Google(グーグル)のような巨大企業の製品であるにも関わらず、これまでPixelシリーズはいささか負け犬の印象があった。
Googleはスマートフォン製造で当初他のメーカーとパートナーを組んでいたし、独自のNexusシリーズもぱっとしなかった。グーグルがスマートフォンに本腰を入れ始めて気がついたのは、他のメーカーがすでに地位を築いている市場に参入してシェアを奪うのは非常に難しいということだった。特にそのライバルの多くがグーグル自身が開発したOSを使っている場合にはなおさらだ。
Pixelの特徴といえば、むしろ派手な特徴が無いことだ。Samsung(サムスン)やApple(アップル)などライバルの有力デバイスと比べると強い対照をなしている。スマホが自動車であれば、Pixelはよくできたセダンといったところだ。性能は優秀で値段も妥当、PTAの集まりに乗り付けても後で陰口をされることはない。そのためグーグルは、Pixelシリーズのアイデンティティを求めて苦労することになった。
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また売上もぱっとしなかった。グーグルの決算に対する影響も「ゼロではない」という程度に留まった。しかしグーグルは、Pixelにもっと大きな期待をかけていたはずだ。最近、グーグルのPixel事業部には地殻変動的な人事異動があり、責任者のMario Queiroz(マリオ・ケイロス)氏とカメラの魔術師であるMarc Levoy(マーク・レボイ)氏が去った。グーグルはスマートフォン事業を一新しようとしているようだ。今回のPixel4と4aがこれまでのシリーズの最後の製品にする可能性がある。
もちろんフラッグシップモデルへのアプローチを再考することには、大きな意味があるだろう。しかしグーグルのこれまでのスマートフォンの中で手頃な価格の入門機である『a』は最もニーズにマッチした製品だった。実際、売上高がそれを証明している。Pixel 3aはまったく期待はずれの売れ行きだったPixel 3の後継だ。このPixel 3aは堅実かつ手頃な価格のオプションを提供したことにより、最近のスマートフォンのトレンドにぴったりと適合した。これまでのPixelが失敗してきた部分だ。1000ドル以上もするフラッグシップにユーザーは飽き飽きしていたのだ。
Pixel 3aは他のPixelに比べて派手さもパワーもなく、ユーザーが求めていた純粋なAndroid体験を提供するためにカスタムメイドされていた。2019年にリリースされたPixel 4のスタートは散々だった。デバイス自体はよくできていたが、1つ重大な欠陥があった。それはバッテリーの持ちが悪いことだ。そのためセールスは伸び悩んだが、しかし報道によれば、グーグルはその後価格を思い切って引き下げることによりこれを埋め合わせたという。
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Pixel 4aのリリースにはこうした背景がある。特に重要なのは4の最大の問題、つまりバッテリー駆動時間を重点的に改良したことだ。バッテリーの持ちなど話題は、新製品紹介の文頭で触れるものことはまずない。それはクールでもおもしろいものでもなく、新しくもセクシーでもない。新しいスマートフォンを買って最初の数週間はいわばハネムーンのようなもの、ユーザーが欠陥に気づくのは後になってからだ。しかしPixel 4のバッテリー駆動時間に関する問題はあまりに大きく、ユーザーは気がつかないないことがなかった。
断っておくが、Pixel 4aはバッテリーの持ちが驚異的に良いスマートフォンというわけではない。しかし4に比べれば明らかに改良されており、これだけでもお勧めすに足りる。3140mAhというのはバッテリーサイズは特筆すべきものではないが、2800mAhのPixel 4と比べるとはっきり強化されている。またPixel 3aの3080mAhと比べても少しサイズアップしている。Pixel 4aを日常のスマホとして使って気が付いたが、バッテリーライフは27時間以上あるので充電器から外したまま1日以上使うことができる。ただしこの時間は、ディスプレイを常時オンにしていると短くなる。
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プロセッサーは2019年に発表されたSnapdragon 730G(オーバークロックされた730)だ。グーグルでは新しいSnapdragon 765の採用も検討しただろうが、価格面の考慮から730Gに落ち着いたものと思われる。ほとんどの作業でもの足りなさを感じることはないが、負担が大きい作業では差が生じている。例えば写真を撮った後、処理にやや長い時間がかかることに気づく。
カメラは以前からPixelシリーズの売りだった。今回の低価格モデルでもそれは変わらない。Pixel 4aのリアカメラは、3aと同じく12.2メガピクセルが1つだが、Pixel 4式と同じ正方形のカメラ部分に配置されている。多少奇妙だが、ミドルクラスの価格のカメラで素晴らしい写真を撮れるのがグーグルの誇りらしい。
グーグルによればPixelで写真を撮影した際に、AIを利用した高度な画像処理をスマホ内のソフトで行うことで素晴らしい写真が撮れるという。それは写真を見れば明らかだ。ズームに強く、暗い場所での撮影もこなせるなど、Pixel 3aも、この価格帯のモデルとしては文句なしに素晴らしい写真を撮ることができる。
とはいえハードウェアが重要であることには変わりはない。これは当分の間、変わらないだろう。例えばグーグルの場合だが、Pixel 3に搭載されたSuper Res Zoom機能により印象的な写真が撮れるが、光学ズームレンズではなくAIによるAIを使った電子ズームで同じ効果を出そうとするとディテールが失われてしまう。
ポートレートモードについても同じことがいえる。ポートレートの分野でもグーグルはスマートフォンカメラのベストの1つで、ポートレート撮影の際、グーグルのシステムは画像の被写界体深度を推測し、デジタル一眼カメラのような背景ボケを合成する。これは大抵の場合成功しているが、条件によってはコンピューター処理能力の限界にぶつかる。最近iPhone 11とPixel 3aを比較する機会が多いが、様々な違いの中でも特に私が気づいたのは、近距離でポートレートを撮影する際のグーグルカメラの優秀さだ。しかしながら、いずれもうるさい背景で複雑な被写体を撮影しようとすると、どこに焦点を合わせるか迷うという問題が起こる。例えば下の写真のように、スプリングの手前にある人形を撮影するとフォーカスは大混乱する。
左はiPhone11、右はPixel 4a
一方でPixelの夜景モードは4aでも依然として素晴らしい。
私はPixelシリーズをずっと使っている同僚にその理由を尋ねたことがある。後で考えれば本当にもっともなもので、彼の答えはソフトウェアサポートの優秀さだった。純粋なAndroidとともに、グーグルはPixelにスマートフォン分野でベストかつ非常に興味深い機能を追加し続けるだろう。
つまりグーグルの大ヒットアプリ、レコーダーなどがその例だ。これは非常に優秀なアプリで録音と同時にライブで文字起こしをしてくれる。私はこの機能強化の価値についてはやや懐疑的な見方をしていた。しかしジャーナリストとして多数のインタビューするため、録音文字起こし機能は日々の仕事に必須の機能になっている。たくさんの講義を履修する学生にとってもおそらく同様だろう。しかし一般ユーザーにとってリアルタイムの音声文字変換機能がどれほど役に立つのか、私にはよくわからない。それでもGoogleドキュメントの統合やGoogleアシスタントのサポートといった新機能など、今後もグーグルのアプリが楽しみだ。
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その他、今回目立ったアップデートには音声とビデオの通話でリアルタイムに音声文字変換ができるようなったことが挙げられる。この新機能は簡単にいえばレコーダーの音声文字変換機能を通話に適用したものだ。また、プライバシー保護の観点から音声文字変換機能を利用していることは通話の相手に通知される。グーグルによれば、この機能は1対1の通話でだけ有効だ。私の理解では、多人数の会話を適切に聞き分けて文字起こしをするためにはアルゴリズムに大きな変更が必要になるはずだ。
日本では4万2900円〜というPixel 4aの価格は、4万9500円~という3aより6600円も安く、8万9980円〜のPixel 4に比べると半額以下だ。またサムスンやアップルの低価格機と比べてもずっと安い。ただしこうした非常に魅力的な価格を別にすれば、Pixel 4aは人を驚かせるような要素は乏しい。しかし必要な仕事はすべてこなす。今のスマートフォンに求められるのはこの要素だ。おっと、それからPixel 4aにはイヤホンジャックがある。
画像クレジット:Brian Heater
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)