米不動産保険大手から8億8500万件の顧客データが露出

セキュリティ関連の記者であるBrian Krebsからの最新ニュースだ。Fortune 500社の不動産保険大手であるFirst Americanが、同社のウェブサイトのバグのため、およそ8億8500万件の機密記録が露出した。

Krebsの記事によると、同社のウェブサイトは、銀行口座番号、勘定明細、住宅ローンと税の記録、社会保障番号、そして運転免許証の画像をシーケンシャルな形式で保存し露呈していた。そのため、ドキュメントのウェブアドレスを知っている者が簡単にアクセスできるだけでなく、アドレスの中の数字をひと桁変えるだけで他人のドキュメントも見られた。

パスワードなど、他人のドキュメントへのアクセスを防ぐ認証の仕組みはまったくなかった。

Krebsの記事は、いちばん古いドキュメントの番号が「000000075」で、数が大きいほど新しいドキュメントだと言っている。

露出した中で最も古いのは、2003年のドキュメントだそうだ。

彼の記事では「露出したファイルの多くは、住宅などの物件のバイヤーとセラーの間の電信によるトランザクションの記録で、銀行の口座番号などの情報が含まれている」と書かれている。First Americanは米国最大の不動産権原保険のひとつで、2018年の収入が58億ドルだ。

First AmericanのスポークスパーソンMarcus Ginnaty氏が、本誌TechCrunchに次のように述べた:

5月24日にFirst Americanは、そのプロダクションアプリケーションのひとつに顧客データへの無許可アクセスを可能にする設計不良があることを知った。セキュリティとプライバシーおよび守秘性は最高位のプライオリティであり、私共には顧客の情報を保護する義務がある。したがって、弊社は直ちに対策措置を取り、アプリケーションへの外部アクセスを遮断した。私共は現在、これが顧客の情報の安全に及ぼした影響を査定している。私共は外部の科学捜査企業を起用して、弊社顧客データへの実害のある無許可アクセスがなかったことを確認した。

セキュリティ研究家のJohn Wethington氏よると、ウェブサイトを落としてもドキュメントの多くは検索エンジンにキャッシュされている。しかし本誌TechCrunchは、データがまだ読める状態である間は、露出したデータへのリンクを差し控える。

これは住宅ローンのデータ侵害としては、ここ数カ月で最新の事件だ。

TechCrunchは1月の独占記事で、金融や銀行関連の2400あまりのドキュメントが、パブリッククラウドのストレージサーバー上で不注意により露出して、誰でもアクセスできる状態になったと報じた。そのデータには住宅ローンや一般ローンの契約書をはじめ、さまざまな機密情報が含まれていて、個人の財務状況が丸裸になってしまうのだ。

First Americanからの所見によりこの記事をアップデートした。

関連記事: Millions of bank loan and mortgage documents have leaked online(膨大な量の金融関連ドキュメントが漏洩、未訳)

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マルウェア研究家マーカス・ハチンズが有罪を認めた

マルウェア研究家のマーカス・ハチンズ(Marcus Hutchins)が、銀行を狙う強力なマルウェアを作り、そして売ったとされる嫌疑で2つの訴因に有罪を認め、アメリカの検察との長期戦を終わらせた。

英国籍のハチンズはMalwareTechというハンドル名を名乗り、2017年8月に、ラスベガスで行われたセキュリティカンファレンスDef Conから英国へ帰国しようとしたところを逮捕された。検察はハチンズを、さかのぼる2014年に銀行を狙うマルウェアKronosの作成に関与したとして告発した。その後彼は、保釈で出獄した。

司法取引協定がウィスコンシン州東部地裁に提出され、そこでこの訴件は米国時間4月19日に審理された。彼の裁判は今年後半に開始されると決まった。

ハチンズは、Kronosを配布した罪を認めることに同意した。それは銀行のウェブサイトからパスワードとそのほかの認証情報を盗むためのトロイの木馬だ。最近の数年間そのトロイの木馬は拡散を続けた。彼また、第二の訴因である共謀罪でも有罪を認めた。

ハチンズは最大で10年の懲役刑に直面している。検察は、そのほかの訴因を取り下げた。

自分のウェブサイト上の短い声明で、ハチンズはこう言っている。「これらの行為を悔い自分の過ちに関し全面的に責任を取る」。

「大人になってからは自分が数年前に誤用した同じスキルを建設的な目的に使ってきた。今後も自分の時間を、人びとをマルウェアの攻撃から護るために捧げ続けたい」。

彼の弁護士Marcia Hofmann氏はコメントの求めにすぐには応じなかった。

ハチンズは、逮捕の数カ月前の2017年5月にWannaCryランサムウェアの犯行の拡散を止めて有名になった。その犯行は、国家安全保障局(National Security Agency、NSA)が開発し、のちにリークした強力なハッキングツールを使って何千ものWindowsコンピューターにバックドアを作り、ランサムウェアをインストールした。後日それは北朝鮮が支援するハッカーのしわざとされ、イギリスの病院や世界中の大企業のインターネット接続を断ち業務を麻痺させた。

彼はマルウェアのコードの中に見つけたドメインネームを登録することによって、感染の拡大を止め、それによって英雄視された。

保釈の前後にハチンズはセキュリティコミュニティからさらに賞賛され尊敬された。彼はマルウェア分析の分野に寄与貢献し、また自分の発見を公開して、そこから他の人びとが学べるようにしたからだ。

司法省のスポークスパーソンNicole Navas氏は、コメントを断った。

関連記事: WannaCryのヒーローの支持者グループ、クラウドファンディングで裁判費用を募金

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社員たちのスマホに第2番号を割り当てるMoviusが新CEOを迎え約50億円を調達

アトランタ出身のMoviusは、企業が社員たちの電話機の音声通話とテキストメッセージングに、仕事専用の別の電話番号を割り当てられるようにする。同社は米国時間3月22日、JPMorgan Chase(JPモルガン・チェース)が仕切るシリーズDのラウンドにより、4500万ドル(約50億円)の資金を調達した。これに既存の投資家であるPointGuard VenturesとNew Enterprise AssociatesおよびAnschutz Investmentが参加した。これで、同社の累計調達額は1億ドルになる。

さらにMoviusは、AdobeやSunの役員だったJohn Loiacono氏を新たなCEOとして迎えたことを発表した。Loiacono氏は、ネットワークアナリティクスのスタートアップJolataの創立時のCEOだった。

新CEOはこう言っている。「Moviusの商機はどんどん拡大している。地球という惑星の上のすべての企業でワークフォースが流動化しているが、それに伴い、さまざまな通信手段による顧客や社員たちとの安全な対話が難しい課題になっている。音声でも、SMSでも、あるいはそのほかの彼らが日常的に使用するどんな通信チャネルでもそうだ。私が今感激しているのは、すごく情熱的で実績のあるイノベーターたちのチームに加わろうとしているからだ。彼らはまさに、その難題のソリューションを提供することに、激しく燃えている人びとだ。この会社の成長の次の章を率いていくことが、楽しみである」。

Hyperloop Transportation Technologiesの最高戦略責任者(CSO)のSanjay Jain氏と、JPMorgan ChaseのTechnology Innovation, Strategy & Partnerships部門のトップのLarry Feinsmith氏が、Moviusの取締役会に加わる。

Moviusの現在の顧客数は1400社を超えている。そしてSprintとTelstra、Telefonicaなどがパートナーのキャリアだ。ここで重要なのは、Moviusが提供するものがスマートフォン向けのベーシックなVoIPアプリではない、という点だ。同社が約束しているのは、顧客にキャリア級の本格的なネットワークを提供して、彼らの社員のスマートフォンに第2の番号を割り当てることだ。そのため、社員が自分のデバイスを仕事に使っていても、雇用者は安眠できる。

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iZettleのカードリーダーでロンドンのストリートパフォーマーがキャッシュレスでチップをもらう

決済のデジタル化が進むにつれて、ロンドン名物ストリートパフォーマーたちの収入が現代化しつつある。

新市長Sadiq Khanの支援もあって、イギリスの首都のバスカーたち(buskers, 路上で音楽や芸をする人たちの総称)は、チップを伝統的なキャッシュやコインだけでなく、クレジットカードから受け取ることができるようになる。

この方式はスウェーデンの決済企業iZettle(近くPayPalが22億ドルで買収)を使い、バスカーたちにカードリーダーを与えておくと、通りすがりの歩行者や通勤者たちが寄付できる。最近行ったトライアルを、今度はロンドンの登録バスカーたち全員に拡大する、とBBCが報じている。テストに参加したバスカーのCharlotte Campbellは、非接触型の決済が加わったことによって、いただけるお金の額が相当増えた、と言っている。

“これまでよりもずっとたくさんの人たちが、私が歌ってるときに寄金をタップした。一人がすると、ほかの人たちもする”、とCampbellは言う。

これはiZettleにとっても、絶好のビジネスチャンスだっただろう。これまでも目立たない形で、イギリスの決済のデジタル化に貢献してきたのだが。

iZettleは決済の超大手PayPalにとって、最大の買収になる。同社はこれまで、ヨーロッパ、メキシコ、ラテンアメリカなど計12の市場で操業してきた。イギリスではモバイルによる新しいタイプのPOS方式でとくに強く、そこではスマートフォンやタブレットにつけたカードリーダードングルが活躍した。アメリカのSquareと似たやり方だが、こういうドングルがあれば従来型のPOSシステムを導入してない零細企業でも簡単にカード決済によるPOS処理ができるようになる。

これをベースにiZettleは零細企業への財務サービスを拡大し、今では在庫管理やローンなどの分野も手がけている。

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ビジネスプロセスオートメーションのWorkFusionが$50Mを調達して買収に向け力をつける

ビジネスプロセスオートメーションのソフトウェアを作っているWorkFusionが、同社の4月の5000万ドルの資金調達ラウンドに新たな投資家を2社加えた。

これで同社の新たな戦略的投資家は、大手保険会社のGuardian、ヘルスケアサービスプロバイダーNew York-Presbyterian、商業銀行のPNC Bankとなる。主に人工知能企業に投資しているベンチャー投資家のAlpha Intelligence Capitalも、この新たな投資に参加した。

企業が手作業で、あのサービスを使ったり、このサービスを使ったりしてやっているビジネスプロセスを、WorkFusionは最初のうち、クラウドソーシングで獲得した労働者にアルゴリズムを教育訓練して、それらのワークフローの自動化*を行っていた。そのころからすでに10年近い年月が経っているが、Crunchbaseによれば、その間に約1億2100万ドルの資金を調達している。それが今では同社の評価に結びつくし、同社の中核的市場である金融サービスと保険業界には、本物のファン層が形成されている。〔*: SaaSインテグレーション、クラウドインテグレーションなどとも呼ばれる。〕

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銀行業務をブロックチェーンで支える基幹システムVault OSを元Google社員がローンチ

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銀行には世界の富の圧倒的に膨大な量があるにも関わらず、あるいはそれゆえにこそ、最先端のテクノロジーが育つ場所にはなっていない。むしろ何十年も前からのシステムに頼って、日々の業務をこなしている場合が多い。そこで、Google出身のエンジニアPaul Taylorが率いるThoughtMachineは、ブロックチェーンを使った現代的で総合的な銀行オペレーティングシステムVault OSで、この状況を変えようとしている。

同社の勇ましいプレスリリースが発表している、同システムの2年間のステルス状態からの脱皮は、たくさんの約束を並べている: 同社はフィンテックの最大の課題を解決した;“Vault OS”は完全に未来志向である;自由性(柔軟性)が非常に大きい;破綻に瀕している銀行業界を再生し永遠の命を与える。

Vault OSのこれらの大言壮語が真実かどうか、それは今すぐには分からないし、銀行のレガシーなシステムは一朝一夕に変わるものではない。でも同社が指摘している問題が現実であることは、否定のしようがないし、同社が提供すると称するソリューションには、関心を持たざるをえない。

Profile - Paul Taylor

ThoughtMachineのPaul Taylor

Vault OSのメインの仕事は、銀行の中核的な機能を実行することだ。それは、巨大な台帳(元帳)を維持管理することに帰結する。そのために適している唯一の技術がブロックチェーンであることに、Taylorは固執している。Googleでは彼は、同社が今使っている音声認識のソフトウェア開発を率いていたのだが。

このOSは、一つ一つのインスタンスが自分のプライベートなブロックチェーンと暗号化された台帳を持ち、ThoughtMachineのサービスとしてホストされる。銀行は自分のもっとも基盤的なオペレーションを恒久的にアウトソースすることになるから、それに対する抵抗感も克服しなければならない。

でも、その利点が克服の契機になるかもしれない: ブロックチェーンはセキュアであり、スケーラビリティに富み、そして多用途である。通常のオペレーションの限界や遅延の原因となっているレガシーシステムを置換する動機に、十分なりうる。どんなトランザクションもリアルタイムで行われ、安全に集中保存される。銀行と消費者の両方が、詳細で深いデータ分析(deep data dives)をできるようになり、しかもそのためのAPIが提供されるだろう。

まだまだ未解決の細かい部分が多いし、顧客が納得する確実性も重要、規制もクリアしなければならない。銀行が開業にこぎつけるまでの過程は、ものすごくたいへんである。ThoughtMachineはコードを公開するのか、ホワイトペーパーや監察はどうなるのか、データのマイグレーションはどうやるのか、どんなタイムスケールで展開するのか、などなど、今同社に提示している質問に回答が得られたら、この記事をアップデートしよう。

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フィンテックは銀行を破壊するだけではなく、プラットフォーム化する

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銀行から銀行へお金を移すのは簡単だ。厄介なのはアプリの移動だ。

フィンテック製品は、株取引、資産管理、支払い、ローン、送金、保険等様々な分野で急増している。それを支えているのは民間フィンテック企業へのベンチャー投資で、CB Insightsによると、2015年には総額190億ドルに達した。これは2014年と比べて58%増、2010年からは1000%増にあたる。

これらのスタートアップが、銀行の提供する特定のサービスを破壊することは間違いない。この分野で成功したスタートアップは、銀行の収益機会を侵食することができる。それでも銀行は、付加的サービスよりも消費者の資金を運用することによって主要な利益を上げることができる。

しかし、こうしたスタートアップに共通しているのは、彼らがいずれも、ユーザーの口座に入出金するために、既存の銀行との接続に依存している点だ。スタートアップを避けるのではなく、既存勢力はフィンテック製品が自分たちの銀行口座につながるための橋渡しをしている。

その結果、銀行が急速に変化する一方で、顧客は今使っている銀行を変えようとしない傾向にあるようだと、私の話したフィンテックの起業家やVCらは言っていた。

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クレジットカードやデビットカードのレベルでさえ、AmazonやUberのEコマースサービスは、銀行を変えることを面倒にしている。ユーザーはそれぞれのアプリに行って、口座を更新しなくてはならない。クレジットカードを失くしてしまった時でも、同じ銀行に連絡をして同じ番号のカードを送ってもらえば手間がかからずに済む。

今フィンテックでは、銀行口座と直接つながったアプリが同じことをしている。そうなることで銀行は、新規顧客の獲得や高額商品の販売や維持に専念できる。なぜならユーザーはフィンテックによって今の銀行に固定化されるからだ。

一方、個々のフィンテックスタートアップにとって、銀行は友であり敵でもある。個別のサービスを巡って競合することもあるだろうが、全体で見れば、銀行はパートナーである。将来、スタートアップが隣接市場に手を広げるにつれ、その稀薄な関係に変化が見られるかもしれない。しかし現時点では、理解ある銀行はあなたが想像する以上に、フィンテックスタートアップを大好きだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Fintechは金融ビジネスを一変させる―2016年の予測、トップ4

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「ユニコーン」〔評価額10億ドル以上のスタートアップ〕やGrexit/Brexit〔それぞれギリシャ、英国のユーロ圏離脱〕に加えて「フィンテック(Fintech)が2015年の金融ビジネスのバズワードのトップ10 にランクインしているという。

しかし他の単語と異なり、フィンテックはこのリストへの新顔ではない。またそれには十分な理由がある。ここ数年でフィンテック企業は金融ビジネスの 周辺からメインストリームへと成長した。フィンテックはテクノロジーを利用して新しい金融プラットフォームを構築しようとしれている。目的は消費者に従来よりも優れたユーザー体験を提供することにあり、消費者反応を示しつつある。

私はフィンテックを利用した金融スタートアップ、CommonBondの共同ファウンダー、CEOとしてこの変化を間近に見てきた。この特等席から見れば、金融ビジネスに根本的なシフトが起きていることが分かる。

今年(またそれ以降)フィンテックが金融ビジネスにどのような影響を与えるかについての私の予測のトップ4は以下のとおりだ。

資本の重要性が増し、最良のプレイヤーに集中する 壮大なアイディア、いくつかのバズワード、よくできたパワーポイントのスライドを武器とした昨年のフィンテック企業には今年も来年以降も資金が集まりそうにない。資本は大量に存在する。しかし誰もがそれを得られるわけではない。信頼性のあるプロダクトの開発に成功し、消費者の信頼を得られるようなブランドを築いた企業には必要とする自然と資本が集中する。

登場しつつあるフィンテック市場では大型の貸し手が優位だ。ビッグ・プレイヤーはますます強くなり、小さい企業は大きい企業の傘下に入るか消え去るかとなるだろう。フィンテックを利用する融資を専門とする企業は200社もあるが、その中で生き残るのはトップ20社程度だろう。これは市場の健全化のためにはいいことだ。

有力テクノロジー企業が金融ビジネスに参入する それがどの企業となるか名指しする用意はないが、 2016年はそういうことが起きてよい時期だ。ファイナンスはわれわれ全員の生活に直接関係を持つ。しかし伝統的なファイナンス企業のテクノロジーは古臭く、現代化への動きは遅い。むしろ消費者の方がテクノロジーの進歩に対してオープンであり、現在かじられている問題点が解決されることを期待している。

The Millennial Disruption Indexのアンケート調査によれば、ミレニアル世代の73%は現在取引している銀行の新商品よりも、Google、Amazon、Apple、PayPal、Squareなどから新しい金融サービスが登場した場合の方がはるかに大きな興味を持つという。

フィンテックの動きは速い。しかもますます加速するだろう。

テクノロジー企業はさらなる成長の道を探しており、同時にわれわれの生活でテクノロジー企業の重要性は増す一方だ。. FacebookやGoogleはユーザーに関する膨大な情報を握っている。Appleは2000億ドル以上のキャッシュを持っている。この金額は金融ビジネスの貸し手側としてすぐにも2兆ドルの資産価値生み出すのに十分だ。

これを伝統的金融ビジネスと比較してみよう。 JP Morgan Chaseグループはアメリカ最大の資産を持つ銀行だが、その価値は2兆6000億ドルだ。金融ビジネスのバックボーンは資本とデータだが、巨大テクノロジー企業にはその双方が高いレベルで存在する。しかもテクノロジーで最先端の能力がある。

伝統的巨大銀行はジリ貧を続けるか、フィンテック企業と提携する おそらくそういうことになるだろう。一部の関係者には不快な驚きかもしれないが、今となれば必然のコースだ。自動運転車とと同様、テクノロジーはすでに存在する。そして市場圧力は何ももってしても押しとどめることはできない。

アメリカでは人口動態上、ミレニアル世代が最大のグループであり、9000万人に達する。若く、しかも購買力も増加中だ。にもかかわらず、ミレニアル世代の71%は「銀行と取引するのは歯科の治療を受けるより不愉快」だとしている。31%は銀行を使わずにすむようになると期待しており、その代わりに巨大テクノロジー企業が金融サービスを提供してくれるだろうと考えている。

ミレニアル世代の71%は「銀行と取引するのは歯科の治療を受けるより不愉快」だとしている

Aそして現に金融ビジネスの市場はその方向に動いている。融資、資産管理、支払などの各分野でProsper、Betterment、Affirmなどの新顔がテクノロジーを武器に市場に参入し、急速にシェアを広げつつある。成功の原因はこうしたスタートアップが伝統的金融機関より消費者のニーズに敏感であり、対応が柔軟で迅速だからだろう。

JP MorganのCEO、Jamie Dimonもこうした事態を非常に正確に認識している一人だ。このことは同グループがスモール・ビジネスへの対応を改善するために最近OnDeck Capitalと提携したことにも現れている。また JP Morganはテクノロジー金融スタートアップのLending Clubのローン、10億ドル分を購入している。

「アンバンドリング」のトレンドは一転して巨大な「リバンドリング」の波に変化するだろう CB Insightsのこのチャートは私のお気に入りだ。Wells Fargo銀行のホームページのスクリーンショットに、学資ローンから保険や資産管理まで、伝統的金融ビジネスのあらゆる部分を代替しつつあるフィンテック企業のロゴが無数に重ねられている。このトレンドは一般に銀行業務の「アンバンドリング〔個別機能への解体〕」として知られている。

しかし私自身はこの「巨大なアンバンドリングの波」は、テクノロジーを統合の力として、今後は「巨大なリバンドリングの波」に逆転するだろうと見ている。般にフィンテック企業は一もっとも得意とする単一の業務に特化してスタートする。

フィンテック企業が特定分野で成功したした後、他分野に水平に業務を拡大するとすれば、それが「リバンドリング」だ。フィンテック企業のリバンドリングは、うまく実行されるなら、伝統的銀行よりも消費者の期待によりよく応えられると思われる。その理由の大きな部分は、消費者のニーズを重視する点に加えて、優れたテクノロジーをシームレスに活用できる点にあるだろう。

フィンテックの動きは速い。しかもますます加速するだろう。そして勝者がますます強くなる年になる。しかしこれは消費者も含めて金融市場にとって良い方向だろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

フィンテックは金融ビジネスの根本的改革者になれるか?

NEW YORK, NY - DECEMBER 21:  People walk along Wall Street on December 21, 2015 in New York City.  The Dow Jones industrial average was up over 100 points in morning trading following Friday's huge drop as the price of oil continued its yearly fall.  (Photo by Spencer Platt/Getty Images)

Lawrence Uebel はAlliance Dataで信用リスクの分析を行っている.

『マネー・ボール』の著者、マイケル・ルイスの新しいノンフィクションは 『マネー・ショート 華麗なる大逆転』としてブラッド・ピットらによって先ごろ映画化された。

あるレビューはこの映画から、2008年の金融危機に際して「家賃をきちんと払っているにもかかわらず、家主が債務の支払いを滞らせているというだけの理由で借家人たちが家から路上に叩き出されているl.というセリフを引用していた。

このエピソードはわれわれの金融システムがいかに不完全であり、かつ根本的に不公正であるかを印象的に描き出している。

なぜわれわれはこうしたシステムを必要としているのだろう? アメリカ人は銀行家のやり口を弁護士のやり口と同様によく知っており、毛嫌いしている。だが必要になれば彼らに頼るしかない。

ベストセラー、Other People’s Moneyの中で経済学者のジョン・ケイは「金融とは貸し手と借り手を適切に組み合わせ、貯蓄は投資として有効に活用されねばならないという社会の根本的な要請によって存在する」と書いている。つまり個人の資産を生涯にわたって管理可能とすると同時に、資産の運用に必然的に伴うリスクを軽減し、支払いのシステムとしては売買や賃金、報酬の支払いを容易にする。

金融ビジネスのこうした側面は一般消費者、会社経営者のよく知るところであり、そのメリットもまた明白だ。

しかし金融ビジネス全体にとってはこうした有用な活動は極めて小さい部分をなすに過ぎない。全体としてみると、ジョン・ケイが書いているように、「金融機関は、想像力の限界を試すかのように、相互に取引する」ことを本業とするにようになる。

金融ビジネスのこの部分がウォールストリートにカジノ賭博のイメージを重ねさせる主要な原因だ。ウォールストリートのプレイヤーたちの突拍子もない行動はマイケル・ルイスの別のノンフィクション、『フラッシュ・ボーイズ-10億分の1秒の男たち』〔文藝春秋〕に詳しく描写されている。トレーダーたちはある種の取引においては処理時間を極小化することでリスクなしに巨額の利益を手にできる。

フィンテックは自らをその鏡像のような存在に転化させるべきときが来ている

CDO〔collateralized debt obligation、債務担保証券〕がビザンチン宮廷風の陰謀として描かれ、悪名を高めたのは2008年の金融危機で決定的な役割を果たしたからだ。金融ビジネス関係者―われわれが老後の資産を預けるほど日頃頼りにしているその人々―が、かくも強い毒を含んだ仕組みを考えだし、その毒が存分に発揮されるような運用をしたという事実にはぞっとさせられるものがある。

ただし明敏な観察者なら、一般の人々にメリットをもたらす金融活動と有毒な金融活動ははっきり区別できるというだろう。金というものは、要するに、なんらかの価値に関する情報であり、誰がコントロールしているのかが重要だ。鳴り物入りの大騒ぎを別にして金融ビジネスのその側面を考察するなら、日常生活に不可欠の活動も含めて、情報テクノロジーとの親和性が極めて高いことが容易に見てとれるだろう。

しかし現在の金融ビジネスが非効率であり不公正な結果をもたらすことがあるからといって、それらが情報テクノロジーが改善すべき点だと考えるなら大きな間違いを犯すことになる。金融ビジネスで破壊的改革が求められているのは単なるアルゴリズムではない。金融ビジネスは以前から数学に強かった。それどころか数学者に最高給を支払ってきたのは金融ビジネスだった。金融機関の情報インフラもまた最大級の規模だ(ただし、新システムへの置き換えを深刻に必要としている)。

金融セクターがもっとも必要としているイノベーションは一般ユーザーの「どういう方法かは分からないが自分はカモにされている」という感覚をなんかしなければならないという点だ。なぜならこの感情がよって来るところは金融機関がリスクを分散する手法(その中にはもちろんビジネスとして不可欠な正当なものも多く含まれる)にあるからだ。この手法たるや、やむを得ない面もあるとはいえ、通常きわめて複雑怪奇なものになりがちだ。しかし複雑怪奇さは金融サービスに不可欠の要素などではない。この不必要な複雑怪奇さが、真面目に家賃を払っている人々を家から追い出し、路頭に迷わせるような不公正の原因をなしている。われわれはこうした不公正さを必要としていない。

フィンテックと呼ばれる高度な金融情報テクノロジーはまだ誕生したばかりのセクターだ。しかしフィンテックはそれ自身を軸として自らをその鏡像のような存在に転化させるべきときが来ている〔訳注〕。フィンテックに流れ込む資金は巨大だ。企業は自らがそうありたいと望むビジネスの本質とそれによってどんな根本的な便益が提供されるのかをはっきり決めねばならない。すでにそれらを決めた企業が現れているが、それがフィンテックの本質に合致しているかは別問題だ。

たとえばSindeoだ。このシリコンバレーのスタートアップは当局による規制のゆるい金融セクターで資金の貸し手となろうとする企業ならではの驚くべき感情を公言している。同社は「われわれわれは『やればできる』精神の産物だ。やってみて、うまくいくようなら、それから合法化を考えればいい」と述べている。多くのフィンテック企業が矢継ぎ早に発表する商品を観察すると、その多くは債務と証券を複雑な方法でバンドルしたもので、あまりにもサブプライム危機の原因となった住宅抵当証券に似ているという多くの専門家の観察はおそらく正しいだろう。

こういったアプローチはどれも金融の根本的な改革につながるもではない。こうした人々は2008年に馬脚を現した住宅抵当証券の強引なセールスマンと同じ種族であって、違いといえばウェブサイトが当時より優れていることぐらいだ。

規制当局はすでにフィンテックに重大な関心を寄せている.

経済学者のジョン・ケイはフィンテックに参入しようとする人々に良いアドバイスを与えている。「信用力の弱い証券と返済能力に疑念のある借り手の組み合わせは単にそういうものに過ぎない。それを改善できる錬金術などは存在しない」。金融セクターにどれほど新しいテクノロジーが導入されようと、昔も今も将来も、金融の実体は決して変わりはしない。

それとは逆に、Earnestのようなビジネスも現れている。 Earnestも債務の証券化を目的としているが、健全なビジネスプランに基いて、テクノロジーによってそれを論理的に進化させる方法を論じている。債務の買い取りや返済を障害のより少ない体験にしようというのがその目的だ。

もちろんEarnestなどのスタートアップの活動はまだメディアの記事の中が主だ。長期的に維持可能なビジネスプランであるかどうかの保証はない。それでもメディアがスタートアップの文化を正しく伝えているなら、Sideoのような企業ではなく、Earnestのような企業が結局は金融ビジネスに必要な根本的変革をもたらすものだと期待したい。

規制当局はすでにフィンテックに重大な関心を寄せている。当局の専門家はアルゴリズムから実際の取引行為まですべてを精査中だ。本質的に不健全なビジネスがこの精査に耐えて生き延びる可能性はごく少ない。そして長期的にみるなら、そういう商品の買い手も生き延びることはできないだろう。

ただリスクはフィンテックの外からもやって来る。 最近のフィンテック企業と大手銀行の提携やストレートな買収のラッシュはフィンテックのファウンダーの多数を富豪にするという別のリスクを顕在化させた。こうしたファウンダーたちはきわめて満足のいくトレンドと考えるだろう(そして当然ながらそれを責めることはできないが)。しかしフィンテックが銀行に吸収されることは、あれほど非難の対象となった銀行による不愉快な取引慣行にフィンテックが組み込まれる可能性が高まることを意味する。

フィンテック・スタートアップにとって、まさにこの点が最大のリスクだ。フィンテックが金融ビジネスの既存のツールにとって変わることなく、それに同化してしまえば、何のイノベーションにもならない。われわれ一般人の立場からすれば、フィンテック関係者が巨額の小切手を受け取るとき、一瞬でも立ち止まって、社会の利益に思いを馳せ、自分たちが会社を興したそもそもの目的がこれであったかどうかを反省する瞬間を持つよう切に期待するものだ。

画像: Spencer Platt/Getty Images

〔日本版〕原文は something of a reflection pointとなっている。原文コメント欄ではinflexion pointのタイプミスだろうという意見と、このままでよいという意見が対立している。inflexion pointは数学用語で変曲点(3次曲線などが増加から減少、あるいは減少から増加に転じる点)だが、relfexion pointであれば鏡像的対称の軸となる点を意味する。ここでは原文のまま訳した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

企業による銀行利用の現代化をめざすSeedがまずAPIを公開

【抄訳】

Seedは、企業にとって銀行は透明性を欠き、費用が高く、時代遅れだ、と考えている。Y Combinatorの2015年冬季クラスの‘生徒’だったSeedは、CEOのBrian Merrittによると、銀行をAPIの時代にふさわしい形に洗いなおし、無用な手数料をなくし、銀行を使いながら事業を創業し管理していくことをできるかぎり簡単にしたい、と願っている。

Merrittと協同ファウンダのRyan Hildebrandは、消費者向け銀行サービススタートアップSimpleの出身だ。Simpleは、2014年に1億ドルで買収された

同社はしばらくステルスで操業していたが今日(米国時間2/17)バンキングAPI(銀行利用API)のベータを公開してスタートアップの表舞台に登場した。ただし利用できるのは当面合衆国のみで、デベロッパは自分のアプリ/アプリケーションやツールなどにSeedの銀行利用サービスを組み込める。

バンキングAPIってなんだろう? それはSeed自身が、自分が顧客に提供する各種サービス(Webアプリケーションとモバイルアプリ)の機能を実装するために使っているAPIの集合だ。言い換えるとそれは、Seed自身のデジタルの構造体そのもの(の公開)だ。

Seedは自分自身のクライアントアプリケーションを3か月〜6か月後に立ち上げる予定だ。サービス本体の立ち上げよりもAPIの公開が先、というのは珍しい。

本誌TechCrunchのオフィスにMerrittをお招きして同社のローンチと、その存在理由についてうかがった。

Seed自身は銀行ではなく、むしろ「銀行へのインタフェイス」だ。インタフェイスだから、銀行がやってるサービスは何でもSeedから…より便利に…利用できる。たとえばSeedが提供する預金保険は、FDICの標準の25万ドルに対して最大5000万ドルまでだ。

同社は今日の発表声明で、“国内送金手数料は無料、手形交換手数料は無料、小切手送金手数料は無料、国際決済手数料は小額”、を約束している。Seedの収入源としては、多くの企業向けスタートアップと同様に、年〜月会費を予定している。

【後略】

FEATURED IMAGE: HAKAN DAHLSTROM/FLICKR UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


2万ドルのBitcoin用ATM、RoboCoin、予約受付開始

Bitcoinを他の通貨と両替できるキオスクマシン、RoboCoinが、予約受付を開始し「2013年秋」に出荷される。あなたが近所のBitcoin銀行になろうと決める前に言っておくと、機械の価格は2万ドル(早割1万8500ドル)で、現在はBTCと米ドルのみ両替できる。

実質的にこのデバイスは、生体認証式タイムロックとプライバシー保護タッチスクリーン付のATMライクな機械の強化版だ。現金の入出金が可能(「国際通貨対応」)で、Wi-Fiおよび3Gを塔載している。

ブログ記事によると、開発チームはこれでBitcoinの購入、販売の方法を変える準備が整ったと言っている。

「RoboCoinはビジネスオーナーにとって有力な投資対象である。これを使えば、取引金額に応じた手数料が得られ、Bitcoinの忠誠度の高い顧客ベースを呼び込めるだけでなく、Bitcoin初心者のためにかつて類をみない使いやすさを提供する。さらに、Robocoinが市場に出回るとど、Bitcoinの流動性と利用が増し、このデジタル通貨の値値、認知度、および正当性を高める圧力になる」」と彼らは書いている。

Robocoinが最初に発表されたのは、サンノゼのBitcoinカンファレンスで、直接のライバルには、Lamassu Bitcoin VenturesのBitcoin ATMがある。Robocoinは、Mt. GoxあるいはBitstampというBitcoin両替サービスと直接接続して、その場での支払いを可能にしている。

リアルな、実際に使えるATMの存在は、Bitcoin市場に多大なエネルギーを注入するだろう。これらの機器は高価に違いないが(安価なATMは、3000ドル程度からある)、重要なのは箱ではなくバックエンドだ。例えば、ハッカーのカンファレンスに1台持ち込めば、大量に利用されてBitcoin全般の地位を向上できるだろう。BTCから他の通貨への両替が当たり前になれば、暗号通貨にとって戦いのチャンスは益々大きくなる。

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(翻訳:Nob Takahashi)