アップルが「リーダー」アプリの外部リンク使用を許可、ただし承認が必要

Apple(アップル)は米国時間3月30日、App Store(アップストア)で販売される一部のアプリケーションが、外部ウェブサイトにリンクし、ユーザーがアプリデベロッパーのアカウントを作成したり管理したりできるようにすることを許可すると発表した。このApple App Storeレビューガイドラインの変更は、同社が「reader(リーダー)」アプリと呼んでいるカテゴリーのみに適用される。すなわち雑誌、書籍、オーディオ、音楽、ビデオなどある種のデジタルコンテンツへのアクセスを提供することを主として作られたアプリだ。Appleの計画が最初に発表されたのは、2021年9月に日本の規制機関であるJapan Fair Trade Commision(JFTC、公正取引委員会)と和解したときのことで、2022年初頭に実施されるとされていた。

以前同社は、この変更が有効になる時には全世界のリーダーアプリが対象になると言ったが、正確な実施日付は明らかにしなかった。

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3月30日、AppleのApp Store Reviewガイドラインは改定され、リーダーアプリがこの機能を実装する方法を説明する新たな記述が加わった。

具体的に、Appleはデベロッパーに対し、この機能を自社アプリで提供するために必要な同社が External Link Account Entitlement(エクスターナル・リンク・アカウント・エンタイトルメント)と呼ぶものを申請するよう指示している。この資格は、特定の機能をどのデベロッパーが実装可能であるかどうかに関して、Appleが支配を維持するために用いられる。つまり、App Storeのルールを単に変更して、対応するカテゴリーの全アプリに対してこの種の振る舞いを認めるのではなく、この資格取得プロセスでは、デベロッパーが特殊な利用形態として申請し、承認を得ることが必要になる。こうしてAppleは、リンクの追加を許可されたアプリをアプリ・レビュー・チームに任せきりにするのではなく、会社として入念に検査することができる。

さらに同社は、外部リンク・オプションの使用を許可されたデベロッパーのために、 Usage Guidelineおよび実装の詳細を公開した。その中でAppleは、デジタル・コンテンツへのアクセスを提供しているアプリすべてが承認されるのではないことを説明している。デジタル・コンテンツのアクセスがアプリの「主要な機能』でなければならない、とAppleは述べた。例えばソーシャルネットワークアプリ(例えばFacebook)のように動画のストリーミングもできるアプリには適用されない。

Appleはまた、資格を得るためにはアプリがユーザーに、以前そのアプリ以外で購入したコンテンツやサービスどアクセスもできるようにしなくてはならず、家庭教師、フィットネスインストラクション、不動産内見ツアー、医療コンサルテーションなどの個人対個人サービスは実施できない。

画像クレジット:Apple

Appleが、External Link Account Entitlementの利用を選択したアプリは、iPhone、iPadいずれにおいてもアプリ内購入を提供できなくなると言っていることは注目に値する。二者択一の状況だ。

Appleの解説には、リンクがどのように動作すべきか、たとえば新規にブラウザーウィンドウを開かなくてはならず、アプリ内のWebViewではいけないことや、リンクの表示方法などが詳細に書かれている。デベロッパーのウェブページでは、App Store以外で提供される価格を宣伝することも禁止されている。書けるのは「example.comへ行ってアカウントの作成・管理をおこなってください」などごく簡単なことだけだ。他にもいくつか技術的制約がある。

もう1つ注目すべきなのは、この変更が政府の規制のために実施されただけのものであり、AppleがこれをApp Storeのあるべき姿だと信じたからではないことだ。このサポートの高圧的なやり方や利用に関する規則からみても、Appleがこれを最終的にApp Storeの収益減少につながる危険な坂道であると見ていることは明白だ。

今回の変更は、反競争的行為に対する訴えを受けた議会や規制当局がアプリストア提供者であるAppleとGoogle(グーグル)に圧力をかける中で起きた。戦いは法廷でも行われており、AppleとGoogleは現在、「Fortnite(フォートナイト)」の開発元であるEpic Gamesと係争中で、Appleは現在上訴中だ。他にもデベロッパーがアプリ内で収集した連絡先情報を使って、支払い方法について顧客と連絡を取ることを許すようAppleに圧力をかける集団訴訟も起きている。

この日のリーダーアプリに関する変更に加えて、韓国ではAppleとGoogleがデベロッパーに対してそれぞれの独自決済システムの使用を強制することを禁止する法案が通過している。さらに、超党派によるAppleとGoogleを標的にしたアプリストア法案が上院司法委員会で承認され、法制化が近いことを示している。しかし、先行してアップストアの運用を全面見直しする代わりに、Appleは規制を遵守しようとする中でさえ、最後までその支配力にしがみついている。この姿勢は悪化の一途をたどっており、オランダではデートアプリのサードパーティー決済対応に関する新ルールの不履行を巡ってAppleは10回にわたって罰金を課せられた

Appleは本日、External Link Account Entitlementの申請受付を開始したが、リーダーアプリの開発・テストに必要なAPIが利用可能になるのは近日提供予定のiOSおよびiPadOSのベータ版だと同社は言っている。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

知らなかった、iPhoneからiPadへ魔法のように画像をコピーできるなんて

iOSは、各メジャーリリースごとにたくさんたくさんの機能を導入するが、その中には残念ながら明らかではないものもある。そういったものがTikTok上で「あなたの知らないiPhoneの機能」というネタを生み出しているのだ。例題#4123131。この動画を見てみよう。

@initialfocus

#stitch with @partyshirt I am way too late to this party #apple #iphonetricks #iphone

♬ original sound – michael

Appleの昔からあるContinuity(コンティニュイティ)機能や新しいUniversal Control(ユニバーサルコントロール)については、もうご存知だろう。スマートフォンからノートパソコンにリンクをコピー&ペーストすることは、特に画期的なことではない。しかし、上に示したように、元Apple社員でさえ、ピンチジェスチャー(指3本使用)を使ってiPhoneとiPadの間で、まるで技術通の魔法使いがタロットカードの上でダイスをふるように、画像をコピー&ペーストすることができることを知らなかった。すでに何カ月も前からある機能を、よりクールに、より魔法使いっぽくしたものだ。同じApple IDを持つタッチスクリーン式のAppleデバイスを、2台使っていれば実行できる。

すでにご存知だった方、おめでとう。しかし、TechCrunch内のSlack(スラック)上の息抜きチャンネルでは、たむろしていたポッドキャストライター5人全員が、こんなことができるなんて知らなかったのだ。

画像クレジット:PM Images / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:sako)

アップルとMLBが12週にわたり金曜ナイトゲームを無料ライブストリーミング配信、日本でも視聴可能

3月初め、Apple(アップル)はメジャーリーグベースボール(MLB)と初のライブスポーツ契約を締結し、2022年シーズンに向けて多くの試合やその他のMLBコンテンツをApple TV+サービスに提供することを発表した。米国時間3月29日、Appleは「Friday Night Baseball(フライデーナイト・ベースボール)」の最初の12週間のダブルヘッダースケジュールを公開し、インターネットにアクセスできる人なら誰でも、Apple TV+のサブスク契約なしで自由に視聴できるようにすると発表した。

以前Appleは、フライデーナイトゲームのいくつかを「期間限定」で無料提供することを示唆していたが、その数については詳しく述べていなかった。この提供により、より多くのユーザーが、Apple TV+サブスクリプションにコミットする前に試してみるようになる可能性がある。AppleはTechCrunchに対し、消費者が無料でゲームをストリーミングするために、TV+のサブスクリプションや無料トライアルにサインアップする必要がないことを確認した。

Appleによると「Friday Night Baseball」スケジュールの前半は、4月8日に配信開始される予定。最初の試合は、New York Mets(ニューヨーク・メッツ)とWashington Nationals(ワシントン・ナショナルズ)の対戦で、ワシントンD.C.のNationals Park(ナショナルズ・パーク)から米国東部夏時間午後7時に生中継される。その後、Apple TV+では米国東部夏時間午後9時30分から、Houston Astros(ヒューストン・アストロズ)対Los Angeles Angels(ロサンゼルス・エンゼルス)戦をAngel Stadium(エンゼル・スタジアム)から生中継する。

その後も「Friday Night Baseball」ダブルヘッダーは、レギュラーシーズン中、Apple TV+で8カ国の野球ファンに向けて配信され続ける予定だ。6月24日までの前半のスケジュールは、こちらでご覧いただける。シーズン後半に行われるフライデーナイトゲームもAppleが無料にする予定かどうかについては、まだ不明だ。

MLBのシーズン開幕は労働争議で延期されていたが、それも解消された。

米国のファンは、ハイライトや進行中の試合のチェックを中心とした新しいライブ番組「MLB Big Inning」も視聴できるようになり、そちらはレギュラーシーズン中は毎晩放送される予定だ。さらに、米国とカナダのファンは、MLBの試合のリプレイ、ニュース、分析、ハイライト、クラシックゲームなどを含む24時間365日の新しいライブストリームと、ハイライトやその他のMLBオリジナルコンテンツを含むオンデマンド番組にアクセスできるようになる。試合や番組は、Apple TV+サービス全体でストリーミング配信され、地方放送の制限を受けずに視聴できる。

Appleはまた、4月15日は殿堂入り選手Jackie Robinson(ジャッキー・ロビンソン)のメジャーリーグデビュー75周年となることから、MLBがジャッキー・ロビンソン・デーを記念することにも言及している。

その夜、Appleの「Friday Night Baseball」では、元アメリカンリーグのジャッキー・ロビンソン新人王Randy Arozarena(ランディ・アロザレーナ)選手、オールスターでショートを務めたTim Anderson(ティム・アンダーソン)選手とChicago White Sox(シカゴ・ホワイトソックス)を訪問する特別中継を実施する予定だ。さらに記念イベントの一環として、2020年のナショナルリーグMVPであるFreddie Freeman(フレディ・フリーマン)選手と彼の新しいDodgers(ドジャーズ)のチームメイトが、昨シーズンのナショナルリーグのジャッキー・ロビンソン新人王Jonathan India(ジョナサン・インディア)選手とCincinnati Reds(シンシナティ・レッズ)をホストとして迎える。

Appleによると、レギュラーシーズン中の追加試合日程、放送チーム、制作の強化、試合前後の中継など、その他のプレゼンテーションの詳細については後日発表されるとのこと。

同ストリーミングサービスの「Friday Night Baseball」では、試合前後の関連番組もライブ配信される。

試合は以下の国でストリーミング配信される予定だ。

  • 米国
  • カナダ
  • オーストラリア
  • ブラジル
  • 日本
  • メキシコ
  • プエルトリコ
  • 韓国
  • 英国

今回の「Friday Night Baseball」は、Appleにとって初のライブスポーツへの参入となるが、かなり以前から同社のストリーミングサービスに追加することを検討していたといわれるものだ。しかし、このローンチは、Appleがその市場地位と多額の資金を活用して、他のストリーミング配信業者がなかなかできないようなことを行えるという例でもある。つまり、潜在的な加入者に対するサービスのマーケティング手段として、無料でライブスポーツを提供するというようなことだ。

試合は、iPhone、iPad、Mac、Apple TV上のApple TVアプリをはじめ、一部のスマートテレビ、ゲーム機、ケーブルTVのセットトップボックスなど、Apple TV+が搭載されているすべてのデバイスで視聴することができる。

画像クレジット:Apple

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(文:Aisha Malik、翻訳:Den Nakano)

アップルがiPhone SEの生産をウクライナ侵攻とインフレ懸念で20%削減との報道

チップ不足が続く中、Appleの最新決算報告では、同社が予想を上回る成果を上げたことが明らかになった。他のほとんどの市場が縮小する中、AppleはiPhoneの販売台数で9%の伸びを記録している。サプライチェーンに関わる場合、最大手であれば有利になる多くある。

しかし、Appleのような巨大企業でさえ、世界情勢の影響を受けないわけではない。パンデミックの初期には、Appleは不確実性を理由にガイダンスを提供することを行わなかった。ここ2年間の世界の状況を考えれば、それはおそらく正しい行動だろう。そして現在、最新のiPhone SEは、世界的な問題の「パーフェクトストーム」のようなものになりつつある。

Nikkei Asiaが事情に詳しい情報筋からの話として報じたところによると、AppleはiPhone SEの生産を20%削減するという。ウクライナ侵攻とインフレのワンツーパンチのため、少しは消費者が減るだろうとは考えられていたのは間違いないが、その数字の大きさは同社の最新スマホにとって驚きだった。この落ち込みは、同四半期で200〜300万台に相当する。

2022年3月初め、Appleは隣国ウクライナへの侵攻を受けて、ロシアでの販売を停止することを発表した。同社は当時「我々は状況を評価し続け、取るべき行動について政府と連絡を取り合っている。我々は平和を求める世界中の人々とともに行動します」。

Appleにとって最大のライバルであるSamsung(サムスン)をはじめ、他の多くの主要な消費者向けハードウェア企業が同様の行動をとっている。両ブランドとも、日常的に米国内のスマートフォン市場シェアのトップ5にランクインしている。

世界的なチップ不足は、広範なインフレ問題とともに、依然として購買決定に影響を及ぼす要因だ。スマートフォンのような非必需品に分類される製品の販売数には、必ずこうした経済的な懸念が関係している。少なくとも、ユーザーが旧型の端末を長く使うようになるという効果はある。

SEへの影響とともに、AirPodsの注文数も2022年全体で約1000万と大幅に増加したという。一方、iPhone 13の生産台数減少は、季節的な需要の変動によるところが大きいとされている。

TechCrunchは、Appleにコメントを求めている。

画像クレジット:Apple

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(文:Brian Heater、翻訳:Katsuyuki Yasui)

マッチング系アプリの決済に関するオランダにおけるアップルの罰金総額が約68億円に

出会い系アプリの決済方法に関してオランダで独占禁止法上の命令を受けたApple(アップル)に対する罰金の額は、継続的なコンプライアンス違反で規制当局が10回連続で毎週500万ユーロ(約6億8000万円)を科して5000万ユーロ(約68億円)となり、(現時点では)最大額に達した。

しかし、消費者市場庁(ACM)は現地時間3月28日、Appleが前日に直近の提案を修正したことを受け、修正提案は「出会い系アプリのプロバイダーにとって決定的な条件となるはずだ」と述べ、より前向きにとらえている。

完全な詳細を受け取り次第、当局は市場のフィードバックを求め、提案が受け入れられるかどうか早急に決定すると述べた。しかし、その評価にどれくらいの時間がかかるか、また修正案自体の詳細については、何ら情報を提供していない。また、修正案が受け入れられないと判断された場合、Appleはさらなる罰則を受ける可能性があるとも警告している。つまり、すでに数カ月に及ぶこの騒動は、まだ終わらないかもしれない。

Appleによるこれまでの提案は、当該開発者に不合理な摩擦をもたらすとしてACMによって拒否された。

3月28日発表された声明の中で、オランダの規制当局は次のように述べている。「ACMはAppleの今回の措置を歓迎します。修正された提案は、App Storeの利用を希望する出会い系アプリのプロバイダーにとって決定的な条件となるはずです。最終的な条件についての提案を受け取った後、ACMはそれを市場参加者に提出し、協議を行う予定です。ACMはその後、Appleがこれらの確定条件を実施する際に、出会い系アプリにおいて代替の支払い方法が可能であるべきというACMの要件を遵守しているかどうか、できるだけ早く判断を下す予定です」。

「先週末までは、AppleはまだACMの要件を満たしていませんでした。そのため、10回目の罰金を支払わなければならず、Appleは最大5000万ユーロの罰金を支払わなければならないことになります」と付け加えた。「Appleが要件を満たしていないという結論に達した場合、ACMはAppleに命令遵守を促すために、定期的な罰金支払いを条件とする別の命令(今回はより高い罰金となり得る)を科す可能性があります」。

TechCrunchはAppleに対応を問い合わせている。

ACMの命令は2021年までさかのぼるが(しかしAppleによる法廷闘争により、報道は制限された)、オランダの出会い系アプリが希望すればデジタルコンテンツのアプリ内販売を処理するのにApple以外の決済技術を使用できるようにするというACMが命じた権利の付与をめぐる世論戦は1月から続いている。

この件は、ACMがこのような命令を出す権限を与えられている欧州の小さな1つの市場内のアプリのサブセットという、ほとんど滑稽なほど小さなものに見えるかもしれない。一方で、デジタル市場法(DMA)として知られる汎EUデジタル競争法の改正が進行中で、ビジネスユーザーに対するFRAND(公平、妥当、差別のない)条件、相互運用性要件の組み込み、自己参照のような反競争的行為の禁止など、ゲートキーパーである大手の「すべきこと」と「すべきでないこと」といった領域における行動基準を前もって定義することで、近い将来、最も強力なプラットフォームがEU圏内でどのように活動できるかを再構築しようとしている。

つまり、ACMの命令は、今後予想されるEUの大きな要求の縮図を垣間見せている。

DMAはAppleのApp Storeにも適用される可能性が高い。そのため、オランダのケースはEU内で高い関心を集めているが、これは少なくとも今秋以降、欧州委員会がゲートキーピングプラットフォームの事前監視に切り替える際に、執行上の大きな課題を突きつけるものだからだ(EU機関は先週、DMAの詳細について政治的に合意したが、正式な採択はまだ先だ)。

市場改革の下では、欧州委員会が科すことのできる罰則の規模はかなり大きくなり、違反が繰り返される場合には全世界の年間売上高の20%にも達する。したがって、プラットフォーム大手にとっては無視できない体制となりそうだ。

もう1つの重要な変化は、DMAが積極的に行動し、EUの競争規制当局が変更を命じる前に数カ月あるいは数年かけて遵守していないことをを証明する必要がなく、最初から遵守を求めるようになることだ。

画像クレジット:Chesnot / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルがFitbitの不整脈監視技術をFDAに認可申請、Apple Watchより高精度との研究結果

グーグルがFitbitの不整脈監視技術をFDAに認可申請、アメリカ心臓協会がApple Watchより高精度との研究結果

FitBit Charge 5 Engadget

Googleが、ユーザーの心拍を監視する技術のデータを米食品医薬品局(FDA)に提出、審査申請したことを明らかにしました。Googleによれば、この心拍モニタリング技術のアルゴリズムはユーザーの心房細動を98%の確率で発見できるとのこと。

この技術は、赤外線を照射して動脈や毛細血管の血流量変化を監視、心拍情報を得る光電式容積脈波記録法(PPG)を用い、受動的にユーザーの手首の血流を追跡することで不整脈などを検知します。

FItbitはGoogleに買収される前の2020年からこの技術に関する研究を開始しており、これまでに50万人近いユーザーが参加してデータを提供してきました。その結果、参加者の約1%となる5000人弱に不整脈が見つかったとのこと。そして、この技術の正確性を判断するため、不整脈が見つかった人々にパッチ型の心電図レコーダーを使用した遠隔診断を提案、約1000人がそれに応じて調査を実施したところ、その1/3の人たちの診断が確定。心房細動に関するこの技術の予測正確性が98%と算定されました。この研究調査結果は2021年にアメリカ心臓協会に発表されています。

ちなみに、Apple Watchの心房細動検出機能は、同様の規模で行われた研究によると84%だったとのことで、Fitbit社のリサーチサイエンティストTony Faranesh氏は「この結果は非常に有望であり、不整脈の早期発見と治療に実際に役立つものと考える」とコメントしています。

不整脈の一種である心房細動は、血流の停滞を引き起こすことで心房内に血栓を発生し、それが剥がれて末端の血管を詰まらせたり、はては心原性脳塞栓症と呼ばれる脳梗塞を引き起こす可能性があります。日常的に身につけるデバイスでより正確に不整脈の監視が可能になるということは、このような命に関わる症状を実際に予防するまではできなくとも、心構えや何らかの備えになることが期待されます。

なお、この研究で用いられたパッシブ心拍モニタリング技術はFDAに承認申請が出された段階であるため、Faranesh氏はこの機能がいつ頃Fitbitのデバイスで利用可能になるのかについては述べていません。しかし、同種の機能を用いたApple Watchでは、心電図アプリがユーザーの異常を早期に検知した結果重大な事態に至らずに済んだという話がよく伝えられており、より高精度に異常検出が可能なFitbitデバイスの発売が期待されるところです。

(Source:GoogleEngadget日本版より転載)

米アリゾナ州がApple Walletに運転免許証と州IDを登録できる最初の州に

米国時間3月23日、Apple(アップル)はアリゾナ州が、運転免許証や州IDをApple Walletアプリにデジタル保存できる機能を住民に提供する米国初の州となることを発表した。同社はすでに2021年秋に、この新機能を最初に提供する州を確定したと発表していた。今回のサービス開始により、Appleデバイスの所有者は、フェニックス・スカイハーバー国際空港の一部のTSAセキュリティチェックポイントから、iPhoneまたはApple WatchをタップしてIDを提示できるようになる。

Appleの説明によると、この機能を使い始めるには、アリゾナ州在住の人は、iPhoneのWalletアプリの画面上部にあるプラス「+」ボタンをタップし「運転免許証または州ID」を選択し、画面の指示に従ってセットアップと認証プロセスを開始する。本人はカメラで自撮りした後、既存の運転免許証または州IDの裏と表の両方をスキャンすることで認証を受ける(つまり、これはそもそも陸運局でIDや免許を取得することの代替にはならないということだ)。

また、セットアップの過程で、顔や頭の一連の動作を行うようユーザーに求める不正防止ステップも追加されている。このアプリでは、ユーザーがカメラに写真をかざすなどして不正を行っていないことを確認する手段として、頭を横に向ける必要があるカメラ映像が表示される。

これらのスキャン画像とユーザーの写真は、発行州に安全に提供され、確認される。さらにAppleは、IDを提示した人がそのIDの所有者であることを確認するための数値コードも送信する。なお、認証の際に要求された、提示者が頭を動かしている映像は送信されない。

承認プロセスは通常数分で完了し、クレジットカードを追加するときと同様に、IDがWalletで利用可能になるとユーザーに通知される。

画像クレジット:Apple

IDや免許証がWalletに追加されると、ユーザーは対応するTSAチェックポイントでIDや免許証にアクセスすることができるようになる。ユーザーは、どのような情報が要求されているかを確認し、Face IDまたはTouch IDで情報を提供することに同意することができる。これはApple Payと同様の仕組みで、ユーザーはこの機能を使うためにiPhoneのロックを解除する必要もない。そして、同意を得た情報は暗号化された通信でIDリーダーに送信されることになる。

情報はデジタルで共有されるため、ユーザーは物理的なIDカードを渡す必要はなく、デバイスを渡す必要もないとAppleは述べている。TSAのリーダーは、さらなる確認のために旅行者の写真も撮影する(これは、TSAの職員が免許証を見てから、顔を見てその人物が本人かどうかを判断するのと同じことだ)。

画像クレジット:Apple

Appleによると、まもなくコロラド州、ハワイ州、ミシシッピ州、オハイオ州、プエルトリコの領土などでもこの機能が提供されるようになるという。そしてアリゾナ州に加え、コネチカット州、ジョージア州、アイオワ州、ケンタッキー州、メリーランド州、オクラホマ州、ユタ州の7州が搭載予定であることを以前から発表していた。

Appleは2021年の開発者会議で、Apple Walletで運転免許証やIDをサポートする計画を初めて紹介していた。しかし、11月にiOS 15のウェブサイトで公開されたアップデートで、Appleはこの機能が2022初頭まで延期されることを静かに明かしている。同社はもちろん、ユーザーのIDを確認しなければならないことを考えると、州政府の意向もこのような機能の実現に影響する。

画像クレジット:Apple

この機能を利用するには、ユーザーはApple Walletの利用規約と、州が要求する可能性のある追加の利用規約に同意する必要がある。ただし、それらの条件が何であるかは、州レベルで決定される。

スマートフォンにIDを保存することを警戒する人もいるかもしれないが、AppleはIDデータを検証のためにアリゾナ州に送る際に暗号化し、Appleのサーバーに一時的にでも保存することはないと顧客に保証している。IDがデバイスに追加されると、そこでも暗号化されている。

つまり、デバイスのSecure Enclaveプロセッサに関連付けられたハードウェアキーによって暗号化され、保護されているのだ。Face IDやTouch IDを使っている顧客、またはその顧客のパスコードを持ってWalletにアクセスできる人だけが、IDの詳細を見ることができる。

また、セキュアエレメントにはハードウェアキーが関連付けられており、ユーザーがAppleデバイスを介してTSAにIDを提示する際に使用される。そして、デバイスが運転免許証やIDのデータに署名し、依拠当事者(TSA)はデバイスの署名だけでなく州の署名も調べることで、これが有効な州のIDであることを暗号的に検証することができる。これは、もし誰かがユーザーのデバイスからID情報を取得できたとしても、デバイスのハードウェアと結びついているため、提示できないことを意味している。

この新機能は、iOS 15.4を搭載したiPhone 8以降のデバイスと、watchOS 8.4以降を搭載したApple Watch Series 4以降でサポートされている。当面は、フェニックス空港を皮切りに、一部のTSAチェックポイントのみがこの機能をサポートし、順次追加していく予定だ。Appleは、法執行機関との提携を含め、将来的には他のユースケースにも取り組んでいくとしている。

画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Akihito Mizukoshi)

アップルMac Studioの内蔵SSD、ユーザーによる自力交換をソフトウェア的にブロックか

アップルMac Studioの内蔵SSD、ユーザーによる自力交換をソフトウェア的にブロックか

Luke Miani

Mac Studioの内蔵SSDはハンダ付けされていないため、たやすく取外しや交換ができます。しかし、実はユーザーによる自力交換はソフトウェアによりブロックされていることが判明しました。

3月19日に公開された分解動画では、Mac Studioの内部には2つのSSDスロットがあり、元々のSSDを別のコネクタに(物理的には)挿し直せると実証されていました。

それを受けてテック系YouTuberのLuke Miani氏(Mac Studio発表前に正確な予想画像を公開)は自らのYouTubeチャンネルで、実際にユーザーがSSDを自力でアップグレードできるかどうかを検証しています。

具体的にはMac StudioのSSDを消去して取り外し、もう1つの空スロットに挿し直す、というものです。しかしMacのステータスランプがSOSを示す点滅をするだけで、結局は起動していません。

こうした挙動からは、Mac StudioはSSDを認識しているが、アップルのソフトウェアが起動を妨げており、ユーザーに自力でSSDをアップグレードさせないよう意識的にしていると推測されます。実際アップルは公式サイトで、Mac StudioのSSDは「ユーザーがアクセスできない」として、「より大きな容量に構成することを検討してください」と但し書きしています。

しかしソフトウェアによるブロックとすれば、裏返せばアップルが将来的に解除し、ユーザーが自前でアップグレードできるようにする可能性もあるといえます。

元々Mac Proのストレージもユーザーが交換することは不可能でしたが、その後にアップルはMac Proの内蔵SSDストレージ容量をアップグレードできるキットを発売しています。今後Mac Studioでも、同じような動きがあるのかもしれません。

(Source:Luke Miani(YouTUbe)。Via MacRumorsEngadget日本版より転載)

出会い系アプリ決済めぐる独禁法違反でアップルがオランダで9回目の罰金、当局に新たな提案も

Apple(アップル)は、出会い系アプリに関連する独占禁止法上の命令をめぐり、オランダで再び罰金を科された。この命令は、AppleのiOS向けアプリ内決済APIしか使えないよう縛るのではなく、開発者が希望すればサードパーティーの決済技術を利用できるようにすることを求めている。

消費者市場庁(ACM)は1月以来、命令を継続的に遵守していないとしてAppleに対し一連の罰則を(週ごとに)科している。

今回で9回目となる500万ユーロ(約6億7000万円)の罰金により、この問題に関するAppleに対する罰金総額は4500万ユーロ(約60億円)に達した(来週までに再び規制当局を満足させられなかった場合の最大総額は5000万ユーロ[約67億円]だ)。

Appleはこの間の一連の罰金に対して、規制当局が明らかに異なる(反対の)見解を示しているにもかかわらず、命令を遵守していると主張している。

ACMは、Appleの対応を失望するもの、かつ不合理なものとし、Apple以外の決済技術を使用してアプリ内決済を処理する法的資格を得ようとする開発者に、単にそうすることを容易に選ばせるのではなく、不必要な障害を作り出していると非難している。

この争いは何週間も続いていて、また新たに罰金が科せられたにもかかわらず、Appleによるシフトの兆しがあるかもしれない。ACMによると、Appleは現地時間3月21日に「新しい提案」を提出した。ACMはその合否を決定するために精査しているとした。

「我々は今、これらの提案の内容を評価するところです」とACMの広報担当者は声明で述べた。「そうした状況下で、さまざまな市場参加者と話をする予定です。この評価をできるだけ早く完了させることが目標です」。

ACMは、Appleがこの修正されたコンプライアンスオファーで提案している内容の詳細を明らかにしていない(そして当局はより詳細な情報の求めには応じなかった)。

「先週末まで、AppleはまだACMの要件を満たしていなかったことに留意すべきです」と広報担当者は付け加えた。「そのため、同社は9回目の罰金を支払わなければならず、同社が支払わなければならない総額は現在4500万ユーロに達しています」。

Appleにもこの展開についてコメントを求めたが、本稿執筆時点では回答はない。

更新:Appleはコメントを却下した。

ACMの独禁法命令はオランダ国内でのみ適用され、アプリの一部(出会い系アプリ)にのみ適用されるため、テック大手の壮大でグローバルなスキームの中ではかなり些細なことに見えるかもしれない。しかし、国の規制当局とプラットフォームの巨人の間の綱引きは、欧州連合(EU)でかなりの注目を集めている。つまり、この法執行は、政策立案者が主要な競争改革の最終的な詳細を打ち出す中で注視されている。

EUは、デジタル競争政策(デジタル市場法、通称DMA)の長年の懸案であった改革を完結させようとしている最中であり、これは最も強力な中間インターネット・プラットフォームのみに適用される予定だ。

AppleはDMAの下で「ゲートキーパー」に指定されることがほぼ確実であるため、これは関連性がある。DMAでは、デジタル市場をよりオープンで競争しやすいものにすることを意図した、反トラスト法遵守の積極的な体制が導入されることになる。例えば、プラットフォームがアプリケーションを交差結合することを禁止、あるいはロックインを強制し、同時に相互運用性のサポートやサービスの切り替えを義務化する。つまり、Appleは今後、同様の(実際にははるかに広範な)汎EU反トラスト法に基づく命令に直面する可能性があり、第三者に対してどのように行動しなければならないか(してはならないか)を規定されることになる。

EUの反トラスト部門を統括し、デジタル政策立案を主導するMargrethe Vestager(マルグレーテ・ヴェスタガー)委員は2022年2月の講演でオランダの事例を取り上げ、Appleが同意できない競争法の判決に従うよりも、定期的な罰金を支払うことを「本質的に」好んでいると非難している。また、AppleのApp Storeにおけるサードパーティアクセスに関する義務について「……DMAに含まれる義務の1つになるだろう」と警告している。

この来る汎EU法は、重大な効力を持つ。世界の年間売上高の最大10%の罰金を科すことができ、またゲートキーパー解体を命令する構造的救済を適用することによって、欧州連合が組織的なルール違反に対応することができる。

したがって、DMAの対象となるハイテク企業にとっては「遵守 vs 拒否」の計算は罰則を「ビジネスを行うためのコスト」として帳消しにできる場合にのみ可能であり、再起動したEU競争体制の下では根本的なバランス再調整を模索することになる。500万ユーロ、あるいは5000万ユーロの罰金で事業運営に影響を与えることはできないが、数十億ユーロ(数千億ユーロ)にもなり得る罰金は、法的要件を回避し続けることによって、規制当局が解体用ハンマーを手にせざるを得なくなるリスクと背中合わせで、コンプライアンスとはまったく別次元の話のようだ。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

ポッドキャスターのみなさん、Apple Podcastsでフォロワー数を確認する準備を

Apple Podcasts(アップルポッドキャスト)は、ポッドキャスターがアプリ上でリスナーへの有料購読の提供を奨励する新機能を展開する。これらの機能の1つは、良くも悪くも、Apple Podcastで何人が自分をフォローしているかを、ポッドキャスターのプライベート分析ダッシュボードで明らかにするというものだ。

Apple PodcastsのConnect(コネクト)ページでは、リスナー数、リスナーが離脱するまでの時間、各エピソードのパフォーマンスなどの統計が表示されるが、なぜだかフォロワー数はクリエイターには示されていなかった。

しかし、ポッドキャスターの中には、Apple Podcasts Connectでの統計数値が予想より低いことに気づく人もいるかもしれない。米国のポッドキャストリスナーの大半はSpotify(スポティファイ)を使用しているため、Apple Podcastsのリスナーについての情報のみを示すこれらの分析では、クリエイターに番組のパフォーマンスの全体像を示すことはできない(ただし、離脱率はLibsynなどの配信プラットフォームでは得られないデータポイントで有用な情報になり得る)。

「番組をフォローしているリスナーは、新しいエピソードが入手可能になるとそれを受け取りたがるため、番組フォロワーは購読する可能性のある人々の指標となる」と、Appleはブログ投稿で述べている。

Appleの論理では、あなたがAppleのアプリで多くのフォロワーを抱えていることに気づいた場合、1年弱前に始まったAppleのサブスクサービスを通じて有料のコンテンツを投入することを検討するかもしれない。購読者限定のコンテンツを提供するポッドキャスターは、1年目は購読料収入の30%を、2年目は15%をAppleに支払う。しかし、Spotifyで有料コンテンツをリリースする場合、Spotifyは現在、手数料を取っておらず、開始から2年後には5%を取る。その他、Patreon(パトレオン)のようなプラットフォームでファン会員を作り、まったく別の方法で番組を収益化することを選ぶポッドキャスターもいるかもしれない。このアプローチでは、プラットフォーム固有のボーナスコンテンツを提供するだけではなく、番組に興味を持つ人のコミュニティを育成するのに役立つプライベートのDiscord(ディスコード)サーバーへのアクセスなども考えられる。

画像クレジット:Apple Podcasts

しかしAppleの売りは、iPhoneにアプリがあらかじめダウンロードされていることだ。そのため、新しいPodcastリスナーは、すでに持っているアプリで番組を購読する方が簡単だと思うかもしれない。Appleはポッドキャスターの収益の一部を得ることに熱心で、ポッドキャスターがApple Podcastsチームから直接指導を受け、購読サービスを開発するプログラム「Jump Start」を立ち上げている。しかし、この指導はApple Podcasters Programのメンバー、つまり年間19.99ドル(約2400円)を支払ってすでにApple Podcastsでサブスクを販売することを選択した人たちだけが受けることができる。

プログラム登録者向けのマイナーアップデートがいくつかある。購読者専用の音声として.mp3ファイルをアップロードできるようになり(以前は.wavと.flacのみだった)、番組に表示される購読バナーのカスタマイズもできるようになった。

すべてのアップデートは米国3月22日から利用できるようになるが、フォロワー数については、4月にクリエイターのApple Podcasts Connectダッシュボードに表示される。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルM1チップ搭載Macで動くLinuxディストリビューション「Asahi Linux」のパブリックアルファ版が公開

アップルM1チップ搭載Macで動くLinuxディストリビューション「Asahi Linux」のパブリックアルファ版が公開

Asahi Linux

M1チップ搭載Macでの動作を目指すLinuxディストリビューション「Asahi Linux」が、初のパブリックアルファをリリースしました。アルファ版ということもあって、まだまだハードウェアの機能にすべてアクセスできるわけではありませんが、それでもまずはベータ版、そして正式リリースに向けての重要なチェックポイントに到達したと言えるでしょう。

Asahi Linuxプロジェクトはいまから約1年前、アップルが開発したM1チップシリーズを搭載したMacでの動作を目指し、Arch LinuxのARM版をベースに開発をスタートしました。ようやくのアルファ版ということで、興味のある(そして多少なりとLinuxをセットアップした経験のある)M1 Macユーザーなら誰でも(自己責任で)この新しいディストリビューション(とたくさん表示される警告メッセージ)を試すことができます。

インストールはApple SiliconとmacOS 12.3以降を搭載するMac、具体的にはMac Studioを除く、M1、M1 Pro、M1 Max搭載のMacなら、簡単なターミナルコマンドを入力するだけでインストールが可能です。インストールは管理者権限が必要ですが、デュアルブートにできるので、あくまでお試しにとどめたいニーズにも対応が可能。

現在のところはオンラインインストールのみが可能で、アンインストーラーはなく、パーティションの削除でアンインストールするとのこと。

また盛んに宣伝されているM1チップの統合GPUによる3Dアクセラレーション、Neural Engineをはじめ、DisplayPort、Thunderbolt、またはHDMIポート、カメラにタッチバーといった部分はすべて未サポート。一方USB3、スピーカーなどのサポートは間もなく追加予定とのこと。

M1 Macを手に自らすすんで人柱になりたい方は、Asahi Linuxのウェブサイトにある説明を熟読の上、自己責任でコマンドを入力、実行してみてください。

(Source:Asahi LinuxEngadget日本版より転載)

【レビュー】Mac Studio、すてきでパワフルで値段も高い、Macのデスクトップに求めるものがほとんど揃う

先週のイベントで行われた発表は、そのほとんどが事前に噂されていたものだった。しかし、多くの消費者向けハードウェアが変わりばえのしないものになったこの時代に、Apple(アップル)は驚きを与えることに成功した。イベントの発表の中で明かされたMac Studio(マック・スタジオ)は、大きな変化球ではなく、Appleがパーソナルコンピューター戦略を進化させ続けていることを示すサインだった。最初のAppleコンピューターの登場から半世紀近くが経過したが、このカテゴリーにはまだ寿命が残っている。

ほんの数年前なら、その言葉に自信を持てなかったと思う。Macはまさに「中年」の危機を迎えていたのだ。iPhoneが、Appleの象徴という意味でも売上シェアでもトップに躍り出て、iPadがその残りを吸収していたのだ。イノベーションという観点からは、macOSはモバイル版の残り物を再利用しているようにしか見えなかった。

一方、ハードウェアの面では、かつて同社の基盤の重要な部分を形成していたプロフェッショナル向けクリエイティブ分野を放棄し、MicrosoftのSurfaceシリーズのような製品が花開く余地を残したように見えていた。一時はTouch Barの追加で再び盛り上がりを見せようとしたが、結局Appleもまぼろしに見切りをつけ、その奇妙な実験を静かに終了させた。

数年前のMacは、訴訟沙汰にもなったキーボードの不良や、ポート不足に悩まされていた。後者をAppleの合理化のせいにすることは簡単だが、だからといって失望は抑えられなかった。

画像クレジット:Brian Heater

しかし、2020年に再びパラダイムシフトが起こった。この変化をもたらしたのはやはり、iPhoneの研究開発の直接的な成果だった。しかし、今回は新しいiOSアプリが追加されたわけではない。この間に、AppleはiPhoneのチップを自社開発へと移行し、Macのハードウェアを飛躍的に向上させたのだ。同社はこれまで、可能な限り単独で物事を進めたがってきたが、自社で主要な半導体(Appleシリコン)を開発したことで、その機会が大きく広がった。

Appleがその半導体をMacにも使うのは時間の問題だった。同社はM1チップを発表し、同時に、MacBook Air、MacBook Pro、Mac Miniの3つの新しいMacを発表してパンデミックの最初の年を終えた。Macは復活した──少なくとも性能の面では──というのがほぼ一致した評価だった。家のリフォームやウェブサイトのリニューアルをしたことがある人ならわかると思うが、解体には時間がかかるものだ。M1のデビュー戦は古い車体に新しいエンジンを搭載したようなものに思えた。

2021年5月、アップルは新しい24インチiMacを発表した。このときは新しい半導体(M1)を新しいデザインの筐体に搭載し、約10年半ぶりにオールインワンマシンを根本的に作り直した。こんなことは1度か2度あるかないかだ。私は、ハードウェアのデバイスを指して「cute(かわいい)」という形容詞を行うことはない。「かわいい」はウサギと赤ん坊のためにある形容詞だ。だが2021年のiMacも「かわいい」のだ。かわいくて、しかも力強い。1年以上、デスクトップを日々の手足として使っているが(以前ほど自宅から出なくなった)、M1の限界を超えたと感じた瞬間は一度もなかった。

画像クレジット:Brian Heater

24インチの画面領域で十分ならば、ほとんどのユーザーには、特に私のようにスペースに制約のあるユーザーには、iMacを心からお勧めできる。個人的な唯一の問題点は黄色にしたことだ。

しかし、あえていうなら、新しいMacの誕生は2021年10月だったのだ。私の話を聞いて欲しい。そのとき発表された最新のMacBook Proは単に新しいハードウェアだっただけではなく、ハードウェアに対する新しいアプローチを提示していた。Appleは、自社のデザイン決定に一心不乱に取り組むあまり、その過程で世論の反発を招くことがしばしばあると言っても、あまり驚かれはしないだろう。iPhone SEに関するDevin記者の熱のこもったエッセイを読めば、私が何を言いたいかわかるはずだ。愛着のある機能を失うこと、それは時には進歩の名の下に、時には美学のために行われるが、いつもおおごとなのだ。

2021年のMacBook Proは、いつもと違う感じがした。それが明らかになったとき、活気のないスタッフの間にそれなりの興奮が巻き起こった。何年も我慢を重ねてきたあとで発表された、新しいM1 ProとMaxチップを搭載したMacは妥協のないものだと感じられた。最近のMacのリリースで散見されてきたような不安要素はなく、Macユーザーにも勧めやすい製品だった。

では、Mac Studioはこの中でどこに位置するのだろうか?一見したときよりも、少々込み入った話になる。1つは、上にも書いたように、この製品の登場が意外だったことだ。先週の時点では、デスクトップは27インチiMacが確実視されていた。すなわち2021年のオールインワンをステップアップさせ、iMac Proの穴を埋めるような製品だ。今にして思えば、それはAppleがM1ロードマップを練り上げ、Mac Proのゆらぎを正している間のつなぎだ。

画像クレジット:Brian Heater

27インチiMacは出るのだろうか?おそらくはノーだ。報告によれば、それはすぐに起こりそうもなく、率直にいってMac Studioと重なる部分が多すぎるものだろう。2021年のモデルでは、iMacはAppleのエントリーレベルのデスクトップとしての正当な位置に事実上返り咲いた(非常に強力なマシンだがM1によって全体の水準が上がってしまったのだ)。そのカラーリングは、iPodやiPhone Miniのような製品の伝統を受け継ぐものであることは間違いない。

画像クレジット:Brian Heater

価格設定も、一見したところでは少々複雑だ。現在、M1 Mac Miniは699ドル(日本では税込7万9800円)から、iMac M1は1299ドル(税込15万4800円)からとなっている。一方、Mac Studioは1999ドル(税込24万9800円)からで、事実上2つの製品を合わせた価格だ。だが、もう少し複雑なのは、この中3つの中ではディスプレイを内蔵しているのはiMacだけだという点だ。要するに、お金を節約したい、あるいはすでに完璧なスクリーンを持っているのであれば、必ずしもApple製のディスプレイを使う必要はないということだ。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

もちろん、このレビューのためには、Appleから送られてきたStudio Display(スタジオ・ディスプレイ)を使っている。これでさらに1599ドル(税込19万9800円)が追加され、開始価格は約3600ドル(税込44万9600円)になる。本当のお金の話はこれからだ。テストした機種はM1 Max搭載だ。32コアのGPU、64GBのRAM、1TBのストレージを搭載し、価格は2799ドル(税込33万7800円)である。M1 Ultraが欲しい?その場合は3999ドル(税込49万9800円)からとなり、7999ドル(税込93万9800円)までとなる。しかし、このような価格帯では、議論しているのは全Macユーザーの0.1%(実際の数字ではない)以下のニーズということになる。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

予想通り、GeekBenchでは2021年のM1 Max Proと遜色ない性能を発揮している。Appleシリコン版テストでは、MacBook Proの1781/12674に対してStudioは1790/12851、Intel版テストではMacBook Proの1348/9949に対してStudioは1337/9975というスコアだった。GFXBench Metalテストでも、MacBookの279.6に対して307と差をつけている。残念ながらUltraチップは入手することができなかったが、それでも結果は非常にすばらしいものだった。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

さらに印象的だったのは、Intelモデル上では非常にリソースを消費するような作業を、Studioではファンをそれほど回すこともなく、触っても暖かくなることもなく実行できたことだ。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

先週のイベントで「最後に1つ」とMac Proを予告したAppleが、これからどこへ行こうとしているのか、気になるところだ。M2チップだろうか?おそらくは。とはいえ、ピクサー映画をフルにレンダリングしたり、本当にハイエンドなVRコンテンツを開発したりする必要のある人はあまりいないだろう。もちろん、そういう人はいるし、これからどんどん増えていくだろう。そして、ノートパソコン以上に、これらのデバイスを将来にわたって使えるようにすることが重要なのだ。3000ドル(約35万6000円)もするデスクトップなら、しばらくは使い続けたいものだ。

新しいMacBook Proと同様に、Mac miniよりもトレードオフは少ない。まず、一番大事なのはポートだ。ポートは重要だ。あなたの機器を他の機器につなげることができる。Studioは、前面にUSB-Cポートを2つとSDリーダーを備えている。特に後者は、頻繁に取り扱うものなので、前面に出しておくと便利だ。裏側には、さらにUSB-Cが4つ、USB-Aが2つ(iMacにはなくなって残念なもの)、Ethernet、ヘッドホン端子、HDMI出力(ただし、入力は不可)がある。Studio Displayを加えると、さらに4ポートのUSB-Cが手に入る。

画像クレジット:Brian Heater

Studio本体以上に、Studio DisplayはAppleのラインアップにある重要な穴を埋めるものだ。思い出して欲しいのだが、Appleは、5000ドル(約60万円)のPro Display XDRが登場するまでしばらくの間、自社製のディスプレイ提供から完全に撤退していた。Mac ProやM1 Ultraと同様、Pro Display XDRはほとんどの人が必要としているものをはるかに上回っているモニターだ。もしあなたがApple製のモニターを手に入れたいと考えているなら、27インチの5K Retina Apple Studioディスプレイはほとんどの人にとって十分なモニターだ。さらに300ドル(税込4万3000円)を足せば、反射防止コーティングとNano-textureガラスを採用し、映り込みが劇的に低減される。これはプロユーザーにもノンプロユーザーにもうれしい仕様だ。

iMac 2021のマイクテスト

Mac Studio 2022(Studio DIsplay)のマイクテスト

マイクの品質は良好で、Appleは「スタジオ品質」と位置づけているものの、ウェブ会議以上のことをするつもりなら、前述のポートのいずれかに外部マイクを接続することをお勧めする。とりわけ、よりタイトに入り込むことができる余裕が生まれるだろう。スピーカーのサウンドは最新のiMacよりも充実しているが、これは広くて厚いフレームのおかげで、下向きに音を出すグリルの表面積を広げることができるからだ。

左上から時計回りに:iMac 2020、iMac 2021、外付けウェブカメラOpal C1、Mac Studio(Studio DIsplay)

AVの観点から見て、一番残念なのは、間違いなくウェブカメラだ。センターフレームは追従性が良いが、最近のM1搭載Macと比べると驚くほど映像画質が落ちている。ホワイトバランスが崩れ、画像ノイズが多くなっている。最初は、誤ってそのままにしてあった保護フィルムをはがせばよいかと思ったが無駄だった。その結果が上の画像だ。1599ドル(税込19万9800円)以上のモニターとしては、かなりがっかりだ。

M1のISP(画像信号プロセッサー)に注力し、カメラそのものをアップデートしたので、新しいMacでは外付けのウェブカメラは必要ないとAppleが最近主張していることが、この状況をさらに悪化させている。上の画像を見れば、その意味は明らかだろう。少なくとも今のところ、仕事のインタビューやポッドキャストでは外付けカメラを使い続けるだろう(同じような照明条件で撮影しているが、Opalはデフォルトで画像を反転させることに注意して欲しい)。修正版が出たら、喜んで再挑戦する。

画像クレジット:Apple

カメラモジュールは事実上、新しいiPadに搭載されているものと同じなので、システムアップデートで修正されるのを期待したい。このようなシステムのチューニングは、ソフトウェア側で行われる場合が多いからだ。Matthew記者もStudioをしばらく使っていて、近々公開されるハードウェアに関する大きな記事の一部として、Studioについて説明する予定だ。その一部を引用する。

私たちが行ったテストでは、Studio Displayのカメラは、ローカルでもリモートでも、粒子が粗く、コントラストが低く、全体的に貧弱な画像を生成した。目の前の画像は、現時点では、2021年型24インチiMacのカメラが出力する画像よりも悪い。

ウェブカメラを初めて起動したときに、すぐに品質の問題に気づいた。他のデバイスともつないで確認したところ、MacOS 12.2を搭載したMacBook Proで使った場合、すばらしいとまではいえないものの、若干良くなることに気がついた。こうした違いがあることから、何らかの処理ミスがあるのではと推測している。私はAppleに、この結果が典型的なものであるかどうかを尋ね、サンプル画像とビデオを送った。検討の結果、Appleの広報担当者からは、システムが期待どおりの動作をしていないことと、カメラの性能に対応するためのアップデートを行うことが伝えられた。

それらのアップデートのタイムラインや具体的な内容はわからないが、AppleはStudio Displayのカメラ画質に問題があることを認識しており、修正に取り組んでいるとのことだった。このことは、購入の判断材料として知っておいて損はないし、アップデートで品質が向上するかどうかを確認できるまで待つ理由にもなる。

現時点では、ディスプレイ本体やインモニターオーディオの新基準を打ち立てたスピーカーの優れた性能に並ぶことはできない。

画像クレジット:Apple

Appleが「修理する権利」に関心を持ち始め、サステナビリティへの関心を広げている中で、ユーザー修理性は機会を逸したように思える。ケースを持ち上げて内側からファンを掃除したり、パーツを交換したりすることができれば、多くのユーザーにとってうれしい方向に向かうと思われる。しかし、Appleはその点については、まだコミットメントの準備が整っていない。必要が生じた場合には、ユーザーはApple正規代理店に持ち込む必要がありそうだ。つまり、おそらくWWDCで登場するだろうMac Proでは、モジュール性とアップグレード性が大きな差別化要因になる可能性が高いということだ。

画像クレジット:Brian Heater

iMacと同様に、Studioもデスクトップに置いて見栄えがする。背の高いMac Miniという形容が最も近いデザインで、Mini同様に丸みを帯びたコーナーとブラッシュドアルミニウムが特徴だ。最高にデザインされたMacと同じように、それはインダストリアルでありながら、冷たくはなく、同じアルミニウム製スタンドの上に置かれたStudio Displayの隣に置けば印象的だ。高さを調節できるスタンドオプション(2299ドル、税込4万4000円)や、縦長に傾けられるVesta Mountアダプターもある。少なくとも1人のTechCrunch編集者は、2台目のTweetdeck(ツイートデック)用モニターとして、これを欲しがると思う。

また、最大5台のモニター(USB-C経由で4台、HDMI経由で1台の4K)に対応し、その点でも大いに期待できる。今、Macに5台のスクリーンを接続する習慣がなくても事態はすぐに進展するものだ。テストしているStudioは、2799ドル(税込33万7800円)の構成だ。これに1899ドル(税込24万2800円)のディスプレイ(Nano-textureガラス版)を加えると、4700ドル程度(税込58万600円)になる。これに、Touch IDと数字パッドを備えた新しい黒いキーボード(税込2万800円)に、マウス / トラックパッド(99ドル[税込1万800円] / 149ドル[税込1万5800円])を追加すると良いだろう。気の弱い人や財布の薄い人には向かないマシンだ。

前回試用したIntel搭載27インチiMacより数百ドル(数万円)高く、単体のPro Display XDRとほぼ同じ価格だ。まあすべては相対的だよね?

Appleは、在宅勤務の推進に乗り遅れたことを反省しているに違いない。もし、新しいiMacとMac Studioが2020年の初めか半ばに発売されていたら、同社は大儲けしていたことだろう。しかし、それでも多くの人がオフィスに戻る日は来ないかもしれない。多くのユーザーはやはりiMacを選ぶだろう。しかし、映像や音楽など、リソースを大量に消費するクリエイティブな編集を行い、より大きな予算を持っているなら、これはすばらしいマシンだ。Mac Proは現時点では最後のクエスチョンマークだが、新しいStudioはほとんどの購入希望者にとって十分なマシンだ。

Read more about the Apple March 2022 event on TechCrunch

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

【レビュー】アップルStudio DisplayのNano-textureガラスは効果大、Windowsでも使ってみた

Mac Studioと「Studio Display」。セットだとやっぱりかなりバランスのいい組み合わせだ

Mac Studioと「Studio Display」。セットだとやっぱりかなりバランスのいい組み合わせだ

3月18日、Mac Studioとともに発売されるのが「Studio Display」だ。

Mac Studioと組み合わせることを強く意識した商品だが、もちろんほかのMacと組み合わせて使うこともできる。

各種機能のクオリティはどうなっているのか、Mac Studioとの組み合わせだけでなく、Windows PCにつないで使ったときの動作も含めて検証してみた。

Nano-textureガラスは効果大、5Kを生かすなら有用

Studioディスプレイにはいくつかのモデルがあり、購入時にカスタマイズするのが基本となっている。ディスプレイとしての仕様は表面加工以外同じで、スタンドなどの仕様変更が中心だ。

基本はアンチグレア加工の「標準ガラス」で、傾きを変えられるスタンドが付いている。

そこに、より微細な表面加工で反射を防ぐ「Nano-textureガラス」を使ったモデルがあり、さらに「傾きと高さを変えられるスタンド」、そして「VESAマウント」から選ぶ。

Appleの購入ページより。スタンドは3種類から選ぶ

Appleの購入ページより。スタンドは3種類から選ぶ

今回テストしているのは「Nano-textureガラス」を使い、スタンドは傾きだけを変更できるタイプのもの。これでも価格は24万2800円なので、相当に高価なディススプレイである。

今回使っている「Nano-textureガラス」採用モデル。かなり強く光を当てても、反射はこのくらい

今回使っている「Nano-textureガラス」採用モデル。かなり強く光を当てても、反射はこのくらい

サイズは27インチ。解像度は5K(5120×2880ドット)だが、ミニLEDなどを使った「ローカルディミング」は行なっていない。トップ輝度は600nitsで、いわゆる10ビットカラー対応となっている。

27インチなのでパッケージサイズはかなり大きい。上に置いているiPad Air(10.9インチ)と比較するとイメージが湧きやすいだろう

27インチなのでパッケージサイズはかなり大きい。上に置いているiPad Air(10.9インチ)と比較するとイメージが湧きやすいだろう

パッケージから取り出すのも一苦労。この辺はiMacにも通じる

パッケージから取り出すのも一苦労。この辺はiMacにも通じる

まず使って感じたのは、Nano-textureガラスの効果の高さだ。

いわゆるアンチグレアだと色が拡散する効果が出てしまい、精彩感と発色が落ちやすい。そのため、テレビにしろディスプレイにしろ、「光沢仕上げ+薄膜の反射低減コーティング」というものが多いのだが、仕事で使う場合、反射はない方が疲れにくい。

Nano-textureガラスによるコーティングは、精彩感・発色を落とすことなく反射をほぼ感じられないレベルへと軽減してくれる。

MacBook Pro 14インチと並べて。光沢仕上げのMacBook Proとは、映り込みの状況が全く違う

MacBook Pro 14インチと並べて。光沢仕上げのMacBook Proとは、映り込みの状況が全く違う

実のところ、輝度の突き上げを含めたHDR感では、ミニLEDを使っている14インチMacBook Proのディスプレイの方がいい。発色は同等だと思う。

だが、どこから見ても反射がない、画面が消えてもおっさんが映り込まないという点では、圧倒的に快適だ。

画面を表示した上で、斜めから。Studio Displayは映り込みなくすっきり見えるが、MacBook Proだとそうはいかない

画面を表示した上で、斜めから。Studio Displayは映り込みなくすっきり見えるが、MacBook Proだとそうはいかない

このコーティングは汚れがあると効果が落ちる。一方、表面に傷をつけても効果が落ちるため、柔らかく、汚れが落ちやすいもので拭く必要がある。

そのため、このモデルには「Apple ポリッシングクロス」が付属する。1980円と高価であることから「しんじゃのぬの」なんて皮肉で呼ばれたりもする、あれだ。Appleはこの布で拭くことを強く推奨している。

付属の「Apple ポリッシングクロス」。ネタにされがちだが、とても使いやすく、品質が良いクロスだ

付属の「Apple ポリッシングクロス」。ネタにされがちだが、とても使いやすく、品質が良いクロスだ

今回初めて使ってみたが、確かに非常に使いやすく、手触りも良かった。

とはいえ、同様のマイクロポリッシングクロスはもっと安く売られているので、追加で買うのは好き好きかと思う。まあ、Nano-textureガラス版のStudio Displayを使っているなら、積極的に使っていくべきなのだろう。なにしろ付属していて、サポート対象なのだから。

カメラやマイクを内蔵、接続は「USBデバイス」として

Studio Displayはただのディスプレイではない。昨今のビジネス向けディスプレイのトレンドを反映し、「多機能化」している。

上部・下部にはスピーカーが内蔵され、上部中央にはカメラとマイクが入っている。

上部・下部にはスピーカーのための穴が。音はかなり良い

上部・下部にはスピーカーのための穴が。音はかなり良い

上部中央には12メガピクセルのカメラとマイクが。ノッチはない

上部中央には12メガピクセルのカメラとマイクが。ノッチはない

インターフェースはThunderbolt 4の入力が1つだが、そこからUSB Type-Cが3つつなげられる。入力のためにつないだ端子からは96Wでの電源供給も行える。すなわち、MacBook Proなら電源ケーブルを接続する必要がないわけだ。

本体を横から。電源は本体中央につながる

本体を横から。電源は本体中央につながる

3つのUSB Type-C端子と、Thunberbolt 4端子がある。ディスプレイに接続するときにはThunberbolt 4端子を使うので、1入力になる

3つのUSB Type-C端子と、Thunberbolt 4端子がある。ディスプレイに接続するときにはThunberbolt 4端子を使うので、1入力になる

重要なのはカメラやマイク、スピーカーの存在。macOS側から見るとわかりやすい。

カメラやスピーカー、マイクはそれぞれ「USBデバイス」として接続され、OS側から利用可能になっている。だから、色々なアプリから特に意識することなく使える。

macOSのサウンド設定から。マイクやスピーカーはUSBデバイスになっているのがわかる

macOSのサウンド設定から。マイクやスピーカーはUSBデバイスになっているのがわかる

macOSのサウンド設定から。マイクやスピーカーはUSBデバイスになっているのがわかる

以下の動画は、Mac版のZoomから「センターステージ」を使ってみたものである。自分の動きに合わせ、きちんとフレーミングが追従しているのがわかるだろう。

これらの制御には「A13 Bionic」が使われており、実質的に、ディスプレイの中に独立したデバイスが組み込まれているような構造になっている。A13 Bionicが入っているといってもiPhoneやApple TVの機能を持っているわけではなく、各デバイスの制御用SoCとして使っている形のようだ。

音もいい。空間オーディオ楽曲を再生すると「広がり」をしっかり楽しめる。ただし、低音は強いがちょっと響きすぎるところもあり、その辺は好みが分かれるかも、と感じた。

Windowsにもつながるが、フル機能は生かせず

と、ここで気になる点が一つ。

USBデバイスとしてつながっているということは、Mac以外につないだらどうなるのだろうか? AppleがサポートしているのはMacとiPadだが、Windows PCをつないだらどうなるのだろう?

答えは「意外と普通に動く」。

Thunderbolt 4端子でつなげば、Windows PCでも普通にディスプレイとしては使える

Thunderbolt 4端子でつなげば、Windows PCでも普通にディスプレイとしては使える

デバイスマネージャーから見ると「デバイス方向センサー」が動いていないが、カメラもマイクもスピーカーも、一般的なデバイスとしてつながり、利用できる。表示ももちろん問題ない。

デバイスマネージャーを表示してみた。カメラやマイク、スピーカーはUSBデバイスでつながっているが、「デバイス方向センサー」が動いていない

デバイスマネージャーを表示してみた。カメラやマイク、スピーカーはUSBデバイスでつながっているが、「デバイス方向センサー」が動いていない

Windows版のZoomでもカメラとして認識できた。ただし、「センターステージ」は動かない

Windows版のZoomでもカメラとして認識できた。ただし、「センターステージ」は動かない

すべての機能が動いているわけではない。

「センターステージ」はWindowsでは動いていないし、Siri連動も当然使えない。また、今後ファームウエアのアップデートがあっても、サポート外のWindows PCからアップデートできるとは限らない。

サポート外なので、このくらい動けば御の字……というところではないだろうか。

HDMI非対応で「1入力」をどう見るか

全体的にみて、Studio Displayは好ましい製品だ。画質も良く、音もいい。デザインも、Mac Studioと合わせて使うのにちょうどいい。

一方で、今のPCディスプレイのトレンドを考えると、ちょっと不満な点もある。

入力が実質1系統である、という点がまず気になる。特に、HDMI入力がない点だ。

PCディスプレイやテレビだと、複数のデバイスをつないで切り替えて使ったり、同時に2出力で画面を分割したり、という機能があるが、それはできない。

輝度は高く発色もいいが、HDRには弱い。そもそもの想定として、HDR編集には、より高価な「Pro Display XDR」や、ミニLED搭載のMacBook Pro、iPad Proを……ということなのかもしれないが、これだけ高価な製品なので、ちょっともったいない。

HDRや複数入力にこだわらなければ、Studio Displayはとてもいい製品だと思う。ただし、この価格を許容するなら、だが。もちろん、この価格相応に、長く使えるディスプレイではある。

(西田宗千佳。Engadget日本版より転載)

【レビュー】「静かさ」も魅力、Mac Studioは卓上のモンスターだ

Mac Studio。今回テストしたのは、M1 Ultra(GPU64コア版)、メモリ128GB・ストレージ2TBのモデル。74万1800円(税込)とかなり高価な製品だ

Mac Studio。今回テストしたのは、M1 Ultra(GPU64コア版)、メモリ128GB・ストレージ2TBのモデル。74万1800円(税込)とかなり高価な製品だ

最高性能のMacである「Mac Studio」のレビューをお届けする。

感想はシンプル。「重いがデカくない」「パワフルだが静か」もう、この2つに尽きる。

テストに使用したMac StudioとStudio Display。セットで総額98万4600円(税込)

テストに使用したMac StudioとStudio Display。セットで総額98万4600円(税込)

Appleシリコン世代としてのハイエンドを目指した製品だが、それにふさわしい性能になっている印象だ。

Mac miniを「ハイパワー化するために巨大にした」ような設計

その昔、「Power Mac G4 Cube」という製品があった。

パワフルでコンパクト、ディスプレイとセットでクリエイターが使うことを想定したマシンだった。そうそう、あのディスプレイも「Studio Display」だった。

Mac Studioは立方体ではないが、パッケージが見事に「立方体」でちょっと昔を思い出させる。

Mac Studioのパッケージ。ほぼ立方体だ

Mac Studioのパッケージ。ほぼ立方体だ

Studio Displayのパッケージと一緒に。流石にディスプレイが大きいので、パッケージサイズが霞む

Studio Displayのパッケージと一緒に。流石にディスプレイが大きいので、パッケージサイズが霞む

中身はどちらかというとMac miniに近い。キーボードやマウスは付属せず、入っているのは本体と電源ケーブルくらいとシンプルだ。

パッケージはiMacなどと同じく紙。パカっと開く構造になっている

パッケージはiMacなどと同じく紙。パカっと開く構造になっている

本体の他に付属するのは電源ケーブルくらい。キーボードやマウスは別売だ

本体の他に付属するのは電源ケーブルくらい。キーボードやマウスは別売だ

本体の設置面積はMac miniと同じだが、高さ9.5cmとかなり分厚くなっている。そして、意外なほどの重さに驚く。今回試用したM1 Ultra搭載のモデルは、重量が3.6kgもあるのだ。Mac miniが1.2kgなので、ちょうど3倍になる。

正面から。Thunderbolt 4端子が2つとSDカードスロットが前面に付いたのがありがたい。Mac miniと比べるとかなり厚みが増している

正面から。Thunderbolt 4端子が2つとSDカードスロットが前面に付いたのがありがたい。Mac miniと比べるとかなり厚みが増している

Mac Studioは、M1 Ultra搭載モデルとM1 Max搭載モデルとで重さが異なる。前者が3.6kgであるのに対して後者は2.7kg。その違いは、冷却に使われるファンやヒートシンクが銅製になっているからだという。

Appleの発表会映像を見る限り、Mac Studio内の3分の2程度が冷却機構で占められており、ボディの後ろ側にもかなりの面積の排気口がある。

Appleの発表会映像より。内部のかなりのスペースが、エアフローのための仕組みになっている

Appleの発表会映像より。内部のかなりのスペースが、エアフローのための仕組みになっている

背面。上3分の2が排熱口。その下にインターフェースが並ぶ

背面。上3分の2が排熱口。その下にインターフェースが並ぶ

底面にはロゴを囲むように吸気口がある。そういえば、MacBook Proの底面にもロゴが付いているのだが、Appleはこのパターンをハイエンド製品の定番デザインにするつもりだろうか。

底面。ロゴの周囲を吸気口が囲むようなデザインになっている

底面。ロゴの周囲を吸気口が囲むようなデザインになっている

Mac miniから大きく変わったのがインターフェースだ。

Mac miniは背面に

  • Thunderbolt 4/USB Type-C×2
  • USB Type-A×2

だったが、

Mac Studioは

  • Thunderbolt 4/USB Type-C×4
  • USB Standard-A×2

になり、さらに前面にも

  • Thunderbolt 4/USB Type-C×2(M1 Max搭載機ではUSB Type-C×2)
  • SDXCカードスロット(UHS-II)

が搭載されている。

「M1 MaxじゃMac Studioの意味が……」と思っている人もいそうだが、単純にインターフェースの増えたMacとして選んでもいいのかもしれない。

特に前面の端子は、今回も試用中にも大変お世話になった。当たり前の話だが、アクセスしやすい場所にあるインターフェースがあるのはとてもありがたい。

速さは圧倒的、コアの数だけ性能アップ

ではパフォーマンスをチェックしていこう。

今回は比較対象として、M1搭載のMacBook Pro・13インチモデル(2020年モデル)とM1 Pro搭載のMacBook Pro・14インチモデル(2021年モデル)も用意している。一部マルチプラットフォームで試せるものについては、自宅で使っているWindowsのゲーミングPC、ASUSの「ROG Zephyrus G14」(2021年モデル、CPUはAMD Ryzen 9 5900HS、GPUはNVIDIA GeForce RTX 3060 Max-Q)での結果も合わせて見ていただきたい。以下、「ROG Zephyrus G14」を便宜上「ゲーミングPC」と呼称する。

まずは定番の「Geekbench 5」から。

CPUについてはシンプルにわかりやすい結果だ。基本的にはCPUコアの数だけ速くなっている。1コアあたりの速度差は、M1とM1 Pro・Ultra、Ryzen 9で当然あるのだが、コア数による速度差を比較すると小さなもの。20コアを搭載したM1 Ultraが圧倒的に速い。

Geekcbench 5のCPUテスト。コア数の分だけ速い、というわかりやすい結果が出た

Geekcbench 5のCPUテスト。コア数の分だけ速い、というわかりやすい結果が出た

同じくCPUの速度をチェックするため、「Cinebench R23」も使ってみた。これはCG演算の速度を測るもので、主にCPUに依存する。

Cinebench R23。CPUでのCG演算の速度を計測するものだ

Cinebench R23。CPUでのCG演算の速度を計測するものだ

こちらの値も、基本的にはGeekbench 5のCPUテストと傾向が同じである。CPUコアの分だけスピードが出ている。

Cinebench R23の結果。こちらも、CPUコア数に応じたテスト結果になっている

Cinebench R23の結果。こちらも、CPUコア数に応じたテスト結果になっている

他のCPUの結果と比較すると、上にいるのは32コアの「Ryzen Threadripper 2990WX」や24コアの「Xeon W-3265M」といったところであり、もはやコンシューマ向けとは言い難いレベルである。

Cinebench R23には過去にテストされたCPUごとの値も提示されているのだが、M1 Ultraより速いものは、よりコア数の多い超ハイエンド2つだけになった

Cinebench R23には過去にテストされたCPUごとの値も提示されているのだが、M1 Ultraより速いものは、よりコア数の多い超ハイエンド2つだけになった

GPUについてはどうだろう?

まず、Geekbench 5。こちらはマルチプラットフォーム性を考えて「OpenCL」でテストしている。M1 Ultraがかなり速いが、RTX 3060での値を超えてはいない。

Geekbench 5によるGPUテスト。OpenCLを使ってのテストだが、RTX3060を搭載したゲーミングPCの方が上と出ている

Geekbench 5によるGPUテスト。OpenCLを使ってのテストだが、RTX3060を搭載したゲーミングPCの方が上と出ている

ただ、Geekbench 5のGPUテストはGPUの全ての要素を反映する訳ではないので、そちらを考慮して別のテストもしてみた。「3DMark」のマルチプラットフォーム対応テストである、「3DMark Wild Life Extreme」だ。Extremeとあるように、スマホまで想定したWild Lifeの中でもハイパフォーマンス向けである。それを、フレームレート制限をかけない「Unlimited」モードでチェックした。

マルチプラットフォームの3Dベンチマーク、「3DMark Wild Life Extreme」でもテストを行なった

マルチプラットフォームの3Dベンチマーク、「3DMark Wild Life Extreme」でもテストを行なった

結果は、M1 Ultraの圧勝だ。多くのビデオメモリを活用できることもあり、ソフトの作り方によって相当な差が出るのであろうことが予想できる。

「3DMark Wild Life Extreme」でのテストスコア。Mac Studioの値は35159と他を圧倒している

「3DMark Wild Life Extreme」でのテストスコア。Mac Studioの値は35159と他を圧倒している

「3DMark Wild Life Extreme」でのフレームレートスコア。Mac Studioが210フレーム、ゲーミングPCが75フレームと差がかなり開いている

「3DMark Wild Life Extreme」でのフレームレートスコア。Mac Studioが210フレーム、ゲーミングPCが75フレームと差がかなり開いている

じゃあ、実際の作業ではどのくらいの速度になるのか?

ここでは、Macのビデオ編集ソフト「Final Cut Pro」を使い、4K/HDR撮影の映像をグレーディング・手ぶれ補正などの処理を施した上で2分51秒に編集した映像を、同じく4KのH.264形式で圧縮して書き出すまでの時間を計測した。これまでのグラフとは違い、「棒が短いほど性能がいい」のでその点ご注意を。また、アプリの関係上、Macのみでの比較になる点をご了承いただきたい。

Appleのビデオ編集ソフト「Final Cut Pro」を使い、4K/HDRのビデオを書き出すまでの時間を計測

Appleのビデオ編集ソフト「Final Cut Pro」を使い、4K/HDRのビデオを書き出すまでの時間を計測

こちらも、当然ながらM1 Ultraは速い。そこそこ重い処理なのだが、M1の半分の時間で終わっている。M1とM1 Proでは12%しか速度が変わっていないが、M1とM1 Ultraの比較では93%以上高速になっている。この差は大きい。

書き出し速度の比較。短いほど良い結果なのにご注意を。M1からM1 Proでは劇的な差にならなかったのに、M1 Ultraでは半分くらいまで時間が短縮されている

書き出し速度の比較。短いほど良い結果なのにご注意を。M1からM1 Proでは劇的な差にならなかったのに、M1 Ultraでは半分くらいまで時間が短縮されている

性能は重要、より重要なのは「速くてしかも静か」であること

ただ、テスト中に感じたのは「速さ」だけではない。

どのプロセッサも負荷の高い処理を長く行うと発熱が大きくなり、冷やすためのファンの動作も大きくなる。

M1シリーズはモバイル向けプロセッサが出自ということもあってか、比較的発熱が小さい傾向にあり、ファンなども回りにくい。だが、ベンチマークのようなことをすると、どうしてもアルミボディが熱くなってくる。

ゲーミングPCについてはいうまでもない。特に今回のテストは、パフォーマンス重視の「TURBOモード」設定で行なったため、発熱もファンの動作音も大きい。掃除機並み(55dB程度)の音になることも珍しくない。

一方、Mac Studioは全然音がしない。

アクティビティモニタで負荷を見ると処理負荷は天井に張り付いている状態なのに、ファンの回る音もほとんどしないし、排気もそこまで熱くはなっていない。手を排気に当てると、ほんの少し暖かい程度。これは、プロセッサの発熱が少ないだけでなく、相当に排熱機構が優秀ということだろう。

Mac Studioは高価な製品で、ここまでのパフォーマンスを必要とするのは一部のプロフェッショナル・ワークだろう、とは思う。

だが、高い負荷をかけてもこれだけ静かである、というのはそれだけで大きな魅力である。誰だって、作業を騒音や発熱で邪魔されたくないはずだ。

プロセッサとGPUの組み合わせによって、もっと高性能なPCを作ることもできると思う。PCアーキテクチャのサーバーなどではそうした機器が必要になる。だが、ここまで静かで「普通に卓上に置いて使えるのに、パワフル」な製品は少ない。Mac Studioが圧倒的に優れているのはその点だ。

(西田宗千佳。Engadget日本版より転載)

【レビュー】iPad Air(2022)はアップルのM1チップを入手するための最も手頃な方法

正直に言えば、このiPad Airには最初少し戸惑った。AppleのiPadのラインナップは、追加されるたびに、さらに多くの価格帯を埋め尽くし、競合他社が参入する余地を少なくしている。しかもそれだけではなく、ラインナップも複雑化させている。

適正なデバイスを買おうとしている消費者にとって、2022年のiPadは少し戸惑いを招く。もし安価なものが欲しいなら、普通のiPadを買えばよい。子ども用に買うものだ。ハイエンドならiPad Proを黙って選ぶだけだ。オフィスで使う人やクリエイティブな仕事をしている人、ノートパソコンの代わりとして使っている人などがその対象となる。

今回登場した、AppleのM1チップを搭載したiPad Airは、これまでの機種以上にパワフルなものになった。最も厳しいものを除くほぼすべての操作で、iPad Proに匹敵する性能を発揮する。ベンチマークの結果をみる限り、中間程度のグレードが欲しい人にとって、iPad Proより200ドル(約2万4000円)安い新しいiPad Air(日本では税込7万4800円から)は、最高のパフォーマンスオプションになる。では、200ドルと引き換えに何を失っているのか?(なお日本のストアでの価格差は2万円)。ディスプレイには、円滑な表示を行う120hz対応のProMotion(プロモーション)技術が搭載されていない。iPad Proの強化されたカメラアレイも搭載されていない。

また、ストレージ量もおおよそ半分だ。おそらくこれが、iPad Airをラインナップに並べる際の最大の弱点だろう。まあ次のiPadとの価格差がこれだけあれば、基本構成で64GBのストレージしか搭載していない理由も納得だ。しかし、基本構成より上を考え始めると、iPad Proに飛びつかない理由を見つけることはすぐに難しくなる。

そのことは後で少し考えることにして、まずは新しい機能と仕組みについて整理しておこう。

まず、Appleの第1世代「インハウス」シリコンであるM1が手に入る。これはすごい。2021年M1を採用したiPad Proのラインアップと基本的に同じ性能ということだ。そして従来のiPad Airと比較して、約60%のスピードアップ が果たされている。この性能は、M1版MacBook Airに匹敵するもので、それほど驚くべきことではない。だが、ミドルレンジのiPadで大きな性能ロスがないのはうれしい。

フロントカメラも12MPにアップグレードされ、以前のAirから確実に改善されている。FaceTime(フェイスタイム)には、2021年のiPad Proで採用されたセンターフレーム機能の強化が施されている。他のレビューでも書いたように、これはビデオチャットを頻繁にする人にとっては、かなりの改善につながる。iPad Airをランドスケープモードにしたときに、自動トリミング機能とトラッキング機能によって、カメラの片側が空く奇妙な配置が軽減されるからだ。全体的に角度が自然で、ぎこちない感じがしない。色合いやコントラストに関わるビデオ通話品質も向上している。

画像クレジット:Matthew Panzarino

以上のことから、iPad Airは、Appleが現在市場に出しているFaceTimeデバイスの中でも高性能で多機能なものの1つになった。

2022年のカラーも注目すべきだ。私はブルーモデルを試用したが、これまでのブルー仕上げの中でも特にきれいで良い仕上がりだった。明るく、きらびやかで、本当にきれいに仕上げられている。基調講演を見ていたときには色に少し疑問を感じたが、実際に見てみるととても良いものだ。

画像クレジット:Matthew Panzarino

Touch IDはこれまで同様に高速に動作し、起動時に2本の指を登録するよう促されるため、初めてのユーザーにとっては、縦向きでも横向きでも、腕を捻ることなしに簡単にiPadのロックを解除できるようになるはずだ。利便性やシームレスさではFace IDに勝てないが、Touch IDが電源ボタンに搭載されたことで、ほとんどのユーザーにとっては大きな違いを感じさせないものになった。

AppleのiPhone以外のポータブルラインナップでのUSB-Cへの切り替えは、2020年のiPad Airで行われた。USB-Cの普及にともない、必要ならどこでもiPadを充電することがこれまで以上に簡単にできるようになった。デスクトップとの同期・転送を試したところ、Lightning対応デバイスよりもはるかに速いことがわかった。でも、これを行うカジュアルな消費者の数は日々減っていると思う。それよりも、MDMソリューションを使用してメンテナンスと導入を行うために、ドッキングされたiPadを定期的に消去して再インストールする可能性のある法人顧客にとって、これははるかに重要な問題だ。そのような顧客は、今回のiPadがより速く、より汎用的なポートを手に入れたことを大いに喜ぶだろう。

最後のポイントは、iPad Airの位置付けに関する質問の核心を浮かび上がらせる。iPad Proを800ドル(日本では税込9万4800円)で買う代わりにiPad Airを600ドル(日本では税込7万4800円)で買う顧客は誰だろうか?

Creative Strategies(クリエイティブ・ストラテジーズ)のCEOで主席アナリストのBen Bajarin(ベン・バジャリン)氏は、iPad Airの市場について「iPad Airは、高等教育機関や最前線で働く人々や高度なモバイルワーク環境で働く人々が有能なタブレットを必要とする一部の企業で、良い市場を見つけたと思います」と語る。

「M1を搭載した新しいiPad Airは、性能の向上と優れたバッテリーライフによって、さらに多くの法人購入者にアピールするでしょう」。

画像クレジット:Matthew Panzarino

さて、200ドル(約2万4000円)が200ドルであるということも重要なポイントだと思う。これは決して少なくない金額だ。また、バジャリン氏が指摘するように、このデバイスの顧客の多くが大規模なデプロイメントのために購入するのであれば、その差額の累積はすぐに大きなものとなる。

また個人で購入する場合、予算が限られていて、Proとの価格差にどうしても抵抗がある場合には、これとキーボードがあれば、Proが提供する機能の9割は手に入れることができる。これまでProMotionを使ったことがなければ、おそらく物足りなく思うことはないだろう。しかし、もし使ったことがあるなら、大きな喪失を感じることになる。iPad Proと並べてテストしたところ、ProMotionは、特に長時間のブラウジングやゲーム、ドローイングなどを行う際の使い勝手で、明らかに優位であることがわかった。高級なディスプレイほど高価で、実現が難しいのには理由があるのだ。とにかく優れている。しかし、AppleのLiquid Retina(リキッドレティナ)ディスプレイの色再現性などは、ここでもしっかりと発揮されている。

iPad Airと11インチのiPad Proは価格も性能も近く、iPad Miniも価格的にはそれに続いているため、400ドル(約4万7000円)を超えるあたりから、ラインナップが少し混み合ってくる感じがする。しかし、価格的な位置付けはさておき、iPad Airは非常に高機能で、しっかりした感触があり、使い心地の良いデバイスだ。繰り返しになるが、ProMotionを搭載したスクリーン、特に10インチ以上のスクリーンを使う機会がない方は、ここでは違いを感じないかもしれない。

画像クレジット:Matthew Panzarino

現在、iPadのラインナップが少し混雑していると感じる理由の1つは、AppleのiPad Proの2022年版モデルがどのようなものかまだ見えていないことだ。第3四半期になったら、新しいモデルが登場し、機能強化が図られ、小型のiPad ProとiPad Airの価格差が少し広がる可能性は十分にある。

2021年登場したiPad miniに、ヒントを見ることができるかもしれない。もちろんマジックキーボードはないが、主に本を読んだり、ビデオを見たり、メディア消費のための携行デバイスとして使ったりしている人にとっては、miniはすばらしい選択肢だ。iPad miniは最安のモデルではないので、低価格のiPadとまったく競合することなく、高価で高機能なものにすることができる境界に居るという点で興味深い。しかしiPad Airは、上のProと下のminiに同時に競合している。

そして2022年も、毎年と同じように、Appleのタブレット端末のラインナップは、市場で購入する価値のある唯一の製品であるという事実に立ち返ることになる。たとえ日頃はAndroidを中心とした携帯電話を使っていたとしても、他のプラットフォームを試してみたいと思っても、iPadのような機能、使い方、信頼性を提供するタブレット端末の選択肢は他にない。

そのためAirは、価格は似ているものの、(依然として売れ筋の)エントリーレベルの第9世代iPadを除けば、Appleのベストセラーの1つになる可能性があるので興味深い。とはいうものの、11インチiPad Proは、ストレージ容量とより良い画面を考えると、予算に敏感なユーザーの一部を誘惑するのに十分な価格に近い存在だ。

関連記事:【レビュー】iPhone SE(第3世代)は観念的なスマートフォンの理想像

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画像クレジット:FMatthew Panzarino

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:sako)

【レビュー】第5世代のiPad Airと11インチiPad Proを比較してみた

iPad Air(第5世代)を発売に先立ってレビューした

iPad Air(第5世代)を発売に先立ってレビューした

第3世代のiPhone SEと同時に、第5世代のiPad Airが発売されます。iPad Airとしてはおよそ1年半ぶりのリニューアル。前回はiPhone 12に合わせたスケジュールで市場に投入されましたが、今回はiPhone SEと同タイミングでの発売になります。第4世代でProモデルの特徴を取り入れ、フルモデルチェンジを図ったiPad Airですが、第5世代では、その基本設計を踏襲しつつ、新たに「M1チップ」を搭載。高速通信規格の5Gにも対応しました。

筆者は、M1搭載の11インチiPad Proを真っ先に購入したクチですが、使い方を考えるとスペック的にはiPad Airで十分なのでは……と感じることも。ぶっちゃけると、M1チップの性能も引き出せているかどうか微妙なところではありますが(笑)、Magic KeyboardやApple Pencilが使えて、かつ処理能力がそれなりに高いiPadは必須アイテムではあります。そんな筆者が、M1搭載iPad Proユーザー目線で第5世代のiPad Airをチェックしていきます。

まずは外観から。iPad Proはよく言えばカラーリングを気にしないPro仕様、悪く言えば無難な2色展開でしたが、iPad Airはカラフルな5色展開。試用したブルーも、鮮やかな色合いがアルミの質感とマッチしていて、使っているとテンションが上がります。Magic Keyboardを付けてしまうと背面の違いがわかりづらいと思われるかもしれませんが、前面からもフレームがチラッと目に入るため、“Air感”は十分感じられます。

カラバリの豊富さはiPad Airならでは。今回試用したのはブルー

カラバリの豊富さはiPad Airならでは。今回試用したのはブルー

Magic Keyboardを装着しても、フレームからチラリとのぞく色でAir感を感じられる

Magic Keyboardを装着しても、フレームからチラリとのぞく色でAir感を感じられる

Proより0.1インチだけディスプレイは小さくなりますが、パッと見ではその差がよくわかりません。ただし、ベゼルが太いのはすぐにわかります。ここは好き嫌い分かれるところですが、筆者は狭額縁派。キーボードなどを装着せずに単体で使う場合、指をかける場所がほしいということで、Airの方が安心感がある人もいるでしょう。

次に処理能力ですが、M1を搭載していることもあり、レスポンスは非常によく、不満はほとんどありません。Apple Pencilで校正をするために使う「GoodNotes 5」や、「Lightroom」のような画像編集系のアプリもサクサク動きます。原稿はApple純正のPagesで作成して書き出すことが多いのですが、当然ながら動作には一切問題なし。何なら、この原稿もiPad Airで執筆しています。そもそもの話、原稿を書いたり、調べものをしたりという程度なら、M1である必要すらないのかもしれません。

日常的に業務に取り入れているアプリは、スムーズに動いた

日常的に業務に取り入れているアプリは、スムーズに動いた

日常的に業務に取り入れているアプリは、スムーズに動いた

Geekbench 5でのスコア。M1搭載のiPad Proに迫るスコアだ

Geekbench 5でのスコア。M1搭載のiPad Proに迫るスコアだ

個人的には、原稿執筆だけなら、PCよりもiPadの方が集中できます。これは、ディスプレイサイズが普段使っているPCより狭めで、iPadOSがPCと比べるとマルチウィンドウに制約があるためでしょう。もちろん、iPad AirでもSplit ViewやSlide Overで複数アプリを同時に使うことはできますが、それをするとメインの画面が小さくなってしまい、特に執筆作業には支障をきたします。

10.9インチとディスプレイが狭いぶん、画面に表示するアプリをどうしても厳選せざるをえなくなるため、目の前にある原稿に集中できるというわけです。作業中にTwitterで遊んだり、調べものをしていたつもりが、いつの間にかまったく関係のないサイトを読み込んでいたりということが減り、効率よく仕事ができます。文字入力のレスポンスがとにかくいいのもiPad Airの魅力で、テンポよく原稿を書いていけます。

本稿もiPad Airで執筆

本稿もiPad Airで執筆

iPad Proとの違いとして、画面のリフレッシュレートが60Hzという点は指摘しておきたいところですが、普段使いではあまり気にならないかもしれません。悲しいことに、筆者の動体視力が衰えている可能性は十分ありますが、自分の中では「これがないから絶対にPro」と断固主張するほどの差ではありませんでした。スクロールなどの滑らかさは確かにiPad Proの方が上ですが、仕事道具として使うぶんには、それほど気にならないと思います。

M1搭載iPad Pro使いとして少々気になったのは、Face IDに非対応なところ。Touch IDを統合したトップボタンも認証の速度は速く、iPad Air単体で使うだけならこれで十分なのですが、ことキーボード入力時はFace IDの方がUXとして自然。認証のために、指をいったんキーから離す必要がないからです。この点は画面表示の時間を長くするなどして、なるべくロックがすぐにかからないよう設定を工夫した方がいいかもしれません。

Touch ID対応は単体で使うぶんには便利だが、キーボード利用時には指を伸ばす必要があるのが難点

Touch ID対応は単体で使うぶんには便利だが、キーボード利用時には指を伸ばす必要があるのが難点

11インチのM1搭載iPad Proを購入した個人的な理由としては、5Gもありました。第4世代までのiPad Airは、4Gまでしか利用できなかったからです。筆者のiPadの利用シーンとして、取材時のメモ取りなどがありますが、発表会などで使われるメジャーな施設では5G対応エリアの場合も多く、せっかくなら高速通信がいいということでiPad Proを選んだことを記憶しています。第5世代のiPad Airは同モデルとして初めて5Gをサポートしたため、高速通信がマストというユーザーも買いやすくなったのではないでしょうか。

試しにドコモで「5Gデータプラス」を契約しているSIMカードを入れ、5Gエリアに行ってスピードテストをしてきましたが、第4世代のiPad Airまででは体感できなかったような速度を叩き出しました。これならば、動画のダウンロードやアプリのダウンロードなども快適にできます。ただし、高速通信が可能な新周波数帯の5Gエリアはまだまだ限定的なため、キャリアにももっとがんばってほしいと感じています。

5Gエリアで速度を測定。以前は1Gbps近く出ていた場所だが、対応端末が増えたこともあってか、500Mbps台にとどまっていた。それでも十分高速だ

5Gエリアで速度を測定。以前は1Gbps近く出ていた場所だが、対応端末が増えたこともあってか、500Mbps台にとどまっていた。それでも十分高速だ

11インチのM1搭載iPad Proユーザーとして第5世代のiPad Airを使ってみましたが、ビックリするほどこれで十分でした。無理をして最高峰のiPad Proを購入する必要はなかったのかもしれません(1年待てたかという問題はありますが)。ただし、上記のようにFace ID非対応なのが残念なポイント。Touch IDでロックを解除した後のキーボード利用時のみ、インカメラで簡易的な認証を行うなど、ソフトウェア的な工夫でなんとか解決してほしいところです。

(石野純也。Engadget日本版より転載)

【レビュー】ついにM1搭載の第5世代iPad Air、コスパそのままに最高の性能を得たモデル

【レビュー】ついにM1搭載の第5世代iPad Air、コスパそのままに最高の性能を得たモデル

第5世代のiPad Airは、最新のApple製品に取り入れられているカラーを踏襲しつつ、独自のブルーを加えた5色の展開。中核モデルであるiPad Airはカラーバリエーションが最も多く、プロのクリエイターに特化した機能と性能を重視したiPad Proとは異なるテイストの製品だ。

特に先代モデルからはiPad Proのエッセンスを取り入れ、同等スペックならドルベースで150ドル安価という「手を伸ばしやすい、しかしフル機能に近いiPad」という性格を備える。MacBookがそうであるように、Proはプロフェッショナルクリエイター、Airは洗練された使い方を求めるプレミアムな一般ユーザーという位置付けが明確化されている。

そのiPad AirにとうとうApple M1チップが搭載された。登場して1年半が経過しているM1だが、いまだにモバイルコンピュータ向けとしてはパフォーマンスと省電力性の両方で圧倒的。それが中核機に降りてきたというのが、第5世代の一番の注目点ということになるのだ。

M1搭載による利点は”爆速”ではなく”創造的”なこと

M1が搭載されたことで、単にCPUが高速になるだけではなくGPUやNeural Engineが強化され、機械学習処理を取り入れた写真修正、動画編集、3Dモデリングなど、さまざまなクリエイター向けアプリの応答性と処理の正確性が高まる。機械学習の最適動作が進めば、タッチ操作やApple Pencilで自動処理できる範囲も広がり、クリエイティブな作業へのハードルが下がる。【レビュー】ついにM1搭載の第5世代iPad Air、コスパそのままに最高の性能を得たモデル

結論から言えば、iPadシリーズの中でもっとも費用対効果が高い中核モデルという性格はそのままに、最高の性能を得た本機は引き続きiPadシリーズの中でも、注釈なしに薦められる製品だ。

第4世代からの変化では、超広角のインカメラに「センターフレーム」という最新の機能が取り入れられ、5Gモデムも内蔵するなど時代に合わせたリフレッシュも行われている。たとえ第4世代モデルを安価に入手できることがあったとしても、永く使いたいならばあえて旧モデルを選ぶ理由もない。

ただし、これまであったコストパフォーマンスの高さは、Appleの戦略とは関係ないものの、円安に振れた為替トレンドにより(日本の顧客にとっては)少々、微妙な価格設定になっていることは否めない。

同じストレージ容量の11インチiPad Proと第5世代iPad Airの価格差は、米ドルベースでは150ドルなのに対し、日本円では1万4000円に過ぎない。このことでどちらを選ぶのか、悩んでいる方は多いのではないだろうか。

その答えは人それぞれだろうが、言い換えるなら為替の影響で価格が近づいた11インチiPad Proとの間で選択を悩む以外に、本機についての懸念点はほとんどない。【レビュー】ついにM1搭載の第5世代iPad Air、コスパそのままに最高の性能を得たモデル

ではiPad Airと11インチiPad Proはどのような点が異なるのだろうか。わずかにiPad Airの画面が小さい一方、カラーバリエーションが多いことは承知しているだろうが、それ以外にも以下の点が異なる。

  • Face ID(TrueDepthカメラ)ではなくTouch IDで個人認証
  • ディスプレイの最大輝度が600nitsに対して500nits
  • 超広角含めた二眼カメラ+LiDARに対しLiDAR非搭載の広角一眼のアウトカメラ
  • 縦横自在の4スピーカーに対し横画面のみでステレオとなる2スピーカー
  • 5個のマルチマイクによる指向性制御に対しデュアルマイク構成
  • Pro Motion対応120Hz表示・タッチパネルスキャンに対し60Hz
  • 外部接続端子がThunderbolt 4(40Gbps)に対しUSB 3.0(10Gbps)

このように並べてみると意外に大きな違いだ。

150ドルの価格差ならば、この違いがあったとしても、多くの人にとってiPad Airの方が適切な選択肢だと明言できたが、1万4000円の違いとなれば迷うのも無理はない。

中でも体験レベルが大きく異なってくるのは、

  • 縦横自在の4スピーカーに対し横画面のみでステレオとなる2スピーカー
  • 5個のマルチマイクによる指向性制御に対しデュアルマイク構成
  • Pro Motion対応120Hz表示・タッチパネルスキャンに対し60Hz

の3点だろうか。【レビュー】ついにM1搭載の第5世代iPad Air、コスパそのままに最高の性能を得たモデル

縦横どちらでも使うiPadの場合、どの方向でもステレオ効果が得られる点は、2世代前のiPad Proが発表された時、随分と感心したポイントだった。その後、空間オーディオ再生に対応し、なおさら4スピーカーの良さが際立つようになったと思う。

マイクに関しては高音質の録音を求めない場合でも、ビームフォーミングに役立つ。オンライン会議時に生活音や背景ノイズを遮断するキーテクノロジでもあるだけに、iPadでオンライン会議をこなしたい人にとっては悩ましい違いだろう。

ProMotionに関しては、スクロール時などの”ヌルヌル感”や指にピッタリと吸い付いたようにドラッグする対象が動く感触的な違いはあるが、一般的な利用では大きな違いは出ない。しかし、絵を描くのであればApple Pencilの追従性向上は体感できるレベルにあると思う。

【レビュー】ついにM1搭載の第5世代iPad Air、コスパそのままに最高の性能を得たモデル個人認証に関しては、Face IDが良いのかTouch IDが良いのかは好みや使い方もある。iPhoneではマスクありの認証に対応したFace IDだが、iPadでは引き続きマスクありでのロック解除はできない。

またディスプレイの表示品質に関しても、スペック上の違いはあるものの、通常、その差を感じることはほとんどない。どちらを選んでも色再現範囲が広く、ホワイトバランスや諧調表現も的確。業界水準を大きく超える美しいディスプレイだ。

【レビュー】ついにM1搭載の第5世代iPad Air、コスパそのままに最高の性能を得たモデルなお、ベンチマーク結果などは誤差程度であり、両者の性能は”同じ”と思って差し支えないと思う。すなわち、タブレットとしても、モバイルパソコンと比較したとしても、ポータブルなコンピュータとしてはほかに比較対象のない、高性能で省電力な端末だ。

iPad Airを検討する際はこれらの違い、カラーバリエーションなどをどう考えるかだ。一方でiPad Pro以外にはライバル不在とも言い換えることができるだろう。

(本田雅一。Engadget日本版より転載)

【レビュー】Apple Studio Display、発売と同時に注文することにためらいはなかった

Apple(アップル)は同社の3月イベントで、Studio Displayを発表した。27インチの外部モニターで、価格は1599ドル(日本での価格は税込19万9800円)からと、これまで同社唯一のモニターだった、Pro Display XDR(5000ドル[税込58万2780円]から)から大きく引き下げられた。

Studio Displayの発表は、Appleが10年以上前に発売し、ディスプレイ事業を完全撤退した2016年に販売が中止された人気のThunderbolt Displayの後継機を待ちわびていた多くの人たちにとってビッグニュースだった。テック業界では多くのプロダクトデザイナーが、限られた解像度と時代遅れのポートにもかかわらずThunderbolt Displayを手放すことを拒み、いつかAppleが後継機を出すことを期待して使い続けていることを私は知っている。

AppleがThunderbolt Displayの販売を中止したとき、市場に大きなギャップを残した。当時、ウェブカム、マイクロホン、スピーカー、(プラス)USBポートをすべて備えたオールインワンのディスプレイは、事実上ゼロだった。LG(エルジー)のUltrafineは1つのソリューションとしてAppleも推奨していたが、製造品質、信頼性、接続性ともにThunderbolt Displayと比べて劣っていた。新しいUSB-Cポートを備えてはいたが。

2020年、パンデミックのためにテック業界がフルタイムのリモートワークに切り替えた時、新しいモニターを物色していた私は、オールインワン外部ディスプレイの選択肢が少ないことに驚かされた。ほとんどの新しいコンピューターにUSB-Cが装備され、高速通信とディスプレイ接続と充電が1本のケーブルでできるようになり、私はモニターメーカー各社がThunder Displayの成功の再現を狙うだろうと予測していた。しかし、私が探したなかで選択肢はごくわずかしかなく、結局単なる4Kモニターと、Logitech(ロジテック、日本ではロジクール)のウェブカム、USBハブ、マイクロフォンを別々に買うことになった。

Appleの新しいStudio Displayはその答えであり、10年待たされた結果の仕様はあらゆる期待に答えるものだった。5Kディスプレイ(5120×2880ピクセル)はリフレッシュレート60Hz、P3ワイドカラーガムートで、12メガピクセルのウェブカムと、あらゆる周辺機器をつなげるUSB-Cポートを3基備えている。MacBookと1本のThunderbolt 3 USB-Cケーブルで接続可能で、(さらに)使用中に充電もできる。

画像クレジット:Apple

ライバルとの差を際立たせているのは、現在購入可能な5K解像度の数少ない選択肢の1つであるからだけでなく、AppleがA13プロセッサーを搭載して、室内の周囲の照明に基づいて色温度を調整するTrue Toneや、人物の動きに合わせてウェブカムが被写体を追跡するセンターフレームなどの機能を付加していることだ。ありふれたことと思うかもしれないが、他にも輝度、音量、その他の機能はMacのキーボードからホットキーで直接制御可能であり、モニターに組み込まれた謎めいたオンスクリーンメニューをたどらなくてすむのは、クオリティー・オブ・ライフの大きな向上である。

ネットで最もよくみかけるこの新型モニターに対する不満は、最新のコンピューターに見られるApple ProMotionテクノロジーに対応しておらず、バターのようなとしか表現できない高い最大リフレッシュレート(120hz)が利用できないことだ。しかしこれは今後もサポートされる見込みはない、なぜならこの能力を引き出すために必要なポート・スループットがまだ存在していないからだ。5K解像度を120 hzでリフレッシュするには53.08Gbpsが必要だが、Thunderbolt 3/4は1本のケーブルで40Gpsしか扱えない。このレベルのスピードは、Thunderbolt 5標準に採用されるといわれているが、公式発表はされておらず、どのコンピューターにも搭載されていない。


1599ドルの基本価格にたじろぐ人も多いが、高解像度で忠実な色再現のディスプレイが必要で、一日のほとんどを画面の前で過ごす人、特に在宅勤務の人たちにとって十分な価値があると私は言いたい。私を含め、プロダクトデザインに携わる者にとっては特にそうだが、一日中オンライン・ミーティングに出席し、余計なアクセサリーを手放したい人にもおすすめだ。

ケーブル1本でつなげて、ビデオ通話のためにウェブカムとマイクロフォンとスピーカーの準備ができていることは、ノートパソコンを取り外すたびにあちこちいじりまわすのと比べて大きな改善だ。組み込み型マイクロフォンはノイズキャンセリングに最適化されているので、多人数のビデオ会議でスピーカーを使うのにもうれしい。リモートワークの社員を雇う会社にとって、買うべきアクセサリーが全部ついているモニターを1台送ればすむので、企業ユーザーにとっても人気の選択肢になる可能性が高い。

Studio Displayは高いか?そのとおり。しかしこれは1日中使う可能性の高い道具への投資であり、Thunderbolt Displayの歴史が参考になるとすれば、今後長らく使うことになるだろう。私も1599ドルを「スクリーン」につぎ込むことなど考えたことがなかったが、発売と同時に注文することにためらいはなかった。できの悪いスクリーンの上にウェブカムを不安定にとまらせ続けるには人生は短すぎる。

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画像クレジット:Apple

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(文:Owen Williams、翻訳:Nob Takahashi / facebook

【レビュー】iPhone 13/13 Proの新色グリーンを実機でチェック!iOS 15.4のマスクありFace IDも試した

iPhone 13/13 Proの新色グリーンを実機でチェック!iOS 15.4のマスクありFace IDも試した

第3世代iPhone SEの予約受付が開始されましたが、忘れてはいけないのがiPhone 13シリーズの新色。iPhone 13、13 miniには「グリーン」が、iPhone 13 Pro、13 Pro Maxには「アルパイングリーン」が追加されます。

グリーンと言えば、iPhone 11 Proで採用された「ミッドナイトグリーン」を思い出す人も多いのではないでしょうか。同色は、ロボットアニメファンから「むせる」など評され、話題になりました。

そんなグリーンですが、iPhone 12シリーズでは残念ながらテイストが大幅に変更され、ミッドナイトグリーンは廃止に。iPhone 12、12 miniには「グリーン」がありましたが、どちらかと言うと薄緑といった色合いで、ミッドナイトグリーンのような渋さはありませんでした。そんな中、満を持して登場したのが上記のグリーンとアルパイングリーンです。早速iPhone 13 miniのグリーンから、その実機を見ていきましょう。

iPhone 13 miniのグリーン

iPhone 13 miniのグリーン……と言っても、正面からだと違いはわかりづらい

iPhone 13 miniのグリーン……と言っても、正面からだと違いはわかりづらい

背面の写真は以下のとおり。同じグリーンという名称ですが、iPhone 12 miniのそれとは異なり、かなり深い緑色であることがわかります。光の当たり方によっては、黒にも見えるほど。強めの光を当てると少し鮮やかになりますが、蛍光灯下での実際の見た目としては、以下写真のフラッシュなしの方に近い色味です。

フラッシュありで撮影した背面。光沢感はこんなイメージ

フラッシュありで撮影した背面。光沢感はこんなイメージ

フラッシュなしで撮影。蛍光灯下での色味は、こちらが近い

フラッシュなしで撮影。蛍光灯下での色味は、こちらが近い

側面は以下に。iPhone 13 miniにはアルミフレームが採用されています。光沢感があるため、背面よりも少し緑が鮮やかめ。光を反射すると、緑の色合いが強調されてキレイ。カジュアルな印象の強い背面に対して、やや高級感が強くなっています。アルミフレームもグリーンで統一されている

アルミフレームもグリーンで統一されているアルミフレームもグリーンで統一されている

アルミフレームもグリーンで統一されている

アルミフレームもグリーンで統一されている

iPhone 13 Proのアルパイングリーン

次に、iPhone 13 Proに行ってみましょう。iPhone 13 Proの背面にはすりガラスのようなガラスが採用されており、アルパイングリーンでもそのデザインは踏襲されています。サラッとした質感で、光を美しく反射し、色合いがやや薄く鮮やかになるのが特徴です。蛍光灯下では深みが出ますが、iPhone 13 miniより繊細な処理で高級感は満点です。

iPhone 13 Pro、13 Pro Maxはアルパイングリーンという名称

iPhone 13 Pro、13 Pro Maxはアルパイングリーンという名称

深い緑で、iPhone 11 Pro、11 Pro Maxのミッドナイトグリーンよりほんの少しだけ緑の色合いが強い印象。こちらはフラッシュあり

深い緑で、iPhone 11 Pro、11 Pro Maxのミッドナイトグリーンよりほんの少しだけ緑の色合いが強い印象。こちらはフラッシュあり

フラッシュなしで撮影した背面

フラッシュなしで撮影した背面

続いてフレームは以下に。ProモデルのiPhoneはステンレススチールを採用するため、光沢感がかなり強め。色は背面同様、深めのグリーンで統一されています。

フレームもグリーンで統一されている。ステンレススチールのため、光沢感はかなり強め。光の当たり方で色合いが大きく変わるフレームもグリーンで統一されている。ステンレススチールのため、光沢感はかなり強め。光の当たり方で色合いが大きく変わるフレームもグリーンで統一されている。ステンレススチールのため、光沢感はかなり強め。光の当たり方で色合いが大きく変わる

フレームもグリーンで統一されている。ステンレススチールのため、光沢感はかなり強め。光の当たり方で色合いが大きく変わる

フレームもグリーンで統一されている。ステンレススチールのため、光沢感はかなり強め。光の当たり方で色合いが大きく変わる

ちなみに、筆者私物の「シエラブルー」との比較は以下のとおり。iPhone 13 Pro、13 Pro Maxは素材の光沢感を生かすためか、「グラファイト」以外は薄めのカラーリングになっていましたが、重めのカラーが好みの人にはいい選択肢になるのでは、と思いました。

シエラブルーとの比較。濃いめの色が好みの人にはオススメ

シエラブルーとの比較。濃いめの色が好みの人にはオススメ

iOS 15.4のマスクありFace IDも試してみた

試用したiPhone 13 mini、13 Proには最新の「iOS 15.4」がインストールされていたため、話題のマスクありFace IDも試してみました。

Face ID設定時にマスクあり用の顔登録を促されるため、そのまま登録。眼鏡をかけている場合は、眼鏡をつけたまま登録した後、眼鏡を外して顔を登録することが求められます。

iOS 15.4も試してみた。マスク着用時のFace ID用に、顔を改めて登録する仕組み

iOS 15.4も試してみた。マスク着用時のFace ID用に、顔を改めて登録する仕組み

眼鏡を着用したまま設定を進めたところ、眼鏡なしの顔の登録も求められた

眼鏡を着用したまま設定を進めたところ、眼鏡なしの顔の登録も求められた

結果として、顔登録をしたところ、マスクをつけたままでもスムーズにロックを解除することができました。

うれしいのは、Apple Watchでのロック解除とは異なり、Apple PayマスクありFace IDが有効なところ。これで、支払いのときにパスコードを入力したり、感染リスクを冒してマスクを少しズラしたりする必要がなくなります。iOS 15.4は来週配信予定ですが、登場が今から楽しみです。

マスクのままロック解除ができ、使用感が大幅に上がった印象

マスクのままロック解除ができ、使用感が大幅に上がった印象

ロック解除だけでなく、Apple PayなどのFace IDにも有効になる

ロック解除だけでなく、Apple PayなどのFace IDにも有効になる

(石野純也。Engadget日本版より転載)

【実機先行レビュー】iPhone SE 第3世代はやっぱり高品質

第三世代iPhone SE。カラーは「ミッドナイト」

第三世代iPhone SE。カラーは「ミッドナイト」

「iPhone SE」第3世代モデルをいち早く使ってみた。本稿ではその模様をお伝えする。

デザインも変わっていないしハイエンドじゃないし……と思っていないだろうか。まあ確かに、そんなに「新しい」感じがするわけではない。

だが、触ってみるとなるほど、Appleの狙いが見えてくる製品でもあるのだ。

ロングセラーになった定番デザイン、色調は第2世代とは異なる

今回のiPhone SEは3世代目になるわけだが、2020年発売の2世代目と同様、デザインは「iPhone 8」(2017年9月発売)と同じになっている。

色も、第2世代・第3世代で同じ……と言いたいところなのだが、白・黒・赤というおおまかな色としては同じであるが、色合いがそれぞれ変わっている。

レビュー機材として貸し出されたのは「ミッドナイト」。黒にほんの少し青が混ざった「深夜の空の色」を感じさせる色合いだ。表側の黒い部分と比較すると、色の違いがわかりやすい。

背面。ちょっと光を強めに入れてみると、黒というより「極めて深い青」であることがわかる。まさに「ミッドナイト」

背面。ちょっと光を強めに入れてみると、黒というより「極めて深い青」であることがわかる。まさに「ミッドナイト」

このデザインも、実際にはiPhone 6世代(2014年9月発売)をベースとしているわけで、なんとも息が長い。第2世代と同じく2年で次の「SE」だとすると、最低でも2024年まで使われる「10年選手」ということになる。

だからiPhone 13世代と比較すると、画面周囲の空白の大きさなど、さすがに古さを感じる。

左がiPhone 13 Pro Max、右がiPhone 13 Pro。中央のiPhone SE(第3世代)を比較すると、画面サイズはかなり違う

左がiPhone 13 Pro Max、右がiPhone 13 Pro。中央のiPhone SE(第3世代)を比較すると、画面サイズはかなり違う

背面。左から、iPhone 13 Pro Maxの新色である「アルパイングリーン」、iPhone 13の新色「グリーン」、iPhone SE(第3世代)の「ミッドナイト」。アルパイングリーンのiPhone 13 Pro Maxはかなり「むせる」色合いだ

背面。左から、iPhone 13 Pro Maxの新色である「アルパイングリーン」、iPhone 13の新色「グリーン」、iPhone SE(第3世代)の「ミッドナイト」。アルパイングリーンのiPhone 13 Pro Maxはかなり「むせる」色合いだ

ただ、Appleの考えとして、ここで細かくデザインを変えていくのは「違う」と考えているのだろう。

ソフトウェア開発上、画面のバリエーションが増えるのは避けたいだろうし、大量に調達しているパーツを使ってコストを下げたい、という思惑もあるので、彼らとしては「この形でこういうパターンで出す」ことしかあり得ないのだ。

ここからの2年で供給価格はさらに下がり、携帯電話事業者による割引を組み合わせて、安価に提供するiPhoneになっていくのは間違いない。だとするなら、「機能や特質を変えず、できる限り長く、安価に提供できるバランス」のものを作ることを最優先にするというのはもっともだろう。

性能はiPhone 13並み、カメラも「日常的撮影」ならかなり良好

というわけで、ちょっと使ってみた感じはまさに「iPhone SE」だ。

価格だけでなくサイズ感含め「これがいい」という人もいるはず。そういう人があまり悩まずに買えるバランスになっている。

画面こそ(本体サイズの割には)狭いが、それでもiPhone 13シリーズと比較すれば、miniを除くとぐっと小さい。全体の作りの良さはさすがだ。

サイド部。アルミボディ+ガラスの仕上げは上質

サイド部。アルミボディ+ガラスの仕上げは上質

第3世代iPhone SEはプロセッサーが「A15 Bionic」になった。そのため、性能はかなり上がっている。

「GeekBench 5」でのテスト結果では、CPU側の性能ではiPhone 13 Pro Maxとほとんど差がない。GPUについてはコア数が違うようで、iPhone 13 Pro Maxの方が流石に性能は高い。メモリ量も、6GBから4GBに減っていると推察される。

SE(第3世代)と、13 Pro MaxのCPUベンチマーク結果。マルチコア性能が若干劣るが、差は小さい。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

SE(第3世代)と、13 Pro MaxのCPUベンチマーク結果。マルチコア性能が若干劣るが、差は小さい。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

SE(第3世代)と、13 Pro MaxのGPUベンチマーク結果。GPUコア数が違うためか明確に13 Pro Maxの方が速い。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

SE(第3世代)と、13 Pro MaxのGPUベンチマーク結果。GPUコア数が違うためか明確に13 Pro Maxの方が速い。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

まあ、このあたりはそんなに問題ではない。画面サイズが小さい分、GPUへの負荷も小さいだろう。「フラッグシップのiPhoneとほとんど差がない性能」と考える方がわかりやすい。

そしてプロセッサー性能が効いてくるのがカメラだ。

iPhone SEは第2世代も第3世代も、まったく同じレンズ・全く同じセンサーを使っている。一方で、プロセッサーに搭載されたイメージシグナル・プロセッサ(ISP)やカメラ関連ソフトウェアが改良され、カメラに使える処理能力も高くなっているので、画質は上がってる……ようだ。

残念ながら手元には第2世代SEがないので、横並びでチェックすることはできていない。

だが、2020年にiPhone 11 ProとiPhone SE(第2世代)で撮り比べた写真の傾向と、今回、iPhone 13 Pro MaxとiPhone SE(第3世代)で撮り比べた写真の傾向を比べると違いが見えてくる。

第2世代SEはiPhone 11 Proに比べ、少し眠く、精細感に欠けた写真になる印象があった。だが今回、そこはあまり差を感じない。センサー特性の違いか、色の乗りは第3世代iPhone SEの方がまだ悪い気がするし、暗い場所の写りではiPhone 13 Pro Maxの方が良いが、一般的な撮影ではさほど問題なく快適に使えるのではないだろうか。

iPhone SE(第3世代)

iPhone SE(第3世代)

iPhone 13 Pro Max

iPhone 13 Pro Max

iPhone SE(第3世代)

iPhone SE(第3世代)

iPhone 13 Pro Max

iPhone 13 Pro Max

とはいえ、光学での望遠や人間以外のポートレート撮影は搭載していないし、HDRでのビデオ撮影も、「シネマティックモード」でのビデオ撮影もできない。そこは上位機種との差別化点である。

iPhone SE(第3世代)

iPhone SE(第3世代)

光学での望遠撮影ができるiPhone 13 Pro Maxはやはり画質がいい。SEはデジタルズーム。iOSはデジタルズームが他社のハイエンドスマホに比べ、弱い傾向にある印象だ。こちらがiPhone 13 Pro Max

光学での望遠撮影ができるiPhone 13 Pro Maxはやはり画質がいい。SEはデジタルズーム。iOSはデジタルズームが他社のハイエンドスマホに比べ、弱い傾向にある印象だ。こちらがiPhone 13 Pro Max

5Gの速度はSEが劣るが……?

今回は5Gに対応したこともポイントだ。iPhone SEのユーザー層を考えると「5Gになったから買う」というものではない、とは思う。むしろ「これから買うのだから5Gであるのが当たり前」「買ったら5Gだった」というところではないだろうか。スタンダードなスマホであるiPhone SEが5Gになるのは、そういう意味を持っている。

ただ、これは筆者の手元でのテストがたまたまそうだったのかもしれないが、iPhone 13 Pro Maxに比べ、5Gでの通信速度がちょっと劣る。サイズや設計の制約により、5Gの感度が少し弱いのかもしれない。

東京都・五反田駅近辺で、ソフトバンク回線を使って計測。iPhone SEは下り速度で最大25%程度遅い。何回か計測し、ばらつきもあるが、SEの方が遅めであることに変わりはなかった。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

東京都・五反田駅近辺で、ソフトバンク回線を使って計測。iPhone SEは下り速度で最大25%程度遅い。何回か計測し、ばらつきもあるが、SEの方が遅めであることに変わりはなかった。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

日常的な使い勝手で極端な速度差を感じたわけではなく、ベンチマークを測ったりすると「確かに違う」という感じだ。感度は良いに越したことはないが、これを問題だ、と思うなら「iPhone 13を買うべき」ということなのかもしれない。

「最高の性能ではないが、作りが良くて安価でちょうどいい」、iPhone SEの位置付けは第3世代でも変わっていないということか。

(西田宗千佳。Engadget日本版より転載)