サシの入った和牛肉など培養肉の「3Dバイオプリント技術の社会実装」に向け大阪大学・島津製作所・シグマクシスが提携

3Dバイオプリントを応用したテーラーメイド培養肉自動生産装置のイメージ大阪大学大学院工学研究科島津製作所シグマクシスは3月28日、「3Dバイオプリント技術の社会実装」に向けた協業に関する契約を締結した。またこれに先立ち、大阪大学大学院工学研究科と島津製作所は、「3Dバイオプリントを応用したテーラーメイド培養肉の自動生産装置の開発」に関する共同研究契約も締結したと発表した。環境・食糧問題の解決、健康、創薬、医療の進化に貢献するという。

社会実装を目指す技術は、大阪大学大学院工学研究科の松崎典弥教授が開発した筋肉組織構造を自由自在に製作できるというものだ。食糧分野では「筋・脂肪・血管の配置が制御された培養肉」、医療分野では「ヒトの細胞による運動器や内臓モデル」の3Dプリントを可能にする。現在、世界で研究されている培養肉の多くは、筋繊維のみのミンチ構造のものだが、この3Dプリント技術を使えば、美しい「サシ」の入った和牛肉を再現したり、脂肪や筋肉の比率を調整したりもできるようになる。またこれを再生医療に応用することも可能だ。

3者が協業して行うのは、「3Dバイオプリント技術の開発推進に向けた他企業との共同研究」「周辺技術・ノウハウを有する企業・団体との連携」「食肉サプライチェーンを構成する企業・団体との連携」「3Dバイオプリント技術に関する社会への情報発信」となっている。

その中で大阪大学大学院工学研究科は、3Dバイオプリントを含む組織工学技術の開発を担当する。具体的には、より複雑な組織や臓器構造の再構築、血管を通じた栄養や酸素の循環による臓器モデルの長期培養のための基礎技術の開発としている。

島津製作所は、3Dバイオプリント技術による培養肉生産の自動化と、培養肉開発に関わる分析計測技術の提供を行う。具体的には、筋肉、脂肪、血管の繊維を「ステーキ様に束ねる工程を自動化する専用装置の開発」であり、培養肉の味や食感・風味・かみ応えなど「おいしさ」に関わる項目、栄養分などの含有量といった「機能性」の分析を行うソリューション開発する。

ビジネスコンサルティング企業のシグマクシスは、この事業のマネージメントを担当する。具体的には、この技術の活躍テーマごとの取り組み方針の策定、テーマ別に必要となる周辺技術やノウハウを有する企業や団体との連携、各取り組みにおける体制作り、進捗管理、課題管理などだ。

3Dバイオプリントを応用したテーラーメイド培養肉自動生産装置のイメージ

3Dバイオプリントを応用したテーラーメイド培養肉自動生産装置のイメージ

食糧問題、環境問題の解決に加え、ヒトの細胞を使った再生医療や創薬への応用が期待されるこの技術を、「多様な企業とともに活用することで社会への実装を加速」させると、3者は話している。

3Dプリントによる次世代小型バイオリアクターの開発でStämm Biotechが約20億円調達

この1年、細胞を使った食肉加工や微生物を使った医薬品製造など、バイオマニュファクチャリングが盛んに行われるようになっている。しかし、合成生物学は、バイオリアクターという重要な装置なしには成り立たない。生物学を利用した製造業の実現に向けて、世界中でさまざまな議論が行われているが、ある企業ではすでに最も重要な装置を再考に取り組んでいるしている。

2014年に創業されたStämm Biotechは、工業用やベンチトップのバイオリアクターにすら見られるタンクとチューブとつまみの集合体とはかなり異なっているデスクトップ型のバイオリアクターを開発している。ブエノスアイレスに拠点を置く同社はこのほど、1700万ドル(約20億円)のシリーズAを発表、これまでのシードとプレシードのラウンドを合わせると総調達額は2000万ドル(約23億円)になった。

Stämmが行っていることを理解するために、バイオリアクターは通常どのような形状で、その中で何をしているのかをまず知ろう。基本的には、工業用のバイオリアクターは、巨大な滅菌タンクだ。タンクの中に、特定のタイプの細胞や微生物を育てるための培地があり、それらが目的の製品を生産したり、あるいはそれ自体が製品そのものだ。

これらの細胞培養の工程はまず全体がモーターで撹拌され、冷却液を使って正しい温度を維持し、正しい量の酸素を供給、または無酸素状態を維持してその成長を促す。この工程はタンクではなく使い捨ての袋を使っても行うことができ、別のものを育てるときのタンクの滅菌作業を省略できる。

Stämmの方法は要するに、以上の工程からタンクと撹拌とチューブをなくしてしまう。その代わりに同社は、独自に開発した3Dプリントの基本装置を利用して、微小な流路の稠密なネットワークをプリントし、そこを細胞が通過する間に必要な栄養と酸素を供給される。そしてこの動きが、撹拌の役をする。

液体の流路が3Dプリントされる様子。細胞と酸素と栄養はさまざまな場所で加えられる。(画像クレジット:Stämm Biotech)

流路の設計はStämmのソフトウェアを使って行う。Stammの共同創業者でCEOのYuyo Llamazares(ユヨ・ラマザレス)氏によると、その工程全体を、クラウド上のCDMO(医薬品製造受託機関)と考えることができる。

「バイオ製品を開発する意志と、現在、市場に出回っているツールの能力との間に、大きなギャップがあることに気がつきました。そこで、それを自分の問題として解決しようと考えたのです」とラマザレス氏はいう。

バイオマニュファクチャリングは、製薬や化学、テキスタイル、香料、そして食肉に至るまで、多様な分野で、その細胞からものを作るという考え方が、次世代の生産技術として大きな関心を寄せられている。

たとえば150億ドル(約1兆7275億円)の評価額でIPOに至ったGinkgo Bioworks(時価総額は72億4000万ドル[約8338億円])は、製薬とそれ以外の分野の両方でバイオマニュファクチャリングの応用に積極的に取り組んでいる。しかしそんな、世界を変えるような製造技術も、エビデンスは少しずつ漏れてきている。

バイオマニュファクチャリングが約束していることはどれも、バイオリアクターがなければ実現しない。Stämmのアプローチは、マイクロ流体力学を利用してリアクターのサイズを小さくする。

3Dプリントされた部品の中を流れていく液体をCGで表現(画像クレジット:Stämm Biotech)

現在の同社の技術では、バイオマニュファクチャリングを行う設備の大きさを従来の数百分の一程度に縮小できる。しかしそれでも、これまでの大きなバイオリアクターに比べるとかなり小さい。Stämmのバイオリアクターの最大出力は約30リットルで、工業用に多い数千リットルではない。しかし、同社によると、そのプリントされた微小流路方式でも、理論的には約5000リットルまで可能だという。

技術のポテンシャルは大きいが、Stämmはまだ、その技術の商用化を始めたばかりだ。現在、同社はバイオシミラーの生産にフォーカスしているヨーロッパのバイオ製剤企業と協働しているが、他に検討しているパートナー候補は5社いる。計画では、同社が「パイロットスケール」に移行するのは2022年中となっている。

今は、パートナー企業が増えることがStämmの主な成功の証だとラマザレス氏はいう。「できるだけ多くのパートナーと直接の関係を持ちたいと考えています。それによって、私たちが開発した製品の有用性を確認したい」。

ビジネスの面では、まださまざまな問題がある。装置のコストについてラマザレス氏に確認すると、彼はコメントしなかった。そして彼は、クライアントが従来のマシンではなくマイクロ流体力学方式のリアクターを使い慣れて欲しいという。マシンとサービスの価格は未定だ。

「今は勉強の段階です。いろいろなビジネスモデルを理解し、クライアントとの対話に努めたいと考えています」とラマザレス氏はいう。

Stämmは、今回得た資金で社員数を倍増して200名にし、国際的なプレゼンスを拡張、さらに同社のマイクロ流体力学によるバイオリアクターとその制御に必要なツールの改良や開発を進めたいという。

このラウンドの新たな投資家は、リード投資家がVaranaで、他にVista、New Abundance、Trillian、Serenity Traders、Teramips、Decarbonization Consortium。そして彼らが仲間に加わった既存の投資家は、Draper Associates、SOSV、Grid Exponential、VistaEnergy、Teramips、,Cygnus Draper、そしてDragones VCもこのラウンドに参加した。

画像クレジット:Stamm Biotech

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(文:Emma Betuel、翻訳:Hiroshi Iwatani)

低コスト細胞培養技術CulNet Systemのインテグリカルチャーが7.8億円調達、2022年に世界初の培養フォアグラ上市を目指す

低コスト細胞培養技術CulNet Systemのインテグリカルチャーが7.8億円調達、2022年に世界初の培養フォアグラ上市を目指す

独自開発の低コスト細胞培養技術「CulNet System」(カルネット システム)の生産プラットフォーム化を目指すインテグリカルチャーは、シリーズA’ラウンドにおいて、第三者割当増資による総額7億8000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リアルテックファンドやFuture Food Fund1号投資事業有限責任組合をはじめとする複数のベンチャーキャピタル、および事業会社の計12社。累計資金調達額は約19億円となった。また、2022年後半以降には施設拡大を目的としたシリーズBを予定。

  • リアルテックファンド
  • Future Food Fund1号投資事業有限責任組合(新規)
  • Beyond Next Ventures
  • 食の未来ファンド(kemuri ventures。新規)
  • りそなキャピタル6号投資事業組合(新規)
  • Plan・Do・See(新規)
  • 山口キャピタル(新規)
  • SuMi TRUST イノベーションファンド(新規。三井住友信託銀行とSBIインベストメントが共同設立したプライベートファンド)
  • いよぎんキャピタル(新規)
  • AgFunder
  • VU Venture Partners
  • ほか1社

調達した資金は主に、CulNet Systemのスケールアップと、これを用いた細胞農業生産プラットフォーム構築に向けた研究開発、および培養フォアグラ製品上市や化粧品原料などの事業化資金にあてる。細胞農業プラットフォーム構築に向けた研究開発では、主に培養プロトコル開発の動物種を広げ、食品会社や細胞農業スタートアップを中心に、受託研究や共同研究パートナーを拡大する。低コスト細胞培養技術CulNet Systemのインテグリカルチャーが7.8億円調達、2022年に世界初の培養フォアグラ上市を目指す

同社は、2021年に細胞農業オープンイノベーションプラットフォーム「CulNetコンソーシアム」を12事業体で設立し、その後も加盟企業が増えているという。2021年4月にリリースした、細胞培養上清液を用いた化粧品原料「CELLAMENT」(セラメント)は、原料販売・OEM事業をスタートした。今後も、原料およびOEM製品として事業拡大を計画しているという。

食品事業では、2022年に培養フォアグラの世界初の上市を予定しており、月産8kg/機の安定生産を実現した上で、数年おきにスケールアップを達成、生産規模の拡大および低コスト化を目指し研究開発を進める。

同社代表取締役CEOの羽生雄毅氏は、「引き続き弊社ミッション『生物資源を技術で活かし、健やかな社会基盤を創る」に向けた技術開発を進め、2022年に培養肉をついに現実のものとします。色々な食文化が新たに生まれる世界が見えてきており、ワクワクしています」と話している。

植物由来のタンパク質を利用して安価に細胞肉を生産するTiamat Sciences

細胞培養培地とは、実験室で育てた食肉を低コストで生産する細胞農業の構成要素だ。しかしそのための成長因子すなわち試薬を作る従来からの方法はそれ自体が高費用で、大量生産が困難だった。

報道によると、実験室で育てた食肉を使ったバーガーは1個が約50ドル(約5750円)になるが、新技術はそれを2030年までにはもっとリーズナブルな1ポンド(約450g)3ドル(約340円)にまで下げるという。

Tiamat Sciencesは、高価なバイオリアクターに代わるコスト効率の良い生物分子を開発しているバイオテックスタートアップの1つだ。米国時間11月24日、同社はTrue Venturesがリードするシード投資で300万ドル(約3億4000万円)を調達したことを発表した。これには、 Social Impact CapitalとCantosが参加した。

Tiamet Sciencesの創業者でCEOのフランス-エマニュエル・アディル氏(画像クレジット:Tiamet Sciences)

CEOのFrance-Emmanuelle Adil(フランス-エマニュエル・アディル)氏は2019年に同社を創業し、独自の植物分子の育成による非動物性たんぱく質の生産を目指している。そのやり方は、バイオテクノロジーと垂直農業と、コンピュテーションデザイン(コンピューターによる設計工程)を結びつけて、独自の組み換え型プロテインを作るものだ。

「現在のものは、培地で使われている成長因子が高価です。私たちはコストを大幅に下げて、食肉と同じ価格にできます」と彼女はTechCrunchの取材に対して語った。

アディル氏の推計では、今日の成長因子は1グラム生産するのに200万ドル(約2億3000万円)必要となるが、Tiamat Sciencesなどの努力により、そのコストは今10分の1まで下がっており、2025年までには1000分の1に下げて量産を可能にしたい、という。

300万ドルのシードラウンドの前、2021年7月に小さなラウンドを行ったので、同社の総調達額は340万ドル(約3億9000万円)になる。アディル氏が大きくしたいと願う同社はベルギーに本社があったが、現在、5月にノースカロライナへ移転した。

新たな資金は、ノースカロライナ州ダラムにパイロット的な生産設備を作ることと技術開発に充てるという。同社はすでに、カーボンニュートラルに向かう途上にいる。

顧客については、まだ公表できる段階ではないが、リリースを目的とする最初のプロダクトは年内を目処に開発している。それによりTiametは顧客がテストするためのサンプルを送れるが、2022年中にはそれらの企業が何らかのかたちでパートナーになる、と彼女は考えている。

アディル氏によると、Tiamatのやり方は食品以外に再生医療やワクチンの製造などにも応用が効くという。

「その成長因子は、似たような工程の他の業界にも移せる」と彼女は語る。「2022年の終わりごろには拡張に励んでいるでしょう。プラント数の拡張は急速にできるため、その頃には、プラント数は10万に達しているはずです。このような規模拡大を助けてくれそうな企業と現在、協議しています」。

True Venturesの共同創業者であるPhil Black(フィル・ブラック)氏によると、Tiamat Sciencesへの投資はTrue Venturesの植物ベースのポートフォリオと相性が良い。最初に調達した資金で、同社の技術が有効であることを多くの人たちに証明し、プロダクトの試作を行った。そしてその次の大きなラウンドでは、リットルからガロンへと規模拡大を行なう。

「細胞肉産業はこれからも続くでしょう。そして今、人々はそれを自分たちのために利益を上げ、より多くのものを作ることに興味を持っています。限られた要素が存在しており、Taimatのソリューションはゲームチェンジャーとなるでしょう」とブラック氏はいう

関連記事:培養肉の最大の問題点に立ち向かうカナダ拠点のFuture Fields、培養を促す安価で人道的な材料を発見

画像クレジット:Tiamet Sciences

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

バイオリアクターと培養細胞で、従来の肉と区別がつかないような培養肉を生み出すAnimal Alternative

従来の食肉生産はサステナブルなプロセスとは程遠いものであり、また人々に「本物」の肉を食べるのをやめてもらうという課題は先が見えていない。そんな中、バイオリアクターと培養細胞を使って、動物由来の肉と区別がつかないような肉を作ろうとしている企業の1つがAnimal Alternative(アニマル・オルタナティブ)だ。同社はデータとAIを活用したカスタマイズ可能なプロセスによって、地元の生産者にこの方法を活用してもらおうと試みている。

米国時間9月22日にTechCrunch Disrupt Startup Battlefieldで発表したAnimal Alternativeは、ケンブリッジ大学でバイオテクノロジーを専攻していた時に度々出会う機会があった2人の卒業生が考案した会社である。食肉生産業界は生まれ変わる必要があるという信念を共有していたClarisse Beurrier(クラリス・ボーリエ)氏とYash Mishra(ヤッシュ・ミシュラ)氏。2人はお互いが持つスキルがその目的のために補完し合っていることに気づく。彼らは培養肉の生産を、ハードウェアだけでなくソフトウェアの観点からも取り組むという、データを多用した新しいアプローチを追求するために会社を設立することを決めたのである。

細胞培養肉という言葉に馴染みのない読者のために説明をしておこう。細胞培養肉とは動物の組織から採取した細胞を、人工的な環境下で一般的に「肉」とみなされるだけの数になるまで増殖させたものである。しかし、牛肉をただ切り落として栄養タンクの中に入れておけば500グラムのリブロースに成長するわけではない。自然界で成長するように組織を再現するというのは非常に困難なことなのである。しかしAnimal Alternativeは、データがその答えだと考えている。

研究や医療目的で、細胞や組織の生体電気信号モニタリングを行う研究室出身のミシュラ氏。ある時、同氏とボーリエ氏はこれと同じ技術を食肉生産に応用できるのではないかと考えた。

ヤッシュ・ミシュラ氏(左)とクラリス・ボーリエ氏(画像クレジット: Animal Alternative)

「親指よりも小さなバイオリアクターを作りました。最小限の資源で多くの情報を得ることで、持続可能な方法で食肉を作るための最適なプロセスを見つけることができました」と同氏は話している。

どんな目的であれ、細胞をモニタリングするというのは非常に複雑な提案であり、多くの場合染色や他の場所でテストするためのサンプルの収集など時間のかかる旧式の技術を必要とする。彼らの革新的な技術は、リアルタイムの細胞モニタリング技術の向上と、それによって細胞成長のプロセス全体を導くことができる即時のフィードバックの両方にあるとボーリエ氏説明している。

「すべてがうまく連動しなければいけません。例えば顧客がラム肉を作りたいと思っても、そこにはあらゆるパラメータがあり、非常にダイナミックなプロセスとなっています」とボーリエ氏。特許出願中のバイオリアクターについてあまり多くを語らないようにしていた2人だが、このバイオリアクターが強力なモニタリングとAIによるフィードバックを提供するものであるということは教えてくれた。

「栄養素、流量、pH、温度など、多くのパラメータが、製造される肉の味、食感、品質に大きな影響を与えます。当社が独自に開発したバイオエレクトロニック分析によって、これまでにないレベルの洞察を得ることが可能になりました」とミシュラ氏は説明する。「また、当社の革新的なプラットフォームには、AI駆動のソフトウェアが搭載されているため、当社が持つ全データを利用してコスト削減と効率向上につなげることができます。これにより、必要なコストとエネルギー量は、開始時に比べてすでに92%以上削減されています」。

畑で作物を育てる際に、水や窒素の量が適切であるかどうかを調べるのと同様に、培養細胞が期待通りに成長しているかどうかをリアルタイムでモニターする必要がある。単に組織の成長と健康を維持するだけでなく、実際の肉にありそうな場所に脂肪や血管の組織を作るなど、これによって積極的に組織を分化させることが可能になる。今後は培養肉に関する世界で唯一のデータベースを構築し、そこからラムやポーク、さらには和牛やアンガス牛などの品種に特化した数多くのAIエージェントを育成、配備していく予定だという。

今の段階ではすべて小規模なスケールでしか実証されていないが、同社はむしろ大規模から小規模へという順序でのスケールアップを計画しているという。「バイオリアクターの設計は大規模なものですが、マイクロスケールのシステムは、そのシステムのモデルとなるように意図的に設計されており、マイクロフルイディクスとバイオエレクトロニック・モニタリングを用いて分子スケールまで再現されています」とミシュラ氏は話す。

つまり言い換えれば、現在試作している卓上スケールでできることは、もっと大きなスケールでもできるはずなのだ。そして同社は「ルネッサンス・ファーム」と呼ばれる大型のバイオリアクターを、食肉生産者がターンキープロセスとして利用できるようにしようと計画しているのである。

食肉は世界的な産業だが、すべての国や地域に食肉生産を支えるだけのスペースや資源、インフラがあるわけではない。それでもどの国でも食肉は消費されているため、多くの国が多額のコストをかけて食肉を輸入しなければならないのである。鉱物や石油には恵まれていても、牧草地には恵まれていない国が、自分たちの資源だけで肉を生産できたらどうだろう。それがAnimal Alternativeの目指すところなのである。

「私たちの目標は、最大規模の商業用工場の代替となる、実行可能な手段を提供することです」とボーリエ氏。彼らの試算によると、1000リットルのバイオリアクターなら、わずか5%の土地、水、排出ガスで、年間100万キログラムの肉を従来の農業と同程度の価格で作ることができるはずだという。

ハードウェアはAnimal Alternativeが提供するが、顧客は定期的に新しい幹細胞(動物を傷つけずに採取される)を購入する必要があるという。生産施設での主なコストは、動物以外から調達した液体培地や成長ホルモンなどの原材料である。販売した商品のレベニューシェアが同社の主な収入源となる。

自社工場に資金を投入して自社製品を作るという決断にいたらなかったのは、スケールの問題が理由だ。

「私たちだけではできない問題です。私たちは野心的ですが、これは非常に大きな挑戦となるため、エコシステムの他のすばらしい企業と協力しなければなりません」。

食肉生産の脱炭素化と民主化という目標を一刻も早く達成するためには、食品業界の大手企業と提携してこのプロセスを強化するのが一番である。培養肉を作るための商業規模のプロセスが確立されれば、本物の肉と区別がつかないサステナブルな製品として、人気商品になることだろう。

さてどの程度本当に区別がつかないのか。その結果は近日中に行われる試食会でのお楽しみである。

画像クレジット:Animal Alternative

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

カリフォルニアの培養肉メーカーNew Age Meatsが約28億円調達、2022年にポークソーセージを生産開始

バークリーの培養肉メーカーNew Age Meatsは、米国時間9月27日に、シリーズAで2500万ドル(約28億円)を調達、2022年に同社初の製品であるポークソーセージの生産を開始できると発表した。

このラウンドは韓国のHanwha Solutionsがリードし、これまでの投資家であるSOSVのIndieBio、TechU Ventures、ff VCそしてSiddhi Capitalが参加している。

CEOのBrian Spears(ブライアン・スピアーズ)は化学工学のバックグラウンドを持ち、12年間にわたり研究室や産業界のオートメーションの開発に携わった後、2018年に動物の細胞から肉を作るNew Age Meatsを共同設立した。

「私たちは同じ味、香り、経験を手頃な価格で提供する、持続可能で人道的なプロセスを作りたいと思っています。Hanwha Solutionsと他の投資家の支援を得て、私たちは地球上で最も革新的な食肉企業になるという使命を達成することができます」とスピアーズ氏はいう。

Hello Tomorrow Singaporeで講演するブライアン・スピアーズ氏(画像クレジット:New Age Meats)

今回のシリーズAでは、従業員の倍増、研究開発の拡大、アラメダに2万平方フィート(約1860平方メートル)のパイロット製造施設の建設が可能になる。今回の投資は、RXBARの創業者であるPeter Rahal(ピーター・レイホール)氏を含むグループが過去に調達した700万ドル(約7億8000万円)のシードラウンドに続くものだ。

New Age Meatsは最も早く市場に出回る食品の1つであるため、ソーセージから始めているが、最終的には牛肉や鶏肉といった他の食肉カテゴリーにも進出する予定だ。

米食品医薬品局(FDA)の承認を経て、2022年の発売を目指している。また、アジアのように豚肉を多く食べる市場からも需要があると考えている。

培養肉の分野では、技術の進化にともない新たな参入者が増えている。スピアーズ氏によると、New Age Meatsの差別化要因は肉そっくりの食感と手頃な化ック、そして大量生産が可能なことだという。

Impossible FoodsやBeyond Meatは代替肉の先行企業だが、その他の企業も培養肉にフォーカスして市場に参入してきた。ベンチャーキャピタルの関心も高く、Animal AlternativeやEat JustのGood Meatといったスタートアップもあり、後者は先に9700万ドル(約108億円)の調達を発表した

電子メールでやりとりしたHanwha Solutionsは、同社のビジネスミッションはNew Age Meatsと一致しており、セルベースポーク市場で成長の可能性があるという。

また、世界的な気候変動への取り組みを背景に、Hanwha Solutionsは培養肉を中心としたフードテック産業の「急速な市場成長を期待している」という。

「健康的な食品や動物愛護への意識の高まりも、需要を後押しするでしょう。細胞技術を使って培養肉を製造する専門知識を持つNew Age Meatsは、私たちのビジネスの地平を広げる手助けをしてくれるでしょう」とHanwha Solutionsはいう。

画像クレジット:New Age Meats

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】気候変動を解決するのは米国のイノベーターであり規制当局ではない

Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領は米国の温室効果ガス排出を2030年までに半分に削減することを誓約した。大統領は相次ぐ新たな予算と政府事業計画によってこの野心的目標を達成しようとしている。

しかし、炭素排出削減で我々が最も期待しているのは新たな財政支出ではない。それはテクノロジーの大転換であり、実現できるのは民間セクターだけだ。

実際、政府は排出削減テクノロジーが市場に出ることを妨げる規制を設けることで、気候変動の進展を遅らせている。もし我々の指導者たちが本当にこの惑星を救いたければ、実際にそれを実行できる起業家たちの邪魔にならないようにする必要がある。

政府に期待するのは、炭素汚染を削減する可能性のあるテクノロジーを支援することだ。そもそもバイデン大統領は自身の気候変動政策の中で、米国の技術革新を促進することを約束している。

残念ながら、最も有望なグリーンテックのブレースクルーの数々は、誤った、あるいは時代遅れの政策によって、厳しい逆風に曝されている。

そんなテクノロジーの1つで、イノベーターと規制の関係を描いた新しいドキュメンタリー「They Say It Can’t Be Done(みんな出来ないと言った)」で紹介されているのが、人工樹木であり、アリゾナ州立大学の物理学者・エンジニアのKlaus Lackner(クラウス・ラクナー)氏が開発した。その人造の木に含まれる特別なプラスチック樹脂は、二酸化炭素を吸収し、水に浸されると排出する。天然の木と比べて大気から二酸化炭素を取り込む効果は1000倍以上だ。捕獲された二酸化炭素は回収されて燃料に変換される。

ラクナー氏のデザインは、1台で1日当たり1トンの二酸化炭素を除去できる規模に拡大できる。主な障害は炭素捕獲テクノロジーを巡る明確な規制の欠如であり、特に捕獲した炭素の輸送と貯蔵が問題だ。

統一された枠組みができるまで、このテクノロジーを市場に出すためのプロセスはありえないほど複雑で、かつリスクをともなう

あるいは、大規模な畜産農業の必要性を低下させるテクノロジーを考えてみよう。数十億の鶏や豚や畜牛を育てるためには膨大な水と餌と土地が必要だ。その結果の炭素排出量は膨大で、年間約7.1ギガトンの温室効果ガスを生み出す。

ここでも新たなテクノロジーが排出量削減にひと役買う。研究者らは細胞培養肉をつくっている。飼育場ではなく実験室で生まれた鶏肉、豚肉、牛肉だ。代替タンパク質は安全で健康的で、従来の飼育食肉よりも炭素排出が少ない。

代替肉をつくっているスタートアップであるEat Just(イート・ジャスト)は、最近シンガポールで細胞培養鶏肉を販売するための認可を取得した。しかし、今も米国では規制当局の青信号を待っている。同社のファウンダーによると、米国の承認を得るまでには1年あるいはそれ以上かかるという。

関連記事:Eat Justが世界初の認証を取得しシンガポールで培養肉の販売を開始

代替肉生産のように大きな資本を必要とする業界では、このゆっくりとした承認プロセスによって、スタートアップが開業し、製品を市場に出すことが不可能になりかねない。

このようなハイテクソリューションこそ、気候変動の脅威から地球を守るために必要だ。果たして、代替肉が将来の持続可能食料なのか、それとも大気中の二酸化炭素を固定する最高のソリューションが人工樹木なのかはわからないが、参加しやすく公正な戦いの場は、最高のイノベーションの繁栄を可能にするはずだ。

気候変動に関することは政府だけの仕事だと信じている米国人があまりにも多い。事実は、持続可能なテクノロジーの大規模な導入の主要な障壁は、政府の介入が無いことではなく、過剰な、あるいは少なくとも誤った介入だ。

国の炭素排出量削減の約束を遂行するためには、それを実現する可能性のあるテクノロジーの開発と展開を、政府がいかに妨害しているかを、大統領とチームは認識する必要がある。

編集部注:本稿の執筆者Quill Robinson(キル・ロビンソン)氏は環境保護団体、American Conservation Coalitionの政府業務担当副社長。

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画像クレジット:simpson33 / Getty Images

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(文:Quill Robinson、翻訳:Nob Takahashi / facebook

大阪大学生命工学科研究グループが3Dプリントで和牛のサシを再現できる「金太郎飴技術」を開発

大阪大学生命工学科研究グループが3Dプリントで「和牛のサシ」を再現できる「金太郎飴技術」を開発

大阪大学大学院工学研究科の松崎典弥教授ら研究グループは8月24日、和牛肉の複雑な組織構造を自在に再現可能な「3Dプリント金太郎飴技術」を開発し、筋・脂肪・血管の繊維組織で構成された和牛培養肉の構築に世界で初めて成功したと発表した。

これは動物から採取した少量の細胞から人工培養した筋・脂肪・血管の繊維組織を3Dプリントしたあと、金太郎飴のように束ねてサシの入った培養牛肉を作るというもの。この研究では、筋繊維42本、脂肪組織28本、毛細血管2本の計72本の繊維をバイオプリンティングし、手で束ね合わせ、直径5mm、長さ10mmの肉の塊を作ることに成功した。

これまでに開発されてきた培養肉は、筋繊維のみのミンチ状のものが多かったが、各繊維組織の配合を変えることで、注文に応じて味や食感などを自在に変えることができる塊肉が作れるという。

牛を育てて食用肉を作る従来の畜産方式では、大量の餌や水を必要とし、人が食べるよりも多くの穀物を家畜に与えるなどの非効率性や、放牧地のための森林伐採や糞やゲップによる環境汚染も問題になっている。培養肉は、牛の成長に比較して短時間で効率的に食用肉を生産できることから、そうした問題の解決策として期待されている。

研究の詳しい内容は、8月24日公開の英科学誌Nature Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)に掲載されている。

実験室でフォアグラを生み出すスタートアップ「Gourmey」

フランスのスタートアップGourmey(グルメイ)が、株式と融資による1000万ドル(約11億円)のシードラウンドを実施した。このスタートアップは、実験室で動物の細胞からの食肉培養に取り組んでいる。特に同社は家禽類に力を入れており、世の中のシェフたちに同社の製品をレストランで採用してもらうことを目指している。

「私たちは2万年前から動物を飼育してきました」と語るのは共同創業者でCEOのNicolas Morin-Forest(ニコラ・モラン・フォレスト)氏だ。「私たちは細胞を育てます。こうすることで食べる分だけ生産できるので、はるかに効率的なのです」。

他の2人の共同創業者であるVictor Sayous(ビクター・サユー)氏とAntoine Davydoff(アントワーヌ・ダヴィドフ)氏は、分子生物学と細胞生物学のバックグラウンドを持っている。スタートアップのためにチームを組んだ彼らは、集約的な畜産の検討を始めた。

「このテーマに足を踏み入れてみると、これは単に動物愛護だけではなく、地球や人類にも関わることなのだと気づかされます」とモラン・フォレスト氏は語る。

Gourmeyは、肉の代替品を作り、それを大衆向けの商品にしたいと考えているスタートアップ企業たちの一員だ。従来の食肉を代替しようとした第一世代のスタートアップたちは、植物由来の代替品に大きく賭けていた。Beyond Meat(ビヨンド・ミート)やLivekindly Collective(ライブカインドリー・コレクティブ)などがよく知られている。

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最近では、Eat Just(イート・ジャスト)、Mosa Meat(モサ・ミート)、Meatable(ミータブル)など、細胞を使った肉に注目している新世代のスタートアップ生まれている。Gourmeyは、実験室で肉の培養を行うフランス初のスタートアップだ。

他の実験室食肉培養スタートアップと同様に、Gourmeyは幹細胞(ステムセル)を利用している。その細胞を、適切な温度で適切な栄養素と組み合わせて、バイオリアクターの中で成長させる。

Gourmeyは、プレミアム製品とプレミアム販売戦略からスタートする。彼らのスタートアップは、人工培養されたフォアグラ──彼らの言葉を借りるなら、屠殺を行わないフォアグラに取り組んでいる。フォアグラの味を再現するのもまた複雑な作業であるため、Gourmeyはそこに大きな期待を寄せている。

国によっては、フォアグラには大きな不名誉が与えられ、スーパーの棚から撤去されている。その結果、実験室で培養されたフォアグラに魅力を感じる人もいることだろう。Gourmeyは、特にシェフたちに第1弾の製品を試してもらい、高級レストランで使用してもらいたいと考えている。またGourmeyは、その製品を通常のフォアグラとほぼ同じ価格で販売したいと考えている。

そしてスタートアップの規模が大きくなるにつれて、より多くのマスマーケット向け製品を発売することを考えている。生産ラインが最適化され、Gourmeyの製品に十分な需要が生まれれば、他の鶏肉や鴨肉などの製品も登場することだろう。

スタートアップが実験室で作った製品を世界で販売するには、いくつかの規制上のハードルをクリアする必要がある。Eat Justはシンガポールで、実験室で培養された肉の販売を開始したが、たとえばヨーロッパで培養肉が見られるようになるにはまだ数年かかるだろう。そのような新製品は、食品安全規制当局が承認する必要があるからだ。

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Gourmeyの資金調達に関しては、Point NineとAir Street Capitalが共同で1000万ドル(約11億円)のシードラウンドを主導している。Heartcore Capital、Partech、Big Idea Ventures、Eutopia、Ataraxia、Beyond Investingそして数名のエンジェル投資家もラウンドに参加している。Gourmeyは、Bpifrance(公共投資銀行)や欧州委員会などの公的機関からも支援を受けている。

Point NineのマネージングパートナーであるChristoph Janz(クリストフ・ジャンズ)氏は「培養肉は、エネルギー効率が高く、持続可能なタンパク質を世界に提供するための最も有望なソリューションの1つです」と述べている。「しかし、本物に負けない味が成功の鍵を握っていることに変わりはありません。私たちは、Gourmeyのおいしい製品と、科学と味の両面で記録的な速さで進歩する同社の能力に、心から感銘を受けました」。

今回の資金調達により、同社はパリにパイロット生産ラインを設置する予定だ。フォアグラ製品を販売できるようになるのは、2022年後半から2023年前半を予定している。

画像クレジット:Gourmey

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画像クレジット:Gourmey

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(文:Romain Dillet、翻訳:sako)

ラボ育ちの和牛、ヘラジカ、バイソンに投資家が殺到、billion Bioが5.4億円調達

Orbillion Bioは実験室で高級肉を製造する計画を立てており、投資家たちは同社のキャップテーブルに座るために列をなしている。

シリコンバレーに拠点を置くOrbillion Bioは高級ラムのロース肉、エルクのステーキ、バイソンのハンバーガーなどを提供する会社として、著名なY Combinatorのアクセラレータプログラムを開始してからわずか数週間で500万ドル(約5億4000万円)の資金調達に成功した。

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Orbillion Bioを率いるのはPatricia Bubner(パトリシア・ブブナー)、Gabrial Levesque Tremblay(ガブリアル・レヴェスク・トレンブレイ)、Samet Yidrim(サメット・イドリム)の3人で、彼らはバイオプロセスやバイオ医薬品業界で30年以上の経験がある。

1カ月ほど前にOrbillion Bioは初の試食会を開催し、エルク、ビーフ、ヒツジなどの肉をペトリ皿からテーブルに並べた。

今回の500万ドルのラウンドには、以下の投資家が参加した。Finless FoodsやWild Earthを支援しているAt One Ventures、Metaplanet Holdings、ヨーロッパの投資会社k16 ventures、SpaceX(スペースX)にも出資しているFoundersX Ventures、Mission BarnsやTurtle Tree Labsを支援しているPrithi Ventures、Hanmi PharmaceuticalsのCEOであるJonghoon Lim(ジョンフン・リム)氏、Kris Corzine(クリス・コルジン)氏、初のバイオPBCであるPerlaraのCEOであるEthan Perlstein(イーサン・パールスタイン)氏などのエンジェル投資家、そして有名な大学の基金などだ。

「Orbillion Bioがラム、ヘラジカ、和牛、バイソンなど、高級で風味豊かかつ入手困難な肉に焦点を当てていること、科学やビジネス、エンジニアリングの分野で優れた経歴を持っていること、そして文字どおりマスターブッチャーをアドバイザリーボードに迎えているほど風味にこだわっていることに、私たちはすぐに衝撃を受けました」と、Outset CapitalのGPであるAli Rohde(アリ・ローデ)氏は述べている。「ラボで育てられた肉は未来であり、Orbillion Bioはすでにその道を切り開いています」。

Orbillion Bioはこの資金を、最初の製品である和牛の試験生産に充てるとしている。

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タグ:Y Combinator培養肉Orbillion Bio資金調達

画像クレジット:RJ Sangosti/The Denver Post via Getty Images / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:塚本直樹 / Twitter

細胞培養スタートアップ「インテグリカルチャー」が培養肉技術を活用し世界初のスキンケア化粧品原料を開発

細胞培養スタートアップ「インテグリカルチャー」が培養肉技術を活用した世界初のスキンケア化粧品原料を開発

細胞培養スタートアップのインテグリカルチャーは4月7日、スキンケア化粧品原料「CELLAMENT」(セラメント)を開発し、量産体制が整ったことから、2022年にセラメント配合スキンケア化粧品の上市を目指す化粧品会社と原料販売の商談を開始したと発表した。

セラメントは、原料素材にワクチン製造にも使われる安全性の高い卵(国産)を使用しており、卵由来「鶏胚膜(胎盤様)組織」の培養上清液化粧品原料として​は世界初としている。成長因子(グロースファクター)、アミノ酸、ビタミンなど、肌に有用な生理活性物質を豊富に含んでおり、線維芽細胞増殖促進・抗酸化・保湿・皮脂合成抑制などのエビデンスを確認しているという。

同社は、化粧品原料開発においても、細胞農業のアプローチにより動物細胞資源を有効活用し、多様で豊かな未来の実現を目指す。

細胞農業とは、生物を構成している細胞を体外で培養することにより、従来のような動物飼育をすることなく、肉や乳製品などの農産物とまったく同じものを作り出せる新しい資源生産の考え方。伝統的な農業に比べ環境負荷が小さく、持続可能な生産方式として期待されているという。

セラメント概要

  • 化粧品表示名称:ニワトリ胚体外膜細胞順化培養液
  • 特許出願番号:2018-210910
  • 製造国:日本
  • 8つの安全性試験クリア済み:ヒト皮膚パッチ試験、3次元皮膚1次刺激代替試験、3次元眼刺激代替試験、皮膚感作性代替試験(KeratinoSens、h-CLAT)、RIPT試験(アレルギーテスト・累積刺激)、アレルゲン分析、ウイルス検査、染色体異常
  • 公式サイトhttps://www.cellament.jp/

2015年10月設立のインテグリカルチャーは、細胞培養技術をベースに培養肉作りの研究開発からスタートした研究開発型スタートアップ。独自開発の低コスト・汎用大規模細胞培養技術「CulNet System」(カルネット システム)を中心とした事業展開をしている。

同社によると、培養肉研究開発の中で、CulNet Systemにおいて2種以上の細胞種・組織を一緒に培養する「共培養」を構成している細胞が、肌に有用な成分を作り出していることを見い出したという。化粧品用途に応用すべく約2年の研究を実施し、卵の胎盤様組織にある3種類の細胞(3mix細胞)の培養上清液を新規化粧品原料「セラメント」として開発・商品化した。3mix細胞とは、鶏卵の胚膜(胎盤に相当する部分)にある3つの細胞「羊膜」(ようまく)、「卵黄嚢」(らんおうのう)、「漿尿膜」(しょうにょうまく、漿膜と尿膜をまとめたもの)を指すそうだ。

細胞培養スタートアップ「インテグリカルチャー」が培養肉技術を活用した世界初のスキンケア化粧品原料を開発

採取した細胞を培養すると、その培養液中に細胞から成長因子(グロースファクター)が大量に分泌される。ここから、細胞を除いた上澄み液は培養上清液と呼ばれる。この培養上清液中には細胞活性のカギとなる情報伝達物質が豊富に含まれているそうだ

セラメントは、PCPC(Personal Care Products Council。米国パーソナルケア製品評議会)にて新規化粧品原料として登録済みで、卵由来の胎盤様組織の培養上清液化粧品原料としては世界初となる。

インテグリカルチャーのCulNet Systemは、同社独自の汎用大規模細胞培養技術(汎用細胞培養プラットフォーム)で、動物体内の細胞間相互作用を模した環境を擬似的に構築する装置(特許取得済み)。

動物体内を模した環境を構築することで、細胞培養の高コスト原因であった成長因子の外部添加を不要とし、コスメに使用可能なエキス成分から、食肉に用いる細胞成分まで、様々な利用範囲をもつ成分を安価で大量に生産できるという。理論的にはあらゆる動物細胞を大規模・安価に培養可能で、様々な用途での活用を想定しているそうだ。

すでにラボスケールでは、管理された制御装置下で種々の細胞を自動培養し、高コストの一因であった血清成分の作出を実現(特許出願済み)。血清成分の内製化実現により、従来の細胞培養が高コストとなる主因の牛胎児血清や成長因子を使わずに済み、細胞培養の大幅なコストダウンを実現するとしている。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:インテグリカルチャー(企業)細胞培養(用語)培養肉(用語)美容(用語)メイクアップ / 化粧(用語)日本(国・地域)

和牛、ヘラジカ、羊の細胞株で培養肉を高級化するY Combinatorスタートアップ「Orbillion Bio」

先に、20名の選ばれた従業員とゲストがサンフランシスコ湾のイベントスペースに集まり、ベイブリッジを眺めながら厳選されたヘラジカのソーセージ、和牛のミートローフ、羊肉のハンバーガーを楽しんだ。これらの肉はすべてシャーレで培養されたものだ。

この夕食会は、Y Combinator(Yコンビネーター)の最新デモデイに参加する新しいスタートアップOrbillion Bio(オルビリオン・バイオ)のお披露目パーティーだ。同社はスーパーマーケットではなく、高級精肉専門店で売られるような培養肉の普及を目指している。

Orbillionでは豚肉や鶏肉、牛肉の代わりに、前述のヘラジカ、羊、和牛といったいわゆるヘリテージミートを取り扱う。

Orbillionはより高級な食材に焦点を当てており、培養肉市場の他の企業ほど劇的なコスト削減のプレッシャーはない。

だがその技術は、高級な和牛や選り抜きのヘラジカ、風味のいい羊肉にとどまらない。

「Orbillionでは、小さな組織サンプルを作りだす独自の加速開発プロセスを使い、 最適な組織と培地の組み合わせを常に探しています」とHolly Jacobus(ホリー・ジャコバス)氏。同氏の企業Joyance Partners(ジョイアンスパートナーズ)はOrbillionの初期の投資企業だ。「これは従来の方法よりもはるかに安価で効率的であり、すでに実感している目覚ましい需要に迅速に対応できるようになります」と言及している。

同社では、小型のバイオリアクターシステムを通じて複数の細胞株を培養している。それをハイスループットスクリーニングと機械学習ソフトウェアシステムと結び付け、最適な組織と培地の組み合わせのデータベースを作成している。ジャコバス氏は「培養肉を大規模に生産するうえでのカギは、最も効率的な方法で培養する正しい細胞を選ぶことです」と記している。

Orbillionは、ドイツの製薬大手Boehringer Ingelheim(ベーリンガーインゲルハイム)の研究員であったPatricia Bubner(パトリシア・バブナー)氏が率いる高度な技術と経験豊富な経営陣によって共同創業した。バブナー氏に参加したのは、American Institute of Chemical Engineers(アメリカン・インスティテュート・オブ・ケミカル・エンジニアズ)の元ディレクターGabriel Levesque-Tremblay(ガブリエル・ラベスク・トレンブレイ)氏だ。同氏はバブナー氏とともにバークレーで博士号を取得しており、同社の最高テクノロジー責任者を務めている。そして経営陣を締めくくるのは、最高業務責任者のSamet Yildirim(サメット・ユルドゥルム)氏だ。同氏はBoehringer Ingelheimの役員でバブナー氏の上司であった。

Orbillion Bio共同創業者でCTOのガブリエル・レべスク・トレンブレイ氏、CEOのパトリシア・バブナー氏、COOのサメット・ユルドゥルム氏()(画像クレジット:Orbillion Bio)

バブナー氏のヘリテージミートへのこだわりは、経済的な理由もさることながら、オーストリアの田舎で育った同氏のバックグラウンドが大きく影響している。長年、食通でオタクであることを自称しているバブナー氏は、科学を食品ビジネスに適用したいと思い化学の道に進んだ。同氏はOrbillionでただの肉ではなく、本当に美味しい肉を作りたいと考えている。

これは他の多くの企業が新しいテクノロジーの商品化を検討する際に、市場にアプローチする方法でもある。高価格帯の製品や、ユニークな生産技術で作られた独自の特徴を持つ製品は、一般的な製品と競合するよりも商業的に成功する可能性が高いのだ。はるかにおいしい動物の品種に焦点を当てることができるのに、なぜアンガスビーフに焦点を合わせる必要があるのだろうか?

バブナー氏は、単に豚肉の代替を作るのではなく、最もおいしい豚肉の代わりを作りたいのだ。

「食料の生産方法をより効率的に変えることができるようになると思うと、とてもワクワクします。私たちは今その変わり目にいます。私はオタク的であり、食べ物が大好きなので、私の技術や知識を生かして変革を起こし、食に影響を与えることができるグループの一員になりたかったのです。私はこの先、食べ物の大半が代替タンパク質、つまり植物ベース、発酵品、培養肉になると思っています」と同氏は語る。

バブナー氏にとってBoehringer Ingelheimへの入社は、巨大なバイオプロセスの世界に土台を作り、培養肉に着手するための準備であったという。

「私たちは製品をつくる会社で、最もおいしいステーキを作ることが目標です。最初の製品は塊のステーキ肉ではありません。最初の製品は和牛で、2023年の発売を予定しています」と同氏。「ミンチ肉のような製品で、和牛の刺身みたいな感じでしょうか」。

市場に参入するにあたり、バブナー氏は選択した肉の培養をするための新しいアプローチだけでなく、従来の肉のような大きな切り身を作るために必要な組織のスキャホールド(足場)や、肉の細胞と組み合わせる風味付けのための脂肪など、他の要素を培養する新たな方法の必要性についても認識している。

ということは、Future Fields(フューチャーフィールズ)、Matrix Meats(マトリックスミーツ)、Turtle Tree Scientific(タートルツリー・サイエンティフィック)などの企業にとって、最終的なブランド製品に組み込まれる要素を提供するチャンスがまだあるということだ。

またバブナー氏は製造プロセスにおいて、直接の潜在的なパートナーを超えたサプライチェーンについて考慮している。「私の家族には農家と建設業者がいます。また他にも土木技師や建築家もいます。私は農家を尊敬していますが、耕作や畜産を行う人々は、その仕事が十分に認められていないと感じます」。

同氏は、細胞株を生み出す動物の所有者が、その普及と幅広い商業生産において報酬を得られるようにできる一種のライセンス契約を通じて、農家や畜産家と協力することを想定している。

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またこれは、大規模な農業関連産業や、畜産や家畜の飼育にともなう温室効果ガス排出量を大幅に抑えるというミッションにも貢献する。食肉を生産するための動物が少なくて済むのであれば、農場の環境負荷がそれほど大きくなることはない。

「量産するだけのために動物を畜産するという、私たちが過去に犯した過ちを今後犯さないようにしなければなりません」とバブナー氏はいう。

同社はまだ始まったばかりだが、すでにサンフランシスコで最も有名な精肉店の1つと意向書を交わしている。「肉屋のガイ」として知られるGuy Crims(ガイ・クリムズ)氏は自身の店でOrbillion Bioの和牛培養肉を仕入れる契約内示書に署名している。「クリムズ氏は培養肉の熱心な支持者です」とバブナー氏はいう。

初期段階の技術が実証された今、Orbillionは迅速な拡大を目指している。同社が2022年末までにパイロットプラントを稼働させるには約350万ドル(約3億8000万円)が必要だ。これは、同社がJoyant(ジョイアント)やVentureSouq(ベンチャースーク)などの企業から調達した140万ドル(約1億5000万円)のシードラウンドに加えて必要になる額である。

「私の考える今後の統合モデルは、農家が培養肉用の動物のブリーダーになることです。これにより地球上の牛の数を数十万頭にまで減らすことができます」とバブナー氏は最終目標について語った。「培養肉の需要が増えれば、農家の仕事がなくなるといった話をよく聞きますが、すぐに畜産業が消滅するといったことにはなりません」。

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画像クレジット:RJ Sangosti/The Denver Post via Getty Images / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

タマゴを使わないタマゴとマヨネーズを開発する代替タンパク製品のEat Justがさらに217億円調達

タマゴを使わないタマゴとマヨネーズ、そして初めてシンガポール政府の承認を得た培養鶏肉のメーカーEat Jsut(イート・ジャスト)は、新規ラウンド2億ドル(約217億円)の資金調達を行ったと発表した。

このラウンドは、カタールの政府系ファンドQatar Investment Authorityが主導したもの。これに、Charlesbank Capital Partners、Microsoft(マイクロソフト)の共同創設者Paul G. Allen(ポール・G・アレン)氏の遺産で運用される投資会社Vulcan Capitalが参加している。

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2011年、Hampton Creek(ハンプトン・クリーク)として創設されて以来、同社は総額6億5000万ドル(約705億円)以上を調達した。そのすべてが、代替タマゴ製品と新しい培養肉生産ラインの確立に注ぎ込まれている。

「私たちは、健康的で安全で持続可能なフードシステムを投資家のみなさんと構築できることを、大変にうれしく思っています。数々の産業の改革を進めてきたその企業提携の知識と専門性が、彼らをパートナーと決めた私たちの判断の根幹にあります」と、Eat Jsutの共同創設者にしてCEOのJosh Tetrick(ジョシュ・テトリック)氏は声明で述べている。

Eat Jsutの発展は、円満に進んできたわけではない。2017年、同社とその最高責任者はクーデター未遂事件に巻き込まれ、結果として数名の幹部の解雇を余儀なくされた。その解雇が、取締役会の全員辞職という事態を招いたが、数カ月後に新しい取締役を迎えることで事なきを得た。

この騒ぎの後、Hampton Creekはリブランドを行い、目標も刷新した。現在、同社の製品は、同系統の2つのカテゴリーに絞られている。植物由来の代替タマゴ製品、タマゴを使わないマヨネーズ、養鶏場で飼育された鶏の肉に置き換わる培養チキン製品だ。

Just Eatのチキンおよびタマゴ事業のうち、先陣を切ったのはタマゴ製品だった。そのため、2万を超える小売店と1万を超えるフードサービス店舗で同社製品が販売されていることは注目に値する。この製品は販売開始以来、アメリカの100万世帯に1億個以上のタマゴを届けている。

このタマゴ製品は、中国のファストフードチェーンDicos(ディコス)でも売られている。また、Cuisine Solutions(キュイジン・ソリューションズ)とは、代替タマゴの低温調理製品を販売する契約も結んだ。さらにPeet’s Coffee(ピーツ・コーヒー)のアメリカ全国の店舗でも購入が可能だ。Eat Justは、タマゴを使わないタマゴ製品の流通基盤をカナダにも広げたと話している。

次に来るのが GOOD Meat(グッド・ミート)製品だ。これはシンガポールで短期間だけ販売されていた。同社は、生産コストを下げ、他の種類の代替肉製品と並行して商品化を進めてゆく考えを声明に記している。

Khosla VenturesとFounders Fundからの、初めての百万ドル(数億円)単位の資金調達でスタートを切ってからここまで、Eat Jsutが歩んだ道のりは長かった。

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タグ:Eat Just代替卵 / 植物由来卵培養肉資金調達シンガポール

画像クレジット:Eat Just

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

ビル・ゲイツ氏が勧める合成肉の開発に取り組むオランダのMeatableが約51億円調達

Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏の近著「How to Avoid a Climate Disaster」について語った最近のインタビューの中で、Microsoft(マイクロソフト)とBreakthrough Energyの創業者で世界長者番付第3位の同氏は、温室効果ガスの排出を抑制するために世界の最富裕国の市民は同氏がいうところの合成肉が完全に使われている食事に切り替えるべきだと啓発した。

ゲイツ氏の要望は、アムステルダムからテルアビブ、ロンドン、ロサンゼルス、バークレー、シカゴに至るまであちこちで設立されたスタートアップや上場企業の動きと合致する。

実際、人工肉マーケットで最も資金潤沢な企業の2社はオランダで創業された。そこでは、4700万ドル(約51億円)の新規資金調達を発表したばかりの新興企業MeatableMosa Meatに挑んでいる。

Meatableは2023年までに欧州当局から最初のプロダクトの承認を得て2025年までに商業販売することを目指している。

同社の今後の道のりは長い。というのも、ゲイツ氏はMIT Technology Reviewとのインタビューで「細胞レベルで取り組んでいるMemphis Meatsなどもありますが、それが経済的なのかはわかりません」と認めた。

経済性の他にも、消費者が人工肉に進んで切り替えるかどうかという問題もある。サンフランシスコ拠点のJust FoodsやテルアビブのSupermeat など一部の企業はすでにいくつかのレストランで培養細胞から作られたチキンパテやナゲットを販売している。

Meatableのテクノロジー責任者Daan Luining(ダン・ルイニング)氏によると、こうしたプロダクトは細胞テクノロジーの全潜在能力を生かしていない。「ナゲットとチキンバーガーが登場しましたが、当社は全筋肉組織に取り組んでいます」と同氏は述べた。

この分野へのかなりの新規参入、そしてそうした企業が調達した資金は、企業が大規模生産時のコストと放し飼い肉代替品の質とのバランスを取りながら綱渡りできれば、いくつかの勝ち抜いた企業のためにチャンスが広がっていることを指している。

「当社のミッションは地球の人々のためのタンパク質提供でグローバルリーダーになることです。豚肉や牛肉の定期的な摂取の削減は環境や土地管理に影響を及ぼします」とルイニング氏は話した。「当社が使っているテクノロジーでは、異なる種を扱うことになります。最初に当社は気候変動やプラネタリーヘルス(地球全体の健康)に最大の影響を及ぼす動物にフォーカスします」。

目下、Meatableにとって価格が問題だ。同社は現在、1ポンド(450グラム)あたり約1万ドル(約108万円)で肉を生産しているが、競合他社と違って全肉を作っていると同社は話した。そこには、肉を構成する脂肪や結合組織が含まれる。つまり肉だ。

従業員35人と新たに調達した資金で、同社は研究・開発から食料生産企業に移行しようとしている。欧州において最大の食品バイオテクノロジー企業の1社であるDSMのような戦略的投資家がサポートするだろう。Vertex Pharmaceuticalsの会長Jeffrey Leiden(ジェフリー・リーデン)博士や、Bill and Melinda Gates Foundation(ビル&メリンダ・ゲイツ財団)の元エグゼクティブディレクターで、最高メディカル責任者を務めたIlluminaを去った後にJuno Therapeutics、GRAIL、Mindstrong Healthを創業したRick Klausner(リック・クラウスナー)博士といったエンジェル投資家もサポートするはずだ。

Meatableの直近のラウンドに参加した機関投資家にはGoogle Ventures創業者Bill Maris(ビル・マリス)氏の新ファンドSection 32、既存投資家のBlueYard CapitalAgronomicsHumboldtTaavet Hinrikus(デビッド・ヒンリクス)氏が含まれる。

Meatableの最初の商品はおそらく人工の豚肉製品になるだろうが、オランダのトップ大学の1つが立地するデルフトにある施設を拡張し、牛肉製品の登場もそれほど遅くならなさそうだ。

「(Meatableは)すばらしいチーム、そして地球が直面している世界の食料不安の問題をめぐる困難を解決することができる画期的なテクノロジーを持っています」とクラウスナー氏は述べた。「Meatableは持続可能な方法で効率的に生産された肉の主要な選択となるための正しい成分を持っています」。

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タグ:Meatable資金調達培養肉オランダ

画像クレジット:Getty Images under a NICOLAS ASFOURI/AFP/Getty Images license.

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

代替肉に本物の風味を、動物なしで動物性脂肪を作るHoxton Farmsがシード資金3.9億円を調達

動物を使わずに動物性脂肪を生産することを目指している英国のスタートアップHoxton Farmsが、シード資金270万ポンド(約3億9000万円)を調達した。

このラウンドは、PayPalの創業者でもあるPeter Thiel(ピーター・ティール)氏が設立したシリコンバレーのベンチャーキャピタルであるFounders Fundが主導している。またBacked、Presight Capital、CPT Capital、Sustainable Food Venturesも参加した。

まだ研究開発段階にあるHoxton Farmsは、ロンドンのオールドストリートにある新しい専用ラボで学際的なサイエンスチームを拡大させるために資金を使用すると述べている。共同創業者で数学者のEd Steele(エド・スティール)氏は、「今後1年から18カ月かけて、当社の培養脂肪のスケーラブルなプロトタイプに向けて取り組んでいく予定です」と語っている。

同氏は、バイオテクノロジーの2つの学位と合成生物学の博士号を持つ長年の友人であるMax Jamilly(マックス・ジャミリー)博士と一緒に会社を立ち上げた(2人は幼稚園の頃に出会った)。「私は、CRISPRと呼ばれるゲノム編集技術を用いて、子供の白血病の治療法を発見するために博士号を取得しました」とジャミリー博士は語る。「その過程で、複雑な細胞を大規模に培養する方法を学びましたが、これはHoxton Farmsが直面している科学的挑戦の基本的な部分です」。

食肉代替分野の他の企業と同様、このスタートアップは、従来の食肉産業は持続不可能であるという前提に基づいて設立された。そうした中で代替食肉の需要は急増しているが、スティール氏は、これらの製品はまだ十分ではないと主張している。「味が悪く、健康的ではありません。重要な成分である脂肪が不足しています」と彼はいう。そしてもちろん、肉の味の大部分を決めるのは脂肪だとも。

しかし、一般的な代替肉は脂肪の代替品として植物油を使用しており、これには多くの欠点がある。ココナッツオイルやパーム油のように環境に悪いものもあるし、ほとんどの油には風味がない。

「Hoxton Farmsでは、動物を使わずに本物の動物性脂肪を育てています」とスティール氏は語る。「わずか数個の細胞から、バイオリアクターで精製された動物性脂肪を生成し、動物実験を行わずに持続可能な原料となる培養脂肪を生産しています。それは最終的に、見た目も、料理するときも、味も本物のような培養肉への扉を開きます」。

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さらに、現時点で存在する動物細胞の培養技術は高価すぎるという。Hoxton Farmsは数学的・計算論的モデルを利用して「細胞培養のコストを大幅に削減する」ことを目指しているが、その結果、「大規模にしたとき費用対効果が高い」生産プロセスが実現すると同社は考えている。

「我々は、計算生物学と組織工学の最新技術を組み合わせて、数年前には不可能だった科学を実現しようとしています」とスティール氏はいう。「当社が他と違うのは、大規模で費用効率よく細胞を成長させる唯一の方法は、数学的モデリングの力と合成生物学の力を組み合わせることであるという基本的な哲学です」。

彼の計算科学的アプローチは、同じ問題に取り組んでいる他社(競合他社には米国のMission Barns社やベルギー、イスラエルのPeace of Meat社などがある)との競争に役立つだけでなく、異なる製造業者向けに脂肪をカスタマイズすることも可能にすると想定されている。これには、味のプロファイル、物理的特性(融解温度、密度など)、栄養プロファイル(飽和 / 不飽和脂肪酸比率など)の微調整が含まれる可能性がある。

一方、Hoxton Farmsの初期の顧客は、植物油に代わるより持続可能で風味豊かな代替品を求める植物ベースの代替肉企業になる。将来的には、筋肉細胞を培養しているが脂肪源を必要とする培養食肉会社やベーカリー、製菓、化粧品などの他の業界もターゲットとしている。

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タグ:培養肉Hoxton Farms資金調達

画像クレジット:Hoxton Farms

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(文:Steve O’Hear、翻訳:Aya Nakazato)