ナイジェリア拠点のフィンテック企業InterswitchのCEOが語る、アフリカ大陸の金融サービスの現状

アフリカ全土に展開するフィンテック企業のInterswitch(インタースイッチ)は、そのベンチャー投資部門を再開することを計画している。CEOであるMitchell Elegbe(ミッチェル・エレグベ)氏自身から、米国時間9月16日に行われたTechCrunch Disruptの壇上で語られた。

このナイジェリア出身の起業家は、同国の首都ラゴスに拠点を置くInterswitchが予定しているIPOについてはあまり新しい情報を語らなかったが、同社がアフリカのスタートアップへの投資を復活させることを明らかにした。

2002年にエレグベ氏によって設立されたInterswitchは、当時は主に現金ベースで行われていたナイジェリアを、デジタル化するインフラストラクチャを開拓した。同社は現在、アフリカ最大の経済と人口2億人を擁するナイジェリアのオンラインバンキングシステムに、多くのインフラストラクチャを提供している。同社は、アフリカの23の国で、個人向けおよびビジネス向けの決済商品を提供するまでに拡大した。

このフィンテック企業は、2019年に行われたVisaによる2億ドル(約209億6000万円)の株式投資によって、評価額が10億ドル(約1048億円)となりユニコーンの仲間入りをした(未訳記事)。

ベンチャー投資の復活

スタートアップの段階を十分に超えたInterswitchは、2015年に1000万ドル(約10億5000万円)のベンチャー部門(未訳記事)を立ち上げたが、ナイジェリアのフィンテックセキュリティ会社であるVansoを買収(techcabal記事)した2016年以降、そのベンチャー部門を休止していた。

しかしエレグベ氏によれば、Interswitchはまもなくスタートアップへの投資と買収を行うビジネスを再開するという。「私たちはチームを認定したばかりですが、そうした投資を再び開始する予定です」。

彼は新しいファンドの焦点を簡単に紹介した。「今回は、金融投資を行い、Interswitchが持つネットワークを投資企業が自由に活用できるようにしたいと考えています」と同氏はTechCrunchに語った。

「私たちは投資先の企業を厳選していきます。それらは、Interswitch自身が、明確に価値を与えることができる企業でなければなりません。私たちの行動と、私たちが既にお付き合いのあるお客様たちの力で、成長の加速をお手伝いできるような企業でなければならないのです」とのこと。

アフリカのテクノロジー業界における最近のベンチャーの動きが、Interswitchが投資分野に戻るように迫った可能性がある。エコシステムとして、アフリカ大陸のVCは過去5年間でほぼ4倍に増加し、2019年には約20億ドル(約2092億8000万円)に達した(未訳記事)。しかし、そのほとんどは単一企業による投資ファンドからのもので、ベンチャーファンド企業による投資とテクノロジーM&Aは、まだ軽微なものに留まっている。それは過去数カ月にわたって変化し、全体的な上昇がInterswitchの競合他社と見なされる可能性のある法人を中心としたアフリカのフィンテック周辺で発生してきた。

7月には、ドバイのNetwork International(ネットワーク・インターナショナル)が、ケニアに拠点を置くモバイル決済処理会社のDPOを2億8800万ドル(約301億4000万円)で買収(The Africa Report記事)した。買収後まもなく、DPOのCEOであるEran Feinstein(エラン・ファインスタイン)氏は、Network Internationa社はアフリカでの買収をさらに推進する予定だと語った。6月には、別のモバイルマネー決済処理会社であるMFS Africaがデジタル金融会社のBeyonic(ビヨニク)を買収(Venture Burn記事)した。そして8月には、保有資産と融資高でアフリカ最大の銀行である南アフリカのStandard Bank(スタンダード・バンク)が、フィンテックセキュリティ企業TradeSafeの株式を取得(AppsAfrica記事)した。

Safaricomによる主要なM-Pesaモバイルマネー製品(未訳記事)がケニアで台頭して以来、アフリカのフィンテックは成長を続け、競争が激化している。このセクターには数百のスタートアップがあり、現在アフリカ大陸でのすべてのVC投資のほぼ50%を受け取っている。

投資家と創業者が狙っているチャンスは、アフリカに多数いる銀行口座を持たない人々と銀行口座は持つものの活用できていない消費者(Investopedia記事)、そして中小企業たちをオンラインにしようとするものだ。世界銀行のデータによると、サハラ砂漠以南の10億人(世界銀行データ)のおよそ66%が銀行口座を持っていない。モバイルベースの金融プラットフォームは、そうした地域全体をシフトさせるための最良のユースケースを提示してきた。

Interswitchは、アフリカのデジタルファイナンスレースのリーダーとしての地位を確立している。しかし、革新的で若いフィンテックスタートアップに、投資や買収を行う積極的なベンチャー部門がなければ、現在の役割をどのように維持または拡張できるのかを想像することは困難だ。

IPOについての具体的な話は出なかった

エレグベ氏は、長い間期待されてきたInterswitchのIPOに対してはあまり語らなかった。会社はまだ上場するつもりなのかと尋ねたところ、彼はそれについては回答を控えたいとした。「現時点では、ビジネスの成長と顧客のための価値の創造に注力していて、それが私たちの主な焦点なのです」とのこと。

IPOの可能性がまだあるのかどうかについて「はい」または「いいえ」の回答を求めたところ、エレグベ氏はそれは「はい」だと答えた。「私たちはプライベートエクイティの投資家を抱えていますが、この先ビジネスのある時点でのエグジットを彼らは望んでいます」という。「イグジットのタイミングを迎えるときには、テーブルにはさまざまなオプションが置かれることになりますが、IPOもそのオプションの1つです」。

InterswitchのIPOについては長年話題されてきた。エレグベ氏は2016年に、TechCrunchに対して、ラゴスとロンドン証券取引所の二重上場が可能だと語っていた。その後、他のInterswitchチャネルを通じて、2017年のナイジェリアの景気後退と通貨のボラティリティのために公開が遅れたという噂が流れた。2019年11月には、状況を知る情報筋が、TechCrunchに対してその背景を語っていた「IPOの可能性はいまでも非常に高いままです。おそらく2020年の前半のいつかでしょう」。その後、新型コロナウイルス危機とそれに伴う世界経済の低迷が起こり、それがInterswitchのIPO計画を再び遅らせた可能性がある。

同社が上場すれば、それはナイジェリアとアフリカのフィンテックにとって大きな出来事となるう。アフリカ大陸には、VCが支援し世界的に上場しているフィンテック企業は存在していない。Interswitchの投資家のイグジットは、アフリカ大陸のスタートアップに対する投資機会の様子をうかがっている主要なファンドから、より多くのVCをナイジェリアやアフリカ全土へと引き寄せることになるだろう。

アフリカへ再注力

グローバルな製品展開に関してエレグベ氏は、今のところアフリカへの注力を継続する予定だと説明した。「アフリカ大陸の中で、Interswitchには十分な機会があります。私たちはできるだけ多くのアフリカ諸国に広がることを望んでいます。そしてInterswitchをアフリカ大陸への(金融)ゲートウェイとして位置付けたいと考えています」と彼はいう。

エレグベ氏は、主要な金融サービス企業との提携を通じて、アフリカの顧客基盤にグローバルな金融アクセスを提供し続けると説明した。2019年8月にInterswitchは、Verveカード所有者がDiscoverのグローバルネットワークを使って支払いを行えるようにするパートナーシップを開始した。

同氏は、ナイジェリアでのビジネスを行う際の欠点と可能性のバランスをとる見方を示しながら、今回のDisruptにおけるセッションを終えた。近年ナイジェリアは、アフリカにおける大規模な技術拡大、VC投資、そしてスタートアップ形成のための非公式なハブ化が進んでいる。しかし、ナイジェリアはインフラストラクチャーに関しては厳しい運営環境が続いている、それはしばしば政治的腐敗とボコ・ハラムのテロ行為による北東部地域の不安定に関連していることが多い。

「ナイジェリアは非常に大きな人口と非常に大きな市場を抱えています。私たちには解決する必要のある課題がたくさんありますが、ナイジェリアにはチャンスがあるので、多くのお金がそこへ向かっていることは理解できます」と彼はいう。

ナイジェリアの検討をしているテック投資家へのエレグベ氏のアドバイスは以下のものだ「短期的な見方をしないでください。そこには素晴らしい仕事をしている素晴らしい人びとがいます。インパクトを与えたいと思う正直な人たちです。そうした人たちを探し出す必要があります」。

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(翻訳:sako)

メールセキュリティに革新をもたらすHacWare、創業者はソーシャルエンジニア攻撃を熟知した米国防総省の侵入検査員

メールのセキュリティは、多くの人があまり気にしていないことだろう。毎日のようにパスワードを盗もうとするフィッシング攻撃にさらされているわけではないのに、コンプライアンスのチェックボックスにチェックを入れるために、自社からテストとして送られてくるフィッシングメールをかわすことを期待されているのだ。

あるセキュリティスタートアップは、この状況を変えたいと考えている。Tiffany Ricks(ティファニー・リックス)氏は2017年にテキサス州ダラスにHacWareを創業した。同社は、本業に支障をきたすことなく中小企業にサイバーセキュリティに対する意識を高めるサポート事業を展開するスタートアップだ。

「私たちは彼らにサイバーセキュリティについて知らないことを示し、彼らが仕事に戻れるように支援しようとしています」とリックス氏はStartup Battlefieldへの参加に先立ちTechCrunchに語った。

リックス氏は、米国防総省の元請負業者であり、倫理的なハッカーとしてのルーツを持っている人物だ。侵入検査員、つまり「red teamer」(レッド・ティーマー)として、ソーシャル・エンジニアリング攻撃を含む多くのテクニックを使って、企業のサイバーセキュリティ防御の限界をテストしていた。具体的には、誰かを騙してパスワードやシステムへのアクセス権を引き渡すことなども含まれていた。

「ソーシャル・エンジニアリングの従業員が組織に侵入するのは非常に簡単でした」とリックス氏。「しかし、市場に出回っている既存の製品では、規模に応じてユーザーを教育することはできませんでした。そこで、私たちは自社で製品を開発しました」と続けた。

HacWareのサービスは、企業のメールサーバー上に設置され、機械学習を利用して各メッセージを分類し、リスクを分析する。怪しげなリンクや添付ファイルなど、フィッシングメールと同じようなものを探すことができる。

同社は、財務部門や人事部門など、従業員の機密情報を盗み出そうとするビジネスメールの漏洩攻撃に対して、脆弱で最もリスクの高いユーザーを特定しようとする。また、ユーザーの受信箱にすでに入っている内容を利用して、自動でシミュレートされたフィッシング攻撃を利用し、ユーザーをテストするためにパーソナライズされたフィッシングメールを送信する。

Verizon(ベライゾン)の年次データ侵害報告書によると、フィッシングやその他のソーシャルエンジニアリング攻撃を利用して機密情報を盗もうとする攻撃者にとって、電子メールは依然として最もポピュラーな手段だ。これらの攻撃者は、あなたのパスワードを欲しがったり、従業員の税金や財務情報などの機密文書をだまし取って送信しようとしたりする。

しかし、格言にもあるように「セキュリティの連鎖の中で最も弱いのは人間」だ。

二要素認証のような強力なセキュリティ機能を実装すれば、ハッカーがアカウントに侵入するのがはるかに困難になるが、それも万能薬ではない。Twitterが壊滅的な不正アクセスに見舞われたのは7月に入ってからで、ハッカーがソーシャルエンジニアリングの技術を使って従業員を騙して内部の「管理者」ツールへのアクセス権を与え、それを悪用して知名度の高いアカウントを乗っ取り、暗号通貨詐欺を広めたのだ。

HacWare社の電子メールセキュリティに対するアプローチは、いまのところうまくいっているように見える。「フィッシングの反応が60%減少した」とリックス氏を語る。自動化されたフィッシング・シミュレーションは、ITの負荷を軽減するのにも役立っているという。

リックス氏は、シードアクセラレータのTechstarsのアクセラレータープログラムに参加した後、HacWareをニューヨーク市に移転した。同社は、100万ドル(約1億600万円)のシードラウンドの調達を目指しているとのこと。今のところ、同社はメールセキュリティに「集中」しているが、もちろん今後の成長も視野に入れている。

「私は人間の行動を理解し、そのリスクを軽減する方法を見つけ出すことにまで拡大していくと考えています」とリックス氏は語る。「サイバーセキュリティは統合的なアプローチだと信じています。しかし、まず根本的な原因から始める必要があります。根本的な原因とは、社員が健全なサイバーセキュリティの意思決定を行えるようにするために必要なツールを実際に社員に提供する必要があるということです」と締めくくった。

画像クレジット:MirageC  / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

エネルギー分野での地理空間の可視化と共同作業を可能にするカナダ拠点のMatidor

世界は広いが、専門家が地理空間データをより詳しく見ることができるソフトウェアは、コンシューマー向けのプラットフォームのような飛躍を遂げていない。

カナダ・バンクーバーを拠点とする地理空間の可視化と共同作業を可能にする事業を進めるスタートアップのMatidor(マタドール)は、エネルギー分野のコンサルタントやエンジニア向けにプロジェクトプラットフォームを構築しており、プロジェクトを1つの広範なダッシュボードで追跡できるようにする。共同設立者のVincent Lam(ビンセント・ラム)氏とSean Huang(ショーン・ファン)氏は、TechCrunch Disrupt 2020のバーチャルステージでMatidorを披露した。ラム氏は以前Google Earthチームで働いていた経験があり、ファンはAR/VR分野での経験がある。

Matidorの二人の共同設立者によると「現在の顧客の多くは、Slack、Microsoft Projects、ArcGIS(あるいはGoogle Maps)のようなツールを組み合わせて、転送されたスクリーンショットやリンクを織り交ぜた雑然としたソリューションを使用している」と話してくれた。Matidorは、データの可視化に関する具体的な共同作業のニーズに注目し、エネルギーと環境サービス分野の顧客にオールインワン製品スイートを提供している。

これらの業界で働く人々は多くの場合、ひと握りの視覚的なデータタイプを使用しているが、Matidorはこれらの顧客に、システムが変化を追跡し、関心のある視覚的なポイントを特定するために分析できるデータのレイヤーを重ね合わせることを可能にする。

「当社は多くのサードパーティのデータソースを取り込むことができます」とファン氏はTechCrunchに語った。そして「私たちは、あらゆるロケーションベースの有用な情報のための最適なプラットフォームになりたいと思っています」を続けた。

他のソフトウェアソリューションとは異なり、両氏は「Matidorはユーザーが簡単にポートフォリオ全体を一度に把握できるようにすることができる」とコメントしている。チャットに加えて、ユーザーは地図上の地域に素早く注釈を付けたり、メモを取ったりすることで、視覚的な共同作業が可能になる。

同社はユーザーごとに課金するのではなく、プロジェクトごとにソフトウェアを販売しており、プロジェクトで働くさまざまな関係者がプラットフォームを使えるようにすることを想定している。エネルギー分野へは参入したばかりで、開発チームは新しい顧客を取り込むためにテンプレートタイプの開発に取り組んでいる。最終的には、建設や緊急時の対応などの分野にも参入したいと考えているそうだ。

画像クレジット:Matidor

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(翻訳:TechCrunch Japan)

大麻栽培者の規制上のデータ入力をRFIDスキャナーとBluetooth対応の測量器で容易にすることを目指すCanix

工業規模で大麻を栽培するには、コンプライアンス法を遵守しながら利益を管理する必要がある。大小を問わず、多くの生産者にとって、これは種から販売までのデータ入力の継続的な作業となっているのだ。

Canix(カニックス)のソリューションは、データ入力にかかる時間を短縮することに重点を置いた、堅牢なERP(エンタープライズリソースプランニング)プラットフォームだ。このプラットフォームは、RFIDスキャナーとBluetooth対応の測量器を使用することで、一般的な会計ソフトや業界全体の規制プラットフォームであるMetrcとうまく統合されている。

Canixは2019年6月にローンチし、新型コロナウイルスの感染拡大のありながら、1年ちょっとで1000以上の栽培施設にまたがる300社以上の顧客を獲得し、250万本の植物の動きを追跡している。

創業者は、このソフトウェアの目標である人件費の削減を率直に語っている。TechCrunchとのインタビューの中で「人件費を改善することで生産者がどのようにして利益を上げることができるか」を力説していた。

生産者は一般的に、作物の追跡と予測を行うためにERPプラットフォームに頼っているが、Canixは会社のコンプライアンスを維持しながら、請求書の発行、原価計算、レポートを処理する。現在の在庫を監視するだけでなく、予測機能も備えている、植物のクローンだけから始めて、これらの予測機能は、生産者が90日先の収量を予測するのに役立つとのこと。

Canixを理解する前に、米国の合法大麻栽培の状況を知ることが不可欠だろう。生産者は、植物が施設内を移動するたびに書類を提出するなど、厳格な監視体制を守らなければならない。これには多くのデータ入力が必要で、ほとんどの州では生産者がMetrcでこの情報を提出することを要求している。

Metrc自体もスタートアップだ。2013年創業で、現在では13州で大麻のオペレーションを追跡している。2018年10月、Metrcは5000万ドル(約5230億円)を調達した。このプラットフォームは、コンプライアンスに深くフォーカスしており、種から販売までの大麻を追跡するように設計されている。一部の生産者はシンプルさのためにそのように使用していますが、それはERPプラットフォームではない。Metrcは現代の農業経営のための詳細に構築されており、一部の生産者にとっては、Metrcにデータを入力するのは、多くの場合、コンプライアンスを維持するために栽培者がスタッフを雇用しなければならない、労働集約的な作業です。

 

このプラットフォームは、大麻の種子から販売までを追跡するように設計されており、コンプライアンスを重視している。これはERPプラットフォームではないが、単純化のためにそのまま使っている生産者もいる。Metrcには近代的な農業経営のために詳細なシステムが構築されているのだが、一部の栽培者にとっては、Metrcへのデータの入力はコンプライアンスを維持するためにスタッフの雇用が必要な、労働集約的な仕事になってしまう。

Canixは、大麻のライセンスを持っている商業運営のために設計されている。MJ PlatformやBioTrackなど、いくつかのスタートアップがこの市場向けに同様のプラットフォームを構築しているが、Canixはデータ入力の改善に重点を置いていることが他社との差別化を図っているという。

Stacey Hronowski(ステイシー・フロノウスキー)氏とArtem Pasyechnyk(アルテム・パセチニック)氏は、Metrcの欠点を発見した後に同社を設立した。

フロノウスキー氏は「私が最初にCanixを始めたのは、ベイエリアの大麻会社のコンサルティングをしていた時でした」と話してくれた。「私は、同社のCRMと流通システムを接続し、請求書を作成するたびに行っていた二重のデータ入力を減らすソフトウェアを書いていました。その会社から、私が作ったシステムをMetrcに接続することを検討してほしいと頼まれました。Metrcを見始めた私は、生産者が紙にバーコードを書き込んでいることに非常に驚きました。Canixの最初のアイデアが出たのはその時でした」と続ける。

v氏は、Facebookの共通の友人を通じてパセチニック氏と知り合い、2人はプラットフォームの構築を始めた。ベータ版が好意的なフィードバックを受けた後、2人は本格的な運用にまで拡大した。

Canixは、その短い期間に何人かの重要な投資家の目に留まった。同社はY Combinatorの2019年夏のプログラムに参加し、2020年5月にはFloret Ventures、Yleana Venture Partners、Altair VC、Mava Ventures、Nano LLC、元コロラド州大麻取締官のAndrew Freedman(アンドリュー・フリードマン)氏から150万ドル(約1億5600万円)のシードを調達した。

画像クレジット:Canix

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(翻訳:TechCrunch Japan)

PromisePayとUncharted Powerの女性起業家が語るスタートアップおけるピボットのヒント

スタートアップを立ち上げて成長させるのは容易ではないが、新しい事業へ方向転換(ピボット)して同じように成長させるのは、もっと難しいと言われている。しかし、不可能ではない。

PromisePay(プロミスペイ)の創業者でCEOのPhaedra Ellis-Lamkins(フィードラ・エリス=ラムキンス)氏と、Uncharted Power(アンチャーテッド・パワー)の創業者でCEOのJessica O. Matthews(ジェシカ・O・マシューズ)氏は、どちらもそれを経験している。TechCrunch Disruptでは、両者それぞれの、しかしどこか類似性のあるヒントを投げかけてくれた。

以前はPromise(プロミス)の名称で知られていたPromisePayは、保釈金が払えないという理由だけで投獄されている人々の数を減らすことを目的とする保釈金改革スタートアップとしてスタートした。現在は、交通違反の反則金、裁判費用、子どもの養育費などの援助に重点を置いている。

「私たちは、重大な存続の危機に直面しました」とエリス=ラムキンス氏は話す。「Promiseで、私たちは大量投獄を終わらせ、刑務所の受刑者の数を減らすことに注力していました。そのため、滑り出しはとても順調で、収益も上がりました。そして気づいた根本的な問題は、私たちが効率を上げると、司法制度が人々を収監する効率が上がってしまうということでした。

私たちの間違った想定、つまり司法制度を効率化すれば司法制度に捲き込まれる人の数を減らせるという考え方に即した効率化は果たされませんでした。そこで私たちは、このままの会社では安定した成長はないと判断し、投資家に会いに行きました。利益が出ているときにこんな話を持ち出すのは心苦しかったのですが「この方向性では長続きするとは思えない、これは私たちの取るべき道ではないと伝えました」。

投資家に、法執行機関に技術を売る人たちもいるが、Promiseがやりたいのは人々の解放だと話した。彼女は売り込む相手を間違えていたことに気づき始めた。司法刑事制度に捲き込まれた人たちを気にかけているが、彼らはそうではない。そこが齟齬があると主張するクライントに彼女は話を持ちかけていたのだ。エリス=ラムキンス氏は、刑務所や牢獄に売り込みをかけるのをやめたいので、資金は返すと投資家たちに提案した。

そして彼女は、なぜ人は投獄されてしまうのかを考え始めた。「幸運なことに、それが成長を促したのですが、私は貧しい人たちや、黒人やヒスパニックに便乗して会社を成長させたいとは思っていません。なぜなら、ほかにもっといい方法があるからです」と彼女は言う。「しかし、利益を上げている市場を放棄するというのは、その場になると怖いことでした」。

この判断で揉めた投資家が一人もいなかったと彼女から聞いて、安心した。

マシューズ氏も、創設当初はUncharted Playという名称だった自身の会社Uncharted Powerで比較的似たような体験をしたことを話した。彼女の会社の最初の製品は、数時間これで遊ぶと照明を点灯できるほどの電力が充電される発電サッカーボールだ。後に彼女は、この技術を携帯電話に充電ができるベビーカーに応用した。

しかし、Uncharted PlayでシリーズA投資を獲得した後、マシューズ氏は自分の会社はインフラ整備に専念すべきだと気がついた。彼女は、会社の最終目標は生活に必要なインフラを人々に届けることだと考えていた。サッカーボールでそれを実現するのは、どう考えても難しかった。

「私たちは、そうした製品の製造技術を磨き、売り込みをかけて規模の拡大もできるようになりましたが、単に利益と社会的影響力とのバランスではなく、社会的影響力を求めようとしたとき、支えてあげたい人たちと同じグループに自分も属していることを自覚していた私は、成功したら問題は解決されるのかしらと椅子に座ったまま考えてるような気持ちでした」。

マシューズ氏は、それでは問題解決にならないと気がついた。そうして「数百万ドル規模の収益と64%の売上げ総利益率をもたらす製品と別れを告げることになったと」彼女は振り返る。

だが、それが功を奏した。昨年Uncharted Powerは、未来の電力インフラに関する彼女の論文を評価した投資家から追加投資を調達できたのだ。「それは私たちにとって大きな瞬間でした」と彼女は話す。

マシューズ氏もエリス=ラムキンス氏も、インポスター症候群(自己を過小評価してしまう傾向)と成功の評価について人々に語るべき、輝く貴重な体験の持ち主だ。この鼎談で語られたその他のハイライトをまとめてお伝えしよう。

インポスター症候群と代理症候群について

エリス=ラムキンス氏:テック企業は、人間への投資を著しく怠っていると感じています。そのため彼らは何も知らず、企業が成長する中で忘れさられてゆきます。私たちのような企業が他にもあることを知ってもらえるよう、手助けをする義務が私たちにはあります。

マシューズ氏:それはインポスター症候群ではなく、代理症候群です。私もまったく同様に感じるからです。シリーズA投資を獲得したとき、私はすぐに「大変だ、この人たちのお金を無駄にしてはいけない」と思いました。非常に重く感じました。もし私たちが頑張らなければ、それは私たちだけの問題ではなく、私たちに似た人たち全員の問題になると。

成功の評価

エリス=ラムキンス氏:見るべき点として、どれだけテクノロジーが私たちの社会を全般的に改善したかもあります。それが成功の評価です。成功を評価するとき、結果だけを見てはいけません。その影響が実際の利益よりも大きい場合に、10億ドルの利益を上げたり、評価額10億ドルの企業を所有できたりするのだと思います。そこが非常に重要です。

マシューズ氏:「社会的企業」という言い方をやめましょう。たわごとです。企業は企業。問題は問題。問題を基準にした価値システムを作るべきです。ほかにも増して重要な問題というものがあります。それを知ることは、つまり、そのことを誰よりも理解している企業創業者を支援するということです。そうして問題を乗り越えることができるのです。

画像クレジット:Sasha Craig Photography / Christopher Horne

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(翻訳:金井哲夫)

Disrupt 2020 Startup Battlefieldのファイナリスト5組が決定

TechCrunchは今週、いつもとは違うStartup Battlefield(スタートアップ・バトルフィールド)を開催した。起業家と審査員、観衆、司会の全員が別の場所にいて、WebExを通じて全力でやり取りした。

それでも20社のスタートアップ(未訳記事)がプロダクトのデモンストレーションを行い、自らのビジョンを説明した後、専門家のジャッジによる評価を受けた。そしてジャッジの意見を基にTechCrunchチームが5組のファイナリストを選んだ。

ファイナリストは米国時間9月18日の米国太平洋夏時間10時40分(日本時間9月19日午前2時40分)から、まったく新しい審査員チームの前で再度発表する機会を得る。これらの模様はTechCrunchにログインしてライブストリーミングを見ることができる、さらに、Disruptをフルに体験するのは今からでも遅くない。優勝者と準優勝者が審査員チームによって選ばれ、優勝者は10万ドル(約1060万円)を株式を提供することなく持ち帰えることができる。

5組のファイナリストは以下のとおりだ。

Canix

Canixは、大麻栽培業者がデータ入力する時間を削減するための堅牢の企業リソース計画プラットフォームを開発した。システムは一般的な会計ソフトウェアや業界の規制プラットフォームであるMetrcなどと協調して動作する。Canixの詳細はこちらで読める(未訳記事)。

Firehawk Aerospace

ハイブリッド・ロケットは新しいアイデアではないが、性能と推進出力の点で常に大きな制約に直面してきた。Firehawk Aerospaceは、安定した、コスト効率のいいハイブリッドロケット燃料エンジンを開発中で、工業規模の3Dプリンティングを導入することでこれまでの障壁や制限を克服しようとしている。Firehawk Aerospaceの詳細はこちらで読める

HacWare

Tiffany Ricks氏は2017年にテキサス州ダラスでHacWareを創立し、中小企業に高いメールセキュリティーを提供することを目指している。そのためのテクノロジーは同社のメールサーバー上にあり、機械学習を利用して各メッセージのリスクを分類・分析する。HacWareの詳細はこちらで読める(未訳記事)。

Jefa

Jefaは、ラテンアメリカ(中南米)の女性向けに特化したチャレンジャーバンクを作っている。同社は女性が銀行口座の開設や管理で遭遇する問題を解決することに重点を置いている。Jefaの詳細はこちらで読める(未訳記事)。

Matidor

Matidorはコンサルタントやエンジニアがプロジェクトと地理空間情報を1つのダッシュボードで管理できるプロジェクトプラットフォームを構築している。エネルギーや環境サービス分野の顧客向けにオールインワンのビジュアル化ツールを提供する。Matidorの詳細はこちらで読める(未訳記事)。

関連記事:Announcing the Startup Battlefield companies at TechCrunch Disrupt 2020(未訳記事)

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Disrupt 2020の目玉企画Startup Battlefieldのファイナリスト20社を紹介

TechCrunchは、Startup Battlefieldでピッチする20社を発表することに興奮している。世界中の創業者がリモートで接続し、Disrupt 2020のバーチャルステージでライブピッチを行う。これまでで最も競争の激しいこのバッチでは、スタートアップ企業が10万ドル(約1060万円)の賞金と一流の投資家や世界的な報道陣の注目を集めている。

競争は熾烈だ。選ばれたスタートアップ企業は厳格な応募プロセスを経ており、合格率はたった2%。なお、今年のバッチもバラエティに富んでいる。グリーンエンジンのデザインからソーシャルネットワーキングのビデオツール、GIS構築管理、中米の女性向け銀行プラットフォーム、サハラ以南のアフリカの適応型交通機関、医療費の手ごろな価格化に至るまで、各社はそれぞれの分野で画期的なイノベーションを起こしている。インドでの節水型垂直農業、スクリーンレスインターフェース、セキュリティ技術、多言語対応の子供向け学習玩具、さらには3Dプリントのロケット燃料を開発しているスタートアップもある。

各チームはStartup Battlefieldチームと数週間にわたってトレーニングを受け、ピッチとライブデモに磨きをかけ、事業立ち上げ戦略を強化してきた。9月14日の月曜日から9月18日の木曜日まで、スタートアップは6分間のプレゼンテーションを行い、そのあとに専門家の審査員による6分間の質疑応答が行われる。9月19日の金曜日には、最終選考に残った企業が新たな審査員を迎えてStartup Battlefieldの最終ラウンドに向けて再びピッチで戦う。

Startup Battlefieldのモデレーターは、TechCrunchシニアライターでおなじみのAnthony Ha(アンソニー・ハー)が登場する。ライブストリームを見るには、TechCrunch.comにログインしてほしい。また、Disrupt 2020のフル体験にアクセスすることもできる

それでは、各社をチェックしておこう。

【編集部注】Startup Alleyの一環として、DaVinci Kitchen、Vibeはワイルドカードからの選出でStartup Battlefieldの参加券を獲得した。これらの企業はイベントの数日前に選出された。

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:TechCrunch Japan)

エミー賞俳優のケリー・ワシントン氏がスタートアップ投資家になった理由

「Scandal」(スキャンダル )や「Little Fire Everywhere」(リトル・ファイアー〜彼女たちの秘密)などで知られる俳優のKerry Washington(ケリー・ワシントン)氏は9月15日、自身にとって初となるエミー賞を受賞した(InStyle記事)。そして米国時間9月16日、同氏は主に投資家としてTechCrunch Disruptに登場した。

ワシントン氏のテクノロジーへの関心は2012年のScandalプレミアに遡る。「黒人女性がネットワーク番組のドラマで主演を演じてからおおよそ40年が経っていた」と同氏は述べた。プレッシャーは大きく「黒人女性を自主演に抜擢することでリスクをとった」ネットワークの「バブル番組」だとScandalは考えられた。

そしてワシントン氏は支持を得るために「Barack Obama(バラク・オバマ)氏の2008年と2012年の大統領選キャンペーンでの自身のボランティア経験(Politico記事)、特にソーシャルメディア対応を整理する活動の体験を参考にした」と話した。

「従来のメディアは私たちをサポートしておらず、あるいは社会の反応がどのようなものになるのか待っていて、初めから私たちはドラマを支えるためにテクノロジーの力に頼った」と同氏は話した。「Twitterの世界のおかげで2つめのシーズンに漕ぎ着け、そこから始まったと本当に思っています」。

「どういう理由で自身の資金をスタートアップに注ぐようになったのかについては、より深く関わりたかったから」と語った。

「私が関わるクリエイティブな関係のあらゆることへの関与となると、私は声を出さずに黙って座っていられない。たとえば、キャリアの早い時期にプロデューサーになるという方向に引き寄せられた」と話した。

同様にテックツールを使うことはエキサイティングだったが「さらに多くの株やインプット、クリエイティブな声、テクノロジーそのものに影響を与える能力をどうやったら持つことができるのか理解することは私にとって本当に刺激的だった」と同氏は語った。

ワシントン氏の最初の投資は女性向けのコワーキングスペースThe Wing(ザ・ウィング)だった(Hollywood Reporter記事)。「包括性とコミュニティ、本当にインクルーシブな方法でのアイデンティティの祝福、女性の声のサポート、おなざりにされていた声のサポートというアイデア」へのコミットメントの一環としてだった」と同氏は説明した。

The Wingは成功したが議論も呼んだ。ニューヨークタイムズ紙は「多くの従業員(特に有色人種の女性)が不平等に扱われたと感じた」との記事を掲載した。批判の結果、CEOのAudrey Gelman(オードリー・ゲルマン)氏が今夏社を去った。

論争への彼女自身の反応について質問されたとき、ワシントン氏は「投資家として、有色人種の女性として、私にとってもっと透明性と責任があることが重要だ」と答えた。同氏は、過去数カ月の投資家としての自身の役割は「この移行期におけるリーダーシップをサポートすること」だったと話し、透明性と責任を「心から望む」との意を示した。

他の投資には、セレブリティがテキストメッセージによるファンとの会話を管理できるCommunity(コミュニティ)がある(ワシントン氏はもしあなたが彼女にテキストしたら、本当に返事をするのは彼女自身だと約束した。ただ、彼女は「数え切れないほどの人」とテキストしているため、辛抱強く待ってほしいとお願いした)。また、消費者直結型の歯列矯正スタートアップのByte(バイト)にも出資していて、彼女自身もByteのサービスを使用していると話した。

夢のスタートアップについては、同氏はまだ発表していない消費者直結のファッションスタートアップへの投資があるとし「今のところそのスタートアップが夢のようだ」と語った。繰り返しになるが、こうした投資は全て個人的なものだ。ワシントン氏は今後ファンドを立ち上げたり、ベンチャーキャピタル会社に加わったりするだろうか?

「検討したことはあるが、現時点ではこれまでの投資とより密で、実際的な関係を持ちたい。もっと深く掘り下げることができ、また個人投資家としてより大きな価値をもたらすことができると考えている」と話した。

画像クレジット:Simpson Street

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(翻訳:Mizoguchi

 

家族と最適な介護者とを引き合わせるHomageのジリアン・ティーが「世界の高齢化にテクノロジーをどう生かすか」を語る

Homage(ホメッジ)の共同創業者であり最高責任者のGillian Tee(ジリアン・ティー)氏の話が聞けるのは、いつだってうれしい。なぜなら、高齢者や弱い立場の人たちをテクノロジーで支援する方法に関する彼女の見解には含蓄があるからだ。国連によれば、世界で最も急速に増加している年齢層は65歳以降の高齢者だという(国連レポート)。同時に、多くの国々で介護者不足が深刻化しいて、介護者の燃え尽き症候群による高い離職率が問題をさらに複雑にしている。

「これはまさに、最も重要な社会的テーマであり、全世界的な問題です」とティー氏はDisruptのセッションで語った。

4年前にシンガポールで創設されたHomageのプラットフォームは、マッチング・エンジンを使って家族と最適な介護者とを引き合わせる。同時に遠隔医療プラットフォームでは、オンライン診療やスクリーニング検査などのサービスを提供している。その後にマレーシアにも立ち上げられ、米国時間9月14日には日本の医療技術大手であるインフォコムによる新たな戦略的投資を発表した。この提携により、Homageのアジア太平洋地域での拡大が加速することになる。

Homageを創業する前、ティー氏はニューヨークでRocketrip(ロケットリップ)を共同創業している。Rocketripは、出張関連費用の削減を目的とした企業向けのチケット予約プラットフォームで、Google Ventures、Y Combinator、Bessemer Venturesといった投資会社を引きつけ、3000万ドル(約31億4000万円)以上を調達した。しかし2016年、およそ15年間の外国暮らしに終止符を打ち、ティー氏は故郷シンガポールに帰ることに決めた。「帰郷は母の近くにいるためであり、また、自身のスタートアップの経験を東南アジアでも生かせると考えたからだ」と彼女はDisruptセッションで話していた。

ティー氏は新しい会社を興したいと考えていたが、すぐに介護の世界に飛び込むことはしなかった。そのアイデアが実体化したのは、彼女に近い親類の何人かが慢性疾患の診断を受け、介護の必要性が生じてからのことだった。

「私たちは何をすればいいのかわからず、何が必要なのかを考える方法すら知りませんでした。そのとき私は『大変だ、たくさん勉強しなければ』と悟ったのです」。

高齢化の進行と社会動学の変化に伴い、世界中の多くの家族が同じ問題で奮闘している。伝統的に親類の面倒を見ることになっていた家族も、遠くに離れて暮らすようになったり、仕事で時間が取れなくなるなどの理由で世話が難しくなっている。

家族は、介護者の紹介を口コミや代行業者に頼ることが多いのだが、その手続きは複雑で、長い時間を要し、ときに感情に左右される難しさがある。Homageは、マッチング・アルゴリズムでそこを楽にする。このプラットフォームでもっともユニークな点はきめ細かな対応だ。画面で紹介されるのは、介護事業者の資格や提供できる介護の種類(たとえば長期ケア、ショートステイ、理学療法、リハビリなど)だけでなく、特別な技能も含まれる。たとえば、移動の支援を必要とする利用者も多いので、Homageでは安全に移動できる手段を評価してくれる。

そして同社のマッチング技術が利用者にとって最適な介護業者を見つけ出し、Homageのスタッフが契約手続きを最後まで代行する。このプロセスを合理化することにより、Homageはコストを削減し、より多くの人がサービスを利用できるようにする一方で、サービス提供者の報酬の比率の引き上げが可能になった。

賃金の引き上げは、Homageのもうひとつの目標への助力にもなる。それは、介護人員の拡大と、人材の維持だ。他にも、Homageのプラットフォームから介護人材を最適な働き口に送り出すという取り組みで、同社は介護者不足問題に対処しようとしている。継続的な教育プログラムを提供し、スケジュールが過密にならないよう調整もする。このプラットフォームには長期契約で登録している介護サービス提供者もいれば、週に数日だけHomageの利用者にサービスを提供する人もいる。

「エイジテック」への総合的なアプローチ

6月にHomageは遠隔医療サービスを開始(未訳記事)した。Homage Health(ホメッジ・ヘルス)というこのプラットフォームは、しばらく開発段階にあったのだが、新型コロナウイルスの大流行に開始を後押しされた。「ハイタッチ」つまり人間的な触れ合いを重視した対面の遠隔診療は、同社の介護事業の側面にも即している。なぜなら、多くの患者は定期的なスクリーニング検査や、医師や専門医による診察を必要としているからだ。移動が困難であったり免疫力が低下している患者も、これによって楽に定期的な診察を受けられるようになる。

「ウェアラブル・センサーなどのハードウェアは、救急治療が必要になる前に心臓病などの潜在的健康問題を特定するという点で有望だが、患者の日常生活に簡単にそれらを組み込ませる、あるいは装着を忘れさせない方法が課題だ」とティー氏は説明する。

全体としてHomageの使命は、介護を必要とする多くの人たちに対応する総合的プラットフォームの構築だ。戦略的投資を行ったインフォコムとの新しい提携関係により、それは前進することになるだろう。なぜなら、Homageが数年かけて協議してきたとティー氏が話すその企業は、高齢者住宅や病院を含むおよそ1万3000の日本の施設と協力関係にあるからだ。

インフォコムにも独自の介護サービス・プラットフォームがある。Homageとの提携で、双方の企業は手を結び、より多くの患者に対応できるようになる。「日本は、世界で有数の高齢者人口を抱える国だ。その需要に応えるために、日本では今後5年から10年以内に、少なくとも50万人の介護サービス提供者を動員しなければならなくなる」とティー氏は言う。

「私たちは、求められる種類の介護サービスを利用しやすくするインフラを作り始める必要があります。そうした使命においては、私たちはインフォコムとぴったり一致しています」とティー氏。「彼らにも、日本の介護サービス提供者に仕事を紹介するプラットフォームがありますが、Homageのモデルは審査も行うため、とくに適用性が高いと見てもらっています」。

画像クレジット:Homage

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(翻訳:金井哲夫)

穀物サイロ内を泳いで内部の状況を監視するロボを開発するCrover

Croverのロボットプラットフォームは、最もセクシーなものでも、最もエキサイティングなものでもない。 特に、宇宙旅行を視野に入れて人生をスタートしたスタートアップにとっては、そう見えるだろう。しかし、ロボット工学と自動化の本当の未来は、雇用者が人間の労働者を見つけるのが難しい、退屈で汚く危険な仕事にある。穀物サイロの監視は、少なくとも、最初の部分で大きな存在意義がある。

Disrupt 2020で米国時間9月17日に開催されたセッションです、スコットランドのエディンバラを拠点とするCroverが、そのロボットソリューションを発表した。このロボットはアメリカンフットボールのような形をした小型のロボットで、穀物サイロの中を泳ぐように設計されており、農家に環境条件をよりよく理解してもらうことができる。温度や湿度は穀物の貯蔵に大きな影響を与え、環境条件が悪ければ最悪の場合、穀物貯蔵の大部分を破壊してしまう可能性がある。

Croverロボットは、従来の静的な方法よりもはるかに完全で的を絞った穀物貯蔵の分析を提供するように設計されている。ロボットはサイロの中に住み、分析する際にはサイロの中に飛び込む。 そのすべての情報はダッシュボード上に送られ、農家に内部で何が起こっているかのより完全な画像を提供するのだ。

ロボットの将来のバージョンは、これらの問題のいくつかに対処できるように設計される予定だが、少なくとも今のところは、ロボットが環境問題を特定したときにサイロの所有者が環境問題に対処できるようになっている。

ロボットは、サービスとしてのハードウェアのサブスクリプションモデル、いわゆるRaasで提供され、農家はロボット1台あたり年間約3000ポンド(約40万8000円)のコストで運営できる。なお価格には、ハードウェアとソフトウェアソリューションが含まれている。穀物のサイロごとに1台のロボットを必要とするシステムにしては割高になるが、Croverによると、穀物の損失はグループに年間約2 万4000ポンド(約326万円)のコストがかかることが多いとのことだ。

Croverは、フルタイムの従業員が6名、パートタイムの従業員が1名と、まだ非常に小さなチームだが、2年後には成長を始める準備ができている。これまでのところ、同社の資金は主に助成金と自己資本(ブートストラップ)でまかなっている。それでも、現在、スコットランドを含む英国で2台のロボットを試験運用しており、スペインやイタリアを含むヨーロッパの他の地域からもかなりの関心が寄せられているそうだ。

同社は現在、来年5月の製品発売を目指している。

画像クレジット:Crover

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Rallyで大人数のビデオ通話をもっと楽しくリアルに、そして疲れを感じないものに

来る日も来る日もビデオ会議。ビデオハッピーアワーやビデオ誕生日パーティー。30人の顔が映るグリッドをまた目にする。すべては会話を同時に行うためのものだ。

新型コロナウイルスの感染蔓延の混乱の中で大人数対応のビデオチャットのプラットフォームが使えるのは素晴らしいが、いささか疲れる。画面に向かって会話するときの、あの奇妙な感じも原因だが、それは大したことではない。問題はビデオで集まるときの「流れ」が実際に会うときとは異なることだ。通常、現実世界のパーティーで人が集まるときは、30人が1つの大きなグループに詰め込まれたり、言葉を発した誰かの顔に注目が静かに集まることはない。小さなグループにわかれ、誰もがちょっとした会話をし、食べ物、バー、トイレなどに行く途中で聞こえるおしゃべりに寄っていくはずだ。

今週、TechCrunch Disrupt Startup Battlefieldに参戦しているRallyは、こうしたことを念頭に置いてビデオチャットプラットフォームを開発している。

画像クレジット:Rally

Rallyは「テーブル」を中心とするグループビデオ通話を開発している。大きな集まりがいくつかの小さな会議室に分かれる場面を想像してほしい。ただし、グループ同士の会話はわずかに聞こえる。別のテーブルであなたの好きな番組の最新のエピソードについて話が始まると、注意を引かれるくらいには聞こえるが気が散るほどではない。クリック1つで別のテーブルにジャンプし、最後にしていた会話にすぐに戻ることもできる。

テーブルは「部屋」の中にある。それぞれの部屋は一度に最大35人のユーザーを収容できる。大きなイベントでは複数の部屋を使用すれば、各部屋で異なるジャンルの音楽を演奏するライブイベントなどが可能になる。

全体的なアプローチとしてはプラットフォームを物理的な感覚に近いものにしようとしている。それも、誰もがすでに慣れ親しんでいるZoom(ズーム)やGoogle Meet(グーグルミート)の世界と変わらない容易さで。3Dの要素はなく、動かす方法を覚えなければならない仮想アニメーションのアバターもない。

他人の盗み聞きを防ぎたいだろうか。例えばあなたが仮想のパブで開かれているトリビアナイトに参加していて、他のチームに答えを聞かれたくないとしよう。「プライバシー・トグル」を使えば、自分のテーブルの会話を一時的に封鎖し、時間が来たらすぐに壁を取り払うことができる。周囲の声で気が散るなら、他のテーブルの音量を調整することもできる。

主催者はイベントの設定でトラブルメーカーを追い出すことができるだけでなく、参加者には使えないいくつかのボーナス機能が利用できる。主催者は単独でまたは選んだ参加者と一緒に「ステージ」に上がり、フルボリュームで全員にアナウンスを出すことができる。また、ランダムにテーブルをシャッフルして、イベント参加者が同じ仲間とずっと一緒にいるのを防ぐことができる。

Rallyの共同創業者であるAli Jiwani(アリ・ジワニ)氏は、当初の目的はもう少し具体的だったと語る。同社はライブのコメディイベントを主催するためのプラットフォームを開発していた。そうしたイベントの多くは群衆のエネルギーに依存している。ユーザーがプラットフォームを他の目的に使いたいと求めてきたため、同社はより広い使用目的のために調整を加えた。プラットフォーム上でライブコメディを主催することはいまだに歓迎されてはいるが、今は主目的ではない。

Rallyはダウンロードせずにブラウザーで操作できる。今ここで「ブラウザー」とはほぼChromeを意味している。ほかのブラウザでも機能するかもしれないが、Rallyは今のところChromeを使用することを強く勧めている。

画像クレジット:Rally

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(翻訳:Mizoguchi

自分の過去の会話を検索するLuther.AI、Google検索とは異なるアプローチ

ポップカルチャーとか企業の役員、歴史に関する質問などになると、それらの知識が全部自分の記憶にあって思い出せるということはないので、多くの場合Google検索に頼る。でもGoogle検索は、あなたのクライアントの配偶者の名前や、先日の会議の席でひらめいたすごいアイデアを思い出してはくれない。

そこで登場するのが、あなたの記憶のためのGoogle検索を自称するLuther.AIだ。このツールは音声を録音して書き起こし、AIを利用してあなたの仮想メモリーバンクにある情報を、ネットで会話をしたり検索をしているときに取り出してくれる。

同社はそのプロダクトのブラウザーを使用するバージョンを今週のTechCrunch Disruptでリリースし、TechCrunch Disrupt Battlefieldの優勝賞金10万ドル(約1060万円)を狙っている。

Luther.AIの創業者によると同社は、人間の記憶は不完全で、その弱さが個人の知能を制約している、という前提で創業された。Luther.AIが考えたのは、人間の脳の記憶力や記憶の想起力を強化するツールだ。難しい注文だが、同社の創業者は人工知能の今後の進歩とそのほかの技術でそれが可能だと信じている。

創業者でCEOのSuman Kanuganti(スマン・カヌガンティ)氏は「このプロダクトは、神経科学と自然言語処理とブロックチェーンの一体化により可能になりました。それにより、シームレスで瞬間的な記憶想起を提供する。GPT-3(OpenAIが作成した第3世代言語予測モデル)は、公開されているインターネットの記憶の上に構築されていますが、Lutherはあなたのプライベートな自己の記憶により構築されます」と説明する。

それにはまず、あなたのその日1日中の対話を録音する。ブラウザーを使って行われているオンラインのミーティングは、中でも対話の量が最も多いだろう。同社の今後の展望としては、ユーザーが高品質な5Gの録音デバイスを職場でも身につけ、対話を録音できるようにすることだ。

プライバシーが心配な人のためには、ハイエンドな暗号化などの安全措置が提供されている。また他人の発言は、当人からはっきり許可を得た場合しか保存できない。カヌガンティ氏は「我々の技術では、ユーザーが自分が喋っていることのオーナーになります。そこで例えば、あなたと私が物理的世界で会話をしていても、その会話のあなたの記憶を、特別の許可がないかぎり私が共有することはできません」と説明する。

また、各人が自分自身のデータをLutherに持ち、ほかの誰もがLutherやほかの個人からその会話にアクセスすることはできない。このようなオーナーシップ、所有権の強制の管理には、今後ブロックチェーンを使うつもりだが、同氏氏によればその実装は今後のバージョンになるという。

画像クレジット: Luther.ai

カヌガンティ氏によると「このプロダクトの真価は、会社内で少数の個人が使っている場合には発揮されないかもしれませんが、ネットワーク効果で何十人何百人の人が使うようになるとよくわかるはずです。しかし今後は、個人が一人で使っても記憶の想起を助けることのできるユーティリティを提供していきます」とのことだ。

同社は今週、ブラウザーを使用するプロダクトをリリースするが「最終的にはスタンドアロンのアプリを作り、またAPIも公開してほかのアプリケーションがLutherの機能を組み込めるようにしたい」と語る。

同社は今年の初めにカヌガンティ氏と3人の共同創業者によって設立した。3人とは、CTOのSharon Zhang(シャロン・チャン)氏、デザイン部長のKristie Kaiser(クリスティ・カイザー)氏、そしてサイエンティストのMarc Ettlinger(マーク・エトリンガー)氏だ。これまでに調達した資金は50万ドル(約5200万円9、社員は創業者を含めて14名だ。

画像クレジット:Jan Hakan Dahlstrom / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

まったく新しい手法で新薬開発を進めるInsitro、「デジタル生物学は素晴らしい分野」と創業者が力説

「生物学とコンピューティングが交わるところでの研究開発は、テクノロジストにとっていま最もエキサイティングな領域かもしれません」。

Insitro(インシトロ)の創業者兼CEOのDaphne Koller(ダフニー・コラー)氏はそう語る。このバイオテック企業は、立ち上げからわずか2年で2億4300万ドル(約254億円)余りの資金を調達した。

TechCrunch取材のバーチャルカンファレンスであるDisrupt 2020で講演したコラー氏は連続起業家でもあり、以前は教育系スタートアップのCoursera(コーセラ)を共同創業し、Alphabetの子会社で健康と長寿にフォーカスしたCalico(カリコ)のチーフ・コンピューティング・オフィサー(CCO)を短期間務め、「現在ではデジタル生物学が次の大きな技術革新だ」同氏は見ている。

インタビューでコラー氏は「今現在デジタル生物学は最高に素晴らしい分野だ」と述べた。確かにそれは、同氏にとってまたとない好機だ。現在の同氏の仕事は、神経疾患が疑われる症状の治療法の開発や、Gilead Pharmaceuticals(ギリアド製薬)と共同で進めている肝炎関連の短期的な研究開発事業など多岐にわたっている。

コラー氏の企業のInsitroという名前は、生物学の研究における2つの相異なる方法を組み合わせている。1つは「in vitro」で、これは試験管の中でという意味だ。生体の上ではなく生きた標本を研究室の中で実験観察し研究する。そしてもう1つの「silico」はシリコンに由来し、文字どおりコンピューターの上で実験やシミュレーションなど実行する。

Insitroは、この2つの研究手法を組み合わせて、新薬発見の方法を根本的に変え、大量のデータをふるいにかけることによって、一定の条件の現れの中にパターンを探す。パターンが認められたら、その現れに結びついている経路や機構を調べ、治療のターゲットを判定する。そして、病状の進行を逆転または停止するために使える新しい分子の開発を追究し、病状の進行に結びついている生物学的な機構の停止を目指す。

コラー氏は「弊社には人間の疾患と関係のある大量のデータがあります。機械学習は、データの意味を理解するための多くのツールを私たちに与えました」と語る。

同社は、それらの条件の現れを変えるかもしれない新たな患者集団や新たなインターベンション(カテーテルを血管に挿入して行う治療法の総称)、新たな薬を同定できる。「私たちは機械学習の利用という非常に長い旅の最初の段階にいると自覚しています」とコラー氏。

ギリアドと共同で進めている肝炎に関する研究では、コラー氏のチームがギリアドの試験から小さくて高品質なデータ集合を取得し、患者データの時系列を見ながら病気の進行を分析する。進行を見ることによって同社は、組織の損傷を起こす繊維症の進行の直接の原因を突き止める。そして同社はそれらのターゲットを始点として、疾患の進行を遅らせるための因子を見つける。

「同社が研究しているのは、コンピューターを使って生物学と、シャーレの中でその生物学を形にするバイオテクノロジーと、そのさまざまな形から違いを作り出すインターベンションを理解することなのです」と同氏。

コラー氏は「いま私たちが進めようとしていることは、これまでの製薬企業のやり方とまったく違いますし、似てもいないものです。弊社は何十万もの人たちが働いているこれらの企業の軌道を変え、その文化をいま真の挑戦になりつつあるテクノロジーの文化に変えようとしているのです」と説明する。

同氏が大手製薬企業に入らずに自分の企業を立ち上げたのもこの目的のためであり、それは革新者のジレンマの古典的な例でもある。そして、Insitroのようなテクノロジーの破壊的パワーは、Disruptカンファレンスの命名者であるClayton Christensen(クレイトン・クリステンセン)氏の理論でもある。

「革新者のジレンマとともに重要なのは、これまでとはまったく違ったやり方でやるという心構えです。新薬発見はますます高コストで、失敗の多い事業になりつつあるので、まったく違うやり方のほうがよい結果が得られる可能性があります」とコラー氏は締めくくった。

画像クレジット:Insitro

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

スマホやタブレットの画面を使わないスマート玩具Kiriは子供の言語学習などにも効果的

自宅待機が始まって6カ月、そして今はカリフォルニアの山火事の煙から逃れる数週間を経て、エネルギーのはけ口を奪われたチビちゃんたちと過ごす私だが、子供のスクリーンタイムを増やすよう推奨して人々に嫌な思いをさせるようなことだけはしたくない。

しかし、画面を使わずに子供たちに教育と娯楽を提供してくれる玩具を作ろうという企業があれば、少なくとも私は注目する。

それがKiriの根底にあるコンセプトだ。同社今週、初めて完全バーチャルでの開催となるTechCrunch Disrupt Startup Battlefield(スタートアップバトルフィールド)コンテストへの出場を予定している。同社は昔ながらの木製の積み木に捻りを加え、スマートな機能を内蔵することで、子供たちが物の形、動物、数などを複数の言語で学べるようにした。しかも画面は使わない。

Kiriは、拡張可能なRFID対応タイルを使って遊ぶように作られている。それぞれのタイルには、動物や食べ物が描かれている。積み木(ブロック)でタイルに触れると、内蔵スピーカーから触れた相手に関する説明が流れる。

画像クレジット:Often Studio

「モード」カードを使うとクイズゲームに切り替えることができ、子供が所有しているタイルの中からひとつを探すようKiriに促される。または、英語、標準中国語、スペイン語の切り替えも瞬時だ。

Kiriのブロックは、あえてシンプルに作られている。1辺が2インチ(約2.54cm)の、滑らかに仕上げられた木の立方体だ。外から見えるのは、内蔵スピーカーの音を出すための小さな穴、充電用のポート、半透明で色が変わるKiriのロゴのみ。青いタイルに触れるとロゴは青くなり、クイズに正解すると緑色になる。

子供が覚えた言葉を確認したいときは、コンパニオンアプリで学習効果を見ることができる。ここではもちろん、新しいカードも注文できる。

Kiriは、2019年末にKickstarterキャンペーンに成功し、世界に向けて最初の一歩を踏み出した。最初の製品を今年の4月に出荷する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で物事がすっかり止まってしまった。KiriのNick Porifilio(ニック・ポーフィリオ)氏は、クリスマスシーズンには出荷を間に合わせる予定で再始動したと私に話してくれた。

99ドル(約1万400円)のスターターキットには、ブロック、トートバッグ、タイル数枚が入っていて、すぐに遊べるようになっている。同社は、今後時間をかけてタイルの種類や学習カテゴリーを増やしていくつもりだ。月額8ドル(約840円)でサブスクリプションに加入すれば、子供たちが興味を持っている限り、常に最新の状態に保つことができる。

ポーフィリオ氏は、ゆくゆくはタイルを超えた展開も視野に入れていると話していた。Kiriを内蔵した本や楽器などだ。しかし今のところ彼らは、予約注文してくれた人たちの手にブロックを届けることに専念している。

画像クレジット:Often Studio
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(翻訳:金井哲夫)

Alexaのウェイクワードにサミュエル・ジャクソンが加わる、荒っぽい言葉も使うが野球結果をサミュエルが教えてくれる

ついさっきAlexa(アレクサ)が米国時間9月15日の野球の結果を読み上げてくれた。これが素晴らしい理由は2つある。1つは、ダブルヘッダーの第2試合でオークランド・アスレチックスがシアトル・マリナーズを9対0でシャットアウトしたこと。もう1つは、それをSamuel L. Jackson(サミュエル・ジャクソン)の声で話したことだ。Amazon(アマゾン)の本拠地はシアトルなので、本稿では後者の事実に注目する方が会社は喜ぶだろう。

Alexaの責任者であるToni Reid(トニ・リード)氏とRohit Pradad(ロヒト・プラダード)氏は米国時間9月16日のDisrupt 2020の壇上で、このスマートアシスタントの歴史や最大の障壁、そして未来について語った。さらに二人はこの場を利用して、史上最高の興行収入を上げた俳優が、自分の声をウェイクワードにしたことを公表した。サミュエル・ジャクソンのセレブボイススキルをインストールすると、Alexaユーザーは「パルプ・フィクション」のスターをデフォルトの音声にすることができ、「Hey Samuel」(ヘイ・サミュエル)がウェイクワードになる。

私は今週Echo Showでこのスキルを使っているが、なかなか楽しい。ただし、決してファミリー向けとはいえない。本物のサミュエル・ジャクソン同様、普通のAlexaよりも汚い言葉をかなりよく使うのでインストールには注意が必要だ。ほとんどのコマンドは標準のAlexaのセリフをジャクソンの声にしただけだが、映画「スネーク・フライト」で機内の爬虫類について質問したりすると、ちょっとしたお宝話が聞ける。彼は自身の最近の作品についてはあまり詳しくないようだ。

Alexaへのサミュエル・ジャクソン氏のボイススキルの追加は、Google(グーグル)がJohn Legend(ジョン・レジェンド)氏とIssa Rae(イッサ・レイ)氏をセレブボイスに採用したのに続くものだ。両社とも、ちょっとしたスターの力がバーチャルアシスタントにユーザーを引きつけておく大きな力になると信じている。中でもジャクソン氏は、知名度においても目新しさにおいても最高の選択だと私は思う。この人を超える名前をあまり思いつかない(オバマ?オプラ?ピーウィー・ハーマン?)。

アマゾンが伝えたかった話の1つは、第二のウェイクワードを設定するのがどれほど難しいかということだった。サミュエル・ジャクソンのスキルは以前にもあったが、ユーザーは 「Hey Alexa, ask Samuel」などと言わなくてはならなかった。スマートアシスタントの伝言ゲームのようなものだ。正直なところこれでは新規性がたちまち薄れる。

「Alexaのウェイクワードは毎週何十億回もやり取りされる」とAlexaの機械学習担当シニアマネージャーであるShiv Vitaladevuni(シヴ・ビタラデヴニ)氏が投稿に書いた。「しかし、ウェイクワード 『Hey, Samuel』の学習データはほとんどない。『Hey, Samuel』とAlexaという複数のウェイクワードモデルを作るためには、過去の学習を利用するだけでなく、新しい学習方法とデータモデリング技術を開発しなくてはならなかった」と語っている。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

TouchWoodは多目的で目立たないインターフェイスを机やテーブルや壁の中に組み入れる

近ごろでは何をするにも対応アプリがあり、それが1日中、音を鳴らしたり光ったりして必死に私たちの気を引こうとする。そんな絶え間ない呼び込みの消耗戦を鎮めたいと考えたTouchWood(タッチウッド)は、静かでシンプルなインターフェイスを、デスクや壁などの自然な素材の中に組み入れる。

共同創設者のMatthew Dworman(マシュー・ドワマン)氏とGaurav Asthana(ゴーラブ・アシュタナ)氏は、家庭や職場をスマートにするということは、物を増やすことだと普通は考えがちな風潮にうんざりしていた。デスクの上にはスマートスピーカー、四六時中歩数を知らせ続けるスマートウォッチ、朝の支度に広告を滑り込ませてくるスマート冷蔵庫など。それだけではない。こうしたデバイスやアプリは、いつだって人の気を散らせるため、やろうとしていることが邪魔される。それが仕事であっても、仕事をしないと決めることであっても、お構いなしだ。

画像クレジット:TouchWood

彼らは「指輪物語」に登場する魔法の剣「つらぬき丸」のようなものが欲しかった(と私に話してくれた)。99%の時間はただの剣なのだが、必要なときにはオークの存在を知らせてくれる。しかしそのときも、ただ光るだけだ。なぜデジタルの世界には、このように必要なときにだけ顔を出すという考えがないのか。それもできる限り控えめな形で。

高級家具デザインの職歴を持つドワマン氏は、アシュタナ氏と共に、アシュタナ氏が言う「アプリではなく木の板」を通じてテクノロジーを使うというアイデアを実現させた。

「私たちが作り上げたのは、高輝度LEDと静電容量タッチセンシングを使ったモジュラー式のテクノロジー・プラットフォームです。これにより、基本的に不透明な資材にディスプレイを埋め込めるようになりました」とドワマン氏は説明する。「壁、カウンタートップ、デスク、家庭でもオフィスでも小売店でも乗り物でも、情報表示と完全に目に見えない操作系のさまざまな提供方法を、私たちは追求してます」

ディスプレイがオフのときは、その表面はまったく普通の板にしか見えない。CESで天然素材を使った独自開発のディスプレイを展示していたMui Labs(ムイ・ラブズ)は、特殊な木の穴あき板を使っているため、コーヒーをこぼさないよう注意しなければならない。TouchWoodのディスプレイは、見たままの素材そのものだ。つまり木であったり、その他のごく普通の表面材だ。

TouchWoodのディスプレイを使っているところ(横筋はカメラのフレームレートによるノイズ)

これはサブのディスプレイというわけではない。デスクトップパソコンやノートパソコンやスマートフォン、それにスピーカー、腕時計、コーヒーメーカー、ロボット犬などなど、そうしたものから雪崩のように溢れ出す情報を、身近な形で見せてくれるものだ。

「表面にコンピューターを置かないように努めました。既存のデバイスのための、よりより接点を提供し、コンピューターにまとわりつく情報の圧力を軽減することで、その能力を向上させようと考えました」とアシュタナ氏。

TouchWoodの構造。上から、天然素材、独自の結合剤、静電容量センサー、ポリマー、高輝度LED、構造層(画像クレジット:TouchWood)

みなさんも、私と同様、ブラウザーのタブや画面の下に並ぶアプリにしょっちゅう目をやって、新着メールやSlackのメッセージやカレンダーの予定などに更新がないか確認しているのではないだろうか。TouchWoodでは、そうした通知は別の形で示される。たとえば、コーヒーやマウスを置いた場所に光る輪が表示される。そこに触れると要約や内容を見ることができ、スワイプで消すこともできる。タブを切り替えたり、別のアプリに移動したり、スマホのロックを解除するといった手間は一切ない。用事が済めば、普通の木の机に戻る。

ドワマン氏は、自然な移行を期待している。「私たちが知っているタッチスクリーンは、登場してからほんの10年か11年程度しか経っていません。しかし、あまりにも広く普及しているため、当たり前のものになっています」と彼は話す。「SF映画を見ると、500年後の未来でもまだタッチスクリーンが使われてるじゃないですか! そんな馬鹿な。自動車の歴史に置き換えるなら、今のiPhoneはT型フォードみたいなものです」

TouchWoodは、いずれはプラットフォームになることを目指しているが、その前に製品を立ち上げる必要がある。同社では、大型の表示部分を2つ備えた高級なデスク(座って使うタイプと立って使うタイプ)を来年中に、2000ドル(約21万円)代で発売する予定だ。たしかに高い。でも、新しい家具、なかでもにわかに重要性を増してきたホームオフィスの中心となる重要なアイテムに人々が喜んで費やしている金額を見ると、きっとみなさんも驚くはずだ。

旗艦製品でそのコンセプトを表に出した後は、彼らはそのニッチな方向へスタートを切り、パートナーたちと手を結べるようになる。見えないディスプレイをカウンタートップや壁や、もちろんレストランのテーブルなどに埋め込むというアイデアは、あらゆる使用事例を導き出す。そこには、TouchWoodの、画面(少なくとも目に見える画面)の数がわずかに少ない未来に通じる期待がある。

画像クレジット:TouchWood

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(翻訳:金井哲夫)

DropboxのCEOドリュー・ハウストン氏は「パンデミックが仕事とは何かを再考させてくれた」と語る

米国時間9月15日、Dropbox(ドロップボックス)のCEO、Drew Houston(ドリュー・ハウストン)氏はTechCrunch Disruptに登壇し、ずっと前から議論されてきた分散型ワークへの移行が新型コロナウイルスによって加速され、この新しい仕事のやり方はパンデミックが終わっても消えてなくならないだろうと語った。

「分散型ワークへの移行による影響を大きな視点で考えると、話は、いつオフィスに戻るかという問題をはるかに超えたものになります。私たちは、逆戻りできないドアを通り抜けたのです。おそらくこれは、1959年にその言葉が誕生して以来、『頭脳労働』界に起きた最大級の変化と言えます」と、ハウストン氏はTechCrunch編集長Matthew Panzarino(マシュー・パンザリノ)に話した。

そうした変化が、この6カ月間、人々の仕事のやり方が劇的に変わっていく様子を注視してきたDropboxに、製品の完全な再考を促した。Dropboxはクラウドサービスではあるが、彼の視野に入るSaaSツールには、今の新しい仕事の仕方に沿って作られたものはひとつもない。この新たな流れの中では、仕事とは何かを改めて考える必要があると彼は言う。

「3月、私たちはこのことを、そして(分散ワークへの急速な移行が)どのように引き起こされたのかを考え始めました。それは、まったく計画外のことでした。計画できたとしたら、どうだったか?この出来事が本当に良い方向に進むよう計画することは可能か?そうして私たちは、3月にすべての製品のロードマップを、分散型ワーク中心で見直したのです」と彼は話した。

また彼は、その見直しの成果がもうすぐ現れると、大まかな示唆を与えてくれた。「将来発表するものについて、もっとたくさんお話することがあります」と彼は述べていた。

ハウストン氏は、自分の会社は自宅勤務によく対応できていたはずだが、実際にオフィスが閉鎖されることになると、パンデミックの渦中に会社を維持しなければならない他のCEOたちと同じ境遇に陥ったという。どうすればよいのか、誰も設計図を持っていなかった。

「それが始まった当初、世界的なパンデミックの中で会社を運営するための脚本は存在しなかったため、まずは顧客対応、従業員の援助を確実に行えるようにしなければなりませんでした。人生がひっくり返ってしまった人たちがあまりにも多いのです。しかもその状況も非常に多岐にわたる」と彼は話す。

しかし、彼が顧客の様子を伺ってみると、顧客たちから新しいワークフローと新しい仕事のやり方を求められた。そこで彼は、これを需要に応えるツールを生み出す好機と捉えた。

「この転換は、人の想像を超えた突然にして劇的にして予期しないものでした。それを形作ることができる、意図的に作り出せるというのは、大変な幸運です」とハウストン氏。

ハウストン氏は、2008年、TechCrunch Disruptの前身でTechCrunch 50と呼ばれていたカンファレンスでDropboxをデビューさせた。デモの最中にWi-Fiが切断され、ライブデモの危うさを露呈したことに触れていたが、今週開催されるTechCrunch Disrupt Battlefieldの参加者に励ましの言葉を贈っていた。

彼の会社は18億ドル(約1900億円)のランレートを誇る上場企業だが、スタートアップのあらゆるステージを体験し、資金を集め、株式公開を行い、今では成熟した公開会社となった。しかしDropboxは、市場の求めの変化に対応しようと、今でも進化と変化を続けている。

カテゴリー:ネットサービス

タグ:Dropbox リモートワーク / テレワーク Disrupt 2020

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(翻訳:金井哲夫)

自動車、通信業界などが大きな関心を寄せるエッジAIの効率を高めるLatent AIの技術

SRI International(SRIインターナショナル)からスピンアウトしたスタートアップのLatent AI(レイテントAI)は、必要に応じてワークロードを動的に管理することで、エッジ(システム末端)でのAIワークロードの実行を容易にする。

Latent AIは、独自の圧縮技術およびコンパイルプロセスを使用して、ライブラリファイルを10分の1に圧縮し、他のシステムに比べて5分の1の待ち時間(レイテンシ)で実行させることが可能だという。同社は米国時間9月15日開催のTechCrunch Disrupt Battlefieldコンテストに出場しお披露目する。

CEOのJags Kandasamy(ジャグス・カンダサミー)氏とCTOのSek Chai(セク・チャイ)氏が設立した同社は、Future VenturesのSteve Jurvetson(スティーブ・ジャーベットソン)氏が率いてAutotech Venturesも参加した以前のシードラウンドで、すでに650万ドル(約6億9000万円)を調達している。

カンダサミー氏は、Latent AIを起業する前に、起業していたスタートアップのOtoSenseをAnalog Devicesに売却している(その前にはHPE Mid-Market Securityビジネスのマネージャーを務めていた)。OtoSenseは、音ならびに振動センサーからのデータを使って、保守ユースケースの予測を行うものだった。売却前には、デルタ航空やエアバスなどと提携していた。

画像クレジット:Latent AI

Latent AIはこの仕事の内容の一部を利用しており、それをSRI Internationalの特許と組み合わせている。

「OtoSenseでも、すでにある程度のエッジワークを行っていました」とカンダサミー氏はいう。「そのときは、音声認識部分をクラウドの外へと移動させていたのです。学習はクラウドで行いましたが、認識はエッジデバイスで行われていたため、学習結果をすばやく変換してダウンロードする必要がありました。最初の数カ月はそのように行っていましたが、データが長すぎるためLTEまたは3Gでストリーミングすることはできませんでした」。

一方、チャイ氏はSRIで飛行物体の電力を最適に管理する方法を研究するプロジェクトに取り組んでいた。そのシステムは1つの電力供給源から、飛行そのものに電力を供給するか、搭載コンピューティングワークロードを実行するかのリソース配分をインテリジェントに割り当てることが可能で、監視を行いながら必要に応じてそれらを切り替える。ほとんどの場合、監視のユースケースでは何も起こらない。そしてそれが事実であるために、観察されるすべてのフレームを計算する必要はない。

「私たちはそうしたやり方を採用し、ツールとプラットフォームとしてまとめて、音声からビジョン、断片的なもの、時系列なものまで、あらゆる種類のユースケースに適用できるようにしました」とカンダサミー氏は説明する。

ここで注目すべき重要なことは、同社がLatent AI Efficient Inference Platform(Latent AI推論プラットフォーム、LEIP)と呼ぶさまざまなコンポーネントを、スタンドアロンモジュールまたは完全に統合されたシステムとして提供していることだ。圧縮機能とコンパイラーはこうしたものの最初の2つであり、同社が今回発表するのはLEIP Adaptと呼ばれる。これは、カンダサミー氏が先に述べたような動的AIワークロードを管理するシステムの一部である。

画像クレジット:Latent AI

LEIP Adaptの実用的なユースケースは、例えばバッテリー式のスマートドアベルが、何かが発生するのを待ちながら、低電力モードで長時間動作できるようにする場合だ。そして、誰かがドアの前にやってくると、カメラが起動して画像認識のためのより大きなモデルを実行する(おそらく電源に接続されているドアベルのベースステーション上でも実行されるだろう)。そして、もし複数の人間が一度に到着した場合には(現在はそうなっていないが、おそらく来年、パンデミックが落ち着いたころには)、システムは必要に応じてワークロードをクラウドに委託することができる。

カンダサミー氏は、このテクノロジーへの関心は「非常に大きい」と語っている。彼の以前の経験とSRI Internationalのネットワークを考えれば、Latent AIが自動車業界の大きな関心を集めているのは当然のことだが、カンダサミー氏はまた、同社がカメラや補聴器メーカーなどの消費者企業と協力していることも指摘した。

さらに同社は、AI協調プラットフォームの一部としてLatent AIを検討している大手通信会社と協業しており、とあるCDNプロバイダーがJavaScriptバックエンド上でAIワークロードを実行することに協力している。

関連記事:The sound of impending failure(未訳記事)

カテゴリー:人工知能・AI

タグ:Latent AI SRI International Disrupt 2020

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(翻訳:sako)

インドの教育系スタートアップByju’sのCEOが将来の買収、新型コロナ影響、海外展開について語る

インドが3月下旬に全土でロックダウンを実施して学校や他の公共スペースを閉鎖して以来、バンガロール拠点のスタートアップByju’s(バイジュース)は世界で2番目に大きなインターネットマーケットであるインドの生徒にとってなくてはならないプラットフォームの1つになった。

Byju’sが生徒4000万人を集めるまでに4年半かかり、ロックダウン以降、Byju’sのユーザーベースは6500万人に膨らんだ。共同創業者でCEOのByju Raveendran(バイジュー・レヴィーンドラン)氏が9月15日、Disrupt 2020カンファレンスで語った。

生徒はByju’sの教え方にひかれる、と話す。自身も教師だったレヴィーンドラン氏は、複雑な数学の問題を教えるのにピザといった現実世界にあるものを使う直感的な方法を考え出した。

同氏のスタートアップの評価額は先週時点で110億ドル(約1兆1600億円)近くで(これによりByju’sはインドで2番目に価値の大きなスタートアップになった)、いくつかの海外マーケットでもサービスを展開している。2019年後半にByju’sは黒字化を達成したことを発表した(未訳記事)。この3つの特徴のうち1つでも持っているインドのスタートアップはそう多くなく、ましてや3つすべてとなるとなおさらだ。

内容が多岐に渡るDisrupt 2020でのインタビューの中で、レヴィーンドラン氏はByju’sのこれまでの道のり(Byju’sは教室や講堂、スタジアムで生徒に教えるオフラインのプラットフォームとして始まった)、海外マーケットでの事業拡大計画、M&Aの機会についての考え、新型コロナウイルスパンデミックがいかに事業やインドの教育分野に影響を及ぼしているかなどについて語った。

「残念ながら、多くの人にとってパンデミックがデジタル学習を試すきっかけになった。保護者は今、オンラインセグメントをこれまでにも増して受け入れている。この部門は明らかに分岐点にある」とレヴィーンドラン氏は話した。

生徒がオンライン学習をより利用しやすいようにするために、Byju’sはパンデミック中、提供するサービスをすべて無料にした。しかし同プラットフォームの有料購読者は今や400万人超となり、着実に成長していると同氏は述べた。

同社は2020年、インドマーケットでの売上高が10億ドル(約1055億円)を超え、純利益は1億5000万〜1億8000万ドル(約158億〜190億円)を予想している。

「相対的に成功といえる。ターゲットオーディエンスとして念頭に置いているのは浸透率で、この分野での我々の浸透率は4%以下だ。学校に通う子供の3分の1以上がスマートフォンを持っていない。この事実に対応するために、やらなければいけないことはたくさんある」と話した。

パンデミックによってインドで引き起こされた別の現象は、エドテックスタートアップ業界における統合だ。Byju’sは生徒にコーディング技術を教える創業18カ月のスタートアップWhiteHat Jr.を3億ドル(約316億円)で買収した(未訳記事)。

Byju’sが他にもいくつかの企業と話し合いを進めていることについては、TechCrunchはすでにレポートした。ここにはインド企業のDoubtnutが含まれる(未訳記事)。同社のアプリでは生徒が数学の問題の写真を撮り、その解き方をステップバイステップで提供する。

M&Aに関してByju’sが語ったことは次の通りだ。「この部門の長期的なポテンシャルはかつてなく高まっている。当社は既存のユーザーベースあるいは新しいマーケットで獲得し得る新規の顧客に強固なプロダクトの構成要素を加えることができる企業を探している。または、新たなマーケット、特に英語が使用されているマーケットにおいてすぐさま事業を展開できるようディストリビューションで貢献してくれる企業が欲しい」。

「今後数社の買収を発表する。数社について真剣に検討している」とも付け加えた。レヴィーンドラン氏は「最も株に価値を置いている」ため、今後の買収はまたも全額現金払いとなる見込みだ。

IPO、資金調達、そして海外展開

Byju’sは少なくとも今後2年は上場を考えていない、とレヴィーンドラン氏は話した。「当社は強固なビジネス基盤を持っている。高成長と持続可能な成長の正しいバランスを見つけることができ、かなりの短期間で非常に収益性の高いモデルを構築した。しかし上場について真剣に考えていない」と述べた。

Byju’sに出資している投資家もまた急いでいないようだ。「一部の初期投資家にエグジットを与えるために上場する必要はない。というのも、事業そのものが十分な現金を生み出すからだ。投資家の大半が過去のラウンドで投資した額の金をすでに手にした」と同氏は語った。

Byju’sは今年、7億ドル(約740億円)超を調達した。レヴィーンドラン氏になぜ資金を調達するのか尋ねた。「調達した主な資本の使い方という点において、当社はかなり資本効率がいい。最初の5年間で主要資本のうち3億5000万ドル(約370億円)に満たない額を使った。これは当社がいかに効率的にモデルを展開してきたかを示している」と述べた。

「最近の資金調達の大半は、完全現金払いの買収のような無機的成長の費用を賄っている。当社はこれを強固なビジネスモデルの追加に使っている。当社は必要だからと資金を調達したことはない。常に適切なパートナーを加えるためだ。直近では、長期的で忍耐強い投資家を追加した」と同氏は話した。Byju’sは現在少なくとも投資会社2社と話し合いを進めていて一連の資金調達の動きはまだ終わっていないようだ。

海外事業の拡大については、レヴィーンドラン氏はいくつかの英語圏マーケットの子供を対象にしたデジタル学習アプリを立ち上げる計画だと述べた。オーストラリアやニュージーランドを含む複数のマーケットの顧客向けにWhiteHat Jr.が数学を提供するとのことだ。

またTechCrunchは、インドにおけるまだ黒字化を達成していない他のスタートアップ大企業についてどのように考えているか、インドのエドテック分野に新規参入の余地はあるか、などについても話を聞いた。完全インタビューは以下のビデオで閲覧できる。

関連記事:インドのオンライン学習大手Byjuが約530億円を調達、アプリ登録者6400万人超、有料購読者420万人超

カテゴリー:EdTech

タグ:Byju’s インド Disrupt 2020

画像クレジット:MANJUNATH KIRAN / AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

The Black Listのフランクリン・レナード氏、「なぜ勝者を選ぶことが敗者を作ることを意味しないのか?」

テクノロジーとハリウッドが交わることはあまりないが、フランクリン・レナードの考え方に従えば、そうすべきなのかもしれない。

レナードは、今年最も過小評価された脚本を集めたコレクション「The Black List(ブラックリスト)」の制作者として最もよく知られている。2005年にサイドプロジェクトとして始まったこの作品は、今では本格的なヒット作となっている。過去13回の作品賞受賞者のうち、4回がこのリストからの受賞となっている。全体では、『ブラックリスト』の54作品がアカデミー賞を受賞し、300作品以上がノミネートされている。そして、興行収入の数字によると、リストからの映画は、あまりにも多くの収入を得ることができる。

TechCrunch Disrupt 2020のバーチャルステージでの会話の中で、レナードは、彼の取り組みの背後にある哲学と、なぜクリエイターの仕事を高めることがゼロサムゲームではないのかについて、さらに詳しく語ってくれた。

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ハリウッドもベンチャーキャピタルも、見落とされていた人材を見つけることが、食物連鎖の下層の人々だけでなく、すべての人に利益をもたらすという事実の発覚には鈍感だ。

“干し草の山がいっぱいの大地に出て、彼らを使って何かできることはないかと針を見つけることは、業界の利益になります」とレナードは言う。

「これは問題解決のためのものです。最初の問題は、業界の中で良いものをどうやって見極めるかということでした。第二の問題は、どうやって世界規模で良い脚本家と良い作家を見極めるかということでした」とレナードは加えた。

レナードの見解では、これらの質問に対する答えを見つけるためには、門番の役割を引き受けることは意味がない。ブラックリストは、発見されていない脚本を特定して壁を作って利益を得るのではない。その代わりに、すでに存在する優れた作品を増幅し、クリエイターが業界のリソースを提供する側とつながることを支援しているのだ。

「私が最も誇りに思っていることは、良い作品の良いニュースを共有する機会を作家に求めないエコシステムを作ることができたことだと思います」とレナードは言う。

「私たちは彼らのポケットに手を突っ込んでいるわけではなく、私たちへのアクセスを民主化しているわけでもありません。映画を作るかもしれない人、良い作家を見つけることに興味を持っている人へのアクセスを民主化しているのですが、もしあなたが彼らとの関係を持ちたくないのであれば、彼らと一緒に仕事をする機会を得ることができる」。

「それは私たちの倫理観の基本的な性質であり、実際には私のための倫理的なアプローチでもありますが、ビジネス的なアプローチでもあります」。

この視点は倫理的にも筋の通った考えだが、市場の観点からもそうだ。レナードは、ブラックリストを、既存のシステムが失敗していたプロセスに介入して合理化したツールだと考えている。

「私は、市場に根本的な非効率性がある場合には、すべての船を上昇させる潮目と機会を信じています。はっきり言って、エンターテイメントには大規模なものがあります」とレナードは述べる。彼は、『ブラックリスト』は業界を変革したというほど業界を「混乱させた」わけではないと主張する。

「混乱は勝者と敗者との関連性があり、多くの点で誰もがブラックリストで勝つ可能性を持っています」とレナードは言う。「作家も、業界の専門家も、ブラックリスト自体も。そしてそれは、市場が効率的に運営することができなかったからです」。

パワーダイナミックを反転させる

テック業界はライジング・タイドに完全に取り組んでいるわけではありませんが、非効率性の中にチャンスがあるという考え方は、テック業界が自分たちをどう見ているかという点では非常に核心をついている。しかし、ブラックリストのようなものがクリエイターを昇格させる方法と、テックプラットフォームが独自の民主化をどのように進めてきたかの間には、重要な違いがある。

「かなりのエゴがあると思います。例えば、私たちがプラットフォームを構築して、それを利用している人たちがいて、私たちがプラットフォームを提供することで素晴らしいことをしたのに、彼らは私たちのビジネスについて何を語ることができるのでしょうか?それは間違いだと思います。プライドが先に立つのは常だ」とレナードは言った。

しかし、ソーシャルメディア企業が伝統的な産業をひっくり返したとしても、彼らは富と権力を最上位に集中させ続けるという経済性を維持してきた。レナードの見解では、底辺の人々は仕事のほとんどを行い、トップの少数の人々は彼らの仕事から不釣り合いな価値を抽出する。「私はそれが最適なモデルだとは信じていません」レナードは言った。

「もしあなたが今、主要なプラットフォームを運営していて、役員室やシニアスタッフの会議を見渡しても、世界と同じような人たちがいないとしたら、あなたには本当に2つの選択肢があります。早く解決するか、今やっていることをそのまま続けるか…そして、誰かがあなたを解雇するか、別の会社にシェアを奪われるかのどちらかの理由で、あなたの代わりになる人が出てくるでしょう」。

十分に長い時間軸で考えれば、コンテンツを作成し、プラットフォームに力を与え、トレンドを鼓舞する人々が最終的に真の力を発揮するので、パワーの不均衡は是正されるとレナードは信じている。

Disrupt 2020は現在絶賛開催中だ。以下の特設ページを経由すれば、5%割引が提供された当日チケット(75ドル)を手に入れることができる。

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(翻訳:Dragonfly)