国際宇宙ステーションで初の長編映画撮影を行っていたロシア映画班が無事に帰還

国際宇宙ステーションで初の長編映画撮影を行っていたロシア映画班が無事に帰還

ISS、NASA

10月17日午後1時半過ぎ、国際宇宙ステーション(ISS)で初の長編映画撮影を行っていたロシアの映画撮影班クリム・シペンコ監督と俳優ユリア・ペレシルド、そして宇宙飛行士のオレグ・ノビツキーの3人がソユーズMS-18宇宙船で地上に帰還しました。帰還直前のソユーズの試験ではスラスター誤噴射がありヒヤリとさせられましたが、その後は問題はありませんでした。

ハリウッドを出し抜いてISSで撮影された初の長編映画になる予定の作品「The Challenge」は、テレビ局のChannel OneとYellow, Black and Whiteプロダクション、そしてロシア宇宙機関Roscosmosの協力で制作されます。

ノビツキー飛行士はソユーズMS-18ミッションとしてNASAのマーク・ヴァンデハイ飛行士とロシアのピョートル・ドゥブロフ飛行士とともに4月9日からISSに長期滞在していて、今回映画班と一緒に帰還しましたが。映画撮影クルーが同乗することになったため、残りの2人は、滞在期間を6か月延長することになりました。結果、ヴァンデハイ飛行士はNASAの飛行士としてもっとも長くISSに滞在した飛行士の記録を樹立することになります。

また、記録という点では、ユリア・ペレシルドはプロの役者としては先日Blue Originの宇宙船に搭乗したウィリアム・シャトナー氏より1週間早く宇宙に行った人物になりました。

ISSで撮影された「The Challenge」がいつ頃公開されるのかがわかるまでにはしばらく待つ必要がありそうですが、おそらく国際的な作品というよりはロシア国内向けと思っておくのが良さそうです。それでも、ISSでの映画撮影の実績は、今後トム・クルーズやそれに続く世界的なスターたちが続々と低軌道へ向かい、何らかの作品を作るようになる未来を拓いたかもしれません。

(Source:NASAEngadget日本版より転載)

ウォズニアック氏の宇宙企業「Privateer」は混雑化して危険な宇宙のGoogleマップを目指す

現在、地球低軌道上(LEO)には、壊れた衛星やロケットの破片、多段式ロケットや宇宙ミッションの残骸など、何百万個もの宇宙ゴミが散乱しているが、これを一掃することを目的としたベンチャー企業が次々と誕生している。Steve Wozniak(スティーブ・ウォズニアック)氏と共同で宇宙ベンチャーを設立したAlex Fielding(アレックス・フィールディング)氏によると、LEOの清掃は重要な課題だが、1つ問題があるという。宇宙ゴミ(スペースデブリ)の多くは、実際にどこにあるのかわからないということだ。

「軌道清掃企業は、地球低軌道上にあるほとんどの物体がどこにあるのか一致した意見がなく、それぞれの瞬間に3~400km程度の精度以上で把握することができません」とフィールディング氏はTechCrunchに語った。

フィールディング氏とウォズニアック氏は、新会社「Privateer」を設立して、この知識のギャップを解消しようとしている。これまでステルス状態にあったこの会社は、9月にウォズニアック氏がYouTubeにアップした1分間のプロモビデオへのリンクをツイートしたことで注目を集め、Privateerは宇宙空間の物体の清掃に力を入れるのではないかとの噂が広まった。

しかし、それは微妙に違っていた。「Privateerは実際には、宇宙をきれいにするという目標でスタートしたわけではありません」とフィールディング氏は説明する。「私たちは、宇宙のGoogleマップを作ることを目指してスタートしたのです」。

フィールディング氏とApple(アップル)の共同創業者ウォズニアック氏のコラボレーションは、今回が初めてではない。2人は2000年代初頭に、物体の物理的な位置を追跡する技術を開発する無線ハードウェア企業Wheels of Zeus(WoZ)を設立している。

「20年前、私たちがそれ(WoZ)を始めたとき、宇宙にあったものの半分はゴミでした」とフィールディング氏は語る。その後、状況はさらに悪化していった。「今の世界では、(軌道上には)もっともっと多くのものがあり、その中でも特に危険なものはほぼすべてが低軌道にあり、非常に高速で移動していて、ほとんどの場合よく追跡されておらず、理解されていません」。

宇宙ゴミの危険性は依然として存在する。5月、国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士が、モジュールの1つに取り付けられたロボットアームに幅5mmの穴が開いているのを発見した。アームは機能していたが、ISSが衝突を避けるための操作をしなかったことから、当たった物体は、米国宇宙軍の宇宙監視ネットワークが追跡できないほど小さい軌道上の数百万個の物体の1つであると考えられる。

Rocket Lab(ロケット・ラボ)やSpaceX(スペースX)のような打ち上げ企業が、かつてNASAのような公的機関が独占的に行っていたサービスを今は提供しているのと同じように、Privateerはこうした膨大なデータギャップを埋められるかもしれない。

Privateerは、最初から早いペースで取り組みを進めている。同社は、2022年2月11日に「Pono 1」と名づけられた最初の小型衛星を打ち上げる予定だ。Pono 1の大きさは約3U(約30cm)で、非光学式センサー30個と光学式カメラ12個の合計42個のセンサーを搭載する。非光学式センサーは、4ミクロンの精度を実現する。衛星本体は炭素繊維を用いて3Dプリントで作られ、そうすることによりチタンと同等の剛性を持つ単一の固体部品になるとフィールディング氏はいう。推進剤の代わりに、磁気トルカという衛星姿勢制御用の電流を発生させる小型装置を使って方向を制御する予定だ。

Pono 1衛星は4カ月間だけ運用され、そのあと軌道離脱して地球の大気圏に戻り焼失する。2番目の衛星であるPono 2は、4月末に打ち上げられる。Privateerは、両機の打ち上げのためにすでに打ち上げ業者を決定し、必要な承認を得ている。

これらの打ち上げに加えて、Privateerは、軌道上のロジスティックスとサービスを提供するスタートアップであるAstroscaleとすでに協力関係にあり、現在、宇宙ゴミ除去衛星のデモを行っているとフィールディング氏は述べている。また、Privateerは、米国宇宙軍とのパートナーシップも締結した。

フィールディング氏は、宇宙の完全なGoogleマップを追求しないことは、単なる怠慢ではなく、命取りになるかもしれないという。「私は普段は楽観主義者ですが、今でも非常に恐れているのは、遅すぎたのではないか、2年以内に軌道上で最初の有人宇宙飛行士の犠牲者が出るのではないかということです。そう考える理由は、地球低軌道での(物体や活動の)急増にあります」。

関連記事:日本の宇宙スタートアップAstroscaleが宇宙で軌道上デブリをつかまえて放すデモに成功

画像クレジット:Maciej Frolow/Photodisc / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

ロシアの映画監督と女優がISSに到着、12日間滞在し軌道上での映画撮影に挑戦

ロシアの映画監督と女優がISSに到着、12日間滞在し軌道上での映画撮影に挑戦

Handout / Reuters

2020年、NASAはハリウッドスターのトム・クルーズがSpaceXの宇宙船で国際宇宙ステーション(ISS)に搭乗し、宇宙での映画撮影を行う計画があることを認めていましたが、ロシアはその計画から”初”の文字を奪い去るつもりです。10月5日、ロシアの映画監督と女優ら撮影クルーが、ソユーズ宇宙船で映画『The Challenge』の撮影のためにISSに到着しました。映画クルーの滞在期間は12日間の予定です。

この映画は、宇宙飛行士の命を救うために国際宇宙ステーションに派遣されたロシア人医師の奮闘を描くという内容とされます。監督のクリム・シペンコはコメディ作品『Son Of A Rich』を(ロシア国内で)大ヒットさせた実績があり、女優のユリア・ペレルシドは映画だけでなく舞台での経歴も持つとのこと。両氏は打上げに先だって、宇宙飛行士が受ける訓練をこなしており、その様子はロシアのテレビでも報道されていました。

ちなみに、ロシアの映画クルーは12日間で再びソユーズに乗って地上に戻りますが、宇宙飛行士でない民間人のISS滞在は今後も続きます。12月には、日本の前澤友作氏と、前澤氏が設立した「スペーストゥデイ」社の映像プロデューサーの平野陽三氏が、米国の宇宙旅行斡旋企業「Space Adventures」を通じて予約したソユーズに搭乗し、やはり12日間滞在します。

そして2022年2月下旬には、SpaceXのCrew Dragonのシートを購入した3名を含むクルーがISSに向かう予定になっています。

最近は宇宙を舞台とする映画でISSが描かれることも多く、その再現度も目を見張るものがありますが、さすがにISSの”現場”で撮影した映像が劇場用映画に使われるのはおそらく初。どのような出来栄えになるのかは気になるところです。

(Source:New York TimesEngadget日本版より転載)

GITAI Japanの宇宙用汎用作業ロボットアームがSpaceXのロケットでISSに到着、10月に汎用作業遂行技術実証を開始予定

GITAI Japanは8月31日、宇宙用汎用作業ロボットGITAI(ギタイ)を載せたSpaceXロケットの打ち上げが成功し、国際宇宙ステーション(ISS)に到着したことを発表した。このロボットは、2021年10月頃からISSで汎用作業遂行技術実証を開始する予定。

アメリカ現地時間8月29日、SpaceXのFalcon 9ロケットによって打ち上げられたDragon宇宙船の23回目の商用フライト(CRS-23ミッション)にて、GITAI Japanの宇宙用ロボットアーム「S1」がISSに送り込まれた。この実証実験は、民間宇宙利用を促進するアメリカの宇宙サービス企業Nanoracks(ナノラックス)と共同で、同社がISSに設置した商用エアロックモジュール「ビショップ」内にて実施される。

このモジュールにロボットアーム「S1」を設置し、スイッチやケーブルの操作といった船内作業と、宇宙用パネル組み立てといった宇宙組み立て作業を行う。作業は、自律制御と、ヒューストンのNanoracks管制室からの遠隔操作との両方が試される(動画は、GITAI社内で撮影した、S1による宇宙組み立て作業模擬タスクの実施状況)。

GIATAI Japanは、「宇宙に安価で安全な作業手段を提供する」ことを目指す宇宙ロボットスタートアップ。2016年7月に設立し、宇宙ステーションの船外作業、衛星の寿命延長や宇宙デブリの除去といった軌道上サービスのためのドッキング・寿命延長・修理・メンテナンス作業、月面探査および基地開発作業を行うロボットの開発を行っている。

現在は、今回の実証実験に使用されるS1、宇宙船の内外や月面基地開発などに使用する汎用作業ロボット「G1」、宇宙のロボットを地上から操作するためのロボット操縦システム「H1」の開発に加えて、新たに月面作業用ロボットローバーの開発にも着手した。

「2040年には世界的な宇宙ロケット開発企業と対等なパートナーとして、月や火星に都市を建設したり宇宙コロニーを建設する安価で安全な労働力を提供しています」とGITAI Japanは将来を語っている。ロケット開発企業は輸送手段を提供し輸送コストを下げるのに対し、GITAI Japanは「作業手段」を提供し、作業コストを下げるとのことだ。

NASAがISSで月基地建設用3Dプリンターの実証機をテスト、微小重力・月の土で必要な強度が出るか確認

NASAがISSで月基地建設用3Dプリンターの実証機をテスト、微小重力・月の土で必要な強度が出るか確認

NASA

NASAの最新の国際宇宙ステーション(ISS)ミッションには、月の土(レゴリス)を使って現地に建物を作るための3Dプリンター実証機が搭載されています。

Redwire Regolith Print(RRP)と呼ばれるこのプロジェクトは、既存のプリンティング機材と連携してレゴリスに見立てた材料を用いて3Dプリントの実証試験を行い、出力されたものが地球とは異なる環境で期待どおりの強度を示すかどうかを確かめます。

月面に飛行士が滞在するための施設を作ることを考えたとき、全ての資材を地球から持っていくのは現実的ではありません。そのため研究者らは何年も前から現地調達できるレゴリスを使った居住施設の建設を研究し、様々なアイデアひねり出しています。NASAもコンペ形式で画期的なアイデアを募集していました

今回の実験は、その実現を真剣に目指すもので、低重力下での土の3Dプリントが上手くいくかを確かめます。まだまだ課題はたくさんあるはずですが、実験がその解決の足がかりになることが期待されます。またそれは月だけでなく将来の火星への進出にも役立つかもしれません。

NASAがISSで月基地建設用3Dプリンターの実証機をテスト、微小重力・月の土で必要な強度が出るか確認

Redwire Space。Redwire Regolith Print(RRP)の3Dプリンター実証機

(Source:NASA。Via Universe TodayEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:宇宙
タグ:ISS / 国際宇宙ステーション(用語)宇宙開発(用語)建設 / 建築(用語)3Dプリント / 3Dプリンター(用語)NASA(組織)

JAXAが国際宇宙ステーション(ISS)で宇宙飛行士が利用できる新生活用品のアイデア募集を開始

JAXAが国際宇宙ステーション(ISS)で宇宙飛行士が利用できる新生活用品のアイデア募集を開始

JAXA(宇宙航空研究開発機構)は8月2日、「第2回 宇宙生活/地上生活に共通する課題を解決する生活用品アイデア募集」の開始を発表した。宇宙生活での課題をヒントに、宇宙・地上の両方で暮らしを便利にするアイデアを国内企業から募集するとともに企業の開発を支援し、新しい製品やサービスを創出するというもの。今回生み出された製品は、2023年以降の古川聡宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)搭乗ミッションややその後搭乗予定の宇宙飛行士らが使う予定。締め切りは2021年9月30日17:00。応募の詳細はこちら

また、民間事業者とJAXAが協働で新技術の開発実証を行い新事業を創出するプログラム「J-SPARC」(JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ)の、暮らしとヘルスケア分野の新規事業創出を担当する部門「THINK SPACE LIFE」が、アイデア創出から具現化へ向けたインキュベーションを行う。

募集にあたっては、宇宙生活の課題や困ったことをまとめた宇宙の暮らしを向上させるヒント集「Space Life Story Book」を参考にして欲しいと、JAXAでは話している。JAXAは、このプログラムに参加することによるメリットとして、次の4つを掲げている。

宇宙ビジネス参入の機会

実際に宇宙で使われる製品やサービスを開発するため、宇宙ビジネスへの展開がしやすくなる。

広告・宣伝への活用

搭載判断されたソリューションは、軌道上で取得した映像・画像の活用や、「ISSでの宇宙飛行士による生活用品の使用」という事実の広報展開が可能(活用条件は内容により異なる)。

地上実証の場

製品やサービスのプロトタイプを「THINK SPACE LIFE」のインキュベーションパートナーが運用する施設などで地上実証実験が行える。

各業界のプロも参画する本格的なインキュベーション体制

アイデア創出を支援するツールの提供や各種ワークショップ開催の支援、ビジネス、投資、有人宇宙分野のプロによるメンタリングを提供。各領域の専門家である「THINK SPACE LIFE」のインキュベーションパートナーとJAXAが連携して、事業創出を支援する。

応募資格は、日本国内で合法的に設立され、存続する法人であること。8月2日から募集を受け付け、締め切りは2021年9月30日17:00。10月に選定を行い、11月からアイデアのブラシュアップ期間に入る。その後は「短期コース」と「長期コース」に分かれ、短期コースは製品を2023年のミッションで使用、長期コースは製品を2024年以降のミッションで使用される予定。

2020年実施された第1回募集から生まれ、2022年のミッションでISSに搭載予定の候補品には以下のようなものがある。

第1回募集のISS搭載候補品(2021年1月21日公表分)

  • 宇宙用靴下:ワコール人間科学研究所
  • Earthian Wear:資生堂、シタテル、スノーピーク、三越伊勢丹
    (飲める成分の口腔ケア製品 株式会社トライフ オーラルピースプロジェクト)
  • デュアルユース・口腔ケアタブレット:TSUYOMI
  • すすぎが簡単なハミガキ:ライオン
  • 宇宙空間の快適生活のための水なし洗髪シート:花王ヘアケア研究所/包装技術研究所
  • ISSで快適に使用できるボディペーパー:マンダム スキンサイエンス開発研究所
  • 清潔ウェアのためのスペースウェットワイパー:花王 ハウスホールド研究所
  • ウェアラブルウォッチ:日本たばこ産業
  • 宇宙空間でモノを固定するテープ:久光製薬

「人が宇宙に進出することで、新たに『暮らし』(衣・食・住)分野のマーケットが宇宙で生まれることが期待されます」とJAXAは話している。ここで生まれた将来の有人探査ミッションや宇宙旅行者向けの生活用品が「持続的なビジネス」になることをJAXAは目指しているという。

「第2回 宇宙生活/地上生活に共通する課題を解決する生活用品アイデア募集」概要

  • 募集内容:JAXAが公表した宇宙生活での課題や困りごと集「Space Life Story Book」を参考に、自社(関連企業
    など含む)の技術や製品を活かして、宇宙・地上での生活の課題解決や利便性を向上させることができるもの(新規生活用品などのアイデア)
  • 参考文献:「Space Life Story Book」(PDF)
  • 応募締切:2021年9月30日17:00
  • 応募資格:アイデアの事業化に取り組むことができる、日本の法律に基づき適法・有効に設立され、かつ存続する法人
  • 募集要項:「宇宙生活/地上生活に共通する課題を解決する生活用品アイデア募集」(PDF)
  • 応募方法・様式(必須):「提案書フォーマット」ファイル(xlsx)に必要事項を記入の上、エントリーフォームより応募
  • 応募方法・様式(任意):1分以内のプレゼンテーション動画も受付。​プレゼンテーション動画提出の場合は、まずは提案書フォーマット「(9)プレゼン動画はありますか?」で「あり」をチェックの上、エントリーフォームより応募する。応募者に対して、後日事務局より動画ファイル返送用メールを送付する。当該メールの内容に沿って、ファイルアップロードを行う
  • エントリーフォームJAXA「第2回 宇宙生活/地上生活に共通する課題を解決する生活用品アイデア募集 」応募フォーム

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カテゴリー:宇宙
タグ:ISS / 国際宇宙ステーション(用語)JAXA / 宇宙航空研究開発機構(組織)有人宇宙飛行(用語)日本(国・地域)

Axiom Spaceの民間宇宙ステーション加圧モジュール開発は仏伊Thales Alenia Spaceが担当

ヒューストンに本社を置くAxiom Space(アクシオム・スペース)は、世界初の民間商業宇宙ステーションを建設・運営するという野心的なプロジェクトを進めており、その詳細が明らかになりつつある。

Axiom宇宙ステーションの2つの与圧モジュールの開発は、欧州の航空宇宙メーカーであるThales Alenia Space(タレス・アレーニア・スペース)が担当する。2024年と2025年に打ち上げられる予定のこれら2つの要素は、国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングした後、最終的には切り離され、完全に独立した商業ステーションとして運用される。

両社は、1億1000万ユーロ(約143億円)の最終契約を締結したと米国時間7月15日に発表した。各モジュールには4人の宇宙飛行士が搭乗できる。また、Thales Aleniaは、各モジュールの微小隕石・デブリシールドシステムの設計も担当する。

Thales Aleniaによると、このモジュールはまだ設計段階にあるという。同社は最近、イタリアのトリノにある施設で、第1モジュールの4つの放射状バルクヘッドの開発を完了した。これらの隔壁が連結されると、シリンダーが形成される。その構造は、共通のバースメカニズム、ISSに接続するモジュールの部品、ハッチなどに取り付けられる。

画像クレジット:Thales Alenia Space

これら2つのモジュールの道のりは長い。フランスのThales Group(タレス・グループ)とイタリアのコングロマリット、Leonardo(レオナルド)の合弁会社であるThales Aleniaがまず、2021年9月から2022年にかけて第1モジュールの溶接を開始する。そのモジュールは、2023年7月にAxiomのテキサス州の施設に送られ、その後Axiomが基幹システムを統合し、2024年の打ち上げに向けて準備を進める。

NASAは、2020年1月にISSの最初の商用居住モジュールの建設をAxiomに依頼した。ISSが退役した後、Axiomのステーションは切り離され、将来のミッションや科学実験のための商業拠点として機能する。これは、急成長する地球低軌道経済の成長と、他の民間軌道ラボや商業施設の構築を促進するNASAの計画の主要な部分だ。

Axiomは、2022年1月に予定されているISSへの初の完全民間ミッションの運用も行う。Axiom Mission 1では、4人の民間宇宙飛行士をSpaceX(スペースX)のCrew Dragon(クルー・ドラゴン)ロケットに搭乗させ、8日間のミッションで宇宙に送り出す予定だ。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Axiom Space国際宇宙ステーション民間宇宙飛行

画像クレジット:Thales Alenia Space

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

宇宙実験・製造を可能とする日本初の宇宙環境利用プラットフォームを開発する「ElevationSpace」が3000万円を調達

宇宙実験・製造を可能とする日本初の宇宙環境利用プラットフォームを開発する「ElevationSpace」が3000万円を調達

国際宇宙ステーション(ISS)に代わる日本初の宇宙環境利用プラットフォームを開発する東北大学発スタートアップElevationSpaceは7月13日、プレシードラウンドにおいて、第三者割当増資による約3000万円の資金調達を発表した。引受先は、MAKOTOキャピタル、事業会社、個人エンジェル投資家の計8者。補助金なども含めた累計調達額は創業半年で約4000万円となった。

ElevationSpaceは、東北大学吉田・桒原研究室でこれまで開発してきた10機以上の小型人工衛星の技術を基に、2021年2月に設立された東北大学発宇宙スタートアップ。調達した資金により、2023年の打上を目指し開発中の技術実証機「ELS-R100」の開発を加速し、大気圏で燃え尽きず地球に帰還させる技術「大気圏再突入技術」の獲得を目指す。

宇宙実験・製造を可能とする日本初の宇宙環境利用プラットフォームを開発する「ElevationSpace」が3000万円を調達
同社は、小型人工衛星内での宇宙実験・製造を可能とする小型宇宙利用・回収プラットフォーム「ELS-R」を開発しており、微小重力環境でのサイエンス研究や地球では不可能な高品質材料の製造を実現、その成果物を地上まで持ち帰ることができるという。

宇宙実験・製造を可能とする日本初の宇宙環境利用プラットフォームを開発する「ElevationSpace」が3000万円を調達

基礎科学的な実験から創薬などの産業利用まで、すでにISSが利用されているものの、構造寿命などの関係から2024年以降のISSの運用は未定という。その運用終了後は、宇宙環境利用を行う場所がなくなると考えられているそうだ。ISSは有人宇宙ステーションであり、国が管理しているプラットフォームであるため、安全管理の複雑さやリードタイムに課題がある。一方ElevationSpaceのサービスでは、小型かつ無人の人工衛星を用いるため、簡単に素早く利用でき、他の手段と比べて優れたユーザビリティを有するとしている。

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P&Gの洗濯洗剤ブランド「Tide」が宇宙用洗濯洗剤開発でNASAと協力、水がほとんどなくても衣類を清潔に

P&Gの洗濯洗剤ブランド「Tide」が宇宙用洗濯洗剤開発でNASAと協力、水がほとんどなくても衣類を清潔に

P&G

NASAをはじめとする世界の宇宙機関はいま、月や火星の有人探査や基地建設を目指し競争しています。しかし、人々が地球から遠く離れた別の星で生活していくためには様々な問題をクリアしなければなりません。酸素はどうするのか、食料は……といったことは誰でも考えるものですが、意外と想像が行き渡らないのが、おそらく毎日発生する作業のひとつでもある”洗濯”です。

現状、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する宇宙飛行士たちは、洗濯機も洗濯に使えるだけの水もない軌道上では、何日間かは同じ服を着て過ごし、補給船が来たときに新しい衣服と引き換えに廃棄物として出す、というルーチンを行っています。

しかし、何日も同じパンツをはいていれば、密閉されたISS空間内では微妙に香ばしいかほりが漂ってしまうこともあるかもしれません。P&Gの洗濯洗剤ブランドTideは、この問題を解決すべく宇宙で使うための初めての洗濯洗剤を開発しました。この洗剤はISSのように水を繰り返し浄化して使うシステム内できちんと機能を発揮し、衣類から汚れや香ばしいかほりを分離してくれます。

NASAは”Mission PGTide”と題し、2022年にはISSでこの洗剤をテストすることを計画しており、Tideのペン形汚れ落とし商品”Pen”や拭き取りペーパー形の”Wipe”の成分が無重力空間でどのような効果を示すかをはかります。また洗剤だけでなく、月または火星のやや重力の弱い場所で使える洗濯機と乾燥機の可能性についても研究していくとのこと。

月や火星には、ISSのようには補給船はやってきません。そのため彼の地では洗濯は避けて通れない日常作業になるはずです。もしTideの宇宙用洗剤が使えるとなれば、貴重な水の消費を抑えることができ、それはまた補給船に乗せる物資重量を節約しその分をほかに回すことも可能になります。少なくともNASAが月面で替えのパンツを待つ飛行士の心配をする機会は減るはずです。

そして、宇宙で役立つ技術は地球上でももちろん役に立つはず。すすぎなどを繰り返さずとも完全に分解する洗剤などは、水の節約だけでなく排水を綺麗にし、廃棄物も減らす、環境に優しい洗剤になるかもしれません。

ちなみに、宇宙空間で洗濯を試みた事例としては、2002年から2003年にかけてISSに滞在した第6次長期滞在チームのケネス・バウアーソックス(Kenneth Bowersox)飛行士が、無重力環境下での洗濯デモンストレーションを行っていました。ただこのとき、バウアーソックス氏が洗濯したのがソックスだったかどうかは知りません。2009年には、ESAの宇宙飛行士がISSでの洗濯について述べており「靴下は1週間はき続ける」と説明しています。

(Source:BusinesswireEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:宇宙
タグ:ISS / 国際宇宙ステーション(用語)公衆衛生(用語)NASA(組織)P&G(企業)ヘルスケア(用語)

NASAが新たに2つの民間宇宙飛行士によるISS滞在ミッションの提案を募集

NASAは米国時間6月11日、民間宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)に滞在させる新たな2件のミッションについて、民間企業から提案を求めていることを発表した。最初のミッションは2022年秋から2023年半ばの間に、2回目のミッションは2023年半ばから2023年末までの間に行われる可能性が高い。

民間宇宙飛行士によるミッションは、NASAの地球低軌道商業開発プログラムの一環として、比較的最近開始されたものだ。人類による宇宙開発の歴史のほとんどにおいて、ISSに滞在できるのは各国の宇宙機関に所属する宇宙飛行士に限られていた。

ヒューストンに拠点を置く宇宙スタートアップ企業のAxiom Space(アクシオム・スペース)は、2022年1月に予定されている史上初の民間宇宙飛行士のみによるISSへの宇宙飛行ミッションを受注している。このミッションでは、フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられる4人の民間宇宙飛行士が、ISSに8日間滞在することになっている。このミッションに関連するサービスの対価として、NASAはAxiom Spaceに169万ドル(約1億8500万円)を支払う。

関連記事:NASAとAxiom Spaceが初の民間人のみによる国際宇宙ステーションへの宇宙飛行について発表

新たに計画されている2つのミッションはそれぞれ最大14日間で、提案書の提出期限は7月9日。これらのミッションは米国の企業が仲介し、認定を受けた米国の輸送用宇宙船を使用しなければならないと、NASAは指定している。Axiom Spaceの民間宇宙飛行士ミッションでは、SpaceX(スペースX)のCrew Dragon(クルードラゴン)ロケットが使用される。

NASAは、今回のような民間の有人ミッションを可能にすることで「NASAは多くの顧客の1つとして、民間企業が主導する地球低軌道経済の活発な発展」に寄与できると述べている。

SpaceXが先導するロケットの再利用という革新などにより、打ち上げコストが大幅に低下したことに加え、この5年間で生まれた「新宇宙」企業のまったく新しいエコシステムのおかげで、宇宙はかつてないほど賑わいを見せている。

NASAはまた、ゆくゆくは今後のアルテミス計画(人類が待望する月面再着陸計画)や、太陽系のさらに遠い場所を目指すミッションのために、地球低軌道は「訓練と実験の場」として利用できるとも述べている。

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カテゴリー:宇宙
タグ:NASA民間宇宙飛行国際宇宙ステーション

画像クレジット:NASA

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スペースXがDragon貨物輸送宇宙船を打ち上げ、新型太陽発電パネルやクマムシを宇宙ステーションへ

SpaceX(スペースX)のDragon(ドラゴン)カプセルが、再び国際宇宙ステーション(ISS)に向かっている。

同社は米国時間6月3日に、NASAから委託された22回目となる商用補給サービス(CRS)ミッションを打ち上げた。これはSpaceXが過去12カ月間にISSへ送ったカプセルとしては5回目になると、同社のDragonミッション管理担当ディレクターを務めるSarah Walker(サラ・ウォーカー)氏は、メディア向け会見で述べた。また、(再利用ではなく)新しいFalcon 9(ファルコン9)ロケットブースターを使った2021年最初の打ち上げでもある。

ロケットは米国東部時間午後1時29分にフロリダ州のケープ・カナベラルを、南と東から嵐の雲が迫っていたものの、予定どおりに離陸。第1段機体は計画どおりに分離し、打ち上げから8分後に大西洋に浮かぶ「Of Course I Still Love You(もちろん、今でも君を愛している)」と名づけられた無人船にタッチダウンした。カプセルを軌道に投入させる第2段は、打ち上げから12分後に分離、こちらも予定どおりだった。

今回のFalcon 9ロケットよる補給ミッションでは、新型太陽発電パネルを含む3.3トン以上の研究材料、物資、ハードウェアをISSのクルーに送り届ける。これは、SpaceXがNASAと結んだ新たな商業軌道輸送サービス(CRS)契約に基づく2回目のミッションで、1回目は2020年12月に行われた

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Dragonカプセルには、Colgate(コルゲート)の歯磨き粉を使って細菌の繁殖を調べる口腔内細菌、宇宙環境での生息と繁殖を試みる原始的な生物であるクマムシ(愛称、ウォーターベア)、宇宙飛行中に多くのクルーが罹患する腎臓結石の形成に対する微小重力の影響を調べる調査など、ISSで実施される多くの研究実験材料が積まれている。

また、りんご、ネーブルオレンジ、レモン、アボカドなどの生鮮食料品も運んでいる。

3328kgの積荷のうち、1380kgは宇宙インフラ企業のRedwire(レッドワイヤー)が開発した新しいロールアウト式の「flexible blanket(フレックスブランケット)」太陽電池パネルが占めている。「従来のリジッドパネル式太陽電池パネルと比べ、フレックスブランケット技術は質量や性能の面において利点があります」と、Redwireの技術ディレクターを務めるMatt LaPointe(マット・ラポイント)氏は、TechCrunchに語った。

この太陽電池パネルは、Dragonの非加圧トランクに収納されている。iROSA(ISS Rool-Out Solar Arrays、国際宇宙ステーション・ロールアウト式太陽発電パネル)をISSに送るミッションは3回予定されており、今回はその1回目だ。ラポイント氏によれば、各ミッションでは2セットずつ運ばれることになっているという。全部で6セットのiROSAが設置されれば、合計120KWを超える電力を生み出すことができる。2021年3月に特別目的買収会社との合併による上場を発表したRedwireは、新しいiROSAによって、ISSの発電量は20~30%向上すると述べている。

Dragonカプセルは6月5日の午前5時頃に宇宙ステーションに到着し、ISSのHarmony(ハーモニー)モジュールのポートに自律的にドッキングする予定だ。その後、1カ月以上を宇宙ステーションで過ごし、調査・帰還用の貨物を積んで地球に帰還、大西洋に着水することになっている。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スペースXが民間宇宙飛行士を国際宇宙ステーションに運ぶミッションを2023年までに4回予定

SpaceX(スペースX)は、2020年1月に実施するとすでに発表済みのミッションに続いて、さらなる民間宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)へ送り込むための乗り物を提供することを発表した。計画されている4度のフライトは、すべて民間の商業宇宙飛行および宇宙ステーション企業であるAxiom Space(アクシアム・スペース)のためのもので、2022年はじめから2023年までの間に行われる予定だ。

SpaceXの宇宙船「Crew Dragon(クルー・ドラゴン)」と「Falcon 9(ファルコン・ナイン)」は、ISSへの人間の輸送を認可された最初の民間打ち上げシステムであり、すでに3組のNASA宇宙飛行士を軌道上の実験室に送り出している。そのうち1組目は最終的な認証取得試験のデモ飛行で、2組はISSに滞在し作業を行うための運用飛行だった。AxiomとNASAは5月に、初の民間人のみによるISSへの飛行となるAX-1ミッションの詳細を明らかにした。このミッションでは、4人の民間宇宙飛行士をCrew Dragonに乗せてISSに送り届ける。4人は合計8日間、宇宙に滞在しながら作業を行い、地球に帰還する予定だ。

NASAとSpaceXは、ステーションに向かうAxiomの4人のクルー全員にトレーニングを提供することになっている。SpaceXもAxiomも他の3つのミッションの内容や時期については、今のところ詳細を明らかにしていない。だが、2年間に4回のミッションを行うということは、これでNASAが2022年と2023年に年2回ずつ割り当てている民間宇宙飛行士ミッションがすべて埋まることになる。

民間宇宙飛行士によるISSへの飛行は、すでに2021年内に1度予定されている。日本の大富豪である前澤友作氏は、12月初旬にロシアのSoyuz(ソユーズ)ロケットでISSに向かうフライトを予約した。この宇宙旅行を手配したSpace Adventures(スペース・アドベンチャーズ)は、2000年代に何人もの大金持ちの民間人を宇宙へ送り出してきた。

一方でAxiomは、軌道上宇宙ステーションでの商業活動について、ニッチではなくより継続的に行う未来を思い描いている。同社は既存のISSに追加する商用モジュールの開発に取り組んでおり、将来的にはISSの後継となる完全に民間運用の宇宙ステーションの建設も視野に入れている。2年間に複数のクルーを乗せた4回の旅行の予約があるということは、物好きな富豪による気まぐれ以上の需要が、商用宇宙旅行にあることを示すのに大いに役立つだろう。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

無重力空間でも機能する冷蔵庫をパデュー大学の研究チームが開発中

国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士は、定期的な補給品の打ち上げによって比較的新鮮な食料を手に入れているが、火星まで行くとなると補給品の入手は不可能だ。もし人類が他の惑星に行くのなら、宇宙でも壊れない冷蔵庫が必要になる。パデュー大学の研究者たちは、そのテストに励んでいる。

普通の冷蔵庫だって宇宙で使えないことはないと思う人もいるかもしれない。熱を吸って、冷気を送り込む。単純なことではないか?しかし、一般的な冷蔵庫は、温度を調整するコンプレッサーにオイルを送り込むのに重力を利用している。そのため、重力のない宇宙ではこれらのシステムが機能しなかったり、すぐに壊れてしまったりするのだ。

パデュー大学のチームとパートナーメーカーのAir Squared(エア・スクエアド)が追求しているソリューションは、重力の方向や大きさに関係なく機能する、従来の冷蔵庫のオイルフリーバージョンだ。その開発は、NASAが有望な中小企業や実験に資金を提供し、ミッションへの準備を促進させるSBIRプログラムによって行われている(このプログラムは現在、フェーズIIの延長期間中)。

2年間の開発期間を経て、チームはついに飛行可能な試作機を完成させた。2021年4月にはパラボリックフライト(放物飛行)で模擬した微小重力環境でテストするところまでこぎ着けた。

最初のテスト結果は期待が持てるものだった。冷蔵庫はきちんと機能した。

研究チームの博士課程学生であるLeon Brendel(レオン・ブレンデル)氏は「微小重力環境下におけるテストで、明らかな問題もなく冷蔵サイクルが継続的に作動したことは、我々の設計が非常に良いスタートを切ったことを示すものです」と、述べている。「我々が認識していなかったことで、微小重力が冷蔵サイクルに与えた変化はないというのが、我々の第一印象です」。

もちろん、短時間の微小重力下(試作機が無重力に近い状態に置かれたのはわずか20秒間でしかなかった)では限定的なテストにしかならないが、研究者たちが取り組んでいた装置の問題点を解消することには役立った。次のテストでは、ISSに長期的に設置されることになるかもしれない。ISSの住人は、きちんと作動する冷蔵庫をきっと欲しがっているはずだ。

冷たい飲み物や(フリーズドライではない)冷凍食品はもちろん魅力的に違いないが、それだけでなく、標準的な冷蔵庫があれば、あらゆる科学的な作業にも利用できる。現在、低温環境を必要とする実験は、複雑で小規模な冷却機構を使用するか、絶対零度に近い宇宙環境を利用するかのどちらかしかない。だからこそ、NASAは「Flight Opportunities(フライト・オポチュニティ)」プログラムの一環として、開発チームを微小重力シミュレーターに搭乗させたのだ。

今回のフライトで収集されたデータの分析は現在進行中だが、最初の大きなテストの成功は、この宇宙用冷蔵庫の研究と実行の両方が、正しいことを立証するものだ。次の課題は、宇宙ステーションの限られたスペースと継続的な微小重力の中で、どのように機能するかを検証することになる。

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「宇宙旅行」が賞品のディスカバリーの新リアリティ番組「Who Wants to Be an Astronaut?」

Discovery(ディスカバリー)は、2022年に放送予定の新しいリアリティ番組を発注した。この新番組は、Axiom Space(アクシオム・スペース)の商用ミッションで国際宇宙ステーション(ISS)への旅行に参加するチャンスを競う。全8話のコンテストシリーズとなる。優勝者は、AxiomがAX-1に続いて完全に民間の宇宙旅行者グループをISSに輸送する2回目のミッションとなるAX-2のクルーに加わる。AX-1は早ければ2022年1月に実施される予定だ。

AxiomとNASAは、2021年5月初めに行われたプレスブリーフィングでAX-1について詳しい説明を行った。このミッションは8日間にわたり、4人の有料顧客を軌道上の科学ステーションに連れて行き、短期間滞在するという。この特典のためにNASAに支払われる価格は169万ドル(約1億8000万円、この中にAxiomが輸送サービスによって提供する現物支援は含まれていない)となっている。

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AxiomはAX-1では、SpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)とCrew Dragon(クルードラゴン)宇宙船を使用して、民間宇宙飛行士の顧客をISSに輸送する予定だ。「Who Wants to Be an Astronaut?」シリーズの最初のプレス資料では、優勝者を受け入れるAX-2ミッションに使用される宇宙船は明記されていないが、これまでに活動している唯一の完全な民間宇宙旅行会社であることから、このミッションにもSpaceXが採用されると考えるのが妥当だろう。

このリアリティ番組シリーズで行われる実際の選考プロセスについて、Discoveryは次のように説明している。

宇宙へ飛び立つ憧れの席を獲得するには何が必要なのか?そのプロセスは過酷であり、厳しい選考を通過するのは選ばれた数人だけです。このシリーズでは、宇宙飛行士に最も必要とされる資質を試すために、様々な過酷な課題に挑戦し、宇宙飛行や宇宙ステーションでの生活に必要な訓練を受ける候補者たちを追っていきます。

そして最終的には、専門家の審査員によって適性があると判断されたラッキーな候補者1名が、これまで経験したことのない冒険へのチケットを手にすることになります。このシリーズでは、離陸から再突入、そして帰還まで、重要な瞬間を記録していきます。

このコンテストは「ありふれた普通の人々」に公開されており、参加したい場合、応募フォームに30~60秒の短い動画を添付する必要がある。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

民間商業宇宙ステーションの実現を目指すAxiom Spaceが約138億円を調達

近い将来の目標を最も高く掲げている新しい宇宙スタートアップ企業の1つが、その野望に向けた自信をシリーズBラウンドで投資家に示し、1億3000万ドル(約138億円)を調達した。

NASAが民間開発の宇宙ステーションモジュールを国際宇宙ステーションに取りつけるために選んだAxiom Space(アクシオン・スペース)は、C5 Capital(C5キャピタル)が主導した新たな資金調達について発表した。

Axiom Spaceは、国際宇宙ステーションで専門的な仕事に携わった実績を持つ宇宙の専門家を含むチームによって2016年に設立された。以来、大きな注目を集める発表を次々と行っている。今回の資金調達はその最新のものだ。同社は、既存の宇宙ステーションに初の民間による商業モジュールを取りつけることで、将来的には完全に民間所有の軌道上プラットフォームを独自に作り上げ、研究や宇宙旅行などに活用することを目指している。

Axiomは2021年1月、2022年1月にSpaceX(スペースX)のDragon宇宙船とFalcon 9ロケットを使って国際宇宙ステーション(ISS)に飛び立つことが予定されている人類初の民間宇宙飛行士について発表した

Axiomはこのミッションのサービスプロバイダーであり、民間宇宙飛行士の契約を仲介し、訓練とミッションのプロファイルを設定する。民間の個人で構成されたクルー(つまり、各国の政府によって選ばれ、訓練を受け、雇用された宇宙飛行士ではない)が宇宙ステーションに飛び立つのは、これが人類史上初めてのことになる。

同社はまた、Tom Cruise(トム・クルーズ)氏と、ISSに乗り込む映画の一部を宇宙で撮影することについて話し合っている。さらに、宇宙ステーションへの旅を掛けて競い合うリアリティ番組も制作会社と企画中だ。

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Axiomは、民間の有人宇宙飛行と既存のインフラストラクチャや産業を結ぶ主要企業として注目を浴びており、NASAのような公共機関のパートナーと、急成長しつつある民間宇宙産業の「レール」、つまりSpaceXや同種の企業の両方をカバーしている。同社は他の民間企業のどこよりも長い間、この独自のチャンスに力を入れてきた。それを実現するために必要なすべての関係と社内の専門家を備えている。

今回の新たな多額の資本注入は、同社の雇用を支援するだけでなく、今後の民間宇宙ステーションモジュールや、最終的には宇宙ステーションそのものを建造する力を高めることにもつながる。ヒューストンを拠点とする同社は、2024年までにその宇宙ステーションモジュールをISSに接続することを目指しており、これまでに1億5000万ドル(約159億円)を調達している。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

宇宙で気候変動に強いワイン用ブドウの木を育てるSpace Cargo Unlimited

宇宙の商業化では、安価な小型衛星にどんな新しいセンサーを載せるかが話題になるが、製造や生産に役立つ微小重力の恩恵を研究も外せない。ヨーロッパのスタートアップSpace Cargo Unlimited(スペース・カーゴ・アンリミテッド)は、微小重力の利点を収益性のある地上でのベンチャーに活かす事業を進めているが、このほど、世界的なワインの種苗企業Mercier(メルシエ)と組んで、宇宙の利点を活かした丈夫なワイン用ブドウの栽培を行うと発表した。

Space Cargo Unlimitedは、微小重力がワインに与える影響について、すでにいくつか実験を行ってきた。2019年には国際宇宙ステーション(ISS)に赤ワインを1箱送っている。ワインは、ほぼ0Gに近い環境で丸12カ月間寝かされてから、2020年、地上に戻ってきた。現在、同スタートアップは宇宙でのバイオテックに特化した子会社Space Biology Unlimited(スペース・バイオロジー・アンリミテッド)を立ち上げ、Mercierと共同で栽培地の気候変動に強いワイン用ブドウの新しい品種の開発に乗り出した。

Space Cargo Unlimitedはボルドーのケースだけでなく、320本のブドウの茎(基本的に新芽の成長によって生まれたかブドウのコア構造)も宇宙に打ち上げている。同社はつい先日、SpaceX(スペースエックス)の貨物船でISSから帰還した茎を受け取ったところだ。送られた茎の半数はメルロー種で、もう半数がカベルネ・ソーヴィニヨン種だが、MercireのCEOであるGuillaume Mercier(ギョーム・メルシエ)氏は声明の中で「前代未聞の生物学的変化」が見られたと語っている。これらは現在クローン培養され、「急速に温暖化が進む地球」での発育において優位性が示されるかが調べられていると彼は話す。

バッテリーの生産から積層製造、基礎的な化学および医療用製造に至るあらゆるものが、微小重力環境で試されている。微小重力には、最もわかりやすい例として、重力による物理的な緊張が軽減されることで地上では困難な複雑な構造体の製造が可能になるという効果がある。その特異な環境では、放射パターンが地上と大きく異なることもあり、有機構造体の成長と発達に予想外の変化が引き起こされる。地上で自然に発生するものではないが、再現することで有用な結果が引き出せることもある。

ISSを利用した微小重力の効果に関する研究は、何年も前から行われている。しかし、宇宙へのアクセスが安価になり機会も増えたことで、それまでは費用やスケジュールの折り合いが付かず手が出せなかった多くの企業やスタートアップにも、ずっと現実的な商業利用の道が開かれた。Space Cargo Unlimitedは、この成長分野で収益が上げられる大変に有利な位置にある企業だといえる。

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タグ:Space Cargo UnlimitedMercier植物ワインISS

画像クレジット:Space Cargo Unlimited

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(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)

民間による商用有人宇宙活動は思いのほか早く実現する

「宇宙で働く」という話を聞いたとき、SFの話をしているのだと感じたとしても無理はない。だが、地球の大気圏外で実際に働く人の数は、また人生の多くの時間を宇宙で過ごす人の数も、加速度的な割合で増え始めている。今はまだ人数がとても少ないので増加速度はゆっくりに感じられるが、間もなく目に見えてくるはずだ。人数を急速に増やすための計画も準備が整っている。

近々、これを中心的に牽引することになる企業は、宇宙ステーションでの民間向けサービスを提供し、ゆくゆくはステーションの運営も行おうというAxiom Space(アクシオム・スペース)だ。Axiomは、国際宇宙ステーション(ISS)での経験や専門知識を持つ人たちによって設立され、経営されている。同社はすでに、民間クライアントのためにISS上でNASAの宇宙飛行士の手を借りた研究開発ミッションを実施している。2021年からは、民間宇宙飛行士のISSへの送り迎え全般を取り仕切る計画を立てており、新しい商用宇宙ステーションの建造計画もある。これは、いずれISSが引退した後に、その役割を引き継ぐことになっている。

Axiomの最高ビジネス責任者Amir Blachman(アミア・ブラックマン)氏は、先週開催されたTC Sessions:Spaceのパネルディスカッションに登壇した。このディスカッションには、他にもNASAの探査およびミッション計画責任者のNujoud Merancy(ニュジャウド・メランシー)氏、Sierra Nevada Corporation(シエラネバダ・コーポレーション)上級副社長であり元宇宙飛行士のJanet Kavandi(ジャネット・カバンディ)氏、Space Exploration Architecture(スペース・エクスプロレーション・アーキテクチャー、SEArch+)共同創設者Melodie Yashar(メロディー・ヤシャー)氏も登場した。ここでは、公共と民間の団体が、地球の外で、または遠く離れて、過ごす時間が長くなる(比較的近い)将来の準備がどれだけ進んでいるかが集中的に議論された。

「今です。もう数年前から今です」とブラックマン氏は、実際に宇宙で暮らす人の数がNASAの宇宙飛行士を超えるのはいつかという質問に答えた。「Axiomは、独自のミッションでISSにクルーを送り込みます。同時に新しい商用宇宙ステーションを建造し、ISSが引退した後にその役割を引き継ぐ予定です。私たちの最初の有人ミッションは、今から12カ月後に予定している4人の宇宙飛行士の打ち上げです。この4人はすでに身体検査を行い、宇宙服の採寸を済ませています。またすでに、打ち上げを行う企業との医療とトレーニングのチームを統合を行いました。この4人は2021年に、別のクルーを2022年に、2023年に2人、2024年には4人を打ち上げ、その後は数を増やしていきます」。

バックマン氏とメランシー氏は、Axiomの将来の商用ステーションにも、NASAの将来の月面基地や月の軌道を巡り月ミッションの足場となるルナゲートウェイにも、自動化とロボットシステムが重要になると話していた。

「ISSは、人が常駐することを基本としています」とメランシー氏。「無人ステーションになることは想定していません。地上の管制官たちが実際にたくさんのオペレーションを行っていますが、ステーションの維持管理は人間が行う仕組みになっています。月の構造物やゲートウェイを計画する際には、そのような贅沢はいえません。ゲートウェイは、人がいるときだけ稼働します。月面基地に人が滞在するのも、次第に長くなりますが、最初は1週間程度です。しかしながら、人がいない間も、有用な科学調査や有用な探索が行える状態を維持しておかなければなりません。そこで、テレロボティクスや地上からのコマンドによる維持管理能力を持たせ、クルーが到着したときに、ハッチを開けて中に入ればすぐに仕事にかかれる環境になっているというのが理想です」。

「火星での、またそれ以前に月面での、そうした住居や重要インフラの建設においては、できる限り自立的に行うべきであり、またそのように考えで進めるべきだという想定の下で、私たちは作業を進めてきました」とヤシャー氏は続けた。「そのため私たちは基本的に、人を送り込む前の予備的ミッションの段階から、建設、材料、採掘、原料加工に至るほぼすべてのシステムと、私たちが目指している他のすべてのシステムが、多かれ少なかれ、できる限り自律的に行われることを期待してデザインしています」。

カバンディ氏も、現代の有人宇宙システムには大幅な自動化を導入すべきという点で、他のパネリストの考えに共鳴していた。それによって複雑性が増さないかとの私の質問に、彼女はむしろ反対の結果をもたらすと答えた。皮肉なようだが、宇宙の有人活動への道を拓くには、人の手をできるだけ減らすことが重要になるということだ。宇宙のインフラの運用と管理においてはなおさらだ。

「技術の進歩は、物事をより単純化する場合もあります」とカバンディ氏。「長年かけて私たちが能力を高めてきた過程で、たとえばコンピューターは、どんどん難しくなるのではなく、より簡単に使えるようになりました。目標は、クルーの拘束時間やクルーの維持管理の手間を削減して、どのようなミッションにおいても、研究やその他宇宙で本来行うべき仕事に専念できるようにすることです。インターフェイスを単純化するほど、自動化率は高まります。クルーは何か問題が起きたときだけ介入すればよくなります。しかし通常は物事が滞りなく進行し、クルーは何もしないで済むというのが理想のかたちです。そうなれば、本来宇宙で行うべき仕事に集中できる自由な時間が増えるのです」。

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(翻訳:金井哲夫)

ソユーズ宇宙船が超高速の約3時間で国際宇宙ステーションにドッキング成功

一般的に、宇宙飛行士がロケットで国際宇宙ステーション(ISS)に向けて打ち上げられたあと、ISSにドッキングするまでには少し時間がかかる。これは、宇宙飛行士が地球から離陸するまでの軌道と、ISSの離陸地点の相対的な軌道に関係している。しかし、米国時間10月14日打ち上げられた第64次長期滞在クルーは、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から地球を出発、約3時間後にISSへのドッキングに成功した。

NASAのKate Rubins(ケイト・ルービンズ)宇宙飛行士、ロシアのSergey Ryzhikov(セルゲイ・リジコフ)宇宙飛行士、Sergey Kud-Sverchkov(セルゲイ・クド・スベルチコフ)宇宙飛行士を乗せたソユーズ宇宙船は、米国東部夏時間10月14日午前2時前(日本時間10月14日午後3時前)に打ち上げられ、ISSとドッキングしたのは米国東部標準時午前4時48分(日本時間10月14日午後5時48分)で、所要時間は3時間2分。カプセルとステーションの間のハッチが開いたのは米国東部夏時間時午前7時7分(日本時間10月14日午後8時7分)で、3人の新しいISSクルーの運用任務が正式にスタートした。偶然にも、この日はルービンズ氏の誕生日でもある。

今回のドッキングの早さは、ISSへの最後の有人打ち上げである5月のNASAのDemo-2ミッションが、フロリダから打ち上げられたあと、丸1日後にISSにドッキングしたことと比べるとよくわかる。通常、クルーカプセルの速度と高度をISSと一致させるには、もう少し軌道を周回する必要があるが、今回の場合は地球を2周しただけの超高速で宇宙船を正しい位置にドッキングさせるタイミングと条件がそろっていた。

現在、ISSには Anatoly Ivanishin(アナトリー・イヴァニシン)宇宙飛行士とIvan Vagner(イワン・ヴァグナー)宇宙飛行士のほか、すでにISSに滞在していたNASAのChristopher Cassidy(クリストファー・キャシディ)宇宙飛行士も含め、6人のクルーが常駐している。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

宇宙遊泳を初めてVR撮影する3Dカメラが国際宇宙ステーションに到着、映像はOculus Storeで公開予定

米国時間10月2日に打ち上げられた国際宇宙ステーション(ISS)向けの補給ミッションに搭載されたペイロードの1つは、最も特異な体験の1つである宇宙遊泳の新たな視点を提供する。これは宇宙空間で360度コンテンツを撮影するために設計されたカスタムメイドの3Dカメラで、今後のISSでの宇宙飛行士によるミッションで、宇宙遊泳を初めて没入型映画のようなVR(仮想現実)で撮影するために使用される。

このカメラはFelix&Paul Studios、Time Studios、および宇宙関連技術を専門とするNanoracks(ナノラックス)とのコラボレーションの成果だ。最終的にこの映像は「Space Explorers:The ISS Series」 と呼ばれるシリーズの完結エピソードの制作に使用される。カメラはNanoracksの「Kaber MicroSatellite」放出装置に搭載され、電力が供給され、外部貨物の操作に使用されるISSのロボットアーム「Canadarm 2」を介して制御される。運用チームによるとCanadarm 2は基本的には映画撮影でのクレーンのように使用され、ISSに滞在する2人の宇宙飛行士の宇宙遊泳を撮影するという。

VRカメラには9個の異なる4K解像度センサーが搭載されており、没入的な360度画像を8K解像度でレンダリングできる。Z-Cam V 1 Proと名付けられたこのカメラはNanoracksの専門知識を活用して改造されたもので、宇宙の過酷な環境下でも作動し、耐えられる構造となっている。具体的には真空状態や紫外線、電離放射線、プラズマ、日射量に応じてマイナス250度から250度まで変化する極端な温度など、宇宙の過酷な環境でも動作する。カメラの筐体は密閉されており、アルミニウム製の放射線シールドで囲われ、アクティブな加熱システムとパッシブな冷却システムの両方を備えているため、1週間の宇宙空間での曝露に耐えることができる。

宇宙遊泳の映像は最終的にOculus Storeで公開される予定で、もし互換性のあるVRヘッドセットを所有していれば、最初の2つのSpace Explorersのエピソードを視聴できる。

関連記事:NASAがトム・クルーズの映画に協力、ISS宇宙ステーションで撮影

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タグ:NanoracksVRISS

画像クレジット:Nanoracks

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(翻訳:塚本直樹)

Crew Dragonテスト成功でSpaceXはNASA初の有人民間宇宙飛行事業者へ


既報のとおり、SpaceXとNASAは極めて重要なミッション「Demo-2」を成功させて、宇宙飛行の新たな歴史を作った。SpaceXのCrew Dragon宇宙船は初の有人飛行を無事完了したのだ。NASAの2名の宇宙飛行士、Bob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏は5月30日に軌道上国際宇宙ステーション(ISS)に到着し、約2か月間実験などに従事したのち無事に地球に帰還した。

Crew Dragonは当初の計画どおりに全任務を進めることができたようだ。打ち上げ、ISSへのドッキング、逆噴射による衛星軌道離脱、完全自動操縦により着水という重要なステップを予定どおり実施し、何より重要なことだが、すべての段階で2名の宇宙飛行士の安全を確保できた。

今回のミッションの最終段階はベンケンとハーリーの両飛行士を乗せたCrew Dragonをメキシコ湾にパラシュートで着水させ、ゴーナビゲーターと呼ばれるSpaceXの回収船に引き上げることだった。このプロセスは米国東部時間午後3時18分(日本時間8月3日午前5時18分)にスムーズに完了した。その後、午後4時ごろにカプセルのハッチが開かれ、4時6分に両宇宙飛行士が姿を現した。

周辺には多数の民間船が見物のために集まっていた。これは航行禁止区域の違反でセキュリティー上の問題なのだが、SpaceXは制止線を作って作業を続行した。ともあれこの状況では他に方法はなかっただろう。

今回の飛行が成功したことで、Crew DragoとFalcon 9ロケットをNASAの正規の基準により商用有人宇宙飛行システムとして認証する準備がすべて整った。ただし最終的な認証決定までには今回の飛行に関する情報をすべて詳細に審査し、解決を要する何らかの問題が残っていないかチェックする必要がある。我々が中継で見た限り、Demo-2は終始絵に描いたように順調に作業が進んだように思われるので、NASAの認証を得るための困難は大きくないだろう。もうひとつ記憶すべき点は、これが45年ぶりの有人着水だったことだ。前回の着水は1974年のSkylabの最後のクルー(NASAプレスリリース)だった。

Crew Dragonが進むべき次のステップは宇宙ステーションへの往還における米国の主要手段となることだ。次回からは本番任務となり、Crew-1と呼ばれる。スケジュールとしては9月中が予定されており、NASAの宇宙飛行士と日本の宇宙開発機関であるJAXAの星出彰彦宇宙飛行士がISSへ向かう(JAXAプレスリリース)。

これによってNASAは2011年のスペースシャトルの退役以後失っていた自国(および友好国)の宇宙飛行士を自力で宇宙ステーションに往復させる能力を取り戻す。ただしこれは商用クループログラム(Commercial Crew program)とう名前が示すとおり、スペースシャトルの際のようにNASAが打ち上げから機体運用まですべて単独で実施するものではなく、あくまで民間企業との協力によって行われる。全ミッションを完了したのはSpaceXが最初となったが、ボーイングもNASA向け商用宇宙飛行の実施の2社目となるべく準備を進めている。

NASAは将来にわたってISSへのアクセスを確保したい意向だ、また宇宙産業育成の資金とするためにできるかぎりコストを節約したいのでCrew DragonもボーイングのStarlinerも有料の乗客のための席を確保している。SpaceXはすでにCrew Dragonによる宇宙往復(ISSには滞在しない)旅行のチケットの予約を取り始めている。Dragonカプセルは最大7名の収容能力がある。NASAはこのうち4席のみを予約している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook