サシャ・バロン・コーエンがフェイクニュースに関するザッカーバーグの屁理屈を一刀両断

英国のコメディアンのSacha Baron Cohen(サシャ・バロン・コーエン)氏がソーシャルメディア規制に関するディベートに割って入った。米国時間11月23日、Anti-Defamation League(名誉棄損防止同盟)の受賞スピーチで、映画「アリ・G」と「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」の主演で知られる同氏は、Facebookの創業者であるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏によるプラットフォーム規制に対する「でたらめ」な反論を的確にこき下ろした。

スピーチは全篇を見る価値がある。コーエン氏は「史上最大のプロパガンダマシン」(別名ソーシャルメディアプラットフォームの巨人)の問題点と修正方法を明快に伝えた。数十億人に向けて拡散することが許されないコンテンツの基本的な基準を定めた放送局スタイルの規制が必要だと言う。

「客観的真実などというものは存在しない」とコーエン氏は言う。「事実は存在する。そしてもしインターネット企業が本気で差別化したいと思うのなら、実際にモニターするモニター要員を十分な数だけ雇い、ADLNAACPなどの団体と密に協力して事実にこだわり、はびこるウソや陰謀を彼らのプラットフォームから追い出すべきだ」。

ソーシャルメディアを「我々の民主主義、時には世界をも脅かす偏見と悪意に満ちた陰謀論の掃きだめを広めている」と攻撃するコーエン氏は、言論の自由はリーチの自由とは違うと指摘する。「これはインターネットを作った人たちが想定したものではありえない」と彼は語る。「今こそソーシャルメディアとそれで拡散される憎悪や陰謀や嘘について、根本的に考え直す時だと私は信じている」。

そしてコーエン氏は、「ヴォルテールは正しかった。『不条理を説く者たちは、残虐行為を強いる』。ソーシャルメディアは権威を振りかざす者たちが数十億の人々に不条理を強いることを許している」と付け加えた。同氏はザッカーバーグ氏の、「言論の自由」に名を借りてソーシャルメディア規制に反論しようとしたジョージタウン大学での講演も切って捨てた。

「これは誰かの言論の自由を制限する過問を問題ではない。これは歴史上もっとも非難されるべき人々を含む人々の手に、世界の1/3にリーチできる史上最大のプラットフォームを与えるかどうかの問題だ。「私たちはこれらの企業に、社会全般における言論の自由の境界線を決めてほしいと言っているのではない。自分たちのプラットフォームに責任をもって欲しいだけだ」とコーエン氏は続けた。

政治家が金を払って嘘や忌まわしい言論を広めることを許しているFacebookの道徳的に破綻した立ち位置について、コーエン氏はこうも言わずにいられなかった。「彼の屁理屈従うなら、もしFacebookが1930年代に存在していれば、ヒトラーが『ユダヤ人問題』の解決方法について30秒広告を流すことを許していただろう」。

なんということだ。スピーチの中でYouTubeも、顧客獲得重視のアルゴリズムによる推薦エンジンが陰謀論者のAlex Jones(アレックス・ジョーンズ)氏のビデオを何千回も推奨していることを批判された。

「世界中の大半の人たちが見るべき」情報をわずか6人が決めているとコーエン氏は指摘し、ザッカーバーグ氏、GoogleのSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏、AlphabetのLarry Page(ラリー・ペイジ)氏とSergey Brin(サーゲイ・ブリン)氏、YouTubeのSusan Wojcicki(スーザン・ウォシッキー)氏、TwitterのJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏の名前を挙げ、「シリコン・シックス」と名付けた。

「どの億万長者も米国人も、民主主義を守ることより株価を上げることを心配している。これは観念的な帝国主義だ」と彼は続けた。「選挙で選ばれていないシリコンバレーの6人が、世界のすべてに自分たちのビジョンを押し付け、どこの政府に対する説明責任もなく、法の届かない場所にいるかのように振る舞っている」。

「これは我々がローマ帝国に住んでいて、マーク・ザッカーバーグがシーザーであるかのようだ。少なくともこれで彼の髪型は説明できる」。コーエン氏は終わりに、「真実を嘘より優先し、寛容を偏見より優先し、共感を無関心より優先し、専門家を無知な人より優先せよ」、そうすれば「悪徳ハイテク資本家」たちの強欲から民主主義を守れると世間に訴えた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

人権NGOのAmnestyがFacebookとGoogleの事業モデルは「人権侵害」と批判

人権NGOのAmnesty International(アムネスティ・インターナショナル)が監視資本主義を批判している。最新のレポートの中で、マーケットを支配しているFacebook(フェイスブック)とGoogle(グーグル)のプラットフォームが「かなりの規模で人権を侵害している」と指摘し、「監視大企業」のビジネスモデルを非難している。

「彼らが提供するサービスの真の価値にもかかわらず、GoogleとFacebookのプラットフォームには全体的なコストが伴っている」とAmnestyは警告する。「2社の監視を基本とするビジネスモデルでは、ファウスト的な選択を人々に強いている。人権侵害が行われることを前提にしているシステムに従うことでしか人権を享受できない。まず前例のない規模でプライバシー侵害が展開され、さらには表現の自由から思想の自由、差別を受けない自由に至るまで、あらゆる人権を脅かす連鎖反応が起きている」。

「これは人々が使おうと思っているインターネットではない」と書かれている。このレポートで最も印象的なのは、議論の慣れについての指摘だ。監視を基本とした意思決定には、今やかなりの一致した批判が向けられている。アップルのCEOを務めるTim Cook(ティム・クック)氏、そしてShoshana Zuboff(ショシャナ・ズボフ)氏やZeynep Tufekci(ゼイネップ・ツフェクチ)氏といった学者、さらには国連まで指摘している。2社のプラットフォームが広告をベースとした操作や利益のために人々の情報を同意なしでハイジャックしていて、これによる個人や社会の被害のルポがあふれている。

このコアパワーの不均衡は、自分たちで決めたポリシーによって展開されている。ポリシーは本質的にせいぜい反人道主義のシステムの端でいじられているにすぎない。こうしたプラットフォームは魔術のPRに熟練した一方で、現在のシステムを実際に変更することなく、最近メディを賑わせているデータのひどい扱いについては耳を貸す振りをしてきた。そうした監視資本主義のひどいやり方は、それを真似するよう政府をそそのかしさえしている。市民を束縛するためにデータ主導のコントロールシステムを開発することでその手法を真似るという心底ぞっとするものだ。

しかしデジタル監視に関する議論では、モラルの失敗の根底にあるものを改善するよう規制当局が強制していない、というのがもっぱらの見方だ。これこそが、西欧社会の民主主義の基礎を大きく揺るがしている。

「GoogleとFacebookは、プライバシーと表現の自由への影響を和らげるためにポリシーと手順を定めた。しかし、監視を基本とするビジネスモデルがプライバシー権の真髄を傷つけ、さまざまな権利にリスクを与えていることを考えると、2社は全体論的なアプローチを取っているわけでもなければ、彼らの現在のビジネスモデルそのものが人権を尊重するための責務にそぐうものかどうか自問もしていない」とAmnestyは書いている。

「FacebookとGoogleの監視を基本とするビジネスモデルのコアとなっているプライバシーの侵害は、2社のプライバシースキャンダルの長い歴史に如実に表れている。プライバシーを尊重するという約束にもかかわらず、ビジネスを展開する中で数多くのプライバシー侵害がみられる」。

FacebookとGoogleがAmnestyの評価に同意しないというのは言うに及ばない。しかし今後も、同意しないと言うつもりだろうか。

Amnestyのレポートには、ネット広告業者からデータブローカーに至るまで、これら2社に協力している監視産業があるとも記されている。「インターネットとつながるために世界の大半が頼っている主要なチャネル」をFacebookとGoogleが支配していること自体が害でみあるとも指摘する。この支配が監視大企業2社に「人々のオンライン上の生活に関する未曾有の力」を与えている。

「インターネットの主要プラットフォームにおけるGoogleとFacebookのパワーは人権をリスク下においている」とレポートは警告する。「大方の人にとってGoogleとFacebookの全てのサービスを避けながらインターネットを使うことは不可能だ。独占的なインターネットプラットフォームが多くの社会でもはや“オプション”ではなくなり、それらの使用は現代生活を送るのに不可欠なものになっている」

Amnestyは「テック部門における自制の時代が終わりに近づいていることが今や明らかだ」と結び、さらには政府による規制が必要になるとも言及している。監視企業を御するために議員たちが人権に基づくアプローチをとることを求めている。

レポート全文はPDFにまとめられている。

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(翻訳:Mizoguchi)

Facebookがミーム作りの実験的アプリを公開

実験的な一般消費者向けソーシャルアプリを開発しているFacebookの社内グループのNPEチームが、このチームとしては3つ目のアプリを公開した。ミーム(写真や動画、メッセージ)作成アプリのWhaleだ。現時点では、このアプリでミームを作るために写真をテキストやステッカーで装飾し、ソーシャルメディアで共有したり友達に送信したりすることができる。

新しいコンセプトのアプリではない。同じような機能を持つ画像編集アプリはApp Storeにあふれている。しかしアプリ内購入もサブスクリプションも必要なく、無料で使えるのが利点だ。

Whaleではミームを作るために、まず写真を撮るか、カメラロールから探すか、アプリのストックライブラリから選ぶ。空白、2グリッド、3グリッド、4グリッドのレイアウトが用意されている。絵文字、テキスト、エフェクト、そしてレーザーや渦巻き、膨張といったフィルタを追加して、画像をカスタマイズする。

共有するためのミームだけでなく、切り抜きツールを使ってオリジナルのステッカーを作ることもできる。さらに絵心のあるユーザーのために自由にドローイングできるツールもある。

これまでに公開されてきたNPEチームのアプリのAuxとBumpは米国ではダウンロードできないが、Whaleも同様だ。当面はカナダでのみ利用できる。ただしBumpはフィリピンでも公開されている。カナダは消費者の人口統計とユーザーの行動の観点から米国の代わりに選ばれているのかもしれない。しかしアプリが軌道に乗り短期間でスケールするという点では、ユーザーは少ない。

Facebookは7月にNPEチームの計画を発表し、このチームの目的は新しいアイデアを迅速に実験し牽引力のないプロジェクトを終息させることだと説明していた。Facebookのこれまでのアプリが、新たに登場した他社のアプリ、特にSnapchatやTikTokなどとの厳しい競争に直面する状況の中、Facebookは新しいモバイルソーシャル体験を作るために投資している。現在のソーシャルネットワーキングアプリの市場では、YoloやLMKといったSnapchatプラットフォームのアプリがランキングの上位を占め、HousepartyやMarco Poloなどの新しいビデオチャットアプリも人気だ。

App Storeを調査しているApptopiaがWhaleの公開をいち早く見つけ、The Informationで報じた。App AnnieによればWhaleは2019年11月15日に公開されたが、現時点ではApp Storeのどのカテゴリーでもランクインしていない。

FacebookはNPEチームの個別のアプリについてはコメントしないとしているが、アプリの提供状況については個々のアプリによると以前に述べていた。

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(翻訳:Kaori Koyama)

FacebookがF8 2020デベロッパーカンファレンス開催日時を発表

FacebookがF8 デベロッパーカンファレンスの日程を発表した。Facebookは毎年このイベントで同社が開発したテクノロジーを披露し、将来戦略をプレゼンしている。発表によれば、2020年のイベントは5月5日と6日にサンフランシスコのMcEneryコンベンションセンターで開催される。興味がある読者はwww.f8.comに登録しておけばチケット購入がスタートしたときに通知してもらえる。

昨年のF8ではFacebook本体の大規模なリニューアル、Messenger、WhatsApp、Dating、Marketplaceなどさまざまなプロダクトのアップデートや機能の新設が発表された。またデベロッパーはFacebookが開発中のVRやスマートホームなどのハイテクハードウェアの活用方法、AxBoTorchなどのプロジェクトについて学んだ。

Facebookが発表したのは開催日時だけで、 2020 F8で何が発表されるのかは明かしていない。声明は「(F8 カンファレンスは)多数のプロダクトのデモ、来るべきテクノロジーを検討し、クリエーティブな利用法を深く学ぶセッションが予定されており、世界のデベロッパーコミュニティのトップメンバーの考えを直接聞き、メンバー相互の交流を深める機会でもある」と述べている。個々のテクノロジー、サービスのデモと紹介に加えて、F8はFacebookの野心的なビジョンをどう実現するのかを説明する格好の舞台だ。

例えば、昨年のF8ではFacebookはプロダクトの個人化を進め、現在のユーザーのエンゲージメントをさらに拡大しようとする方針だということがわかった。最近同社は暗号通貨の一種であるLibraを発表してディスラプトを進める姿勢を示している。しかし一方でFacebookはSnapchatやTikTokのような新興メディアに地盤を侵食されていることを痛感しているはずだ。来年のF8ではFacebookがこうしたライバルの挑戦に対し、どのような新たな回答を持っているのかが分かるかもしれない。他方で、同社は反トラスト法に基づく司法省の調査というさらに大きな問題に直面している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

仮想通貨Libraは順調に開発進む、規制対応には言及せず

「5カ月が過ぎ順調に成長している」、とLibra Association(リブラ協会)は自身の暗号通貨の技術基盤について報告したが、Libraへの規制当局の厳しい反発を完全に無視した。

ウォレット、ツール、ブロックエクスプローラーが計40個作られ、1700回のGitHubコミットが行われ、ブロックチェーンのテストネットでは過去2カ月間に5万1000回の疑似トランザクションが実行された。トランザクションを処理するためのLibraノードは、Coinbase、Uber、BisonTrails、Ilad、Xapo、Anchorage、およびFacebookのCalibraが稼働させている。さらに6ノードが整備されつつあり、技術チームを持たないメンバー8社が準備をしており、計21のメンバーがノードの稼働に取り組んでいる。

しかし、このLibraバックエンドに関する最新情報は、当初スタート時点に予定していた来年までに100のメンバーおよびノードを揃えるという目標を達成する計画について何も説明していない。そしてこの発表は、仮にLibraが技術面の準備を2020年まで完了できたとしても米国を始めとする世界の規制当局が開始を許すとは限らないという事実をまったく無視している。

関連記事:Facebookも「ペイ」参入、Facebook系の全アプリで利用可能に

Facebookは、Libraに対する抵抗が高まる中、同社自身もフィンテックに参入するという保険をかけた。今週同社はFacebook Payをスタートし、Facebook、Messenger、WhatsApp、およびInstagramで友達や店や慈善団体に支払うための共通決済方法を米国で提供した。

Facebook Payは、同プラットフォーム上での買い物を推進し、取引に関する情報を取得するとともに、素早い決済方法に後押しされる売上を求めて売り手がもっと広告を出すことを期待している。それはFacebookがLibraに対して、金融の大衆化以上に一番に求めていたことだ。

先月行われたFacebook CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏の議会証言は、7月にLibraの役員であるDavid Marcus(デヴィッド・マーカス)氏が議会に登場したときほど議論を引き起こさなかった。それでも一部の議員らは、Libraがマネーロンダリングに利用されたりユーザーの資産を危険に晒す可能性に加えて、反トラスト捜査が進行中のFacebookがさらに力を得ることを懸念している。

Libra Core Summitでの技術メンバーによる一連の発表は、プロジェクトが不正行為、セキュリティー、権力の分散化への対策に集中していることを示すよい機会だった。しかし、Libra Associationは、Facebook主体の開発チームが最も得意とする「コードを書く」ことの説明に終始するという安易な道を選び、ポリシーの変更には言及しなかった。TechCrunchはLibra Associationおよび一部のメンバーに対して質問を提示したが、約束されていた答えは本稿公開までに届かなかった。

アップデート:規制問題に対する認識が欠けていることへの本誌記事や批判に対して、Libraの広報担当者が以下の声明を提供した。

本日のLibra Core SummitはLibra CoreおよびMove言語の協力開発計画に向けての第一歩だった。同サミットは協力メンバーの教育が目的であり、Libraコードを動かし、Libraウォレットを作り、LibraネットワークのスケーリングとLibraウォレット間の相互運用を実現させることもそのひとつだ。Libraプロジェクトには連携して動く部分がたくさんある。Libra Assosicationの執行幹部チームは、世界中の規制当局に耳を傾け、関係を深め、協力するための重要な取り組みを続けていく。

関連記事:Lowlights from Zuckerberg’s Libra testimony in Congress

「ノードを実装する技術チームを持たない組織に対して、Libra AssociationはLibra Coreの機能が完成する2020年のスタートを支援するための戦略に取り組んでいる」と協会のMichael Engle(マイケル・イングル)氏は書いた。「Libra Associationはメインネットに100のノードを展開する計画であり、これにはオンプレミス(社内設置)とクラウドホストによる基盤が両方含まれる」。Libraは批判に耳を貸すつもりがなさそうに私は感じる。

きちんとした文書を用意し、CLAs(貢献者ライセンス同意書)を準備してGitHubへの貢献を容易にし、バグ懸賞プログラムと技術ロードマップを揃えたのはスタートと言える。しかし、協会が議会の質問に明確に答えるまで当局はLibraの承認を拒否する可能性が高い。ザッカーバーグ氏は承認されない限りサービスを公開しない、と語っている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Facebookはアプリ内インスタPopular Photosをひっそり開発

Facebook(フェイスブック)は、ブランディングと母艦への逆リンクによってその買収を妨害するかたわら、Instagram(インスタグラム)をパクろうとしている。TechCrunchは、FacebookがPopular Photos(ポピュラー・フォトズ)と呼ばれる機能をテストしていることを突き止めた。これは、アルゴリズムで選定した友達の写真を、ニュースフィードでフルスクリーンに開いた下にエンドレスにスクロールできるかたちで表示するというもの。その結果、Instagramのフィードと同じ体験をFacebookの中でもできるようになる。

Popular Photosでは、いくつものリンクをクリックしたり、ステータスの更新を読んだりする必要も、異なるコンテンツのタイプによってニュースフィードが固まってしまうこともなく、リラックスした楽な状態で写真のブラウジングができる。ユーザーはただ受動的に、素敵な写真が流れてゆくのを眺めるだけでいい。

Facebookのリンクだらけのフィードは、InstagramやSnapChatやTikTokなどの視覚系ソーシャルネットワークに比べて、だんだん古臭く面倒なものになってきている。ニュースフィードの投稿の意味を知ろうとすれば、ユーザーはいちいちリンクを掘り下げなければならず、簡単に楽しむことができない。こうした手間は、日常のちょっとしたブラウジングタイムには、また、仕事や学校や家族のことで疲れ切っているときなどにはそぐわない。Facebookのデスクトップには専用の写真ブックマークがあり、写真タイプのコンテンツのブラウズができるようになっていたのだが、いつの間にかなくなってしまった。

Facebookの広報担当は、同社がPopular Photosの小規模なテストを行っていたことを、我々が10月にそれを発見したときに認めていた。テスト期間は終了したが、現在も改良を重ねており、将来またテストを行う予定でいる。Facebookは、Popular Photosの詳細や、その目的について公表を拒んでいる。すでにFacebookにはストーリーズ、メッセージ、プロフィール、IGTVっぽい動画専用ハブであるWatchがあることから察するに、Instagramを完全コピーする場合に今不足しているものは発見タブと写真専用のフィードだ。

Popular Photosの仕組みはこうだ。ユーザーが、ニュースフィードやプロフィールで写真を見つけ、それをタップすると、映画館のように背景が黒いフルスクリーン表示に切り替わる。通常は、その写真をスワイプするかスクロールすると元の表示形式に戻る。しかしPopular Photosでは、スクロールすることで、その写真に続いてたくさんの写真を見ることができる。

Popular Photosのタイトルから下をスクロールすると、さらに写真が表示され、“See More Photos”(もっと写真を見る)というラベルが現れる。これをタップすれば、公開されている写真や、友達がシェアした友達限定の写真、または友達がフォローしている人の写真が続けて見られるようになる。Instagramと同じく、そしてニュースフィードとは違い、FacebookはPopular Photosのキャプションをおよそ65キャラクターまでしか表示しないため、画面が文字でいっぱいになることがない。Popular Photosの背景には映画館らしい雰囲気があり、写真を際立たせている。

Facebookは2014年から、フルスクリーンで開いた動画をスクロールしたときに関連動画を表示するようになった。現在、このもっと動画を見る機能は、次の動画が自動再生されるようになり、その動画のフィードがユーザーにどさっと示される。また、広告動画も入る。そのことから、Popular Photosにも広告主からの写真が入ることが予想される。さらに写真を見れば、それがFacebookの収益となるわけだ。

Facebookは、Instagramを利用して収益を上げることに躊躇しなかった。同社は、Instagramのナビゲーション・サイドバー(三本線ボタン)に「Facebookを開く」ボタンを設置した。

以前は、Instagramはその通知タブにFacebookの警告を表示しようとしていた。Facebookからのお知らせが入ると、三本線のボタンにあの目障りな赤いマークで示される。それをタップするとInstagramのサイドバーが開き、Facebook.comに紹介トラフィックを戻すよう促される。またFacebookには、Instagramでフォローしている人のFacebookページの“いいね”を求める通知も送ろうとしていた。現在は、“from Facebook”と新しいロゴマークがInstagramの読み込み画面に表示されるようになっている。

市場参入から15年間成長を続けてきたFacebookには、視覚的コミュニケーションを全面的に取り込む必要がある。すでにスナップチャットのストーリーズはコピーし、Facebook内に、すぐに消える写真や動画の形式を実装した。Facebookが自身の子会社であるInstagramを真似してフィードのスクロールに代るものを取り入れることに、引け目を感じている様子はまったくない。親会社が直接のライバルになることを、Instagramのスタッフはどう感じているだろうか。

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(翻訳:金井哲夫)

Facebookへの政府からのユーザーデータ開示要求は過去最高

画像クレジット:Getty Images

 

Facebookの最新の透明性レポートが公開された。

それによると、各国政府からのユーザーデータ開示要求の数は、昨年の後半期と比較して、今年の前半期には16%増加し、合計12万8617件になったという。

これは、同社が2013年に最初の透明性レポートを公開して以来、これまでのすべての期間に受けた要求の中で最大の件数となった。

中でも米国政府からの要求は5万741件で、突出している。そのうちの88%のケースで、実際にアカウントやユーザーのデータが当局に提供されることになった。Facebookによれば、米国政府からの要求の3分の2は、口外禁止命令とセットになったもので、該当するユーザーに政府からデータが要求されたことを伝えることができない。

しかしFacebookは、今回の期間中に口外禁止条項が解除された後、初めて11件のいわゆる国家安全保障文書(NSL)の詳細を公開できることになったと述べている。国家安全保障文書は、FBIの要求に応じて、企業に非コンテンツデータの引き渡しを強制できる。こうした文書は、裁判官による承認を受けたものではなく、通常はそれ自体の開示を妨ぐために、口外禁止命令が付いている。しかし、2015年にFreedom Act(自由法)が可決されて以来、企業にはそうした口外禁止命令の解除を要求することが許されるようになった。

また今回の透明性レポートによると、Facebookは15か国で67件のサービス障害を検出したことを明らかにした。これは、9か国で53件だった昨年下半期から増加している。

さらに同レポートでは、Facebookは1160万件のコンテンツを削除したことを明かしている。これは前年同期の580万件から2倍近くに増加している。削除の理由は、子供のヌードや性的虐待など、Facebookのポリシーに違反するものだという

Facebookは、今回のレポートに初めてInstagramを含めている。Instagramに関しては、今年の第2および第3四半期で、168万件のコンテンツを削除したことが報告されている。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Facebookはカメラを勝手に起動するiOSアプリのバグを認める

Facebookは、iOS用アプリでユーザーがフィードをスクロールするだけで、カメラが起動してしまうという明らかなバグに対する懸念の矢面に立たされている。

画像クレジット:Getty Images

Joshua Maddux(ジョシュア・マダックス)氏が、iPhone上のFacebookアプリの画面の録画をツイートしたのをきっかけに、週末のツイッターが炎上した。彼は、Facebookのフィードをスクロールしている最中に、カメラアプリがFacebookアプリのバックグラウンドで起動されていることに気付いた。

すでに数人のユーザーは、今月の初めごろから、このバグを発見していた。それを見て「ちょっと心配」と表現していた人もいた。

もっと悪い状況を想定した人もいる。セキュリティの脆弱性ユーザーデータの漏洩や、不注意による露出、といったFacebookの長い歴史を考えると、それも当然だろう。先週同社は、一部のデベロッパーが、1年以上にわたってFacebookのユーザーデータへのアクセス権を不適切に保持していたことを認めたばかりだった。

Guardian FirewallのCEOであるWill Strafach(ウィル・ストラファッチ)氏は、「無害のようだが気味の悪いバグ」と表現した。

このバグは、最新のiOS 13上でFacebookアプリを実行しているiPhoneユーザーにのみ影響し、アプリにカメラとマイクへのアクセスを許可している場合にだけ発生するようだ。またこのバグは、同アプリの「ストーリー」画面に関連したものと考えられている。その画面では、ユーザーが写真を撮れるよう、カメラを開くことがある。

シンプルな回避策としては、iOSの「設定」で、Facebookアプリに対するカメラとマイクのアクセスを無効にすること。Facebookのインテグリティの担当副社長であるGuy Rosen(ガイ・ローゼン)氏は「バグのようです」とツイートし、同社としても調査中であることを明かした。TechCrunchがこの記事を公開した後、ようやく同社の広報担当者は、この問題が確かにバグであることを認めた。

「最近、Facebook iOSアプリのバージョン244が、誤ってランドスケープモードで起動してしまうことを発見しました」と広報担当者は説明した。「先週の11月8日にリリースしたv246で、この問題を修正する際に、ユーザーが写真をタップしたとき、ニュースフィードの隣りにあるカメラ画面にアプリが移動してしまうことがあるというバグを、誤って入れ込んでしまいました」。

「このバグが原因で、写真やビデオがアップロードされたという事実は確認できませんでした」と、その広報担当者は付け加えた。このバグに対する修正は、今日、Apple(アップル)に提出され、承認待ちとなっているという。

「Facebookへの信頼が地に落ちているので、ユーザーがそうしたバグを見つけたときも、疑わしきは罰せずという目では見られなくなっているのでしょう。何をか言わんや、ですね」と、ストラファッチ氏は述べた。

Facebookのコメントを受けて更新済み。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Facebookも「ペイ」参入、Facebook系の全アプリで利用可能に

Square、Venmo、PayPal、Apple Pay、Google Pay。スマホで誰かにお金を払う方法にまったく不足はないし、会社があまりにも大きくなりすぎているという批判の声も高まる中、Facebookは同名のサービスだけに留まる気配はない。

FacebookがFacebook Payを発表した。同社もしくはグループ会社が提供するMessenger、Instagram、WhatsApp、そしてもちろんFacebook本体で使える統一決済システムだ。一度支払い方法を有効にすれば、あらゆるFacebook系アプリで利用できる。なお、Facebookではマーケットプレイスなどのセクションで利用できる。

Facebook Payは今週公開すると同社は表明しているが、最初はFacebook本体とMessengerだけで、かつ米国ユーザーに限り利用できる。ほとんどの主要クレジットカードおよびPayPalに対応しているとFacebookはコメントしており、同社の仮想通貨への取組みとは別物であることを注意深く説明した。

これを必要としている人がいるのだろうか?たぶんいない。Facebookマーケットプレイスを使ううえでの抵抗を多少減らすかもしれないし、ある程度の潜在利用者がいるかもしれない。しかし正直なところ、友達と割り勘したり中古のギターを買う時ためなら、それこそ山ほどほかの方法がある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

顔、手振り、服装チェックまでカバーしたFacebookの最新機械学習の

Facebook(フェイスブック)の最も新しい機械学習モデルの研究は、我々からすればなんとも平凡な仕事をさせるものだが、コンピューターにとっては今でもめちゃくちゃ難しい仕事だ。このプロジェクトの目的は、顔の匿名化と、手の動きを即興で作ること、そしておそらくもっとも難しいであろう、適切な服装のアドバイスだ。

この研究は、先日、ICCV(国際コンピュータービジョン会議)にて発表された。フェイスブックからは数十件の論文が公開されたが、同社はAIに関する研究、とりわけ、コンピュータービジョンにかなり重点を置いている。

動画の顔を変更する技術は、“ディープフェイク”などの悪用例を連想してしまうが、フェイスブックの研究チームは、むしろ人道的利用法の可能性があると感じている。

ディープフェイクは、顔の特徴と目標を詳しく調べ、その人の表情や顔の動きを、まったく別の人物の顔にマッピングするというものだ。フェイスブックのチームも同じ特徴や目印を使うが、目的は別の顔と入れ替えることではなく、顔認証エンジンで識別できないまでに顔を変形させることだ。

動画には出たいが、訳あって世間に顔がバレるのは困る人、しかも、お面をつけたり顔を完全に変えるといった格好の悪いこともしたくない人の役に立つだろう。これを使えば、自分の顔に似ているものの、たとえば目の幅がわずかに広かったり、唇が薄かったり、おでこが広い顔になれる。

彼らが制作したシステムは、よくできているように見える。もちろん、製品化するまでにはいくつか洗練させなければならない部分もある。しかし、政治的弾圧を逃れるために、またはもっと平凡なプライバシー対策のためにと、便利な使い道があれこれ思いつく。

仮想空間では、人の識別が大変に難しいことがある。その理由のひとつが、現実の生活では普通に認識している言葉に依らないジェスチャーの欠如だ。そこで次の研究は、そうした身振りをキャプチャーし、カタログ化し、再現しようとしている。少なくとも、人の手の仕草だ。

奇妙なことに、人が話しをするときの手振りを正確にデータ化したものはほとんど存在ない。そこで彼らは、2人の人間が通常の会話中に見せる手振りをたっぷり50時間にわたり録画した。というか、ハイエンドのモーションキャプチャー・ギヤを装着した状態で、できるかぎり自然に会話してもらった。

そうした(比較的)自然な会話と、それに伴う身振りと手振りは機械学習モデルに統合され、たとえば、「以前は」と言うときに自分の背後を指差したり、「そこらじゅう」と言うときに泳ぐような手つきをするといった言葉と動作の関連性をAIに学ばせた。

これがどんな役に立つのだろうか? 仮想空間でのより自然に見える会話もあるだろう。また、アニメーターがキャラクターに現実に根差したリアルな動きをさせたいときに、これがあればわざわざ自分たちでモーションキャプチャーを行わずに済む。結果としてフェイスブックが統合したこのデータベースは、規模の面でもディテールの面でも他に類を見ないものとなった。それ自体に価値のあるものだ。

同様にユニークながら、やや軽薄だと論争になったこのシステムの用途に、服装を向上させるというものがある。スマートミラーが一般化すれば、服装のアドバイスぐらい、して欲しいよね?

Facebookは小売業向けコンピュータービジョンのGrokStyleを買収(未訳)

Fashion++は、身にまとった服(帽子、スカーフ、スカートなど)と全体的なファッション性(当然、主観的な尺度だが)のラベル付けされた画像の膨大なライブラリーを取り込むことで、今の服装をもとに、よりよい服装の提案をするというシステムだ。大幅な変更は提案しないが(そこまで高度ではない)、上着を脱ぐとか、シャツを中に入れるなどの細かい助言をしてくれる。

デジタル・ファッション・アシスタントと呼ぶには程遠いが、実際の人々に服装アドバイスをさせたところ、信頼できる、さらにはいいアイデアかも知れないという反応が得られたという早期の成功が論文には記されている。よくよく考えれば、かなり複雑な課題だとわかる。さらに、“ファッショナブル”という言葉がいかにいい加減に定義されていたかを考え合わせれば、これは感動的なことだ。

ICCVでのフェイスブックの研究発表は、同社とその研究チームが、コンピュータービジョンに何ができるかという疑問に対して、じつに大きな視野を持っていることが示された。写真の顔を素早く正確に認識できたり、室内に置かれた物から位置が特定できれば大変に便利だが、ちょっとしたビジュアル・インテリジェンスによって改善される、まだ知られていない、または意外なデジタルライフの側面がまだまだたくさんある。この他の論文は、こちらから読むことができる

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(翻訳:金井哲夫)

Facebookが「ナビゲーションバー」の設定をようやく可能に

Facebookのホーム画面に表示されるあの赤い通知マークにイラついている人、画面を無駄遣いしているFacebookマーケットプレイスに腹を立てている人に朗報だ。新しく追加されたショートカットバー設定で、Facebookアプリのナビゲーションバー(モバイルアプリの下端または上端に表示されているアイコンの並び)に表示されるものを選べるようになった。

先週末にTechCrunchは、マーケットプレイス、ウォッチ、グループ、イベント、プロフィール、友達リクエスト、ニュース、などのタブを消したり、赤い通知ドットを表示しなくするオプションを発見した。Facebookは我々の問い合わせに答えて、ショートカットバー設定は全ユーザー向けに提供され、大部分のiOSユーザーはすでに利用可能で、Androidユーザーには今後数週間のうちに行き渡ると語った。

この改訂は、Facebookに雑音が増えることを望まない人たちの平穏さを取り戻すのに役立つかもしれない。ホーム画面に現れる赤い通知件数は、どこかのグループやイベントやマーケットプレイスの投稿に人々の注意を向けさせようとする油断のならないグロースハックだ。

「ユーザーが好きなものを簡単にアクセスし、Facebookアプリ内で受け取る通知を自分で管理できるようにするために、ナビゲーションバー設定を公開した」とFacebook広報が私に話した。

去る2018年7月にFacebookは、ナビゲーションバーをユーザーがどの機能を多く使っているかに応じてパーソナライズしていくと発表した。しかし、Facebookは自分たちが使わせたいと思う機能を広めることに専心しているようで、Craigslistのライバルであるマーケットプレイスのように私がめったに使わないものが表示され、毎日利用しているイベント機能はバーから消えた。

ショートカットバー設定を利用するには、iOSでは画面下、Androidでは画面上にあるナビゲーションバーのショートカットを押すと出てくるポップアップメニューで、タブを削除したり、赤い通知ドットを非表示にすることができる。これでナビゲーションバーのスペースを空けて平和な体験ができる(編集部注:コメント通知は設定変更できない)。

ナビゲーションバー右端にある横棒3本のその他タブからも「設定とプライバシー」→「設定」→「ショートカット」で表示内容を管理できる。リバースエンジニアリングのスペシャリストであるJane Manchun Wong(ジェーン・マンチュン・ウォン)氏は、Facebookがこのメニュー通知ドット設定メニューのプロトタイプを開発していたことを指摘していた。

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Facebook広報は、ユーザーがアプリ内の通知を見なくても済む方法があるべきだと認めている。ユーザーにもっと自由を与えることで、各自にとって大切なものを使いやすくしたかったとFacebookは言った。

Facebookはユーザーの満足度を高める試みとして、Instagramの「いいね!」数の表示をやめたが、ほかにも簡単にできることがたくさんある。例えば、通知のまとめを改善して、ユーザーはグループやイベントの投稿をその都度煩わされることなく1日1回ダイジェストで受け取ることができればうれしい。「有意義な時間」(Time Well Spent)ダッシュボードでFacebookの利用分数を表示するなら、その横にタイプごとの通知の数や、実際に開いた数を表示して、使わないものは削除できるようにすればなおいい。

もしFacebookが長期的に生き延びたいと思うなら、ユーザーを騙して会社の利益だけを追求するグロースハックの罠にかけることなどできない。Facebookアプリはこの10年で膨張し余分な機能にまみれている。嫌いなものを見なくて済むようにさえしてくれれば、忘れられている機能を積極的にクロスプロモーションするなどしてFacebookは成長できるはずだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Facebook新製品実験チームの最初のアプリは学生のおしゃべりと音楽用

今年の7月、Facebook(フェイスブック)はNPE(新製品実験)チームと称される、一般消費者向けの実験的なアプリを開発する新部門の創設を発表した。新しいアイデアや機能を試して、人々がどう反応するかを見極めることが目的だ。

創設間もなく、Vine(バイン)のジェネラル・マネージャーであったJason Toff(ジェイソン・トーフ)氏をプロダクト・マネージャーとして同チームに招き入れた。そして今、このNPEチームから誕生した最初のアプリが静かにローンチされた。ひとつはBump(バンプ)。見た目ではなく会話を通じて新しい友だち作りを支援するおしゃべりアプリだ。もうひとつは、ソーシャル音楽アプリAux(エイユーエックス)だ。

Auxは、2013年にサービスを終了したスタートアップであるTurntable.fmのウェブサイトを少しだけ思い出させる。Turntable.fmと同じように、Auxのアイデアも、アルゴリズムではなく人が音楽をプログラムする仮想DJ体験が楽しめるというものだ。クラウドソーシングによるDJごっこというコンセプトは、この数年間、モバイルアプリを使ってリスナーにプレイリストを決めさせるラジオ番組に引き継がれていた。

その後、Sporify(スポティファイ)などのストリーミング音楽アプリがパーティー用プレイリストなどの実験を行い、いくつものスタートアップによって、ゲストがプレイリストを決められる独自のアプリが世に送り出された。

NPEチームのAuxは、みんなでプレイリストを作るという一般的なアイデアを、やや違うかたちで取り入れている。このアプリは、毎晩午後9時にアプリ内で開かれるパーティーに集まる学生やティーンエイジャーを対象にしている。参加者は、自分が好き曲を選び、それが最初にかけられるよう“AUX端子”を競い合う。パーティーの最後に、拍手の多さによって勝者が選ばれる。

アプリの解説にも書かれているが、Auxは「あなたの学校のDJ」と銘打たれている。このタイトルは、学校の放送設備から音楽が流されるような印象を与えるが、実際は、学校に通う子どもたちが夜に楽しむソーシャルアプリだ。

Auxは、2019年8月8日にカナダでローンチされた。Sensor Towerのデータによれば、iOSでダウンロードされた回数は500回以下だ。Android版はない。10月22日には、カナダのApp Storeですべての音楽アプリの中で短期間だけ38位にランクされた。ダウンロード数を増やすための、なんらかのキャンペーンが行われたことを示唆している。

もうひとつのNPEチームのアプリはBumpだ。これは、「新しい友だちを作る」ことを目的としている。基本的には匿名のチャットアプリなのだが、テキストで応答することで打ち解け合い、つながりを持つというアイデアに基づいている。Bumpには画像も動画もリンクもない。おしゃべりだけだ。

App Storeのスクリーンショットから察するに、このアプリは大学生をターゲットにしているようだ。スクリーンショットでは、大学のキャンパスでthe coolest place(最高の場所)や安く食事ができるところを尋ねる質問が見られる。さらにこのサンプルの写真からは、クラスやルームメイトとのトラブルに関する話も見受けられる。

Bumpは、人と人のつながりを「外見ではなく会話で」構築するものだと強調していることから、出会い系の要素も盛り込まれる可能性もある。そうすることで、最高の写真で目を惹こうとするユーザーに人気が集まる他のソーシャルアプリ(そしてもちろん出会い系アプリ)と、少しだけ肩を並べることができる。

Bumpの会話はリアルタイムで行われる。一度にひとつの会話にしかメッセージが送れない。また、返事をするまでに30秒の制限時間がある。そうすることで、会話を活性化させる狙いだ。会話を終わらせるときに、今の相手との関係を続けたいかをアプリに尋ねられる。双方がイエスと答えた場合に限り、また同じ相手との会話が楽しめる。

BumpにはiOS版Android版があり、現在はカナダとフィリピンでサービスが提供されている。Sensor Towerによれば、Bumpは、2019年9月1日、カナダのApp Storeにてソーシャルネットワーク部門の第252位までランクアップしたが、現在はランク外となっている。

面白いことに、NPEチームのこれらのアプリのうち、Bumpだけが、NPEチームはFacebookの一部門であることを解説で明かしている。もうひとつのAuxは、それには触れていない。だがどちらも、詳しく知りたい人のために、Facebook.comに掲載されているアプリのプライバシーポリシーへのリンクがある。

これは、グーグルの社内アプリインキュベーターArea 120の場合とそう変わりがない。そのアプリには、グーグルの子会社が制作したことを明らかにしていないものがあるが、どれもグーグルのプライバシー・ポリシーへのリンクがある。どちらの企業も、そららのアプリが、親会社の知名度によってではなく、各々の実力でもって成功するか失敗するかを見極めようとしているのだろう。

Facebookは、NPEチームの将来については、コミュニティーを構築するための新い方法を探るということ、そして必要がなくなればすぐに解散するということ以外、多くを語っていない。

Facebookは、この2つのアプリの存在について、The Informationで認めている。

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(翻訳:金井哲夫)

大統領選挙戦でデジタル広告担当だった私がTwitterの政治広告禁止を支持する理由

2020年大統領選挙キャンペーンで、当時は大統領候補だったセス・モルトン下院議員(8月に撤退を表明)のデジタル・ディレクターとして私は、インターネット上で行われるあらゆるキャンペーン活動を取り仕切っていた。嫌われ者の電子メール、拡散して欲しいと願う動画、実地で活動してくれる支援者をまとめるオンラインインフラなどいろいろあるが、中でも時間的にも資金的にも最大の投資先はデジタル広告だった。

私たちのキャンペーンでは他の多くの候補者の場合と同様、給与を除き、単独で最も多くの資金が費やされるのがデジタル広告だった。ところが、そうした広告は、キャンペーンにとっては非常に厄介なものだ。民主主義にとって有害であり、それで利益を得ている企業にとっても害悪だ。先週、Twitter(ツイッター)のCEOジャック・ドーシー氏は政治広告を禁止するという、大胆にして初めての一歩を踏み出した。Facebook(フェイスブック)のCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏とGoogle(グーグル)のCEOであるサンダー・ピチャイ氏も、それに続くべきだ。

デジタル広告は、新しい支持者を得るためには最も重要なチャンネルのひとつであり、「10ドル、5ドル、または、できることならなんでも構わないのでご支援いただけますか?1ドルでも大助かりです!」といった極めて重要なお願いをすることができる。米民主党全国委員会がこの2月に、大統領候補者が最初の2回の討論会に参加するためには、少なくとも6万5000人の個人寄付者を集めなければならないと発表して以来、そのような少額の寄付をしてくれる人たちがキャンペーンの生命線になった。

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困ったことに、民主党の寄付市場で競合する企業は、2016年にはたったの5社だったものが今では25社となり、どの陣営も新しい寄付者を集めようと必死になっているため、費用が高騰している。激増だ。

私たちは(他所も同じだと推測するが)、本来は利益を生むはずの広告で、10ドル、20ドル、あるいは30ドルを出費して、わずか1ドルの新しい寄付者を獲得するという赤字の運営を日常的に続けていた。キャンペーンにおいて、これは最悪の取引だ。金を失うために大量の資金を投入して、数週、数カ月と、高価なキャンペーンの花道を伸ばす。そこで儲けているのはFacebookだけだ。大きなスケールになると、その結果は膨大なことになる。残っている18名の民主党候補者もこの悪循環にはまり、Facebookとグーグルにすでに5300万ドル(約58億円)以上を投じている。そのほとんどが、政治広告費用だ。

この5300万ドルの資金があれば(これに前候補のクリステン・ギルブランド上院議員とジェイ・インスリー、ワシントン州知事の数百万ドルを加えれば)、誰が候補者になろうとも有権者の支持を民主党に集めるためのインフラ整備や、11月の民主党候補者討論会に役立てることができたはずだ。ところが、そのすべてがFacebookとグーグルの懐に入ってしまった。

政治広告は民主主義の敵だ。ネット上での関心の移り変わりの素早さ、それを助長する文字数制限、そしてデジタル世界の門番となっているエンゲージメントアルゴリズムにより、キャンペーンでは複雑な政治的課題をたったの2行の骨子もどきに凝縮しなければならず、それにで討論会の司会者も説得できない。誰かに政治広告をクリックして欲しいと願うなら、できるだけ扇状的な内容にするべきだ。人は怒りを覚えるとクリックするものだ。

それを一番簡単にやるには、話をでっち上げるだけでいい。ほとんどの候補者が思いも寄らないことをだ。幸いなことに、11月第2週に開かれた米議会の公聴会で、ザッカーバーグ氏は、Facebookは喜んでそれを受け入れると明言していた。

Facebookやグーグルなどの企業は、白か黒かだけの世界を有権者に提示するよう私たちに強要する。そこでは、その中間の微妙な感覚など邪魔者に過ぎず、ほんの1ドルをスマートフォンから寄付することが、市民の社会参画(エンゲージメント)ということになる(毎月継続的に寄付をしたいという人などは、かつてないほど貴重な支持者だ!)。これは、十分に情報に基づく健全な民主主義のあり方とは言えない。

政治広告は、それを出す企業にしても、良いものではない。ドーシー氏の発表と同じ日に開かれた四半期の収支報告会でザッカーバーグ氏は、大統領選挙の候補者による政治広告の収益は、2020年のFacebookの予想収益の0.5パーセントに過ぎないと見積もっていた。それを過去12カ月間の収益と同等の660億ドル(約7兆2000億円)と想定するなら、政治広告による収益はおよそ3億3000万ドル(約360億円)となる。

その代償として、Facebookはこの数年間、悪評に悩まされてきた。米議会の積極的な議員たちは、これを国家の安全保障上の問題と見なすようになり、規制のリスクが高まっている。しかも大統領候補のエリザベス・ウォーレン上院議員は、大統領に選出されたならFacebook を解体すると宣言し、生存の危機まで浮上している。それだけの収益があっても、議会の公聴会のために何時間も準備を重ねるザッカーバーグ氏の潜在的コストは正当化されないだろう。

それでは、こうした広告で利益を得るのは誰なのだろうか?それは、事実は主観的なものであり、現実ははかなく、信頼できる唯一の情報はソーシャルメディアを操る人たちが流すものという、支離滅裂な情報環境をアメリカ合衆国にもたらしたいと考える人物だ。

そのため、ドーシー氏の決断を最初に非難した団体が、ロシアの後ろ盾になっている通信社ロシア・トゥデイであったことはうなづける。わずかな収益と生存の危機との間で、アメリカの民主主義のバグの修正とロシアのプロパガンダの幇助との間で、ドーシー氏は、自身の収支と国の両方のために賢明な決断をした。ザッカーバーグ氏とピチャイ氏も、ドーシー氏に従って欲しい。

【編集部注】著者のAaron Bartnick(アーロン・バートニック)はセス・モルトン米下院議員の選挙キャンペーンでデジタル・ディレクターを担当していた。現在は、大学院大学ハーバード・ケネディー・スクール・オブ・ガバメントで勉学中(@AaronBartnick)。

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(翻訳:金井哲夫)

WhatsAppがモバイル注力の小企業に向けたカタログ機能を追加

WhatsAppは、スマートフォン経由で顧客にリーチしたいと考えるビジネスオーナー向けに、専用アプリの機能を拡張する。Facebook(フェイスブック)傘下の同社は米国時間11月7日、WhatsApp Businessに新しいカタログ機能を導入した。この機能では企業は製品やサービスを紹介して共有し、一方で潜在的な顧客は写真や価格を見たり、製品の説明を読んだりすることで、購入の後押しができる。

これらのカタログはWhatsApp上のモバイルストアとして機能し、ウェブページを必要としない。そのかわり、ビジネスオーナーはアプリ設定のカタログから、販売する商品の写真をアップロードして詳細を記入でき、必要なら商品やサービスのコード(SKUなど)を含めることもできる。

これらのカタログ上のアイテムは、WhatsAppのチャットメッセージで顧客に送信できる。例えば、顧客からの商品への質問やおすすめをする場合、ビジネスオーナーは要求された情報をカタログをタップして送信できる。

このカタログは、ユーザーのオンライン活動の多くがウェブ上ではなくアプリ内で行われている、新興市場のWhatsAppユーザーとって特に魅力的だ。これらの地域では新しいユーザーはPCをスキップし、代わりに最初からスマートフォンにアクセスするのだ。

WhatsApp Businessアプリは、すでに市場で存在感を示している。今年に入ってWhatsAppは、同アプリが500万の企業に採用されたと述べた。

今回のカタログ機能は、ビジネスプロファイルやメッセージへのクイック返信、チャットのラベル、自動メッセージなど、ビジネスニーズを念頭に置いて設計されたほかの機能に追加される。

WhatsAppによると、この新機能はまずブラジル、ドイツ、インド、インドネシア、メキシコ、英国、米国のAndroidとiPhoneでWhatsApp Businessを利用する企業に提供される。また具体的な時期は明かされていないものの、他の地域にも近日中に展開される予定だ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Twitterの政治広告禁止はプラットフォームの本当の問題点を隠す目眩しだ

インターネットのプラットフォームでは、何もかもが逆さまに感じられることがある。政治とパブリッシング、文化と商売、そしてそう、嘘のための真実のすり替えだ。

今週は、Twitter(ツイッター)のCEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏の周囲に広がる光景に奇妙な逆転現象が起きていた。その製品が何のプラットフォーム(舞台)になっているか(たとえばナチス)を示すモラルの歪曲を真後ろで支えているハイテク企業のCEOとして名高い彼が、政治的発言の倫理性に泥縄のツイートストームを展開したのだ。

実際、彼は、民主主義と社会を擁護する態度を示し、人々の生活に強大な影響力を与える巨大無料プロパガンダ帝国を運営しつつ、現実からはまったく遊離したもう一人のハイテク兄弟であるFacebook(フェイスブック)のMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏の師匠だ。

したがって、完全な逆転とは言えないかも知れない。

要は、Twitterは今後は政治広告を受け付けないという、それだけの話だ。

Jack(ジャック)
私たちは11月15日に、いくつかの例外を含む最終ポリシーを発表する(例えば、有権者登録を促す広告は認められる)。新しいポリシーは、広告主への変更の周知期間を設けるため、11月22日から施行される。

Jack(ジャック)
最後通達。これは言論の自由とは関係ない。問題は、金でリーチを伸ばすことだ。政治的発言のリーチを金を払って伸ばすことには計り知れない悪影響があり、今日の民主主義の社会基盤は、その準備ができていない。これに対処するために、一歩後退することには意味がある。

一方、Facebookは、政治広告のファクトチェックはもう行わないと先日発表した。つまり、Facebookに料金を支払って拡散する限りは、嘘でも構わないということだ。

Facebookの立ち位置は、表面上はハッキリしていると言えないこともない。すなわち「政治に関して、我々は倫理感を持ち合わせていない」と要約できる。おそらく「だから偏向していると責めることはできないよ」と論点をずらそうとしているのだろう。

だが、これは何も不合理な推論ではない。政治キャンペーンに対して倫理的基準を一切設けないことで、Facebookは最も倫理観の乏しく、身勝手な規範しか持たない者たちの味方になっている。そのためその立場は、控えめに言ってもトゥルース・ライト(現実の希薄化)だ(どちらの政治陣営が優勢かを自分で決められる)。

Twitterの立場にも、やはり表面的な明確性がある。全面禁止だ。政治広告も問題提起広告もみなゴミ箱行き。だが私の同僚Devin Coldewey(デビン・コールデウィ)は、それが政治広告なのか(またはそうでないのか)を、さらに数少ない例外には何が該当するかを明確に判断しなければならない状況になると輪郭がぼやける傾向にあると、すぐさま指摘していた。

事実、Twitterの定義には、すでに疑わしい部分がある。例えば、気候変動は政治問題だと明確にしている部分だ。そのため、科学に関する広告も禁止されることになる。その一方で、おそらく大手石油企業からの金にはオープンで、気候変動を招く汚染ブランドの宣伝を許している。そう、めちゃくちゃなのだ。

Will Oemus(ウィル・オリマス)
問題提起広告とは何かをTwitterはどう決めてるのか?

Jack(ジャック)
私たちは、政治広告だけを禁止して、問題提起広告は猶予しようと考えた。だが、政治家だけが訴えたい問題のための広告枠が買えるのでは不公平だと思った。だから、これも禁止する。

Vijaya Gadde(ビジャヤ・ガディ)
現在の定義はこうです。1. 選挙や候補者に言及している広告。2. 国家的に重要な立法上の問題(気候変動、医療、移民、安全保証、税金など)。

Twitterの基準を挑発したり迂回を試みる動きは、必ず起きる。このポリシーは単純に見えるが、そこには同社の策略的な計算と、偏向や道義上の失敗を責められたときの逃げ道を確保するためのあらゆる判断が透けて見える。それでも、コンテンツの基準においては、ルールを定めることは簡単で分別のある行動であり、そうあるべきものだ。こうしたプラットフォームが本当に苦労するのは、その適用段階だ。

それもまた、Facebookが政治広告に関するルールを一切定めないという実験を決断した理由になっているのだろう。政治的発言のお目付役を押し付けられたくないという(はかない)望みのためだ。

それが戦略なのだとしたら、Facebookはすでに呆れるほど愚鈍で何も聞かないふりをする者を目指していることになる。同社は、自身の消極的な姿勢が招いた故意にポリシーに逆らった広告の摘発を強いられるという、今まさに渦中にある広告の悪夢への準備を整えたところだ。自ら望んで腐敗した警察官となったのだ。周囲から、パラパラと拍手が聞こえる。

とは言え少なくともそれは、自らの倫理感を迂回して金儲けをしている自分自身への慰めとしては役に立っている。

Erick Fernandez(エリック・フェルナンデス)
アレクサンドリア・オカシオ・コルテスからマーク・ザッカーバーグへの全質問。予備選挙中の共和党員に向けてグリーン・ニュー・ディールに彼らが賛成票を入れたという広告を私が出すことはできますか?』

Twitterの政治広告に対する逆のポリシーも、すでに述べたとおり批判は免れない。実際、政治広告の全面禁止は、一般の認識度が低いところからスタートする新人候補者に不利になるとの批判が起きている。その議論のエネルギーを、選挙費用の厳格な支出制限を含む、選挙運動資金調達の広範な改革に費やしたほうがましかも知れないが、すべての候補者が平等に戦えるようにして政治活動を再起動したいと本当に考えるならそれも必要だ。

また、不正な資金を厳格に管理できる規制も大切だ。それは、変身マントでマイクロターゲッティングによるハイパーコネクティビティーの姿をぼかしながら、嘘を大衆の真実だと偽って宣伝するために民主主義を買収する、あるいはインターネットプラットフォームのリーチとデータを乱用してプロパガンダの目に見えない種を播いては内部から民主主義を変貌させてしまうことを阻止するものだ。

説明責任を負わず民主主義の監視を受けず、豊富なデータを抱える億万長者から安く影響力を買おうという歪んだ関心が、新しい歪められた普通になっている。しかし、それは間違っている。

別の問題も伝えられている。政治宣伝のプラットフォームとしてTwitterは決してメジャーではないことを考えると、 同社の政治広告の禁止は目くらましだと言える。

2018年、米国の中間選挙の間にTwitterが政治広告で得た収益は、300万ドル(約3億3000万円)に満たない。

Ned Segal(ネッド・シーガル)
質問を受けたので:この決断は金ではなく原則に基づくものです。背景として、2018年中間選挙の際に得た政治広告の収益は300万ドル以下であることを公表している。Q4ガイダンスでも変化はない。私はTwitterで働くことに誇りを持っている!

Rich Greenfield(リッチ・グリーンフィールド)
Facebookは政治広告は収益の0.5パーセントだと言っている。2019年の政治広告の予想収益は最大で3億5000万ドル(約380億円)。Twitterは政治広告は300万ドル以下と言っている。2019年の予想収益の0.1パーセントであることを示している。

もうひとつ、Twitterにオーガニックなツイートとして投稿されたものはすべて、政治的な召集の呼びかけに利用できる。

Natasha(ナターシャ)
もちろん、実質的にはTwitterはみんな政治広告。

このでたらめなオーガニック”なツイートは、Twitter上の正真正銘の政治活動だ(ですよね、トランプさん)。

個人の純粋な気持ちではない、意図した(料金を払っていることが多いが)フェイクである偽のオーガニック”ツイートも含まれる。これはゴーイング・ネイティブ”(現地人に染まる)広告と呼ばれている。嘘を真実であるかのように言い広めることを目的とした偽ツイートだ。ボット軍団(偽アカウント)によって増幅され、見た目は普通のツイートを装い(Twitterのトレンドの話題が標的にされ)拡散される。関心を惹くことを目的とした、真実に逆らい歪める、一般の世論を模したジェスチャーとしての非公式”な広告もどきの構造だ。要するに、プロパガンダだ。

ボットのネットワークで宣伝ができるのに、なぜわざわざTwitterの政治広告に金を出す必要があろうか?

ドーシー氏も、一部の著名な政治家(これもまた基本的にトランプだけど)のツイートにはプラットフォームのルールを適用しないハイテク企業のCEOであることを忘れてはいけない。

なので、Twitterが政治広告を禁止すると言っても、世界の指導者たちのツイートには今後もダブルスタンダードが適用される。具体的には、米大統領の独裁的で右翼思想の政治的目標を達成するための弱い者いじめの暴言や脅しを許していることだが、Twitter社はその矛盾を両立させている。

最近になって、Twitterはポリシーをわずかに変更した。無法な世界的リーダーのツイートのリーチに制限を加えるというのだ。だが、引き続き2つのルールで運用される。

この葛藤を自身のツイートストームの中で前面に押し出したドーシー氏の行動は評価できる。彼はこう書いている。

インターネットによる政治広告は、民間の議論にまったく新しい課題を提示しています。機械学習によるメッセージの最適化やマイクロターゲティング、野花しの虚偽情報、ディープフェイクなど。これらすべてが急激に増大し、発達し、圧倒的な規模に発展しています。

こうした課題は、政治広告のみならず、あらゆるインターネット・コミュニケーションに影響を及ぼします。その根本にある問題に、さらなる負担や複雑性、費用をかけずに対処することが得策です。二兎を追うものは一途も得ず、私たちの信頼にも傷をつけます。

ドーシー氏にしては、よい文章だ。彼とTwitterの長年にわたる言論の自由原理主義のことを思えば、驚くほど良い。同社は、表現の自由をインターネット上に蔓延させるために、故意に目をつぶり耳を塞いで、一般社会による制限に対する盾になることで評価を得た。それがなければ、あらゆるひどいことを増幅させる自由”が、マイノリティーを一方的に傷つけ、言論の抑圧につながってしまう。

いわゆる言論の自由は、リーチの自由とは違うと、ドーシー氏は今になって話している。

今回の政治広告禁止に向けて、政治問題の定義に関するTwitterの判断にはいくつか残念なものもあったが、それは、まだ同じ熱い空気の中でもまれているFacebookやザッカーバーグ氏とは対照的だ。民主主義を、自身が所有する会社ですら忠誠を示すことができない二元論的イデオロギーに売り払うという、つじつまの合わないプラットフォームのポリシーを正当化しようとする姿は、硬直しているように見える。

Facebookの収支報告会の最中というドーシー氏のツイートストームのタイミングは、まさにその点を突こうと意図したものだ。

「ザッカーバーグは、複雑性の中に溺れかけている会社を経営しているにも関わらず、微妙な意味合いも、複雑性も、文化的特異性も関係なく、人は言論の自由に賛成か反対かのいずれかでなければならないと信じさせたいようだ」と、文化史家Siva Vaidhyanathan(シバ・ベイドヒャナサン)氏は、ザッカーバーグ氏の言論の自由に関する宣言”を受けた最近のガーディアンの記事で、道徳観を欠いたFacebookを批判した。「彼は、我々の議論をできる限り抽象的に観念論的にしたがっている。Facebook自身のことをあまり近くから見ないで欲しいと思っている」

言論に関するFacebookの立場は、単に抽象論の中でのみ成立する。その広告ターゲティング事業が、規制されていない曖昧さの中の道徳的な怒りとは無縁の場所でしか運用できないのと同じだ。そこに焼き付けられた偏見(アルゴリズムとユーザーによって生成される)は、目に見えない安全なところに隠されているため、人々は、そのことと自分にもたさされる被害とを結び付けて考えることができない。

次々とスキャンダルを生み出すその企業が、今ではそのでたらめなイデオロギーのために議会から呼び出されるまでになったことは驚きに値しない。ここ数年間のプラットフォーム規模の虚報や世界的なデータ漏洩スキャンダルのおかげで、一部の政治家たちはこの問題に詳しくなってきた。彼らは、Facebookのポリシーが現実世界ではどのような形で実行されるか、つまり不正選挙や社会的暴力だが、それをよく見て体験してきている。

関連記事:政治広告の嘘を容認しているとして英国議会がFacebookを非難(未訳)

これらの、プラットフォームの巨人を問題視するようになった政治家たちには、反社会的なソーシャルメディア事業に直接効く有意義な規制を立案することが期待される。

とりわけ、Facebookの自主規制は、いつだって新手の危機管理広報に過ぎない。本物の規制を、先手を売って回避するためにデザインされている。それは、私たちの関心を逆手に取って収入源を堅持しようとする冷笑的な試みだ。同社は、その有害な言論問題の修正に必要な体系的な改革に着手したことは一度もない。

つまるところ問題は、毒性と分断がエンゲージメントを高め、関心を引き、Facebookに膨大な利益をもたらしているということだ。

Twitterは、そのビジネスモデルからは少々距離を保っていると言ってもいい。その理由は、関心を独占して利益を生み出すことに関して、Facebookの大成功の足元にも及んでいないことの他にも、自分の興味に従ってネットワークを構築したりフォローできる大幅な自由をユーザーに与えていることがある。そこでは、アルゴリズムの介入は受けない(たしかにアルゴリズムを使ってはいるが)。

またTwitterはしばらくの間、改革と自称する道を進んでいたことがある。最近になって同社は、プラットフォーム上で会話的健康の推進に責任を持ちたいと語っている。そこにはすでに会話的健康があると言い切れる人間はいないものの、政治広告の禁止がTwitterに迅速な広報の勝利をもたらしたこととは別に、私たちはついに何らかの行動を見ることになりそうだ。

しかし、本当に骨の折れる仕事は今後も続く。例を挙げるなら、悪意のプロパガンダで公的空間が汚染される前にボット軍団を摘発するという作業だ。Twitterはまだ、その可能性が高まっているとは言っていない。

Facebookも、オーガニック投稿を装った政治的なフェイク・コンテンツの尻尾を捕まえられずにいる。フェイクは、ヘイトと嘘を撒き散らし、私たちの民主主義の負担で儲けている。

その手のコンテンツに関して、Facebookは検索可能なアーカイブを提供していない(今では政治的と判断された有料広告には提供がある)。つまり、グループやページでの無料の投稿という、民主主義を狡猾にハッキングする不正資金の隠れ蓑を提供し続けているということだ。

さらにFacebookは、有料政治広告の影響力を隠していたカーテンを開いて透明化すると宣言してはいるが、みごとに失敗続きだ。その政治広告用APIは、学術研究の世界からは目的に適わないいまだに非難されている。その間も、Facebookのポリシーは、政治家による嘘の広告を容認し、外部のファクトチェック団体への圧力を強めている。

Facebookは、組織的な非認証行為と彼らが遠回しに呼ぶ増幅とリーチ稼ぎのために設定した偽アカウントのネットワークを排除する際に、問題となるプロパガンダが米国内から発せられていて、政治的右派に傾いている場合は、偏向した基準を適用している点でも非難されている。

シバ・ベイドヒャナサン(10月26日付けツイート)
4000もの広告主がブライトバートに金を使わなくなったとき、なぜFacebookがブライトバードに資金を出すようになったかを考えて欲しい。
【訳注:ブライトバードは右派のニュースメディア】

Facebookは、例えば米国の保守系ニュースサイトThe Daily Wire(ザ・デイリー・ワイヤー)の内容を専門に広めているとされているFacebookページのネットワークは「米国の実在の人が運営する本物のページであり、彼らは我々のポリシーには違反していない」と主張し、それを否定している(そうした結論に至った詳細は、私たちには明かされていない)。

同社の広報担当者は、こうも言っている。「将来、Facebookのこうしたページに関する情報を人々がより多く得られるよう、透明化を進めています」

同社が約束しているのは、いまだにさらなる透明化”であって、実際に透明化するとは明言していない。そして、Facebookは、法的拘束力が一切ないポリシーの解釈と適用を行う唯一の裁判官で居続けている。つまり、いかさまの規制だ。

さらにFacebookは、国内でヘイトスピーチを撒き散らす特定の人物による有害なコンテンツを何度か禁止してきたものの、例えばAlex Jones(アレックス・ジョーンズ)氏のInfoWars(インフォウォーズ)ページを削除したとき、まったく同一のヘイト・コンテンツが新しいページで復活するのを止められなかった。または実際に、同じようなヘイト思想を持つ複数の人物が、別のFacebook内の公的空間で別のアカウントを持っていたりもする。ポリシー適用に一貫性がないのはFacebookのDNAだ。

それとは真逆に、ドーシー氏の政治広告に反対する姿勢をとるという判断は、良い意味で政治家的に思える。

また、基本的なレベルにおいて、明らかに正しい行動だった。政治活動で集めてきたよりも、ずっと大きな関心を金で買うということは、豊富な資金を持つ人間に有利に働くために逆進的だ。とは言え、Twitterのスタンスでも、金が流れ続け、政治を汚染しているこの崩壊したシステムを立て直すことはできない。

しかも、オーガニックなツイートの形式に収まっている場合に、Twitterのアルゴリズムが政治的発言をどのように増幅させるかについて、本当に詳しいところはわかっていない。そのため、そのアルゴリズムによって強調されるのが、煽動的な政治的ツイートなのか、または情報を提供し団結を求めるツイートなのかは判然としない。

前述したとおり、Twitterのプラットフォームは、全体が政治広告だと言うことができる。同社は、独自の(そして商業的な)エンゲージメント性”を基準にしたツイートを表に出すか抑制するかの判断を、実際にアルゴリズムにさせている。つまり、ツイートされた言葉をどれだけ広く伝えるか(または伝えないか)を選別ことこそが、Twitterの事業なのだ。

そこに数多くの政治的発言が含まれることは明らかだ。トランプのお気に入りのプラットフォームがTwitterなのは、理由があってのことだ。政治広告を禁止したところで、そこが変わることは一切ない。したがって、今回もまた、ソーシャルメディアの自主規制は、よくても端っこを少しいじくる程度のものと考えざるを得ない。

Twitterが政治広告を禁止したのは、関心を集めることを目的としたインターネット・プラットフォームに焼き付けられている構造的な問題から人々の目を逸らすためだと、皮肉な見方もできる。

世界の民主主義と社会が格闘を余儀なくされている有害な政治的論説の問題は、インターネット・プラットフォームのコンテンツの配信方法と公的な討論の作り方が招いたものだ。そのため、本当の鍵となるのは、これらの企業が私たちの個人情報をどのように使って、個々の私たちが目にするものをどのようにプログラムしているかだ。

私たちが心配しているのは、Twitterの政治広告禁止によってドーシー氏が何かのついでに話した根本の問題”から人々の目が逸れてしまう危険性だ(おそらく彼は、彼らの理念に別の定義を持ち出すであろうが。ツイートストームの中で彼は「私たちのシステムが虚報を広めているという批判を止めさせる努力をしている」と話していた)。

Facebookの、同じ問題に関する一般の診断は、つねに、じつに退屈な責任転嫁というものだ。それは単に、人間の中には悪い者もいるがゆえに、悪いものがFacebookでプラットフォーム化されることもあると言っているに過ぎない。問題の原因を人間性にすり替えている。

別の言い方をしよう。インターネット・プラットフォームが有害なプロパガンダを拡散することに関連するすべての問題に共通する核心は、私たちの関心を操作するために人の個人情報を集めているという根本的な事実だ。

マイクロターゲティングという事業(行動ターゲット広告とも呼ばれる)は、すべての人を、なんらかのプロパガンダのターゲットにする。これは、ドナルド・トランプにやられても、ディズニーにやられても、気分のいいものではない。左右非対称だからだ。不均衡だからだ。搾取的だからだ。そして本質的に反民主主義的だ。

またそれは、産業規模で個人情報をあまねく収集し大量備蓄するよう奨励する。したがってそれは自ずとプライバシーの敵であり、安全を脅かし、大量のエネルギーとコンピューター資源を消費する。なので、環境面から見ても不快なものだ。

そしてそれはすべて、非常に卑しい目的のために行われる。他の人たちがあなたに何かを売りつけるために、あなたの情報を売り渡すというプラットフォームだ。石鹸も政治的意見も同じ扱いだ。

このプロセスをザッカーバーグ氏は、Relevant ads”(関連広告)と命名した。下流で私たちの関心を売るのに必要な個人データを吸い上げるパイプに油を注すための億万長者の巧妙な嘘だ。

マイクロターゲティングは、個人にとっても(気味の悪い広告、プライバシーの喪失、偏向やデータ乱用の危険)、また、まったく同じ理由で社会にとっても不愉快なものだ。さらに、選挙への不当な介入や、苦労して勝ち取った民主主義を敵意に満ちた勢力が踏みにじるなど、社会レベルでも深刻な危険をもたらす。

個人のプライバシーは、公衆衛生と同じ、公共の利益だ。病気や、まさに虚報に対する予防接種は、私たち全員を感染症から守ってくれる。

間違いのないように言えば、マイクロターゲティングは、ターゲット広告の料金をプラットフォームが受け取ったときにだけ実行されるのではない。プラットフォームは、つねにこれを行っている。兵器化されたレイヤーを設け、扱うものすべてをカスタマイズしているのだ。

これが、ユーザーが自由にアップロードした情報を大量に配布しプログラムする方法だ。彼らが日課として作り上げている人々の日常の混沌の中から最大限のエンゲージメントを引き出すために、情報を魅力的でパーソナルな物語に作り替える。それを、人間の編集者を大勢雇うことなく行っている。

Facebookのニュースフィードは、行動ターゲット広告が関心を引きつけ保持するのに使用しているものと同じデータ駆動の原則に依存している。Twitterのトップツイート”も、ビューをアルゴリズムでランク付けしている。

これは、ソーシャル”サービスに詰め替えられた大規模な関心操作のプログラムだ。プラットフォームがインターネットのユーザーをスパイして学んだことを、対立を煽り、個人の関心を縛りつけるために利用している。たとえその目的が、私たちを互いに敵対させることであったとしてもだ。

ある特定の政治的な意見を投稿すると、文字通り秒速で、何年も会っていなかったFacebookの友達”から暴力的な反論が示されるのは、そのためだ。Facebookは、彼らが所有するデータのプリズムを通してあらゆる人を神のように監視しているため、その投稿に強烈なパンチを与えることができる。データは、エンゲージメントを跳ね上げる可能性がもっとも高い順にランク付けされ、関連する”ユーザーに表示するようアルゴリズムにパワーを与える。

本物の友だちのグループにそんな遊び感覚のストーカーが含まれているかどうかは、誰にもわからない。みんなの会話を盗聴し、定期的にチェックして、集めた情報を使って友だちを喧嘩させて楽しんでいるような輩だ。そんな人間がグループの親睦を高めるなんてことはあり得ない。しかしそれがFacebookが監視下に置いたユーザーの扱い方だ。

直近の米議会公聴会で、痛い質問をされたザッカーバーグ氏が気まずそうに沈黙したのも合点がいく。

政治家たちも、ようやくデータのためにコンテンツを扱い社会技術プラットフォームに埋め込まれた本当の根本的問題”を理解し始めたようだ。

私たちを招き入れ、注視してもらうことで永遠の親密な間柄を築こうとするプラットフォーム。しかしそれには、スパイによって学んだ、さらなるスパイ技術と、より早くデータを悪用する技術が使われている。

つまり政治広告の禁止は、聞こえはいいが、目眩しだ。あちらからはあらゆる方向から監視されているにも関わらず、こちらからは彼らが何をしているのか見せないようにしているマジックミラーのようなプラットフォームが、社会に反抗して固持しているものを粉砕できる本物の手段は、プライバシーを完全に守れるカーテンを閉じることだ。個人情報に対するターゲティングを許さないことだ。

投稿や広告を表示させるのは構わない。投稿や広告を、少数の一般的な情報に基づいて、その文脈の中で表示するのもいいだろう。住宅や日用品の広告を見たいかどうか、私たちに聞いてもいい。双方で話し合ってルールを決めるのだ。それ以外のこと、つまり誰と話し、何を見て、どこへ言って、何を言ったかなど、プラットフォームの内外での行動については、厳格に立ち入り禁止とする。

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(翻訳:金井哲夫)

カリフォルニア州が調査への協力不十分としてFacebookを提訴

米国カリフォルニア州のXavier Becerra(ザビエル・べセラ)司法長官は、Facebook(フェイスッブック)とCambridge Analytica(ケンブリッジ・アナリティカ)に関する州の調査に資料を提出せず「調査の足を引っ張り続けている」としてFacebookを提訴した。

べセラ司法長官は11月6日、訴状の中でFacebookが1年以上前に始まった非公開の調査にかかる2回にわたる召喚状への対応が「明らかに不十分」だったと述べている。訴状には「Facebookは19件の質問に対して答えておらず、6件の提出要求では書類を出さなかった」と書かれている。

対象となる書類は、CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏やCOOのSheryl Sandberg(シェリル・サンドバーグ)氏を含む役員のやり取り、そして同社のプライバシー変更に関係する資料だ。

訴状ではFacebookに関して、司法長官が言うところの「世界で最も金を持っている企業の1社による非合法的な事業プラクティスについての深刻な疑惑」にかかる「正当に発行された召喚状と質問にFacebookは対応しなかった」と説明している。そしてべセラ司法長官はいま、Facebookに書類を提出させるよう裁判所に求めている。

今はなきCambridge Analyticaは、米大統領選時に選挙関連の広告でどういった投票者に絞るべきかでトランプ陣営をサポートするために使われた幾千万ものFacebookプロファイルを廃棄した。Facebookはこの破棄されたプロファイルの分析を禁止し、有権者データの調査会社を締め出した。後にFacebookは、2012年にプライバシー法に違反したとして連邦取引委員会から50億ドル(約5400億円)の罰金を科せられた。このプライバシー法では企業にユーザーデータのプライバシー保護を求めている。

Facebookの広報はコメントの求めに応じなかった。

画像クレジット: Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

Facebookは企業ブランドを強化して傘下アプリの一体化を目指す

Facebookは人々に、グループ会社のInstagram、WhatsApp、Oculusなどをもっと知ってもらいたいと同時に、Facebookのメインアプリのアイデンティティーも独自に確立したいと思っている。そこで米国時間11月4日、Facebookはアプリとは別に会社としての新しいロゴを発表した。社名はすべて大文字になり、シフトするカラースキームはInstagramのパープルグラデーションとWhatsAppのグリーンの色合いを表している。

「近いうちに、当社のグループ製品や宣伝資料に新しいブランドを使い始める。公式ウェブサイトも同様」とFacebookのCMOであるAntonio Lucio(アントニオ・ルシオ)氏は書いた。例えば、Instagramのログイン画面の下端には「from FACEBOOK」のブランディングが表示される。これまでFacebookは、ブルーとホワイトあるいは白抜きで小文字の「f」をロゴに使用していた。

会社全体を包括する別のネーミングも考えたとルシオ氏は言った。「あらゆる選択肢を考えたが、社名を維持することが重要だという結論に達した。これまでずっと、そしてこれからも我々はFacebookであり続ける。我々が体現するもの、我々が下す決断、人々に対する我々の責任、そしてブランド間の関係を維持していくためには、名前を変えないことが重要だった」。実際、象徴である名前を変えていたら、会社が問題のある過去を消しさろうとしていると思われたかもしれない。

Facebookは去る6月からリブランディングのプロセスを始めていて、グループ会社のアプリに「from Facebook」のキャッチフレーズを付加した。The Informationによると、Facebook CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、FacebookがInsagramやWhatsAppを所有していることの功績に対する世間の評価に満足していないようだ。

ザッカーバーグ氏は今月の決算会見でも、同社への反トラスト捜査によって傘下企業が分割させられるのではないかとの質問に対してその感情を顕にした。5000万ユーザー以下だったInstagramを現在の10億ユーザーの会社に変えたのは、スパム対策、国際化、広告などにFacebookのリソースを使ったからだと同氏は強調した。

Facebookは機先を制して反トラスト捜査に対する防御に出ていると見る向きもある。リブランディングだけでなく、同社はFacebook Messenger、WhatsApp、Instagram Directを相互乗り入れ可能な統合暗号化メッセージングシステムにして、ユーザーがアプリ間でチャットできるようにしようとしている。集中化された基盤上にシステムを構築すればFacebookの分割はより困難になる。

一連のリブランディング行動は、尊大であり下手なやり方だという見方もある。「Facebookのグループ会社にInstagramやWhatsAppがいることをほとんどの人が知らない」という事実に助けられている可能性もあるからだ。Pewの最近の調査によると、両社がFacebookの子会社であることを知っていた米国人はわずか29%だった。

Facebookがデータ漏洩や選挙介入などのスキャンダルにまみれていることを考えると、Instagramを使うことで汚染されずにすむと人々が思ってくれたほうが恐らく得策だ。

Facebookは、中央集権的な会社を作るためなら、グループ会社の若きアプリたちの信用を損なってもいいと思っているようだ。FacebookがAdam Mosseri(アダム・モセリ)氏とWill Cathcart(ウィル・キャスカート)氏という忠実な副官たちをInstagramとWhatsAppにそれぞれ差し向けて以来、買収された企業の自主性は薄まっている。

Facebookにとって、政府の規制より大きな問題はなにか?もし現在あるいは将来の有能な人材が、Facebookは子会社の可能性を抑制していると考えるようになれば、トップクラスの人たちはこのソーシャルネットワークファミリーの一族になりたいとも居続けたいとも思わなくなる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Facebookは悪事を招く類似ドメイン名詐欺でOnlineNICを提訴

Facebookは米国時間10月31日、ドメイン名登録業者のOnlineNICと、同社が運営するプロキシサービスであるID Shieldを、カリフォルニア州に提訴したと発表した。「www-facebook-login.com」や、「facebook-mails.com」など、Facebookと関連があるように見せかけたドメイン名を登録している件についてだ。こうしたドメイン名は、一般のユーザーを意図的に誤解・混乱させ、Facebookとやり取りしていると信じさせるものだとFacebookは主張している。

これらの偽のドメインは、フィッシング詐欺など悪事に結びつくことが多い。そのようなドメインを登録することで、最終的に法外な金額でFacebookに買い取らせて暴利を得ることを企む者もいれば、さらに悪い意図を持った者もいる。また、Facebookが独自暗号通貨のLibraを発表したのに伴って、多くの新しいドメイン名について、ネット不法占拠者が出現している。Facebookは最近、「facebooktoken.org」や「ico-facebook.org」など、そうしたドメイン名のいくつかを無効にすることができた。しかし、すでにその中の1つはFacebook ICO(Facebookによる新規仮想通貨公開)を名乗ることで、個人情報の収集を始めていたことが確認されている。

しかし、Facebookの今回の訴訟はOnlineNICだけに焦点を当てたものとなっている。Facebookによれば、OnlineNICには、自ら運営するプライバシー/プロキシサービス、ID Shieldを使って、ドメイン名の登録をネット不法占拠者に許可した前科があるという。この訴訟では、「hackingfacebook.net」などの登録されたドメイン名が、「フィッシング詐欺やハッキングツールを販売しているとされるウェブサイトの運営」など悪事のために利用されているとしている。

またこの訴訟は、FacebookやInstagramの商標と紛らわしく、誤解を与える可能性のあるほかの約20のドメイン名も含むものだという。

OnlineNICは、この種の活動を許可したとして、以前にもVerizon、Yahoo、Microsoftなどから訴えられた経緯がある。Verizonの場合(編集部注:VerizonはTechCrunchの親会社)の場合、OnlineNICはVerizonの商標に似た600以上のドメイン名の登録に責任を負うとされ、裁判所は3315万ドル(約35億8500万円)の損害賠償を裁定した。これについてもFacebookの訴状に記されている。FacebookはOnlineNICの活動に対して、永久的な差し止め命令と損害賠償を求めている。

Facebookとしては、同社が示した懸念にOnlineNICが対応しないので、この問題を法廷に持ち込むことにしたという。Facebookは同日、複数のドメイン名登録業者と、それぞれのプライバシー/プロキシサービスによる登録の悪用の事例も積極的に報告している。多くの場合、そうした業者に働きかけて、悪意のあるドメイン名を無効にしたことも明かしている。しかし、この問題が及ぶ範囲は広い。現状では、こうしたサービスを通して数千万のドメイン名が登録されている。もちろん、その中には、評判のよろしくないビジネスも含まれている。OnlineNICのような一部の業者は、Facebookが発行した悪用のレポートに基づいて調査することをしないばかりか返答さえよこさない。

今回の訴訟に関するニュースは訴状に基づいて、すでにCnetやその他のドメイン名を扱うニュースソースによって報告された。以前の裁判で、Verizonへの3315万ドル(約35億8600万円)の賠償を勝ち取った弁護士であるDavid J. Steele(デイビッド・J・スティール)氏が、この訴訟でもFacebook側に立っている。

「OnlineNICとID Shieldは、私たちのアプリやサービスの名前を含むドメイン名によって、それらを正規なものに見せかけ人々を混乱させることを意図しています。こうした活動は、サイバースクワッティング(ネット不法占拠)として知られており、OnlineNICにはその前科があります」とFacebookは発表の中で述べている。「この訴訟は、人々の安全とプライバシーを保護するための、私たちの継続的な取り組みの、もう1歩進んだステップなのです」。

OnlineNICに対してはコメントを求めており、何らかの応答があれば記事を更新する。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

FacebookはQ3決算好調で株価上昇、ユーザー数は2%増の24.5億人に

終わることのない世間の批判を浴びながらもFacebook(フェイスブック)は成長を続け、メディアの反発と業績の悪化が必ずしもイコールではないことを示した。

Facebookの月間ユーザー数は24.5億人に達し、2019年Q2の24.1億人からから1.65%伸ばした。前期の伸び率は1.6%だった。1日当たりのアクティブユーザー数は16.2億人、2%増で、前期の1.6%増15.87億人から上昇した。売上は176.52億ドル対前年比29%増、1株当り利益は2.12ドルだった。

Facebook Q3 2019 DAU

Facebookの実績はRefinitiv(リフィニティブ、トムソン・ロイターのファイナンシャル・リスク部門が前身の会社)の業績予想では売上で173.7億ドル、1株当り利益(EPS)1.91ドルを上回った。ただし、Bloomberg(ブルームバーグ)の業績予想ではEPS 2.28ドルにはおよばず悲喜こもごもの四半期だった。Facebookの利益は60億ドルで、前期はSECとの和解金支払いのため利益がわずか26億ドルだった昨年を上回った。。

Facebook株は、決算発表後の時間外取引で5.18%高の198.01ドルだった。その日の一般市場の終値は0.56%安の188.25ドルだった。

注目すべきは、Facebookが事業の中核をなす米国・カナダ、および欧州市場でそれぞれ200万人のユーザーを獲得したことだ。過去2年間は不調の四半期が続きゼロないしわずかな成長だった。1ユーザー当たりの平均売上は全市場を通じて順調で、現在大幅にユーザーを増やしている途上国における収益能力を高めたいFacebookにとって吉兆だった。

Facebookによると、毎日22億人のユーザーがFacebook、Instagram、WhatsAppまたはMessengerを使用しており、28億人が毎月1度以上このファミリーのアプリをどれか使っている。前四半期はそれぞれ21億人と27億人だった。Facebookは、復活したSnapchat、最近ではTikTokなどとの激化する競争の中、ユーザーの定着を実現している。しかし、ライバルたちが対抗に力を入れているInstagramについて、Facebookはユーザー統計情報を公開していない。

Facebook ARPU Q3 2019

ザッカーバーグ氏は自らの政治広告方針を擁護

Facebookの決算会見は、Twitter CEOのJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏が10月30日、政治広告を全面的に禁止すると発表したことで影を投げ掛けられた。政治広告の全面禁止は、以前TechCrunchがソーシャルネットワーク各社に推奨していた。ドーシー氏の行動は、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏が、かつてFacebook広告のファクトチェックを拒み、政治家が虚偽情報を流す片棒をかついだことと好対照をなした。このことはFacebookに方針を再考させる圧力を高めることになるだろう。

ザッカーバーグ氏は自身の方針を強化し、「透明性を高めることがいいアプローチだと信じている。Facebookにおける広告はすでにどこよりも透明だ」と彼は言った。その方針が欲得から来ているという指摘を打ち消そうと、政治広告による収益は「来年の収益の0.5%以下にしかならない」と主張した。人々はそれに同意せず問題は続くであろうことから、同氏は来年が「非常に厳しい年」になることを認めた。

さらにFacebookは、筆頭社外取締役のSusan D. Desmond-Hellmann(スーザン・デスモンド・ヘルマン)氏が健康上の理由で辞任したことも発表した。

関連記事:Zuckerberg defends political ads that will be 0.5% of 2020 revenue

決算会見の要点

Facebookは、Q4に売上が減速すると予測している。しかし、CFOのDavid Wehner(デビッド・ウェナー)氏は、「2020年の売上減少はQ4と比べてずっと緩やかになる」との希望を示した。その結果Facebook株価は191ドル前後から198ドル前後へと急騰した。

それでもFacebookは、その積極的な雇用を継続するだろう。人工知能が益々役立つようになると会社は言っているが、ザッカーバーグ氏は人員増加を続けると言う、なぜなら「とにかくコンテンツの量が多いので多くの人間が必要」だからだ。

Zuckerberg Libra 1

暗号通貨Libraに対する規制の強化についてザッカーバーグ氏は、もしうまくいかなくてもFacebookはすでに決済手段の多様化を進めていると表明し、WhatsApp PaymentやFacebook Marketplace、Instagram shoppingなどの存在を挙げた。

反トラストの懸念についてザッカーバーグ氏は、アナリストたちはFacebookがInstagramを買収した時にい同社の成功を信じていなかったが、Facebookの支援のおかげで激しい競争に勝って生き延びたことをあらためて語った。今後多くを聞くことになるであろう話題の1つとして同氏は、ライバルたちがある分野の成功を利用して他の分野を強化していることを指摘し、「AppleとGoogleはカメラを作り、個人写真の共有と写真管理を直接オペレーティングシステムに組み込んだ」と語った。

スキャンダルは続く、しかし成長も続く

総合的に見て、今期もまたFacebookに対する社会認識の厳しい四半期だった。規制当局からLibraの承認を取り付けるための苦悩が続いた。Facebookの共同創業者であったChris Hughes(クリス・ヒューズ)氏(SXSWで私と一緒に話をする予定)は、Facebookは分割されるべきだという運動を展開した。エリザベス・ウォーレンを始めとする大統領候補らと同じ立場だ。

Facebookは新たな収入源も見つけた。コンテンツクリエイターに対するファンの支援から30%の手数料を得ることもその1つ。さらにビデオのサブスクリプションをパブリッシャーに販売するほか協業向けサービスWorkplaceの料金を値上げした。

しかし、そうした収入増も、プラットフォーム上での違法コンテンツの摘発に必要な人件費で帳消しされそうで、社員数は前年比28%増の4万3000人になる見込みだ。コンテンツ管理者の扱い方にはまだ問題が残されており、海外発の組織的な虚偽情報を繰り返し削除しなくてはならなかった。次第に進むブランド力の低下に対応すべく、FacebookばInstargramとWhatsAppに「from Faceboook」の名を冠した。

FTCによる追究はわずか50億ドルの罰金で和解に達し手ぬるい懲戒だと指摘する向きもあり、、ビジネスモデルを大きく変えるつもりがない点については特に問題視された。しかし同社はプライバシー、セキュリティー、および透明化のための新たな要求に答えるために、製品リソースへの投資と多様化を続けなくてはならない。こうした事情によって、中国のIT巨人であるByteDance(バイトダンス)のTikTokの迫りくる脅威への対応は遅れるかもしれない。

関連記事:Zuckerberg misunderstands the huge threat of TikTok

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Facebookが情報流出の罰金支払いで英当局と合意するものの責任は認めず

Cambridge Analytica(ケンブリッジ・アナリティカ)情報不正使用の件で、Facebook(フェイスブック)は罰金50万ポンド(約7000万円)を支払うことで英国のデータ保護当局であるICO(情報コミッショナー事務局)と合意した。

合意の一環としてFacebookは罰金に関する控訴を取り下げる。しかし合意の文言としては、罰金支払いに関する責任は一切認めていない。今回の罰金は、適用する英国データ保護法のもとでは最高額となる。なお、Cambridge Analyticaの情報不正問題は、欧州のGDPRが施行される前に存在していた。

ICOが課す罰金に対するFacebookの控訴は「英国のユーザーのデータがCambridge Analyticaによって不正に使用されたという証拠はない」という主張に基づいていた。

そしてさらに、勝訴した最初の裁判ではさらなるひねりがあった。6月にあった裁判では「手続きでの公正さとICO側の先入観のある主張」は考慮されるべきとした。

この決定により、ICOはFacebookへの罰金を決めた経緯に関する材料を公開することになった。電子メールをさかのぼってチェックすることに明らかに熱心でないICOは先月上訴した。Facebookに控訴を取り下げさせる合意に基づいて、ICOも取り下げる。

合意内容の骨子を記した発表文で、ICOは次のように書いている。「コミッショナーは、今回の合意はFacebookユーザーである英国の当事者の関心に応えるものだと考えている。FacebookとICOは、適用されるデータ保護法を遵守するよう引き続き取り組む」。

ICOの広報は、発表文に加えることはないとして、追加の質問には答えなかった。

合意の一環として「FacebookはICOが上訴の過程で公開した一部の文書(特定していない)を『他の目的』の使用のために保持することが許される」とICOは書いている。この目的には、Cambridge Analyticaをめぐる問題のさらなる独自調査が含まれる。さらに「ICOの意向で調査の一部が以前保留されていて、いま再開できる」とICOは加えている。

合意の条件として、ICOとFacebookはそれぞれの訴訟費用を払う。50万ポンドの罰金はICOが保持するのではなく、大蔵省の整理公債基金に入る。James Dipple-Johnstone(ジェームズ・ディプル・ジョンストーン)長官代理は声明文で次のように述べている。

Facebookが罰金通知に対する控訴を取り下げ、罰金を支払うことに合意したことをICOとして歓迎する。ICOの主な懸念は、英国市民のデータが深刻な害を受けるリスクにさらされたことだった。個人情報とプライバシーの保護は、個人の権利のためだけでなく、強固な民主主義の維持のためにも根本的な重要性を持つ。Facebookが基本原則を受け入れたこと、そして今後もそれを理解して則るために大きな一歩を踏み出したことを嬉しく思う。個人情報とプライバシーの保護に対する強い責任でもって、Facebookが前進し、今回のケースから学習すると期待している。

ICOのコメントにつけられたFacebookの見解として、同社のディレクターで顧問弁護士のHarry Kinmonth(ハリー・キンモス)氏は次のように加えている。

ICOと合意に至ったことは喜ばしい。以前述べたように、2015年のCambridge Analytica問題についての主張を調査するために我々はもっと多くのことをしたかった。その後、我々はプラットフォームに大きな変更を加え、中でもアプリデベロッパーがアクセスできていた情報に大きな制限を設けた。人々の情報とプライバシーの保護は、Facebookにとって最優先事項だ。そして我々は人々が自身に関する情報を保護・管理できるよう新たなコントロールを引き続き構築する。ICOは、EUのFacebookユーザーのデータがDr KoganによってCambridge Analyticaに送られた証拠は発見できなかった、と述べていた。しかしながら、我々は政治目的でのデータ分析使用についてのICOの広範で継続中の調査に今後も喜んで協力する。

ここでの慈善的な解釈は、FacebookとICOは互いに手詰まりとなり、さらに醜聞を呼ぶことになるかもしれない訴訟を長引かせるよりも終わらせることを選び、早急な結果で事態収拾を図ったということになる。

PR(ICOに罰金を払いFacebook問題に一線を画す)、そしてCambridge Analyticaスキャンダルに関するFacebookのさらなる内部調査への有用な情報、という意味での早急な結果だ。

ICOの隠匿した文書から何が得られるのかは定かではない。しかし、このスキャンダルをめぐりFacebookが米国で多くの訴訟に直面するのは確かだ。ICOはちょうど1年ほど前にCambridge AnalyticaスキャンダルでFacebookに罰金を科す意向を明らかにした。

2018年3月、ICOは令状をとって、今はないデータ会社の英国オフィスの家宅捜索を行い、ハードドライブや分析用のコンピューターを押収した。ICOはこれより前にFacebookに対して同社が行っていたCambridge Analyticaのオフィスの調査から手を引くよう命じた。

1年前の英国議会委員会への報告で、情報コミッショナーのElizabeth Denham(エリザベス・ダーハム)氏とDipple-Johnstone(ディップル・ジョンストーン)氏は、Cambridge Analyticaから押収したデータの調査について協議した。「Cambridge Analyticaが横領したFacebookユーザーデータは知られているよりも多くの会社に渡っていたかもしれないと確信した」と言っている。その時点で「ICOは約6社を調べている」と語った。

ICOはまた「Cambridge Analyticaがすべて消去したと主張していたにもかかわらずFacebookデータの一部を保持していたかもしれない」という証拠を持っていると委員会に語った。「フォローアップは強固なものではなかった。それが我々がFacebookに50万ポンドの罰金を科した理由の1つだ」と当時ダーハム氏は語っていた。

証拠の一部は、Cambridge Analytica絡みの訴訟での弁護に備える時、Facebookにとってかなり有用なものになりそうだ。またプラットフォームの監査の助けにもなる。スキャンダル後、Facebookはアプリの監査を実施し、かなりの量のユーザデータをダウンロードした全デベロッパーの正当性を調べる、と語っていた。Facebookが2018年3月に発表した監査はまだ継続中だ。

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(翻訳:Mizoguchi)