「日本のブロックチェーン界隈」の議論を可視化、ブロックチェーンハブの旗揚げイベント

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2016年2月4日に開催された株式会社ブロックチェーンハブの旗揚げのイベント「創業記念講演会」では、果てしなく続く「ブロックチェーン界隈」の議論を目の当たりにした。ここでは私的な印象を切り取って記録しておきたい。

同社は、金融大手を含む“スーツ”族と、ブロックチェーン技術に取り組む“ギーク”族を結ぶ接点(ハブ)となることを目指している。ブロックチェーン技術に関する情報発信、教育(例えば2月12日から始まるブロックチェーン講義)、コンサルティング、人的ネットワーク構築やベンチャー支援を活動内容としてこの1月7日に設立されたばかりだ(プレスリリース)。

ブロックチェーンハブ創業記念講演会から(その1)

斉藤賢爾氏の講演の様子。40人強と限られたメンバーが集まるイベントだったが、金融大手からブロックチェーン界隈のギークまで多様な参加者が集まった。

 

同社の陣容から紹介しよう。代表取締役社長の増田一之氏は、日本興業銀行からキャリアを出発し、インターネット証券取引システムのファイテック社長を経て、現在はベンチャー支援の活動を続けている。取締役CMOの本間善實氏は「日本デジタルマネー協会」の活動を2年続け、ビットコイナー、ブロックチェーン関連の人脈が豊富だ。取締役CTOの志茂博氏は、ブロックチェーン技術Ethereumを活用した実証実験などに引っ張りだこの技術者だ。技術情報の蓄積が進んでいるQiita(関連記事)でブロックチェーン技術に関するポストを調べてみると志茂氏のポストばかり出てくることに驚く(例えばこの記事)。

乾杯の挨拶は日本IBM相談役の北城恪太郎氏だ。1993年から99年まで日本IBM社長を勤めあげ、財界での活動歴も長い。北城氏はブロックチェーンハブのアドバイザーの一人でもある。北城氏は挨拶の中で、朝日新聞が報じた三菱東京UFJが開発中とする仮想通貨の話題を取り上げ、この分野は一般紙が取り上げる話題となったことを強調した。

北城氏による挨拶から想像できるように、日本の有力企業のスーツ姿の紳士と、“ブロックチェーン界隈”のギークを結びつけることがイベントの狙いだ。増田氏は「4大メガバンクはもちろん、多くの有力企業の方々に来ていただいた」と顔をほころばせる。

「株式会社の後を継ぐイノベーションは何か」を問いかける斉藤賢爾氏

最初の講演は慶應義塾大学SFC研究所上席所員の斉藤賢爾氏。斉藤氏は、ブロックチェーン技術Orbと、減価の概念を組み込んだ地域通貨を発行できるシステムSmart Coinを推進するOrb株式会社CTOでもあるが、この日は「慶應の斉藤として話します」と前置きして講演は始まった。

斉藤氏はまず「世界史に名を残す会社を挙げてください」と語りかける。客席から上がった名前は世界初の株式会社である東インド会社である。斉藤氏はもう1社、日本初の株式会社的な組織である海援隊の名を挙げる。株式会社は、事業リスクを複数の株主で分担しながらより大きな経済的リターンを目指す組織であり、人類史上に残るイノベーションだった。では、次の世代のイノベーションは何か。それが現在ブロックチェーン技術の上に構築されつつあるDAO/DAC(Destributed/Decentralized Autonomous Corporation/Organization)ではないか。例えば、ビットコインのエコシステムは、法や契約ではなく分散したノード上で動くアルゴリズムにより組織が機能している例といえる。株式会社とは異なる原理で、分散化/非集権化したコンピュータネットワークの上で動くアルゴリズムにより、人々の集団が事業を営む基盤を作れるのではないか。ここで斉藤氏は、このような考え方はEthereumが目指している世界観そのものだと指摘する。

斉藤氏は、ソフトウェア技術により経済活動そのものを変革するアイデアを持っているのが自分だけではないことを示したかったのだろう。斉藤氏はビットコイン登場以前から仮想通貨を研究し、経済活動の基盤となる「地球規模OS」という概念を提唱している(例えば角川インターネット講座第10巻『第三の産業革命 経済と労働の変化』の第9章「インターネットと金融」を参照)。

斉藤氏は、自分自身は「アンチブロックチェーン派」だと話す。例えばビットコインのブロックチェーンは取引の確定が完全には決定できないファイナリティ(決済完了性)の問題があると指摘する。ビットコインではブロックチェーンの分岐により取引がくつがえる可能性がわずかにある。そこで6回の確認を約60分かけて実施することにより取引を確定しているが、斉藤氏は、これが決済の整合性を証明するとはいえないと指摘する。また、「ドローンで運んできた缶入り飲料を購入して落としてもらう」との例を挙げ、ブロックチェーンの動作には現実世界で求められるリアルタイム性が欠けていることを指摘する。なお、斉藤氏が取り組むOrbでは決済のファイナリティ問題の解決とリアルタイム性の追求を試みているのだが、今回の講演ではそこまでは触れなかった。

ブロックチェーン技術をめぐる百家争鳴状態を可視化

ブロックチェーンハブ創業記念講演会から(その2)

パネルディスカッションから。ビットコインマキシマリストと、アンチビットコイナーの対決。

 

斉藤氏の講演の後は、ビットコインによる支払いシステム「ビットクダイレクト」を提供する「Bi得」の創設者兼CEOのJerry Chan氏が「ブロックチェーンとコンセンサスレジャー」と題して講演。予定されていた演題は「ビットコインなしのブロックチェーンに価値はあるのか」だった。ビットコインと技術投入を含めたそのエコシステムの価値を高く評価するのがJerry氏の立場だ。続いて、Metaco社CTOのNicolas Dorier氏(.NET Frameworkによるビットコイン実装で知られる)、株式会社ソーシャル・マインズ創設者のEdmund Edger氏、Open Assets Protocolにより使用権をブロックチェーンで管理するスマート電源プラグを開発するNayuta代表取締役の栗元憲一氏がショートプレゼンテーションを行った。

Nicolas Dorier氏は、「ビットコイン9つの神話」について話した。ビットコインに対する「スケールできない」「プライベートな取引に使えない」などの批判の多くは、Dorier氏の立場から見れば解決済みだったり見当違いだったりするそうだ。

Edmund Edger氏は、当初はビットコインのブロックチェーンを手掛けていたが、その後Ethereumの方が有望だと鞍替えした。一方、Nayutaの栗元憲一氏は、Ethereumからブロックチェーン技術に入ったが、技術的に安定しているOpen Assetsの方が有望だと感じた。ブロックチェーン技術は複数あり、選択に際しての評価と判断は、おそらくプロジェクトの内容、目的により変わってくる。そうした立場の違いを可視化する講演者の配置だったといえる。

最後の企画は、パネルディスカッションである。斉藤賢爾氏、Jerry Chan氏、新たな合意形成プロトコルPoI(Proof of Importance)を取り入れた暗号通貨NEMの開発者である武宮誠氏が登壇し、本間善實氏が司会に回った。Jerry Chan氏はビットコインの価値を信じるビットコインマキシマリストの立場に立ち、斉藤賢爾氏と武宮誠氏はビットコインの弱点を克服する新技術(斉藤氏はOrb、武宮氏はNEM)を作る立場に立っている。

ビットコインやブロックチェーンに関しては、こうした異なる立場にある人々どうしのディベートが活発に行われていて、この日はその一端に触れることができた。武宮氏は、「ビットコインは面白いが大きな欠点がたくさんある。例えばマイニングは本当に必要なのか」と指摘し、「これが決定的なインフラになるとは思えない」と主張する。データベース製品がたくさんあるように、ブロックチェーン技術も複数あっていい。例えばNEMは最近Mosaic Tileという新機能を取り入れたが、このような新技術を積極的に試していけることは、新しく作った技術ならではの特徴だ。もちろんJerry Chan氏も黙ってはいない。Chan氏は、ビットコインのブロックチェーンにこそ最も大きな価値があると考えている。

ところで、この日に不在だったのにも関わらず存在感があったのは、プライベートブロックチェーン技術mijinに関する業務提携の発表を立て続けに行ってきたテックビューロだ(関連記事)。mijinやそのユースケースに関する情報が不足していることから(これは私たち報道側が、もっとがんばらないといけないところだ)、パネルディスカッションではプライベートブロックチェーンに対する疑問の声も上がった。「一つの組織内で閉じたブロックチェーンに意味があるとすれば、それは会社を畳んだ後にも事後的に監査に使えることではないか」と斉藤氏は意見を述べた。なおmijinのベースとなったNEMの開発者の1人である武宮誠氏は以前はテックビューロでmijinのために働いていたが今は離れている。現在のmijinは、武宮氏以外のNEM開発者を軸に開発を進め、この2月には誰でも参加できる公開ベータテストが始まった。情報不足は今後解消されていくことを期待したい。

議論を続け、しかし決して合意に至らない彼らの姿は、おそらく現実のブロックチェーン界隈の射影だったはずだ。この状況に似ているのはなんだろう……強いていうなら、異なるプログラミング言語の使い手どうしの論戦に似ていることに気がつく(つまり日本で毎年開催されるLL(Lightweight Language)イベントと少しだけ似ていた)。プログラミング言語にも、長年にわたる蓄積を取るか言語設計の新しさを取るか、仕様の安定を取るか新技術の取り入れの早さを取るか、こうした決して相容れない議論がある。

もちろん例え話が当てはまらない部分もある。ソフトウェアの利用者は開発に使われたプログラミング言語のことは気に止めない。だがブロックチェーンは資産価値や信用など重要な「なにか」を刻みつける対象なので、利用者にとっても重大な意味を持つ。資産を蓄積するプラットフォームという点では、OSに近い……いや、ひょっとすると国家にも匹敵する意味を持つかもしれない。

そんな事を考えるうちにも、立ち話の議論はいつまでも続き、イベントの夜は更けていった。ブロックチェーン界隈はあまりにも情報量が多く、あまりにも動きが速い。追いかけるのは大変だが面白い。このイベントの参加者それぞれが異なる印象を持ったことだろうが、「何か重要な事が起こっている」との感触は共有できていたのではないだろうか。

サイドチェーン技術を推進するBlockstreamが5500万ドルを調達、日本では弁護士ドットコムとスマートコントラクトを検討

blockstブロックチェーン技術を手がけるカナダBlockstream Corp.が、シリーズA資金調達で5500万ドルを手にした(発表ブログ)。投資したのは、Horizon Capital、AXA Strategic Ventures、それに日本のデジタルガレージの子会社DGインキュベーションなどだ。

Blockstreamは、暗号通貨とブロックチェーン技術の本流といえるビットコインのブロックチェーンと2-Way PEGで連動する「サイドチェーン」をビジネスとする。ビットコインには7年間の技術的蓄積があるが、すでに多くの利害関係者がいることから新技術を投入しにくい。だがサイドチェーンであれば、技術的蓄積が長いビットコインの基幹技術を利用しつつ、新技術を素早く投入できるメリットがある。

サイドチェーンの応用として、複数のデジタル通貨を束ねるプラットフォームや、スマートコントラクト(アルゴリズムで記述された電子契約)、デジタル不動産登記、ポイント交換などが挙げられる。

peg日本での具体的な取り組みとして、DGがインキュベーションするスタートアップの一社である弁護士ドットコムと連携し、同社の電子契約サービス「CloudSign」に基づく「日本の商習慣に最適化した」スマートコントラクト・システムの開発を検討していく。またデジタル通貨や各種ポイントサービスなどを利用可能な次世代決済プラットフォームを、クレジットカード会社や銀行とコンソーシアムを組織しつつ進める予定だ。

Blockstreamは2014年1月創業。創業者はカナダZero­Knowledge Systemsの出身のAustin HillとAdam Back。創業後間もない2014年11月に、LinkedIn創業者のReid Hoffman氏、Khosla Ventures、Real Venturesをリードインベスターとして2100万ドルを調達し話題となった。CTOのGregory Maxwell氏、エンジニアのPieter Wuille氏は共にビットコインのコア開発者として知名度が高い。

プロダクトとして、オープンソースのアプリケーション開発向けプロダクト「Elements」と、ビットコイン取引所を対象とする「Liquid」がある。同社の主要ビジネスモデルは、(1)オープンソースで提供するプロダクトに対する定額制カスタマーサポートと、(2)サイドチェーンをBlockchain-as-a Sreviceとして提供することだ。

ブロックチェーン技術の関連企業の中でも、特に有名エンジニアを抱え豊富な資金を持つBlockstreamが日本でのビジネスを展開する。今後の動向に注目したい。

Bitcoin、2014年末以来の高値に

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ほぼ退屈だった2015年末に向けて、bitcoinは記録的高値で波風を立てている。

Bitcoinは400ドルの壁を越え、これは2014年以来2度目のことだ。今回は、 以前のプチブームを上回り、昨年夏遅く以来の高値に到達した。

これまでの低迷をあざ笑うこともできるが、現在のbitcoin価格は信者を啓発するものに違いない。今のbitcoinは、殆どの人々が昨年期待していたことをやっている。グラフを見られたい[期間1年、出典:Blockchain]

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グラフからわかる通り、bitcoinは巻き返し状態にある。bitcoinの価格そのものは一つの指標にすぎないが、重要な意味を持つ。bitcoinの値が上がるほど、メディアからの注目度も上がる。つまりアップはアップを意味している。

bitcoinおよびブロックチェーンに関する最近の議論を通じて、何が一時の流行で、何が事実で、何が未来かに変化が見られてきた。bitcoinに関してブロックチェーンを論じるのは一時的流行であり、bitcoinはブロックチェーンが機能し続けるための金銭的インセンティブして重要だというのは事実であり、メディアの不安をよそにbitcoinそのものが輝くのを見ることは未来志向だ。

bitcoinの価格上昇はメディアの注目を呼ぶ。それがブロックチェーンをさらに議論するための新たな信用となる。2つは結合しているが ― 永久に ―共依存し続ける。

というわけでここ数週間のbitcoinは好調だ。価格は新たな極大値に達し、取引量も増えている。Bitcoinは現在、真の信者とコアな中傷者の両方を困惑させている。前者は指数関数的成長を期待している。後者は ― 完全な崩壊だ。

革命は段階を踏んで起きる。誰も知らない。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

世界初のBitcoinだけの銀行NextBankが、規制と偏見の少ないバヌアツで登記、将来はbitcoin投資銀行も目指す

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Dimitry Voloshinskiyと彼のチームは、従来型の銀行に恐ろしい災いをもたらすかもしれない。彼が創業したNextBankは、初めての、bitcoinによる、bitcoinのための、銀行だ。

これまで自己資金とエンジェルたちから計95万ドルを獲得した同社は、さらなる資金を求めている。

でも、そもそも、ビットコイン銀行って何だ? そう、まず何よりも、bitcoin人種が利用する銀行だ。

Voloshinskiyは説明する: “完全にオンラインだけの銀行だ。多くの場合、ネットを使ってリモートアカウントを開く。利用者はbitcoinのコミュニティだ。bitcoinを扱う企業やトレーダーやbitcoinに関して前向きな起業家も、大歓迎だ。NextBankは、世界で初めてのbitcoinフレンドリーな銀行だ”。

といってもその中身は、これまでの銀行とまったく違うらしい。

同行のもう一人の経営者Celine Nevesは、Vanuatu(バヌアツ)に登記した銀行のCEOだ。Voloshinskiyによると、Vanuatuは、南太平洋の海洋島嶼国で、国の金融行政が合理的であるなど、銀行経営にとって利点があり、また世界から肯定的に受け入れられている。ということは、伝統的銀行業が巨大に栄える国々のように、bitcoinに対する向かい風がきつくない、ということでもある。既存の先進諸国等では、暗号通貨をベースとするフィンテックスタートアップが育ちにくいのだ。

“Vanuatuは、ブラックリストに載ってるオフショアセンターではない。40ほどの司法圈を調べてみたが、その中ではVanuatuがいちばん、、未来の銀行にとって理想的だ”、と彼は語る。

同行は、リモートでアカウントを作りやすくし、国際的なデビットカードが使えるようにする。また、現在のそのほかの司法圈にあるような、bitcoinに対する規制の壁がないようにする。

“今の銀行は嫌いだよ。彼らはもうすぐ死ぬと思うね”、とVoloshinskiyは語る。彼は今後、bitcoinベースのフィンテックビジネスを育成し、bitcoinに対して前向きなファンを支援し、多くのbitcoin保有者たちを幸福にしたい、と考えている。2016年には最初のプロダクトを立ち上げるそうだから、期待しよう。

[原文へ]。
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

ブロックチェーンの正体

image編集部注この原稿は、森・濱田松本法律事務所パートナーの増島雅和弁護士 (@hakusansai)による寄稿である。増島氏は2000年に東京大学法学部を卒業し、2001年弁護士登録、森・濱田松本法律事務所入所。2006年に米国のコロンビア大学法科大学院を卒業し、シリコンバレーのウィルソン・ソンシーニ法律事務所に勤務。2007年ニューヨーク州弁護士登録。帰国後には2010~2012年まで金融庁監督局保険課兼銀行第一課で、法務担当課長補佐を務めた。日本ベンチャーキャピタル協会顧問、日本クラウドファンディング協会理事などを歴任している。

ブロックチェーンの「誤解」

ここのところ急速にブロックチェーンに対する注目度が高まっています。Overstockが開発した、ブロックチェーン技術を用いた非上場株式の取引プラットフォーム「」、ブロックチェーン技術を用いて中央清算機関なしに株式の仲介を実現することを目指してNASDAQと提携したChainなどがこれまで取り上げられてきましたが、三菱UFJフィナンシャル・グループが、ブロックチェーン技術を国際的な金融取引市場に応用することを標榜するR3CEVのプロジェクトに参加する22の銀行の1つとなることがアナウンス(発表PDF)されてから、日本のマーケットでもブロックチェーンまわりがざわついてきました。

日本では、ブロックチェーンというとビットコインを連想する人が多いと思います。「ビットコイン」とは仮想通貨の1つであるビットコイン(これは小文字でbitcoinと記載されるのが通例です)と、これを支えるブロックチェーン技術としてのビットコイン(これは大文字でBitcoinと記載されます)の2つを意味しており、ここで議論をしているのはブロックチェーン技術としてのBitcoinに関連するものです。しかし、この記事でご説明しようとしているブロックチェーンとは、Bitcoinそのものを意味するものではありません。日本のビジネス界では、まだブロックチェーンとはビットコインが採用しているブロックチェーン技術(Bitcoin)のことを意味しているものと捉えている人が多く、ブロックチェーンとBitcoinを混同してブロックチェーン(特にそのリスク)を論じるものが多く見られます。テクノロジー系媒体を代表するTechCrunchすらそのような記事を掲載していますので(「次の革命をもたらすのはブロックチェーンかもしれない」(原文))、ビジネス界でこうした記事にも目配りをしているビジネスパーソンの多くが、このような捉え方をされているのは無理からぬものがあります。

技術サイドの方には当然のこととして理解されていることなので改めて指摘するのも憚られるところですが、Bitcoinというのはブロックチェーン技術を応用した1つのプロトコルに過ぎません。技術を評価して応用する側にあるビジネス界の人々にとっては特に、ブロックチェーンとBitcoinを混同して理解し議論することは、ブロックチェーンの本当の破壊力を見誤るように思います。実際、ビジネスの観点からすると、Bitcoinはブロックチェーン技術の中ではかなり極端なシチュエーションを想定したプロトコルであり、ブロックチェーン技術の応用例としては例外の方に位置づけられるべきものであるともいえるように感じます。

この記事は、ビジネスサイドの人たちに、ブロックチェーン技術をどのように体系を立てて理解すればよいかについて、同じくビジネスサイドにいる筆者の考えを共有することを目的とするものです。そのうえで、ブロックチェーン技術がビジネスにどのように応用することができるのかについて、その見取り図を示そうとするものです(編注:ビットコインの解説にについては、「誰も教えてくれないけれど、これを読めば分かるビットコインの仕組みと可能性」も参照)。

なぜ、ビジネスサイドが、わざわざブロックチェーン技術について理解しなければならないのか、ブロックチェーン技術のビジネス応用について理解しておけば十分なのではないか、という考え方があるかもしれません。しかし、筆者の考えでは、これではブロックチェーン技術のビジネス応用を適切に評価・議論することができません。なぜなら、Bitcoinという、かなり極端なシチュエーションを想定したブロックチェーン技術のアイディアが先行して世の中に広まってしまったため、ブロックチェーン技術のビジネス応用を考える際に、Bitcoin固有の技術的な制約や限界に関する言説が、ブロックチェーン技術に対する評価を歪めてしまいがちであるためです。ブロックチェーン技術についての体系的な理解をすることなくそのビジネス応用について評価・検討しようとすると、技術的な側面からの誤った理解がこれを邪魔するということが起こりうるように思います。

説明を開始する前に1つ留保事項を述べておきます。ブロックチェーン技術は多義的な解釈が可能な技術です。インターネットとは何か、と問われたときに、それぞれの時代ごとに主流の捉え方があり、時とともにバージョンアップされていったのに似ているかもしれません。この記事では、現時点で筆者が一応納得している、ビジネス応用に関する初期的な検討に耐えると思われる、ブロックチェーン技術の体系的な理解を皆さんと共有したいと思います。ビジネス業界の外からは、別の解釈もあるでしょうし、ビジネス業界からも、時を経てより良い解釈の方法が提示される可能性も十分にあると思っています。ぜひとも皆さんの考えを教えて下さい(@hakusansaiにてお待ちしています)。

管理者の有無によるブロックチェーン技術の分類

テクノロジーサイドの論文を読んだり技術者の方々と議論したりした結果、ブロックチェーン技術は、下図のような体系で整理して理解すると、ビジネス応用について検討・評価する際の見通しが良いように思います。

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(*)ただし、管理者がいてノード参加が自由というものも作ることができる

まずは、管理者について、ブロックチェーン技術を採用し、ビジネスの用途でこれを管理するのは誰か、という点からブロックチェーン技術を見る視点です。ブロックチェーン技術については「管理者が存在しない」という事態も想定されており、その典型がBitcoinということになります。ブロックチェーンをビジネス用途に用いる場合、その導入を検討する企業はブロックチェーンを管理したいと考えるのではないでしょうか。管理の主体は、単体企業とすることもパートナーシップ関係にあるコンソーシアムによって担われるとすることも考えられます。管理主体を誰にするかは、ビジネスの戦略上はたいへん重要なポイントになりますが、ブロックチェーン技術という観点からはそれほど大きな問題ではありません。すなわち、ブロックチェーン技術としては、単体企業を管理者とするものとコンソーシアムを管理者とするもののいずれもが可能であり、それぞれに最適化したプロトコルを持ったサービスを採用するか、もしくは同一のプロトコルを用いて他の技術的な側面からそれぞれに最適化したサービスを採用するかということをビジネスサイドとしては考えることになります。

コンピューターシステムであれそれ以外のものであれ、およそ一定の仕組み・システムを運用するためには管理者が必要と考えられていました。企業内システムしかり、コーポレート・ガバナンスしかり、自治体や国家運営であってもしかりです。Bitcoinというのは、理論的にはこの管理者の存在を前提としないプロトコルを採用しています。管理者の存在を前提とする必要がないことから、Bitcoinは民主的な技術であるといわれ、その応用である仮想通貨(bitcoin)は、国家システム(なかんずく貨幣システム)に対する強力な代替案を提供しうるアプリケーションであるとして、驚きをもって受け止められました。しかしながらこのことは、ブロックチェーン技術は管理者が存在しないものでなければならないことを意味するものではありません。ブロックチェーンは分散型台帳技術であり(ブロックチェーンを「台帳」と解釈すべきかどうか自体についても諸説があり、ものの見方によって多義的な解釈が可能です)、それ自体は無色透明のものであって、管理者をどのように設定し、または設定しないことにするかは、プロトコルのアーキテクチャの問題にすぎないということができます。

誰でもノードとして参加できるか、管理者によるコントロールを可能にするか

ブロックチェーンはpeer to peer技術を応用したものなので、技術的にノードの存在が必要になります。このノードに誰がなることができるのかというのが次の視点となります。管理者が存在しないブロックチェーン技術の場合には、管理者が存在しないというその特性は、ノードの参加の可否を判断する者が存在しないということを意味し、したがって誰でもノードに参加することができるというアーキテクチャを採用することになります。ブロックチェーン技術を解説する際に「Trustless」という表現が出てくることがありますが、これは主としてこのことを述べたものです。

逆に、管理者が存在するブロックチェーンについては、ノードとなるかどうかについて管理者がこれをコントロールすることができるということになります。これには、エンドユーザーを直接ノードとするものや、エンドユーザーは誰かということと誰をノードとするかを分けて考えるものとがありますが、いずれにしても、ノードとなることができる主体を管理者がコントロールすることができること自体には変わりがありません(エンドユーザーが自動的にノードとなるものについては、そもそもそのエンドユーザーにアカウント開設を許可するかどうかを管理者がコントロールすることによって、ノードをコントロールすることができることになります)。この特性を表現するものとして、しばしば「Trusted」という表現が用いられています。

コンセンサスとプルーフの必要性

ブロックチェーン技術について、これをpeer to peer技術を用いて管理する分散型台帳であると見た場合、この台帳の書き換えをコントロールする方法が技術の中核を占めることになります。台帳の書き換えは、そこに何らかのトランザクションが起こることを意味していますが、このトランザクションに対する同意(コンセンサス)と、それが真に当事者によって行われたものであること、さらには対象が二重にトランザクションの対象となっていないことを確認(プルーフ)する作業が必要となります。

ブロックチェーン技術に、誰でもノードに参加することができるアーキテクチャを採用する場合、ノードには悪意のある者が参加する可能性があることを念頭に置いて全体を設計しなければならないことになります。すなわち、悪意のあるノード参加者が分散型台帳を改ざんしないことを確保する仕組みが必要ということになります。Bitcoinにおいては、これをproof of workと呼ばれる方法で、台帳の書き換えには一定の計算を行うことを要するものとすることで、解決しようとしています。計算が必要であるということは、コンピューターリソースとこれを動かす電力を必要とするということを意味していますが、これらの資源を提供することのインセンティブとしてbitcoin自身を資源の提供者(つまりマイナー)に付与することをあらかじめ約束することで、悪意のあるノード参加者にとって、台帳を改ざんするよりはマイニングに従事するほうが経済的に効率的であるという状態を創出しているわけです。これにより、悪意のあるノード参加者を想定しつつ、台帳の改ざんの懸念を払拭しているところに、Bitcoinというプロトコルの際立った特徴があるといえます。

逆にいうと、ブロックチェーン技術に管理者の存在を想定し、ノード参加者を管理者が選定することができるというアーキテクチャを採用した場合、そもそもそんなに悪意のあるノード参加者などというのを想定してガチガチなプルーフ作業を必須としなくても良いではないか、という発想がうまれうることになります。

どの程度のプルーフ作業を必要とするかは、分散型台帳の書き換えの速度、すなわちトランザクションの速度と深く関係することになります。厳格なプルーフ作業を要求する場合、これはビジネスにおいては取引の実行に要する時間が長くなることを原則として意味します。そうすると、その長さがすなわち決済速度ということになり、この点のブロックチェーンのアーキテクチャ、さらにはそのプロトコル自身が、ビジネス上、その取引にそのブロックチェーンが使えるかどうかという話に直結することになります。

このように、ブロックチェーン技術においては、厳格なプルーフ作業を求めること、ビジネス的に言うと台帳に対する悪意のある改ざんがなされないという信頼性を技術的に高く確保することと、トランザクション速度を高速化することの間には、一定のアンビバレントな関係があるといわれています。このバランスをどこに置くのか、ということを考える際に、悪意のある改ざんを防止するためにノード参加者自身をコントロールするという発想を持つことができる、管理者が存在するブロックチェーン技術とその存在を前提としていないブロックチェーン技術の間には、サービスの設計を考える上で、大きな差があるということだと思います。

さらに言うと、プロトコルをどうするかという問題は、ビジネスの応用に際して一定の制約を生むことになるとはいえますが、この点は提供される製品のアーキテクチャによって、一定程度解消されうるということであると思います。例えばBitcoinのプロトコルを用いたとしても、その上に何か別のレイヤーを設けて工夫することにより、トランザクション速度に関して何らかの改善を図ることができる余地はあるということかと思います(Bitcoinというプロトコルは、管理者の存在を前提とはしていないというだけで、このプロトコルを用いたサービスを設計する際に、管理者を置いた形のサービスを作ることができないということではまったくありません。)。但し、Bitcoinのプロトコルに本源的に存在する制約や限界が、これを用いたサービスの設計を窮屈にするということはありえるかもしれず、それによってサービスがビジネス上どの領域に利用することができるのか、ということに影響することはありうるのだと思います。

また、Bitcoinが完全なオープンソースであることに関連して、事業者が提供するサービスの中には、そのおおもとをBitcoinに由来するものが多くあります。これらはビットコインフォークと呼ばれ、Bitcoinが持つ特性を多かれ少なかれ引き継いでいることになります。ブロックチェーン技術を用いたサービスを一から開発する(すなわちコードを一行目から書いていく)ためには、peer to peerによる分散型合意形成技術、暗号技術、セキュリティ技術など異なる領域にわたる技術を開発陣が高いレベルで習得していなければならず、そのような開発チームを組織して、ビットコインフォークではない、特定のビジネス応用に最適化したサービスを作り上げるためには、かなりの時間と開発コストがかかると言われています。

ブロックチェーンには「トークン」は必須ではない

ブロックチェーン技術に言及する際には、しばしば「トークン」と呼ばれるシステム内の貨幣のようなものと、マイナーと呼ばれるトークンの発掘者の存在が指摘されることがあります。しかしながら、これらはブロックチェーン技術にとって必要不可欠の要素ではありません。ブロックチェーン技術を分散型台帳としてとらえる見方からすると、システム内でこの分散型台帳を適切に管理することができればよいわけであり、そのための設計として、トークンというものを導入するかどうか、またマイナーという仕組みを導入して分散型台帳の管理のためのリソース提供を動機付けするかどうかは、サービスのアーキテクチャないしその根本にあるブロックチェーンのプロトコルをどのようにするか、という問題に過ぎません。

同様に、台帳を誰が見ることができるかという点も、サービスの設計の問題ということになります。

ブロックチェーン技術の応用

ブロックチェーン技術を分散型台帳とみた場合、その応用としてビジネス界が着想するものとして決済分野があります。決済には資金や証券などの分野がありますが、資金は記録によりその価値の帰属者を法的に定めることができ、証券についても電子的な記録によりその保有者を法的に定めることができますので、ブロックチェーン技術を用いてトランザクションの実行を適切に記録する(誰と誰の間のいつ行われた何の移転に関する取引かを記録し、その認証を行うことで、二重譲渡のような事態を防止する)ことにより、ブロックチェーン技術に決済機能を発揮させることができそうです。

他方で、このような記録台帳による記載と資産の法的な所有の決定が必ずしも対応していないものも存在します。例えば債権の譲渡は、誰が現在債権者であるかについて対外的に主張することができるためには、債務者に対する通知や債務者による承諾が必要です。したがって、記録台帳による記載を債務者への対抗可能なものとするためには、債権の売買当事者間の合意とその認証のみではなく、債務者に対する通知がなされたことや債務者が承諾したことについての認証が必要になることになります。動産の場合には、売買当事者間の譲渡の合意のほかに、その動産が買主に引き渡されたことについての認証もなければ、記録台帳の内容のとおりの資産の所有関係があるということは言えません。不動産の場合にはその権利の取得や喪失について対外的に主張するためには登記が必要ということになりますので、ブロックチェーンによる記録と登記システムが何らかのつながりを持たなければならないことになります。そこで、もっとも先進的なアイディアとして、登記システムにブロックチェーンが組み込まれるべきであるという主張がなされているところです。技術的にはともかく現状の登記実務を念頭に考えると、それなりに超えるべきハードルがあると言わざるをえませんが、確かにそのような仕組みが採用された暁には、現在の中央集権的な登記システムの維持にかかるコストは劇的に減らせることになるでしょう。現に、債権については電子債権記録法という法律により、電子債権記録機関における記録によってその権利の発生と移転の法律上の効果を担保する仕組みができており、こうした新しい法律上の枠組みの制定により、資金や証券以外の資産の移転分野にブロックチェーン技術が応用されていく可能性はあると考えられます。

ブロックチェーン技術の捉え方として、これは台帳ではなく5W1Hが記載された記録簿であるという識者もいます。これを台帳と表現するか記録簿と表現するかは言葉の綾に過ぎないように思われますが、このような表現をされる人の中には、チューリング完全なブロックチェーン技術であれば、契約上の義務をデータレイヤーを取扱うチェーンと同じチェーンで取扱うことができ、これによりブロックチェーン上で契約関係を表現することができると同時に、その契約条件が整った際に契約上の支払の履行がなされることを確保するという仕組みをつくり上げることができるということを強調する人が多いようです。これを表現する単語として、「スマートコントラクト」という呼び方がなされることがあります。このようなスマートコントラクトにおいては、単純化して言えば、移転対象となる資産を移転する諸条件がブロックチェーン上に表現され、記述されたすべて条件の成就が認証された場合に資産が台帳上移転するという仕組みをブロックチェーンに織り込んでおくという発想がなされています。

このようなスマートコントラクトの考えは、ガバナンスないしモニタリングと呼ばれるものの考え方を変更するかもしれません。例えば取締役に対する株主のモニタリングについて、取締役の行動に様々な条件を課したうえで、それらの条件を成就した場合に報酬が付与されるものと考えた場合、これらの条件関係がブロックチェーン上に表現されていれば、その条件の成就が認証されないかぎり取締役に報酬が支払われないということになります。取締役のモニタリングを、判定が容易な複数の条件の組み合わせとその成就の認証行為としてとらえ、これを報酬と紐付けることで、コーポレート・ガバナンスの最重要の問題の一つであるところの取締役の行動規律を低コストで確保することができるのではないか、と考えることは、スマートコントラクトの延長上の議論として少なくとも成立し得るように思われます。

また、スマートコントラクトとIoTの関係にも着目する必要があります。スマートコントラクトでは、一定の条件が成就することをもって資産の移転が生じる(より正確には帳簿上の記載が変更される)ということをブロックチェーン技術によって自動的に発生させることができるわけですが、この「条件」が客観的な事象の発生そのもの、もしくはそのような事象と紐付いたものであることがあります。例えば、「午後10時までに帰宅する日が1週間のうち4日以上あったら5000円を支払う」という契約があった場合、「午後10時までに帰宅する」という条件が果たされたことを確認する方法として、本人が帰宅したことを申告させ、誰かが本人の自宅に電話して認証する方法がありえます。これに代わる方法として、本人が電子鍵で自宅ドアを解錠した場合にスマートロックからモバイル端末を経由して帰宅の事実とその時刻が送信されれば、その日に「午後10時までに帰宅する」という条件を満たしたことをブロックチェーン上で認証することができることになります。

こうしてみてみると、そもそもビットコインという仮想通貨システム自体が、これまでは国家がコストを掛けてメンテナンスしてきた貨幣システムのガバナンスに相当するものを、ビットコインというプロトコルの中で、法定通貨のガバナンスとコスト構造が全く異なる仕組みにより、実現したものととらえることも可能であるように思われます。すなわち、ビットコインという仮想通貨システムが成立していることそのものが、ブロックチェーン技術がこれまでのガバナンスとそのためのコストというものに対して、強烈な転換を迫るものたりうることの証左であるという見方もできるということです。

米保安局、Bitcoin 1000万ドル相当をオークションで販売

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米国保安局は、シルクロードのbitcoinを再び競売にかける。計4万4341 BTCが2000bitcoinのブロック単位で2015年11月5日の12:00 UTCから18:00 UTCにかけて販売される。

これは麻薬組織シルクロードの首謀者とされるロス・ウルブリヒトから押収した最後のbitcoin群だ。

コインの価値は全部で約1060万ドルになる。米国保安局が次のように書いている

「登録期間は10月19日から11月2日正午まで。入札希望者はその時までに登録要項の記載を完了している必要がある。保安局による以前のbitcoinオークションに提出された登録書類はこのオークションでは無効である。興味のある入札者は本オークション向けに新たな書類を提出する必要がある。

詳しい発表内容はこちらで読むことができる。コインの申し込みはこちらから。これはシルクロード差し押さえ後に保安局が販売する最後のコイン群だ。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

金融インフラをブロックチェーンで代替してコストを10分の1に、日本から「mijin」が登場

ミッションクリティカルな金融機関システムを、Bitcoinなどの暗号通貨で使われる要素技術であるブロックチェーンで置き換える――。こういうと日本のIT業界に身をおいてる人の反応は2つに割れるのではないだろうか。「何を寝言みたいなことを言ってるのだ?」という反応と、「それはとても理にかなってるね」という反応だ。

ダウンタイムの許されない高可用性や、データ損失のない信頼性が要求されるITシステムというのはハードもソフトも「枯れた技術」を使うのが定石。まだ実用性や有用性が証明されていないBitcoinの技術を使うなどというのは、世迷い事っぽくも聞こえる。ただ、Bitcoinという仕組みを実現するベースになっているブロックチェーンそのものは、可用性と堅牢性の高いP2Pネットワークとして様々な応用が期待されている技術だ。

ブロックチェーンは複数のサーバが参加するP2Pネットワークであるということから、中央管理サーバのない、いわゆる冗長構成となっているほか、原理上データの改ざんがきわめて難しいという特徴がある。

このことから、例えばシティバンクは独自のデジタル通貨プラットフォーム「CitiCoin」を実験中だし、Nasdaqはブロックチェーン技術を提供するChainと提携して未公開株式市場で同社技術を使うと発表している。ほかにもUBSが「スマート債権」を実験中だったりと、アメリカの金融大手が新技術の取り込みに向けて動き始めている。9月15日にはゴールドマン・サックスやバークレイズを含む9つの大手銀行がブロックチェーンで提携すると発表している

金融関連ベンチャー投資支援をしているAnthemisグループは「The Fintech 2.0」という分析レポートのなかで、ブロックチェーンによって銀行のインフラコストを2022年までに150〜200億ドル削減できるのではないかとしている。

面白いのは、最近アメリカの金融関係者らがBitcoinというネガティブなイメージのつきまとう言葉を避けて「ブロックチェーン」という言葉を使うようになっていることだ。Bitcoin関連のポッドキャストやコンサル、講演で知られるアンドレア・アントノポラス氏の言葉を借りて言えば、Bitcoinというのはインターネットにおける電子メールのようなもの(ちょっと長めの動画インタビュー)。1995年ごろにWebブラウザが爆発的普及を始めるまでは、インターネットとはメールのことだった。しかしTCP/IPを使った最初に成功したアプリがメールだっただけで、実際にはインターネットはもっと多様なサービスを生み出す革新的なイネーブラーだった。同様に、Bitcoin発案者とされる中本哲史の本当の発明はブロックチェーンのほうで、Bitcoinのような暗号通貨は、その1つの応用にすぎないという。

ちなみにシリコンバレーの著名投資家マーク・アンドリーセンは2014年初頭の時点でBitcoinの登場のインパクトを、1975年のパーソナル・コンピューター、1993年のインターネットの登場になぞらえている。アンドリーセンは、Bitcoinの本質的な価値は、ビザンチン将軍問題というコンピューター・サイエンスの研究者たちが取り組んできた課題におけるブレークスルーであることが根底にあると強調している。互いに無関係の参加者が、信頼性のないインターネットのようなネットワーク上で、どうやって合意形成を達成するのかという問題だ。

自社内、またはパートナー間のみ利用可能なブロックチェーン「mijin」(ミジン)

さて、アメリカでブロックチェーン技術利用へ向けて金融大手が動き出している中、日本発のBitcoin関連スタートアップであるテックビューロが今日、自社内、またはパートナー間のみ利用可能なブロックチェーン「mijin」(ミジン)を発表した。Bitcoinはオープンでパブリックなブロックチェーンで運用されているが、mijinは、そのプライベートネットワーク版といった位置付けだ。

mijinは現在クローズドβのテストフェーズにあり、2016年初頭から提携企業への提供を開始する。また2016年春には有償の商用ライセンスのほか、オープンソースライセンスのもとソースコードの一般公開を予定している。mijinは、地理的に分散したノード間で2015年末までに秒間25トランザクションの処理能力を提供し、2016年末までに秒間100トランザクションを実現するのが目標だという。プライベートな同一ネットワーク内では秒間数千トランザクション以上での高速動作も実現するとしている。mijinを提供するテックビューロは日本発のスタートアップ企業だが、顧客の大半が欧米顧客になると見ていて、そのことから「忍者」的なキャラをあえて選んだのだそうだ。mijinというのは忍者が使った武器の一種なんだとか。

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テックビューロ創業者で代表の朝山貴生氏は、mijinで構築したブロックチェーンで既存のデータベースを置き換えることで、企業のポイントサービスや決済サービス、オンラインゲーム、航空会社マイレージ、ロジスティックス、保険、金融機関、政府機関などの大規模で高度なシステム基盤にまで幅広く利用できると話す。銀行系のシステムだと初期構築とハードウェア費用で数億円、運用フェーズでも月額数千万円ということがある一方、mijinでクラウド上に数十台のインスタンスを立ち上げることで、初期費用ゼロ、月額数十万円の運用が可能となるだろうという。

このコスト削減の背景には、システムの堅牢性や冗長化といった技術的な部分がなくなることに加えて、不正防止対策や運用マニュアルの整備など運用コストの削減効果もある。テックビューロのリーガルアドバイザーである森・濱田松本法律事務所の増島雅和弁護士はプレスリリースの中で、「ビットコインプロトコルに依存しないプライベートブロックチェーンというユニークな立ち位置でローンチされるmijinが金融・商流・ガバナンスをどのように変えていくのか、大変興味深い」と語っている。

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ブロックチェーン技術を使ったスタートアップ(またはプロジェクト)には、BlockstackSETLBankchainHYPERLEDGERMultiChainEthereumFactomStorjなどがある。金融向け、汎用ビジネス向けなどいろいろあって、すでに走りだしている。ただ、オープンソースで非アプリケーションのプラットホーム指向というmijinのモデルはユニークで、今からでもポジションを確保できるのではないかと朝山氏は話している。

テックビューロは国内でBitcoinを含む暗号通貨の取引所「Zaif Exchange」を運営していて、2015年3月に日本テクノロジーベンチャーパートナーズから1億円を資金調達している。

Bitcoinやブロックチェーンがどういう技術なのかという解説は、朝山氏によるTechCrunch Japanへの寄稿も参考にしてほしい。

21.co、支払いシステムを組み合わせたミニBitcoin採掘マシンを発表

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bitcoin採掘機を買ってきて動かすことは、奉仕活動か報酬目当てのどちらか…だが両方であることはまずない。21.coは、この興味深い一致を達成したようだ。

彼らの新しいBitcoinコンピューターは、発掘マシンに繋がれたRaspberry Pi 2だ。現在Amazonで予約受付中で価格は399ドル。WiFiアダブターを内蔵し128GB SDカードにブロックチェーンがブレインストールされてくる。

21.coは、Balaji S. Srinivasanが設立した秘密めいた会社で、これは同社初の消費者製品だ。

このシステムを使うと、商品の売買および低消費電力の21 Bitcoinチップを使ってBitcoinを採掘できる。また、マイクロペイメントシステムを使ってBitcoinで「あらゆる商品
を誰にでも」売ることができるほか、任意の端末を通じてこのマシンに接続することができる。

Srinivasanは次のように書いている:

21 Bitcoinコンピューターには次のような使い方がある:
      コマンドラインから直接Bitcoinを採掘する
        BitcoinでAPIコールを販売する。例えば英語から中国語への翻訳やファイル変換など
          独自のiTunes風デジタル商品ストアを開設する
            あなたのリンクをソーシャルメディアに掲載してくれた人に報酬を渡す
            スマートロックから3Dプリンターまで、どんなIoTハードウェアでもBitcoinでレンタルできるようにする

          21inc6._SR1000,750_

          これは何のために存在するのか?どうやらこれは、21による入門レベルの非常に使い易いBitcoin採掘ツールを一般人に提供する取り組みのようだ。独自のBTC採掘機自体は珍しくないが、マイクロペイメントシステムと組み合わせて様々なことを取り入れている点が非常に興味深い。これは、Srinvasanが消費者分野に進出する準備が整ったことを示す確かな行動でもある。いずれこの会社は携帯電話でBitcoinを採掘できるチップセットを作るかもしれない。これは幸先の良いスタートだ。

          原文へ
           
          (翻訳:Nob Takahashi / facebook

          クールな暗号通貨コンバーター、ShapeShiftが160万ドルを調達

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          Clamsが欲しいって? それともNucoin? ShapeShift.ioが助けてくれる。このやたらに単純なシステムは、万人が使える匿名仮想通貨コンバーターで、bitcoinのパイオニアの一人、Erik Voorheesが作った。しくみは? 任意の仮想通貨を選び ― 例えばLitecoin ― 入金アドレスを指定する。次に別の通貨を ― 例えばBitcoin ― 入金ウォレットに入金する。システムが通貨を自動的に変換し、ユーザーが個人情報を登録する必要はない。

          なぜこれをやりたいか? つまりはサイトによって便利な通貨が違うからだ ― Clamsはゲームサイトでよく使われているが、NuBitsはドルに連動しているため揮発性が低い。こうした異なる通貨の間で両替するには個人情報が必要ないため、どんな通貨も瞬時にBTCに両替できる。

          「私がこのプロジェクトを起こしたのは、通貨の両替をこれまでと全く異なる方法で行えることを示したかったからだ」とVoorheesは言う。「暗号通貨は管理されない交換が可能であり、ユーザーはサインアップやアカウントの作成が必要ない。これは法定通貨では不可能だ。ShapeShiftは、以前のSatoshiDICEと同じく、暗号通貨があれば古いヒジネスを全く新しい方法で運用できることを示した」。

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          同社はDigital Currency GroupとRoger Ver、 およびエンジェル投資家のBruce Fenton、Trevor Koverko、Michael Terpinから計160万ドルを調達した。ShapeShiftは7月に200万ドル相当の通貨を取扱った。APIを提供しているのでプログラマーはこのサービスを使ってリアルタイムに変換できる。面白いのは、Voorheesがサイトに厳格な「ノーフィアット」ポリシーを定めていることで、これは従来の送金機構とは完全に別物であることを意味している。つまり、ドルをDogecoinに変えるようなことはできない。やりとりは完全に匿名なので、顧客が誰であるか、何をやっているかも彼は見ることができない。「ShapeShiftにはユーザーアカウントも、サインアップも、登録プロセスも何もない。その代り、伝統的両替よりずっと早くてずっと便利だ」と彼は言った。

          というわけで、現在ユーザーは1300種類の通貨の組み合わせが利用できる。Voorheesいわく「外国為替の新記録」。日本で人気の暗号通貨、Monacoin(モナーコイン)の利用場面は今のところ限られているかもしれないが、Voorheesはあらゆる通貨の両替がShapeShiftのように早くなる日が来ることを期待している。

          [原文へ]

          (翻訳:Nob Takahashi / facebook

          Mt.Goxファウンダー逮捕―これを機にBitcoinは次の時代へ

          2015-08-04-bitcoin-mountain

          東京のビットコイン 取引所、Mt.Goxの前CEO、マーク・カルプレスはアーリーアダプターに巨額の損失を与えたようだ。現時点ではカルプレスがどれだけの金額を失くしたのか、あるいは盗んだのかは明らかでない。しかし日本の警察はカルプレスが3億8700万ドル相当のビットコインを失ったとしている。

          カルプレスのデタラメな経営には弁解の余地がない。Japan Timesによれば、カルプレスはMt.Goxを運営中に何百万ドルものビットコインを自分の口座に「テスト」と称して加えていたという。Mt.Goxはめちゃくちゃな人物とめちゃくちゃな行動が支配する西部劇のように無法で理不尽な初期のビットコインの時代を代表する存在となった。カルプレスの逮捕でその時代が終わったことを私は心から歓迎するものだ。

          Nahaniel Popperの近著、Digital Goldによれば、ビットコインはシリコンバレーの成功物語とは全く違うことが分かる。ビットコインの誕生にはガレージもなくオフィスもなく、IRCによるチャットのチャンネルとフォーラムの議論があるだけだった。要するにメインストリームとは異なる傍系のテクノロジーとして発展した。幸いなことに、今ようやくビットコインはメインストリームに取り込まれようとしている。

          これは非常に望ましいことだ。

          1年ほど前に、私はビットコインには重大なイメージ問題があると指摘した。つまり当初はオタクのゲームだったのが、テクノロジーの価値のためでなく、単に金になりそうだということで投資家が集まり始めた。こういう望ましくない状態はカルプレスが破裂させた爆弾によって吹き飛ばされた。そしてブロックチェーンによる暗号化というテクノロジーの価値が再認識されつつある。

          Ethereumはブロックチェーン・アルゴリズムによる分散化をあらゆる方面に拡張するプラットフォームを目指している。金融機関も時代遅れのACHやSWIFTシステムをブロックチェーンによる分散的システムに置き換えようと試みている。一般の人々もl国家のデフォールトのような緊急事態からの避難場所としてビットコインを使い始めた。ウィンケルヴォス兄弟は近くビットコイン取引所を上場しようと準備中だ。ビットコインの二幕目が開こうとしている。さまざまな興味ふかい展開が期待できる。

          Mt.Goxの不祥事でアーリーアダプターが巨額の金を失ったのは深刻きわまりない悲劇だった。カルプレスが奸智に長けた横領犯だったのか単なる愚か者だったのか、そして消えたビットコインはどこに行ったのかは永遠のナゾになってしまうかもしれない。しかし金融規制当局がブロックチェインを監視するようになれば、二度とMt.Gox事件が起きないように対策できるだろう。

          デタラメな経営によって銀行から大金が消えることは日常茶飯事だ。しかしいかに経営がデタラメでも資金の移動がブロックチェーンで跡づけられていれば、簡単に金が消えることはなくなる。 それによって匿名性は一部失われるかもしれないが、金融機関がどのように資金をやりとりしているのかが透明化されれば公衆は多くの有益な情報を得られるだろう。

          私は以前よりビットコイン の将来に楽観的だ。それは魔法の弾丸ではないし、現在の通貨を置き換えるような存在でもない。しかしマイクロ・ペイメントにとって、また特に銀行に口座を持てない出稼ぎ労働者が故国に送金する手段として必須のものなるだろう。カルプレスの逮捕は、こういう道化師や悪党にビットコインのビジョンを破壊させないようにするための重要なステップだと考えるべきだろう。

          [原文へ]

          (翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

          Citibank、bitcoinテクノロジーをベースにした独自のデジタル通貨プラットフォームを実験中

          2015-07-08-bitcoinoldmoney

          この業界に詳しい人間にとっては驚きではないかもしれないが、CitibankはCitiCoinともいうべき独自のデジタル通貨のプラットフォームを開発し、実験中であることを認めた。International Business Timesによれば、Citigroupが開発したデジタル通貨はbitcoinとそのブロックチェーン・テクノロジーをベースにしたものだという。

          この開発自体はさほど難しくない。適当なプログラミング技術があれば、誰でも暗号通貨システムを開発することはできる。しかしCitibankが、たとえR&D部門による実験とはいえ、デジタル通貨に興味を示したという点は将来への期待を抱かせる。

          IBTの記事はCitigroupのイノベーション・ラボのKenneth Mooreの次のような発言を引用している。

          現在Citi グループ内部では分散ブロックチェーン方式をベースにしたデジタル通貨関連システムの実験が3種類行われている。これらの実験はすべてわれわれのラボの内部で実施されており、まだ現実の金を扱ってはいない。はっきり言っていずれもまだプリプロダクション・レベルのシステムだ。われわれは、厳密にラボの内部でだが、bitcoinのマイニングも行っており、いわばCiticoin’が採掘されている。実験レベルとはいえ、われわれはデジタル通貨テクノロジーにおいても最先端を進んでおり、その利用の可能性を十分に吟味しているところだ。

          Mooreは暗号通貨を国際送金に用いたり、グループ内部でマイニングを行いレッジャーを維持するのネットワークを構築するる可能性についても触れた。

          Citigroupのような銀行がデジタル通貨の可能性に挑戦するのは賞賛されるべき努力だが―重要なのは銀行は通貨の移動に対するコントロールを無くさないためにそうしているのだという点だ。私は以前の記事で「金融機関は暗号通貨を恐れてはいないが、気にはしている」と書いた。Citigroupについてもそれが実態だろう。ひとたび暗号通貨が金融機関によって公式に採用されることになれば、ただちに規制当局が動き出すだろう。その結果、dogecoin、 bitcoin、citicoins、なんであれ規制のための精査が始まるに違いない。

          5月にBitcoinMagazineはCitigroupがbitcoinのような暗号通貨に強い関心を抱いているのは明白だという記事を掲載した。これによればCitigroupは公式文書で「潜在的な利点を考慮すると、デジタル通貨の採用はいずれ不可避だとわれわれは考えている。ただし将来のデジタル通貨がBitcoinのような暗号通貨になるかどうかについてはまだ不明な点が多い」と書いている。

          画像:Julia Zakharova/Shutterstock

          [原文へ]

          (翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

          ビットコイントレーダー向けのダッシュボード「coincheck tradeview」、レジュプレスが提供

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          いつでも決済でき、また手数料もかからないことから、少額決済にも有効だとそのメリットをうたっているビットコイン。しかし日本での利用はまだまだこれからという状況で、現在は投資目的の取引が大半を占めるという。ビットコイン取引所「coincheck exchange」を運営するレジュプレスは6月10日、そんな投資目的のビットコイントレーダー向けのサービス「coincheck tradeview」をリリースした。

          coincheck tradeviewでは、FXのオンライントレードにあるようなグラフィカルなUIでユーザーのビットコイン運用をサポートする。

          レジュプレスによると、coincheck exchangeの月間取引額1.6億円のうち、8割の取引はトレード目的で運用しているユーザーだという。そしてそのユーザーというのは、入金額でいえば上位5%のユーザーで、それぞれ100万円以上入金しているそうだ。tradeviewはそんな高額取引者向けの機能となる。FXトレーダーに馴染みやすい機能やユーザーインターフェースを採用。ビットコインにこれまで触れたことのない新規ユーザーの獲得にもつなげるとする。

          tradeviewの利用は無料だが、利用には一定の条件がある。具体的には以下の条件のいずれかをcoincheck exchangeで満たしている必要があるという。

          • 合計25万円以上の日本円を入金したユーザー
          • 合計20BTC以上のビットコインを入金したユーザー
          • これまでに25万円分以上の取引をしたユーザー

          tradeviewではこれまで指値注文(レートを指定しての売買)のみだった取引に加え、成行注文(その時点のレートで売買)にも対応する。将来的には海外ビットコイン取引所の売買情報やチャートのテクニカル分析なども追加する予定だ。

          マネタイズに関してだが、coincheckではリリース記念で取引手数料が無料(原稿執筆時点)なこともあり、tradeviewのリリースで取引額が増えても同社の利益には直結しないという(レジュプレス取締役の大塚雄介氏)。それよりもまずはビットコインのマーケットを拡大するということに狙いがあるそうだ。

          なお大塚氏は国内におけるビットコインサービスを改善すべく、米国ニューヨークに2週間の視察調査に向かうという。クラウドファンディングのReadyForで支援者を募集中だ。

          おめでとう今年のBitcoin Pizza Day!

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          毎年5月22日になると、世界中のサイバーおたくたちがBitcoin Pizza Dayを祝う。この日、初期のbitcoinファンでプログラマのLaszlo Hanyeczが、bitcoinsで実際に物を買うことに成功した。彼は10000bitcoin(当時約25ドル相当)で、Papa Johnのピザ(上図)を二つ買った。2010年に彼は、bitcoinのメッセージボードに、こんな投稿をした:

          10000bitcoinで二枚のピザを買うよ…たぶん、ラージサイズ二枚だから、翌日まですこし残る。ピザを食べたければ自分で作ってもよいし、電話で近くの宅配のピザを頼んでもよい。でもぼくがやりたいのは、ホテルの食堂で何かを頼むときのように注文した食べ物の代金を、bitcoinで払うことだ。bitcoinでちゃんと食事ができたら、とてもハッピーだ。きみも関心があったら、残りのピザをbitcoinで売ってあげるよ。よろしくね。Laszlo

          10000bitcoinは、今なら233万ドル相当だ。

          それから数時間後にこのイギリスのbitcoin所有者は、ピザを注文して届けさせた。そのごちそうは、まるで奇跡のように、まる40日続いた。ただしLaszloと彼の子どもたちが大量のピザを食べたのは、ほんの数日だったが、ひとつの伝説がここに生まれた。

          Bitcoin Pizza Dayには一部の決済サイトがディスカウントのピザをbitcoin所有者たちに提供する。Snapcardbitcoinで買ったピザ一枚につき5ドルをチャリティして、Bernard & Millie Duker子ども病院の子どもたちにピザを贈る。

          Pizza For Coinsでは、パイも買える。この全国的な祝日をどのように祝ってもよいが、でも、今日(こんにち)までのbitcoinの成長と成熟のために奮闘した人たちに敬意を表して、あの、べたべたぬるぬるして、むかむかする匂いの、Papa Johnのガーリックソースを、ピザにどっさりかけよう。あるいは、あの日Hanyeczが買ったのよりもおいしいピザを買おう。Papa Johnのは、ひどいよ。

          出典: CryptoCoinsNews

          [原文へ]
          (翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

          Mt. Goxでbitcoinを失った顧客たちの再生手続が開始、全額は戻らないが

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          昨年派手にぶっ潰れたMt. Goxは、債権者たちが倒産の主張を受け入れ始めていたが、顧客にとっては良いニュースもある。

          今日発行された(米国時間4/21)通告は、顧客たちに、Mt. Goxのアカウントでclaims.mtgox.comにログインし、再生手続を行うよう指示している(書類の山が好きな人はオフラインでも申請できる)。

          Kraken経由で弁済を請求する、という道もある。この韓国のbitcoin取引所は昨年、Mt. Gox’sの債権者たちから弁済請求の窓口に選ばれた。Krakenは若干の味付けをして、Mt. Gox’sの顧客たちによるここでの取引額100万ドルまでは手数料無料、としている。

          どちらの場合も、実際に弁済された額はKraken上の口座に載るから、前もってKrakenのアカウントが必要だ。返済額は1BTCが483ドルとして計算され、それに6%の年利がつく。現在のbitcoinの価格よりも高いが、でも全額が返済されるわけではないから、Reddit上には悲嘆の声がある。

          なお、保有bitcoinに関する再生手続の締め切りは5月29日まで、となっているから、あまりのんびりしない方がよろしい。同社の債権者たちは債権の返済に関する決定を今年の9月9日までに行う、としている。

          Mt. Goxは(少なくとも)85万BTCを失ったあと、2014年2月にWebサイトを閉鎖し、取引を停止した。それにより生じた未済の債務は約6360万ドルとされる。

          この、東京に本社を置く企業は2月に倒産を申請したが、最近の報道では、盗まれたbitcoinのほとんどが2011年から2013年までのあいだに盗まれている。同社がそのコインの蓄積を再生しようとする狂乱の努力に関しては、多くの物語が生まれている。その中には、ボットを利用する自動取引もあった、とか。…しかし、その理由が何であれ、同社の崩壊は決定的となった。

          今では、bitcoinも成熟した。Mt. Goxのような一匹狼のビジネスの時代では、もはやない。今日の大手取引所CoinbaseやBitPayなどはVCや著名な機関投資家たちが支えている。彼らはbitcoinを、一風変わった新しいテクノロジではなく、主流的で正当な決済システムとして認め始めている。

          [原文へ]
          (翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

          BitcoinのATMサービス、Robocoinで外国送金手数料が5分の1以下に

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          送金、特に国外への送金は以前からbitcoinでもっとも人気のある利用方法だった。今回、Robocoinチームがさらに魅力的なキラー・ガジェットを開発した。Romit は自社開発のRobocoin ATM同士で、またはマーチャントのアカウントを利用して送金を行うシステムで、金融機関などによる振込に比べて手数料が圧倒的に安い。

          Robocoinは香港、ルーマニア、イタリア、アメリカ(ラスベガスを含む)など世界20箇所にATMを設置している。送金手続きはこの上なく簡単で、ATMに紙幣を挿入し、受取人の電話場号を入力するだけよい。受取人は近くのATMまたはマーチャントで受け取る。

          CEOのJordan Kelleyは、「われわれはATMの数を増やすというよりも、Romitシステムを利用するパートナー・マーチャントを増やすことで急速なスケーリングを図りたい。 たとえば、ルーマニアとイタリアの間では年間11億ドルもの送金が行われている。われわれはこの市場で、2015年末までにRomitを利用した送金を受け付ける小売店などを数百店舗パートナーとして獲得する計画だ」と語った。

          bitcoinを利用した送金サービスは、フィリピンのRebitなど、世界にいくつも現れている。Robocoinは自らのネットワークに加えて、こうした他のサービスとも提携することでスケーリングに成功できるかもしれない。

          Robocoinでは街角の店舗を出来合いのATM代わりに利用することでネットワークの拡大を図っている。手数料は4%で、これは他の送金サービスの手数料が25%かそれ以上にもなるのと比べて5分の1以下だ。またRobocoinは200ドル以下の少額送金も受け付けている。これは銀行口座を持たない外国人労働者が家族に送金する際に特に役立つ機能だろう。

          [原文へ]

          滑川海彦@Facebook Google+

          誰も教えてくれないけれど、これを読めば分かるビットコインの仕組みと可能性

          Bitcoin

          編集部注この原稿は朝山貴生氏(@takaoasayama)による寄稿である。朝山氏はビットコインと国産暗号通貨のモナーコインを扱う国内向け取引所の「Zaif Exchange」(ザイフ)を2015年3月初旬にオープンしたテックビューロの創業者で代表取締役。暗号通貨関連サービスを開始、運用している立場から書かれた解説記事だという点は留意してほしいのだが、一方で、表層的な理解だけで「胡散臭い」と遠巻きに眺めているだけにするには、暗号通貨やブロックチェーンは、あまりにも重要な技術トレンドだ。以下の原稿を読めばその理由がわかるだろう。ネットに載せるには、かなり長い文章だが、ブックマークしておいて後でじっくり読んでほしい。現在の銀行間の送金システムから説き起こしているので、これまで技術用語の多さにビットコイン入門ができていなかった人でも分かりやすくなっている思う。意見や質問などがあれば、コメント欄に書くか、@jptechcrunch@takaoasayamaまでお知らせいただければと思う。

          ビットコインは本当に怪しくて危険なのか?

          2014年、日本のメディアでも華々しくデビューを果たしたビットコイン(Bitcoin)。しかしその登場シーンは、ビットコイン取引所Mt.Gox(マウントゴックス)の破綻という最悪のニュース。同社は日本に本社を置くにもかかわらず、当時は世界最大のビットコイン取引所だった。そのMt. Gox社が、約490億円相当ものビットコインを「盗まれた」と宣言し、その事がたちまちメディアを賑わせた。

          Mt. Gox事件の真相は闇の中であり、いまだに各国の機関において調査が継続している。しかし、当初からはっきりしている事実はただ一つ。これは単に、ユーザーのビットコインを預かっていた取引所であるMt. Goxが破綻しただけであり、ビットコイン自体には何ら問題がないということだ。しかし、それから1年以上経った今でも、日本のメディアでは依然ビットコインにネガティブなイメージがつきまとう。

          ところが、それら「怪しい」、「盗まれてしまう」、「消えてしまう」、「信用できない」といったイメージは全くの誤解だ。むしろビットコインは「取引は全て透明性が高く」、「盗むことは非常に困難」であり、「消したくとも消せない」もの。そしてある意味一般的な通貨や銀行よりも「信用できる」ものなのである。ただし法定通貨に対しての、金よりも激しいとされるその価格変動性(ボラティリティ)を除いては、という条件付きだが。

          ビットコイン本来の素晴らしさを証明しようと、ビットコイン擁護派がイメージ回復のためにどれほど躍起しようとも、その利点を説明するためには常に技術的なボキャブラリーが欠かせず、それが更に印象を悪くするという悪循環を生んでいる。中でも、ビットコイン自体が生み出した「暗号通貨(Crypto Currency)」という言葉が示すとおり、その根幹となる「ブロックチェーン技術」を説明するためには「暗号」という言葉が避けて通れない。この、「暗号」という言葉が「怪しい空気」を醸しだし、一般人とビットコインとを隔てる溝をより深くする。

          と、以上冒頭の4パラグラフだけでも「意味がわからん!タイトル詐欺ではないか!」と、続きを読むことをためらう方もおられるに違いない。

          実際に私自身も、この何年間にも渡って、ビットコインをできるだけ簡単に説明する方法をずっと考えてきては諦めることを繰り返していた。そして今までにも日本語で、「これを読めばわかる」的な記事もいくつも出てきてはいるが、やはり一般的に理解されるようなレベルの内容ではなかった。

          どうしても、難解な用語とその説明を避けて通れないのだ。

          しかし何年も考え続けてみるもので、突如深夜の入浴時にその説明法に関するアイデアがわき出した。

          ロールプレイで理解しやすくなる

          その時、私がビットコインを説明する方法として思いついたのが「ロールプレイ」だった。

          まずは、あえてビットコインの根幹となる暗号技術についての詳細を端折ることにより、その原理と仕組みを比喩的に理解してもらおうという作戦だ。要するに、一番売りである技術的セールスポイントをまずなかったことにして、概要を理解したあとでそこを埋めるという、ビットコイン推進派としては回り道な啓蒙戦術だ。

          しかし技術用語を無視するとしても、「P2Pネットワーク」やら「Proof of Work」(後ほど説明)やらといった、ビットコインをビットコインたるものにする特徴の説明が非常に難しい。そこを架空の「役割」を持ったキャラクターが存在する世界で考えることによって、難しい技術用語が苦手な人にも想像しやすくしようと考えたのだ。

          ここから続きを読んで頂ければ、あなたにもビットコインがどういうものなのかを理解して頂けるに違いない。そう願う。

          では早速その「ロールプレイ」の世界に行ってみよう。

          一般的な銀行とお金の仕組み

          実は、全く知識のない人にビットコインを説明する際に、「銀行」や「日本円」といった法定通貨と比較することは逆効果である。

          当然、それらの比較自体は有効な手段なのだが、原理を説明せずにそれらの違いを話そうすると「それ、電子マネーみたいなものやん?どこが違うの?」で片付けられてしまうのだ。最悪の場合は「中央管理者がいない? それって信用できるどころか逆に不安やん?」と気まずい雰囲気の中そこで話が終わる。

          しかし、今日はあなたが遂にビットコインの原理を理解する日だ。従ってその比較は有効だ。まずは一般的なお金や銀行の世界を、それぞれの役割を担った「ロールプレイ」の世界で見てみよう。

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          通常、お金は国=政府(Dくん政府)が発行している。Cくん銀行は、Dくん政府の許可をもらって銀行業を営んでいる。

          AさんもBくんも、Cくん銀行に審査を受けて、それに合格した上で「銀行口座」を持っている。

          AさんやBくんが預けた現金は、実際に元帳上にはその金額が残高として載ってるが、実はCくん銀行がEさんなどに貸し付けて利息を受け取っている。Cくんはその利息やその他の手数料で生計を立てているのだ。

          ある日BくんがAさんに1,000円を振り込んだ(振り替え)。通帳の残高は振込手数料が取られて8,500円に減ったが、その実態は、単にCくんが元帳で「Bくんの残高が1,500円減った」ことと、「Aさんの残高が1,000円増えた」ことを書き込んだだけだ。その差分の500円は、元帳に書き込む手数料としてCくんのものになる。

          これが一般的な銀行だが、もしあなたがBくんである場合、ここで起こっていることの全ては日々当たり前に行われている行為であり、一連のお金の流れは「信用するに足りる」話に聞こえるだろう。誰かに1,000円振り込んだら、相手にお金が入って、自分のお金が減る。そして手数料が取られる。引き出せば現金がATMから出てくる。なんて日常的な話なのだろうか。

          その当たり前の話が通じるのは、財政が比較的安定した、日本を含む一部の近代国家における銀行の話。世の中には国民が銀行を信用しない国もある。以下では、そのような財政が破綻した国家とその銀行のような、預金リスクが最大である環境を想定して書いてみよう。

          あなたの銀行残高は本当に存在するのか?

          では、本当にあなた(Bくん)の残高8,500円は銀行に存在しているのか?もしそうでない場合は、誰かが保証してくれるのか?

          事実として、銀行に預けられた現金のほとんどはそこにはない。銀行は、なんと預かっている合計金額よりも大きい金額を外に貸し出すことができるのだから。

          実際、この銀行という仕組みはあなた(Bくん)が、お金を発行するDくん政府と、銀行を営むCくんを信用しているという前提において成り立っているのだ。

          「銀行が信用できなくてどうする?」

          そう思われる方も多いだろうが、日本でも1金融機関1預金者あたり、1,000万円までが保護される仕組み(ペイオフ)が導入されていることはご存知だろう。ペイオフ解禁で補償額が制限されてしまったものの、このような仕組みがあるだけでもまだ恵まれている。米国も同様のFRB制度が設けられているが、こんな制度さえない国家も山ほどある。

          ようするに、お金を借りているEさん達が一斉にCくん銀行からの借金を踏み倒したり、Cくんがそもそも銀行の経営に失敗した場合、あなた(Bくん)のお金はなくなってしまう可能性があるということだ。

          その場合、あなたの通帳に残高データはあっても、銀行にはもうそのお金さえもないのかも知れない。

          銀行の残高データは消えてなくならないのか?

          次に、違う切り口から極端な例を考えてみよう。

          ある日誰かが、Cくんの管理する銀行の元帳に火をつけた。Cくんは念のため、バックアップとして常に3冊同じ記録をつけて、別々の場所に保管していた。しかしそれらもなぜか同時に火を付けられた。

          その場合、あなた(Bくん)のお金(残高)はどうなる?

          そう。消えてなくなる。記録、すなわち残高のデータが消えてなくなってしまうからだ。

          現実世界にあてはめると、「もしあなたがお金を預ける銀行が管理する全サーバーが一斉に爆撃されたらどうなる?」と言ったところだろうか。

          現実社会ではまずそんなことが起こる確率は低いし、先進的な銀行では当然のことながらサーバーも複数箇所に分散して管理してている。

          ではこんな場合はどうだろう?

          本当に銀行は信用できるのか?

          Cくん銀行自体が私利私欲のために、あなた(Bくん)の知らないうちに、その残高である8,500円を元帳上でこっそり自分の名義に書き換えた。その場合、あなたの残高は当然消える。Cくんによる、いわゆる業務上横領である。

          さすがに、現代の金融機関システムをそんな風にアクセス権限を飛び越えて違法に操作することは難しいが、今日でも銀行員が預金者の金を横領するなどいう古典的な事件はたびたび起こっている。

          その場合、損失を銀行がカバーしてあなたの残高に戻すわけだが、人手を介する業務プロセスがゼロとならない限り、そう言った横領事件が世の中からなくなることがない。

          あなたも、今までに友達と人生ゲームをプレイしたことがあるならこんな経験があるに違いない。銀行役をしていたプレイヤーが、ずるをして自分の手元のキャッシュをこっそり増やしたり、トイレに行っているプレイヤーのキャッシュを悪戯でくすねる。それを見つけた他のプレイヤーが怒る。あれが現実にも起こりうる言うことだ。

          銀行は大丈夫だ。預金なんてなくならない。実は私も以前はそうだろうと考えていた。しかし、15年以上も前のことであるが、突然欧州の某国で、とある銀行に預けている残高をいきなり半分にされた。たった一通の通知を封書で送りつけられるだけで。銀行が破綻して、残高の半分を再建の原資に回すというのだ。当然、その国には日本のペイオフのような制度はなかった。

          人が運営して経営している以上、銀行というシステムには必ずこのようなことが起こりうると言うことだ。

          では、国なら信用できるのか?

          もし、Dくん政府が国の財政政策で失敗したらどうなるだろう?Dくんがお金を発行しまくったらどうなるだろう?預金の消失を免れ、銀行の残高データは変わらずとも、あなた(Bくん)のお金はただの紙切れになるかも知れない。例えば、缶コーヒーが1本1万円になるかもしれない。

          「そんなの、金の純度を下げてでもコインを作りまくった、古代ローマ帝国の話じゃあるまいし」と思われるかも知れない。しかしこの21世紀にも、現実として数多くの国が金融危機に陥っている。近年だけでも、ギリシャ、アルゼンチン、キプロス、その他多数。そんなとき、あなたがCくん銀行に詰め寄って残高を現金化しようとしてもシャッターを閉められ、もし一部を現金化できても日々その価値が下がり、紙くず同然になってしまう可能性だってある。

          銀行を信用するしない以前に、国もしくはそれが発行する通貨が破綻してしまっては元も子もない。

          ちなみに、皮肉なことにそんな財政破綻しているような国々で特にビットコインの利用が激増している。キプロスでは学費をビットコインで払えるし、アルゼンチンではコンビニでペソをビットコインに両替できる。

          さて、以上までの、既存の国家やお金、銀行で起こりうる問題をざっとまとめ直すと以下の通りとなる。

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          「中央集権」で、誰か人間が運営管理している限り、既存の法定通貨や銀行のシステムではこのような問題が発生する可能性があるというのが事実だ。

          さて、私が今日したいのは、日本円や日本の銀行でこんな問題が起こりうるかどうかの議論ではない。繰り返すが、これは金融リスク、預金リスクが最大の環境で実際に起こりうる最悪の問題を「ロールプレイ」した結果のまとめである。

          ここまでは、あくまでも既存金融システムに潜んだリスクを理解するための前置き。以上を踏まえた上で、ここからやっとビットコインの仕組みを見てみよう。

          ビットコインは単なる電子マネーではなく決済システムだ

          まずビットコインは、本当はいわゆる「通貨」ではなく、「電子マネー決済システム」だ。違うことを言う人もいるが、これはビットコインを発明したナカモトサトシの論文タイトルと序章にも書かれている事実だ(これは後ほど紹介)。

          ビットコインというのは、何か物理的なものが誰かから誰かに渡っているわけではなく、誰にいくつ発行され、誰から誰にいくら支払われたかのデータを記録する仕組みだ。ところが、その名称だけではなく、単位自体もビットコイン(よくBTCと略される)と呼ばれるから話がややこしくなる。

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          よくビットコインは「暗号通貨」と言われるが、それは実際に通貨のように使えるから便宜上そう呼んでいるに過ぎない。そして、お偉い学者さんの間でも、いまだにビットコインが通貨であるかどうかの議論が続いている。

          実際あなたが日本で使う電子マネーも、同じ決済システムの一種である。その場合はあなたがチャージすると、現金と等価交換でその金額が残高としてどこかに記録され、コンビニで使えばコンビニにその残高が移行したとして記録される。どこかにEdyやSuicaなんていうコインが置いてあるわけではない。

          繰り返しになるが、ビットコインも「Bitcoin」というコインが存在していて、誰かがそれを管理しているなんてわけではない。ビットコインはお金ではなく、決済システムだと言うことをまず覚えておこう。

          「ビットコインも現金で買うんじゃないの?」という問いへの答えは「イエス」だが、それはあくまでも勝手に第三者が現在のバリューで売買するサービスを提供しているだけだ。だからビットコインは常時価格が変動する。それに対して一般的な電子マネーは、サービス運営者がその買い取り自体を手数料ビジネスとしている。上のコンビニの例で言えば、客から支払われた電子マネーを、手数料を差し引いて買い戻す訳である。

          しかし、ビットコインはEdyやSuicaみたいな電子マネーとは「全く違う」。根本的な思想からして違うのだ。

          ビットコインはオープンだ

          実は、ビットコインはソフトウェアだ。そして、それは「オープンソース」という仕組みで、プログラムの中身(ソースコード)がそのまま一般公開されている。要するに、誰もが中身を見て、無料でインストールできる。

          「さっき、ビットコインは決済システムって言ったやん?」

          そう。ビットコインは中身が丸見えで、誰でもインストールできる決済システムのソフトウェアだ(インストールについての話は後ほど)。

          中身が丸見え、ということは、プログラムが読める(書ける)世界中のエンジニアが、その中身に不正が潜んでいるかどうかも自由に精査できると言うこと。

          では、そのプログラムは誰が作っているのか? というと、世界中の有志であるエンジニア達だ。しかも、世界でトップレベルの人材が集まっていると言っても過言ではない。

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          かつて銀行システムの黎明期に、システム開発者が全ての計算を「切り捨て」にして、端数を全部自分の口座に入れていた不正が発生したことがあるとかないとか。そんな不正がビットコインでは不可能だと言うことだ。

          銀行システムの場合、開発を請け負う業者が徹底的に不具合を精査して、運営に差し支えないようしらみつぶしにつぶす。ビットコインだと、世界中の有志であるスゴ腕エンジニア達がそれをつぶす。

          あなたが使っている電子マネーや銀行のシステムが、その中身を「公開」しているなんて聞いたことがあるだろうか?そんなことはセキュリティー上絶対にあり得ない。

          ビットコインは全てが公開されているから、世界中の誰にでも精査や監査ができて、「仕組み自体には不正がない」と言い切れる、「信用できる」決済システムなのである。これはOSやサーバー、セキュリティ関連のソフトウェアといったインターネットを支える基盤技術で、オープンソースのものが成功していることとも無関係ではない。不特定多数の人の目にさらされて、常時改訂を繰り返しているからこそ信用できるのだ。

          発行量までオープン

          一般的なお金では、その法定通貨という名が表すとおり、国が発行して流通をコントロールしているということだった。よって、国が財政に失敗したり、通貨を発行しすぎたりすると、お金の価値がどんどんと下がってしまう可能性もある。

          しかし、ビットコインでは先ほど説明したとおり、全てのプログラムが無償で一般公開されている。その中には、なんとビットコイン自体が発行される量までが最初から組み込まれており、そのルールまでもが全てオープンに公開されている。

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          ビットコインでは、公開された2009年から毎日ほぼ10分ごとに発行されているが、およそ4年ごとにその発行量が半減し、合計2,100万ビットコインを上限とすることが最初から決まっている。

          2015年3月時点で既にもうその半数以上が発行されているが、また2年後である2017年に発行量が半減する。

          次第にその発行量は少なくなり、ビットコイン自体の価値が陳腐化しないように計算されている。

          日本円や米ドルのように、中央管理する誰かが発行量や流通量を決めて価値をコントロールしているわけではなく、ビットコインは最初からこの先どのように発行されていくかが明記されているという、極めて「透明性が高く」、健全な仕組みなのだ。

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          では、誰がそのソフトウェアを何に入れて、何のための動かしてるのか?

          その疑問は先送りにして、アカウント(口座)の概念をまず見てみよう。

          ビットコインのアカウントは自分で勝手に開く

          先述の通り、銀行で口座を開設するには、あなたは印鑑を押し、身分証明書を提出して開設を申し込まなければならない。

          銀行はあなたが反社会的勢力でないかどうか、過去にその銀行で問題を起こしたことがないかどうかなどを調べた上で、あなたの口座を開くかどうかを決める。言い換えれば、「あんたなんかには口座を開いてやらない」と拒否されることがあるということ。全くの誤解で口座が開けない、なんてこともある。

          実は、ビットコインには管理者がいない。その説明も後回しだが、ビットコインには「口座の開設」という概念がないのだ。当然管理者がいないので審査なんてあり得ない。「僕、ビットコインの口座開きたいんだけど、方法を教えてください」。そんな質問に、「勝手に自分でいつでも開けるでしょ?」と、ちょっと詳しい気取りの人からそんな冷たい答えが帰ってくる理由はここにある。

          ビットコインではあなたの(口座番号にあたる)アドレスは、あなたがそれを勝手に自分のものと決めて使い始めることによってあなたのものになる。

          言わば「今日からこれが俺のアドレスや!」と勝手に宣言するのだ。

          ではどうやって?

          ビットコインのアドレスは一人100万個でも持てる暗号鍵

          世の中には「乱数」という言葉があるのをご存じだろうか?その名の通り、「ランダム」に発生させた数字である。ビットコインの暗証番号にあたる文字列は、その乱数を元にして作られる。

          実際の乱数はプログラムが発生させるのだが、めちゃくちゃ乱暴に端折って例えると、ビットコインでは70回ほど10面サイコロを振った数字を出して、それを文字列に変換したものがまずあなたの「暗証番号」にあたるものになる。正式名称は「秘密鍵(Private Key)」。色んな形式があるが、使いやすい形式では最終的に「5」から始まる51文字の英数字に変換されている。

          例えば、こんな感じ。「5Kb8kLf9zgWQnogidDA76MzPL6TsZZY36hWXMssSzNydYXYB9KF」
          (残念ながら私の秘密鍵ではありませんのであしからず)

          その秘密鍵を難しい暗号プログラムに通すと、それが「1」か「3」で始まる26文字から35文字の文字列になる。しかも、間違えられにくいように(??)見分けにくい小文字の「l(エル)」と大文字の「I」、数字の「0」と大文字の「O(オー)」は含まれない状態で。これは、飛行機の座席で「I」と「1」が見分けにくいから「I」席が存在しないのと同じ感じだ(笑)。こちらの文字列の正式名称が「公開鍵(Public Key)」。しかし通常は「ビットコイン・アドレス」(Bitcoin Address)と呼ばれる。これがあなたの「口座番号」にあたる。

          例えば、こんな感じ。「1P95EfkCvo6HcPN21eVc3aPvzxqEjjGtQy」
          (送金を是非お待ちしております(笑))

          この「暗証番号」にあたる「秘密鍵」からは、そのプログラムを通せば誰でも「口座番号」にあたるまったく同じ「公開鍵」が作れる。しかし一方通行なのでその逆はできない。「公開鍵」から「秘密鍵」は推測できない。

          ちょっと難しい説明になってしまったが、完全に理解する必要はない。ビットコインの根幹には、この「公開鍵暗号」という技術が使われていることだけ頭の片隅に置いておこう(後でもう一度簡単に説明する)。

          ここで言いたかったのは、ビットコインの利用においてはこの「秘密鍵」が絶対的な存在だということ。もしこれが他人に渡れば、自動的に「公開鍵=アドレス」を教えることになるのは当然のこと、秘密鍵を持つ人物はそのアドレスにある残高を全て自由に送金することができてしまう。

          冒頭でも触れたMt. Goxの破綻。それも、何万という客から預かっているビットコインを管理する秘密鍵が直接犯人の手に渡ったか、もしくはそれを操作する仕組みに違法にアクセスされたか、そのどちらかが起こったと言うことになる。
          もともと個人情報を紐付けた「所有権」が存在しないので、「秘密鍵」が他人に知られた時点で、コントロールを失う。これについては自己責任だ。

          そこが銀行口座とは違う。その残高や送金を誰も保証してくれない。

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          もう一つ注目すべきポイントは、実は技術的な話を端折ってさらっと簡単に「10面サイコロを70回振る」と表現した部分。これは要するに、70桁以上の数字が無作為に作られて、変換されてあなたの「秘密鍵」になるということ。

          アドレスとして使えるその数は、星の数ほどの組み合わせがあって、計算上あまりにもバリエーションが多すぎて他人のそれとダブることはない。そんな原理で、ビットコインのアドレスは作られる。

          例えば、76桁の数字だとこんな感じ。
          「5,738,109,574,369,060,248,638,013,835,744,990,135,867,462,664,001,844,289,011,300,385,771,209,384,756」

          世界人口が72.5億人だといわれているが、その数字でもこれだけにしかならない。
          「7,250,000,000」

          どう見ても他人と数字がダブる桁数には見えない。

          従って、このアドレスはプログラムを通したら誰でも簡単に作れてしまう。一人当たり、いくつでも作れてしまう。だから、もし必要ならばあなたは100万ビットコインアドレスだって持てる!

          では、そのアカウント間の送金はどうやって動くのだろう?

          ビットコインは元帳までオープン

          送金の仕組みを見る前に、金融システムに必須な元帳の仕組みを覗いてみよう。冒頭で見た銀行の概念を、根底から覆す仕組みがここに登場する。

          ビットコインでは、元帳の内容まで全てオープンなのだ。しかも、スタートした2009年から全ての支払い記録(トランザクション)が誰にでも入手できて閲覧することができてしまう。この部分だけでも、もう金融システムとしては非常識きわまりない。

          ここで、先ほど後回しにした「ビットコインのインストール」についての話が登場する。

          ソフトウェアとしてのビットコインは、そのルールに従って様々なバージョンが作られており、色んなハードウェアで動かせる。PCはもちろんのこと、専用機もあるし、やろうと思えばあなたが持っているスマートフォンで動かすことだって可能だ。

          実際にソフトウェアとしてのビットコインを自分のPCにインストールすると、2009年から始まったその何十ギガバイトという元帳データをダウンロードして同期することから始まり、ひどい場合にはそのデータ同期には数日以上もかかる(ただし元帳データを同期しないようにもできる)。

          「そんなことしたら、僕の支払いがみんなに丸見えで、プライバシーもくそもないやん!」

          そう考えるのはごく自然だが、先ほど説明したとおり、ビットコインには個人情報は一切関係ない。存在するのは、ランダムに作られた無数の「アドレス」だけ。その元帳には、「どのアドレスからどのアドレスにいくらビットコインが送金されたか」だけしか書かれていない。

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          よく、ビットコインは「違法なビジネスに使われやすい」とか「匿名で送金できる怪しいシステム」と言われる。実際にアドレス間のやりとりだけで成り立っているからそう言われるのは仕方ないのだが、アドレス間の送金は全て記録されていて、一般に公開されているのである。

          もし、あなたがAさんとBくんの「アドレス(公開鍵)」を知っていて、BくんがAさんに送金した場合、その元帳を検索すれば、その支払いの時間と金額について知ることができる。

          それが、冒頭に言った「ビットコインの透明性が高い」理由だ。

          これって、よく聞くビットコインのイメージである「匿名性」と相反するように聞こえないだろうか?

          ビットコインは、アドレスの所有者については「匿名性」が高く、アドレス同士のトランザクションについては「透明性」が高いのである。

          よく「ビットコインがマネーロンダリングを容易にする」などと言われるのだが、アドレスを個人情報と結びつけることが困難なだけで、送金された内容を見るには、時間さえ掛ければ全てその記録から追いかけられるのである。その点では、既存の金融機関を駆使したマネーロンダリングに比べれば、よほどトレースしやすいと言える。銀行間のマネーローンダリングであれば、わざわざ経由した銀行全てに開示命令を持って、それぞれ個別に情報を取らなければならないのだから。

          ビットコインで多額のマネーロンダリングを行っても、大金はどこかで現金にするしかない。アドレス間でぐるぐるたらい回しにしてから、デルのPCをビットコイン建てで大量に買い付けても(アメリカではデルもビットコインで払える)、売却と現金化が大変だしそこで足が付く。現行のマネーロンダリングでさえ、犯人の検挙には入り口と出口、中継地点となる口座での個人情報との紐付けが必須だ。知識と手順、手間の問題だけで、結局、ビットコインを使ったマネーロンダリングの検挙と、手間はそう変わらない。

          一部のお偉い方達は、理解が難しいビットコインを怪しく思い、必要以上に危機感を感じているというわけだ。

          ただしビットコインの場合も、複雑に送金を繰り返して追いかけにくくするようなサービスは存在している。ビットコインもあくまでもツールであり、実際の金融機関と同じく、そこに寄ってきて悪用する嗅覚の鋭い犯罪者がいるというだけの話。

          いずれにせよ、銀行の仕組みではその元帳の公開など絶対にあり得ない。むしろセキュリティ上あってはならない。ビットコインでは、それが公開される前提で作られている仕組みだということだ。ビットコインはこのように、「極めて透明性が高い仕組み」であることを覚えていて欲しい。

          中央管理者がいない?

          ビットコイン推進派があなたにアピールしてくるとき、「中央管理者いないんだぞ!」や「非中央化されてるんだぞ!」、果てには「Decentralizedやで!」など謎めいた言葉を投げかけてくるだろう。必死なその言葉が宗教的に聞こえてしまうこともあるかもしれない。

          実はビットコインの送金を理解するのに必須なのは「非中央化(Decentralization)」の理解。しかし、あなたの頭に浮かぶごく自然な疑問は「管理者がいなくて、金融サービスが動くわけないやん」ということ。

          ここでは一旦その「Decentraなんとか」のことは忘れよう。

          乱暴に言い換えれば、ビットコインは「ネットワーク参加者全員が管理」しているのだ。

          冒頭の銀行の説明では、Cくんが銀行を管理運営していた。バックアップの元帳を別の複数箇所に管理していようが、これは「中央管理(Centralized)されている」と言う。法律や規制はあれど、Cくんの気持ち一つで不正や横領どころかサービス閉鎖も自由なのだから。

          しかし、「ビットコインはオープンである」と説明したところで出てきたように、ビットコインは誰でも無料でダウンロード出来てしまう。すなわち、それを動かせば、誰でもビットコインの管理者(正しくは管理者ではないけれどその説明は後ほど)になることができるということ。

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          では誰が、何の目的でわざわざそんなソフトウェアを入れて動かすのか?

          ただのボランティアなのか?そしてそんな管理者もいない無秩序に聞こえる世界で、どうやって送金の仕組みが動くのか?それを解き明かすために、再びロールプレイの世界を見てみよう。しかも、前回よりは遥かにドラマティックな展開を見せるロールプレイを、さらにそのプレイヤー達に近い視点から。

          ビットコインは少数点第何位まである?

          今回は、BくんからAさんに1,000円ではなく、0.1BTC(ビットコインの略)を送金する場合で考えてみる。

          「ん? ちょっと待った!0.1BTC? 少数点あるやん?」

          そう。実はビットコインの最小単位は1ではない。日本円にも、かつては1/100円である「銭」という単位があった。

          ビットコインの最小は0.00000001(=1億分の1)BTC。1ビットコインは2015年3月25日現在約3万円だから、最小単位を円に換算すると0.0003円ほどだ。この最小単位を、ビットコインの発明者のナカモトサトシに敬意を表してビットコイン業界(笑)では慣習的に1 Satoshiと呼ぶ。

          しかし、実際にはビットコインで送金できる最小金額は仕様上5,460 Satoshiとなっており、この金額未満はDust(くず)と呼ばれる。日本円に換算すると約1.638円だ。この額以上であれば送金が可能なので、ビットコインは充分に魅力的な少額決済が可能なシステムとも言える。

          tb-bitcoin9

          クレジットカードは送金(決済)のコストが高いので、10円なんて死んでも決済したくない。(元々クレジットカード決済事業を営んでいた私から見て、これはホンネの表現)。特に日本では大赤字になる。銀行は振込手数料さえ支払えば10円でも振り込んでくれるが、さすがに利用者の割に合わない。

          さて、話がそれたが、BくんからAさんへの送金がどう処理されるかに視点を戻そう。ちなみに先ほどの円換算で言うと、約3,000円ほどの送金である。
          「ビットコイン・ネットワーク」の参加者が送金処理を請け負う

          ソフトウェアであるビットコインは誰でも無料で入手して、インストールすることができることは既に説明した。そのソフトウェアをインストールしていると、誰でもすぐに「ビットコイン・ネットワーク」に参加することができる。今日からあなたでもできる。

          その参加者は、「ビットコイン・ネットワーク」上で他人の送金決済の承認を担うノード(node=接続ポイント)の一つとなるのだ(このノードと言う言葉もよく使われるので覚えてしまおう)。

          では、そのネットワーク参加者(ノード)の間で何が起こっているのか。

          ここでは、Oくん、Pくん、Qくんがソフトウェアであるビットコインを動かしていて、ネットワークに参加しているとしよう。わかりやすいように、PCではなくスマホ上でソフトウェアとしてのビットコインを動かしていることにする。3人ともスマホはインターネットにつながっている。この3人は立派な「ビットコイン・ネットワーク」上のノードだ。

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          送金したい者は、インターネットにつながっている、いずれかのノードにその旨を伝えればよい。それだけで直ちに送金処理が始まる。
          全ての送金依頼は「公開鍵暗号」で「電子署名」される

          では、BくんがAさんに0.1BTCを送金したい場合はどうすればよいか?

          Bくんは、先述の自分の(暗証番号にあたる)「秘密鍵」を使って、自分のアドレスからAさんのアドレスに対して0.1BTC送金したい、という情報をそのネットワークに流す。

          ここでは、わかりやすくするために、Aさんのアドレスは「xxxxxxxx」、Bくんのアドレスは「yyyyyyyy」ということにしておこう

          ややこしい暗号技術の話は端折る約束だが、簡単に説明すると「秘密鍵」を使った電子署名は、その「秘密鍵」を知っている人間にしかできない。これで作った「(Bくんのアドレス)yyyyyyyyから(Aさんのアドレス)xxxxxxxxに送金したい」という情報は、yyyyyyyyの「秘密鍵」を握るBくんにしか作れないのである。

          しかし、他人からはBくんの「公開鍵」を使えば、これはBくんが作ったものだとちゃんと確認できる。しかも、この場合Bくんの「公開鍵」はBくんのビットコインアドレスそのものだから、それをそのまま使えば「これはちゃんとBくん本人が作った送金リクエストだ!」と本人確認できてしまう。

          アドレスの作り方を説明したところから出てきたこの「公開鍵暗号」という仕組みは、「電子署名」という名の本人確認ができてしまう非常に便利な仕組みなのだ。

          tb-bitcoin10b

          通常の銀行送金の場合であれば、インターネット上でつながった銀行のウェブサイトにそのパスワードを入力せねばならない。だから、PCに怪しいマルウェアが仕込まれていたりすれば、パスワードが第三者に漏れて残高を盗まれる可能性も高まる。実は日本だけでも、一般預金者がそんな被害を年間何十億円も被っている

          ところがビットコイン送金で必要なこの電子署名は、インターネットにつながっていない端末でも署名することができる。いったん署名した情報は他の誰にも改ざんできないから、安全に依頼ができるというわけだ。

          それこそ、インターネット接続を切ったスマホでまず電子署名して、それからその署名したファイルを他の端末に移して送金リクエストを出すことだってできる。こんなにも安全な送金依頼方法は、既存の金融システムではまずありえない。

          ビットコインはP2P電子マネー

          さてBくんは、早速その送金リクエストの情報をOくんのノードに投げた。

          「yyyyyyyy(Bくんのアドレス)からxxxxxxxx(Aさんのアドレス)に
          0.1BTCを送金 by yyyyyyyy(電子署名済)」

          そして、一つのノード(Oくん)に送り込んだ送金リクエストは、インターネットでつながった全部のノードに一気に広がる。

          ここで初めて、ビットコイン好きな人からよく聞かされる言葉である「P2P(Peer to Peer)」が理解しやすくなる。

          オンラインバンキングのように利用者が一斉に一カ所に用意された中央サーバーに接続する(「クライアント・サーバー方式」と呼ぶ)のではなく、それぞれのノードが蜘蛛の巣のようにインターネット上でつながって、個々のノード同士がが情報を交換するから、この仕組みを「P2P方式」と呼ぶ。

          tb-bitcoin10c

          図の右側では、BくんもGくんも両方同じCくん銀行のサーバーに接続している。しかし、図の左側のビットコインでは、手元で作った送金リクエストファイルを、好きなノードに投げるだけで良い。

          よく知られているソフトウェアでは、インターネット電話のSkypeがこのP2P接続で成り立っている。音声を、無数にいる利用者の端末を都合良くつないで経由するのだ。

          そこで見て欲しいのが、前の方で紹介を約束していた、ビットコインの発明者であるナカモトサトシの論文タイトルだ。

          「Satoshi Nakamoto(中本 哲史)(2008)
          Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System
          (ビットコイン:P2P電子マネーシステム)」

          タイトルに入れるほど、この「P2P」の仕組みがビットコインにとって大事だと言うこと。なのでこれは今のうちに頭に入れておこう。

          ではBくんの送金に話を戻そう。

          O君のスマホはそのBくんのリクエストを受け取った。すぐにO君が入れているソフトウェア版のビットコインは、そのリクエストが正しいものなのかを検証する。O君のスマホは過去全部の元帳データを持っている。だから、B君のアドレスが支払うに十分な残高を持っているかどうかもすぐに分かる。

          これは正当な支払いリクエストだ。そのことが分かった瞬間、O君のスマホは「ビットコイン・ネットワーク」に参加している全員にも、先ほど出てきた「P2P接続」を利用してリクエストを配信する。当然PくんもQくんもそれを受け取ることになる。

          これは、O君個人の意思ではなく、スマホに入っているソフトウェアとしてのビットコイン(覚えなくて良いが、通常デーモンと呼ばれる)に組み込まれている絶対ルールなのだ。ネットワーク参加者は、平等にそのリクエスト情報を受け取ることができる。

          tb-bitcoin34

          では、ここでみんなに広がったB君の支払いリクエストについて、その情報を「ビットコイン・ネットワーク」上で「正式に支払い済」として採用するにはどうすれば良いのか?

          それは、この新しいリクエストを新しいページに書き込み、そのページを元帳の最後のページにのり付けすればよいのだ。そうすれば、Bくんの送金は正規の元帳に記されたトランザクションデータの一つとなるはず。

          Oくんは、早速新しいページを用意して、そこに書き込んだ。

          「yyyyyyyy(Bくんのアドレス)からマイナス0.1BTC。xxxxxxxx(Aさんのアドレス)にプラス0.1BTC」

          しかし、誰でも単にこのページを正規の元帳の最後にのり付けすれば良いというものではない。そんなのが有りなら、それこそ不正し放題の世界だ。

          物事にはルールがある。ビットコインもしかり。のり付けする権利を得るのは、たった一人だ。

          そしてバトルの火蓋が切って落とされる

          そうだ。ここでついにビットコイン・ネットワークの真相を明かそうではないか。

          この新しいページを既存の元帳に正式な1ページとして追加するには、実は参加者(ノード)全員が参加するバトルに勝たねばならないのだ!

          よくみると、手元の元帳の最後のページには謎の暗号文字が書かれている。

          「お題:00LhRlQs8A」
          (実際にはもっと文字数が多いのだが、ここではわかりやすく短くしてある。)

          Oくんはその文字列をスマホカメラで読み込んだ。スマホ画面には、その文字列が現れ、その下に「ノンス(nonce=使い捨てのランダムな値)」という空欄と送信ボタン、そしてさらにその下に「計算結果」という空欄の合計3行が表示された。

          ちなみに「ノンス」は、ひたすらランダムな文字列を生成して放り込む。正解の計算結果を出すためだけに使われる、使い捨ての項目を意味する。

          画面が表示されると、突然Oくんは画面の連打を始めた!ひたすら連打する度に「ノンス」の欄に意味不明な文字列が表示され、計算結果の欄にも意味不明な文字列が表示された。そして画面に大きな赤い「×」が「はずれ」の文字と共に表示されている。

          その赤い「×」がでた瞬間に同じボタンを叩く、Oくんは気が狂ったように、ひたすらそれだけを繰り返す。

          tb-bitcoin11

          Pくん、Qくんも同様だ。Oくんに負けずと、無心にスマホ画面上のボタンを連打している。その度に、3人の画面には赤い「×はずれ」が表示されるばかりだ。

          そして10分後……。

          Pくんの画面に、今までの赤い「×はずれ」とは違う青い「○正解」という文字が表示された。

          「正解!勝者zzzzzzzz(Pくんのアドレス)!
          おめでとうございます!
          頭の『00』がそろいました!
          賞金、25ビットコイン!
          (30,000円換算でなんと750,000円)」

          tb-bitcoin12

          勝者のPくんは休む暇もなく、自分が先ほど書いた新しいページの最後に、スマホ画面の「計算結果」という欄に表示された文字列を書き込んだ。

          「お題:00ue7EGxpV」

          さらに、自分のアドレス残高に賞金の25ビットコインを追加するよう自らページに書き込んだ。

          「zzzzzzzz(Pくんのアドレス)にプラス25ビットコイン」

          そして、糊でそのページを元帳の最後に貼り付け、新しいページの撮影をして、ビットコイン・ネットワークに送信した。

          それと同時に、Oくん、Qくんの画面にもメッセージが表示された。

          「Game Over!」
          「残念、勝者はzzzzzzzz(Pくんのアドレス)でした」
          「zzzzzzzzが導き出した正解を検証してから、新規ページに書き写してそれを元帳に足しなさい」

          バトルの敗者となったOくんとQくんは、Pくんから送られてきた正式な新しいページをまず検証する。Pくんが不正をしていないか確認するためだ。

          バトルに使うアプリはどれも、同じ「ノンス」を入力すると一方通行で同じ計算結果を算出するから、検証は簡単だ。Pくんがもし不正をしていれば、違う答えが出るからだ。

          これは、参加者(ノード)全員が、その他の全員が不正しないよう勝者を360度監視するバトルなのだ。

          Oくん、Qくんは、Pくんの答え=「ノンス」が正しいことを確認したので、自分たちが書いたページの下書きを破り捨てた。新しい用紙に勝者Pくんから送られてきたページの内容をそのまま書き写し、元帳の最後に貼り付けた。これでPくんの新規ページが正式に承認されたことになる。

          当然その元帳の最新ページには「BくんからAさんへの送金」、「Pくんが勝ち取った賞金」、「新しいお題」の全てが記録されている。

          これで、一連の送金手順がひと通り完結することになる。Bくんからは、Aさんに正式に0.1ビットコインが支払われたことになった。

          そして、Pくんは何故か賞金25ビットコインも受け取った。

          さて、いきなり賞金付きのパズルバトルなんて、ここでは一体何が起こってるというのだろうか?

          新規発行ビットコインを賭けた欲望バトル、それが採掘

          じつは、Oくん、Pくん、Qくんが参加していたのは、賞金を巡る果てしないパズルバトルだった。

          そのルールというのは以下の通りだ。

          1. まず新しく「ビットコイン・ネットワーク」に投げられてきた送金リクエストの中から、好きな物を自分で選んで新しいページに書き込む。
            この場合、「(Bくんの)アドレスyyyyyyyyからマイナス0.1BTC。(Aさんの)アドレスxxxxxxxxにプラス0.1BTC」
          2. リクエストを新規ページに書き終わったら、手元にある元帳の最後のページにある「お題」という文字をスマホで読み込む。
            この場合、「00LhRlQs8A」がそれにあたる。
          3. すると、スマホでパズルバトルが始まる。元のお題の文字列に対して、「ノンス(nonce=使い捨てのランダムな値)」というランダムな文字列がボタン叩く度に表示され、その2つの文字列が暗号プログラムに通されて「計算結果」の欄が算出される。
          4. ボタンをひたすら叩き、約10分後に「計算結果」の欄に最初の2文字が「00」になる結果を一番最初に表示した者が勝者となる!
          5. 勝者には、賞金として25BTCものビットコインが新規に発行される!
          6. 勝者は、自分が書いた新しいページに算出された計算結果=新しいお題を書き込み、自分の残高にも25BTCを書き足してから元帳の最後に貼り付ける。この場合、「(Pくんの)アドレスzzzzzzzzにプラス25BTC」
          7. 勝者は、そのページを撮影し、ネットワークに流す。
          8. 他のプレイヤーは、勝者の「ノンス」を使って、勝者の計算が本当に正しいかを検証する。ぶつけた「ノンス」の数(計算力)をもって投票権とし、51%以上のプレイヤーが正しいとすればよし。
          9. 検証の結果、敗者は失敗したページを破って捨て、プレイヤー全員は勝者が作った新しいページを、正式に採用(承認)する。
            これで1ページ分の送金が完了し、休みなく次のバトルへと進む!

          すなわち、元帳の正規ページをのり付けするために開催される、この無謀な総当たり連打バトルに勝った者に、新規のビットコインが発行される仕組みになっていたのだ。

          注目すべきはルールその8。

          「他のプレイヤーは、勝者の『ノンス』を使って、勝者の計算が本当に正しいかを検証する」

          実はここにも、ビットコインのアドレス作成の箇所で学んだ、一方通行の暗号方式が使われている。Pくんがかなりの苦労を伴って算出した正解である「ノンス」。しかし一旦誰かがその正解を導き出せば、あとは誰がその「ノンス」を使っても、同じ計算結果が出る。

          と言うことは、OくんとQくんがPくんの答えを検証するためには、その正解の「ノンス」を同じ暗号プログラムに放り込むだけ。それで一発で完了する。

          これが冒頭でチラ見せした、ビットコインで重要な「Proof of Work(PoW)」という概念なのだが、詳しくはまた後ほど。

          ここでもう一度、冒頭で説明した一般的な通貨を思い出して欲しい。それら法定通貨は、国=政府が勝手に発行量や流通量を決めてコントロールする。我々国民は、いくらどのように発行されているのかさえ気にしない。

          しかしビットコインでは、決められた発行量がこのバトル勝者に発行される。ビットコインの発行量を説明した時に、「約4年ごとに発行量が半減される」と説明した。実はこれはわかりやすいようにい言い換えただけだった。これを正しく言い換えると、「10分ごとに勝者が発表されるバトルにおいて、21万バトル(ページ)ごとに支払われる賞金が半減される」となる。

          すなわち、2015年現在25BTC支払われているものが、2017年には12.5BTCに半減されると言うことだ。そして2021年にはそれが6.25BTCになる。

          この新規発行されるビットコインは、支払いリクエストの承認作業をするためにバトルに参加するプレイヤー(マイナー=採掘者)達への賞金としてのみ用意されている。

          ビットコインを手に入れるには3つの方法しかない。買うか、もらうか、それとも自分で採掘するかだ。このバトルがその3つめにあたる。

          あなたもよく、ビットコインに関してこの「発掘」や「採掘」、「mining(=採掘)」という言葉を聞いてきただろう。これは、「コイン=金」という発想から、連想される「採掘」という言葉を採用しただけの話で、本当は土を掘る行為でも何でもない。もうおわかりのように、それは新規発行される賞金のビットコインを賭けた、欲望によって成り立つ暗号パズルバトルだったのだ。それが「ビットコイン採掘行為」の実態である!

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          ただし、ここまでの内容はわかりやすくするためにかなりデフォルメしてある。

          実際には人が無心に画面を叩くわけでもなく、決まった暗号方式でひたすらコンピュータや専用機がノンスを総当たりでぶつけながら計算し続けているし、元帳のページも決まった方式でデータを整えて用意しなければならない。そして元帳1ページあたりにはかなりの量のトランザクション(送金リクエスト)が記載できる。

          これら全ての行程はビットコインの仕様として詳細が決められており、人を介さず全自動で、かつ、とてつもない速さで処理されている。

          さて、このバトルでは、ソフトウェアであるビットコインに組み込まれているルールが絶対だ。しかし、ここでもそれを逆手に取る者がいる。

          実は、この採掘バトルでは、上記のルールさえ守れば「総当たり連打するための武器は問わない」のだ。
          採算を賭け武器も場所も問わないバトル、それが採掘

          Oくん、Pくん、Qくんは日本に住んでおり、かろうじて賞金総額(新規発行された獲得ビットコイン)が食費(消費電力の電気代)を上回って生活している。「腹が減っては戦はできぬ」のだ。

          そこに、Sさん、Tさん、Uさんが参加してきた。しかも、Sさん、Tさん、Uさんは資金も潤沢で高級な「画面連打専用強化ギブス」を購入してバトルに備えてきた。

          この「ギブス」は、ひたすらボタンを連打するマシーン。手でボタンを叩く何百倍もの速さで画面上のボタンをたたくことが可能だ。

          ただ実は、この「ギブス」を使うと、使わないOくん達に比べて何倍も速く腹が減る(電力を消費する)。そこが唯一の難点だ。しかし、食費(電気代)が遥かに安い中国在住のSさん達には問題ない。電気代が馬鹿高い日本に住むOくん達よりも、高いコスト効率で賞金稼ぎに専念できるため、高いギブスのコストも十分に回収できるのだ。

          この例えが、まさに近年のビットコイン採掘バトルを象徴している。電気代や土地代の安い中国では、部屋どころか工場を丸ごと専用採掘機(ASICと呼ぶ)専用のデータセンターに改造し、巨大な水冷装置でそのコンピュータを冷やしながら日々大量のビットコインを採掘している。

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          ビットコイン採掘競争がグローバル規模で激しくなればなるほど、我々電気代の高い近代国家(当然日本は一番不利な方)に住む採掘者にとっては、参加するには採算の合わないバトルへと変貌している。

          ここで、鋭い人には一つの疑念が浮かぶ。

          採掘バトルの厳しさも自動で調節するビットコイン

          「先ほど、ルールでは1バトルにおいて、約10分後に勝者が生まれると言っていた。これだけルール無用のバトラーが数多く参入してきたら、1バトルあたりの合計連打数がどんどん増えて、1バトルに要する時間も10分よりどんどん短くなっていくのでは?」

          全くその通り、しかし、ソフトウェアであるビットコインはそれも自動的に制御している。

          先ほどのルールに出てきたお題である「00LhRlQs8A」。計算結果はこのお題と同じく最初の2桁がゼロであれば勝利、となっていた。しかし、バトル参加者が増加して、合計の連打ペースがどんどん上がってくると、ソフトウェアであるビットコインはこのルールを自動的に変更する。

          すなわち、1バトルあたりの時間がちょうど10分になるように、そろわなければならない頭のゼロの桁数を増減させるのである。バトル参加者の連打が増えれば、ゼロの桁数を増やす。連打が減れば桁数も減らす。これが、実に2,016バトル(ページ)ごとに自動的に調整される。

          実際のビットコインでは、この例で出したものより遥かに文字数が多く、揃えなければならないゼロの桁数も現在は16桁前後である。これを総当たり戦で正しいノンスを割り出すには、とんでもない計算能力が必要になる。その計算力についての詳細は、また後ほど説明する。

          「Bitcoinの決済には10分かかる」と耳にされたこともあるかもしれないが、その10分という数字はここに由来するというわけだ。

          厳密に言うとすれば、ビットコインの採掘では、1バトルの時間制限が10分に設定されているのではなく、10分でバトルが終了して勝者が生まれるようにルール自体が自動的に調整されていたのだ。これにより、元帳のページは平均して10分に1ページずつ増えていくことになる。

          ビットコインの決済手数料とは?

          「ビットコインの送金手数料は銀行のそれに比べて遥かに安い」とよく言われる。しかし、「無料で送金できる」という者もいる。

          一体何が正しいのだろう?

          正解は、「両方とも正しい」である。

          例えば、BくんとAさんに加えてもう一組、GくんとFさんが同時に0.1BTCを送金したい、とリクエストしたとしよう。

          Bくんはケチで、手数料を払いたくない。そこで、送金時に「手数料0」としてリクエストに署名して「ビットコイン・ネットワーク」に送信した。

          ところが、GくんはFさんに同じ0.1BTCを送金する際、0.001BTC(約30円)を手数料として含めて署名し、「ビットコイン・ネットワーク」に送信した。

          そう、ビットコインでは、送金リクエスト時に好きな分だけ送金手数料を上乗せしてリクエストできる。例えば、1BTCを送金するために100BTCの手数料を支払うことも可能だ。もったいないけど。

          カード決済のように受け側(商店側)が手数料を負担するのではなく、日本の銀行振り込みのように支払側が手数料を設定する。

          ここで、採掘バトルのルールをもう一度見てみよう。ルールその1にこうある。

          「新しく『ビットコイン・ネットワーク』に投げられてきた送金リクエストの中から、《好きな物を自分で選んで》新しいページに書き込む。」

          実は、ビットコイン・ネットワークに投げられた送金リクエストは、各ノードにある「プール」と呼ばれる場所に一旦保留される。新規ページに自分が承認したいリクエストを書き込む際に、採掘者は自分が「好きなものをプールから自由に選べる」というわけだ。

          ではもし、BくんGくん両方の送金リクエストが届いた時点で、採掘バトラーPくんのページには、もう既に最後の1リクエスト分しか書き込むスペースが残っていない場合はどうするだろうか?

          答えは簡単である。Pくんは、手数料ゼロのBくんの送金リクエストを蹴って、手数料0.001BTCのG君の送金リクエストを書き込んでからバトルに参加する。

          その結果Bくんのリクエストは、今回のバトルでは無視されてプールに放置されてしまった。次のバトルでページにとり上げられるのを待つしかない。

          こんなことが起こる理由は明白だ。自分が採掘バトルに勝って元帳の正規新ページに採用された場合、そこに載せた送金リクエストの手数料全てが合算されて自分のものとなるという取り決めがあるからだ。

          Pくんにとって、タダよりも0.001BTCの手数料の方が貴重だ。ちりも積もれば山となる。それに、時々送金の設定をミスって手数料1BTCなんてのも送られてくる。この話、実際に起こりがちだから手数料収入も馬鹿にならない。

          勝者には、賞金である実に25BTCという大金が与えられるが、それ意外にも、この手数料収入が上乗せされて発生する仕組みになっているというわけだ。

          tb-bitcoin15

          ちょっとビットコインを勉強した人から、こんなことを聞かれることが多い。とくにビットコインのあらを探す反対派の人達から。

          「ビットコインの発行量、すなわち採掘者の報酬が4年ごとに半減するなら、採掘のインセンティブと魅力が下がっていって、どうせ将来はビットコインの仕組み自体が機能しなくなって破綻するんだろ?」

          確かに先述の通り、2017年には報酬が25BTCから12.5BTCへと半減し、2021年には6.25BTC、2025年には3.125BTCとなる。しかし「ビットコイン・ネットワーク」は、年を増すごとに「採掘インセンティブ重視」から「送金手数料(トランザクション・フィー)インセンティブ重視」の、より純粋な決済ネットワークへとシフトしていくだけである。

          ナカモトサトシ先生は、そんな誰もが思いつくような懸念について、最初から思いつかないほどの馬鹿ではない。

          ちなみに、ビットコインの「送金手数料が安い」というのも事実だ。上記の0.001(約30円)でなくとも、0.0001BTC(約3円)も支払えば、充分に短い時間で送金が承認される。

          現在の一般的な海外送金を考えてみて欲しい。数万円を送金するだけでも何千円もの手数料を支払い、長い場合には送金先に着金するまで2日3日かかる。大企業がどれだけ交渉しても、その料金は800円程までにしか下がらない。

          さらには送金金額が非常に多い場合、銀行は1日2日分の金利を稼ぐためにわざと外部への送金を遅らせるということまで平気でやってのける(日本の銀行は知らないが、私は欧米の銀行で過去よくやられた)。最近では一般消費者向けの海外送金手数料も下がってきたが、ビットコインとは桁がまだ3つくらい違う。

          そんなしがらみや無駄なコストが一切なしに、10分もあれば少額でも世界のどこにでも送金できてしまうのがビットコインである。

          いや、実際にはビットコインが海外に送金されるわけではないので、厳密に言えば世界中どこにいる相手にでも、10分もあれば残高の権利を移行できる、としておこう。

          手数料ゼロで送金できるのも真実

          「では、手数料ゼロの送金リクエストは採掘者に損なので、永遠に無視し続けられるのでは?」

          ビットコインでは、そんなことも想定してルールが作られていた。さすがナカモトサトシ師匠。

          実は、先ほどのバトルのルールその2では、とある詳細を割愛していた。それがこれだ。

          「なお、新規ページ上には決まった分だけの特別スペースを確保しておき、その分を『手数料が極めて小さくても承認されずに一定時間以上が経過しているなど、陳腐化しそうな送金リクエスト』で必ず埋めること」

          儲かるトランザクションを優先することは自由だが、儲からないが時間が経過しているトランザクションも一定量は優先して載せねばならないという特別ルール。

          これにより、時間がかかっても原理的には漏れなく送金リクエストは処理される。

          tb-bitcoin16

          手数料をゼロとしてリクエストしたビットコインの送金が、当日には全く完了しないのにもかかわらず、数日後の忘れた頃に承認される現象はこれに起因している。

          従って、「ビットコインは手数料ゼロで送金できる」というのも正しいと言うわけだ。

          純粋な、採掘者の欲望の優先順位で成り立っている「ビットコイン・ネットワーク」。ここは「早く送金の処理をされたければ、手数料は高く払え」という現金な資本主義の世界なのである。

          不正や破綻が困難なビットコイン

          もう一度、「ロールプレイ」における銀行とお金の仕組みを思い出そう。あの金融リスクや預金リスクが高いことを想定した世界では、不正や破綻を起こすのは簡単だった。

          そもそもお金の流通量をコントロールするDくん政府が財政でミスを犯すか、Cくん銀行が同様に経営でミスを犯す、もしくは故意に客の残高を操作するだけで、あなた(Bくん)の持っているお金の価値が紙くず同然になったり、銀行残高がいきなり半減したりする可能性があるという話だった(そう言えば実際に現実社会で半減された経験者は私だった)。

          では、ビットコインではどうなのか?

          採掘バトルのルールその8を見るとこうある。

          「他のプレイヤーは、勝者の『ノンス』を使って、勝者の計算が本当に正しいかを検証する。ぶつけた『ノンス』の数(計算力)をもって投票権とし、51%以上のプレイヤーが正しいとすればよし」

          すなわち、誰かが全く嘘の「ノンス」でバトルに勝ったふりをしても、ビットコインの360度監視多数決ネットワークでは他の採掘者には一切誤魔化しは認められない。

          ではどうすれば不正ができるのか?原理は簡単で、51%以上の投票権を掌握した上で嘘のページを正式に元帳に採用すれば良いのだ。

          これを、ビットコインの世界では「51%アタック」と呼ぶ。

          ちなみに、この「ノンス」は暗号の関数を通って算出された文字列であるため、多くの場合は「ハッシュ(Hash)」と呼ばれる。したがって、元帳最後のページに載ってる「お題」もハッシュと呼ばれる。なのでここからは「ハッシュ」という言葉を覚えて使おう。

          実際には今この瞬間も、恐ろしい数の採掘者達によって、恐ろしい数のハッシュが総当たり採掘バトルにぶつけられている。

          このハッシュがぶつけられている(バトルの喩え話で言えば連打されている)単位を、1秒間あたりのハッシュ数を使って、「GH/s(Giga Hash per Second=1秒辺りのハッシュ数/1,000)」で表す。まるでドラクエの呪文のような言葉だ。「ギガハッシュ!」

          2013年3月半ば現在で言うと、この数字はおよそ35万GH/sである。それをちゃんとした数字で表すとこうなる:

          350,000,000,000GH/s = 1秒間あたり3,500億ハッシュ

          この数値を、ビットコインの世界では「ハッシュ・レート」と呼ぶ。

          新規発行されるビットコインを巡って、これだけのハッシュが総当りで毎秒試されているのだ。

          もしあなたがビットコインで不正をしたい場合は、ルールその8に従って、51%以上となる秒間1,785億以上ものハッシュ・レートをぶつける環境を用意せねばならない。

          しかもそれは、現在動いている採掘ノードを乗っ取った場合の話。新規で参入して不正を働くには、既存の秒間3,500億ハッシュを49%以下に抑えるために、実に秒間3,643億ハッシュもの計算能力が必要となる。

          tb-bitcoin17

          そうすれば、嘘の送金を承認することが可能になり、自分で勝手に大量の採掘報酬を受け取ることもできる。

          しかし、そんなことは現実問題として到底不可能だ。

          ビットコイン・ネットワークは、すでにそれぐらい巨大なサイズにまで成長している。現実的に、ビットコインの元帳を意図的に書き換えることはもう不可能であることをおわかり頂けたはずだ。

          さて、これを聞いて、データやサービスの信頼性が高いのはこの時点でどちらと思われるだろうか?あなたが知ってるお金や銀行?それともビットコイン?

          完全破壊が不可能なビットコイン

          もう一度しつこく、「ロールプレイ」の世界の銀行とお金の仕組みを振り返ろう。

          Cくん銀行で、あなたの銀行残高データを破壊するのには、その銀行が管理している元帳(実際にはデータを記録してるサーバー)を全て破壊すれば良い。

          いくらバックアップとして冗長化され、複数箇所に分散してデータが保存されているとは言え、これは中央管理者によって中央管理されている「Centralizedな環境」と表現される。

          それに対してビットコインはどうだろう?

          ビットコインでは、採掘バトルに参加しているコンピュータに加え、ソフトウェアであるビットコインを稼働させている全てのコンピュータ内の全てに元帳データが保存されている(実際には、元帳データを持たないものもあるが、ここではいったん無視)。

          すなわち、ビットコインであなたの残高データを破壊するには、それらネットワークに参加する全てのコンピュータをほぼ同時に破壊するしかない。でなければまた新たに生まれたノードに元帳がコピーされる。

          「ビットコイン・ネットワーク」に参加しているコンピュータは、それこそ世界中に無数に散在している。中国の田舎にある巨大な採掘工場から、日本のとある会社員宅の押し入れの中まで。それを全て、しかもほぼ同時に破壊するなんてことはもう到底不可能な話だ。

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          前項のとおり「データを改ざんできない」どころか、「データを破壊したくともできない」。それが、ビットコインの実態だ。

          ここでもう一度同じ質問を投げかけよう。データの信頼性が高いのはどちらだろう?あなたが知ってる銀行?それともビットコイン?

          ビットコインだけに起こるデータの不整合と解決法

          では、ビットコイン・ネットワークに参加するコンピュータの全ては、ずれもなく常に完璧に同じ元帳データを保有しているのか?

          実は、それがそうではないことが時々発生する。

          とある勝者が勝利を宣言したと同時に、他の採掘者もほぼ同時に勝利を宣言したらどうなるか。そのデータはほぼ同時に無数のコンピュータに伝搬を始める。

          そして、それぞれが一部のノードに承認されてしまうことがある。ノードたちが正解を検証する前に二人共が勝者としてデータが出回っている状態だ。

          その場合はどうなるのか?ひどい場合は、複数ページにわたって、「ビットコイン・ネットワーク」が分裂して、それぞれを正しいものとして扱ってしまうことがある。

          これを、元帳のFork(分岐)と呼ぶ。

          分岐といえども、元帳に複数枚ずつページがぶら下がる訳ではない。ネットワーク内で、2種類の中身が異なった元帳が正しいとされて、同時期に二重に存在してしまう感じだ。

          実際、1年に数度は、実に40分間ほど(4ページ)にもわたってこのForkが発生することがある。

          ではそうなってしまったあと、どちらの元帳が正しいと判断すればよいのだろうか?

          実は、そのルールもビットコイン自体に組み込まれている。さすがナカモトサトシはんやで。それは……

          「元帳は長い(分厚い)ほうが常に正しい」である。

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          きわめてシンプルで潔いルールだ!すなわち、ページ数が長く伸びている方が正しいとされ、短いほうが破棄されるのである。

          よく、ビットコイン関連のサービスで、「あなたの入金を確定するには最低6認証必要です」と言ったような表現を見かける。これは、6認証すなわち6ページも元帳が進めば、もうFork(分岐)してその支払いが取消になることはなく、それ以降は改ざんの恐れもなく、支払いが100%確定するだろうということである。

          ビットコインの世界では、これが最も確実な回収リスクの回避方法である。

          Decentralized(非中央化)された世界

          もうこれであなたにも、ビットコインには銀行や国と言ったような、中央管理のための管理者自体が存在しないどころか、全くその必要さえないこと、そしてそれらが存在せずともトランザクションの信用性とデータの冗長性が客観的に保てることも理解して頂いたはずだ。

          破ることができない絶対ルールは、最初からソフトウェアとしてのビットコインに組み込まれており、全ての送金承認プロセスは、ネットワーク上に無数に存在するノードが賞金のためにその役割を担う。

          この「Decentralized」なビットコイン・ネットワークは、詳しい仕様を見れば見るほど、なぜか「生物の仕様」や「宇宙の仕様」を見ているかのように思えてくる。

          各ノードが知性を持ってルールに則った自律活動をし、それら無数のノードが互いにP2P接続し、「新規発行されるビットコインを得る」という共通の欲望をエネルギー源として活動している。

          ノードが得たインセンティブが活動コスト(電気代)を上回ればその活動は拡大し、下回れば活動を止める。

          世界のどこかでノードが消滅していく傍ら、どこか別の場所でさらにノードが生まれる。

          採掘者である個々のノードは、経済的な(採掘能力的な)格差は別として、数学的に平等にその労働に対して報酬獲得のチャンスを得る。

          この「ビットコイン・ネットワーク」はとても有機的というか、生物的な集合体(コレクティブ)であるかのようにも感じられる。

          この自由で誰にも縛られない「Decentralized(非中央化)」された世界が、世界中のリバタリアン達の支持を得て、ギーク以外のもう一つの文化圏としてビットコインが普及するきっかけとなった。

          その証拠に、ビットコインはシリコンバレーなどの活動値が盛んな地域だけではなく、片田舎で開催される小規模なリバタリアンのお祭りなどでも使える。まさに、ビットコインは21世紀仕様のデジタル・ヒッピー・マネーだ。

          そしてこの「Decentralized」という言葉は、今やビットコインを語るに欠かせない重要なキーワードの一つとなっている。

          ブロックチェーンとはなんぞや?

          「ちょっと待った」

          ビットコインを勉強したことのある方であれば、冒頭でちょこっと触れただけのあのフレーズが気になっているに違いない。

          それが、ビットコインにまつわるキーワードの中で最も重要な「ブロックチェーン」である。

          「Decentralized」が理念であれば、「ブロックチェーン」は設計や規律と言ったところだろうか。

          しかし、ここまで読んだあなたには、一発で「ブロックチェーン」の意味が理解できる。次の2文を読めば、もう「ブロックチェーン」の全貌を知ることになる。

          ここまでに散々登場した「元帳の1ページ」単位が、ビットコインでは「ブロック」と呼ばれる。そして、そのブロックがつながった状態の「元帳」を、「ブロックチェーン」と呼ぶ。

          それだけである。

          tb-bitcoin20

          ここまでの文章において、「ページ」を「ブロック」に、「元帳」を「ブロックチェーン」に置き換えても、全て話が通る(銀行の部分を除く)。

          図解ではあたかも直方体の「ブロック」として表現したが、本来は単なる容量と書式が決まったデータの塊である。その名前が「ブロック」であるから、わかりやすくこのようなブロックのつながりや、単なる正方形のつながりとして表現される事が多い。

          よく聞く「ブロックチェーン」が、こんなにも理解が簡単だったのかと驚かれることだろう。当然、技術的な仕様は難解であるが、コンセプトが「元帳」であることが分かっていれば理解しやすいはずだ。名前というものは、知らないフレーズが使われているだけで、敬遠しがちになり、全く意味がわからないものになるのだ。

          なお、この「ブロックチェーン」は、単にこの元帳の仕組みを指すだけではなく、先ほどの暗号ハッシュを用いた採掘バトルの仕組みや、トランザクション承認の仕組み、「Decentralized」されて、P2Pネットワークとして稼働している仕組みも含めてそう呼ぶことが多い。

          ブロックチェーンの「Proof of Work」

          そして、そこでの採掘バトルに採用されている評価概念が、冒頭に出てきた「Proof of Work(PoW)」と呼ばれるものだ。「回り道ができずコストがかかる単純行為」をしたという事実を使って、仕事をしたということを証明する仕組みを指す。

          変な例かも知れないが、例えば広大な野原で四つ葉のクローバーを見つけた人に対して、10分に一つ完成するおにぎりを渡すとしよう。

          おにぎりを得るには、ひたすら野原を這いずり回るという行為でクローバーを見つけるしかない。しかしおにぎりを渡す側は、その仕事を評価するには参加者が取ってきた四つ葉のクローバーを見て確認するだけで良い。参加者がより数多くのおにぎりを得るには、仲間を連れてきて人数を増やすしかない。

          すでに学んだように、参加人数が増えても10分に一回おにぎりを渡すには、ゲームのルール(難易度)を調整すれば良い。「よし、今からおにぎりは四つ葉ではなく五つ葉のクローバーに与えられる」と。

          「ブロックチェーン」では、暗号技術を使ってこの「Proof of Work」を実装している。ランダムな「ノンス」を一つ前のブロックにあるハッシュと併せて、一方通行の暗号アルゴリズムに放り込めば出てくる計算結果の頭のゼロがそろっていれば当たり。評価するには当たったノンスをもう一度そのアルゴリズムに通すだけ。

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          ビットコインでは、その正解となったハッシュが、次のブロックで採掘する際の問いのハッシュとして使われる。これが永久に続き、ブロックが鎖(チェーン)のようにつながって伸びていく。

          この仕組みでは、ハッシュが一定の計算コストを持って仕事の証明になることから、「Hashcash」と呼ばれていて、メールのスパムを防止する仕組みなどにも使われている。スパマーは、メールを送るたびに一定の計算で仕事したことを証明せねばならないから、何億通もメールを送るのに計算能力をかなり消費してコストがかかってしまう。しかしメールを受けた側は一発で検証できる、という仕組み。

          それを、金融システムにおけるトランザクション承認プロセスに応用したナカモトサトシさんかっこいい。

          将来有望なブロックチェーン

          これらを含めた全ての仕組みがあまりにも画期的であり、信頼性が高いため、様々な分野で「ブロックチェーン」の仕組が採用され始めている。

          実際、IBMが「ブロックチェーン技術」をIoT(物のインターネット)や主要通貨の決済システムに採用を進めており、あのIntelまでもがついに暗号通貨関連の研究者を募集している。

          本当にこのビットコインの「ブロックチェーン技術」が、一般的に思われているように「怪しい」、「信用出来ない」、「データが改ざんされてしまう」ような技術であれば、先進的なテクノロジー企業がそれを参考に、採用して新しいプラットフォームをつくろうとするはずがないだろう。

          「ブロックチェーン」を用いれば、改ざんできない透明性の高いプラットフォームができあがる。それを世界で初めて、決済プラットフォームとして実働させ、証明したのが「ビットコイン」なのである。

          そして様々な大小の問題を乗り越えながら、ビットコインは2009年から止まらずに立派に稼働している。

          ビットコインの真の姿

          もう、まとめる必要さえないかも知れない。

          しかし最後にもう一度、冒頭で私が宣言したビットコインの真の特性を思い出してほしい。私は、ビットコインは「消したくとも消せない」と書いた。

          2008年11月7日午前9時30分36秒(PST)。実際にビットコインが稼働するよりも前の日付だ。この日、とある暗号関係のメーリングリストに送られて来た質問に対して、ビットコインの未来の姿を予言する返答を返した人物がいた。

          「Yes, (you will not find a solution to political problems in cryptography) but we can win a major battle in the arms race and gain a new territory of freedom for several years.
          そうだ。(我々は暗号技術における政治的な問題の解決法は見いだせないだろう。)しかし、我々は激しい戦いにおいて大勝利を収め、数年間は新しい自由の領地を得るだろう。

          Governments are good at cutting off the heads of a centrally controlled
          networks like Napster, but pure P2P networks like Gnutella and Tor seem to be holding their own.
          各国政府は、中央管理されたNapsterのようなネットワークを遮断することは得意だが、GnutellaやTorのような純粋なP2Pネットワークはまだそれに屈していないようだ。

          Satoshi
          哲史

          Satoshi Nakamoto Fri, 07 Nov 2008 09:30:36 -0800
          The Cryptography Mailing List
          Re: Bitcoin P2P e-cash paperより」

          そう。発明者ナカモトサトシは、「Decentralized」なP2P方式で、「力を持った第三者にも首が落とせない」前提でビットコインを作った。そしてそれは今も独自の経済圏、すなわち彼のいう「自由の領地」を拡大し続けている。

          ここでは最低「数年間は」と謙遜気味に書いているものの、すでに6年間以上に渡って、「ブロックチェーン」はあらゆる圧力や問題に屈さず、人々の経済活動を刻み続けているのだ。

          「ビットコインは『取引は全て透明性が高く』、『盗むことは非常に困難』であり、『消したくとも消せない』もの。そしてある意味一般的な通貨よりも『信用できる』ものなのである」

          ビットコインの原理を理解した今、冒頭で宣言したこの言葉に偽りはあっただろうか?

          念のため、ここで最後にビットコインの特徴をもう一度まとめておこう。

          tb-bitcoin21

          『不正』、『破綻』、『盗難』、『消失』

          そんな言葉は、ビットコイン自身にではなく、Mt. Goxなどの、盗難や破綻による被害を発生させた取引所やサービスに向けるべきものである。ビットコインは消えていないし、消せない。

          『怪しい』『不正送金』『マネーロンダリング』

          そんな言葉は、ビットコイン自身にではなく、それを時代に先駆けて活用している犯罪者に向けるべきものである。まさに殺人事件における、罪のない鋭い包丁。ビットコインも同様に、あくまでも単に鋭すぎる決済ツールなのである。

          最後に

          ついにビットコインの原理を知って、あなたはどう感じられただろうか?

          もし、あなたがテクノロジー産業に従事しているにもかかわらず、今日これを読んでもビットコインの原理について理解ができなかった場合は、あなたと暗号通貨やブロックチェーン技術とは相当相性が悪いのかもしれない。

          と言っても、この先一切ビットコインを使わなくとも、あなたに何か問題が起こるわけでもない。ただ、大きな可能性を秘めた新しい分野を一つ見逃すことになる。

          しかし、まったく無の状態からこれを読んでビットコインに興味を持った方や、今日まで抱いていたビットコインのネガティブなイメージを払拭できた方、そしてビットコインの革命性に感銘を覚えた方には、この先に広がるさらに大きな世界の可能性について何かを感じて頂けたはずだ。

          2008年に謎の人物ナカモトサトシの論文として発表されたこのビットコインは、実にこれほどまでに、世界のトップエンジニアや研究者たちが熱狂するに値する斬新な仕組みなのである。

          そしてこの「ブロックチェーン」技術の利用は、単なる決済システムにとどまらない。また、何百ものビットコインクローンである他の暗号通貨(Altcoinと呼ばれる)の根幹技術としてのみ使われている訳でもない。

          その他にも、全ての電子契約やプログラムをブロックチェーン上に乗せるという壮大な「Etherium」というプラットフォームや、オープンな電子トークン株式市場を実現している「CounterParty」、現実に存在する金融資産を同価で取引できる「BitShares」、消せない特性を利用してデータ記録に特化した「Factom」など、Bitcoin 2.0と呼ばれる分野がこの「ブロックチェーン技術」を応用し、既に国境を越えて世界中に広がり始めているのだ。

          日本が、世界各国に比べ、ビットコイン自体への理解と受容に数年以上も出遅れる中、そこから派生した理念と技術は、国境を超えて既存の仕組みを着実に侵食している。

          ここで、今までのものと大きく状況が違うのは、この「ブロックチェーン」技術を用いたプラットフォームは、ナカモトサトシが予言したように、一政府の圧力や法律、一個人の思惑では原理的に潰すことができないということだ。

          そして、それらが日本に攻め入る日も近い。我々も、否が応でもそれを受け入れなければならない日を想定して、日本からもイニシアティブを取るべく準備を進めねばならないだろう。

          なぜなら、そのパイオニアであるビットコインでさえも、止めたくても、もう誰にも止められないのだから。

          「Bitcoin破たん報道は誤解も甚だしい」経済学者・野口悠紀雄氏

          日本でBitcoinといえばMt. Gox(マウントゴックス)の倒産がメディアを賑わせたが、以前ほどは話題に上らなくなった。日本の現状はどうなのか? 2月23日に都内で開かれた「楽天金融カンファレンス」で経済学者の野口悠紀雄氏らが、Bitcoinが日本で普及する可能性や、規制面での課題を語った。

          Bitcoinの特徴は管理主体がないPtoP型。そのメリットは手数料や為替のスプレッドなどの送金コストが低く抑えられるということだ。こうしたメリットから米国ではすでにDELLやPayPal、Expediaなどの大手企業が徐々に導入している。

          一方、日本でのBitcoinに関する話題といえば、昨年2月の「Mt.Goxショック」の余波が後を引いている。事件以降、Bitcoinそのものの仕組みが破綻したという報道もあったが、パネリストの野口氏は「誤解も甚だしい」と一蹴した。

          「Bitcoinは生き延びているのに誤解されている。例えばみなさんが米国から帰国して、成田でドルを円に変えようとしたら、たまたま空港の両替所が閉まっていた。そのときにドルが破綻したと言いますか? 両替所が破綻したからといって通貨そのものが破綻したと誰が考えるだろうか。Mt.Goxの事件は、いわばそういうもの。」

          規制とこれからの課題は

          日本では政府がBitcoin普及を後押しする動きもある。

          自民党のIT戦略特命委員会の提言を受け、Bitcoinを扱うスタートアップ3社が9月に業界団体「日本価値記録事業者協会」を発足。政府主導の規制を導入するかわりに、Bitcoin交換所の監査や利用者保護を盛り込んだ自主規制ガイドラインを作成し、“風評被害”からの信頼回復を図っている。

          こうした動きを、Bitcoinに詳しい弁護士の斎藤創氏は、「幸いなことに、政府の対応は今のところ暖かく見守る方向」と評価。その一方で、Bitcoinの取引を課税対象にすべきという議論があると指摘する。非課税な国が多いのにもかかわらず、日本で課税対象となれば、国内のBitcoin普及の速度は今以上に遅くなる、という意見だ。

          今はとにかくBitcoinは怪しいものではないと利用者に納得していただきたいと野口氏が繰り返してセッションは締めくくられた。

           


          モナーコインは暗号通貨のiモードとなるか? 新Bitcoin取引所「Zaif Exchange」がオープン

          Bitcoinと国産暗号通貨のモナーコインを扱う日本向けBitcoin取引所の「Zaif Exchange」(ザイフ)が今日オープンした。一般的な取引所で0.1〜0.5%の手数料が発生するのに対して、手数料ゼロをうたう。日本円を入金すると暗号通貨との取引が行えるほか、暗号通貨と日本円での両方で引き出しができる。

          サービス自体は2014年7月にBitcoinウォレットサービスとしてテックビューロで生まれたが、2014年4月からBitcoin取引所として稼働していたEtwingsを買収してリブランドしたのが今回のZaifだ。再スタートにあたってロゴとシステムを刷新。暗号通貨管理の強化や、単位時間当たりの取引キャパシティを10倍に強化するなどしたという。

          管理強化の面では、顧客が持つ暗号通貨残高のうち流動しないものについてはシステム内からは完全に隔離された状態で複数箇所に分けてオフライン保管したり、その再移動には権限を持った複数管理者の電子署名が複数段階に渡り必要となる内部統制制度を導入するなどした。また、取引所システムを複数層に渡って外部から遮断し、内部への侵入を防ぐセキュリティ環境を構築したという。

          運営元のテックビューロは、創業期のDeNAへの投資で知られる独立系VCの日本テクノロジーベンチャーパートナーズ(NTVP)を引受先とする総額1億円の第三者割り当て増資を実施したこともオープンと同時に明らかにした。NTVP代表の村口和孝氏といえば、日本の独立系VCの草分け的存在として広く知られているが、その村口氏はBitcoinのような暗号通貨の将来性について、次のように述べている。

          「15年以上前から大きな地殻変化が起こるだろうと思っていた領域だが、暗号通貨が21世紀の通貨革命としての歴史的な役割を果たすことの重要性は明らかだ。今回投資したテックビューロは、暗号通貨に関する技術力サービス力が国際的で、グローバルな暗号通貨サービス領域で重要な役割を果たすことが出来る有力な一社と判断した」。

          NTVPとしてサービス立ち上げを支援し、今後追加投資もするという。

          テックビューロは2014年6月創業で、先端技術を研究開発する企業としてスタートしていた。これまでに、肉眼からは見えずにスマートフォンカメラから見える印刷技術のライセンス供与などを行ってきたが、今回の増資にともなって暗号通貨関連サービスの提供を開始した形だ。今後はZaifブランドで取引所のほかにも、ウォレットサービスや決済サービスなどを順次公開予定という。

          開発やコンサルティング、ビジネスは周辺領域で

          Zaifは日本での暗号通貨普及促進のために、手数料無料を少なくとも1、2年は続けるとしているが、収益モデルを何に据えているのだろうか? テックビューロ創業者で代表の朝山貴生氏がTechCrunch Japanに語ったところによれば、いま見えている方向性は2つあるという。

          1つはBitcoin関連ビジネス、中でもシステム開発やコンサルティングの事業だ。もともと朝山氏はシリコンバレーで技術者チームを率いてクレジット決済サービスを提供していた経験があり、金融システムやセキュリティに明るい。数理モデルによる不正検知導入や、日本の金融事情に特化した不正対策も施し、国際的なマネーロンダリング対策、KYC(顧客確認)基準にも対応していくとしている。

          Bitcoinのような暗号通貨を扱う上で出てくるセキュリティ上の課題は、従来と異なってくる。このためシステム開発、コンサルティングのニーズが大きくなると見ているという。例えば、暗号通貨では「盗む」といっても、実体に触れずに盗むということが起こっている。以前、Bitcoinで個人口座情報が漏洩するというセキュリティ事故があったが、これは初回の個人口座情報(楕円曲線による公開鍵・秘密鍵のペア)生成時に使われていた乱数発生アルゴリズムに欠陥があったためだった。この欠陥自体はBitcoinそのものの欠陥ではなく、実装依存のセキュリティ問題だが、現実問題としては多くのサービスで利用されているBitcoinデーモンに入っていたものだったので広く問題となった。

          というような話を常時把握しておき顧客の資産を守る、その専門技術者集団とプラットフォームというのがテックビューロとZaifの役割ということだ。だから、手数料無料といってもAPIベースでのシステム利用以外が対象となっている。

          システム開発ニーズとしては、Bitcoin 2.0と呼ばれる周辺領域の拡大も見込む。

          Bitcoin 2.0は、Web 2.0に似た総称で、暗号通貨方式そのものの革新も含まれるものの、どちらかというと、Bitcoinのブロックチェーン技術の上に築かれつつある各種応用技術のことを指す。たとえばCounterpartyというサービスは、Bitcoinを通貨として企業が「上場」できる暗号通貨を使った株式資本市場だ。市場参加者は「暗号債権」の売買ができる。SmartContractは電子署名と暗号通貨を結び付ける試みで、たとえばBitcoinの所有者移動と物品の所有権の移動を紐付けるようなことをデジタルで行う枠組みを提供している。Bitcoinのような暗号通貨の普及の先には、これまでと違った金融テクノロジーや関連ビジネスが生まれる余地がある。

          海外からの送金ゲートウェイとしてのニーズも

          現在、日本向けのBitcoin販売所/取引所としてはbitFlyerQoinKrakenCoincheckBtcBoxなどがあるが、朝山氏によれば、まだ取引額は1日3000BTC(現在のレートで約3000万円)程度にすぎない。仮に手数料が0.2%としても6万円で、これではビジネスの見通しは立たない。

          日本ではMt.Gox破綻によるネガティブイメージや、そもそもの需要不足からBitcoinの普及は始まってすらいない。朝山氏によれば、米国でBitcoinユーザーの6割は非白人層で、これは出身国へ個人間国際送金する需要に応じて利用が伸びていることを示しているのだという。

          Zaifでも直近では海外から日本への送金ニーズに一定の需要があるのではないかと見ているという。日本の金融機関とのつなぎ込みといったことは海外事業者や個人消費者には難しく、そのゲートウェイとしてBitcoinや取引所を使うというニーズだ。朝山氏は「2020年の東京オリンピックまでには、Bitcoinしか持たずに来日する外国人もいるかもしれませんよね」と、こうした可能性に言及する。

          モナーコインは暗号通貨のiモードとなるか?

          Bitcoinはインフレ懸念や財政政策の失敗から一国の通貨をBitcoinに切り替える、というような議論が出てくることもあるなど新興国で注目を集めている。一方で、日本のように通貨の安定性が比較的高い先進国では暗号通貨の利用は進んでいない。Mt.Gox破綻の背景にはBitcoinや暗号通貨と関係がないセキュリティ上の問題があったとされているが、Mt.Gox事件によって、特に日本ではBitcoin自体にネガティブイメージが付いたのは間違いない。

          ボラティリティの高いBitcoin相場をTechCrunchでも一時期良くお伝えしていたし、暴落を伝えるたびに、それ見たことかという鬼クビ的ツッコミも多くあった。しかし一方では、初期Bitcoin賛同者が資産を1000倍とした例など「Bitcoin長者」も生まれていた。日本でBitcoinが広く紹介されるようになった2014年には、いわば祭りのあとだったので、こうした狂乱騒ぎを経験した日本人ユーザーはほとんどいないはずだ。

          こうした状況から、朝山氏はモナーコインが一定の役割を果たすのではないかと見ているという。

          モナーコインは日本で生まれた国産暗号通貨の1つだ。ほかにも国産暗号通貨は複数あるものの、海外の取引所で継続的に扱われていて、かつマーケットキャップが1億円を超えている唯一の暗号通貨だという。これを書いている間にも相場は上がっていて、ここ数日で3億円を超えたという。

          コミケのような特定領域で利用されることがあるなど、現在のモナーコインには4、5年前のBitcoinに似たところがある、というのが朝山氏の指摘だ。「モナーコインが今後たどるプロセスが、過去のBitcoin黎明期の成長フェイズを日本人ユーザーに体験して頂ける良い機会であると考え、それが世界で最も流通しているBitcoinの日本での普及につながる」と考えているという。

          インターネットや外界とは隔絶した環境で、2000年代前半にiモードが普及し、産業として発展したのと同様に、モナーコインという独自通貨が日本で広まる可能性もある。iモード同様に、恐らくモナーコインも今さらBitcoinを超えることはないだろうが、多地域で複数暗号通貨が併存した状態となるのか、その比率がどういうものになるのかなどは誰にも分からない。iモードがスマホの波に飲み込まれて消え去ったのと同じようにモナーコインが一時の徒花となるのかも分からない。朝山氏は「iモードのように寄り道してグッと戻ってくるという動きになるのかもしれない」と話している。


          ギリシャがユーロを捨ててBitcoinに切り替えてはいけない理由

          [筆者: Wences Casares]

          編集者注記: Wences CasaresはXapoのファウンダでCEO。

          ギリシャのユーロ離脱をめぐる議論の一部に、ギリシャはユーロをやめてBitcoinを採用したほうが良いという説がある。一見してBitcoinは良い対策にも思えるが、しかし、ユーロが問題であるときBitcoinに切り替えるのは、頭痛を脳に弾丸を撃ちこむことで治そうとするようなものだ。

          ユーロの主な問題は、ギリシャが自由にそれをもっともっと印刷できないことだ。それができるのは、European Central Bankだけだ。でも、少なくとも、誰かにそれができる。ギリシャはECBを説得して自分たちのためにもっとユーロを印刷してくれ、と頼めるかもしれない。一方、ギリシャがBitcoinに切り替えたら、自分たちが発行する通貨の量をコントロールすることがまったくできない。発行量の増加を頼めるかもしれないECBや合衆国のFRBのような機関も、Bitcoinにはない。

          Bitcoinは、その基本的な性質として、供給量が一定であり上限がある。今それは13,882,100bitcoinあって、2025年1月には20,343,750bitcoinになり、しかし供給量が21,000,000bitcoin以上になることはない。

          今Bitcoinを保有している人は約1000万人いる。うまくいけば、20年後には10億から20億ぐらいの人びとが合計2100万bitcoinを保有し、そのときBitcoinの価格(貨幣価値)は相当大きくなっているだろう。経済学者はBitcoinを、“デフレ性通貨”と呼ぶ。

          ギリシャ新内閣の財務大臣Yanis Varoufakisも、Bitcoinはデフレ性通貨なのでギリシャにとって良くない、と言っている。しかし彼はさらに、Bitcoinはデフレ性だから、欠陥のある通貨だ、とも言っている。でも、それはちょっと違う。Bitcoinは政府の通貨ではなくて、人びとのためのグローバルな通貨だ。人びとは一般的に、時間の経過とともに価値が上がっていく通貨、すなわちデフレ性通貨を好む。逆に、時間の経過とともに価値が下がっていく通貨、すなわちインフレ性通貨は好まれない。すべての国の通貨が、インフレ性通貨だ。

          ギリシアに限らず、一国が自分たちのそれまでの通貨を捨ててBitcoinを採用するのは間違いだ。通貨政策は、それが賢明であれば、人びとのふところを豊かにし繁栄をもたらす。しかしあまりにも多くの通貨を政府が発行することは、通貨政策の濫用だ。

          大量の通貨発行によってインフレが起こり、それらの国々の貧困層がなお一層困窮する。でも彼らは、ほかに方法もないので、どんどん減価していく自国の通貨にしがみつき、すべてを失う。

          Bitcoinは、世界中の人びとに対策を与える。スマートフォンがあれば誰でも、どんどん減価していく通貨からの避難所としてBitcoinを持てる。そしてそれは、政府に対するメッセージになる: “政府の通貨じゃなく、自分たちの通貨を持とうよ。ただし、自分の意思で選んだ新しい通貨は、責任をもって管理しよう”。

          Bitcoinが普及したとしても、それがどこかの国の通貨を代替することはない。ギリシャにかぎらず。Bitcoinは特定の国の通貨ではなく、人びとによる、人びとのための、インターネットのデジタル通貨だ。

          [原文へ]
          (翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa


          デジタル通貨のプロフェッショナルを定義する

          [筆者: David Berger]

          編集者注記: David BergerがCEOをしているDigital Currency Council(DCC)は、Bitcoinに関する教育訓練や検定試験、資格証明を提供している団体で、弁護士や会計士、金融の専門家などで構成されている。ここは、コミュニティのメンバーやブロックチェーンへのアクセスも提供している。

          新しい産業が発展すると、新しい職業が生まれる。そして、重要な産業において一般人と専門家とのあいだの情報や知識の格差が大きいときには、それらの専門家を客観的に定義して検定するための、組織的なプロセスが必要になる。このプロセスは当の産業の成功のために欠かせないだけではなく、努力してその道の専門家になった人たちの成功のためにも重要だ。

          デジタル通貨の経済は新しい知識集合を必要とし、また、個人がその知識を獲得してそのことを証明できる方法も必要だ。エコシステムの成熟と成長は、それに依存している。

          DCCは最近までの数か月をかけて、デジタル通貨のプロフェッショナルに必要な中核的能力を定義し(下表)、個人がそういう能力を持つためのオンラインの教育カリキュラムと、能力を検定するための試験を作ってきた。

          必要な能力の定義と並んで重要なのは、中核的ではないと見なされる能力を排除することだった。高いレベルの定義が必要ではあるが、これからデジタル通貨の専門的能力を身につけようとする人びとによく分かる定義でもなければならない。したがって中核的能力は専門的能力のあくまでもベースラインであり、今後の実際の仕事の中で身につく、理想的で高度な能力の定義ではない。

          そのため、中核的能力を定義するにあたっては、経験と今後の継続的な教育によって身につく専門的能力を排除することにした。

          必要とされる知識は永久不変ではなく、産業の変化成長とともに変わっていく。それゆえ、他の産業と同じくデジタル通貨のプロフェッショナルにおいても、全キャリアを通じての継続的教育が必要である。

          ここで提案するのは、ある職業分野の排他的なカテゴリーではない。むしろそれは、今後の、弁護士や会計士やコンプライアンスの専門家や、金融関連のアドバイザー、企業コンサルタント、情報技術の専門家などなどからの介入により、肉をつけていくべき、最小限の定義だ。

          製鉄工は産業革命とともに生まれた。鉄道技士はその後の繁栄社会から生まれた。宇宙飛行士は宇宙の時代から生まれた。そしてITのプロフェッショナルは情報化時代から生まれた。今日のデジタル通貨のプロフェッショナルは、数学と透明性が定義する新たな効率性とアクセス性と全員の利益をもたらす、分散的デジタル貨幣の時代から生まれようとしている。

          デジタル通貨は次の時代の人類の進歩を定義する。デジタル通貨のプロフェッショナルは、そんな時代のさまざまな成果を作り出す。

          [原文へ]
          (翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))