ボーイングの商用有人宇宙船Starlinerの初テストは8月に延期

一般人を対象とした商用宇宙旅行計画の進展は我々と宇宙の関係を一変させる可能性があるが、その一番乗りの栄誉はSpaceXが今年中に手にするかもしれない。最大のライバルであるボーイングがStarlinerシステムのテスト飛行を延期したからだ。無人飛行テストの第1回目はこの5月に予定されていたが、8月に延期されたことを米国時間4月2日、ボーイングが確認した。

Starlinerのテスト飛行延期の情報が浮上したのは先月だった。この時点ではボーイングは「Starlinerが利用する打ち上げ施設の日程が立て込んでいる」ことを確認するにとどまった。実際、Starlinerの打ち上げに適する「ウィンドウ」は5月には2日しかない。Starlinerを割り込ませれば国家安全保障上重要なAEHF5軍事通信衛星の打ち上げに支障をきたすおそれがあった。

宇宙事業でのスケジュールの遅れはいやというほど繰り返されてきた。世界の宇宙事業各社が独自の宇宙基地や発射施設を保有ないし建設しようとしているのはこれが理由だ。衛星発射の回数が増えれば発射施設の能力も拡大される必要があるというのは当然だろう。しかし独自基地の建設には莫大なりソースを必要とする。多くの事業者にとって、(米国東部にあるロケットセンター)ケープ・カナベラルの発射施設を利用する以外選択肢がない。

ただし、ボーイングが本当に5月に打ち上げを実施するつもりだったら、打ち上げロケットとStarlinerカプセルは現在よりはるか前にケープ・カナベラルに到着していければならなかったとNASAの宇宙飛行部門が指摘している。テストに必要な機材がケープ・カナベラルに来ていなかったということは打ち上げ延期が決定されたのがかなり以前であることを示唆する。ボーイングとロッキード・マーティンの共同宇宙事業であるUnited Launch Allianceは、すでにテスト発射準備を中止していた。つまり昨日の延期発表は誰もが知っていたことを再確認したにすぎない。

8月の無人テスト飛行が成功すれば、11月には有人テストが可能になるだろう。しかしStarliner計画はすでに何年も遅れており、今回もまた遅れが加算されることとなった。しかもボーイングに比べればはるかに若いライバルがすでに無人宇宙飛行テストに成功していることはさらなる屈辱だ。

SpaceXは有人飛行を7月に予定しているのでボーイングは悔しいかもしれない。しかし実情は、こうした事業は慎重さの上にも慎重さを重ねる必要があり、必要なだけの時間をかけるべきだ。この点、ボーイングの決断は正しい。なるほど一番乗りを逃がせば、会社の評価にとって追い風にはならないかもしれない。しかしそれは今後明らかになるStarlinerの能力、信頼性によって十分取り返せる。

別のプレスリリースでNASAとボーイングはStarlinerには研究、メンテナンスのためのミッションが追加されることを発表した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

インドの人工衛星破壊で400あまりの破片がさまざまな軌道上にばらまかれた

NASAのアドミニストレーターを務めるJim Bridenstine氏によると、インドが最近実施した軌道上防衛能力のデモンストレーションにより、400あまりの破片がさまざまな軌道内に散乱し、国際宇宙ステーションやそのほかの配備物を危険にさらしている。彼は米国時間4月2日に行われた市民参加の集会で、「こわい、とってもこわいことだ」と述べた。

先週敢行されたそのテストでは、インドのロケットが高度約300キロメートルに打ち上げられ、前からそこに置かれていた人工衛星に当たって破壊した。それは、1月に打ち上げられたMicrosat Rだと思われる。ナレンドラ・モディ首相はそのテストについて、誇らしげにこう述べた。「インドの優秀な科学者たちの素晴らしい能力と我が国の宇宙計画の成功が示された」。

世界中の宇宙関係者たちからの反応はそんなに温かいものではなく、一部はその行為を宇宙の軍用化に向かう一歩と非難し、またBridenstine氏らはもっと現実的な警告を発した。

彼はこう言った。「意図的に軌道上にデブリフィールド(Debris Fields,、残骸界)を作ることは人間の宇宙飛行と両立しない」。

「その一度のイベントによる400片のデブリを軌道上に認識した。われわれが今調べているのは10センチ以上の大きな破片約60個のみである。60個のうち24個は、国際宇宙ステーションの遠地点の上にある」。

これらの破片のほとんどはすぐに大気圏内で燃え尽きてしまうが、大きなものは追跡できるし、必要なら回避もできる。しかし、「これらのこと全体が悪しき前例になる」とBridenstine氏は示唆する。「どこかの国がやったら、他の国もやろうという気になるだろう」。

まさに彼の言うとおりだからこそ、今回インドはやったのだ。つい最近の2008年に米国もロシアもそして中国もすでにそれをやってしまった。だから米国にも責任の一端はある。でも、デブリを軌道上に送り込んでISSを危険にさらすようなことは、単純に良くない考えだ、と全員が合意するだろう。

インド宇宙研究機構のアドバイザーTapan Misra氏はIndian Expressに、6カ月以内にデブリはすべてなくなる、今回のミッションはいかなるリスクも生じないよう細心に計算されている、と述べている。彼によると、中国による今回と同様の迎撃ミッションは高度が今回の3倍近くあり、大量のオブジェクトを作り出したので、長年経った今でも探知の対象になっているそうだ。

軌道上のデブリは深刻な問題であり、今後打ち上げが増えるとともに問題も悪化する。しかしRocket Labのような一部の企業は事前対策を取ろうとしている。同社はなんと、宇宙銛(もり)という、打ち込んで後で回収できる装備を設計している。それは理論としてはたいへんクールだが、むしろ、そんなものが必要にならないことを願いたいね。

画像クレジット: AFP/Arun Sankar/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

初めて火星の空を飛ぶヘリコプター

Mars 2020のミッションは順調に進行中で、来年には打ち上げが予定されている。火星に送り込まれるハイテク装備の新しい探査機の中には、これもハイテクのヘリコプターが仕込まれている。ほとんど大気が無いに等しい惑星でも飛べるように設計されたものだ。火星の上空を実際に飛行する機体が送り込まれるのは初めてのことなので、その開発者たちは期待に胸を膨らませている。

「次の飛行では、火星の上を飛びます」と、JPLでこのプロジェクトのマネージメントを担当しているMiMi Aung氏は、ニュースリリースの中で述べている。最終版にかなり近いエンジニアリングモデルは、1時間以上飛行することができた。しかし、今回の2回の短いテスト飛行は、この小さな機体が実際に遠くの惑星上を飛ぶ前の、最初と最後の飛行となった。もちろん、ロケット打ち上げによる「飛行」は除いての話だ。

「ヘリコプターが試験室の中を飛び回っているのを見て、私は過去に同じ空間でテストされた歴史的な機体のことを考えずにいられませんでした」と、彼女は続けた。「この試験室は、Ranger Moonの探査機から、Voyager、Cassiniなど、これまでに火星に送り込まれた探査機のミッションを実現させてきたのです。その中に、私たちのヘリコプターがあるのを見て、私たちも宇宙探査の歴史の小さな一部になろうとしているのだと感じました」。

火星で活動中のヘリコプターの想像図

火星を飛ぶヘリコプターは、地球を飛ぶヘリコプターと、それほど大きくは違わない。もちろん、火星の重力は地球の1/3で、大気の濃度は1%ほどしかないから、相応の違いはある。たとえれば、地球の10万フィート(約3万メートル)上空を飛ぶようなものだ、とAung氏は説明した。

ソーラーパネルを備えているので、それなりに自力で探査できる

テストに使用された装置は、単に真空に近い状態を作り出すだけでなく、空気を火星に近い希薄な二酸化炭素混合ガスに入れ替えることができる。ただし、「重力軽減」システムは、ヘリコプターをワイヤーで軽く吊って、低重力をシミュレートするだけだ。

飛行高度は、なんと2インチ(約5cm)で、2回のテストの合計で1分間ほど浮上しただけ。それでも、このチームにとっては、1500ものパーツからできた4ポンド(約1.8kg)の機体を梱包して、火星に送り込む準備ができたことを確認するのに十分だった。

「素晴らしいファーストフライトでした」と、テストを担当したTeddy Tzanetos氏は語った。「重力軽減システムは完璧に機能しました。もちろんヘリコプターも完璧です。2インチの高さでホバリングできれば、必要なすべてのデータを収集できるのです。それで、この火星用のヘリコプターが、火星の薄い大気の中でも設計通りに自律飛行できることが確認できます。それより高く上がる必要はないのです」。

Mars 2020の探査機が着陸してから数ヶ月後に、このヘリコプターは分離され、最長でも90秒ほどテスト飛行を数回繰り返す。それが、大気より重い機体による別の惑星での最初の飛行となる。つまり、水素ガスを詰めた気球によるのではない、動力による初の飛行なのだ。

その機体は、ほとんど自動操縦で運航される。というのも、通信に往復で半時間もかかるので、地球から司令を送って操縦するのはさすがに無理なのだ。ヘリコプターは太陽電池とバッテリーを備えていて、小さな着陸用の足も取り付けられている。探査機から出発して、離れた場所を30日間以上も飛行することを試みる。その際には、約3メートルの高さで、探査機から数百メートルも離れた場所まで飛行することになるはずだ。

Mars 2020は、来年の夏には打ち上げの準備が完了すると見込まれている。目的地に到着するのは2021年のはじめごろだ。もちろん、それまでの間も、CuriosityとInsightは向こうで活動している。火星の最新情報は、まだまだ続々と入ってくるはずだ。

(関連記事:NASA chooses the landing site for its Mars 2020 rover mission
(関連記事:NASA shows off the design for its Mars 2020 rover

画像クレジット:NASA/JPL

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

スカパーJSATとパスコが宇宙事業に関する業務提携を締結、新たな衛星データ利活用サービスの開発へ

衛星多チャンネル放送局「スカパー!」などを提供するスカパーJSATは3月28日、人工衛星や航空機などから地理空間情報(GIS/航空測量)を取得するサービスを提供するパスコとの業務提携を発表した。今回の業務提携を通じて、両社がともに展開する低軌道周回衛星に関するサービスの効率化と市場拡大を図る。

スカパーJSATは、スカパー!で知られるメディア事業のほかに、同社が保有する17機の衛星を利用した宇宙事業を展開している。災害に強い衛星IPネットワークサービスを導入できるサービスや、海の上でも繋がる「海洋ブロードバンドサービス」などを提供中だ。

一方のパスコは、人工衛星や航空機、ドローン、専用車両、船舶などに各種センサー(光、レーザー、マイクロ波)などを搭載することで地理空間情報を収集する事業を展開している。

両社は今回の業務提携により、国内外の低軌道周回衛星を利用した地球観測あるいは通信事業者向けに、衛星地上局を用いたデータ送受信サービスを提供する。また、共同で、新たな衛星データ利活用サービスの開発や、両社のサービスや販売チャネルを相互に活用できる新たなビジネスモデルの創出にも着手していくという。

女性のみの宇宙遊泳が中止に、適正サイズの宇宙服足らず

残念なことに、NASAは歴史的なミッションとなるはずだった女性のみによる宇宙遊泳の中止を発表した。

米国時間3月22日に予定されていたこのミッションの中止の理由は、女性宇宙飛行士にとって適切なサイズの宇宙服が十分に用意できなかったためだと説明されている。

宇宙遊泳に参加する予定だったAnne McClain氏は、以前着ていた大きな宇宙服では十分に動くことができないと語っている。

Anne McClain

NASAは、「McClain氏は最初の宇宙遊泳にて、ミディアムサイズの宇宙服(の上部分)が自分にちょうど合うことがわかった」と声明を出している。

しかしミディアムサイズの宇宙服は1着しかなく、その宇宙服はもうひとりの女性宇宙飛行士のChristina Koch氏が使う予定だ。Koch氏は宇宙飛行士のNick Hague氏と、太陽電池パドルにリチウムイオンバッテリーを装着する予定だ。

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ミッションの中止は残念がだ、悲劇ではない。世界最高の頭脳がセクシズムを克服しようとしても、宇宙服のサイズを変えることはできないのだ。

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(文/塚本直樹 Twitter

宇宙ロボットで人間が行う作業の72%を代替、テレプレゼンスロボのGITAIがJAXAと共同研究

宇宙空間での作業用に遠隔操作ロボットを開発するGITAIは3月25日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同研究契約を締結し、国際宇宙ステーション「きぼう」の日本実験棟模擬フィールドにおいて、GITAIロボットによる宇宙飛行士の作業代替実験を実施したと発表した。

GITAIが開発するのは、宇宙で作業コストを従来の10分の1にすることを目的に開発された作業ロボット。VR端末を使い、遠隔で操作する「テレプレゼンスロボット」だ。GITAIが今回の実験で使用したロボット(6号機)は、宇宙ステーションの限定的なネットワーク環境を前提に、これまでのロボットでは困難だったスイッチ操作、工具操作、柔軟物操作、負荷の高い作業などを1台でこなせる性能をもつという。

実験の結果、GITAIロボットはこれまで人間が行っていた作業の72%を代替することに成功。GITAIとJAXAの共同研究契約は今年度末を期限としており、両社は今後も協力して技術検討と実証実験を行うという。

GITAIは2016年7月の設立。CEOの中ノ瀬翔氏は2013年にインドで起業し、同社を売却した経験を持つ連続起業家だ。同社は2016年9月にSkyland Venturesから1500万円を調達。2017年12月にはANRIと500 Startups Japanから1億4000万円を調達している。

衛星打ち上げ成功でOneWebが約1400億円を調達、宇宙ネット構築へ大きく前進

宇宙インターネットのスタートアップ、OneWebは12.5億ドル(約1400億円)のベンチャー資金を調達することに成功した。先ごろ同社は衛星6基の打ち上げに成功し、いよいよミニ衛星の大量生産に乗り出すことが可能となった。OneWebは世界規模でまったく新しいインターネット接続レイヤーを構築する野心的な計画を進めている。

OneWebは第1陣として650基前後のミニ衛星を利用して全世界をカバーする新しいインターネット網を建設しようとしている。さらにその後数百基を打ち上げてカバー範囲と通信容量を拡大する。当初のスケジュールからはだいぶ遅れているが、これは宇宙関連の事業では珍しくない。しかし2月末の衛星打ち上げの成功により、衛星の大量生産とその運営という次の事業段階に進む準備が整った。

CEOのAdrian Steckel氏はプレスリリースでこう述べている。

最初の6機の衛星の打ち上げが成功し、Airbus(エアバス)と共同で建設中の画期的な衛星製造施設も完成に近づいている。ITUでも電波帯域の優先割り当ての確保が間近だ。また最初の顧客確保にも成功しつつある。OneWebは計画と開発の段階から実施、運用の段階へと大きく進んだ。

しかし、低軌道であっても大量の衛星を投入するには巨額の資金が必要となる。OneWebの衛星は1基あたり約100万だ。これに打ち上げ費、運用費、人件費などを加えれば10億ドル級のラウンドでもすぐにコストをカバーできなくなるのははっきりしている(同社の調達総額は現在34億ドル)。

もちろんAirbusが開発した独自の効率的な生産システムに移行すれば衛星のコストは下がるだろう。今回のラウンドで調達された資金の一部は衛星製造システムの仕上げにも投資されるはずだ。

現在の計画では、まず十分な数の衛星を打ち上げ(毎月の30基程度が必要)て、来年接続をデモするという。続いて2021年には限定的な商用サービスを開始する。OneWebはすでに最初の顧客としてTaliaを得ている。同社はアフリカと中東をカバーするテレコム企業だ。

もちろん、OneWebには多数のライバルが存在する。一番よく知られているのはSpace Xだろう。同社は数千のミニ衛星で世界をカバーすることを計画している。しかし実際に軌道を周回しているのは少数のプロトタイプだけでスケジュールは大きく遅れている。しかも惑星間飛行や火星植民地化といった壮大な計画をあくまで追求するならミニ衛星打ち上げのためにさほど大きなリソースを割り当てることはできないかもしれない。

Swarm Technologiesは超低コストのソリューションを目指しており、Ubiquitilinkは新しい端末技術に注目して既存のスマートフォンに衛星を直接接続できるようにしようと考えている。これは他の衛星通信や地上通信と共存できる可能性がある。宇宙事業には不確定の要素が多々あり、今後どうなるか誰にも分からない。

とはいえ、OneWebは優秀なエンジニアのチームを持ち、競争でもライバルにリードを保っているため、業界には同社に賭ける強力な企業が多数ある。今回の12億5000万ドルのラウンドはローンチ当初からの投資家であるSoftBankがリードし、Grupo Salinas、Qualcommに加えてルワンダ政府が参加している。

(翻訳:原文へ

滑川海彦@Facebook

オポチュニティの最後の火星パノラマ写真は素晴らしすぎて言葉がない

火星探査車オポチュニティは、公式には永久にオフラインになったが、その科学と画像の遺産は存続する。そしてNASAは米国時間3月13日、あのロボットがその後塵の毛布に包まれていく前に送ってきた最後の、完全に近いパノラマをシェアした。

火星の表面にこれまで5000日(地球日ではなく火星日で)以上いたオポチュニティは、その最後をエンデバークレーターの中、その東縁にあるパシビアランスバレーで迎えた。生存の最後の1か月彼は、自分のまわりを規則正しく撮影し、多くの感動的なパノラマにまた一つを加えた。

パノラマカメラ「Pancam」は、撮影をブルー、グリーン、ディープレッド(深紅色、近赤外線色)の順にフィルタをかけて行い、354の画像で多様な地形や自分の一部、そして谷を踏み歩いた軌跡を拾う。下の画像をクリックすると完全な注釈つきのバージョンを見られる。

それは、人が望みうる火星の風景画像としてこれ以上のものがありえないほど完璧で、細部の違いまで詳細だ。色を加工しているので、この世のものとは思えぬ独特の美しさがある(元の色のバージョンはここにある)。そしてそのため、この探査車の最後のショットだという切なさが胸を打つ。彩色は実は完成していない。左下にあるモノクロの部分は、これから彩色する箇所だ。

厳密に言うとこれは、探査車が最後に送った画像ではない。あの致命的な塵の嵐が迫ってくるとき、オポチュニティは最後のサムネイルを送ったが、本体画像は送られなかった。それは、日没寸前の太陽の画像だ。

塵の雲が完全に太陽を覆い、オポチュニティが漆黒の闇に包まれたことは最後の送信でわかる。

上の画像中にある閃光やドットは、すべて画像センサーのノイズだ。本当は完全な闇で、その嵐の規模が全惑星サイズであることから考えると、数週間は続くだろう。

オポチュニティは、とてつもない幸運に恵まれた。設計寿命の何十倍も長持ちして旅をし、チームの最長予測すら超えた。しかも最後の日まで美しくて価値あるデータを取り続けたことは、その設計と制作が堅牢かつ細心であったことの証明だ。

画像クレジット: NASA/JPL

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

SpaceXが歴史的な民間有人宇宙船のテスト運用に初成功

SpaceXのCrew Dragon宇宙船が大西洋に無事着水し、民間企業による国際宇宙ステーション(ISS)との有人宇宙船のテスト運用に初めて成功した。これはSpaceXが年内に予定してるミッションのうちの一つで、Boeingもそれに続き宇宙船のデモ打ち上げ、そして有人でのテスト打ち上げを実施する。

Demo-1と名付けられたミッションでは、SpaceXはISSとの貨物輸送に定期的に用いられてきたDragon宇宙船の発展形となるCrew Dragonが、宇宙飛行士の輸送の準備ができていることを示した。

3月2日(米国東部時間)、地球を18周したCrew Dragonは最終的にISSへと接近し、新たなドッキング・アダプターへと自律的にドッキングした。400ポンド(約180kg)の物資がISSへと持ち込まれたが、Ripleyと名付けられたクラッシュテスト用のダミー人形は船内に取り残された。

(なお、Crew Dragonを打ち上げたFalcon 9の第1段もドローン船への自動着陸に成功している)

Crew Dragonのドッキングから5日後、宇宙船はISSから分離し、大気圏への再突入を開始。スケジュールどおり、3月8日の8時45分に地球に帰還した。

これはNASAのCommercial Crew Program(商業有人計画)における大きな進展であり、またSpaceXにとっても計画の成功だけでなく、Boeingに先んじたという意味で価値がある。ただしこれはどちらがシェアを獲得するかという話ではなく、2社の健全な競争により、有人宇宙開発がより一般的になることを意味している。

今後、SpaceXとNASAによるミッションの詳細な報告や、宇宙船とダミー人形の検査結果が伝えられることだろう。

(文/塚本直樹 Twitter

月に民間探査機が到達する日、SpaceILから有人探査の復活まで

米国時間2月22日、イスラエルの月面探査機「Beresheet」がフロリダから打ち上げられた。もしミッションが成功すれば、民間としては初めて、そしてロシア(旧ソ連)や米国、中国に続く月面探査機の軟着陸の成功例となる。ここでは、Beresheetのミッションの経緯からその技術までを追ってみよう。

月面探査レースの参加チーム

スペースILは2011年に、非営利団体として設立された。その目的は、Xプライズ財団が運営しグーグルがスポンサーとなった月面探査レース「Google Lunar X Prize」に参加することだ。

Google Lunar X Prizeのレース目標は、民間チームが月面探査機を打ち上げ、月面を走行しつつ画像や動画を撮影。そして地球へと送信することだ。参加チームには月面探査機だけでなく、地球との通信モジュールの開発など高度な技術力が求められた。また、レースでは優勝チームに最高2000万ドル(約2200万円)が与えられ、賞金付きの中間目標も各種設定された。

2007年から始まったこのGoogle Lunar X Prizeには、世界各国から34チームが参加。途中で計画の進展により参加チームが選別され、SpaceILと米国のMoon Express、インドのTeamlndus、日本のHAKUTO、国際チームのSyneygy Moonが最後までレースに残った。しかし2018年4月、レースは達成者なしで終了したのだ。

達成チームが現れなかった大きな理由として、打ち上げが間に合わなかったことがあげられる。先述したチームはすべてロケットの打ち上げ契約にこぎつけていたが、結局スケジュールの関係で探査機が打ち上がることはなかった。

しかし、各チームの努力が無駄になったわけではない。SpaceILだけでなく、Moon ExpressやHAKUTOの運営チーム「ispace」、そしてTeamlndusやSyneygy Moonはそれぞれ独自に月面探査機を開発し、月へと打ち上げようとしているのだ。

極めて小さな探査機

Beresheetの大きさは直径2mかつ高さ1.5m、重量は585kgで、そのうちの400kgを燃料が占めている。これは有人探査機だったアポロ計画の宇宙船はもちろん、無人探査機のソ連のルナシリーズ、アメリカのサーベイヤーシリーズ、そして中国の嫦娥など、過去に月面に軟着陸した探査機よりもずっと小さく軽い。

Beresheetの打ち上げは米SpaceXの「Falcon 9」ロケットで実施された。インドネシアの通信衛星「Nusantara Satu」の副ペイロードとして搭載されたBeresheetは、予定されていた軌道に投入済みだ。そして月面に近づいたBeresheetはエンジン噴射により4月11日に軟着陸し、数日間の稼働を予定している。このように稼働期間が短い理由は、熱調整機構が搭載されていないためにオーバーヒートを避けられないと予測されているからだ。

そして、搭載した磁力計にて月の地磁気を観測。これにより、月の成り立ちについてのヒントが得られることが期待されている。その他にも、観測用にレーザー反射体やカメラを搭載している。

なお興味深いことに、Beresheetには「タイムカプセル」も搭載されている。このタイムカプセルにはWikipediaや聖書、子供の絵、ホロコーストの記録、イスラエル国歌、国旗、独立宣言書が封入されている。遠い将来、地球人や宇宙人が月の砂に埋もれたBeresheetを発見したときには、イスラエルという国の歴史を伝える貴重な資料となるかもしれない。

ますます加熱する月面探査

地球から一番近い天体の月では、さまざまな探査プロジェクトが進行している。

まず近年で最も注目を浴びたのは、中国の探査機「嫦娥4号」だろう。この嫦娥4号は2019年1月に史上初めて、月の裏側に軟着陸することに成功。現在は探査車「玉兎2号」を展開し、月面探査を実施している。さらにこの嫦娥4号や玉兎2号と地球との通信をリレーするために、中継衛星「鵲橋」をあらかじめ打ち上げるという力の入れようだ。

そして2019年4月には、インドの月面探査機「チャンドラヤーン2号」が打ち上がる。このミッションが成功すれば、インドは5番目に月面に探査機を着陸させた国となる。また2019年には民間企業のMoon Expressの探査機や、中国によるサンプルリターンミッション「嫦娥5号」の打ち上げなど、実に賑やかな1年となるはずだ。

その後の注目べきミッションとしては、中国が月の南極からのサンプルリターンを目指す「嫦娥6号」を2020年に実施する。そして日本も、高精度着陸実証機「SLIM(スリム)」を2021年に打ち上げる予定だ。

復活する有人月面探査

さらに2020年代には、月面探査に大きな転機が訪れるかもしれない。NASAは、2028年に人類を再び月に立たせるとの目標を発表したのだ。

かつて米国は「アポロ計画」にて、1969年から1972年まで宇宙飛行士を月へと送っていた。しかしアポロ17号を最後に、45年以上人類は月へと降り立っていない。2028年というタイムスケジュールが現実的かどうかは残念ながら不透明だが、我々は再び有人月面探査を目撃することができるかのしれない。

現在も月への着陸を目指し、宇宙を飛行し続けているイスラエルのSpaceIL。その計画は、民間企業による月面探査の第一歩目に過ぎないのである。

(文/塚本直樹 Twitter

SpaceXがCrew Dragon宇宙船を初打ち上げ、有人宇宙飛行の準備進む

SpaceXは米国時間3月2日、「Falcon 9」ロケットと「Crew Dragon」宇宙船の打ち上げという、2つの偉業を成し遂げた。Crew DragonはSpaceX初の、国際宇宙ステーション(ISS)との宇宙飛行士輸送を目的として開発されれた宇宙船だ。今回の宇宙飛行は宇宙船の最終チェックを目的としたもので、打ち上げからISSとのドッキング、回収に向けた大気圏への再突入までがテストされる。

これまで、Crew Dragonの打ち上げは順調に推移しており、宇宙船内部のダミー人形と「ゼロGインジケーター」の様子が確認できる。

そして明日の朝、宇宙船はISSとのドッキングに挑み、その後に大気圏に再突入することとなる。

打ち上げに向け、今週NASAはSpaceXに打ち上げ許可を与えていた。

打ち上げの様子は下の動画でご確認いただきたい。

(文/塚本直樹 Twitter

OneWebのインターネット衛星、最初の6機が打ち上げ成功

アップデート:打ち上げと衛星の軌道投入は成功

4年の年月と20億ドル(約2200億円)の投資の後、OneWebはようやく全世界にインターネットを提供する650機の衛星コンステレーションのうち、最初の6機を打ち上げた。アリアンスペースによって運用されるソユーズロケットは、太平洋時間の1時37分にギアナ宇宙センターから打ち上げられた。

OneWebは数百〜数千機の人工衛星による衛星コンステレーションを目指している会社のうちの1社。ソフトバンクが最大の出資主となっており、その他にもヴァージン・グループやコカ・コーラ、Bhartiグループ、クアルコム、そしてエアバスが出資を行っている。

OneWebの計画では、合計で900機(最初に650機)の人口衛星を高度約1100kmの地球低軌道に打ち上げる。そして、ベースステーションを利用すれば地球のあらゆる場所でブロードバンド通信が利用できる予定だ。既存の衛星インターネットよりもずっと安くて高速なのが、その特徴となる。

もしかしたら、SpaceXによる類似プロジェクト「Starlink」を聞いたことがあるかもしれない。Starlinkはより多数の人工衛星を利用する計画で、またSwarmはより小さな衛星コンステレーションによる廉価なサービスを目指している。さらに先日、Ubiquitilinkはベースステーションを必要としない通常の携帯電話と人工衛星を直接つなぐ、ユニークな技術を案内した。そして、前述のすべての会社はすでに人工衛星を打ち上げている。

OneWebの計画は大きく遅れており、本来衛星コンステレーションを2019年末までに構築する予定だった。しかし、それは今となっては不可能だ。遅延は宇宙開発業界では当たり前ではあるが、OneWebは計画が遅れる間にも、量産計画と資金の募集、そして人工衛星の改良を進めていた。ミッション概要で明かされた最新の計画では、OneWebは2020年に消費者向けのデモを開始し、2021年に全世界で24時間のサービスを提供すると明かしている。

衛星1機あたりのコストは約100万ドル(約1億1000万円)ー2015年の計画から倍増しているがーで、衛星コンステレーションの構築とテスト費用は10億ドル(約1100万円)に達するとみられているが、これは打ち上げコストを含んできない。打ち上げは勿論安価ではなく、むしろおそらくは極めて高価になることだろう。CEOのAdrián Steckel氏がFinancial Timesに先月伝えたところによれば、そのためにソフトバンクや他の出資主はより多くの資金集めに取り組んでいる、ということだ。

さらに、OneWebは通信会社との最初の大きな提携を発表した。アフリカと中東地域に通信サービスを提供しているTaliaは、2021年からOneWebのサービスを利用することで合意している。

ソユーズは30機以上の人工衛星の打ち上げ能力があり、衛星コンステレーションの完成にはあと最低20回の打ち上げが必要だ。最初の打ち上げは6機のみで、その他にはダミーペイロードが搭載され、打ち上げの様子をシミュレートした。

OneWebの代表は、今回の打ち上げは「衛星デザインと通信システムの実証」が目的だとしている。OneWebは今後6機の人工衛星を数ヶ月にわたりテストしつつ追跡し、地上局との通信など全体システムの動作を実証する予定だ。

人工衛星をフルに搭載した打ち上げは、フロリダのケネディ宇宙センター近郊にて建築されている量産施設が完成した後となる、今秋から始まる予定だ。

(文/塚本直樹 Twitter

過去10年以内に発売された携帯を衛星電話にする技術

先月、私はUbiquitilinkの記事を書いた。そのなかで同社は、非公開の方法で、人工衛星を使って全世界を網羅するローミングサービスとも言うべきものを提供する直前であると話していた。でもどうやって、と私は尋ねた(ちょっと待って、その答はもらってる)。そしてわかったのは、私たちが持っている電話機は、私たちが想像する以上に高性能であるということだ。私たちは、携帯電話の基地局と同じように、軌道を周回する人工衛星にも、しっかりアクセスできるのだ。同社はそれを証明した。

地球の低軌道を回る衛星の集団を利用することで、この10年以内に作られた携帯電話ならほとんどが、メッセージや、その他の低帯域幅のタスクを地上のいたるところ、たとえば海の真ん中でもヒマラヤの奥地でも、(ゆくゆくだが)文字通りいつでもどこからでも利用できるようになると、バルセロナで開催されたMobile World Congress(モバイルワールドコングレス)の説明会で、Ubiquitilinkは断言していた。

そんなはずはない、という声が聞こえそうだ。ウチの近所には電波が届かない場所がいくつもあるし、居間の隅でつながらないこともあるのに、衛星でデータをやりとりするなんて無理でしょ? とね。

衛星通信技術の再構築を目指すUbiquitilinkは地上技術(端末技術)に着目

「これはすごいことです。みなさんの本能が、それは無理だと感じている」と、Ubiquitilinkの創設者Charles Miller氏は話す。「しかし、RF(高周波)接続の基本に着目すれば、
それは想像しているより簡単なことなのです」

彼の説明によれば、問題は電話機の出力にあるという。受信状態や無線ネットワークが届く範囲を決めているものは、単純な物理の理論よりも、建造物や地形による影響のほうがずっと大きい。RF送受信機を障害物のない見渡しのよい場所に置けば、どんなに小型なものでも、かなり遠くまで電波は届く。

宇宙基地局

とは言え、それほど簡単な話でもない。特殊な衛星アンテナや地上基地を作るとなどといった手間と費用のかかる話ではないにせよ、そのためには変更しなければならない点がいくつかある。携帯電話機の改造は難しい。となれば、現在使われている別のハードウエアをいじることになる。しかしその他のことは、それに応じて解決されてゆくとMillerは話している。とくに大切なのは次の3つだ。

  1. 軌道を下げる。実用的な通信には、距離とそれに伴う複雑な要因による限界がある。軌道は500キロメートル以下でなければならない。かなりの低高度だ。静止軌道はその10倍高い位置にある。しかし、異常なほど低いわけではない。SpaceXStarlink通信衛星も、似たような高度を狙っている。
  2. ビームを狭くする。軌道が低いことや、その他の制限によって、ひとつの通信衛星が一度にカバーできる範囲は狭くなる。データを広範にばらまくGDS衛星や、自動的に狙いを定める地上の専用パラボラアンテナとは訳が違う。そのため地上では、上方45度の範囲を狙うことになる。つまり、頭の上の45度の角度の円錐形の範囲に入った衛星を使うというわけだ。
  3. 波長を長くする。簡単な物理学の出番だ。一般的に、波長は短かいほど、電波は大気中を通過しにくくなる。そのため、確実に衛星に届くためには、電波スペクトルの長い側の(周波数が低い)帯域を使うことが好ましい。

これらの条件を整えれば、普通の電話機でも、それに搭載されている標準的な無線チップと通常の電力消費でもって、衛星と情報のやりとりができるようになる。ところが、もうひとつ障害がある。Ubiquitilinkが解決しようと長い時間をかけてきた難問だ。

電話機と衛星が安定的に接続できたとしても、速度と距離による遅延とドップラー偏移は、どうしても避けられない。基地局や電話機の無線チップで使われているソフトウエアでは、それには対応できないことがわかった。コードに書き込まれたタイミングは、30キロメートル未満の距離を想定している。地表の曲率のために、通常はそれ以上の距離での通信ができないからだ。

そこでUbiquitilinkは、標準の無線スタックを改造し、それに対応させた。Miller氏によれば、これまで誰もやったことがないという。

「ウチの連中が戻ってきて完成したというので、『試しにに行こう』と私は言いました」と彼は話してくれた。「私たちはNASAとジェット推進研究所を訪ね、彼らの意見を聞きました。みんなの直感的な反応は『これは使えない』というものでしたが、その後、彼らはこう言ってきました『使えたよ』とね」

この理論は、Ubiquitilinkが今年の初めに打ち上げた衛星の試作機で実証された。彼らは、地上にある普通の電話機とその衛星とを、双方向2G通信でつなぐことに成功したのだ。信号が届き、無事に戻ってきただけでなく、ドップラー偏移と遅延による歪みも、その場で修正できた。

「私たちの最初の実験で、ドップラー偏移と遅延の解消が可能であることが示されました。すべてを市販のソフトウエアで行っています」とMillerは話したが、すぐにこう付け加えた。「ハッキリ言っておきます。まだまだやるべきことはありますが、どれも最新テクノロジーなどではありません。小型衛星を作るといった、確実で筋金入りのエンジニアリングです」

Ubiquitilinkの前にNanoracksを共同創設し、数十年間、宇宙ビジネスに携わってきた彼には、衛星分野に強い自信を持てるだけの資格がある。膨大な作業と資金を必要とするが、彼らはこの夏に、最初の実用衛星を打ち上げる予定だ(すべては特許取得済みだと彼は認めている)。

グローバルローミング

製品は複雑なものであっても、ビジネスのやり方はきわめてシンプルだ。衛星の運用には、多少の改造を施してはあるが、ほぼ市販のままのソフトウエアを使い、携帯電話には手を加える必要が一切ないことから、Ubiquitilinkは、実質的に、モバイルネットワーク各社を通じて利用できる地球規模のローミング運用会社として事業を行うことになる(開示情報:モバイルネットワーク業者であり、TechCrunchのオーナーでもあるVerizonは、私の知る限りではこの技術を導入するようだ。そのことは編集上の決定には一切影響していない)。

通常は、X社のネットワークと契約している人が、X社がカバーしていない国へ行くときは、X社がその国でネットワークを提供しているY社と調整して、有料でY社のネットワークにつなげてくれる。こうしたサービスは一度に何百件と行われているが、Ubiquitilinkもそのひとつとして加わることになる。ただし、Ubiquitilinkがカバーするエリアは地球全体。X社もY社もつながらない場所でも、U社ならつながる。

受けられるサービスは、どのモバイルネットワークを使うかで決まる。当然ながら、すべての人が同じものを望むわけではない。LTEの接続が不安定なとき、3Gに落とした方が安定することもある。だが、少なくともテキストのメッセージを送受信できるだけのデータ量は、全員が共通して必要とするものだ。

この接続は、いくつかのきわめて重要な意味において、他の接続と区別がつかないという点も強調しておくべきだろう。たとえば、これは暗号化には影響を与えない。

このサービスには、少なくとも1000基の衛星が必要だとMillerは見ている。だが、それが揃うまでの間も、時間制限による限定的な利用は可能だ。55分間は送受信はされず、その後5分間だけ、重要なメッセージや位置情報を送受信できるといった具合だ。展望としては、最初は専門的なサービスとして開始し、やがて衛星の数が増えたときに、24時間年中無休で地球上のすべての人が使える、ごく普通の一般向けサービスにする予定だ。

緊急用フォールバック

ネットワークのプロバイダーは、このグローバルローミング・サービスを高価格なオプションとして提供することになるだろう(彼らにはその権利がある)。しかしUbiquitilinkは、一部のサービスを無料で提供することも考えている。地球規模のコミュニケーション・システムの価値を、Millerは十分に理解しているのだ。

「ポケットの中の電話機が圏外になったことで、命を落とす人がいてはいけません」と彼は言う。「死の谷の真ん中で身動きがとれなくなったとき、緊急メールが発信できないと困ります。そこで金を取ろうとは考えていません」

ネットワークがダウンしたときの緊急放送システムも計画されている。大災害による停電は人々を混乱に陥れる。また、津波や洪水による二次被害も受けやすくなる。そのとき安定した通信環境があれば、多くの命を救うことができ、復興にも大いに役立つ。

「人命救助で金儲けしようとは思っていません。それは、このシステムを導入した場合のひとつの恩恵に過ぎないのです。そうあるべきものなのです」

これは壮大な約束だ。しかし、彼らとその技術力には、それを実現させるだけの能力がある。初期のテストは終わり、鳥は空に羽ばたいた。あとは、衛星を1000基ほど打ち上げるだけだ。

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(翻訳:金井哲夫)

気候変動が海上の雲を壊して温暖化を加速、最新シミューレーション結果で判明

気候変動が世界中の天気やエコシステムに影響を与えていることは周知の事実だが、正確に何がどのように起きているかは今も学者たちが真剣に研究しているところだ。超高速コンピュータで可能になった最新シミュレーションによると、二酸化炭素が一定濃度に達すると、海上の雲が消滅し、温暖化が加速して悪循環に陥る可能性がある。

Natureで公開された論文には、最新のシミュレーションによる雲の形成および太陽光の与える影響が詳しく書かれている。カリフォルニア工科大学の研究者らは、従来のシミュレーション技術の精度ではメートル単位での影響を調べることはできかったと説明した。

従来のモデルでは海上に浮遊する層積雲の予測が特に苦手で、それが大きな問題だった、と彼らは書いている。

層積雲が熱帯海洋の20%を覆い、地球のエネルギーバランス(短波放射の30~60%を反射して宇宙に戻している)に著しい影響を与えるにつれ、その気候変動のシミュレーション結果は地球全体の気候応答を示している。

気温の変化と温室効果ガスの濃度がどのように影響を与えているかを知るためには、雲のより精密なシミュレーションが必要になる。テクノロジーはそれに貢献できる。

高速コンピューターと雲のラージエディーシミュレーション(LES)が進化したおかげで、研究者は「限定された領域内の積層雲をかぶった境界層の統計的に安定した状態を正確に計算できる。ここで『限定された領域』というのは、詳しくシミュレーションされている5 km四方の領域のことだ。

改善されたシミューレーション結果は不安を誘うものだった。二酸化炭素濃度が1200 ppmに達すると、増加した入射電磁波によって雲の上端の冷却が妨害され雲の形成が突然破壊される。その結果雲は容易に作られなくなり、太陽光の入射が増えて温暖化問題が悪化する。このプロセスは亜熱帯地方の温暖化を8~10度上昇させる可能性がある。

もちろんまだ抜けている点はある。シミューレーションはシミューレーションにすぎない。ただしこのシミューレーションは今日の状況をよく予言しており、雲系の中で起きているさまざまなプロセスを正確に反映しているようだ(しかも起きうる誤差は悪い方に働くかもしれない)。現在の世界は1200 PPMにはまだ遠く、NOAAの現行測定値は411だが、一貫して増加している。

これが起きるまでには数十年かるだろうが、一度おきてしまえば被害は壊滅的でおそらく戻すことはできない。

なお、火山噴火などの大きな気象イベントによって、こうした数字が一時的だが劇的に変わることがある。過去に地球は気温や二酸化炭素濃度の急激な変化を経験しており、雲の消失とその結果起きる温暖化のフィードバックループがそれを説明している。(Quantaの記事に現状と背景が詳しく書かれているので興味のある方には一読をおすすめする)。

積層雲の不安定化の可能性についてはさらに調査を重ねて、現在モデルで推測している部分を埋めるデータを得る必要がある。多くの頭脳(とGPUクラスター)が参加するほど、気候変動が今回のような特定の気象系に与える影響についてよいアイデアが見つかるだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

宇宙旅行が日常となる未来へ、Virgin Galacticの挑戦とは

Virgin Galacticは、民間企業による宇宙旅行事業の実現に最も近い位置にある。すでに同社はテスト機による宇宙飛行にも成功しているが、その道のりは平易なものではなかった。Virgin Galacticによる宇宙旅行計画は、どこまで現実に近づいているのだろうか。

賞金獲得した宇宙船

Virgin Galacticの宇宙船のルーツは、10年以上前に遡る。まず、米Scaled Compositesは民間による有人弾道飛行を競う「Ansari X Prize」に参加するために、宇宙船「SpaceShipOne」を開発した。

SpaceShipOneは途中まで飛行機に係留して運ばれ、その後にロケットエンジンを利用し上昇。目標高度に到達した後は、グライダー飛行で地上へと降下する。このシステムは、後のVirgin Galacticの宇宙船にも取り入れられている。

20046月、SpaceShipOneはカリフォルニア州のモハーヴェ空港から離陸し、宇宙空間として定義される高度100kmに到達。また同年の9月と10月にも宇宙飛行に成功し、無事賞金を獲得した。

母艦から飛び立つ宇宙船

そして、Scaled Compositesから技術を受け継いだのが、英Virginグループに属するVirgin Galacticだ。

Virgin Galacticの宇宙飛行には、宇宙船「SpaceShipTwo」と母艦「WhiteNightsTwo」が利用される。WhiteKnightTwoSpaceShipTwoを高度14kmまで運び、その後高度100kmを目指す仕組みは、SpaceShipOneと同じだ。

SpaceShipTwoはパイロット2人、乗員6人が搭乗する宇宙船。高度100kmの宇宙空間では、乗員は数分間の無重力(微重力)状態が体験でき、また丸い地球の水平線や漆黒の宇宙が眺められる。

悲劇の事故を乗り越えて

Virgin Galacticは、SpaceShipTwoの初号機となる「VSS Enterprise」を製造し、20134月から飛行試験を開始。同年には宇宙飛行を実現させるはずだった。

しかし201410月の飛行試験の際、VSS Enterpriseは突如爆発し墜落。副操縦士が亡くなるという、最悪の事故が発生した。後の調査により、この事故は副操縦士の操縦ミスが原因だったと判明している。

この事故により、Virgin Galacticによるテスト飛行は2年以上中断されることになる。しかし同社は宇宙旅行を諦めることなく、後継機種の開発に取り組んだ。

再び空を目指す宇宙船

初号機の悲劇を乗り越えて製作されたのが、2号機となる「USS Unity」だ。USS Unity201612月に飛行試験を開始し、20184月にはエンジン飛行を実施。また降下の際のグライダー飛行についても、テストが繰り返された。

そして201812月には、とうとう高度約80kmの「宇宙空間」に到達した。なお一般的には100kmから上が宇宙だとされているが、アメリカ空軍は高度80km以上を宇宙空間だと定義してる。どちらも間違いということはない。

さらに、20192月にはUSS Unityは乗客を乗せた状態で、宇宙空間への到達に成功。乗り込んだのはVirgin Galacticでトレーナーを務める人物だが、商業飛行の開始が近づいているのは間違いない。

すでに販売済みのチケット

なお、Virgin Galacticはすでに宇宙旅行のチケットを25万ドル(約2800万円)にて販売している。日本でもクラブツーリズムが代理店としてチケットを販売しており、日本人の購入者も存在している。

現時点では、初の商業フライトの正確な日程は決定されていない。ただし、Virgin Galacticの創業者のリチャード・ブランソン氏は716日に自らが搭乗してのフライトをにおこない、年内にも商業運行を開始したいと表明している。

加熱する宇宙旅行ビジネス

また、宇宙旅行ビジネスを計画しているのはVirgin Galacticだけではない。たとえばAmazon創業者のジェフ・ベゾス氏が立ち上げた米Blue Originは、高度100kmに到達するロケット「New Shepard」を開発している。

New Shepardは垂直に打ち上げるロケットで、先端のカプセル部分に乗客が登場する。そして数分間の無重力体験や、宇宙からの眺めが楽しめる点は、Virgin Galacticの宇宙船と一緒だ。なお、Blue Originは年内に宇宙旅行のチケットを販売し、年末までに有人でのロケット打ち上げを実現したいとしている。

さらに、イーロン・マスク氏が立ち上げた米SpaceXは、宇宙船で月の裏側を周回し地球に帰還する旅行を2023年にも実施する。この宇宙旅行に参加するのは、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」率いる前澤友作社長だ。前澤氏は、自身だけでなく複数人のアーティストも宇宙旅行に参加してもらい、作品作りに活かして欲しいと表明している。

一昔前までは小説や映画の中の話でしかなかった、民間会社による宇宙旅行。それが実現する日は、そう遠くなさそうだ。

(文/塚本直樹 Twitter

はやぶさ2、小惑星タッチダウンに成功 弾丸射出しサンプルリターンミッション実施

JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」は、これまで周回していた小惑星「リュウグウ」へと弾丸を発射し、再び上昇することに成功した。

うまくいけば、特製の弾丸の発射による衝撃で巻き上げられた表面の岩石が、はやぶさ2によりサンプルとして回収されたはずだ。

今回のミッションは、以前に小惑星の観測とサンプルリターンミッションを成功させ、7年間の旅路を終えた小惑星探査機「はやぶさ」に連なるものだ。

科学者によれば、リュウグウからのサンプル回収は、水や生命の創生がどのようにして初期の地球上で起きたかを推測する手がかりになりうるという。リュウグウは地球近傍小惑星で、炭素の多い「C型小惑星」に分類されており、岩石内部に水分が存在すると予測されている。

はやぶさ2は2020年に、岩石サンプルを携えて地球へと帰還する予定だ。

はやぶさ2の公式ツイッターアカウントによれば、21日午後(日本時間)にリュウグウの高度20kmから降下を開始。22日午前にタッチダウンに成功した。

今回のタッチダウンは、本来は昨年に実施される計画だった。また、はやぶさ2はリュウグウの地形を調査するために、2機の探査ロボットを投下している。これらの探査ロボットはリュウグウの写真を撮影し、同小惑星が思っていたよりもゴツゴツと岩だらけな地形であることが判明。降下ミッションの実施までより多くの検証が必要だったのである。

 

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

初の民間月面探査機、SpaceXロケットで打ち上げ成功

Update: 打ち上げは成功。すべてのペイロードは予定軌道に投入された。後は、月への着陸を待つだけ……。

初となる民間による月面着陸ミッションが、ケープカナベラルから始まった。SpaceXのファルコン9ロケットはSpaceILの着陸機「Beresheet」を搭載し、2月22日5時45分(太平洋時間)に打ち上げたのだ。

この打ち上げは、着陸機だけのものではない。実際に着陸機は副ペイロードで、主ペイロードはインドネシアの通信衛星「Nusantara Satu」となり、同国の遠隔地に通信網を提供する。またこれが静止軌道に到達すると、U.S. Air Force Research Labの「S5」実験衛星を分離する。S5は同高度付近の物体やデブリを追跡する。

しかし、これらのペイロードが打ち上げから44分後に分離されているころ、Beresheetはすでにその旅路を開始しているのだ。月へと着陸する遷移軌道に投入されたBeresheetは、4月に着陸を実施する予定だ。

もしこれが成功すれば、Beresheetは民間として初の月面軟着陸に成功することになる。これまでロシアやアメリカ、中国が月面着陸に成功し、他国は月を通過したり周回したりするにとどまったが、Beresheetは月面への軟着陸と写真撮影を達成する予定だ。

もともと、Beresheetの計画はGoogleが資金を提供し、達成チームなしで終わった「Lunar Xprize」のものだった。レースは各チームの準備が整わずに失敗に終わったが、参加チームのいくつかは独自の月探査計画を開始している。

約1億ドル(約110億円)のBeresheetのプロジェクトは史上最も廉価な月面着陸ミッションで、初となる民間開発のロケットにより打ち上げられ、民間企業の仲介により副ペイロードとして搭載され実現した。もし成功すれば、初めてづくしの計画だ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

民間初の月面探査機が木曜夜に打ち上げへ

今週木曜日の夜(現地時間)、初となる民間開発の月面探査機が、これまた民間ロケットによって打ち上げられる。契約を仲立ちしたのも民間企業だ。もし4月11日に予定されている月面への軟着陸に成功すれば、宇宙開発とイスラエルにとって歴史的な日となる。

「Beresheet(意味は起源)」プロジェクトは、もとは2010年にチーム参加が締め切られ、最終的には達成チームなしで終わった、賞金総額3000万ドル(約33億円)の月面探査レース「Google Lunar Xprize」から始まった。昨年に終了した同レースだが、参加チームのいくつかはすでに独自の月面探査計画を表明している。

SpaceILと Israel Aerospace Industries(イスラエル宇宙局:IAI)はミッションにて協力し、探査機にカメラや磁気計、そしてイスラエルからの荷物を積み込んだカプセルを搭載し、月面に設置する。

打ち上げ前のBeresheet

 

現時点での計画では、太平洋時間で木曜日の午後5時45分に、ケープカナベラル空軍基地からSpaceXの「ファルコン9」ロケットによって打ち上げられる。打ち上げタイミングは天候や技術的な問題によって変更もありうるが、打ち上げはライブ動画で中継されるはずだ。

そして打ち上げから30分後、ペイロードが分離されコントロールセンターとの交信を開始し、地球を6周しながら月への距離を縮めていく。

これまで探査機を月に軟着陸させた国としては、ロシアや中国、そしてアメリカがあげられる。中国の「嫦娥4号」は初めて、月の「ダークサイド(実際に暗いわけではない)」とよばれる裏側への軟着陸に成功した。また、探査機は現在も稼働中であろう。

過去にはルクセンブルクの宇宙開発企業による探査機「Manfred Memorial」が月のフライバイを行ったが、アメリカや中国、ロシア以外による月への軟着陸は成功していない。Beresheetのプロジェクトが成功すれば、イスラエルの月探査ミッションとしても、そして民間企業としても、はじめての月面軟着陸となる。また、これは民間開発のロケットによる初のミッション成功ともなるはずだ。さらに探査機は月面で最も小さく、また1億ドル(約110億円)という価格も最安だ。

もちろん、月面への着陸は極めて難しい。静止軌道が低軌道に比べてずっと難易度が高いように、月へ突入する軌道はより難しく、軌道を安定させ目標地点へと着陸させることはさらに困難なのだ。なお、アポロ11号以降の宇宙船が1969年からおこなった、月からの離脱と地球への帰還の難易度はこれよりさらに上だ。

なお、今回の打ち上げはシアトルのSpaceflight社が仲立ちをしており、またBeresheetは副ペイロードとなる。主ペイロードは Air Force Research Labの「S5実験衛星」で、Beresheetの分離後に静止軌道へと投入される。

もしBeresheetのミッションが成功すれば、それは民間企業による月面探査のさきがけとなるだろう。Lunar Xprizeの他の参加チームや、NASAなど他の宇宙機関と協力した民間企業が、遠くない将来に月を目指すはずだ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

宇宙銛(もり)を配備せよ

気を付けろ、宇宙クジラたちよ。君たちに、その惑星を破壊しかねない巨大なヒレで、脅かされている星の住民たち(人類)が、新しい武器を手に入れて、こうしている間にもテストの真っ最中だ。まあここに示した、その武器の小規模版は、せいぜい軌道上の危険なデブリを除去すること位にしか役立たないが、やがては君たちの、ハイパーカーボンの皮やその中心を貫くだろう。

文字通り宇宙銛(もり)だ(クレジット:Airbus)

しかし、現在の技術で可能なことを超えて憶測することは無責任なので、まずは現時点でこの銛で可能なことを要約しておけば十分だろう。

この宇宙銛(もり)はRemoveDEBRIS(デブリ除去)プロジェクトの一部である。これは宇宙デブリの除去のための手法を考案しテストすることを目指すヨーロッパのプロジェクトであり、複数の団体が参加している。微細なものから壊滅的な可能性のあるものまで、様々な大きさの何千もの障害物(宇宙デブリ)が、私たちの軌道周辺に散らばっている。

宇宙ゴミには様々な大きさや形があるので、それに応じてそれらの厄介なアイテムを取り除く方法は複数存在している。おそらく小さな断片に関しては、レーザーを用いて軌道減衰させていけば十分だろう。だが、より大きなものに関してはより直接的な解が必要とされる。そして、一見すべてが航海起源のように見えるが、RemoveDEBRISは、網、帆、そして銛を備えているのだ。(大砲はないのかって?)

以下の動画では、その3つのアイテム(網、帆、銛)がどのように動作するのかを見ることができる:

この銛は、例えば故障していてその軌道から外れているフルサイズの衛星などの、より大きなターゲットを狙うためのものだ。単純なマスドライバーを使って、それらを地球に向かって押しやることもできるが、それらを捕らえて降下を制御することは、より細心の注意を必要とする技術である。

普通の銛なら、単にクィークェグやダグー(2人とも「白鯨」に登場する銛撃ち人)のような者たちによって投げられるだけだが、宇宙では少々事情が異なる。残念だが、EVA(宇宙船外活動)ミッションのために、銛撃ち人を召喚するのは現実的ではない。そのため、全体を自動化する必要がある。幸いなことに、プロジェクトはターゲットを識別し追跡できるコンピュータビジョンシステムもテストしている。それがあれば、あとは銛をターゲットに向けて発射して巻き取れば良い。これが今日衛星によって実証されたことだ。

Airbusが設計したこの小さな装置は、クジラに撃ち込む銛(トグリング・ハープーン)のような動作をする。撃ち出されるとターゲットに突き刺さって回転し、抜けにくくなる。明らかにこれは一度きりの使用を想定されたデバイスだが、特に大きくはなく、一度に複数の軌道上に迎撃用に展開することができる。一度ターゲットを巻き取ったあとは、帆を開くことによって(上記のビデオにも示されている)、再突入を早めることもできる。推進力をほとんど、またはまったく使用せずに、すべてを行うことができるため、運用は非常に簡単になる。

明らかに、これは宇宙クジラたちにとってはまだ脅威ではない。だがいつか私たちは、それらのモンスターたちを仕留めるのだ。

(注)宇宙クジラ(starwhale)という呼びかけは、STEAMのゲームであるSTARWHALの名前にインスパイアされたもの

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(翻訳:sako)

ZOZO前澤氏とSpaceXによる宇宙旅行、常識破りの計画とその技術とは?

ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」率いる前澤友作社長が、米SpaceXの創立者ことイーロン・マスク氏と共同で発表した月旅行計画。その常識破りな計画の概要や、利用される技術、そして前澤氏とマスク氏の将来の目標について解説していこう。

2023年に実施される月旅行

2018年9月に発表された月旅行計画では、前澤氏は超大型ロケット「Starship」に搭乗。そして打ち上げから約2日後に月の周囲へと到達し、そのまま月の裏側を飛行して約5日後に地球へと帰還する。また、Starshipの打ち上げは2023年を予定している。

このような飛行経路は「自由帰還軌道」と呼ばれており、軌道に投入された宇宙船は月の重力を利用し、地球へと帰還する。またその途中で、宇宙船からは丸い地球や月、さらには月から地球が昇る「地球の出」も見られるはずだ。

再使用が可能なStarship

もともと、SpaceXは現在運用中の超大型ロケット「Falcon Heavy」による月旅行計画を発表していた。しかしその後、以前にはITS(Interplanetary Transport Sysytem)として開発され、次にBFR(Big Falcon Rocket)と改名され、最終的にStarshipと名付けられたロケットが利用されることになった。

Starshipは全長118m、直径9mのロケットで、上段の宇宙船がStarship、下段のブースターがSuper Heavyと名付けられている。ロケットには新開発の「Raptor」エンジンが搭載され、上段と下段はともにエンジン噴射による着陸が可能。また、機体を繰り返し利用することでのコスト削減も構想のうちにある。

建造が進むStarship

テキサス州のボカチカでは、Starshipのテスト機がすでに完成している。このテスト機は2019年の3月〜4月にも、低い高度でのテスト打ち上げを実施する予定だ。さらに2020年には、軌道に達するテスト打ち上げが実施されることとなる。

また、ロケットの素材がカーボンからステンレスへと変更されている点も注目したい。マスク氏はこれについて、極低温下や高温下においてステンレスは重量あたりの強度が優れると説明。また、機体表面に燃料を流して機体を冷却するシステムが利用されるそうだ。

旅行代金と前澤氏の目的

今回の月旅行では、前澤氏は6〜8人のアーティストを同乗させると発表している。これらのアーティストは、月旅行から得られたインスピレーションを作品作りに活かすことが期待されているのだ。

そして、前澤氏が今回の月旅行にどれだけの金額を支払ったのかについても、注目が集まっている。具体的な金額は明かされていないものの、過去の宇宙飛行士の打ち上げ費用や、他社の月旅行計画の金額を参考にすると、一人あたり約100億円、9人搭乗した場合には総額で1000億円近くの費用がかかるとの推測も登場している。

SpaceXとStarshipの今後について

ただし、月旅行はStarshipに任された役割のごく一部にしか過ぎない。Starshipは人工衛星の打ち上げから国際宇宙ステーション(ISS)への補給、さらには火星など他惑星の探査にも利用される予定となっている。

さらに、マスク氏は「地球が生存可能な環境でなくなったときのために、他惑星に文明のバックアップを用意しておく必要がある」とも説いてる。そしてその構想を実現するために、Starshipは一度に100人程度を搭乗させる火星開拓船としても利用されるというのだ。

SpaceXとマスク氏の宇宙開発において、今後中心的な役割を果たすであろうStarship。宇宙開発は予定されたスケジュールで進むことは稀だが、それでも一日でも早くStarshipが空へと舞い上がる姿を見てみたいものだ。

Image Credit: SpaceX

(塚本直樹@Twitter