Boston DynamicsではこれまでにもTechCrunchの例年のRobotics+AIカンファレンスで多数の応用事例をデモしてきた。応用例には上でも触れられている建設現場での工事のモニタリングがある。障害物を乗り越え階段を登り降りし、自らドアを開けるなど他のツールにはないSpotのユニークな能力はこうした場面で極めて役に立つことが実証されている。別のビデオで州警察がSpotを訓練に利用している。
Boston Dynamicsの創業者で元CEOのMarc Raibert(マーク・レイバート)氏は私の取材に対して以下のように語った。
Boston Dynamicsはロボットをテーマにした昨年のTechCrunch SessionsでSpotをお披露目した(このときはSpotMiniという名称だった)。今年5月の同じカンファレンスではBoston Dynamicsとして初の商用を目指すプロダクトが登場した。障害物の多い環境でも踏破でき驚くほど多機能だった。このプロダクトがSpotというモデル名でついに販売が開始された。
Boston Dynamicsのビジネス開発担当バイスプレジデントを務めるMichael Perry(マイケル・ペリー)氏はTechCrunchにインタビューに対してこう語った。
Boston Dynamics(ボストンダイナミクス)は、手持ちのロボットを鍛え直してきた。2足歩行のヒューマノイド型ロボAtlas(アトラス)に、体操の床運動のルーティーンを教え込んだのだ。前転からの逆立ち、側転やジャンプツイストまで、驚くほどエレガントな動きを見せる。このようなレベルのアスリート魂(ロボットが「アスリート魂」を持てるかどうかは別として)は、見ているだけで感動的だ。なにしろ体重が330ポンド(約150kg)もあるロボットなのだ。2013年に初めてプロトタイプが開発されたときには、「やっと歩ける」程度の動きしかできなかった。
ロボットを歩かせるためのプログラミングは、平らに整地された地面の上だけでも十分に難しい。しかしフロリダにあるIHMC(Institute for Human and Machine Cognition=人間と機械の認知研究所)は、二足歩行ロボットに、起伏に富んだ地形の上を確実に歩かせるという高度な課題に取り組んでいる。同研究所は、この分野における研究成果を2016年からデモしてきた。その最新のビデオ(Engadgetによる)によって、進化を確認できる。
Boston Dynamicsはこれまで以上にカーテンをめくって見せている。会話の途中で、レイバート氏はコンポーネントテストの舞台裏映像を披露した。それはロボットの様々な部位が実験室のベンチ上に広げられた様子が示された、必見のサイトだ。これは私たちが今までに見たことのないBoston Dynamicsの側面である。何体かが自律的にあたりを巡回している、多数のSpotMiniがいるテスト用囲いの映像も同様に披露された。
Boston Dynamicsは、未来がロボットにとってどのように見えるかについてのアイデアを、まだ他にも持っている。レイバート氏はSpotMiniをさまざまなテストシナリオを利用しているマサチューセッツ州警察の映像も紹介した。例えばロボットにドアを開けさせることができれば、人質事件やテロリスト事件の際に、人間の警官を危険から守ることができるかもしれない。
Boston Dynamicsによれば、「HandleはSKU(販売商品単位の箱)をパレットからピックアップし、移動して別のパレットに積み上げるなどの動作を自立的に遂行する。Handleにはカメラが搭載され、人工知能によるコンピュータービジョンでパレットのマーキングを読み取って箱を適切な場所に移動することができる」という。
「ロボット工学への投資は、当然な流れとして、過去数年に比較して驚くほど伸びています」と、市場調査会社IDCのCommercial Service Robotics(商業サービス・ロボット)研究部長John Santageteは声明の中で述べている。「投資が伸びているのは、その技術を受け入れた市場の作用です。その技術分野は、市場の要求に見合うまでに成長したのです。そしてその将来の展望には、柔軟な自動化技術が含まれているに違いありません。今日の倉庫では、消費者の要求に追いつくために、品物はより速く、より効率的に移動しなければなりません。自動化された移動型ロボットは、スピードと効率性と柔軟性のある自動化を、費用対効果の高い形で実現します」
Black Mirrorのワンシーンのようなこのドキュメンタリーふうビデオは、Boston DynamicsのSpotMini
の大集団が地球上を覆い尽くす未来を描いている。もちろんフィクションだが、でもBoston Dynamicsのロボットに対する唯一の防御策として、エンジニアにホッケーのスティックを持たせることしかないのなら、このシーンはやがて現実になるかもしれない。
Boston Dynamicsのロボットは、技術もデザインも着実に進歩していて、その最新作、黄色い皮膚のSpotMiniはドアを開けることもできる。このビデオでは、何千台ものSpotMiniが地表を自由に動き回っている理由や経緯が分からない。充電はどこでするのか? リーダーはいるのか? 砂塵が吹き荒れているようだが、どうやって自分を洗うのか? ロボットの大公たちに、訊きたいことは山ほどあるね。
Boston Dynamicsは、Googleの不調なロボット部門からお金持ちのSoftBankに移籍して以降、あまり音沙汰なかったが、その間この最先端のロボット企業は何をやっていたのか。それが分かるのが、同社がこのほどリリースした24秒の予告編的ビデオだ。ここでは、同社のこれまでの製品にくらべるとずっとすっきりしたデザインの電動式ロボットSpotMiniを見ることができる。