PayPalがウクライナ人への直接送金を可能にするサービスを拡充

PayPal(ペイパル)は、ユーザーがウクライナ人に送金できるようにサービスを拡充すると、米国時間3月17日に発表した。この拡充以前は、ウクライナのユーザーはPayPalを使用して国外に送金することしかできなかった。これにより、ウクライナのPayPalアカウント保有者は、世界中の友人や家族と送金し合うことができるようになる。PayPalウォレットでお金を受け取ったウクライナの顧客は、対象となるMastercardまたはVisaのデビットカードやクレジットカードをリンクすることで、自分の銀行口座に資金を移すことができるようになる。

また、PayPalは、6月30日まで、ウクライナのPayPal口座への送金、またはウクライナのPayPal口座への入金の手数料を一時的に無料にすると発表している。同社の国際送金サービスであるXoom(ズーム)も、ウクライナの受取人に送金する際の取引手数料を無料にする予定だ。

今回のPayPalの発表は、ウクライナ政府から同国の人々が支払いを受けられるような新サービスを展開するよう同社に要請があったことを受けてのものだ。

ウクライナの副首相兼デジタル変革担当大臣のMykhailo Fedorov(ミハイロ・フェドロフ)氏は、Twitterでこの拡大を称賛し、PayPalから受け取った手紙を公開した。

PayPalからの手紙には「我々のチームは、PayPalがどうやったらウクライナの人々に最善かつ迅速に追加サービスを提供することができるかを見極めるために集中的に取り組んできました」と書かれている。「このサービスは、ウクライナの人々が世界中の友人や親戚からお金を受け取るために役立つと信じています。また、他の国にいるウクライナ人難民にとっても、現在住んでいる場所でお金を受け取ったり、引き出したりすることができるので、助けになると思います」。

ウクライナの顧客は、ウクライナのPayPalウォレットからUSD、CAD、GBP、EURで送受信することができるようになる予定だ。顧客がPayPalウォレットから対象のデビットカードやクレジットカードに資金を送金するとすぐに、そのカードに関連する通貨で資金を利用できるようになる。

今回の発表は、PayPalが今月初めにロシアでのサービスを停止したことを受けて行われたものだ。PayPalだけでなく、Mastercard(マスターカード)とVisa(ビザ)もロシアでのネットワークサービスを停止しており、同国から撤退した決済企業はPayPalだけでない。

戦争が始まって以来、人々はウクライナの人々を経済的に支援する方法を探してきた。Airbnb(エアービーアンドビー)のCEOであるBrian Chesky(ブライアン・チェスキー)氏は、世界中の一部の人々が、ウクライナのホストに経済的支援を送るため、宿泊するつもりがなくてもウクライナのAirbnbを予約していると述べた。また、ウクライナは、対ロシア戦の援助を求める人々から数千万ドル(約数十億円)相当の暗号資産による寄付を受けている

PayPalのサービス拡充により、ウクライナの人々を支援する、より直接的な方法が促進されることになるだろう。同社によると、これらの新サービスは本日から利用可能になるとのことだ。

画像クレジット:Yichuan Cao/ NurPhoto / Getty Images

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(文:Connie Loizos、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Atlantic Moneyはさらに安い国際送金でWiseに挑戦する

他の外国為替サービスよりも安くすることを計画している外国為替スタートアップ、Atlantic Money(アトランティックマネー)を紹介する。この売り込みに聞き覚えがあるとすれば、それは、以前TransferWise(トランスファーワイズ)として知られていたWise(ワイズ)が、同じ約束でスタートアップシーンに登場したからだ。

だが、Atlantic Moneyは、WiseやRevolut(レボリュート)でさえ高すぎると考えている。同社によれば、彼らは一度に多くのことをやろうとしすぎて、結局は必要のないものを顧客に請求しているのだという。

Atlantic Moneyの国際送金の料金はいくらか?同社は一律3ポンド(約457円)の手数料を徴収し、それでおわりだ。彼らが確保できる為替レートに上乗せすることはない。

少額の送金の場合、3ポンドはかなり高い。しかし、1000ポンド(約15万2000円)以上の送金となると、Atlantic Moneyはより競争力を持つようになる。

そして、これがAtlantic Moneyのビジネスモデルのカギなのだ。段階的に手数料を徴収するのではなく、取引ごとに固定された手数料に移行したいと考えているのだ。

画像クレジット:Atlantic Money

設立者のNeeraj Baid(ニラージ・バイド)氏とPatrick Kavanagh(パトリック・カヴァナー)氏は、もともとRobinhood(ロビンフッド)での前職で出会った。このスタートアップは、Amplo(アンプロ)とRibbit Capital(リビット・キャピタル)の主導で450万ドル(約5億2100万円)のシードラウンドを調達している。Robinhoodの創業者であるVlad Tenev(ヴラド・テネフ)氏とBaiju Bhatt(バイジュ・バット)氏も出資している。Webull(ウェブル)のAnquan Wang(アンカン・ワン)氏も投資家だ。

このスタートアップは、まず少数のコリドーを立ち上げる。具体的には、今日サインアップしたユーザーは、英国からGBPで、USD、EUR、AUD、CAD、SEK、NOK、DKK、PLN、CZKの9通貨に送金することができる。支払い方法については、Atlantic Moneyは現在、現地の銀行振込を中心に行っている。標準的な送金は2、3営業日かかり、特急送金は1日以内に到着する予定だ。

その裏側には、同社は良い為替レートを提供できるいくつかの大手金融機関と提携している。Atlantic Moneyは、その中から最適なレートを選択し、手数料は上乗せしない。Atlantic Moneyが競合他社より良いレートを提供できるかどうか、興味深いところだ。

本稿執筆時点では、5000ポンド(約76万2000円)を米国に送金しようとすると、現在Wiseでは手数料が17.79ポンド(約2700円)かかり、6648.51ドル(約76万9000円)を受け取ることができる。Revolutの無料口座では、換金したい5000ポンドに加え、20.96ポンド(約3100円)の手数料を支払うことになる。しかし、5020.96ポンド(約76万6000円)と引き換えに約6700ドル(約77万5000円)を受け取るので、為替レートは若干良くなっている。

もちろん、Revolutは他にも銀行口座やカード、株や暗号資産を取引できるなどのサービスを提供している。月額6.99ポンド(約1000円)を支払ってプレミアムアカウントを取得すれば、為替に関する手数料を免除することができる。ただし、12カ月プランなので、Revolutの利用状況によっては、FX手数料よりも利用料の方が高くついてしまうかもしれない。

同様に、Wiseでは12カ国の現地口座情報を作成できるため、住んでいない国で支払いを受ける際に便利かもしれない。また、Wiseは送金をできるだけ早くするようにしており、Wiseの送金の45%は20秒以内に到着する

つまり、外国為替商品は1つだけではない余地があるのだ。外国為替取引は1つの商品だけでは成立しないのだ。カスタマーは、最も頻繁に使用するコリドー、平均的な送金サイズ、必要と思われる追加機能に応じて、結局はサービスを選ぶことになる。しかし、英国からヨーロッパや北米へ大金を移動させるだけなら、Atlantic Moneyのユーザーになる可能性がある。

画像クレジット:Atlantic Money

画像クレジット:Philip Veater / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Yuta Kaminishi)

Venmoがギフトラッピング機能を導入、お金の受取時に楽しいアニメーションを表示

Venmo(ベンモ)は、友人や家族にお金を贈る新たな方法として、ギフトラッピング機能を導入した。米国時間1月13日に展開が開始されたこの新機能により、ユーザーは送金時に8種類のアニメーション付きギフトラップのデザインを支払いメモに追加できるようになる。

この新機能を利用するには、まず「Pay or Request(支払いまたは請求)」ボタンをタップし、受取人を追加する。そこから、ギフトラップのアイコンをタップして、支払いと一緒に送りたいギフトラップを選択する。ギフトラップを選ぶと、支払いを確定して送信する前に、アニメーションをプレビューするオプションが用意されている。

受け取った人には、アプリ内でギフトが届いたことが通知され、ギフトを開封してアニメーションを見ることができる。Venmoによると、送信者と受信者の両方が、支払いの詳細画面からいつでもアニメーションを見返すことができるとのこと。Venmoの新しいギフトラッピング機能は、米国時間1月13日より一部の顧客から展開が始まっており、今後数週間のうちにすべてのユーザーが利用可能になる。

画像クレジット:Venmo

「プレゼントの絵文字は、2021年にお客様が支払いメモに使用した絵文字のトップ10に入っていました」と、Venmoのシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのDarrell Esch(ダレル・エシュ)氏は声明で述べている。「私たちは、この体験を強化するために新しいギフトラッピング機能を導入し、お客様が金額の大小に関わらず、その瞬間を大切な人と一緒にお祝いできるようになったことをうれしく思います」。

Venmoによると、過去1年間にVenmoやその他の個人間(P2P)決済サービスを利用して、ギフトとして送金したことがあると回答したユーザーは78%に上るという。ユーザーはホリデーや特別な時だけでなく、相手を思っていることを示す手段として、Venmoを使って相手にお金を贈ることが増えているとのこと。特に新型コロナウイルス感染拡大時には、Venmoを利用してお金を贈った顧客の半数以上が「感謝」や「単なるお礼」の印として送金していたことから、このような行動が増加したと同社では考えている。

今回の新機能導入に先立ち、Venmoは2021年、大規模なデザイン変更を行っている。アプリのプライバシー管理機能を拡張し、新機能の一部をより明確にすることに重点を置いた大幅なデザイン変更の一環として、同社はユーザーの取引がグローバルに公開されるフィードの提供を廃止した。現在はユーザーに「フレンドフィード」のみが表示されるようになっている。これはアプリのソーシャルフィードのことで、友達の取引だけを見ることができる。

画像クレジット:Venmo

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

テンセントが中国人留学生の授業料支払いに特化したクロスボーダー送金スタートアップに出資

Easy Transferのチーム(画像クレジット:Easy Transfer)

Tencent(テンセント)は、国外にいる何十万人もの中国人学生の学費支払いのストレスを軽減することを目的としているスタートアップEasy Transfer(イージートランスファー)に出資した。

Tencentはこの件についてのコメントを却下したが、Easy Transferの創業者でCEOのTony Gao(トニー・ガオ)氏はTechCrunchに、Tencentは現在Easy Transferの株式約5%を所有していると語った。この投資は2021年12月にクローズし、Easy Transferが現在行っているシリーズCラウンドの第1弾となった。IDGキャピタルとZhenFundがEasy Transferの初期投資家だ。

Easy Transferは取引を直接扱うのではなく、中国でのクロスボーダー決済ライセンスを持つ金融機関と連携している。ガオ氏は以前のインタビューで、同社の付加価値は、送金の手間を省くことだと語っている。従来のやり方では、親や学生は銀行を訪れ、たくさんの書類に記入し、送金先情報が正しいかどうかダブルチェックし、大学の口座に授業料が振り込まれるまで気を揉みながら待たなければならなかった。

Easy Transferでは、ユーザーはオンラインで簡単なフォームに記入するだけで、あとは同社が最大200元(約3600円)の手数料ですべてを処理する。

Tencentの戦略的投資により、Easy Transferはユーザー体験をさらに合理化するつもりだ。両社はWeChatベースの学費送金サービス「WeRemit」を共同開発した。WeChatのエコシステム内にある何百万ものサードパーティのライトアプリとは異なり、WeRemitはWeChatからの手厚いサポートを受け、WeChatが一部運営を行っている。

「マネーロンダリング防止、本人確認、情報のセキュリティなど、WeChatはクロスボーダー決済取引をより安全なものにします」とガオ氏はいう。「WeChatは膨大な量のユーザーデータを保有しているため、銀行でも対応できないような強固なリスク管理システムを構築することができるのです」。

お金を動かす前に、WeRemitはユーザーの顔をスキャンして本人確認を行い、WeChatにすでに保存されている個人情報を収集する。中国のインターネットプラットフォームは、モバイル決済やコンテンツ投稿などのコアな機能を有効にする前に、人々の真の身元を確認することが義務づけられている。

WeChatのAIを使った金融コンプライアンスシステムも活躍している。授業料の請求書、内定通知書、ビザ情報など、WeRemitに提出された書類を特定し、理解するために機械学習が使用されている。また、このシステムではリスクの高い取引にフラグを立ててマニュアルで確認したり、請求額と支払額の数字を比較して過払いを回避したりすることもできる。

WeRemitのサービスを支えているのは、Tencentのオンライン決済部門であり、WeChatのデジタルウォレットであるWeChat Payも運営しているTenpayだ。ユーザーから依頼を受けると、クロスボーダー取引ライセンスを持つTenpayが、Easy Transferを受け入れている大学2000校のいずれかに送金する。

中国で広く普及しているWeChatと提携することで、Easy Transferのリーチが大幅に拡大する可能性がある。ガオ氏によると、Easy Transferは2021年に学生12万人にサービスを提供し、20億ドル(約2280億円)以上の取引を処理したという。現在は、WeChatが「海外留学生」と呼ぶ50万人のユーザーをターゲットにしている。教育省によると、2019年には全体で約70万人の中国人学生が海外に留学していた。

Tencentにとって、Easy Transferとの提携は、海外に旅行する観光客をターゲットにしたクロスボーダーフィンテックサービスの幅を広げることにつながるかもしれない。ガオ氏は、Easy Transferのモデルをアジアの他の地域、特に南アジアや東南アジアで再現したいと考えている。インド、ネパール、ベトナムといった国々で増加している海外留学生を取り込む計画だ。これらの国々の家庭は、学費の送金に関して同じような悩みを抱えており、さらに手数料に敏感だと、ガオ氏はいう。

Tencentにとって海外展開は困難で、海外での影響力を拡大するために主に戦略的投資に頼ってきた。例えば、ビデオゲーム会社の膨大なポートフォリオがその例だ。Tencentは、Grab(グラブ)を含むアジア全域の複数のフィンテックサービスプロバイダーを支援してきた。Tencentは、海外送金に必要なライセンスを持つ適切な現地パートナーとEasy Transferを結びつけることができるとガオ氏は述べ、Easy Transferは現地チームの構築とWeRemitのような使いやすいプロダクトに注力するとしている。

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】暗号通貨は送金の代替手段か、それとも付加的なものなのか?

ビットコインが誕生して以来、世界中の政府が暗号資産の導入、規制、さらには禁止を検討してきた。それ以来、暗号資産のエコシステムは、(何度も)月へ行ったり戻ったりしているロケット船のようなものだった。現在では、これまで以上に多くの人々がこのロケットに乗り込んでいるようだ。

また、このパンデミックの結果、あらゆる産業でデジタルプラットフォームへの大規模なシフトが見られた。世界の政治指導者たちも、自国の経済を同じ方向に向かわせるために、これに追随する措置をとっている。

最も新しい例としては、エルサルバドルがある。この国は、法定通貨としてビットコインを採用した最初の国になったことで話題になった(この動きはその後、市民から抗議を受けることとなった)。最初の発表で、同国の大統領は暗号資産を送金手段の競合として直接結びつけ、これによりエルサルバドルの低所得世帯が送金で受け取る金額が「毎年数十億ドル(数千億円)相当」増加すると言及した。

国境を越えた決済の流れの効果的な存在になるために、デジタル資産は、国境を越えたユースケースにかかわらず、すでにその導入能力を弱めている生来の課題を克服しなければならない。

個人が故郷の家族やコミュニティを支援するためにお金を送る行為である「送金」は、多くの国にとってGDPの重要な構成要素となっている。実際、世界銀行によると、2020年の世界の送金総額はおよそ7000億ドル(約80兆円)で、そのうち5400億ドル(約62兆円)は低・中所得国に送られたと記録されている。エルサルバドルはそのうちの60億ドル(約6890万円)近くを受け取った。一方、暗号資産は現在、世界の国境を越えた送金量の1%未満と推定されている。

では、暗号資産は送金手段の代替として有効なのだろうか?答えは、ノーだ。少なくともまだ現在のところは。

各サービスに対する需要は市場特有の話であり、リアルタイムでのデジタルと現金の払い出しオプションがあるにもかかわらず、受取人が依然として現金の方を選択することは珍しくない。送金を受け取る個人の多くは、商品やサービスの代金をデジタルで支払う能力がほとんどないため、これは驚くべきことではないだろう。その代わりに、彼らはMoneyGram(マネーグラム)のネットワークにある小売店や銀行などの実店舗を利用して、必要な資金を調達しているのだ。

デジタル通貨は確かに付加的な要素であり、暗号資産は間違いなく今後数年間で影響を与えていくことだろう。しかし、それには時間がかかり、メインストリームとして採用され、現金に依存し続ける何百万もの家庭が現金を置き換えるには、いくつかの逆風が吹いている。

まず1つに、正直言って、暗号資産を現地通貨と交換する際の複雑さを考慮すると、暗号資産による送金は、現状では現金よりも安く、速く、簡単な代替手段とは言えない。

エルサルバドルの場合、送金は同国のGDPの約4分の1を占め、約36万世帯が恩恵を受けている。暗号資産の売買は、送金プラットフォームを介した送金・受入よりもはるかに複雑なプロセスであることがわかっている。これらの世帯のすべてが、このまったく新しい決済システムをすぐに学び、適応する可能性は極めて低いだろう。

さらに、暗号資産で商品やサービスを購入するには、ほぼすべての状況で、デジタル資産を現地通貨に戻す必要がある。これは、日々の生活に必要な資金を迅速に入手するために送金を頼りにしている何百万人もの人々にとっては大変なことだ。

最近の顧客調査によると、送金者は主に食料(73%)、医療(59%)、住居(54%)など、生存と幸福のための基本的な費用をまかなうために送金していることがわかった。暗号資産は、このような多くの人々が即時性を求めて依存する生命線となるには、まだ早いのだ。暗号資産はほとんどの地域通貨と比較して特に変動しやすいため、20ドルがそのまま20ドルとして届くことを頼りにしている人たちの安全な避難所として頼りきることはできないのだ。ビットコインの価格推移を見れば一目瞭然だ。

最後に、米国を含め、多くの国がまだ暗号資産の取引 / 支払いに法的な道筋を認めていない、あるいは提供していない。大げさにいえば、2022年の年末年始のプレゼントはビットコインで支払うことになるかのように盛り上がっているが、通路の反対側には反対のアプローチを取っている国が何十とある。

国境を越えた決済の流れを効果的にするために、デジタル資産は、実用性の欠如、取引所の費用、複雑さ、変動性、地域通貨へのオン / オフランプの制限など、国境を越えた使用事例にかかわらず、すでにその採用能力を弱めている生来の課題を克服しなければならない。

暗号や暗号資産やデジタル通貨は、最終的には国境を越えた決済を効率化するのに役立つと私は信じている。個人的にも、投資として暗号資産を「保有」し、この業界の一翼を担うことは、とても楽しいことだ。しかし、多くの新技術がそうであるように、デジタル資産が世界的な送金の標準になるには、まだそれなりの障害が残っているのも事実だ。

開示:MoneyGramはステラとのパートナーシップに着手し、ステラネットワークに接続されたデジタルウォレットがMoneyGramのグローバルリテールプラットフォームにアクセスできるようになりました。

編集部注:本稿の執筆者Alex Holmes(アレックス・ホームズ)氏は、デジタルP2P決済の進化におけるグローバルリーダーであるMoneyGram Internationalの会長兼CEO。

画像クレジット:Olena Poliakevych / Getty Images

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(文:Alex Holmes、翻訳:Akihito Mizukoshi)

フェイスブックが暗号資産ウォレット「Novi」の試験運用を米国とグアテマラで開始

Facebook(フェイスブック)が「Novi(ノヴィ)」と名づけた暗号資産ウォレットの小規模な試験運用を開始した。現時点では、米国とグアテマラの限られた人々のみが、Noviにサインアップして、使い始めることができる。

Facebookは、Diem(ディエム)協会の創設メンバーだ。しかし今のところ、Noviでは同協会のブロックチェーン(Diemネットワーク)上にある同協会のステーブルコイン(Diem)を活用するのではなく、代わりにFacebookはPaxos(パクソス)やCoinbase(コインベース)と提携。これによってユーザーは、Paxosの米ドルステーブルコイン「USDP」を送ったり受け取ったりでき、これらの暗号資産はCoinbaseが管理(カストディ)することになる。しかし、これはあくまでも中間段階であり、Facebookはいずれ、USDPをDiemに置き換えることを計画しているという。

Facebookは当初、暗号資産プロジェクトに対して大きな計画を立てていた。同社は「Libra Association(リブラ協会)」と呼ばれる暗号資産の運営コンソーシアムを設立し、これに参加する企業とと協力して、不換紙幣や国債のバスケットに連動するまったく新しいデジタル通貨「Libra(リブラ)」を発行する計画だった。本来であればLibraは、単一の現実世界の通貨ではなく、複数の通貨を混ぜ合わせたものがベースになるはずだった。

しかし、Facebookは多くの中央銀行から強い反対を受けることになった。彼らは、Libraが一部の国で準主権的な通貨になることを恐れたのだ。協会は2020年、その野心を抑えて、単一通貨のステーブルコインに注力することを発表した。

ステーブルコインとは、時間の経過によって変動することがない固定の価値を持つ暗号資産のことだ。例えば、Libra Associationが「LibraUSD」を発行するならば、1LibraUSDは常に1米ドルと同じ価値を持つことになる。

数カ月後、Libra Associationは再びいくつかの変更を発表、LibraはDiemに名称が変わり、協会名も「Diem Association(ディエム協会)」になった。同様に、Facebookのウォレットプロジェクトも
「Calibra(カリブラ)」からNoviにブランドが変更された。しかし、DiemもNoviも、まだ準備は整っていなかった。

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そして今、FacebookはNoviの試験を実際の一部ユーザーを使って始めようとしている。同社はまず、米国とグアテマラ間の送金に焦点を合わせることにした。送金したいNoviユーザーは、Noviアプリをダウンロードしてアカウントを作成し、デビットカードなどの支払い方法を使ってNoviに入金する。

入金された米ドルは、手数料なしでUSDPに変換される。Paxosが発行するUSDPは米ドルステーブルコインで、以前はパックスダラー(PAX)と呼ばれていたが、Paxosは最近、USDPにブランド名を変更した。

USDPはその価値を確保するために、現金および現金同等物によって担保されている。Noviユーザーの資金は、Coinbase Custody(コインベース・カストディ)によって管理される。つまり、CoinbaseがNoviのユーザーのためにUSDPの資金を保管するということだ。

Noviユーザーは、他のNoviユーザーにUSDPを送ることができる。繰り返しになるが、送金にかかる手数料は必要ない。しかし、お店での支払いや家賃の支払いにNoviを使うことはできない。そのためにユーザーは、現金の必要な場所では、Noviの残高を引き出したり、銀行口座に残高を送金したりできる。

しかし、NoviはUSDPをグアテマラ・ケツァルに変換する際に手数料がかかるかどうかについては言及していない。米ドルステーブルコインのUSDPをグアテマラの通貨単位に両替するには、為替レートを選択しなければならず、それにはスプレッド、流動性、その他のさまざまな変数が関わってくるからだ。

また、Noviは展開したいと考えるすべての市場で、フィアット / クリプトのオンランプおよびオフランプ(法定通貨と暗号資産の交換サービスを提供する場)を設けなければならない。

Facebookによれば、これはNoviの始まりに過ぎないという。それは第一に、まずはグアテマラと米国(アラスカ、ネバダ、ニューヨーク、米領ヴァージン諸島を除く)の一部のユーザーにのみ試験的に提供されるということ。そして第二に、FacebookとDiem Associationは、いずれ独自の暗号資産を立ち上げる計画を諦めていないということだ。

「我々のDiemに対するサポートに変更はなく、Diemが規制当局の承認を得て発行できるようになれば、NoviにDiemを導入して運用を開始するつもりであることを明確にしておきたい。私たちは相互運用性を重視しており、きちんと行いたいと考えています」と、NoviプロジェクトのリーダーであるDavid Marcus(デヴィッド・マーカス)氏はTwitterで述べている。

Facebookが暗号資産Libraの発行計画を発表したのは、2019年6月のこと。それ以降、暗号資産のエコシステムは大きく変化した。特に、いくつかのステーブルコインが信じられないほどの人気を博しており、Tether(テザー)とUSD Coin(USDコイン)の流通量は現在、合わせて1000億ドル(約11兆5000億円)を超えている。そんな中で、Diemが既存のステーブルコインに追いつき、新たなユースケースを開拓できるかどうか、興味深いことになりそうだ。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】暗号資産による送金は世界で最も弱い立場にある人々の生命線

アフガニスタンからの米国の突然の撤退により、Western Union(ウエスタンユニオン)が一時的に業務を停止し、国内の銀行も引き出しを厳しく制限するなか、暗号資産(仮想通貨)による送金がアフガニスタンの人々の生命線となっている。

米国や英国などの送金側の規制当局は暗号資産に目を向けている。彼らは、世界で最も弱い立場にある人々にとって、暗号資産がどれほど欠かせないものであるかを忘れてはならない。

アフガニスタンだけでなく他のどの国であっても、現地通貨が入手困難になり、価値の貯蔵手段としての信頼性が低下すると、暗号資産はますます不可欠なものとなる。紛争はインフレを招き、通貨の価値を下げ、時には無価値にしてしまう。

もし、国内の暗号資産タカ派をなだめるために暗号資産の送金を規制したら、この資産クラスを最も必要としている人々、つまりアフガニスタンの人々やその他多くの人々に(再び)背を向けることになる危険性がある。

タリバン占領後、アフガニスタンの金融システムも凍結されてしまった。世界銀行によると、アフガニスタンのGDPの約4割を占める海外からの援助が止まった。同様に、アフガニスタン中央銀行の外貨準備も凍結された。その額は約90億ドル(約1兆円)

さらに、タリバンによる占領と欧米諸国による対外援助停止を受け、Western UnionやMoneyGram(マネーグラム)などの国際送金会社がサービスを停止した(今のところ再開しているケースもある)。そのため、一般のアフガニスタン人は世界の金融システムにアクセスできず、そしてここが重要だが、海外の親族からの送金を受け取れなくなった。

送金とは、豊かな国から「母国」にお金を送ることで、アフガニスタンのGDPの約4%を占める。現金に大きく依存する経済において、現地の金融インフラが突然崩壊することは、多くのアフガニスタン人にとって生死を分けることになり得る。

送金が生命線であり続けるためには、迅速でなければならない。お金が必要なときは、すぐに必要になることが多い。例えば、国内で避難生活を送る人々は、資金が決済されるまで3~5日も待つことはできない。彼らは今すぐにでも食料、燃料、医薬品を必要としている。

ビットコイン「過激主義者」は、暗号資産が世界の経済システムをいかに変えるかについて、目を輝かせて主張する。彼らを信じるかどうかは別にして、私たちの前で、暗号資産は不安定で紛争が絶えない場所での送金に、すでに革命を起こしている。アフガニスタンは、破綻した国家における暗号資産の教科書的な使用例を示している。

時として、切迫する必要性が新技術導入の強力な論拠となる。アフガニスタンは、ブロックチェーンのデータプラットフォームであるChainalysisのGlobal Crypto Adoption Indexで、154カ国中20位に位置している。ピア・ツー・ピアの取引(送金を含む)を加味すると7位だ。2020年には、アフガニスタンはリストにすら入っていなかった。

アフガニスタンだけではない。レバノン、トルコ、ベネズエラでは最近、暗号資産の使用率が急増した。人々は一攫千金を狙っているわけではない。海外の親族から資金を受け取り、高インフレ時に資産消滅を防ごうとしているだけだ。

ベネズエラを拠点とする暗号資産コンサルタントのJhonnatan Morales(ジョナタン・モラレス)氏は「多くの人々は、モノを手に入れるためではなく、ハイパーインフレから身を守るために暗号資産を採掘したり取引したりしています」と見ている

インフレ率が世界で最も高いベネズエラ(3000%に向かっている)では、経済が不安定になるにつれ、暗号資産の導入が進む。

レバノンもその一例だ。リラがその価値の80%を失う中、例えばビットコインウォレット「BlueWallet」のレバノン人によるダウンロード数は、2020年に前年比1781%増加した

だがアフガニスタンは、グローバルサウス(南半球の発展途上国)が暗号資産を必要とする理由を示す、最も緊急かつ悲劇的なケースかもしれない。現金が不足し、物価が高騰し、タリバンがこれまで頼りにしていた外国からの援助を失うと、すでに崩壊しているアフガニスタンの通貨はさらに弱くなる。アフガニスタンの人々が自らの富をビットコインで受け取り、保管し、使うことができるようになれば、破綻国家の最悪の影響から自分たちを守ることができるかもしれない。

そしてこれこそが、欧米で暗号資産を規制する際に忘れてはならないことだ。規制は投機家に影響を与えるだけでなく「母国」に送金したい人にも打撃を与える。最も失うものが大きいのは送金を受け取る人々だ。

米連邦準備制度理事会(FRB)のJerome Powell(ジェローム・パウエル)議長が、暗号資産規制の次の段階に関する報告書を発表する際には、暗号資産を最も必要としている人々、つまりアフガニスタンの人々や、彼らのような世界中の何百万もの人々のことを忘れないで欲しいと思う。

欧米はアフガニスタンの人々に背を向けたのかもしれないが、私たちは自国の法律が彼らを暗闇に置き去りにしたままにすることがないようにしなければならない。暗号資産の規制は、重要な金融の生命線が失われないようにしなければならない。さもなければ、暗号資産を最も必要とする人々の希望の扉をまた1つ閉じてしまうことになる。

編集部注:本稿の執筆者Joshua Jahani(ジョシュア・ジャハニ)氏は、コーネル大学およびニューヨーク大学の講師であり、中東・アフリカを専門とする投資銀行Jahani and Associates(ジャハニ・アンド・アソシエイツ)のボードアドバイザー。

画像クレジット:EDUARD MUZHEVSKY/SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

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(文:Joshua Jahani、翻訳:Nariko Mizoguchi

Visaが送金や為替のAPIデベロッパーCurrencyCloudを約1060億円で買収

Visa(ビザ)が参加したラウンドで8000万ドル(約88億円)を調達してから1年半、送金や為替などのサービスを動かすAPIのデベロッパーであるロンドン拠点のCurrencycloud(カレンシークラウド)がさらに金融サービス大手に近づいている。Visaは現地時間7月22日、CurrencyCloudを9億6300万ドル(約1060億円)と評価する取引で同社を買収すると発表した

関連記事:国際送金APIのCurrencycloudがSBIやVisa、世銀グループなどから約87億円調達

この評価額は最後の資金調達からかなりの飛躍だ。情報筋によると、直近の資金調達でCurrencyCloudは約5億ドル(約550億円)と評価されていた。

(VisaはすでにCurrencyCloudに出資しているため、実際には出資分が引かれた額を支払う)

CurrencyCloudは、マルチ通貨ウォレット、為替サービス、口座管理などを動かすのに同社のAPIを使っている500ほどの顧客を180カ国に抱える。ここにはMonzo、Moneze、Starling、Revolut、Dwollaといった大手スタートアップも含まれる。既存の顧客はそのままに、Visaは金融機関やフィンテックなど自社の顧客に幅広いサービスを提供すべく、また顧客のために新たなサービスを構築するために、為替事業強化でCurrencyCloudのテクノロジーを活用する。

「CurrencyCloudは、小さなスタートアップから多国籍企業まで、すべての人により良い明日を届けるよう常に努力してきました。世界経済で金がどのように動くのか再考することは、Visaに加わる今、さらにエキサイティングなものになりました」とCurrencyCloudのCEO、Mike Laven(マイク・ラヴェン)氏は声明で述べた。「CurrencyCloudのフィンテック専門性とVisaのネットワークの組み合わせにより、国境を超えて金を動かしている企業にさらに大きな顧客バリューを届けることができます」。

送金や通貨振替は金融サービスで一大事業となることが見込まれ、そのチャンスは拡大している。eコマースが特に過去18カ月、かなり国境を越えていること、そしてサプライチェーンも同様であることが要因だ(世界の零細企業の43%が2020年に何かしら国際貿易のようなものを行ったとVisaは指摘している)。そして取引を促進するクラウドベースのモバイルサービスの台頭で、将来の展望において顧客はこれまでになくグローバル化している。

と同時に、送金と通貨振替はディスラプトの機が熟している分野だ。既存のサービスは往々にして高コストで非効率的だ。これらの要素すべてがCurrencyCloudのような会社のお膳立てをしている。同社は他の金融サービスがよりスムーズに行われるようサポートすべく、そうしたサービスに埋め込むことができる通貨振替の新しいツールを構築した。

イグジットは、既存の大手金融会社が次世代の金融サービスへと進むにあたってイノベートして新たなサービスにすぐに取り掛かるのが困難なため、テクノロジーに大きく賭けている小さくて俊敏なスタートアップを取り込むという古典的な例だ。VisaがCurrencyCloudのテックをうまく統合して活用し、CurrencyCloudのチームと協業できるかはすでにテストされたところだ。2社は今回の買収取引の前に戦略的パートナーだった。

「CurrencyCloudの買収は、Visaが世界の金の動きを促進するためのネットワーク戦略のネットワークで実行するもう1つの例です」とVisaのグローバル財務責任者Colleen Ostrowski(コリーン・オストロウスキ)氏は声明で述べた。「顧客や企業は国際送金したり、送金を受け取ったりするときに透明性、スピード、シンプルさをますます期待するようになっています。CurrencyCloudの買収で我々はクロスボーダーの支払いに関する悩みの種を減らして顧客やパートナーをサポートし、クライアントの顧客のためにすばらしいユーザーエクスペリエンスを開発することができます」。

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タグ:Visa送金CurrencyCloud買収

画像クレジット:Andrew Harrer/Bloomberg / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルがQR決済・送金アプリの「pring」を買収

グーグルがQR決済・送金アプリの「pring」を買収

メタップスは7月13日、同日開催の取締役会において、同社持分法適用関連会社pringの全株式をGoogleに譲渡すると決定したと発表した。同社はpring株式を45.3%保有しており、譲渡額は約49億2000万円となっている。株式譲渡実行日は、7月下旬~8月下旬。同日、22.7%保有のミロク情報サービス、18.6%保有の日本瓦斯(ニチガス)も全株式譲渡を発表した。

pringは、友人・知人などと個人間送金が行える送金アプリを提供。経費精算・報酬支払いなど法人から個人に送金できる法人向けサービスや、QR決済事業なども展開している。

メタップスは今回、Googleによるpringの全株取得の意向を受け、メタップスが保有するpring全株式を譲渡する決定を行った。メタップスは、B2B事業およびストック型ビジネスに注力するための、事業ポートフォリオの見直しの一環としている。

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タグ:送金(用語)Google / グーグル(企業)買収 / 合併 / M&A(用語)pring日本(国・地域)

暗号資産で国境を越える面倒な「クロスボーダー決済」を簡単、迅速にできるようにするMercuryo

国境をまたぐ決済のネットワークを作ったMercuryoが、シリーズAのラウンドで750万ドル(約8億3000万円)を調達した。

ロンドン生まれの同社は、「デジタル資産の決済ゲートウェイ」によってブロックチェーンをビジネスにとって便利なものにすることを目的とする「暗号資産のインフラストラクチャ企業」と自らを説明している。具体的には同社は、さまざまな決済ソリューションを集積して、法定通貨と暗号資産による決済や支払を提供する。

もっと簡単にいうと、Mercuryoの狙いは、次世代の国境を越えた送金を暗号資産をツールとして使って推進することだ。同社はそれを「どんな企業でも金融業務の面倒な知識や経験なしでフィンテック企業になれる」と説明する。

Mercuryoの共同創業者でCEOのPetr Kozyakov(ペトル・コジヤコフ)氏は「迅速で効率的な国際決済を、特に企業はこれまで以上に必要としている」と語る。多国間決済サービスを提供している企業はすでにたくさんあるが、暗号資産をその軸に据えることが、同社の差別化要因だ。

コジヤコフ氏は「私たちのチームには、低料金の簡単な手続きで暗号資産を至るところで使えるようにする、という明確なプランがあります。そうなれば、暗号資産という資産を使って、グローバルな送金や大量一括支払などさまざまなサービスを得られるようになります」という。

左からAlexander Vasiliev(アレクサンドル・ワシリエフ)氏、Greg Waisman(グレッグ・ワイズマン)氏、ペトル・コジヤコフ氏(画像クレジット:MercuryO)

Mercuryoが営業を始めたのは2019年の初頭だが、それ以降大きく成長して、4月には年間経常収益が5000万ドル(約55億4000万円)を超えた。顧客ベースは100万に近く、また同社は、暗号資産の大手であるBinanceやBitfinex、Trezor、Trust Wallet、Bithumb、そしてBybitなどとパートナーしている。2020年に同社は売上が50倍に増加し、2021年4月には年商が25億ドル(約2770億円)を超えたという。

この勢いに乗じてMercuryoは、米国などに向けて新市場の開拓を開始し、特に米国では2021年初めにすべての州で、B2Bの顧客のための暗号資産による決済サービスをローンチした。今後は、アフリカや南米、東南アジアなどへの「漸進的」拡張を計画している。

Target GlobalがMercuryoのシリーズAをリードし、またエンジェル投資家たちのグループが投資に参加して、2018年の創業以来の総調達額は1000万ドル(約11億円)を超えた。

同社が今度の資金の用途として考えているのは、暗号資産のデビットカードを立ち上げることと、ラテンアメリカやアジア太平洋地区への市場拡大の継続だ。暗号資産のデビットカードがあれば、世界中どこでも自分のウォレットの暗号資産残高から直接、支出できる。

Mercuryoの多様なプロダクトの中には、複数通貨のウォレットがあり、それには暗号資産の取引機能が内蔵されている。他にもデジタル資産の購入機能やウィジェット、暗号資産の大量取得機能、そしてOTCサービスなどのプロダクトがある。

コジヤコフ氏によると、同社は複数通貨間の換金手数料を取らず、その他の「隠れ料金」もないという。

「パートナーにも、またその顧客にも、瞬間的で容易な、国境をまたぐ送金処理を提供できる。送金サービスには中間搾取者がおらず、取引終了までに余計な手続きがない。私たちが提供するサービスは、わずか2種類に絞られます。1つは送金時の法定通貨から暗号資産への交換であり、もう1つは資金を受け取る際の暗号資産から法定通貨へという変換です」とコジヤコフ氏はいう。

Mercuryoには、暗号資産のためのSaaSプロダクトもあり、そこでは顧客が自分の法定通貨の口座から暗号資産を手に入れ、そのデジタル資産の管理を同社に委託する。

コジヤコフ氏によると「それがバーチャルアカウントであっても、あるいは顧客のサードパーティのウォレットであっても、私たちが扱うのは銀行のための暗号資産関連処理のほとんどすべてであり、顧客は自分たちの本来の仕事に集中できます」という。

Target Globalの共同創業者であるMike Lobanov(マイク・ロバノフ)氏によると、彼の会社はBitcoinを購入する場合の各社のソリューションを実験的に試してみた。ロバノフ氏は「投資家のデューデリジェンスとして我々が計測したのは、暗号資産への変換に要する時間、すなわちApp Storeへ行ってアプリをダウンロードするところから、ウォレットにデジタル資産が収まるまでの時間を計測した」という。

トップはMercuryoの6分間だった。KYCに始まり、送金から暗号資産が得られるまでの時間だ、とロバノフ氏はいう。「2位は20分でしたが、我々のトランザクションを処理するのに時間が無限にかかっているアプリもあった。Mercuryoはこの分野のゲームチェンジャーです。私たちが初期から同社を支援してきたことは、本当に喜ばしいことです」。

同社が次のリリースとして予定しているプロダクトは、大量の複数の顧客とかギグワーカーなどに同時に一瞬にして大量決済ができるサービスだ。受取人は、地球上のどこにいてもよい。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Mercuryo資金調達暗号資産送金クロスボーダー決済

画像クレジット:Liyao Xie/Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クロスボーダー送金のWiseがロンドン証券取引所に直接上場へ

TransferWise(トランスファーワイズ)として知られていたフィンテック企業Wise(ワイズ)はロンドン証券取引所に上場する計画を明らかにした。従来のIPOルートは取らず、直接上場で公開する。ロンドン証券取引所で最大の直接上場となる見込みだ。

Wiseのことを知らない人のために説明すると、同社はクロスボーダーの送金を専門としている。あなたが別の国に暮らしている人に送金する場合、従来のリテールバンクは為替手数料や外国取引手数料などかなりの手数料を取る。

もちろん、Western UnionやMoneyGramなどよく知られている別の選択肢もある。そうした企業は便利なオンランプとオフランプの手法を提供しているが、それでもWiseより手数料がかかる。

Wiseではユーザーはまず、銀行振替やデビットカードを使ってWiseアカウントに送金する。すると別の通貨で受け取り手の銀行口座に送金できるようになる。固定手数料や変動手数料に関し、Wiseは可能な限り透明かつ正直であろうとしている。

2011年創業のWiseはかなりの成長を遂げてきた。直近の会計年度では、売上高は前年の4億2200万ドル(約465億円)から5億8600万ドル(約646億円)に増えた。税引前利益は5700万ドル(約63億円)だ。同社によると、2017年から黒字となっている。

同社は毎月、約70億ドル(約7718億円)のクロスボーダー取引を行う顧客1000万人を抱える。直近では、新しいプロダクトを追加して売上を多様化させた。

例えば顧客はWiseアカウントにお金を56の通貨で保有できる。10の異なる通貨、そしてデビットカードで口座番号が発行される。この機能は、他国から支払いを受けたいフリーランサーや1、2年海外で過ごすという人にとって特に便利だ。

同社はWise BusinessでB2C以外にも事業を拡大してきた。そうした口座は通常のWise口座と少し似ているが、複数の人が使うことができ、また別の機能も持っている。Wiseはまた、MonzoやN26などサードパーティのサービスでのクロスボーダー取引も動かしている。

直接上場の選択は興味深い動きだ。米国ではSpotify、Coinbase、Slackなど数社が直接上場を行った。銀行がサポートしない直接上場を選択するというのは、投資家から十分な関心を集められると自信があることを意味する。

また、直接上場では追加の資金を調達できないため、Wiseがさらなる資金を必要としていないことにもなる。

他の多くのテック企業と同様、Wiseは2種類の株式を発行するデュアル・クラス・ストラクチャーを採用する計画だ。これによりWiseの既存の株主はしばらくの間、より多くの株式あたりの議決権を得ることになる。Wiseの直接上場は欧州のフィンテックシーン、そして英国のテックエコシステムにとって重要なものになる。投資家がWiseをどうとらえるか、見てみよう。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Wise送金ロンドンIPO

画像クレジット:Wise

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国のフィンテックWalletsClubは世界で使える「eウォレットのためのVisa」を目指す

WalletsClubの共同創業者:CEOのシュー・ジシャン氏、COOのZeng Xianru(ツェン・シェンルー)氏、CTOのLiu Hang(リュー・ハン)氏

デジタル決済が世界中で主流になりつつある。モバイルネットワーク事業者の業界団体であるGSMAが発表したレポートによると、2020年末までにアクティブユーザー10万人超を抱えるモバイルマネープロバイダーは300社超となった。合計で3億を超えるモバイルマネー口座が世界中で毎月使われている。

eウォレットとして広く知られるモバイルマネープロバイダーは、従来の銀行に頼ることなく携帯電話を通じての送金、支払い、支払い受け取りに使われている。広く浸透し、強固なネットワーク効果を享受している限り、使い勝手はいい。しかし年間ユーザーが10億人を超えるAnt GroupsのAlipayのような人気のサービスですら、大半の国ではさほど浸透していないために中国外では実際には使用できない。

そこでの問題は、従来の銀行が持つ相互運用性が大半のウォレット間ではないことだ、とWalletsClubを創業する前にAlibabaのクラウド部門とAlipayの基礎インフラ構築に携わったXue Zhixiang(シュー・ジシャン)氏は指摘した。

2019年に香港で登記し、中国本土にオペレーションチームを抱えるWalletsClubはデジタルウォレットのためのVisaになることを狙っている。世界の何百もの電子マネーサービス間での送金を可能にするというものだ。

「デジタルウォレットのための手形交換所のようなものです」とCEOのシュー氏は話した。

決済システムは金融取引に関わっている2者の仲介だ。資金の有効性を認証し、取引を行う2者間の送金を記録することで、送金の効率とセキュリティを確保するようデザインされている。WalletsClubを使ってリアルタイムに支払ったり、支払いを受けたりすることができる、とシュー氏は主張した。同社のテクノロジーは金融機関が世界中でデータを交換するのに使われている「ISO 20022」基準に基づいているとも話した。

言い換えると、WalletsClubは個人エンドユーザーではなく、世界中の何百ものeウォレットを追いかけている。同社のビジョンは、送金する側と送金を受け取る側のサービスプロバイダーあるいは金融機関がWalletsClubの会員である限り、あらゆるモバイルウォレットを使って人々がどこででも支払えるようにすることだ。これはVisaやMastercardがネットワーク内のさまざまな銀行が発行しているクレジットカードをいかに処理しているかに似ている。WalletsClubは取引ごとに定額手数料を課すことで収益をあげる計画だ。

電子ウォレットに相互運用性を加えることで、決済システムが動いているところであればどこでも互換性を獲得するため、特定の地域でサービスを提供する小規模事業者ですら成長できる。

従来の金融システムに挑む代わりに、WalletsClubは銀行サービスを利用できていない個人が簡単にデジタルウォレットを使ってお金を動かせるようにする手段を提供したいと考えている。この手段は銀行口座を開設するより簡単だ。何百万人という東南アジアの労働者のような、母国に送金する必要がある出稼ぎ労働者の中にそうした送金に対する大きな需要がある。

WalletsClubは潜在的には数社のテリトリーに侵入している。母国に送金する移民労働者は現在、長年にわたって展開されているWestern UnionやMoneyGramといった送金サービスに頼っている。いずれのサービスもユーザーが送金したり金を受け取ったりするのに足を運ぶ「エージェント」の大きなネットワークを持つ。2018年にAlipayは香港のユーザーがフィリピンのGCashアカウントに送金できるようにしたが「Ant Groupのフォーカスは送金というより決済だった」とXue氏は述べた。

世界銀行のデータによると、故郷を離れている労働者からの母国への送金は2019年に、中国を除く低中所得国における最大の海外からの資金調達源となった。送金額は5000億ドル(約54兆4625億円)超となり、そうした低中所得国の海外直接投資の水準を上回った。

モバイルウォレットの手形交換所が脅かすその他の業種としては、事業者がさまざまなデジタル決済手法を統合しなくてもいいようにしているクロスボーダー決済アグリゲーターがある。

初期段階にあるWalletsClubにとって最大の課題は顧客との信頼関係の構築であり、同社は香港、シンガポール、カナダにいる中国人起業家が興した電子マネーサービスと協議中だ。こうした創業者たちがここ10年の中国のフィンテックブームから学んだことのおかげで、中国で開発されたウォレットは特に新興マーケットで数多く展開されている。それらの多くはTencentやAntのような巨大企業と競合するのは難しいとわかっていて、中国のフィンテックをめぐる規制強化はいうまでもない。

「メンバーを20社集め、メンバー間の毎日の決済が数百件あれば、当社は基本的に利益をあげられます」とシュー氏は話し、目標は2021年中に参加企業12社を獲得することだと付け加えた。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:WalletsClubデジタルウォレット中国送金

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi