レストランなどの食品調理業向け在庫管理マーケットプレイスを提供するブラジルのCayena

ラテンアメリカでは、商店の品揃えは楽な仕事ではない。発注は今でも、紙の伝票や電話で行われることが多く、お店の主人が卸屋まで車を運転して品物を手に入れることもある。

Cayenaを創業したGabriel Sendacz(ガブリエル・センダツ)氏とPedro Carvalho(ペドロ・カルヴァーリョ)氏、そしてRaymond Shayo(レイモンド・シャヨ)氏は、材料の確保にテクノロジーを利用すれば、彼らの母国であるブラジルやその他の地域で、レストランやバー、ベーカリー、ホテル、そしてダークキッチンなどの食品調理調製業がもっと楽になると考えた。

「ラテンアメリカのB2Bは巨大な市場ですが、その需要と供給は細分化しています。私たちの顧客も、約90%が中小の家族経営の独立店です。供給の側も、何千もの流通業者が、それぞれいろいろな品物を扱っていますが、マーケットシェアが1%に満たないところばかりです」とシャヨ氏はいう。

対照的に米国には、SyscoやU.S. Foods、Gordon Food Serviceのような大きなフードサービス企業がそれぞれおよそ10%のマーケットシェアを握り、食品から洗剤に至るまでのあらゆるもののワンストップショップを提供している。

Cayenaの共同創業者。左からペドロ・カルヴァーリョ氏、ガブリエル・センダツ氏、レイモンド・シャヨ氏(画像クレジット:Cayena)

そこで、シャヨ氏によれば、いくつかの問題が生じる。まず、ベンダー20社ぐらいで同じ品目の価格が最大で40〜50%も違う。クレジットカードがレストランに払うために30日かかることもあるが、一方レストランは自分の原料等の注文に前金を支払うため、運転資本の問題が生じ、特にレストランは材料費が最大のコストなので資金繰りが苦しくなる。

つまり、ラテンアメリカではレストランが慢性的に経営難を抱えることになる。そこで同社はB2Bのマーケットプレイスを構築し、年商1000億ドル(約11兆5400億円)といわれるラテンアメリカの食品卸業界を狙った。それによりユーザーは原材料などを一度に複数のサプライヤーからまとめて仕入れることができ、翌日に配達してもらえる。また、後払い販売(BNPL)といった新たな金融サービスを提供することもできる。

ユーザーは必要な品目の卸価格を複数の卸店にわたって比較でき、その品目の現在の相場を知ることができる。Cayenaのアルゴリズムは、サプライヤーの在庫品目と価格、ユーザーの予算を比較対照して、ベストマッチをユーザーにアナウンスする。配達には直送方式を利用して、注文が成立したら、そのオーダーを顧客に配達するようサプライヤーに通知が届く。

このマーケットプレイスを立ち上げた2020年以降は、顧客数が1年で10倍に増え、レストランの原材料の調達が困難になるにともない1回の購入単位額は4倍になり、Cayenaでの顧客の平均購入回数は1カ月で5回になった。

この急速な成長で資金が必要になった同社は、2021年後期にPicus Capitalがリードする350万ドル(約4億円)のラウンドを調達し、それが、その前にCanaryのリードで調達した55万ドル(約6300万円)に追加されることになった。

事業は順調で9月のシードラウンドのすぐ後にCayenaはそれまでの倍に成長し、2カ月で倍増というペースが続いたため、年商1億レアル(約22億6000万円)のマイルストーンに達した。同社の現在の商圏は、サンパウロ州の50都市となる。

こうした加速度的な成長が投資家の関心を集め、同社はVine Venturesが主導し、MSA Capital、Picus Capital、Canaan Partners、Clocktower Ventures、FJ Labs、Femsa Ventures、Gilgamesh、Astella、EndeavorおよびGraoVCの参加も得て、1750万ドル(約22億2000万円)のシリーズA投資を先取りすることになった。これにより、Cayenaは総額2100万ドル(約24億2000万円)強の資金を調達したことになる。

「今のところ極めてホットな市場ですが、世界中の投資家が成長企業を探している現状ではそれは良いことです。数年前、私たちは比較の対象にもなりませんでしたが、今ではどこが新しいアプローチと戦略で成長しているのか、誰の目にも明らかです」とシャヨ氏はいう。

Cayenaのビジネスモデルでは、倉庫やトラックや流通への投資はなくテクノロジーのみであるため、資金の多くが雇用に使われる。シャヨ氏の予想では年内に社員数は倍増して60名になるという。また、プロダクトとテクノロジーにもフォーカスしており、新たな金融プロダクトを作り、サプライヤーの地理的範囲も広げたいとのこと。

また、創業者たちはラテンアメリカ全体が商機だと捉えており、トラックなど1台も所有することなく次のステップでまず1〜3年後にブラジルで最大のフードサービスサプライヤーに、その次のステップでラテンアメリカ全体への拡張を考えているという。

画像クレジット:Cayena

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

後払い決済「クラーナ」がブラウザー機能拡張を公開、支払いとクーポン利用が可能

フィンテックスタートアップKlarna(クラーナ)は、同社のモバイルアプリが提供するさまざまな機能をデスクトップPCでも使えるようにするブラウザー機能拡張を公開した。Klarnaの決済を管理する以外に、チェックアウトページに進むと自動的にクーポンコードを適用することができる。

Klarnaはこの自動クーポン機能のためにPiggy(ピギー)を買収した。Piggyが最初に作ったのは、何かを買った時にクーポンやキャッシュバックの存在を知らせるブラウザー機能拡張で、FinancerFWDが最初にこの買収を報じた。Klarnaは契約条件を公表していない。

Klaranaのこの動きは興味深い、なぜならつい最近PayPal(ペイパル)がHoney(ハニー)を買収したばかりだからだ。Honeyもチェックアウトページでクーポンコードを使うためのブラウザー機能拡張を作った会社だ。言い換えると、PalPalとKlarnaは、ショッピング用ブラウザー機能拡張を支配するための開発競争をしている。

既存のPiggyユーザーは新しいKlarna機能拡張に移行される。Klarnaのアカウントを新規作成する際、既存のPiggyのデータを移行するか、1から始めるかを選ぶことができる。現在Piggyでは70人の従業員が働いていて、買収前時点で120万人のユーザーがいた。チームはKlarnaに加わり、現在Piggyのクーポン機能を他のKlarna製品に統合する作業に取り組んでいる。

Klarnaではクーポン集約機能の他に、ユーザーはキャッシュバックやギフトカードを貯めることもできる。対象は国によって異なり、米国とドイツでは報酬をキャッシュバックの形で受け取り、英国とフランスではギフトカードを受け取る。

画像クレジット:Klarna

画像クレジット:Klarna

しかしKlarnaの新製品は、単なるHoneyライクな機能拡張ではない。Karnaの後払い決済(BNPL)を使うためにも使える(そもそもKlarnaは分割払いでよく知られている)。現在、高額の買い物の支払いを分割するためにKlarnaの機能を利用するにはいくつかの方法がある。

Klarnaボタンの付いているチェックアウトページにいる時は、Klarnaアカウントでログインして、後払いを選ぶことができる(Klarnaアカウントを使って今すぐ払うこともできる)。

Klarnaは、店舗内購入でもBNPLを使えるオプションも提供している。一部の地域では、最大30日後に支払えるカードも提供していて、オンラインでも店舗内でも使える。

しかし、元々Klarnaをサポートしていないオンラインストアで後払いしたいときはどうすればいいか?Klarnaのモバイルアプリを開いてチェックアウトページ内でワンタイムカードを作成することができる。カードは普通のVisaカードのように使えるが、分割払いでカードに請求される。

Klarnaの新しい機能拡張を使うと、ワンタイムカードをデスクトップブラウザーで作ることができる。支払いの段階でカード情報を決済画面にコピー&ペーストすればよい。

モバイルアプリとブラウザー機能拡張は同期されている。例えばデスクトップで保存した項目をモバイルアプリで追跡することができる。現在この機能拡張はGoogle ChromeとMicrosoft Edgeで利用できる。

同社はFirefoxとSafariでも機能拡張を提供する予定だ。米国、英国、ドイツ、およびフランスのユーザーが同機能拡張をダウンロードできる。他の国々にもいずれ展開する予定だ。

この新製品によって、KlarnaはB2B決済ビジネスだけでなく、消費者向け商品も作りたいことを改めて示した。PayPalはデジタルウォレット業界の明らかなリーダーだ。果たしてKlarnaがPayPalに挑んで、消費者がオンラインで支払うときの習慣になれるのだろうか、その成り行きは興味深い。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アメリカン・エキスプレスがOpyと提携、米国で初めてサードパーティー製BNPL(後払い販売)サービス提供へ

クレジットカード会社はこぞって「後払い販売(BNPL、buy now, pay later)」への参入を進めようとしている。American Express(アメリカン・エクスプレス、mAmex)は米国時間12月2日、オーストラリアのフィンテックOpenpay(オープンペイ)の米国法人であるOpy(オパイ)と提携して、米国の全カードメンバーがヘルスケアおよび自動車関連の指定商品を分割払いで購入できるようにする。

この提携は、American Expressにとって米国で初めてのサードパーティーBNPL契約だと、同社広報担当者がTechCruncにメールで伝えた。Amexは、対象セクターの売り手開拓を支援する。

Opyはこのソリューションを、従来型BNPLモデルの改善バージョンだと説明し、「buy now, pay smarter(今買って、賢く支払う)」と称している。Opyは利用者に最大2万ドル(約226万円)を一度に貸し出し、最大24カ月の支払いプランを固定金利で提供する。これはAffirm(アファーム)やKlarna(クラーナ)などの企業が提供する短期分割払いとは異なっている。

American Expressは、独自のBNPLサービスを「Pay it Plan it」プログラムの名称で2017年から100ドル(約1万1300円)以上の買い物を対象にすでに提供中で、金利はやはり固定だ。Opyとの提携によって、Amexは高額の買い物を長期にわたって支払う選択肢を望む顧客に答えることができるだろうと、Opy U.S.のCEOであるBrian Shniderman(ブライアン・シュナイダーマン)氏がTechCrunchに話した。

「大きい買い物、すなわちこれは当社が特化している1000ドル(約11万3100円)から2万ドル(226万2700円)のモノを買う時、60日というのは十分な支払期間ではありません」と同氏は語った。

9.99%以下の低い金利を可能にしているのは、ターゲットが財務に明るい顧客からなる非常に特別な層だからだ、とシュナイダーマン氏はいう。顧客の平均年齢は40歳で、ちなみに他のBMPLプロバイダーの平均的顧客は20代だと彼は付け加えた。ヘルスケアと自動車部門だけでなく、Opyは住宅修繕と教育的資格獲得のための融資も行っているが、これらはAmexとの提携には含まれていない。

「当社のサービスは予測可能で透明性があります。他の後払い決済サービスを見ると、延べ払い利息や、支払いできなかった時の未払い利息があります。0%利息のはずが、融資期間全体に非常に高い利息がかかっているかのように再計算されます」と話すスナイダーマン氏は、元の職場であるDeloitte(デロイット)でAmexと密に協力した経験がある。

Amexの主要なライバルたちも最近BNPLに進出を果たし、Stripe(ストライプ)やSquare(スクエア)などの決済会社に対抗しようとしている。Mastercard(マスターカード)は、独自のMastercard Installmentsサービスをこの秋に提供開始し、その後すぐに、Visa(ビザ)もKlarna(クラーナ)とのブランド提携を発表した。

編集部注:Mary Ann Azevedo(メリー・アン・アゼベド)氏が本稿に協力した。

画像クレジット:Omar Marques/SOPA Images/LightRocket / Getty Images(Image has been modified)

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nob Takahashi / facebook

マイクロソフトがEdgeに後払い・BNPLサービスを標準で組み込むと予告、「ブラウザーが重くなる」など批判が相次ぐ

マイクロソフトがEdgeに後払い・BNPLサービスを標準で組み込むと予告、「ブラウザが重くなる」など批判が相次ぐ

Microsoft

マイクロソフトが自社のEdgeブラウザに「Buy Now, Pay Later」(今すぐ買って、後で支払う/以下BNPL)サービスを標準機能として組み込むと発表した件で、海外ユーザーから批判の声が上がっています。

このBNPLとは、海外や国内でも急速に成長しているデジタル後払い決済サービスのこと。すなわち商品を受け取ってから2週間~1か月程度のうちに、商品に同梱されたり、後日郵送で送られてくる(ないしスマホでペーパーレスの場合もあり)請求書により分割払いができる決済方法です。クレジットカードや銀行口座がなくてもネットショッピングできる手軽さのため、クレカを持たない若者層・クレカを作りたくない高齢者などに利用が広がっています。

さてテックメディアArs Techncaによると、MSは2週間前に「Zip」というアプリをEdgeに直接組み込む予定だと発表。本アプリは旧名がQuadpay(Zipが同業者のQuadpayを買収)で、BNPLサービスが利用できるもの。11月初めに拡張機能として導入され、Edgeのバージョン96以降ではブラウザに標準で組み込まれると公式にアナウンスされています

具体的な挙動としては、ネットショッピングで商品をチェックアウト(決済)する際に、クレジットカード番号を入力するのと同じ欄にオプションとして表示されるかっこうです。Edgeが購入価格を35ドル~1000ドル(Zipサービスがカバーできる価格帯)であると検出すると、Zipがポップアップするしくみ。

Zip支払いオプションは、ストアが望むと望まざるとに関わらず表示されることになります。もしも販売店がZipサービスを利用したくないなら、MSに連絡しなければならない(わざわざオプトアウトする必要がある)と通告されています

ほとんど一方的ともいえるZip導入に対して、MSの公式コミュニティでも批判が相次いで寄せられています。たとえば「ブラウジングをする上で、まったくもって不必要だと思います(中略)こういったものは拡張機能に分けるべきだ。それよりも最低限のリソースしか使わず、安全性も高い、高速なブラウザに興味がある。MacのEdgeはどんどん重くなっていますよ」といった声もあり。

また別のレビュアーは「サードパーティアプリの統合やサービスをやりすぎている(中略)不必要な金儲けのために、せっかくの素晴らしいブラウザを台無しにしないでください。Edgeがアドウェアのゴミとして知られるようになる前に、こういうことを止めましょう」と簡素なあり方から遠ざかる動きに釘を刺しています。

さらにZipは無金利ではあるものの、1回の分割払いごとに1ドルが上乗せされるため、4回払いであれば手数料は4ドルに上ります。これは最大額の1000ドルであれば大した問題ではありませんが、最少額の35ドルであれば実質の金利は11%以上となってしまいます。

より重大な問題としては、ユーザーと加盟店などセキュリティを管理すべき(=攻撃対象にできる)関係者が多くなり、ハッカーが悪用できる潜在的な脆弱性を抱えたコードが増えるという危険も指摘されています。ほかBNPLはクレジットスコア(個人のお金に関わる信用度を数値化したもの)をチェックしないため、犯罪者のターゲットになりやすいとの報道もありました

記事執筆時点ではZipサービスは日本では提供されていないため(米メルカリでは提供開始していますが)国内ユーザーには縁が薄そうな感もあります。が、不要な拡張機能が標準で組み込まれてしまうと、ブラウザの動作が重くなり、非力なPCであれば仕事に支障をきたしかねません。今後のMSの対応を注視していきたいところです。

(Source:Ars Technica。Via The VergeEngadget日本版より転載)

BNPLの成功を高騰する医療費に、金利なしの「先に治療・後払い」フィンテックPayZen

米国でヘルスケアのコストは増加の一途をたどっており、患者が自己負担しなければならない割合もそれにともない増加している。2019年のギャラップ調査によると、米国の3世帯に1世帯近くが、費用を理由に治療を遅らせたことがあるという。

ヘルスケアフィンテックのスタートアップであるPayZen(ペイゼン)は、AIを活用して患者の医療費債務を引き受け、患者が治療を受けて長期的に分割払いできるようにするソリューションを展開するため、シリーズAラウンドで1500万ドル(約17億1000万円)を調達した。

今回のラウンドはSignalFireがリードし、新規でLink Ventures7WireVentures、さらに既存投資家のViola VenturesとPicus Capitalが参加した。同社は、2021年初頭にシード資金として500万ドル(約5億7000万円)を調達しており、今回のシリーズAにより累計資金調達額は2000万ドル(約22億8000万円)に達した。

PayZenの「先に治療・後払い」ソリューションはすべての患者が利用でき、患者は手数料や金利なしで、治療費を時間をかけ分割払いすることができる。このプラットフォームの基盤となる人工知能(AI)技術により、病院は患者のデータを活用して、管理コストを抑えながら各患者に特化した支払いプランを決定することができる。

PayZenは、2019年にフィンテックのベテランであるAriel Rosenthal(アリエル・ローゼンタール)氏、およびItzik Cohen(イッツィク・コーエン)氏、Tobias Mezge(トビアス・メズガー)氏の3人によって設立された。現在PayZenのCEOを務めるコーエン氏は、消費者債務のフィンテック、Beyond FinanceでCEOを務めていた。

コーエン氏は、TechCrunchのインタビューで、患者の自己負担額は過去10年間で2倍になったが、今後10年間でさらに2倍になると予測されると語った。

「(創業チームは)フィンテック業界出身だったため、例えば、『先買い・後払い(BNPL)』を導入したeコマースでは、イノベーションと信用の拡大を受け、人々がより高額な商品を購入できるようになったのを見てきました。そこで、患者からの請求業務をますます多く担うようになっている医療機関も、苦労しているのではないかと考えました。それでは彼らも悪い状況に追いやられてしまいます」とコーエン氏はいう。

PayZenのプランを利用する患者には金利がかからないため、医療機関はこれらのコストを自分たちの帳簿に残すことができる。コーエン氏は、患者とその経済状況に合ったプランを優先的に提供することで、査定プロセスを逆転させ、支払いの遵守率を高めたと述べている。

フィラデルフィアを拠点とするGeisinger Hospital(ガイジンガー病院)では、PayZenの導入後、支払いの回収率が23%向上したという。コーエン氏は、米国のほとんどの主要な医療機関の平均営業利益率は1%と非常に低く、業界は人材不足に悩まされていると付け加えた。

「市場の状況が少しでも変化すれば、率直に言って、彼らは損失を被ることになるでしょう。彼らは今、この時間を利用して最適化を図り、多くのプロセスを自動化する技術に投資しています」とコーエン氏は語った。

設立からまだ1年も経っていないこのスタートアップは、2022年1月に大幅な製品の拡張を発表する予定だ。

ニーズの増加に対応するため、PayZenは現在35人のチームを2022年末までに約100人の従業員に成長させる予定だという。

画像クレジット:PayZen

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Aya Nakazato)

アマゾンが支援するインドのBNPLプラットフォーム「Capital Float」が約55.6億円を調達

Amazon(アマゾン)が支援するスタートアップ企業Capital Float(キャピタル・フロート)は、インドで人気のある多くのオンラインプラットフォームで「Buy Now, Pay Later(後払い決済)」サービスを提供しているが、ここ数四半期の力強い成長を受けて、新たに5000万ドル(約55億6300万円)を調達したことを現地時間9月28日に発表した。

Lightrock India(ライトロック・インディア)が、バンガローを拠点とする同社への新規投資を主導することとなった。これにより、創業7年目の同社の過去の調達額は6億ドル(約667億円)を超えた(そのうち半分以上は負債によるものだ)。既存の投資家であるSequoia Capital India(セコイア・キャピタル・インディア)、Ribbit Capital(リビット・キャピタル)、Creation Investments(クリエーション・インベストメント)に加え、Nubank(ヌバンク)のDavid Vélez(デビッド・ベレス)氏、CRED(クレド)のKunal Shah(クナル・シャー)氏、Pine Labs(パイン・ラボ)のAmrish Rau(アムリッシュ・ラウ)氏といった著名な起業家も今回のラウンドに参加した。

Capital Floatは、他の企業とのパートナーシップを通じて顧客にアプローチしている。例えば、Amazon India(アマゾン・インディア)、オンライン学習サービスのUnacademy(アナカデミー)、航空会社のSpicejet(スパイスジェット)、消費者向けのライフスタイルや電子機器ブランドのBoat(ボート)、旅行予約会社のMakeMyTrip(メイクマイトリップ)など、多くの人気オンラインプラットフォームの融資パートナーとなっている。顧客は、チェックアウトの際にローンを利用して購入することができる、と同社の共同設立者であるSashank Rishyasringa(サシャンク・リシャスリンガ)氏は、TechCrunchのインタビューに答えた。

また、中小企業向けには決済会社のRazorpay(ラゾープレイ)と、個人顧客向けには個人金融を提供するWalnut(ウォルナット)と提携している。

Capital Floatは、これまで250万人以上の顧客を集めている。これらの顧客は毎月200万件以上の買い物をしており、年間2億7100万ドル(約300億円)以上の資金を調達しているという。リシャスリンガ氏によると、この1年間、同社が注力してきたのは、ほとんどがオンラインサービスだったとのことだ。

「当社の顧客基盤は過去12カ月で4倍以上に増加しましたが、他の多くの企業が落ち込んでいたこの時期でも、当社の回収効率は95%以上でした」と述べている。

キャピタル・フロートのBNPLモデル(画像クレジット:Bernstein)

インドでは、クレジットカードを持っている人が人口のごく一部しかいないため「後払い決済」という市場はまだ初期段階にある。しかし、Capital Float、ZestMoney(ゼストマニー)、LazyPay(レイジーペイ)など、ひと握りの新興企業がこの市場で牽引力を発揮し始めている。

インドでは、クレジットカードの普及率が低いため、銀行が融資を行う前にその人の信用度を確認するために多用する伝統的なクレジットスコアを持つ人がほとんどいなかった。さらに、小額の融資は銀行にとって利益を生まないため、小切手を発行するインセンティブが低くなっている。

Capital Floatのユーザーの半数は、クレジットカードを持っていないとリシャスリンガ氏はいう。Capital Floatは、他の多くの後払い決済サービスとは異なり、完全に規制された企業だ。つまり、Capital Floatは、ユーザーの取引を信用調査機関に報告する必要があり、それによってユーザーのクレジットスコアのプロファイルの構築を支援している。

同社は、さまざまな要素を用いて各顧客の査定を行っている。その査定は「2クリック5秒以内」に行われるという。

「Capital Floatは、インドにおけるBNPL(後払い決済)の可能性を引き出すために必要な、顧客体験、リスク管理、加盟店とのパートナーシップという、CX特有の三要素をクリアしました。Capital Floatは、その強力な技術プラットフォームに加えて、洗練された引受・回収能力と、倫理的融資のプレイブックを構築しており、このモデルを非常に魅力的なものにしています」。と、Lightrock IndiaのパートナーであるSaleem Asaria(サリーム・アサリア)氏は、声明の中で述べている。

「私たちはまた、クレジットサイクル全体を通じたチームの粘り強さと実行力に常に感銘を受けています。チームと協力して、デジタルクレジットや金融商品を通じてインドの何百万人ものお客様の生活にプラスの影響を与える、拡張性の高く、差別化され、持続可能なビジネスを構築することにワクワクしています」。

リシャスリンガ氏は、この新たな資本が、ここ数カ月の急成長に対応するのに役立つと述べている。同氏は、この成長の多くはパンデミックによるものだと考えているが、同時に、消費者の行動には長期的な変化があり、それがこの新興企業の進出を後押ししているとも述べている。

Kotak(コタク)やYBLなどの銀行と提携して融資を行っているこのスタートアップは、今後も提携先を拡大していく予定だという。

「さらに重要なのは、この先に指数関数的な成長の機会があると考えていることです。完全に規制された形式で、手頃な価格と利便性を解決することで、私たちのBNPL(後払い決済)のアプローチは、オンラインでの取引を始めている1億人以上のお客様の信用へのアクセスを責任を持って拡大できると確信しています。このビジョンの実現に向けて、投資家のみなさまのご支援を得られることを光栄に思います。また、パートナーシップを組んで、インドで世界クラスのデジタル金融機関を構築できることを楽しみにしています」と、リシャスリンガ氏とCapital Floatのもう1人の共同設立者であるGaurav Hinduja(ガウラヴ・ヒンドゥーヤ)氏は共同声明で語っている。

画像クレジット:Arijit Sen / Hindustan Times / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)

累計利用件数2.8億件のBNPLサービス「NP後払い」のネットプロテクションズが約10億円調達、株式評価額1060億円に

累計利用件数2.8億件のBNPLサービス「NP後払い」のネットプロテクションズが約10億円調達、株式評価額1060億円に

ネットプロテクションズホールディングスは9月24日、MY.Alpha Managementが運営するファンドを引受先とする、約10億円の第三者割当増資について合意したと発表した。MY.Alpha Managementは、投資運用会社York Capital Managementからスピンオフした投資顧問会社。

また、アドバンテッジパートナーズがサービスを提供するファンドからMY.Alpha Managementが運営するファンドに対して総額約17億円の既存株式譲渡を行う。

今回の資金調達および株式譲渡により、ネットプロテクションズホールディングスの2021年における資金調達の総額は80億円超となった。今回の資金調達を前提とした同社の株式価値評価額は1060億円超(1株あたり払込金額1098.211円に増資完了時の予定発行済株式総数(潜在株式を含む)96,521,000株を乗じたもの)となる。

調達した資金は、事業拡大にむけた新規機能開発、プロモーション活動の強化などに対応するための財務基盤強化などに活用する。

MY.Alpha Managementは、2021年9月1日時点で約100億ドル(約1.1兆円)の運用資産を持つ、York Capital Managementのアジア部門がスピンオフした投資顧問会社。このスピンオフに伴い、2021年9月1日時点で約35億ドル(約3900億円)の運用資産を持つ新運用会社となった。

ネットプロテクションズは、2002年より、未回収リスク保証型の後払い決済(BNPL)サービス「NP後払い」の提供を開始。2020年度の年間流通金額では前年度比約16%の成長率、年間ユニークユーザー数が1580万人(2020年4月1日~2021年3月31日における「NP後払い」の利用者のうち、氏名・電話番号の双方が一致する利用者)に達した。また、2021年3月までに累計利用件数が2億8000万件を突破したという。

また2011年より企業間取引向けに「NP掛け払い」の本格販売を開始し、2020年度年間流通金額では前年度比約27%の成長率で伸長した。

2017年には、BtoC向けカードレス決済「atone」(アトネ)の提供を開始した。2018年には、台湾においてもスマホ後払い決済サービス「AFTEE」(アフティー)をリリースしている。

これらの事業を通じて、顧客の購買歴・支払い歴をあわせた取得難度の高い信用ビッグデータを保有しており、今後は様々な領域でのデータ活用・展開を模索するとしている。

お気に入りのフィンテックサブニッチの真の価値を理解しよう

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

今回お話しするのは、後払い(BNPL)企業についてだ。これらは大きくて興味深いフィンテックの世界の、特定の一角を占めている。

Square(スクエア)やPayPal(ペイパル)などによるBNPLスペースでの大型買収のおかげで、私たちはこのスペース内での企業の価値が、実際には何であるのかを理解しつつある(そして市場の無数のBNPLスタートアップにとって、それはビッグニュースだ)。

しかし私が休暇中に、ゴールドマンサックスが公開BNPL企業であるGreenSky(グリーンスカイ)を買収することを決定していた(それもこれもマイケルのせいなのだが)。つまり、この取引に対する概算をすばやく行うことができるし、私たちの「BNPL評価武器庫」に最新の武器を加えることができるということだ。

私の友人であり同僚であり、かつては同窓生でもあったRyan Lawler(ライアン・ローラー)記者が、一読の価値があるゴールドマンとのインタビューを行っている。ゴールドマンによれば買収額は22.4億ドル(約2463億円)で、投資家がGreekSkyのこれまでの株価に対する潜在的なプレミアム価値を理解したために、価値がその後劇的に高くなったのだという。

個人宅のリフォームに焦点を当てたGreenSkyのBNPLは、どのような規模だったのだろうか。同社の最新収益レポートは以下の通りだ。

取引額:第2四半期の取引額は15億ドル(約1649億円)で、2020年の第2四半期と比較して14%増加しました。当四半期に承認された与信枠は、会社の歴史の中では最も多く、これはリフォームサプライチェーンと労働市場の不足が緩和される中で、前向きな主要指標の1つです。

したがって、ランレートは60億ドル(約6597億円)で評価額が22.4億ドル(約2463億円)だったというわけだ。これは、GreenSkyが処理するGMV(流通取引総額)1ドル(約110円)あたり、約0.37ドル(約40.7円)の企業価値に相当する。これは私たちがこれまでに見たなかで最も低い数字だ。

念のため、私たちが最近見た他のものを示しておく。なお以下の数字は完璧に基準を揃えて比較しているわけではないということは頭の片隅に留め置いていて欲しい。これらは絶対値というよりも傾向を示した数字なのだ。

  • Affirm(アファーム):GMV1ドルあたりの価値は2.94ドル
  • AfterPay(アフターペイ):GMV1ドルあたりの価値は1.84ドル(Squareの価格)
  • Paidy(ペイディ):GMV1ドルあたりの価値は1.80ドル(PayPalの価格)
  • Klarna(クラマ):GMV1ドルあたりの価値は0.57ドル

GreenSkyがこのリストの一番下にあるのは、おそらく成長率が理由だろうか。14%というGMV成長率は、たとえより高めのテイクレートを確保していたとしも、会社に成長の余地をあまり与えない。特に投資家向け広報ページの一番上の行で“GREENSKY, INC. IS A GROWTH COMPANY.”(「GREENSKYは成長企業です」)と謳われているなら、成長率の先頭の数字が”1″であることは好ましくない。

収益の成長ならびに収益の質の軸に沿った、SaaS企業の収益の数字がバラけているのと同じように、ここでも同様のことが起こっている可能性がある。損失率、テイクレート、GMV成長率は、BNPL企業が評価を受けるための別々のベクトルだ。

関連記事:The value of software revenue may have finally stopped rising

BNPLスタートアップは、成長とローンの質の面で自分たちの最も正確な比較基準を見つけて、現在の市場価値に反映させることができるだろう。データがあるのは良いことだ。

マンモスの話題は?

私はこのニュースレターの大部分をMammoth Biosciences(マンモス・バイオサイエンス)とそのジュラシックパーク世界に向かう計画について議論するつもりだったが、TechCrunchの別記事に出し抜かれてしまった。私は同社に対する投資家の1人の Thomas Tull(トーマス・タル)氏にこの内容について話をきいたが、そのメモの内容についてはもう少し温めておくことにしよう。使えるタイミングがあるかどうかはわからないが。

最後にちょっとした調達ラウンドの話題

今週はDisrupt(ディスラプト)の週だ。そしてIPOサイクルが1件発生し、通常の資金調達ラウンドのリズムに遅れが生じている(そしてさまざまな連絡の遅れ。申し訳ない)。そこでお楽しみいただける軽い話題をお届けする。Postal(ポスタル)だ。

同社はマーケティングテックの分野で仕事をしていて、同社のウェブサイトが「最大の」B2B型の「ギフト市場」だと主張するものを運用している。もっと簡単に言えば、企業がパーソナライズされた物理的な商品をその顧客に送る手助けをする会社だ。Postalはそれが非常に高いROIを持つという。

ところでやや皮肉な話だが、ここで少し告白をしておかなければならない。Postalの主要な投資家はMayfieldとOMERSであることが分かったが、この2社は、私の前の雇用主(Crunchbase[クランチベース])の、シリーズBとCのラウンドをそれぞれ主導した会社なのだ。だが、もし私のCrunchbaseとの関係から何らかの影響が及ぶ会社については書かないとしてしまったら、私は市場の広すぎる範囲を書くことができなくなってしまう。ともあれ必要なときにはこのことに触れ続ける。

さて、PostalはSendoso(センドソー)とやや似た分野で事業を行っているが、私の理解では、Sendosoは、顧客中心への贈り物よりも従業員への贈り物をより多く扱っている。どちらも成長し続ければ、やがて直接競争することになるだろう。Sendosoは先週初めに1億ドル(約110億円)を調達したが、もちろんPostalがそうしたからだ。

この分野の他のプレイヤーとして目立つのは、Reachdesk(リーチデスク)とAlyce(アリス、2021年初めに3000万ドル[約33億円]を調達した)である。パーソナライズされた物理的な商品を提供するための技術を構築するビジネスはかなり大規模であることがわかった (もしお好きなら、ここでNFTジョークをどうぞ)。

PitchBook(ピッチブック)は、Sendosoの新しい評価額を(ポストマネーで)6億4000万ドル(約703億7000万円)、Alyceを(ポストマネーで)1億3500万ドル(約148億4000万円)と判定している。Reachdesk(リーチデスク)とPostal.ioの現在の評価額は判明しなかった。

さて今日はこの辺で。Disruptでお会いしよう!Extra Crunchのステージに頻繁に登場する私を見かけるかもしれない。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

BNPLが続々と

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

みなさんこんにちは。私はAnna(アナ)。今現在、当然の権利である短い休暇を楽しんでいるAlex(アレックス)記者の代わりに今回の記事をお届けする。The Exchangeも1週間お休みしたが、ニュースは止まることはない、では始めよう。

先買い後払い(BNPL、Buy Now, Pay Later)スペースは、フィンテックの中でもっともホットな業界の1つだ。少なくとも2020年8月にSquare(スクエア)がオーストラリアのAfterpay(アフターペイ)を買収するために、驚異的な290億ドル(約3兆1900億円)を費やすと発表して以来そうなったということができるだろう。しかし、今週はその状況に本当に火がついて、報道価値のあるBNPL関連の発表が続々と行われた。詳細を見てみよう。

最大のニュースは間違いなくPayPal(ペイパル)が日本のPaidy(ペイディ)を27億ドル(約3000億円)で買収するという決定だったが、Amazon(アマゾン)がMaxLevchin(マックス・レブチン)氏のAffirm(アファーム)との契約を結んだこともも大きな動きだった。米国を拠点とするAmazonの買い物客が50ドル(約5500円)以上の購入で後払いが可能になるこの機能は、BNPLが主流になりつつあることを示す明確な兆候ではないだろうか。

関連記事:米PayPalが日本のペイディを3000億円で買収、アジアで「BNPL」後払い市場に参入

そして、それは世界をリードする電子商取引市場(eコマース)のほんのひと握りのプレイヤーだけに限った話ではない。最近のラウンドに反映されているように、世界中のBNPLスタートアップが成長しているのだ。例えばヨーロッパに焦点を当てたScalapay(スカラペイ)は7億ドル(約769億円)の評価額で1億5500万ドル(約170億3000万円)を調達したが、一方コロンビアのAddi(アディ)はシリーズBを7500万ドル(約82億4000万円)拡大して合計1億4000万ドル(約153億9000万円)にしたことを公表した。

AddiのMary Ann Azevedo(メアリー・アン・アゼベド)氏はTechCrunchに対して「いまやBNPLはどこにでもあります。ラテンアメリカも例外ではありません」と書いてきた。だが、これは同じモデルをコピーアンドペーストしたものではない。市場が異なればニーズも異なり、重要な内容の調整につながる。その中で主なものは?BNPLは必ずしもeコマースと同義ではないということだ。

実際のところ、Addiのパートナーには実店舗も含まれている。これは、eコマースは急速に成長しているものの米国と同じレベルにはまだ達しておらず、それでも分割払いはすでに行われている市場では理解できる現象だ。しかしそれはまた、eコマースや小売を超えたBNPL自身の自然な拡大としても起こっている。

サンフランシスコを拠点とするスタートアップのWisetack(ワイズタック)は、この流れの良い例だ。同社はHVAC(空調システム)の修理から配管までをカバーする訪問型ホームサービス企業たちに、BNPLサービスを提供している。Wisetackはこの非常に断片化された業界に対して、業界特化型SaaSプロバイダーのHousecall Pro(ハウスコールプロ)やJobber(ジョバー)などと組んでプロを取り込むことで、巧みにアプローチしている。ああ、それから同社は4500万ドル(約49億5000万円)を調達したばかりだ

小売を超えて拡大するBNPLに特に見られがちなのは、より大きな支払いに広がっているということだ。例えばWisetackのCEOであるBobby Tzekin(ボビー・ツェキン)氏によると、サービスベースの企業に対する購入価格は平均4000ドル(約44万円)から5000ドル(約55万円)になるという。BNPL企業にとってはエキサイティングな話だ……だがその一方で、この新しいセグメントをすでに調査中の規制当局からの監視が、強化される可能性もある。

BNPLは無利子かつクレジットカード決済の代替手段として捉えられているが、公的機関や消費者保護団体は、顧客による過剰支出やリスクの過小評価を助長する可能性があるとの懸念を表明している。

この懸念は英国EUでの規制の強化につながり、そのことはBNPL大手Klarnaの(クラーナ)の「あり得るが差し迫っていない」IPOに影を落とす可能性がある。CrunchbaseによればKlarnaはこれまでに37億ドル(約4066億円)を調達している。同社がAffirmの跡を追って公開することは論理的だが、タイミングは重要だ。

関連記事:後払い販売(Buy-Now-Pay-Later)が英国で規制対象に

非常に多くの資金がこのセクターに流れ込み、統合もすでに行われているので、注目し続けておけば間違いなくおもしろいだろう。

Factorial、WaveそしてSPAC

The Exchangeは今週休止していたものの、TechCrunchとExtra Crunchで消化すべき話題はたくさんあった。以下に私の注意を最も引いたものを並べる。

Factorial(ファクトリアル)とSMB(中小企業)への賭け:スペインのHRスタートアップであるFactorialは、5億3000万ドル(約582億円)の評価額の下で、シリーズBラウンド8000万ドル(約87億9000万円)を調達した。これはそれ自体注目に値するが、Tiger Globalが主導していることでも注目に値する。しかし、私のお気に入りの部分は、SMBにサービスを提供することでお金が得られることに、スポットライトを当てていることだ。

ちょっと宣伝:これは私が数週間前に書いたExpensifyEC-1での重要なポイントでもあった。

TechCrunchのIngrid Lunden(イングリッド・ランドン)記者が指摘したように、Factorialの台頭は「エンタープライズテクノロジーの世界が、ようやく大規模な組織向けに構築されたツールを小規模な顧客向けにライトサイズ(適切なサイズ)で適用することに注意を向け始めた、はるかに長期的で大きなトレンドの一部」なのだ。

通常、ライトサイジングとは、製品の不必要な複雑さを回避することを意味する。多くの場合、既存のエンタープライズ相手の企業ではなく、それのみに焦点を当てている企業が得意としている。そして、それは単なる一時的な流行りではない。各企業がこの先もずっと集中していくことができるセグメントとして理解されているのだ。

資金調達の波:先週の初め、アフリカはこれまでで最大のシリーズAを記録した。モバイルマネーのスタートアップWave(ウェーブ)の2億ドル(約220億円)のラウンドが行われた。評価額は17億ドル(約1868億円)で、今回の調達は、米国とセネガルに拠点を置く同社を、アフリカのフランス語圏における初のユニコーンに変えた。

このマイルストーンに最初に到達したのがフィンテック企業だったことは当然のことだと、Tage Kene-Okafor(タゲ・ケネ=オカフォー)氏はいう。アフリカ大陸ではフィンテックがVC資金の大部分をずっと引き付けてきたからだ。アフリカのスタートアップシーンに関するニュースレターであるSubstack(サブスタック)のThe Big Deal(ザ・ビッグ・ディール)によれば、2021年前半にアフリカのスタートアップに流入したベンチャーキャピタルの48%がフィンテックに投資されている。今回の巨大なラウンドによって、年次集計をチェックするときには事態がさらに偏ったものになっている可能性がある。

より高いレベルから見た場合、これはアフリカのテックセクターが2021年に記録を更新するだろうという予想を裏付けているように思える。これは特に厳しかった2020年以降、より一般的には資金不足の文脈から眺めると望ましい状況だ。

関連記事:2021年のアフリカへのVC投資は史上最高額を記録するとの予測

SPACすべきか、SPACせざるべきか:ブルームバーグによると、Traveloka(トラベローカ)はPeter Thiel(ピーター・ティール)氏のBridgetown Holdings(ブリッジタウン・ホールディングス)とのSPACを介して公開する計画を撤回している公開するかしないかで迷っているのではない:旅行業界ニュースサイトSkift(スキフト)で、Travelokaの広報担当者は公開を「さらなる事業を成長させる願望を抱くカテゴリリーダーとしてのTravelokaにとって、自然な進化です」と説明している。

インドネシアの旅行大手が考慮しているのはその公開へ至る道筋だ。情報筋によれば、SPACが「支持されなくなった」ために、同社は代わりに伝統的な米国のIPOを選択する可能性が高いとブルームバーグに語っている。これらはブルームバーグによる表現で、私の意見ではない。私はそう言い切るにはまだ少し早いかもしれないと思っている。

確かにこの2月によく見かけた「SPAC投資で常に勝つのは、売り手だ、一般投資家はそうでもない」という批判的見出しの中で、規制強化が迫っているのは間違いない。

それにもかかわらず、私の同僚であるRyan Lawler(ライアン・ローラー)記者が、先週大いなる反例を持ち込んできた。Better.com(ベター・ドット・コム)が、SPACのAurora Acquisition Corp(オーロラ・アクイジション・コープ)と「約77億ドル(約8462億円)の投資後評価額」で合併する予定だ。両者のCEOによれば、従来型のIPOは、簡単に業種を分類できる企業にとっては理に適っているという。しかしSPACは、ライアン記者が書くように「他の金融サービス会社と比べて、単に住宅ローンの貸し手と見なされるよりも大きな野心を持つ」Better.comのような会社に適しているかもしれない。

これは例外的なものだろうか?おそらくはそうだろう。しかしそれはまた、SPACがまだプレイするカードを持っているというサインかもしれない。

では今回はここまで。The Exchangeは月曜日から通常のスケジュールに戻る予定だ。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Anna Heim、翻訳:sako)

対面式サービス業にBNPL式後払いを導入するWisetackが約49億円調達

「Buy Now, Pay Later(BNPL、今買って後払い)」方式は、アフリカ、ラテンアメリカ、アジアなど、世界各地でさまざまな企業が展開し、グローバルに成長している。

米国では、Affirm(アファーム)とKlarna(クラーナ)が大きなプレイヤーであり、Square(スクエア)は最近Afterpay(アフターペイ)の買収を発表した。

関連記事:Squareが3.19兆円で「今買って、後で支払う」後払いサービス大手Afterpayを買収

従来のBNPLは、消費者がオンラインや店頭で分割払いをする機会を提供するものだった。しかし、国内でも、分割払いの機能は、eコマースや小売業界以外にも広がっている。

Wisetack(ワイズタック)は、このBNPLサービスを対面式のサービスに導入するスタートアップだ。Wisetackは、Insight Partners(インサイト・パートナーズ)が率いるシリーズB資金調達ラウンドで4500万ドル(約49億3900万円)を調達した。

この資金調達には、既存の支援者であるGreylock Partners(グレイロック・パートナーズ)とBain Capital Ventures(ベイン・キャピタル・ベンチャーズ)も参加し、2018年の創業以来、同社の調達総額は6400万ドル(約70億2500万円)に達した。今回のラウンドは、WisetackがシードラウンドとシリーズAラウンドで1900万ドル(約20億8500万円)を調達したと発表してからわずか6ヵ月半後のことで、いずれもGreylockが主導したものだ。

サンフランシスコを拠点とするこのスタートアップは、ひと言でいえば、対面式のビジネスが消費者に融資を提供するのを支援している。共同設立者でCEOのBobby Tzekin(ボビー・ツェキン)氏によると、Wisetackは、企業がすでに構築して業務に利用しているソフトウェア・プラットフォームに、実際に融資の選択肢を組み込んでいる点で、他社にはないサービスだという。

その対象は、HVAC(冷暖房空調設備)や配管工など、サービスを提供する企業だ。例えば、エアコンが故障して交換に数千ドル(数十万円)かかる場合でも、業者がWistackのAPIをサイトに組み込んでいれば、消費者は分割払いのオプションを利用することができる。

これまでWisetackは、Housecall Pro(ハウスコール・プロ)やJobber(ジョバー)などの垂直型SaaSビジネスと提携することで急成長を遂げてきた。これらの企業は、それぞれの顧客に融資を提供しており、その中には何万人ものホームサービスのプロが含まれている。

Wisetackは、明らかにギャップを埋めているように見える。2021年の時点で、2020年と比較して売上高と融資額が「10倍以上」に成長している。そして、ツェキン氏によれば、何千もの加盟店と提携しているという。

同氏は「明らかに大きなニーズがある」と感じたため、2018年に仕事を辞めてWisetackを立ち上げ、Liz O’Donnell(リズ・オドネル)氏とMykola Klymenko(ミコラ・クライメンコ、Varo Bankの持ち株会社であるVaroMoneyの共同設立者兼CTOだった)氏とチームを組んだ。

Wisetackは、新たな資本を得て、自動車修理、選択的医療、歯科、獣医、法律サービスなど、サービスをベースとした他の分野にも進出する予定だ。また、今後1年間で現在40名のチームを倍増させる予定もある。

ツェキン氏は、この機会は非常に大きいと考えている。

サービス業の多くは中小企業であり、これまでは大手eコマース企業に比べてサービスを提供するのが困難だった。ハーバード大学のレポートによると、米国人は住宅のリフォームや修理だけで、年間4000億ドル(約43兆9100億円)以上を費やしている。また、米国の自動車修理・メンテナンスサービス市場は、2020年の2,010億ドル(約22兆650億円)から、2026年には2,500億ドル(約27兆4400億円)に達すると予測されている。

また、ツェキン氏によると、BNPLのオンライン取引の平均は数百ドル(数万円)だが、サービスを提供する企業への購入は平均で4000〜5000ドル(約43万9000〜54万8000円)近くになるそうだ。

ツェキン氏は、クレジットカードで購入するよりも「今買って、後で払う」方が魅力的だと考えている。1つは、消費者が3カ月から60カ月までの分割払いを選択できることだ。

「時間をかけて費用を分散することができるため、お金を出してより高品質な機器を購入することできるようになることが多いのです」と同氏は語る。

また、クレジットカードで支払う場合は、金利や返済期間によって金額が変わることがある一方、この方式だと購入の時点で長期的な支払い金額がはっきりしていると、ツェキン氏は付け加えた。

同社は、加盟店には処理手数料を、消費者には金利を課すことで収益を上げている。金利は0%から29%まで「信用度の高さ」によって変わると同氏はいう。

「しかし、クレジットカードは複利で請求されるのに対し、我々は単利で請求します」と付け加えた。

Insight Partners(インサイト・パートナーズ)のプリンシパルであるRebecca Liu-Doyle(レベッカ・リュー・ドイル)氏は、Wisetackを「業界の中でも際立った存在」と評している。

「Wisetackは、eコマースよりも複雑でサービスが行き届いていないようなユースケースに対応することを目的に構築され、組み込み型BNPLという点で差別化されたプラットフォームを持っている」とメールで語っている。

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

米PayPalが日本のペイディを3000億円で買収、アジアで「BNPL」後払い市場に参入

米国のフィンテック企業であるPayPal Holdings(ペイパル・ホールディングス)は、日本でのビジネスを強化するために、日本の後払い(BNPL、Buy Now, Pay Later)サービスプラットフォームであるPaidy(ペイディ)を、約27億ドル(3000億円)の現金で買収することを発表した。

規制当局の承認を含む取引完了は、2021年第4四半期を予定している。

買収後、日本を拠点とするペイディは既存の事業を継続し、ブランドを維持するとともに、Paidyの杉江陸社長兼CEOと創業者兼代表取締役会長であるRussel Cummer(ラッセル・カマー)氏は引き続きリーダーとして同社に残る。

日本は世界3位のEC市場であり、今回の買収は、クレジットカードに代わる後払い決済サービスの提供という分野で、日本および地域でのシェア拡大を目指すPayPalにとって重要な動きだ。

PayPalは長年にわたり、決済カードと仲良くやってきた。ユーザーは自分のカードの詳細をPayPalにアップロードし、PayPalをデジタルウォレットのように使ってオンラインでの支払いを管理することができる。しかし、PayPalは実際には、PayPalアカウントへ入金し、そこから支払いを行う決済プラットフォームとしてスタートした。その意味でPaidyは、PayPalのファーストパーティ路線を強化し、カードネットワークを介さず、独自のインフラでお金の流れを「所有する」方法を提供するといえる。

ペイディは基本的に、日本の消費者と加盟店の間の仲介を行う双方向決済サービスだ。機械学習を利用して、特定の購買に関連する消費者の信用力を判断し、数秒でそれらの取引を引き受け、加盟店への支払いを保証する。消費者はPaidyに商品代金を後払いする。

ペイディのプラットフォームは「3回あと払い」と名付けられた月賦払いサービスを提供しており、消費者はオンラインで購入した複数の商品の代金を、毎月、コンビニエンスストアや銀行振込でまとめて支払うことができる。

Paypalの日本担当副社長であるPeter Kenevan(ピーター・ケネヴァン)氏はこう述べている。「ペイディは、日本市場に合わせたBNPLソリューションの先駆者であり、消費者とマーチャントの両サイドで大規模なプラットフォームを構築し、業界リーダーへと急成長しました」。

ペイディの登録ユーザー数は600万人を超えており、今後はPayPalをはじめとするデジタル・QRウォレットを「どこでもペイディ(Paidy Link)」に統合し、オンラインとオフラインのマーチャントをさらに繋げていく計画だ。

同社は2021年4月、デジタルウォレットとペイディアカウントを連携させることができる「どこでもペイディ」を提供開始した。PayPalは「どこでもペイディ」と統合した最初のデジタルウォレットパートナーだった。

杉江氏は声明の中でこう述べた。「PayPalは『どこでもペイディ』の創設パートナーであり、さらなる価値を生み出すために共に歩んでいくことを楽しみにしています」。

「日本は当社のこれまでの成長に貢献してきた活気に満ちた環境であり、当社チームの努力と可能性がグローバルリーダーに認められたことを光栄に思います。Paypalと協力することにより『買い物の手間を省く』という当社のミッション実現にさらに近づくことができるでしょう」とカマー氏は述べている。

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

【コラム】次世代グローバル決済を生み出すAfterpayとSquareの融合

編集部注:本稿の著者Dana Stalder(ダナ・スタルダー)氏は、Matrix Partnersのパートナー。PayPalの元コマーシャルチーフ(製品、販売、マーケティング)で、現在Matrix Partnersでフィンテック投資をリードし、消費者市場やエンタープライズソフトウェアにも投資している。

ーーー

フィンテックにとって米国時間8月1日は重要な日となった。AfterPayがSquareと合併することに合意した。この合意により、近年最も高い評価を受けている2つの金融テクノロジー企業が1つの企業になる道を歩み始める。

AfterpayとSquareは、世界で最も重要な支払いネットワークの1つを構築するポテンシャルを有している。Squareは大規模なマーチャント決済ネットワークを確立しており、またCash Appを介して、成長著しい消費者向け決済サービスを提供している。しかし、歴史的にみてこの2つの事業は統合されていない。SquareとAfterpayは、これらすべてのサービスを1つの統合されたエクスペリエンスにまとめることができる。

関連記事:Squareが3.19兆円で「今買って、後で支払う」後払いサービス大手Afterpayを買収

AfterpayとCash Appはそれぞれ数千万人の消費者を抱えており、SquareのセラーエコシステムとAfterpayのマーチャントネットワークは、いずれも年間数百億の決済ボリュームを記録している。オフラインレジとオンライン決済フローから、数タップで送金まで、SquareとAfterpayは次世代の経済的エンパワーメントの全容を物語ることになるだろう。

Afterpayの唯一の機関投資家として、私たちがどのようにしてここに至ったのか、そしてこの合併が消費者金融と決済業界の将来にとって何を意味するのかについて、いくつかの視点を共有したいと思う。

フィンテックにおける重大なイノベーション

世界の決済業界は、今後数十年間の勝者と敗者を決定する重大なイノベーションのサイクルを、5年から10年ごとに経験している。最近の大きな変化はNFCベースのモバイル決済へのシフトで、これについては2015年に寄稿しているが、主要なモバイルOSベンダー(VISA、マスターカードなど)はネットワークと消費者のニーズを巧みに橋渡しして、グローバルな決済スタックにおける地位を確固たるものにした。

AfterPayは、最新の決定的なイノベーションサイクルを引き起こした。シドニーのリビングルームでミレニアル世代のNick Molnar(ニック・モルナー)氏が構想したAfterpayには、ミレニアル世代はクレジットが好きではない、という重要な洞察がある。

ミレニアル世代は、2008年の世界的な住宅ローン危機の中で成人となった。彼らは若い頃、友人や家族が住宅ローンを積みすぎて家を失うのを目の当たりにしており、銀行に対する信頼はすでに薄れていた。また学生ローンもかつてない水準に達した。それゆえ、ミレニアル世代(そしてそのすぐ後に続くZ世代)がクレジットカードよりもデビットカードを強く好むのも不思議ではない。

しかし、パラダイムシフトを認識することと、それに対して何かを行うことは別物だ。ニック・モルナー氏とAnthony Eisen(アンソニー・アイゼン)氏は行動を起こし、最終的にそのコアプロダクトで歴史上最も急成長した決済スタートアップの1つを構築した。「Buy Now, Pay Later(BNPL、今買って後で支払う)」そして無利息のサービスだ。

Afterpayのプロダクトはシンプルだ。カートに100ドル(約1万1000円)分が入っていて、Afterpayでの支払いを選択した場合、銀行カード(通常はデビットカード)に対して2週間ごとに4回に分けて25ドル(約2730円)が請求される。無利息で、リボルビング債務もなく、適時支払いにかかる手数料もない。ミレニアル世代の消費者にとっては、高い金利やリボルビング債務といったクレジットカードの欠点を気にすることなく、デビットカードを使ってクレジットカードの第1のメリット(後で支払いができること)を享受できることを意味するものとなった。

良い面ばかりで、悪い面はない。誰が抗えるだろうか?ミレニアル世代を主な成長セグメントとしていた初期のマーチャントは、公正な取引を獲得した。Afterpayへの支払い処理にわずかな手数料を支払うだけで、かなり高い平均注文価値(AOV)と購入へのコンバージョンが得られる。これはwin-winの提案であり、多くの実績を得て、新しい決済ネットワークが生まれた。

画像クレジット:Matrix Partners

真似することが最もすばらしいお世辞となる

Afterpayは2016年から2017年にかけてはオーストラリア以外ではあまり知られていなかったが、2018年に米国に進出してビジネスを立ち上げ、2年目にして1億ドル(約110億円)の純収益を上げたことで注目を集めた。

Klarnaは米国でのプロダクト市場の適合性に苦慮していたが、Afterpayを模倣すべく事業を転換した。またAffirmは、従来からのクレジット事業を主な事業としており、売上の大部分を消費者利益から得ていたが、独自のBNPLオファリングに着目して導入した。その後PayPalが「Pay in 4」の提供を開始し、つい数週間前にはAppleがこの分野に参入するというニュースが報じられた。

Afterpayは世界的な現象を生み出し、今では業界のメインストリームプレイヤーに支持されるカテゴリーとなっている。このカテゴリーは今後10年間で世界の小売決済のかなりのシェアを獲得する軌道に乗っている。

Afterpayは、他とは一線を画している。同社は事実上あらゆる指標において常にBNPLのリーダーであるとともに、顧客のニーズに忠実であり続けることで、その地位を確立してきた。同社はミレニアル世代やZ世代の消費者をよく理解している。それはAfterpayユーザーとして人々が体験する、同社の声、トーン、ライフスタイルブランドに顕著に表れており、マーチャントネットワークにおいて戦略的に構築され続けている。それはまた、負債商品を旋回するユーザーに対して、Afterpayはクロスセルを意図していないという単純な事実からも明らかだ。

最も重要な点は、こうした消費者に対する理解の姿勢が、競合他社と比較した使用状況の測定基準に反映されていることにある。これは人々が愛着を持ち、利用し、信頼を寄せるようになったプロダクトであり、かつては得られなかった、伝統的な消費者信用を上回る良質で公正な条件を備えている。

Afterpay2021年度上半期業績発表

SquareとAfterpayの融合は完璧な調和

筆者はこれまで15年以上にわたって決済会社を手がけてきた。初期にはPayPalの黎明期を経験し、より直近ではMatrix Partnersのベンチャー投資家として活動している。しかしこれほどまでに、消費者やマーチャントに並外れた価値をもたらすポテンシャルを秘めた組み合わせは見たことがない。eBayとPayPalよりもはるかに優れている。

明確なプロダクトとネットワークの補完性を超えて、筆者とパートナーにとって最もエキサイティングな点は、価値と文化の整合にある。すべての人に向けられたより多くの機会があり、経済的なハードルが少ない未来のビジョンを、SquareとAfterpayは共有している。彼らがともにその未来に向かって前進する中で、筆者はこの組み合わせが勝者となることを確信している。SquareとAfterpayの融合により、世界の次世代決済プロバイダーが誕生するだろう。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:AfterpaySquare合併決済サービスBNPLオーストラリアアメリカミレニアルコラム

画像クレジット:charles taylor / Getty Images

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(文:Dana Stalder、翻訳:Dragonfly)

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スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。
みなさんこんにちは。昼食にグリルドチーズを堪能したあと、この記事を書きはじめている。だがアイスコーヒーをたっぷり用意したおかげで、食後の眠気をかわしながら仕事にとりかかることができているというわけだ。今回はまず、かなりすてきベンチャーラウンドについて話し、とある創業者に対象の産業分野の話を聞き、Marqeta(マルケタ)の収益レポートについてとりあげる。ということで、手元にはフィンテックとSaaSと公開企業に関するメモを用意している。では始めよう。

HiHello(ハイヘロー)の野心的なシリーズA

Manu Kumar(マヌ・クマール)氏のことはよくご存かもしれない。彼はK9 Venturesのベンチャーキャピタリストだ。しかし、彼は同時にスタートアップも立ち上げており、今回私たちが興味を寄せるのはそちらの方の取り組みだ。

HiHelloという名のそのスタートアップは、最近750万ドル(約8億2000万円)のシリーズA調達を行ったことを発表した。Foundryがラウンドを主導し、Lux Capitalが参加し、多くのエンジェルたちも小切手を切っている。ここまでは、ごく普通の話だ。しかし、このラウンドがHiHelloのストーリーのおもしろい部分というわけではない。おもしろいのは同社が作っているものだ。

ここで質問。名刺を最後に注文したのはいつだろう?率直に言って私は思い出せないが、最後の仕事からTechCrunchに戻るまでの間のどこかで、新しいカードを入手することをやめてしまった。それは、単に新型コロナの影響や、私が今サンフランシスコから遠く離れて住んでいることだけが理由ではない。実際あまり役に立っていないように見えたので、考えることもなかったのだ。

HiHelloは、インターネット用の未来の名刺といったものを構築している。クマール氏によれば、たとえデジタルの世界であっても、誰もが自分のアイデンティティを示し、自己紹介する方法を必要としているという。もちろん、予定された集会ならば事前に準備することはできるだろう、と彼はいう。しかし、どちらかといえば予定外に人と会うときには、自分のアイデンティティを伝える方法を持っていることは役に立つ。

ということで、HiHelloを使用すれば、一種の仮想名刺を自分で作成することができる。ただし1つだけではなく、ペルソナごとにそれぞれ1種類ずつ、複数の名刺を持てるようにしようというのがアイデアだ。クマール氏は、たとえば私がポッドキャスト(EQUITY)用に1つ、TechCrunch本体用に1つと複数の名刺を持つことができるという。もちろん仕事用ではない個人用名刺も作ることができる。

私は名刺は死んだと思っていたし、二度とそれを用意する必要はないと思っていた。クマール氏の意見は違う。彼は、HiHelloが事実上、コンテキストを中心とした個人的なソーシャルネットワークを生み出すことができる未来を見ているのだ。それは大胆で直感に反する主張だ。言い換えるなら、スタートアップの良いネタだ。

HiHelloは現在、消費者から収益を得ており、ビジネスプロダクトも持っている。このスタートアップがどれだけ早く成長できるか見守りたい。新しい種類のソーシャル製品に期待できる時が来たのだろう。

対象産業を選ぶ

Skyflow(スカイフロー)については何度か書いたことがある。共同創業者のAnshu Sharma(アンシュ・シャルマ)氏は長年の知り合いだ。最初に会ったのは彼がStorm Ventures(ストーム・ベンチャーズ)にいたときのことだ。その後、彼はエンジェルとして投資を続け、何社かを創業した。そのうちの1つがSkyflowだ。このソフトウェアスタートアップは、PII(個人情報)やその他の重要な情報を顧客に代わって保護し、安全な方法でアクセスできるようにする「デジタル金庫」を販売していて、情報セキュリティに全力を注げない企業が、侵害を回避できるようにしている。

このビジネスモデルは成功しており、Skyflowはかなりの速さで資本を調達している。シャルマ氏はこれまでのところ、顧客の広がりを喜んでいるようだ(シャルマ氏はまた、私が先日エッセイを書くのに役立ったメモを提供してくれた)。

そんなSkyflowが最近、ヘルスケア市場向けに特化した製品を発表した。会社の最初の立ち上げから追跡をしてきたので、私は興味を惹かれた。それで、私はシャルマ氏に電話をかけて彼の産業戦略の話を聞いた。彼がどのように追求していく市場を選んでいるのか、そして彼が次に会社をどちらへ連れて行くのかに興味があったのだ。

シャルマ氏は、彼の会社の計画は、複雑な市場でその技術を証明し、その後、時間の経過とともにその力を拡大することであるという。ということからヘルスケアを推進し、財務データの保管をSkyflowの中で扱うのだ。難しい問題を解決し、彼がいうところの複雑な顧客に販売することによって、Skyflowは他の人びとにその技術を提供するための信用を市場から得ることができる。

彼の視点からは、私たちはプライバシーを重視して、インターネットをゼロから「再配線」する必要があるように思えるのだ。初期段階から決済技術を取り込まなかったことがいかに間違いであったかを語るMarc Andreeseen(マーク・アンドリーセン)氏の言葉をシャルマ氏は引用しながら、ウェブの黎明期に2つのことが忘れられていたのだと主張する。そう、支払いプライバシーだ。

したがって、Skyflowの産業戦略は、可能な限り最も困難な問題(医療データはあらゆる種類の規則や規制に関係している)に取り組み、PIIがすべての人にとってより安全になるまで範囲を広げていくことなのだ。これは、インターネットがどこに向かっうかについての、基本的には楽観的な取り組みである。それはプライバシーが理屈の世界に留まりアドテックが永遠に残り続けるFacebookの世界ではなく、データがユーザー自身のものであり、安全に保存され外からは手の届かない世界のことだ。

Skyflowがこの先向かう環境での競争は厳しくなるだろう。しかし、個人にプライバシーを取り戻したいというスタートアップの、たとえ一部だけでも成功するならば、私は満足するだろう。

Marqetaの初の業績報告会

2021年見たIPOの波の中でやや目立たなかったのは、カード発行分野に携わるフィンテックユニコーンのMarqetaのデビューだった。同社は先週、初の公的業績報告会を行った。そこで同社CEOのJason Gardner(ジェイソン・ガードナー)氏と、その内容について電話で大いに話し合った。

簡単にいえば、Marqetaは第2四半期に急速に成長し、期待を軽々と上回った。しかし、同社は市場が予想していたよりも多くの金を失い、その結果IPO後の株価の値上がり分を事実上すべて失った。

電話からのメモをいくつか。第一に、ガードナー氏は公募価格を上回ったことに満足しているようだ。1年半にわたるIPOが終了した今、会社経営に打ち込めるチャンスを取り戻せたという。また、これまでは年に一度話していた取締役会での計画発表が、四半期報告書になったことが楽しかったという。より定期的な情報開示が会社の仕事に緊張感をもたらすからだ。

普段は非公開企業のCEOが、わずらわしい業績報告会などを心配している話を聞くことが多いので、公開企業の経営者が自分の会社の発展を褒めているのを聞くのは、少し新鮮だった。このことを聞いて、公開を好む理由は違っているもののBigCommerce(ビッグコマース)のCEOであるBrent Bellm(ブレント・ベルム)氏から聞いた公開に関するコメントを思い出した。

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しかし、スタートアップの世界を理解する上でより重要だったのは、MarqetaのBNPL(後払い)市場に関するメモだった。Klarna(クラーナ)の台頭をきっかけに、Square(スクエア)がAfterpay(アフターペイ)を買収し、そして数多くのBNPLスタートアップのラウンドを経て、Marqetaが自社の成長市場としてBNPL(今すぐ購入、後で支払い)の分野に注目していることが私たちの関心をとらえた。BNPLが、カード発行プラットフォームの役に立つのは何故だろう?

要するに、Marqetaなどが顧客のために発行したバーチャルカードが、BNPLの取引を可能にするソフトウェアの一部として使用されることが多いことがわかったからだ。フィンテックの世界は、常に予想以上に相互につながっている。ということで、BNPLというカテゴリーを考える際には、その成長が他のどのような分野の成長と関わっているのかにも注目したいと思う。これにより、BNPLの波に乗ることができるスタートアップの数が増えるからだ。

最後にもう1つ。馴染みのない市場のダイナミズムの説明を得るには、公開されている企業のCEOに説明してもらうのが一番早い。ただ、このようなやり方の欠点は、もう少しで理解しかけていたのに、たった1つの重要な要素を見逃していただけという場合に、CEOがささやかな一言で気づかせてくれたときに、自分が理解できなかったことをとても残念に感じてしまうことだ。

とはいえ、実際には自分がとても愚かだという自覚はあるので、何かを知らないことで顔を真っ赤にすることはない。さて、今日はここまでにしよう。

ではまた、ワクチン接種が無事に終わりますように。

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

ローコードの後に来るものは?そして、何故公開をする必要があるのか?

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

第2四半期の業績報告シーズンは順調に進んでいる。つまり、Exchangeのスタッフたちが、重要なトレンドやメモをお届けするために、多くの公開企業のCEOたちにせっせと電話をかけているということだ。ということで、今回はAppian(アピアン)、Paycom(ペイコム)、BigCommerce(ビッグコマース)を取り上げる。

その後、BNPL(後払い)の世界スタートアップの競争への最近の報告を強化してくれる、新鮮な素材を覗き見する。持ち帰りバッグの用意はよろしいだろうか?お土産をどっさりお渡しできますように!

まずAppianから始めよう。私がこの会社を知ったのは、多くの企業が同社のローコード技術を使用してアプリケーションを構築していた、パンデミックの最中だった。当時のAppianの評価額は現在の約半分ほどだった(同社の第2四半期のレポートはここで読むことができる)。

それ以降、同社はクラウドへの注力を継続し、プロフェッショナルサービスの売上よりも利益率の高いSaaSによる売上を優先している。似たような変革を実行しているのは同社だけではない。しかし、今回の記事のために、2020年の多くを費やして掘り下げた基本的なローコードの後に何が起こるかについて話してみたい。

Appianは、第2四半期の業績報告に関連して、プロセスマイニング会社のLana Labs(ラナ・ラボ)を買収することを発表した。プロセスマイニングとは何かって?聞いてくれてありがとう。プロセスマイニングとは、自動化でき企業内のプロセスを見つけるためのソフトウェア技術だ。会社のためにRPAサービスを導入するのは結構なことだが、もし何を自動化できるかわかっていない場合には、完全な価値を得ることは難しいかもしれない。

これがAppianの場合とても重要なものになる。なぜなら同社はいまや、企業が同じ屋根の下でアプリケーションを作成するのに役立つ、プロセスマイニング、RPA、およびローコードツールを持つようになったからだ。実際には、これらのパーツは、自動化するものを特定するプロセスマイニングと連携して機能する。そこで特定されたワークフローは、RPAやその他の形式の自動化(AI、人間)の中に取り込まれ、企業が効率的な順序で業務を遂行できるようにする。

AppianのCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏に、ワークフローとアプリケーションの違いについて尋ねてみた。彼はそれらはほとんど同じものであるという。これにより、ローコードの世界をもう少し理解することができる。企業が本当に必要とするアプリケーションの数はいくつなのかと、私はいつも疑問に思ってきた。だが企業が自動化する必要のあるワークフローの数に関する同様の質問には、違う感覚を受ける。もっともっとたくさんの可能性があるように感じるのだ。つまり、より大きな市場の可能性があるということだ。

ローコードについての私の考えを改めたい。このダイナミクスが、単により多くのアプリケーションを作れるというだけではなく、企業が業務をデジタル化し、決まりきったタスクを自動化するのにより役立つというのなら、このソフトウェア手法を私はもっと自信をもって推せる。

次にBigCommerceの話題へ移ろう。このオープンSaaS方式のeコマースプラットフォームはここ数四半期好調で、Shopify(ショッピファイ)のグローバルな知名度が高まっているにもかかわらず、収益の伸びが順調に加速している。株式公開から1周年を迎えたばかりなので、CEOのBrent Bellm(ブレント・ベルム)氏に数分間、この1年で学んだことについて話を聞き、公開には価値があったか否かを尋ねた(会社の第2四半期のレポートはここで読むことができる)。

もちろん、と彼は答えた。彼は私が紹介したくなるような、企業上場における2つの効用を説明した。ベルム氏は、会社の最近の業績に貢献したさまざまな要素から主となる要因を分離することは不可能だとはいうものの、それら2つはBigCommerceのより速い成長に貢献している。

ともあれ、株式公開する理由は以下のとおりだ。

  • 信頼性:オープンファイナンスの公開企業であることは、市場での信頼を育むことができる。スタートアップにはやや頻繁に死にやすいという厄介な習性がある。公開企業はそれよりははるかに死ににくい。つまり、顧客が会社を信頼する可能性が高く、おそらく取引を確保する可能性が高まることを意味する。さらに、BigCommerceが公開されたことで、パートナーたちはBigCommerceに対する信頼を深めており、ベルム氏によれば、そのことがより多くのパートナーシップと成長を促しているという。
  • 注目度の向上:私は株式公開にまつわるこの側面を理解していたつもりだったが、ベルム氏が私の視野を広げてくれた。もちろん、株式公開はブランディングイベントの1つだ。しかし、私は話はそこで終わりだと思っていた。だがベルム氏は、公開したことによって、たとえば彼の会社が何かをしたときにアナリストコミュニティが注意を払うようになると説明した。そのために、BigCommerceは、スタートアップのときよりも、公開会社となったときのほうが世間の注目を集めるのが容易になる。良い意味で、自社を取り巻く市場ノイズが強調されるということだ。

ベルム氏はThe Exchangeに対して、株式公開は彼の会社にとって「圧倒的に良いこと」だったと語る。ユニコーン諸君、聞いたかね?

次はPaycom(ペイコム)の話だ。このインタビューで主に話題に出たのは、人材に関する2つの話題だ。まず最初の話題、Paycomは、他のすべての企業と同様に、競争力のある技術人材市場を扱っている。しかし同社は、従来のテクノロジーハブから遠く離れているにもかかわらず、特に必要とする人材の不足に直面している。Paycomはオクラホマ州を拠点としている(会社の第2四半期のレポートはここで読むことができる)。

しかし、現在の人材市場とその全般的な逼迫は、別の意味でPaycomに影響を与えている。このHRテクノロジー企業は、一般企業が人材を確保してその後維持し続けるのに役立つソフトウェアを販売しているからだ。同社のCEOであるChad Richison(チャド・リチソン)氏によれば、企業は採用後の必要な手続きを終えたあと、人材を手放さないことに重点を置くことで恩恵を受けているという。

2つ目の話題は、労働市場はベンチャーキャピタル市場ととても似てきたことがわかったということだ。リチソン氏は、現在は誰かを面接したら2、3日で採用するか否かを決断しなければならないのだという。以前はもっと時間に余裕があったが、現在の状況は、VCが数週間や数カ月ではなく数日で小切手を切る決断をすることを余儀なくされているのに似ている。

暑い(熱い)夏になりそうだ。

BNPL(後払い)市場を狙うスタートアップ

Splitit(スプリティット)のCEOであるBrad Paterson(ブラッド・パターソン)氏によれば、BNPL市場を狙うスタートアップにとって希望はまだ残されているという。Splititを使えば、顧客は現在のクレジットカードを使用して分割払いを行うことができる。つまり、これは従来のクレジットとBNPLの組み合わせなのだ(SplitItのCrunchbaseページはこちら)。

パターソン氏はBNPLスタートアップの現在の市場についてのコメントを話してくれた。Square(スクエア)とAfterpay(アフターペイ)の取引について多くのことを話した後、私はなぜ中小企業が、彼らの市場に参入してくる巨大企業の猛攻を凌いで、生き残ることができるのかについて彼の意見を聞きたくなった。

パターソン氏は電子メールの中で「平均購入価格、分割払いプランの長さ、業界の統合サービスなど」と説明した豊富な要因が、この世界での生き延びる余地を守っているのだと説明した。そして、BNPLソリューションは「小規模な購入から始めて拡大できる」ため、この分野にはスタートアップが入り込める余地があるのだという。

おそらくより良い質問は、消費者の信用と習慣を構築するために、あとどれほどの手間が必要なのかということだろう。それは、BNPLツール自体よりもはるかに広い問題空間のように思える。

スタートアップの競争

スタートアップの競争に関する少し前の仕事に戻ろう。Hustle FundElizabeth Yin(エリザベス・イン)氏が、共有したくなる一覧を送ってきた。スタートアップにとって市場で主導的役割を果たすことの重要性について話し合っていたときに、私たちは主に、若い企業がさまざまな関係者を結びつけようと試みているマーケットプレイス空間のことを話題にした。

たとえば配車の世界では、それは運転手と乗客だ。フードデリバリーではさらに複雑で、配達者、消費者、食品を生産する事業所が関わる。どのような話かは想像できるだろう。イン氏は、下位の市場シェアに満足していることは「一般的に非常に難しい」ことだという。彼女は続けた:

市場の価値は、通常需要と供給の両方が拡大するにつれて増加します。例えばAirbnbでは宿泊施設と顧客の数の増加が起きていますし、Uberでは運転手と乗客の両方が増えています。などなど。実際、多くの場合には、それが唯一の価値なのです。

したがって、市場で3位または4位である場合、顧客の維持は大きな潜在的課題です。なぜならより大きなネットワークを持っている1位または2位の競争相手に、現在の顧客が逃げていかないようにするにはどうすれば良いかを自問しなければならないからです。これが、マーケットプレイスが統合されていく傾向がある理由なのです。

初期からの投資家にとっては、1位または2位への売却によってうまく決着できる可能性があるものの、1位または2位に投資した場合に比べると、結果は1〜2桁低いものになってしまう可能性があります。このため、好調なスタートを切ったマーケットプレイスがすでにいくつかある場合には、アーリーステージの投資家たちは新しいプレイヤーに投資することを躊躇する傾向があるのです。

イン氏はまた、私たちの質問に答えて、スタートアップによるマーケットプレイスの競争は、一般的に少数の主要なプレイヤーがいる市場を生み出し、市場シェアが低いことで小規模な参入者が追い出されてしまうことで、他の競合他社は死に追いやられるという。彼女は資本の影響に関して興味深い視点を追加した:

一般的には、そう、投資家もこの現象に関与しているのです。いくつかの企業が立ち上がると、投資家はそれらの最初のリーダーにより注力する傾向があり、かつ他の人たちは競合他社への投資を敬遠する傾向があります。そして、お金がその分野に溢れたら、顧客獲得コストが問題になるのです。顧客獲得コスト(CAC)がトップ企業によって引き上げられてしまうのです(これは、フードデリバリー企業の台頭とともに見られた現象です)。これが、マーケットプレイス企業を簡単に立ち上げることができない理由なのです。顧客を獲得する余裕を持てないのです。

これは、ある意味で、スタートアップの世界におけるキングメイキングについての質問に対する答だ。ベンチャーキャピタルは、多くの場合誰が勝つかをあらかじめ決めてはいないものの、資本の影響は実際にマーケットプレイスの世界で結果を歪める可能性がある。さて、最初のVision Fund(ビジョンファンド)が、どのように資本を振り分けたかを話し始める前にこの話題はやめておくことにしよう!

ではまた、ワクチン接種が無事に終わりますように。

ではまた。

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画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

年間ユニークユーザー数1580万人の後払い決済サービス「NP後払い」をテレビ通販「ショップチャンネル」が導入

年間ユニークユーザー数1580万人の後払い決済サービス「NP後払い」をテレビ通販「ショップチャンネル」が採用

ネットプロテクションズは8月4日、ジュピターショップチャンネルが展開するテレビ通販「ショップチャンネル」に「NP後払い」決済サービスを8月1日から導入したと発表した。EC受注と電話受注への同時導入という。専門チャンネルを持つテレビ通販会社の電話受注に「NP後払い」が導入されるのはこれが初めてとのこと。

NP後払いは、クレジットカードの情報登録が不要で、商品受け取り後に支払いができるサービス。ネットプロテクションズの調べによると、ネットショッピングで後払いを望む人は全体の約20%ほどいるとのこと。そのニーズに応えるべく、2002年、未回収リスク保証型という形でリリースされた。NP後払いは、年間流通金額3400億円、導入企業7万社以上、年間ユニークユーザー数は1580万人(2020年4月1日~2021年3月31日におけるNP後払い利用者のうち、氏名・電話番号の双方が一致する利用者)にのぼるという。年間流通金額は前年比約16%の成長率を誇り、2021年3月までの累計利用件数は2億8000万件を突破した。

また、NP後払いで培った与信ノウハウとオペレーション力を企業間取引向けに展開した「NP掛け払い」サービスを2011年に開始。こちらも年間流通金額が前年比約27%の成長を見せている。さらに、実店舗でも利用可能で、1カ月の買い物をまとめて後払いできるサービス「atone」(アトネ)を2017年に開始、2018年には台湾でスマホ後払い決済「AFTEE」(アフティー)をスタートさせている。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:後払い販売 / BNPL(用語)決済 / 決済サービス / 決済システム(用語)ジュピターショップチャンネル(企業)ネットショッピング / eコマース(用語)ネットプロテクションズ(企業)日本(国・地域)

Squareが3.19兆円で「今買って、後で支払う」後払いサービス大手Afterpayを買収

フィンテック界を揺るがす超大型案件として、Square(スクエア)は米国時間8月1日、オーストラリアの「後払い決済(BNPL、Buy Now, Pay Later)」サービスの大手Afterpay(アフターペイ)を290億ドル(3兆1900億円)で、すべて株式を対価として買収すると発表した。

買収価格は、7月30日のSquareの普通株式の終値247.26ドル(約2万7200円)をベースとしている。この買収は、一定の条件を満たすことを前提に、2022年第1四半期中に完了する見通しだ。Afterpayの直近終値96.66豪ドル(約7800円)に対し30%以上のプレミアムがついたことになる。

Squareの共同創業者でCEOのJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は、2社のフィンテック企業が「共通の目的を持っている」と声明で述べた。

「私たちは、金融システムをより公平で、利用しやすく、包括的なものにするためにビジネスを構築します。Afterpayはその原則に従い、信頼できるブランドを構築しました」と同氏は声明で述べた。「力を合わせ、Cash AppとSellerのエコシステムを上手く結びつけ、店舗と消費者にさらに魅力的な製品とサービスを提供し、パワーを彼らの手に取り戻すことができます」。

両社の結合により、他に類を見ない巨大な決済企業が誕生する。この1年半の間に「後払い」サービスは爆発的に普及し、特に若い世代を中心に、クレジットカードを使わず、利息も払わず、オンラインや小売店でどこにでもあるような分割払いのローンを利用するという考えが広まっている。

6月30日時点でAfterpayはファッション、家庭用品、美容、スポーツ用品などの業界の大手小売業者を含め、全世界で1600万人以上の消費者と約10万の加盟店にサービスを提供している。

両社の声明には、AfterpayのSquareグループへの加入により、SellerおよびCash Appのエコシステムに関するSquareの戦略的優先事項が加速することになる、とある。Squareは、Afterpayを今のSellerおよびCash Appのビジネスユニットに統合する計画だ。それにより「小規模な加盟店」であっても、精算時に今すぐ購入して後で支払うという選択肢を提供できるようになる。また、この統合により、Afterpayの利用者は、Cash Appで直接分割払いを管理できるようになる。Cash Appの利用者は、アプリ内で直接、加盟店やBNPLが選べる。

Afterpayの共同創業者で共同CEOでもあるAnthony Eisen(アンソニー・アイゼン)氏とNick Molnar(ニック・モルナー)氏は、取引終了後にSquareに合流し、Afterpayのマーチャント事業とコンシューマー事業をそれぞれ統括する。Squareは、Afterpayの取締役 1名を同社の取締役として任命する予定だ。

Afterpayの株主は、保有する株式1株につき、SquareのクラスA株式0.375株を取得する。これは、Squareの7月30日の終値ベースで、Afterpayの株価が1株あたり約126.21豪ドル(約1万200円)だったことを意味する。

この分野での統合がさらに進むのだろうか。それはまだわからないが、Twitter(ツイッター)上では、次にどんな取引が行われるかが話題になっている。米国では、2021年初めにライバル企業のAffirm(PayPalの共同創業者であるMax Levchin[マックス・レヴチン]氏が創業)が上場した。7月30日の終値は56.32ドル(約6200円)で、初値や直近52週間の高値である146.90ドル(約1万6200円)を大きく下回った。一方、米国で急成長を遂げている欧州の競合企業Klarnaは、6月にさらに6億3900万ドル(約703億円)を調達し、資金調達後のバリュエーションは456億ドル(5兆160億円)という驚異的な数字になっている。

米国の消費者をめぐるBNPLの戦いは、今回の取引でますますヒートアップすることは間違いない。

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画像クレジット:Smith Collection / Gado / Getty Images

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(文: Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi