PwCは1億ドル規模の本気の社員教育でデジタル・ディスラプションを回避する

今、あらゆる業界が頭を抱えていることだが、大手会計事務所もデジタル・ディスラプションの圧力を受けている。しかし、PwCは、次世代の仕事に従業員を対応させるためのデジタル・アクセラレーター・プログラムを採り入れ、積極的に対処している。

PwCの実施方法は、単に新しい教育素材を配って、それでおしまいというものではない。従業員には18カ月から2年の期間が与えられ、新分野に関する学習に専念できるようにしている。その間、従業員は、就業時間の半分を新しいスキルの勉強に割り当て、残りの半分を、実際にクライアントと仕事をしながら新しい知識を試してゆく。

このプログラムの責任者としてPwCのデジタル能力指導を行っているのはSarah McEneaneyだ。コンサルティングを行う企業として、すべての従業員への新しいスキルセットの提供に力を注ぐことが大変に重要であると、彼女は話している。そのためには、従業員と真剣に向き合い、一連の最新テクノロジーに集中しなければならない。彼らが的を絞ったのは、データと解析、自動化、ロボティクス、AIと機械学習だ。

Constellation Researchの創設者で主任アナリストのRay Wangは、大企業では、従業員が将来の技術に対応できるよう準備させるのが大きなトレンドになっていると語っている。「世界中のほとんどの組織が、従業員のスキルの成長に差があることを心配しています。スキルの再教育、継続的な学習、実践的なトレーニングが、景気の回復と才能を巡る戦いによって復活しています」と彼は言う。

PwCのプログラムが形になる

1年ほど前、PwCはプログラムの開発を開始し、最終的には、コンサルティングのスタッフから事務スタッフに至るまで、5万名の全社員が新しいスキルを身につけられるよう、社内でこれをオープンにすることを決めた。ご想像のとおり、これほどの大企業となると、これはまだ赤ん坊が歩き始めたようなものだ。

イラスト:Duncan_Andison/Getty Images

同社はこのプログラムを、上司が受講候補者を選出するのではなく、社員が自主的に受けられる形にした。やる気のある人間を求めたのだ。そして、約3500名の応募があった。これは良好な数字だとMcEneaneyは思った。なぜなら、PwCにはリスクを嫌う文化があったからだ。そしてこのプログラムは、通常の成長路線を捨てて、新しいチャンスに乗り換えようというものだからだ。申し込みがあった3500名の中から、まずは試験的に1000名が選ばれた。

彼女は、もし社員の大多数がこの再教育プログラムに応じたとしたら、およそ1億ドル(約112億円)という莫大な資金が必要になると見積もっている。PwCのような大企業にとってすら、無視できる数字ではない。しかしMcEneaneyは、すぐにでも取り戻せると信じている。彼女が言うように、近代化を目指し、今のやり方よりも、より効率的な仕事の方法を模索している企業は、顧客から一目置かれる。

どのように実施するか

PwCのリスク保証アソシエイトDaniel Croghanは、データと解析のコースを受けることに決めた。会社から新しいスキルを学べるのは嬉しいが、その方向に進むことに心配もある。一番の理由として、一般的に言って、そこが過去を引き継ぐ業界だからというものがある。「会計業界では、そこで職に就き、ひとつの道に乗っかると、みんなもその道を進むようになります。道を外れてしまうと仕事の妨げになるのではないかと思うと、新しい方向へ行くのが怖いのです」と彼は言う。

イラスト:Feodora Chiosea/Getty Images

しかし、そうした心配は経営陣によって軽減されたという。彼らは社員にプログラムに参加するよう奨励し、それによって不利益を被ることはないと保証してくれたからだ。「この会社はこれを推し進めて、業界内で違いを出すことに専念しています。全社員に投資することで、全員にやり遂げて欲しいのです」とCroghanは言う。

McEneaneyはPwCの共同経営者だが、重役会に変更管理を売り込む必要があったという。会社の将来のための長期的な投資だと、真剣に受け入れてもらうためだ。「早期の成功のためには、会社設立以来のシニアパートナーとCEOとその取り巻きから、プログラムの一任を勝ち取ることが最重要の課題でした」と彼女は言う。彼女は彼らに直接報告を上げ、プログラムの早期成功に欠かせない支持と支援を引き出した。

実現させる

プログラムの受講者は、まず3日間のオリエンテーションを受ける。その後は、自分でコースを進んでゆく。他の受講者と協力し合って勉強を進めることが奨励されている。まったくの初心者から、ある程度の知識を持つ人とが一緒になることで、その科目におけるスキルの幅が生まれる。そこが非常に大切なのだ。同じ建物で働いていれば、オフィスを使うこともできる。または、コーヒーショップで会ったり、インターネットでやりとりすることも可能だ。

すべての受講者は、オンライン学習サイトUdacityのナノ学位プログラムに参加し、選択した専門技術に関連する新しいスキルセットを学ぶ。「私たちには、非常に柔軟な文化があります。……自分のため、そして自分たちのために一緒に働くという働き方をしている社員たちを、私たちは信頼しています」とMcEneaneyは説明している。

最初のプログラムは、12カ月から18カ月のデジタル・アクセラレーター服務期間として提示されたと、Croghanは言う。「この12カ月から18カ月は、プログラムに専念します。期間を変更することもできます。そうしてクライアントとの仕事に戻り、それまで提供していたサービスに新しく覚えたスキルを応用したりも可能です」

このプログラムは始まったばかりだが、ビジネスとテクノロジーの変化の側面を認識するための一歩となる。PwCのような企業は、次世代の仕事に社員が対応できるよう、積極的に対策をしておかなければならない。そしてそれは、すべての企業が真剣に考えておくべきことだ。

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(翻訳:金井哲夫)

仮想現実による教育訓練の先頭走者STRIVRが顧客増大に対応して$16Mを調達

大手のテクノロジー企業の一部は、仮想現実(virtual reality, VR)をもっぱら、消費者向けの新しい商材と捉えているようだが、しかしもっと活発な傾向として、近年ではますます多くの企業が社員の教育訓練に仮想現実を利用し始めている。

VRによる教育訓練を提供するスタートアップのひとつであるSTRIVRは、そんな動きのリーダー格だが、今日同社はGreatPoint Venturesがリードするラウンドにより、1600万ドルを調達した。同社の調達総額は、これで2100万ドルになる。

同社は最初、スタンフォード大学のフットボールのチームをVRで訓練するプロジェクトを手がけていたが、昨年は大企業のWalmartとパートナーして、後者の社員教育にVRを利用するビッグな仕事が舞い込んできた。

同社が使用する主な教材は対話型の360度ビデオで、これは制作と利用が易しいだけでなく、ハードウェアが簡素で、Facebookの199ドルのOculus Goのような、ローエンドのシステムでも使える。

[関連記事: ウォルマートが17000台のOculus GoヘッドセットをVRによる作業訓練用に試験的に採用]

数週間前に同社は、Walmartが17000台のOculus Goヘッドセットを数千店に送り、それらにSTRIVR製の教材をロードした、と発表した。CEOのDerek Belchによると、今では同社は27のFortune500社を顧客として抱え、その業種は“ほとんどすべての業種”だそうだ。

Belchはこう語る: “最近の数か月は、チーム編成のスケーラビリティのことばかり考えていた。今回GreatPointから得られた資金も、顧客の急増に対応するチームの拡大に充てられるだろう。関連してオフィスの拡大なども課題だ。”

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ますます病的になっているインターネットの解毒を探求するEvolve Foundationが$100Mのファンドを創立

このところ悪いニュースばかりのようだが、しかし良いニュースもある。非営利団体Evolve Foundationが、テクノロジー隆盛の影で全世界的に広がっている孤独や生きがい喪失、不安や恐怖、怒りなどとたたかうためのファンドConscious Accelerator〔仮訳: 気づきの加速〕に1億ドルを調達した。

Matrix Partners Chinaの協同ファウンダーBo Shaoがこのファンドをリードし、世界の問題に対する人びとの意識を高めるようなテクノロジーを目指す起業家を、掘り出し、育成していく。

“ものすごくお金持ちの人がたくさんいるけど、彼らの多くは大きな不安にかられ意気消沈しているんだ”、と彼は語る。彼によれば、その大きな原因のひとつが現在のテクノロジーの使われ方、とくにソーシャルメディアのネットワークだ。

“多くの人に‘いいね!’される投稿をしなければならないという強迫が、不安を惹き起こす”、と彼は言う。“そして自分の投稿に、罠のように囚われてしまう。投稿して10分も経つと、何人‘いいね!’したか、コメントがいくつあったか、気になってくる。一種の、中毒症状だ”。

それをいちばん気にするのがティーンだ、と彼は指摘する。それは今では精神症状の一種とみなされ、Social Media Anxiety Disorder(SMAD)(ソーシャルメディア不安障害)という名前までついている。〔参考

“ソーシャルメディアは新しい砂糖や新しい喫煙だ”、とShaoは語る。

彼がソーシャルメディアと絶縁したのは2013年の9月だが、彼はこれまでの10年間、自分やほかの人たちの生き方をもっと良くするための方法を探求してきた。

彼の新しいファンドはMediumの記事で発表され、社会的善の最大化、テクノロジーがもたらしている問題への解を見つけることを目的とする。投資家への良いリターンが得られるものに投資するだけが、目的ではない。

Shaoは、自分がこれまで数十億ドル企業の著名なVCの一員として仕事をしてきた経歴を活かして、人びとの不安をなくし、多くの人がもっとしっかりとした人生を送れるようにするためのテクノロジーを見つけていきたい、という。

Conscious Acceleratorはすでに、瞑想アプリInside Timerに投資している。また、子どものメディア耐性や、混乱した社会への耐性を増進するための子育てアプリも企画している。

また、二人のUC Berkeley(カリフォルニア大学バークリー校)の学生が始めた、ロシアのボットや、政治的に悪質なTwitterのボットを見つけるプロジェクトにも、投資してよいと考えている。Twitterは最近、これらの問題に対する内部的無策ぶりが、批判されている。

“問題意識のある起業家に利用してもらうことが、このファンドの目的だ”、とShaoは語る。

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クラスの児童生徒への小テストをネット利用で行うKahootが好調、企業向けの有料バージョンをローンチ

先生がネット上で、自分のクラスのための小テストを作って配るというシンプルなサイトが、ここまで成長するとは、誰も思わなかっただろう。でもKahootは、ローンチ直後から大ヒットした。数か月前にMicrosoft Venturesなどから2000万ドルを調達した同社が、今度はそのサービスの有料バージョンを立ち上げて売上を伸ばそうとしている。

そのKahoot Plusは主に、企業の教育訓練用だ。体験的に言っても、これまではひどいアプリケーションしかなかったから、Kahootなら勉強してみたいな、とぼくは感じている。

Kahoot Plusを使うと、小テストはユーザー企業専用の非公開領域に保存でき、各テストに企業のロゴが入る。教育訓練担当者/担当部門は、記録を見て各生徒の進歩をチェックでき、誰のどこを強化すべきか分かる。

同社はオスロで2011に誕生し、今では月刊アクティブユーザー数が5000万を超えている。

企業が教育訓練に投じるお金はアメリカだけでも2016年に700億ドルを超え、Kahootにはすでに企業ユーザーもいて、その中には“Fortune 500社の25%が含まれる”そうだ。今後は、企業を本格的に同社の収益源にしたいのだ。

Kahoot Plusの料金は、導入期で教育訓練対象者一人あたり月額10ドル、本番利用では月額15ドルだ。年会費を払えば、利用者数に制限はない。

KahootのCEO Erik Harrellはこう言う: “毎年、効果のない教育訓練に企業は数十億ドルのお金と数百万時間もの時間を浪費している。彼らのプレゼンテーションデッキはつまらないし、授業も退屈だ。教育訓練というものは、有用であるだけでなく、楽しくて、忘れがたい思い出になり、何かのヒントが得られ、そして引き込まれるような魅力も必要だ”。

Kahootの学校向けバージョンは、今後も無料だ。でも、“企業向けのPlusには、学校で使っても有意義な特長がある。たとえば成績/進捗報告機能が高度だから、生徒たちの実情をより詳しく分析できる”、とHarrellは述べている。

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社員の能力開発が急務な知識経済の時代には教育のNetflixが必要だ

[筆者: Rob Harles, Karl Mehta]

・Rob HarlesはAccenture Interactiveのマネージングディレクター。

・Karl MehtaはEdCast, Inc.のファウンダーでCEO、Code For IndiaのCEOでもある。

毎日46億点の新しいコンテンツが生産されているのだから、私たちの知識への飢えはとっくに満たされている、と思えるかもしれないが、しかし情報の生産と流通は消費の機会や分布とパラレルではなく、それは情報をただそこへ置けば解決する問題でもない。

私たちは情報の中で溺れ死のうとしているが、しかし同時に、私たちの生産性を本当に高め、コラボレーションとイノベーションを促進してくれる知識には飢えている。

役に立つ知識が必要になると、私たちは広くWebを検索したり、口コミでエキスパートを見つけたり、設計のお粗末な会社の文書共有システムを探しまくったりする。どの方法も、効率が悪い。

必要な知識を見つけるための、もっと良い方法があるべきだ。そのような方法はユーザーのニーズに適応し、真の対話と強力な学習体験を通じて、継続的に知識の適切な推奨や提案ができるソリューションでなければならない。

エンターテイメント産業に倣って学習をもっと容易にする

NetflixSpotifyRedditのような、人力または自動化されたキュレーターのいるコンテンツアプリケーションが登場するまでは、視たい/聴きたい番組や音楽、ニュースなどのメディアを見つけるために、いくつものソースを訪ねる必要があった。しかし今では、自分が消費したいエンターテイメントやメディアを容易に発見でき、それらはユーザーの関心に基づいて個人化(パーソナライズ)されている。

多くの点で今のエンターテイメントサービスのやり方は、知識管理や学習開発のアプリケーションにも適した方式だ。

学習と知識の発達を支援する産業は、教育のアクセス性と適切性を高めるプラットホームであるべきだ。それは、知識の吸収と普及拡散が円滑にシームレスに行える場でなければならない。Netflixが、求めるエンターテイメントをすぐ届けてくれるように、私たちが必要とする知識と学習は、必要なところへ、必要なときに、簡単迅速に届くべきだ。

幸いにも、それを実現するテクノロジーが育ちつつある。人工知能(AI)と機械学習を利用するそれらのソリューションは、学習の過程とそのためのコンテンツを、集積、キュレート、そして個人化できる。

企業の成功は優れた学習文化を持つことにかかっている

“学習する能力と、学習を迅速にアクションに翻訳する能力は、企業に最強の競争力をもたらす”、GEの元CEO Jack Welchはそう言った。

データを見ると、Welchが正しいことが分かる。Institute of Corporate Productivity (I4CP)のCEO Kevin Oakesによると、業績の良い企業では、そうでない企業に比べて、社員たちが自分の獲得した知識を4倍多く同僚と共有している

重要なのは、雇用者が学習の文化を作ることだ。学習の文化(learning culture)とは、その中で知識がもっと自由に獲得され、吸収され、交換される社風だ。それを実現するためには、いくつかの障害を克服しなければならない:

  • 社内的には、いろんな物事のエキスパート(subject matter experts, SMEs)がいて、その人たちの心の中に知識がある。そんなエキスパートは、日頃の評判や担当業務から容易に見つけることができる。そして、そんな社内的エキスパートが持つ重要な知識を素早く明快に公開し、社内でその知識を必要とする者全員が共有できるための、場や方法が必要である。
  • 会社の外には、コンテンツが至るところにあるが、どのコンテンツが良質で、権威があり、適切であるか分からない場合がある。したがって、適切で有益な(そして安全な)外部コンテンツを集めて、社員たちがそれを消費できるための仕組みを作る必要がある。

これらの社内的および社外的なソリューションでとくに重要なのは、ただ単に学習のためのコンテンツを集めて、キュレートして、カスタマイズするだけのテクノロジーを採用するのではなく、それはまた、学習と共有のためのコンテンツを手早く作れるテクノロジーでなければならない。効率的な学習文化の構築のためには、それが重要だ。

これが知識のNetflixだ

AIを用いる新しいプラットホームは、知識労働者が必要とするコンテンツを、適切なタイミングで届ける。そういう理想的な学習と知識開発のためのソリューションは、とくに次の項目を重視する:

  • 集積: 適切な情報を一箇所に集めること。企業の学習管理システム(Learning Management System, LMS)やイントラネット、そして外部のリソースなどなどから。
  • キュレーション: AIと機械学習を利用して、そのときの状況に合った適切なコンテンツを適切なタイミングでチームにもたらすこと。
  • 個人化: 学習用コンテンツのリコメンデーションを、さまざまな要素の分析に基づいて、個人の特性やニーズに合った形で行うこと。
  • 創造: 多くの中小企業が持っている言葉にならない知識を、解放すること。そのための最良の方法は、社内にコンテンツライブラリを作ってコンテンツを迅速かつ便利に供給することだ。

次の10〜12年間で、人間の今の仕事の半分はなくなる、と言われている。だからこそ、学習の機会とその消化しやすい方法や仕組みを、すべての社員に提供することが、きわめて重要なのだ。

それはいわば、社内における知識の民主化だ。個々の学習機会が十分に個人化され、また社内的および社外的なコンテンツのアクセス性を増し、そして社員たちに成長のためのスキルと知識を与える取り組みを、強化しよう。それは、これまでの企業では、時間がない、人がいない、とかいって、おろそかにされていた分野だ。でも今や、どの企業でも、社員の能力開発は最重要の課題だ。

時間がなくても、人がいなくても、今ではAIと機械学習が助けてくれる。社員を入れ替えるのではなく、今いる社員の学習を前進させ、彼らの明日のキャリアパスを築いていける。

参考記事

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

トラビス・カラニック、UberのCEOを一時休職――ホルダー勧告の内容公開

波乱の時期を迎えているUberだが、CEOのトラビス・カラニック(Travis Kalanick)は先月、両親がボートの事故に遭い、母親を失うという悲劇に見舞われた。カラニックはUberの改革の前にまず休暇を取って気持ちを静める必要があったようだ。トラビスは社員に向けて休暇を取ることを告げた。期限は明らかになっていない〔社員向けメモは原文に掲載〕。

カラニックは「この〔休暇〕期間中、会社はリーダーシップチームと私の指示によって運営される。きわめて重要な戦略的決定が必要になる場合は私が判断するが、リーダーシップチームには大胆かつ決定力をもって会社を前進させるため権限を与える。休暇の期間について現時点で予測するのは難しい。長くなるかもしれないし、短いものになるかもしれない」と書いている。

カラニックが復帰した場合も権限は縮小されることになるだろう。これは元アメリカ司法長官のエリック・ホルダー(Eric Holder)がUberに提出した調査報告と勧告に基づくものだ。ホルダーはセクハラ、女性差別問題を引き起こしたUberの企業文化について調査し、これを改めるための改革を提言した。ホルダーのレポートは「歴史的な経緯によりカラニック氏に集中していた権限の一部は上級経営チームのメンバーと共有され、あるいは移譲されるべき」だと勧告している。

Uberの取締役会はホルダーの勧告をすべて受け入れることを決定している。ホルダーの調査と勧告の内容は今日(米国時間6/13)、公開された

カラニックが関係する勧告には以下のものも含まれる。

  • ダイバーシティーの確保、社員からの苦情の処理、社員の満足度、コンプライアンスなど経営陣の報酬を基礎づける重要事項に関して数字に基づいた成果のレビューを行いリーダーの責任を明らかにする。
  • カラニック氏およびUberに関して運営の公正を確保するための独立の監視委員会および委員長職を設置し、また監査委員会の権限を拡大する。
  • カラニック氏および他の上級管理職にリーダーシップに関する広汎な研修を義務付ける。
  • ヒューマン・リソース・チームとその新たな目標についてカラニック氏および経営陣は公けの支持をさらに強める。

Uberは当面 CEOを欠いたまま新たな企業文化の建設という困難な(おそらくは長い)道に踏み出すことになった。

画像: Udit Kulshrestha/Bloomberg via Getty Images

〔日本版〕Uberとカラニックの進退問題についてはこちらの記事を参照。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Airbnbが社内にデータサイエンス大学を開校、非技術系一般社員も対象

テクノロジー企業と、最近ではますます多くの一般企業が、データサイエンティストの不足にあえいでいる。どの企業にも独自の雇用と教育の戦略はあるが、Airbnbはさらに一歩進んで、独自のコース番号までつけた、大学みたいな社員教育事業を立ち上げた。

そのData UniversityでもってAirbnbは、全社員を“脱データ音痴”するつもりだ。CourseraやUdacityのような一般的なオンラインコースでは、データとツールに関するAirbnb独自のニーズが満たされない。そこで同社はコースの設計から自社で取り組み、社員のニーズに合わせてそれらを3段階のコース番号レベルに分類した(下右図)。

100のレベルは、人事や企画の人たちも含め、全員が受講できる「データに基づく意思決定」。

中級クラスはSQLやSuperset(Airbnb製オープンソースのデータ可視化ツール)を勉強して、一般社員でもプロジェクトマネージャーになれる。上級のPythonや機械学習のコースでは、技術系社員がスキルをブラッシュアップする。

2016Q3に立ち上げたこの事業により、同社のデータサイエンスツールの各週のアクティブユーザー数がそれまでより30〜45%増えた。同社の500名の社員がすでに、少なくとも1つのクラスを受講している。まだ、全世界22のオフィスに全展開してはいない。

Airbnbはこれまで4度、データサイエンスの教育事業をトライしている。分析実験チームのプロダクトマネージャJeff Fengによると、その経験から得られた重要な教訓が三つある:

  • 誰もがとっつきやすいカリキュラムを設計すること
  • 上級管理職が部下部員に対してデータ能力の重要性/必要性を喚起すること
  • 成功を測る方法を見つけること

ほかの企業が社内でデータサイエンスのコースを立ち上げるときも、これらが参考になるはず、とFengは言う。この事業は、かつてGoogleを他から大きく差別化することに貢献した社内クラスを参考にしているようだ。Googleの場合は技術系のコースと一般コースの両方があり、データの視覚化も教えるし、簿記も教える。

Airbnbは、その初級データサイエンスクラスの開設にあたって、それが技術者だけを対象とするものではない、と訴え、そして、より本格的に技術を学びたい者のために今後もっと上のレベルの上級クラスをひらく、と声明している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ゲーム感覚で楽しめるオンライン学習アプリのSmartUpが550万ドルを調達

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2015年、私たちは新しいオンライン学習サービスに興味をそそられた。それはモバイル中心のサービスで、ユーザーを学習という「遊びに誘い込む」ものだった。それこそがSmartUp.ioのアイデアだ。SmartUpは、ポイント制のゲームで学習のインセンティブを引き出すモバイルアプリだ。彼らの初期のプロダクトは、控えめに言っても、優雅さを欠き、コンテンツが「軽い」と言わざるを得ないものだった。しかし、それでも彼らは前進するのを止めなかった。

同社は現地時間14日、Notion CapitalとHong Leong Group(東南アジア最大の金融グループ)がリードする調達ラウンドで合計550万ドルを調達したと発表した。本調達ラウンドにはその他にも、Michael Birch氏(Bebo創業者)、Luke Johnson氏、Barry Smith氏(Skyscanner)、Alex Asseily氏(Jawbone)、Ed Wray氏(betfair)、Simon Patterson氏(Silverlake)などの個人投資家が参加している。

共同創業者のFrank Meehan氏は、私にこう話してくれた:「私たちに声をかけてくれた企業は、私たちのマイクロ学習フォーマットに興味を持ってくれました ― しかし同時に、そこに自分たち独自のコンテンツを組み込むことはできないかという要望もありました。そこで、新しいP2Pマイクロ学習プラットフォームを開発することにしたのです。そこでは、参加者の誰もがみずからコミュニティを創設することができるだけでなく、インタラクティブなコンテンツのチャンネルをつくることが可能です。テキスト形式、クイズ形式、動画形式、投票形式など、その種類はさまざまです。私たちがつくった無料かつオープンなコンテンツコミュニティもある一方で、ユーザーである企業も、みずからプライベートなコミュニティをつくることができます」。

彼らの新しいアプリはここからダウンロードできる。その中から「Browse Communities」という項目を選べば、彼らが顧客として獲得した企業をいくつか見ることができるだろう。「Launch」を選べば、スタートアップ向けのオープンコミュニティの中身を見て、このアプリがどのようなものか体験することができる。

企業はこのアプリを利用して、社内教育プログラム、プロダクト教育プログラム、新入社員教育プログラム、セールス資料、コンプライアンス教育プログラムなどを作成することができる。また、SmartUpを社外用の「アカデミー」として利用する企業もある。SmartUpの顧客企業は、そのアカデミーを利用してプロダクトの詳細を顧客に教えているのだ。つまり、これまでのブログやPDFというプロダクト教育のフォーマットから、顧客からフィードバックを受け取ることも可能な、SmartUpが呼ぶところの「マイクロ学習フォーマット」に移行することができる。

Lesson.lyGrovoEdCastなどの企業が注目を集め、オンライン学習分野がもう一度ホットな分野になるなかで今回の資金調達が実現した。Lesson.lyは、SmartUpと同じように「マイクロ学習」技術を採用するトレーニングシステムを開発する企業だ。また、Grovoも同様のマイクロ学習システムを開発しており、独自コンテンツを製作できる機能に特化している。

「Dropbox Paperも将来的に競合サービスとなりうるでしょう。もし彼らのサービスに教育プラットフォームが加わることになれば、それは確実です。私は彼らがそうするのではないかと予測しています」とMeehan氏は語る。

オンライン学習がいま注目を浴びているのには、企業がフェイストゥフェイスのトレーニングからデジタルなプラットフォームに急速に移行しつつあるという背景がある。巨大なPowerPointファイルによって行う社員教育ではなく、彼らはマイクロ学習を望んでいるのだ。教育を受ける者にとってマイクロ学習は本質的に分かりやすいものであり、気軽なコンテンツに慣れた若い社員にはこの方が受け入れられやすい。

SmartUpへの出資者「Founders Forum」による起業に関する教育プログラムのような、ハイクオリティなコンテンツが同社のサービスに存在するという事実も、おそらく彼らを後押しすることになるだろう。他のプラットフォームはこの分野に目を向けていないことが多いからだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

ゲームのような社員教育プログラムのAxonifyが2700万ドルを調達

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最後に会社のトレーニングを受けた時を思い出してみてほしい。おそらく、そこから何かを学ぼうという気持ちよりも、早く終わってくれとイライラする気持ちの方が強かったのではないだろうか?(それは違うと言う人がいるとすれば、その人の気を疑ってしまう)。

JMI EquityBDC Capitalから2700万ドルを調達したAxonifyは、トレーニング受講者の負担を軽減しながら、それが生む成果を高めようとしている。あなたはどれくらい短いトレーニングを望むだろうか?Axonifyのプログラムは1日あたり3分のトレーニングで、しかもそれはゲームのようになっている。この時点ですでに、オフィスに座って受講する1時間のビデオ・レクチャーよりも魅力的に聞こえるのではないだろうか?しかし、ここまで聞いてまだ納得できないとしても、悪いのはあなたではない。

そもそも、なぜ社員を教育するコンテンツが必要なのだろうか。それを理解するためには何よりもまず、企業の導入例を見てみるのが良いだろう。自動車パーツ販売の全国チェーンであるPep Boysでは、職場での事故が原因で実際に毎年何百万ドルもの費用が発生していた。そのような費用は”OSHA(職業安全衛生法)”関連費用とも呼ばれている。このようなコストが発生するのを避けるのは簡単だ。もし従業員が謙虚にも、床にこぼれた油をそのままにしておいたら?

Pep Boysはまず、700店舗のうち20店舗にだけAxonifyを導入することにした。こうすることで簡単にこのツールの効果を測定できる。そのプログラムが完了したとき、Pep BoysはOSHA関連費用を1500万ドル削減することに成功しており、それどころか、万引きによる被害も2500万ドル減らすことができたのだ。

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Axonifyの興味深い特徴はおそらく、この教育プログラムは現在70代になるマーケッターの夫婦が考え付いたアイデアを元につくられたものだということだろう。OSHAのようなコストを削減するためにとった彼らの手法とは、従業員の心の中にある自意識過剰な部分を改めるというものだった。Axonify CEOのCarol Leamanは、このプロセスは3つのステップに分けられると説明している。

まず第一に、Axonifyのプログラムではコアとなるコンセプトが従業員ごとに最適化された間隔で何度も繰り返される。また、復習用のコンテンツが定期的に配信され、さらなる繰り返し学習で脳への定着を図る。最後に、Axonifyでは受講者からの回答とともに、その答えに対する受講者の自信の度合いも計測している。この背景にあるのは、答えに対する自信度と正解率との相関性を受講者に見せることで、自信過剰がどのような悪影響をもたらすのかということを学ばせるというアイデアだ。

Axonifyのゲームはどのようなデバイスでもプレイすることができ、PCからPOSデバイスまで様々な環境でプレイすることができる。Axonifyは昔ながらのアーケードゲームに似ているが、ゴルフゲームやCandy Crushのようなゲームを選ぶこともできる。

ゲームをプレイしている最中にキリのよいポイントまで到達すると、クイズが出題される。クイズの難易度や内容は従業員ごとにカスタマイズされている。クイズへの回答は強制ではないが、マネージャーはプログラムを管理するダッシュボードにアクセスでき、従業員のパフォーマンスを向上できる方法があれば、それを後から確認することもできる。

「従業員の教育という分野では、費用対効果を測定しにくいという問題がある」とJMI EquityのMatt Emeryは話す。

HRという分野には、問題に対する即効薬になると謳っている無数のサービスが存在していて、企業がそれに飽き飽きするのも無理はない。だが、LeamanとEmeryの両者は、Axonifyは他社の既存サービスに取って代わるものではないと主張している。繰り返しによって知識の定着力を伸ばすというコンセプトを社員教育プログラムに応用したものが、たまたま企業向けの教育プログラム市場には沢山あるというだけだ。

[原文]

(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter