Alphabet(アルファベット)傘下のSidewalk Labs(サイドウォーク・ラブス)からスピンオフした次世代インフラ開発のSidewalk Infrastructure Partners(サイドウォーク・インフラストラクチャー・パートナーズ)は、最初の大きなプロジェクトとなるコネクテッド自動運転車専用の道路を開発する子会社「Cavnue」(キャブニュー)の立ち上げを発表した。
Cavnueはミシガン州を起点として、Ford、GM、Argo AI、Arrival、BMW、ホンダ、トヨタ、TuSimple、Waymoなどのパートナーと協力して、今後の標準となる物理面およびデジタル面のインフラ開発に取り組む。コネクテッド自動運転車をパイロットプロジェクトとしてではなく、米国のハイウェイ、フリーウェイ、州間道、市街地道路で走らせるために必要なインフラを検討する。
Cavnueが着手するのは、ミシガン州デトロイトのダウンタウンとアナーバーの間の40マイル(約64km)で、この区間が自動運転車専用道路の対象となる。同社の構想は、最終的に自動シャトル、バス、トラック、自家用車のために設計された道路を数多く建設することだ。
「Cavnueが40マイルの道路のマスターデベロッパーとなる」とGretchen Whitmer(グレッチェン・ホイットマー)ミシガン州知事は8月13日にSidewalk Infrastructure Partnersとの共同発表で述べた。
「我々が今取ろうとしている行動は、家庭、ビジネス、そして経済全体にとって良いことだ。世界を動かす州、ここミシガンでは、未来の自動車をテストして展開する土台となるインフラを構築する最初の一歩を踏み出した」とホイットマー氏は声明で述べた。「すべてのミシガン人が子供達を車で安全に学校へ送り迎えできるよう道路を再開発する一方、明日の道路への布石となるスマートインフラの構築にも取り組む」。
「デトロイト・アナーバー・コリドー(回廊)」にはミシガンアベニューと州間道94号線沿いにウェイン郡とウォッシュノー郡のコミュニティが存在し、ミシガン大学、デトロイトメトロポリタン空港、ミシガン中央駅などがある。Sidewalk Infrastructure Partnersの声明によると、この区間には最大12の「オポチュニティーゾーン」が用意され、コミュニティや中小企業がこの地域の産業、技術、学術のハブにアクセスできる予定だ。
プロジェクトの第1フェーズでCavnueは「モビリティと電化の未来室」やミシガン交通局などのミシガン州の多数の政府機関と協力し、約2年にわたり実行可能性とデザインの検討を行う。
プロジェクトの第1フェーズの最初の仕事として、道路設計の商業的、技術的な実行可能性を検討する。Cavnueの声明によると、コネクテッドバスと、バンやシャトルなどのシェアモビリティビークルが道路を最初に利用する。その後、貨物車や自家用車などのコネクテッド自動運転車に対象が拡大される。
主なパートナー
Bill Ford(ビル・フォード)氏は2018年、Cavnueが建設を提案したのと同様のコネクテッド・コリドーを構想していた。Ford(フォード)のコークタウンイノベーションハブを、アナーバーからデトロイトへの回廊沿いの経路の東端拠点として考えていた。フォードはCavnueのプロジェクトの主要なパートナーとなった。
Cavnueは他にも多数のパートナーに頼る。ミシガン大学のCAV(Connected and Automated Vehicle)研究センターとMcity Test Facility、交通研究所(UMTRI)、その他の回廊沿いの施設や米国モビリティセンターなどだ。
「ミシガン・セントラル駅(のプロジェクト)における私のビジョンは、明日の交通問題を解決し、すべての人のモビリティアクセスを改善するオープンモビリティイノベーションのための場所を作ることだった」と同氏の名を冠した自動車会社の会長を務めるフォード氏は声明で述べた。「コネクテッド・コリドーを作ることで、ミシガン州はより通信でつながり(Connected)、自律的で電化が進んだ未来を作るリーダーとしての地位を確立する。コミュニティ、経済的利益、そしてミシガン南東部全体にスマートインフラを構築することの重要性を認めてくれた州に感謝する」。
ハンドルを握る人間によるミスが米国における死因のトップだ。ミシガン州では過去10年間で自動車の死亡事故により1万人が亡くなった。Cavnueのパートナーでもあるフォード、GM、Argo AI、Arrival、BMW、ホンダ、トヨタ、TuSimple、Waymoのような企業は、コネクテッド自動運転車が死者を減らし、通勤に費やす時間を削減できると主張している。
Cavnueのミッションが包括的なものになっているのは、自動運転車の商業展開が業界で当初考えられていたよりはるかに遅いと認識されていることの裏返しだ。同社はGoogle(グーグル)本社でのイノベーションイベントから生まれた。レベル5の自律性(人間の介入を必要としない完全自動運転車)は、短期で達成できる機会というよりは未来志向の人達のコンセプトであると思われていた。
自律性に関する研究開発を続けるために必要な数十億ドル(数千億円)の投資を正当化するために、企業には短期的に応用できる対象が必要だ。応用には物理的なインフラが必要となる。
新型コロナウイルスの時代にあって、ライトレールシステム(路面電車)やその他の大量輸送ソリューションが使われなくなり渋滞が増える心配を抱える自治体にとって専用レーンは、自律型公共交通機関には新しい収入源を、企業には大規模なパイロットプロジェクトの一部として自動システムを安全にテストする機会を提供できるのかもしれない。
一部の計画担当者が考えていたことの1つに、ライトレールの代わりとしての自動シャトルの使用と、よりダイナミックなソリューションの可能性があった。需要に応じて稼動する台数を調節し、ルートを共有することで効率が向上し、目的地に到達するまでの時間を短縮できる。
資金は、技術を検証する場を得る自動システムメーカーが提供する可能性がある。最終的には、高度な運転システムを備える車を所有する個人が、レーンにアクセスして公共輸送車両の間の空きスペースを使うために対価として支払う可能性もある。
例えば、道路を使いたい人は10ドル(約1070円)を払った上で、自分の車を自律モードにすることが考えられる。公共交通機関と民間の配達車両が優先されるだろう。道路を使うには自動運転機能を備えていることを証明する必要があるかもしれない。
新しいサービスはこれまでにない種類の官民パートナーシップによって運営されるかもしれない。新しいレーンが生み出す公共料金の金額によって結果を評価する。Cavnueのような企業は車両を調達し、インフラを構築する。道路への投資を担い、許可された自動運転対応車へアクセス権を売る権利を得る。
これがミシガン州で機能するなら、州議会のリーダーの一部は計画の全米普及を推進するつもりだ。
「ミシガンはモビリティの新しいフロンティアの最前線にいる。わが州には自動車メーカー、サプライヤー、エンジニア、大学、試験施設が密集している。彼らが我々の移動手段を一変させるような交通手段の開発を進めている 」とミシガン州選出の上院議員Gary Peters(ゲイリー・ピーターズ)氏は語る。「この発表はミシガン州が自動運転車の研究開発の中心であり続けるための大きな一歩だ。私は連邦レベルで引き続き働き、こうした革新的な(そして命を救う)技術を安全に導入する連邦レベルのフレームワークを開発する」
だが投資が理にかなっていると誰もが確信しているわけではない。
「(可能性がはっきりしない)灰色のインフラへの莫大な投資だ。これは大きなインフラプロジェクトだ」と、プロジェクトについて話す権限がないため匿名を希望したインフラの専門家は述べた。「想定が偏っている。設計が偏っており、想定する利用方法が偏っている。専用レーンは交通の専門家が提唱しているものではない。自動運転車で働いており、それが採用されることに既得権を持つ人々の声のみが反映されている」
画像クレジット:petovarga / Getty Images
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(翻訳:Mizoguchi)