診察予約アプリZocdocは「プログラミングエラー」で患者データへの不正アクセス可能だった

医療機関オンライン予約サービスのZocdocは、医院や歯科医院の現職および元スタッフのユーザーアカウントが適切に削除されていなかったために、患者データへのアクセスが可能になっていたバグを修正したと発表した。

ニューヨークに本社を置くZocdocは、カリフォルニア州司法長官に宛てた書簡の中でこの問題を明らかにした。企業は500人以上の州民がセキュリティ上の不備や違反の影響を受けた場合、同州の司法長官事務所に通知することが義務づけられている。Zocdocは今回のセキュリティインシデントにより、米国全体で約7千600人のユーザーが影響を受けていることを確認した。

Zocdocは、見込み患者が医師や歯科医師を検索し予約を入れることができるサービスを提供しており、各医療機関や歯科医院のスタッフがZocdocを通じて行われた予約にアクセスするためのユーザー名とパスワードを提供しているが「プログラミングエラー」、つまり基本的にはZocdoc自身のシステムにおけるソフトウェアのバグにより「過去または現在の医療機関のスタッフの一部が、ユーザー名とパスワードを削除、消去、またはその他の方法で制限することを意図した後に、プロバイダーポータルにアクセスすることができた」と述べている。

この書簡では、Zocdocのポータルに保存されている患者データがアクセスされた可能性があることが確認されている。該当データには、患者の氏名、電子メールアドレス、電話番号、予約日時の他、保険の詳細、社会保障番号、患者の病歴の詳細など、診療所と共有されていた可能性のあるデータも含まれている。

しかしZocdocによると、支払いカード番号、X線や診断書、医療記録などは同社は保存しないため、盗まれていないとのこと。

Zocdocの広報担当者であるSandra Glading(サンドラ・グレーディング)氏はメールで、同社は2020年8月にバグを発見したが「コードが複雑なため、どの診療所やユーザーがどのように影響を受けたかを特定するには、相当な調査が必要だった」と述べた。同社は、カリフォルニア州の司法長官事務所に「可能な限り早く」通知したと述べている。

Zocdocは「この脆弱性の悪用の可能性を含む、あらゆるデータの悪用を検出できる詳細なログ」を保有しており、それらのログの確認とその他の調査作業を行った結果「現時点では、個人情報が何らかの形で悪用された形跡はない」と述べた。

同社によれば、月間約600万人のユーザーがZocdocにアクセスしているという。

この事件に何となく聞き覚えがあるとしたら、それは2016年にZocdocが報告したセキュリティ問題と酷似しているからだ。当時提出された書簡には、医療機関のスタッフが患者データに不正にアクセスできる同様の「プログラミングエラー」が挙げられていた。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:Zocdocデータ漏洩個人情報医療バグ

画像クレジット:TechCrunch(スクリーンショット)

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)

医療機器データプラットフォームのAcuityMDが7.6億円調達、医師とメーカーに情報提供

膨大な量のノイズとわずかなシグナルを含む世界では、消費者の選択を簡単なものにするスタートアップの存在は理に適っている。Career Karmaは学生のテックブートキャンプ選びを手伝っており、Stackin’はネオバンクと節約アプリの世界でミレニアル世代を誘導している。そしてボストン拠点の新たな会社はマーケットに出回っている最新の医療機器の情報を医師が把握するのをサポートしている。

Mike Monovoukas(マイク・モノフカス)氏、Lee Smith(リー・スミス)氏、Robert Coe(ロバート・コー)氏によって2019年に設立されたAcuityMD(アキュイティエムディー)は、格納されていることが多い医療機器データを開放したいと考えている法人向けのソフトウェア企業だ。その目的を達成するために、同社は米国時間5月24日の週にBenchmarkがリードしたシードラウンドで700万ドル(約7億6000万円)を調達した。

資金調達の一環として、BenchmarkのゼネラルパートナーであるEric Vishria(エリック・ヴィシュリア)氏がAcuityMDの役員会に加わる。医療テック企業をサポートするために2019年に1億ドル(約109億円)をクローズしたAjax HealthもAcuityMDのラウンドに参加した。シード資金でAcuityMDは現在8人のチームを年末までに倍増させ、1つのとある分野に投資する計画だとモノフカス氏は話した。その分野とは何をおいても「プロダクト」だ。

AcuityMDは、アイテムの販売から術後患者のその後の経過まで医療機器のライフサイクル全般を追跡するデータプラットフォームだ。1つのプロダクトについてある種のメタデータを与えるべく、個々の医療デバイスについての産業・マーケットデータを統合している。

「毎年発売されるプロダクトが1000点以上あり、医師がフェローやレジデントとしての期間を終えた後にそこら中にある最新かつ最もすばらしい医療テクノロジーの情報についていくのはほぼ不可能です」とモノフカス氏は述べた。「当社はこれをソフトウェアと調整の問題だととらえています。そこら中にデータはあるが、意思決定者に辿り着くという点では非効率です」。

同氏は、自身の家族が連続で手術を受けなければならなかったときに医療デバイス管理の非効率さを直に体験した。

「私がすばらしいと思ったのは、メーカーが何を使うべきかについて多くの情報を持っているということでした。しかし、その情報は正しいタイミングで適切な医師に伝わっていませんでした」と同氏は指摘した。「私が持った基本的な認識は、この業界の情報フローはやや壊れているというものでした。それは有能な医師や外科医であるということの問題ではなく、情報移送が欠如していました。これはデータ主導の世界においてはクレイジーなことです」。

そしてBain & Companyや医療デバイス会社で以前働いたことのあるモノフカス氏は、医療デバイスを長期療養患者の経過により対応するものにするためにどのようにデータを使うかについて考え始めた。より多くの情報の恩恵を受ける主な関係者は医師である一方で、AcuityMDのチームは主要顧客としてデバイスメーカーにも目を向けた。

その理由の1つは、病院と医師は販売先としては面倒なことで悪名高いためだ。別の理由は、医療デバイスのパフォーマンスデータはメーカーの販売チームが販促したりターゲットを絞ったり、そして売り込んだりするのに使うことができるキー信号だからだとモノフカス氏は筆者に語った。自社のデバイスの中で多くの外科医が必要とするかもしれないものに関するデータから、特定のデバイスの長期的な結果に至るまで、メーカーが自社のプロダクトのためにマーケットの可視性をいかに欲しているか同氏は説明した。

データは販売チームが特定のプロダクトで10人の医師をターゲットとすることがいかにメーカーにとって財務的にそして残るマーケットとの文脈において影響を及ぼすかを先制的に理解するのに役立つかもしれない。

AcuityMDは医療デバイスのリアルタイムデータベースになることを目指している。長期的には、かなりの需要がある重要なトランザクションにおいてメーカーと外科医をつなげる同日配送サービス事業者と自社を位置付けることができるかもしれない。モノフカス氏はロジスティックと在庫が医療デバイス産業のための「内臓にダメージを与えるような」問題である一方で、まだソリューションがないと話す。AcuityMDが各施設で必要とされる在庫を予想することができるようにったときに出番だと同氏はみている。Chloe Alpert(クロエ・アルパート)氏によって共同創業されたMedinasのような一部の企業が病院のシステムの中でどのように運営・管理しているのかに似ている。

しかし差し当たってAcuityMDは、自社のプラットフォームとベンチャー資金をプロバイダーシステムの外で使うのがベストだと考えている。同社は病院と外科医に関する多くのデータをMedicare CMSと保険会社から仕入れていて、プロバイダー側でしなければならないことはない。

問題は、そうしたデータソースが本当の動向を引き出すのに十分よいものであることを確保することだ。この点についてAcuityMDは十分だとしている。

「デジタルヘルス会社はゆくゆくはヘルスケアデータ会社になると誰かがいうのを聞いたことがあります。当社はやや異なるアプローチをとっています」とモノフカス氏は話した。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:AcuityMD資金調達医療

画像クレジット:akinbostanci / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nariko Mizoguchi

医療機関向け業務効率化サービス「AI問診ユビー」が全国47都道府県・400超の医療機関で導入達成

医療機関向け業務効率化サービス「AI問診ユビー」が全国47都道府県・400超の医療機関で導入達成

医療機関向け業務効率化サービス「AI問診ユビー」を提供するUbieは5月21日、AI問診ユビーが全国47都道府県の医療機関での導入を2021年5月に達成したと発表した。導入医療機関数は400以上となり、サービスローンチ当初の主な導入先だった病院に加え、クリニック・診療所など「かかりつけ医」での活用も広がっているという。

医療機関向け「AI問診ユビー」

2017年サービス提供を開始した「AI問診ユビー」は医療機関の紙の問診票のかわりにタブレットやスマートフォンを活用した、医療機関の業務効率化のための問診サービス。

医師は、文章に翻訳された問診内容と病名辞書の結果を活用することで、電子カルテに記載を行う事務作業を大幅に削減可能となり、より患者に向き合い診察に集中できるようになるという。

患者は、医療機関においてタブレットを使って症状を入力することで、診察前の待ち時間を活用し事前に詳しい症状の内容を伝えることができるようになる。

生活者向け「AI受診相談ユビー」

AI受診相談ユビー」は、生活者の適切な医療へのかかり方をサポートするウェブ医療情報提供サービス。いつでもどこでも、気になる症状から関連する病名と適切な受診先を調べられる。かかりつけ医などの地域の医療機関や、「#7119」などの救急車対応、厚生労働省などの公的な電話相談窓口への適切な受診行動を支援する。2021年5月現在、月間80万人以上が利用しているそうだ。

Ubieは、「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションに掲げ、医師とエンジニアが2017年5月に創業したヘルステック領域のスタートアップ。AIをコア技術とし、AI問診ユビーとAI受診相談ユビーを開発・提供するとともに、誰もが自分にあった医療にアクセスできる社会作りを進めている。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:医療(用語)Ubieヘルスケア(用語)日本(国・地域)

医療現場の課題を自身で解決できる医者・看護師を育てる日本初の医療者向けプログラミングスクールが開校

医療現場の課題を自身で解決できる医者・看護師を育てる日本初の医療者向けプログラミングスクールが開校

医療法人社団新潮会は5月19日、医師や看護師などの医療従事者を対象としたプログラミングスクール「ものづくり医療センター」を6月よりトライアル開校すると発表した。それにともない「プログラミング教育入院」希望者を募集する。

コロナ禍の影響もあり、今の医療現場では様々な側面で変化に対応せざるを得ず、「目の前の課題について、テクノロジーを用いたらすぐに解決可能な事象だと認識できるスピード感」が求められているという。そこで、ものづくり医療センターは、通常のプログラミングスクールのようにウェブデザインなどの特定のスキルの習得ではなく、医療の現場で遭遇する課題に対して柔軟に対応できる技能を幅広く学ぶことを目指している。

「プログラミングを学ぶことを目的とせず、サービスを形にすることや課題を解決することをいち早く行える人材育成を目的として授業を行なっていきます」という方針を掲げる同院では、医療現場で問題に遭遇する可能性の高いIoTやハードウェアについても学ぶ。

大きな目標は「医療現場の課題を自身で解決できる人を育てること」と「多くの選択肢(技術)を知ることで『もしかしたらこの技術って、あれに使えるんじゃない?』といった気付きを得られる場になること」だという。

期間は、6月から週1回のオンライン授業で3カ月間。定員は5〜10名。受講対象者は医者、看護師などの医療者であること。費用は税別9万9800円(トライアル開校中のみ。トライアル以降は値上げ予定)。現在申し込み受け付け中だ。

画像クレジット:医療法人社団新潮会

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カテゴリー:EdTech
タグ:医療(用語)教育 / EdTech / エドテック(用語)新型コロナウイルス(用語)プログラミング(用語)日本(国・地域)

コロナ禍で押し進められたDXの中、AIに期待される今後の役割とは

コロナ禍で押し進められたDXの中、AIに期待される今後の役割とは

アフロ

編集部注:この原稿は、MIN SUN(ミン・スン)氏による寄稿である。同氏は、AppierのチーフAIサイエンティストを務めている。Appierは、AI(人工知能)テクノロジー企業として、企業や組織の事業課題を解決するためのAIプラットフォームを提供している。

2020年、新型コロナウイルスの存在が確認されて以来、その猛威は世界中に広がり、2021年になった今でも終息のめどが立っていない。

新型コロナウイルス感染症の流行により、人々の健康に対する意識はもちろんのこと、社会のあり方そのものに対しても大きな影響を与え、ミクロレベルからマクロレベルにいたるまであらゆるものごとが変革を余儀なくされたことに疑いの余地はない。

特に、営利企業において新型コロナウイルスの影響は甚大で、これまで遅々として進まなかったデジタルトランスフォーメーション(DX)が事業規模の大小を問わず急速に押し進められている。

この状況下、にわかに注目を集めているのが業務の自動化や省力化を得意とするAI技術の活用だ。

これまで、AIという技術に対する疑心や懸念をもっていたために活用に消極的だった企業においても、AIソフトウェアパッケージの導入やシステム開発が加速している。

新型コロナウイルスの流行が5年分のDXを1年で押し進めた

新型コロナウイルスの流行拡大により、企業内で最も大きく変わったことといえば、従業員の働き方だろう。新型コロナウイルスの流行以前は「仕事をする」ことは「オフィスにおもむく」ということに直結していた。しかし、コロナ禍で避けるべき3つの密と呼ばれる密閉、密集、密接の全条件に当てはまってしまうケースがあり、多くの企業が従業員を健康維持のため、出社制限を設けざるを得なかった。

このことにより、在宅勤務が急激に増加したわけだが、すべての業務をいきなりリモートで実施するのは当然難しい。そのため、自粛期間の合計が1年を超えてくる中でオフィスへの出社を要する業務においてもDXに取り組む企業が増加している。

バックオフィス業務における契約対応業務を例にあげると、これまでは紙媒体に押印し、それを送付するという流れが一般的だったのに対し、コロナ禍でDXが進められたことにより、契約書類がデータで渡されるようになり、押印もデジタル環境で実施した上で、契約書類の返送もオンライン上で完結させるケースが増加している。

ただ、このような業務のデジタル化に必要な技術やサービスの多くは、コロナ禍で生まれたものではなく、以前から存在していたが導入が先送りされていたものだ。つまり、企業における大規模なDXを推進したのはCEOでもCTOでもなく、新型コロナウイルスということになる。

コロナ禍で価値を発揮するAI

現在社会で起こっているDXは一過性のものではなく、さらなる推進に向け多くの企業が取り組んでいる。その中でもAIは、どのような価値を発揮しているのだろうか。

AIは様々な分野で活躍しており、その中でも特に医療分野では大きな価値をもたらしている。

医療分野におけるAI活用に関するひとつ目の事例は創薬の迅速化だ。従来、新薬が臨床試験に至るまでには4~5年以上の研究期間が必要だといわれてきた。だが、イギリスのオックスフォードを拠点とするAIスタートアップのExscientiaはAIを用いて新薬に用いる化合物を設計し、12カ月という短い期間で新薬の臨床試験にこぎつけた。また、通常の創薬では莫大な投資コストが発生することが多々あるが、AIの活用がその圧縮にもつながっている。

また、このような創薬ノウハウは新型コロナウイルスに効果的な薬品の特定にも用いられているという。したがって、過去に開発された薬品から新型コロナウイルスの予防や治療に効果的なものを特定する作業にはAIが少なからず貢献しているということになる。

AIを医療分野に活用する事例はもちろんこれだけではない。中国や台湾、韓国などでは、新型コロナウイルスへの感染予防に向け、AIを用いた陽性者のマッピングなども行われているという。

AIに期待される今後の役割とは

コロナ禍においても、AIが一定の価値を生んでいるが、AIがより大きな価値をもたらすのはこれからだろう。というのも、AIには学習のためのトレーニングデータが必要なため、中長期的な問題解決に適しているからだ。新型コロナウイルスの感染拡大が終息したとしても、いずれ人類は新たな感染症の流行に見舞われる。その際には、AIはより大きな価値をもたらすことは間違いない。

たとえば、感染症の予防においては電子医療記録をデータとして用いることで感染時の重症化リスクを予測できるようになる。また、新型コロナウイルスの感染経路を記録しておくことで、どのような場所で、誰を、どのように検査すれば感染症拡大の防止に役立つかを分析することも可能だ。

なお、上記の電子医療記録と地理空間に関するデータを組み合わせることで、検査、隔離、その他リソースの割当に関する優先順位の策定を支援するという構想は将来的な期待が高まっている。

さらに、ウイルスの遺伝子配列を分析し、変異をモニタリングすることにより、製薬会社による医薬品開発のターゲット明確化やウイルスの拡散速度予測、変異体の有害性の特定など、これまでは専門家が時間をかけて実施していた一連の取り組みの迅速化も期待されている。検査においても、現状ではPCR検査による感染の判断が主流だが、早期にウイルスの特性を明らかにできれば、CTスキャンデータなどを基に感染判断ができるようになる可能性はある。

今回の新型コロナウイルスの感染拡大は突発的だったため、AIが価値を発揮することが間に合わなかったケースも見受けられるが、私達が今直面している問題が、将来的なAI活用の礎として生かされるはずだ。

もちろん、技術を活かすも殺すも結局は人によるところが大きいため、将来的に期待されているAI活用が机上の空論で終わる可能性もある。

だが、政府や企業が主体となり、将来的な感染症に備えた仕組みを整え、人々がコロナ禍で得た教訓をしっかりと学習しパンデミックに備えることができれば、感染症拡大による社会的なリスクは大きく減少することだろう。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:医療(用語)AI / 人工知能(用語)新型コロナウイルス(用語)創薬(用語)

バイデン大統領が「がんを撲滅」するために医療高等研究計画局の設立を提案

Biden(バイデン)米国大統領は、現地時間4月28日に議会で行った演説において、ワクチン接種の取り組みについて国民に報告するとともに、政権の野心的な目標を説明した。

バイデン大統領が就任してからの100日間は、何百万人もの米国民を貧困から救い、気候変動に歯止めをかける、広範な立法措置が印象的だった。だが、議会の上下両院合同会議で初めて行った施政方針演説では、それより規模は小さいものの劣らず野心的なもう1つの計画を強調した。それは「我々が知っている限りのがんを撲滅する」というものである。

「これ以上に価値のある投資はありません。これ以上に党派を超えた取り組みもありません」と、水曜日の夜に語ったバイデン大統領は「それは私たちの力でできることです」と続けた。

この発言は突然出てきたものではない。ホワイトハウスは2021年4月初め、画期的な健康研究のための新しい政府機関を設立するために、65億ドル(約7075億円)の予算要求を発表した。この機関は「ARPA-H(Advanced Research Projects Agencies for Health、医療高等研究計画局)」と呼ばれ、NIH(National Institutes of Health、国立衛生研究所)の中に設置される。当初はがん、糖尿病、アルツハイマー病などを対象とするが、さらに医療研究を根本的に変えるような「変革的イノベーション」を追求することになる。

この65億ドルの投資は、NIH予算の510億ドル(約5兆5520億円)の一部だ。しかし、ARPA-Hは、NIHの中に置くのではなく、保健福祉省の下に置くべきだと批判する専門家もいる

ARPA-Hは、国防省の高等研究計画局(DARPA)をモデルにしている。DARPAは、国防への応用を目的としてムーンショット的な技術を開発している機関だ。DARPAの目標は、科学というよりも空想科学のように聞こえることが多いものの、これまでに、GPSの前身となる技術や、現代のインターネットに発展したコンピュータネットワークであるARPANETなど、現在のさまざまなユビキタス技術に貢献したり、その基礎を作り上げてきた。

DARPAは、保守的で漸進的な研究チームとは異なり、他の政府機関よりもシリコンバレーに近い形で、大きな科学的進歩を積極的に追求している。バイデン大統領は、DARPAのモデルを最先端の医療研究に用いることで、米国がバイオテクノロジーの分野で後れを取ることはないようにしようと考えている。

「中国や他の国々が急速に迫ってきています」と、バイデン大統領は演説の中で述べた。「私たちは、未来の製品や技術となる、高度なバッテリー、バイオテクノロジー、コンピューターチップ、クリーンエネルギーを開発し、優位に立たなければなりません」。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ジョー・バイデンがん医療アメリカ

画像クレジット:Melina Mara/The Washington Post/Bloomberg / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

歯科医療人材をマッチングする「HANOWA」が総額6000万円を調達、ライフスタイルに合った働き方を支援

左から2番目がHANOWAの新井翔平代表

歯科医療人材のシェアリングプラットフォーム「HANOWA」を運営するHANOWAは4月30日、第三者割当増資によりプレシリーズAラウンドで総額6000万円の資金調達を行ったと発表した。調達した資金は開発体制・顧客サポート体制の強化や、マーケティング費用に充てていく。

引受先はANOBAKAと日本スタートアップ支援協会、G-STARTUPファンド、守屋実氏、端羽英子氏、大冨智弘氏、遠藤健治氏、ガゼルキャピタルの他、複数の歯科医師を含む個人投資家となる。

歯科衛生士らと歯科医院をマッチング

滑らかに働き続けることが可能に

歯科衛生士国家試験の合格者に対する免許登録事務などを行う登録歯科医療振興財団によると、歯科衛生士名簿登録者数は約29万人となっている。一方、厚生労働省の調査によると、実際に就業している歯科衛生士は13万人程度しかいない。アクティブ率は5割を切っている状況だ。

結婚や妊娠、出産、育児、介護などを機に、うまく家庭と仕事を両立させることができないでいる『潜在医療従事者』が日本には大勢いるという。歯科医療も含めて医療業界の人材不足は大きな課題となっているのだ。

これらの課題を解決するため、HANOWAを2019年1月に設立した。同社は大阪府大阪市に拠点を構える。同社が2019年12月にローンチしたHANOWAは、自身のライフスタイルに合った働き方をしたい歯科衛生士らと、働き手が欲しい歯科医院をマッチングするプラットフォームとなる。歯科衛生士はHANOWAを通じて、転職するための一歩としても、スキマ時間に単発で働くことも、メインの仕事として週に何度も働くことも可能になるのだ。

歯科衛生士の登録者数は4月30日時点で700人を超えているという。現在は東京都23区と大阪市内でサービスを利用できるが、2021年度中には全国展開を目指している。

HANOWAの新井翔平代表は「歯科医院としては、通常は固定費になる人件費をHANOWAによって変動費にできます。歯科衛生士が就職を希望するのであれば、単発で働いてもらった後にミスマッチのない人材だけを採用できるなどのベネフィットもあります」と話した。

歯科衛生士にもメリットはある。「面接だけでは見えづらい現場も実際に働いて知ることができます。地域のいくつかの歯科医院で実際に働いて自分に合うかを選び、最終的には就職を希望することも可能です。また、常勤勤務というかたちをとらなくても、結婚、妊娠、出産などのライフイベントに合わせて、キャリアを分断せずに滑らかに働き続けることができます」と新井氏は説明した。

HANOWAでは、歯科衛生士のサービス利用料や登録料は無料となる。専用アプリをダウンロードする必要はなく、PCやスマホ経由でブラウザからサービスを使うことができる。

登録後は希望自給や勤務可能な日程、自己PRといった情報をオンライン上に入力していく。地域の歯科医院はそれらの情報から、HANOWAに登録する歯科衛生士にメッセージを送り、実際に勤務可能かすり合わせていく流れだ。もちろん、歯科衛生士から仕事の依頼を行うこともできる。

また、マッチングし終わった歯科医院の院長と歯科衛生士はレビューを交換するようになっており、HANOWAではこのレビューを「アリガトウ」と呼んでいる。

HANOWAに登録している歯科医院で働いた人からのレビューも閲覧でき、安心して働く場所を選べる。歯科衛生士側もHANOWAで働くたびにレビューが積み重なっていくため、自身のキャリアに自信が持てるようになる。新井氏は「今はレビューが多くなるほど、希望自給の提示金額が上がる傾向にあります」という。

なお、マネタイズの部分では月額利用料やマッチング手数料を歯科クリニックから得ている。

看護師や薬剤師へと領域を横展開

新井氏は今後の展望について「歯科領域の人材やシフト管理や労務管理など、アナログな医院経営などをDXしていきます。具体的にはシフト管理SaaSを次に提供することで、我々の登録人材を自動で人材不足の日程に埋め込み、経営者が人材不足について考えなくて済むようなかたちにしていきます。そして歯科業界で蓄えたナレッジを基に、歯科領域と同じスキームで看護師や薬剤師へと領域を横に展開していきます」と語った。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:HANOWA資金調達医療日本マッチングサービス

画像クレジット:HANOWA

【コラム】バイデン政権はインクルーシブであるためにAI開発の取り組みにもっと力を入れる必要がある

本稿の著者Miriam Vogel(ミリアム・フォーゲル)氏は、人工知能に存在する無意識の偏見を減らすことを目的とした非営利団体EqualAIの代表兼CEO。

ーーー

人工知能国家安全保障委員会(NSCAI)は2021年3月、不安なメッセージを公的に伝える報告書を発表した。「米国は、AI時代に防衛したり競争したりする準備ができていない」というものだ。この報告書は、直ちに回答が求められる2つの重要な質問につながる。つまり、米国がAIの開発と導入に遅れをとった場合、米国は世界の超大国であり続けるのか?そして、この軌道を変えるために私たちは何ができるのか?

一見、中立的に見える人工知能(AI)ツールを放置すると、不平等が拡大し、事実上、差別が自動化されてしまう。テクノロジーが可能にする弊害は、すでに信用判断、医療サービス広告などで表面化している。

このような事態の再発と規模の拡大を防ぐために、Joe Biden(ジョー・バイデン)政権は、AIと機械学習モデルに関する現行の法律を明確にする必要がある。これは、民間企業による利用をどのように評価するかという点と、政府システム内でのAI利用をどのように管理するかという点の両方においてだ。

一見、中立的に見える人工知能(AI)ツールを放置すると、不平等が拡大し、事実上、差別が自動化されてしまう。

政権は、ハイテク分野に重要な地位の人事を置いたり、就任初日にEquitable Data Working Group(公平なデータのためのワーキンググループ)を設立する大統領令を発布するなど、好印象を与えている。これにより、米国のAI開発とデジタル空間における公平性の確保を懸念する懐疑的な人たちをも安心させた。

しかし、AIへの資金提供を現実のものとし、その開発と利用を保護するために必要なリーダーと体制を確立するという強い決意を政権が示さなければ、その安心も束の間のことだろう。

優先順位の明確化が必要

連邦政府レベルでは、AI政策や技術分野における平等性へのコミットメントが大きく変化してきている。OSTPの副局長であるAlondra Nelson(アロンドラ・ネルソン)、NECのTim Wu(ティム・ウー)、NSCのKurt Campbell(カート・キャンベル)など、バイデン政権内の注目を集める人事を見ると、内部の専門家による包括的なAI開発に大きな焦点が置かれていることが分かる。

NSCAIの最終報告書には、包括的なAI開発のためのより良い基盤を実現するために重要となる提言が含まれている。例えば、現在および将来の従業員を訓練するためのU.S. Digital Service Academy(米デジタルサービスアカデミー)を通じて新たな人材パイプラインを構築することなどが挙げられている。

また、報告書では、副大統領が率いる新しいTechnology Competitiveness Council(技術競争力協議会)の設立を推奨している。これは、AIのリーダーシップに対する国の取り組みを最高レベルの優先事項として維持するために不可欠なものとなるだろう。ハリス副大統領が大統領との戦略的パートナーシップを持っており、技術政策に精通していること、公民権に力を入れていることなどを考慮すると、AIに関する政権のリーダーシップをハリス副大統領が陣頭指揮することは理に適っていると思われる。

米国は模範となるべきだ

AIは、何千通もの履歴書に目を通し、適している可能性のある候補者を特定するなど、効率化を実現する上で強力であることはわかっている。しかし、男性の候補者を優先的に採用するAmazonの採用ツールや、人種に基づく信用の「デジタル・レッドライニング」など、差別を拡大することもできてしまう。

バイデン政権は、AIが政府の業務を改善する方法についてのアイデアを募る大統領令を各省庁に出すべきだ。また、この大統領令では、米国政府が使用するAIが意図せずに差別を含む結果を広めていないかどうかを確認することも義務付けるべきである。

例えば、AIシステムに組み込まれた有害なバイアスが、差別的な提案や、民主的で包括的な価値観に反する提案につながっていないかどうかを評価する。そして、AIが常に反復して新しいパターンを学習していることを考慮すると、定期的に再評価を行うスケジュールを設定するべきだ。

責任あるAIガバナンスシステムの導入は、特定の利益を拒否する際にデュープロセスの保障が求められる米国政府においては特に重要だ。例えば、AIがメディケイドの給付金の配分を決定するために使用され、そのような給付金がアルゴリズムに基づいて修正または拒否された場合、政府はその結果を説明できなければならず、これはまさに技術的デュー・プロセスと呼ばれている

説明可能性、ガイドライン、人間の監督なしに決定が自動システムに委ねられると、この基本的な憲法上の権利が否定されるという、どうしようもない状況に陥ってしまう。

同様に、主要企業によるAIの安全対策を確実なものにするにあたり、政権はその調達力を通じて絶大な力を持っている。2020年度の連邦政府の契約費は、新型コロナ対策費を含める前でも、6000億ドル(約64兆9542億円)を超えると予想されている。米国政府は、AIシステムを連邦政府が調達する際のチェックリストを発行すれば、非常に大きな効果を上げることができる。これにより、関連する市民権に配慮しつつ、政府のプロセスが厳格かつ普遍的に適用されるようになるだろう。

AIシステムに起因する差別からの保護

政府は、AIの弊害から私たちを守るためのもう1つの強力な鍵を握っている。調査および検察の権限だ。判断がAI搭載システムに依存している場合、現行の法令(ADA、フェアハウジング法、フェアレンディング法、公民権法など)の適用可能性を明確にするよう各機関に指示する大統領令が出れば、世界的な大混乱に陥る可能性がある。米国で事業を行っている企業は、自社のAIシステムが保護対象クラス(Protected Class)に対する危害を加えていないかどうかをチェックするきっかけができることだろう。

低所得者は、AIの多くの悪影響に対して不相応に弱い立場にある。特にクレジットやローンの作成に関しては、従来の金融商品へのアクセスや、従来のフレームワークに基づいて高いスコアを得ることができない可能性が高いため、その傾向が顕著だ。そしてこれが、そのような判断を自動化するAIシステムを作るためのデータとなる。

消費者金融保護局(CFPB)は、差別的なAIシステムに依存した結果の差別的な融資プロセスについて、金融機関に責任を負わせる上で極めて重要な役割を果たす可能性がある。大統領令の義務化は、AI対応システムをどのように評価するかを表明するための強制機能となり、企業に注意を促し、AI利用に関する明確な予測で国民をよりよく保護することができる。

個人が差別的な行為をした場合には責任を問われ、説明もなく恣意的に公共の利益が否定された場合にはデュー・プロセス違反となることが明確になっている。理論的には、AIシステムが関与している場合、これらの責任と権利は容易に移行すると思われるが、政府機関の行動や判例(というよりもむしろ、その欠如)を見る限り、そうではないようだ。

差別的なAIに対する法的な異議申し立てを基本的に不可能にするようなHUD(都市住宅開発省)規則案を撤回するなど、政権は良いスタートを切っている。次のステップとして、調査や訴追の権限を持つ連邦政府機関は、どのようなAI行為が審査の対象となり、現行の法律が適用されるのかを明確にする必要がある。例えば、HUDは違法な住宅差別について、CFPBは信用貸しに使用されるAIについて、労働省は雇用、評価、解雇の際に行われる判断に使用されるAIについてといった具合だ。

このような行動は、苦情に関する原告の行動に有益な先例を作るという利点もある。

バイデン政権は、差別のない包括的なAIの実現に向けて、心強い第一歩を踏み出した。しかし、連邦政府は、AIの開発、取得、使用(社内および取引先)が、プライバシー、公民権、市民的自由、米国の価値観を保護するような方法で行われることを連邦政府機関に要求することで、自らの問題を解決しなければならないだろう。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ジョー・バイデンコラム人工知能アメリカ差別医療広告インクルーシブ

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(文:Miriam Vogel、翻訳:Dragonfly)

【コラム】「良心に基づく」診療拒否を許すアーカンソー州法案は患者を危機にさらしヘルステックの基本的価値に反する

本稿の著者Lena Levin(レナ・レビン)氏は、新型外科固定術ソリューションの大手開発会社Via Surgicalの共同ファウンダーでCEO。

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最近制定された、ヘルスケア提供者が誠実な信念を理由に処置を拒んだり、トランスジェンダーを治療しないことを許す法律は、一見テック業界にとって問題ではなさそうに見えるが、この種の法制度はヘルステックの基本的価値と直接衝突する。

アーカンソー州のAsa Hutchinson(アサ・ハッチンソン)知事は2021年3月、S.B. 289法案に署名した。「医療の倫理および多様性に関する法律」として知られているもので、ヘルスケアサービスを提供する者は誰でも(医師に限らない)、ケア行為が自分の良心に反すると信じた場合、緊急を要しないケアの提供を拒否できる。

アーカンソー州は、過去数年間この種の法律を推進してきた米国のいくつかの州の1つだ。このような 「conscience law(良心法)」はあらゆる患者に害を及ぼし、LGBTQ当事者や女性、郊外市民らは特にそうだ。中でも、一部の州で40%以上の病床がカトリック団体に支配されていることは大きな理由だ。

これらの法律は医師が自分の宗教的信条に反する可能性のある治療に従事しなくてはならないことを避けるための予防措置に見せかけながら、実際にはそれをはるかに超えており、破棄されるべきものだ。

「緊急を要しない」はさまざまな解釈が可能

アーカンソー州の法律は、極めて危険な坂道の始まりだ。同法が生殖の権利やLGBTQコミュニティに与える直接的影響だけでなく、医療従事者が自分の信条に反するというだけの理由でさまざまな種類の行為を拒否できるという問題を生み出す。

ヘルスケア提供者が宗教、倫理、良心などに基づいてどのサービスを実施するか決めるのを許すことは、国の差別禁止法の下で患者が有する保護される権利を実質的に奪うものだ。

ある医師や救急救命士にとって「緊急」であるものが、別のところで「緊急を要しない」と解釈される可能性がある。医療専門家による一部サービスの提供回避を許すことで、この法はヘルスケアサービスの範疇に関わる者なら誰でも、どんな種類のサービスでも、その時それが緊急ではなかったと信じたと主張する限り、拒否できるという解釈が可能になる。

同法はさらに、患者に患者の望む治療を提供できる誰かを紹介することも拒否できるとしている。これは、身体的、精神的健康問題を抱える患者に不当な負担を強いるものであり、別の提供者を探すために治療が遅れる恐れがある。健康や命に関わる問題では、複数の女性がカトリック医療施設で治療を拒否され、近くの救急医療センターに移動を強いられた事例がある。

ヘルステックコミュニティはあらゆる人々の健康改善に務めている

アーカンソー法は医療技術の開発と改善に尽力するビジネスの価値に相反する。そのビジネスの中心にいるヘルステックスタートアップは、より多くの患者により多くの優れたサービスを提供するために戦っている。ヘルスケアを誰もが利用できるようにするプラットフォームを作ることから、サービスの質を向上させる特別な医療機器の開発、新たな治療方法やワクチンの研究まで。

世界的パンデミックのためにワクチンを開発している一方で、ウイルスが特定の人々にとって緊急かどうかはさまざまな解釈が可能だという理由で医者が投与を拒むことを許している状況を想像して欲しい。あるいは、院内薬剤師が自分の信じる陰謀論を理由に何百回分ものワクチンを故意に使用不能にしたところを。アーカンソー州で決議されたような法律は、ヘルスケア・システムが陰謀論者に悪用される隙きを与え、すでに多くの健康ビジネス業者がQAnon(キューアノン)の嘘を根拠にアドバイスやサービスを提供している。

ヘルステックコミュニティは医薬や医療機器を自分たちと似た信条の患者のためだけに開発しているのではない。同様に医療従事者は、患者が必要な医療を受けるのを個人の感覚に基づいて難しくすべきではない。ヘルステック事業者やヘルスケア提供者にとって究極のゴールは、全員のための治療の質の改善という単一の焦点に絞られるべきだ。

「医療倫理」とアンチLGBTQ法は非倫理的である

ヘルステックコミュニティは、全員の健康を改善するべく新たなソリューションを市場に持ち込もうと日夜努力を続けるだけでなく、患者の命と健康の向上のために培われてきた重要な進歩を根絶やしにするこうした法律に立ち向かう必要がある。

アーカンソー法をはじめとする類似の法律は、適切な治療を見つけるという本来医療コミュニティが負うべき努力を患者に押し付けている。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Via Surgicalアーカンソー医療コラム

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(文:Lena Levin、翻訳:Nob Takahashi / facebook

血液ゲノム解析でがん再発を早期発見するソフトウェア開発のC2i Genomicsが108億円調達

もしあなた自身、あるいはあなたの愛する人ががん治療の一環で腫瘍摘出の手術を受けたことがあるのなら、その後にくる不安定な時期と不安な気持ちを知っているだろう。がんは再発するだろうか、再発するとしたら医師は初期段階で気づくだろうか。C2i Genomicsは残存病変(がん治療後に残存するごくわずかながん細胞)の感知で100倍敏感なソフトウェアを開発し、投資家らはそのポテンシャルに飛びついている。C2iは米国時間4月15日、Casdin Capitalがリードした1億ドル(約108億円)のシリーズBラウンドを発表した。

「がん治療の最大の疑問は、『うまくいっているのか』ということです。効果のない治療を受けて副作用に苦しむ患者もいれば、必要な治療を受けていない患者もいます」とC2i Genomicsの共同創業者でCEOのAsaf Zviran(アサフ・ズヴィラン)氏はインタービューで語った。

これまで手術後のがん検知の主なアプローチはMRIやレントゲンだった。しかしどちらの手法もがんがある程度進行するまで精度は高くない。その結果、患者はがんを再発するかもしれないが、医師がとらえられるまで少し時間がかかるかもしれない。

C2iのテクノロジーを使うと、医師はDNAをチェックするための採血であるリキッドバイオプシーをオーダーできる。そこから全ゲノムを解析してC2iのプラットフォームにアップロードできる。そしてソフトウェアが配列を調べてがんの存在を示すかすかなパターンを特定し、がんが成長しているのか、あるいは縮小しているのかを示す。

「C2iは基本的にがんの発見とモニタリングができるソフトウェアをグローバルスケールで提供しています。解析機械を持つあらゆるラボがサンプルを処理してC2iのプラットフォームにアップロードし、患者にがんの発見とモニタリングを提供できます」とズヴィラン氏はTechCrunchに語った。

C2i Genomicsのソリューションは、ズヴィラン博士が、ニューヨークゲノムセンター(NYGC)の職員でワイルコーネル医科大学(WCM)の助教授であるDan Landau(ダン・ランドウ)博士とともにNYGCとWCMで行った研究に基づいている。ランドウ博士はC2iの共同創業者であり、同社の科学諮問委員会のメンバーでもある。研究と発見は医学雑誌Nature Medicineに掲載された。

C2iのプロダクトはまだ米食品医薬品局(FDA)の承認を受けていないが、ニューヨーク大学ランゴーン医療センター、シンガポール国立がん研究所、オーフス大学病院、ローザンヌ大学病院での臨床研究と医薬品開発研究ですでに使われている。

もしFDAに承認されれば、ニューヨーク拠点のC2iは臓器保存の分野も含めてがん治療を大きく変えるポテンシャルを持つ。例えばがん再発を防ぐために機能する膀胱や直腸などの臓器を切除し、不自由になった人もいる。しかし不必要な手術を避けることができるとしたらどうだろうか。それは、ズヴィラン氏と同氏のチームが達成したいと考えている目標だ。

ズヴィラン氏にとって個人的な事情もある。

「私はがんや生物学とはかけ離れたところでキャリアをスタートさせました。そして28歳のときにがんと診断され、手術と放射線治療を受けました。私の父、そして義理の両親もがんに罹り、亡くなりました」と同氏は話した。

分子生物学で博士号を持つ同氏は以前イスラエル国防軍といくつかの民間企業でエンジニアとして働いた。「エンジニアとして自身の経験をみると、患者と医師の両サイドの不確実さは私をかなり不安にさせるものでした」と述べた。

今回調達した資金は、C2-Intelligence Platformの臨床開発と商業化の加速に使う。本ラウンドに参加した他の投資家にはNFX、デュケーヌ家のファミリーオフィス、シンガポールのSection 32、iGlobe Partners、Driehaus Capitalが含まれる。

カテゴリー:バイオテック
タグ:C2i Genomicsがん医療資金調達

画像クレジット:C2i Genomics

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Nariko Mizoguchi

マイオリッジが京都大学保有のiPS細胞由来心筋細胞製造方法について海外企業と初のライセンス契約

マイオリッジが京都大学保有のiPS細胞由来心筋細胞製造方法について海外企業と初のライセンス契約

京都大学発スタートアップ「マイオリッジ」は4月19日、iPS細胞由来心筋細胞を用いた再生医療関連製品を開発する米Avery Therapeutics(Avery)との間で、京都大学およびマイオリッジが保有するiPS細胞由来心筋細胞の分化誘導法について非独占的なライセンスをAveryへ共与するライセンス契約を締結いたしたと発表した。

この契約に基づきAveryは、同誘導法を使用した製品の製造・開発販売を北米において行う非独占的な権利を得る。現在Averyの製品は、非臨床試験の段階にあるという。

なお同契約は、公表されている限り、京都大学の保有するiPS細胞由来心筋細胞製造方法として、海外企業に対して臨床応用を目指した技術供与を行う、初めてのライセンス契約となる。マイオリッジは、京都大学よりライセンスを受けた同誘導法に加えて、iPS細胞などの幹細胞や中胚葉由来細胞(心筋細胞、間葉系幹細胞、血球系細胞など)の製造にかかる基盤技術を有している。今後も独自性の高い基盤技術を世の中へ送り出すことで、再生医療の普及に貢献するとしている。

マイオリッジは、京都大学の研究成果を基に2016年8月に設立されたスタートアップ。新規低分子化合物を用いることで高価なタンパク質を必要とせずに、浮遊培養にて多能性細胞を心筋細胞を含む分化細胞へ分化誘導できる基盤技術を保有している。同誘導法は京都大学よりライセンスを受け実施している。

同技術を活用したiPS細胞由来心筋細胞の販売のほか、自社で保有する低分子化合物データベース、特許出願中の培地成分探索技術を活用したオーダーメイドの培地開発支援、製造プロセス開発支援といった、再生医療等製品を開発する企業を対象としたサービスなどの事業を展開している。

Averyは、心血管疾患に苦しむ患者のため高度な治療法を開発している企業で、主要な開発パイプラインは、慢性心不全の治療を目的に開発中の同種再生医療製品MyCardiaとなっている。同社は、独自の製造プロセスを活用しMyCardiaの大規模製造を実現し、凍結保存することで即時使用可能な製品としてMyCardiaを販売する予定。さらに同社は、独自の組織プラットフォームを活用し、他の心血管系疾患を対象とした開発も進めている。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:iPS細胞(用語)医療(用語)京都大学(組織)再生医学・再生医療細胞療法マイオリッジ(企業)日本(国・地域)

ペースメーカーをハッカーから守るため医療機器MedtronicとサイバーセキュリティのSternumが提携

サイバー攻撃を怖いと思うのであれば、もしその攻撃の矛先が心臓ペースメーカーに向けられていたらどうだろうか?医療機器メーカーのMedtronic(メドトロニック)は、ここ数年、同社のペースメーカーがネット上のソフトウェア更新システムを通じてハッキングされていたことで話題になっていた。しかし、イスラエルに拠点を置くIoTサイバーセキュリティのスタートアップであるSternumとの新たなパートナーシップにより、Medtronicはこの問題の解決に注力している。

問題は医療機器そのものではなく、デバイスのアップデートに使われるリモートシステムにあった。Medtronicの以前の解決策はデバイスをインターネットから切り離すことだったが、それ自体が別の問題を引き起こす可能性がある。

「Medtronicは、将来の開発に役立つ長期的なソリューションを求めていました」と、Sternumの創業者兼CEOであるNatali Tshuva(ナタリー・トゥシュヴァ)氏は語る。同社は、すでに約10万台のMedtronic社製デバイスをセキュリティ保護した。

Sternumのソリューションにより、医療機器はリアルタイムで自らを守れる。

トゥシュヴァ氏はTechCrunchにこう語った。「脆弱性との戦いは終わりがありません。企業は脆弱性を発見したらアップデートを行う必要がありますが、医療分野ではアップデートが非常に難しいことが多く、アップデートが行われるまでデバイスは脆弱な状態にあります。そのため当社は、アップデートや脆弱性へのパッチ適用を必要とせずにデバイスを保護できる、デバイス内から動作する自律的なセキュリティを実現しました」。

しかし新しいデバイスを保護するのは、レガシーデバイスをさかのぼって保護するよりも簡単だ。年々ハッカーの手口がますます巧妙になってきているため、医療機器メーカーは、すでに世の中に出回っている機器をいかにして守るか考えなければならない。

「市場ではすでに何百万、あるいは何十億もの医療機器が(ネットワークに)接続されており、セキュリティや管理の面で悪夢となりかねません」とトゥシュヴァ氏は付け加えた。

個人に被害が及ぶ可能性だけでなく、ハッカーはデバイスの脆弱性を利用して病院のネットワークに侵入し、より多くの人々に影響を与える可能性がある。トゥシュヴァ氏は、病院のネットワークは内側から保護されているが、ネットワークに接続する保護されていないデバイスが侵入経路となる可能性があると説明した。

実際、医療機関はあらゆる分野の中で最も多くのデータ漏洩を経験していることが知られており、2020年に報告された全漏洩件数の79%を占めている。また、Health IT Securityのデータによると、2020年の最初の10カ月間で、医療システムへのサイバー攻撃が45%増加しているという。

SternumはMedtronicとの提携に加えて「インターネットに接続されていなくても、デバイスが自分自身を守ることができる」IoTプラットフォームを今週発表したという。

これまでに約1000万ドル(約10億9000万円)を調達しているSternumは、ヘルスケア以外のIoT機器にもサイバーセキュリティを提供しており、トゥシュヴァ氏によると「ミッションクリティカル」な分野に焦点を当てているとのこと。例えば、鉄道インフラのセンサーや管理システム、電力網などがそれに含まれる。

イスラエルで育ち、コンピューターサイエンスの修士号を取得し、イスラエル国防軍の8200部隊(米国の国家安全保障同盟に似ている)に勤務していたトゥシュヴァ氏は、常に医療分野でインパクトを与えたいと考えていたという。「医療分野と自分の人生を結びつけようと考えたとき、遠隔医療機器に貢献できると気づいたのです」と彼女は語った。

カテゴリー:IoT
タグ:MedtronicSternum心臓心臓ペースメーカー医療データ漏洩

画像クレジット:Sternum

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Aya Nakazato)

ベトナムのヘルスケア予約アプリDocosanが1億円以上のシード資金を獲得

ホーチミン市に拠点を置くDocosan(ドコサン)は、アプリで医師を検索・予約できるようにすることで、患者が長い待ち時間を回避できるようにする。同社はベトナム時間4月14日、100万ドル(約1億1000万円)以上のシード資金を調達したことを発表した。これは、ベトナムのヘルステック企業としては過去最大規模のシードラウンドであるという。今回の投資は、台湾を拠点とするアーリーステージへの投資やアクセラレータープログラムを提供するAppWorks(アップワークス)が主導し、加えてDavid Ma(デビッド・マー)氏とHuat Venturesが参加している。

共同創業者で最高経営責任者のBeth Ann Lopez(ベス・アン・ロペス)氏がTechCrunchに語ったところでは、2020年に創業したこのアプリは、約5万人の患者が予約に利用していて、現在では小規模な家族経営の小児科クリニックから大規模な私立病院の神経外科まで、300以上の個別医療機関が登録されている。医療機関は、プラットフォームに登録される前に審査されているが、平均して18年の臨床経験を持っている。

ロペス氏によると、ベトナムでは医師の事前予約は一般的ではないという。ロペス氏は「(一般的に、民間の医療機関を利用する人々は)価格や質に大きな差がある3万以上の民間の病院や診療所の中から自分で選ばなければなりません。そのため、人びとは医療機関を選ぶ際に、家族や友人からの口コミによる推薦を利用しているのです。そして、病院やクリニックに足を運び、時には何時間も列に並んで待つのです」という。

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Docosanのユーザーは、所在地や専門分野などの条件で医療機関を絞り込み、価格情報や認証済みのカスタマーレビューを見ることができる。最近、オンライン決済機能や保険との連携機能が追加された。ハーバード大学のLaunch Lab X(ローンチ・ラボX)に参加した同社は、今後、遠隔医療サービスや薬局サービスも開始する予定だ。

アプリに登録された医療機関にとっては、Docosanが予約と待ち時間の緩和のためのソフトウェアを提供してくれることが1つの重要なセールスポイントとなっている。これは、新型コロナウイルスのパンデミック下では、混雑した待合室に座ることを嫌がる人が多いからだ。ロペス氏は、医師が行わなければならないマーケティングや管理業務の量が減ることで、患者さんに接する時間を増やせるというメリットもあるという。

スタートアップは、他国への進出も計画している。ロペス氏は「Docosanは、大規模で互いにうまく連携していない民間医療システムがある場所ならば、どこでもうまく機能するソリューションです」という。「まるでGrabタクシーを予約するように、名医を簡単に見つけられる世の中になれば、私たち全員が恩恵を受けることができます」。

AppWorksのパートナーであるAndy Tsai(アンディ・サイ)氏は以下のように語る「DocosanがAppWorks Acceleratorに参加してくれたおかげで、同社の可能性に早くから注目できていました。Docosanの創業者たちは、地域のヘルスケア問題に対する豊富な経験を持ち献身的な姿勢を示しています。私たちは、すべての人がより良い医療を受けられるようにしたいというDocosanのビジョンをサポートできることを誇りに思います」。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:Docosanベトナム資金調達医療

画像クレジット:Docosan

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(文:Catherine Shu、翻訳:sako)

医者とすぐにチャットできる小児科アプリのBilobaが処方機能を追加し約1.9億円調達

フランスを拠点とるすスタートアップBilobaは、質問があればいつでも医者とチャットできる小児科アプリをローンチした数カ月後に、140万ユーロ(約1億8000万円)の資金調達ラウンドを実施した。資金調達に加えて、このスタートアップは最近アプリ内処方機能も追加した。

Bilobaのコンセプトは驚くほどシンプルだ。これはモバイルアプリで、子供の医療に関する質問があればいつでも一般開業医や看護師に連絡できる。このサービスは午前8時から午後10時の間に利用できる。

会話はメッセージアプリのようにも見える。メッセージの送受信だけでなく、写真やビデオの送信もできる。リアルタイムのビデオ通話や予約機能はない。Bilobaによると、通常は10分以内に回答が得られるという。

2020年、Bilobaは120万ユーロ(約1億6000万円)のプレシード資金を調達した。2021年の140万ユーロ(約1億8000万円)のシードラウンドをリードしたのはAglaéVenturesとID4で、既存投資家のCalm/Storm Ventures、Inventures、Acequia Capitalそして何人かのエンジェル投資家も再び参加している。

テキストでの会話は、小児科医の診察の代わりにはならない。また幼児が生まれた後も、多くの医療交流や節目がある。ただし質問がある場合は、次の予約を待ちたくはないだろう。

そして対面予約を必要としない比較的無害な問題であれば、Bilobaは処方箋を発行することができる。アプリでは処方箋を受け取り、フランスのすべての薬局で受け付けられる。同スタートアップはこの機能にOrdoclicを使っている。

フランスの国民健康保険制度と民間の健康保険が特に充実しているにもかかわらず、Bilobaは人々が診察ごとに支払うべきではないと考えている。その代わり、このスタートアップはサブスクリプションモデルを選んだ。

保護者は月額12.99ユーロ(約1700円)、3カ月で24.99ユーロ(約3300円)、年額79.99ユーロ(約1万円)を支払う。その後、好きなだけ会話を開始できる。Bilobaへの加入はフランスの国民医療制度の対象ではない。

基本的にBilobaの会費を払う余裕があれば、医師との交流の頻度を増やすことができ、より良い医療アドバイスにつながるはずだ。

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カテゴリー:ネットサービス
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(文:Romain Dillet、翻訳:塚本直樹 / Twitter

マイクロソフトが2.16兆円もの巨額でNuanceを買収し医療分野に邁進

Microsoft(マイクロソフト)が米国時間4月12日朝、Nuance Communications(ニュアンス・コミュニケーションズ)を197億ドル(約2兆1600億円)で買収したとの知らせを受け、朝っぱらからこんな数字を見せられて思わず二度見してしまったとしても無理なからぬことだ。

ランレート140億ドル(約1500億円)の企業にしては、たしかに巨額ではあるが、すでにここ数年間、いくつもの製品で音声文字起こし市場のリーダーである同社と提携関係にあったMicrosoftは、Nuanceが医療分野にしっかり根を張っていることを見極め、大きく出ることを決意した。

たしかに、Microsoftほどの大企業であっても、200億ドル(約2兆1950億円)は大きい数字だ。しかし2020年、レストランから小売店から病院に至るまで、ビジネスのやり方を真剣に考え直すことが強いられた。中でも実際、パンデミックによって我々の医療機関の利用方法は大きく変わった。早々に気づいたのは、わざわざ病院までクルマを走らせ、待合室で待って、診察室に呼ばれ、結局数分間の診察で終わり、なんていう行動は不要だったということだ。

オンラインで接続して、ささっとチャットをすればすべて済む。もちろん、それでは済まない症状もある。医師の診断を直接受けなければならない状況は常に存在するわけだが、検査結果や会話療法などは遠隔で十分だ。

MicrosoftのCEOであるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は、Nuanceはこの変化の、特にクラウドと人工知能の活用法の中心にあり、だからこそ、大枚を叩いてこの企業を買収したのだと話している。

「AIは、非常に重要な最優先技術であり、その活用を最も緊急に必要としているのが医療です。私たちは力を合わせ、このパートナーエコシステムを活かし、Microsoft Cloud in Healthcare(医療用クラウド)とNuanceの成長を加速させつつ、あらゆる場所の医療専門家が、よりよい意志決定ができるよう、またより有意義なつながりが構築されるよう、高度なAIソリューションを提供していきます」とナディア氏は、今回の契約発表の記事の中で述べている。

Constellation Research(コンステレーション・リサーチ)のアナリストHolger Mueller(ホルガー・ミュラー)氏は、そうかもしれないが、Cortana(コルタナ)のチャンスを逸してしまったMicrosoftは、その極めて重要なテクノロジーに追いつくための一助にこれを利用しようと考えていると話す。「NuanceはMicrosoftに、ニューラルネットワークによる音声認識のための技術的なテコ入れを行うだけでなく、垂直機能、コールセンター機能、音声に関するMSFTのIPポジションを大幅に改善させます」と彼はいう。

Microsoftは今回の提携により、すでに5000億ドル(約54兆7800億円)に達しようという途方もないTAM(獲得可能な最大市場規模)が確実になると見ている。TAMは大きめに出る傾向があるとは言え、それでも相当な数字だ。

これはGartner(ガートナー)のデータとも一致する。同社は2022年までに、医療機関の75パーセントが公式なクラウド戦略を持つようになると予測している。AIが加わればその数字はさらに増えることになり、Nuanceは現在の1万件の顧客をMicrosoftにもたらす。その中には世界最大級の医療機関も含まれている。

CRM Essentials(CRMエッセンシャルズ)の創設者で主任アナリストのBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、この提携により、Microsoftには大量の医療データが提供され、それが同社の根底をなす機械学習モデルにフィードされ、やがてその精度を高めていく可能性があると語っている。

「遠隔医療のやりとりで、大量の医療データが収集可能となり、それがまったく新しいレベルの医療情報を生み出すことになります」とリアリー氏は私に話した。

医療データが関係するところでは、当然、プライバシーの問題が多発するだろう。極めてプライベートな医療データをしっかり守ると世間に確約するのは、2021年3月、Exchange(エクスチェンジ)メールサーバーでの大量のデータ流出を起こしたMicrosoftの責任にかかってくる。

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今回の提携の成功を決める鍵は、データのプライバシー保護が握っているとリアリー氏はいう。「この動きのポテンシャルは極めて高いのですが、そこからもたらされるデータや知見が安全に保護されて初めて成功します。ハッカーだけではなく、非倫理的な利用からも守らなければなりません。そのどちらにも、ゲームチェンジにつながる可能性のあるこの動きを脱線させてしまう恐れがあります」と彼は話す。

Microsoftも「NuanceとMicrosoftは、パートナーエコシステムを拡大させるという両社の以前からの約束とデータのプライバシー、セキュリティ、コンプライアンスに関する最高水準の基準をさらに深めます」と書いている時点で、それは認識しているようだ。

Forrester Research(フォレスター・リサーチ)のKate Leggett(ケイト・レゲット)氏は、医療は第一歩に過ぎず、Nuanceがひとたびそこに足場を作れば、さらに奥深くに進んで行く可能性があると考えている。

「しかし、今回の買収による恩恵は医療にとどまりません。Nuanceも、深い専門性に支えられ、金融サービスなどの垂直部門にフォーカスした、市場をリードする顧客エンゲージメント技術を提供します。MSFTが業務用から他の垂直市場に移行するにつれ、他の業界に恩恵をもたらすようになります。MSFTが業務用はまた、Dynamics(ダイナミクス)ソリューションとNuanceの顧客エンゲージメント技術との隙間を埋める方向に進むでしょう」とレゲット氏はいう。

今後の医療機関の診療のかたちがどう変化するか、私たちはまさにその潮の変わり目に立ち会っている。2020年、新型コロナウイルスによって医療はデジタル世界に大きく踏み込むこととなった。それは、1つの簡単な理由から起きた。本当に必要でない限り、病院へ行くのは危ないという考えだ。

Nuanceの買収は、2021年後半に完了するものと見られるが、これによりMicrosoftの医療市場への参入が大きく進むことになる。Teams(ティームズ)も面接ツールとして導入される可能性があるが、それはこのアプローチを人々がどれほど信頼するかにかかっている。そしてそれは、Microsoftが医療提供者とその利用者の両方からの信頼をいかに獲得するかにかかっている。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:MicrosoftNuance Communications買収文字起こし医療遠隔医療

画像クレジット:nadia_bormotova / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:金井哲夫)

手術支援ロボットを手がけるMemicが約105億円の資金を調達

Memic(メミック)は、ロボット支援手術プラットフォームの開発を手がけ、最近、米国食品医薬品局から販売承認を取得したスタートアップ企業だ。同社は米国時間4月12日、9600万ドル(約105億円)を調達してシリーズD投資ラウンドを完了したと発表した。このラウンドはPeregrine Ventures(ペレグリン・ベンチャーズ)とCeros(セロス)が主導し、OurCrowd(アワークラウド)とAccelmed(アクセルメッド)が参加した。同社は今回の資金調達により、米国内でのプラットフォームの商業化と、米国外におけるマーケティングおよび販売活動の拡大を計画している。

Crunchbaseによると、同社は過去に総額3180万ドル(約34億8000万円)の資金を調達しており、そのうち約1250万ドル(約13億7000万円)はクラウドソーシングプラットフォームのOurCrowdを通じて調達している。

画像クレジット:Memic

同社が「Hominis(ホミニス)」と呼ぶプラットフォームは「良性子宮摘出術を含む単一部位の自然開口部経腟腹腔鏡下外科手術」への使用が認可されている。ただし、人間の介入なしにロボットが手術を行うわけではなく、外科医が中央のコンソールから装置とロボットアームを制御するということには留意しておくべきだろう。同社によると、この器具は外科医の腕の動きを再現するように設計されているという。現時点では、ある特定の種類の手術にしか認可されていないものの、このようなシステムが有益な他の手術にも幅広く使われることをMemicは目指している。

「Hominisシステムは、数十億ドル(数千億円)規模で成長を続けるロボット手術市場において、著しい進歩を象徴しています。今回の資金調達によって商業化への取り組みを加速させ、今後数カ月のうちに、Hominisを外科医と患者さんの両方のお役に立てていたくことができるようになります」と、Memicの共同設立者でCEOを務めるDvir Cohen(ドビル・コヘン)氏は述べている。

同じようなコンピュータ支援型の手術システムは、すでにさまざまな製品が販売されていることも記しておくべきだろう。例えば、2021年3月にはAsensus Surgical(アセンサス・サージカル)が、同社の腹腔鏡プラットフォームを一般外科手術に使用するためのFDA認可を取得した。一方、眼科手術用ロボットのスタートアップ企業であるForSight(フォーサイト)は最近、同社のプラットフォームのために1000万ドル(約11億円)のシード資金を調達している。

関連記事:眼科手術ロボットスタートアップForSightが約11億円を調達

しかし、MemicのHominisは、良性経膣手術に承認された最初のロボット機器であり、同社とその投資家は、これが将来的にさらなる使用例につながる最初の足がかりになると確信している。

「Hominisの幅広い可能性とMemicの強力な経営陣の組み合わせを考慮し、私たちは同社とその大胆なビジョンの実行を支援できることを誇りに思います」と、Peregrine VenturesのマネージングゼネラルパートナーであるEyal Lifschitz(エヤル・リフシッツ)氏は述べている。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Memic資金調達医療手術FDA

画像クレジット:Memic

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

モバイル機器に搭載可能な新型コロナウイルス検出センサー開発でGE技術研究開発部門がNIHの助成金を獲得

モバイル機器に搭載可能な新型コロナウイルス検出センサー開発でGE技術研究開発部門がNIHの助成金を獲得

GE Research

世界最大の米総合電機メーカーGeneral Electric(GE)の技術研究開発部門GE Researchが、スマートフォンなどモバイルデバイスのディスプレイやテーブルなど、あらゆる表面上の新型コロナウイルスを検出できる小型センサーの開発で、米国立衛生研究所(NIH)の助成金を獲得したと発表しました。今後2年間のプロジェクトで、検出精度の向上などを行うとしています。

通常、ウイルスの検出には電子レンジサイズの分析器が必要となりますが、GE Researchが開発したのは、それと同じ検出機能を備えつつ指先よりも小さい小型のセンサー。この小型化は、もともと新型コロナウイルスを目的にしたものではなく、過去10年間の研究の成果とのこと。センサーの小型化により、スマートフォンの画面や指紋センサー、あるいはキーボードなどに組み込める可能性があるとしています。

実験室と違い、これらのデバイスが使われる環境では、様々な種類のウイルスや菌、微粒子などが存在しており、その検出精度が気になるところ。これについてGE Researchの主任科学者であるRadislav Potyrailo氏は、開発中のセンシング技術は、他の要素からの分離性能に優れ、信頼性が非常に高いとしています。

Potyrailo氏は「私たちのセンサーは一種のブラッドハウンド(嗅覚の鋭い猟犬)のようなものだ」とも述べています。「特定のものを検出するよう訓練されており、他のものに邪魔されることなく、うまく検出できるのです」

助成金を受け、今後2年間でセンサーを改良し、新型コロナウイルスに関連するような懸念される数個のナノ粒子を、一般的な環境の中で確実に検出できることを実証する予定だとしています。

2年後では、新型コロナ対策としてはやや遅い気もしますが、技術的にはインフルエンザやノロなど、他のウイルスにも活用できるなら実用性は高そうです。数年後には、ウイルス検出はスマートフォンで行う時代が来るのかもしれません。

(Source:GEEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:医療(用語)新型コロナウイルス(用語)センサー(用語)General Electric / ゼネラルエレクトリック(企業)GE Research米国立衛生研究所 / NIH(組織)

「フランスの孫正義」も支援する女性のためのヘルスケアスーパーアプリ「Nabla」

フランスのスタートアップNablaは中央ヨーロッパ時間4月7日、女性の健康に焦点を当てた新しいアプリを発表した。同社は、ユーザーの健康維持に貢献するいくつかのサービスを提供している。要約すると、Nablaは医師とのチャットやコミュニティコンテンツを提供し、すべての医療データの一元管理を支援する。近々、遠隔医療の予約も提供する予定だ。

今のところNablaの主な機能は、医療従事者との会話を始められることだ。ユーザーは一般開業医、婦人科医、助産師、看護師、栄養士、理学療法士などにメッセージを送ることができる。

対面のアポイントメントに完全に代わるものではないが、テキストでのディスカッションは間違いなく参考になる。医療従事者との対話の回数を増やすことで、より健康的な生活を送ることができ、さらに対面の予約を増やすことにつながるかもしれない。

フランスの他のスタートアップも、医療従事者とのテキスト会話を提供している。例えば健康保険会社のAlanでは、一般開業医とメッセージのやり取りができるが、Alanの保険に加入している必要がある。また、Bilobaも医師とのチャットを可能にしているが、同社は小児科に特化している。

Nablaの場合は異なる位置づけで、この機能を無料で提供している。ただし、質問を送れるのは月に数回までという制限がある。よくある質問であれば、コミュニティから回答が得られるかもしれない。Nablaの医師がコミュニティコンテンツをキュレーションすることもある。

無料の製品を使って自分の健康について語るのは、怪しい感じがする。しかしそれが可能なのは、このスタートアップが潤沢な資金を持っており、プレミアム機能を立ち上げる予定だからだ。

画像クレジット:Nabla

同社は2020万ドル(1700万ユーロ、約22億円)の資金を調達しており、すでに医師のチームと協力して、同社の最初のユーザー(患者)たちからの質問に答える準備ができている。同社への投資家には、Station F(スタシオン・エフ)を創立しマクロン仏大統領に「フランスの孫正義」と呼ばれたXavier Niel(グザビエ・ニール)氏、Artemis、Zendeskに買収されたBIME Analyticsの共同創業者Rachel Delacour(レイチェル・デラクール)氏、Instagram(インスタグラム)の南ヨーロッパブランド開発リーダーであるJulie Pellet(ジュリー・ペレ)氏、エンジェル投資家でMatch.comに買収されたMeeticの元CEOであるMarc Simoncini(マルク・シモンチーニ )氏、そしてFirstminute Capitalなどが含まれる。

Nablaがアプリをリリースする前にこれだけの資金を調達できた理由の1つは、3人の共同創業者がテックエコシステムで実績を持っていることだ。

共同創業者でCEOのAlexandre Lebrun(アレクサンドル・ルブラン)氏は、これまでにNuanceに買収されたVirtuOzや、Facebook(フェイスブック)に買収されたWit.aiを創業してきた。最近では、FacebookのAI研究チーム(FAIR)に所属していた。

共同創業者でCOOのDelphine Groll(デルフィーヌ・グロール)氏は、2つの大手メディアグループ、AufemininMy Little Parisで事業開発とコミュニケーションを統括してきた。また、共同創業者でCTOのMartin Raison(マーティン・レゾン)氏は、Wit.aiとFacebookの両社でルブラン氏と肩を並べて仕事をした経験がある。

Nablaはテキストでの会話に加えて、過去のやり取りをすべてパーソナルログとして表示する。そのログを、Apple(アップル)のHealthアプリやClue、Withingsなどの他のアプリやサービスと連携させることができる。こうすることで、同じアプリからすべてのデータを見ることができる。

お察しの通り、このスタートアップは、予防医療やホリスティック・ケアに関して、機械学習が役立つと固く信じている。デフォルトでは、機械学習の目的でNablaと共有される情報はない。だがユーザーはオプトインして、プロセスやパーソナライゼーションなどの改善のためにデータを共有することができる。

いずれNablaは、医師とのやり取りを可能な限り最適化したいと考えている。医師に完全に取って代わるのではなく、医師が人間的で共感的な部分に集中できるように、医療現場でのやり取りを向上させたいと考えているのだという。

Nablaは、医師とリアルタイムで対話できる遠隔医療サービスや、より多くの機能を備えたプレミアムサービスの提供を予定している。それは意欲的なロードマップであり、Nablaが当初のビジョンを守り、忠実なユーザーベースを見つけられるかどうか、長い目で見守っていく必要がありそうだ。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Nablaフランス遠隔医療医療女性

画像クレジット:Hush Naidoo / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

在宅・被災地などの医療現場でリアルタイム検査が可能な免疫センサー機器を開発するイムノセンスが1.3億円調達

在宅・被災地などの医療現場でリアルタイム検査が可能な免疫センサー機器を開発するイムノセンスが1.3億円調達

大阪大学発スタートアップ「イムノセンス」は4月5日、総額1億3000万円の資金調達を発表した。引受先はOUVC1号投資事業有限責任組合(大阪大学ベンチャーキャピタル。OUVC1号ファンド)、メハーゲングループ。

イムノセンスでは、2018年1月の創業以来、OUVCから調達した資金を活用して研究開発を進めた結果、同社が手がける免疫センサーの量産設計と上市に向けた薬事体制の構築が完了した。今回の調達資金により、医療機器(体外診断用医薬品)としての上市に向けた取り組みを一層加速する。

イムノセンスは、大阪大学産業科学研究所特任教授 民谷栄一氏が開発した「GLEIA法」という免疫反応と電気化学反応を組み合わせた独自の免疫測定技術を活用し、POCT(Point of care testing)向け免疫センサーデバイスの開発に取り組むスタートアップ企業。POCTとは、診療所・在宅・遠隔地・災害現場など様々な医療現場で行われるリアルタイム検査の総称という。

同社の開発する免疫センサーは、心不全や塞栓症など様々な疾患を迅速診断するための免疫検査デバイス。血糖値計のように一滴の血液から疾病マーカーを測定し、数分で検査が完了することから診療所などでの迅速診断に活用可能で、既存測定装置と比較して、小型・低価格・高感度という強みを有しているそうだ。

試作機では、手のひらサイズの測定器と使い捨て小型センサーを組み合わせ、大型の測定機器と同等の高感度であることが検証できているという。

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医療ICTのアルムが約56億円をシリーズA調達、コロナ禍拡大に対応するソリューション開発・研究開発に投資

医療ICTのアルムが約56億円をシリーズA調達、コロナ禍拡大に対応するソリューション開発・研究開発に投資

医療ICTベンチャーのアルムは4月5日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額約56億円の資金調達を完了したと発表した。引受先は、SOMPOホールディングス、三井物産、エーザイ、ロイヤル フィリップス、エヌアイデイ、CYBERDYNE、フィナンシャル・エージェンシー、ミクシィ、キャピタルメディカ、ベクトル、SBIインベストメント、Bonds Investment Group、みずほキャピタル、Asia Africa Investment and Consultingおよび個人株主。

調達した資金は、国内外における事業の拡大と成長に活用する。新型コロナウイルス感染症の感染拡大に対応するためのソリューション開発を含む研究開発投資を積極的に実施することで、医療・ヘルスケア業界のニーズに素早く応え、急速に変革する社会にさらに貢献する。

アルムは、2021年について、東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う人の移動の増加により、新型コロナウイルス感染症の拡大が課題となる中で、ワクチン接種の開始をはじめとする「新型コロナウイルス感染症の制御が本格化する年」と捉えているという。

そこで、地域包括ケア推進ソリューション「Team」および救命・健康サポートアプリ「MySOS」を連携させた、自宅・宿泊施設療養者向けモニタリングシステムや、PCR検査の結果がいち早く届くサービスを強化し、より一層の安全・安心の提供や経済活動の両立を目指したソリューションの開発・提供を推進するとしている。

また、医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join」のネットワークを活用した治験サポートサービスの強化や、手術映像等を院外へ配信するストリーミングサービスを活用した教育・医療サポートサービスなどの新しい価値創造を加速。Joinのプラットフォーム化を強化し、医療AIサービスとの連携を強め、医療現場の働き方改革に貢献する。

さらに、医療データを活用した新型保険商品の開発など、新たな収益構造を構築するとしている。

Joinは、医療関係者がセキュアな環境でコミュニケーションをとれるアプリ。標準搭載のDICOMビューワーにより医用画像を閲覧、チャットに共有可能。夜間休日などに院外にいる医師へのコンサルテーションツールとしての活用や、救急患者の転院の際の病院間連携・情報共有などに利用できるという。日本で初めて保険収載されたプログラム医療機器(販売名は汎用画像診断装置用プログラム「Join」)。

Teamは、医療・介護サービスをシームレスにつなぎ、地域包括ケアシステムの推進をサポートするソリューション。介護事業所向けアプリ「Kaigo」や看護事業所向けアプリ「Kango」で記録した業務内容などを多職種間で情報共有・連携が可能。

MySOSは、患者自身や家族の健康・医療記録を行い、救急時などのいざという時にスムーズな対応をサポートするアプリ。健康診断結果やMRI・CTなどの医用画像をスマホで確認可能。PHR(Personal Health Record)としても活用でき日々の健康管理に役立てられる。

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