仮想通貨の税務問題を解決する「Guardian」提供元が約5000万円を調達――Twitterで350件以上の相談を受け事業化

2017年はビットコインを筆頭に仮想通貨の注目度が高まった1年だった。投資の対象としてはもちろん、文字通り「通貨」として会計に使える店舗もでてきているし、仮想通貨を活用した新たなベンチャーファイナンスの枠組みとしてICOが話題になった。

個人で仮想通貨の取引を始めた人も一気に増えたことによって今後大きな問題となるのが税務、つまり確定申告だ。ビットコインに関しては9月に国税庁が課税の取り扱いについての見解を公表しているが、実際どうしたらいいのかわからないという人も多いのではないだろうか。

そんな仮想通貨の税務問題に取り組むのが、12月1日にリリース(一次申し込み開始)予定の税理士紹介・記帳代行サービス「Guardian」だ。

提供元のAerial Partnersはサービス公開に先立って、総額約5000万円の資金調達を実施することを明かしている。第三者割当増資の引受先は日本テクノロジーベンチャーパートナーズおよびCAMPFIRE代表取締役の家入一真氏、3ミニッツ取締役CFOの石倉壱彦氏を含む複数の個人投資家。500 Startups Japanが公開する投資契約「J-KISS」による資金調達だという。

仮想通貨に詳しい税理士の紹介と記帳代行システムをセットで提供

Guardianは仮想通貨に詳しい税理士の紹介と記帳代行システムをセットにしたサービスだ。一見シンプルな税理紹介サービスに見えるが、Guardian側で複数取引所の情報整理や取引を時系列に並べる機能をもつ独自システムを開発し、税理士に提供することで税務業務をサポートしている。

「仮想通貨のロジックがわかっていても人間が手作業で全て対応するのは難しい。そこで申告者に税理士の先生を紹介するだけでなく、記帳代行をスムーズにするシステムを開発している」(Aerial Partners代表取締役の沼澤健人氏)

国内外の取引所10社を中心に、取引履歴照会のAPIを公開している取引所についてはAPI登録のみで自動で所得を集計。APIを公開していない取引所についてもCSVアップロードなどで所得が集計できる。

沼澤氏によると将来的にはこの独自システムをさらに改良した上で、SaaSとして外部に提供することも検討しているとのことだった。ただし現状は法制度も整備しきっていないこともあり、あくまでもGuardianを支えるツールとしての位置付けだ。

現在はむしろ税理士側の啓蒙活動などアナログな取り組みに力を入れているそう。たとえば日本仮想通貨税務協会を設立して仮想通貨に対する講習を実施。認定された税理士をGuardianで紹介していく予定だ。

Twitterアカウント開設後2ヶ月で350件以上の税務相談

Aerial Partnersのメンバー。写真中央が代表取締役の沼澤健人氏

沼澤氏はあずさ監査法人で3年間勤務した後に独立。現在はチャット小説アプリ「peep」を手がけるTaskeyの共同代表や法人向けの会計業務を行うAtlas Accountingの代表を務めている起業家だ。今回新たに仮想通貨に関する事業を始めた背景には、7月に開設したTwitterアカウント「2匹目のヒヨコ」を通じて、多数の仮想通貨に関する税務相談が寄せられたことがあるそうだ。

「個人的に1年半ほど仮想通貨の投資をやっていたが、今年に入って一気に利用者が拡大する中で所得税の計算が大変なことになるだろうなと思い、税務相談ができるTwitterアカウントを立ち上げた。仮想通貨と税務の知識がどちらもある人が界隈にいないこともあり、150人以上の方から370件ほどの相談を受けた」(沼澤氏)

沼澤氏が約1000人に行ったアンケートでは1つの取引所のみを使っているユーザーは全体の1割ほどで、4割が5つ以上の取引所を使っていると答えたそう。中にはアルトコインを使うために海外の取引所を利用するユーザーも多い。そうなると円建てで計算する必要が生じ、後々個人で対応するのは難しいという。

相談をしてくる人の中には税理士に相談したところ対応が難しいと断られ、解決策を探し求めた結果沼澤氏のTwitterにたどり着いたという人もいる。「10年ほど前にFXが注目された時も申告していないためにペナルティを受けた人が多発した。同じような状況にするわけにはいかない」(沼澤氏)

当初は個人的に無償でアドバイスを行ったり税理士の紹介をしていたそうだが(沼澤氏自身は税理士ではないため)、案件が増え個人では対応できなくなり、8月後半から事業化に向けて急ピッチで動き出した。

「3月になって地元の税理士事務所に駆け込んでも、ほとんどの税理士は対応できない。そもそも申告が必要だと知らない人もいるので、申告者と税理士双方への啓蒙活動を進めながら今年の確定申告期を業界全体で乗り越えていきたい」(沼澤氏)

スマホ証券One Tap BUYがソフトバンクやヤフーらから25億円を調達――アプリDLは60万件、口座開設数は7万件突破

1000円から株式を売買できるスマホ証券取引アプリ「One Tap BUY」。同アプリを提供するOne Tap BUYは11月15日、ソフトバンク、みずほ証券、モバイル・インターネットキャピタル、ヤフーを引受先とした第三者割当増資により、総額25億円を調達したことを明らかにした。

One Tap BUYは2016年7月にソフトバンクから10億円、2017年2月にみずほキャピタル、 モバイル・インターネットキャピタル、ソフトバンク、みずほ証券から15億円を調達。そのほかDBJキャピタルやオプトベンチャーズなども過去に出資していて、今回新たな株主としてヤフーも加わった。

One Tap BUYについてはTechCrunchでも何度か紹介してきたが、スマホから手軽に株式投資をできるアプリだ。スマホを3タップするだけで、1000円から株の取引が可能。株式投資のハードルを下げ、投資経験のないビギナーを中心にユーザーを拡大してきた。

2016年6月にアメリカ株の取引アプリとしてローンチし、2017年2月からは日本株の取り扱いも開始(7月からは日本株個別銘柄にも対応)。サービスの拡大に合わせてTVCM等も展開したことで、9月度の月間口座開設数が1.5万件と急増した。10月には累計アプリダウンロード数60万件、累計口座開設数が7万件を突破している。

2017年9月時点でのユーザー属性

One Tap BUYでは今回の資金調達を受けて、サービスの利便性向上やマーケティング活動の強化に加えて株主とのサービス連携も行う。ソフトバンクとは既存サービスとも連携し、決済機能などを組み合わせた新サービスを検討する。みずほ証券、ヤフーとも双方の顧客基盤拡大に向けた連携の協議を進めるなどしながら、FinTechの投資分野においてNo.1のサービスを目指していくという。

なおOne Tap BUYはサービスローンチ前にTechCrunch Tokyo 2015のスタートアップバトルに出場し、審査員特別賞とAWS賞を受賞している(優勝はクラウド労務管理の「SmartHR」)。今年もいよいよ明日からTechCrunch Tokyo 2017が開催、20社のスタートアップがバトルに挑む。

スタートアップに新たな資金調達手段を提供する日本版AngelList「エメラダ・エクイティ」が本日ローンチ

スタートアップがビジネスを拡大するために資金を調達する場合、その対象はエンジェル投資家やベンチャーキャピタルとなるのが一般的だった。これはTechCrunchで日々紹介しているスタートアップの資金調達に関するニュースを見ても、そのような傾向にあることがわかる。

だが近年クラウドファンディングやICOのように、資金調達の手段も少しづつ広がってきた。本日エメラダがローンチした「エメラダ・エクイティ」もまさにそのひとつ。同社が4月に2億円を調達した際には「日本版AngelList」とも紹介したが、エメラダ・エクイティは株式投資型のクラウドファンディング(以下株式投資型CF)という形でスタートアップ企業と個人投資家を結ぶプラットフォームだ。

エメラダ・エクイティを活用することで、スタートアップはVCやエンジェル投資家に限らず国内の幅広い個人から資金を調達できる。検討開始から払込までが最短1ヶ月以内に完了するため、資金調達に時間をかけすぎず事業の成長にコミットできることもメリットだ。

投資家1人あたりの出資額は最大50万円まで、スタートアップの資金調達は1億円未満と金額には上限はあるが、投資家側も今までは投資する機会のなかったスタートアップ企業に投資できるチャンスにもなる。

出資を受けているスタートアップを対象とした株式投資型CF

株式投資型CF自体は日本でもいくつかでてきているが「すでにプロが出資しているスタートアップが対象」で、かつ「新株予約権を活用」したプラットフォームというのは新しい。

まずエメラダ・エクイティに参加できるのは将来的にエグジットを見据えているスタートアップのみだ。それもエンジェル投資家やVCなど、プロの投資家がすでに出資をしていることをひとつの基準としている。エメラダ共同創業者で代表取締役社長兼CEOの澤村帝我氏によるとシードからシリーズA前後のブリッジファイナンスという形をメインに想定していて、「プロの投資家の補完効果」を得たいスタートアップに活用して欲しいという。

要は投資家は出資企業に成功してもらいたいので、スタートアップは人の紹介やプロダクトのPRなど積極的なサポートを受けられる可能性があるということだ。投資家側もバックグラウンドチェックがあり、長期的な視点と熱量を持って投資先をサポートすることを望む人が主な対象。そのような個人にプロ投資家との「相乗り投資」の機会を提供することで、スタートアップコミュニティを盛り上げていくこともエメラダ・エクイティの狙いだ。

「アメリカでもすでに出資をうけている会社が株式投資型CFを活用する事例が増えている。個人投資家にとっても、誰も投資をしていない会社に投資をするというのは不安。成功するスタートアップはエンジェル投資家やVCが出資しているケースが多いので、そのような企業に様々な個人が投資をするというのがトレンドだ」(澤村氏)

また新株予約権を活用しているのもユニークなポイント。これについては澤村氏自身が野村証券やゴールドマン・サックス証券で資金調達の実務に携わった経験が影響しているそうだ。

「普通株式や優先株式を活用すると多数の個人が議決権を有してしまうので、総会対応や、その後の資金調達やM&Aを実行する際などに支障がでることもある。少ない人材で事業を立ち上げなければならないスタートアップにとって成長やエグジットの阻害になっては致命的だ。新株予約権であれば、投資家はエクイティとしてのリターンを得る機会がある一方で、日々の経営には関与することはなく、スムーズな意思決定体制を維持できる」(澤村氏)

新株予約権を活用することのメリットは管理負担の削減だけではない。バリュエーションの決定を次回調達時に先延ばし、株式持分の希薄化を適正水準に抑えるという効果もある。これは主にシード投資で用いられるコンバーティブル・ノート(転換社債)を改良したコンバーティブル・エクイティと呼ばれる手法だ。

エメラダには澤村氏の他にも証券会社で資金調達やM&Aの実務に携わったメンバーが集まる。エメラダ・エクイティの開発時には社内のメンバーに加え、スタートアップやエンジェル投資家、VC、証券会社の担当者など業界関係者と意見交換をしながら最適なスキームを検討したそうだ。

今後はM&Aアドバイザーとの連携やベンチャー・デットの供給等の施策も考えているとのことで、このようなサポート体制もエメラダ・エクイティの特徴といえるだろう。

1号案件はVCが支援するクラフトビール会社

エメラダ・エクイティについては数十社から検討したいという声が上がっているそうだが、その中で第1号案件としてプロジェクトを開始したのはクラフトビール「KAGUA(馨和)」を生産するFar Yeast Brewing(ファーイーストブルーイング)だ。渋谷で直営の飲食店「Far Yeast Tokyo ~Craft Beer & Bao」を経営していて、こちらに足を運んだことがあるという読者もいるかもしれない。

Far Yeast Brewingはメルカリの子会社となったザワットにも出資をしていたエンジェル投資家の江見淳氏が、香港に拠点を置くNet Capital Partnersを通じて出資している企業。生産量を拡大した後にIPOを見据えていて、今回はエメラダ・エクイティを通じて4000万円強の調達を目指す。

澤村氏によるとこのようなエンジェル投資家との関係性を特に重要視しているそう。エメラダ・エクイティの特徴が「すでにプロが出資しているスタートアップが掲載されたプラットフォーム」ということもあり、歴戦のエンジェル投資家に案件をつないでもらえるようなインセンティブ設計なども検討しているという。

アメリカではAngelListを筆頭にCircleUpFundersClubなどが株式投資型CFサービスを通じてスタートアップの資金調達を支えているが、日本でも同様のプラットフォームのニーズはあるのだろうか。

澤村氏は日本でエメラダ・エクイティを立ち上げることについて「米国のように各大手プラットフォームが年間数百億円単位で株式の発行を担う世界にはすぐにはならないだろう。だが日本の起業は急速に増えており、エクイティファイナンスの総額自体が増えているので、モメンタムは強い。一方で、まだまだスタートアップコミュニティに関与できていない層も多いので、広めていく上では最適なタイミングだと考えている。中長期の話だが、海外のスタートアップ等も誘致できればさらに活発化するだろう」と話してくれた。

国際送金のヒドさに憤慨して起業―、英FintechユニコーンTransferWise CEOがTC Tokyoに登壇

11月16日、17日の2日間にわたって渋谷・ヒカリエで開催予定のテック・イベント「TechCrunch Tokyo 2017」で、Fintechシティーと化したロンドンから、国際送金サービス「TransferWise」の共同創業者・CEOのTaveet Hinrikus(ターバット・ヒンリッコシュ)氏が来日して登壇することになったのでお知らせしたい。

TransferWise共同創業者・CEOのTaveet Hinrikus氏(TechCrunch Disrupt London 2015登壇時)

TrasferWiseの発想はすごい。

エストニア出身でSkypeの第一号社員だったTaveetは、あるときエストニアの首都タリンからロンドンに移住して、国際送金のイケてなさに憤慨する。TechCrunch Disrupt Londonに登壇したとき、1人の銀行利用者としてあまりに愕然としたのがTransferWise創業のきっかけだという。当時、ロンドンとタリンを行き来していて、給与をタリンで受け取っていた関係で「エストニア→ロンドン」という国際送金を使うようになっていた。

毎月銀行の窓口に並ばなければならず、そのうえ着金まで時間がかかる。何より手数料が高い。のちに共同創業者となるロンドン在住のKristo Kaarmann(クリストフ・カーメン)氏も同様に、国際送金サービスは根本的に何かが壊れているに違いないと感じていたそうだ。そこでTaveetとKristoは実験をする。

・Taveetはエストニアの自分の口座からKristoのエストニアの口座にお金を送る
・Kristoはロンドンの自分の口座からTaveetのロンドンの口座にお金を送る
・事実上2人は「エストニア←→ロンドン」の送金需要を満たしたことになる

これを多数の都市間で仕組み化したのがTransferWiseだ。

TransferWiseのアイデアは、ある意味では小学生の思い付きのようなところがある。Taveetによれば、当初の周囲の反応は「そんなのうまく行くわけないよ」とか「誰も君たちなんて信用しないよと」というものが少なくなかったそうだ。それが今やイギリスやヨーロッパ、米国をはじめ504通貨ルート、59カ国、約100万人が使うサービスに成長。月間800万ポンド(1億2000万円)ほどの国際送金額となっているという。手数料は従来の国際送金の8分の1となり、これまで送金完了まで4〜5日かかっていたものも90%が24時間以内に完了するようになった。現在は個人ユーザーが中心だが、SMB市場への進出もはじめている。

国際送金の手数料は高い。銀行は市場とは異なる「為替レート」を使って必要以上の儲けを出している。そのことを揶揄する以下のような動画キャンペーンは、TransferWiseが解決する問題を良く表しているし、なかなか痛快だ。「もしあなたの物の一部を誰かが取ったりしたら、どんな気がするだろうか? 海外送金をするときには、それが実際に起こっていることです。ただ何を取られているのかに気づくのが難しいだけ」と言っている。国際送金サービスで「手数料無料」をうたうところも、「為替レート」の中に手数料を隠し続けてきた、というのがTransferWiseの指摘だ。

TaveetはTransferWiseのことを「移民たちが創業し、移民たちが作り、移民たちが使っているサービス」と呼んでいる。このため、これをご覧の読者の方は知らない人のほうが多いかもしれないが、すでに日本でも関東財務局に登録済みで日本でも利用可能なサービスでもある。

スタートアップ企業としてみてみると、2010年に創業して、2016年5月のシリーズDラウンドまでに累計1億1600万ドル(約132億円)の資金を調達している。また今年5月には創業6年にして黒字化を達成したことを発表している。

ロンドンは2010年以降にFintechハブとして興隆した。そのエコシステムの発展に合わせる形でFintechユニコーンとして急成長したTransferWiseのTaveetの講演を、ぜひTechCrunch Tokyo 2017の会場に聞きにきて頂ければと思う。

TechCrunch Tokyo 2017は一般チケット価格4万円のところ、10月末まで(来週火曜日まで!)は前売りチケットは割引価格3万円で販売している。また、創業3年未満のスタートアップ企業の従業員であれば、引き続きチケット価格は1万5000円だ。ぜひこの機会に検討いただければと思う。

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今年上場を果たしたFintechの雄、マネーフォワードの辻CEOがTechCrunch Tokyoに登壇決定

11月16日、17日の2日間にわたって渋谷・ヒカリエで開催予定のテック・イベント「TechCrunch Tokyo 2017」で、Fintechスタートアップのマネーフォワード共同創業者で代表取締役社長CEOの辻庸介氏に登壇頂けることとなったのでお知らせしたい。

マネーフォワードは今年(2017年)の9月に上場を果たしたFintechスタートアップ企業の雄だが、まだ恵比寿の小さなマンションの1室に入居していた2013年、初めて取材に訪れたときのことをぼくは昨日のことのように覚えている。辻CEO自らがスリッパを差し出して迎え入れてくれたのだった。下の写真は、その2013年の秋にTechCrunch Tokyo 2013のスタートアップバトルにご登壇いただいたときのもの。

マネーフォワード共同創業者で代表取締役社長CEOの辻庸介氏(2013年11月撮影)

 

あれから4年。

マネーフォワードは従業員数で200人を超え、時価総額も566億円(2017年10月26日終値ベース)と大きく成長。サービスも、当初提供していた個人向け家計・資産管理アプリ「マネーフォワード」に加えて、法人向けでは「MFクラウドシリーズ」としてMFクラウド会計、MFクラウド確定申告といったSaaSサービスを提供するなど力強く成長を続けている。

マネーフォワードは北風と太陽でいえば、太陽だと思う。

スタートアップ業界で「Fintech」とか「ナントカtech」といえば、テクノロジーでレバレッジをかけて既存産業をディスラプトするというニュアンスがある。ビジネスモデルを革新して旧勢力が思いもつかないアングルから市場にエントリーを果たし、気づけば大きな勢力になっているというようなニュアンスだ。PayPalなんかは金融業者が「インターネット上の決済」などセキュリティ的に実現が不可能で無視可能なニッチ市場だと相手にしなかったところで大きなポジションを確立した。ときには規制当局のレーダーに引っかかる前に既成事実として市場を獲得しているAirbnbやUberのようなものもある。

マネーフォワードが家計・資産管理アプリを引っさげて登場した当時、議論としては「日本では規制産業に切り込むのは難しくて、みんな本丸を攻めずにお堀の外でちょろちょろやってるだけ」と言われることがあった。既存の銀行や証券といった金融業を脅かしたり、少なともプレッシャーをかけるような存在になれないのならFintechなどと大げさな言葉に意味があるのだろうか、と。確かにその後の推移をみてみると、世界的にはPFM(Personal Financial Management)と呼ばれる市場は期待されたほど成長していない(日本はやや例外)。

しかし、太陽政策のマネーフォワードのその後は違った。金融庁に積極的に働きかけ、「既存勢力」を対立構図でみるのではなく次々と巻き込み、既存の銀行大手などと業務提携、システム連携を次々と進めている。世界的にも先進的な事例といえる銀行の更新系APIの開放を最初に実現させたマネーフォワードは、Fintechエコシステム醸成におけるキープレイヤーとなりつつあるように見える。

誰に対してもいつもにこやかな辻CEOの鷹揚な性格もあると思うが、マネーフォワードの太陽政策的な巻き込み力は今後も注目だと思う。何より「マネーフォワードが銀行免許を取って新興銀行にならないのだとしたら、日本のFintechって一体何なの?」というのが、ぼくの感じているところ。金融先進国イギリスでは既存の銀行に対して規模の小さな新興銀行サービスが「チャレンジャー・バンク」としてたくさん生まれている。

辻CEOには2012年の創業時の頃はもとより、起業にいたったキャリア上の経緯など起業家としてのパッションの源泉と、Fintechスタートアップとしてのマネーフォワードの今後の舵取りについてお話を聞ければと考えている。

辻さん、銀行はやらないんですか?w

TechCrunch Tokyo 2017は一般価格4万円のところ、10月末まで(来週火曜日まで!)は前売りチケットは割引価格3万円で販売している。また、創業3年未満のスタートアップ企業の従業員であれば、引き続きチケット価格は1万5000円だ。ぜひこの機会に検討いただければと思う。

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bitFlyerが全銀協ブロックチェーン実証実験でNTTデータら大手3社と競争へ

bitFlyerが、全国銀行協会(全銀協)が推進する実証実験プラットフォームを提供するベンダーの1社に選ばれた(発表資料)。同社のブロックチェーン製品「Miyabi」を、新たな決済・送金サービスや本人確認・取引時確認(KYC)、金融インフラの分野での実用化に向けた実証実験に投入していく。今回選ばれた選ばれた他のベンダーはNTTデータ、日立製作所、富士通の各社で、日本の最大手システムインテグレータとスタートアップ企業が並ぶ形となった。

全銀協は日本の銀行のほとんどが加盟する団体で、銀行間ネットワーク「全銀システム」や電子債権記録「でんさいネット」の運営主体としても知られている。全銀協は銀行間ネットワークを視野に入れた実証実験のための「ブロックチェーン連携プラットフォーム」をこの10月にも立ち上げようとしている(発表資料)。今回、このプラットフォームに実証実験環境を提供するパートナーベンダーのとしてbitFlyerが選ばれた。この分野の有力スタートアップとして米Rippleと米R3がある。全銀協に選ばれた時点で、彼らのプロダクトと同等以上の評価を受けたといってもいいだろう。

今後、複数の国内銀行がMiyabiを用いた新たな金融プラットフォームの実証実験に乗り出す見こみだ。それに伴い、銀行の開発パートナーとなる開発会社もMiyabiに基づく環境構築やアプリケーション構築の経験を積むことになる。実証実験でMiyabiが良い実績を出し続ければ、将来的な銀行間ネットワークの構築技術の候補となるかもしれない。

なお、今回選ばれたbitFlyer以外の3社はLinux Foundationが推進するHyperledgerプロジェクトに賛同する立場にある。特に富士通は、全銀協向けにHyperledger Fabricと同社クラウドを組み合わせた検証プラットフォームを提供する予定を明確に打ち出している(発表資料)。Hyperledger FabricとMiyabiが次世代金融プラットフォームの座を競うことになるかもしれない。

Miyabiと銀行といえば、2016年11月の3大メガバンクが参加したブロックチェーン実証実験が思い浮かぶ(関連記事)。全銀協がMiyabiを選んだ背景に、この実証実験の成果があったことは想像に難くない。

Miyabiは「ファイナリティを備えるブロックチェーン/DLT製品中で世界最速」

Miyabiとはどのようなプロダクトなのだろうか。詳細な資料は現時点では公開されていないが、Miyabiは、もともと金融機関での送金をターゲットに開発してきた経緯があるとのことだ。「ファイナリティを備える製品中では世界最速だ」とbitFlyer代表取締役社長の加納裕三氏は胸を張る。「もちろん、対改ざん性、ビザンチン障害耐性あり、単一故障点なしとブロックチェーンとしての特徴をすべて備えたうえでの話だ」。「日本以外の銀行にも、働きかけていきたい」と加納氏は話している。

bitFlyerが公開した資料を基に、ブロックチェーン/分散型台帳(DLT)技術としてのMiyabiの特徴について説明してこう。

まず、ブロックチェーン全体の特徴からだ。下の図は、ブロックチェーン技術、分散型台帳技術、分散データベースに関して、bitFlyerが整理した図である。

ここで改めてブロックチェーン技術の特徴を振り返ると、データをネットワーク上に分散させて保持できること(高可用性に結びつく)は当然として、(1) 改ざん不可能、(2)ビザンチン障害耐性、(3)単一障害点(SPOF)なし、という特徴を兼ね備えることが特色だ。Miyabiは、これらのブロックチェーン技術としての特徴を満たした上で、ファイナリティと処理性能を兼ね備える点で独自のポジションにいるとbitFlyerの加納氏は話す。

この特徴から導かれるメリットは、ハッキング行為でデータを不正に操作される可能性がきわめて小さく、また単一のノードがダウンしてシステムが止まる危険性がないことだ。ブロックチェーン技術とは、信頼できる共有台帳(あるいはデータ格納手段)として考えうる最も高度なスペックを備えている。ただし実績作りはこれからなので、ブロックチェーン技術全般に懐疑的な意見の専門家もまだいる段階ではある。

ブロックチェーンの特徴に加え、ファイナリティと性能を追求

ブロックチェーン技術に銀行が求める要件は先の高可用性、対改ざん性、ビザンチン障害耐性、単一障害点なしというブロックチェーン技術の特徴だけではない。(1)確定的な合意形成アルゴリズムと(2)処理性能が大きい。

(1)について少し説明する。ブロックチェーン技術の場合、ビットコイン、Ethereum、mijinで用いられているPoW(Proof of Work)やPoS(Proof of Stake)は「ナカモト・コンセンサス」、あるいは確率的ビザンチン合意と呼ばれている。合意形成が確率現象となり、取引がくつがえる確率が時間とともに0に収束する。ただし、厳密にゼロにはならない。メリットは巨大な分散型システムに適用できることだ。ビットコインやEthereumを見れば分かるように確率的な合意形成アルゴリズムにより実用上は問題なく取引できるのだが、銀行側は「ファイナリティ(決済の確定性)」を重視する立場から確率的な挙動は受け入れられないと考えている模様だ。

そこで銀行側が求めるファイナリティの要件を満たすのは、確定的な合意形成アルゴリズムに基づく製品ということになる。Miyabiの場合、BKF2と呼ぶ独自設計の確定的な合意形成アルゴリズムを採用する。

確定的な挙動の合意形成アルゴリズムのルーツは、分散システム研究から生まれたアルゴリズムであるPaxosかPBFT(Practical Byzantine Fault Tolerance)である。MiyabiのBKF2は「Paxosに近い」とbitFlyer CTOの小宮山峰史氏はコメントしている。

bitFlyerの説明では、Miyabiは、Hyperledger Fabric、R3やRippleの技術よりもビットコインの技術により近いとのことだ。「我々はビットコインの開発者サトシ・ナカモトを尊敬している。安全に資産を移転するため『通貨型』の概念も取り入れている。承認の仕組みも、単一障害点かつ単一信頼点となる認証局に頼るのではなくマルチシグを導入している」(加納氏)。ここで注釈を加えると、Hyperledger FabcirにはビットコインのUTXOやMiyabiの「通貨型」のように通貨特有の制約を持つデータ型の概念はない。またHyperledger Fabricでは認証局の存在が、単一障害点/単一信頼点となる懸念が指摘されている。

処理性能に関してだが、ブロックチェーン技術の単体の処理性能はブロック容量、取引記録の容量、ブロック生成間隔が基本的なパラメータとなる。またPaxosやPBFTのような確定的な合意形成アルゴリズムはプロトコルの負荷が大きく、ノード数が増えると合意形成の時間が増える形で性能に影響する。

Miyabiの場合は、1500〜2000件/秒の処理性能を確認しており、より高速なハードウェアを投入すれば4000件/秒以上の性能が得られるとしている。Hyperledger Fabric v1.0では合意形成をグループ分けして分散することでトータルの処理性能(スループット)を高めるアプローチも可能となっているが、「それでは処理を振り分ける部分(ディスパッチャ)が単一障害点になる」と加納氏は指摘する。Hyperledger FabricやCordaがオリジナルのビットコインを大幅にアレンジした技術であるのに対して、Miyabiはビットコインの技術を研究して得られた知見を追求した技術との立ち位置といえる。

Miyabiはまだ公開情報が乏しく、多くの読者からはベールに包まれた製品に見えているかもしれない。ただ、3大メガバンクが実証実験を実施し、全銀協が実証実験プラットフォームに選んだことで、銀行業界から高評価を得ていることは確かだ。今後の実績の蓄積を期待したい。

お金の貸し借りメモアプリ「よろペイ」、運営元が4億円調達——ICO関連事業の展開も視野に

グローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦氏(左)とPopshoot代表取締役CEOの大山敏浩氏(右)

お金の貸し借りを「メモ」として残したり、そのメモの通りにお金を請求・支払いしたりできるアプリ「よろペイ」。サービスを提供するPopshootがグローバル・ブレイン、グリー、マネックスグループ代表執行役社長CEO松本大氏(松本氏は、East VenturesとSkyland Venturesとともにシードラウンドで出資している)、その他エンジェル投資家数名から総額4億円の資金を調達したことを明らかにした。

LINE PAYやpaymo、Kyashなどさまざま手法で個人間での決済や送金を実現するサービスが登場しているが、よろペイはお金の貸し借りをメモするという特性からか、ライブなどのチケットや、旅行の宿泊費・交通費などのメモ、請求に使われるのが多いという。「メモされた金額の総額も伸びていますが、個人間決済のGMV(Gross Merchandise Value:総流通総額)も順調に推移しています」(Popshoot代表取締役CEOの大山敏浩氏)

Popshootでは今回調達した資金でよろペイのユーザー数拡大と新サービス導入に向けた研究開発を進める。また、個人間決済事業を起点に周辺領域の事業に参入する予定だとしている。「レンディングや株式投資、暗号通貨などの領域に参入する予定です。話題のICO関連事業も上場企業をパートナーに迎えて準備を進めています。貸し借りを記録したメモというのはある種デジタルな通貨の一種とも考えられるので、法定通貨を一部リプレイスすることが可能ですし、様々な事業の展開余地があると感じています」(大山氏)

銀行などのローンの申し込みを脱紙脱電話してネット化するOriginal TechがY Combinatorから巣立つ

アメリカ人は毎年、金融製品(主にローン)の申込を2億5000万件以上行っているが、その多くは紙の上や電話で完結している。そこでOriginal Techは、ローンの申込をオンラインで完結させるホワイトレーベル(==ユーザー各自が完全カスタマイズする)のソフトウェアを銀行等に提供して、この状況を変えようとしている。

大手金融機関の多くは、内部に技術者チームを抱えて、主に消費者製品の改良に努めているが、中小企業向けの製品や、小さな銀行、クレジットユニオン、ノンバンクの貸し方などの世界では、顧客と物理的に対面する営業方式にはなかなか勝てない。そこを、Original Techはなんとかしようとする。

貸し方がそのソフトウェアを利用すると、借り手はローンの申込をデスクトップコンピューターやタブレット、スマホなどからできるようになり、紙の書類やFAXの文書に手書きで何かを書き込む手間がなくなる。

ソフトの利用者である貸し手は、データの収集や詐欺の防止、コンプライアンスへの準拠などが、このソフトにより自動的にできる。しかもそれらは貸し手のそれまでのワークフローの一環としてでき、査定のルールなども従来のままである。

Original TechのファウンダーHeang ChanSean Li、そしてChris Blaserは全員が、住宅ローンの借り手にテクノロジーによるソリューションを提供してきたB2Bのフィンテク企業Blendの社員だった。そのBlendと同じくOriginal Techも、借り手の申し込みプロセスから苦痛を取り去り、申し込みの完結件数を増やし、それにより貸し手が認めるローンの件数を増加しようとする。

Blendはもっぱら、住宅ローンの申し込みをネット化するホワイトレーベルのツールを提供しているが、Original Techはローンの種類やタイプを限定しない。

またBlendが主に大手金融機関を顧客として、トップダウン的に利用者に対応するのに対し、Original Techは中小の金融機関を対象として、彼らのところにおける技術者不在を補完しようとする。その方が市場機会が大きい、とファウンダーたちは見ている。

Blendはこれまでに6000万ドルの資金を調達しているが、Original Techはエンジェルたちの資金でささやかにスタートしたばかりだ。同社は近く、Y CombinatorのSummer 2017の学期を卒業する。

しかしOriginal Techにはすでに10社の顧客がいる。それらは、Metropolitan Capital Bank, Rockhold Bank, Conventus Lending, Guarantee Mortgage, Loan Factory, Pacific Private Money, Clear Choice Creditなどだ。来週行われるデモデーでは、もっと資金を集め、関心を持つ顧客をもっと増やしたい、と考えている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

チケット売買もビットコインで——コインチェックがチケットキャンプに対応

8月12日に単位価格が4000ドルを超えたビットコイン。そのビットコインを決済に使える場面が、また増える。ビットコイン決済サービス「Coincheck Payment」を提供するコインチェックは8月17日、ミクシィグループのフンザが運営する「チケットキャンプ」にCoincheck Paymentを導入。ライブやイベントなどのチケットを、ビットコイン決済で購入することができるようになった。日本のチケット業界では初のビットコイン決済対応となる。

チケットキャンプは利用者数500万人を超える、チケット売買のサービス。チケットキャンプでのビットコイン決済は全世界のビットコインウォレットに対応し、PCブラウザ、スマートフォンブラウザで利用できる。チケットキャンプのiOS/Androidアプリにも、今後対応していく予定だという。コインチェックが提供する「Coincheckウォレット」ではシステム上から直接決済が可能。またCoincheckウォレット以外のウォレットを利用する場合は、支払い時に表示されるQRコードを読み込むことで決済ができる。

コインチェックでは、これまでにもCoincheck Paymentを国内外へ提供してきた。現在、Coincheck Paymentで決済可能なサービスには、DMM.comの各サービスや、寄付金の受付電気料金の支払いなどがある。7月にはAirレジ向け決済サービス「モバイル決済 for Airレジ」にも導入され、メガネスーパーなどでビットコイン決済対応を開始している。

コインチェックは2012年の設立。2014年8月から仮想通貨取引所「Coincheck」の運営を行ってきた。8月10日には、Fintechスタートアップへの投資育成プログラム「Coincheck investment program」を開始。ブロックチェーンや仮想通貨、Fintech事業を開発・運営する法人・個人を支援していくと発表している。

仮想通貨取引所のコインチェック、Fintechスタートアップへの投資を開始

仮想通貨取引所のコインチェックが「Coincheck investment program」と名付けた取り組みで、スタートアップへの投資を開始する。投資事業有限責任組合を使ったファンドの組成ではなく、コインチェックからの直接投資となる。

コインチェックは2012年8月設立のスタートアップ企業。なぜスタートアップがスタートアップ投資? という疑問符が頭に浮かぶ読者も多いだろう。コインチェック取締役COOの大塚雄介氏はTechCrunch Japanの取材に対して、仮想通貨・ブロックチェーンのユースケースを増やす目的があると語る。仮想通貨のユースケースが増えることが、取引所としてのコインチェックの事業拡大に繋がるからだ。

コインチェック取締役COOの大塚雄介氏

「自社だけでやるより他社を巻き込んだほうが速く仮想通貨市場全体が広がると考えています。ただ、これまでにも『ICOがやりたい』、『ブロックチェーンがやりたい』と言って起業しようという人たちが私のもとに相談に来ているのですが、法律面はどうなってるかと聞くと、特に若い人たちは『いや、とりあえず出してみようと思っています』という回答が多かったりするのが現実です」

「われわれも金融出身ではないので、初めのうちは苦労しました。だから分かるのですが、Fintechは技術に加えて金融や法律の知識も必要で、学習コストが高い。初期のスタートアップに対してそこを支援するのが狙いで、ファンド金額や投資額がどうというよりもハンズオンが重要だと思っています」

例えば、いきなり問題のあるICOプラットフォームを世に出して潰されてしまようなことがあると、当人たちにとっても社会的にも損失となる可能性がある、という。

投資はコインチェック本体から直接行い、期間や総額は決めていないものの、投資1件あたり数百万円から5000万円程度までを考えているという。特に2〜3人のスモールチームで、どういった法的懸念があり、誰に相談すれば良いのか知らないような、走り出したばかりのチームを想定しているという。

ちなみにコインチェック自体は7月の月間取引高がビットコインだけで2326億円(日本全体では4673億円)。売買手数料、レバレッジ、スプレッド、決済時の1%の手数料の4つの収益源で、すでに事業は黒字化しているという。コインチェックの決済はメガネスーパーやエアレジ導入店舗などで使える。

コインチェックは2012年の創業時にはレジュプレスという社名で、履歴書関連サービスを提供。後にビリギャルを生んだプラットフォーム「STORYS.JP」を運営していたが、仮想通貨サービス「coincheck」を2014年8月に開始。先日、2017年8月2日にはSTORYS.JP事業を1010株式会社へ事業譲渡して、今は仮想通貨サービスに注力している。今回の枠組みで、さまざまなアイデアに投資することを考えているものの、coincheck自体は今後も取引サービスを主幹業務としていく。法人需要の掘り起こしも検討しているそうだ。

モバイル決済のコイニーが三井住友海上キャピタル、三菱UFJキャピタルなどから3億円の資金調達

モバイル決済サービス「Coiney」を提供するコイニーは8月9日、三井住友海上キャピタル三菱UFJキャピタルがそれぞれ運営するファンドを引受先とした第三者割当増資、および日本政策金融公庫からの融資により、合計約3億円を資金調達したと発表した。今回の調達は2017年2月に、産業革新機構やSBIグループ、電通グループなどから実施した総額約8億円の調達に続くもので、このシリーズでの調達資金の総額は約11億円となる。

コイニーはペイパルの日本法人立ち上げに参画していた佐俣奈緒子氏が2012年3月に設立。今年2月の調達の際の記事にも詳しいが、Squareが日本でサービスを展開を始める前の2012年10月にはモバイル決済サービスCoineyをローンチしていた。その後、2015年秋にスマートフォンやタブレットと連携した専用カードリーダーで決済ができる「Coineyターミナル」、2016年8月に手軽に決済ページを作成できる「Coineyペイジ」を提供開始。2016年9月には、AIと決済データを活用して企業評価・融資審査を行う「Coineyエンジン」サービスも始めている。今年に入ってからは、4月に訪日中国人観光客向けにモバイル決済「WeChat Pay(微信支付)」に対応したQRコード決済サービス「Coineyスキャン」の提供も始め、事業を順調に拡大してきた。

コイニーでは一連の資金調達により、これら各サービスのさらなる事業拡大と新サービス提供に必要な開発、およびセールス・マーケティング人員の強化を進めるとしている。

今後開発を予定する新サービスについては、代表取締役社長の佐俣氏が2月の資金調達の際、TechCrunch Japanの取材に対し、「今までも『現金がなくなる世界が来る』といわれていたが、将来はカードも、ひょっとしたらスマートフォンもなくなって、手ぶらで生活する社会が来ると思う。新しいサービスも開発していきたい」と話している。

コミュニティを形成、60秒以内にローンを審査――支店を持たない独銀行「Fidor Bank」躍進のワケ

Fidor BankのGe Drossaert氏(撮影:加藤康)

Rippleプロトコルを世界で初めて採用し、ビットコインを活用したリアルタイム送金やオープンAPIを備えたFidor OSを提供するなど、ドイツでもっとも革新的な銀行として知られているFidor Bank。2017年2月末に日経FinTechが開催したイベント「Nikkei FinTech Conference 2017」の特別招待講演には、そのFidor BankのGe Drossaert氏が登壇。同行のこれまでの取り組みを語った。

Fidorの歩み

Fidor Bankの創業は2007年。Drossaert氏は「ドイツという成熟した市場の中で銀行としてのポジショニングを確保していくためにデジタルバンクを始めた」と語る。当初、銀行の数が多すぎるという理由でドイツ中央銀行に設立が認可されなかったが、イノベーティブな銀行であることを説明した結果、一転して設立が認可されたそうだ。こうして、デジタルバンクに特化した銀行、Fidor Bankが誕生する。

そんな同行が大きな成長を遂げるきっかけとなったのは2010年だ。リーマンショックに端を発した世界的な金融危機が起こり、既存の銀行の多くが消費者からの信頼を失っていった。それがFidor Bankにとってはチャンスとなった。「金融危機を契機に消費者にフォーカスしたサービスを提供する銀行が求められるようになり、我々としては完璧なタイミングだった」とDrossaert氏は振り返る。

以降、順調に成長を続け、2013年には40万人の顧客の獲得と黒字化に成功。収益力が上がり、事業の基盤が固まっていくと、Fidor Bankの技術を活用したいという企業が少しずつ増えてきたという。そこでFidor Bankはテクノロジー部門を銀行から切り離し、別会社に。2015年にFidor Bank UKを開業し、2016年には、O2O(Online to Offline)に対応したバンキングサービスを開始した。「その時期にフランスのBPCEグループがビジネスモデルに関心を示し、我々はその資本を受け入れ、『FinTech銀行』として強固な基盤が築くことができた」(Drossaert氏)

現在はBPCEグループの持ち株会社「Fidor Holding」の傘下として、EU圏の銀行業務を行う「Fidor Bank」と革新性にフォーカスした業務を担う「Fidor Solutions」を展開している。ちなみに日本国内の行員数は平均で数千人となっているが、Fidor Bankはドイツ・イギリスの両方を足しても55人程度の行員で徹底した効率化を実現しているというから驚きだ。

Fidor Bankがデジタルバンクとしての優位性を保つ2つの特徴

2013年に「ドイツで最も革新的な銀行」に選出され、2014年に金融・ITリサーチ会社であるCELENT社のモデルバンクオブザイヤーにも選出されたFidor Bank。冒頭で「イノベーティブな銀行」と説明したが、彼らが武器にするのは「コミュニティ」と「60秒以内のサービス提供」の2つだと語る。

1.Facebookのようなコミュニティをベースに構築

銀行といえば、個別にサービスが完結するのが一般的だが、Fidor Bankは違う。「我々の銀行はFacebookのようなコミュニティをベースに構築されている」とGe Drossaert氏が語るとおりで、Fidor Bankには顧客がサービスや金融商品について質問できるコミュニティが形成されている。

コミュニティ上に投稿された質問に対して回答したメンバーにはポイントが付与されたり、「Community Karma」と呼ばれるユーザーステータスがアップしたりするといった仕組みを取り入れているのも特徴的だ。ポイントといったインセンティブがあることでユーザー間での質問、回答が活性化され、コールセンターよりも素早く低コストで利用者の悩みを解決できるという。コミュニティには23万7000件の回答、26万件のボーナス取り引き、5700件のサービスの提案が集まるなど、顧客のアクティブ化にも成功している。

2. 60秒以内にサービスを提供

それに加えて、もう一つの特徴が60秒以内のサービス提供だ。金融取引は基本60秒以内で完結するほか、Fidor Bankの口座管理手数料が無料になる「Smart Account」の取得者に対し、60秒以内に100ユーロを緊急で融資してもらえるサービスを提供している。一般的な銀行であれば、ローンの審査は申し込みがあった時点で行われるが、Fidor Bankは利用者の行動分析などを基にあらかじめスコアを付けておくことで、ローンの可否を即時判断できるようにしている。

60秒以内に融資可能かどうか判断してもらえるのであれば、緊急で融資が必要な人は他社と比較することはしない。だからこそ、Ge Drossaert氏は「すぐにサービスを提供してもらえるプロセスは、価格に勝る」と語る。

今後はアジア、南米、南アフリカにも進出

それ以外にもFidor Bankはビジネスを展開していくにあたってトラフィックを重要な指標と位置づけ、トラフィックを増やすためにFacebookページへの「いいね!」が数が多くなると、金利が下がるFacebookと連携した金融商品を世界の銀行として初めて開発している。

また、オープンAI「fOS(Fidor OS)」を活用した既存システムと連携した機能によって、24時間リアルタイムでビジネス分析を実施。そのデータから顧客反応や注力地域などを分析するほか、貸し出し基準を調整することでデフォルト(債務不履行)率を0.4%まで低下させ、クレジットカードの債務不履行数を6カ月間で3000件以上も防いでいるという。

講演内で、Drossaert氏は今後の展望についても触れた。「大規模な小売業者など銀行業の認可が下りない企業にも我々のプラットフォームやライセンスを提供することで自分の銀行を作れるチャンスを提供していきたい」と語る。

それに加えて、2017年9月以降、シンガポールの5つの大学と提携。Fidor銀行のAPIに関する情報を提供し、さまざまなFinTechサービスの開発を進めていくほか、南米、南アフリカにも進出していく予定だとした。

資産管理アプリMoneytreeがシリーズBで総額10億円を調達、海外進出も視野

銀行APIの公開に向け、金融庁はFintech企業を登録制とする銀行法等の一部改正を進めている。先日3月4日には閣議決定に至った。銀行APIが実現すれば、例えばアプリからでも銀行口座の残高照会や入出金明細の確認から振り込みまでできるようになる。資産管理アプリMoneytreeを提供するマネーツリーもこうした未来の実現を目指すFintech企業の1社だ。本日マネーツリーは、シリーズBの調達ラウンドで総額10億円を第三者割当増資を発表した。引受先は既存投資家のみずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、セールスフォースベンチャーズの他、新たにSBIインベストメント、ふくおかテクノロジーパートナーズ、広島ベンチャーキャピタル、池田泉州キャピタル、イギリスに拠点を置く運用会社ベイリー・ギフォード・アンド・カンパニーが参加している。SBIインベストメントがリードインベスターを務める。

マネーツリーは2012年4月は創業し、2013年4月に銀行口座やクレジットカード口座などを一括で管理するための家計簿アプリMoneytreeの提供を開始した。現在は、個人向けアプリ以外に経費精算や法人口座に対応するMoneytree Workや各種銀行口座やクレジットカード、電子マネー、ポイントカードから取得したデータを集約するAPI「MT LINK」を提供している。

今回のシリーズBの調達では、こうしたサービスを強化していく計画だという。特に直近では、MT LINKの事業拡大を目指すとマネーツリーの広報担当者は話す。今回の資金調達に合わせ、MT LINKのサイトもリニューアルした。MT LINKは2500社以上の金融サービスに対応し、導入企業はメガバンクや地銀をはじめ、会計ソフトウェア企業など20社になったという。「銀行からも信頼されているMT LINKを他業種の事業者にも広めていきたい」と担当者は話す。

また、シリーズBの引受先にイギリスの運用会社を迎えていて、近々サービスの海外展開にも打って出る計画だという。

マネーツリーは2013年10月にDGインキュベーションと個人投資家らから1億5000万円を調達した。2015年10月には金額は非公開だが、シリーズAとなる資金調達を実施している。シリーズAにはセールスフォース、みずほキャピタル、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルが参加した。今回の調達で、累計調達額は少なくとも11億5000万円以上となる計算だ。

運用しないロボアドバイザー「VESTA」が7500万円調達

AIを利用した投資アドバイスサービス「VESTA」を運営する日本のGood Moneyger(グッドマネージャー)は3月21日、ジェネシアベンチャーズアコード・ベンチャーズSMBCベンチャーキャピタルを引受先とした第三者割当増資を実施し、総額7500万円を調達したと発表した。

同社はこれまでにも複数のエンジェル投資家から資金を調達しており、代表取締役の清水俊博氏によれば累計調達金額は1億円程度だという。

VESTAは人工知能(AI)を利用した投資アドバイスサービスだ。同社が独自に開発したアルゴリズムを利用して、投資すべき銘柄、各銘柄の保有比率、売買のタイミングなどをアドバイスしてくれる。現在のところ、VESTAが対応するのは「ノーロード投資信託」と呼ばれる売買手数料がかからない投資信託のみで、株式や債券への投資アドバイスは行っていない。

最近では、テクノロジーによって自動化された資産運用サービス「ロボアドバイザー」が国内外で盛り上がりを見せているように感じる。国内では2016年にTHEO(テオ)ウェルスナビがローンチし、2017年には新たにクロエが生まれた。また、海外でもWealthfrontBettermentなどの同様のサービスがある。

ただ、VESTAは他のロボアドバイザーとは少し違うビジネスモデルもつ。クロエやウェルスナビでは、国際分散投資の手法をソフトウェアによって自動化し、それを利用して顧客から預かった資金を運用している。これらの企業の収益源はいわゆる「運用報酬」と呼ばれるもので、ポートフォリオ評価額の数%が手数料として徴収される(クロエは0.88%、ウェルスナビとTHEOは1%だ)。

一方、VESTAは顧客から資金を預かることはせず、あくまで「アドバイザー」としての役割を果たすのみとなっている。彼らのビジネスモデルは、同社が提携する楽天証券での口座開設の勧誘や、口座をもつ顧客に対する投資アドバイスを行い、その報酬として証券会社側から「紹介料」を受け取るというものだ。そのため、顧客はVESTAを無料で利用することができる。

個人の資産運用のアドバイスを行うフィナンシャル・プランナー(FP)という職業があるが、VESTAはその役割をソフトウェアによって自動化したと考えれば分かりやすいかもしれない。

誤解を恐れずに言えば、証券会社の営業員からきめ細やかなアドバイスを受けるためには、それ相応の資金を口座に預けている必要がある。証券会社も人的リソースが限られており、どうしても預かり資産が多い顧客から優先して対応せざるを得ないからだ。一方のVESTAでは、たとえ運用資産が少なくとも、機械によるパーソナルな投資アドバイスを受けることができるという点がメリットだと言えるだろう。清水氏によれば、2016年12月にローンチしたVESTAはこれまでに約1000人のユーザーを獲得しているという。

ただ、少し気になるのはGood Moneygerの提携先が楽天証券1社のみという点だ。売買手数料のかからないノーロード投資信託しか扱っていないとは言え、これでは業界のしがらみに囚われない中立的なアドバイスが本当にできるのかどうか疑わしい。それについて清水氏は、「楽天証券との契約は排他的なものではないので、今後は提携先を増やしていくつもりだ」と語る。また、今回の調達ラウンドにはグループ内にSMBC日興証券を有するSMBCベンチャーズも参加しているが、同証券会社との提携については「まだ公言できることはないが、その可能性も含め話し合いは進めている」(清水氏)そうだ。

2015年4月創業のGood Moneygerは新たに7500万円を調達し、MUFGアクセラレータプログラムに参加することも決定した。今後の展望について清水氏は、「日本はFX取引量が世界一であるにもかかわらず、金融教育が進んでいないと感じる。当社は、資産運用そのものではなく金融教育にフォーカスしていくことで他社との差別化を図りたい。金融業界の大手も日本の金融教育には問題意識をもっていて、MUFGアクセラレータプログラムに当社が選ばれたのも私たちがそこに注力しているからだと思う」と語る。

金融教育カードゲームの「Asset Allocation」

その言葉の通り、Good Moneygerは一風変わった金融教育カードゲーム「Asset Allocation」も開発中だ。これは、各カードに書かれた「日銀による金融緩和」などの経済イベントによって、例えばドル/円が上がるのか、もしくは下がるのかを当てるというゲーム。401kを採用する企業などが想定ユーザーで、現在は1セット1500円で販売している。「今はまだ手売りしている状態」(清水氏)だということだが、同社は今回調達した資金の一部をこのアプリ版の開発にも充てる予定だ。

ヨーロッパの無店舗オンラインバンクN26の口座保有者が30万に達す、毎日1000ずつ増加中

スタートアップとして銀行を始めたら、ユーザーの獲得は困難、と誰もが思うだろう。でも2013年にベルリンで創業したN26は今やヨーロッパの17の国で利用でき、ユーザーのために開設した銀行口座は30万に達した。今では、毎日ほぼ1000人がN26に登録している。

ユーザーの大多数は今でもドイツとオーストリアの居住者だが、最近では新たな登録ユーザーの半数以上がこれら2か国以外なので、徐々にその差は縮まるだろう。今、フランスのユーザーは3万、スペインとアイルランドは1万だ。これらの国は登録受付を開始してからまだ数か月しか経っていない。

同社がこれまでに扱った取引総額は30億ユーロに達し、その60%は2016年のものだ。その年、カードの扱い件数は1億件、そして今では1時間に1900件の取引を処理している。2秒に1件である。

しかし、いずれも立派な数字だが、ヨーロッパの大手リテールバンク(庶民や中小企業対象)に比べれば微々たる量だ。N26は最近やっと銀行免許を獲得*したから、今後は成長に向けて舵を切れる。〔*: 銀行免許: ドイツとECBから。ユーロ圏のみ。〕

N26がヨーロッパ全域で数千万の顧客を獲得したら、他行と互角に競争できる。今のところは、将来性をはらんだ創始期だ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

スマホ証券「One Tap BUY」が米国株に加えて日本株も取扱開始へ

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スマホ証券のスタートアップ、One Tap BUYが米国株に加えて2月13日から日本株の取り扱いも開始すると発表した。これまでFacebook、Alphabet、コカ・コーラ、アップル、ウォルト・ディズニーなど日本人にも馴染みのある有名ブランドかつ優良企業の個別銘柄30種を1000円単位で手軽に売買できることを売りにしてきたが、今回新たに3つの日本株ETFを1000円単位で売買できるようにする。

1つは日経225連動型のETF(銘柄コード:1321)で、標準的なインデックスファンドだ。トランプ騒動で日米とも株価は上げ調子だが、これに連動する分かりやすいもの。これまでの個別銘柄の売買と違って分散投資となるため長期投資に向いているという点でもOne Tap BUYとしては新しい。

もう1つのETFは、同じく日経225連動だが、日経平均の2倍幅の値動きをするもの。具体的商品としては「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」(銘柄コード:1570)。3つ目は、逆に日経平均と反対の動きする「NEXT FUNDS 日経平均インバース・インデックス連動型上場投信」(銘柄コード:1571)だ。市場全体が下がる時に収益を上げるもの。

以下のように分かりやすい、ブル(雄牛)、ベア(クマ)のキャラクターで表示するのがOne Tap BUYらしい。ブルはもちろん相場が上がることを予想する「強気」の象徴、ベアは反対に「弱気」の象徴だ。

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One Tap BUYは2016年6月にローンチ。これまで2016年7月にソフトバンクから10億円を調達している。ローンチ当初は1万円単位の売買だったが、後に1000円単位とするなど、少額で手軽に投資できるようにすることで、これまで株売買に縁のなかった投資未経験の20代後半〜40代前半の取り込みを続けている。現在までアプリダウンロード数は約15万件で、ユーザー数は1万2000人という。

国際分散投資の基本方針の1つに市場規模に比例した比率で、異なる国の上場銘柄を保有すること、というのがある。でも、どんな国の国民にも「ホームバイアス」と呼ばれる偏向がある。スウェーデンの上場企業の時価総額は全世界の1%にすぎないが、スウェーデン人の多くはスウェーデン株ばかりを保有している、というようなことだ。1991年の研究調査によれば、国内銘柄の所有比率はアメリカ人で92.2%、日本人で95.7%、イギリス人で79%などとなっているそう。日々ニュースを聞く日本企業の銘柄からなる株を日本人が持ちたくなるのは当然といえば当然。国際分散投資の統計モデルに妥当性を感じるぼくとしては、1国や2国だけに限定して銘柄を保有するのは合理性に欠けるように思うのだけど、One Tap BUYがそういう議論をする層をターゲットにしているわけではないのも、また明らかだとは思う。

モバイル決済のコイニーが8億円の資金調達、AI使った与信サービスも金融機関向けに本格展開

コイニー代表取締役社長の佐俣奈緒子氏

コイニー代表取締役社長の佐俣奈緒子氏

Squareが日本に上陸するより以前、2012年10月にモバイル決済サービス「Coiney」をローンチしたコイニー。同社が2月6日、総額約8億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

コイニーでは今回の資金調達において、産業革新機構(既存株主)、SBIインベストメントの手がけるFinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合等のファンド、電通デジタル・ホールディングスが手がける電通デジタル投資事業有限責任組合を引受先とした第三者割当増資と、コイニーのパートナーとなっている西武信用金庫からの融資をそれぞれ実施している。同社は今回の調達をもとに自社サービスの事業拡大と、新サービス提供に向けた開発およびセールス、マーケティング人員の強化を進めるとしている。

当初コイニーが手がけていた決済サービスは、スマートフォンのイヤフォンジャックに挿して利用する小さなカードリーダーを使った、いわばSquareライクなものだけだった。その後2015年秋には、スマートフォンとBluetoothやWi-Fiで連携する手のひらサイズのICカード対応端末「Coineyターミナル」の提供を開始。2016年8月には、手軽に決済ページを作成できる「Coinetペイジ」を、同年9月にはAIとトランザクションデータを活用した企業評価・融資審査エンジンの「Coineyエンジン」を提供するなど、事業を拡大してきた。

「Coineyターミナル」

「Coineyターミナル」

「決済は積み上げていくサービス。サービスインから1年後に13億円を調達したのち、粛々とやっていた」——コイニー代表取締役社長の佐俣奈緒子氏はこう振り返る。

スマートフォンで決済できるようになることから、当初はCtoCを含む「小さな決済」の領域でサービスが広がるのではないかと考えていたコイニーだったが、その結果はあまり良いものではなかったという。「当時はファーマーズマーケットや、美容、グルメといった領域に営業していましたが、実はそれほど伸びていませんでした」(佐俣氏)

そこで方向を転換、病院をはじめとした医療領域や中古車販売店、整備工場といった自動車領域、リフォームやリノベーションといった住まい領域を中心にサービスを拡大させた。「ターゲットにしたのは、単価が高くて、クレジットカードを使いたいけれども現状は現金しか使えないところ。日本人は単価の安いものでクレジットカードを使わないのも分かった。中古車ディーラーが軒先で決済したり、提携するリクシルでは、営業マンが営業先で決済をする、といった使い方をしている。ポイントは『決済を簡単にする』こと。手数料を安くする(料率は3.24%〜)、入金を早くする(振込依頼から2営業日)といったことが重要」(佐俣氏)

勝負すべき領域は見つかったが、一方では課題も残っていた。「(スマートフォンのイヤフォンジャックに挿して使う)リーダーを使った決済は、読み取り精度もそうだが、それよりも(動作が)簡単すぎて不安という声もあった」(佐俣氏)。そこで、ICカードの読み取りにも対応した専用端末であるCoineyターミナルも提供するに至った。

具体的な金額は公開していないが、月間決済額もサービス開始から順調に伸びているとのこと。加盟店あたりの月間決済額(平均)も、当初は13万円ほどだったが、現在では70万円まで増加した。佐俣氏は国内のモバイル決済市場について「決済額ベースで現状が数千億円、2020年に1.5兆円くらいになるかと思う」と語っている。

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コイニーが現在注力しているのは、地方の金融機関との連携だ。業務提携するクレディセゾンを通じて西武信用金庫と事業面でもパートナーシップを結んでいるが、今後は金融機関の顧客向けにCoineyを展開。そのトランザクションデータをCoineyエンジンに利用することで、金融機関がスピーディーで正確な与信情報を提供することも狙う。「ひとことでFinTechといっても、さまざまな分野がある。(サービスを提供して)金融機関からお金をもらうFinTechベンチャーは多いが、コイニーはお金を流すようなことをしていく。金融機関にメリットがあるから、我々のプロダクトをもっと売って下さい、という考えだ」(佐俣氏)

佐俣氏は、コイニーの将来について次のように語る。「このビジネスモデルは5年前のモデル。次の5年のために作りたいことがある。今までも『現金がなくなる世界が来る』といわれていたが、将来はカードも、ひょっとしたらスマートフォンもなくなって、手ぶらで生活する社会が来ると思う。新しいサービスも開発していきたい」

アルゴリズムで10分審査、中小企業向け融資のクレジットエンジンが約1億円を調達

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中小企業向けのレンディングサービスを展開する日本のクレジットエンジンは1月30日、シードラウンドで総額1億1000万円を調達したと発表した。同社は2016年の9月末にDraper NexusVoyage Groupから約6000万円を調達しており、今回新たに米国の500 Startupsおよび500 Startups Japan、そしてフリービットインベストメントなどから約5000万円を調達してシードラウンドを完了した。クレジットエンジンは今回調達した資金をテスト融資用の原資や人員強化のための費用に充てる予定だ。

また、クレジットエンジンは本日よりオンライン融資サービス「LENDY(レンディ)」のベータ版提供を開始する。

LENDYは、中小企業がもつオンラインデータを活用したレンディングサービスだ。オンラインデータをもとに融資判断を自動で行う独自のアルゴリズムを利用することで、ペーパーレスで人件費を抑えたスピード審査を実現できる。

また、一度きりの信用評価をするのではなく、リアルタイムなオンラインデータを取得することで継続的な信用評価を行うことができる。クレジットエンジンは、この継続的な信用評価によって貸し倒れリスクなどを軽減できると主張している。審査の手続きにかかる時間は10分から15分程度だ。

現状の中小企業金融が抱える課題

クレジットエンジン代表取締役の内山誓一郎氏によれば、中小企業金融が抱える課題は「既存の金融機関が中小企業や個人事業主の資金ニーズに適切に応えられていない」点だと語る。現状、中小企業や個人事業主が利用できる融資サービスは大きく分けて3つある。伝統的な銀行や信用金庫からの融資、スピーディな審査や無担保で融資を受けられることが特徴のビジネスローン、そして売掛金をすぐに現金化できるファクタリングだ。

中小企業が銀行などから資金を借りるときに障害となるのが、煩雑な手続きと融資完了までにかかる長い時間だ。規模の小さな事業体がもつリソースは少なく、詳細な事業計画などを作成する時間がなかったり、そもそも提供できる担保がないこともある。また、融資が完了するまでに2ヶ月から3ヶ月もの時間がかかり、急な資金需要には対応できない。伝統的な金融機関では、決められた融資枠の範囲であればいつでも自由に融資を受けることができる「当座貸越契約」を結ぶこともできるが、この契約を取り交わすことができるのは規模の大きな優良企業に限られる。

一方で、急な資金調達のニーズに応えてくれるのが、融資完了までの時間の短さが特徴のビジネスローンやファクタリングだ。しかし、ビジネスローンは無担保で借りられるが金利が高い。また、この方法でも書類準備には手間がかかる。ファクタリングには売掛金回収の手間が省けるという利点はあるが、請求書を発行するたびに事務作業をしなければならず、手数料も高いという難点がある(調達金額の5%から20%程の手数料が一般的だ)。

リアルタイムにオンラインデータを取得し、独自のアルゴリズムで審査

2016年7月に創業のクレジットエンジンは、中小企業がもつオンラインデータを活用することで融資にかかる時間や手間をできるだけ減らすことを目指している。

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ここでいうオンラインデータとは、例えば、銀行のインターネットバンキングから取得する残高や入金などの記録、クラウド会計サービスから取得する会計データ、ECサイトから取得する日々の売上データなどを指す。また、通常の審査では利用されない企業やショップの口コミなどの定性的なデータも利用していくようだ。本日発表のプレスリリースでは、LENDYのサービス連携先としてAmazon、スマレジ、住信SBIネット銀行、freee、楽天銀行などが挙げられている。

取得したデータを元に、クレジットエンジンが独自で開発する審査アルゴリズムが自動的に審査判断を下す。審査に通った事業体には融資枠が設定され、以後その範囲内であれば自由に借り入れが可能になる。

内山氏によれば、同社は将来的に顧客とのコミュニケーションの自動化のためにチャットボットを利用する予定でだと話す。これが実現すれば100%に近い「全自動の融資サービス」が可能になるかもしれない。内山氏は、「(全自動の融資サービスは)技術的には可能だと思っている。将来的にはそのようなサービスを目指したい」と語る。

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クレジットエンジンは、LENDYを通してユーザーに最大100万円(正式版では最大1000万円までとなる予定)を短期で貸し付け、そこから金利収入を得る。金額の上限設定について内山氏は、「事業の開始資金など、まとまった資金を借りるための融資サービスでは、金利などの面で銀行や信用金庫が圧倒的に有利になる。そのため、小規模だが急な資金ニーズに応えるというマーケットが当社が狙える分野だと思った」と話す。

ベータ版における貸付利率は融資額が100万円以上の場合8%~15%、100万円未満では13%~18%だ。金利水準だけを比較すると、一般的なビジネスローンの金利とあまり変わらないことが分かる。これについて内山氏は、「最初から金利水準で攻めるのではなく、まずは利便性で差別化を図る。ただ、審査モデルの実績も積み上がっていけば、価格面でも勝負できる可能性はある」と話す。

日本でもレンディングサービスが普及する土壌ができあがってきた

現在、中小企業向けのレンディングサービスは欧米を中心に普及してきている。同様のサービスを展開する米国のOnDeckによる融資総額は50億ドルに達している。その背景にあるのは、クラウド会計など各種クラウドサービスの急速な普及だ。

クラウド会計サービスのQuickBooksOnlineを例にすると、同社のユーザー数は2010年頃を境に急激に伸び、2015年度におけるユーザー数は150万人となっている。「日本でもクラウド会計のfreeeやPOSレジアプリのAirレジなどの普及が急速に進んでおり、中小向けレンディングサービス普及の土壌はできあがっている」と内山氏は語る。

本調達ラウンドに参加したDraper Nexusの倉林陽氏も、伝統的な金融機関以外からのレンディングサービスは重要な投資テーマの1つだと語る。「オルタナティブ・レンディング分野は投資テーマとして2015年からEIRを交え調査しており、専業でSMB向けにこの事業に取り組むスタートアップ企業を日本で創りたいと思っていました。そこに内山さん含むクレジットエンジンが現れ、弊社のEIRだった井上氏が参画する形でチームが強化されたのを受け、出資を決めてシードラウンドの調達を支援しました」。

昨年12月、OnDeskとアメリカ大手金融機関のJP Morganとの業務提携が発表された。クレジットエンジンも「2年後をめど」に自社の与信システム・プラットフォームを伝統的な金融機関に提供していく予定だ。

500 Startup JapanのJames Riney氏は、「米国においてオルタナティブレンディング領域のスタートアップが成功した要因は、シームレスなオンライン体験をレガシーな業界に持ち込んだことでした。日本においても、いずれ同様のことが生じていくと考えられます」と日本のレンディング・ビジネスの将来を語る。

そこで懸念されるのが、日本の伝統的な金融機関がスタートアップの技術を受け入れる体制にあるのかどうかだ。前職のマネーフォワード社では中小企業向けのクラウドサービス部門に所属していた内山氏は、「伝統的な金融機関からもFinTechを取り入れたいという気持ちは伝わってくるが、現状ではまだ先進的な試みをしているところだけだ」とコメントしている。

ところで、クレジットエンジンのビジネスモデルは、不特定多数の個人などから資金を集めた資金を貸し付けるというP2P型の「ソーシャルレンディング」ではない。米国ではP2P型のレンディングサービスも増えてきていて、日本にもmaneoなどがある。

ソーシャルレンディングのモデルを選択しなかった理由について内山氏は、「LENDYは中小企業や個人事業主などをターゲットにしたサービスである以上、ある程度の確率でデフォルトが起こることは避けられない。そのため、個人から資金を集めるP2P型のモデルはLENDYには適さないと思った。それに加えて、P2Pでは資金調達コストが5%から8%かかる。多い時では10%かかることもある。デフォルトが発生することを考えると、そのコストでは成り立たないと思った」と説明する。

内山氏によれば、金融機関の融資サービスの対象とならない(従業員が20名以下の規模の)事業者は、全国で350万社を超える。現在、中小企業に対する貸し付け残高は160兆円で、その内の2兆円が無担保ローンの貸し付け残高だという。そのマーケットがクレジットエンジンの事業領域だ。

AIでトレーディングを自動化するAlpacaDB、総額175万ドルの資金調達

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AIとデータベース技術を用いてトレーディングの自動化などを行う米AlpacaDB。同社は1月25日、イノベーティブ・ベンチャー投資事業有限責任組合、D4V、三菱UFJキャピタル、マネックスベンチャーズのほか、フィンテック領域に投資するエンジェル投資家のEric Di Benedetto氏ほか個人投資家らから、総額175万米ドルの資金調達を実施したことを明らかにした。

AlpacaDBは2015年2月の設立。もともとは独自のAI技術用いて画像認識のプロダクトを手がけていたが、2015年にそこからピボットしている。創業から現在のフィンテック領域へのチャレンジについてはTechCrunchの過去の記事を読んで頂きたい。

そんな同社では現在、AIを用いて株式(米国株式市場のみに対応)の売買タイミングをアドバイスする「AlpacaScan(アルパカスキャン)」、そして為替取引の自動取引サポートサービス「AlpacaAlgo(アルパカアルゴ)」の2サービスを展開。AlpacaAlgoは2016年11月から一部のユーザーに限定して限定して展開しているが、2カ月間で実取引総額は1億ドル超だという。

AlpacaDBでは今回の資金調達をもとに、これら2つのサービスの開発を進めるほか、トレーディングにおけるAI技術とデータベース技術の更なる研究開発と事業展開を進めるとしている。また今春にはAlpacaScanのモバイルベータ版を提供する予定だとしている。

支払日の前に給与を現金化できるActivehoursがシリーズAで2200万ドルを調達

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次の給料小切手を受け取るまでに、2週間待つ必要がなかったらどうだろうか?

働いたあと、すぐにその分の給料が受け取れるとしたらどうだろうか?

給料担保金融業者とは違い、そのために手数料を支払う必要がなかったとしたら?その代わりに、気が向いたときに寄付をするだけでよかったとしたら?

これらがPalo Altoを拠点とするActivehoursが提供する価値である。創業から4年の同社は、ペイロールの常識を覆そうとする企業だ。そして同社は現地時間9日、Matrix PartnersがリードするシリーズAで2200万ドルを調達したと発表した。

同社のサービスはどこかATMにも似ている。ユーザーは同サービスを利用することで給与を支払日前に現金化することができ、その資金を予期せぬクルマの故障による修理費用や、期限が迫った支払いなどに充てることができる。銀行や高金利の給料担保金融業者とは違い、厄介な当座貸越手数料を支払う必要もない。このサービスには金利もかからないが、Activehoursのサービスに満足したときには寄付することが奨励されている。

Activehoursはユーザーの信用情報をチェックしていない。社会保障番号を聞くこともない。普通預金口座を持っていて仕事があれば、誰でもサービスを利用することが可能だ。どのような企業に務めていてもActivehoursを利用することは可能だが、同社はSears Holdings(SearsとKmartの親会社)をはじめとする企業と提携を結んでいる。これらの提携企業に勤めるユーザーは通常よりスムーズにActivehoursを利用することができ、未受領の給与を給与小切手が届くまえに現金化することができる。また、同社はUberとも提携を結んでおり、UberドライバーはActivehoursに自分の銀行口座番号とUberのアカウント情報を提供することで、勤務後すぐに給与を受け取ることが可能だ。

Activehoursのおもしろい機能は、プラットフォームに参加するユーザーが他の誰かの代わりに「チップ」を支払うことも可能だということだ。そして、この機能は完全に匿名で利用することができる。イメージとしては、高速道路の料金所で自分の通行料と一緒に後ろにいるクルマの分まで支払うようなものだ。

今回の調達ラウンドをリードしたMatrix PartnersのDana Stalderは、「Activehoursは、バリスタや本屋の店員、銀行の窓口係などに向けたサービスです」と語る。「クレジットカードでリボルビングローンを組んでいるアメリカ人は全体の50%です ― それに加えて、リボルビングローンを利用していない層も大勢取り込めます」。

とはいえ、手数料が無料?金利もナシ?そのようなビジネスが成り立つのだろうか。特にビジネスをスケールさせようとするなら尚さらだ。Stalderの話しによれば、Activehours CEOのRam Palaniappanがビジネスモデルのプレゼンテーションを行ったとき、Stalderもこれと同じ質問をしたそうだ。しかし、実際にユーザーは寄付をしてくれているのだと、その時Palaniappanは言った ― しかも、今では1万2000社以上の従業員が利用するサービスとなったActivehoursの売上予測をするのに十分なほど、寄付が集まっているというのだ。

Stalderは「私は本当に寄付だけでこのビジネスが成立するのかどうか疑問に思っていましたが、Ramは確かにそれが成立しうることを証明したのです」と話す。

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それはつまるところ、ロイヤルティの力なのだとStalderは言う。このことは、無期限に有給休暇を取ることができたとしても、実際にはそれまでよりも少ない休暇を取る傾向にあるということに似ている。

残念なことに、Activehoursは寄付の平均単価を公開してはいない。しかし、人々の働き方はいま急速に変化しつつあり、個人として企業と業務委託契約を結ぶ人々がこれまで以上に増えている。Activehoursはそのような状況に即したサービスであるようにみえる。実際、2020年までにアメリカ国民の40%がフリーランスとして働くようになるという調査結果をIntuitが発表している。

それに加えてPalaniappanは、現在のような2週間毎の給与の支払い方式は、時代遅れの帳簿記入システムが生んだ過去の遺産なのだと話す。

気になるのは、Activehoursがユーザーにとって良いサービスなのかどうかという点だ。たとえば、Activehoursを利用しすぎたあまりに、いざ家賃を支払う時に十分な資金が無くなってしまっていたらどうだろうか?その点についてPalaniappanは、Activehoursには予算管理の機能も備わっているため、そのような落とし穴にはまる心配はないという。また、給与小切手の額面全額を現金化することはできない仕組みにもなっている。

さらにStalderとPalaniappanは、両者ともにある点についても言及している。人々の働き方が変化し、細分化された契約取引が増えるようになれば、人々は自分たちの財政状況をより上手くコントロールすることが可能になると彼らは主張しているのだ。そして、その中心的な役割を担うのがモバイルなのだという。

彼らの主張は正しいのかもしれない。確かに、Activehoursと同じような理由からこの分野に参入した競合も存在する。PayActivFlexWageなどがその例だ。これらの企業は両社ともに、給与の支払日を待たずにそれを現金化できるというサービスを展開している。

どちらにしろ、全体で何十億ドルにもなる当座貸越手数料の支払いに苦しむ人々が彼らのサービスを試してみる気になる可能性はある。

今回の調達ラウンドをリードしたMatrix Partnersに加え、新規投資家のMarch Capitalや既存投資家のRibbit Capital、Fellicis Venturesの他、いくつかのアーリステージ投資家も本ラウンドに参加している。

Activehoursは、これまでにードラウンドで410万ドルを調達している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter