eスポーツのコーチングアプリ「DOJO Madness」が600万ドルを調達

米国時間5日、オンラインゲーマー向けの分析/コーチングツールを開発するベルリンのDOJO Madnessが総額600万ドルを調達したと発表した。

これが本当にビジネスになるという「ばからしさ」はさておき(年老いた僕は、前々回のWorld of Warcraftの拡張パックがリリースされた頃にゲーミングを辞めた)、eスポーツビジネスは急速な成長を遂げている。僕たちの大統領に代わって言えば、このビジネスは「YUGE(トランプ流のhugeの発音)」だ。

今年、eスポーツの観戦者は世界中で4億人に達すると予測されており(これはアメリカの全人口より大きい数字だ)、熱狂的なファンからカジュアルな観戦者まで様々なタイプの人々がいる。しかも、DOJO Madnessが引用するNewzooの調査によれば、その数は今後3年で50%増加すると言われている。

今回の調達ラウンドをリードしたのは、米国の投資銀行The Raine Group傘下のRaine Venturesと、韓国のメッセージング・プラットフォームKakaoの投資部門であるK Cube Venturesだ。

既存投資家のMarch Capital、DN Capitalも本ラウンドに参加していて、今回調達した資金を含む累計調達金額は1275万ドルとなる。

Raine VenturesのBlair Ford氏は、「人気ゲームタイトルの学習曲線は非常に急なカーブを描きます。DOJOのプロダクトは、より良いゲーム体験とエンゲージメントをプレイヤーに与え、同時に、ゲーム配信会社にも大きな価値を与えるものです。豊かな経験と情熱を持ち合わせたDOJOと手を組むことができ、とても興奮する思いです」と語る。

DOJO MadnessはLeague of Legends、Overwatch、Dota2向けに自動化されたコーチングツールを提供している。それぞれのプロダクト名は、LOLSUMOOVERSUMODOTASUMOだ。また、同社はコーチング・マーケットプレイスのLeaguecoaching.ggを買収しており、プロフェッショナルゲーマー向けにトレーニングセッションも提供している。

これらプロダクトを見ても同社が合計1275万ドルを調達できたことを不思議に思っている読者に伝えておくと、彼らは大会に出場するチームやブロードキャスター向けにデータ分析ツールも提供している(対応ゲームはGlobal Offensive、League of Legends、Dota2)。

DOJO Madnessの創業は2014年。eスポーツのベテランでEsports LeagueのファウンダーでもあるJens Hilgers氏、Delivery Heroの共同創業者であるMarkus Fuhrmann氏、元Red Bull Mediaのデジタルマーケッターで自身のエージェンシーを立ち上げた経験をもつChristian Gruber氏の3名が創業者だ。

[原文]

(翻訳: 木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

ファイナンスプラットフォーム提供の「エメラダ」がシードラウンドで2億円を調達

ファイナンスプラットフォームの提供を計画しているFintechスタートアップ「エメラダ」がシードラウンドで2億円の資金調達を実施したことをTechCrunch Japanへの取材で明らかにした。この投資ラウンドをリードしたのはD4V(Design for Ventures)で、大手金融機関、金融業界関係者など個人投資家なども含まれるという。

2017年中にエクイティーとデットで2つのサービスを目指す

エメラダは2017年中にエクイティーとデットで2つのサービスのローンチを目指している。

1つはエクイティー(株式)によるファイナンスプラットフォーム。スタートアップ企業と個人投資家を結び、1件あたり数千万円の資金調達のマッチングを行うもの。もう1つのサービスは機関投資家を対象にしたP2Pによるデットファイナンス(借入)のプラットフォーム。いずれのサービスも2017年中のサービスインに向けて準備中だという。

TechCrunch読者なら「日本版AngelList」と言えば分かりやすいかもしれない。ただ、多数の個人投資家に生株を渡してしまうと株主にしても投資を受ける企業にしても、株主総会の対応などが頻繁に生じるため現実的な仕組みとして回らない。この辺りのスキームは現在の金融商品取引法および会社法の枠内でできる方策を当局と議論中という。シードより少し後のステージのスタートアップの資金調達を扱い、1口あたりの投資額は50万円となる可能性が高いという。取扱対象となるスタートアップ企業は、IPOやM&Aなど明確にエグジットを意識している企業で、「ある程度セレクティブなものになるだろう」(エメラダ澤村帝我CEO)という。スタートアップの資金調達需要のどの辺りを取り込むのかという質問に対しては、「シリコンバレーでAngelListFundersClubが活用されているように、大きな調達ラウンドにジョインするだけではなく、ブリッジファイナンスをまかなうなどシリーズAクランチの回避を仕組みでサポートしたい」としている。こうした調達プラットフォームがもし普及すれば、ハンズオンVCを補完するプラットフォームとして機能していくことになるだろう。

もう1つのデットによるP2Pファイナンスは、従来からあるソーシャルレンディングとは異なるものになると澤村氏は言う。「金融機関出身の人間としては本丸はそこではない思っています。機関投資家が貸出しているところを早く簡単にできるようにするのが狙いです。(ソーシャルレンディングのような借り手の)匿名性よりも、むしろ見える化したい。リスク・リターンの情報開示をしっかりやって機関投資家を相手にビジネスにしていく」(エメラダ澤村CEO)。

大切なのは「プロのお金」が還流すること

「P2P」とか「プラットフォーム」という言葉を聞くと、個人を含む多くのプレイヤーが参加可能なものを想起する人もいるだろう。ぼくは「民主化」というキーワードを思い浮かべた。ただ、エメラダは民主化ということに力点を置いていないそうだ。実際、先行する英米のサービスには、Funding CircleLendingClubなど色々あるが、澤村氏によれば、これらのプラットフォームでも機関投資家からの資金が大半というところが増えているのが現状だそうだ。また、個人をプラットフォームに載せようと考えると「ユーザー獲得単価(CPA)が高くなる」、「一定規模になるとスケールが難しい」、「コンプライアンス・リスクがある」(個人を対象にする以上は機関投資家相手以上にシッカリした情報開示が必要)などといったこと難しさもある。

「長い目でみれば個人がお金を動かす時代が来るかもしれません。ただ、アメリカですら(資金調達プラットフォームが)機関投資家へシフトしていることを考えると楽観的に考えても日本では、これは20年はかかる話。それよりも、事業者に対して最適な形で資金還流がなされることが大切。経済にとっては流れるべきところに適切な方法で流れていないのが課題なので、大事なのはプロのお金。われわれは融資先の発掘、選別、リスク評価の機能を充実させて既存の金融機関を支援します。審査モデルとシステム構築の方向性については、金融機関の融資企画や審査部門で経験が長い専門家などと協議をしながら決めています」(エメラダ澤村CEO)。

低金利時代に多くの営業員を抱えて収益を圧迫される金融機関に対して、テクノロジーを活用した案件発掘や審査の機能をオンラインで提供し、そこに対して投資家として既存金融機関にも入ってもらう、というのが狙いだそうだ。

エメラダの潜在利用ユーザーの企業に対しては、事業の中身も含めて資金に関する悩みや課題を解決するという意味で、これまで銀行、税理士・会計士、証券会社とバラバラに行く必要がる現状に対して、ワンストップとなるような「ファイナンスのアマゾン」を長期的には目指したい、と澤村CEOは話している。

澤村CEOは慶應義塾大学出身で、エメラダ創業前は野村證券、ゴールドマン・サックス証券の投資銀行部門で企業買収や資金調達の助言業務に携わっていたそうだ。現在エメラダのマネジメントチームは同じくゴールドマン・サックス出身のメンバーのほかに、ソニーでPS VRの開発をしていたエンジニアなどが参画している。

「トルコのStripe」、lyzicoがシリーズCで1500万ドルを調達

Eコマースサイトにオンライン決済機能を提供するトルコのフィンテック企業、lyzicoがシリーズCラウンドで1500万ドルを調達したと発表した。うち1200万ドルは今年初めに発表されていたものだ。

今回のラウンドにはロンドンを拠点とするVCのAmadeus Capital Partnersが加わり、300万ドルを出資している。ファーストクローズをリードしたのはVostok Emerging Financeで、その他にも既存投資家の数々、International Finance Corporation、そしてイスタンブールを拠点とするVCの212が本調達ラウンドに参加した。

「トルコのStripe」と称されることもある同社。サンフランシスコを拠点とする決済分野の有力企業であるStripeの潜在的な競合となりうる存在だ。しかし、Stripeは現在トルコでは事業を行っていない。lyzicoのターゲットはEコマースサイトなどのオンラインビジネスであり、同社はディベロッパーフレンドリーなプラットフォームを通して顧客に決済機能を提供している。

同社によれば、彼らのプラットフォームは24時間以内に導入可能で、PCI-DSSとBRSA(Banking Regulation and Supervision Agency)に準拠したセキュリティ性を備えている。2013年のローンチ以降、同社のプラットフォームは1万以上のオンラインビジネスに導入されており、登録アカウント数は20万を数える。

Amadeus Capital PartnersのJason Pinto氏はリリース上でこのようにコメントしている:

「トルコの急速な経済成長は力強い個人消費によって支えられています。そして、そのほとんどがクレジットカード決済によるものです。そのため、企業は洗練されたカード決済システムを用意し、そのニーズに応えなければなりません。モダンでかつ簡単に導入でき、急速に進化を遂げる決済システムをもつlyzicoに期待しています」。

[原文]

(翻訳:木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

自動コードレビュー「SideCI」提供のアクトキャットが2.1億円の資金調達

開発中もしくは運用中のソースコードを定期的にチェックしてコード品質の維持に貢献するサービス「SideCI」を提供するアクトキャットが今日、2億1000万円の資金調達を発表した。第三者割当増資によるもので、SBIインベストメント、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、KLabベンチャーパートナーズ、コロプラネクストが本資金調達ラウンドに参加している。アクトキャットは2012年創業で、これまで2016年3月の数千万円規模の資金調達を含めて、YJキャピタル、ベンチャーユナイテッド、インキュベイトファンドなどから累計で2億8600万円の資金を調達している。

SideCIは継続的インテグレーション(CI)と呼ばれているサービスに類した開発者向けのサービス。コーディング規約違反がないか、セキュリティーやパフォーマンス上、好ましくない書き方をしていないかなどの、いわゆるコードレビューを自動的にクラウド上(GitHub)で行うもの。アクトキャットによれば、このコードレビューは開発プロセス全体の15%を占めているという。現在対応しているプログラミング言語はRuby、PHP、Python、Goで、今後はJava、Swift、Scalaもサポート予定。利用料金は無料のお試しサービスをのぞくと、3つのプライベートレポジトリに対応する「マイクロ」で月額3200円から。SideCIは現在、日本、米国、ベトナムに顧客がいる。日本ではクラウドワークス、ピクスタ、VASILY、Life is Tech!、エネチェンジなどが課金ユーザーだ。また、SideCIは第2回Ruby Biz グランプリ 2016で特別賞を受賞している。

アクトキャット創業者でCEOの角幸一郎氏は、今回の資金調達を元にSideCIのグローバル市場への展開を加速すると話している。機能的には2016年8月には「負債カンバン」をリリースしているほか、現在はソースコード解析ツールの内製を進め、このツールのオープンソースコミュニティーへの貢献を行っているそうだ。SideCIはレビューに対しユーザーからのフィードバックを受けることができるようになっていて、今後は開発者たちから寄せられる内容をもとにレビュー内容自体を改善していく計画だそうだ。

就農プラットフォーム「LEAP」、運営元がグリーVや寺田倉庫、三菱UFJから3億円を調達

2016年に200万人を割り込むなど、年々減り続けている国内の就農人口。この事態に歯止めをかけるべく、農林水産省が旗振り役となって青年等就農計画制度や青年就農給付金といった支援制度をつくり、若者の就農人口を増やそうとしている。だが農業を始めるハードルは高く、思うように若者の就農人口は伸びていない。

そんな課題に着目し、解決しようとするサービスがある。それが「LEAP」だ。同サービスを展開するseakは4月3日、グリーベンチャーズ寺田倉庫三菱UFJキャピタルを引受先とした第三者割当、日本政策金融公庫農林水産事業の「青年等就農資金」を活用し、総額約3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

同社は2016年9月1日に寺田倉庫、三菱UFJキャピタル、個人投資家らを引受先とした総額6000万円の資金調達を実施。今回が2度目の資金調達となる。今回調達した資金は、LEAPの栽培検証のさらなる体制拡充と、フランチャイズモデルを開始する為のシステムを含めたプラットフォームの機能改善・拡充に充てる予定だという。

新規就農者に生じる課題をワンストップで解決する

LEAPは農地の確保から販路の開拓に至るまで、農業に必要な機能を全て提供する垂直統合型の農業プラットフォーム。通常、就農を希望する人はまず最初に各自治体で2年間ほどの農業研修を受けなければならず、研修後も耕作放棄地しか紹介してもらえなかったり、施設や機材を購入するのに融資が下りなかったりと、クリアすべき課題が非常に多かった。

そんな課題をLEAPはワンストップで解決してくれる。例えば研修に関しては、運営元であるseak代表取締役の栗田紘氏が研修済み農家として神奈川県藤沢市の自治体に登録されており、この傘下で就農するLEAPでは研修を受ける必要がない。また、LEAPで押さえている農地を借りることができるほか、seakを担保にして施設や機材を融資してもらえる。ただし、ホームページを見る限り、栽培できる野菜は現在トマトとキュウリに限られているようだ。

昨今、クラウドやIoTを活用した「農業×IT」のサービスが主流となっているが、なぜ栗田氏はLEAPを立ち上げることにしたのだろうか? 栗田氏はこう語る。

「自分も最初は農業×ITのサービスを考えていました。ただ、クラウドやIoTを活用したサービスで効率化できるのは農業のほんの一部分。このままでは農業を始めるハードルは下がらないし、若い人は絶対にやりたいと思わない。だからこそ、農業を始めるにあたって生じる課題をワンストップで解決できるサービスを提供すれば、若い人の就農人口も増えると思ったんです」(栗田氏)

LEAPは2016年9月1日に一般公開。栗田氏によれば、この半年間で12人が新規就農者となり、野菜の出荷に至っているという。

美味しい野菜の栽培を、より簡単に

また、seakは今回の資金調達の発表に併せて、LEAPの機能の拡張も発表している。神奈川県藤沢市から法人としては初の認定新規就農者の認定を取得したほか、独自のビニールハウス供給体制を確立したことで、既存より43%安い価格(seakの調査結果)にて施設一式を提供してもらえる。

農業を始めるハードルを低くしても、良い野菜を栽培できなければ、途中で離脱していってしまうだろう。だからこそ、LEAPは準備の段階だけでなく、栽培から販売までのステップも徹底的にサポートする。

調達に伴い新たに最高開発責任者(CDO)が就任し栽培検証体制の強化を図るほか、農作業のやり方を予習・復習できるオンラインコンテンツを提供するほか、何か異変があった際に写真と一緒にLEAP栽培管理本部に相談できるチャットツール、リアルタイムにデータを取得出来るセンサーなどを実装した栽培管理システムを構築。栗田氏は「経験や勘に頼ることなく、誰もが一定の基準の野菜を作れるようになっている」と語る。

生産された野菜は「ゆる野菜」という独自ブランドのもと、百貨店地下にある都心の高級スーパーで販売。都心の高級スーパーへの販路を開拓することで農家は薄利多売にならずに済む。また、朝収穫した農産物を昼に店舗に直接出荷する配送の仕組みも構築されているので、消費者は新鮮で美味しい野菜を手にすることができる。

2018年度中にフランチャイズモデルを展開する予定

現在、神奈川県藤沢市に限定して展開されているLEAPだが、今後は2018年度中を目処にフランチャイズモデルの展開にも着手する。

「この半年間運営してみて、想像以上に全国から問い合わせをいただきました。就農人口をさらに増やしていけるよう、全国、アジアを視野に入れてフランチャイズモデルを展開していこうと思います」(栗田氏)

具体的には農地斡旋、資金融資、栽培、販売といった各ステップに手数料を設定することで、利益が得られる仕組みにしていく予定だそうだ。また栗田氏によれば、フランチャイズモデルの展開と同時期に、第一勧業信用組合と提携して開発した、農業を始める際の初期費用を工面するLEAP独自のローンメニュー「LEAPスタートローン T」の提供も予定しているという。

AI開発の「カラフル・ボード」が新たに8億円調達、アパレル企業のDM個人化で来店6割増も


カラフル・ボード
は人工知能でスタイリングを提案するアプリ「SENSY」などを手がけているが、今度はアパレル企業と組み、ファッションアイテムの需要予測やマーケティングを支援するという。カラフル・ボードは本日総額8億円の第三者割当増資を発表した。引受先は、はるやまホールディングスTSIホールディングスVINXの3社で、調達額8億円のうち1億円は日本政策金融公庫からのデットファイナンスだ。また、この3社とは戦略パートナーとして業務提携も締結している。

カラフル・ボードは2011年11月に設立した慶応大発のAIベンチャーで、ユーザーの好みにあったファッションアイテムやコーデを提案するSENSYアプリなどを提供している。2015年5月にはACAから総額1.4億円を調達し、2016年10月には慶應イノベーション・イニシアティブから5000万円を調達した。

法人向けサービスとしては三越伊勢丹ホールディングスと「人工知能接客サービス」プロジェクトを立ち上げたほか、ECサイト向けにユーザーのファッションの好みに合わせて商品を提案するレコメンドエンジンなども提供している。ファッション以外の分野では三菱食品と提携し、個人の食品の好みを解析する「グルメ人工知能」の開発も行っている。

今回の調達ラウンドに参加したはるやまホールディングス、TSI、VINXともアパレルに関連した企業で、各社とは以前より新たな人工知能サービスの提供に向けて取り組みを行っていたという。それらの成果が出てきたことから今回の出資につながったとカラフルボードの代表取締役CEOを務める渡辺祐樹氏は説明する。

はるやまホールディングスはスーツをはじめとする紳士服を扱う企業で、SENSYとはユーザーの好みを解析し、その好みを反映したDMを送付する「パーソナライズDM」の取り組みを実施した。2016年11月に4万4000枚のパーソナライズDMを送付した結果、来店数は通常のDMを送付した時よりも58.7%多く、売上としては2000万円以上の増加に貢献したという。

パーソナライズDMのサンプル。カスタマーごとに表示する商品や並び順が異なる。

TSIは「ナノ・ユニバース」など37のブランドを持ち、約1400店舗とECサイトを運営しているアパレル企業だ。アパレルのビジネスではトレンドを捉えた上で商品の需要を予測し、最適な量の商品を仕入れるのが大事だ。過剰に仕入れれば不良在庫になり、足りなければ販売機会を失う。カラフル・ボードは人工知能でこれまでの販売データを解析し、細かく需要予測を算出するソリューションを提供したい考えだ。

最後にVINXだが、彼らは店舗向けのPOSシステムなどを提供している。カラフル・ボードは彼らのPOSシステムから得られる購買履歴のデータを活用して、接客や販売に役立てるサービスを提供するという。

「アパレル業界で展開している各ソリューションを本格的にグロースさせるタイミングに来ました」と渡辺氏は説明する。調達した資金は、各ソリューションの拡充に力を入れていく予定だ。ゆくゆくはそれぞれのソリューションを連携させ、より正確な接客販売時の提案、需要予測、マーケティングを実現していくと話している。

飲食店向け食品EC「八面六臂」が総額2.4億円の資金調達、物流システムを整備し事業拡大へ

飲食店向けの食品EC事業を手がける八面六臂は3月31日、SMBCベンチャーキャピタル、 SBIインベストメント、 池田泉州キャピタル、 三生キャピタル、 他個人投資家を引受先とする第三者割当増資により、総額2.4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。評価額、出資比率等は非公開。今回調達した資金を元に、同社がこれまで構築してきたフルフィルメントやロジスティクスの強化とともにWEBマーケティングの強化にも取り組んでいく。

同社はこれまで2013年10月にバリュークリエイト、ベクトル、ウインローダーの3社から総額1億5000万円、2014年7月にリクルートやYJキャピタル、DeNA、マネックス・ベンチャーズなどから総額4億5000万円の調達を実施している。非公開のものも含めて、今回の増資により累計調達額は約11億円となる。また今回の資金調達ラウンドにおいて、5月末までに総額5億円の調達を目指すとしている。

力を入れてきた物流システムの仕組みが整ってきた

八面六臂は2007年5月の設立。2011年4月より1都3県の飲食店に向けた食品EC事業を展開している。 中央卸売市場経由の仕入れだけでなく、 全国の産地市場や生産者からの独自仕入れを構築することで無駄なコストを削減。高品質な食品を低価格から購入できるのが特長だ。

以前TechCrunch Japanでは「鮮魚版Amazon」と紹介したように当初は水産物を対象としていたが、現在は青果や精肉、加工品など提供商品のラインナップを拡充。中小規模の飲食店を中心に、登録利用店舗数は3500店舗を超える。

そんな同社がここ数年力を入れてきたのがフルフィルメントやロジスティクスといった物流システムの強化だ。2016年の1月には八面六臂物流を設立し、それまで構築してきた物流機能を集約。同年4月にはヤマトグループのエキスプレスネットワークとも資本業務提携を実施し、配送管理システムの強化に取り組んでいる。

同社の代表取締役の松田雅也氏によると、倉庫内管理システムや配送管理システム、 顧客管理システムを社内開発することに加え、「決済の面でも他社が簡単には真似できない仕組みを作り上げてきた」という。

生鮮食品の仕入れとなると、中小規模の飲食店であっても取引額が高くなりやすく、店舗あたりで100万円を超えるようなことも珍しくない。そのような場合クレジットカードで決済することは難しく、申込書を書いて印鑑を押して提出するといった紙ベースのやりとりが基本だったという。

「それではECに向かないし、お客さんの使い勝手も悪い。そこで2016年の4月にBtoBの掛売りサービスを手がけるラクーンと提携して与信管理や債券の流動化の仕組みをつくり、より使いやすい決済の仕組みを構築してきた」(松田氏)

松田氏によると「前回の資金調達以降は苦しい時期もあり、試行錯誤を重ね続けた日々だった」というが、ここ数年で時間をかけて作り上げてきた物流システムがようやく形になり、伸びてきていることから今回資金調達を実施。今後は1都3県の飲食店に向けた食品EC事業のマーケットシェアを伸ばしつつ、アジアを中心とした海外展開も検討していくという。

不動産スタートアップのiettyがセンチュリー21・ジャパン、伊藤忠と資本業務提——2.5億円を調達し全国展開へ

左からセンチュリー21・ジャパン代表取締役社長の長田邦裕氏、ietty代表取締役社長の小川泰平氏、同取締役COOの内田孝輔氏、伊藤忠商事 建設物流部門 主任の堀慶太氏

チャットUIを用いたオンライン不動産仲介サービス「ietty」を展開するietty。1月にはチャットUIとAIを用いた接客サービスの導入・運用支援ソリューションの提供を発表した同社だが、今度は全国展開を見据えた第一歩を踏み出した。同社は3月30日、センチュリー21・ジャパンおよび伊藤忠商事との資本業務提携を行ったことを明らかにした。資本提携では、2社を引受先にした総額2億5000万円(センチュリー21が2億円、伊藤忠が5000万円)の第三者割当増資を実施している。

センチュリー21は世界最大級の不動産ネットワークである「センチュリー21」の日本本部として、国内に900店舗のフランチャイズ事業を展開している。不動産各社がそうであるように、同社も不動産テックの領域に挑戦。これまで営業支援向けクラウドの開発やマンションの自動査定システムなどへの投資を進めてきた。AIやビッグデータの活用などを視野に入れていたが、今回の提携もその延長線上にある話だという。今後はiettyが展開するチャットUIによる接客サービスの導入を進めるほか、iettyが研究中だというAIを活用したサービスの展開も視野に入れる。センチュリー21は不動産の売買仲介と賃貸仲介を展開しているが、ビジネスの中心となっているのは売買仲介。今回の提携を契機に賃貸仲介のサービスのテコ入れを図る。

ではiettyとして狙うことは何かというと、サービスの全国展開だ。iettyは現在、首都圏と関西圏のみでサービスを提供している。だがセンチュリー21のフランチャイズ店舗と組むことで、全国へのサービスを提供していく。具体的には、iettyが提供するチャット接客サービスをセンチュリー21が導入。賃貸仲介を希望するユーザーの対応をietty側で行う。そして現地での見学や契約については各地にあるセンチュリー21のフランチャイズ店舗が対応するというスキームを展開する予定だ。「東京や大阪でのiettyのサービスは順調。今度は面を増やしていきたいが、現地で拠点を構えて、採用して、というのはスタートアップ単体では難しい。iettyのコアコンピタンスはチャットUIを通じたオンラインでの接客業。一方で足回りはコストがかかるので、誰かと組む必要があった」(ietty代表取締役社長の小川泰平氏)

なおこのチャット接客事業、IDOMに次いで大手家具ECやスポーツ系ECなどからも問い合わせが来ており、今春にも1社導入が開始される予定だという。
iettyでは、賃貸物件の独自データベースの構築も検討中だという。「iettyは(チャットUIで得たビッグデータという)不動産の評価データをためることができる。それを元に、物件に対するフィードバックが可能なデータベースを1年がかりで作ろうとしている。『物件が埋まらない』と話す大家に対して、どんな理由があるかをフィードバックできるようになる。センチュリー21には『21クラウド』と呼ぶ独自の物件データベースもあるので、繋ぎ込みもしていきたい。賃貸仲介は価格競争になりがち。だが、この領域のトランザクションを押さえて上の領域、つまり不動産の管理や売買仲介などにも挑戦していきたい」(小川氏)

 

Dropbox、6億ドル融資枠確保との報道

大型ユニコーン企業の一つ、Dropboxは素早いキャッシュ調達を必要としているようだ。Bloombergの最新の記事によれば、同社は6億ドルの融資枠を確保したという。これはDropboxが上場する前の最後の「資金調達」になるかもしれない。

Bloombergによれば、Dropboxは今年末の上場を計画しているという。ただし、 われわれの得ている情報ではこのスケジュールはまだ確定したものではない。

いずれにせよ、この6億ドルの使いみちはというと、まず第一には資金繰りに余裕をもたせることだろう。Dropboxが深刻なライバルに成長しそうな相手を買収するなど突然の資金需要が生じた場合に備えてのことだ。

次に、上場における選択肢を拡大できる。Dropboxは融資枠の確保により、上場を多少先延ばしできる。早めの上場を行えば融資枠に手を付けずにすむかもしれない。

どちらにせよ、Dropboxはフリー・キャッシュ・フローを増大させることができる。同社は通年ベースで10億ドルの収入を見込んでいるという。これは悪くない数字だ―驚異的ともいえる。

Dropboxは大企業をユーザーとして有利な契約を得つつ、独自のクラウド・インフラを構築してコストの削減に努めている。同社は以前はインフラとしてAWSに大きく依存していた。その後Dropboxは独自のデータセンターを建設している

Snapはこれと反対のアプローチを取り、Googleのクラウド・インフラに向こう5年間で20億ドルを支出する予定だ。Snapの上場申請書にこの点はリスクとして記載されていた。Dropboxが独自のインフラを所有することは同社に対する投資家にとって有利な条件となる。

Dropboxは融資の一部をインフラ投資に充てることもできる。自らインフラを所有することは有利だが、巨大な資金を必要とする事業だ。

JPMorgan、Bank of America、Deutsche Bank、Goldman Sachs、Macquarie、Royal Bank of Canadaなどの銀行が今回の融資枠を提供する。上場にあたってはこれらの金融機関のどれかが幹事を務めることになるかもしれない。Dropboxとしては有利な条件を交渉中なのだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

AIを用いたタブレット学習教材「Qubena」提供元が総額2.2億円の資金調達、対応教材の拡充へ

人工知能を用いたタブレット学習教材「Qubena(キュビナ)」を提供するCOMPASSは3月29日、7人の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により総額2.2億円の資金調達を実施したことをあきらかにした。同社はこれまで、2015年6月にインフィニティ・ベンチャー・パートナーズと個人投資家から4000万円を調達している。

Qubenaは生徒がタブレットに入力する「解答」やそれに至るまでの「プロセス」といった学習に関するあらゆる情報を収集し解析することで、個々に最適な指導を行っていくことを目指す人工知能を用いたタブレット教材。1人の先生が多数の生徒に授業をする従来のスタイルでは難しかった「1人1人の理解度に合わせた授業や問題の提供」という課題を、テクノロジーとタブレットを駆使することで解決しようというサービスだ。

現在は数学・算数に特化して提供。中学生向けの数学教材に加え、2017年3月30日から小学校高学年(4年生〜6年生)向けの算数メニューを新たに提供開始。今後は2017年夏の提供を目標に小学校低学年向け、高校生向けの教材も開発を進めていく。

同サービスは自社で展開している学習塾「Qubena Academy」のほか、全国の学習塾でも徐々に導入が進んでいるという。

COMPASSによると「教育の現場では、高校生で7割、中学生で5割、小学生で3割の生徒が授業内容を理解できておらず、特に積み重ね学習が重要な算数・数学は理解の遅れを取り戻すのが難しい」現状があるという。本来であればつまずいた箇所についてマンツーマンで指導を受けるのが理想だが、人件費などの事情もあり対応が難しいのが実情だ。

同社は設立後、自社で学習塾を運営していたがこの課題に問題意識を持ち、Qubenaを開発。さらに同サービスを活用しマンツーマン指導を低コストで行うQubena Academyを開校するに至った。同校に通う生徒は、中学3年間の数学の学習範囲を、平均でわずか9ヶ月で修了しているという効果もでているそうで、今後もサービスの改善や対応する教材を増やしながら「子供たちが効率的に学習を進めて行ける環境」を整えていく。

COMPASSは2012年12月の設立。代表取締役の神野元基氏はシリコンバレーで感情センシングサービスを開発するスタートアップを起業したのち、日本でCOMPASSを創業した。

知財の可視化、活用を目指すゴールドアイピーが1億2800万円を調達

法律というと難しいイメージがあるが、どの企業にとって知的財産を守ることは重要な課題だろう。ゴールドアイピーはそうした知的財産に関連する課題を解決しようとしているスタートアップだ。3月21日、ゴールドアイピーは総額1億2800万円の第三者割当増資を実施した。引受先は未来創生ファンド、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、三生キャピタルだ。

「日本には優れた技術が多くありますが、知的財産を有効活用できていません」とゴールドアイピーの取締役社長を務める白坂一氏は説明する。ゴールドアイピーが目指すのは、「日本発のイノベーションを世界に届ける」ことで、そのためにいくつかのサービスを展開している。最も注力しているのは、知的財産の特許を取得をサポートする「IP Direct」と取得した特許を有効活用するための「IP Cognitive」だ。

「IP Direct」は日本企業が海外での特許出願をサポートするサービスだ。海外で特許を取得する場合、海外の現地法律事務所に特許出願を依頼するが、言語や手間の問題から日本の法律事務所を介して海外の法律事務所に特許出願を依頼することが多かった。日本の法律事務所を通す分それだけコストもかかる。大企業ならまだしも、スタートアップや中小企業がこの方式で特許を取得するのは難しい。IP Directはこの問題を解決するため、特許を出願したい企業と世界中の弁護士や弁理士をつなぐ。ゴールドアイピーは国際法律事務所のDLA Piperをはじめ、複数の弁護士事務所と提携していて、利用企業は適任の弁護士や弁理士を選んで特許出願を依頼できる。また、弁護士や弁理士とのやりとりにもIP Directの専任のコンシェルジュが翻訳などでサポートし、この一連のやりとりはIP Directの専用コミュニケーションツールを使用するという。初期費用は5万円で、別途弁護士や弁理士への依頼費用がかかる。

一方、「IP Cognitive」は知的財産の可視化と人工知能の解析により、知的財産の活用を促進するサービスだ。特許の活用と言うと自社の特許を侵害している企業を見つけて訴えるといったユースケースが思い浮かぶが、それ以外にも知的財産を活用することができると白坂氏は説明する。例えば、開発したものの使っていない技術の特許を取得していれば、それを欲しがっている会社に売却したり、ライセンス提供したりすることができる。ゴールドアイピーは企業の知的財産の取得から可視化、収益化までサポートしたい考えだ。

今回調達した資金ではプロダクト開発やプロモーションに充て、各サービスを広めていく計画だと白坂氏は話す。

白坂一氏はゴールドアイピーを2015年9月に設立した。白坂氏は防衛大学校を卒業後、横浜国立大学院で人工知能による画像解析を学んだ。その後富士フイルムの知的財産本部に8年務め、弁理士資格を取得している。2011年に白坂国際特許事務所(現特許業務法人白坂)を開設した。

 

レシピ動画メディア「kurashiru」運営のdely、総額30億円の資金調達

dely代表取締役の堀江裕介氏

レシピ動画メディア「kurashiru [クラシル] 」を展開するdely。2016年11月に5億円の資金調達を発表したばかりの同社が、続けて大きな資金調達を実施した。

kurashiru [クラシル] のアプリ

同社は3月27日、ジャフコ(ジャフコSV5共有投資事業有限責任組合、ジャフコSV5スター投資事業有限責任組合、YJキャピタル(YJ2号投資事業組合)、gumi ventures(gumi ventures 2 号投資事業有限責任組合(所在地:東京都新宿区、無限責任組合員)、Das Capital(連続起業家である木村新司氏の投資会社)、佐藤裕介氏(フリークアウト・ホールディングス代表取締役社長)ほか既存投資家、個人投資家を引受先とした総額約30億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

既報の通りだがdelyは2014年2月の設立。当初はフードデリバリーサービスを展開していたが間もなくキュレーションメディア事業にピボット。2016年初からは動画コンテンツに注力し、その中でも成長の兆しが見えた料理レシピの領域に注力した。

もともとはFacebookやInstagramなどのソーシャルメディアでの動画配信を中心とするいわゆる「分散型メディア」としての動きを強めていたが、現在では自社アプリでも動画コンテンツを配信している。アプリのレビューは1万2000件、平均スコアは5点満点中4.9点。Google Play「ベスト オブ 2016日本版」の「ベスト自己改善アプリ賞」を受賞。また3月にはApp Store Japanの総合ランキング1位獲得も獲得したという。

delyは今回の調達にあわせて「長期的にはグローバル展開も考えられ、国内レシピ動画市場の開拓と併せて推進していく予定」だとしている。また料理動画の周辺事業をはじめとした新規事業を展開するほか、M&Aにも積極的に進めるとしている。

会議室シェアリング「スペイシー」が2億円調達、運用代行サービスも提供

民泊やライドシェアなどが普及し、シェアリングエコノミーが身近になってきているが、職場の会議室もいずれはシェアするものになるのかもしれない。会議室のシェアリングサービスを展開するスペイシーは本日、ニッセイキャピタルおよび既存投資家のフリービットインベストメントらを引受先とし、総額2億円の第三者割当増資を実施した。また、調達と同時に4月より新たに会議室の運用代行サービス「だれでも会議室」を提供すると発表した。

スペイシーは遊休スペースを会議室として一般ユーザーに貸し出せるシェアリングサービスだ。ユーザーはスペイシーのサイトから会議室を利用したい地域や時間帯、無線LANやホワイトボードなどの使いたい設備から検索することができる。場所にもよるが、利用料金は1時間500円程度から利用できる。これまでに登録されている会議室は首都圏ビジネス街を中心に2000室になり、これまでに60万人以上が利用したという。

今回の資金調達は、プロダクト開発や人材採用に充てるとスペイシーの代表取締役を務める内田圭祐氏は話す。特にスペイシーの会議室の登録物件を増やすことに注力していく計画で、本日発表した「だれでも会議室」サービスはそのための施策だという。「だれでも会議室」は物件オーナーや企業向けにWiFiや什器といった備品の提供から運営代行、保険までカバーした会議室の運用代行サービスだ。賃貸で物件を借りている企業や個人には、物件オーナーから貸し会議室として運営する許可を得るところからスペイシーで担うという。

会議室運用を始める際に一番のハードルとなっているのがこの物件オーナーへの説明と交渉と内田氏は説明する。物件オーナーから許可を得ることを手間に感じるユーザーが多く、そこで会議室運用を諦める人も多いのだそうだ。スペイシーは「だれでも会議室」でそうしたユーザーの代わりに物件オーナーにサービスの内容やリスクを丁寧に説明し、理解してもらった上で許可を得られるようにするという。

今後の事業展開としてはC2Cのサービスのみならず、法人向けにもプランを提供していきたいと内田氏は言う。今後ビジネスパーソンのリモートワークが進み、貸し会議室を利用する機会も増えるだろう。リモートワークを取り入れる企業が社員のために外で利用できる会議室をいくつか確保し、社員らが自由にいつでもどこでも会議室を利用できるようにするプランをスペイシーで提供したいと内田氏は話す。

スペイシーは2013年10月に設立し、2016年4月の調達ラウンドで複数の投資家から数千万円規模の資金調達を行った。また、スペイシーは2016年11月に開催したTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルには、広告スペースと広告主をマッチングするアドスペイシーというサービスで参加した。このアドスペイシーに関しては、広告の掲載店舗の開拓に動いているところと内田氏は話している。

90秒で相手に興味を持たせるピッチとは―、投資家からCEOへのアドバイス

【編集部注】Vitaly M. Golombは、HPのベンチャー投資部門HP Tech Venturesで、世界各地の企業に対して投資を行っている。以下は、企業を成長させる上での彼のアドバイスをまとめた本『Accelerated Startup』から、Golombが大好きなピッチに関する箇所を抜粋したもの。


私がイベントで話す姿を見たことがある人は、恐らく私のピッチに対する興奮や情熱についてご存知だろう。素晴らしいピッチはビジネスのさまざまな場面で役立つと私は信じていて、それこそが私のピッチに対する熱い思いの理由なのだ。企業のCEOであるあなたは、日夜ピッチし続けることになる。90秒間の短いエレベーターピッチ。デモデイやコンテストでの3〜6分間のピッチ。さらには至高の目標である、VCのオフィスで30〜60分間に渡って自分たちが関わってくるであろう未来について説明するためのピッチ。素晴らしいプレゼンターになるためには、それなりの鍛錬が必要になってくるし、私もピッチの練習には十分な時間をかけるよう勧めている。だからといって、練習不足が完全なる失敗に終わったピッチの言い訳になるわけではない。

まず、ピッチとは何なのかについて考えてみよう。個人的には、ピッチとは人に具体的なアクションを起こさせるための話だと私は考えている。聞き手から何かを引き出したいからピッチをするのだ。求めているものはアドバイスかもしれないし、相手のビジネスかもしれないし、(私たちがこの章でフォーカスすることになる)投資かもしれない。今後何を求めてピッチをするかに関わらず、CEOのあなたは既にたくさんのピッチをしているということを知っておいてほしい。恐らく起業しようとしたときには、スタートアップと呼ばれる狂気の沙汰のようなものを始めるのが意味あることだと、友人や家族、パートナーを説得したことだろう。当時働いていた会社の上司にも、パートタームで働く許可をとるためや、退職の意を伝えるために、それと似たようなことをしたはずだ。

「アクションを起こさせる」というのが極めて重要なポイントだ。もしも、相手にアクションを起こさせる助けにならないような事項がピッチの内容に含まれていれば、そんなものは取り去ってしまった方が良い。例えば90秒間のエレベーターピッチと、28章で触れた紹介の目的は全く同じで、ミーティングを設定するということだ。早口で膨大な量の情報を読み上げたところで、ミーティングのチャンスは与えられない。ピッチの目的はビジネスの全てを説明することではなく、相手の興味をひいて、相手がもっと知りたいと感じるのに十分なくらいの情報を共有することだ。

また、ほとんどのピッチはステージのようなものの上で行われる。物理的なステージがない場合もあるが、それでも概念的なステージの上に立っているということには変わりない。そしてステージ上で行われる他のことのように、あなたのピッチはパフォーマンスなのだ。もしもあなたのビジネスがその日ステージに立った企業の中で1番だったとしても、プレゼンターのあなたが自分の靴ばかり見て、ボソボソと話し、ただスライドの内容を読み上げているような具合では、投資家があなたの会社に興味を持つことはない。

会社が成長するにつれて、アクセラレーターのデモデイやスタートアップコンテストなどで、3分程度のピッチを行う機会も増えてくるだろう。ここでのゴールも相変わらず、ミーティングを設定することだ。しかしこの段階では、それ以外の目標もいくつか浮上してくる。もしもあなたの会社が大手のよく知られたアクセラレータープログラムに参加しているとすれば、恐らくあなたの会社は優秀なのだが、ここにはあるひとつの問題がある。それは、あなたの会社以外に、数百とはいわずとも数十社のスタートアップが同じステージでピッチを行うということだ。彼らは全員しっかりと準備を行い、資金調達する気満々だ。するとここでは、何百というピッチがステージ上で行われる中、自分たちの企業のことを聞き手に覚えてもらえるくらい目立たせる、ということが新たなゴールなってくる。デモデイの終わりには、投資家のノートがさまざまな企業の情報でいっぱいになる。その中で、あなたの企業の名前に丸印とドルマークが付くようにしなければいけないのだ。

全てのピッチはコンテストだと思い、競争に勝ち抜いて優勝賞品を獲得するんだという気持ちで毎回取り組んでほしい。つまり、ピッチ前にはリハーサルを行い、完璧に準備して、戦いに備えてしっかり休むようにしなければいけない。ところで、ここでの優勝賞品とは何を指しているのかというと、これこそさっきから繰り返し触れている投資家とのミーティングだ。賞品として巨大なホットドッグが贈られるホットドッグ早食いコンテストのような感じもするが、やるだけの価値は間違いなくあるので安心してほしい。ミーティングでは、恐らく20分程度でまたピッチをすることになるが、もしも投資家が内容を気に入り、活発に質疑応答が行われれば、1時間近くまで時間が長引くこともある。

それでは、次はピッチの内容についてだ。まずピッチでは、聞き手の注目を集めなければいけない。あなたが話をしているときも、彼らは手に持った携帯電話で、恐らくTwitterをチェックしたりメールを読んだりしていることだろう。もしも途中で耳にしたことに彼らが興味を持って、そこから注意を払いだしても、それまでの内容は全く伝わっていなかったことになる。これは残念ながらよくあることだ。そのため、聞き手の注目を集めるような内容からプレゼンをスタートしなければいけない。プレゼンの中で最も重要なポイント、それはトラクションだ。会社の調子はどうか?ユーザー数はどのくらいか?会社の成長率は?売上は?といった質問に対して目を見張る数字を持って答えることができれば、投資家はサービス内容自体に即座に興味は持たなくても、少なくともあなたのピッチに注意を払うようになる。もしも継続的に毎週50%成長している企業があれば、私はノートに手を伸ばし、後ほどミーティングで詳しく説明してもらおうと思う。そのくらいシンプルなことなのだ。

その次の内容は、あなたのスタートアップがやろうとしていることについてだ。顧客は誰なのか?どんな問題を解決しようとしているのか?このふたつの質問に答えられないような事業は、投資家側も評価のしようがないので気をつけてほしい。20章で伝えた通り、はじめは小規模なグループをターゲットにした方がやりやすい。その人たちがプロダクトを手放せなくなるくらいになってから、顧客を増やしていけばいいのだ。つまり、現在サンフランシスコ市民の3分の1があなたのプロダクトを使っていて、今後世界中に展開していく予定だという方が、現在世界中で20万人の人が使っていますというよりもずっと投資家の注意をひきやすい。ユーザー数という意味ではこのふたつは同じだが、そこから予想できることやプロダクトのストーリーは全く異なる。ターゲット層を一部の地域やもっと狭いグループの人たちに絞ること自体は全く恥ずかしいことではないが、きちんとプレゼンの中でそれを説明するように。

これでトラクションと市場がカバーでき、ユーザーにとってなぜ自分たちの取り組んでいる問題が重要かという説明もできた。次は、現在その問題に対してどのような解決策が存在するのかについて考えたい。というのも、あなたが全く新しい市場を発掘する可能性は極めて低い。Uberは新しい交通手段を発明したわけではなく、当時のタクシー業界を見て「ひどい状況だな。これなら俺たちがやったほうがうまくできそうだ」と考えたのだ。そこで現状の解決策について説明することで、あなたの会社が取り組んでいる問題が解決に値するものなのかというのを示すことができる。もしもあなたが解決しようとしている問題で困っている人がいないとしたら、残念ながらそれはビジネスにはならない。実は競合に関しても同じことが言える。競合企業が1社もないということは、そこには解決すべき問題が存在せず、市場もないため、ビジネスが成り立たないのだ。

ここまでの内容がうまくまとめられていれば、聴衆は椅子から身を乗り出してあなたの話を聞いていることだろう。市場について理解し、ターゲット層が抱える問題にも共感できた彼らは、あなたが問題をどう解決しようとしているのか知りたくてしょうがなくなっている。そこで、提起された問題と提供しようとしている解決策が、どれだけピッタリ合っているのかについて説明するようにしよう。私が気に入っている痛み止めとビタミン剤の比較をもとにこの意味を説明したい。もしもあなたの解決策が顧客にとって「あればいいな」というくらいで、ストックが切れてもわざわざ買い足さないようなものであるとすれば、あなたのビジネスには問題がある。逆に、私はAdvil(アメリカで販売されている痛み止め)のボトルが半分くらい空いただけでも、会社帰りに薬局に寄ることが多い。つまり、ビタミン剤ではなくAdvilのような解決策を目指し、聞いている人にもそれが伝わるように説明しなければならないということだ。

信じられないかもしれないが、私がここまでに説明したことは全て90秒のピッチの中に詰め込むことができる。エレベーターピッチよりも長く時間がとれる場合は、解決策の部分に時間をかけて聞いている人に強い印象を与えるようにしたい。もしも20分もの時間が与えられていれば、ライブデモも含めるようにしよう。ライブデモをやるには時間が足りないとしても、スクリーンショットを2、3枚挿入しておくだけでかなり効果がある。いずれにしろ、投資家が知りたいのは、あなたが具体的にどう問題を解決しようとしているかということなのだ。

VCが投資したいと思えるような内容にするために、次のパートは全て市場規模の説明にあてられる。市場規模は大きくなければならない。さもなければVCはあなたの会社に投資しようとは思わない。市場がどのくらい大きいか、そしてどのくらいの速度で成長しているかをここでは説明しよう。実際のところ、その時点での市場規模よりも、どのくらいのスピードで市場が拡大しているかのほうが重要だ。というのも、既に成長が止まった巨大市場に参入する場合、サイズの大きな競合企業から顧客を奪いとらなければいけないため、多大なお金や信頼性が必要になってくる。その一方、毎年100%の成長を続けている市場でトップの座につけば、自分たちの仕事をきっちりこなすだけで、会社も同じようなスピードで成長できることになる。

その次がビジネスモデルだ。どのように新規顧客を獲得し、どのように収益を生み出そうとしているのか?どうやって顧客候補を見つけ出し、どのくらいの時間とコストをかければ、実際にその人たちを顧客にできるのか?新規顧客を獲得してから損益分岐点に達するまでにどのくらいかかるのか?顧客生涯価値(LTV)はどのくらいか?といった問いへの答えを中心に説明していく。ここまでで市場規模とビジネスモデルについて説明したので、3年でどのくらいの売上規模になる予測なのか?その頃にはどのくらいの社員数が必要なのか?といった内容をまとめた資金計画もここに含めておこう。

この時点で投資家が間違いなくもっと知りたがっているのが、マネジメント層についてだ。まとまった金額を投資しようとしている彼らが、会社を率いている人たちにその適正・能力があるか知りたがるのももっともだと言える。もしもあなた自身やあなたのチームが、以前スタートアップをエグジットまで導いたことがあれば、大げさなくらいそれを打ち出した方が良い。さらに、以前Budweiserに勤めていて、ビールの売上増加に繋がるプロダクトをローンチしようとしているなら、前職との関係性を明確にすべきだ。また、何かの分野で世界でもトップクラスの専門性をもっており、博士号など具体的な事実でそれを証明できるならば、それも大々的に宣伝するようにしよう。時間の限られているピッチでは、このパートにあまり時間をかけないほうが良いかもしれないが、少しでも時間に余裕があればぜひ含めるようにしてほしい。投資家は、あなたの会社の成功の可能性を、トラクションとチームをもとに推測しているということを忘れないように。アイディアだけでは足りず、それを実行できるかどうかに全てがかかっている。チームに関するこのパートでは、それまでに説明したアイディアを実行する上で最適な人員が揃っているかどうかということを、聞き手に伝えることが目的なのだ。もしも最適な人が揃っているかに関して少しでも疑いがあるようであれば、ピッチは一旦ストップしてもう一度採用を行った方が良いだろう。

以上が、あるひとつのことを除いた、ピッチに関するアドバイスの全てだ。そして最後に残されているとても重要なパートが、クロージングだ。ピッチの終わりに、なぜ自分がそこにいるのかについてもう一度説明するようにしよう。「私たちには、生鮮食料品の購入の仕方を変えるすばらしいテクノロジーがあるだけでなく、業界での豊かな経験を持ったこのビジネスに最適な人材が揃っています。目標調達金額は200万ドルです。連絡先はスクリーンに表示していますので、詳細について知りたい方は私までメールでご連絡ください」というクロージングであれば、簡潔かつ必要なことが全て伝えられていて完璧だ。

ピッチ時の話し方に関連し、ボディランゲージについても少し触れておきたい。私は個人的に、1対1での指導を行っているプレゼンのコーチを雇うことを強く勧めている。アクセラレータープログラムに参加していれば、ピッチ指導もその内容に含まれていることが多いが、(まだ)そのようなプログラムに参加していなくても、あなたのピッチを間近で見て、指導してくれるような人を探した方が良い。自信をにじみ出させ、堂々とした姿勢で、ハキハキと話しながら聞き手とアイコンタクトをとるというのは、ピッチでは極めて重要であると同時にマスターするのはそこまで難しくない。練習あるのみだ。

投資家の中には、困ったことに事前に資料を送ってほしいと依頼してくる人もいる。今までに素晴らしいプレゼンテーションを見たことがある人であれば、スライドはあくまでペースを守る手助けをしたり、プレゼンターが言っていることを視覚的に補助したりするだけで、資料の中にプレゼンの全ての内容が含まれているわけではないことにお気づきだろう。もしもあなたが資料を事前に送ったとしても、投資家は恐らく内容を完全にはつかめないため、通常私はミーティングで顔を合わせるまでスライドは送らないように勧めている。この問題への対策のひとつが(もしも投資家が遠く離れた場所に住んでいるときのことを考えると、対策を立てておくにこしたことはない)、2種類のスライドを準備しておくということだ。ひとつは実際にピッチを行うときのためのもの、そしてもうひとつは、エグゼクティブ・サマリー(事業計画の概要)として、ピッチの雰囲気が読んで伝わるようなものとして準備しておくと良い。

ピッチの準備をするときには、アルバート・アインシュタインがかつて言った、「簡潔に説明できないのは、十分に理解していないからだ」という言葉を心に留めておいてほしい。あなたの事業領域に関する専門知識を持ち合わせていないかもしれない、部屋いっぱいに集まった投資家に対して、会社のことをうまく説明できないようであれば、いちからやり直しだ。


【編集部注】本記事の引用元である、今年発売されたVitaly M. Golomb著『Accelerated Startup』は、KindleiBooks用の電子書籍とハードコピーとして販売されている。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

授乳室検索アプリやスマート授乳室を展開するTrimが7000万円の資金調達、全国展開を促進

授乳室・オムツ交換台検索アプリ「ベビ★マ」、設置型授乳室「mamaro」など育児関連のサービス開発を行っているTrimは3月23日、ホープ、かんしん未来ファンド、横浜キャピタルを引受先とした第三者割当増資により、総額約7000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。ホープとは包括的業務提携契約も締結しており、同社と協力して事業の全国展開を進めていく。

Trimは育児中の母親を主なターゲットとした、2つのサービスを手がけているスタートアップ。1つが授乳室やオムツ交換台の検索アプリのベビ★マ、もう1つが授乳や離乳食、おむつ交換などの際に利用できる設置型の施設のmamaroだ。

ベビ★マには授乳室やおむつ替え施設を中心に、子連れで入れるカフェやレストランなど約6万施設が掲載。マップに加え写真や使った人のレビューも見ることができるアプリだ。日本国内だけでなく世界27カ国の情報も掲載している。

もう1つのmamaroはアプリやウェブサービスではなく、乳幼児をケアするために使用する”リアルな”施設。従来の施設との違いは、IoT時代の「スマートな授乳施設」である点だろう。

具体的には、体温によって識別できるセンサーを設置し不正利用の予防や利用状況の把握を行ったり、ベビ★マと連携して設置場所検索や事前の使用予約、授乳室の鍵の開閉機能を実装していく予定で、より使いやすい授乳施設を目指していくという。他にも室内のモニターで子育て系コンテンツを配信したり、サンプリング提供や紙おむつ等消耗品の販売なども計画している。

今回Trimが業務提携契約を締結したホープは、福岡に本拠地を構え自治体向けに複数のサービスを展開している企業。幅広い自治体とリレーションを持つ同社とタッグを組むことで、mamaro、ベビ★マの全国展開を促進し、子育て環境をより豊かにするインフラ作りに励んでいくとしている。

荷物預かりサービスecbo cloakが数千万円の調達、登録店舗の拡充を目指す

旅行するとなると、スーツケースの他に購入したお土産などで荷物が多くなりがちだ。十分に観光を楽しむためには荷物を預けたいところだが、コインロッカーがすぐに見つかるとも限らないし、大型の荷物が入らないものも多い。ecboはそういった課題を解決するため、店舗が遊休資産を使って荷物を預かれるようにするシェアリングサービス「ecbo cloak」を提供している。本日ecboは、数千万円規模の第三者割当増資を実施したことを発表した。引受先は、既存投資家のANRI、個人投資家の渡瀬ひろみ氏と千葉功太郎氏だ。

ecbo cloakは荷物を預けたい人と荷物を預る店舗をつなぐシェアリングサービスだ。ユーザーはecbo cloackで荷物を預けておく場所と時間を予約し、決済まで完結できる。店舗側にとっては使っていない場所を荷物預かりで有効活用するとともに、観光客に店舗のことを知ってもらう機会を得られる。

ecbo cloakは1月18日にローンチし、登録店舗は100店舗になったとecboの代表取締役社長を務める工藤慎一氏は話す。登録店舗にはカフェやレンタサイクル店、ネイルサロンやアパレルショップ、コワーキングスペースなどがあるそうだ。

サービスローンチ後に台湾のメディアでも紹介されたことから、ecbo cloakの利用者は台湾、香港からの旅行客が増えているという。現在は、ユーザーの9割が外国人と工藤氏は説明する。ecboを利用した訪日外国人旅行客に話を聞いたところ、コインロッカーの場合、空いていなかったり、大型の荷物は入らないことに困っていていて、ecbo cloakは彼らのニーズに応えられているという手応えを感じているという。

ecboは2015年6月に創業し、これまでにANRIから資金調達を行っている。今回の資金調達は主にプロダクトの開発と店舗開拓を進めるのに充てるという。まずは主要都市やイベント会場付近に提携店舗を増やし、年内には全国1万カ所の荷物預かり拠点を置くことを目標としていると工藤氏は話す。

ecbo cloakは現状、預かった荷物の手数料30%を得るビジネスモデルだ。ecbo cloakの1日の利用料は小型の荷物で300円、大型の荷物で600円なので、収益を上げるには店舗と荷物を預けたいユーザーのマッチング数をとにかく伸ばさなければならない。

ただecboは荷物預かりにとどまらず、ゆくゆくは海外への荷物の発送といったサービスを付加していくことも視野に入れていると工藤氏は話す。そのためにも、まずは物流拠点となる荷物を預かる店舗のネットワークを構築することに注力するという。「Uberは人の移動を変え、Airbnbは人の宿泊を変えました。ecboが目指すのは、モノの住まいとなり、モノの移動を変えることです」と工藤氏は話している。

Tesla、10億ドル以上の資金調達へ―Model 3量産のため株式、優先転換社債発行を計画

Teslaは総額11億5000万ドル程度の新株と優先転換社債の発行を計画している。昨日(米国時間3/15)、Teslaは発行の目的を「リスク軽減のため」と述べたが、これは同社がビジネスを急拡大しModel 3の生産を急いていることが背景にある。

Teslaが財務状況を改善するため大型の資金調達を行うことは多くのアナリストが予想していた。またCEO、イーロン・マスクの最近の発言からウォールストリート関係者もTeslaは近く、さらなる成長のために資本の充実を図るはずだと考えていた。

Model 3は今年中に量産体制に入る予定だ。先月、少量生産が開始されていたが、フレモントの工場で量産体制を整えるために、この臨時生産ラインは一時停止している。資金調達計画については、2億5000万ドルを普通株で7億5000万ドルを2022年を株式転換期日とする社債でまかなうとしている。Reutersによれば、イーロン・マスク自身が2500万ドルのTesla株を購入するという

前回のTeslaの資金調達は2016年5月に行われ、新株発行よってキャッシュで14億ドル分の増資に成功している。この資金も生産能力を拡大するために用いられた。

マスクは2月に、決算報告の電話会見で「Teslaは独力でModel 3の量産体制を準備することができる」としたが、同時にこれは資金繰りが「限界に近づく」と認めた。つまりTeslaにとって外部資金を導入することが財務状況のリスク軽減のために合理的だということになる。Teslaの資金繰りが綱渡りとなるのは既存の株主にとっても好ましくないだろう。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

エネチェンジがみずほキャピタルより5000万円を追加調達、法人向けサービス展開を強化

電力価格の比較サービスを展開するエネチェンジは、みずほキャピタルの運営ファンドを引受先とする5000万円の第三者割当増資を実施したことを発表した。エネチェンジは今年1月にオプトベンチャーズ、IMJ Investment Partners Japan LLPから総額5億円を調達しているが、今回の増資はこのラウンドにおける追加調達という位置付けだ。

エネチェンジは電力の価格比較サイト「エネチェンジ」やスマートメーターのデータ解析サービスなどを提供している。2016年5月には、法人向けの電力切替サービス「エネチェンジBiz」をローンチした。

エネチェンジBizはスーパーや町工場、病院、クリニック、福祉施設といった高圧法人の利用を想定しているという。電力価格の削減効果について広報担当者は、その法人が現在契約している電力会社や料金プランによって異なり、すべての法人で削減が期待できるというわけではないが、エネチェンジBizを利用した法人は平均7%ほど削減できていると話す。エネチェンジBizでの相談実績は8000件を超えたそうだ。

今回の資金調達は、主にこのエネチェンジBizのサービス展開を推し進めることが目的だという。みずほキャピタルの協力を得ることで、彼らの持つ顧客基盤にエネチェンジBizを訴求していきたい考えだ。

エネチェンジ代表取締役社長の有田一平氏はリリースで以下のようにコメントしている。

高圧市場での電力切り替えは、急速に進むと見ているため、新たな顧客との接点を持つことが急務と考えています。エネチェンジが強みを持つオンラインでのリード獲得を補完する目的で、今後銀行ネットワークを活用したオフラインでのリード獲得をサポートして頂けるとのことで、みずほキャピタル様のご支援に期待をしております。

2015年4月に創業したエネチェンジは、2016年2月の調達ラウンドで4億円を調達している。今回の追加調達でこれまでに総額9.5億円ほど調達した計算となる。

「声」のスタートアップ「Voicy」がエンジェルラウンドで数千万円の資金を調達

文字コンテンツを読み上げるパーソナリティーをフォローすることで、細切れの音声コンテンツを定期的に受け取れるクラウド放送局ともいうべき「Voicy」については2016年9月のローンチ時にお伝えした。そのVoicyがエンジェルラウンドとして12人の個人投資家から資金調達をしたとTechCrunch Japanに明らかにした。

金額は非公開というが、関係者らの話によると数千万円前半とみられる。出資したのは平澤創氏(フェイス代表)、島田亨氏(楽天常務執行役員)、谷家衛氏(お金のデザイン創業者)、高野真氏(Forbes Japan編集長)ほか8人。Voicyとシナジーのある事業会社のCEOや技術顧問が含まれるそうだ。

「声で新しい文化を創る」という狙いで2016年2月に創業したVoicyは現在iOSアプリを提供中で、資金調達に合わせてアプリのアップデートもアナウンスしている。ちょっと使ってみた感じ、1.5倍・2倍速再生、ジャンル分け・タグ機能の追加、ランキング表示、写真投稿機能の追加、コメント返信機能の追加など、プラットフォームとして進化している。

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正直、ランキングを上から見ていっても今のところぼくが聞き続けようと思うコンテンツはない。だけど、容れ物としてのVoicyは面白い感じに進化している。

例えば、1.5倍速で細切れに毎日新聞のニュースを読み上げてくれる機能なんかはせっかちなぼくには実用的でいいなと思った。最近AirPodsを耳から外さないぼくには音コンテンツが足りていないので、もう少し幅広いジャンルのチャンネルが出てくればと思う。

テレビやネットでニュースに触れたとき、家族や友人、同僚と「困ったもんだよね」というような感慨を述べるようなことはみんなやっていると思う。ちょうどそんな感じで、Voicyの多くのニュースチャンネルは「ニュース→コメント→ニュース→コメント」(すべて声での読み上げ)という構成になっていて、「体温のある情報を届けるプラットフォーム」と掲げるVoicyの狙い自体は、十分に分かるような形ができてきている。チャンネルごとにコメント欄があって、ざっと眺めただけでもコミュニティーが発展する可能性を感じるところだ。例えば、妊活・妊娠・出産・子育て情報を扱うメディアのコンテンツを読み上げて、ママの日常や悩みを語るチャンネルにはママコミュニティーが生まれつつあるのは良い例だと思う。

「ベンチャーニュースで言いたい放題」というチャンネルもなかなか興味深い。「ベンチャー支援家K」を名乗る、かすかな関西弁なまりのある人物(誰だろうか?)が結構突っ込んだコメントをしている。

テキスト情報に比べると音声コンテンツは「炎上耐性」があるように思う。テキストは断片的な切り出しや伝播が非常に容易だし、ピンポイントに誰かの発言にコメントを付けるようなことも簡単だ。このためソーシャル上で「炎上」が日常化しているが、ポッドキャストは案外燃えない。10分とか30分のコンテンツに対して、その中で誰か何かエグいことを言っていたとしても、ちゃんと聞いた人以外には分からないので延焼速度が遅いのではないかと思う。もちろんテレビ番組での著名人の発言がニュースサイトで炎上するのは日常光景だが、それは数千万人、数百万人がみているチャンネルの話。ロングテールの小さなコミュニティーが多数ある世界だと「ぶっちゃけ話」がやりやすいのではないだろうか。

プラットフォームビジネスにとって容れ物とコンテンツは鶏と卵の関係があるだろう。Voicyは良い感じの容れ物ができつつあるように見える。ポッドキャストとも違うし、YouTubeとも違う何かが生まれるのかもしれない、と感じるさせるには十分に機能はできてきている。

Voicyの緒方CEOによれば、コンテンツ面でも新しい取り組みを続けている。

サービスリリース時には提携メディアとしてスポニチ、毎日新聞、THE BRIDGE、ぴあ映画生活など8社からスタートしていたが、現在は西日本新聞やアルク、松竹などと新たに提携し、25社へと拡大いている。ランキングで見るとアルクのキクタン英会話がトップになっている。チャンネルを持つことができるのはオーディションを通過した人だけだが、この「パーソナリティー」も40人から140人に増え、オーディションは継続して実施している。ユーザー1人あたりのアプリ使用時間は1日平均10分を超えたそうだ。

買取価格比較サイト「ヒカカク!」運営のジラフが1.3億円の資金調達、ポケラボ創業者が参画

左から)ジラフ執行役員の佐々木俊介氏、ジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏

買取価格比較サイト「ヒカカク!」やスマートフォンの修理価格比較サイト「最安修理ドットコム」を展開するジラフは3月15日、アドウェイズアナグラムおよび個人投資家(フリークアウト・ホールディングス代表取締役社長の佐藤裕介氏ほか2人)に加え、新たに執行役員として参画する佐々木俊介氏などから合計1.3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回調達した資金はプロダクトの開発強化および、広告に充てるとしている。

月間利用者数が100万人を突破、事業は黒字化を達成

ヒカカク!のサービス開始は2014年9月。リリース以降、順調にユーザー数を伸ばし続け、現在は月間ユニークユーザー数は100万人を突破。会社も黒字化を達成しているという。ここまでの歩みを振り返り、ジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏は「SEOで流入数を増やしつつ、サイト内のコンテンツを充実させていき、トランザクションしてもらえるような仕組みを作っているのが大きい」と言う。

例えば、自動車買取領域では中古車買取・査定サイト「Goo買取」を運営するプロトコーポレーションと業務提携を結んだり、バイク買取領域では一括査定サイト「バイク比較.com」を運営するインターファームと業務提携を結んだり、取り扱う商材は広げていってるそうだ。

「ヒカカク!はもともと、買取価格を比較し自分でどこの買取業者に売るのかを選んで、見積もりを出す形式を想定していたのですが、運営していく中で自分で買取業者を選ぶのはハードルが高いな、と感じました。買取価格の比較以外にもユーザーニーズに適した機能やサービスは提供していきたいと思っています」(麻生氏)

今後は一括で最大5社の見積もりが出せる「一括見積もり機能」や、ユーザーが売りたいものを記述するとその商品を売る時に最適な買取業者や宅配買取サービスを過去のレビューや過去の実績に基づいてリコメンドし、レポーティング・申込代行を行ってくれる「おまかせ買取機能」などの提供を予定しているという。

それ以外にも、ヒカカク!はGMOイプシロンと業務提携し、買取業者向けに振込手数料や配送料の削減サービスの提供も行っていく予定だ。麻生氏は「取業者が仕入れて売る、というバリューチェーンの中で関われる部分には関わっていきたい」と語り、買取業者の負担を減らしていくことでヒカカク!内に良質な買取業者を獲得していきつつ、ユーザーの選択肢も増やす。これにより、プラットフォームの価値を高めていくことを狙っているそうだ。

「将来的には提携先を開拓していき、買取代金が振り込まれるのではなくポイント制にして次の消費に利用してもらえるようにしたり、決済の領域に入っていったり、経済圏になることを目指していきたいです」(麻生氏)

ちなみに、以前指摘されていた商標権の問題は解決し、口コミの削除依頼には適宜対応しているという。

佐々木氏の知見を活かし、組織力を強めていく

以前、TechCrunch Japanが取材した際、資金調達に併せて柴田雅人氏がCOOとして参画していたが、今回は佐々木俊介氏が執行役員として参画している。念のため、佐々木氏について紹介しておくが同氏はポケラボ創業メンバーの1人。最近ではトレーディングカードのフリマアプリ「magi(マギ)」の開発を手がけていた。

麻生氏によると、ビジネスマッチングアプリのyentaで知り合い、話をしていくうちに意気投合し、共に会社を経営していくことになったと言うが、なぜ佐々木氏はジラフにジョインすることにしたのだろうか?

「個人的に中古(リユース)市場に注目していて、中でもCtoCのサービスを手がけていたのですが、寡占化が進んでいて勝者がある程度決まっている。一方で、CtoBの領域は明確な勝者が決まっておらず、今後の伸び代もある。実際に麻生さんと話をする中で、ヒカカク!」というサービスが面白いなと思いましたし、会社の雰囲気も若くてエネルギッシュ。ポケラボを創業したときのような経験をまた味わえればいいな、と思いジョインすることにしました」(佐々木氏)

今後、佐々木氏のポケラボを数百人規模へと組織を成長させ、エグジットした経験をもとに、ジラフは開発力強化および経営基盤の強化の実現を目指していく。