様に使いこなすことになる可能性がもっとも高い要因だ」

マクマスターはもちろんテクノロジー恐怖症ではない。しかし楽観的なテクノロジー万能論をを強く拒否する。マクマスターは「将来の戦争からその政治的本質、人間性、不確実性、勝利への決意を切り離そうとすることは間違いだ」という。

もう一つ興味深いのはマクマスターが心底PowerPointを嫌っていることだ。 「PowerPointは〕状況を理解しコントロールしているというありもしない幻想を作り出すので危険だ」とマクマスターはニューヨーク・タイムズで述べている。「ある種の問題はブレット印を打ってリスト化できはしない」というのはトランプ大統領にも念を押しておいてもらいたい。

トランプ政権でマクマスターがどういう役割を果たすことになるのかを知るにはまだ時間がかかるだろう。トランプの最側近サークルというよりその外側のサークルの一員に落ち着くのかもしれない。しかしマクマスターが著書でも示したような安全保障問題に関する国家の指導部の責任を厳しくチェックする態度は今後とも重要なものとなるだろう。

元アメリカ陸軍将校であり中東専門家のアンドルー・エクサムはAtlanticに次のように書いている。

マクマスターの著書で特に注目すべき点は、ケネディー、ジョンソン政権における国家安全保障政策の決定がきわめてずさんに行われていたという指摘だ。この傾向は特にケネディー政権で顕著であり、政策決定は大統領側近のごく少数のグループに委ねられていた。ここでは本来大統領を補佐すべき堅牢な政策チェックの過程が失われていた。

マクマスターのようなアメリカ軍を代表する思想家にとって、外部の意見に耳を傾けず側近政治に傾斜する大統領は批判の対象になるはずだ。トランプがマクマスターの考えを受け入れるか、それとも多くの共和党人脈の有力者同様、高い地位に就けて塩漬け状態にしてしまうのかは今後を見守る必要がある。

どういう役割を果たすことになるにせよ、ジェームズ・マティス国防長官、ジョン・ケリー国土安全保障長官、そしてハーバート・マクマスター大統領安全保障担当補佐官といういずれも尊敬される軍人だった3人が新政権の安全保障政策を形づくることになる。

画像: National Infantry Museum/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ニューヨークのテクノロジーハブの設計構想を市長のBill de Blasio自らが明かす…テク世界への参加基盤の拡大を目指す

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ニューヨーク市長のBill de Blasioと彼のチームが、25万平方フィートのテクノロジーハブUnion Squareの設計構想を発表した

12月に発表されたこのハブには、スタートアップのための5万8千平方フィートの“自由スペース”や、3万6500平方フィートのテクノロジー教育訓練センターがある。教育訓練事業は、ニューヨーク市コンピューター科学教育財団や、テクノロジー教育企業General AssemblyとPer Scholas、成人再教育/職業教育団体FedCapとCode to Work、クイーンズ自治区のテクコミュニティCoalition for Queensなどの手により展開される。

アンカーテナントのCivic Hallは、1000名収容のイベントスペースを運用する。そのコンセプトは、ファウンダーでCEOのAndrew Rasiejによると、“テクノロジーは公共の利益を増進する”だ。

De Blasioは、アドテック企業AppNexusのニューヨーク本社で今日(米国時間2/17)の午後行われたイベントで、ハブの設計構想を明らかにした。そして、それに対する彼の期待も語った。

Tech Hub food hall

ニューヨーク市のテック・コミュニティは、“この国でもっとも人びとの多様性があり”、そして“この国でもっとも社会を意識したテック・コミュニティだ”、と賞賛した市長はテクノロジーハブについて、“ますます多くの*ニューヨーカーたちが、この、ふつうというレベルを大きく超えているすばらしいテック・エコシステムの恩恵に与れるようにしたい”、と述べた。〔*: 再就職を求める成人、女性、マイノリティ、障害者、性的少数者など多様な層のテク社会参加。〕

“それこそが、民主主義を守ることである”、という締めくくりの言葉には喝采が起きた。“この言葉の意味は、みなさんにもおわかりいただけたと思う。情報の公開性と、自由なディベートと、どんな人でも迎え入れる社会を求める熱気が、この都市(まち)にはある。このすばらしいハブで私たちがすることも、そんな大きな熱気の一部だ”。

名前のとおりこのハブは、ニューヨークのUnion Squareにできる。今は電子製品のお店PC Richard & Sonsがあるところだ。建設は2018年に始まり、2020年にオープンする。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

トヨタとGM、アメリカ議会で自動運転の規制緩和を求める予定

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自動運転が実用化されるためには根本的な規制緩和が必要だ。少なくともトヨタとGMは議会でそう述べる準備をしている。アメリカ国家道路交通安全局(NHTSA)の自動運転に関する法規および昨年提案された自動運転車の利用と実験に関するガイドラインを評価するために、議会で公聴会が開催される。

トヨタとGMは自動運転の実用化と普及に対して現行の各種規制は悪影響を及ぼしていると証言する予定だ。Reutersが確認したというGMの証言予定の書面によれば、自動運転の導入の遅れは「〔自動運転によって〕防止可能であった数千件もの死亡事故の原因」となっているという。トヨタのToyota Research InstituteのCEO、Gill Prattは下院公聴会で「連邦政府は運輸省が承認しているテストの範囲を超えて〔自動運転〕システムの導入に積極的に努力することが重要だ」と証言する予定だ。

Lyftの公共政策担当副社長、Joseph Okpakuもここで証言する。Lyftはかねてからの目標である「アメリカの都市内で自動運転車によるタクシー業務の実験を年内に開始する」ことを可能にするよう訴える。Volvoの政府関係を担当する副社長は同社のDrive Meシステムを本国スウェーデンに加えてアメリカでも実施したいとしている。ところがアメリカにおける規制運用の不透明さからこの計画の実施がストップしているということだ。

今回自動車メーカーが強く問題視しているのは、現行の2500台規制だ。これはNHTSAがメーカーに課している自動運車の台数の上限で、自動運転車の実用化に向けて大きな足かせとなっている。もちろんこの他にも多数のハードルが存在するが、NHTSAのガイドラインについて自動車業界、中でもトヨタはこれを強く批判している。トヨタの北米地区テクノロジーとイノベーション政策の責任者、Hilary Cainは 昨年のNHTSが新たなガイドラインを提案した際、きわめて大きな問題をいくつか指摘した。

月曜日にゲイリー・ピーターズ上院議員(民主党、ミシガン州)、ジョン・スーン上院議員(共和党、サウスダコタ州)も「自動運転テクノロジーのイノベーションを前進させる」ことを目的とするイニシアチブを共同で進めていくことを発表した。トランプ政権で新たに任命されたエレーン・チャオ運輸長官も業界と協調していく姿勢を明らかにしている。これには自動運転の普及に務めること、消費者の安全とプライバシーを尊重しつつ、メーカー側の創意工夫に悪影響を与えないような新たな規制の枠組みを検討することが含まれる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ジェイ・クレイトンSEC委員長候補がシリコンバレーに歓迎される理由

2017-01-27-high-five

ウォールストリートの有力な弁護士、ジェイ・クレイトン( Walter “Jay” Clayton)はまだSEC〔証券取引委員会〕委員長への就任を正式に承認されていない。しかし共和党が多数を占めるアメリカ議会の勢力バランスを考えれば、クレイトンが承認されることはほぼ間違いない。

これはスタートアップのファウンダー、その投資家にとって歓迎されるニュースだ。最近のSECの動向に関心を強めていた人々はクレイトンの任命で証券市場においてかなりのフリーハンドを得られることになりそうだ。

クレイトンについて念のためにおさらいしておくと、彼は「インサイダー中のインサイダー」だ。今月初め、ドナルド・トランプ次期大統領(当時)がクレイトンをSEC委員長候補に選んだときのDealbookの記事によれば、「取引をまとめる達人」だという。 ワシントンの有力法律事務所、 Sullivan & Cromwellでクレイトンは長年にわたり公開、非公開企業のM&Aを担当してきた(ゴールドマン・サックスに対する助言を含む)。 また新規上場の専門家でもある(Alibabaの2014年の上場を担当)。2008年の危機〔リーマン・ショック〕の際には、サブプライム抵当に関連してクライアントと司法当局の和解を処理した。

企業の政治戦略と投資の専門家、ブラッドリーー・タスクは「こうした背景がシリコンバレーに対して持つ意味は大きく分けて2つある」と言う。タスクはUberを含め多数のスタートアップが当局の規制と戦うのを助けてきた。タスクによれば「クレイトンはテクノロジー企業についてある程度の経験がある。これはシリコンバレーで歓迎される資産だ」という。

タスクは「AlibabaのIPOを担当したというのはもちろんウィルソン・ソンシーニで日頃から取引をまとめていたのとは違う」と言う。ウィルソン・ソンシーニはスタートアップを担当する法律事務所としてシリコンバレーで長年トップの地位を占めてきた。「しかしそれでも〔Alibabaの上場は〕このビジネスに経験があることを意味する。経済全体に与える影響にも理解があるだろう」。

タスクによればさらに重要な点は「クレイトンは特定の政治信条を追求する活動家ではないという点だ。つまり証券取引の規制は強化されるべきだという信念の持ち主ではない」。

この点は退任したメアリー・ジョー・ホワイト前委員長と鋭い対照となる。ホワイトは1年近く前にシリコンバレーを訪問し、ファウンダー、投資家に対して、非公開企業の評価金額が急騰していることにSECは「懸念を抱いている」と警告した

昨年10月にわれわれも書いたとおり、SECは血液検査のスタートアップ、Theranosの不正を機にシリコンバレーのエコシステムにに介入を強めようとしていた。クレイトンはこれに対し、SECを効果的に運営することに専念し、アクティビストとしてSECの権限拡大を追求することには消極的とみられる。投資家とファウンダーの関係は相互の信頼に任されることになるだろう。

市場外取引のマーケットプレイス、EquityZenのファウンダー、シュリラム・バシャムは「クレイトンのSECは『シリコンバレーのことはシリコンバレーに任せる』という立場を取るだろう。ただし現在進行中の事件にどう影響するかはわからない」と述べた。昨年SECが調査を開始したと報道されたケースには、菜食主義者向け食料品のHampton Creek、オンライン小口金融のLendingClub、マイクロ・ベンチャーファンドのRothenberg Venturesなどがある(SECは進行中の調査に関してはコメントしないのが常だ)。「しかし将来を考えると、投資家は自分自身でリスクを判断せよ、という方向になりそうだ」とバシャムは見ている。

最近のSECは問題あるスタートアップの調査に力を入れ過ぎているという批判があった。クレイトンはこうした権限拡張の方向を是正するだけでなく、同時に、資本の調達、形成をバックアップするような規則を作ることも期待されている。最近のSECでは資本形成を助ける適切なルールづくりがなおざりにされているというのが共和党の主張だった。

バシャムはクレイトンのSEC委員長就任でクラウドファンディング・プラットフォームも含めてM&Aのペースは加速する可能性が高いと考えている。クラウドファンディングでは現在、企業が調達できる金額の上限は1年あたり100万ドルとされているが、SECは500万ドルにアップすることを準備している。

バシャムはさらに適格投資家(accredited investor)の定義もさほど遠くない将来、変更されると予想する。現在の定義は「純資産100万ドル以上(自宅不動産を除く)あるいは年間収入20万ドル以上」となっているが、バシャムは「適格投資家の範囲を拡大する方向で改正が行われるだろう」という。

結局問題になるのは誰が何のためにどういった改正を望むのかだ。

この点に関してタスクは「クラウドファンディング・プラットフォームは『さらに規制緩和を』と要求するだろう。しかし彼らには政治力が欠けている。テクノロジー業界も全体としてあまり関心がない。本格的なベンチャーキャピタリストや起業家はクラウドファンディングには興味を示さない。小口投資家はまだしばらく待つことになるだろう」と考えている。

画像: Bryce Durbin/TechCrunch

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

イーロン・マスク、トランプの国務長官人選を評価―「レックス・ティーラソンはいいかもしれない」

WASHINGTON, DC - JANUARY 11:  Renda Tillerson (L) listens during the confirmation hearing for her husband and former ExxonMobil CEO Rex Tillerson (R), U.S. President-elect Donald Trump's nominee for Secretary of State, before Senate Foreign Relations Committee January 11, 2017 on Capitol Hill in Washington, DC. Tillerson is expected to face tough questions regarding his ties with Russian President Vladimir Putin.  (Photo by Alex Wong/Getty Images)

月曜日にTeslaとSpaceXのCEOはロッキード・マーチンやアンダーアーマーなど他の製造業のトップと共にホワイトハウスでトランプ大統領と会った。その翌日、マスクはトランプ大統領が国務長官にエクソン・モービルの元ECO、レックス・ティラーソンを指名したことを支持するツイートを投稿した。

マスクが―よりによって―ティラーソンに好意的な評価を下そたことに驚くものも多かった。40年以上化石燃料を生産するエクソン・モービルで働いてきたティラーソンはマスクの世界観にもっとも遠い人物のはずだった。しかしマスクはEconomistのツイートに答える形で、ティラーソンの国務長官は「悪くない人選かもしれない」と述べた。

@TheEconomist こう言えば驚かれるかもしれないが、私はEconomistに同感だ。レックス・ティラーソンは優れた国務長官になる可能性がある。

ひどく直感に反すると思える判断の理由を尋ねるフォロワーからの質問にマスクはこう答えた。まずエクソンでの仕事ぶりからして「ティラーソンはおそろしく優秀だ」という。またグローバル政治を深く理解している点も賞賛した。別のツイートではティラーソンは少なくとももともそうでないと分かるまでは仕事ぶりを判断する余裕を与えられるべきだと述べた。

@danahullt レックスは経営者として非常に優秀だ。地政学の理解も深い。自分のチームを勝たせる術を知っている。今や彼のチームはUSAだ。

ティラーソンは以前、エクソンのCEO時代に地球温暖化対策としてもっとも有効だとして炭素税の導入を支持したことがある。しかしエクソンはニューヨーク州から気候変動に関して公衆を誤らせたという疑いで調査されている。ティラーソンの批判者は炭素税支持は単にエクソンに対する批判の矛先をそらせることが目的で実効を伴う支持ではななかったのではないかとしている。

レックス・ティラーソンの指名は上院外交委員会で承認されることが確実となっており、正式な国務長官への就任にさらに一歩近づいた。しかしティラーソンはエクソンで長年ロシアを担当しており、12月のTIMEの記事によれば、2011年にはロシアとの間で北極圏における掘削権とテキサスおよびメキシコ湾岸の石油へのアクセスをバーターする取引をまとめたとされる。

マスクは月曜日以前にもドナルド・トランプと会っている。昨年末、当選後のトランプとテクノロジー・ビジネスのリーダーとがニューヨークで懇談したときのことだ。その後トランプは戦略政策フォーラム(Strategic and Policy Forum)のメンバーとしてペプシコのインドラ・ヌーイ、Uberのトラヴィス・カラニックと並んでイーロン・マスクを指名している。マスクは投資家向けQ&AセッションでTrumpが化石燃料に強気なのは必ずしも代替燃料の将来にとってマイナスとは限らないと説明した。

SpaceXとTeslaはどちらもほとんどの製造工程がアメリカ国内にある。アメリカ製造業の復権を後押しするために国内製造業への規制を緩和するというトランプ大統領の政策はマスクにとって有利なものとなる可能性がある。しかしマスクがこのように新国務長官について楽観的な見通しを述べるのを聞くと居心地悪く感じるし奇妙でさえある。ティラーソンの経営者としての経歴のほとんどすべてはTeslaともSolarCityとも正反対なはずだ。

画像: Alex Wong/Getty Images/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

トランプ新政権はホワイトハウスのメディア・ルームにSkype記者4人分を追加する

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ショーン・スパイサーの大統領報道官としての仕事始めの一つはトランプ新政権が今週中に4人分のいわゆるSkype記者をプレス・ブリーフィングに追加するという発表だった。

この追加は従来ホワイトハウス内でクローズドで行われてきたプレス・ブリーフィングを広く一般に公開しようという試みだ。スパイサー報道官によれば、ワシントンDCから50マイル(80km)以上離れた場所に勤務し、ホワイトハウスのブリーフィング・ルームへの物理的参加を許可されていない記者に順繰りにSkypeによる参加の機会が与えられるという。

スパイサーはプレスに対して報道官としての最初の仕事の一つとして大統領就任式をめぐる騒動についての声明を行った。 スパイサーは多少の皮肉も込めて「ご存知のとおり、われわれには非常に大きな注目が集まっている。関心を持つ人々の数は多い。そこでこのブリーフィング・ルームをさらに開放する試みを実施することを発表したい。今後、全国のジャーナリストにホワイトハウスのブリーフィング・ルームへの出席のチャンスが得られる」と述べた。

〔スパイサー報道官の発言は41分以後〕

当然予想される質問は、VoIPを通じて参加できるジャーナリストの範囲、審査や選択の方法だが、スパイサー報道官は質問をカットして詳細にわたることを避け、次のように述べた。

〔Skypeの利用によって〕アメリカ全土の多様なグループを代表するジャーナリストが出席できる。ワシントンに往復ないし常駐する便宜が得られないジャーナリストも参加できるようになり、この分野の開放が進むものと期待している。ワシントン周辺のジャーナリストのみに限られないオンライン・プラットフォームの利用できることはわれわれすべてにとって便益となるだろう。

ホワイトハウス・ブリーフィング・ルームといえば、ジャーナリストとしてエリート中のエリートが集まる場所として知られている。Skypeを経由する4人分の席はこのエリートの牙城に部外者が参加できる良い機会といえるだろう。しかし新政権はすでにメディアからの激しい激しい批判を集めており、これは今後も続きそうだ。Skypeシートの追加も含めてホワイトハウスがメディアとの関係をどのように扱っていくのか目が離せない。

画像:: Matt Wade/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Amazon、米国内で10万人を新規雇用へ―トランプ次期大統領、早くも功績を強調

Tech CEO's meets with President-elect Donald Trump at Trump Tower December 14, 2016 in New York . / AFP / TIMOTHY A. CLARY        (Photo credit should read TIMOTHY A. CLARY/AFP/Getty Images)

ドナルド・トランプが正式にアメリカ大統領に就任するまでまだ1週間ほど先あるが、トランプ政権は早くもアメリカ国内の雇用増加の実績を誇ろうとしている。これまでのところで目立つのはインディアナ州に所在する空調設備大手のCarrierと日本のテレコムの巨人、SoftBankの計画だ。

今回、職の創造に関するトランプ政権のヒットは意外なところからやってきた。今週、Amazonは、向こう1年半でアメリカ国内で10万人を新規雇用する計画を発表した。Amazonによれば、同社は過去5年間に15万の新たな職を作ってきたという。

たしかに巨大なスケールではあるが、さまざまな分野でのAmazonの急速な成長を考えるとある程度予想できた数字だ。プレスリリースでAmazonのCEO、ジェフ・ベゾスは新規雇用は主としてフルフィルメントセンター、ロジスティクス、クラウドテクノロジー、機械学習の分野で実現されるだろうと述べた。

トランプ・チームはこれまでAmazonに対して批判を繰り返してきたが、今回は素早く歓迎の意向を発表した。アメリカ国内における職の確保は次期大統領が選挙戦を通じて公約としていた重要項目だ。

今日(米国時間1/12)、ショーン・スパイサー次期大統領報道官はメディア向けカンファレンス・コールで次のように述べた。

今回のAmazonの発表に先立って、次期大統領はテクノロジー業界のトップ経営者グループと会談し、アメリカ国内における職の確保と増大に留意するよう要請している。次期大統領はAmazonの意思決定になんらかの役割を果たせたと考えて満足している。

スパイサーが指しているのは最近ニューヨークのトランプ・タワーで開催された会談だ。これにベゾスも出席したが、トランプは選挙戦を通じてAmazonのビジネスを批判し続けた。トランプはベゾスとAmazoはの「大型の独禁法違反」や「租税回避」を行っていると非難し、「大統領に当選したなら厳正に対処する」と脅していた。

ベゾスは(多少の皮肉も含まれていただろうが)「トランプについては様子を見る必要がある」としていた。

その後ベゾスとトランプという大富豪の間にはロマンスが芽生えたのかもしれない。ベゾスはトランプとの会談で和解的な(少なくとも希望を交えた)会話を試みたようだ。会談後、プレスに次のように語っている。

次期大統領ならびに政権移行チーム、テクノロジー業界のトップとの今日の会談はきわめて生産的なものだったと思う。次期政権がイノベーションを政策の重要な柱とするという見解に私は同感だ。イノベーションはテクノロジー産業のみならず農業、製造業、インフラその他あらゆる面でアメリカの雇用を大きく増加させるだろう。

もちろんAmazonは新規雇用の理由として同社の成長も指摘するだろうが、計画発表のタイミングはトランプ・チームにとって追い風となった。われわれはAnazonに対してスパイサー次期報道官の説明にあった「大統領が果たした役割」が実際どのようなものであったか問い合わせている。

〔日本版〕トップの写真はドナルド・トランプとテクノロジー業界のリーダーの会談を撮影したもの。テーブル正面にトランプ次期大統領、向かって左にペンス次期副大統領、Facebookのシェリル・サンドバーグ、Googleのラリー・ペイジ、テーブルの角にAmazonのジェフ・ベゾスが見える。トランプの向かって右隣は政権移行チームの重要メンバーでこの会談の人選をしたといわれるベンチャー・キャピタリストのピーター・ティール、その右がAppleのティム・クック、Oracleのサフラ・カッツ。会談にはTeslaのイーロン・マスク、Microsoftのサティヤ・ナデラ、IBMのジニ・ロメッティーらも参加している。Googleからはエリック・シュミットも出席した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

次期運輸長官エレーン・チャオが上院公聴会で証言―親テクノロジーの姿勢鮮明

WASHINGTON, DC - JANUARY 11:  Elaine Chao testifies during her confirmation hearing to be the next U.S. secretary of transportation before the Senate Commerce, Science and Transportation Committee as her husband, Senate Majority Leader Mitch McConnell (R-KY) (2nd L) looks on, in the Dirksen Senate Office Building on Capitol Hill January 11, 2017 in Washington, DC. Chao, who has previously served as secretary of the Labor Department, was nominated by President-elect Donald Trump.  (Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

ドナルド・トランプ次期大統領が次期運輸長官候補として指名したエレーン・チャオ(Elaine L. Chao)は水曜日(米国時間1/11)、上院公聴会で運輸テクノロジーの将来からFAA〔連邦航空局〕の役割に至るまで多数の質問に答えた。

チャオは自動運転車、インフラ、ドローンなどイノベーションとテクノロジーに関連する多数の質問に答えた。

上院商業委員会のジョン・スーン議員(共和党、サウスダコタ選出)は開会の言葉を述べ、「次期運輸長官はアメリカの運輸システムのイノベーションにおいて連邦政府にリーダーシップを発揮させるユニークは役割を担う」と述べ、重要な分野としてV2Vコミュニケーション〔自動車など輸送手段間の通信〕自動運転車、ドローンなど各種のUAVを挙げた。

チャオは「アメリカの輸送システムは、陸上、航空ともにテクノロジーの進歩に追いついてない」とし、国際的な競走で敗北する危険性を指摘した。「われわれの役割は何よりも利用者の安全の確保が優先される」としたが、同時に進歩を妨げるボトルネックとなっている不必要な規制を発見し、適切な見直しを行う方針を明らかにした。

チャオはの運輸インフラ整備に関して民間セクターからの投資を「活用していく」」と述べた。「政府と民間が提携することにより金融機関、年金ファンド等が持つ数兆ドルにも上る資金を多くの政府プロジェクトに注入し、活かすことができる。これらの事業を政府がすべてを独力で実行することができないのは周知のとおりだ」と述べた。

チャオは乗用車、バス、トラックなどの自動運転車とドローンがアメリカのビジネスに与える巨大な可能性を指摘し、「連邦政府の役割はまだほんの幼年期にある」と述べ、連邦政府の役割は「安全かつ効率的なテクノロジーの実現の障害ではなく触媒となる」ことが目的だとした。この発言は自動運転やドローンのテクノロジーを早急に商用利用しようと努力している民間企業にとって間違いなく追い風となる。事実、こうした運輸系企業はチャオが運輸省長官候補に指名したれたときから熱狂的支持を明らかにしていた。

WASHINGTON, DC - JANUARY 11: Elaine Chao arrives for her confirmation hearing to be the next U.S. secretary of transportation before the Senate Commerce, Science and Transportation Committee in the Dirksen Senate Office Building on Capitol Hill January 11, 2017 in Washington, DC. The wife of Senate Majority Leader Mitch McConnell (R-KY), Chao, who has previously served as secretary of the Labor Department, was nominated by President-elect Donald Trump. (Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

2017年1月11日、運輸長官指名承認のための上院公聴会に臨むエレーン・チャオ(撮影:Chip Somodevilla/Getty Images)

【略】

チャオはゲリー・ピーターズ議員(民主党、ミズーリ州)の質問に答えて、「自動運転テクノロジーに関連して自動車産業と密接に協力していくことを前向きに考えている」とした。この分野において公的規制がテクノロジーの進歩に追いついていないのではないかというピーターズ議員の質問に対してはこう答えている。

この分野におけるテクノロジーの発達は消費者の受容や理解を明らかに超えていると思われる。国として社会としてこうしたテクノロジーに親しみ、受け入れることが強く求められている。【略】〔その実現のためには〕広く国民的な議論が期待される。この面でも〔議会と〕協力していきたい。

ジム・インホフ上院議員(共和党、オクラホマ州)はドローンについて質問し、規制がテクノロジーの発達や商用利用を妨げているのではないかと質問した。チャオはこれに対してもアメリカがドローン・テクノロジーで世界をリードするためには「広く国民的な議論が起きることが必要だ」と述べ、積極的姿勢を見せた。【略】

WASHINGTON, DC - JANUARY 11: Freshmen members of the Senate Sen. Sen. Maggie Hassan (D-NH) (L) and Sen. Catherine Cortez Mastro (D-NV) prepare for the Senate Commerce, Science and Transportation Committee's confirmation hearing for Elaine Chao to be the next U.S. secretary of transportation in the Dirksen Senate Office Building on Capitol Hill January 11, 2017 in Washington, DC. Chao, who has previously served as secretary of the Labor Department, was nominated by President-elect Donald Trump. (Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

新たに当選した上院議員が運輸長官指名公聴会に出席。。左がマギー・ハッサン(Maggie Hassan、民主党、ニューハンプシャー)、 キャサリン・コルテス・マスト(共和党、ネバダ)(撮影:Chip
Somodevilla/Getty Images)

マギー・ハッサン上院議員(民主党、ニューハンプシャー州)は「自動運転テクノロジーが普及し、健康上、経済上などさまざまな理由から自動車を運転することができない人々に一日も早く自動車による移動能力が提供されるようになることを期待している」と発言を締めくくった

コロラド州はこれまで自動運転テクノロジーの発達に大きな役割を果たしてきた(コロラド州であ今年に入ってからも自動運転セミトレーラーによる貨物輸送が行われている)。コリー・ガードナー上院議員(共和党、コロラド州)はスマート運輸テクノロジーについて質問し、テクノロジーの発達を妨げるような「面倒な規制」が連邦レベルで採用されることがないよう要求した。【略】

Delphi's autonomous Audi demonstration vehicle is one car testing on Nevada's roads.

Delphiの自動運転Audi車のデモ。 この車両はネバダ州の行動でテストされた。

チャオはキャサリン・コルテス・マスト上院議員(民主党、ネバダ州)の質問に答え、ネバダを訪問して州政府が自動運転テクノロジーの発達において取っているリーダーシップを実地に見ることを約束した。ネバダ州において数多く自動運転テクノロジーのテストやデモが行われたことは今月開催されたCESコンベンションでも記憶に新しいところだ。【略】

エド・マーキー上院議員(民主党、マサチューセッツ州)は自動車間コミュニケーションとプライバシーの問題に関して質問した。自動車ますます「つながったデバイス」になるにつれてハッキングされるリスクが上昇する。また自動車がユーザーの移動パターンその他、車載センサーから重要な個人的情報を収集し、交換するようになっている。マーキー上院議員は消費者のプライバシー保護における連邦政府が果たすべき役割を質問した。【略】

Mercedes-Benz's drone van is one example of how UAVs might push towards greater commercialized use.

メルセデス・ベンツが展示した配送用自動運転バン。自動運転車、ドローンのテクノロジーの商用利用は経済を活性化する可能性がある.

テッド・クルス上院議員(テキサス州選出、共和党)はSpaceXやBlue Originに代表される民間宇宙企業についても質問した。前任のフォックス運輸長官は辞任に当ってのメモで商用宇宙航空について「触れてさえいない」とクルス上院議員は指摘し、チャオに対し、運輸長官としてこの産業分野に取り組む姿勢を質問した。チャオは「この分野についてはまだブリーフィングを受けていない。指名が承認された場合にはクルス議員と協力していく用意がある」と答えた。

チャオはジョージ・W・ブッシュ政権で労働副長官、ジョージ・H・W.・ブッシュ政権で労働長官を務めており、ワシントン政治に関して十分な実績がある。チャオは台湾の台北生まれ。8歳で家族とともにアメリカに移民した。チャオはケンタッキー選出のミッチ・マコーネル共和党上院議員(現在上院多数党院内総務)の妻。

運輸系テクノロジー企業、UberやLyftはトランプ次期大統領がチャオを指名したことを歓迎している。昨年11月にチャオが指名された際、両社はこの選択をa歓迎する声明を発表している。

〔日本版〕エレーン・チャオ(Ellane Chao)の繁体字表記は趙小蘭とされる。Wikipediaでは「イレーン・チャオ」と表記されているが、マスコミを含めて「エレーン・チャオ」表記の方が多いためこちらを用いた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ザッカーバーグの「今年の決意」は政治―Facebook CEOのままでの公職就任期間に2年の縛りはない

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マーク・ザッカーバーグがFacebookの経営者でありながら公職に就ける期間は2年間に限られていない(この点について当初誤った解釈が報道されたが、われわれは記事を訂正した)。SEC〔証券取引委員会〕に提出された文書を精査すれば、ザッカーバーグは十分なパーセンテージの株式を保有しているかあるいは取締役会の承認を得るかすれば無期限に公職に就くことができる。

昨日(米国時間1/3)、ザッカーバーグは「今年の決意」を発表した。それによると2017年のザッカーバーグの目標は全米50州すべてを回って人々の声を直接聞くことだという。先のSEC提出文書とこの決意の発表によって「ザッカーバーグは真剣に政治に取り組もうとしている」という観測がメディアに一気に広まった。

2年間という期限がないのであれば、ザッカーバーグはこれまで考えられていたよりはるかに重要性の高い公職に任命、あるいは選出されることが可能になる。任期が2年未満と限定されていては、たとえ閣僚に任命されても表面的な影響しか与えることができない。

もちろん選出されるためには有権者の信頼が欠かせない。最近のフェイク・ニュース事件はこの点について信頼を揺るがすものだった。一部にはザッカーバーグの政治への関心を―慈善活動への巨額の出資にも関わらず―権力の利己的な追求だと考えるものもいるだろう。また一部の公職は歴史的に営利活動から隔離される必要がある。つまりザッカーバーグはFacebookの経営から手を引かねばならない。しかしドナルド・トランプ次期大統領は大統領の地位にあって保持可能な営利企業の持ち分について制限を緩和しようとしている。

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ザッカーバーグとブラジル大統領(上)、イスラエル大統領(左)、メキシコ大統領(右)

訴訟文書が明らかにしたザッカーバーグとFacebookの取締役であるマーク・アンドリーセンとのやり取りについての解釈の混乱はBloombergの記事に端を発しているようだ。株主総会で投票権のないクラスC株を新設する(つまりザッカーバーグがほぼすべての持ち株を慈善事業に移管してもなおかつFacebookの議決権を握り続けることができる)という案に取締役会メンバーを賛成させるためにはどうすればよいかをザッカーバーグとアンドリーセンは密かにテキスト・メッセージで話し合ったとされる。結局、ザッカーバーグはFacebook株のほとんどをザッカーバーグ夫妻が創立した慈善団体Chan Zuckerberg Initiativeに寄付した。

この過程でZuckerbergは 「経営者交代に基づく混乱を最小限に止める」ためのいくつかの施策に同意した。簡単にいえば、万一ザッカーバーグが死亡しあるいはCEOとして経営が継続できない障害を負い、解雇され、自発的に辞職した場合、現在1株につき10議決権のクラスB株にもとづくザッカーバーグのFacebookに対する絶対的支配権をどう取り扱うかを決めたものだ。こうした事態が生じた場合、ザッカーバーグ本人はすでにFacebookを支配していないので、前述のクラスB株は1株につき議決権1票のクラスA株に転換される。これは高い経営能力を持った人物にとってFacebookのCEOの地位の魅力を高めるためだ。

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ザッカーバーグ、サンドバーグとインドのナレンドラ・モディ首相

しかしザッカーバーグはこの「日没自動発動条項(sunset trigger)」に大きな例外を設けることを認めさせた。つまりザッカーバーグは公職に就く場合にはCEOを自発的に辞職ないし休職してもFacebookの議決権を失わないといいうものだ。この条項に付随する条件は次の2項目のいずれかの場合だ。

  • (2016n年)6月にザッカーバーグが公職に就く場合についてFacebookの社外取締役と話し合い、この合意に署名した際に所有していたFacebook株式の30%以上を彼が引き続き所有していること

あるいは

  • ザッカーバーグが所有する株式が30%未満であって、Facebookの社外取締役の過半数の承認を得るかあるいは公職に就く期間が2年未満である場合

Facebookの広報担当者はこの解釈が正しいことを認めた。法律用語で書かれた原文は以下のとおり【略】

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簡単にまとめればこうだ。もしザッカーバーグが十分なFacebook議決権を握っているなら、自由に公職に就くことができる。議決権を持っていない場合は取締役会の承認を必要とする。訴訟で明らかになったザッカーバーグとアンドリーセンのやり取りで言及された「2年間のしばり」はたしかに議論はされたが、実際に署名された文書の条件には含まれなかった。

Bloombergの先月の記事はザッカーバーグの公職就任に2年間という限度があると紹介はしたものの、その限度が適用されない場合については述べていない。Fortune、Vanity Fair、The Guardianを含め他の記事はすべてBloomberg記事の引用、再掲だった。TechCrunchも昨日同様の記事を掲載したが、われわれは不整合に気づいて修正した。

この混乱が正されれば、ザッカーバーグが単にソフトウェア・サービスだけでなく、政府の公職を通じて世界を変えようとしていることの真剣さが分かってくる。ザッカーバーグはたびたびFacebookを「町の広場」、つまり良識を保ちながら多様な声に耳を傾けることができるプラットフォームとして語ってきた。

Zuckerberg leads a town hall meeting at Facebook's headquarters with President Obama in 2011

2011年にFacebook本社にオバマ大統領を迎えて「タウンホール・ミーティング」を主催するザッカーバーグ。

ある意味で、Facebookはすでに国だ。ザッカーバーグはアメリカ全土をめぐり、人々から直かに声を聞き取る共感のツアーを計画している。ザッカーバーグは「私の仕事は世界を結びつけ、すべての人々に声を与えることだ。今年、私はこうした声をもっと直かに聞き取りたい」と昨日書いた。。これは支援者と握手したり赤ちゃんにキスしたりするお馴染みの選挙キャンペーンを思い起こさせる。過去数年、ザッカーバーグは世界を旅し、インド、ブラジル、日本などの重要な国の指導者と会談してきた。今年はアメリカ国内を重点とするのは理にかなっている。

FacebookのCOO、シェリル・サンドバーグは結局政府の職に戻るのではないかという観測が流れている。その一方で、ザッカーバーグの政治を通じて「世界を変える」という野心は2年間という制限の枠に収まるものではないこともはっきりした。ザッカーバーグは波乱も多いが繁栄している18億人のオンライン国の事実上の大統領だ。3億2000万人の現実の国の政治でも大きな成果を収めることができるのではないか?

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

トランプ次期大統領の戦略政策フォーラムにUberのカラニック、TeslaとSpaceXのマスクも参加

SARASOTA, FL - NOVEMBER 07:  Republican presidential nominee Donald Trump holds up a rubber mask of himself during a campaign rally in the Robarts Arena at the Sarasota Fairgrounds November 7, 2016 in Sarasota, Florida. With less than 24 hours until Election Day in the United States, Trump and his opponent, Democratic presidential nominee Hillary Clinton, are campaigning in key battleground states that each must win to take the White House.  (Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

ドナルド・ J・トランプ次期大統領が設置する戦略政策フォーラム(Strategic and Policy Forum)が2人のスーパー経営者を選んだことが判明した。もっとも高い能力と成功への強い意思を持つ経営者のリストにテクノロジー界からトラビス・カラニックとイーロン・マスクが加わった。

今日(米国時間12/14)の発表によれば、カラニックとマスクの2人は非上場の巨大投資ファンドThe Blackstone Groupの創立者スティーブン・シュワルツマンが議長を務めるフォーラムに参加する。なお今回の発表ではPepsiCoのCEO、会長のインドラ・ヌーイもメンバーに加わっている。

今月初め、トランプ次期大統領のが設置を決めたこのフォーラムのメンバーにはアメリカ・ビジネスのビッグネームが並ぶ。 GMのトップ、メアリー・バラ、 JP Morgan ChaseのCEO、会長のジェイミー・ダイモン、資産運用会社BlackRockのCEO、会長ラリー・フィンク、Walt Disney Companのボブ・アイガー、Boston Consulting GroupのCEO、リッチ・レッサー、 IBMの会長、ジニ・ロメッティなどに加え、現役を退いていたGEの元CEO、ジャック・ウェルチ、ボーイングの元会長、ジム・マクナニーの名前もみえる。

フォーラムがどの程度ひんぱんに開かれるのかは明らかではないが、最初の会合は2月に予定されているという。

カラニックは声明で「このフォーラムのメンバーとなり、次期大統領にUberの乗客、ドライバー、運営している450以上の都市に影響を与えることがらについて意見を述べられることを楽しみにしている」と述べた。

SpaceXはマスクに任命を確認したがそれ以上のコメントは避けた。

マスクとカラニックの任命は、今日この後ニューヨークのトランプ・タワーで予定されているテクノロジー業界のトップとの会談の直前に発表されたことが興味深い。この会談にはOracleのサフラ・カッツ、Appleのティム・クック、Alphabetのラリー・ペイジ、Facebookのシェリル・サンドバーグ、Microsoftのサティヤ・ナデラらが参加する。

Kalanickが参加を決めたのはUberが株式上場を控えてそのプロセスをできるだけ円滑に進めたいという戦略的狙いがあったかもしれない。Twitterを活用し株式市場を操れるトランプとの衝突は避けたかったに違いない。一方、Muskの動機についてははっきりしない。

SpaceXとTesla Motors(7年前のクリーンテック・ブームの際のベンチャーキャピタルの投資先で生き残ったほぼ唯一のスター企業)の創業者でトップであるマスクは選挙期間中はトランプの激しい批判者だった。

マスク以外にも、特に地球温暖化に関して、トランプと見解を異にする参加者は多い。

エネルギーの専門家、ダニエル・ヤーギンは『石油の世紀―支配者たちの興亡』(The Prize)で ピューリッツァー賞を受賞しており、『探求――エネルギーの世紀』(The Quest)もベストセラーとなったが、代替エネルギーに関して詳しく述べている。Wal-MartのCEO、ダグ・ミロンはオバマ大統領の政策を支持する活動を行ってきた。またフィンクとアイガーは民主党の選挙運動への献金者だ。

現実を見れば、この委員会はビジネスの世界に向けた超党派的な飾り窓だろう。シリコンバレーが重視する課題についてのトランプ政権の態度は閣僚級人事をみれば明らかだが、テクノロジー系の任命はまったくない。

次期政権の閣僚は、たとえばエネルギー省長官の候補、リック・ペリー・テキサス州知事は以前その解体を主張していた(本人は忘れているのかもしれないが)。教育省長官候補のベッツィ・デヴォスは公立学校が非効率的だと主張してきた。国務長官候補のレックス・ティラーソンは非常に親露的人物だ(ロシア政府はハッキングによって統領選挙に影響を与えたことを疑われている)。

気候変動、教育、インターネットのセキュリティーはいずれもシリコンバレーが重視する課題だが、トランプ政権の閣僚候補はいずれも戦略政策フォーラムのメンバーの多くとは政策的にも倫理的にも反対の立場を取っている。

このような事実からすると、戦略政策フォーラムの提言がさほどの重みを持つとは考えにくい。

今月初めにこのフォーラムの設置を発表した大統領政権移行チームは、「重要な課題に関して…官僚主義を排し、率直かつ超党派的な意見を大統領にインプットする」ことが目的だと述べている

画像: Chip Somodevilla/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

トランプ次期大統領、12月14日にニューヨークでテクノロジー・ビジネスのトップとミーティング

New York City - USA - April 27 2016: Republican presidential candidate Donald Trump gestures while speaking to press after his five-state super Tuesday win

IT起業家、ベンチャーキャピタリスト転じて大統領政権移行チームの重要メンバーとなったピーター・ティールとのブロマンス〔男の友情〕はさておき、選挙期間中のドナルド・トランプとテクノロジー界の関係はかなり緊張したものだった。シリコンバレーは全体として対立候補を支持しており、逆にトランプ候補はAppleからAmazonのジェフ・ベゾスに至るまでテクノロジー企業のトップに手荒い言葉を浴びせた。

しかし11月に選挙結果が出てからはAppleのティム・クックも和解と統一を呼びかけており、トランプも腰を下ろしてテクノロジー・ビジネスのトップ・リーダーたちと話し合う機会を持とうとしているようだ。ピーター・ティール、大統領主席補佐官に決まったレインス・プリーバス、女婿で顧問のジャレド・クシュナーは連名でテクノロジー企業のトップをラウンドテーブル形式でのミーティングに正式に招待した。会合はニューヨークのトランプタワーで12月14日に開催される。

このニュースはPoliticoが報じ、USA Todayが確認したが、参加者、議題も含めて具体的な内容はほとんど明らかになっていない。しかし最近のトレンドを考えれば、サイバー・セキュリティー、ネット中立性はもちろん職をいかに増やすかも議題となると考えていいだろう。

選挙期間中にも目立った次期大統領の論争的な性格からして、招待された人物と同時に招待されなかった人物、企業の名前も同様に重要だ。われわれは関係者にコメントを求めているので新たな情報が得られ次第アップデートする。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

仕事の未来へようこそ

Marty Linn, General Motors manager of advanced technology and principal engineer for robotics, shakes hands with Robonaut 2 (R2), a humanoid robot developed by GM and NASA during a nine-year collaboration that also led to development of the RoboGlove, an exo-muscular device that enhances strength and grip through leading-edge sensors, actuators and tendons that are comparable to the nerves, muscles and tendons in a human hand. GM is licensing the RoboGlove intellectual property to Bioservo Technologies AB, a Swedish medical technologies company that will combine RoboGlove with its owner patented SEM glove technology.

【編集部注】著者のBrooks RainwaterはNational League of Cities(全国都市同盟)のシティソリューションおよび応用研究センターのディレクター 。共著者のNicole DuPuisはNational League of Cities(全国都市同盟)のシティソリューションおよび応用研究センターのインフラ担当シニアアソシエイトである。

情報技術、ロボット工学、人工知能の進歩が急速に進展する中で、現在労働力の転換が起こり、それが続いている。既に私たちが気が付いているように、現在の傾向が労働力の変化を不可逆的に加速させるときに、答えられなければならない疑問は、利益を広く共有し困難を和らげるためには私たちは何をすればよいのだろうか、というものである。

都市はしばしば、新技術が大量採用される際のトレンドサイクルをリードする。私たちは、新技術による失業が、新技術による革新と同じくらい古い話題であることを知っている。しかしながら米国の都市は、テクノロジーの成熟がローカル経済の全て、全ての労働者、そして全ての職業に多大な影響を与える時代に突入しているのだ。

自動化は技術革新の繁栄を支え、ビジネスにコストダウンをもたらすが、既存の仕事も変えてしまう。過去数十年にわたり、労働力の要素はますます自動化されるようになってきている。

最近は、食品サービスから工場のフロア、その他に至るまで、沢山の例を見ることができる。例えばEatsa人間とのやりとりが全く不要の新しいファーストフードレストランだ。客はタブレットを経由して注文し、用意された食品を壁に設置されたガラス棚から受け取るのだ。

Amazonのフルフィルメント・ウェアハウスではRobo-Stowを採用している。大きな在庫を動かす6トンのロボットアームと、Kiva Systemsが製造した箱移動ロボットたちが働いている。Kivaの導入以来、何かを見つけて箱に詰め出荷するまでの平均時間は1時間半から15分に短縮された。Amazonはまたその新しい Amazon Robotics部門を通して、自動化されたドローンと人工知能に多大な投資を行っている。

こうした初期の例は、エキサイティングなものではあるが私たちが失うものが自動化される仕事以上のものであることも明らかにした。多くの場合、企業は効率性の恩恵を受ける一方で、多くの消費者が依然として必要としている個人的な人間関係を失う可能性があるのだ。この方程式の人的側面はあらゆる理由で大切なものである — 仕事の中で最も重要なものだ。

プロジェクトに協力し、若いビジネスマン。

写真提供:Getty Images.

こうした中で、生計が危機に瀕している人びとがいる。過去20年間で、先進的なロボットが急速な技術の改善を受け、能力と可用性の両方が大きく変化している。学者たちは、2025年までに食品準備、ヘルスケア、商業清掃、そして老人介護の7から12パーセントのタスクがが商用ロボットによって実施可能になると予測している。

これが意味することは、高コストの都市化されたエリア ‐ ハイソで高給取りのホワイトカラーを既に引き付けている場所 ‐ における労働者階級が、更に追い詰められていくということである。それらの仕事の多くは自動化の煽りを受けやすく、私たちは多くの人たちが労働の場を離れ、都市の外に出ていくのを見送ることになるだろう。

労働者階級とサービス部門の仕事だけが、リスクに晒されているわけではない。人工知能と機械学習の進歩が「知識労働」の自動化をも可能にし始めているのだ。

進歩が現在のペースで進めば、2025年までに全世界で自動化ツールは、事務、顧客サービス、販売、教育、保健、科学技術、IT、財務、法律部門などに影響が及び、1億1000万から1億4000万人の人々の作業を行うことができるようになるだろう。

表面的な価値を見れば、これらの技術的進歩は非常に有意義であり、商業的相互作用に革命をもたらし、これまでとは異なる可能性を広げていく。

私たちにはまだ、オートメーション技術と人工知能が作り出す、新たな潜在的な仕事の種類はまだ分かっていない。それは技術を前にして想像を絶するものだ。しかし私たちは、訓練、教育を通じた準備と、究極的には柔軟性を奨励することが、私たちの都市での成功につながることを知っている。

人間とロボットが一緒に取り組んでいます。

写真提供:Getty Images.

私たちNLC(全国都市同盟)のFuture of Work報告書は、労働力の大きな変化に直面したときに抱える課題と機会について検討している。どこで、いつ、特定のジョブが消滅するかを予測することは困難だが、2025年以降に私たちが目にする仕事は、現在のものとは随分違っているものだろう。

ある者にとってはメリットは素晴らしいものになるだろうが、システムレベルでは課題はとても大きなものになるだろう。テクノロジーは、労働者間の不平等を悪化させ、経済のほとんどの分野に何らかの影響を与える。

これらの潜在的な緊張と激動は都市に集中するだろう。技術的実現可能性だけに左右されるわけではなく、自動化の採用は、技術のコスト、交換される労働のタイプ、そして重要な点だが社会的に受け入れられるかどうかに依存している。

これらの技術が仕事や仕事全体に取って代わるようになるにつれて、反応は楽観的な受け入れから怒り、欲求不満、さらには政治的な激変にまで及ぶようになるだろう。

社会への利益がより均等に分散する可能性があるのか、あるいは最近の歴史的傾向に沿って、収入ピラミッドの最上部に集中していくのか。私たちが行う政策の選択は非常に重要だ。

ネガティブな反応は、賃金や雇用を失う人々の間でより局所的に起きる可能性がある。一方で、ポジティブな反応は、より低い価格とより大きな選択の恩恵を受ける消費者の間で、より広範に広がる可能性がある。

私たちが政策上の解決策を模索しているところで、幅広い議論が始まる必要がある。これらは、ポータブルベネフィット(フリーランスのための持ち歩ける福利厚生制度の概念)から、労働力の再訓練、ベーシックインカムなどに及ぶ可能性がある。明日の労働力のために構築される、こうした種類の拡張された社会基盤は、これまでの職を失った労働者だけではなく、新しい方法で働く人々を支援するために必要となる。

同時に、この拡大された観点は、成長のための積極的な環境を作り出すことができる。これらの選択肢に焦点を当てることで、これらの急激な変化にただ流されて対応するのではなく、むしろ崩壊に先回りをすることができるようになる。

社会への利益がより均等に分散する可能性があるのか、あるいは最近の歴史的傾向に沿って、収入ピラミッドの最上部に集中していくのか。私たちが行う政策の選択は非常に重要だ。都市の指導者たちは、積極的に、公平さを第一の目標とする、より包括的なコミュニティを創造しようとしている。したがって、私たちすべてが、目の前に未来を早急に構築するのを手助けする場は都市にある — そしてそれを真に導くことが、指導者の責務なのだ。

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(翻訳:Sako)

ピーター・ティール、トランプの政権移行チームに自らのFounders Fundの幹部を引き抜く

CLEVELAND, OH - JULY 21:  Peter Thiel, co-founder of PayPal,  delivers a speech during the evening session on the fourth day of the Republican National Convention on July 21, 2016 at the Quicken Loans Arena in Cleveland, Ohio. Republican presidential candidate Donald Trump received the number of votes needed to secure the party's nomination. An estimated 50,000 people are expected in Cleveland, including hundreds of protesters and members of the media. The four-day Republican National Convention kicked off on July 18.  (Photo by Joe Raedle/Getty Images)

ピーター・ティールが自分の選んだ人材に対して信義に厚いのは有名だ。逆もその通りで周囲の人材はティールに忠実だという。シリコンバレーでは何十人もの人々がティールの創立したベンチャーキャピタル、Founders Fundやヘッジファンド、Clarium Capitalで働いたことがある。ティールはClariumのマネージング・ディレクター、Ajay Royanと共に後期のスタートアップを対象とするベンチャーキャピタル、Mithril Capitalの共同ファウンダーでもある。

そこでティールがFounders Fundのプリンシパルの一人、トレイ・スティーブンス(Trae Stephens)をドナルド・トランプ次期大統領の政権移行チームに引き抜いたのは不思議ではない。ティール自身はチームに2周間前に正式参加している。Bloombergによると、スティーブンスはトランプ政権そのものに加わるわけではないが、国防総省および安全保障関連の政策立案とスタッフの任命を助けることが期待されているという。

スティーブンスの移行チームへの任命は奇妙であると同時に予想通りという二面性を持っている。 ジョージタウン大学で中東の比較政治学を学びながら首都ワシントンで下院議員のインターンを務め、卒業後はLexisNexisでデータ・アナリストを2年間務めた。その後Founders Fundが支援するPalantirのデータアナリストを経て2013年の12月にFounders Fundに加わっている。

スティーブンスはともかく優秀なのだろう。その点でティールを始めとするトランプの政権移行チームのメンバーには似たところがある。トランプの娘婿、ジャレド・クシュナー、息子のエリック、ドナルド・ジュニア、娘のイバンカ・トランプ(ジャレドの妻)、ヘッジファンドのマネージャー、アンソニー・スカラムッチ(Anthony Scaramucci)、外科医のベン・カーソン(Ben Carson、住住宅・都市開発省長官のポストを打診されているが本人は迷っているもよう)などの人々と同様、スティーブンスも優秀ではあろうが、政府機関でこれというほどの公職に就いた経験がない。

しかしティールは「アメリカ政府(Palantirの売上の40%を占める)は破綻している」と繰り返し述べており、新しい政治の必要性を説いている。ということは政権の要職にティールやスティーブンスのようなアウトサイダーをあてるのも予期したとおりかもしれない。

さらに予想どおりなのは、ティールがトランプの政権移行チームのメンバーに選んだ人間がティール自身の会社の幹部であるという点だ。ティールは人を見る目に自信を持っており、採用した人物を信頼しているという。一方でシリコンバレーではティール自身のサークル以外からはトランプを支持する人材を見つけるのが難しいという事情も伝えられている。

Washington Postの記事によれば、ティールはトランプ政権の要職について「編集可能な候補者リスト」をiPad上に持ってるということだ。このリストにはビジネス・ノンフィクションのベストセラー、『ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか』の共著者、ブレイク・マスターズやPalantirの共同ファウンダー、ジョー・ロンズデール、連続起業家で若者の起業を応援するThiel Fellowshipのエグゼクティブ・ディレクターのジャック・エイブラムが含まれるという。

Washington Postの記事によればシリコンバレーではトランプを嫌っており、トランプに接近することはビジネスに不利益になる可能性があるとしてティールを評価しない人々も多いという。

〔日本版〕シリコンバレーのベンチャーキャピタルにおける「プリンシパル」はアソシエートとパートナーの中間の職位。パートナーに昇進する可能性の高い地位だとされる。

画像:: Joe Raedle/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ベンチャーキャピタル、Tuskがトランプ政権の政策予測メモ配布―ビジネスへの干渉は減る

ORLANDO, FL - NOVEMBER 2: Republican presidential candidate Donald Trump speaks during a campaign event at the Orlando Amphitheater at Central Florida Fairgrounds in Orlando, FL on Wednesday November 02, 2016. (Photo by Jabin Botsford/The Washington Post via Getty Images)

Tusk HoldingsはTusk Venturesと Tusk Strategiesの親会社で、Uber、FanDuel、Handy始め有力スタートアップ多数の最初期からの投資家として著名だ

巨大で多様なポートフォリオを持つこのベンチャーキャピタルが資金を投じているポートフォリオ企業すべてを対象にメモを配布した。

これはトランプの大統領当選がビジネスに与える影響を詳細に分析したもので、メモはさまざまなビジネス分野ごとに、次期政権の(人事を含めて)政策を予想している。

抜粋:

反ビジネス的で規制の強化を強く推進する閣僚を見る可能性は低くなった。このことは同時に、現在保留中の合併、買収が承認される可能性がはるかに高くなることを意味する。たとえば〔補助金を受けるが私的団体が運営する〕チャーター・スクールは合併に当たって連邦政府の反対を受けにくくなるだろう。連邦政府が規制を改正し、労働者の区分を変更することによって共有経済を破壊するような事態は避けられよう。SEC〔証券取引委員会〕は現金化しにくい私企業や資産に強く干渉しなくなる。ピア・ツー・ピア・レンディング〔ソーシャル融資〕も連邦政府の反対を受ける可能性が減る。その他同種の干渉の減少が多数予想される。

われわれはこのメモがテクノロジー・ビジネス全般に多いに参考になると思ったのでScribにアップロードし、以下ににエンベッドした。

〔日本版〕下記エンベッド冒頭のWhat Does This Mean for You by Jordan Crook on Scribdはリンクではないので作動しない。Scribdサイトで原文を見る場合は上の記事末のリンクから開ける。抜粋中の「労働者の区分変更」はUberのドライバーを契約者ではなくUberの被雇用者として認定しようとしていることなどを指す(関連記事

What Does This Mean for You by Jordan Crook on Scribd

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

トランプ大統領のシリコンバレーに対する意味―ニュースの大部分は暗い

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ドナルド・J.・トランプがアメリカの次期大統領に選ばれた。この選挙戦の勝利はアメリカの歴史上もっともシュールかつ意外なものだった。

株式市場はトランプ大統領の誕生にすでに値を下げている。ドルも同様だ。

トランプの政策プラットフォームに通じた経済学者によれば、テクノロジー経済とシリコンバレーに関する短期的見通しは暗いということだ。

選挙戦を通じてトランプの経済政策はかなり漠然としていたが、大まかに言えば、トランプが述べた経済政策はベンチャーキャピタリズム、さらに広くテクノロジー・ビジネス一般にとって適合性が高いものではない。

南カリフォルニア大学マーシャル・ビジネス・スクールの経済学者、Gregory Autryによれば、トランプは「ハイテクテク製造業を含む製造業の職を増やすかもしれないがシリコンバレーのテクノロジー企業にとっては逆風となる可能性がある」という。

貿易

Autryは「現在テクノロジー産業といえばまず シリコンバレーを考えることが多い。トランプはそのような考え方に対して間違いなく悪いニュースだ。トランプの経済政策は貿易政策の不正に関して中国を罰し、製造業をアメリカに戻そうというものだ」と述べている。

もしトランプが政策を実行に移し、中国から輸出される物品に高い関税をかけるなら(要するに貿易自由化を中心とする現在の経済政策を20年以上も昔に巻き戻すなら)、サプライチェーンを世界的な貿易に頼っているアメリカ企業(つまりほとんどアメリカ企業)にとって不都合をもたらすだろう。

「(そうした企業は)ひどい目に遭いそうだ」とAutryは言う。

移民

関税によってテクノロジー製品の価格をアップさせる(それによって製造業がアメリカに戻ることを余儀なくさせようようという政策)の他に、トランプ大統領は移民政策にも大きな変化をもたらすだろう。

シリコンバレーはこれまでH-1B〔移民就労ビザ〕によって拡大と成長を大きく助けられてきた。このプログラムは海外から優秀な人々を労働者として迎え入れ、シリコンバレーが必要とする高い技能を提供しながら最終的にグリーンカード〔永住権〕を取得する道を開く。トランプはこれを実質的に無効にすると公約している。

シリコンバレーにとってH-1Bプログラムは、いわば自由の女神の台座に刻まれた文字のハイテク版だ。つまり単なる難民ではなく、高等教育を受け、高度な技能を持ち、自由な世界で生きたい人々を世界から招き寄せようとするものだ。

「移民就労ビザ・プログラムはテクノロジー産業が必要と考える労働力を外国から輸入する道を開くものなので〔トランプの政策はテクノロジー産業に〕 懸念をもたらす」とAutryは言う。

再生可能エネルギー

トランプ政権の元で痛手を負いそうなのはこうしたハイテク・ビジネスだけではない。 再生可能エネルギーはビジネスとして急成長しており、その一部はアメリカでももっとも希望のもてる分野となっているが、次期大統領の下では強い逆風にさらされそうだ。

エネルギー・ビジネスを分析するS&P Global Plattsによれば、トランプは(その政策からみて当然ながら)再生エネルギー開発に対する補助金を廃止することに力を入れるはずだという。トランプの エネルギー政策について分析したPlattsのレポートによれば「たとえば、投資税額控除が現在の30%から10%に減らされれば、ソーラー発電に対する需要は60%減少する」という。(私見だが地球温暖化が人間の活動によるものだという圧倒的な証拠が集まっているにも関わらずこういう政策を取るのは良くないと思う)。

トランプは再生可能燃料基準(Renewable Fuel Standard)を支持しているが(この基準は主として農民の利益になる)、これにも疑いの目が向けられている。

エネルギー政策についてのレポートでPlattsはこう書いている。

トランプは選挙戦を通じて再生可能燃料基準を支持すると述べているが、一時、これに反する経済政策パッケージが発表されたことがあった。〔これは〕強い反発を受けてこれはトランプの選挙戦のウェブサイトから削除された。スタッフは「誤って公表されたもの」とした。 *

*強調は筆者

サイバーセキュリティー

アメリカのサイバーセキュリティーについては選挙戦を通じて大きな問題となっていたが、これについてのトランプの対応の計画は漠然としすぎている

2014にソニーが攻撃を受けて個人情報が漏洩した事件からアメリカのインターネット運用に重大な被害を与えた先月のDDoS攻撃に至るまで、アメリカのインターネットが危険なまでに脆弱であることは何度も暴露されてきた。しかしトランプの選挙戦での立場はクリントン候補の国務長官時代のメール処理の誤りを攻撃するものでしかなかった。

データがいわば血液であるシリコンバレー企業にとってサイバーセキュリティー以上に重要な課題は少ない。これは敵候補に打撃を与えるための政治的な魂胆で利用していいような問題ではない。こうした脆弱性を抱えるネットワークが世界でもっとも時価総額が高い10社を支えるバックボーンとなっていることを考えるならなおさらだ。

企業の上場と大型M&A

今年の後半に入って上場のチャンスが増え始めた。われわれはこのトレンドが 2017年にも続いていくだろうと考えていた。しかしAutryによれば事情は変わってきたという。

金融や株式についてはその性質からして必ずこうなるという予測はできない(アメリカでは市場が開くのを待たず、すでに〔ショックから立ち直って〕安定化の兆しがみえる)。しかし株価の急落に加えて新政権の誕生で制度改革の方向がしばらく不透明になること、 世界とアメリカ市場が大統領になったのはどちらのドナル・ トランプなのか(ポピュリストのスーパー・ヒーローか、辣腕の不動産大富豪か)を判断するにも時間がかかることを考えれば、会社の上場には当面急ブレーキがかかるのではないか。

Autryによれば「短期的には、新規上場とベンチャーキャピタルの活動はスローダウンするだろう」という。

トランプ政権の誕生で影響を受けそうなのは新規上場だけではない。選挙戦の終盤でトランプはAT&TがTime Warnerに買収を提案したことを挙げて大型のM&Aを強く攻撃していた。

10月にはいって トランプはある集会でこう述べている。

AT&TがTime Warnerを、つまりは〔子会社の〕CNNを買収できるような権力構造と私は戦う。私が政権に就けばそういう買収は絶対に認めない。そうした買収は、あまりにも大きな権力をあまりにも少数の人間の手に与えることになるからだ。

ほとんどは暗い見通し…とはいえ、トランプのすべてがそうではない!

ただし、こうした暗い見通しの中にあっても、シリコンバレーの企業は、当局による過剰な規制の廃止は利益を奇跡的に改善する場合があることを思い出すべきだろう。
消費者金融保護委員会(Consumer Finance Protection Board)を廃止するという公約はフィンテック企業(特に資金の貸し手)のビジネスを大幅に容易にするだろう。

Reutersの記事によれば、医薬品の在庫の山にも新たなチャンスが与えられるかもしれない。医薬品業界の再生は誰にとっても良いニュースだ。

そうした点以外にもAutryは企業減税と海外資産のアメリカへの移転を奨励する政策が多くのビジネスにとってきわめて前向きな効果をもたらすと予想している。「海外に流出した資本をアメリカに取り戻すためのインセンティブを与える政策〔が実行されれば〕国内産業への投資の再活性化と職の増加をもたらすだろう」とAutryは言う。

またアメリカの宇宙航空産業はトランプ政権の経済政策から利益を受けるはずだ。「規制の緩和と減税は〔宇宙航空産業に〕大きな助けになる」とAutryは書いている。

**こうして私が「何やら怒って大騒ぎ」(sound and fury)しているものの「結局何の意味もありはしなかった」(と認めるのは嫌だし、シェークスピアも嫌いだが)ということになる可能性がないではないことは断っておくべきだろう。公平に言って、真意がどこにあるのかとらえどころのないトランプの性格からして、その政権が現実にどんな政策を採用するのか予想するのは難しい。

〔日本版〕上記の引用、sounnd and furyはシェークスピアの「マクベス」の引用。魔女の予言について「何やらわめき立ててはいるものの、何の意味もありはしない」と否定するマクベスの独白。フォークナーの小説「響きと怒り」の原題。

「印刷を早まったな…」

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

政府はデジタル経済の価値3兆ドルを作り出せる―世界経済フォーラムのリポート

シリコンバレーのこれまでの経験ではイノベーションというものは、政府の力を借りて起きるのではなく、政府の妨害にもかかわらず起きるものだった。しかしアクセンチュアの戦略担当シニア・ディレクター、Anand Shahによれば、政府は経済成長を加速するために果たすべき重要な役割があるという。

ただし、政府の役割はニューディール時代のTVAのようなインフラ構築と失業対策を目的とするトップダウンの巨大投資ではない。Shahは世界経済フォーラム(WEF)が先ごろ発表した産業のデジタル化についてのレポート(Digital Transformation of Industries)の主要な筆者の一人だが、 政府の役割をビジネスに対する重要な協力者ととして位置づけている。

Shahは「政府は新しいイノベーションが起きている領域、たとえばドローン分野で民間と協力していく必要がある」としている。現在この領域は古臭い規制によって足を取られており、本来の可能性を活かすために苦闘してるところだ。政府にとって最大の課題は、イノベーションを起こすような新しいテクノロジーをゼロから作ることではなく、イノベーションの足を引っ張る規制を撤廃して真の可能性を解放(unlock)するところにある。

WEFのレポートは政府がデジタル経済の可能性を解放した場合、その「社会的価値」は向こう10年で3兆ドルに上ると試算している。

ヒラリー・クリントンにせよドナルド・トランプにせよ、WEFのレポートを読まないとしたら非常に残念なことだ。Anand Shahがビデオでも説明しているとおり、イノベーションが価値を発揮するのは政府と民間の協調による。政府は規制の壁を築いたり、経済の自由な活動を圧殺したりしてはならない。

現代のネットワーク時代においてはとりわけスピードがものをいう。機敏に動ける協調性を実現できるかどうかが政府にとって大きな挑戦となるだろう。

このインタビューの実現にあたってはいつものとおり、CALinnovatesの絶大な協力を得た。

画像: ConstiAB/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

〔日本版〕本文中にもリンクがある世界経済フォーラムの白書(pdf)にはデジタル経済を加速させるテクノロジーの例として、スマートフォン、ドローンを始めとして、3Dプリンティング、DNA解析、太陽光発電、自動運転用lidarなどが取り上げられている。また2013年に事実上ゼロだった消費者向けエレクトロニクス/IoTのシェアがわずか2年後に6%を占めるようになったことが円グラフで示されている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


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YCombinatorが研究プロジェクト「都市のあるべき姿」を推進、SimCityのファンはぜひ参加を

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あなたは、新しい都市を設計したい、と思ったことはあるかな?

子どものころから長年、SimCityやLegosにはまっていた人たちに、幸運が訪れるかもしれない。YCombinatorが今、都市の住宅問題や公共施設の設計といった都市の問題の解決を目指す研究プロジェクトのために、都市問題/都市研究の一匹狼のような人たちを探している。

スマートシティというはやり言葉は、今では平凡で月並みな言葉になりつつあるが、でもYCは、起業というこれまでなかった視点からこの問題に取り組もうとしている。

YCが、公共サービスに実在する問題とスタートアップのアクセラレーションという二つのものを混ぜあわせようとするのは、これが初めてではない。同社は今、ベーシックインカムを市の施策として一般化した場合の影響を調べるために、オークランド市のプロジェクトに協力している。YCの計画では、一部の住民に年額計150万ドル近いベーシックインカムを提供し、彼らのその後の生活をコントロールグループ(対照群)と比較し調査する。

またYCの最新のプロジェクトのもっとも意欲的な目標は、都市にとって絶対必要不可欠な規制や規則を100ページ以内にまとめることだ。このプロジェクトには、ダイバーシティ(女性、非白人雇用)の増加や行政への市民参加の目標を、データ分析をもとに策定する、という仕事もある。

州のレベルでは、政策立案へのデータの利用を、主に州議会が先導してきた。2007年には、メリーランド州知事O’Malleyが、州データの一般公開で注目を浴びた。その事業は、透明性を確立し、また行政効果に関するデータの重要な分析結果を具体的に政策に反映していくことが、目的だった。

YCでは、Adora Cheungがこのプロジェクトをリードする。Cheungは、かつてY Combinatorが支援したHomejoyのCEOだった。Homejoyは現代的に合理化された清掃サービスを提供したが、労働者の待遇をめぐる法的問題で閉鎖した。

このプロジェクトについては、続報をお待ちいただきたい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Y Combinatorがオークランドでベーシックインカムの検証実験を計画中

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Y Combinatorは本日、カルフォルニア州オークランドで初のベーシックインカムの検証を行うと発表した。このスタートアップ・アクセラレーターは昨年秋からベーシックインカムのコンセプトについて調査を行っていて、近いうちに給与を支払うようになるという。

Y Combinatorは当初、所定のグループに対してベーシックインカムを5年間支払い、その効果を研究すると言っていたが、そこから方針を変えた。まずは短期的な研究をオークランドで開始するという。Y Combinatorはブログ記事に「目標は、ベーシックインカムの手法について検証し、さらに長期の研究に備えることです。例えば、どのように給与を支払うか、データを集めるか、ランダムなサンプルを抽出するかなどです」。パイロット検証での結果によっては、Y Combinatorは継続して長期的な研究を行う考えだ。

全員に一定の金銭的な支援を保証するというベーシックインカムのコンセプトは、ここのところ注目を集めてきた。数日後には、スイスでベーシックインカムに関する国民投票が行われる。テクノロジー業界の大物もベーシックインカムを支持している。Y Combinatorの会長であるSam Altmanは、テクノロジーが仕事を奪うほど、ユニバーサル・ベーシックインカムの必要性が高まると主張している。

「テクノロジーが仕事を消し去る時代が来るということは、十分な人生を送るために必要なコストが大幅に下がるということです」とAltmanは ツイートしている。「そして、私は未来の仕事環境にスムーズに移行するためにはベーシックインカムのようなクッションが必要だと考えています」。

しかし、ベーシックインカムのコンセプトに反対する人もいる。一番大きな課題は、どこからそのお金を支出するかだ。Y Combinatorには裕福な投資家陣がいるため、ベーシックインカムの資金源について思い悩む必要はないかもしれないが、政府にとってこの資金源は問題だ。政府の予算優先政策センター(CBPP)は、政府がベーシックインカムの財源を担うことは、貧困層を支援する政策の財源を削減することになり、貧困率を高め、資金は中流階級や上流階級に回ることになると主張している。

「例えば、UBI(ユニバーサル・ベーシックインカム)で全員に毎年1万ドルを支給したとします」とCBPPのRobert Greensteinは今日、書いている。「それで年間3兆ドル以上のコストがかかります。10年で30兆から40兆ドルかかるのです」。スイス政府もコストを指摘し、投票者にベーシックインカムの否決を促している。

しかしY Combinatorは、このパイロット検証を将来のベーシックインカムの設計する方法として捉え、政府の財源からの支出が正しいアプローチとは限らないという。オークランドでの研究は、ミシガン大学で博士号を取得したElizabeth Rhodesが率いる。

「私たちのパイロット検証では、収入は無条件で提供します。検証期間中、いかなる状況でもベーシックインカムを提供し続けます。参加者はボランティア活動をしてもいいですし、仕事をしてもしなくてもいいのです。海外に引っ越しても構いません。なんでもできます。私たちはベーシックインカムが自由な行動を推奨することに期待し、この研究では人がその自由をどのように体験するかを知りたいと思います」とAltmanは言う。

Y Combinatorはすでにオークランドの役人やコミュニティーグループと協力してパイロット検証の計画を立てているが、まだ正式なローンチ日は決まっていない。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

ホワイトハウスのソフトウェア政策(草案)は連邦諸機関へのオープンソース思想の普及を目指す

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今やオープンソースのアドバンテージは、誰の目にも明白だ。コードを一般公開すれば、いいことが起きる。バグやセキュリティホールを、人びとが見つけてくれる。多くの目や声により、ソフトウェアがどんどん良くなる。さまざまなニーズに適応できる。それどころか、スタートアップのエコシステムはその全体が、オープンソースの主要プロジェクトがベースだ。

オープンソースが民間部門でこれほどまでに遍在的になってきたので、最近では政府も注目するようになった。今日(米国時間3/11)は合衆国政府のCIO Tony Scottが、ホワイトハウスのブログで、オープンソースを政府にも持ち込もうとするオバマ政権の計画の概要を述べている。

その草案によるとホワイトハウスのビジョンは、政府諸機関がコードを共有し、その後の時間の中で効率を改善していけるようにする、それにより、すでにどこかで作られているものを、別の省庁が再発明しないようにする、というものだ。

それはまだ決定された政策ではなく、議論のたたき台だ。Scottはそのブログ記事で、“われわれは広く意見を求めるために、政府のカスタムソフトウェアのコードへの幅広いアクセスをサポートする「連邦ソースコード(Federal Source Code)」政策の草案を、公開していく”、と述べている。言い換えるとそれは、政府全域のオープンソースポリシーを策定していくための、出発点だ。

政府の各種プロジェクトで使われるコードをオープンソースにすることは、必ずしも、すべてのコードを公開すべしという政策ではない。しかし一部のコードの公開にすぎなくても、そこには今後の興味深いユースケースが生まれ育ち、新しいビジネスすら生まれるだろう。Scottのブログ記事は述べている:

“この政策は、連邦政府のために、あるいは連邦政府によって、新たに開発されるソフトウェアが、連邦政府の全機関に可利用となり共有されることを要求する。それには、連邦政府の資金によって作られるカスタムコードを一般に公開していくパイロット事業も含まれる。

しかしコードの共有だけがこの政策のすべてではない。Scottによれば、それはまた、政府諸機関ができるかぎりオープンソースのコードを利用して自らソフトウェアを作るよう彼らを教育し、今すでに一部のプロジェクトで行われていることを拡大普及していくことも含まれる。

ホワイトハウスがこの変革に成功し、それが今後の政権にも受け継がれていくなら、コードの共有は目に見える日常の慣行となり、それは究極的にはイノベーションを喚起するとともに、税金を使って政府が作った技術を利用する新しいビジネスすら産み育てるだろう。それは、所属・支援する政党や政策の違いを超えて、多くの人びとが賛同するアプローチだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))