HoloeyesとDental Prediction、5GネットワークとVR空間を利用した国際間遠隔医療カンファレンスの実証実験

Holoeyes、5GネットワークとVR空間を利用した国際間遠隔医療カンファレンスの実証実験を実施

医療用画像処理ソフトウェアなどを提供するHoloeyes(ホロアイズ)と歯科医療スタートアップDental Prediction(デンタル・プレディクション)は1月17日、Holoeyesが提供する医療用画像表示サービス(非医療機器)「Holoeyes XR」とオンライン遠隔共有カンファレンスサービス「Holoeyes VS」を活用し、日本とシンガポールの医師が参加する国際間遠隔カンファレンスの実証実験を実施した。5Gネットワークを活用したVR空間での国際間遠隔医療カンファレンスは、世界初の試みとなる。

この実証実験では、シンガポールの大手通信会社Singtel(シングテル)の実験施設「5G Garage」とNTTドコモの「ドコモ5GオープンラボYotsuya」を利用し、NTT DOCOMO ASIAの現地サポートを受けて、日本とシンガポールを5Gでつなぎ、遠隔カンファレンスを2回行った。

1回目は、HoloeyesのCOO兼CMOである帝京大学冲永総合研究所教授の杉本真樹氏による、シンガポールの消化器外科医2名に対する肝臓の腫瘍切除の模擬カンファレンス。もう1回は、Dental Predictionの歯科医、宇野澤元春氏とニューヨーク大学歯学部准教授の岡崎勝至氏が、シンガポールの日本人歯科医師に対するインプラント治療や歯内療法、歯科器具に関する説明を、歯列の3DモデルをVR空間で操作しながら行うというものだった。HoloeyesとDental Prediction、5GネットワークとVR空間を利用した国際間遠隔医療カンファレンスの実証実験

この実験について、シンガポールの消化器外科医の1人によると、ストレスなくカンファレンスの体験ができたという。「患者への説明、若い外科医の教育、手術計画など意志決定のためのツールとして使用できる」と話している。

科学的根拠に基づくADHDサポートアプリ「Inflow」がシードで約2.6億円を調達

注意欠陥・多動性障害(ADHD)の症状には、不安、慢性的な退屈、衝動性、集中力が続かない、怒りのコントロール、さらにはうつ病などがある。しかし、ADHDの患者は、評価を受けるための長い待機期間や、非常に高価な治療に直面することが多い。

2020年に設立されたあるスタートアップは、臨床医やコーチのチームの知識をアプリに注ぎ込み、ADHDの症状に対処するためのガイド付きプログラムを提供することで、この問題を解決しようとしている。そのために、Inflowは、ユーザーが認知行動療法(CBT)の対処ストラテジーを日常生活に導入できるようにすると主張している。

2020年、InflowはRhythm VCとエンジェル投資家から68万ドル(約7800万円)を調達した。同社は今回、ロンドンのHoxton Venturesが主導するラウンドでシード資金として230万ドル(約2億6400万円)を調達した。

Y Combinatorr(YC、Yコンビネータ)の21バッチ卒業生であるInflowは、米国を拠点とするRoute 66 Venturesの参加も得ている。

また、複数の著名なエンジェル投資家が同社を支援しており、その中には、依存症デジタルクリニック「Quit Genius」の共同創業者Yusuf Sherwani(ユスフ・シェルワニ)氏、Maroof Ahmed(マルーフ・アーメド)氏、Sarim Siddiqui(サリム・シディキ)氏や、法律サービスのチャットボット「DoNotPay」のCEOであるJoshua Browder(ジョシュア・ブラウダー)氏らが含まれている。

ただし、このアプリはまだ独立した臨床試験を経ていないことを指摘しておかなければならないが、同社によれば、それは年内に予定されているという。

同社の広報担当者は次のように述べている。「臨床試験の準備として、米国リッチモンド大学のLaura Knouse(ローラ・ノウス)博士と共同で、ユーザビリティとフィージビリティの研究を行いました。この研究では、事前と事後の症状と機能障害の評価を行い、Journal of Attention Disordersに投稿しました」。

Seb Isaacs(セブ・アイザックス)氏、元Babylon HealthのプロダクトマネージャーであるLevi Epstein(リーバイ・エプスタイン)氏、ADHDの専門家であるGeorge Sachs(ジョージ・サックス)博士によって2020年に設立されたInflowは、今回の資金調達によりチームを拡大し、追加ツールやサービスを展開していく。

InFlowのアプリ

Inflowは「SimpleMind Pro」「Brain Focus」「Focus@Will」などのアプリが存在するADHDアプリ市場の中で競合することになるが、実際のところ、ほとんどのアプリは、ADHDの当事者が使用できる可能性のある生産性向上アプリとして宣伝されているに過ぎない。

Inflowの仕組みは、ユーザーが毎日の短いエクササイズや課題をこなすことで健康的な習慣を身につけ、スキルを学び、ADHDに特化したマインドフルネス技術を実践し、自分の神経学的な差異を知り、ネガティブな思考をリフレーミングするというものだという。

Inflowは、毎月1万5千回以上ダウンロードされているとしている。

共同創業者のSeb Isaacs(セブ・アイザックス)氏はこう述べている。「私たちは、ADHDのケアプロセスを簡素化し、ケアが行き届いていない何百万人ものADHD患者にリーチできると確信していました。Inflowは、すでに多くの課題を抱えているメンタルヘルスシステムでは実現できない、即時かつ手頃な価格のオンデマンドサポートを提供することができます。ウェイティングリストや紹介の必要もなく、複雑な受け入れプロセスもありません」。

Hoxton VenturesのパートナーであるHussein Kanji(フセイン・カンジ)氏は次のように述べている。「ADHDを持つすべての人に成功して欲しいというミッションをInflowが果たすのを見守ることができて光栄です」。

画像クレジット:InFlow founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

大阪大学医学部付属病院とTXP Medical、治験や臨床研究のデータを標準化し効率化する電子ワークシートの共同開発を開始

大阪大学医学部付属病院とTXP Medical、治験や臨床研究のデータを標準化・効率化する電子ワークシートの共同研究を開始

大阪大学医学部附属病院とヘルステック企業TXP Medicalは1月11日、治験や臨床研究のデータ収集を標準化し効率化することを目的とした電子ワークシート(症例報告書)開発のための共同研究を開始すると発表した。治験や臨床研究の現場担当者の負担を軽減し、医薬品、医療機器開発の発展に貢献するという。

通常の診療とは異なり、治験では特別な臨床データの収集が必要となる。通常それら被験者情報は、紙媒体のワークシート(症例報告書)に記入され管理されている。臨床試験値など、病院内でデータ化され電子的に管理されている情報であっても、医師や臨床研究コーディネーターがそれをワークシートに転記して、さらに治験依頼者が用意したEDC(Electronic Data Capture System)に打ち込むという作業が求められることもある。

その結果、電子カルテ、ワークシート、EDCと3つの異なるデータソースの整合性を確認する必要が生じ、ワークシートに修正があれば、整合性確認をその都度行わなければならなくなる。担当者の負担は増大し、多くの時間も食われる。転記ミスやチェック漏れなどのヒューマンエラーが起きる恐れも少なくない。

大阪大学医学部付属病院とTXP Medical、治験や臨床研究のデータを標準化・効率化する電子ワークシートの共同研究を開始

そうした手作業を軽減しようと、電子ワークシートの開発が開始された。まずは、過去の治験のデータを使って電子ワークシートのシステムを開発し、実現可能性の評価を行う。ベースとなるシステム開発完了後に、実際の治験や臨床研究に適用し、さらに評価を行うとしている。

電子ワークシートによって、業務の流れは以下のようになる。

  1. 電子カルテ入力時にテキスト構造化システムを用いて患者基本情報や基礎疾患情報、有害事象と考えられる記載を自動抽出し構造化
  2. 治験特有の評価項目を電子ワークシートに入力
  3. 他院の服薬情報や臨床検査値はOCRで院内環境の電子カルテより抽出し構造化
  4. 院内ネットワークに構築された治験に必要な構造化データをQRコードに変換し、院外ネットワークの電子ワークシートに統合

電子ワークシートは、2022年3月末をめどに大阪大学病院所属のCRCグループと共同でブラッシュアップし、仕様を決定する。そして4月末をめどに効果推定を行い、大阪大学病院の新規治験で試験活用が開始される。実用性が確認された段階で、他の医療機関にも展開を開始する予定。

マスクに磁石で固定する「顔用FitBit」はヘルストラッキングに加えフィットもモニター

おそらく2022年は、コンシューマーヘルストラッキングが手首から他の場所へと広がる年になるだろう。ここ数年Ouraの台頭を見てきたが、CESではいくつかのリング型フィットネストラッカーが登場した。Google(グーグル)がNest Homeにバイタルや睡眠トラッキング機能を追加したのに続き、Sengledはスマート電球に健康状態の測定機能を追加している。

では、マスクはどうだろうか?健康に関連したフェイスカバーは中国など多くの国で古くから定着しており、現在のパンデミックワールドではいたるところに存在する。米国での一般的なマスクの利用がコロナ禍が終わってからも続くかどうかはわからないが、パンデミックが長期化する中で、当面は日常生活の一部として使われる可能性が高くなってきている。

画像クレジット:Northwestern University

顔は、特定のバイタルサインをモニターするのに適した位置にある。また、マスクの普及により、比較的固定された場所でデータを収集できる。そこで、ノースウエスタン大学のチームは、N95マスク、サージカルマスク、布製マスクなどに磁石で取り付けるいわば顔用FitBit「FaceBit」を発表した。FaceBitは、N95やサージカルマスク、布製マスクなどに磁石で取り付け、呼吸数や心拍数、マスク着用時間などをモニターすることができる。

チームリーダーのJosiah Hester(ジョサイア・ヘスター)准教授は声明の中でこう述べている。「私たちは、医療従事者のためのインテリジェントなマスクをデザインしたいと考えました。それも、シフトの途中で不便になるようなコンセントは必要ないものを。さまざまななソースからのエネルギーハーベスティングでバッテリーのエネルギーを増強したことで、1~2週間、バッテリーの充電や交換をせずにマスクを装着できるようになりました」。

このシステムは最近論文で詳細が発表されたが、マスクの使用に慣れていない人にとっての問題である、マスクの適正フィットも判断できる。マスクが緩んだり、位置がずれたりすると、接続されたアプリが着用者に警告を発する。現在、このシステムのバッテリーは1回の充電で約11日間持続するが、同大チームは、熱エネルギーや運動エネルギーなどを利用したバッテリーレスのバージョンを構想しているという。

製品開発を進めるにはさらなる臨床試験が必要となるが、本プロジェクトは関心のある人のためにオープンソース製品としても提供されている。

画像クレジット:Northwestern University

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

医師を退屈なデータ入力から解放、AI駆動の転写プラットフォームDeepScribeが約34億円調達

AIを活用した医療用転写プラットフォームのDeepScribe(ディープスクライブ)は、Index VenturesのNina Achadjian(ニーナ・アチャドジアン)氏がリードし、Scale.aiのCEOのAlex Wang(アレックス・ワン)氏、FigmaのCEOのDylan Field(ディラン・フィールド)氏、既存投資家のBee Partners、Stage 2 Capital、1984 Venturesが参加したシリーズAラウンドで3000万ドル(約34億円)を調達した。DeepScribeの今回の資金調達は、2021年5月に発表された520万ドル(約6億円)のシードラウンドに続くものだ。DeepScribeは、医師を退屈なデータ入力から解放し、患者にフォーカスできるようにすることを目的に、Akilesh Bapu(アキレッシュ・バプ)氏、Matthew Ko(マシュー・コー)氏、Kairui Zeng(カイリュー・ゼン)氏によって2017年に設立された。

2019年、DeepScribeは患者と医師の自然な会話を要約するアンビエント音声AI技術を発表した。DeepScribeのアイデアは、バプ氏とコー氏の体験が発端だ。バプ氏の父親はがん専門医で、文書作成が父親のワークライフバランスに与える負担を目の当たりにした。一方、コー氏は、乳がんと診断された母親のケアを管理していたとき、診療記録の負担が患者のケアに対する認識にどのような影響を及ぼしているかを目の当たりにした。

母親が受けていたケアに不満を感じたコー氏は、バプ氏とその父親に助けを求めた。そして、診察記録の重要性を理解し始めた2人は、近年の人工知能や自然言語処理の飛躍的な進歩が、この状況を改善するために活用されていないことに気づいた。そこで、この問題を解決するプラットフォームを構築すること決意した。

「この分野の製品を調査した後、75%以上の医療従事者がこの分野の文書作成ツールを使っているのに、それでもなぜ彼らが半日近くをメモ書きに費やしているのか疑問に思いました」と、コー氏は電子メールでTechCrunchに述べた。「製品をテストした後、私たちの結論は、この分野の既存の製品では医師が会話を要約する必要があるために問題を解決していない、というものでした。音声テキスト化ソリューションは、あなたがが話した内容を正確にコンピュータの画面上のテキストに変換することしかできませんでした。医師が求めていたのは、患者との自然な会話を理解し、要約することができるアンビエントAIでした。この洞察をもとに、私たちは世界初のアンビエントAIスクライブ、つまり現在のDeepScribeの構築に着手しました」。

医師がアプリケーションを起動すると、DeepScribeは会話を録音し、要約して、医師が選択した医療記録システムに統合する。アプリは、聞きながら患者の診察を録音し、診察記録を準備する。その後DeepScribeは、電子カルテ (EHR) のフィールドにメモを直接アップロードし、医師は適切なEHRフィールドに完全に準備されたメモを確認し、署名することができる。

このアプリケーションはおしゃべりに対応していて、会話には医学的に関連する情報のみが含まれる。また、医師の会話スタイル、好みの言い回し、文章の好みなどを聞き、学習することで、AIスクライブは継続的に賢くなるという。

過去1年半の間に全米で医師400人超がDeepScribeを利用し、50万件以上の患者・医師間の会話を処理してきた。DeepScribeによると、同社のプラットフォームを活用することで医師は1日平均3時間を節約でき、コストは人間による記録の約6分の1だ。これまでに、同社は医師の文書作成にかかる時間、250万分以上を節約した。信頼性に関しては、20日間の使用後、医師はメモ1枚につき平均1回以下の修正しか行わなかった、とDeepScribeは話す。

DeepScribeは、今回の資金調達によりDeepScribeの成長が加速し、今後も医療文書作成ワークフローとヘルスケア全体の改善と変革に取り組んでいくと話す。自社の技術を複数の大規模医療システムに展開し、エンジニアリングチームを成長させ、自社のAIをより多くの医師の手に渡すことを目指している。

「当社のロードマップには多くのものがありますが、最もワクワクさせるのは、純粋な要約以外の可能性です」とコー氏は話す。「音声が未来の医療の構成要素になると信じていて、お馴染みのケアの診断と治療を変換する能力を持っています。サービスの提供を通じて収集したデータを活用し、医師に効率化を提供するにとどまらず、患者の転帰を改善したいと考えています」。

画像クレジット:DeepScribe

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

Magic Leapがヘルスケア関連企業に新型ARヘッドセットへの早期アクセスを提供、2022年半ばの発売に先駆け

Magic Leap(マジックリープ)は、2022年後半に予定されている企業向けのリリースに先駆けて、ヘルスケアスタートアップ4社に第2世代ARヘッドセットへの早期アクセスを提供した。この早期アクセスプログラム企業の1つであるSentiARは、医師が患者の手術中に心臓の3Dモデルを見ることができるソフトウェアを提供している。また、Brainlabは、同社のMixed Reality ViewerソフトウェアをMagic Leap 2で利用できるようにしたいと考えている。

Magic Leapが最新のウェアラブルをデジタルヘルスケアのスタートアップに最初に提供しているのは驚くことではない。2021年4月の時点で、Peggy Johnson(ペギー・ジョンソン)CEOのはそう示唆していた。「拡張現実(AR)は、少なくとも短期的には、他のどの業界よりもヘルスケアを変革する可能性があります」と同氏は当時述べ、発売時には企業顧客に焦点を当てるとしていた。

Magic Leapは、シリコンバレーで最も注目されているスタートアップの1つとして登場して以来、苦境を強いられてきたことで有名だ。2019年には、2300ドル(約26万円)のヘッドセット「Magic Leap One Creator Edition」が発売されてから半年間で6千台しか売れなかったことが報じられた。その後、3億5000万ドル(約401億2000万円)の投資によって新たな命を吹き込まれるまでの数カ月間、従業員の解雇を繰り返していた。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Igor Bonifacic(イゴール・ボニファシッチ)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Bram Van Oost / EyeEm / Getty Images

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Aya Nakazato)

ヘルスケアテックの仏Doctolibが暗号化スタートアップTankerを買収

フランスのスタートアップDoctolib(ドクトリブ)は、米国時間1月11日にTanker(タンカー)の買収手続きを完了する見込みだ(当局への提出書類による)。Doctolibはフランスのユニコーンで、医者や医療従事者の管理業務を支援する「サービスとしてのソフトウェア」を開発している。具体的には、医者と患者を引き合わせる予約プラットフォームとして機能し、ヨーロッパで30万の医療専門家が有償で利用し、6000万人の患者がDocolibを利用している。

Tankerは、医療テック企業がユーザーデータを安全に管理するのを支援するスタートアップだ。同社はプロトコルを開発するとともに、ウェブアプリやモバイルアプリ、デスクトップアプリに統合するためのクライアントサイド開発キットを提供している。

アプリにTankerを統合すると、患者と医療従事者の間で共有されるメッセージやファイルがエンド・ツー・エンドで暗号化される。Tankerも、Tankerの顧客もファイルやメッセージを解読することは不可能で、それはプライベート暗号キーをアクセスできないからだ。つまり、送り主か受け手でない限り、データを解読することはできない。

医療業界に焦点を当てているTankerは、Doctolibの他に、医療保険スタートアップのAlan(アラン)や遠隔医療のスタートアップQare(ケア)の名前が同社ウェブサイトの顧客リストに載っている。2020年6月にDoctolibは、Tankerとの提携によって、エンド・ツー・エンド暗号化を導入したことを発表した。

ある情報源が、DoctolibとTankerとの取引の詳細がかかれた2022年1月3日の当局提出資料を送ってきた。2021年12月22日に提出された前回の資料も買収に言及している。いずれの書類もPappers(パッパー)で見ることができる。

「DoctolibはTankerという会社の株式を買い取る計画です」と弁護士が書簡に書いている。「この取引は2021年12月9日に署名された合意書に基づいて実行され、Tankerの株式資本の100%がDoctolibに移管されます」。

直近の提出書類では2022年1月11日が取引完了日となっていて、それは本日にあたる。別の情報源は、買収が現在進行中だと私に伝えた。TechCrunchはDoctolibに連絡を取ったが、本件については「ノーコメント」という返答だった。

法定書類によると、DoctolibはTankerを現金および株取引によって買収し、Tankerの価値を2800万〜3400万ドル(約32億3000万~39億2000万円)としている。

企業価値の謎

昨日私は、Doctolibの最近の指標と今後の製品リリースに関する記者会見について書いた。興味深いのは、Doctolibの共同ファウンダー・CEOであるStanislas Niox-Chateau(スタニスラス・ニオックス=シャトー)氏が、同社は「過去数年、調達ラウンドについて発表していません。毎年、毎四半期、投資家のみなさんは、当社の長期計画に基づいて、追加あるいは初めて投資しています」と語ったことだ。

関連記事:フランス、ドイツ、イタリアの30万人もの医師や医療従事者に使用されている仏Doctolibのツール群

遡って2019年、同社は企業価値が11億3000万ドル(約1302億9000億円)に達したと発表した。Doctolibが調達ラウンドについて話したのはそれが最後だった。

しかしそれは最新の調達ラウンドではない。例えばCharlie Perreau(シャーリー・ペロー)氏は、General Atlantic(ゼネラル・アトランティック)が2020年2月に6900万ドル(約79億5000万円)を同社に投資したことを指摘している。

同社の企業価値に関していうと、Tankerの買収に基づくとDoctolibの1株の価値は170.91ユーロだ。Doctolibの株数は約1800万株なので、Doctolibの企業価値は約30億ユーロ(約3932億2000万円)ということになる。

この評価額はDoctolibのユーザー基盤(30万人)とDoctolibの最低料金(月額129ユーロ[約1万6900円])を考えると低く感じる。おそらくDoctolibの株価は、Tankerの投資家への好意から、やや低くつけられているのだろう。おそらくDoctolibは、しばらく資金調達をせず、近々高い企業価値で調達しようとしているのだろう。今のところは謎のままだ。

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画像クレジット:Doctolib

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nob Takahashi / facebook

豪Fertilisが体外受精胚培養の自動化に向け約2億円調達

Fertilis共同創業者のジェレミー・トンプソン教授(画像クレジット:Fertilis)

体外受精(IVF)を患者と臨床医にとってよりストレスの少ないものに、そしてIVFをより成功させようと世界の多くの企業が取り組んでいるが、アデレード拠点のスタートアップFertilis(ファーティリス)はその輪に加わった最新の企業だ。

創業2年のFertilisは、超小型医療機器を使って細胞培養を自動化する技術で投資家から支持を取り付けた。香港の大物Li Ka-shing(李嘉誠)氏のベンチャーキャピタルで、Facebook(フェイスブック)やSpotify(スポティファイ)の初期投資家でもあるHorizons Venturesはこのほど、Fertilisの275万豪ドル(約2億円)のシードラウンドをリードした。他の投資家は明らかにされていない。

英国の国民保健サービスによると、2019年に出産に至った体外受精治療の割合は、35歳以下の女性でわずか32%だった。患者の年齢や精子・卵子の質といった要因が、成功率に影響を与える可能性がある。

胚の選別の改善に取り組むスタートアップが相次いでいる。例えば、TechCrunchが取り上げたイスラエル拠点のEmbryonics(エンブリオニックス)がある。生殖生物学者のJeremy Thompson(ジェレミー・トンプソン)氏と連続起業家のMartin Gauvin(マーティン・ゴービン)氏が創業したFertilisは、胚の培養という別の角度からこの問題に取り組んでいる。

体外受精のクリニックは「非常に忙しい場所」であり、専門家は「やらなければならないことすべてについて訓練を受けている」とトンプソン氏はTechCrunchのインタビューで語った。標準的な体外受精のプロセスでは、胚の発育に合わせてシャーレの中で細胞をさまざまな環境に移し替えていく。しかし、採卵からシャーレをラボに運び、胚を生殖器官に入れるまで「うまくいかないことがいろいろある」と同氏は指摘した。

「胚が臨床医に取り出されるたびに、環境は悪影響を受けるのです」とトンプソン氏はいう。「患者の希望や夢は文字通り、臨床医の一挙手一投足にあります」。

Fertilisのソリューションは、特許取得済みの3Dプリントのクレードルに各胚を入れることで、体外受精のプロセスを標準化し、自動化することだ。髪の毛ほどの幅のこの装置により「より人体に近い環境」で細胞を培養することができる、とトンプソン氏はいう。このクレードルはシャーレの上に置かれるため、臨床医は胚を直接扱う必要がない。

生殖技術に関する規制という点で、同社はユニークな立場にある。人間ではなく細胞に作用する医療機器を製造しているため、直面する規制は「一部の国ではもっと簡単なもの」だとゴービン氏は話す。同社は現在、FDA(米食品医薬品局)の承認を申請中だ。

Fertilisが調達した新しい資金は、継続的な科学的開発を支える。2022年後半には、カリフォルニア州の不妊治療クリニックと共同で臨床試験を開始する予定だ。また、欧州やアジアのパートナーとも話を進めており、今後数カ月以内に契約を締結する見込みだ。2023年までには、最初の市販製品を発売することを目指している。

技術的には、Fertilisの粒子サイズの装置は、他の種類の細胞の培養にも使用することができる。受精はスタート地点にすぎない。

「Fertilisの技術は、診断や治療から特定の細胞培養製品の製造に至るまで、幅広いヘルスケア用途に変革的な影響を与えると確信しています」と、Horizons Venturesのオーストラリアを拠点とする投資家Chris Liu(クリス・リュウ)氏は述べた。

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

米国メリーランド大学が遺伝子操作した豚の心臓を人間の患者に移植し成功、術後3日経過も安定

米国メリーランド大学が遺伝子操作した豚の心臓を人間の患者に移植し成功、術後3日経過も安定

Thierry Dosogne via Getty Images

米メリーランド大学の医師が、遺伝子操作した豚の心臓を人間の患者に移植し、成功したと発表しました。術後3日の時点では顕著な拒絶反応もなく、機能しているとのこと。

移植を受けたのは57歳のデヴィッド・ベネット氏。57歳のベネット氏は、彼の息子がAPに語ったところによると心臓移植をしなければ余命わずかと診断されているものの、人間の心臓移植を受けることができない状況にありました。ほぼ前例がないだけに、成功するかどうかはわからない遺伝子操作済みの豚の心臓移植だけが唯一の選択肢といて示されたとき、ベネット氏は「一か八かだが、最後の選択だ」と語ったとのことです。

通常、このような手術の許可は簡単には下りません。しかし、米食品医薬品局(FDA)は、生命を脅かされた状況にあり、なおかつ他の選択肢がまったくない患者の最後のチャンスとなる「同情的利用」と呼ばれる緊急認可手段を適用しました。

とはいえ、豚の心臓をそのまま人体に移植すれば、強い拒否反応が出るのは目に見えています。ただ、逼迫している心臓移植の需要への対処のため、近年はいくつかのバイオテック企業が豚の心臓を人体に移植するための研究と技術開発を行っており、その中のひとつであるUnited Therapeuticsの子会社Revivicorが、ベネット氏へ移植するため、遺伝子組み換えで拒否反応の原因となる4種類の遺伝子を取り除き、一方で6種類の人の遺伝子を挿入した特別な心臓の提供を申し出ました。

昨年9月には、実験用に献体された人に豚の腎臓を一時的に移植したところ、それが機能したとの実験結果がニューヨークの研究者らによって発表されており、豚から人への臓器移植の相性が良いことが注目されています。

そして、今回のベネット氏への移植手術は、過去5年間に50頭のヒヒに豚の心臓を移植して研究を重ねてきたバートリー・グリフィス医師が担当しました。7時間かけて手術を終えたグリフィス医師は、ベネット氏の心不全と不整脈の状態は人間の心臓を移植しても改善できなかった可能性があると述べています。そして、豚の心臓弁は人に移植されるようになって長く、ベネット氏自身も(息子によれば)10年程前に弁の移植を受けていたとのことでした。

もちろん、術後しばらくは安定していてもその後拒否反応が出てしまう可能性はまだ否定できません。ベネット氏の息子は「父はこの手術におけることの大きさと重要性をしっかり理解している」とし「今後2~3日、いや1日しか生きながらえられないかもしれない。今の時点ではまったく未知の領域です」と述べました。

しかし術後の経過は悪くなく、メリーランド大学医学部の異種移植プログラムの責任者ムハンマド・モヒディン博士は「この手術が成功すれば、苦しみながら移植の順番待ちに並ぶ患者たちに臓器を提供しやすくなり、劇的な変化をもたらすだろう」と述べました。

米国では、臓器移植の順番待ちでおよそ10万人がリストアップされており、毎日17人が持ちこたえられず命を落としているとされています。

(Source:AP NewsEngadget日本版より転載)

グルーヴノーツと東京大学、マルチモーダルAIにより超音波検査画像と診療情報を統合した高精度な疾患画像判別モデル開発

グルーヴノーツと東京大学、マルチモーダル深層学習により超音波検査画像と診療情報を統合した高精度な疾患画像判別モデル開発

AIと量子コンピューターを活用できるクラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS」(マゼランブロックス)を開発するグルーヴノーツは1月7日、東京大学医学部付属病院と共同で、人工知能を用いた医療画像と診療情報の統合による高精度な疾患画像判別モデルを開発した。同日付けで、学術誌「Journal of Gastroenterology and Hepatology」において論文を発表した。

研究グループが開発したのは、腹部超音波検査画像と診療情報をAIで統合した、肝腫瘤を判別するためのモデル。これまでの画像診断モデルは画像のみを学習させていたが、そこに診療情報を統合することで飛躍的に精度が向上するという。

肝腫瘤の早期発見で広く用いられているのは、腹部超音波検査だ。しかし、良性か悪性かを判断するには、CTやMRIで血流の状態を見る、つまり「質的な診断」を行う必要がある。研究グループは、画像と数値などの異なる種類のデータを同時に学習できるマルチモーダル深層学習(マルチモーダルAI)を用いて超音波画像診断と診療情報を統合することで、新しい肝腫瘤の疾患画像判別モデルを開発した。これを使えば、腹部超音波検査だけで質的な診断が可能になり、CTやMRIの放射線被曝のリスク回避や費用の削減にもつながる。

研究グループは、2016年4月から2018年11月までに東京大学医学部附属病院で腹部超音波検査を受けて肝腫瘤が発見された1080例(悪性腫瘍548例、良性腫瘍532例)に対して、グルーヴノーツのMAGELLAN BLOCKSでマルチモーダル深層学習を用いた判別モデルの作成と精度の評価を行った。

その結果、超音波検査のみに比べて、超音波検査に患者背景情報、肝臓の炎症情報、肝臓の繊維化情報、アルブミンの情報を統合したモデルでは、AUROC値が0.994(1に近いほど正確)と非常に高い精度が示された(ちなみに超音波のみの場合は0.721)。AUROC値はThe area under the receiver operating characteristic curve(ROC曲線下面積)の略で、判別モデルの性能を評価する指標の1つ。

超音波画像のみのモデル(左図)、マルチモーダル深層学習を用いて超音波画像に診療情報を統合したモデル(右図)の診断精度を示したROC曲線。この曲線の下の面積(青色部分)が大きいほど診断精度がいいということになる。診療情報を統合したモデル(右図)では、左上の欠けた部分が少ない良好な診断精度を示した

超音波画像のみのモデル(左図)、マルチモーダル深層学習を用いて超音波画像に診療情報を統合したモデル(右図)の診断精度を示したROC曲線。この曲線の下の面積(青色部分)が大きいほど診断精度がいいということになる。診療情報を統合したモデル(右図)では、左上の欠けた部分が少ない良好な診断精度を示した

こうした学習モデルでは、サンプル数が多いほど正確な判別が可能になるが、医学研究では患者の同意取得や倫理的な問題もあって大量の患者サンプルを入手することが難しい。しかし今回の研究で、マルチモーダル深層学習を使えば大変に高い精度での判別が可能になることがわかった。この手法は、他分野への応用も期待されるとのことだ。

フランス、ドイツ、イタリアの30万人もの医師や医療従事者に使用されている仏Doctolibのツール群

フランスのスタートアップ企業であるDoctolib(ドクトリブ)が、(仮想)記者会見を開き、いくつかの指標を発表して最近の製品ローンチを振り返り、今後の投資についてヒントを示した。Doctolibは、医師のための予約プラットフォームとして始まり、医師や医療従事者一般のための他のサービスにも拡大している。

医療従事者は、SaaSとして提供されるDoctolibのツールを月額利用料を支払って利用し、それを患者に使用する。その事業は順調で、現在、開業医、歯科医、薬局、心理士など、30万人の医療従事者が毎月Doctolibへの支払いを行っている。サブスクリプションは月額129ユーロ(約1万7000円)から開始するが、このことによりスタートアップは毎月数千万ユーロ(数十億円)の収益を上げている。

プラットフォームがフランス国内で臨界点に達したことによって、2021年は同社にとって極めて重要な年となった。例えばフランスで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防接種を受けようと思ったときには、多くの人がDoctolibのサイトを訪れて、最寄りの予防接種センターや薬局、空き枠のある医師を探している。ワクチン接種施設は他のプラットフォームを使って情報を提供することも可能だが、実際にはほとんどの施設がDoctolibを使って予約を処理している。

Doctolibは現在、フランス、ドイツ、イタリアで展開している。現在もフランスは同社の主要市場だ。これまでに6000万人がDoctolibを利用していて、その多くが予約のためにサービスを利用している。2022年には、さらに10万人の医療従事者と協働することになると、同社は予測している。

製品群の開発

非常に多くの医師と商業的な関係を築いたことで、Doctolibは新しい製品をリリースしたり、一連のサービスを構築することができる。多くの点で、DoctolibはSalesforce(セールスフォース)の戦略を踏襲している。他の商品の踏み台として機能する、非常に集客性の高いメイン商品を持っているという点だ。

数年前には、遠隔医療機能を付加したリモートアポイントメント機能をローンチした。もう少し利用料金を支払うことを選択した医師は、ビデオ通話を行ったり、Doctolibの支払いシステムをリモートアポイントメントに使ったりすることができるようになる。

2021年、DoctolibはDoctolib Médecin(ドクトリブ・メディサン)を発表した。これは管理業務を行うバックオフィスツールだ。例えば患者ごとに書類を一元管理したり、患者の履歴を見たり、メモを取ったり、請求書を発行したりすることが可能になる。

Doctolibのフランス担当責任者のArthur Thirion(アーサー・ティリオン)氏はこう語る「私たちはこれに3年前から取り組んでいます。既存のものと比較して、ゼロから始めようと考えました。現在は、2000人強の医師に使われています」。

もちろん、医師としての仕事を管理してくれる製品はこれが初めてではない。しかし、これはDoctolibの他のエコシステムとうまく統合されている。

同様に、Doctolibは、Doctolib Team(ドクトリブ・チーム)という新しいサービスで、プラットフォームのネットワーク効果を高めたいと考えている。今回同社は、新たな収益源を作るのではなく、Doctolibを必須のものにしたいと考えている。

Doctolib Teamは、専門家を見つけてチャットができるインスタントメッセージングサービスだ。また、患者に関する書類を安全に送ることもできる。

すでにDoctolibを使用している医療関係者にとって、ありがたい機能と言えるだろう。まだDoctolibを使用していない医療従事者の場合は、無料のDoctolib Teamアカウントを作成して使い始めることができる、おそらく将来的にはDoctolibの他の製品をサブスクライブすることもあるだろう。

画像クレジット:Doctolib

高レベル監視下での運用

Doctolibは、機密性の高い医療データを扱うため、一般的なスタートアップ企業とは異なる。これまで、同社のデータ管理やデザインの決定について多くの報道がなされてきた。

そして同社は、他のスタートアップ企業と同じようには行動できないことをよく理解している。例えばこのスタートアップはユニコーンの状態になったものの、それ以降は資金調達の詳細を公開しなくなった。みんなの健康を増進しようとするときには、あまりお金の話はしたくないものだ。

共同創業者でCEOのStanislas Niox-Chateau(スタニスラス・ニオックス=シャトー)氏はいう「過去数年間、資金調達に関する発信をやめていました。毎四半期、毎年度、投資家のみなさまは我々の長期プロジェクトに基づいて、投資したり、再投資したりなさいます」。

現在Doctolibは、ミッション駆動の会社になりたいと考えている。ミッション駆動とは、一定のルールを遵守した場合に得られる特別なステータスだ。そして、スタニスラス・ニオックス=シャトー氏は、自らの会社を社会を改善する会社として位置づけるために、複数の論点を見出している。

例えばDoctolibのビジネスモデルは非常に明確で、医療従事者からのサブスクリプションのみで成り立っているという。同社は患者データを収益化していない。

同氏によれば、このプラットフォームは広く利用されていて、デジタルデバイドも引き起こしていないという。例えば多くのユーザーは大都市に住んでいないし、高齢者でも簡単に使えるようになっているという。

しかし、だからといって、同社は立ち止まるつもりはない。2022年には野心的な拡張計画が控えている。Doctolibは、2300人の従業員から3000人の従業員へとチームを拡大する予定だ。そして、フランス時間1月10日以降、全従業員がDoctolibの株主になる。全員が少なくとも2万ユーロ(約261万3000円)相当の株式交付を受ける。

2022年には、フランス、ドイツ、イタリアにおける製品の改良とプラットフォームの拡大のために、3億ユーロ(約392億円)の投資を計画しているが、これは主に新規雇用と新オフィスに使われる。2022年には新しい市場の立ち上げは予定されていないが、それはもっと先になるのだろう。

画像クレジット:Doctolib

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(文:Romain Dillet、翻訳:sako)

閉経を遅らせ、さらにはなくすことを目指すGametoに著名投資家が出資

多くの科学者や学者が毎年、人間の寿命を延ばし、その延びた年数を生きるに値するものにしようと、具体的に取り組んでいる。寿命を延ばす手段として癌の早期発見に注力しているチームもあれば、新陳代謝の向上に取り組んでいるチームもある。

小さいながらも成長中のグループが、人口の半分に影響を及ぼす閉経に取り組んでいる。閉経は、高血圧「悪玉」コレステロール、血中脂肪の一種である中性脂肪、さらに恐ろしいことに乳がんや心臓病、骨粗しょう症のリスクの増加など、さまざまな健康症状に関係している。

女性の健康と平等の軌道を変えるために卵巣の老化を加速させる問題を解決したいと語るGameto(ガメト)は、この問題に注力している最新の企業だ。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで医学を学び、キャリアの大半を計算医学に費やしてきた同社の共同創業者でCEOのDina Radenkovic(ディーナ・ラデンコヴィッチ)氏の説明によると、卵巣は、肝臓や脳、あるいは皮膚よりもはるかに早く機能停止し、どの臓器よりも5倍も早く老化する。女性は生まれながらにして一定数の卵母細胞(未熟な女性細胞で、後に完全に成熟した卵子細胞を生み出す)を持っているが、いずれこの卵母細胞を使い果たし、その時点で卵巣は臓器として機能しなくなり、女性の生理機能を司るホルモンの分泌も停止する。

Gametoは、卵巣治療のプラットフォームを開発することで、このプロセスを遅らせられる、あるいは女性が選択すれば永遠に遅らせられるようにしたいと考えている。このプラットフォームは、まずは不妊治療のプロセスを改善するために使われるが、最終的には、ラデンコヴィッチ氏が「医学的負担」と表現する閉経を防ぐための細胞治療法の特定にも使われることが期待されている。さらに詳しい説明を求めると、ラデンコヴィッチ氏は詳細に踏み込むのは避けながらも、Gametoがすでに卵巣をサポートする細胞が卵の成熟を助け、妊娠を望む多くの女性が現在耐えている体外受精の回数を減らすことができるかどうかのテストを始めている、と説明した。

「私たちのプラットフォームを信じるに足る強力な前臨床試験の証拠があります」とラデンコヴィッチ氏は話す。同社の会長は連続起業家のMartin Varsavsky(マーティン・ヴァルサヴスキー)氏で、同氏が興した最新の会社であるPrelude Fertility(プレリュード・ファーティリティ)は全米に不妊治療センターのネットワークを構築している。

著名な投資家もGametoに賭けている。同社はFuture Venturesがリードするラウンドで2000万ドル(約23億円)を調達したばかりで、共同創業者のMaryanna Saenko(メアリーアンナ・サエンコ)氏は「閉経を迎える女性のより良い治療スタンダードのビジョンにかなり興奮しています」と話す。閉経で起こる苦痛は生物学的に必須のものではなく、特に早期の閉経にともなう多くの合併症は、現在のホルモン補充療法で完全に避けることができる。ただし、サエンコ氏はホルモン補充療法について「鈍いハンマーで、パーソナリゼーションが欠けている」と指摘する。

その他の投資家はBold Capital Partners、Lux Capital、Plum Alley、TA Ventures、Overwater Ventures、Arch Venture Partnersの共同創業者Robert Nelsen(ロバート・ネルセン)氏、23andMeのCEOのAnne Wojcicki(アン・ウォジスキ)氏だ。

Gametoは2021年のシードラウンドで、Atomic(アトミック)の創業者Jack Abraham(ジャック・アブラハム)氏、SALT Fund、FJ Labs、Coatue Managementの創業者Dan Rose(ダン・ローズ)氏、CoinbaseのCEO、Brian Armstrong(ブライアン・アームストロング)氏などから300万ドル(約3億4000万円)を調達した。

確かに、市場機会は巨大であり、人々が長生きしていることを考えると、その理論は非常に理に適っている。実際、他のスタートアップも閉経を遅らせることに真っ向から注力し始めている。

すでにGametoは競合相手を抱えている。ここには、女性の卵巣予備能力の減少を遅らせる薬物プログラムを作成し、Gametoと同様に女性の内分泌機能と生殖機能を分離しようとしている創業12年のCelmatix(セルマティック)が含まれる。フォーチュンによると、Celmatixは過去にビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成を受けて非ホルモン性避妊薬に取り組み、2021年初めには製薬大手Bayer(バイエル)と医薬品開発会社Evotec(エボテック)との提携を発表している。

一方、研究者たちは少なくとも数年前から、閉経を治療可能な病気として扱うという問題を検討してきた。2019年の以前の論文はこちらで閲覧できる。

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

ネクイノが定額制美容皮膚科と相互送客で提携開始、2月オープン予定の婦人科領域特化クリニックのプロデュースも着手

ネクイノが定額制美容皮膚科と相互送客に関し業務提携を開始、2月オープン予定の婦人科領域特化クリニックのプロデュースも着手

オンライン診察でピルを処方するアプリ「スマルナ」(Android版iOS版)を運営するネクイノは1月7日、b technologiesがプロデュースする定額制スキンケアクリニック「HADA LOUNGE スマルナクリニック 新宿院」(新宿マルイ本館5F)において、オンラインとオフラインの垣根を超えるOMO(Online Merges with Offline)を体現するべく、相互送客に関しての連携を開始したと発表した。

ネクイノは、今回の連携を皮切りに、医療DXを推進し今後あるべき医療空間を創出するべく、オンラインとオフラインの垣根がないOMOを体現したクリニックのプロデュースを積極的に進める。第2弾として、2月に東京都内でオープン予定の婦人科領域に特化したクリニックのプロデュースに着手しているという。

スマルナは、「ココロとカラダが健康で、ワタシらしい人生を選べる世の中をつくる」というミッションの実現に向け、心理的・物理的なハードルによって医療へ十分にアクセスできない方が「医療を身近に」感じられるよう、科学的根拠に基づいた正しい情報をわかりやすく届けている。また、2021年4月に表参道で1院目をオープンした定額制の美容皮膚科「HADA LOUNGEクリニック」は、開院当初から多くの方が来院しており、来院者へのアンケートでは、サービス内容だけでなくスタッフの対応などでも評価されているという。

1人1人が健康的な毎日を過ごせるよう女性の心身のケアに努めるスマルナでは、来院者に寄り添った対応が好評を受けているHADA LOUNGEクリニックと相互送客に関して連携することで、適切なタイミングで正しい医療情報にアクセスできる環境を整え、生理や避妊・性に関する不安や悩みを軽減し、あらゆる人が健康的な毎日を過ごせるよう、科学的根拠に基づく知識や情報を提供し、婦人科の受診率やヘルスリテラシーの向上を目指している。

慶應発の再生医療スタートアップ「セルージョン」が11億円調達、水疱性角膜症に対する再生医療等製品の社会実装加速

慶應発の再生医療スタートアップ「セルージョン」が11億円のシリーズB調達、水疱性角膜症に対する再生医療等製品の社会実装加速

慶應義塾大学医学部眼科学教室発の再生医療スタートアップ「セルージョン」は1月7日、シリーズBラウンドにおいて、第三者割当増資による総額11億円の資金調達を2021年12月に完了したと発表した。引受先は、リード投資家の東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)、新規投資家の東邦ホールディングス、東洋製罐グループホールディングス、Gemseki、既存投資家のSMBCベンチャーキャピタル、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)、DBJキャピタルが運営する投資事業有限責任組合。

2015年1月設立のセルージョンは、iPS細胞から角膜内皮代替細胞を効率的に作り出す独自技術を基に、世界の角膜移植課題をはじめとした、現在の医学が抱えるアンメット・メディカルニーズ(未解決の治療ニーズ。Unmet MedicalNeeds)の解消を最先端の細胞治療技術により解決し、全世界の健康福祉向上への貢献を目指している。

調達した資金により、先行開発品であるiPS細胞由来角膜内皮代替細胞(CLS001)の国内および海外の臨床試験準備、研究・組織体制の強化、後続パイプラインの研究開発を進める。また、医薬品卸業者の東邦ホールディングスや包装材メーカーの東洋製罐グループホールディングスとの事業連携を進め、CLS001の社会実装へ向けたサプライチェーンを整備し、水疱性角膜症に対する新たな治療法提供へ向けた取り組みを加速する。

角膜移植以外では失明を防げない水疱性角膜症のような眼科疾患は、全世界では1300万人以上の待機患者が存在するにもかかわらず、年間実施される角膜移植はわずか約18万件という。この治療需給ギャップの原因は、角膜移植にはドナーからの角膜提供が必要な点に加えて、熟練した角膜移植医の確保やアイバンクの整備を要することが治療提供の大きな制約となっている点が挙げられるという。

そのためセルージョンは、「増殖性に優れるiPS細胞から角膜内皮代替細胞を効率的に作り出す技術」と「簡便な手技で属人的技術を不要とする細胞移植法」を組み合わせ、角膜移植適用症例の半数以上を占める水疱性角膜症に対する再生医療等製品CLS001による治療の開発を進めている。CLS001は、慶應義塾特定認定再生医療等委員会および厚生労働省の厚生科学審議会から2021年7月にヒトでの安全性を評価する医師主導臨床研究の実施承認を得ており、準備が整い次第、慶應義塾大学病院にて同研究が開始される予定だ。

あなたの血はどれくらい甘い?Scanboは体を傷つずに血糖値を測定する

糖尿病の人やその疑いを持たれたことのある人なら、指に針を指し血を1滴とって棒に付ける作業を、指がしびれるまでやったことがあるだう。指先穿刺式血糖値検査は事実上の標準だが、AI企業の Scanbo(スカンボ)はこれを終わりにして、その1滴の血液を市販の診断ツールと強力なデータ分析で置き換えようとしている。

この会社が開発したプロトタイプは、3電極の心電計(ECG)とフォトプレチスモグラム (PPG)を組み合わせた装置だ。60秒間の測定結果を一連のアルゴリズムに送り込むことによって、非常に信頼できる測定値を得られる。装置は非侵襲的に血糖値のモニタリングを行うが、同社のファウンダーは、同時に血圧測定も行うことができると言っている。

私はTechCrunchのバーチャルCES特集取材の一環で、同社ファウンダーでCEOのAshissh Raichura(アシーシ・ライチュラ)氏からテクノロジーの詳細を聞いた。彼はデモンストレーションもしてくれて、まず自身の血液を市販の指先穿刺血糖値検査器で測定し、つぎに同社のプロトタイプを使った。測定値はそれぞれ6.2と6.3mmol/Lで、両者の差は数%以内だった。

「3本の電極はECGデータおよびPPGの追加測定に使用します。60秒間測定したら、原データを機械学習畳み込みニューラルネットワークとディープ・ニューラルネットワークで分析します。すべてのデータを合わせ、3種類の機械学習アルゴリズムを使った結果から血糖値を分析します」とライチュラ氏がデモの準備をしながら私に話した。「私たちの製品を商品化したいので、現在、FDA(米食品医薬品局)とカナダ保健省の認可を取得するつもりです」。

動作中のScanboプロトタイプ(画像クレジット:Scanbo)

血糖値の非侵襲測定が可能だと知って私は驚いた。いわゆる非侵襲的方法の多くは、体内埋め込みセンサーフィラメントセンサーワイヤーを使用して測定している。Scanboが使用している方法は、医学論文誌で研究結果が報告されている。この手法を使った製品をこれまでにFDAが認可したことはないようなので、製品を市場に出すためには時間のかかる医療承認プロセスに直面することは間違いない。

同社は、血圧測定も可能だという。通常は診療所や自宅でカフを巻いて測定するものだ。

「心電図データを取得した後、それをshort wave transmission lengthというものに変換します」と、ライチュラ氏は血圧データを取り出す方法を説明した。「それに基づいて、非侵襲的でカフ不要な方法で血圧を計算します。このアルゴリズムも特許出願中です」。

これらのテクノロジーを手にしている同社には、楽しみな選択肢がある。自身でハードウェア装置を製造するか、アルゴリズムとテクノロジーを、PPGやECG機能のあるデバイスをすでに販売している企業にライセンスするかだ。

「現在出願中の特許が2件あります。純粋なハードウェア、設計方法、電極の合金化方法、あらゆるパラメータを一度に取得できるセンサーなどに関するものです」とライチュラ氏は説明し、あらゆるデータを一度に測定しようとしていることをほのめかした。「従来の機器を見ると、1度に1つのものを測定していて全部まとめてではありません。私たちの場合、装置に指を4本置いてもらえれば、全データを取得して、アルゴリズムを使って患者の健康に関するさまざまな側面から結果を報告できます」。

Scanboはこのテクノロジーを、自宅で現在使われている医療に関する技術や技法のいくつかを置き換えるものになると期待している。

「私たちはAIとMedTechを組み合わせた会社です」とライチュラ氏は述べ、市場が注目し始めていることに言及した。「このプロダクトを手に、会社はまさにスタートを切ったところです。Medtronic(メドトロニック)、Samsung(サムスン)、LG(エルジー)などの企業がすでに当社との協業ができないか声をかけています。私たちは世界でさまざまな市場に進出するための戦略的提携をいくつか結ぶつもりてす。世界で4億人の2型糖尿病患者が「血糖値測定器」を必要としていますが、ほとんどの人たちは買うことができません。継続的な血糖値測定など考えられません。私たちのコスト削減効果は膨大です。価格は月額20ドルまで下げられます。生物学的廃棄物も使い捨て器具もありません、検査紙も何もいりません、純粋な機械学習アルゴリズムと充電式デバイスだけです」。

会社はまもなくこのプロトタイプと臨床試験結果を武器に、シードラウンドを実施して、認可を取得し最終的に商品を市場に出すためのスタートを切ろうとしている。

画像クレジット:Scanbo

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nob Takahashi / facebook