コンピュータービジョンを利用して製品写真を重要な属性へと分解するGlisten

今日この時代になっても、新しい服を探すための最善の方法が、いくつかのチェックボックスをクリックして、果てしなく続く写真をスクロールしていくやり方だというのには驚かされる。どうして「グリーンの模様のスクープネックドレス」と検索して、結果をみることができないのだろうか? Glistenは、まさにこの課題を解決しようとしているスタートアップだ。その技術はコンピュータービジョンを使用してどんな写真からでも、写っている製品の最も重要な属性を理解して抜き出すことができる。

えっ、そんな機能もうあるのではと思ったかもしれない。ある意味それは正しいが、それほど役に立っているとは言えない。共同創業者のSarah Wooders(サラ・ウッダース)氏は、MITに通い自分のファッション検索プロジェクトに取り組んでいる最中に、この問題に遭遇した。

「オンラインショッピングを先延ばしにしていた私は、そのときVネックのクロップシャツを探していたのですが、まず見つかったのは2着だけでした。しかし、ずっとスクロールしていくと、さらに20着ほど見つかりました」と彼女は言う。「そのとき私は商品が極めて一貫性のない方法でタグ付けされていることに気づきました。消費者が見るデータが非常に煩雑な場合、おそらくその裏側はもっと悪い状況になっています」。

明らかになっているように、コンピュータビジョンシステムは、犬種の識別から表情の認識まで、あらゆる種類の画像の特徴を非常に効果的に識別するように訓練されてきている。ファッションやその他の比較的複雑な製品に関しても、似たようなことを行うことができる。画像を見て、信頼レベルを付加された属性のリストを生成することが可能なのだ。

そのため、特定の画像に対して、次のようなタグリストが生成できる。

想像できるとおり、これは実際とても便利だ。しかし、それはまだ多くの望ましい結果を置き去りにしたままなのだ。システムは「maroon」(栗色)や「sleeve」(袖)が、この画像に存在していることは認識しているが、それが実際に何を意味するのかは理解していない。システムにシャツの色をたずねてみても、人間が属性のリストを手作業で整理して、タグのうち2つは色の名前、これらはスタイルの名前、そしてこちらはスタイルのバリエーションのことといった具合に教えてやらない限り、システムはうまく答えることはできないだろう。

1つの画像だけならそうした作業を手で行うのは難しくないものの、衣料品の小売業者は膨大な製品を扱い、それぞれに複数の写真が関連し、毎週新しいものが入荷してくる状況なのだ。そうしたタグをコピー&ペーストで延々と整理し続けるインターンに、あなたはなりたいだろうか? そんなことはまっぴらだろうし、実際誰もやろうとはしないだろう。この点こそが、Glistenが解決しようとしている問題だ。コンピュータービジョンエンジンのコンテキスト認識を大幅に向上させて、その出力をはるかに便利にするのだ。

同じ画像をGlistenのシステムで処理すると、以下のような結果になるだろう。

ずいぶん改善されていないだろうか。

「私たちのAPIのレスポンスは実際に、ネックラインはこれ、色はこれ、パターンはこれという形式で返されるのです」とウッダース氏は説明する。

この種の構造化データは、データベースに容易に挿入することができ、高い信頼性とともに問い合わせを行うことができる。ユーザー(ウッダース氏が後ほど説明したように、必ずしも消費者である必要はない)は、「長袖」(long sleeves)と指定すれば、システムが実際に衣服の「袖」(sleeves)を見て、それが「長い」(long)ものを選ぶことを知っているので、組み合わせてマッチングを行うことができるのだ。

今回のシステムは、成長を続ける約1100万種類の製品イメージと、それに対応した説明文ライブラリでトレーニングされた。システムは自然言語処理を使用してそれらの説明文を解析し、何が何を参照しているかを把握する。こうすることで、学習モデルが「formal」を色のことだと思ったり、「cute」が利用されるシーンのことだと思ったりすることを防ぐための、重要なコンテキスト上の手がかりが与えられる。だが、データを単に投入してモデルにそれを判断させれば良いといえるほど、物事は単純ではないのではと考えるあなたは正しい。

以下に示したのは、説明のために理想化されたバージョンの概要だ。

「ファッション用語には多くのあいまいさがあって、それは間違いなく問題です」とウッダーズ氏は認めるものの、それは克服できない種類のものではない。「顧客に出力を提供するときには、各属性にスコアを付けています。そのため、それがクルーネックなのか、それともスクープネックなのかがあいまいな場合には、正しくアルゴリズムが機能している限り、双方にスコアとして大きな重みを付加します。確信が持てない場合には、信頼性スコアが低くなります。私たちのモデルは、現場の人たちがどのように製品にラベル付けしたか、その結果の集合で訓練されていますので、みんなの意見の平均値を得られることになります」。

当初のモデルは、ファッションと衣類全般を対象としていたが、適切なトレーニングデータを使用すれば、他の多くのカテゴリーに適用することもできる。同じアルゴリズムで、自動車や美容製品などの特徴を見つけることができるのだ。例えばシャンプーボトルを探す場合な、袖(sleeves)の代わりに適用シーン、容量、髪質、そしてパラベン(防腐剤であるパラオキシ安息香酸エステル)含有の有無などを指定できる。

普通の買い物客たちは放っておいてもGlistenの技術のメリットを理解してくれるだろうが、同社は自分たちの顧客が、販売の現場の手前にいることに気がづいた。

「時間が経つにつれて私たちが気づいたのは、私たちにとって理想的な顧客とは、乱雑で信頼性の低い製品データを持っていることに、苦痛を感じているような人たちだということでした」とウッダース氏は説明する。「それは主に、小売業者たちと協力しているハイテク企業なのです。実際、私たちの最初の顧客は価格の最適化を行う会社で、また別の顧客はデジタルマーケティング会社でした。これらは、アプリケーションとして当初私たちが考えていたものよりも、かなり外れた場所にある応用なのです」。

ちょっと考えてみれば、その理由が理解できるだろう。製品についてよく知れば知るほど、消費者の行動や傾向などと関連づける必要があるデータが増えていく。単に夏のドレスの売上が戻ってきていることを知っているよりも、七分袖の青と緑の花柄のデザインの売上が戻ってきていることを知っている方が良い。

Glistenの共同創業者サラ・ウッダース氏(左)とAlice Deng(アリス・デング)氏

競争相手は主に、企業内のタギングチーム(私たちが誰もしたくないような手作業のレビューを行う)や、Glistenが生成するような構造化データの生成を行わない汎用コンピュータービジョンアルゴリズムである。

来週行われるY Combinator のデモデー前にも関わらず、同社はすでに月々5桁(数万ドル、数百万円)の定常収益を得ているが、現時点では彼らの販売プロセスは、彼らが役に立つと思った人々への個別のコンタクトに限定されている。「ここ数週間で、非常に多くの売り上げがありました」とウッダーズ氏は語る。

ほどなくGlistenは多くのオンライン製品検索エンジンに組み込まれることになるだろうが、理想的には利用者がそれに直接気がつくことはないだろう。ただ単に探しものがはるかに見つかりやすくなったように思えるようになるだけだ。

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(翻訳:sako)

B-Shoesは、高齢者の転倒を未然に防ぐ靴

米国では毎秒ひとり以上の高齢者が転倒して、年間2万7000人以上が亡くなっていると、CDC[疾病対策センター]は報告している。

しかし、イスラエルの都市ハイファのある企業が、転ぶことそのものを防ぐ方法に取り組んでいる。

B-Shoe Technologiesがプロトタイプを開発中の靴は、一歩踏み出すごとにバランスの乱れを検知して、ミニランニングマシンのようなシステムを使って自動的にバランスを取り戻す。

この靴は、圧力センサー、マイクロプロセッサー、移動検知器にソフトウェアを組み合わせて、履いている人が滑ったことを検知するとローラーを前後に動かして転倒を未然に防ぐ。

B-Shoe Technologiesは、現プロトタイプはごく初期段階にあり、デザインの無駄を省いて2年以内に量産する計画だと話している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

どんなに汗をかいてもさらっと乾いているウェアを微小流体工学の技術で開発するAtacama、すでに多方面から引き合い

激しいスポーツでどんなに汗をかいてもそのスポーツウェアは乾いているし、それだけでなく発汗がデザインの要素になる。世界でもっとも乾燥した砂漠の名前を借用したAtacamaは、微小流体工学の技術を利用して、まさにそんなテキスタイルを作った。National Science Foundationの補助金をもらっているAtacamaは、アパレルや自動車産業、ヘルスケアなど、さまざまな分野における、その技術の応用製品も探求している。スポーツウェアは、そのひとつの例だ。

医療の世界で微小流体工学が使われ始めたのは、1980年代の“lab-on-a-chip”デバイス(チップの上の実験室)からだ。それによって、血液などの液体の、非常に小さなサンプルを用いる研究が可能になった。微小流体工学のテキスタイルへの応用を考案したAtacamaは、それにより織物や編み物のほとんどすべてが乾燥状態を保つので、きわめて快適に感じる運動着などを作れる。今市場化されている水分を逃がすファブリックの多くは、汗を衣類の表面に引き出して早く蒸発させるが、微小流体工学は水分を小さな三次元のチャネル(channels, 水路)へ導き、液体の方向性をコントロールすることによって、それらを特定箇所に集めたり、テキスタイルから落としたりする。どこでその現象を起こさせるかは、製造者が決められる。

Atacamaの技術はカリフォルニア大学デイヴィス校の研究グループが作り、メンバーの一人だったSiyuan (Alex) Xingが現在のAtacamaのチーフサイエンティストだ。彼によると、直面した最大の難題は、微小流体デバイスを作るために使われている微小製造工程の多くが、フォトリソグラフィーでもレーザー切断でも、シリコンウェファーやガラスなどの剛体用に開発されたものであることだった。したがってそれらでは、ファブリックの上にチャネルを作るのが難しい。結局彼らが悟ったのは、“ソリューションはファブリック側から得られるものでなければならない”、ということだった。

チームはテキスタイルの製造方法を学習し、どの方法なら低コストで微小流体工学的なチャネルを作れるかを検討した。刺繍、織物、プリント、ニットなどあらゆる方法を調べ、またそれらのテクニックのために使われている最新の製造機械も調べた。

“たとえばニットなら、ジャカードというという一種の型紙を使ってさまざまなパターンをファブリックの表や裏に作り出している。パターンの解像度は一ループにまで小さくできる。それはほぼ100ミクロンぐらいで、しかも3Dだ”、とXingは語る。“刺繍では、針が一本の糸をファブリックの基質を通しながら操作するがそれは、微小流体工学チップの上の‘スルーホール’と似ている。テキスタイルの製造方法をどうやれば微小製造工程の代替になりえるか理解したので、テキスタイル中に微小構造体とそのパターンを作る出せる、と確信した”。

これらの発見についてXingらが書いたペーパーが、防衛産業やヘルスケア、自動車などの分野のメーカーに注目され、その後、友人が彼を、Men’s WearhouseやGymboreeでチームリーダーだったSusan Nealに紹介した。Xingは、企業顧客開拓のためにAtacamaの取締役になるよう、彼女に求めた。NealはAtacamaの技術のデモを見たあと、CEOを引き受ける決心をした。

“取締役会議で、彼らが開発したプロトタイプのシャツを見た。その実際の機能を見たとき、これはすごい!と感じた”、とNealは語る。

“それは、水分がファブリックの表面を移動するとき、その方向をコントロールできた。まず何よりも、私はそれまで、そんなものを一度も見たことがなかった。私はビクラムヨガをやり、その教室も開いているから、みんな、水分を逃すファブリックについてはよく知っている。汗を吸い取って拡散する素材だ。しかしAlexがデモしたのは、水分が皮膚からシャツの外へ移動するときの方向をコントロールし、その水分をシャツから外す(落とす)技術だ。シャツ本体は完全に乾燥していて、それはこれまでまったく見たことのないものだった”。

Atacamaの技術はこれまで、ポリエステルやナイロンのような化学繊維に適用されていたが、今は木綿やメリノウールのような天然繊維でもテストしている。その技術を使った消費者製品はまだ市場にないが、Nealによると、今数社とパートナーしてプロトタイプを開発している。液体がファブリックの表面のチャネルを流れるよう操作するAtacamaの技術は、アパレルのデザインに含めることができ、上で見たように、スポーツウェアのブランドの強力なセールスポイントになる。

いちばん分かりやすい用途はトレーニングウェアや、ドレスシャツなどのアパレルだが(袖の脇の下部分に汗がしみない)、応用分野はもっと数えきれないほどある。たとえば、保護着、高性能おむつ、包帯や帯布、ギプス、病院用各種リンネル(布帛類)などに使える。

“今、車のシートへの応用研究を求められている。とくに自動運転車に使われいる電子回路から水分や、こぼしたドリンクの被害を防ぐことに、関心が集まっているようだ”、とNealは語る。

“すごく新しい技術なので、科学者たちとの対話の内容もすごい。彼らはあちこちで、これはできるか、あれはできるか、と聞かれ、ラボに帰ると、さらにそれら以外の有益なアイデアを考えだそうとしている”、と彼女は述べる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Swatch、カスタムデザインシステムのSwatch X Youを公開

大衆のためのファッションウォッチ、Swatchが、オンライン「時計工場」、Swatch X Youを作った。文字盤、ベルト、その他のアクセサリーを選んで65~85ドルで真にカスタマイズされた時計を作る。サービスはすでに公開中で文字盤のサイズは34 mmと41 mmの2種類。

私はSwatchグループにコメントを求めた。基本的に私が知りたいのは、今どき空港で暇を持て余した人以外に誰がSwatchを買うのかということなのだが、返事をもらうまでの間、このプロジェクトを詳細に見てみよう。

まず、様々な色からなる5種類のごく基本的なウォッチ本体を選ぶ。次にベルトや小さな宝石など特別な時や個人の嗜好にあわせたアクセサリーを組み合わせる。価格は約65ドルからでアクセサリーによっては100ドルを超えることもある。

SwatchはEmersyaと提携してこのシステムを作った。時計は3次元で回転させて作品の威厳を確認することができる。Swatchがそれに基づいて時計を作り発送する。

この種のサービスはSwatchにとって初めてだ。長年にわたり、価値の上がる「デザイナー」製品にこだわってきた同社にとって、完全なカスタマイズは待望されていたものであり非常に重要だ。Blancierを始めとするサイトが以前からカスタムウォッチを比較的求めやすい価格で提供してきている。新たにこの市場に参入するSwatchは、従来からのSwatchユーザーだけでなく、たまにしか買わない人々 ―― 子供の卒業祝いや誕生日にカスタムウォッチを買う親など ―― や時計を純粋にファッションアクセサリーとしか見ていない人たちにアピールしていく必要がある。いずれにせよ、失うものがたくさんある会社にとって、これは賢明で重要な行動だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Nikeがオープンソースのソフトウェアをリリースして技術者募集に有利好印象を目指す

SHANGHAI, CHINA - APRIL 17: Shanghai residents pass by a Nike store on the Nanjing Road shopping street on April 17, 2010 in Shanghai, China. The Shanghai World Expo will be held from May 1 to October 31, 2010 and is expected to attract 70 million visitors. The trade show will be themed 'Better City - Better Life'. (Photo by Feng Li/Getty Images)

アスリートにとって自分の家のようなブランドNikeが、オープンソースのソフトウェアを立ちあげてプログラマーの仲間入りをしようとしている。

先週Nikeは、3つのオープンソースプロジェクトをGitHubに載せた: JSONをパースするフレームワーク、Javaのための分散トレーシングのソリューション、そしてSwiftで書かれた軽量ロギングライブラリだ。GitHub上の同社のサイトに使われているコードも、オープンソースした。

一般企業がオープンソースを試みるのはクールだが、テクノロジーの世界で本格的な強い印象を与えるのは難しい。にもかかわらず、このところ多くのノンテク企業がオープンソースのプロジェクトをリリースしている。Walmart Labs, Target, Best Buy, それにNikeのライバルAdidasまでも、GitHubのアカウントでプロジェクトをシェアしている。

一般企業がオープンソースのコンテンツをポストする動機の一つは、ブランドイメージの向上だ。今はどこでも、優秀な技術者を獲得するのが難しいから、彼らから見て良さそうなブランドイメージを身にまとおうとする。GitHub上にいろいろコードがあれば、就活している技術者もその企業に良い印象を持つだろう。

ねらいや目的が何であれ、NikeやWalmartなどはかなり前からテクノロジー企業‘らしさ’を見せつけている。Apple AppStoreにはNike作のiPhoneアプリが10、iPadアプリが2ある。Nike FuelのAPIのための、デベロッパー向けサイトもある。WalmartにはiPhoneアプリが3つあり、カタログのAPIを公開している。

今Nikeにコメントを求めているので、得られ次第この記事をアップデートしよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

LINE、イランに美容とファッションのポータルを開設

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【編集部注:本校の執筆者、Amir-Esmaeil Bozorgzadehは、教育IT分野のVRスタートアップ、Virtuleapの共同ファウンダー、およびドバイ拠点の中東アジアオンラインゲームパブリッシャー、Gameguiseの共同ファウンダーで、世界のゲーム開発者、パブリッシャーのコンサルタント業務を行っている。

Benitaは、ファッション、美容、ライフスタイルの最新ニュースを届けるポータルとして、今年5月にイランでデビューした。人気メッセージングアプリで知られるITの巨人、LINEは、同国での目的地サイト分野進出を後押ししようとしている。

ポータルは、地元のイラン人スタッフからなるチームが作る日々のコンテンツや、地域ユーザーが重要な話題を共有、議論するためのフォーラムを提供する。

LINEは入念な準備をしてきた。イランのITとスタートアップの状況は、経済制裁解除後に海外からの直接投資が急増したことをうけ、その活動も報道も沸き立っている。そして同社は、ITおよびソーシャルメディアの経験を活用するとともに、当地の女性人口の間にある根強い需要に対応するべく、この分野に入ってきた。

イランの女性人口は3900万人(全人口の49%)で、その60%が30歳以下だ。その結果イランは、全人口に対する15〜29歳の比率が世界最大である。

イランの女性を理解するための重要な鍵が一つある。それはイスラム教の服装規定だ。

女性は髪を隠し、地味な服装を着ることを強いられている。このことによって、イラン議会の調査センターの推定によると、この国の美容・化粧品の業界規模は40億ドルにも上る。開かれた領域である女性の顔と手は、彼女らが個性を発揮する最も重要な場所だ。

イランのITとスタートアップの状況は、その活動も報道も沸き立っている。

しかし、「ファッション」も忘れてはならない。テヘラン北部の繁華街には、一流国際ブランドの最新流行コレクションが並んでいる。イラン首都のこの裕福な地域に散在するブティックに行けば、最新トレンドのファッションがいつでも手に入る。オンラインでは、Instagramが最も人気の高いソーシャルネットワークで、イラン人の半数がこの写真共有サイトでトレンドを追いかけている。

イランには300万人の富裕層がいると言われ、そこには世界の高級品市場1兆ドルの約2%を占める高級品市場がある、とExane BNP Paribasのアナリスト、Luca Solcaが報告している。その中の女性シェアは重要である。

しかし、市場には偽物が溢れており、国際的な商標保護協定に加盟していないことから、近年事態は悪化している。しかし、有名ブランドらの介入によってもうすぐこれが変わろうとしている。その代表例が、イタリアの首相が最近イランを2日間訪問した際に、イタリアファッション業界が署名した、イランとの関係を良好にするための契約だ。

ロベルト・カバリはイランで最初のブティックをこの2月に開店した。 セフォラは地元の高級品小売大手、Chalhoub Groupと提携して秋にショップをオープンする計画だ。ヴェルサーチも近くテヘランに主要ブティックを開くと言われている。

こうして、ヨーロッバの最大高級品ブランドらは中東第二の市場に参入しつつあり商標保護を推進するとともに、偽物需要を減らそうとしている。

こうした海外ブランドの多くは現地のパートナーと提携関係を結んでいる。LINEも例がではない。同社はドバイ拠点のデジタル代理店で、ポータルやアプリの開発に定評のあるEdoramediaと組んで、Benitaを開発した。

「イランの人たちは、ITに関して初心者ユーザーではない」とEdoramediaのマネージングパートナー、Hossein Jalaliは言う。「彼らは非常に進歩的なユーザーであり、トップブランドによる最高のユーザー体験と商品を求めている」

通常この次に起きるのは、Benitaのようなポータルの参入と拡大にあわせて、関連するスタートアップやソリューションが急増することだ。女性が支配するこの業界のデジタル化を、彼らが挙って推進することによって、プラットフォームやツールの水準も目の肥えたユーザーたちの眼鏡にようやくかなうことだろう。

「小売の状況は急速に変化しているが、適切な小売場所が不足していることから、新規参入者にとってはEコマースが唯一の選択肢だ」と、現地の人気Eコマースポータル、Albasco.comのCEO、Ehsan Golabgirは言っている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

100億以上のシャツや靴があなたのスマートフォンに語りかける–アパレルメーカーAvery Dennisonの巨大なIoTプロジェクト

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Fortune 500社のAvery DennisonとIoTのスタートアップEVRYTHNGが、アパレル産業に活を入れるためのでっかい契約を結んだ。今後3年間で作られる100億点以上のアパレルやフットウェアに、ユニークなデジタルIDとデータプロフィールを付けるのだ。

両社の主張によると、これは、一つの契約でIoTによりインターネットに接続される製品の数としては、最大である。EVRYTHNGはこれまでの3回のラウンドで1450万ドルを調達している。投資家はAtomico, Dawn Capital, Ciscoなど計6社だ。

これは、物のインターネットが巨大化するとこうなる、という最初の例だ。

しかし、それが一体どういう意味を持つのか? その意味とは、世界最大のファッションや実用アパレルのブランドの100億の製品がユーザー(消費者)のスマートフォンに接続して、アプリやサービス動かす、ということだ。

それによって企業は顧客により深くエンゲージできる(関われる)だけでなく、消費者が自分の製品と対話して個人化されたデジタルのコンテンツやサービスを開き、そこからさまざまな景品(サードパーティ製アプリなど)や特典等々をもらえる。

企業側に豊富な可能性が開けるだけでなく、これからはシャツ一枚買うことが、これまでよりもちょっとおもしろくなる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

なぜテクノロジ業界では会社でもTシャツが正装なのか?–その社会哲学を考察する

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[筆者: Zack Fisch](Dash MDのCEO。)

ふだんは、ファッションにあまり関心がない方だ。ぼくはファッションブロガーではない。ファッションの記事も読まない。自分が気に入ったものを、着るだけだ。

と言ったけれども、そんなぼくがおもしろいと思うのは、テクノロジの世界には、ドレスダウン(日常着)がドレスアップ(正装)である、というトレンドがあることだ。VCに売り込みに行くために、(VCの多い)Sand Hill Roadにスーツを着て行ったら、とても居心地悪く感じるだろう。ここトロントでも同じだ: Vネックの海に文字通り“浮いている”スリーピース男の、恐怖の表情。

テク世界ではいつごろから、カジュアルが仕事の正装になったのか? Steve JobsとMark Zuckerbergをまず見てみよう。Steveは公(おおやけ)の場で、彼のトレードマークのジーンズとスニーカーと黒のタートルネックを着ていた。業界の人びとは、革命児Steve Jobsの真似をしていると思われたくないので、だれもタートルネックを着なくなり、ファッションの選択肢から外れてしまった。

Markの場合は、毎日同じグレーのTシャツを着ている。その理由は、毎日同じもの(しかもすごくカジュアルな)を着れば、着るものに心と頭を使わなくてもよくなり、仕事、すなわちFacebookの経営に専念できるからだ。そうやって生活の方程式から、毎朝のルーチン(着るもの選び)という変数をなくしてしまうのは、とても合理的だ。毎朝、起きたら着るものが決まっている。なんと効率的な人生だ。

テク世界には、カジュアル志向の理由がほかにもある。それは、厳密に能力主義の世界であること。大学を中途退学した者が自分のコードで大成功をおさめ、その見事にヴァイラルなプロダクトで人びとのコミュニケーションと世界を変えてしまう。学位は、何の意味も持たない。意味があるのは、何を作り、何を世の中に提供するかだ。外見よりも作品の質が重要だ。ここまで服装にこだわらない業界は、ほかにないだろう。ここでは、彼/彼女からの出力とそのクォリティがすべてだ。

逆に、弁護士の世界などでは、服装と学歴が重視されるだろう。

法律家は専門職であり、この場合の専門職は特定の社会的な「形」が要求される。服装は、その形(かたち)を構成する重要な要素だ。でも、なぜ、それがスーツなんだろう? 仕事の結果で人が評価されるのは、弁護士もプログラマも同じではないか? しかし法律家の世界は、そうではないらしい。法律事務所も、若いアシスタントたちはちょっと違う服装の傾向だけどね。

Tシャツはボタンが全然ないから他のどんなシャツよりも脱ぎ着が簡単だ。

いちばん重要なのは、自分が選んだ自分の外見は、自分をどう見てもらいたいかという意思の表れであることだ。そしてこの理論をやや延長すれば、仕事の世界における服装に対する想定も、その業界が自分自身をどう見ているか、世の中にどう見てもらいたいか、という意思の表れなのだ。

とにかく言えるのは、テク業界では仕事の正装ないしビジネスカジュアル*が、カジュアルそのものであることだ。Tシャツはボタンが全然ないから他のどんなシャツよりも脱ぎ着が簡単だ。しかもそこでは、職場での外見よりも人間の中身と仕事のクォリティが重視される。だから、そこはより快適な職場になり、一人一人が自分に自信を持っている。Tシャツはまさに、そうであることの象徴だ。〔*: business casual, ふつうの会社や役所などでは、ノーネクタイや無地のポロシャツの許容、など。〕

もしも万一Tシャツでクビになっても、これで裁判に勝てるよね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

手持ちのファッションアイテムから最適なコーディネートを提案する「ベストスタイルミー」

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エモーシブは6月5日、男性向けのファッションコーディネート提案アプリ「ベストスタイルミー」のiOS版を正式公開した。Android版は2014年10月に公開されている。

人力とアルゴリズムで最適なコーディネートを提案

ベストスタイルミーは、ユーザーが質問に回答して自分の服の好みを選択した上で、所有している、もしくは購入を検討しているファッションアイテムの写真を撮影すると、24時間以内にそのアイテムを使った最適なコーディネートを提案してくれるサービス。

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コーディネートの提案は、人力での画像判定と、独自のアルゴリズムを組み合わせて行う。アップロードされた写真に対して、そのファッションアイテムがシャツなのかジャケットなのかという「種類」やアイテムの「色」、半袖か長袖かといった「袖丈」などをまず人力で判定。その上で機械的に最適なコーディネートを提案する。

人力でのチェックが入ることもあって、ECサイトで見かけるような背景白抜きできっちり撮影した写真でなくとも利用可能。例えばコーディネートを知りたいアイテムを着た自分自身の写真をアップしてもいいのだそうだ。写真を数多くアップデートすることでユーザーの好みを学習し、さらに最適なコーディネートを提案してくれる。ただ、人力ということでどこまでの件数を処理できるかというのはちょっと気になるところだけれども。

サービスを提供するエモーシブは2012年11月の設立。これまでにインキュベイトファンドおよびディー・エヌ・エー、プライマルキャピタルから資金を調達している(金額は非公開)。

スタイリストの「ロジック」をシステムに落とし込む

エモーシブ代表取締役の坂本慧氏は、新卒でホリプロに入社。3年2カ月芸能人のマネージャーを務めたのちに起業を志した。インキュベイトファンドが主催する起業支援プログラムの「Incubate Camp 4th」にも参加している。papeboy&co.(現GMOペパボ)創業者の家入一真氏が自由な発想で次々とサービスをリリースしているのを見て、自らもサービスを立ち上げたいと思ったという坂本氏だが、前職で出会ったスタイリストとのやりとりがベストスタイルミーの企画に繋がったと説明する。

「スタイリストはセンスや感覚でファッションアイテムを選んでいるように見えるかも知れないが、実は何と何が似合うのかということを非常にロジカルに考えている。ロジカルなのであれば、その考え方をシステムに落とせないかと考えた」(坂本氏)

僕もそのアルゴリズムのベースになっているスタイリストへのヒアリングシートの一部を見せてもらったのだけれども、「○○の柄は××な体型には合わない」といったことからファッションアイテムの区分、配色の組み合わせに関する内容まで幅広い。坂本氏いわく「スタイリストには合計100時間以上話を聞いている」(坂本氏)とのこと。これに季節ごとのトレンドなどの情報を追加してアルゴリズムをアップデートしている。

ダウンロード数は4万件に満たない程度でまだまだこれからという数字だが、「リテンションは高い」(坂本氏)とのこと。コーディネートアプリと聞くと、スタートトゥデイの「WEAR」などを思い浮かべるが、坂本氏は利用のニーズが違うと説明する。

「ゼロベースでコーディネートを考えるのであればWEARでいいと思うが、ベストスタイルミーは自分の持っているファッションアイテムを軸にコーディネートを提案してくれる」(坂本氏)。今はアップロードした写真以外、ユーザーの所有していないファッションアイテムを組み合わせてコーディネートを提案しているが、「自分が持っているファッションアイテムだけでのコーディネートを提案する機能が欲しい」という要望も少なくないという。

現状、収益源はファッションアイテムのアフィリエイトのみ。今後はオプション機能の提供などでユーザー課金をする予定だという。

Sonyの社内起業第一弾”eペーパーウォッチ”は社名を隠してクラウドファンディングに成功

 

今やハードウェアメーカーのほとんどすべてがスマートウォッチのレースに参加しているが、Sonyは、そのために特別に立ち上げたプロジェクトにより、これまで時計と呼ばれてきた計時器具そのものを、ゼロから再発明しようとしている。それは、Sonyという日本の大手電子製品企業のプロジェクトとしては、今日(米国時間11/28)発表されたばかりだが、実は数か月前からクラウドファンディングのサイトに登場していた。FES Watchと呼ばれるその製品は盤面とバンドがeペーパーによる一体成型で、最初は消費者の率直な反応を見るためにその超有名なブランドをあえて隠して登場した。

そのときは、FES WatchはFashion Entertainmentsという企業の製品とされていたが、実際にはそれは、eペーパーを使ったファッショングッズを研究開発していたSonyのチームだった。WSJによるとそのチームは、eペーパーがほかの布地等と同じくファッションの素材として認められる方向性を、模索していた。腕時計だけでなく、ネクタイや、帽子の飾りなど、身につけるさまざまな物にeペーパーが使われることを、同社は期待していた。Fashion EntertainmentsのチームのトップHiroki Totoki(十時裕樹)は、Sonyのスマートフォン部門の新たなトップでもあり、またSonyのCEO Kazuo Hirai(平井一夫)の構想による社内起業振興事業にも関わっている。

FES Watchはクラウドファンディングサイトですでに17000ドルあまりを集めており、目標額は突破したので実際に生産されるはずだ。Sonyの関与を隠したことによって、Fashion Entertainmentsチームは純粋にアイデアそのものへの評価を得ることができ、評価にSonyの名前は、良かれ悪しかれ影響していないと考えられる。このようにクラウドファンディングのサイトはときどき、新製品のテストマーケティングや、今後のVC資金の呼び水として利用されることがある。Sonyのような巨大企業がそんな利用の仕方をしたのは、これまで例がなかったと思うが。

eペーパーをファッションの素材として見ると、従来の単なる文字表示機能にとらわれない多様な使い方の可能性が生まれる。たとえばカラーeインクを使ったユニークな彩色なども可能だ。消費電力がきわめて少ないので長時間の使用ができ、またモーションセンサと併用すると手や体の動きでさまざまに変化するアクセサリなども作れる。スマートフォンへの通知やコミュニケーションもできると思うが、ただし今回の製品は、eペーパーをテクノロジ製品というよりむしろ、ファブリック(〜布地)の一種としてシンプルに売り込もうとしているようだ。

クラウドファンディングに協力した顧客は、製品を5月以降に受け取るが、FES Watchの一般発売については何も発表がない。でも、かなりの評判になりそうな製品だから、一般消費者向けの発売を、急いでほしい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))